読めるのに解けない ―― 偏差値60で止まる人が抜け出す「逆向き解法」5ステップ

「問題文は読めるんです。解説を読めば、ぜんぶ理解できます。なのに、テストで自分一人だと、手が止まるんです。なんでなんですか?」 これは、偏差値が60前後で伸び悩む高校生が、私のところでよく口にする言葉です。 基礎はできている。典型問題も解ける。解説を読めば「なるほど」とわかる。それなのに、初見の問題や少しひねった応用になると、最初の一手が出てこない。模試の偏差値が、60の少し手前で止まってしまう。 …はじめに、いちばん大事なことをお伝えします。読めるのに解けないのは、あなたの頭が悪いからでも、才能やセンスがないからでもありません。問題文を「教科書のように、頭から順に読む」クセがついていて、解くために必要な「ゴールから逆向きにたどる」やり方を、まだ使っていないだけ、なのです。

💡 この記事は、「読めるのに解けない」状態から抜け出すための、たった1つの手の動かし方を紹介します。それが「逆向き解法」です。問題を頭から読むのではなく、求めるもの(ゴール)から逆向きに道を引く。指導歴14年・のべ2000人の現場で、偏差値60の壁で止まっていた生徒がいちばん変わったやり方を、5ステップにしぼって具体的に書きます。

なぜ「読めて、理解もできる」のに解けないのか

まず、あなたがここまで積み上げてきたものを、きちんと認めるところから始めさせてください。問題文が読めて、解説を理解できる。これは土台が完成しているということです。そこまで来たあなたは、もう壁の目の前に立っています。

では、なぜ自力だと解けないのか。それを、1つの身近な例で説明します。

生徒
読めるし、解説も理解できるんです。なのに、自分一人だと、どこから手をつけていいか分からなくなって…

「地図は読める。でも、自分では道順を描けない」状態

知らない街で、地図を渡されたとします。地図を「読む」ことは、あなたにはできます。どこに何があるか、書いてあることは全部わかる。でも、「今いる場所から目的地まで、自分で道順を引きなさい」と言われると、急に手が止まる。これは、地図を読む力と、道順を設計する力が、別の力だからです。

物理の問題も、これとそっくりです。問題文を「読んで理解する」のと、その問題を「自力で解く道順を設計する」のは、別の力なのです。あなたに足りないのは、理解する力ではありません。理解した内容から、解く道順を自分で引く「設計の手順」だけなのです。

そして、その道順の引き方には、コツがあります。多くの人は、問題文を頭から順に読んで、読んだ順のまま手を動かそうとします。でも、それだと途中で「次に何をすればいいんだろう」と迷子になる。解ける人は、逆をやっています。ゴール(求めるもの)から、出発点(与えられた条件)に向かって、逆向きに道を引いているのです。

この記事を読み終えると、こうなります

まこと
読めて、理解もできる。そこまで来たあなたの土台は、本物です。あとは、ゴールから逆向きに道を引く「設計の手順」を足すだけ。これをやると、「読める」が一気に「解ける」に変わります。さっそく、その5ステップを見ていきましょう。

「読める」を「解ける」に変える ―― 逆向き解法 5ステップ

ここからが本題です。やることは1つだけ。問題を頭から読むのではなく、求めるもの(ゴール)から逆向きに道を引く。これを、解くたびに行います。ここでは、簡単な例題を1つ使って、5ステップを順番に見ていきましょう。

例題は、こうします。「なめらかな水平面で、止まっている質量 \(m\) の物体に、一定の力 \(F\) を加えて距離 \(L\) だけ動かした。動かしたあとの速さ \(v\) はいくらか」。読めば理解できる、でも自力だと手が止まりやすい ―― そんなタイプの問題です。

ステップ1: 読み終えたら、まず「ゴール(求めるもの)」に印をつける

問題文を読み終えたら、すぐに計算を始めてはいけません。まず、「この問題は、結局なにを求めろと言っているのか」だけを探して、印をつけます。それ以外は、いったん全部わきに置きます。

この例題のゴールは、速さ \(v\) です。これに丸をつける。たったこれだけですが、ここが出発点になります。

ステップ2: そのゴールの量が入っている公式を、1つ書く

次に、ゴールの量(ここでは \(v\))が登場する公式を、1つだけ思い出して書きます。「\(v\) が入っている式は何だっけ?」と、自分に問いかけてください。

ゴール:速さ \(v\)
\(v\) が入っている式 → 仕事とエネルギーの関係「\(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = W\)」(加えた仕事の分だけ、運動エネルギーが増える)

ポイントは、いきなり「正しい式」を完璧に選ぼうとしないことです。「\(v\) が入ってそうな式」を1つ書ければ十分。それが、ゴールから引く道の、最初の一本です。

ステップ3: その公式の「足りないピース」を見つける

式を書いたら、「この式を使うには、あと何が分かればいいか」を探します。これが、次に求めるべき小さなゴール(中間ゴール)になります。

例題の式 \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = W\) を見ると、\(m\) は与えられています。足りないのは、右側の仕事 \(W\) です。つまり「\(W\) さえ分かれば、\(v\) が出る」。これで、求めるものが \(v\) から \(W\) に1段おりました。

① 順向きに読む ―― 読んだ順に手を動かす 与えられた条件 F, L, m 次に、どの式…? 迷う 手が止まる ゴール (届かない) ② 逆向きに設計する ―― ゴールから引いてくる 与えられた条件 F, L, m 足りないピース 仕事 W ゴールの式 ½mv² = W ゴール v つながった
▲ 「読めるのに解けない」の正体は、①読んだ順に手を動かして”次の一手”を見失うこと。②求める量(ゴール)\(v\) から出発し、「\(v\) が入る式 \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2=W\) → 足りないピース \(W\) → \(W=FL\) で与えられた条件 \(F, L\)」と逆向きにたどると、道が一本につながります。あとは順番に計算するだけです。

ステップ4: 足りないピースを、与えられた条件まで逆向きにたどる

中間ゴールが決まったら、「そのピースは、与えられた条件から出せるか?」を確かめます。出せなければ、さらにもう1段おりる。出せれば、そこで道がつながります。

例題の足りないピースは、仕事 \(W\) でした。仕事は \(W = FL\) で計算できます。\(F\) と \(L\) は、どちらも問題で与えられています。これで「条件 → \(W\) → \(v\)」という道が、一本につながりました。図の下のレーンが、まさにこの逆向きの道です。

ステップ5: たどり着いたら、今度は順向きに計算して解く

道がつながったら、最後は逆向きに引いた道を、今度は順番どおりに計算していくだけです。\(W = FL\) を出し、それを \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = W\) に入れて \(v\) を求める。ここまで来れば、計算はあなたの得意分野のはずです。

大切なのは、ステップ1〜4の「道を引く」部分です。解ける人と解けない人の差は、計算力ではなく、この「ゴールから逆向きに道を引く」ところにあります。読んだ順に進もうとするのをやめて、ゴールから引く。これだけで、止まっていた手が動き出します。

生徒
求めるものから、逆にたどっていくんですね。読んだ順に解こうとして、迷子になってたんだ…
まこと
そうです。読む力はもう十分にある。あとは、ゴールから道を引くクセをつけるだけ。次は、これを1ヶ月続けると、問題への向き合い方がどう変わるかを見てみましょう。

1ヶ月後、あなたの「問題の解き方」はこう変わる

逆向き解法を1ヶ月続けると、初見の問題への向き合い方が根本から変わります。いちばん大きいのは、解き始めが「なんとなく読む」から「ゴールを決めて引く」に変わることです。

1ヶ月後、ここが変わります
場面
Before(読んだ順に解く)
After(ゴールから引く)
読み終えた直後
とりあえず計算を始める
まず「求めるもの」に印をつける
初見の問題で
最初の一手が出ず固まる
ゴールから式を1つ引ける
途中で詰まったとき
どこに戻ればいいか分からない
「足りないピース」へ1段おりる
模試の応用問題
解説を読めば分かるが自力では×
道を引いて、自力で完答できる

右の「After」を見てください。逆向きに道を引けるようになると、初見の問題でも「まずゴール、次にその式、次に足りないピース」と、手が自動的に動き出します。解説を読んで分かるだけだった問題が、自力で解けるようになる。これが、偏差値60の壁の越え方です。

なぜ「逆向き」が効くのか ―― ドクター・メソッドの考え方

ここで、私が大切にしている考え方を1つ紹介させてください。逆向き解法が効くのには、はっきりした理由があるのです。

「読めるのに解けない」のは、風邪でいう「熱が出ている」だけの症状です。本当の原因は、その奥にあります。問題文を頭から順に読み、読んだ順のまま手を動かそうとする ―― この思考のクセこそが、根っこにある原因です。だから私は、点数(症状)ではなく、その奥の考え方のクセ(根)を診ます。これを「ドクター・メソッド」と呼んでいます。

「読めるのに解けない」を、根本から診る

まこと先生
まこと先生(共田 誠) 物理専門オンライン家庭教師 / 指導歴14年・のべ2000人
YouTube物理クイズチャンネル運営

「読めるのに解けない」生徒を、私は14年間で何人も見てきました。共通していたのは、頭の良し悪しではなく、「読んだ順に解こうとする」考え方のクセでした。逆向き解法は、そのクセを自分でほどくための、最初の一歩です。症状(点数)ではなく、その奥のクセを診て、一人ひとりに合った処方箋を出す ―― それが私のドクター・メソッドです。

生徒
「読んだ順に解こうとする」クセ…。たしかに、いつもそうしてました。逆向きなら、変えられそうです
まこと
気づけたなら、もう半分は越えています。ただ、「読んだ順に解くクセ」は人によって出方がちがいます。自分がどのタイプのクセを持っているかは、最後に紹介する診断ではっきりします。まずは、今日・今週・今月で何をするかを3ステップにまとめましょう。

「次に何をするか」3ステップ

最後に、この記事で得たことを、今日・今週・今月の3つの階段に落とします。読んで終わりにせず、1つだけでも動かしてみてください。

ステップ1: 今日(10分以内)

① 手元の問題集から、解いたことのある問題を1問選ぶ
② 解き方を忘れて、まず「求めるもの(ゴール)」に丸をつける
③ そのゴールが入る式を1つ書き、「足りないピース」を探してみる

ステップ2: 今週(最初の1週)

① 「解く前に、まずゴールに印」を、すべての問題でやると決める
② 1日3問、逆向き解法の5ステップで道を引く練習をする
③ 詰まったら、答えを見る前に「足りないピースは何か」だけ考える

ステップ3: 今月(1ヶ月後)

① 初見の応用問題で、ゴールから道を引けるか自己テストする
② 上の比較表で、自分の「解き始め方」の変化を確認する
③ 自分の「読んだ順に解くクセ」のタイプを、下の診断で確かめる
生徒
今日の3つなら、今すぐできます。まず1問、ゴールに丸をつけるところから始めます
まこと
その一歩で十分です。ゴールから道を引けるようになったあなたは、もう「読めるのに解けない」を抜け出しています。1ヶ月後、初見の問題が前より解けている自分に気づくはずです。

もっと「解ける」を増やすための、次の一歩

逆向き解法を始めると、すぐにこう思うはずです。「もっといろんな問題で、道の引き方を練習したい」と。逆向き解法は、いい授業動画で「解く道順の引き方」を何度も見るほど、速く身につきます。ここでは、その素材と、自分の思考のクセを知る方法を案内します。

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② 自分の「読んだ順に解くクセ」のタイプを診断する

この記事は「読めるのに解けない」上位層に絞って、逆向き解法という1つの処方を紹介しました。でも、「なぜ自分は、読んだ順に解こうとしてしまうのか」という根っこの原因は、人によってタイプが分かれます。そこを5タイプで診断するのが、下のページです。

なぜ「読めるのに解けない」のか ― 物理の思考のクセ5タイプ診断
→ 根本原因をタイプ別に診断。自分がどのクセで止まっているかが分かります
ほかのつまずき方も知りたい人へ ― ドクター・メソッド・シリーズ Hub
→ 暗記型・イメージ苦手型など、タイプ別の処方箋がすべて並んでいます

「自分は、読んだ順に解くクセのほかに、どんなつまずき方をしやすいんだろう?」と気になった方は、上のシリーズ Hub が入口です。本記事は「読めるのに解けない」上位層に絞った記事なので、ほかのタイプの診断は Hub にすべて用意しています。

📝 本記事について(honest disclosure)

本記事で紹介した「逆向き解法」5ステップは、私が指導歴14年・のべ2000人の高校生の指導現場で観察してきたパターンをもとに体系化したものです。例題は説明のための単純化したものであり、すべての問題が同じ手順で解けるわけではありません。「1ヶ月後」といった日数は目安であり、効果の出方や定着のスピードには個人差があります。逆向き解法は「読む・理解する」力を否定するものではなく、その土台の上に「解く道順を設計する」ひと手間を足すものとして位置づけてください。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

800+解説記事
11,200YouTube登録者
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