原子範囲 26~30
26 半減期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 別解1: 逐次計算による解法
- 模範解答が初期量と最終量の比率から一気に計算するのに対し、別解では初期量から出発し、半減期が経過するごとに質量がどう変化するかを段階的に追いかけます。
- 別解2: 指数関数の公式を用いる解法
- 模範解答が半減期の定義から直感的に解くのに対し、別解では放射性崩壊を表す一般的な公式 \(m(t) = m_0 (1/2)^{t/T}\) を用いて、より数学的に解を導出します。
- 別解1: 逐次計算による解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 逐次計算は「量が半分になる」という半減期の概念をステップバイステップで体感でき、理解を確実なものにします。また、公式を用いる解法は、放射性崩壊が指数関数的な現象であることを明確に示し、より発展的な問題への橋渡しとなります。
- 思考の柔軟性向上: 直感的な解法と数式的な解法の両方を学ぶことで、問題の数値設定に応じて最適なアプローチを素早く選択する能力が身につきます。
- 解法の汎用性: 特に公式を用いる解法は、経過時間が半減期の整数倍でない場合や、初期量・半減期自体を求める問題など、より幅広い問題に対応できる非常に強力な手法です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「半減期の基本的な計算」です。放射性原子核が時間とともにどのように減少していくかを、半減期の定義に基づいて正しく計算できるかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 半減期の定義: 放射性原子核の数が、元の数の半分になるまでにかかる時間のこと。
- 質量と原子数の比例関係: 原子核の数と、その集合体である物質の質量は比例します。したがって、原子核の数が半分になれば、質量も半分になると考えて計算できます。
- 指数関数的な減少: 半減期を \(n\) 回繰り返すと、原子核の数(および質量)は元の \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) 倍になります。これは線形(直線的)な減少ではないことを理解していることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、セシウムの質量が初期の \(200 \, \text{g}\) から最終的な \(25 \, \text{g}\) へと、何分の\(1\)になったのか、その比率を計算します。
- 次に、その比率が \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\) の何乗に相当するかを求めます。この「何乗」にあたる数が、半減期を何回繰り返したかを表します。
- 最後に、半減期の回数に、\(1\)回あたりの半減期である \(30\) 年を掛けることで、総経過年数を算出します。
思考の道筋とポイント
この問題は、半減期の定義である「量が半分になるのにかかる時間」を直接的に利用して解くのが最もシンプルです。
第一歩として、最終的な質量 \(25 \, \text{g}\) が、初期の質量 \(200 \, \text{g}\) の何分の\(1\)になっているのかを計算します。その比率が \(\displaystyle\frac{1}{8}\) となることから、これが \(\displaystyle\frac{1}{2} \times \displaystyle\frac{1}{2} \times \displaystyle\frac{1}{2}\) 、つまり半減期を\(3\)回繰り返した結果であると見抜くことが、この問題の核心です。
この設問における重要なポイント
- 半減期 \(T\) が経過するごとに、原子核の数(および質量)は \(\times \displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になる。
- 半減期を \(n\) 回経過すると、量は元の \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) 倍になる。
- この関係から、総経過時間 \(t\) は、半減期の回数 \(n\) と半減期 \(T\) を用いて \(t = n \times T\) と計算できる。
具体的な解説と立式
初期のセシウムの質量を \(m_0 = 200 \, \text{g}\)、変化後の質量を \(m = 25 \, \text{g}\) とします。
まず、質量が元の何分の\(1\)になったのか、その比率を計算します。
$$
\begin{aligned}
\text{比率} &= \frac{m}{m_0} \\[2.0ex]
&= \frac{25}{200}
\end{aligned}
$$
半減期を \(n\) 回繰り返すと、質量は \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) 倍になるので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ \frac{25}{200} = \left(\frac{1}{2}\right)^n $$
この方程式を解くことで、半減期を繰り返した回数 \(n\) を求めます。
最後に、総経過時間 \(t\) は、半減期 \(T=30\) 年を用いて、次の式で計算できます。
$$ t = n \times T $$
使用した物理公式
- 半減期の定義に基づく関係式: \((\text{変化後の量}) = (\text{初期の量}) \times \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) (\(n\) は半減期の回数)
まず、質量の比率を計算し、簡単な分数に直します。
$$
\begin{aligned}
\frac{25}{200} &= \frac{1}{8}
\end{aligned}
$$
次に、\(\displaystyle\frac{1}{8}\) が \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\) の何乗であるかを考えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{8} &= \frac{1}{2^3} \\[2.0ex]
&= \left(\frac{1}{2}\right)^3
\end{aligned}
$$
したがって、\(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n = \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^3\) となり、半減期を \(n=3\) 回繰り返したことがわかります。
半減期は \(T=30\) 年なので、求める年数 \(t\) は、
$$
\begin{aligned}
t &= n \times T \\[2.0ex]
&= 3 \times 30 \\[2.0ex]
&= 90
\end{aligned}
$$
よって、\(90\) 年かかります。
「半減期」というのは、物質の量がきっかり半分に減るまでにかかる時間のことです。この問題のセシウムは、\(30\) 年経つと量が半分になります。
スタートは \(200 \, \text{g}\) です。
- まず \(30\) 年経つと、半分の \(100 \, \text{g}\) になります。(半減期 \(1\) 回目)
- そこからさらに \(30\) 年経つと(合計 \(60\) 年)、また半分の \(50 \, \text{g}\) になります。(半減期 \(2\) 回目)
- さらに \(30\) 年経つと(合計 \(90\) 年)、また半分の \(25 \, \text{g}\) になります。(半減期 \(3\) 回目)
これでちょうど問題で聞かれている \(25 \, \text{g}\) になりました。
結局、\(30\) 年という期間を \(3\) 回繰り返したので、合計で \(30 \times 3 = 90\) 年かかった、というわけです。
セシウム\(200 \, \text{g}\) が \(25 \, \text{g}\) になるまでには \(90\) 年かかるという結果が得られました。この時間は半減期 \(30\) 年のちょうど \(3\) 倍であり、質量が \(\displaystyle\frac{25}{200} = \displaystyle\frac{1}{8} = \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^3\) になっていることと完全に一致しており、物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
初期質量 \(200 \, \text{g}\) からスタートし、半減期である \(30\) 年が経過するごとに質量がどのように変化するかを、一段階ずつ具体的に計算していく方法です。計算を繰り返し、質量が \(25 \, \text{g}\) になった時点での総経過時間を求めます。この方法は、半減期の概念を最も直感的かつ確実に理解することができます。
この設問における重要なポイント
- 半減期が \(1\) 回経過するごとに、質量は直前の質量の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) になる。
- 経過時間と質量の対応を、時系列に沿って一つずつ追いかける。
具体的な解説と立式
初期状態(\(0\) 年後)の質量は \(m_0 = 200 \, \text{g}\) です。
半減期が \(1\) 回経過した \(30\) 年後の質量 \(m_1\) を計算します。
$$ m_1 = m_0 \times \frac{1}{2} $$
半減期が \(2\) 回経過した \(60\) 年後の質量 \(m_2\) を計算します。
$$ m_2 = m_1 \times \frac{1}{2} $$
この計算を、質量が \(25 \, \text{g}\) になるまで続けます。
使用した物理公式
- 半減期の定義: \((\text{半減期後の量}) = (\text{半減期前の量}) \times \displaystyle\frac{1}{2}\)
時間経過に沿って、各時点での質量を計算します。
- 0年後 (スタート): \(200 \, \text{g}\)
- 30年後 (1回目の半減期): \(200 \, \text{g} \times \displaystyle\frac{1}{2} = 100 \, \text{g}\)
- 60年後 (2回目の半減期): \(100 \, \text{g} \times \displaystyle\frac{1}{2} = 50 \, \text{g}\)
- 90年後 (3回目の半減期): \(50 \, \text{g} \times \displaystyle\frac{1}{2} = 25 \, \text{g}\)
質量が目標の \(25 \, \text{g}\) になったとき、経過した時間は \(90\) 年であることがわかります。
この解き方は、カレンダーをめくっていくようなイメージです。
- スタートの時点で、セシウムは \(200 \, \text{g}\) あります。
- まず \(30\) 年分のカレンダーをめくると、セシウムは半分の \(100 \, \text{g}\) に減ります。
- もう一度 \(30\) 年分のカレンダーをめくると、さらに半分の \(50 \, \text{g}\) になります。
- 最後にもう一度 \(30\) 年分のカレンダーをめくると、目標だった \(25 \, \text{g}\) になりました。
合計で \(30\) 年のカレンダーを \(3\) 回めくったので、\(30 \times 3 = 90\) 年かかった、とわかります。
主たる解法と同じく \(90\) 年という結果が得られました。具体的な数値を一つずつ追いかけることで、計算ミスが起こりにくく、半減期の物理的な意味を実感しながら解くことができました。
思考の道筋とポイント
放射性崩壊による量の時間変化を表す一般的な公式 \(m(t) = m_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を用いるアプローチです。この公式に、問題文で与えられている初期質量 \(m_0\)、最終質量 \(m(t)\)、半減期 \(T\) を代入し、未知数である経過時間 \(t\) を方程式を解いて求めます。この方法は、半減期の整数倍ではないような複雑な問題にも対応できる、非常に汎用性の高い解法です。
この設問における重要なポイント
- 公式 \(m(t) = m_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を正しく理解して使うこと。
- \(m(t)\): 時間 \(t\) 後の質量
- \(m_0\): 初期質量 (\(t=0\) のときの質量)
- \(T\): 半減期
- \(t\): 経過時間
- 指数法則を正しく使って方程式を解く数学的な力が必要となる。
具体的な解説と立式
放射性原子核の質量 \(m\) の時間変化は、初期質量を \(m_0\)、半減期を \(T\)、経過時間を \(t\) とすると、次の公式で表されます。
$$ m(t) = m_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}} $$
この問題では、\(m_0 = 200 \, \text{g}\)、\(m(t) = 25 \, \text{g}\)、\(T = 30\) 年 が与えられています。求めるのは経過時間 \(t\) です。
これらの値を公式に代入して、方程式を立てます。
$$ 25 = 200 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{30}} $$
この方程式を \(t\) について解きます。
使用した物理公式
- 放射性崩壊の公式: \(N(t) = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) (原子数 \(N\) を質量 \(m\) で代用)
立式した方程式の両辺を \(200\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{25}{200} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{30}} \\[2.0ex]
\frac{1}{8} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{30}}
\end{aligned}
$$
左辺の \(\displaystyle\frac{1}{8}\) を \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\) のべき乗で表します。
$$
\left(\frac{1}{2}\right)^3 = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{30}}
$$
両辺の底(この場合は \(\displaystyle\frac{1}{2}\))が等しいので、指数部分が等しくなります。
$$
\begin{aligned}
3 &= \frac{t}{30}
\end{aligned}
$$
この式の両辺に \(30\) を掛けて \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
t &= 3 \times 30 \\[2.0ex]
&= 90
\end{aligned}
$$
よって、\(90\) 年かかります。
半減期の問題を解くための、便利な「万能方程式」があります。それは「\((\text{後の量}) = (\text{最初の量}) \times (1/2) \text{の} ((\text{経過時間}) \div (\text{半減期})) \text{乗}\)」という形をしています。
この方程式に、問題文の「最初の量 \(200 \, \text{g}\)」「後の量 \(25 \, \text{g}\)」「半減期 \(30\) 年」を当てはめます。
すると、わからないのは「経過時間」だけになるので、あとは数学の計算(パズルを解くように)で「経過時間」を求めると、答えが \(90\) 年と出てきます。
他の解法と完全に一致する \(90\) 年という結果が得られました。公式を用いることで、思考のステップが明確になり、機械的に計算を進めることができます。この方法は、より複雑な設定の問題にも対応できる強力なツールです。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 半減期の定義の正確な理解:
- 核心: この問題の根幹は「半減期」の定義を正しく理解し、放射性崩壊が「指数関数的な減少」であるという物理現象を把握することにあります。
- 理解のポイント:
- 半減期の定義: 半減期とは、放射性原子核の数が元の半分になるまでにかかる時間です。重要なのは、いつでもその時点での量の半分になるのに同じ時間がかかる、という点です。例えば、\(100\)個が\(50\)個になる時間と、\(50\)個が\(25\)個になる時間は、どちらも同じ「半減期」です。
- 指数関数的な減少: 放射性崩壊は、一定時間ごとに一定量が減る「線形的な減少」(例:1年で10gずつ減る)ではありません。一定時間(半減期)ごとに一定の割合(半分)になる「指数関数的な減少」です。この性質は、半減期を \(n\) 回繰り返すと元の量の \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) 倍になる、という関係式で表現されます。この問題は、\(200 \, \text{g} \rightarrow 25 \, \text{g}\) が \(\displaystyle\frac{1}{8} = \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^3\) 倍であることを認識できるかが鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 逆算する問題: 「\(60\) 年後に元の量の \(\displaystyle\frac{1}{4}\) になった。半減期は何年か?」のように、経過時間と量の比率から半減期 \(T\) を求める問題。(\(\displaystyle\frac{1}{4} = (\displaystyle\frac{1}{2})^2\) なので、\(60\) 年が半減期 \(2\) 回分。よって \(T=30\) 年)
- 初期量を求める問題: 「半減期 \(50\) 年の物質が、\(150\) 年後に \(10 \, \text{g}\) になった。初期量は何gだったか?」のように、最終量から初期量 \(m_0\) を求める問題。(\(150\) 年は半減期 \(3\) 回分。\(m_0 \times (\displaystyle\frac{1}{2})^3 = 10 \, \text{g}\) より \(m_0 = 80 \, \text{g}\))
- 半減期の整数倍ではない問題: 「半減期 \(30\) 年のセシウムが \(40\) 年後には何gになるか?」のような問題。これは直感的解法では難しく、公式 \(m(t) = m_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を使う必要があります。(\(m = 200 \times (\displaystyle\frac{1}{2})^{\frac{40}{30}}\) のように立式します。高校範囲では対数(\(\log\))を使わないと解けない場合が多いですが、立式自体が問われることがあります。)
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられた量の確認: 問題文から「初期量 \(m_0\)」「最終量 \(m(t)\)」「半減期 \(T\)」「経過時間 \(t\)」のうち、どれが与えられていて、どれを求めるのかを明確にします。
- 比率の計算: まず、最終量が初期量の「何分の\(1\)」になったのかを計算します。(\(\displaystyle\frac{m(t)}{m_0}\))
- 半減期回数の特定: 計算した比率が、\(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\) のきれいなべき乗(\(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{4}, \displaystyle\frac{1}{8}, \displaystyle\frac{1}{16}, \dots\))になるかを確認します。
- なれば、べき指数が半減期の回数 \(n\) なので、直感的な解法(主たる解法や別解1)が使えます。
- ならなければ、公式 \(m(t) = m_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を使う必要があると判断します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 線形的な減少との混同:
- 誤解: 半減期が \(30\) 年で \(200 \, \text{g} \rightarrow 100 \, \text{g}\) になる(\(100 \, \text{g}\) 減る)のだから、次の \(30\) 年でも \(100 \, \text{g}\) 減って \(0 \, \text{g}\) になる、と考えてしまう。
- 対策: 「半減期」は「半分になる期間」と正確に覚えることが重要です。「半分の量が減る期間」ではありません。常にその時点での量の半分になる、という点を意識してください。別解1のように、\(200 \rightarrow 100 \rightarrow 50 \rightarrow 25\) と具体的に書き出してみるのが最も効果的な対策です。
- 比率の計算ミス:
- 誤解: \(200 \, \text{g}\) が \(25 \, \text{g}\) になったので、\(200 \div 25 = 8\) より、\(8\) 回半減期を繰り返した、と勘違いしてしまう。
- 対策: 求めるべきは「何分の\(1\)になったか」なので、比率は必ず \(\displaystyle\frac{(\text{後の量})}{(\text{前の量})}\) で計算する癖をつけましょう。この問題では \(\displaystyle\frac{25}{200} = \displaystyle\frac{1}{8}\) です。比率が \(1\) より小さくなることを常に確認してください。
- 公式の指数部分の混同:
- 誤解: 公式 \(m(t) = m_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) の指数部分を、\(\displaystyle\frac{T}{t}\) と逆にして覚えてしまう。
- 対策: 指数 \(\displaystyle\frac{t}{T}\) は「経過時間 \(t\) の中に、半減期 \(T\) が何回分入っているか」という意味、つまり「半減期の回数 \(n\)」を表していると理解しましょう。例えば、\(t=60\) 年, \(T=30\) 年なら、指数は \(\displaystyle\frac{60}{30}=2\) となり、半減期が \(2\) 回あったことを正しく示しています。意味を理解すれば、公式を間違えにくくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 直感的解法(比率から半減期回数を求める):
- 選定理由: この問題のように、量の比が \(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{4}, \displaystyle\frac{1}{8}\) のように、\(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\) のきれいな整数乗で表せる場合に最も速く、直感的に解けるため、第一選択となります。
- 適用根拠: 半減期の定義そのものである「一定時間で半分になる」という物理法則を直接適用しています。半減期を \(n\) 回繰り返せば \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) 倍になる、という最も基本的な関係に基づいています。
- 逐次計算による解法:
- 選定理由: 半減期の概念にまだ慣れていない場合や、計算に自信がない場合に、一つずつステップを踏むことで確実性を高めるために選択します。思考のプロセスが具体的で分かりやすいです。
- 適用根拠: これも半減期の定義を最も忠実に再現した方法です。「\(30\) 年経ったら半分にする」という操作を、目標の量になるまで繰り返しているだけであり、物理的に極めて明快です。
- 指数関数の公式 \(m(t) = m_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\):
- 選定理由: この問題ではやや大げさですが、経過時間が半減期の整数倍でない場合や、未知数が半減期 \(T\) や初期量 \(m_0\) である場合など、より複雑で一般的な問題に対応するためにこの公式を選択します。汎用性が最も高いです。
- 適用根拠: この公式は、半減期の定義を数学的に一般化した表現です。指数部分 \(\displaystyle\frac{t}{T}\) が半減期の回数を表しており、\(t=T\) のとき指数は \(1\) となり \(m = m_0/2\)、\(t=2T\) のとき指数は \(2\) となり \(m = m_0/4\) となるなど、半減期の定義と完全に一致します。あらゆる時間 \(t\) で成立する連続的な関係式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比率の計算を丁寧に: \(\displaystyle\frac{25}{200}\) のような計算では、焦って暗算せず、まずは \(5\) で割って \(\displaystyle\frac{5}{40}\)、さらに \(5\) で割って \(\displaystyle\frac{1}{8}\) のように、段階的に約分する癖をつけましょう。
- べき乗の対応表を頭に入れる: \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^1 = \displaystyle\frac{1}{2}\), \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}\), \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^3 = \displaystyle\frac{1}{8}\), \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^4 = \displaystyle\frac{1}{16}\), \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^5 = \displaystyle\frac{1}{32}\) … といった、\(2\) のべき乗(とその逆数)は瞬時に出てくるように練習しておきましょう。これができると、比率から半減期の回数への変換が格段に速くなります。
- 時系列の書き出し: 別解1のように、「\(0\)年後: \(200 \, \text{g}\)」「\(30\)年後: \(100 \, \text{g}\)」「\(60\)年後: \(50 \, \text{g}\)」… と、時間と量を対応させて書き出すことで、思考が整理され、ケアレスミスを防ぐことができます。特に問題が少し複雑になったときに有効なテクニックです。
- 単位の確認: 最終的に求めるものが「年数」なのか「質量」なのか「回数」なのかを常に意識しましょう。この問題では「何年かかるか」と問われているので、半減期の回数 \(n=3\) を答えとしないように注意が必要です。\(n=3\) に半減期 \(T=30\) 年を掛ける最後のステップを忘れないようにしましょう。
27 半減期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 別解1: 具体的な原子数の変化を追う解法
- 模範解答が割合で計算を進めるのに対し、別解では初期の原子数を \(N_0\) と設定し、その数が時間経過で具体的にどう変化するかを追跡します。
- 別解2: 指数関数の公式を用いる解法
- 模範解答が半減期の回数から直感的に解くのに対し、別解では放射性崩壊の一般公式 \(N(t) = N_0 (1/2)^{t/T}\) を用いて、より数学的に解を導出します。
- 別解1: 具体的な原子数の変化を追う解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 具体的な原子数を追うことで、「残っている量」と「崩壊した量」の関係がより明確になり、物理的なイメージが掴みやすくなります。また、公式を用いる解法は、この現象が数学的にどのように記述されるかを理解する上で役立ちます。
- 思考の柔軟性向上: 割合で考える方法と、具体的な量で考える方法の両方を学ぶことで、問題に応じて思考を切り替える能力が養われます。
- 解法の汎用性: 特に公式を用いる解法は、経過時間が半減期の整数倍でない場合など、より幅広い問題に対応できる強力な手法です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「半減期と崩壊率の計算」です。半減期の定義から「残っている原子の割合」を計算し、そこから「崩壊した原子の割合」を正しく導き出せるかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 半減期の定義: 放射性原子核の数が、元の数の半分になるまでにかかる時間。
- 残存率と崩壊率の関係: ある時間が経過したとき、「残っている原子の割合」と「崩壊した原子の割合」を足すと、必ず全体(\(1\) または \(100\)%)になります。
- 割合からパーセントへの換算: 計算で得られた割合(分数や小数)に \(100\) を掛けることで、パーセント(%)表示に変換できます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、経過時間 \(30 \, \text{h}\) が、半減期 \(15 \, \text{h}\) の何回分にあたるかを計算します。
- 次に、その回数から、\(30 \, \text{h}\) 後に「残っている」原子の割合を \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) の形で求めます。
- 最後に、全体の割合である \(1\) から「残っている」割合を引き算することで、「崩壊した」割合を算出し、パーセントに変換します。
思考の道筋とポイント
この問題の最大のポイントは、問題文が「崩壊している」割合を尋ねている点です。半減期の計算では、まず「残っている」割合を求めるのが自然な流れですが、それをそのまま答えてしまうと間違いになります。
まず、経過時間 \(30 \, \text{h}\) は半減期 \(15 \, \text{h}\) の \(2\) 回分であることを見抜きます。これにより、残っている割合が \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}\) であることがわかります。ここから、「全体から残りを引けば、崩壊した分になる」という論理的なステップを踏めるかが正解への分かれ道です。
この設問における重要なポイント
- 経過時間 \(t\) と半減期 \(T\) から、半減期の回数 \(n = \displaystyle\frac{t}{T}\) を求める。
- \(n\) 回の半減期が経過した後、「残っている」原子の割合は \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) である。
- 「崩壊した」原子の割合は、\(1 – (\text{残っている割合})\) で計算する。
具体的な解説と立式
経過時間を \(t = 30 \, \text{h}\)、半減期を \(T = 15 \, \text{h}\) とします。
まず、この時間内に半減期が何回繰り返されたか、その回数 \(n\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{t}{T}
\end{aligned}
$$
次に、\(n\) 回の半減期が経過した後に「残っている」原子の割合 \(P_{\text{残}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{残}} &= \left(\frac{1}{2}\right)^n
\end{aligned}
$$
問題で問われているのは「崩壊した」原子の割合 \(P_{\text{崩壊}}\) なので、全体の割合 \(1\) から残っている割合 \(P_{\text{残}}\) を引きます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{崩壊}} &= 1 – P_{\text{残}}
\end{aligned}
$$
最後に、この割合をパーセント表示に変換します。
使用した物理公式
- 半減期の回数: \(n = \displaystyle\frac{t}{T}\)
- 残存率と崩壊率の関係: \((\text{崩壊率}) = 1 – (\text{残存率})\)
半減期を繰り返した回数 \(n\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{30}{15} \\[2.0ex]
&= 2
\end{aligned}
$$
したがって、半減期を \(2\) 回繰り返したことがわかります。
このとき、「残っている」原子の割合 \(P_{\text{残}}\) は、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{残}} &= \left(\frac{1}{2}\right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4}
\end{aligned}
$$
よって、「崩壊した」原子の割合 \(P_{\text{崩壊}}\) は、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{崩壊}} &= 1 – P_{\text{残}} \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{1}{4} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}
\end{aligned}
$$
これをパーセントに変換すると、
$$ \frac{3}{4} \times 100 = 75 \, (\%) $$
となります。
このナトリウムの半減期は \(15\) 時間です。つまり、\(15\) 時間経つごとに、その量が半分になります。
今、\(30\) 時間後のことを聞かれているので、これは \(15\) 時間が \(2\) 回経過したことになります。
- スタート時を \(100\) %とします。
- \(15\) 時間後(1回目の半減期)、残っているのは半分の \(50\) %です。
- さらに \(15\) 時間後(合計 \(30\) 時間、2回目の半減期)、残っているのは \(50\) %のさらに半分、つまり \(25\) %です。
問題で聞かれているのは「崩壊した(なくなった)のは何%か?」なので、最初にあった \(100\) %から、最後に残った \(25\) %を引けばよいわけです。
\(100\) % \( – 25\) % \( = 75\) % が崩壊した量となります。
\(30 \, \text{h}\) 後に崩壊している \({}_{11}^{24}\text{Na}\) は \(75\) %であるという結果が得られました。半減期を \(2\) 回経て残っているのが \(\displaystyle\frac{1}{4} = 25\) % なので、崩壊したのは \(1 – \displaystyle\frac{1}{4} = \displaystyle\frac{3}{4} = 75\) % となり、計算は妥当です。問題文の「崩壊しているか」という問いかけを正確に読み取ることが、この問題の鍵となります。
思考の道筋とポイント
割合ではなく、具体的な原子の数を使って考える方法です。最初にあった原子の数を文字(例えば \(N_0\))で置き、半減期が経過するごとに残っている原子の数がどう変化するかを計算します。最終的に残った原子の数がわかれば、最初にあった数から引き算することで、崩壊した原子の数を求められます。最後に、崩壊した数を最初の数で割ることで、割合を算出します。
この設問における重要なポイント
- 初期の原子数を \(N_0\) と仮定して計算を始める。
- \((\text{崩壊した原子数}) = (\text{初期の原子数}) – (\text{残っている原子数})\)
- \((\text{崩壊した割合}) = \displaystyle\frac{(\text{崩壊した原子数})}{(\text{初期の原子数})}\)
具体的な解説と立式
初期の \({}_{11}^{24}\text{Na}\) の原子数を \(N_0\) とします。
半減期は \(15 \, \text{h}\) なので、\(15 \, \text{h}\) 後に残っている原子数 \(N_1\) は、
$$
\begin{aligned}
N_1 &= N_0 \times \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
さらに \(15 \, \text{h}\) 経過した、合計 \(30 \, \text{h}\) 後に残っている原子数 \(N_2\) は、
$$
\begin{aligned}
N_2 &= N_1 \times \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
このとき、崩壊した原子の数 \(N_{\text{崩壊}}\) は、初期の数から残っている数を引いたものです。
$$
\begin{aligned}
N_{\text{崩壊}} &= N_0 – N_2
\end{aligned}
$$
最後に、崩壊した割合 \(P_{\text{崩壊}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{崩壊}} &= \frac{N_{\text{崩壊}}}{N_0}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 半減期の定義: \((\text{半減期後の原子数}) = (\text{半減期前の原子数}) \times \displaystyle\frac{1}{2}\)
まず、\(30 \, \text{h}\) 後に残っている原子数 \(N_2\) を \(N_0\) を用いて表します。
$$
\begin{aligned}
N_2 &= N_1 \times \frac{1}{2} \\[2.0ex]
&= \left(N_0 \times \frac{1}{2}\right) \times \frac{1}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4}N_0
\end{aligned}
$$
次に、崩壊した原子の数 \(N_{\text{崩壊}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
N_{\text{崩壊}} &= N_0 – N_2 \\[2.0ex]
&= N_0 – \frac{1}{4}N_0 \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}N_0
\end{aligned}
$$
最後に、崩壊した割合 \(P_{\text{崩壊}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{崩壊}} &= \frac{N_{\text{崩壊}}}{N_0} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{3}{4}N_0}{N_0} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}
\end{aligned}
$$
これをパーセントに変換すると、\(75\) %となります。
最初にナトリウム原子が \(100\) 個あったと仮定してみましょう。
- \(15\) 時間後、半分の \(50\) 個が残ります。
- さらに \(15\) 時間後(合計 \(30\) 時間後)、そのまた半分の \(25\) 個が残ります。
最初に \(100\) 個あったものが、最終的に \(25\) 個残ったわけですから、崩壊してなくなったのは \(100 – 25 = 75\) 個です。
これは、全体の \(100\) 個のうちの \(75\) 個なので、\(75\) %が崩壊したことになります。
主たる解法と同じく \(75\) %という結果が得られました。初期量を \(N_0\) と置くことで、計算過程における「残っている量」と「崩壊した量」の区別が明確になり、混乱しにくいという利点があります。
思考の道筋とポイント
放射性崩壊に関する一般公式 \(N(t) = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を用いて、より体系的に解くアプローチです。この公式を使って、まず \(30 \, \text{h}\) 後に残っている原子数 \(N(t)\) を求め、そこから崩壊した割合を計算します。この方法は、どんな経過時間や半減期の値に対しても適用できる汎用性の高い解法です。
この設問における重要なポイント
- 公式 \(N(t) = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を正しく適用する。
- \(N(t)\): 時間 \(t\) 後に残っている原子数
- \(N_0\): 初期の原子数
- \(T\): 半減期
- \(t\): 経過時間
- 公式が与えるのは「残っている」量であることを理解し、最終的に「崩壊した」割合を計算するステップを忘れない。
具体的な解説と立式
放射性原子核の数 \(N\) の時間変化は、初期の原子数を \(N_0\)、半減期を \(T\)、経過時間を \(t\) とすると、次の公式で表されます。
$$
\begin{aligned}
N(t) &= N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}
\end{aligned}
$$
この問題では、\(t = 30 \, \text{h}\)、\(T = 15 \, \text{h}\) です。これらの値を代入して、\(30 \, \text{h}\) 後に残っている原子数 \(N(30)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
N(30) &= N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{30}{15}}
\end{aligned}
$$
崩壊した割合 \(P_{\text{崩壊}}\) は、崩壊した原子数(\(N_0 – N(30)\))を初期の原子数 \(N_0\) で割ることで求められます。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{崩壊}} &= \frac{N_0 – N(30)}{N_0}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 放射性崩壊の公式: \(N(t) = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
まず、公式を用いて \(30 \, \text{h}\) 後に残っている原子数 \(N(30)\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
N(30) &= N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{30}{15}} \\[2.0ex]
&= N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4}N_0
\end{aligned}
$$
次に、崩壊した割合 \(P_{\text{崩壊}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{崩壊}} &= \frac{N_0 – N(30)}{N_0} \\[2.0ex]
&= \frac{N_0 – \frac{1}{4}N_0}{N_0} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{3}{4}N_0}{N_0} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}
\end{aligned}
$$
これをパーセントに変換すると、\(75\) %となります。
半減期の問題には、「\((\text{残っている量}) = (\text{最初の量}) \times (1/2) \text{の} ((\text{経過時間}) \div (\text{半減期})) \text{乗}\)」という万能公式があります。
この公式に「経過時間 \(30\) 時間」「半減期 \(15\) 時間」を当てはめると、「残っている量」は「最初の量」の \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{30}{15}} = \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}\) 倍だとわかります。
つまり、残っているのは全体の \(\displaystyle\frac{1}{4}\)(\(25\)%)です。問題は「崩壊した分」を聞いているので、全体(\(100\)%)から残った分(\(25\)%)を引いて、答えは \(75\) %となります。
他の解法と完全に一致する \(75\) %という結果が得られました。公式を用いることで、半減期の回数を計算し、それを指数として適用するという一連の流れが明確になります。ただし、公式が算出するのはあくまで「残存量」であるという点を常に意識する必要があります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 残存量と崩壊量の関係性の理解:
- 核心: この問題の根幹は、半減期の計算から直接導かれるのが「残っている量(残存量)」であるのに対し、問題が求めているのは「なくなった量(崩壊量)」であるという点を正確に把握し、両者の関係を正しく計算できるかにあります。
- 理解のポイント:
- 基本計算は「残存率」: 半減期の公式 \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) は、あくまで「どれだけ残っているか」の割合を示します。この問題では、経過時間 \(30 \, \text{h}\) が半減期 \(15 \, \text{h}\) の \(2\) 回分なので、残っている割合は \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}\) となります。
- 全体からの引き算: 物理現象の前後で、原子は「残っている」か「崩壊した」かのどちらかしかありません。したがって、全体の割合を \(1\)(または \(100\)%)とすると、「崩壊した割合」は必ず \(1 – (\text{残っている割合})\) で求めることができます。この \(1 – \dots\) という計算ステップを忘れずに行えるかが、この問題の最大の鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 崩壊量を指定して時間を問う問題: 「元の量の \(87.5\) %が崩壊するには何年かかるか?半減期は \(T\) 年とする。」のような問題。まず崩壊率 \(87.5\) % \( = \displaystyle\frac{7}{8}\) から、残存率が \(1 – \displaystyle\frac{7}{8} = \displaystyle\frac{1}{8}\) であることを導きます。\(\displaystyle\frac{1}{8} = \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^3\) なので、半減期 \(3\) 回分の時間、つまり \(3T\) 年が答えとなります。
- 複数の放射性同位体の比較問題: 「核種A(半減期 \(10\) 日)と核種B(半減期 \(20\) 日)が同数あるとき、\(20\) 日後に崩壊した原子数の比 A:B はいくらか?」のような問題。
- A: \(20\) 日は半減期 \(2\) 回分。残りは \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}\)。崩壊したのは \(\displaystyle\frac{3}{4}\)。
- B: \(20\) 日は半減期 \(1\) 回分。残りは \(\displaystyle\frac{1}{2}\)。崩壊したのは \(\displaystyle\frac{1}{2}\)。
- よって崩壊数の比は \(\displaystyle\frac{3}{4} : \displaystyle\frac{1}{2} = 3:2\)。
- 初見の問題での着眼点:
- 問いの確認: まず問題文の最後を読み、「何が残っているか」を問われているのか、「何が崩壊したか(あるいは生成したか)」を問われているのかを正確に把握します。これが最も重要です。
- 半減期回数の計算: 次に、経過時間が半減期の何回分にあたるか \(n = \displaystyle\frac{t}{T}\) を計算します。
- 残存率の算出: \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) を計算して、必ず「残っている割合」を先に求めます。
- 問いに応じた最終計算:
- 「残っている量」を問われていれば、ステップ3の結果が答えになります。
- 「崩壊した量」を問われていれば、\(1 – (\text{ステップ3の結果})\) を計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 残存率と崩壊率の混同:
- 誤解: 半減期を \(2\) 回繰り返したので、残っている割合は \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}\) だから、答えは \(25\) %だ、と早合点してしまう。
- 対策: 問題文の「崩壊しているか」という言葉に印をつけるなど、意識的な注意を払うことが不可欠です。計算を終えた後、もう一度「自分が出した答えは、問題の問いに合っているか?」と自問自答する癖をつけましょう。「残っているのは \(\displaystyle\frac{1}{4}\)、聞かれているのは崩壊した分だから…」と確認する一手間がミスを防ぎます。
- 割合の引き算の計算ミス:
- 誤解: \(1 – \displaystyle\frac{1}{4}\) のような簡単な計算で、うっかり \(\displaystyle\frac{1}{4}\) と答えてしまうなどのケアレスミス。
- 対策: \(1\) を \(\displaystyle\frac{4}{4}\) のように、分母をそろえた分数に直してから計算する (\(\displaystyle\frac{4}{4} – \displaystyle\frac{1}{4} = \displaystyle\frac{3}{4}\)) という基本を徹底しましょう。また、ピザの絵などを思い浮かべ、「全体から4分の1を取ったら、残りは4分の3」という具体的なイメージを持つことも有効です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 半減期回数からのアプローチ(主たる解法):
- 選定理由: この問題のように、経過時間が半減期のきれいな整数倍になっている場合、最も速く直感的に解けるため、この方法が最適です。
- 適用根拠: この解法は2つの物理的な基本原則に基づいています。
- 半減期を \(n\) 回経ると残存率が \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n\) になるという「放射性崩壊の法則」。
- 原子は崩壊するかしないかの2択しかないため、全確率が \(1\) になるという「確率の保存則」(\(P_{\text{残}} + P_{\text{崩壊}} = 1\))。
この2つの原則を順に適用することで、論理的に答えを導いています。
- 具体的な原子数 \(N_0\) を用いるアプローチ(別解1):
- 選定理由: 割合の計算が抽象的で分かりにくいと感じる場合に、具体的な「モノの数」として扱うことで、物理現象をイメージしやすくするために選択します。
- 適用根拠: この方法は、割合で考える方法と数学的には全く同じことをしています。\(P_{\text{崩壊}} = \displaystyle\frac{N_0 – N(t)}{N_0} = 1 – \displaystyle\frac{N(t)}{N_0} = 1 – P_{\text{残}}\) という式変形が示すように、本質的には同じ論理構造です。しかし、思考のプロセスとして「全体の数から残った数を引いて、崩壊した数を出す」という手順を踏むため、より具体的で間違いにくいという利点があります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 問いのキーワードにマーキング: 問題文を読んだら、まず「崩壊」「残存」「何%」「何倍」といった、最終的に何を答えるべきかを示すキーワードに丸や下線を引く習慣をつけましょう。
- 計算プロセスの定型化: 半減期の問題を解くときは、常に以下の手順を踏むように意識すると、ミスが減ります。
- \(n = t/T\) を計算(半減期回数)
- \(P_{\text{残}} = (1/2)^n\) を計算(残存率)
- \(P_{\text{崩壊}} = 1 – P_{\text{残}}\) を計算(崩壊率)
- 問題の問いに応じて、\(P_{\text{残}}\) か \(P_{\text{崩壊}}\) を選んで答える。
この流れを「型」として身につけてしまうのが効果的です。
- 分数とパーセントの変換をスムーズに: \(\displaystyle\frac{1}{2}=50\)%, \(\displaystyle\frac{1}{4}=25\)%, \(\displaystyle\frac{3}{4}=75\)%, \(\displaystyle\frac{1}{5}=20\)%, \(\displaystyle\frac{1}{8}=12.5\) %など、よく使われる分数とパーセントの対応は、瞬時に変換できるようにしておきましょう。これにより、計算の最終段階での時間短縮とミス防止につながります。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
28 半減期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は、半減期の回数が整数でない場合や、対数を用いた計算が含まれるため、放射性崩壊の公式を数学的に正しく扱えるかが問われます。教育的に有益な別解が存在しないため、「相違点に関する注記」は省略します。
この問題のテーマは「半減期の応用計算(非整数回の半減期と対数計算)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 放射性崩壊の公式: 経過時間 \(t\) と半減期 \(T\) がどのような値であっても適用できる一般式 \(N(t) = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を理解していること。また、放射線強度も原子数に比例するため、この式をそのまま使えることを知っていること。
- 指数法則: \(a^{\frac{1}{2}} = \sqrt{a}\) のような、指数が分数になる場合の計算ルールを理解していること。
- 常用対数(\(\log_{10}\))の利用: 指数部分に未知数が含まれる方程式を解くために、両辺の対数をとるという数学的な手法を理解していること。特に、\(\log_{10} a^b = b \log_{10} a\) という性質が重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 前半の問い(800年後): 放射性崩壊の公式に、与えられた経過時間 \(t=800\) 年と半減期 \(T=1.6 \times 10^3\) 年を代入し、指数法則を用いて放射線強度の比を計算します。
- 後半の問い(\(\displaystyle\frac{1}{100}\)になるまで): 放射線強度の比が \(\displaystyle\frac{1}{100}\) になるという条件を公式に代入して方程式を立てます。未知数である時間 \(t\) が指数部分にあるため、両辺の常用対数をとり、対数の性質を利用して \(t\) について解きます。
思考の道筋とポイント
この問題は二部構成になっています。
前半は、経過時間 \(800\) 年が半減期 \(1600\) 年のちょうど半分であることに気づき、公式の指数部分が \(\displaystyle\frac{1}{2}\) になることを見抜くことがポイントです。これにより、計算は平方根を求める問題に帰着します。
後半は、放射線強度の比が \(\displaystyle\frac{1}{100}\) という、\(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\) のきれいなべき乗で表せない値であるため、直感的な計算はできません。ここで、指数部分にある未知数を方程式の「表舞台」に引きずり出すための強力な数学的道具である「対数(log)」の利用に思い至れるかが鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 放射性崩壊の公式 \(N(t) = N_0 \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) は、\(t\) が \(T\) の整数倍でなくても使える万能な式である。
- 指数が \(\displaystyle\frac{1}{2}\) のときは、平方根 \(\sqrt{\quad}\) を計算する。
- 指数部分に未知数 \(t\) がある方程式 \(\displaystyle\frac{1}{100} = \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を解くには、両辺の対数をとるのが定石。
- 対数の性質 \(\log a^b = b \log a\) と \(\log \left(\displaystyle\frac{1}{a}\right) = -\log a\) を用いて式を変形する。