問題31 弾性力と摩擦力による運動 (岡山大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解1: 系全体(A+B)の運動方程式を用いた解法
- 模範解答が物体Aと物体Bそれぞれの運動方程式を立てて連立するのに対し、別解1ではAとBを一体とみなして系全体の加速度を求め、そこから内力である \(f\) を導出します。
- 設問(1)(2)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
- 運動方程式を微分方程式として扱い、それを積分することで「仕事とエネルギーの関係」を導出します。設問(1)と(2)を一つの物理モデルから一貫して説明します。
- 設問(2)の別解1: 系全体(A+B)の運動方程式を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 系全体の解法: 未知数である内力 \(f\) を無視して加速度をダイレクトに求められるため、計算の見通しが良くなり、検算としても有効です。
- 微積分の解法: 公式の暗記ではなく、運動方程式という基本原理から全ての物理法則(エネルギー保存則など)が導かれる過程を理解することで、応用力が身につきます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「摩擦力を含む系でのエネルギー収支と、接触する2物体の運動方程式」です。
ばねの弾性力による振動運動に、一定の摩擦力が加わることでエネルギーが散逸していく様子と、2物体が接触して運動する際の力のやり取りを解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 仕事とエネルギーの関係: 物体の運動エネルギーの変化量は、物体に働く力がした仕事の総和に等しい。特に、非保存力(摩擦力)が仕事をする場合、力学的エネルギーは保存されず、その変化量は非保存力の仕事に等しくなります。
- 運動方程式: 質量 \(m\)、加速度 \(a\)、力 \(F\) の関係 \(ma=F\) を、物体ごとに正しく立てることが基本です。
- 作用・反作用の法則: 物体Aが物体Bを押す力と、物体Bが物体Aを押し返す力は、大きさが等しく向きが逆です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、摩擦力がした仕事を計算し、エネルギー原理(力学的エネルギーの変化=非保存力の仕事)を用いて、停止する位置 \(x_2\) を求めます。
- (2)では、AとBそれぞれについて運動方程式を立式し、離れる条件(接触力 \(f=0\))を用いてその時の位置 \(x_3\) を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、物体Bに働く摩擦力の向きと大きさを特定します。
物体はばねに押されて右向きに運動を始めるため、床から受ける動摩擦力は運動方向と逆の「左向き」になります。
次に、エネルギーの状態を比較します。
- 初めの状態: ばねの長さ \(x_1\)、速度 \(0\)。
- 終わりの状態: ばねの長さ \(x_2\)、速度 \(0\)。
この間の力学的エネルギーの変化が、摩擦力がした仕事と等しいという関係式(エネルギー原理)を立てます。
この設問における重要なポイント
- 摩擦力の向き: 運動方向(右)と逆向き(左)です。
- 仕事の符号: 摩擦力は運動を妨げる向きに働くため、その仕事は負になります。
- ばねの伸び縮み: 自然長 \(x_0\) からの変位を正しく扱います。長さが \(x\) のとき、縮み(または伸び)の大きさは \(|x – x_0|\) です。
具体的な解説と立式
[空欄 ア]
物体B(質量 \(M\))にはたらく垂直抗力の大きさは \(N = Mg\) です。
動摩擦係数が \(\mu’\) なので、動摩擦力の大きさ \(F_{\text{摩擦}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{摩擦}} &= \mu’ N \\[2.0ex]
&= \mu’ Mg
\end{aligned}
$$
物体はばねの長さが \(x_1\) の位置から \(x_2\) の位置まで移動しました。
図より \(x_2 > x_1\) なので、移動距離 \(s\) は \(s = x_2 – x_1\) です。
摩擦力は左向き、移動は右向きなので、摩擦力がした仕事 \(W\) は「力 \(\times\) 距離 \(\times (-1)\)」となります。
$$
\begin{aligned}
W &= – F_{\text{摩擦}} \cdot s \\[2.0ex]
&= – \mu’ Mg (x_2 – x_1)
\end{aligned}
$$
[空欄 イ]
運動の初め(長さ \(x_1\))と終わり(長さ \(x_2\))で、速度はいずれも \(0\) なので運動エネルギーの変化は \(0\) です。
したがって、力学的エネルギーの変化は「弾性エネルギーの変化」のみとなります。
自然長は \(x_0\) なので、それぞれの位置でのばねの縮みは \(x_0 – x_1\)、\(x_0 – x_2\) です。
「(後の力学的エネルギー) \(-\) (前の力学的エネルギー) \(=\) (非保存力がした仕事)」より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k(x_0 – x_2)^2 – \frac{1}{2}k(x_0 – x_1)^2 &= W \\[2.0ex]
\frac{1}{2}k(x_0 – x_2)^2 – \frac{1}{2}k(x_0 – x_1)^2 &= – \mu’ Mg (x_2 – x_1) \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 動摩擦力: \(F’ = \mu’ N\)
- 仕事: \(W = Fs \cos \theta\)
- 弾性エネルギー: \(U = \frac{1}{2}kx^2\)
- 仕事とエネルギーの関係: \(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\)
式①を整理して \(x_2\) を求めます。
左辺は「2乗引く2乗」の形をしているので、因数分解 \(A^2 – B^2 = (A+B)(A-B)\) を利用すると計算がスムーズです。
$$
\begin{aligned}
\text{左辺} &= \frac{1}{2}k \left\{ (x_0 – x_2)^2 – (x_0 – x_1)^2 \right\} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}k \left\{ (x_0 – x_2) + (x_0 – x_1) \right\} \left\{ (x_0 – x_2) – (x_0 – x_1) \right\} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}k (2x_0 – x_1 – x_2) (x_1 – x_2) \\[2.0ex]
&= – \frac{1}{2}k (2x_0 – x_1 – x_2) (x_2 – x_1)
\end{aligned}
$$
これを式①の右辺と等置します。
$$
\begin{aligned}
– \frac{1}{2}k (2x_0 – x_1 – x_2) (x_2 – x_1) &= – \mu’ Mg (x_2 – x_1)
\end{aligned}
$$
\(x_1 \neq x_2\) より \(x_2 – x_1 \neq 0\) なので、両辺を \(-(x_2 – x_1)\) で割ることができます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k (2x_0 – x_1 – x_2) &= \mu’ Mg
\end{aligned}
$$
\(x_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2x_0 – x_1 – x_2 &= \frac{2\mu’ Mg}{k} \\[2.0ex]
x_2 &= 2x_0 – x_1 – \frac{2\mu’ Mg}{k}
\end{aligned}
$$
ばねに蓄えられたエネルギーを使って物体AとBが動き出しますが、床の摩擦によってエネルギーがどんどん奪われていきます。
「最初に持っていたばねのエネルギー」と「最後に残ったばねのエネルギー」の差額が、ちょうど「摩擦によって熱として捨てられたエネルギー(摩擦力の仕事)」と等しくなります。
この収支決算の式を作ることで、どこまで進んで止まるか(\(x_2\))を計算しました。
計算の際、\(x^2\) を展開して解の公式を使うよりも、\(A^2 – B^2\) の因数分解を使うと、共通因数 \((x_2 – x_1)\) が見えてきて簡単に解くことができます。
\(x_2 = 2x_0 – x_1 – \frac{2\mu’ Mg}{k}\) となりました。
もし摩擦がない(\(\mu’ = 0\))場合、\(x_2 = 2x_0 – x_1\) となり、変形すると \(x_0 – x_2 = -(x_0 – x_1)\) となります。これは自然長 \(x_0\) を中心とした対称な位置まで伸びることを意味し、単振動の性質と一致します。
摩擦がある場合、その分だけ到達点 \(x_2\) が手前(左側)になるため、マイナスの項がついていることは物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
AとBが接触して一緒に運動している間の運動方程式を立てます。
加速度を \(a\)(右向き正)、AがBを押す力を \(f\) とします。
作用・反作用の法則により、BはAから右向きに \(f\) の力を受け、逆にAはBから左向きに \(f\) の力を受けます。
それぞれの物体について、働く力をすべて書き出し、運動方程式 \(ma = F\) を立式します。
この設問における重要なポイント
- 力の向きの整理:
- 物体A: ばねの弾性力(右向き)、Bからの反作用(左向き)。
- 物体B: Aからの押す力(右向き)、動摩擦力(左向き)。
- ばねの弾性力: ばねの長さが \(x\) のとき、縮みは \(x_0 – x\) です。\(x < x_0\) の範囲では、ばねは伸びようとするので、力は右向きに \(k(x_0 – x)\) となります。
- 離れる条件: 2物体が接触して運動している間は \(f > 0\) ですが、離れる瞬間に接触力は \(0\) になります。つまり \(f=0\) が離れる条件です。
具体的な解説と立式
[空欄 ウ] 物体Aの運動方程式
右向きを正とします。
物体A(質量 \(m\))に働く力は以下の通りです。
- 右向きの力: ばねの弾性力 \(k(x_0 – x)\)
- 左向きの力: Bから押し返される力 \(f\)
よって、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
ma &= (\text{右向きの力}) – (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
ma &= k(x_0 – x) – f \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
[空欄 エ] 物体Bの運動方程式
同様に右向きを正とします。
物体B(質量 \(M\))に働く力は以下の通りです。
- 右向きの力: Aから押される力 \(f\)
- 左向きの力: 動摩擦力 \(\mu’ Mg\)
よって、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Ma &= (\text{右向きの力}) – (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
Ma &= f – \mu’ Mg \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
[空欄 オ] 離れるときのばねの長さ \(x_3\)
AとBが離れる瞬間、AがBを押す力 \(f\) が \(0\) になります。
式②と式③に \(f=0\) を代入して、そのときの加速度 \(a\) と位置 \(x = x_3\) を求めます。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- フックの法則: \(F = kx\)
- 作用・反作用の法則
まず、式③で \(f=0\) とすると、離れる瞬間の加速度 \(a\) が求まります。
$$
\begin{aligned}
Ma &= 0 – \mu’ Mg \\[2.0ex]
a &= – \mu’ g
\end{aligned}
$$
次に、式②に \(f=0\)、\(x=x_3\)、および求めた \(a = – \mu’ g\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
m (- \mu’ g) &= k(x_0 – x_3) – 0 \\[2.0ex]
– \mu’ mg &= k(x_0 – x_3)
\end{aligned}
$$
これを \(x_3\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
k(x_0 – x_3) &= – \mu’ mg \\[2.0ex]
x_0 – x_3 &= – \frac{\mu’ mg}{k} \\[2.0ex]
x_3 &= x_0 + \frac{\mu’ mg}{k}
\end{aligned}
$$
AとBが一緒に動いているとき、Aはばねに押されて加速しようとしますが、前のBが邪魔で、Bを押しながら進みます。一方、BはAに押してもらって進みますが、床との摩擦が邪魔をします。
ばねが伸びていくと、ばねの押す力はだんだん弱くなります。ある時点で、ばねの力が弱くなりすぎて、Aが「Bを摩擦に逆らって押し続ける」ことができなくなります。
この瞬間、AがBを押す力がゼロになり、2人はお別れします。
それぞれの運動方程式(力の関係式)を作り、「押す力がゼロ」という条件を入れることで、その別れの場所 \(x_3\) を特定しました。
答えは \(x_3 = x_0 + \frac{\mu’ mg}{k}\) です。
第2項 \(\frac{\mu’ mg}{k}\) は正の値なので、\(x_3 > x_0\) となります。
つまり、自然長 \(x_0\) を超えて、ばねが少し伸びた位置で離れることになります。
これは、自然長を過ぎるとばねの力が左向き(引き戻す向き)に変わるため、Aにはブレーキがかかり始めますが、Bは摩擦力(左向き)によってのみブレーキがかかるため、減速の仕方に差が出る(Aの方が強く引き戻される)ことから、AがBから遅れて離れるという現象と整合します。
思考の道筋とポイント
AとBが接触して一緒に運動している間は、これらを「質量 \(m+M\) のひとつの合体した物体」とみなすことができます。
この視点に立つと、AとBの間で及ぼし合う力 \(f\) は「内力」となり、運動方程式には現れません。
系全体の外力のみに着目して加速度 \(a\) を求め、その後でB単体の運動方程式に戻って \(f\) を考えることで、計算を効率化できます。
この設問における重要なポイント
- 系の定義: AとBをまとめて一つの系とします。
- 外力の抽出: 系全体に働く外力は、ばねの弾性力(右向き)と、Bに働く摩擦力(左向き)のみです。
具体的な解説と立式
AとB全体(質量 \(m+M\))に対する運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(m+M)a &= (\text{ばねの力}) – (\text{摩擦力}) \\[2.0ex]
(m+M)a &= k(x_0 – x) – \mu’ Mg \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
また、B単体(質量 \(M\))の運動方程式は以下の通りです(これはメイン解法と同じ)。
$$
\begin{aligned}
Ma &= f – \mu’ Mg \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式(系全体): \(M_{\text{全}} a = F_{\text{外力}}\)
離れる瞬間は \(f=0\) となるので、式⑤より
$$
\begin{aligned}
Ma &= 0 – \mu’ Mg \\[2.0ex]
a &= – \mu’ g
\end{aligned}
$$
これを式④に代入して \(x_3\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
(m+M)(-\mu’ g) &= k(x_0 – x_3) – \mu’ Mg \\[2.0ex]
– \mu’ mg – \mu’ Mg &= k(x_0 – x_3) – \mu’ Mg
\end{aligned}
$$
両辺の \(- \mu’ Mg\) が消去されます。
$$
\begin{aligned}
– \mu’ mg &= k(x_0 – x_3) \\[2.0ex]
x_0 – x_3 &= – \frac{\mu’ mg}{k} \\[2.0ex]
x_3 &= x_0 + \frac{\mu’ mg}{k}
\end{aligned}
$$
2つの物体を「1つの塊」として見ることで、間の力 \(f\) を無視して全体の動き(加速度)を式にしました。
「離れる」ということは、Bにとっては「後ろから押してくれる力がなくなる」ということなので、B単体の式からその時の加速度がすぐに分かります。
それを全体の式に戻すことで、面倒な連立方程式を解くことなく、すっきりと答えにたどり着けました。
メインの解法と全く同じ結果 \(x_3 = x_0 + \frac{\mu’ mg}{k}\) が得られました。
この解法は、\(f\) を消去する計算プロセスを物理的な意味(全体を見る)に置き換えたものであり、非常に有効です。
思考の道筋とポイント
物理学の基本原理である「運動方程式」から出発し、数学的な操作(積分)によって「エネルギー原理」を導出します。
これにより、問(1)のエネルギーの式と問(2)の力の式が、実は一つの根源的な式から派生したものであることを示します。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式の積分: 運動方程式の両辺に速度 \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けて時間積分(または位置積分)することで、運動エネルギーと仕事の関係式が得られます。
- 一貫性: (1)のエネルギー保存則も、(2)の力のつり合いも、すべて運動方程式に含まれています。
具体的な解説と立式
AとBが一体となって運動しているときの運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
(m+M) \frac{d^2x}{dt^2} &= k(x_0 – x) – \mu’ Mg \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
【問(1)の導出:エネルギー積分の実行】
この式の両辺に \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けて、時刻 \(t_1\)(位置 \(x_1\)、速度 \(0\))から \(t_2\)(位置 \(x_2\)、速度 \(0\))まで積分します。
左辺の積分は運動エネルギーの変化になります。
$$
\begin{aligned}
\int_{t_1}^{t_2} (m+M) \frac{dv}{dt} v \, dt &= \left[ \frac{1}{2}(m+M)v^2 \right]_{0}^{0} \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
右辺の積分は、変数を \(t\) から \(x\) に置換して計算します(\(v dt = dx\))。
$$
\begin{aligned}
\int_{x_1}^{x_2} \{ k(x_0 – x) – \mu’ Mg \} \, dx
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 微積分の基本定理: \(\int \frac{dv}{dt} v dt = \frac{1}{2}v^2\)
ここで、\(k(x_0 – x) = -k(x – x_0)\) と変形して積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
\int_{x_1}^{x_2} \{ -k(x – x_0) – \mu’ Mg \} \, dx &= \left[ -\frac{1}{2}k(x – x_0)^2 – \mu’ Mg x \right]_{x_1}^{x_2} \\[2.0ex]
&= \left\{ -\frac{1}{2}k(x_2 – x_0)^2 – \mu’ Mg x_2 \right\} – \left\{ -\frac{1}{2}k(x_1 – x_0)^2 – \mu’ Mg x_1 \right\}
\end{aligned}
$$
左辺が \(0\) なので、右辺 \( = 0\) となり、整理すると以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k(x_2 – x_0)^2 – \frac{1}{2}k(x_1 – x_0)^2 &= – \mu’ Mg (x_2 – x_1)
\end{aligned}
$$
これは問(1)で立てたエネルギーの式①と完全に一致します。
【問(2)の導出:運動方程式の変形】
次に、内力 \(f\) を求めるために、B単体の運動方程式を考えます。
$$
\begin{aligned}
M a &= f – \mu’ Mg \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
式⑥より、系全体の加速度 \(a\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{k(x_0 – x) – \mu’ Mg}{m+M}
\end{aligned}
$$
これを式⑦に代入して \(f\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
M \left( \frac{k(x_0 – x) – \mu’ Mg}{m+M} \right) &= f – \mu’ Mg \\[2.0ex]
f &= \frac{M}{m+M} \{ k(x_0 – x) – \mu’ Mg \} + \mu’ Mg \\[2.0ex]
&= \frac{M k(x_0 – x) – \mu’ M^2 g + \mu’ Mg(m+M)}{m+M} \\[2.0ex]
&= \frac{M k(x_0 – x) + \mu’ mMg}{m+M}
\end{aligned}
$$
離れる条件 \(f=0\) より、分子が \(0\) になるときを求めます。
$$
\begin{aligned}
M k(x_0 – x_3) + \mu’ mMg &= 0
\end{aligned}
$$
両辺を \(M\) で割り、\(x_3\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
k(x_0 – x_3) &= – \mu’ mg \\[2.0ex]
x_0 – x_3 &= – \frac{\mu’ mg}{k} \\[2.0ex]
x_3 &= x_0 + \frac{\mu’ mg}{k}
\end{aligned}
$$
「エネルギーの式」は、実は「運動方程式を距離で積み重ねた(積分した)もの」に過ぎません。
この別解では、まず親玉である運動方程式を立て、それを積分することで問(1)の答えを出し、変形することで問(2)の答えを出しました。
バラバラに見える設問も、根っこにある物理法則はたった一つであることを示しています。
問(1)、問(2)ともに、メインの解法と完全に一致する結果が得られました。
これにより、エネルギー保存則や力のつり合いといった個別の公式が、運動方程式という一つの原理から数学的に導かれることが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 仕事と力学的エネルギーの関係
- 核心: 摩擦力のような非保存力が仕事をする場合、力学的エネルギーは保存されず、その変化量は非保存力がした仕事の総和に等しくなります。
- 理解のポイント:
- 保存力(重力、弾性力)による仕事は位置エネルギーの変化として扱われるため、左辺のエネルギー項に含まれます。
- 非保存力(摩擦力、空気抵抗など)による仕事だけを、エネルギーの「流出入」として右辺(または変化量)に記述します。
- 接触する2物体の運動方程式と離れる条件
- 核心: 接触して一緒に運動する物体間には、作用・反作用の法則に従う内力(垂直抗力)が働きます。「離れる」とは、この接触力が \(0\) になる瞬間を指します。
- 理解のポイント:
- 一体化: 接触して一緒に動いている間は、2つの物体は同じ加速度 \(a\) を持ちます。
- 離れる条件: 接触力 \(f\) は常に「押す」向きにしか働けません(引くことはできない)。したがって、\(f=0\) となる瞬間が、一体運動から分離運動へと切り替わる境界点となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 摩擦のある面上の単振動: 今回のように摩擦がある場合、振動の中心がずれたり、振幅が半周期ごとに減少したりします。「半周期ごとのエネルギー収支」を立てて、振幅の減少量や停止位置を求めるのが定石です。
- 積み重なった物体の運動: 上に物体が乗っている場合も、横に並んでいる場合と同様に、接触面の摩擦力や垂直抗力を内力として扱います。「滑り出す条件(静止摩擦力の限界)」や「離れる条件(垂直抗力が0)」は、それぞれの接触面での力の限界で決まります。
- 初見の問題での着眼点:
- 非保存力の有無: 摩擦や空気抵抗があるかを確認します。ある場合は、エネルギー保存則ではなく「エネルギーの変化=非保存力の仕事」の式を第一選択とします。
- 系の選択: 複数の物体がある場合、「個別に式を立てる」か「全体をまとめて見る」かを吟味します。内力(間の力)を求めたいなら個別、加速度だけなら全体、と使い分けると計算効率が上がります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ばねの縮みと座標の混同:
- 誤解: 弾性エネルギーを \(\frac{1}{2}kx^2\) と機械的に書いてしまう(\(x\) は座標なのに、それを「伸び」と勘違いする)。
- 対策: 必ず「自然長からの変位」を確認します。自然長が \(x_0\) なら、座標 \(x\) での伸び縮みは \(|x – x_0|\) です。エネルギーの式には \(\frac{1}{2}k(x – x_0)^2\) と書く癖をつけましょう。
- 摩擦力の向きの固定観念:
- 誤解: 「摩擦力は常に左向き」などと決めつけてしまい、物体が折り返した後の運動で符号を間違える。
- 対策: 摩擦力は常に「接触面での相対運動を妨げる向き」に働きます。物体が一度停止して逆向きに動き出したら、摩擦力の向きも逆転します。運動のフェーズごとに必ず図を描き直し、力の向きを再確認しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(エネルギー原理):
- 選定理由: 初めと終わりの「速度(\(0\))」と「位置」の情報があり、途中の時間の経過が問われていないため、運動方程式を解くよりもエネルギーの式を使う方が圧倒的に速く解けるからです。
- 適用根拠: 動摩擦力は一定であり、移動距離も明確なため、仕事の計算(力 \(\times\) 距離)が容易に実行できるためです。
- 問(2)での公式選択(運動方程式):
- 選定理由: 「力 \(f\)」や「加速度 \(a\)」といった、ある瞬間の状態量を問われているため、積算量であるエネルギーではなく、瞬間の力のバランスを記述する運動方程式が最適です。
- 適用根拠: 慣性系における物体の運動記述の基本であり、接触力 \(f\) を明示的に式に含めることができるためです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 因数分解の活用:
- 意識: \(x_2^2 – x_1^2\) のような「2乗の差」の項が出てきたら、展開せずに \((x_2 – x_1)(x_2 + x_1)\) と因数分解することを第一感とします。
- 実践: 特にエネルギーの式では「変化量」を扱うため、共通因数(移動距離 \(x_2 – x_1\))でくくれるケースが頻出します。これにより次数が下がり、計算ミスが激減します。
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 導出した答えの式の次元(単位)が、求めたい物理量と一致しているか確認します。
- 実践: 例えば \(x_3 = x_0 + \frac{\mu’ mg}{k}\) なら、第2項は \(\frac{[\text{力}]}{[\text{力}/\text{長さ}]} = [\text{長さ}]\) となり、\(x_0\) と足し算できる正しい次元だと分かります。もし \(g\) が抜けていたりすると次元が合わなくなります。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
問題32 ゴムひもに取りつけられた物体の運動 (学習院大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(5)の別解1: 単振動の対称性を用いた解法
- 模範解答がエネルギー保存則を用いて計算するのに対し、別解1では物体の運動を「減衰のない単振動の半周期分」とみなし、振動中心と端点の対称性から瞬時に移動距離を求めます。
- 設問(4)(5)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
- 運動方程式を立式し、それを積分することでエネルギー原理を導出します。ゴムひもの状態(たるむ・伸びる)によるポテンシャルエネルギーの違いを統一的に扱います。
- 設問(5)の別解1: 単振動の対称性を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 単振動の解法: エネルギーの2次方程式を解く手間が省け、計算ミスを大幅に減らせる強力な時短テクニックです。
- 微積分の解法: 「公式の適用」ではなく、運動方程式という第一原理から現象を解析する視点を養い、応用力を高めます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ゴムひもの弾性力と摩擦力が働く物体の運動」です。
ばねと異なり、ゴムひもは「伸びているときだけ力を及ぼし、縮むとたるんで力が働かなくなる」という特性を持ちます。この点に注意しながら、力のつりあいやエネルギーの収支を考えます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 最大摩擦力: 物体が動き出す直前、静止摩擦力は最大値 \(\mu N\) に達します。
- 仕事とエネルギーの関係: 非保存力(動摩擦力)が仕事をする場合、力学的エネルギーの変化量はその仕事に等しくなります。
- ゴムひもの特性: 自然長より長い(伸びている)ときはばねと同じ弾性エネルギーを持ちますが、自然長以下(たるんでいる)ときは弾性エネルギーは \(0\) です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、動き出す瞬間の力のつりあいから伸び \(a\) を求めます。
- (2)(3)では、弾性エネルギーと摩擦力の仕事を定義に従って計算します。
- (4)(5)では、エネルギー原理(力学的エネルギーの変化=摩擦力の仕事)を用いて、停止位置や摩擦係数の関係を導きます。ゴムひもの状態によって弾性エネルギーの項が変わることに注目します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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