💡 この記事は、「読めるのに解けない」状態から抜け出すための、たった1つの手の動かし方を紹介します。それが「逆向き解法」です。問題を頭から読むのではなく、求めるもの(ゴール)から逆向きに道を引く。指導歴14年・のべ2000人の現場で、偏差値60の壁で止まっていた生徒がいちばん変わったやり方を、5ステップにしぼって具体的に書きます。
なぜ「読めて、理解もできる」のに解けないのか
まず、あなたがここまで積み上げてきたものを、きちんと認めるところから始めさせてください。問題文が読めて、解説を理解できる。これは土台が完成しているということです。そこまで来たあなたは、もう壁の目の前に立っています。
では、なぜ自力だと解けないのか。それを、1つの身近な例で説明します。
「地図は読める。でも、自分では道順を描けない」状態
知らない街で、地図を渡されたとします。地図を「読む」ことは、あなたにはできます。どこに何があるか、書いてあることは全部わかる。でも、「今いる場所から目的地まで、自分で道順を引きなさい」と言われると、急に手が止まる。これは、地図を読む力と、道順を設計する力が、別の力だからです。
物理の問題も、これとそっくりです。問題文を「読んで理解する」のと、その問題を「自力で解く道順を設計する」のは、別の力なのです。あなたに足りないのは、理解する力ではありません。理解した内容から、解く道順を自分で引く「設計の手順」だけなのです。
そして、その道順の引き方には、コツがあります。多くの人は、問題文を頭から順に読んで、読んだ順のまま手を動かそうとします。でも、それだと途中で「次に何をすればいいんだろう」と迷子になる。解ける人は、逆をやっています。ゴール(求めるもの)から、出発点(与えられた条件)に向かって、逆向きに道を引いているのです。
この記事を読み終えると、こうなります
「読める」を「解ける」に変える ―― 逆向き解法 5ステップ
ここからが本題です。やることは1つだけ。問題を頭から読むのではなく、求めるもの(ゴール)から逆向きに道を引く。これを、解くたびに行います。ここでは、簡単な例題を1つ使って、5ステップを順番に見ていきましょう。
例題は、こうします。「なめらかな水平面で、止まっている質量 \(m\) の物体に、一定の力 \(F\) を加えて距離 \(L\) だけ動かした。動かしたあとの速さ \(v\) はいくらか」。読めば理解できる、でも自力だと手が止まりやすい ―― そんなタイプの問題です。
ステップ1: 読み終えたら、まず「ゴール(求めるもの)」に印をつける
問題文を読み終えたら、すぐに計算を始めてはいけません。まず、「この問題は、結局なにを求めろと言っているのか」だけを探して、印をつけます。それ以外は、いったん全部わきに置きます。
この例題のゴールは、速さ \(v\) です。これに丸をつける。たったこれだけですが、ここが出発点になります。
ステップ2: そのゴールの量が入っている公式を、1つ書く
次に、ゴールの量(ここでは \(v\))が登場する公式を、1つだけ思い出して書きます。「\(v\) が入っている式は何だっけ?」と、自分に問いかけてください。
\(v\) が入っている式 → 仕事とエネルギーの関係「\(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = W\)」(加えた仕事の分だけ、運動エネルギーが増える)
ポイントは、いきなり「正しい式」を完璧に選ぼうとしないことです。「\(v\) が入ってそうな式」を1つ書ければ十分。それが、ゴールから引く道の、最初の一本です。
ステップ3: その公式の「足りないピース」を見つける
式を書いたら、「この式を使うには、あと何が分かればいいか」を探します。これが、次に求めるべき小さなゴール(中間ゴール)になります。
例題の式 \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = W\) を見ると、\(m\) は与えられています。足りないのは、右側の仕事 \(W\) です。つまり「\(W\) さえ分かれば、\(v\) が出る」。これで、求めるものが \(v\) から \(W\) に1段おりました。
ステップ4: 足りないピースを、与えられた条件まで逆向きにたどる
中間ゴールが決まったら、「そのピースは、与えられた条件から出せるか?」を確かめます。出せなければ、さらにもう1段おりる。出せれば、そこで道がつながります。
例題の足りないピースは、仕事 \(W\) でした。仕事は \(W = FL\) で計算できます。\(F\) と \(L\) は、どちらも問題で与えられています。これで「条件 → \(W\) → \(v\)」という道が、一本につながりました。図の下のレーンが、まさにこの逆向きの道です。
ステップ5: たどり着いたら、今度は順向きに計算して解く
道がつながったら、最後は逆向きに引いた道を、今度は順番どおりに計算していくだけです。\(W = FL\) を出し、それを \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 = W\) に入れて \(v\) を求める。ここまで来れば、計算はあなたの得意分野のはずです。
大切なのは、ステップ1〜4の「道を引く」部分です。解ける人と解けない人の差は、計算力ではなく、この「ゴールから逆向きに道を引く」ところにあります。読んだ順に進もうとするのをやめて、ゴールから引く。これだけで、止まっていた手が動き出します。
1ヶ月後、あなたの「問題の解き方」はこう変わる
逆向き解法を1ヶ月続けると、初見の問題への向き合い方が根本から変わります。いちばん大きいのは、解き始めが「なんとなく読む」から「ゴールを決めて引く」に変わることです。
右の「After」を見てください。逆向きに道を引けるようになると、初見の問題でも「まずゴール、次にその式、次に足りないピース」と、手が自動的に動き出します。解説を読んで分かるだけだった問題が、自力で解けるようになる。これが、偏差値60の壁の越え方です。
なぜ「逆向き」が効くのか ―― ドクター・メソッドの考え方
ここで、私が大切にしている考え方を1つ紹介させてください。逆向き解法が効くのには、はっきりした理由があるのです。
「読めるのに解けない」のは、風邪でいう「熱が出ている」だけの症状です。本当の原因は、その奥にあります。問題文を頭から順に読み、読んだ順のまま手を動かそうとする ―― この思考のクセこそが、根っこにある原因です。だから私は、点数(症状)ではなく、その奥の考え方のクセ(根)を診ます。これを「ドクター・メソッド」と呼んでいます。
「読めるのに解けない」を、根本から診る
YouTube物理クイズチャンネル運営
「読めるのに解けない」生徒を、私は14年間で何人も見てきました。共通していたのは、頭の良し悪しではなく、「読んだ順に解こうとする」考え方のクセでした。逆向き解法は、そのクセを自分でほどくための、最初の一歩です。症状(点数)ではなく、その奥のクセを診て、一人ひとりに合った処方箋を出す ―― それが私のドクター・メソッドです。
「次に何をするか」3ステップ
最後に、この記事で得たことを、今日・今週・今月の3つの階段に落とします。読んで終わりにせず、1つだけでも動かしてみてください。
ステップ1: 今日(10分以内)
ステップ2: 今週(最初の1週)
ステップ3: 今月(1ヶ月後)
もっと「解ける」を増やすための、次の一歩
逆向き解法を始めると、すぐにこう思うはずです。「もっといろんな問題で、道の引き方を練習したい」と。逆向き解法は、いい授業動画で「解く道順の引き方」を何度も見るほど、速く身につきます。ここでは、その素材と、自分の思考のクセを知る方法を案内します。
① まずは月額¥550で、全範囲の物理を「逆向きに解く」素材にする
高校物理の全範囲の授業動画が見放題 / 「どこをゴールに、どう道を引くか」を何度でも確認できる / 入会後1週間無料なので、合わなければやめられます
② 自分の「読んだ順に解くクセ」のタイプを診断する
この記事は「読めるのに解けない」上位層に絞って、逆向き解法という1つの処方を紹介しました。でも、「なぜ自分は、読んだ順に解こうとしてしまうのか」という根っこの原因は、人によってタイプが分かれます。そこを5タイプで診断するのが、下のページです。
「自分は、読んだ順に解くクセのほかに、どんなつまずき方をしやすいんだろう?」と気になった方は、上のシリーズ Hub が入口です。本記事は「読めるのに解けない」上位層に絞った記事なので、ほかのタイプの診断は Hub にすべて用意しています。
本記事で紹介した「逆向き解法」5ステップは、私が指導歴14年・のべ2000人の高校生の指導現場で観察してきたパターンをもとに体系化したものです。例題は説明のための単純化したものであり、すべての問題が同じ手順で解けるわけではありません。「1ヶ月後」といった日数は目安であり、効果の出方や定着のスピードには個人差があります。逆向き解法は「読む・理解する」力を否定するものではなく、その土台の上に「解く道順を設計する」ひと手間を足すものとして位置づけてください。
PREMIUM
この問題の「なぜそう解くのか」も
全て言語化されています。
問題集の解答が省略する思考プロセスを、現役講師が1人で書き続けています。650問超の「なぜ」を、1週間無料で読めます。
