公式は覚えた。なのに解けない ―― 暗記から「考えて解ける」に変える公式の物語化5ステップ

「公式はちゃんと覚えたんです。なのに、テストになると問題が解けないんです。なんでなんですか?」 これは、私のところに来る高2の生徒が、よく口にする言葉です。 ノートを見せてもらうと、公式はびっしり書き込まれています。\(F=ma\)も\(V=IR\)も、すらすら言える。努力は、まちがいなく本物です。それなのに、いざ問題を前にすると、手が止まってしまう。 …はじめに、いちばん大事なことをお伝えします。公式を覚えたのに解けないのは、あなたの頭が悪いからではありません。「公式を覚える」ところで勉強が止まっていて、その先の「公式を使う」訓練をまだやっていないだけ、なのです。

💡 この記事は、「公式は覚えたのに解けない」という状態から抜け出すための、たった1つの訓練法を紹介します。それが「公式の物語化」です。1日1つ、公式を物語に翻訳していくだけ。指導歴14年・2000人の現場で、暗記型の生徒がいちばん変わったやり方を、5ステップにしぼって具体的に書きます。

なぜ「公式は覚えた」のに解けないのか

まず、あなたの努力をきちんと認めるところから始めさせてください。公式を覚える、というのは大変なことです。そこをやり切ったあなたは、すでに半分まで来ています。

では、なぜ解けないのか。それを、2つの身近な例で説明します。

生徒
公式はぜんぶ覚えてるんです。なのに、なんで解けないんですか…?

「楽譜を覚えたピアノ初心者」と同じ状態

ピアノを思い浮かべてください。楽譜を一音残らず暗記した人がいたとします。でも、その人がいきなり美しい曲を弾けるかというと、弾けません。楽譜を「知っている」ことと、実際に「弾ける」ことは、まったく別の力だからです。

英語でも同じです。単語帳を1冊まるごと暗記した人が、すぐに英語を話せるわけではありません。単語を「知っている」ことと、文の中で「使える」ことは別物です。

物理の公式も、これとそっくりです。\(F=ma\)という式を「知っている」のと、目の前の問題でその式を「使える」のは、別の力なのです。あなたに足りないのは、覚える力ではありません。覚えた公式を「使える」状態に変える、最後のひと手間だけなのです。

この記事を読み終えると、こうなります

まこと
公式を覚えられた時点で、あなたの努力は本物です。あとは、その公式を「自分の言葉の物語」に変えるだけ。これをやると、暗記が一気に「使える知識」に変わります。さっそく、その5ステップを見ていきましょう。

公式を「使える」に変える ―― 公式の物語化 5ステップ

ここからが本題です。やることは1つだけ。覚えた公式を、自分の言葉の「物語」に翻訳する。これを毎日1つずつ続けます。むずかしい準備はいりません。順番に見ていきましょう。

ステップ1: 公式を1つ選ぶ

まず、覚えている公式の中から1つだけ選びます。最初は、運動方程式\(F=ma\)のような、いちばん基本的なもので大丈夫です。一度にたくさんやろうとしなくていい。1日1つで十分です。

ステップ2: その公式を「物語」に翻訳する

選んだ公式を、教科書の言葉ではなく、自分の言葉のお話に直します。「この式は、何を言っているんだろう?」と、声に出して説明してみてください。

例:\(F=ma\)
「物体に力を加えると、その力に比例した加速がつく。ただし、重い物ほど加速しにくい」
例:\(V=IR\)
「電圧は、流れる電流と抵抗のかけ算で決まる。同じ電圧でも、抵抗が大きいと電流は減る」

ポイントは、文字の並びを「現象のお話」に変えることです。\(F=ma\)を「エフ・イコール・エム・エー」と読むうちは、まだ暗記のままです。「力を加えると加速がつく」と言えたら、そこで初めて、公式があなたの中で動き始めます。

ステップ3: 物語を「現実の場面」に投影する

次に、そのお話を、身のまわりの場面に当てはめます。教科書の外、あなたの毎日の中に、その公式が生きている場面を探すのです。

例:\(F=ma\) を自転車で
「自転車を漕ぐとき、ペダルを強く踏むほど加速がつく。でも、荷物を満載した自転車は、同じ力でも加速が鈍い」

ここまで来ると、\(F=ma\)はもう「覚えた式」ではありません。「自転車のあの感じ」として、体でわかる知識になります。問題文で「重い物体を押す」と出てきた瞬間、満載の自転車の場面が思い浮かぶ。これが「使える」状態です。

① 公式 F = ma 記号のまま =暗記で止まる 翻訳 ② 物語に翻訳 力を加えると、 その分だけ加速。 重い物ほど、 加速しにくい。 投影 ③ 場面に投影 F a 軽い自転車 → 加速 大 F 荷物 a 満載自転車 → 加速 小
▲ 覚えた公式 \(F=ma\) は、②自分の言葉の「物語」に翻訳し、③身近な場面に投影して、はじめて”使える知識”になります。③の自転車で、押す力 \(F\) はどちらも同じ。それでも荷物を満載した自転車は加速 \(a\) が小さい ―― これが \(a=F/m\)、つまり「重い物ほど加速しにくい」の正体です。

ステップ4: 1日1公式を物語化する(10日で10公式)

あとは、これを毎日くり返すだけです。1日に1つの公式を物語にする。たったそれだけ。10日続ければ10個、1ヶ月で30個ほどの公式が「使える知識」に変わっていきます。

大切なのは、完璧を目指さないことです。その日の物語が70点くらいの出来でかまいません。「だいたいこういう話」と言えれば合格です。毎日1つ、止めずに続けることのほうが、ずっと効きます。

ステップ5: 1ヶ月後、公式を見ずに「物語」で説明する

1ヶ月たったら、自己テストです。公式を見ないで、その物語を自分の言葉で説明できるかを確かめてください。スマホのメモでも、声に出すだけでもいい。

すらすら説明できた公式は、もう完全にあなたのものです。つまった公式は、まだ翻訳が甘いということ。そこだけ、もう一度ステップ2に戻ればいい。これで、あなたの公式は1つ残らず「使える」状態に変わっていきます。

生徒
公式を、自分のお話に変えるんですね。1日1つなら、私にもできそうです
まこと
そうです。覚えるのをやめる必要はありません。覚えた上で、もうひと手間「翻訳」を足すだけ。次は、これを1ヶ月続けると、自分がどう変わるかを見てみましょう。

1ヶ月後、あなたの「公式の使い方」はこう変わる

公式の物語化を1ヶ月続けると、問題への向き合い方が根本から変わります。いちばん大きいのは、公式が「思い出すもの」から「選んで使えるもの」に変わることです。

1ヶ月後、ここが変わります
場面
Before(暗記のまま)
After(物語化のあと)
公式の使い分け
どれを使うか迷う
物語で説明できる
公式の覚え方
文字の並びとして暗記
現象のお話として理解
少し違う問題が出たら
固まる・手が止まる
場面を思い浮かべて対応
時間がたつと
公式を忘れてしまう
場面ごと覚えていて忘れにくい

右の「After」を見てください。物語化した公式は、現実の場面とセットで頭に入っているので、簡単には忘れません。そして、少し形を変えた問題が出ても、「あの自転車の場面だな」と、もとの現象に戻って考えられます。これが、暗記だけでは決して届かなかった「使える物理」です。

なぜ「物語化」が効くのか ―― ドクター・メソッドの考え方

ここで、当方が大切にしている考え方を1つ紹介させてください。公式の物語化が効くのには、はっきりした理由があるのです。

物理が「解けない」のは、風邪でいう「熱が出ている」だけの状態です。本当の原因は、その奥にあります。「公式を覚えれば解ける」と思い込んで、覚えるところで勉強を止めてしまう ―― この思考のクセこそが、根っこにある原因です。だから当方は、点数(症状)ではなく、その奥の学び方とクセ(根)を診ます。これを「ドクター・メソッド」と呼んでいます。

「公式は覚えたのに解けない」を、根本から診る

まこと先生
まこと先生(共田 誠) 物理専門オンライン家庭教師 / 指導歴14年・のべ2000人
YouTube物理クイズチャンネル運営

「公式は覚えたのに解けない」生徒を、私は14年間で何人も見てきました。共通していたのは、頭の良し悪しではなく、「覚えれば終わり」という学び方のクセでした。物語化は、そのクセを自分でほどくための、いちばんやさしい一歩です。症状(点数)ではなく、その奥のクセを診て、一人ひとりに合った処方箋を出す ―― それが私のドクター・メソッドです。

生徒
「覚えれば終わり」で止まってたんですね…。物語化なら、その先に進めそうです
まこと
気づけたなら、もう半分は治っています。あとは1日1公式、止めずに続けるだけ。最後に、今日・今週・今月で何をするかを3ステップにまとめます。

「次に何をするか」3ステップ

最後に、この記事で得たことを、今日・今週・今月の3つの階段に落とします。読んで終わりにせず、1つだけでも動かしてみてください。

ステップ1: 今日(10分以内)

① 覚えている公式を1つ選ぶ(\(F=ma\)で大丈夫)
② その公式を「自分の言葉のお話」に翻訳してみる(70点でOK)
③ そのお話を、身のまわりの1場面に当てはめてみる

ステップ2: 今週(最初の1週)

① 「1日1公式を物語化する」と決めて、スマホのメモに書きためる
② うまく翻訳できない公式は、教科書のその単元だけ読み直す
③ 1週間で7つ、公式の物語をためる

ステップ3: 今月(1ヶ月後)

① 公式を見ずに、ためた物語を説明できるか自己テストする
② 上の比較表で、自分の「公式の使い方」の変化を確認する
③ もっと物語化の素材がほしくなったら、下の「次の一歩」へ進む
生徒
今日の3つなら、今すぐできます。まず\(F=ma\)から、お話にしてみます
まこと
その一歩で十分です。公式を「お話」で語れるようになったあなたは、もう暗記型を抜け出しています。1ヶ月後、問題が前より解けている自分に気づくはずです。

物語化の素材に困らないための、次の一歩

物語化を始めると、すぐにこう思うはずです。「で、その素材、どこで手に入るの?」と。公式の物語化は、いい授業動画があるほど続きます。ここでは、その素材と、自分の思考のクセを知る方法を案内します。

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「1日1公式」が3日で続かなくなる…を防ぐ ― 勉強が続かない時の2モチベーション
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📝 本記事について(honest disclosure)

本記事で紹介した「公式の物語化」5ステップは、当方が指導歴14年・のべ2000人の高校生の指導現場で観察してきたパターンをもとに体系化したものです。「10日で10公式」「1ヶ月後」といった日数は目安であり、効果の出方や定着のスピードには個人差があります。物語化は「暗記をやめる」ことではなく、「暗記したものを使える状態に変える」ためのひと手間として位置づけてください。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

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