「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第21章】基本例題~基本問題360

11月、中間の×を生んだ考え方のクセは、期末にもついてきます。
範囲が変わっても、×を生んだ考え方のクセは次の単元へ持ち越されます。答案の×を1つずつ「どの順番で考えたか」に戻して、期末で同じ転び方をしない準備を。
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基本例題

基本例題68 帯電した小球のつりあい

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 力を水平・鉛直成分に分解する解法
      • 模範解答が力のベクトル図から直接、辺の比(三角比)を用いて関係式を導くのに対し、別解では張力を水平成分と鉛直成分に分解し、それぞれの方向における力のつりあいの式を立てて連立させる、より基本的なアプローチを取ります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 力のつりあいを「ベクトル和がゼロ」という観点(主たる解法)と、「各成分の和がゼロ」という観点(別解)の両方から捉えることで、その等価性を体感し、理解を深めることができます。
    • 思考の柔軟性向上: 力学の問題を解く上で最も汎用的な手法である「成分分解」を改めて確認することで、より複雑な設定の問題にも対応できる応用力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「静電気力と重力がはたらく荷電粒子のつりあい」です。静止している物体にはたらく複数の力を正しく分析し、力のつりあいの条件を適用できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつりあい: 静止している物体にはたらく力のベクトル和はゼロになります。これをベクトル図で考えたり、成分に分解して考えたりする技術が重要です。
  2. クーロンの法則: 2つの点電荷間にはたらく静電気力の大きさを、電荷の大きさと距離から計算するための基本法則です。
  3. 幾何学的な関係: 問題で与えられた図形(角度や長さ)から、力の向きや物体間の距離を正しく読み取り、計算に利用する能力が求められます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、小球Aにはたらく3つの力(重力、静電気力、張力)を図示し、それらがつりあっているという条件を用いて、静電気力の大きさを求めます。
  2. (2)では、まず問題の図形から小球AとBの間の距離を計算します。次に、(1)で求めた静電気力の大きさをクーロンの法則の式に代入し、未知数である電気量\(q\)を算出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
小球Aは空中で静止しているため、小球Aにはたらくすべての力はつりあっています。はたらく力は、鉛直下向きの「重力 \(mg\)」、小球Bからの反発による水平右向きの「静電気力 \(F\)」、そして糸に沿った斜め上向きの「張力 \(T\)」の3つです。これらの3力がつりあうという条件を数式で表現することが目標です。問題の図の対称性から、糸と鉛直線がなす角が\(45^\circ\)であることを見抜くのが最初のステップです。
この設問における重要なポイント

  • 3つの力がつりあうとき、それらのベクトルを矢印でつなぐと、出発点に戻ってくる閉じた三角形を描くことができます。
  • または、各力を水平・鉛直などの直交する2方向に分解し、それぞれの方向で力の和がゼロになる、という式を立てることもできます。
  • 模範解答で採用されているのは、力のベクトルが作る三角形の辺の比が、力の向きがなす角度の三角関数(特にタンジェント)に対応することを利用する、スマートな解法です。

具体的な解説と立式
小球Aには、重力 \(mg\)、静電気力 \(F\)、張力 \(T\) の3つの力がはたらいて静止しています。
問題の図は左右対称なので、2本の糸は鉛直線を軸として等しい角度で開きます。したがって、それぞれの糸が鉛直線となす角 \(\theta\) は、
$$ \theta = \frac{90^\circ}{2} = 45^\circ $$
となります。

小球Aにはたらく3つの力はつりあっているので、これらの力のベクトルを描くと、図のように閉じた直角三角形を形成します。水平方向の力 \(F\) と鉛直方向の力 \(mg\) のベクトル和が、張力 \(T\) と大きさが等しく逆向きになるためです。
この力のベクトル三角形において、辺の長さの比は三角関数で表すことができます。
$$ \frac{F}{mg} = \tan 45^\circ $$

使用した物理公式

  • 力のつりあい条件
  • 三角関数の定義
計算過程

上記で立式した関係式と、\(\tan 45^\circ = 1\) であることを用いて \(F\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= mg \tan 45^\circ \\[2.0ex] &= mg \times 1 \\[2.0ex] &= 0.50 \times 10 \\[2.0ex] &= 5.0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

小球Aは、真下に引っ張る「重力」、真横に押される「静電気力」、そして斜め上に引っ張る「糸の張力」という3つの力が絶妙なバランスを取っているため、空中でピタッと止まっています。この力のバランスを図に描いてみると、糸の角度がちょうど\(45^\circ\)であることから、非常に特別な状態であることがわかります。具体的には、「横向きに押す力(静電気力)」と「下向きに引く力(重力)」の大きさが、全く同じになっているのです。したがって、求めたい静電気力 \(F\) の大きさは、重力の大きさ \(mg\) を計算するだけで求めることができます。

結論と吟味

静電気力の大きさ \(F\) は \(5.0 \, \text{N}\) となります。これは小球にはたらく重力 \(mg = 0.50 \times 10 = 5.0 \, \text{N}\) と等しく、糸の角度が\(45^\circ\)という条件から導かれる物理的に妥当な結果です。

解答 (1) \(5.0 \, \text{N}\)
別解: 力を水平・鉛直成分に分解する解法

思考の道筋とポイント
力のつりあいの問題を解く、より機械的で汎用性の高いアプローチです。斜めを向いている力(この場合は張力 \(T\))を、水平(x軸)方向と鉛直(y軸)方向に分解します。物体が静止していることから、「水平方向の力の合計がゼロ」かつ「鉛直方向の力の合計がゼロ」という2つの条件式を立てます。この連立方程式を解くことで、未知の力 \(F\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 座標軸(水平・鉛直)を設定し、すべての力をその成分に分解する。
  • 水平方向のつりあいの式と、鉛直方向のつりあいの式を、それぞれ独立に立てる。
  • 未知数が \(F\) と \(T\) の2つ、式が2本なので、連立方程式として解くことができる。

具体的な解説と立式
小球Aにはたらく張力 \(T\) を、水平成分と鉛直成分に分解します。糸と鉛直線のなす角は \(45^\circ\) なので、水平方向(左向き)の成分は \(T\sin 45^\circ\)、鉛直方向(上向き)の成分は \(T\cos 45^\circ\) となります。
小球Aは静止しているので、各方向の力のつりあいの式は以下のようになります。

水平方向:
$$ F – T\sin 45^\circ = 0 \quad \cdots ① $$
鉛直方向:
$$ T\cos 45^\circ – mg = 0 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 力のつりあい条件(成分表示)
計算過程

まず、②式を変形して張力 \(T\) を \(mg\) で表します。
$$
\begin{aligned}
T\cos 45^\circ &= mg \\[2.0ex] T &= \frac{mg}{\cos 45^\circ}
\end{aligned}
$$
次に、この \(T\) の式を①式に代入して \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
F &= T\sin 45^\circ \\[2.0ex] &= \left( \frac{mg}{\cos 45^\circ} \right) \sin 45^\circ \\[2.0ex] &= mg \frac{\sin 45^\circ}{\cos 45^\circ} \\[2.0ex] &= mg \tan 45^\circ
\end{aligned}
$$
ここで \(\tan 45^\circ = 1\) なので、\(F = mg\) となります。
数値を代入すると、
$$
\begin{aligned}
F &= 0.50 \times 10 \\[2.0ex] &= 5.0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

斜め上向きに引っ張っている「糸の張力」を、仮想的に「真上に引っ張る力」と「左に引っ張る力」の2つに分解して考えます。小球がその場で止まっているということは、まず「右向きの静電気力」と分解された「左向きの張力」がちょうど打ち消し合っています。それと同時に、「上向きの張力」と「下向きの重力」もぴったり打ち消し合っているはずです。この2つの「打ち消し合いの式」を立てて計算を進めると、やはり静電気力は重力と同じ大きさだということがわかります。

結論と吟味

静電気力の大きさは \(5.0 \, \text{N}\) となり、主たる解法と完全に一致する結果が得られました。力のつりあいを解くための異なる正当なアプローチが、同じ結論を導くことを確認できます。

解答 (1) \(5.0 \, \text{N}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
設問(1)で求めた静電気力 \(F\) は、小球AとBがそれぞれ持つ電荷によって生じる反発力です。この静電気力と電荷の関係を表すのが「クーロンの法則」です。公式 \(F = k \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r^2}\) を使うために、まずは小球AとBの間の距離 \(r\) を求める必要があります。距離 \(r\) は、問題で与えられた糸の長さと角度の情報から、幾何学的に計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則 \(F = k \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r^2}\) の公式を正しく理解し、適用できること。
  • 問題の図が、2辺の長さが \(0.30 \, \text{m}\) でその間の角が \(90^\circ\) の直角二等辺三角形をなしていることを見抜き、斜辺の長さとして小球間距離 \(r\) を計算できること。
  • 小球AとBは「等量の」電荷を持つとされているので、\(q_1 = q_2 = q\) として式を立てること。

具体的な解説と立式
まず、つりあいの状態にある小球AとBの間の距離 \(r\) を求めます。
2本の糸と、小球A, Bを結ぶ線分は、長さ \(0.30 \, \text{m}\) の2辺とその間の角が \(90^\circ\) の直角二等辺三角形を形成します。距離 \(r\) は、この三角形の斜辺の長さに相当します。三平方の定理を用いると、
$$
\begin{aligned}
r^2 &= (0.30)^2 + (0.30)^2 \\[2.0ex] &= 2 \times (0.30)^2
\end{aligned}
$$
よって、距離 \(r\) は次のようになります。
$$ r = 0.30\sqrt{2} \, [\text{m}] $$
次に、この距離 \(r\) と(1)で求めた静電気力 \(F\) を用いて、クーロンの法則を適用します。小球AとBはそれぞれ等しい正電荷 \(q\) を持っているので、\(q_1 = q_2 = q\) とおけます。
$$
\begin{aligned}
F &= k \frac{q \cdot q}{r^2} \\[2.0ex] &= k \frac{q^2}{r^2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理
  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r^2}\)
計算過程

クーロンの法則の式を \(q^2\) について解きます。
$$ q^2 = \frac{F r^2}{k} $$
この式に、\(F = 5.0 \, \text{N}\)、\(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\)、そして \(r^2 = 2 \times (0.30)^2 = 0.18 \, \text{m}^2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
q^2 &= \frac{5.0 \times (0.30\sqrt{2})^2}{9.0 \times 10^9} \\[2.0ex] &= \frac{5.0 \times 0.18}{9.0 \times 10^9} \\[2.0ex] &= \frac{0.90}{9.0 \times 10^9} \\[2.0ex] &= \frac{1}{10 \times 10^9} \\[2.0ex] &= \frac{1}{10^{10}} \\[2.0ex] &= 1.0 \times 10^{-10}
\end{aligned}
$$
問題文より \(q\) は正の電荷なので、\(q^2\) の正の平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
q &= \sqrt{1.0 \times 10^{-10}} \\[2.0ex] &= 1.0 \times 10^{-5}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(1)で、小球同士が \(5.0 \, \text{N}\) の力で押し合っていることがわかりました。この力の原因は、それぞれの小球が持っている「電気の量(電荷)」です。物理学には、電気の量と距離から力の大きさを計算する「クーロンの法則」という便利な公式があります。今回は逆に、力の大きさと距離がわかっているので、この公式を使って原因となった電気の量を逆算します。まず図形から小球の間の距離を計算し、それらの値を公式に当てはめれば、小球Aが持つ電気の量 \(q\) を求めることができます。

結論と吟味

小球Aのもつ電気量は \(1.0 \times 10^{-5} \, \text{C}\) となります。問題で与えられている数値の有効数字は2桁(例: 0.50 kg, 9.0×10⁹)なので、解答も有効数字2桁で \(1.0 \times 10^{-5}\) と表現するのが適切です。計算結果は物理的に妥当な値です。

解答 (2) \(1.0 \times 10^{-5} \, \text{C}\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 力学と電磁気学の融合:
    • 核心: この問題は、物体が静止するための力学的な条件である「力のつりあい」と、電荷間に働く力を記述する電磁気学の法則である「クーロンの法則」という、2つの異なる分野の法則を組み合わせて解く点に本質があります。
    • 理解のポイント:
      • 力学の視点(つりあい): 小球が静止しているという事実から、小球にはたらく全ての力(重力、静電気力、張力)のベクトル和がゼロであることを意味します。この条件を数式に落とし込むことが、問題を解く第一歩です。
      • 電磁気学の視点(クーロン力): 小球間にはたらく静電気力の大きさは、それぞれの電気量と距離によって決まります。力のつりあいから求めた静電気力の大きさを、クーロンの法則に当てはめることで、未知の電気量を明らかにすることができます。
  • 力のつりあいの2つのアプローチ:
    • 核心: 「力のつりあい」という一つの物理現象を、2つの異なる数学的アプローチで表現できることを理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • ベクトル図(三角比)法: 3つの力がつりあう場合、力のベクトルを繋ぐと閉じた三角形になります。この図形の辺の比(力の大きさの比)と角度の関係(三角比)を利用する解法です。図形的な関係が明快な場合に非常に強力でスピーディーです。
      • 成分分解法: 任意の直交座標軸(例:水平・鉛直)を設定し、すべての力をその成分に分解します。「各方向の力の成分の和がゼロ」という連立方程式を立てて解く方法です。より機械的で汎用性が高く、力が4つ以上の場合や角度が複雑な場合でも確実に対応できる基本戦術です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 角度を求める問題: 逆に電気量や質量が与えられ、つりあったときの糸の角度 \(\theta\) を問う問題。この場合も力のつりあいの式を立て、\(\tan\theta\) などの三角比を未知数として求めます。
    • 一様な電場中の問題: 糸で吊るした荷電粒子が一様な電場 \(E\) 中で静止する問題。この場合、静電気力は \(F=qE\) となりますが、「力のつりあい」を考えるという問題の構造は全く同じです。
    • 浮力が加わる問題: 液体中で荷電粒子がつりあう状況。この場合は、重力、静電気力、張力に加えて「浮力」も考慮に入れる必要があります。力の種類が一つ増えるだけで、つりあいの考え方はそのまま使えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 着目物体を決める: まず、どの物体について力のつりあいを考えるのかを明確にします(この問題では小球A)。
    2. 力を全列挙し、図示する: 着目物体にはたらく力を「もれなく、だぶりなく」探し出し、フリーボディダイアグラム(力を矢印で示した図)を描きます。接触力(張力、垂直抗力など)と遠隔力(重力、静電気力など)に分けて考えると見落としが減ります。
    3. 幾何学的情報を読み取る: 問題の図や設定から、角度や距離に関する情報を正確に読み取ります。特に「対称性」は強力なヒントになります(例:\(90^\circ\)が半分ずつに分かれて\(45^\circ\)になる)。
    4. つりあいの解法を選択する: はたらく力が3つで図形が単純なら「ベクトル図(三角比)法」を検討し、それ以外の場合は基本に忠実に「成分分解法」を用いる、という戦略的な判断ができるとスムーズです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • クーロンの法則における距離 \(r\) の誤り:
    • 誤解: 糸の長さ \(L=0.30 \, \text{m}\) を、クーロンの法則の距離 \(r\) としてそのまま代入してしまう。
    • 対策: クーロンの法則の \(r\) は「2つの電荷間の直線距離」であると定義を正確に覚えることが重要です。必ず問題の図をよく見て、幾何学的な計算(この場合は三平方の定理)によって正しい距離を求める、というステップを忘れないようにしましょう。
  • 力の成分分解での \(\sin\) と \(\cos\) の混同:
    • 誤解: 角度が与えられると、水平成分は常に \(\cos\)、鉛直成分は常に \(\sin\) のように機械的に覚えてしまい、間違える。
    • 対策: 角度 \(\theta\) が水平線となす角か、鉛直線となす角かで \(\sin\) と \(\cos\) の使い方は変わります。分解したい力のベクトルを斜辺とする直角三角形を毎回図に描き、「\(\theta\) を挟む辺が \(\cos\theta\)」「\(\theta\) の向かい側の辺が \(\sin\theta\)」と、定義に立ち返って確認する癖をつけましょう。
  • 作用・反作用の混同:
    • 誤解: 小球Aにはたらく力を考えるべきところで、AがBに及ぼす力など、他の物体にはたらく力を描いてしまう。
    • 対策: 「主語」を明確にする意識が大切です。「(着目物体である)小球Aが」「(他の物体から)受ける力」だけをリストアップし、図示する、という原則を徹底します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力のつりあい条件の選択:
    • 選定理由: 問題文に「つり下げると…(静止した)」という記述があるため、これは静力学の問題であり、「力のつりあい」の法則を適用することが最も直接的な解法となります。
    • 適用根拠: ニュートンの運動の第一法則(慣性の法則)によれば、静止している物体にはたらく力の合力はゼロです。この普遍的な法則が、今回の問題設定における物理的な根拠となります。三角比を用いる方法も、成分分解を用いる方法も、この「合力がゼロ」というベクトル方程式を異なる数学的手法で解いているに過ぎません。
  • クーロンの法則の選択:
    • 選定理由: (2)では、(1)で求めた「静電気力 \(F\)」と、求めたい未知数である「電気量 \(q\)」を関係づける必要があります。この2つの物理量を結びつける法則は、高校物理の範囲ではクーロンの法則以外にありません。
    • 適用根拠: クーロンの法則は、点とみなせる荷電粒子間に働く力を記述する基本法則です。問題の小球は、その間の距離に比べて十分に小さいとみなせるため、「点電荷」として扱うことができ、クーロンの法則を適用することが物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める: (1)の別解のように、いきなり \(mg = 0.50 \times 10 = 5.0\) と計算するのではなく、まずは \(F = mg \tan 45^\circ\) のように、文字式の関係を導き出すことを推奨します。これにより、物理的な関係性(この場合は \(F\) と \(mg\) が等しいこと)が一目でわかり、検算が容易になります。計算の最終段階で初めて数値を代入することで、途中の計算ミスや丸め誤差のリスクを減らせます。
  • 平方根と指数の計算を分離する: (2)で \(q^2 = 1.0 \times 10^{-10}\) を計算した後、\(q\) を求める際には、\(\sqrt{1.0 \times 10^{-10}}\) を「係数部分の平方根 \(\sqrt{1.0}\)」と「指数部分の平方根 \(\sqrt{10^{-10}}\)」に分けて考えます。指数部分の平方根は、指数を \(1/2\) 倍することに等しい(\((10^{-10})^{1/2} = 10^{-5}\))ので、このように分離して計算すると、複雑な指数の計算ミスを防げます。
  • 単位による検算: 式を立てた後、その両辺の単位が一致しているかを確認する習慣をつけましょう。例えば、(2)で \(q^2 = \displaystyle\frac{F r^2}{k}\) という式を立てたとき、右辺の単位は \([\text{N}] \cdot [\text{m}]^2 / ([\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2]) = [\text{C}^2]\) となり、左辺の \(q^2\) の単位と一致します。この簡単なチェックで、式の立て間違いを効果的に防ぐことができます。

基本例題69 クーロンの法則・電場の強さ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 電場ベクトルを成分分解して合成する解法
      • 模範解答が、2つの電場ベクトルの合成を、図形の対称性を利用して行うのに対し、別解では各電場ベクトルをx成分とy成分に分解し、成分ごとに足し合わせるという、より機械的で汎用性の高いアプローチを取ります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: ベクトルを成分で扱う方法は、図形の対称性が利用できない、より複雑な電荷配置の問題にも対応できる非常に強力な基本戦術です。この経験は応用力を高めます。
    • 物理的本質の深化: 「電場の重ね合わせの原理」が、結局は「各成分の和を計算すること」と等価であることを具体的に体験でき、理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「点電荷が作る電場と重ね合わせの原理」です。クーロンの法則から発展した「電場」という概念を理解し、複数の電荷が存在する場合に、それらが作る電場をベクトルとして正しく合成できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. クーロンの法則: 2つの点電荷間にはたらく静電気力の大きさを計算する基本法則です。
  2. 電場の定義: 電荷が周囲の空間に作る「場」であり、その点に\(+1 \, \text{C}\)の試験電荷を置いたときにはたらく静電気力として定義されます。大きさは \(E = k \displaystyle\frac{|q|}{r^2}\) で、向きは正電荷なら遠ざかる向き、負電荷なら近づく向きです。
  3. 電場の重ね合わせの原理: ある点における電場は、それぞれの電荷が単独でその点に作る電場の「ベクトル和」で与えられます。単なる大きさの足し算ではない点に注意が必要です。
  4. 幾何学的な計算: 電荷から対象点までの距離や、ベクトルのなす角度を、図形(三平方の定理や三角比)から正しく求める能力が不可欠です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、クーロンの法則の公式に、2つの電荷の大きさとその間の距離を直接代入して、静電気力の大きさを計算します。
  2. (2)では、まず点Aの電荷が点Cに作る電場 \(\vec{E}_A\) と、点Bの電荷が点Cに作る電場 \(\vec{E}_B\) の大きさと向きをそれぞれ求めます。次に、重ね合わせの原理に従って、この2つのベクトルを合成(ベクトル和 \(\vec{E}_C = \vec{E}_A + \vec{E}_B\))し、最終的な電場の強さと向きを決定します。

問(1)

思考の道筋とポイント
2つの点電荷、\(+q\)と\(-q\)の間にはたらく静電気力の大きさを求める問題です。これはクーロンの法則を直接適用する基本的な設問です。力の大きさは、電荷の大きさの積に比例し、距離の2乗に反比例します。
この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則の公式 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) を正しく覚えていること。
  • 問題文から、電荷が \(q_1 = +q\)、\(q_2 = -q\) であり、距離が \(r = 2a\) であることを正確に読み取ること。
  • 距離の2乗を計算する際に、\((2a)^2 = 4a^2\) と正しく展開すること。

具体的な解説と立式
クーロンの法則によれば、2つの点電荷 \(q_1\), \(q_2\) が距離 \(r\) だけ離れているとき、それらの間にはたらく静電気力の大きさ \(F\) は次式で与えられます。
$$ F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2} $$
この問題では、\(q_1 = +q\)、\(q_2 = -q\)、距離 \(r = 2a\) なので、これらを代入します。
$$ F = k \frac{|(+q)(-q)|}{(2a)^2} $$

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

上記で立式した式を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= k \frac{|-q^2|}{(2a)^2} \\[2.0ex] &= k \frac{q^2}{4a^2}
\end{aligned}
$$
この力は、異符号の電荷間にはたらくため、引力となります。

この設問の平易な説明

この問題は、電気を帯びた2つの粒(小球AとB)が、お互いにどれくらいの力で引き合っているかを計算するものです。物理学には「クーロンの法則」という、電気の量と距離から力の大きさを計算するための専用の公式があります。この公式に、問題で与えられた電気の量(\(q\))と距離(\(2a\))をそのまま当てはめるだけで、答えを求めることができます。

結論と吟味

2つの小球間にはたらく静電気力の大きさは \(k \displaystyle\frac{q^2}{4a^2}\) となります。これはクーロンの法則を正しく適用した結果であり、物理的に妥当です。

解答 (1) \(k \displaystyle\frac{q^2}{4a^2}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
点Cにおける電場を求める問題です。電場はベクトル量なので、大きさと向きの両方を考える必要があります。重ね合わせの原理により、点Cの電場 \(\vec{E}_C\) は、点Aの電荷が作る電場 \(\vec{E}_A\) と点Bの電荷が作る電場 \(\vec{E}_B\) のベクトル和 (\(\vec{E}_C = \vec{E}_A + \vec{E}_B\)) として求められます。
手順としては、

  1. AからC、BからCまでの距離を求める。
  2. \(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) の大きさと向きをそれぞれ求める。
  3. 2つのベクトルを合成して \(\vec{E}_C\) の大きさと向きを求める。

という流れになります。
この設問における重要なポイント

  • 電場の重ね合わせの原理は「ベクトル和」であることを理解している。
  • 正電荷は自身から遠ざかる向き、負電荷は自身に近づく向きに電場を作ることを理解している。
  • 図形の対称性に着目し、ベクトルの合成を効率的に行う。

具体的な解説と立式
まず、点A, Bから点Cまでの距離を求めます。点Cは線分ABの垂直二等分線上にあるので、\(\triangle \text{OAC}\)(OはABの中点)は直角三角形です。三平方の定理より、距離ACは、
$$
\begin{aligned}
\text{AC} &= \sqrt{\text{OA}^2 + \text{OC}^2} \\[2.0ex] &= \sqrt{a^2 + a^2} \\[2.0ex] &= \sqrt{2}a
\end{aligned}
$$
同様に、距離BCも \(\text{BC} = \sqrt{2}a\) となります。

次に、点Aの電荷 \(+q\) が点Cに作る電場 \(\vec{E}_A\) と、点Bの電荷 \(-q\) が点Cに作る電場 \(\vec{E}_B\) の大きさを求めます。
$$
\begin{aligned}
|\vec{E}_A| &= k \frac{q}{(\text{AC})^2} \\[2.0ex] &= k \frac{q}{(\sqrt{2}a)^2} \\[2.0ex] &= k \frac{q}{2a^2}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
|\vec{E}_B| &= k \frac{|-q|}{(\text{BC})^2} \\[2.0ex] &= k \frac{q}{(\sqrt{2}a)^2} \\[2.0ex] &= k \frac{q}{2a^2}
\end{aligned}
$$
よって、\(|\vec{E}_A| = |\vec{E}_B|\) です。
\(\vec{E}_A\) の向きはAからCへ向かう向き、\(\vec{E}_B\) の向きはCからBへ向かう向きです。

これらのベクトルを合成します。図からわかるように、\(\triangle \text{OAC}\) と \(\triangle \text{OBC}\) が合同な直角二等辺三角形であるため、\(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) がx軸の正の向きとなす角は、ともに \(45^\circ\) となります。
合成電場 \(\vec{E}_C\) のy成分(x軸に垂直な成分)は、\(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) のy成分が逆向きで同じ大きさのため打ち消し合います。x成分(x軸に平行な成分)は同じ向きなので足し合わされます。
$$ E_C = |\vec{E}_A| \cos 45^\circ + |\vec{E}_B| \cos 45^\circ $$
\(|\vec{E}_A| = |\vec{E}_B|\) なので、
$$ E_C = 2 |\vec{E}_A| \cos 45^\circ $$

使用した物理公式

  • 電場の定義: \(E = k \displaystyle\frac{|q|}{r^2}\)
  • 電場の重ね合わせの原理
  • 三平方の定理、三角比
計算過程

上記で立式した \(E_C = 2 |\vec{E}_A| \cos 45^\circ\) に、\(|\vec{E}_A| = k \displaystyle\frac{q}{2a^2}\) と \(\cos 45^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
E_C &= 2 \left( k \frac{q}{2a^2} \right) \times \frac{1}{\sqrt{2}} \\[2.0ex] &= \frac{kq}{a^2} \times \frac{1}{\sqrt{2}} \\[2.0ex] &= \frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}
\end{aligned}
$$
向きは、y成分が打ち消し合った結果、x軸の正の向きとなります。

この設問の平易な説明

点Cに、もし\(+1\,\text{C}\)のプラスの電気を持つ粒を置いたら、どちら向きにどれくらいの力を受けるか、を考えるのがこの問題です。
まず、Aにあるプラスの電気からは、右斜め上に押されます(\(\vec{E}_A\))。次に、Bにあるマイナスの電気からは、右斜め下に引っ張られます(\(\vec{E}_B\))。
この「押される力」と「引っ張られる力」を合成するとどうなるでしょう?図形の形がきれいな対称形なので、上下方向の力はちょうど打ち消し合ってゼロになります。一方で、右向きの力は両方とも同じ向きなので、合わさって強くなります。この残った右向きの力の大きさを計算するのがゴールです。

結論と吟味

点Cでの電場の強さは \(\displaystyle\frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}\) で、向きはx軸の正の向きとなります。対称的な配置の電荷が作る電場を考える典型的な問題であり、ベクトル合成の結果として特定の成分が消えるという点は物理的に妥当です。

解答 (2) 強さ: \(\displaystyle\frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}\), 向き: x軸の正の向き
別解: 電場ベクトルを成分分解して合成する解法

思考の道筋とポイント
主たる解法が図形の対称性を利用してベクトルを合成したのに対し、この別解では、より機械的に計算を進めるアプローチを取ります。各電荷が作る電場ベクトル \(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) を、それぞれx成分とy成分に分解し、成分ごとに足し合わせることで合成電場 \(\vec{E}_C\) を求めます。この方法は、どんな配置の電荷に対しても適用できる汎用性の高い手法です。
この設問における重要なポイント

  • 座標系を明確に設定する(例:ABの中点を原点Oとする)。
  • 各電場ベクトルの大きさと向きから、そのx成分とy成分を三角比を用いて正しく計算する。
  • x成分同士、y成分同士をそれぞれ足し合わせて、合成ベクトルの成分を求める。
  • 最終的に、合成ベクトルの成分から、その大きさと向きを求める。

具体的な解説と立式
線分ABの中点を原点O(0, 0)とする座標系を考えます。このとき、A(-a, 0), B(a, 0), C(0, a)となります。
電場 \(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) の大きさは、主たる解法と同様に \(|\vec{E}_A| = |\vec{E}_B| = k \displaystyle\frac{q}{2a^2}\) です。
また、\(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) がx軸の正の向きとなす角は、それぞれ \(45^\circ\), \(-45^\circ\) です。

\(\vec{E}_A\) の成分を求めます。
x成分: \(E_{A,x} = |\vec{E}_A| \cos 45^\circ\)
y成分: \(E_{A,y} = |\vec{E}_A| \sin 45^\circ\)

\(\vec{E}_B\) の成分を求めます。
x成分: \(E_{B,x} = |\vec{E}_B| \cos(-45^\circ) = |\vec{E}_B| \cos 45^\circ\)
y成分: \(E_{B,y} = |\vec{E}_B| \sin(-45^\circ) = -|\vec{E}_B| \sin 45^\circ\)

合成電場 \(\vec{E}_C\) の各成分は、これらの和となります。
x成分: \(E_{C,x} = E_{A,x} + E_{B,x}\)
y成分: \(E_{C,y} = E_{A,y} + E_{B,y}\)

使用した物理公式

  • 電場の定義: \(E = k \displaystyle\frac{|q|}{r^2}\)
  • ベクトルの成分分解と合成
計算過程

各成分を具体的に計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{C,x} &= E_{A,x} + E_{B,x} \\[2.0ex] &= |\vec{E}_A| \cos 45^\circ + |\vec{E}_B| \cos 45^\circ \\[2.0ex] &= 2 |\vec{E}_A| \cos 45^\circ \\[2.0ex] &= 2 \left( k \frac{q}{2a^2} \right) \times \frac{1}{\sqrt{2}} \\[2.0ex] &= \frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
E_{C,y} &= E_{A,y} + E_{B,y} \\[2.0ex] &= |\vec{E}_A| \sin 45^\circ – |\vec{E}_B| \sin 45^\circ \\[2.0ex] &= 0
\end{aligned}
$$
(なぜなら \(|\vec{E}_A| = |\vec{E}_B|\))

したがって、合成電場 \(\vec{E}_C\) はx成分のみを持ち、その大きさは \(E_C = E_{C,x} = \displaystyle\frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}\) となります。向きはx軸の正の向きです。

この設問の平易な説明

主たる解法とは少し違う考え方をしてみましょう。Aが作る「右斜め上向き」の電場と、Bが作る「右斜め下向き」の電場を、それぞれ「横方向(x)の部品」と「縦方向(y)の部品」に分解します。
Aが作る電場:(右向きの部品) + (上向きの部品)
Bが作る電場:(右向きの部品) + (下向きの部品)
これらを全部足し合わせると、Aの「上向きの部品」とBの「下向きの部品」は大きさが同じで向きが真逆なので、きれいに打ち消し合います。残るのは、AとBが作った2つの「右向きの部品」だけです。この2つを足し合わせたものが、最終的な電場の強さと向きになります。

結論と吟味

電場の強さは \(\displaystyle\frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}\)、向きはx軸の正の向きとなり、主たる解法と完全に一致しました。この成分分解によるアプローチは、図形的なひらめきに頼らず、手順通りに計算を進めることで答えにたどり着けるため、非常に汎用性が高い方法です。

解答 (2) 強さ: \(\displaystyle\frac{\sqrt{2}kq}{2a^2}\), 向き: x軸の正の向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電場の重ね合わせの原理:
    • 核心: この問題の根幹は、「複数の電荷が存在するとき、ある点での電場は、各電荷が単独でその点に作る電場を、ベクトルとして足し合わせたものになる」という「重ね合わせの原理」を理解し、適用することです。
    • 理解のポイント:
      • 電場はベクトル: 電場には大きさと向きがあります。したがって、足し算は単純なスカラーの和ではなく、ベクトルの和(平行四辺形の法則や成分ごとの和)で行う必要があります。
      • 個別に考えて合成する: 複雑な状況でも、まずは「電荷AがCに作る電場は?」「電荷BがCに作る電場は?」と一つずつ個別に考え、最後にそれらを合成するという思考プロセスが重要です。
  • 電場の定義と性質:
    • 核心: 「電場とは、\(+1 \, \text{C}\)の試験電荷を置いたときに受ける静電気力である」という定義を正確に理解していることが、向きを正しく判断する上で不可欠です。
    • 理解のポイント:
      • 力の向き: 正電荷(\(+q\))が作る電場は、\(+1 \, \text{C}\)が反発される向き(電荷から遠ざかる向き)です。負電荷(\(-q\))が作る電場は、\(+1 \, \text{C}\)が引きつけられる向き(電荷に近づく向き)です。このルールを機械的に適用できるようにすることが大切です。
      • 力の大きさ: 電場の大きさは \(E = k \displaystyle\frac{|q|}{r^2}\) で計算されます。クーロンの法則 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) と形が似ていますが、電荷が一つである点が異なります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電気双極子が作る電場: 本問のように、大きさが等しく符号が逆の2つの電荷(電気双極子)が作る電場を問う問題は頻出です。軸上や垂直二等分線上など、異なる点での電場を計算させられることがあります。
    • 正三角形や正方形の頂点の電荷: 正三角形や正方形の頂点に電荷を配置し、中心や他の頂点での電場を求める問題。この場合も、各電荷が作る電場を個別に求め、ベクトル合成するという基本方針は同じです。図形の対称性を見抜くことが、計算を簡略化する鍵となります。
    • 電位を求める問題: 同じ電荷配置で、点Cでの「電位」を問う問題。電位はスカラー量なので、向きを考える必要がなく、各電荷が作る電位 \(V = k \displaystyle\frac{q}{r}\) を単純に足し合わせるだけで済みます。電場(ベクトル)と電位(スカラー)の扱いの違いを明確に区別することが重要です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 座標と幾何学の確認: まず、各電荷の位置と、電場を求めたい点の位置関係を正確に把握します。三平方の定理や三角比を用いて、必要な距離や角度を計算する準備をします。
    2. 各電場ベクトルの図示: 各電荷が、対象点にどのような向きの電場を作るかを、矢印で正確に図示します。この段階で向きを間違えると、以降の計算がすべて無駄になります。
    3. 対称性の有無を判断: 図示されたベクトルを見て、対称性がないかを確認します。もし対称性があれば、特定の成分が打ち消し合う可能性が高く、計算が大幅に楽になります(模範解答のアプローチ)。
    4. 計算方法の選択: 対称性が見つかれば、それを利用したベクトル合成が効率的です。対称性がない、または複雑で分かりにくい場合は、機械的に成分分解して計算する別解のアプローチが確実です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ベクトル和とスカラー和の混同:
    • 誤解: 電場の強さを求めるときに、各電場の大きさ \(|\vec{E}_A|\) と \(|\vec{E}_B|\) を単純に足してしまう。
    • 対策: 「電場はベクトル量である」ということを常に意識し、「重ね合わせ=ベクトル和」と肝に銘じましょう。必ずベクトルを図示し、向きを考慮した合成(平行四辺形を描くか、成分に分解する)を行う癖をつけます。
  • 距離 \(r\) の2乗忘れ・間違い:
    • 誤解: 電場の公式 \(E = k \displaystyle\frac{|q|}{r^2}\) で、距離 \(r\) を2乗し忘れる、または(1)の距離 \(2a\) を使ってしまう。
    • 対策: (2)で考えるべき距離は「各電荷から点Cまでの距離」(\(\sqrt{2}a\))です。公式を適用する際は、必ず「どの電荷」と「どの点」の間の話なのかを明確にし、その都度正しい距離を確認するステップを踏むことが重要です。また、\(( \sqrt{2}a )^2 = 2a^2\) のような平方の計算を慎重に行いましょう。
  • 電場の向きの間違い:
    • 誤解: 正電荷と負電荷が作る電場の向きを混同する。
    • 対策: 「点Cにプラスの試験電荷を置いたらどうなる?」と毎回自問自答するのが最も確実な対策です。Aの\(+q\)からは反発して離れる向き、Bの\(-q\)には引き寄せられて近づく向き、という物理現象をイメージすることで、向きの間違いを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • クーロンの法則 (1):
    • 選定理由: 設問が「2つの小球間にはたらく静電気力の大きさ」を直接問うているため、これを定義するクーロンの法則を選択するのは自明です。
    • 適用根拠: 問題文で「小球の半径はaに比べて非常に小さい」とあり、小球を「点電荷」として扱えることが保証されています。これにより、点電荷間の力を記述するクーロンの法則を正確に適用できます。
  • 電場の重ね合わせの原理 (2):
    • 選定理由: 複数の電荷源(AとB)が存在する空間のある一点(C)での電場を求める、という状況設定そのものが、この原理の適用を要求しています。
    • 適用根拠: 電磁気学において、電場(や磁場)は重ね合わせの原理が成り立つ線形な系です。これは、一つの電荷が作る電場は、他の電荷の存在によって影響を受けない(歪められない)という実験事実に基づいています。したがって、各電荷が作る電場を独立に計算し、それらを後からベクトル的に足し合わせるという操作が物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の整理を優先する: (2)の計算で、\(|\vec{E}_A| = k \displaystyle\frac{q}{2a^2}\) をすぐに具体的な数値のように扱わず、まずは \(|\vec{E}_A|\) という記号のまま \(E_C = 2 |\vec{E}_A| \cos 45^\circ\) という関係式を導きましょう。最後に具体的な式を代入することで、見通しが良くなり、計算ミスが減ります。
  • 三角比の値を正確に覚える: \(45^\circ\) や \(30^\circ\), \(60^\circ\) といった頻出の角度に対する \(\sin, \cos, \tan\) の値は、瞬時に正確に引き出せるようにしておく必要があります。特に \(\cos 45^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}} = \displaystyle\frac{\sqrt{2}}{2}\) のように、有理化された形も覚えておくと計算がスムーズになる場合があります。
  • ベクトル図を丁寧に描く: (2)のようなベクトルの合成問題では、フリーハンドでも良いので、ベクトルの向きや角度、大きさの大小関係をできるだけ正確に反映した図を描くことが非常に有効です。図を描くことで、y成分が打ち消し合うことや、合成ベクトルの向きがx軸方向になることなどが視覚的に理解でき、計算ミスや方針の間違いを未然に防ぐことができます。

基本例題70 一様な電場内での陽イオンの運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: グラフから直接電位を読み取る解法
      • 模範解答が(1)で求めた電場の強さEを用いて \(V_{AB} = Ed’\) と計算するのに対し、別解では問題のV-xグラフから点Aと点Bの電位を直接読み取り、その差を計算します。
    • 設問(4)の別解: 運動方程式と等加速度直線運動の公式を用いる解法
      • 模範解答が「エネルギーと仕事の関係」を用いて運動エネルギーを求めるのに対し、別解ではまず(3)で求めた力Fからイオンの加速度を計算し、次に等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いて終端速度を求め、最後に運動エネルギーの定義式 \(K = \frac{1}{2}mv^2\) に代入するという、力学の基本に忠実なアプローチを取ります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: (2)の別解は、電位差の定義そのものに立ち返るアプローチであり、グラフから物理量を読み取る能力を養います。(4)の別解は、電磁気的な現象(イオンの加速)を、力学の言葉(運動方程式)で記述し直す経験となり、分野横断的な理解を深めます。「電場がした仕事」が「運動エネルギーの変化」に等しいという関係が、運動方程式から自然に導かれることを体感できます。
    • 思考の柔軟性向上: 一つの問題をエネルギーの視点と力の視点の両方から解くことで、問題に応じてより効率的な解法を選択する能力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • (2)の別解は、主たる解法と完全に一致する答えを導きます。(4)の別解は、質量が与えられていないため最終的な数値は出せませんが、エネルギーと仕事の関係式と等価な式を導出する過程を示します。

この問題のテーマは「一様な電場と電位、および荷電粒子の運動」です。V-xグラフから電場と電位の情報を読み取り、それらの関係式を正しく利用して、電場中に置かれた荷電粒子にはたらく力やエネルギーの変化を計算できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 一様な電場と電位の関係: V-xグラフの傾きが電場の強さ \(E\) に対応すること(より正確には \(E = – \frac{\Delta V}{\Delta x}\))、また、電位差 \(V\) と距離 \(d\) の間に \(V=Ed\) の関係が成り立つことを理解していること。
  2. 電場の向き: 電場は電位の高い方から低い方へ向かう、という基本的な性質を理解していること。
  3. 電場中の荷電粒子にはたらく力: 電荷 \(q\) の粒子が電場 \(E\) から受ける力は \(F=qE\) で与えられること。
  4. 仕事とエネルギーの関係: 電場が電荷 \(q\) にする仕事は \(W=qV\)(\(V\)は電位差)で与えられ、この仕事が荷電粒子の運動エネルギーの変化に等しいこと(エネルギー保存則)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、V-xグラフの傾きから一様な電場の強さを計算し、電位が減少する向きから電場の向きを判断します。
  2. (2)では、(1)で求めた電場の強さとAB間の距離から、公式 \(V=Ed\) を用いて電位差を求めます。
  3. (3)では、(1)で求めた電場の強さ \(E\) と与えられた電気量 \(q\) を用いて、公式 \(F=qE\) から力の大きさを計算します。
  4. (4)では、(2)で求めた電位差 \(V_{AB}\) を用いて、電場がイオンにした仕事 \(W=qV_{AB}\) を計算し、これが運動エネルギーの増加分に等しいことから、点Bでの運動エネルギーを求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
一様な電場中では、電場の強さ \(E\)、電位差 \(V\)、距離 \(d\) の間に \(V=Ed\) という関係があります。問題のV-xグラフは直線であり、これは電場が一様であることを示しています。このグラフ全体を使って、電場の強さ \(E\) を求めることができます。また、電場の向きは「電位が高い方から低い方へ」という原則から判断します。
この設問における重要なポイント

  • V-xグラフが直線であることから、電場が「一様」であると読み取ること。
  • 一様な電場における公式 \(E = \frac{V}{d}\) を適用できること。
  • グラフの全体(\(x=0\) から \(x=0.060\) まで)を利用して、電位差 \(V=30 \, \text{V}\) と距離 \(d=0.060 \, \text{m}\) を読み取ること。
  • 電場の向きは、電位が減少する向き(x軸の正の向き)であると判断すること。

具体的な解説と立式
V-xグラフは傾きが一定の直線なので、電場は一様です。したがって、点Aでも点Bでも電場の強さと向きは同じです。
$$ E_A = E_B = E $$
一様な電場と電位の関係式 \(V=Ed\) を \(E\) について解くと、
$$ E = \frac{V}{d} $$
グラフから、距離 \(d = 0.060 \, \text{m}\) の区間で、電位差は \(V = 30 – 0 = 30 \, \text{V}\) です。これらの値を式に代入します。

次に、電場の向きを考えます。グラフから、x座標が大きくなるにつれて電位 \(V\) が減少していることがわかります。電場は電位の高い方から低い方へ向かうので、電場の向きはx軸の正の向きとなります。

使用した物理公式

  • 一様な電場と電位の関係: \(V=Ed\)
計算過程

上記で立てた式に数値を代入して、電場の強さ \(E\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{30}{0.060} \\[2.0ex] &= \frac{3000}{6} \\[2.0ex] &= 500 \\[2.0ex] &= 5.0 \times 10^2 \, [\text{V/m}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

このグラフは、場所(x座標)とその場所の「電気的な高さ(電位)」の関係を表しています。坂道のように、右に行くほど高さが低くなっていますね。物理の世界では、この「坂の傾き」が「電場の強さ」に対応します。グラフ全体を見ると、\(0.060 \, \text{m}\) 進む間に高さが \(30 \, \text{V}\) 下がっているので、その傾き(電場の強さ)を計算します。また、坂を転がるボールのように、電気も高さが高い方から低い方へ流れるような力が働きます。この力の向きが「電場の向き」なので、グラフが下がっているx軸の正の向きが電場の向きになります。

結論と吟味

点Aと点Bにおける電場の強さはともに \(5.0 \times 10^2 \, \text{V/m}\) で、向きはx軸の正の向きです。V-xグラフの傾きの絶対値が電場の強さに対応し、傾きが負であることから電場がx軸正の向きであることがわかり、物理的に妥当な結果です。

解答 (1) 強さ: \(5.0 \times 10^2 \, \text{V/m}\), 向き: x軸の正の向き

問(2)

思考の道筋とポイント
AB間の電位差 \(V_{AB}\) を求めます。電場は一様なので、(1)で求めた電場の強さ \(E\) と、AB間の距離 \(d’\) を用いて、公式 \(V=Ed\) から計算するのが模範解答のアプローチです。
この設問における重要なポイント

  • 一様な電場における公式 \(V=Ed\) を適用できること。
  • AB間の距離 \(d’\) を正しく計算すること (\(d’ = 0.040 – 0.020 = 0.020 \, \text{m}\))。

具体的な解説と立式
(1)より、電場は一様で、その強さは \(E = 5.0 \times 10^2 \, \text{V/m}\) です。
AB間の距離 \(d’\) は、
$$ d’ = 0.040 – 0.020 = 0.020 \, \text{m} $$
一様な電場と電位差の関係式 \(V=Ed\) を用いて、AB間の電位差 \(V_{AB}\) を求めます。
$$ V_{AB} = E d’ $$

使用した物理公式

  • 一様な電場と電位の関係: \(V=Ed\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
V_{AB} &= (5.0 \times 10^2) \times 0.020 \\[2.0ex] &= 500 \times 0.020 \\[2.0ex] &= 10 \, [\text{V}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

A地点とB地点の「電気的な高さ」の差を求める問題です。(1)で、この場所が傾き500の坂道であることがわかっているので、「高さの差」は「坂の傾き × 水平距離」で計算できます。AとBの間の距離は \(0.020 \, \text{m}\) なので、これに傾き500を掛けて、高さの差が10Vとわかります。

結論と吟味

AB間の電位差は \(10 \, \text{V}\) となります。

解答 (2) \(10 \, \text{V}\)
別解: グラフから直接電位を読み取る解法

思考の道筋とポイント
模範解答が電場 \(E\) を経由して計算したのに対し、この別解では、V-xグラフから直接、点Aと点Bの電位を読み取り、その差を計算します。これは電位差の定義に最も忠実なアプローチです。
この設問における重要なポイント

  • 電位差 \(V_{AB}\) は、点Aの電位 \(V_A\) と点Bの電位 \(V_B\) の差 \(|V_A – V_B|\) であると理解すること。
  • V-xグラフが直線(一次関数)であるため、比例計算によって任意の点の電位を求めることができること。

具体的な解説と立式
V-xグラフは、点(0, 30)と点(0.060, 0)を通る直線です。この直線の式は、傾きが \(\frac{0-30}{0.060-0} = -500\) なので、\(V(x) = -500x + 30\) と表せます。
この式を用いて、点A(\(x=0.020\))と点B(\(x=0.040\))の電位をそれぞれ求めます。
点Aの電位 \(V_A\):
$$ V_A = V(0.020) $$
点Bの電位 \(V_B\):
$$ V_B = V(0.040) $$
求める電位差 \(V_{AB}\) は、これらの差の絶対値です。
$$ V_{AB} = |V_A – V_B| $$

使用した物理公式

  • グラフの読み取り(一次関数)
計算過程

点Aと点Bの電位を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_A &= -500 \times 0.020 + 30 \\[2.0ex] &= -10 + 30 \\[2.0ex] &= 20 \, [\text{V}] \end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_B &= -500 \times 0.040 + 30 \\[2.0ex] &= -20 + 30 \\[2.0ex] &= 10 \, [\text{V}] \end{aligned}
$$
したがって、電位差 \(V_{AB}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{AB} &= |V_A – V_B| \\[2.0ex] &= |20 – 10| \\[2.0ex] &= 10 \, [\text{V}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

A地点とB地点の「電気的な高さ」の差を求める問題です。グラフをよく見ると、この坂道は一次関数(直線)なので、A地点の高さは20V、B地点の高さは10Vであることが直接計算できます。したがって、その高さの差は \(20 – 10 = 10 \, \text{V}\) となります。

結論と吟味

AB間の電位差は \(10 \, \text{V}\) となり、主たる解法と完全に一致します。グラフから直接情報を読み取るこの方法は、問題の本質をより直接的に捉えることができます。

解答 (2) \(10 \, \text{V}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
電場 \(E\) の中に置かれた電気量 \(q\) の荷電粒子が受ける力の大きさを求める問題です。これは基本公式 \(F=qE\) を適用するだけです。
この設問における重要なポイント

  • 公式 \(F=qE\) を正しく覚えていること。
  • (1)で求めた電場の強さ \(E\) と、問題文で与えられた電気量 \(q\) の値を代入すること。

具体的な解説と立式
電気量 \(q\) のイオンが、強さ \(E\) の電場から受ける力の大きさ \(F\) は、次式で与えられます。
$$ F = qE $$
この式に、\(q = 3.2 \times 10^{-19} \, \text{C}\) と、(1)で求めた \(E = 5.0 \times 10^2 \, \text{V/m}\) を代入します。

使用した物理公式

  • 電場から受ける力: \(F=qE\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
F &= (3.2 \times 10^{-19}) \times (5.0 \times 10^2) \\[2.0ex] &= (3.2 \times 5.0) \times (10^{-19} \times 10^2) \\[2.0ex] &= 16 \times 10^{-17} \\[2.0ex] &= 1.6 \times 10^{-16} \, [\text{N}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電気を帯びたイオンを電場(電気の坂道)に置くと、力を受けて動き出します。その力の大きさは、イオンが持つ電気の量 \(q\) と、電場の強さ(坂の傾き) \(E\) の掛け算で計算できる、という簡単な公式 \(F=qE\) があります。これに数値を当てはめるだけで答えが出ます。

結論と吟味

イオンが電場から受ける力の大きさは \(1.6 \times 10^{-16} \, \text{N}\) となります。基本公式を正しく適用した結果であり、妥当です。

解答 (3) \(1.6 \times 10^{-16} \, \text{N}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
点Aで静止していたイオンが、電場から力を受けて加速し、点Bに達したときの運動エネルギーを求める問題です。これは「仕事とエネルギーの関係」から解くのが最も効率的です。電場がイオンにした仕事が、そのままイオンの運動エネルギーの増加分となります。
この設問における重要なポイント

  • 「(電場がした仕事)=(運動エネルギーの変化)」というエネルギー保存則を理解していること。
  • 電場が電荷 \(q\) にする仕事は、電位差 \(V\) を用いて \(W=qV\) と表せることを知っていること。
  • (2)で求めたAB間の電位差 \(V_{AB}\) を用いること。

具体的な解説と立式
エネルギーと仕事の関係より、イオンの運動エネルギーの変化は、電場がイオンにした仕事に等しくなります。
$$ \Delta K = W $$
イオンは点Aで静止していたので、初めの運動エネルギーはゼロです。点Bでの運動エネルギーを \(K\) とすると、運動エネルギーの変化は \(\Delta K = K – 0 = K\) となります。
一方、電場が電気量 \(q\) のイオンを、電位差 \(V_{AB}\) のあるA点からB点まで運ぶときにする仕事 \(W\) は、
$$ W = qV_{AB} $$
したがって、次の関係式が成り立ちます。
$$ K = qV_{AB} $$

使用した物理公式

  • 仕事と運動エネルギーの関係: \(\Delta K = W\)
  • 電場がする仕事: \(W=qV\)
計算過程

上記で立式した \(K = qV_{AB}\) に、\(q = 3.2 \times 10^{-19} \, \text{C}\) と、(2)で求めた \(V_{AB} = 10 \, \text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
K &= (3.2 \times 10^{-19}) \times 10 \\[2.0ex] &= 3.2 \times 10^{-18} \, [\text{J}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

イオンは、A地点からB地点まで、電気の坂道を下ることでスピードアップします。このとき、どれくらい運動エネルギーが増えるかというと、それは「坂道がイオンにしてあげた仕事」の分だけ増えます。電気の坂道がする仕事は、「イオンの電気量 \(q\)」と「下った坂の高さの差(電位差) \(V_{AB}\)」の掛け算で簡単に計算できます。初めの運動エネルギーはゼロだったので、この仕事の量がそのままゴール地点Bでの運動エネルギーになります。

結論と吟味

イオンが点Bに達したときの運動エネルギーは \(3.2 \times 10^{-18} \, \text{J}\) となります。エネルギーの観点から問題を解くことで、途中の力や加速度を計算することなく、直接的に答えを導くことができました。

解答 (4) \(3.2 \times 10^{-18} \, \text{J}\)
別解: 運動方程式と等加速度直線運動の公式を用いる解法

思考の道筋とポイント
エネルギーではなく、力学の基本に立ち返って解くアプローチです。

  1. イオンにはたらく力 \(F\) は(3)で求まっています。この力は一定なので、イオンは等加速度直線運動をします。
  2. 運動方程式 \(F=ma\) を用いて、イオンの加速度 \(a\) を求めます。
  3. 等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いて、点Bに達したときの速さ \(v\) を求めます。
  4. 最後に、運動エネルギーの定義式 \(K = \frac{1}{2}mv^2\) に代入して \(K\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 電場中の荷電粒子の運動が、力学の法則(運動方程式、等加速度直線運動)で記述できることを理解している。
  • 各法則を段階的に適用し、最終的な答えに結びつける論理的な思考力。

具体的な解説と立式
イオンの質量を \(m\) とします。
(3)で求めた一定の力 \(F = qE\) を受けるので、イオンの加速度 \(a\) は運動方程式 \(F=ma\) より、
$$ a = \frac{F}{m} = \frac{qE}{m} $$
イオンは点Aで静止していたので初速度 \(v_0 = 0\) です。点Aから点Bまでの距離は \(d’ = 0.020 \, \text{m}\) です。点Bに達したときの速さを \(v\) とすると、等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ad’\) より、
$$ v^2 – 0^2 = 2 a d’ $$
よって、点Bでの運動エネルギー \(K\) は、
$$ K = \frac{1}{2}mv^2 $$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(F=ma\)
  • 等加速度直線運動の公式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
  • 運動エネルギーの定義: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

まず、\(v^2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v^2 &= 2ad’ \\[2.0ex] &= 2 \left( \frac{qE}{m} \right) d’
\end{aligned}
$$
これを運動エネルギーの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
K &= \frac{1}{2}m v^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2}m \left( 2 \frac{qE}{m} d’ \right) \\[2.0ex] &= qEd’
\end{aligned}
$$
ここで、\(V_{AB} = Ed’\) なので、
$$ K = qV_{AB} $$
これは主たる解法の出発点となった式と全く同じです。したがって、これ以降の計算は主たる解法と同じになり、
$$
\begin{aligned}
K &= (3.2 \times 10^{-19}) \times 10 \\[2.0ex] &= 3.2 \times 10^{-18} \, [\text{J}] \end{aligned}
$$
となります。

この設問の平易な説明

別の考え方をしてみましょう。まず、(3)で求めた力 \(F\) を使って、イオンの「加速度(スピードの増え方)」を計算します(\(a=F/m\))。次に、物理の公式を使って、「この加速度で \(0.020 \, \text{m}\) 進んだら、速さはどれくらいになるか」を計算します。最後に、その速さから運動エネルギー(\(K = \frac{1}{2}mv^2\))を計算します。この手順で計算を進めると、途中で質量 \(m\) がきれいに消去され、結局は主たる解法と同じ「\(K = qV_{AB}\)」という式にたどり着きます。

結論と吟味

力学の基本法則を段階的に適用することで、主たる解法である「仕事とエネルギーの関係」と同じ結論 \(K = qV_{AB}\) を導くことができました。これは、エネルギー保存則がニュートンの運動方程式から導かれる、より根源的な法則であることを示しています。異なる物理的視点から同じ結果が得られることは、物理法則の一貫性を示しており、理解を深める上で非常に有益です。

解答 (4) \(3.2 \times 10^{-18} \, \text{J}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 一様な電場における物理量の関係性:
    • 核心: この問題は、一様な電場という特殊な状況において、電場\(E\)、電位\(V\)、距離\(d\)、力\(F\)、仕事\(W\)、エネルギー\(K\)といった複数の物理量が、シンプルな関係式で相互に結びついていることを体系的に理解しているかを問うています。
    • 理解のポイント:
      • グラフと電場: V-xグラフが直線であることは、電場が「一様」であることを意味します。そして、その傾きの絶対値が電場の強さ \(E\) を与えます (\(E = |\frac{\Delta V}{\Delta x}|\))。
      • 電場と電位: 一様な電場 \(E\) と、電場の向きに沿った距離 \(d\) の間の電位差 \(V\) は、\(V=Ed\) という最も基本的な関係で結ばれます。
      • 電場と力: 電荷 \(q\) が電場 \(E\) から受ける力は \(F=qE\) です。電場が一定なので、この力も一定です。
      • 電位差と仕事(エネルギー): 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) のある区間を移動するときに電場がする仕事は \(W=qV\) であり、これが運動エネルギーの変化 \(\Delta K\) に等しくなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • V-xグラフが折れ線グラフの問題: 複数の領域で電場の強さが異なる問題。各直線部分について傾きを計算し、領域ごとの電場の強さを求めます。
    • 等電位線が描かれている問題: 地図の等高線のように、等電位線が描かれた図から電場を読み取る問題。電場は等電位線に垂直で、電位の高い方から低い方へ向かいます。電場の強さは、等電位線の間隔が狭いほど強くなります (\(E \approx \frac{\Delta V}{\Delta d}\))。
    • 斜方投射との融合問題: 一様な電場(例:鉛直下向き)の中で、荷電粒子を斜めに打ち出す問題。これは、重力下での放物運動と全く同じように解くことができます。水平方向は等速直線運動、鉛直方向は等加速度直線運動として扱います。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの形をまず見る: V-xグラフが与えられたら、まず直線か曲線かを確認します。直線なら「一様な電場」、曲線なら「場所によって強さが変わる電場」です。
    2. 傾きと向きを判断する: グラフの傾きから電場の強さを、電位が下がる方向から電場の向きを判断します。これは電場に関する最も基本的な情報です。
    3. エネルギーで解くか、力で解くか判断する: 荷電粒子の運動について問われた場合、「速さ」や「運動エネルギー」を直接問われたら、仕事とエネルギーの関係 (\(K=qV\)) を使うのが最も速く、計算も楽です。一方、「時間」や「加速度」が関わる問題であれば、力学的なアプローチ(\(F=qE\), 運動方程式)が必要になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電位と電位差の混同:
    • 誤解: 点Aの電位 \(V_A\) と、AB間の電位差 \(V_{AB}\) を混同してしまう。
    • 対策: 「電位」はある一点の「電気的な高さ」であり、基準点(この問題では \(x=0.060\))を0Vとして決まります。「電位差」は2点間の「高さの差」です。\(W=qV\) や \(V=Ed\) の \(V\) は「電位差」であると、定義を明確に区別して覚えましょう。
  • V-xグラフの傾きの符号と電場の向き:
    • 誤解: 傾きが負だから電場は負の向き、と短絡的に考えてしまう。
    • 対策: 電場の向きの定義は「電位が高い方から低い方へ」です。V-xグラフの傾きと電場の関係は、正確には \(E = -\frac{dV}{dx}\) です。つまり、傾きが負(右肩下がり)であることは、電場 \(E\) が正の向きであることを意味します。この関係をしっかり理解するか、「電位が下がる向きが電場の向き」という原則に毎回立ち返るようにしましょう。
  • 仕事の計算での符号ミス:
    • 誤解: 正電荷と負電荷の運動で、仕事の符号を間違える。
    • 対策: 電場がする仕事は、電荷が電場の向きに動いた(電位が下がった)場合に正となります。陽イオン(正電荷)が電位の低い方へ動けば、電場は正の仕事をし、運動エネルギーは増加します。もし電子(負電荷)が同じように動いた場合、電場から逆向きの力を受けるので、電場は負の仕事をし、運動エネルギーは減少します(外部から別の力が必要)。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(E = V/d\) の選択 (1):
    • 選定理由: V-xグラフから「一様な電場」であることが読み取れ、そのグラフから電位差 \(V\) と距離 \(d\) が直接読み取れるため、電場の強さ \(E\) を求めるにはこの公式が最も直接的です。
    • 適用根拠: この公式は、一様な電場 \(E\) を距離 \(d\) にわたって積分すると電位差 \(V\) になる (\(V = \int_0^d E \, dx = Ed\)) という、電場と電位の定義から導かれる関係です。グラフの傾きが一定であるという条件が、この公式の適用を正当化します。
  • \(F=qE\) の選択 (3):
    • 選定理由: 「電場から受ける力」を問われており、電荷 \(q\) と電場 \(E\) が分かっているため、これらを結びつける定義式である \(F=qE\) を選択します。
    • 適用根拠: 電場 \(E\) の定義そのものが「その場所に\(+1\,\text{C}\)の電荷を置いたときに受ける力」であるため、電荷 \(q\) の物体を置けば、その \(q\) 倍の力を受けるというのは定義から直結する論理です。
  • \(K=qV_{AB}\) の選択 (4):
    • 選定理由: 初速度がゼロで、最終的な「運動エネルギー」を求める問題です。途中の過程(時間や加速度)は不要なので、始点と終点の状態量(電位差)だけで結果が決まるエネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)を用いるのが最も効率的です。
    • 適用根拠: この関係式は、力学の仕事とエネルギーの関係 \(\Delta K = W\) と、電場がする仕事の定義 \(W=qV\) を組み合わせたものです。保存力である静電気力のみが仕事をする場合、その仕事は位置エネルギーの変化(\(\Delta U = -W\)、ここで \(U=qV\))に等しく、力学的エネルギー保存則 (\(\Delta K + \Delta U = 0\)) と等価な内容を表しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の換算を意識する: この問題では単位は[m], [V]で与えられていますが、もし[cm]などで与えられた場合は、計算前に必ずSI基本単位系([m], [kg], [s], [A]など)に変換する癖をつけましょう。
  • 指数の計算を丁寧に行う: (3)や(4)のように、\(10\)のべき乗(指数)を含む計算では、係数部分と指数部分を分けて計算するのが安全です。例: \((3.2 \times 10^{-19}) \times (5.0 \times 10^2) = (3.2 \times 5.0) \times (10^{-19} \times 10^2)\)。指数部分は足し算 (\(-19+2=-17\)) になることを落ち着いて確認します。
  • グラフの数値を正確に読み取る: グラフの軸の単位(V, m)と目盛りをしっかり確認します。特に、\(0.020\) のような小数点の位置や、\(3.2 \times 10^{-19}\) のような指数の部分を書き間違えないように、問題文と自分のノートを注意深く見比べることが重要です。

基本例題71 電場のする仕事

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等電位線と電場のする仕事」です。地図の等高線のように描かれた等電位線を正しく読み取り、電場(静電気力)が荷電粒子にする仕事を計算する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電場がする仕事の公式: 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) のある2点間を移動するとき、電場がする仕事 \(W\) は \(W=qV\) で与えられます。
  2. 電位差の定義: 仕事の公式における電位差 \(V\) は、始点の電位を \(V_{\text{始}}\)、終点の電位を \(V_{\text{終}}\) とすると、\(V = V_{\text{始}} – V_{\text{終}}\) で計算されます。
  3. 静電気力の保存性: 電場による力(静電気力)は保存力です。そのため、電場がする仕事は移動経路によらず、始点と終点の電位差のみで決まります。
  4. 等電位線の性質:
    • 等電位線上の点は、すべて同じ電位(電気的な高さ)です。
    • したがって、等電位線上を移動する際に電場がする仕事はゼロです。
    • 電場は、等電位線に対して常に垂直な向きにはたらきます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、図に示された等電位線の情報を元に、各点A, B, C, D, Eの電位を特定します。
  2. A→B, B→C, C→D, D→E の各区間について、始点と終点の電位差 \(V = V_{\text{始}} – V_{\text{終}}\) を計算します。
  3. 各区間の電位差を、仕事の公式 \(W=qV\) に代入して、電場がする仕事をそれぞれ算出します。

各区間での仕事

思考の道筋とポイント
この問題は、A→B、B→C、C→D、D→Eの4つの区間における仕事をそれぞれ求めるものです。すべての計算の基本となるのは、仕事の公式 \(W=qV\) です。まずは、各区間の始点と終点の電位差 \(V\) を、図の等電位線から正確に読み取ることが最初のステップとなります。
この設問における重要なポイント

  • 電位の基準設定: 下の極板が正(+)に帯電しているため、高電位側となります。等電位線は10V間隔で示されているので、各線が示す電位の値を特定します。
  • 電位差の計算: 仕事の公式 \(W = q(V_{\text{始}} – V_{\text{終}})\) に従って、各区間の始点と終点の電位の差を計算します。電位が下がる(高電位→低電位)移動では仕事は正、電位が上がる(低電位→高電位)移動では仕事は負になります。
  • 等電位線上の移動: B→Cのように、同じ等電位線上を移動する場合、始点と終点の電位が等しいため電位差はゼロとなり、仕事もゼロになります。

具体的な解説と立式
電場がする仕事 \(W\) は、電荷 \(q\) と、移動の始点と終点の電位差 \(V = V_{\text{始}} – V_{\text{終}}\) を用いて、次のように表されます。
$$ W = qV = q(V_{\text{始}} – V_{\text{終}}) $$
まず、図から各区間の電位差を読み取ります。下の極板が高電位、上の極板が低電位です。等電位線は10V間隔なので、隣り合う等電位線を1本横切るごとに電位が10V変化します。

  • 区間 A→B: 点Aから点Bへは、電位が低くなる方向に等電位線を3本横切っています。したがって、電位差は、
    $$ V_{AB} = V_A – V_B = 3 \times 10 = 30 \, [\text{V}] $$
  • 区間 B→C: 点Bと点Cは同じ等電位線上にあります。したがって、電位差はゼロです。
    $$ V_{BC} = V_B – V_C = 0 \, [\text{V}] $$
  • 区間 C→D: 点Cから点Dへは、電位が低くなる方向に等電位線を4本横切っています。
    $$ V_{CD} = V_C – V_D = 4 \times 10 = 40 \, [\text{V}] $$
  • 区間 D→E: 点Dから点Eへは、電位が高くなる方向に等電位線を1本横切っています。
    $$ V_{DE} = V_D – V_E = -1 \times 10 = -10 \, [\text{V}] $$

これらの電位差を、電荷 \(q = +3.2 \times 10^{-15} \, \text{C}\) とともに仕事の公式に代入します。

使用した物理公式

  • 電場がする仕事: \(W = qV = q(V_{\text{始}} – V_{\text{終}})\)
計算過程

各区間の仕事を計算します。

A→Bの仕事 \(W_{AB}\):
$$
\begin{aligned}
W_{AB} &= q V_{AB} \\[2.0ex] &= (3.2 \times 10^{-15}) \times 30 \\[2.0ex] &= 96 \times 10^{-15} \\[2.0ex] &= 9.6 \times 10^{-14} \, [\text{J}] \end{aligned}
$$
B→Cの仕事 \(W_{BC}\):
$$
\begin{aligned}
W_{BC} &= q V_{BC} \\[2.0ex] &= (3.2 \times 10^{-15}) \times 0 \\[2.0ex] &= 0 \, [\text{J}] \end{aligned}
$$
C→Dの仕事 \(W_{CD}\):
$$
\begin{aligned}
W_{CD} &= q V_{CD} \\[2.0ex] &= (3.2 \times 10^{-15}) \times 40 \\[2.0ex] &= 128 \times 10^{-15} \\[2.0ex] &= 1.28 \times 10^{-13} \, [\text{J}] \end{aligned}
$$
有効数字を2桁に丸めると、\(1.3 \times 10^{-13} \, \text{J}\) となります。

D→Eの仕事 \(W_{DE}\):
$$
\begin{aligned}
W_{DE} &= q V_{DE} \\[2.0ex] &= (3.2 \times 10^{-15}) \times (-10) \\[2.0ex] &= -32 \times 10^{-15} \\[2.0ex] &= -3.2 \times 10^{-14} \, [\text{J}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この図を、電気的な高さを示した「等高線地図」だと考えてみましょう。下のプラスの板がある方が高地で、上に行くほど低地になっています。等高線は1本あたり10mの高さの違いを表します。
電場がする仕事は、「運ぶ荷物(電荷)の重さ × 下った高さ」で計算できます。

  • A→B: 荷物を運んだら、等高線を3本下りました。つまり30m下ったので、仕事はプラスです。
  • B→C: 同じ高さの等高線上を移動したので、高さは変わらず、仕事はゼロです。
  • C→D: 等高線を4本下りました。40m下ったので、仕事はプラスです。
  • D→E: 今度は等高線を1本登りました。10m登ったので、坂に逆らった分、仕事はマイナスになります。
結論と吟味

各区間で電場がする仕事は以下の通りです。

  • \(W_{AB} = 9.6 \times 10^{-14} \, \text{J}\)
  • \(W_{BC} = 0 \, \text{J}\)
  • \(W_{CD} \approx 1.3 \times 10^{-13} \, \text{J}\)
  • \(W_{DE} = -3.2 \times 10^{-14} \, \text{J}\)

これらの結果は、等電位線の図を正しく読み取り、仕事の公式を適用することで得られます。特に、仕事の符号が電位の変化(上がるか下がるか)によって決まる点が重要です。

解答 \(W_{AB} = 9.6 \times 10^{-14} \, \text{J}\), \(W_{BC} = 0 \, \text{J}\), \(W_{CD} = 1.3 \times 10^{-13} \, \text{J}\), \(W_{DE} = -3.2 \times 10^{-14} \, \text{J}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 静電気力による仕事と電位:
    • 核心: この問題の根幹は、「静電気力がする仕事は、移動経路によらず、始点と終点の電位差だけで決まる」という、静電気力が保存力であることの最も重要な性質を理解しているかどうかにあります。
    • 理解のポイント:
      • 公式 \(W=qV\): この公式が全てを支配しています。仕事\(W\)を計算するために必要なのは、運ぶ電荷\(q\)と、始点と終点の電位差\(V\)の2つだけです。途中でどれだけ曲がりくねった経路を通っても、仕事の値は変わりません。
      • 電位差の定義: 公式の\(V\)は、より正確には \(V = V_{\text{始}} – V_{\text{終}}\) です。電位が下がる(\(V_{\text{始}} > V_{\text{終}}\))移動では、電場は正の仕事をします。逆に電位が上がる(\(V_{\text{始}} < V_{\text{終}}\))移動では、電場は負の仕事をします。
  • 等電位線の解釈:
    • 核心: 地図の等高線と同じように、等電位線の図から「電気的な高さ(電位)」の情報を正確に読み取る能力が不可欠です。
    • 理解のポイント:
      • 等電位線上の仕事: 同じ等電位線上(同じ高さ)を移動する場合、電位差はゼロなので、電場がする仕事もゼロです(\(W_{BC}=0\))。
      • 等電位線を横切る仕事: 等電位線を横切ることは、坂を上り下りすることに相当します。何本の線を横切ったかを数えることで、始点と終点の電位差を簡単に求めることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 点電荷が作る電場の問題: 点電荷が作る等電位線は同心円状になります。この場合でも、ある点から別の点へ電荷を運ぶ仕事は、始点と終点がどの等電位線上にあるかだけで決まります。
    • 力学的エネルギー保存則との融合問題: 「点Aで初速\(v_0\)で打ち出した荷電粒子が点Eに達したときの速さは?」といった問題。この場合は、エネルギー保存則「(はじめの運動エネルギー) + (はじめの位置エネルギー) = (おわりの運動エネルギー) + (おわりの位置エネルギー)」を立てます。ここで、電気的な位置エネルギーは \(U=qV\) で与えられ、電場がした仕事は \(W = -\Delta U = -(U_{\text{終}} – U_{\text{始}})\) の関係にあります。
    • 電場の強さを問う問題: 等電位線の図から、特定の点の電場の強さと向きを問う問題。電場は等電位線に垂直で、電位が下がる向きです。強さは、等電位線の間隔が狭いほど強くなります (\(E \approx \frac{\Delta V}{\Delta d}\))。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 電位の基準と間隔の確認: まず、どこが基準(高電位側か低電位側か)で、等電位線が何ボルト間隔で引かれているかを確認します。これが全ての計算の基礎となります。
    2. 始点と終点の電位を特定: 各移動区間について、始点の電位と終点の電位がそれぞれいくらになるかを、等電位線を数えて特定します。
    3. 仕事の符号を予測する: 電位が下がる(坂を下る)移動か、上がる(坂を登る)移動かを確認し、仕事の符号が正になるか負になるかをあらかじめ予測しておくと、計算ミスを防げます。
    4. 公式 \(W=q(V_{\text{始}} – V_{\text{終}})\) に代入: 最後に、電荷\(q\)と計算した電位差を公式に代入します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電位差の符号の間違い:
    • 誤解: 仕事の公式 \(W=qV\) の \(V\) を、常に正の値として計算してしまう、または \(V_{\text{終}} – V_{\text{始}}\) と勘違いしてしまう。
    • 対策: 仕事の公式は \(W = q(V_{\text{始}} – V_{\text{終}})\) と、始点と終点を明確にした形で覚えるのが最も安全です。そして、電位が下がる移動(例:A→B)では \(V_{\text{始}} > V_{\text{終}}\) なので \(V_{\text{始}} – V_{\text{終}}\) は正、電位が上がる移動(例:D→E)では \(V_{\text{始}} < V_{\text{終}}\) なので \(V_{\text{始}} – V_{\text{終}}\) は負になる、という関係をしっかり理解しましょう。
  • 等電位線の本数の数え間違い:
    • 誤解: 点Aから点Bへの移動で、Bの線を含めて4本と数えてしまうなど、横切った線の数を間違える。
    • 対策: 「始点の線」と「終点の線」の間の線の数を数えるか、あるいは各線の電位に具体的な数値を割り振ってしまうのが確実です。例えば、点BとCを基準の0Vとすると、Aは+30V、Dは-40V、Eは-30Vの線上にある、と見なせます。(あくまで相対的な電位差が重要です)
  • 電荷qの符号の見落とし:
    • 誤解: もし問題の電荷が負電荷(電子など)だった場合に、正電荷と同じように計算してしまう。
    • 対策: 仕事の計算では、必ず電荷 \(q\) の符号を含めて計算します。もし \(q\) が負であれば、電位が下がる移動(電場が正の仕事をする方向)でも、トータルの仕事 \(W=qV\) は負になります。これは、負電荷は電場から坂を登る向きに力を受けるためです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(W=qV\) の選択:
    • 選定理由: 問題が「電場による力がする仕事」を問うており、図には「等電位線」という電位に関する情報が与えられています。電荷\(q\)、仕事\(W\)、電位\(V\)という3つの量を結びつける最も直接的な法則が \(W=qV\) であるため、これを選択します。
    • 適用根拠: この公式は、電気的な位置エネルギー \(U=qV\) の定義から導かれます。保存力である静電気力がする仕事は、位置エネルギーの減少分に等しい、すなわち \(W = -\Delta U = -(U_{\text{終}} – U_{\text{始}}) = -(qV_{\text{終}} – qV_{\text{始}}) = q(V_{\text{始}} – V_{\text{終}})\) となります。静電気力が保存力であるという事実が、この公式が経路によらず成立する根拠となっています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 各点に電位を書き込む: 計算を始める前に、図の各点A, B, C, D, Eがどの電位の線上にあるかを特定し、具体的な数値を書き込んでしまうと間違いが減ります。例えば、点BとCを基準の0Vとすると、Aは+30V、Dは-40V、Eは-30Vの線上にある、と見なせます。(あくまで相対的な電位差が重要です)
  • 符号のダブルチェック: 計算結果が出たら、仕事の符号が物理的に妥当かを確認します。正電荷が電位の下がる方へ移動したなら仕事は正、電位の上がる方へ移動したなら仕事は負になるはずです。この簡単なチェックで、電位差の引き算の順番ミスなどを発見できます。
  • 有効数字の扱いに注意: 模範解答の \(W_{CD}\) のように、計算結果を問題の有効数字(この場合は2桁)に合わせて丸める必要があります。\(128 \times 10^{-15}\) を \(1.3 \times 10^{-13}\) と正しく表記できるように、科学記数法と有効数字のルールを再確認しておきましょう。
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基本問題

356 静電気

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「摩擦帯電と静電気力」です。異なる物質をこすり合わせたときに生じる帯電の仕組みと、帯電した物体間にはたらく力の種類(引力・斥力)についての基本的な理解が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 摩擦帯電: 異なる2つの物体をこすり合わせると、一方の物体からもう一方の物体へ電子が移動し、両方の物体が帯電する現象。
  2. 電荷の正体:
    • 物体が正に帯電するとは、電子が不足した状態のこと。
    • 物体が負に帯電するとは、電子が過剰になった状態のこと。
    • 摩擦帯電で移動するのは、常に負の電荷を持つ「電子」である。
  3. 電気量保存の法則: 摩擦帯電の前後で、2つの物体が持つ電気量の総和は変化しない。一方が \(-q\) の電気量を得れば、もう一方は \(+q\) の電気量を持つことになる。
  4. 静電気力:
    • 同種の電荷(正と正、負と負)の間には、互いに退け合う力(斥力)がはたらく。
    • 異種の電荷(正と負)の間には、互いに引き合う力(引力)がはたらく。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)と(2)では、「アクリル棒が正に帯電した」という事実から、電子がどちらからどちらへ移動したのか、その結果として絹布がどちらに帯電したのかを論理的に導きます。
  2. (3)では、(1)の結果と、新たに与えられる「アクリル棒と塩化ビニル棒の間に引力がはたらいた」という情報から、塩化ビニル棒、そしてそれをこすった毛皮の帯電の種類を特定します。最後に、絹布と毛皮の電荷の種類から、両者にはたらく力を判断します。

問(1)

思考の道筋とポイント
「アクリル棒を絹布でこすると、アクリル棒は正に帯電する」という記述がすべての出発点です。物体が正に帯電するとは、どういう状態かを考えます。原子は原子核(正)と電子(負)で構成されており、通常は電気が打ち消し合って中性です。帯電現象で移動できるのは、身軽な電子だけです。アクリル棒が正になったということは、負の電荷を持つ電子を失ったことを意味します。
この設問における重要なポイント

  • 正の帯電は「電子不足」の状態、負の帯電は「電子過剰」の状態であると理解していること。
  • 電気量保存の法則から、一方が電子を失えば(正に帯電)、もう一方はその電子を受け取って(負に帯電)いなければならないと考えること。

具体的な解説と立式
問題文より、アクリル棒は正に帯電します。物体が正に帯電するとは、負の電荷を持つ電子が物体から出て行って、電子が不足した状態になることを意味します。
アクリル棒と絹布の間で電子のやり取りが起こったので、アクリル棒が失った電子は絹布が受け取ったことになります。電子は負の電荷を持っているので、電子を過剰に受け取った絹布は負に帯電します。

使用した物理公式

  • 電荷の定義(電子の過不足)
  • 電気量保存の法則
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

物をこすり合わせて静電気が起きるとき、動くのはマイナスの電気を持つ「電子」だけです。
問題文で「アクリル棒がプラスになった」と教えてくれています。プラスになるということは、自分の中からマイナスの電子が出て行ってしまった、ということです。
では、出て行った電子はどこへ行ったのでしょう?こすり合わせた相手である「絹布」に移動したはずです。
したがって、絹布はマイナスの電子を余分にもらったことになるので、「マイナス(負)」に帯電します。

結論と吟味

アクリル棒が正に帯電した結果、絹布は負に帯電します。これは電気量保存の法則から導かれる必然的な結果であり、妥当です。

解答 (1) ② 負

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)の考察結果から直接導かれます。(1)で、アクリル棒が電子を失い、絹布が電子を受け取ったと結論付けました。したがって、電子の移動方向は明らかです。
この設問における重要なポイント

  • 帯電現象で移動するのは電子であること。
  • (1)の考察(アクリル棒が電子不足、絹布が電子過剰)を正しく利用すること。

具体的な解説と立式
(1)で考察したように、アクリル棒は電子を失って正に帯電し、絹布は電子を受け取って負に帯電しました。
したがって、電子は「アクリル棒から絹布へ」移動したことになります。

使用した物理公式

  • (1)の結論
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

(1)で、アクリル棒は電子を失い、絹布は電子をもらった、ということがわかりました。ということは、電子は「アクリル棒」から「絹布」に向かってお引越しした、ということになります。

結論と吟味

電子の移動方向は「アクリル棒から絹布へ」です。(1)の結論と完全に一致しており、論理的に正しいです。

解答 (2) ① アクリル棒から絹布へ

問(3)

思考の道筋とポイント
複数の情報をつなぎ合わせて推理する問題です。

  1. まず、アクリル棒(正)と塩化ビニル棒の間に「引力」がはたらいたことから、塩化ビニル棒の電荷の種類を特定します。
  2. 次に、塩化ビニル棒がその電荷になった原因(毛皮でこすったこと)を考え、(1)と同様の論理で毛皮の電荷の種類を特定します。
  3. 最後に、(1)でわかっている絹布の電荷と、今特定した毛皮の電荷の種類から、両者にはたらく力が引力か斥力かを判断します。

この設問における重要なポイント

  • 異種の電荷間には引力が、同種の電荷間には斥力がはたらくことを理解している。
  • 摩擦帯電の仕組み(電子の移動と電気量保存)を、新たな組み合わせ(塩化ビニル棒と毛皮)にも適用できる。
  • 複数のステップを経て、最終的な結論を導く論理的思考力。

具体的な解説と立式
ステップ1: 塩化ビニル棒の帯電を特定する

アクリル棒は正に帯電しています。このアクリル棒と塩化ビニル棒の間に「引力」がはたらいたとあります。引力がはたらくのは異種の電荷間なので、塩化ビニル棒は負に帯電していることがわかります。

ステップ2: 毛皮の帯電を特定する

塩化ビニル棒は、毛皮でこすることによって負に帯電しました。負に帯電するとは、電子を受け取ったことを意味します。その電子は、こすった相手である毛皮から移動してきたはずです。したがって、毛皮は電子を失い、正に帯電していることがわかります。

ステップ3: 絹布と毛皮にはたらく力を判断する

(1)より、絹布は負に帯電しています。
ステップ2より、毛皮は正に帯電しています。
絹布(負)と毛皮(正)は異種の電荷を持っているので、両者の間には「引力」がはたらきます。

使用した物理公式

  • 静電気力の性質(引力と斥力)
  • 摩擦帯電の仕組み
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

パズルを解くように、一つずつ情報を整理していきましょう。

  1. アクリル棒は「プラス」です。これに近づけた塩化ビニル棒と引き合った(引力)ということは、塩化ビニル棒は「マイナス」のはずです。(プラスとマイナスは引き合うので)
  2. 塩化ビニル棒が「マイナス」になったのは、毛皮でこすられたからです。マイナスになるということは、相手(毛皮)から電子を奪ったということです。電子を奪われた毛皮は、結果的に「プラス」になります。
  3. これで全員の正体がわかりました。絹布は(1)でわかったように「マイナス」、毛皮は今わかったように「プラス」です。マイナスとプラスなので、この2つを近づければ、互いに引き合う「引力」がはたらきます。
結論と吟味

絹布(負)と毛皮(正)の間には引力がはたらきます。一連の静電気現象を、基本法則に基づいて矛盾なく説明した結果であり、論理的に妥当です。

解答 (3) ① 引力

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 摩擦帯電のメカニズム:
    • 核心: この問題の根幹は、「摩擦によって移動するのは負の電荷を持つ電子だけである」という事実を理解していることです。すべての帯電現象は、この電子の過不足によって説明されます。
    • 理解のポイント:
      • 正帯電: 物体から電子が失われた状態(電子不足)。
      • 負帯電: 物体に電子が付け加わった状態(電子過剰)。
      • 原子核の不動: 正の電荷を持つ原子核(陽子)は、原子内に強く束縛されているため、摩擦によって移動することはありません。
  • 電気量保存の法則と相互作用:
    • 核心: 孤立した系(例:アクリル棒と絹布)の中で摩擦帯電が起こるとき、失われる電子の量と得られる電子の量は等しく、系全体の電気量は保存されます。
    • 理解のポイント:
      • ペアでの帯電: 一方が正に帯電すれば、相手は必ず同じ大きさの負の電荷で帯電します。単独でどちらか一方だけが帯電することはありません。
      • 力の種類: このようにして帯電した物体間には、電荷の種類に応じて力が働きます。「異なる種類の電荷(+と-)は引き合い(引力)」、「同じ種類の電荷(+と+、-と-)は反発しあう(斥力)」という基本ルールが、すべての相互作用を決定します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 帯電列を利用する問題: 「ガラス、ナイロン、毛皮、木綿、アクリル、塩化ビニル」のように、物質がどちらに帯電しやすいかを示した「帯電列」が与えられる問題。帯電列で左にあるものほど正に、右にあるものほど負に帯電しやすくなります。例えば、毛皮とアクリルをこすれば、毛皮が正、アクリルが負に帯電します。
    • 静電誘導を問う問題: 帯電した物体を、電気的に中性な導体(金属など)に近づける問題。導体内の自由電子が移動し、帯電体に近い側に異種の電荷、遠い側に同種の電荷が現れる「静電誘導」が起こります。結果として、必ず引力が働きます。
    • 箔検電器の問題: 箔検電器の動作原理を問う問題。帯電体を金属板に近づけると静電誘導で箔が開き、接触させると電荷が移動して箔が開いたままになる、といった現象を、電子の移動で説明させられます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 基準となる情報を探す: 問題文の中に必ず「○○は△に帯電した」あるいは「□□と◇◇の間には引力(斥力)がはたらいた」という確定情報があります。これを全ての推理の出発点とします。
    2. 電子の動きを追う: 「正になった=電子が出ていった」「負になった=電子が入ってきた」という変換を常に行い、電子がどちらからどちらへ移動したのかを考えます。
    3. 相関図を作る: 各物体(アクリル棒、絹布、塩化ビニル棒、毛皮)が最終的にどちらに帯電したのかを、メモ書きで良いので図やリストにまとめます。
    4. 力のルールを適用する: 最後に、まとめあげた各物体の電荷の組み合わせを見て、「同種なら斥力、異種なら引力」というルールを適用して結論を出します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 正の電荷が移動すると考える誤解:
    • 誤解: 正に帯電するのは、正の電荷が移動してきたからだと考えてしまう。
    • 対策: 「動くのは常に電子(負の電荷)だけ」と徹底して覚えましょう。化学で学ぶイオン化傾向とは異なり、固体中での摩擦帯電では陽イオンが物質間を移動することはありません。正に帯電するのは、あくまで「マイナスが去った結果、もともとあったプラスが表面化した」状態です。
  • 引力と斥力の混同:
    • 誤解: 「プラスとマイナスは反発する」など、力の向きのルールを逆に覚えてしまう。
    • 対策: 磁石のN極とS極の関係(異種は引き合い、同種は反発する)と全く同じルールである、と関連付けて覚えるのが効果的です。あるいは、「プラス(Positive)な人とネガティブ(Negative)な人は惹かれ合う」のような、覚えやすいイメージを持つのも一つの手です。
  • 情報の整理不足による混乱:
    • 誤解: (3)のように複数の物体が登場すると、どの物体がどの電荷を持っているのかが途中で分からなくなってしまう。
    • 対策: 上記の「応用テクニック」で述べたように、情報を一つずつ確定させ、その結果を必ず書き出して整理する習慣をつけましょう。「アクリル棒(+)」「絹布(-)」「塩化ビニル棒(-)」「毛皮(+)」のように、物質と電荷の符号をペアでメモしていくことで、思考が整理され、最終的な判断ミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • この問題は公式ではなく、物理法則の定性的理解を問うています。
    • 電子の移動という原因: 摩擦帯電という現象の「原因」が、電子という粒子の移動にあることを理解しているかが問われます。これは、現代物理学における物質観の基礎です。
    • 電気量保存則という制約: 電子が一方から他方へ移動するだけなので、全体の電気量は変わらないという「制約条件」を理解しているかが問われます。これは物理学における最も基本的な保存則の一つです。
    • 静電気力という結果: 帯電した結果として、物体間にどのような「相互作用(力)」が生じるかを理解しているかが問われます。これは、自然界に存在する基本的な4つの力のうちの一つに関する法則です。
    • 論理的思考: これらの「原因」「制約」「結果」という3つの要素を、問題文の断片的な情報と結びつけて、未知の事実を明らかにしていく「論理的な思考プロセス」そのものが試されています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題には定量的な計算は含まれませんが、論理的なミスをなくすためのテクニックは存在します。
  • 情報の可視化: 問題文の情報を、簡単な図や記号で書き出すことを習慣にしましょう。例: アクリル棒 ⇔ 絹布 (こする) → アクリル棒(+)この図から、「→ 電子はアクリルから絹布へ」「→ 絹布(-)」といった情報を派生させて書き加えていきます。
  • 三段論法を意識する: (3)の思考プロセスは、まさに三段論法の連続です。
    • A: アクリル棒は(+)である。(前提)
    • B: アクリル棒と塩化ビニル棒は引き合う。(前提)
    • C: 異種電荷は引き合う。(法則)
    • 結論: ゆえに、塩化ビニル棒は(-)である。

    このように、一つ一つの結論を、確実な根拠に基づいて導き出す思考の癖をつけることが、複雑な問題でのミスを防ぎます。

357 電子の移動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「導体接触による電荷の移動と電気素量」です。帯電した導体と帯電していない導体を接触させたときに、電荷がどのように移動し、再配分されるか、またその電荷の正体が電子何個分に相当するのかを問う、静電気の基本問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電気量保存の法則: 外部との電気のやり取りがない限り、接触の前後で、系(今回は金属球AとBのペア)が持つ電気量の総和は変わりません。
  2. 導体接触と電荷の再配分: 同材質・同半径の導体を接触させると、互いに反発しあう電荷(この場合は過剰な電子)は、できるだけ離れようとして全体に広がり、結果として総電荷が均等に分配されます。
  3. 電荷の担い手: 金属導体内で自由に移動できるのは、負の電荷を持つ「自由電子」のみです。正の電荷を持つ原子核は移動しません。
  4. 電気素量(電荷の量子化): すべての電気量は、電子1個が持つ電気量(電気素量 \(e = -1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\))の整数倍になっています。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず電気量保存の法則を用いて、接触前の総電荷を計算します。次に、その総電荷が接触後に二等分されることから、接触後の各球の電荷を求めます。最後に、接触前と後での各球の電荷の変化を調べることで、電子がどちらからどちらへ、どれだけの量移動したのかを特定します。
  2. (2)では、(1)で求めた移動した総電気量を、電子1個の電気量(電気素量)で割ることで、移動した電子の個数を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
まず、接触させた後の金属球AとBが、それぞれどれくらいの電気量を持つことになるのかを計算します。次に、接触前と後で各球の電気量がどう変化したかを比較します。金属内で移動できるのは負の電荷を持つ電子だけなので、この電気量の変化が、電子の移動によって引き起こされたと考え、その方向と量を特定します。
この設問における重要なポイント

  • 同材質・同半径の導体を接触させると、総電荷が等しく分配される。
  • 物体の電気量がより負になった場合、それは電子を受け取ったことを意味する。
  • 物体の電気量がより正になった(負の度合いが減った)場合、それは電子を放出したことを意味する。

具体的な解説と立式
まず、接触前の金属球AとBが持つ電気量の合計 \(Q_{\text{全}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{全}} &= Q_A + Q_B \\[2.0ex] &= (-8.0 \times 10^{-10}) + 0 \\[2.0ex] &= -8.0 \times 10^{-10} \, [\text{C}] \end{aligned}
$$
問題文の指示通り、接触後、この総電荷がAとBに二等分されます。したがって、接触後の各球の電荷を \(Q’\) とすると、
$$ Q’ = \frac{Q_{\text{全}}}{2} $$
この結果、もともと帯電していなかった金属球Bは、\(Q’\) の電気量を持つことになります。この電気量の変化は、電子が移動してきたことによって生じます。したがって、移動した電気量は、Bの電荷の変化量に等しくなります。
$$ Q_{\text{移動}} = Q’ – Q_B $$

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則
計算過程

接触後の各球の電荷 \(Q’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q’ &= \frac{-8.0 \times 10^{-10}}{2} \\[2.0ex] &= -4.0 \times 10^{-10} \, [\text{C}] \end{aligned}
$$
金属球Bは、はじめ電荷が0でしたが、接触後に \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) になりました。これは、Bが \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) の負の電荷を受け取ったことを意味します。
この負の電荷の移動は、電子によって担われます。したがって、電子は、電荷がより負でなくなったAから、より負になったBへと移動したことがわかります。
移動した電気量は、Bが受け取った電気量そのものなので、\(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) です。

この設問の平易な説明

Aさんは800円の借金(\(-8.0 \times 10^{-10}\))、Bさんは所持金ゼロの状態です。二人がお財布を一緒にして中身を公平に分けたところ、二人とも400円の借金(\(-4.0 \times 10^{-10}\))を背負うことになりました。
この状況を分析すると、Bさんは新たに400円の借金を背負ったことになります。この借金は、もともとAさんが持っていた借金の一部が移動してきたものです。
物理の世界では、この「借金」が「電子(負の電荷)」にあたります。つまり、AからBへ、400円分の借金にあたる \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) の電子が移動した、と考えることができます。

結論と吟味

電子はAからBへ移動し、移動した電気量は \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) となります。この結果、Aの電荷は \(-8.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) から \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) へと変化し(\(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) の負電荷を失った)、Bの電荷は \(0 \, \text{C}\) から \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) へと変化した(\(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) の負電荷を得た)ことになり、つじつまが合います。

解答 (1) AからBへ、\(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた、移動した電気量の合計 \(Q_{\text{移動}}\) が、電子何個分に相当するかを計算します。電気の世界では、すべての電荷は電子1個が持つ電気量(電気素量 \(e\))の整数倍になるという fundamental な法則(電荷の量子化)があります。この関係式を利用します。
この設問における重要なポイント

  • 電荷の量子化の概念(\(Q=ne\))を理解していること。
  • 電子1個の電気量(電気素量)が \(e = -1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) であることを用いること。
  • 総量を1個あたりの量で割ると、個数が出るという基本的な計算方法を適用すること。

具体的な解説と立式
移動した電子の数を \(n\) 個、電子1個の電気量を \(e\)、(1)で求めた移動した総電気量を \(Q_{\text{移動}}\) とすると、これらの間には以下の関係が成り立ちます。
$$ Q_{\text{移動}} = n \times e $$
この式を、求めたい電子の数 \(n\) について解きます。
$$ n = \frac{Q_{\text{移動}}}{e} $$

使用した物理公式

  • 電荷の量子化: \(Q=ne\)
計算過程

上記の式に、\(Q_{\text{移動}} = -4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) と \(e = -1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{-4.0 \times 10^{-10}}{-1.6 \times 10^{-19}} \\[2.0ex] &= \frac{4.0}{1.6} \times 10^{-10 – (-19)} \\[2.0ex] &= 2.5 \times 10^{9} \, [\text{個}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(1)で、AからBへ合計で \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) という量の電気が移動したことがわかりました。この電気の移動は、実際には「電子」という名前の小さな粒がたくさん移動することで起こります。
電子は1粒あたり \(-1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) という決まった量の電気を持っています。したがって、「移動した電気の総量」を「電子1粒あたりの電気量」で割り算すれば、全部で何粒の電子がお引越ししたのかを計算することができます。

結論と吟味

移動した電子の数は \(2.5 \times 10^{9}\) 個(25億個)となります。電子1個が持つ電気量は非常に小さいため、目に見える現象を引き起こすには非常に多くの電子が関わっていることが多く、この結果は物理的に妥当な値です。

解答 (2) \(2.5 \times 10^{9}\) 個

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電気量保存の法則と電荷の再配分:
    • 核心: この問題の根幹は、2つの導体を接触させたときに起こる現象を、「電気量保存の法則」と「電荷の均等分配」という2つのルールに基づいて理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 保存則(普遍性): 「接触の前後で、2つの球を合わせた電気量の合計は変わらない」という電気量保存の法則は、あらゆる状況で成り立つ普遍的な法則です。まず、この合計値を計算することが第一歩です。
      • 均等分配(特殊条件): 「合計の電気量が、接触後に二等分される」というのは、「同材質・同半径」という特殊な条件下でのみ成り立つルールです。もし球の半径が異なれば、電荷は均等には分配されません(半径の比で分配されます)。この問題では、この特殊条件が与えられているため、計算が単純化されています。
  • 電荷の量子化:
    • 核心: マクロな物理量である「電気量 \(Q\) [C]」と、ミクロな量である「電子の個数 \(n\) [個]」を結びつけるのが、「電荷の量子化」という概念です。
    • 理解のポイント:
      • 電気の最小単位: 電気量には最小単位が存在し、それが電子1個の持つ電気量「電気素量 \(e\)」です。すべての電気量は、この電気素量の整数倍でしか存在できません。
      • 換算式 \(Q=ne\): この関係式は、電気量を個数に、あるいは個数を電気量に換算するための重要なツールです。総量 \(Q\) を1個あたりの量 \(e\) で割れば、個数 \(n\) が求まる、という考え方は物理の様々な場面で応用されます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 半径の異なる導体の接触: 半径 \(r_1\) の球(電荷 \(Q_1\))と半径 \(r_2\) の球(電荷 \(Q_2\))を接触させる問題。この場合、接触後の電荷 \(Q’_1, Q’_2\) は、\(Q’_1 : Q’_2 = r_1 : r_2\) の比に分配されます。総電荷 \(Q_1+Q_2\) をこの比で按分して計算します。
    • 複数回の接触: A, B, Cの3つの球があり、「まずAとBを接触させ、次にAをCに接触させる」といった多段階の操作を伴う問題。各ステップごとに電気量保存則と電荷の再配分ルールを適用し、最終的な電荷を求めます。
    • 静電誘導からの接触: 帯電体Dを中性の導体Aに近づけ(静電誘導)、その状態でAを別の導体Bに接触させる、といった問題。静電誘導によってAに生じた電荷の偏りを考慮した上で、接触による電荷移動を考える必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 導体の条件を確認: まず、接触する導体が「同材質・同半径」であるか、異なるかを確認します。これにより、電荷が均等に分配されるか、比で分配されるかが決まります。
    2. 接触前の総電荷を計算: 電気量保存則に基づき、接触させる全ての導体の電気量の合計を計算します。これが分配の原資となります。
    3. 接触後の電荷を計算: 上記の条件に従って、接触後の各導体の電荷を計算します。
    4. 各導体の電荷の変化量を計算: 接触前と後で、各導体の電荷がどれだけ変化したか(\(\Delta Q = Q_{\text{後}} – Q_{\text{前}}\))を計算します。この \(\Delta Q\) が、その導体に出入りした電気量に相当します。
    5. 電子の移動方向を判断: \(\Delta Q\) が正なら(正電荷が増えた、または負電荷が減った)、その導体は電子を放出しています。\(\Delta Q\) が負なら(負電荷が増えた)、その導体は電子を受け取っています。これにより、電子の移動方向がわかります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 正の電荷が移動すると考える誤解:
    • 誤解: 金属球Aの負電荷が減った(\(-8 \to -4\))のを、「正の電荷がBからAへ移動した」と解釈してしまう。
    • 対策: 導体中を自由に移動できるのは「自由電子(負の電荷)」だけである、という原則を徹底しましょう。Aの負電荷が減ったのは、Aが持っていた過剰な電子の一部がBへ移動したからです。
  • 移動した電気量の計算ミス:
    • 誤解: 移動した電気量を、接触後の電荷 \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) と、接触前のAの電荷 \(-8.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) の単純な差として、\(4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\)(符号が正)としてしまう。
    • 対策: どちらかの球に着目し、その電荷の変化量を計算するのが安全です。例えば、球Bに着目すれば、変化量は「後(\(-4.0\)) – 前(0) = \(-4.0\)」となり、移動した電気量が \(-4.0 \times 10^{-10} \, \text{C}\) であることが明確になります。
  • 指数の計算ミス:
    • 誤解: (2)の割り算で、指数の計算 \(10^{-10} / 10^{-19}\) を \(10^{-10-19} = 10^{-29}\) のように間違える。
    • 対策: 指数の割り算は、指数の引き算((分子の指数) – (分母の指数))になるというルールを再確認しましょう。\(-10 – (-19) = -10 + 19 = 9\) と、符号の変化に注意して慎重に計算します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 電気量保存則:
    • 選定理由: 「A, B以外のものとの電気の出入りがない状態」という記述は、AとBからなる系が「孤立系」であることを示唆しています。物理学において、孤立系ではエネルギー、運動量、そして電気量などの物理量が保存されるため、電気量保存則を適用するのが最も基本的なアプローチとなります。
    • 適用根拠: 電荷は自然に消滅したり生成したりすることはありません(対生成・対消滅などの特殊な場合を除く)。導体接触は、単に既存の電荷が移動・再配置されるだけの現象なので、全体の総和は不変であるという法則が厳密に成り立ちます。
  • 電荷の量子化 (\(Q=ne\)):
    • 選定理由: (2)では、マクロな電気量 \(Q\) からミクロな「電子の数 \(n\)」を求めることが要求されています。この2つの異なるスケールの量を結びつける唯一の法則が、電荷の量子化です。
    • 適用根拠: 1909年のミリカンの油滴実験によって、全ての電荷は電気素量 \(e\) の整数倍の値しかとらないことが実験的に確立されました。この物理的な事実が、この公式を適用する根拠となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 図を描いて状況を整理する: 模範解答にあるような、接触前と後の状態を示す簡単な図を描くことは非常に有効です。各球の電荷量を書き込み、電荷の移動を矢印で示すことで、状況を視覚的に把握でき、計算ミスや解釈の間違いを防げます。
  • 単位を意識する: (2)の計算で、\(n = \frac{Q}{e}\) の単位が \(\frac{[\text{C}]}{[\text{C}]}\) となり、無次元の「個数」になることを確認する習慣をつけると、式の立て間違いに気づきやすくなります。
  • 概算で見積もる: \(4.0/1.6\) のような計算を行う前に、おおよそ \(4/1.5 \approx 2.6\) くらいかな、と当たりをつけておくと、桁を間違えるなどの大きな計算ミスをした際に「何かおかしい」と気づくことができます。指数の部分も \(10^{-10}/10^{-19}\) は \(10^9\) となり、非常に大きな数になることを予測しておくのが良いでしょう。

358 電気量の保存と静電気力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 力の大きさの比を利用する解法
      • 主たる解法が接触後の電荷をクーロンの法則の公式に再代入して計算するのに対し、別解では接触前後の「電荷の絶対値の積」の比が「力の大きさの比」になることを利用して、(1)の結果から直接計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: クーロンの法則を \(F \propto |q_1 q_2|\) という比例関係で捉えることで、物理法則をより深く、多角的に理解することができます。
    • 解法の効率化: 比例定数 \(k\) や距離 \(r\) の再計算を省略できるため、計算ステップを大幅に削減し、計算ミスを減らす強力な手法を学ぶことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「クーロン力と導体接触による電荷の再配分」です。クーロンの法則を用いて静電気力を計算する基本操作と、導体を接触させた際に電気量保存則に基づいて電荷がどのように再配分されるかを理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. クーロンの法則: 2つの点電荷 \(q_1, q_2\) が距離 \(r\) だけ離れているときにはたらく静電気力の大きさは \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) で与えられます。
  2. 静電気力の向き: 電荷の符号が同種(正と正、負と負)であれば斥力(反発力)、異種(正と負)であれば引力(引き合う力)がはたらきます。
  3. 電気量保存の法則: 外部との電気のやり取りがない限り、複数の物体を接触させても、それらの持つ電気量の総和は変化しません。
  4. 導体接触と電荷の再配分: 同材質・同形状・同寸法の導体を接触させると、総電荷は均等に分配されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた2つの電荷の大きさと距離をクーロンの法則の公式に代入して、力の大きさを計算します。また、電荷の符号から引力か斥力かを判断します。
  2. (2)では、まず電気量保存の法則を用いて、2球の総電荷を計算します。次に、同材質・同形状・同寸法の導体であるため、総電荷が2球に均等に分配されるとして、接触後の各球の電荷を求めます。
  3. (3)では、(2)で求めた接触後の電荷の大きさと、与えられた距離を用いて、再びクーロンの法則を適用し、力の大きさを計算します。また、接触後の電荷の符号から引力か斥力かを判断します。

問(1)

思考の道筋とポイント
2つの金属球にはたらく静電気力の大きさと種類を問う問題です。力の大きさはクーロンの法則 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) を用いて計算します。力の種類(引力か斥力か)は、2つの電荷の符号が同じか異なるかで判断します。
この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則の公式を正しく適用すること。
  • 力の大きさを計算する際は、電荷の絶対値を用いること。
  • 電荷の符号が「正(\(+\))」と「負(\(-\))」で異符号なので、はたらく力は「引力」であると判断すること。

具体的な解説と立式
クーロンの法則より、2球が及ぼしあう力の大きさ \(F\) は次式で与えられます。
$$ F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2} $$
問題で与えられた値を代入します。
\(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\), \(q_1 = 3.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\), \(q_2 = -1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\), \(r = 0.10 \, \text{m}\) です。
$$ F = (9.0 \times 10^9) \times \frac{|(3.0 \times 10^{-8}) \times (-1.0 \times 10^{-8})|}{(0.10)^2} $$
また、2球の電荷は正と負で異符号なので、互いに引き合う力、すなわち「引力」がはたらきます。

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
F &= (9.0 \times 10^9) \times \frac{3.0 \times 10^{-8} \times 1.0 \times 10^{-8}}{0.010} \\[2.0ex] &= (9.0 \times 10^9) \times \frac{3.0 \times 10^{-16}}{1.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex] &= (9.0 \times 10^9) \times (3.0 \times 10^{-14}) \\[2.0ex] &= 27 \times 10^{-5} \\[2.0ex] &= 2.7 \times 10^{-4} \, [\text{N}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの電気を帯びたボールが、どれくらいの力で引き合っているかを計算します。これには「クーロンの法則」という専用の公式を使います。公式に、問題文で与えられた電気の量、ボール間の距離、そして比例定数という決まった値を当てはめて計算するだけです。また、ボールの電気の種類がプラスとマイナスで違うので、互いに引き合う「引力」がはたらきます。

結論と吟味

2球が及ぼしあう力の大きさは \(2.7 \times 10^{-4} \, \text{N}\) で、引力です。クーロンの法則を正しく適用した結果であり、妥当です。

解答 (1) \(2.7 \times 10^{-4} \, \text{N}\), 引力

問(2)

思考の道筋とポイント
2つの金属球を接触させた後の、各球の電荷を求める問題です。まず、接触前の総電荷を計算します。これが電気量保存の法則です。次に、2球の材質・形状・大きさが等しいことから、この総電荷が2つの球に均等に分配されると考えます。
この設問における重要なポイント

  • 接触の前後で、2球の電気量の合計は保存される。
  • 同条件の導体球を接触させると、総電荷が等しく分配される。

具体的な解説と立式
接触前の2球の電気量の総和 \(Q_{\text{全}}\) を求めます。
$$ Q_{\text{全}} = (3.0 \times 10^{-8}) + (-1.0 \times 10^{-8}) $$
2球の材質、形状、大きさが等しいので、接触後、この総電荷 \(Q_{\text{全}}\) が2つの球に等しく分配されます。したがって、接触後の各球の電荷を \(q’\) とすると、
$$ q’ = \frac{Q_{\text{全}}}{2} $$

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則
計算過程

まず、総電荷 \(Q_{\text{全}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{全}} &= 3.0 \times 10^{-8} – 1.0 \times 10^{-8} \\[2.0ex] &= 2.0 \times 10^{-8} \, [\text{C}] \end{aligned}
$$
次に、接触後の各球の電荷 \(q’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
q’ &= \frac{2.0 \times 10^{-8}}{2} \\[2.0ex] &= 1.0 \times 10^{-8} \, [\text{C}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

プラス30円持っているAさんと、マイナス10円(借金10円)のBさんが、お財布を一緒にして中身を公平に分ける、という状況です。
まず、二人のお金を合計すると、\(30 + (-10) = 20\)円になります。
この20円を二人で公平に分けるので、一人あたりは \(20 \div 2 = 10\)円ずつ持つことになります。
したがって、接触後のボールは、それぞれ \(1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)(10円)の電気を持つことになります。

結論と吟味

接触後の各球の電荷は、それぞれ \(1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) となります。電気量保存の法則と、導体接触における電荷の均等分配の法則を正しく適用した結果です。

解答 (2) \(1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
接触後の2球間にはたらく静電気力を求める問題です。(1)と同様に、クーロンの法則を適用します。ただし、電荷の値として(2)で求めた接触後の値を用います。
この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則を再度適用すること。
  • 電荷の値として、(2)で求めた \(q’ = 1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) を用いること。
  • 接触後の2球の電荷は、どちらも正(\(+\))で同符号なので、はたらく力は「斥力」であると判断すること。

具体的な解説と立式
(2)で求めた接触後の電荷 \(q’ = 1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) を用いて、クーロンの法則から力の大きさ \(F’\) を計算します。距離 \(r\) は再び \(0.10 \, \text{m}\) です。
$$ F’ = k \frac{|q’ \cdot q’|}{r^2} = k \frac{(q’)^2}{r^2} $$
値を代入すると、
$$ F’ = (9.0 \times 10^9) \times \frac{(1.0 \times 10^{-8})^2}{(0.10)^2} $$
また、接触後の2球の電荷はともに正であり同符号なので、互いに反発しあう力、すなわち「斥力」がはたらきます。

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
F’ &= (9.0 \times 10^9) \times \frac{1.0 \times 10^{-16}}{1.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex] &= (9.0 \times 10^9) \times (1.0 \times 10^{-14}) \\[2.0ex] &= 9.0 \times 10^{-5} \, [\text{N}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(2)で、接触後のボールはどちらもプラス10円(\(1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\))の電気を持つことがわかりました。この状態で、再び同じ距離に置いたときに、どれくらいの力がはたらくかを計算します。
(1)と同じようにクーロンの法則の公式を使いますが、今度は新しい電気の量(10円)を使って計算します。
また、今度は両方ともプラスの電気なので、同じ種類同士は反発しあう「斥力」がはたらきます。

結論と吟味

接触後の2球が及ぼしあう力の大きさは \(9.0 \times 10^{-5} \, \text{N}\) で、斥力です。接触前は引力でしたが、接触によって電荷が再配分され、同符号になったことで斥力に変わるという点は、この種の問題の典型的な特徴です。

解答 (3) \(9.0 \times 10^{-5} \, \text{N}\), 斥力
別解: 力の大きさの比を利用する解法

思考の道筋とポイント
クーロンの法則の式 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) において、比例定数 \(k\) と距離 \(r\) は接触の前後で変化しません。したがって、力の大きさ \(F\) は、2つの電荷の大きさの積 \(|q_1 q_2|\) に比例します。この比例関係を利用して、(1)で求めた力の大きさ \(F\) から、接触後の力の大きさ \(F’\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則が \(F \propto |q_1 q_2|\) という比例関係にあることを理解している。
  • 接触前の電荷の積と、接触後の電荷の積を計算し、その比を求める。

具体的な解説と立式
接触前の力の大きさを \(F\)、接触後の力の大きさを \(F’\) とします。
接触前の電荷は \(q_1 = 3.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\), \(q_2 = -1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) です。
接触後の電荷は \(q’_1 = q’_2 = 1.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) です。
力の大きさは電荷の積に比例するので、
$$ \frac{F’}{F} = \frac{|q’_1 q’_2|}{|q_1 q_2|} $$
この式を \(F’\) について解くと、
$$ F’ = F \times \frac{|q’_1 q’_2|}{|q_1 q_2|} $$

使用した物理公式

  • クーロンの法則の比例関係
計算過程

上記で立式した式に、(1)で求めた \(F = 2.7 \times 10^{-4} \, \text{N}\) と、各電荷の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
F’ &= (2.7 \times 10^{-4}) \times \frac{|(1.0 \times 10^{-8}) \times (1.0 \times 10^{-8})|}{|(3.0 \times 10^{-8}) \times (-1.0 \times 10^{-8})|} \\[2.0ex] &= (2.7 \times 10^{-4}) \times \frac{1.0 \times 10^{-16}}{3.0 \times 10^{-16}} \\[2.0ex] &= (2.7 \times 10^{-4}) \times \frac{1}{3} \\[2.0ex] &= 0.9 \times 10^{-4} \\[2.0ex] &= 9.0 \times 10^{-5} \, [\text{N}] \end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

接触後の力が、接触前の力の何倍になるかを考えてみましょう。クーロンの法則によれば、力の大きさは「2つの電気量の掛け算」に比例します。
接触前の掛け算は \(|3.0 \times (-1.0)| = 3.0\) です。
接触後の掛け算は \(|1.0 \times 1.0| = 1.0\) です。
掛け算の結果が \(3.0\) から \(1.0\) へ、つまり \(\frac{1}{3}\) 倍になったので、力の大きさも(1)で求めた力の \(\frac{1}{3}\) 倍になります。

結論と吟味

力の大きさは \(9.0 \times 10^{-5} \, \text{N}\) となり、主たる解法と完全に一致しました。比例関係を利用することで、クーロン定数 \(k\) や距離 \(r\) の2乗といった共通の項を再計算する必要がなく、より少ない計算で効率的に答えを導くことができます。

解答 (3) \(9.0 \times 10^{-5} \, \text{N}\), 斥力

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • クーロンの法則:
    • 核心: この問題は、静電気力の基本法則であるクーロンの法則を正しく理解し、計算に適用できることを要求します。
    • 理解のポイント:
      • 力の大きさ: 力の大きさは \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) で計算されます。特に、力の大きさは電荷の「積」に比例し、距離の「2乗」に反比例するという関係性が重要です。
      • 力の種類: 電荷の符号(プラスかマイナスか)によって、力が引力になるか斥力になるかが決まります。異符号なら引力、同符号なら斥力というルールは必須知識です。
  • 電気量保存の法則と導体接触:
    • 核心: 複数の導体を接触させるという操作は、「電気量保存の法則」を適用する典型的な場面です。これにより、接触後の電荷の状態を予測することができます。
    • 理解のポイント:
      • 総電荷の保存: 接触の前後で、関与する導体全体の総電荷は変わりません。まず総電荷を計算することが、問題を解く上での第一歩です。
      • 均等分配: 「同材質・同形状・同寸法」の導体を接触させた場合、総電荷はそれらの導体に均等に分配されます。この条件が、接触後の各導体の電荷を決定づけます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 3つ以上の球の逐次接触: 球A, B, Cがあり、「まずAとBを接触させ、次にBとCを接触させる」といった問題。各ステップで電気量保存則と均等分配のルールを適用していくことで、最終的な状態を求めることができます。
    • 半径の異なる球の接触: 半径の比が \(r_A : r_B = 1:2\) のような球を接触させる問題。この場合、総電荷は均等ではなく、半径の比(静電容量の比)に応じて \(1:2\) に分配されます。
    • 接触前後の力の比を問う問題: (3)の別解のように、接触後の力は接触前の力の何倍になるかを問う問題。\(F \propto |q_1 q_2|\) の比例関係を利用すると、\(k\) や \(r\) を計算せずに素早く解くことができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 接触前の状態を分析: まず、接触前の各物体の電荷と距離を確認し、クーロンの法則を適用して力 \(F\) を計算します。電荷の符号から力の種類(引力/斥力)も判断します。
    2. 接触操作による変化を計算:
      • まず、接触する物体の総電荷を計算します(電気量保存)。
      • 次に、物体の条件(同材質・同形状かなど)を確認し、総電荷がどのように再配分されるかを計算します。
    3. 接触後の状態を分析: 接触後の新しい電荷の値を使って、再びクーロンの法則を適用し、力 \(F’\) を計算します。新しい電荷の符号から、力の種類も再度判断します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 力の大きさの計算での符号の扱い:
    • 誤解: クーロンの法則の力の大きさを計算する際に、電荷の符号(マイナス)を入れてしまい、力の大きさが負になると考えてしまう。
    • 対策: 力の「大きさ」は常に正の値です。公式 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) の絶対値記号が示すように、電荷は絶対値で計算します。力の種類(引力か斥力か)は、計算とは別に、電荷の符号の組み合わせを見て判断する、というように思考を分離させるとミスが減ります。
  • 総電荷の計算ミス:
    • 誤解: (2)で総電荷を計算する際に、\((3.0 \times 10^{-8}) + (-1.0 \times 10^{-8})\) のような符号を含む計算で間違える。
    • 対策: 指数部分 (\(10^{-8}\)) が共通なので、係数部分だけを計算すればOKです。\(3.0 + (-1.0) = 2.0\) と、落ち着いて計算しましょう。
  • 接触後の力の種類の判断忘れ:
    • 誤解: (3)で力の大きさを計算した後、力の種類が(1)と同じ引力だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 接触によって電荷の状態は全く変わっています。必ず、接触後の新しい電荷の符号(この場合は両方とも正)を確認し、それに基づいて力の種類を判断し直す必要があります。「同符号なので斥力」という確認ステップを忘れないようにしましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • クーロンの法則:
    • 選定理由: (1)と(3)で「2球が及ぼしあう力の大きさ」を問われているため、点電荷(または、みなし点電荷)間の力を記述する唯一の基本法則であるクーロンの法則を選択します。
    • 適用根拠: 金属球は点電荷ではありませんが、球対称な電荷分布を持つ場合、その静電気力は球の中心に全電荷が集まった点電荷として計算できることが知られています。この問題では、その事実を暗黙の前提としてクーロンの法則を適用しています。
  • 電気量保存の法則:
    • 選定理由: (2)で「接触させた後」の電荷を問われています。接触は物体間で電荷をやり取りする操作であり、外部とのやり取りがなければ、系全体の総量は変化しないはずです。この「変化の中の不変量」に着目するのが物理学の王道であり、電気量保存則の適用につながります。
    • 適用根拠: 電荷は粒子(電子)によって担われており、接触によって粒子が消えたり生まれたりするわけではなく、単に移動するだけです。この粒子数の保存が、電気量保存のミクロな根拠となっています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数と係数の分離: \(F=(9.0 \times 10^9) \times \frac{(3.0 \times 10^{-8}) \times (1.0 \times 10^{-8})}{(0.10)^2}\) のような複雑な計算では、係数部分と指数部分を分けて計算するのが鉄則です。
    • 係数: \(9.0 \times \frac{3.0 \times 1.0}{0.1^2} = 9.0 \times \frac{3.0}{0.01} = 9.0 \times 300 = 2700\)
    • 指数: \(10^9 \times \frac{10^{-8} \times 10^{-8}}{1} = 10^{9-8-8} = 10^{-7}\)
    • 結合: \(2700 \times 10^{-7} = 2.7 \times 10^3 \times 10^{-7} = 2.7 \times 10^{-4}\)

    このように段階的に計算することで、ミスを大幅に減らせます。

  • 距離の2乗の罠: \(r=0.10 \, \text{m}\) の場合、\(r^2 = (0.10)^2 = 0.01 = 1.0 \times 10^{-2}\) となります。これを \(0.1\) と勘違いしたり、指数計算を間違えたりしないよう、特に注意が必要です。
  • 比例計算の活用: (3)の別解で示したように、変化しない量(\(k, r\))と変化する量(\(q_1, q_2\))を区別し、比例関係を見抜くことは、計算を簡略化し、検算にも役立つ強力な武器です。常に「何が一定で、何が変化するか」を意識する癖をつけましょう。

359 クーロンの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 力のつりあいの三角比(tan)を用いる解法
      • 模範解答が水平・鉛直の力のつりあいの式を立て、連立方程式として解くのに対し、別解では2つのつりあいの式を辺々割り算することで、張力\(T\)を計算せずに直接静電気力\(F\)を求める、より効率的なアプローチを取ります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 解法の効率化: 未知数である張力\(T\)を消去する計算が非常に簡潔になり、より少ない計算ステップで静電気力\(F\)を求めることができます。
    • 物理的本質の深化: 力のベクトル(重力、静電気力、張力の逆ベクトル)が作る直角三角形の辺の比が、力の大きさの比に対応するという幾何学的な関係への理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「静電気力と力学的なつりあい」です。静止している物体にはたらく複数の力(重力、張力、静電気力)を正しく分析し、力のつりあいの条件とクーロンの法則を組み合わせて未知の量を求める、典型的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつりあい: 静止している物体にはたらく力のベクトル和はゼロになります。この条件を、力を成分に分解して「各成分の和がゼロ」という式で表現する技術が重要です。
  2. クーロンの法則: 2つの点電荷間にはたらく静電気力の大きさを、電荷の大きさと距離から計算するための基本法則です。
  3. 静電気力の向き: 異種の電荷間には引力、同種の電荷間には斥力がはたらくという基本原則を理解していること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、小球Aにはたらく3つの力(重力、張力、静電気力)を図示し、力のつりあいの式を立てます。
  2. つりあいの式を解いて、未知の静電気力の大きさ\(F\)を求めます。
  3. 次に、クーロンの法則の式に、求めた\(F\)の値や問題で与えられた値を代入し、小球Bの電荷の大きさ\(|q|\)を計算します。
  4. 最後に、小球AがBに「引き寄せられている」ことから、力が引力であると判断し、Bの電荷\(q\)の符号を決定します。

Bの電気量qを求める

思考の道筋とポイント
小球Aは空中で静止しているため、小球Aにはたらくすべての力はつりあっています。はたらく力は、鉛直下向きの「重力」、糸に沿った斜め上向きの「張力\(T\)」、そして小球Bからの引力による水平左向きの「静電気力\(F\)」の3つです。これらの3力がつりあうという条件を数式で表現し、まず静電気力\(F\)の大きさを特定することが第一の目標です。その後、クーロンの法則を用いて\(F\)と電荷\(q\)を結びつけます。
この設問における重要なポイント

  • 3つの力がつりあう状況を、水平・鉛直の2方向の成分に分解して考える。
  • 斜めを向いている張力\(T\)を、\(T\sin 60^\circ\)(水平成分)と\(T\cos 60^\circ\)(鉛直成分)に正しく分解できること。
  • 力が「引力」であることから、小球AとBの電荷は異符号であると判断すること。

具体的な解説と立式
小球Aにはたらく力は、重力 \(W = 3.0 \times 10^{-3} \, \text{N}\)(鉛直下向き)、張力 \(T\)(糸に沿って斜め上向き)、静電気力 \(F\)(水平左向き)の3つです。小球Aは静止しているので、これらの力はつりあっています。
座標軸を水平・鉛直にとり、斜めを向いている張力\(T\)を成分分解します。糸と鉛直線のなす角が\(60^\circ\)なので、

  • 水平成分(右向き): \(T\sin 60^\circ\)
  • 鉛直成分(上向き): \(T\cos 60^\circ\)

となります。

各方向の力のつりあいの式は以下のようになります。

水平方向:
$$ T\sin 60^\circ – F = 0 \quad \cdots ① $$
鉛直方向:
$$ T\cos 60^\circ – W = 0 \quad \cdots ② $$
これらの式から\(F\)を求めた後、クーロンの法則を適用します。小球Aの電荷を\(q_A = 2.0 \times 10^{-7} \, \text{C}\)、Bの電荷を\(q\)、距離を\(r = 0.20 \, \text{m}\)とすると、
$$ F = k \frac{|q_A q|}{r^2} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 力のつりあい条件(成分表示)
  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

まず、力のつりあいの式①と②から、未知数である張力\(T\)を消去して\(F\)を求めます。

②式より、
$$ T = \frac{W}{\cos 60^\circ} $$
これを①式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{W}{\cos 60^\circ} \right) \sin 60^\circ – F &= 0 \\[2.0ex] F &= W \frac{\sin 60^\circ}{\cos 60^\circ} \\[2.0ex] &= W \tan 60^\circ
\end{aligned}
$$
数値を代入して\(F\)を計算します。\(W = 3.0 \times 10^{-3} \, \text{N}\)、\(\tan 60^\circ = \sqrt{3}\) なので、
$$ F = (3.0 \times 10^{-3}) \times \sqrt{3} \, [\text{N}] $$
次に、この\(F\)の値をクーロンの法則の式③に代入して、\(|q|\)を求めます。
$$ |q| = \frac{F r^2}{k q_A} $$
$$
\begin{aligned}
|q| &= \frac{(3.0 \times 10^{-3} \times \sqrt{3}) \times (0.20)^2}{(9.0 \times 10^9) \times (2.0 \times 10^{-7})} \\[2.0ex] &= \frac{3.0 \sqrt{3} \times 0.04 \times 10^{-3}}{18 \times 10^2} \\[2.0ex] &= \frac{0.12 \sqrt{3} \times 10^{-3}}{18 \times 10^2} \\[2.0ex] &= \frac{12 \sqrt{3}}{180000} \times 10^{-3} \\[2.0ex] &= \frac{\sqrt{3}}{15000} \times 10^{-3} \\[2.0ex] &= \frac{2\sqrt{3}}{30000} \times 10^{-3} \\[2.0ex] &= \frac{2\sqrt{3}}{3} \times 10^{-7}
\end{aligned}
$$
ここで \(\sqrt{3} \approx 1.73\) として計算すると、
$$
\begin{aligned}
|q| &\approx \frac{2 \times 1.73}{3} \times 10^{-7} \\[2.0ex] &= \frac{3.46}{3} \times 10^{-7} \\[2.0ex] &\approx 1.153 \times 10^{-7} \, [\text{C}] \end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、\(|q| \approx 1.2 \times 10^{-7} \, \text{C}\) となります。

最後に、\(q\)の符号を決定します。小球A(正電荷)は小球Bに「引き寄せられ」ています。引力がはたらくのは異種の電荷間なので、小球Bの電荷\(q\)は負でなければなりません。

したがって、
$$ q = -1.2 \times 10^{-7} \, [\text{C}] $$

この設問の平易な説明

小球Aは、下向きの「重力」、斜め上の「張力」、横向きの「静電気力」の3つの力が絶妙なバランスを取って、その場で静止しています。この力のバランス関係を数式にすることで、まずAを引っ張っている「静電気力」の大きさを計算することができます。
次に、静電気力の大きさがわかったので、その力を生み出している原因である小球Bの「電気の量」を、クーロンの法則という公式を使って逆算します。
最後に、AはBに「引き寄せられている」ので、BはAとは反対のマイナスの電気を持っているはずだと判断し、計算結果にマイナス符号をつけます。

結論と吟味

小球Bの電気量は \(-1.2 \times 10^{-7} \, \text{C}\) となります。力のつりあいとクーロンの法則を段階的に適用し、最後に物理現象(引力)から符号を決定するという、論理的に妥当な結果です。

解答 \(-1.2 \times 10^{-7} \, \text{C}\)
別解: 力のつりあいの三角比(tan)を用いる解法

思考の道筋とポイント
水平・鉛直の力のつりあいの式を立てた後、連立方程式を解く代わりに、2式を辺々割り算することで、張力\(T\)を計算せずに直接静電気力\(F\)を求める、よりスマートなアプローチです。
この設問における重要なポイント

  • 力のベクトル(重力、静電気力、張力の逆ベクトル)が作る直角三角形の辺の比が、力の大きさの比に対応することを幾何学的に理解している。
  • \(\frac{\sin\theta}{\cos\theta} = \tan\theta\) の関係を利用する。

具体的な解説と立式
主たる解法と同様に、力のつりあいの式を立てます。
$$ T\sin 60^\circ = F \quad \cdots ① $$
$$ T\cos 60^\circ = W \quad \cdots ② $$
ここで、①式を②式で辺々割ると、張力\(T\)が約分されて消去できます。
$$ \frac{T\sin 60^\circ}{T\cos 60^\circ} = \frac{F}{W} $$
三角関数の関係 \(\frac{\sin\theta}{\cos\theta} = \tan\theta\) を用いると、
$$ \tan 60^\circ = \frac{F}{W} $$
この式から、静電気力\(F\)は次のように直接求められます。
$$ F = W \tan 60^\circ $$

使用した物理公式

  • 力のつりあい条件
  • 三角関数の関係
計算過程

上記で立式した関係式に、\(W = 3.0 \times 10^{-3} \, \text{N}\) と \(\tan 60^\circ = \sqrt{3}\) を代入します。
$$ F = (3.0 \times 10^{-3}) \times \sqrt{3} \, [\text{N}] $$
この結果は主たる解法で得られたものと全く同じです。
したがって、これ以降のクーロンの法則を用いた計算も主たる解法と全く同じになり、最終的に得られる答えも同じになります。
$$ q = -1.2 \times 10^{-7} \, [\text{C}] $$

この設問の平易な説明

小球Aにはたらく3つの力は、バランスが取れて静止しています。この力の関係を図に描くと、きれいな直角三角形になります。この三角形の「底辺(静電気力)」と「高さ(重力)」の比は、糸の角度のタンジェント(\(\tan 60^\circ\))に等しくなります。この関係を使えば、張力の大きさをわざわざ計算しなくても、重力の大きさから直接、静電気力の大きさを求めることができます。静電気力の大きさがわかれば、あとは主たる解法と同じ手順で答えにたどり着けます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(-1.2 \times 10^{-7} \, \text{C}\) が得られました。この別解は、未知数である張力\(T\)を計算の途中で消去できるため、より計算が簡潔になり、効率的です。

解答 \(-1.2 \times 10^{-7} \, \text{C}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 力学と電磁気学の融合:
    • 核心: この問題は、物体が静止するための力学的な条件である「力のつりあい」と、電荷間に働く力を記述する電磁気学の法則である「クーロンの法則」という、2つの異なる分野の法則を組み合わせて解く点に本質があります。
    • 理解のポイント:
      • 力学の視点(つりあい): 小球Aが静止しているという事実から、小球にはたらく全ての力(重力、張力、静電気力)のベクトル和がゼロであることを意味します。この条件を数式に落とし込むことが、問題を解く第一歩です。
      • 電磁気学の視点(クーロン力): 小球間にはたらく静電気力の大きさは、それぞれの電気量と距離によって決まります。力のつりあいから求めた静電気力の大きさを、クーロンの法則に当てはめることで、未知の電気量を明らかにすることができます。
  • 力のつりあいの2つのアプローチ:
    • 核心: 「力のつりあい」という一つの物理現象を、2つの異なる数学的アプローチで表現できることを理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 成分分解法: 任意の直交座標軸(例:水平・鉛直)を設定し、すべての力をその成分に分解します。「各方向の力の成分の和がゼロ」という連立方程式を立てて解く方法です。より機械的で汎用性が高く、どんな角度の問題にも対応できる基本戦術です。
      • ベクトル図(三角比)法: 3つの力がつりあう場合、力のベクトルを繋ぐと閉じた三角形になります。この図形の辺の比(力の大きさの比)と角度の関係(三角比)を利用する解法です。未知の張力\(T\)を計算せずに済むため、非常に効率的です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 斥力がはたらく問題: 小球Bの電荷が正で、小球Aが反発して逆側に傾く問題。静電気力の向きが逆になるだけで、力のつりあいを考えるという解法の構造は全く同じです。
    • 角度や重さを求める問題: 電荷の大きさが与えられていて、つりあうときの糸の角度 \(\theta\) や、小球の質量(重力)を問う問題。この場合も、力のつりあいの式を立て、未知数について解けばよいです。
    • 一様な電場中の問題: 小球Bの代わりに、水平方向の一様な電場 \(E\) が存在する問題。この場合、静電気力は \(F=q_A E\) となりますが、力のつりあいを考えるという問題の構造は全く同じです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 着目物体を決め、力を図示する: まず、小球Aに着目し、はたらく力(重力、張力、静電気力)をすべて矢印で図に描き込みます(フリーボディダイアグラム)。
    2. 力のつりあいの式を立てる: 角度が与えられているので、力を水平・鉛直成分に分解し、つりあいの式を立てます。このとき、別解のように \(\tan\theta\) を使うと計算が楽になることが多いです。
    3. 静電気力\(F\)を求める: つりあいの式を解いて、静電気力\(F\)の大きさをまず計算します。
    4. クーロンの法則を適用する: 求めた\(F\)をクーロンの法則の式 \(F = k \frac{|q_A q|}{r^2}\) に代入し、未知の電荷\(|q|\)を求めます。
    5. 力の種類から符号を決定する: 最後に、図から力が引力か斥力かを判断し、未知の電荷\(q\)の符号を決定します。「引き寄せられている」なら異符号、「反発している」なら同符号です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 力の成分分解での \(\sin\) と \(\cos\) の混同:
    • 誤解: 角度が与えられると、水平成分は常に \(\cos\)、鉛直成分は常に \(\sin\) のように機械的に覚えてしまい、間違える。
    • 対策: 角度 \(\theta\) が水平線となす角か、鉛直線となす角かで \(\sin\) と \(\cos\) の使い方は変わります。この問題のように鉛直線とのなす角が \(60^\circ\) の場合、水平成分は \(T\sin 60^\circ\)、鉛直成分は \(T\cos 60^\circ\) となります。毎回、分解したい力のベクトルを斜辺とする直角三角形を図に描き、定義に立ち返って確認する癖をつけましょう。
  • 電荷の符号の決定忘れ:
    • 誤解: クーロンの法則で \(|q|\) の大きさを計算しただけで満足してしまい、符号をつけるのを忘れる、または符号を間違える。
    • 対策: 計算の最後に、必ず「物理現象の確認」というステップを入れることが重要です。小球A(正電荷)がBに「引き寄せられている」という事実から、BはAと逆の「負」の電荷を持つはずだ、と論理的に符号を決定しましょう。
  • 有効数字の処理:
    • 誤解: 計算途中の \(\sqrt{3}\) や割り算で中途半端に丸めてしまい、最終的な答えに誤差が出る。
    • 対策: 計算はできるだけ文字式や分数のまま進め、最後の最後に数値を代入して計算するのが理想です。今回の計算結果 \(1.15\dots \times 10^{-7}\) は、問題文で与えられた数値(例: \(2.0 \times 10^{-7}\), \(3.0 \times 10^{-3}\))が有効数字2桁であることから、2桁に丸めて \(1.2 \times 10^{-7}\) とするのが適切です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力のつりあい条件の選択:
    • 選定理由: 問題文に「引き寄せられ、糸は鉛直線から60°傾いた」とあり、小球Aがその位置で「静止」していることが読み取れます。静止している物体にはたらく合力はゼロであるため、「力のつりあい」の法則を適用することが最も直接的な解法となります。
    • 適用根拠: ニュートンの運動の第一法則(慣性の法則)によれば、静止している物体にはたらく力のベクトル和はゼロです。この普遍的な法則が、今回の問題設定における物理的な根拠となります。
  • クーロンの法則の選択:
    • 選定理由: 最終的に求めたいのは「電気量 \(q\)」ですが、力のつりあいから直接わかるのは「静電気力 \(F\)」です。この\(F\)と\(q\)という2つの物理量を結びつける法則は、クーロンの法則以外にありません。
    • 適用根拠: 問題の小球は、その間の距離に比べて十分に小さいとみなせるため、「点電荷」として扱うことができ、点電荷間の力を記述するクーロンの法則を適用することが物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 三角比の関係式を使いこなす: 別解で示したように、水平・鉛直のつりあいの式を立てた後、辺々割り算をして \(\tan\theta = \frac{F}{W}\) の関係を導き出す方法は、多くのつりあいの問題で使える非常に強力なテクニックです。これにより、不要な未知数(この場合は張力\(T\))を消去する手間が省け、計算が大幅に簡略化されます。
  • 文字式のまま計算を進める: いきなり数値を代入するのではなく、まずは \(F = W \tan 60^\circ\) や \(|q| = \frac{F r^2}{k q_A}\) のように、文字式の関係を導き出すことを推奨します。これにより、物理的な関係性が一目でわかり、検算が容易になります。計算の最終段階で初めて数値を代入することで、途中の計算ミスや丸め誤差のリスクを減らせます。
  • 単位による検算: 式を立てた後、その両辺の単位が一致しているかを確認する習慣をつけましょう。例えば、\(|q| = \frac{F r^2}{k q_A}\) の右辺の単位は \(\displaystyle\frac{[\text{N}] \cdot [\text{m}]^2}{[\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2] \cdot [\text{C}]} = \frac{[\text{C}]^2}{[\text{C}]} = [\text{C}]\) となり、左辺の \(q\) の単位と一致します。この簡単なチェックで、式の立て間違いを効果的に防ぐことができます。

360 静電誘導

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「導体の静電誘導と不導体の誘電分極」です。帯電体を近づけたときに、導体(金属)と不導体(絶縁体)で電荷の振る舞いがどのように違うのか、その本質的なメカニズムを理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 導体と不導体の違い:
    • 導体(金属): 内部に自由に動き回れる「自由電子」を多数持つ物質。
    • 不導体(絶縁体): 電子が原子に強く束縛されており、自由に動き回れない物質。
  2. 静電誘導(導体の場合): 導体に帯電体を近づけると、導体内の自由電子が静電気力によって移動する現象。これにより、帯電体に近い側には異種の電荷が、遠い側には同種の電荷が現れる。
  3. 誘電分極(不導体の場合): 不導体に帯電体を近づけると、物質内の原子や分子がわずかに変形・整列し、物質全体として電荷の偏りが生じる現象。自由電子のように大きな距離を移動することはない。
  4. 操作の順序の重要性: 静電誘導を利用して物体を帯電させる場合、「帯電体を近づけたまま、導体を分離し、その後に帯電体を遠ざける」という操作の順序が極めて重要である。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 金属球A, Bの場合:
    • まず、負に帯電したCを近づけたときに、接触している金属球A, B全体でどのような静電誘導が起こるかを考えます。
    • 次に、Cを近づけたままAとBを分離した瞬間に、AとBにそれぞれどのような電荷が分布しているかを確定させます。
    • 最後に、Cを遠ざけると、AとBに残った電荷が全体に広がり、最終的な帯電状態が決まります。
  2. 不導体球A’, B’の場合:
    • まず、負に帯電したCを近づけたときに、不導体球A’, B’でどのような誘電分極が起こるかを考えます。
    • 次に、A’とB’を分離し、Cを遠ざけた後、A’とB’が全体として帯電しているかどうかを判断します。

金属球A, Bの電荷について

思考の道筋とポイント
金属球AとBは導体であり、接触しているため、全体を一つの大きな導体と見なすことができます。ここに負に帯電した塩化ビニル管Cを近づけると、静電誘導が起こります。この現象を、自由電子の動きに着目して段階的に追っていきます。
この設問における重要なポイント

  • 導体には自由に動ける「自由電子」が存在する。
  • 負に帯電したCを近づけると、自由電子(負の電荷)は反発してCから最も遠い位置へ移動する。
  • Cを近づけたままAとBを分離すると、移動した電子はB側に閉じ込められ、電子が不足したA側は正に帯電したままになる。

具体的な解説と立式

  1. Cを近づける: 負に帯電したCをAに近づけると、AとBの中にある自由電子は、Cからの斥力(反発力)を受けます。AとBは接触しているので、自由電子はCからできるだけ遠くへ逃げようとし、AからBへと大量に移動します。
  2. 電荷の偏り: その結果、Cに近い側のAでは電子が不足し、正の電荷を持つ原子核が表面化して正に帯電します。一方、Cから遠い側のBでは電子が過剰になり、負に帯電します。(図aの状態)
  3. AとBを分離する: Cを近づけたままAとBを分離すると、Bに移動した過剰な電子はAに戻れなくなります。また、Aの電子不足も解消されません。この瞬間に、Aは正に、Bは負に帯電することが確定します。
  4. Cを遠ざける: 最後にCを遠ざけると、Aに残った正電荷、Bに残った負電荷は、それぞれの球内で反発しあい、球全体に一様に分布します。

以上のプロセスから、操作後の金属球Aは正に、金属球Bは負に帯電します。

使用した物理公式

  • 静電誘導の原理
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

金属のボールAとBは、中に「自由電子」という動き回れるマイナスの粒がたくさんいます。

  1. ここにマイナスの電気を持つCを近づけると、自由電子たちは「マイナスが来たぞ、逃げろ!」と反発し、Cから一番遠いBの端っこに避難します。
  2. その結果、Aは電子に出ていかれてしまったのでプラスの状態に、Bは電子がたくさん集まってきてマイナスの状態になります。
  3. この状態でAとBを引き離すと、Bに避難していた電子はAに戻れなくなってしまいます。
  4. 最後にCを遠ざけても、Aはプラスのまま、Bはマイナスのままです。
結論と吟味

操作後、金属球Aは正に、Bは負に帯電します。これは静電誘導の典型的な例であり、自由電子の移動という物理的実体に基づいて論理的に説明できます。

解答 A: ① 正, B: ② 負

不導体球A’, B’の電荷について

思考の道筋とポイント
不導体球A’とB’は、導体と違って内部に自由電子を持ちません。そのため、帯電体Cを近づけても、電子が球を越えて大きく移動することはありません。起こるのは、各原子・分子レベルでのわずかな電荷の偏りである「誘電分極」です。
この設問における重要なポイント

  • 不導体には自由電子がなく、電子は原子に束縛されている。
  • 帯電体を近づけると、原子・分子内で電荷の偏り(誘電分極)が起こるが、物体をまたいで電子が移動することはない。
  • 全体として電子のやり取りがないため、操作後に物体が正や負に帯電することはない。

具体的な解説と立式

  1. Cを近づける: 負に帯電したCをA’に近づけると、A’とB’を構成する原子や分子の中で、電子(負)がCから遠い側に、原子核(正)がCに近い側にわずかにずれます。この「誘電分極」により、球の表面には、Cに近い側に正の電荷が、遠い側に負の電荷が現れたように見えます。(図bの状態)
  2. 電荷の移動は無い: しかし、これはあくまで各分子の向きが揃った結果であり、A’からB’へ電子が実際に移動したわけではありません。A’もB’も、それぞれ球全体で見れば電気的に中性のままです。
  3. A’とB’を分離し、Cを遠ざける: この状態でA’とB’を分離し、Cを遠ざけると、原子や分子の偏りは元に戻ります。
  4. 最終状態: A’からB’への電子の移動は一切なかったので、操作後のA’とB’は、どちらも帯電していない(電気的に中性な)状態のままです。

使用した物理公式

  • 誘電分極の原理
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

プラスチックのような電気を通さない不導体のボールA’とB’では、中の電子は原子から離れることができず、自由に動き回れません。

  1. ここにマイナスの電気を持つCを近づけても、電子はA’からB’へお引越しすることはできません。できるのは、各原子の中で、電子が少しだけCと反対側にズレることだけです。
  2. この結果、ボールの表面に電気が現れたように見えますが、ボール全体としてはプラスとマイナスの量は変わっておらず、電気的には中性です。
  3. したがって、この状態でA’とB’を引き離し、Cを遠ざけても、A’もB’も結局は帯電していない、元の状態のままです。
結論と吟味

操作後、不導体球A’とB’はどちらも帯電していません。導体の静電誘導と不導体の誘電分極の根本的な違い(自由電子の有無による電荷移動の可否)を正しく理解していれば、この結論は自然に導かれます。

解答 A’: ③ 帯電していない, B’: ③ 帯電していない

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 導体と不導体の物性的差異:
    • 核心: この問題の根幹は、静電場に置かれたときの「導体」と「不導体(絶縁体)」の振る舞いの違いを、その内部構造の違いから理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 導体(金属): 内部に自由に動き回れる「自由電子」を持つ。この自由電子がマクロなスケール(物体全体)で移動することで「静電誘導」が起こり、物体を正負に帯電させることが可能になる。
      • 不導体(絶縁体): 電子は原子核に強く束縛されており、自由に動けない。外部電場に対しては、原子・分子レベルでのミクロな電荷の偏りである「誘電分極」が起こるのみ。物体をまたいだ電荷の移動は起こらないため、全体として帯電させることはできない。
  • 静電誘導による帯電のプロセス:
    • 核心: 導体を静電誘導によって帯電させるには、正しい手順を踏む必要があることを理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      1. 誘導: 帯電体を導体に近づけ、電荷の偏りを生じさせる。
      2. 分離: 帯電体を近づけたまま、導体を2つに分離する(あるいは接地線を切断する)。この「分離」の操作が、電荷の偏りを固定化し、帯電を確定させる上で不可欠なステップです。
      3. 除去: 帯電体を遠ざける。これにより、分離された各導体に残った電荷が全体に広がる。

      この手順のいずれかが欠けたり、順序が異なったりすると、意図した帯電は起こりません。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 接地を利用した帯電: 1つの導体球に帯電体を近づけ、指で触れる(接地する)ことで帯電させる問題。指で触れることは、導体球を地球という巨大な導体に接続することと同じです。例えば負の帯電体を近づけると、導体球の自由電子は地球へ逃げていき、その状態で指を離せば、導体球は電子不足、すなわち正に帯電します。
    • 箔検電器の帯電: 箔検電器を静電誘導で帯電させる問題。負の帯電体を近づけて指で触れると、箔は一旦閉じた後、指を離し帯電体を遠ざけると、正に帯電して再び開きます。この一連の箔の動きを、自由電子の移動で説明させられます。
    • コンデンサーの原理: 2枚の導体板を向かい合わせ、帯電体を近づける状況は、コンデンサーの基本的な原理につながります。導体間に不導体(誘電体)を挿入すると、誘電分極によって電場が弱められ、より多くの電荷を蓄えられるようになります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 物質の種類の確認: まず、問題で扱われている物体が「導体(金属など)」なのか「不導体(ガラス、ゴム、プラスチックなど)」なのかを最初に確認します。これが振る舞いを決定する最も重要な要素です。
    2. 自由電子の動きをシミュレーションする: 導体の場合は、帯電体の符号を見て、自由電子が「引き寄せられる」のか「反発して逃げる」のかを考え、その動きを頭の中でシミュレーションします。
    3. 操作の順序を一つずつ追う: 「近づける」→「分離する」→「遠ざける」という操作を一つずつ追い、各段階で電荷がどのような状態にあるかを図に描いていくと、状況を正確に把握できます。
    4. 不導体の場合は「分極のみ」と判断: 不導体が出てきたら、「物体をまたぐ電荷の移動は起こらない。誘電分極は起こるが、全体としては帯電しない」という原則を適用します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 静電誘導と誘電分極の混同:
    • 誤解: 不導体でも、導体と同じように電子が物体間を大きく移動すると考えてしまう。
    • 対策: 「導体=自由電子が動く」「不導体=電子は動けない(分子内で偏るだけ)」という根本的な違いを明確に区別して覚えましょう。この違いが、最終的に帯電するかしないかの決定的な差を生みます。
  • 操作の順序の重要性の軽視:
    • 誤解: 先に帯電体Cを遠ざけてからAとBを分離しても、同じ結果になるだろうと考えてしまう。(実際には、Cを先に遠ざけるとAとBの電荷の偏りは解消され、分離しても両方とも帯電しない)
    • 対策: 静電誘導による帯電は、料理のレシピのようなものです。手順と順序が非常に重要です。「帯電体を近づけたまま分離する」というステップが、電荷をそれぞれの導体に「閉じ込める」ための鍵であると理解しましょう。
  • 誘電分極を「帯電」と勘違いする:
    • 誤解: 不導体でも、表面に電荷が現れる(ように見える)ため、全体が帯電したと判断してしまう。
    • 対策: 「帯電」とは、物体全体として電子が過剰または不足の状態になることです。誘電分極は、物体内部で電荷が偏っているだけで、物体全体の総電荷はゼロのまま(中性)です。この「偏り」と「全体の過不足」の違いをしっかり区別することが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • この問題は公式ではなく、物理現象の定性的・概念的な理解を問うています。
    • 自由電子モデル(導体): 導体の振る舞いを説明する根拠は、金属内の電子が特定の原子に束縛されず、金属全体を自由に動き回るガスのようなものと見なす「自由電子モデル」に基づいています。外部から電場がかかると、この電子ガス全体が移動することで静電誘導が起こります。
    • 束縛電子モデル(不導体): 不導体の振る舞いは、電子が各原子に強く束縛されているというモデルに基づいています。外部電場がかかると、電子は原子から離れることはできませんが、原子内でその分布がわずかに偏ります。このミクロな偏りが物質全体で集まることで、マクロな現象である誘電分極が引き起こされます。
    • 思考の選択: 問題を解く際には、まず対象がどちらのモデルで説明されるべき物質なのかを判断し、それに応じた物理描像(自由電子の長距離移動か、束縛電子の短距離の偏りか)を選択することが、正しい結論への第一歩となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題には定量的な計算は含まれませんが、論理的なミスをなくすためのテクニックは存在します。
  • 段階的な図示: 思考の各ステップを図に描くことが非常に有効です。
    1. 初期状態(A, Bが接触、Cは遠い)
    2. Cを近づけた状態(Aに+、Bに-が偏る)
    3. AとBを分離した状態(Aは+、Bは-で確定)
    4. Cを遠ざけた最終状態

    このように段階を追って図を描くことで、思考のプロセスが明確になり、間違いを防ぐことができます。

  • キーワードの関連付け:
    • 「導体」→「自由電子」→「静電誘導」→「(分離すれば)帯電する」
    • 「不導体」→「束縛電子」→「誘電分極」→「(分離しても)帯電しない」

    このようにキーワードをセットで覚えておくと、問題文から適切な物理現象を素早く連想できるようになります。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

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