問題160 波の屈折と虹のしくみ (16 北海道大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)(ウ)の別解: フェルマーの原理(微積分)を用いた解法
- 模範解答がホイヘンスの原理に基づく幾何学的な波面の作図から導出するのに対し、別解では「光は最短時間で到達する経路を選ぶ」というフェルマーの原理から、微積分を用いて解析的に屈折の法則を導出します。
- 設問(2)(ク)の別解: 微積分を用いた極値の導出
- 模範解答が与えられたグラフ(図3)から視覚的に最大値を読み取るのに対し、別解では屈折の法則と反射角の式を連立させ、微積分を用いて数学的に最大値を与える入射角を厳密に導出します。
- 設問(1)(ウ)の別解: フェルマーの原理(微積分)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- フェルマーの原理は、波動光学だけでなく幾何光学の根本原理であり、より高度な物理的直観を養うことができます。
- グラフが与えられていない場合でも、自力で虹が最も明るくなる角度(虹角)を計算できる強力な解析力を身につけることができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「波の屈折の原理と、水滴による虹の形成メカニズム」です。
波の基本的な性質から出発し、幾何光学を用いて自然現象(虹)を定量的に説明します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ホイヘンスの原理: 波面上の各点が新たな波源となり、それらの素元波の包絡面が次の波面を形成します。
- 屈折の法則(スネルの法則): 異なる媒質へ波が進入する際、速さの比と入射角・屈折角の正弦(サイン)の比が一定になります。
- 光の分散: 光の波長によって媒質中の屈折率(進む速さ)が異なるため、色が分かれて見える現象です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、波の基本原理を確認し、図形的な関係から屈折の法則を導出します。また、光の波長と速さの関係を整理します。
- (2)では、水滴を球とみなし、内部での反射・屈折の幾何学的な経路を追跡して偏角を計算します。さらに、分散の知識を用いて虹の色の並びを判定します。
問(1) (ア)(イ)(ウ)
思考の道筋とポイント
波の伝わり方の基本原理を確認し、ホイヘンスの原理を用いて屈折の法則を導出します。
図1および模範解答の図aにおいて、波面が媒質1から媒質2へ進む際の幾何学的な関係に着目します。
この設問における重要なポイント
- 重ね合わせの原理: 複数の波が重なるとき、合成波の変位は各波の変位の和になります。
- ホイヘンスの原理: 波面上の各点が新たな「波源」となります。
- 波面と射線の直交性: 波の進む向き(射線)は、常に波面と垂直に交わります。
具体的な解説と立式
(ア) 2つの波が同時にきたときの変位 \(y\) は、それぞれの変位 \(y_1\) と \(y_2\) の和で表されます。
(イ) ホイヘンスの原理によれば、波面上の各点は新たな球面波を生み出す「波源」となります。
(ウ) 模範解答の図aを用いて屈折の法則を導出します。
波面 \(\text{AB}\) 上の点 \(\text{A}\) が境界面に達した瞬間を時刻 \(0\) とします。
点 \(\text{B}\) が媒質1の中を速さ \(v_1\) で進み、境界面上の点 \(\text{D}\) に達するまでの時間を \(\Delta t\) とします。
この間に進む距離 \(\text{BD}\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\text{BD} &= v_1 \Delta t \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
同じ時間 \(\Delta t\) の間に、点 \(\text{A}\) から出た球面波は媒質2の中を速さ \(v_2\) で進み、半径 \(\text{AC}\) の球面波となります。
$$
\begin{aligned}
\text{AC} &= v_2 \Delta t \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
直角三角形 \(\text{ABD}\) において、\(\angle\text{BAD} = \theta_1\) であるため、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\text{BD} &= \text{AD} \sin\theta_1 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
直角三角形 \(\text{ACD}\) において、\(\angle\text{ADC} = \theta_2\) であるため、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\text{AC} &= \text{AD} \sin\theta_2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動の距離: \(x = vt\)
- 直角三角形の三角比: \(\sin\theta = \frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}}\)
式①と式③より、\(\Delta t\) を消去して \(\text{AD}\) との関係を導きます。
$$
\begin{aligned}
v_1 \Delta t &= \text{AD} \sin\theta_1 \\[2.0ex]
\Delta t &= \frac{\text{AD} \sin\theta_1}{v_1}
\end{aligned}
$$
同様に、式②と式④より、
$$
\begin{aligned}
v_2 \Delta t &= \text{AD} \sin\theta_2 \\[2.0ex]
\Delta t &= \frac{\text{AD} \sin\theta_2}{v_2}
\end{aligned}
$$
これら2つの \(\Delta t\) の式を等置します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\text{AD} \sin\theta_1}{v_1} &= \frac{\text{AD} \sin\theta_2}{v_2}
\end{aligned}
$$
両辺を \(\text{AD}\) で割り、整理して \(\frac{v_2}{v_1}\) の形にします。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta_1}{v_1} &= \frac{\sin\theta_2}{v_2} \\[2.0ex]
\frac{v_2}{v_1} &= \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1}
\end{aligned}
$$
波が斜めに境界にぶつかるとき、波の「左端」と「右端」で境界に到達するタイミングがずれます。
媒質2に入ると波の進むスピードが変わるため、先に境界に入った側と後から入った側で進む距離に差が生じ、結果として波の進む向きが曲がります。
この曲がり具合(角度)とスピードの関係を、直角三角形の辺の長さの比を使って計算したのが屈折の法則です。
導出された式 \(\frac{v_2}{v_1} = \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1}\) は、スネルの法則として知られる基本的な物理法則と完全に一致しており、妥当です。
思考の道筋とポイント
「光は最短時間で到達する経路を選ぶ」というフェルマーの原理から、微積分を用いて解析的に屈折の法則を導出します。
幾何学的な作図に頼らず、関数の最小値を求める数学的なアプローチをとります。
この設問における重要なポイント
- フェルマーの原理: 波が2点間を伝播する際、所要時間が極値(通常は最小値)となる経路を通ります。
- 関数の極値: 関数 \(f(x)\) が最小値をとるとき、その導関数は \(f'(x) = 0\) となります。
具体的な解説と立式
媒質1の点 \(\text{P}(0, h_1)\) から媒質2の点 \(\text{Q}(L, -h_2)\) へ、境界面上の点 \(\text{R}(x, 0)\) を経由して進むとします。
\(\text{PR}\) 間の距離 \(L_1\)、\(\text{RQ}\) 間の距離 \(L_2\) は三平方の定理より以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
L_1 &= \sqrt{x^2 + h_1^2} \\[2.0ex]
L_2 &= \sqrt{(L-x)^2 + h_2^2}
\end{aligned}
$$
点 \(\text{P}\) から点 \(\text{Q}\) までの所要時間 \(t\) は、それぞれの媒質での速さ \(v_1, v_2\) を用いて次のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{L_1}{v_1} + \frac{L_2}{v_2}
\end{aligned}
$$
フェルマーの原理より、時間 \(t\) が最小となるように経路(座標 \(x\))が決まるため、以下の条件が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dt}{dx} &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- フェルマーの原理(最小時間の原理)
- 合成関数の微分: \(\frac{d}{dx} \sqrt{f(x)} = \frac{f'(x)}{2\sqrt{f(x)}}\)
時間 \(t\) の式に \(L_1, L_2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{\sqrt{x^2 + h_1^2}}{v_1} + \frac{\sqrt{(L-x)^2 + h_2^2}}{v_2}
\end{aligned}
$$
時間 \(t\) を \(x\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dt}{dx} &= \frac{1}{v_1} \cdot \frac{2x}{2\sqrt{x^2 + h_1^2}} + \frac{1}{v_2} \cdot \frac{2(L-x) \cdot (-1)}{2\sqrt{(L-x)^2 + h_2^2}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{v_1} \frac{x}{\sqrt{x^2 + h_1^2}} – \frac{1}{v_2} \frac{L-x}{\sqrt{(L-x)^2 + h_2^2}}
\end{aligned}
$$
これが \(0\) になるので、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{v_1} \frac{x}{\sqrt{x^2 + h_1^2}} – \frac{1}{v_2} \frac{L-x}{\sqrt{(L-x)^2 + h_2^2}} &= 0
\end{aligned}
$$
ここで、図の幾何学的関係から、入射角 \(\theta_1\) と屈折角 \(\theta_2\) について以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_1 &= \frac{x}{\sqrt{x^2 + h_1^2}} \\[2.0ex]
\sin\theta_2 &= \frac{L-x}{\sqrt{(L-x)^2 + h_2^2}}
\end{aligned}
$$
これらを微分の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta_1}{v_1} – \frac{\sin\theta_2}{v_2} &= 0 \\[2.0ex]
\frac{\sin\theta_1}{v_1} &= \frac{\sin\theta_2}{v_2}
\end{aligned}
$$
整理して \(\frac{v_2}{v_1}\) の形にします。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_2}{v_1} &= \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1}
\end{aligned}
$$
砂浜(走るのが速い場所)から海(泳ぐのが遅い場所)にいる人を助けに行くとき、一直線に向かうよりも、砂浜を少し長めに走ってから海に入る方が、トータルの時間は短くなります。
光もこれと同じように、「一番早く目的地に着くルート」を自動的に選んで進みます。この「時間が最小になる」という条件を数学の微分を使って計算すると、自然と屈折の法則の式が導き出されます。
幾何学的な作図を用いず、時間最小の原理から解析的に導出した結果が、メイン解法と完全に一致しました。これにより、屈折現象がフェルマーの原理に支配されていることが確認できます。
問(1) (エ)(オ)(カ)
思考の道筋とポイント
光の基本的な性質(速さ、波長、色)に関する知識を確認し、光の分散(波長による速さの違い)について考察します。
この設問における重要なポイント
- 真空中の光速: 約 \(3.0 \times 10^8\,\text{m}/\text{s}\) は物理の基本定数です。
- 可視光の波長: 赤色が最も長く、紫色が最も短くなります。
- 光の分散: 物質中では、波長が短い光ほど屈折率が大きくなり(大きく曲がり)、進む速さが遅くなります。
具体的な解説と立式
(エ) 真空中の光速 \(c\) は、波長に関係なく一定の値をとります。
(オ) 人間の目に見える可視光の中で、最も波長が長いのは赤色、最も短いのは紫色です。
(カ) 問題文より、波長が短くなるほど速さがどうなるかを考えます。
模範解答のヒントにあるように、波長が短い光(例:紫)ほど、物質に入ったときに大きく曲がります。
大きく曲がるということは、入射角 \(\theta_1\) に対して屈折角 \(\theta_2\) がより小さくなることを意味します。
屈折の法則より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_2}{v_1} &= \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(\frac{v_2}{v_1} = \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1}\)
媒質1を真空(速さ \(v_1 = c\))、媒質2を物質(速さ \(v_2 = v\))とします。
$$
\begin{aligned}
\frac{v}{c} &= \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1} \\[2.0ex]
v &= c \frac{\sin\theta_2}{\sin\theta_1}
\end{aligned}
$$
入射角 \(\theta_1\) を一定とした場合、波長が短くなると屈折角 \(\theta_2\) が小さくなります。
\(0^\circ < \theta_2 < 90^\circ\) の範囲では、\(\theta_2\) が小さくなると \(\sin\theta_2\) も小さくなります。
したがって、上式より物質中の速さ \(v\) も小さくなります。
光は波長(波の長さ)によって色が違います。赤い光は波長が長く、紫の光は波長が短いです。
光が水やガラスに入るとき、波長が短い紫の光ほど「進みにくく」なり、スピードがガクッと落ちます。スピードが落ちる割合が大きいほど、進行方向も大きく曲げられます。
波長が短いほど屈折率が大きくなる(大きく曲がる)という分散の性質と、屈折率が大きいほど媒質中の光速が遅くなるという関係性が正しく結びついており、妥当な結論です。
問(2) (キ)(ク)(a)
思考の道筋とポイント
水滴内で1回反射して出てくる光(主虹)の経路を幾何学的に解析し、反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) を求めます。
さらに、与えられたグラフから反射光が最も強くなる条件を読み取ります。
この設問における重要なポイント
- 水滴内の幾何学: 水滴を球とみなすため、中心 \(\text{O}\) と入射点・反射点を結ぶ線分はすべて半径となり、二等辺三角形が形成されます。
- 偏角の計算: 光がどれだけ向きを変えたかを、三角形の内角の和や外角の定理を用いて計算します。
- グラフの読み取り: 反射光が強くなるのは、入射角が変わっても出射する角度がほとんど変わらない(光が集中する)条件です。
具体的な解説と立式
(キ) 模範解答の図bを用いて、反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) を求めます。
入射点を \(\text{P}\)、反射点を \(\text{Q}\)、入射光の延長線と出射光の逆向きの延長線の交点を \(\text{R}\) とします。
\(\triangle\text{OPR}\) に着目します。
対頂角より、\(\angle\text{OPR} = \theta_1\) です。
\(\triangle\text{OPQ}\) は \(\text{OP} = \text{OQ}\) の二等辺三角形なので、\(\angle\text{OPQ} = \angle\text{OQP} = \theta_2\) です。
したがって、\(\angle\text{POQ} = 180^\circ – 2\theta_2\) となります。
図の対称性から、出射点での屈折の様子も入射点と同じになり、\(\angle\text{POR}\) は \(\angle\text{POQ}\) と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\angle\text{POR} &= 180^\circ – 2\theta_2
\end{aligned}
$$
また、図bより \(\angle\text{PRO} = \frac{\theta_{\text{反射}}}{2}\) です。
\(\triangle\text{OPR}\) の内角の和は \(180^\circ\) であるため、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\angle\text{POR} + \angle\text{OPR} + \angle\text{PRO} &= 180^\circ
\end{aligned}
$$
(ク)(a) 図3のグラフは、横軸が入射角 \(\theta_1\)、縦軸が反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) です。
グラフの頂点(ピーク)を読み取ります。
使用した物理公式
- 三角形の内角の和: \(180^\circ\)
(キ) 内角の和の式に各角度を代入します。
$$
\begin{aligned}
(180^\circ – 2\theta_2) + \theta_1 + \frac{\theta_{\text{反射}}}{2} &= 180^\circ
\end{aligned}
$$
両辺から \(180^\circ\) を引きます。
$$
\begin{aligned}
-2\theta_2 + \theta_1 + \frac{\theta_{\text{反射}}}{2} &= 0
\end{aligned}
$$
\(\frac{\theta_{\text{反射}}}{2}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\theta_{\text{反射}}}{2} &= 2\theta_2 – \theta_1
\end{aligned}
$$
両辺を2倍して \(\theta_{\text{反射}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\theta_{\text{反射}} &= 4\theta_2 – 2\theta_1
\end{aligned}
$$
(ク) 図3のグラフより、\(\theta_{\text{反射}}\) が最大となるのは横軸 \(\theta_1\) が \(60^\circ\) のときです。
(a) グラフの頂点付近では、曲線の傾きがほぼ水平になります。これは、入射角 \(\theta_1\) が少し変わっても、反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) がほとんど変化しないことを意味します。同じ角度で出てくる光が多くなるため、光が集中して強く見えます。
水滴に入った光は、屈折して曲がり、奥の壁で反射し、また屈折して出てきます。この「入ってから出るまでにどれくらい向きが変わったか」を、図形の角度の足し算・引き算で計算しました。
また、太陽の光はいろいろな角度で水滴に当たりますが、出てくる光の角度をグラフにすると「山」の形になります。山の頂上付近では、当たる角度が違っても出てくる角度が同じになりやすいため、そこに光がギュッと集まって明るく輝いて見えます。
幾何学的な関係から導かれた \(\theta_{\text{反射}} = 4\theta_2 – 2\theta_1\) は、主虹の偏角を表す正しい式です。また、グラフの極値付近で光線密度が高くなる(コースティクス)という光学的な事実とも整合しています。
思考の道筋とポイント
反射光が最も強くなる入射角 \(\theta_1\) を、与えられたグラフから読み取るのではなく、屈折の法則と反射角の式を連立させ、微積分を用いて数学的に厳密に導出します。
この設問における重要なポイント
- 極値の条件: \(\theta_{\text{反射}}\) が最大となる条件は、導関数 \(\frac{d\theta_{\text{反射}}}{d\theta_1} = 0\) です。
- 合成関数の微分: \(\theta_2\) は \(\theta_1\) の関数であるため、連鎖律を用いて微分します。
具体的な解説と立式
反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
\theta_{\text{反射}} &= 4\theta_2 – 2\theta_1 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
反射光が最も強くなるのは \(\theta_{\text{反射}}\) が極大となる条件なので、以下を立式します。
$$
\begin{aligned}
\frac{d\theta_{\text{反射}}}{d\theta_1} &= 0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
また、空気の屈折率を \(1\)、水滴の屈折率を \(n\) とすると、屈折の法則より以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_1 &= n \sin\theta_2 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
問題文より、水中の光速 \(c_{\text{水}} = 0.75c\) なので、屈折率 \(n\) は以下のように求まります。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{c}{c_{\text{水}}} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(\sin\theta_1 = n \sin\theta_2\)
- 合成関数の微分: \(\frac{d}{dx} f(g(x)) = f'(g(x)) g'(x)\)
式⑧より屈折率 \(n\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{c}{0.75c} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{3}
\end{aligned}
$$
式⑤の両辺を \(\theta_1\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{d\theta_{\text{反射}}}{d\theta_1} &= 4 \frac{d\theta_2}{d\theta_1} – 2
\end{aligned}
$$
式⑥より、これが \(0\) になるので、
$$
\begin{aligned}
4 \frac{d\theta_2}{d\theta_1} – 2 &= 0 \\[2.0ex]
4 \frac{d\theta_2}{d\theta_1} &= 2 \\[2.0ex]
\frac{d\theta_2}{d\theta_1} &= \frac{1}{2} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
次に、式⑦の両辺を \(\theta_1\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta_1 &= n \cos\theta_2 \cdot \frac{d\theta_2}{d\theta_1}
\end{aligned}
$$
これに式⑨を代入します。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta_1 &= n \cos\theta_2 \cdot \frac{1}{2} \\[2.0ex]
2\cos\theta_1 &= n \cos\theta_2
\end{aligned}
$$
両辺を2乗します。
$$
\begin{aligned}
(2\cos\theta_1)^2 &= (n \cos\theta_2)^2 \\[2.0ex]
4\cos^2\theta_1 &= n^2 \cos^2\theta_2
\end{aligned}
$$
三角関数の相互関係 \(\cos^2\theta = 1 – \sin^2\theta\) を用いて変形します。
$$
\begin{aligned}
4(1 – \sin^2\theta_1) &= n^2 (1 – \sin^2\theta_2) \\[2.0ex]
4 – 4\sin^2\theta_1 &= n^2 – n^2\sin^2\theta_2
\end{aligned}
$$
式⑦より \(n^2 \sin^2\theta_2 = \sin^2\theta_1\) なので、これを右辺に代入します。
$$
\begin{aligned}
4 – 4\sin^2\theta_1 &= n^2 – \sin^2\theta_1 \\[2.0ex]
4 – n^2 &= 4\sin^2\theta_1 – \sin^2\theta_1 \\[2.0ex]
3\sin^2\theta_1 &= 4 – n^2
\end{aligned}
$$
\(n = \frac{4}{3}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
3\sin^2\theta_1 &= 4 – \left(\frac{4}{3}\right)^2 \\[2.0ex]
&= 4 – \frac{16}{9} \\[2.0ex]
&= \frac{36}{9} – \frac{16}{9} \\[2.0ex]
&= \frac{20}{9}
\end{aligned}
$$
両辺を3で割ります。
$$
\begin{aligned}
\sin^2\theta_1 &= \frac{20}{27}
\end{aligned}
$$
平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_1 &= \sqrt{\frac{20}{27}} \\[2.0ex]
&= \frac{2\sqrt{5}}{3\sqrt{3}} \\[2.0ex]
&= \frac{2\sqrt{15}}{9}
\end{aligned}
$$
ここで \(\sqrt{15} \approx 3.87\) と近似して計算します。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_1 &\approx \frac{2 \times 3.87}{9} \\[2.0ex]
&= \frac{7.74}{9} \\[2.0ex]
&= 0.86
\end{aligned}
$$
\(\sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2} \approx 0.866\) であるため、\(\theta_1\) は約 \(60^\circ\) であることがわかります。
グラフの「山の頂上」を見つけるために、数学の「微分」というテクニックを使いました。山の頂上では傾きがゼロになるという性質を利用して計算を進めると、水滴の屈折率(光の遅くなり具合)から、光が一番集まる角度をズバリ計算で割り出すことができます。
微積分を用いて解析的に求めた入射角が、グラフから読み取った値(約 \(60^\circ\))と見事に一致しました。これにより、虹が見える角度が水滴の屈折率によって数学的に決定されていることが証明されました。
問(2) (ケ)
思考の道筋とポイント
光の分散(波長による屈折率の違い)を考慮し、主虹においてどの色が一番下に見えるかを論理的に判定します。
この設問における重要なポイント
- 波長と屈折角の関係: 波長が短い(紫)ほど大きく曲がるため、屈折角 \(\theta_2\) は小さくなります。
- 反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) と色の関係: \(\theta_{\text{反射}} = 4\theta_2 – 2\theta_1\) より、\(\theta_2\) が小さいほど \(\theta_{\text{反射}}\) も小さくなります。
- 観測者から見た位置: 図cより、\(\theta_{\text{反射}}\) が小さい光ほど、より下方にある水滴から観測者の目に届きます。
具体的な解説と立式
(1)の(カ)で確認したように、波長が短い光ほど屈折角 \(\theta_2\) が小さくなります。
可視光の中で最も波長が短いのは紫色です。
したがって、紫色の光は赤色の光に比べて \(\theta_2\) が小さくなります。
(キ)で求めた反射角の式を考えます。
$$
\begin{aligned}
\theta_{\text{反射}} &= 4\theta_2 – 2\theta_1
\end{aligned}
$$
入射角 \(\theta_1\) を一定とした場合、\(\theta_2\) が小さいほど \(\theta_{\text{反射}}\) も小さくなります。
つまり、紫色の光は赤色の光よりも \(\theta_{\text{反射}}\) が小さくなります。
図cを見ると、観測者の目に届く光のうち、\(\theta_{\text{反射}}\) が小さい光は、より低い位置にある水滴からやってくることがわかります。
使用した物理公式
- 特になし(論理的な推論)。
計算は不要です。大小関係の推論のみで結論が導かれます。
紫色の光は波長が短いため、水滴に入るときに大きく曲げられます。その結果、水滴から出てくるときの角度(\(\theta_{\text{反射}}\))が小さくなります。
空に浮かぶたくさんの水滴を見たとき、角度が小さい光は、下の方にある水滴からでないと私たちの目に届きません。だから、虹の一番下には紫色が見えるのです。
波長 \(\to\) 屈折角 \(\to\) 反射角 \(\to\) 見える位置、という論理の連鎖が正しく構築されており、実際の主虹の色の並び(外側が赤、内側が紫)とも一致するため妥当です。
問(2) (コ)(サ)
思考の道筋とポイント
水滴内で2回反射して出てくる光(副虹)の経路を幾何学的に解析し、反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) を求めます。その後、主虹と同様に分散を考慮して色の見え方を判定します。
この設問における重要なポイント
- 五角形の内角の和: 水滴内の2回反射の経路は、図dのように五角形を形成します。五角形の内角の和は \(540^\circ\) です。
- 副虹のグラフの性質: 図5より、副虹の \(\theta_{\text{反射}}\) は下に凸のグラフとなり、主虹とは逆の性質を持ちます。
具体的な解説と立式
(コ) 模範解答の図dに示された五角形に着目します。
この五角形の5つの頂点の内角は以下のようになります。
1. 左端の交点: \(\theta_{\text{反射}}\)
2. 上の入射点: 直線 \(180^\circ\) から \(\theta_1\) を引き、\(\theta_2\) を足した角度なので、\(180^\circ – \theta_1 + \theta_2\)
3. 右上の反射点: 水滴の中心と結んだ半径に対する角が \(\theta_2\) なので、反射の法則より内角は \(2\theta_2\)
4. 右下の反射点: 同様に \(2\theta_2\)
5. 下の出射点: 入射点と対称になるため、\(180^\circ – \theta_1 + \theta_2\)
五角形の内角の和は \(540^\circ\) であるため、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\theta_{\text{反射}} + 2(180^\circ – \theta_1 + \theta_2) + 2(2\theta_2) &= 540^\circ
\end{aligned}
$$
(サ) 図5のグラフより、副虹では \(\theta_{\text{反射}}\) が小さい光ほど下に見えます。
求めた \(\theta_{\text{反射}}\) の式において、\(\theta_2\) が大きいほど \(\theta_{\text{反射}}\) は小さくなります。
波長が長い(赤)ほど屈折しにくく、\(\theta_2\) が大きくなります。
使用した物理公式
- 多角形の内角の和: \(180^\circ \times (n – 2)\)
(コ) 内角の和の式を展開して \(\theta_{\text{反射}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\theta_{\text{反射}} + 360^\circ – 2\theta_1 + 2\theta_2 + 4\theta_2 &= 540^\circ \\[2.0ex]
\theta_{\text{反射}} + 360^\circ – 2\theta_1 + 6\theta_2 &= 540^\circ
\end{aligned}
$$
両辺から \(360^\circ\) を引き、移項します。
$$
\begin{aligned}
\theta_{\text{反射}} &= 540^\circ – 360^\circ + 2\theta_1 – 6\theta_2 \\[2.0ex]
&= 180^\circ + 2\theta_1 – 6\theta_2
\end{aligned}
$$
(サ) \(\theta_{\text{反射}} = 180^\circ + 2\theta_1 – 6\theta_2\) において、\(\theta_2\) の係数がマイナス(\(-6\))であることに注意します。
\(\theta_2\) が大きいほど、引く数が大きくなるため、\(\theta_{\text{反射}}\) は小さくなります。
波長が長い赤色の光は、紫色の光に比べて大きく曲がらないため、\(\theta_2\) が大きくなります。
したがって、赤色の光の方が \(\theta_{\text{反射}}\) が小さくなり、より下方の水滴から目に届くことになります。
水滴の中で光が2回反射してできる「副虹」の角度を、五角形の内角の和を使って計算しました。
計算の結果、副虹の角度の式は主虹とは逆で、屈折角 \(\theta_2\) が大きいほど角度が小さくなることがわかりました。波長が長くて曲がりにくい赤い光ほど \(\theta_2\) が大きくなるので、副虹では赤い光が一番下に見えることになります。
幾何学的な導出が正しく行われ、副虹の色の並びが主虹と逆転する(内側が赤、外側が紫)という自然現象の事実と完全に一致しており、妥当な結論です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ホイヘンスの原理と屈折の法則
- 核心: 波の伝播速度が媒質によって変わることで、波面が傾き、進行方向が曲がる現象を幾何学的に記述します。
- 理解のポイント:
- 波面と進行方向(射線)は常に垂直であることを図形的にイメージできるかが鍵です。
- フェルマーの原理(最短時間の経路)からも同じ法則が導けることを知っておくと、物理的視野が広がります。
- 光の分散と屈折率の波長依存性
- 核心: 同じ媒質でも、光の波長(色)によって進む速さが異なり、その結果として屈折角が変わるため、色が分かれて見えます。
- 理解のポイント:
- 「波長が短い(紫)ほど大きく曲がる(屈折率が大きい)」という事実を確実に暗記しておく必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- プリズムによる光の分散: 水滴の代わりにガラスのプリズムを用いて光を分光する問題です。頂角と偏角の幾何学的な関係を立式するアプローチは全く同じです。
- 全反射と光ファイバー: 屈折角が \(90^\circ\) を超える条件(臨界角)を考える問題です。スネルの法則の式で \(\sin\theta_2 = 1\) と置くことで解けます。
- 初見の問題での着眼点:
- 幾何学的な図形を見つける: 光の経路が描かれた図の中に、直角三角形や二等辺三角形、多角形を見つけ出し、内角の和や外角の定理を適用します。
- 変数の依存関係を追う: 「波長 \(\rightarrow\) 屈折角 \(\rightarrow\) 偏角 \(\rightarrow\) 見える位置」のように、どの変数が変化すると最終的な結果がどう変わるか、論理の連鎖を丁寧にたどります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 屈折角の大小と「曲がり具合」の混同:
- 誤解: 「大きく曲がる」=「屈折角 \(\theta_2\) が大きい」と勘違いしてしまう。
- 対策: 屈折角 \(\theta_2\) は「境界面の法線」とのなす角です。大きく曲がる(直進方向から大きく逸れる)ということは、法線に近づくことになり、結果として \(\theta_2\) は「小さく」なります。図を描いて確認する癖をつけましょう。
- 主虹と副虹の色の並びの混同:
- 誤解: どちらも同じ色の並びだと思い込んでしまう。
- 対策: 反射回数が1回増えるごとに、光の経路が交差して上下が反転します。数式(\(\theta_2\) の係数の符号)からも逆転することが証明できることを理解しておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 三角形・多角形の内角の和:
- 選定理由: 光の反射・屈折の経路は直線で構成されるため、それらが囲む図形は必ず多角形になります。角度の関係を導くには、幾何学の基本定理が最も直接的で確実です。
- 適用根拠: 水滴を完全な球とみなすことで、中心と結んだ線分がすべて等しい長さ(半径)となり、二等辺三角形が形成されるという幾何学的な対称性が保証されています。
- 微積分を用いた極値の導出(別解):
- 選定理由: グラフが与えられていない場合や、より厳密に最大値を求めたい場合に、数学的な解析手法として極めて強力です。
- 適用根拠: 反射角 \(\theta_{\text{反射}}\) が入射角 \(\theta_1\) の連続かつ微分可能な関数として表されているため、極値の条件 \(\frac{d\theta_{\text{反射}}}{d\theta_1} = 0\) を適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 図への角度の書き込み:
- 意識: 頭の中だけで角度の足し算・引き算をしない。
- 実践: 問題用紙の図に、\(\theta_1, \theta_2\) などの角度を直接書き込み、対頂角や錯角、二等辺三角形の底角などを視覚的に確認しながら立式します。
- 極端なケースでの検算:
- 意識: 導出した式が物理的にあり得るかを確認する。
- 実践: 例えば \(\theta_{\text{反射}} = 4\theta_2 – 2\theta_1\) の式で、もし屈折せずに直進する(\(\theta_1 = \theta_2\))としたら、\(\theta_{\text{反射}} = 2\theta_1\) となり、単なる1回反射の偏角と一致するかどうかなどを頭の中でシミュレーションします。
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問題161 気体の分子運動と音の速さ (23 九州大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)(キ)の別解: ポアソンの式と対数微分を用いた解法
- 模範解答が気体分子運動論のエネルギー変化から近似計算で導出するのに対し、別解では熱力学のポアソンの式を微積分(対数微分)を用いて処理し、断熱変化における圧力と体積の微小変化の関係を直接導出します。
- 設問(2)(サ)の別解: 連続体極限と波動方程式(微積分)を用いた解法
- 模範解答が離散的なピストンの運動方程式から三角関数の近似を用いて音速を求めるのに対し、別解ではピストンの間隔 \(L\) を微小とみなして連続体極限をとり、偏微分方程式である波動方程式を導出することで音速を求めます。
- 設問(1)(キ)の別解: ポアソンの式と対数微分を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 対数微分を用いた解法は、近似計算の煩雑さを回避し、熱力学的な状態変化の全体像を簡潔に見通すことができるため、実戦的な計算力向上に直結します。
- 波動方程式を用いた解法は、離散的な力学モデルから連続体の波動現象がどのように創発するかという物理の深淵に触れることができ、大学物理へのスムーズな橋渡しとなります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「気体分子運動論に基づく断熱圧縮と、音波の伝播速度の導出」です。
ミクロな分子の衝突からマクロな圧力変化を導き、さらにそれを連続したピストンの振動モデルに適用して音速を求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 気体分子運動論: 分子と壁の弾性衝突から圧力や内部エネルギーを微視的に説明します。
- 熱力学第一法則と断熱変化: 外部から仕事をされると内部エネルギー(分子の運動エネルギー)が増加します。
- 波動の基本式と運動方程式: 媒質の各部分の運動方程式を立てることで、波の伝播速度を力学的に導出します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、動くピストンとの衝突による分子の速度変化を追い、運動エネルギーの増加量から圧力変化を計算します。
- (2)では、無数のピストンが連なるモデルにおいて、隣接する空間の圧力差からピストンの運動方程式を立て、単振動の式と比較して音速を求めます。
問(1) (ア)(イ)(ウ)(エ)
思考の道筋とポイント
気体分子と動くピストンの弾性衝突を考え、1回の衝突による速度変化と、微小時間内の衝突回数から、最終的な速度を求めます。さらに、速度の2乗平均と運動エネルギーの変化を計算します。
この設問における重要なポイント
- 動く壁との弾性衝突: 反発係数 \(e=1\) の式を、速度の向きに注意して立式します。
- 衝突回数の見積もり: 分子が容器内を1往復する時間と、ピストンが動く時間の比から衝突回数を求めます。
- 近似式の活用: \((1+x)^\alpha \approx 1+\alpha x\) (\(x \ll 1\)) を用いて式を簡略化します。
具体的な解説と立式
(ア) 右向きを正とします。
衝突前のピストン0の速度は \(v_0\)、分子の速度は \(-v_x\) です。
衝突後のピストン0の速度は \(v_0\)(質量が非常に大きいため変化しない)、分子の速度を \(v_{x\text{後}}\) とします。
弾性衝突(反発係数 \(e=1\))の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
1 &= – \frac{v_{x\text{後}} – v_0}{-v_x – v_0} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
(イ) ピストン0が距離 \(\Delta x\) 動くのにかかる時間を \(\Delta t\) とすると、\(\Delta t = \frac{\Delta x}{v_0}\) です。
この間、分子は速さ \(v_x\) で距離 \(L\) を往復するため、1往復にかかる時間は \(\frac{2L}{v_x}\) です。
したがって、時間 \(\Delta t\) の間の衝突回数 \(n_{\text{衝突}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
n_{\text{衝突}} &= \frac{\Delta t}{\frac{2L}{v_x}} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
1回の衝突で速度のx成分は \((v_{x\text{後}} – v_x)\) だけ増加します。
最終的な速度のx成分の大きさ \(v_{x\text{終}}\) は、元の速度 \(v_x\) に総増加量を足したものになります。
$$
\begin{aligned}
v_{x\text{終}} &= v_x + n_{\text{衝突}} (v_{x\text{後}} – v_x) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
(ウ) 速度のx成分の2乗の平均を求めます。
元の状態では、運動は各方向に一様であるため、\(\overline{v_x^2} = \overline{v_y^2} = \overline{v_z^2}\) であり、\(\overline{v^2} = \overline{v_x^2} + \overline{v_y^2} + \overline{v_z^2}\) より \(\overline{v^2} = 3\overline{v_x^2}\) が成り立ちます。
よって、\(\overline{v_x^2} = \frac{\overline{v^2}}{3}\) です。
圧縮後のx成分の2乗平均 \(\overline{v_{x\text{終}}^2}\) は、(イ)の結果を2乗して平均をとります。
(エ) 運動エネルギーの増加量 \(\Delta K\) を求めます。
圧縮前の全運動エネルギー \(K_{\text{前}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{前}} &= N \cdot \frac{1}{2} m \overline{v^2} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
圧縮後の全運動エネルギー \(K_{\text{後}}\) は、x方向の速度成分のみが変化するため、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{後}} &= N \cdot \frac{1}{2} m (\overline{v_{x\text{終}}^2} + \overline{v_y^2} + \overline{v_z^2}) \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
増加量 \(\Delta K\) は \(K_{\text{後}} – K_{\text{前}}\) です。
使用した物理公式
- 反発係数の式: \(e = – \frac{v_1′ – v_2′}{v_1 – v_2}\)
- 等速直線運動: \(x = vt\)
- 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
(ア) 式①を解きます。
$$
\begin{aligned}
1 &= – \frac{v_{x\text{後}} – v_0}{-v_x – v_0} \\[2.0ex]
-v_x – v_0 &= -(v_{x\text{後}} – v_0) \\[2.0ex]
v_x + v_0 &= v_{x\text{後}} – v_0 \\[2.0ex]
v_{x\text{後}} &= v_x + 2v_0
\end{aligned}
$$
したがって、衝突後の速度のx成分は \(v_x + 2v_0\) となります。
(イ) 式②より衝突回数 \(n_{\text{衝突}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
n_{\text{衝突}} &= \frac{\frac{\Delta x}{v_0}}{\frac{2L}{v_x}} \\[2.0ex]
&= \frac{\Delta x v_x}{2 v_0 L}
\end{aligned}
$$
1回の衝突での速度増加量は \(2v_0\) なので、式③より最終的な速度 \(v_{x\text{終}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_{x\text{終}} &= v_x + \frac{\Delta x v_x}{2 v_0 L} (v_x + 2v_0 – v_x) \\[2.0ex]
&= v_x + \frac{\Delta x v_x}{2 v_0 L} \cdot 2v_0 \\[2.0ex]
&= v_x + \frac{\Delta x}{L} v_x \\[2.0ex]
&= \left(1 + \frac{\Delta x}{L}\right) v_x
\end{aligned}
$$
(ウ) \(\overline{v_{x\text{終}}^2}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\overline{v_{x\text{終}}^2} &= \overline{\left( \left(1 + \frac{\Delta x}{L}\right) v_x \right)^2} \\[2.0ex]
&= \left(1 + \frac{\Delta x}{L}\right)^2 \overline{v_x^2}
\end{aligned}
$$
近似式 \((1+x)^\alpha \approx 1+\alpha x\) を用います。
$$
\begin{aligned}
\left(1 + \frac{\Delta x}{L}\right)^2 &\approx 1 + 2\frac{\Delta x}{L}
\end{aligned}
$$
\(\overline{v_x^2} = \frac{\overline{v^2}}{3}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\overline{v_{x\text{終}}^2} &= \left(1 + 2\frac{\Delta x}{L}\right) \frac{\overline{v^2}}{3}
\end{aligned}
$$
(エ) 式⑤より \(K_{\text{後}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{後}} &= N \cdot \frac{1}{2} m \left( \left(1 + 2\frac{\Delta x}{L}\right) \frac{\overline{v^2}}{3} + \frac{\overline{v^2}}{3} + \frac{\overline{v^2}}{3} \right) \\[2.0ex]
&= N \cdot \frac{1}{2} m \left( \frac{\overline{v^2}}{3} + 2\frac{\Delta x}{3L}\overline{v^2} + \frac{2\overline{v^2}}{3} \right) \\[2.0ex]
&= N \cdot \frac{1}{2} m \left( \overline{v^2} + \frac{2\Delta x}{3L}\overline{v^2} \right) \\[2.0ex]
&= N \cdot \frac{1}{2} m \overline{v^2} + N \cdot \frac{1}{2} m \cdot \frac{2\Delta x}{3L}\overline{v^2} \\[2.0ex]
&= K_{\text{前}} + \frac{Nm\Delta x}{3L} \overline{v^2}
\end{aligned}
$$
したがって、増加量 \(\Delta K\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= K_{\text{後}} – K_{\text{前}} \\[2.0ex]
&= \frac{Nm\Delta x}{3L} \overline{v^2}
\end{aligned}
$$
向かってくる壁(ピストン)にボール(分子)がぶつかると、ボールは壁の速さの2倍だけスピードアップして跳ね返ります。壁が動いている間に、ボールは何度も壁とぶつかるため、そのたびに少しずつスピードが上がっていきます。スピードが上がれば、当然ボールが持つ運動エネルギーも大きくなります。ここでは、その増えたエネルギーの量を計算しました。
ピストンが気体に対して正の仕事をしたため、気体の内部エネルギー(運動エネルギー)が増加するという熱力学第一法則と整合しています。
問(1) (オ)(カ)(キ)
思考の道筋とポイント
気体分子運動論の基本式を用いて、圧縮前後の圧力と体積、運動エネルギーの関係を立式し、微小変化の近似を用いて圧力変化 \(\Delta P\) を導出します。
この設問における重要なポイント
- 微小量の積の無視: \(\Delta P \times \Delta x\) のような微小量同士の掛け算は、非常に小さくなるため \(0\) とみなして無視します。
- エネルギーの式の利用: \(PV = \frac{2}{3}K\) の関係式を圧縮前後で比較します。
具体的な解説と立式
問題文の①式より、(気体の圧力) \(\times\) (気体の体積) = \(\frac{2}{3} \times\) (全気体分子の運動エネルギー) です。
圧縮前の状態について立式します。体積は \(SL\)、運動エネルギーは \(K\) です。
$$
\begin{aligned}
P \cdot SL &= \frac{2}{3} K \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
圧縮後の状態について立式します。圧力は \(P + \Delta P\)、体積は \(S(L – \Delta x)\)、運動エネルギーは \(K + \Delta K\) です。
$$
\begin{aligned}
(P + \Delta P) \cdot S(L – \Delta x) &= \frac{2}{3} (K + \Delta K) \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
(オ)(カ) ⑥式と⑦式の左辺の変化量は、(圧縮後の左辺) – (圧縮前の左辺) です。
(キ) 右辺の変化量は \(\frac{2}{3} \Delta K\) です。これと左辺の変化量を等置し、\(\frac{\Delta P}{P}\) を求めます。
使用した物理公式
- 気体分子運動論の基本式: \(PV = \frac{2}{3}K\)
(オ)(カ) 左辺の変化量を計算します。
$$
\begin{aligned}
(\text{左辺の変化量}) &= (P + \Delta P)S(L – \Delta x) – PSL \\[2.0ex]
&= S (PL – P\Delta x + L\Delta P – \Delta P\Delta x) – PSL \\[2.0ex]
&= PSL – PS\Delta x + SL\Delta P – S\Delta P\Delta x – PSL \\[2.0ex]
&= SL\Delta P – PS\Delta x – S\Delta P\Delta x
\end{aligned}
$$
ここで、\(\Delta P \Delta x\) の項は微小量の2次となるため無視します。
$$
\begin{aligned}
(\text{左辺の変化量}) &\approx SL\Delta P – PS\Delta x
\end{aligned}
$$
(キ) 右辺の変化量を計算します。
$$
\begin{aligned}
(\text{右辺の変化量}) &= \frac{2}{3} (K + \Delta K) – \frac{2}{3} K \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} \Delta K \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} \cdot \frac{Nm\Delta x}{3L} \overline{v^2}
\end{aligned}
$$
ここで、圧縮前の式⑥より、
$$
\begin{aligned}
PSL &= \frac{2}{3} K \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} \left( \frac{1}{2} N m \overline{v^2} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{3} N m \overline{v^2}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
N m \overline{v^2} &= 3 PSL
\end{aligned}
$$
これを右辺の変化量に代入します。
$$
\begin{aligned}
(\text{右辺の変化量}) &= \frac{2}{3} \cdot \frac{\Delta x}{3L} \cdot 3 PSL \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} PS \Delta x
\end{aligned}
$$
左辺の変化量と右辺の変化量が等しいので、
$$
\begin{aligned}
SL\Delta P – PS\Delta x &= \frac{2}{3} PS \Delta x \\[2.0ex]
SL\Delta P &= PS\Delta x + \frac{2}{3} PS \Delta x \\[2.0ex]
SL\Delta P &= \frac{5}{3} PS \Delta x
\end{aligned}
$$
両辺を \(PSL\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta P}{P} &= \frac{5}{3} \frac{\Delta x}{L}
\end{aligned}
$$
気体をギュッと圧縮すると、体積が減るだけでなく、分子のスピードが上がって温度(運動エネルギー)も上がります。この「体積の減少」と「エネルギーの増加」の2つの効果が合わさって、圧力がどれくらい上がるかを計算しました。微小な変化の掛け算を無視するという数学のテクニックを使うことで、きれいな比例関係の式が導き出せます。
得られた係数 \(\frac{5}{3}\) は、単原子分子理想気体の比熱比 \(\gamma\) と一致しています。断熱変化における圧力と体積の微小変化の関係として物理的に極めて妥当です。
思考の道筋とポイント
断熱変化であることを利用し、熱力学のポアソンの式 \(PV^\gamma = \text{一定}\) から出発します。この式の両辺の対数をとり、微分することで、圧力と体積の微小変化の関係を直接導出します。
この設問における重要なポイント
- ポアソンの式: 断熱変化において \(PV^\gamma = \text{一定}\) が成り立ちます。単原子分子の場合 \(\gamma = \frac{5}{3}\) です。
- 対数微分法: 積や累乗を含む式の微小変化を求める際に、対数をとってから微分すると計算が劇的に簡単になります。
具体的な解説と立式
断熱変化におけるポアソンの式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
P V^\gamma &= C \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ポアソンの式: \(PV^\gamma = \text{一定}\)
- 対数関数の微分: \(\frac{d}{dx} \log x = \frac{1}{x}\)
両辺の自然対数をとります。
$$
\begin{aligned}
\log(P V^\gamma) &= \log C \\[2.0ex]
\log P + \gamma \log V &= \log C
\end{aligned}
$$
両辺を微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dP}{P} + \gamma \frac{dV}{V} &= 0
\end{aligned}
$$
微小変化 \(\Delta P, \Delta V\) に置き換えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta P}{P} + \gamma \frac{\Delta V}{V} &= 0 \\[2.0ex]
\frac{\Delta P}{P} &= – \gamma \frac{\Delta V}{V}
\end{aligned}
$$
\(V = SL\)、\(\Delta V = -S\Delta x\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta P}{P} &= – \gamma \frac{-S\Delta x}{SL} \\[2.0ex]
&= \gamma \frac{\Delta x}{L}
\end{aligned}
$$
単原子分子理想気体の比熱比 \(\gamma\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\gamma &= \frac{C_p}{C_v} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{5}{2}R}{\frac{3}{2}R} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{3}
\end{aligned}
$$
代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta P}{P} &= \frac{5}{3} \frac{\Delta x}{L}
\end{aligned}
$$
熱力学には、熱の出入りがない変化(断熱変化)のときに使える「ポアソンの式」という強力な公式があります。この公式に「対数をとって微分する」という数学の魔法をかけると、複雑なエネルギーの計算を一切せずに、圧力と体積の変化の割合の関係が一瞬で導き出せます。
気体分子運動論からの近似計算と、熱力学の巨視的な法則(ポアソンの式)からの導出が完全に一致しました。これにより、ミクロな分子の衝突がマクロな断熱変化の法則を生み出していることが確認できます。
問(2) (ク)(ケ)(コ)(サ)
思考の道筋とポイント
無数のピストンが連なるモデルを用いて、音波(縦波)の伝播を考えます。各ピストンにはたらく力から運動方程式を立て、それが単振動の式になることを示し、波の基本式と比較して音速を導出します。
この設問における重要なポイント
- ピストンにはたらく力: 左右の空間の圧力差によって力が生じます。
- 運動方程式の立式: \(ma = F\) に従い、ピストンとそれに伴って動く気体の質量を考慮して立式します。
- 和積公式の利用: 複数のサイン波の足し算・引き算を、掛け算の形に変形して単振動の形(\(- \omega^2 x\))に持ち込みます。
具体的な解説と立式
(ク) 右向きを正とします。
ピストンnの左側の空間n-1の圧力は \(P + \Delta P_{n-1}\)、右側の空間nの圧力は \(P + \Delta P_n\) です。
ピストンnにはたらく力 \(F_n\) は、左から押される力と右から押し返される力の合力です。
$$
\begin{aligned}
F_n &= (P + \Delta P_{n-1})S – (P + \Delta P_n)S \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
(ケ) ピストンnとともに運動する気体の質量は \(Nm\) です。運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Nm a_n &= F_n \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
ここで、問題文で与えられた関係式 \(\frac{\Delta P_n}{P} = – \gamma \frac{x_{n+1} – x_n}{L}\) を用いて \(F_n\) を変形します。
(コ) \(x_n = A \sin\left(\omega t – \frac{2\pi n L}{\lambda}\right)\) を用いて、\(x_{n+1} – 2x_n + x_{n-1}\) を計算します。
和積公式を用いて変形します。
(サ) 運動方程式を \(a_n = – \omega^2 x_n\) の形に整理し、角振動数 \(\omega\) を求めます。
その後、波の基本式 \(V = f\lambda = \frac{\omega}{2\pi}\lambda\) を用いて音速 \(V\) を導出します。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 三角関数の和積公式: \(\sin \alpha + \sin \beta = 2 \sin \frac{\alpha+\beta}{2} \cos \frac{\alpha-\beta}{2}\)
- 単振動の加速度: \(a = – \omega^2 x\)
- 波の基本式: \(V = f\lambda = \frac{\omega}{2\pi}\lambda\)
(ク) 式⑨の力 \(F_n\) を整理します。
$$
\begin{aligned}
F_n &= PS + \Delta P_{n-1}S – PS – \Delta P_n S \\[2.0ex]
&= (\Delta P_{n-1} – \Delta P_n)S
\end{aligned}
$$
(ケ) 圧力変化の式を変形します。
$$
\begin{aligned}
\Delta P_n &= – \gamma P \frac{x_{n+1} – x_n}{L} \\[2.0ex]
\Delta P_{n-1} &= – \gamma P \frac{x_n – x_{n-1}}{L}
\end{aligned}
$$
これらを \(F_n\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
F_n &= \left( – \gamma P \frac{x_n – x_{n-1}}{L} – \left( – \gamma P \frac{x_{n+1} – x_n}{L} \right) \right) S \\[2.0ex]
&= \left( – \gamma P \frac{x_n – x_{n-1}}{L} + \gamma P \frac{x_{n+1} – x_n}{L} \right) S \\[2.0ex]
&= \gamma \frac{PS}{L} ( – x_n + x_{n-1} + x_{n+1} – x_n ) \\[2.0ex]
&= \gamma \frac{PS}{L} (x_{n+1} – 2x_n + x_{n-1})
\end{aligned}
$$
したがって、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Nm a_n &= \gamma \frac{PS}{L} (x_{n+1} – 2x_n + x_{n-1})
\end{aligned}
$$
(コ) \(x_{n+1} + x_{n-1}\) の部分に和積公式を適用します。
$$
\begin{aligned}
x_{n+1} + x_{n-1} &= A \sin\left(\omega t – \frac{2\pi (n+1) L}{\lambda}\right) + A \sin\left(\omega t – \frac{2\pi (n-1) L}{\lambda}\right)
\end{aligned}
$$
和積公式より、
$$
\begin{aligned}
x_{n+1} + x_{n-1} &= 2A \sin\left(\omega t – \frac{2\pi n L}{\lambda}\right) \cos\left(- \frac{2\pi L}{\lambda}\right) \\[2.0ex]
&= 2 \cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \cdot A \sin\left(\omega t – \frac{2\pi n L}{\lambda}\right) \\[2.0ex]
&= 2 \cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) x_n
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
x_{n+1} – 2x_n + x_{n-1} &= 2 \cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) x_n – 2x_n \\[2.0ex]
&= 2 \left\{ \cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) – 1 \right\} x_n
\end{aligned}
$$
(サ) 半角の公式より、
$$
\begin{aligned}
\cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) – 1 &= – 2\sin^2\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right)
\end{aligned}
$$
代入します。
$$
\begin{aligned}
x_{n+1} – 2x_n + x_{n-1} &= 2 \left\{ – 2\sin^2\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right) \right\} x_n \\[2.0ex]
&= -4 \sin^2\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right) x_n
\end{aligned}
$$
運動方程式に代入します。
$$
\begin{aligned}
Nm a_n &= \gamma \frac{PS}{L} \left( -4 \sin^2\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right) \right) x_n
\end{aligned}
$$
近似 \(\sin\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right) \approx \frac{\pi L}{\lambda}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
Nm a_n &\approx -4 \gamma \frac{PS}{L} \left(\frac{\pi L}{\lambda}\right)^2 x_n \\[2.0ex]
a_n &= – \frac{4 \gamma PS \pi^2 L^2}{Nm L \lambda^2} x_n \\[2.0ex]
&= – \frac{4 \gamma PS \pi^2 L}{Nm \lambda^2} x_n
\end{aligned}
$$
単振動の式 \(a_n = – \omega^2 x_n\) と比較します。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{4 \gamma PS \pi^2 L}{Nm \lambda^2} \\[2.0ex]
\omega &= \sqrt{\frac{4 \gamma PS \pi^2 L}{Nm \lambda^2}} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi}{\lambda} \sqrt{\frac{\gamma PS L}{Nm}}
\end{aligned}
$$
音速 \(V\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{\omega}{2\pi} \lambda \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2\pi} \left( \frac{2\pi}{\lambda} \sqrt{\frac{\gamma PS L}{Nm}} \right) \lambda \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{\gamma PS L}{Nm}}
\end{aligned}
$$
音は空気の「密(ギュッと詰まったところ)」と「疎(スカスカなところ)」が伝わっていく現象です。これを、たくさんのピストンがバネで繋がって振動しているモデルとして考えました。あるピストンが動くと、隣の空間の圧力が変わり、それが次のピストンを押す力になります。この力の連鎖を運動方程式というルールに従って計算し、波が伝わるスピード(音速)を導き出しました。
得られた音速の式 \(V = \sqrt{\frac{\gamma PS L}{Nm}}\) は、気体の密度 \(\rho = \frac{Nm}{SL}\) を用いると \(V = \sqrt{\frac{\gamma P}{\rho}}\) となり、熱力学から導かれる音速の理論式(ニュートン・ラプラスの音速公式)と完全に一致します。離散的な力学モデルが連続体の波動現象を正しく記述できていることが確認できます。
思考の道筋とポイント
離散的なピストンの変位 \(x_n\) を、位置 \(x\) と時間 \(t\) の連続関数 \(u(x, t)\) として扱います。ピストンの間隔 \(L\) を微小量 \(\Delta x\) とみなし、テイラー展開を用いて差分を偏微分に変換することで、波動方程式を直接導出します。
この設問における重要なポイント
- 連続体極限: \(x_n(t) \to u(x, t)\)、\(x_{n\pm1}(t) \to u(x \pm L, t)\) と置き換えます。
- 2階微分の差分表現: \(u(x+L) – 2u(x) + u(x-L) \approx L^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}\) という関係を用います。
- 波動方程式: \(\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = V^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}\) の形を導き、係数 \(V^2\) から波の速さを読み取ります。
具体的な解説と立式
ピストンnの平衡位置を \(x\) とし、その変位を \(u(x, t)\) と表します。
ピストンn+1の変位は \(u(x+L, t)\)、ピストンn-1の変位は \(u(x-L, t)\) となります。
運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
Nm \frac{\partial^2 u(x, t)}{\partial t^2} &= \gamma \frac{PS}{L} \left( u(x+L, t) – 2u(x, t) + u(x-L, t) \right) \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
右辺の括弧内について、テイラー展開を用いて近似します。
使用した物理公式
- テイラー展開: \(f(x \pm L) \approx f(x) \pm L f'(x) + \frac{L^2}{2} f”(x)\)
- 波動方程式: \(\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = V^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}\)
\(u(x+L, t)\) と \(u(x-L, t)\) を \(x\) の周りで2次までテイラー展開します。
$$
\begin{aligned}
u(x+L, t) &\approx u(x, t) + L \frac{\partial u}{\partial x} + \frac{L^2}{2} \frac{\partial^2 u}{\partial x^2} \\[2.0ex]
u(x-L, t) &\approx u(x, t) – L \frac{\partial u}{\partial x} + \frac{L^2}{2} \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
\end{aligned}
$$
これらを足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
u(x+L, t) + u(x-L, t) &\approx 2u(x, t) + L^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
\end{aligned}
$$
移項して整理します。
$$
\begin{aligned}
u(x+L, t) – 2u(x, t) + u(x-L, t) &\approx L^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
\end{aligned}
$$
これを式⑪に代入します。
$$
\begin{aligned}
Nm \frac{\partial^2 u}{\partial t^2} &= \gamma \frac{PS}{L} \left( L^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2} \right) \\[2.0ex]
Nm \frac{\partial^2 u}{\partial t^2} &= \gamma PSL \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
\end{aligned}
$$
両辺を \(Nm\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} &= \frac{\gamma PSL}{Nm} \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
\end{aligned}
$$
この式は、波の速さ \(V\) を持つ波動方程式 \(\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = V^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}\) と同じ形をしています。
係数を比較します。
$$
\begin{aligned}
V^2 &= \frac{\gamma PSL}{Nm} \\[2.0ex]
V &= \sqrt{\frac{\gamma PSL}{Nm}}
\end{aligned}
$$
ピストンが飛び飛びに並んでいるモデルを、「ピストンの間隔がものすごく狭くて、空気が滑らかに繋がっている」という連続的なモデルに切り替えて考えました。数学の「偏微分」という道具を使うと、複雑な三角関数の計算を一切せずに、波が伝わる様子を表す「波動方程式」という美しい方程式が直接導き出され、そこから音速が一瞬で求まります。
離散モデルでの三角関数の近似計算と、連続体極限での偏微分方程式からの導出が完全に一致しました。これにより、波長 \(\lambda\) がピストン間隔 \(L\) に比べて十分に長い(\(\lambda \gg L\))という条件のもとでは、気体を連続媒質として扱ってよいことが数学的に裏付けられました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 気体分子運動論と熱力学第一法則
- 核心: 動く壁(ピストン)との弾性衝突によって気体分子の速度(運動エネルギー)が増加し、それがマクロな圧力上昇として現れるという、ミクロとマクロを繋ぐメカニズムです。
- 理解のポイント:
- ピストンが気体に対して正の仕事をした分だけ、気体の内部エネルギーが増加します。
- この過程は熱の出入りがない「断熱圧縮」であり、ポアソンの式 \(PV^\gamma = \text{一定}\) に支配されています。
- 波動の伝播と運動方程式(波動方程式)
- 核心: 媒質(気体)の各部分が、隣接する部分との圧力差(復元力)によって単振動を行い、その振動が次々と伝わっていく現象が「音波」です。
- 理解のポイント:
- 離散的なピストンモデルにおいて、各ピストンの運動方程式を立てることが出発点です。
- 波長がピストン間隔に比べて十分に長い(\(\lambda \gg L\))という近似を用いることで、連続的な波の伝播速度(音速)を導出できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 気体の断熱自由膨張やピストンの急激な移動: ピストンが動く速度 \(v_0\) が分子の速度 \(v_x\) に比べて無視できない場合や、逆にピストンが逃げるように動く(断熱膨張)場合など、衝突による速度変化の符号や大きさが変わる問題に応用できます。
- 固体の縦波(弾性波)の伝播: 気体の代わりに、バネで繋がれた質点系(1次元結晶モデル)を考える問題です。圧力差の代わりにフックの法則による弾性力を用いますが、運動方程式から波動方程式を導出する数学的構造は全く同じです。
- 初見の問題での着眼点:
- ミクロな衝突の立式: 「壁が動いている」という条件を見逃さず、相対速度を考慮した反発係数の式を正確に立てます。
- 微小変化の近似: \(\Delta x \ll L\) などの条件が与えられたら、\((1+x)^\alpha \approx 1+\alpha x\) の近似や、微小量同士の積(\(\Delta P \Delta x\) など)の無視を積極的に行い、式を線形化(1次式にする)します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 衝突後の速度の符号ミス:
- 誤解: 反発係数の式を立てる際、速度の向き(符号)を間違えて、衝突後の速度が \(v_x – 2v_0\) などと減少してしまう。
- 対策: 必ず「右向きを正」などと座標軸を明確に定義し、ピストンが向かってくる場合は分子が「跳ね返されて速くなる」という物理的直感と計算結果が一致するかを確認する癖をつけましょう。
- 微小量の取り扱い(近似のタイミング):
- 誤解: 計算の途中で早々に微小量を \(0\) としてしまい、必要な変化量(\(\Delta P\) など)まで消去してしまう。
- 対策: 変化量を求める際は、まずは展開して全ての項を書き出し、その中で「微小量 \(\times\) 微小量(2次の微小量)」の項だけを無視するという手順を厳格に守りましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 気体分子運動論の基本式 \(PV = \frac{2}{3}K\):
- 選定理由: 設問(1)において、ミクロな運動エネルギーの変化 \(\Delta K\) からマクロな圧力変化 \(\Delta P\) を導くための架け橋として、問題文で直接指定されているためです。
- 適用根拠: 理想気体において、圧力は分子の壁への衝突による力積の総和であり、それは分子の並進運動エネルギーに比例するという物理的原理に基づいています。
- ポアソンの式と対数微分(別解):
- 選定理由: 設問(1)の後半で、近似計算の煩雑さを避け、断熱変化における圧力と体積の微小変化の関係を直接かつ厳密に導出できるためです。
- 適用根拠: ピストンの移動が十分に速く、外部との熱のやり取りがない「断熱変化」であるとみなせるため、\(PV^\gamma = \text{一定}\) が成立します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(単位の確認):
- 意識: 導出した文字式が、求められている物理量と同じ次元(単位)を持っているかを常に確認します。
- 実践: 例えば音速 \(V = \sqrt{\frac{\gamma PS L}{Nm}}\) の次元を調べます。圧力 \(P\) は \([\text{N}/\text{m}^2] = [\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}^2 / \text{m}^2] = [\text{kg}/(\text{m}\cdot\text{s}^2)]\)、面積 \(S\) は \([\text{m}^2]\)、長さ \(L\) は \([\text{m}]\)、質量 \(Nm\) は \([\text{kg}]\) です。ルートの中身は \([\text{kg}/(\text{m}\cdot\text{s}^2) \cdot \text{m}^2 \cdot \text{m} / \text{kg}] = [\text{m}^2/\text{s}^2]\) となり、ルートをとると \([\text{m}/\text{s}]\)(速度の次元)になるため、計算が正しい可能性が高いと判断できます。
- 和積公式の確実な運用:
- 意識: 波動の干渉や定常波、今回のピストンモデルなど、複数のサイン波を足し合わせる場面では和積公式が必須です。
- 実践: \(\sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}\) などの公式を暗記するだけでなく、加法定理からその場で導出できるようにしておくと、符号ミスなどを防げます。
問題162 回路素子の決定 (22 東京理大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(RC回路の過渡現象)
- 模範解答がコンデンサーの定性的な性質(短絡・断線)から初期状態を判断するのに対し、別解では回路方程式(微分方程式)を立式・積分し、電流の時間変化を厳密に導出します。
- 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(RLC交流回路の微分方程式)
- 模範解答がインピーダンスの公式を既知として適用するのに対し、別解ではキルヒホッフの法則に基づく微分方程式から出発し、三角関数の合成を用いてインピーダンスの式を原理から導出します。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(RC回路の過渡現象)
- 上記の別解が有益である理由
- 公式の丸暗記からの脱却: 過渡現象や交流回路の公式が、すべて基本的な回路方程式の微分・積分から導かれることを理解でき、未知の回路設定にも対応できる応用力が身につきます。
- グラフの物理的意味の理解: 設問(2)の減衰曲線がなぜ指数関数になるのか、数式とグラフの形状を直接結びつけて理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「直流・交流回路における未知素子の決定と回路方程式の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- キルヒホッフの法則: 複雑な回路網において、任意の閉回路における電位降下の和は起電力に等しいという法則です。
- 理想的な測定器の扱い: 電圧計は内部抵抗が無限大(電流が流れない)、電流計は内部抵抗がゼロ(電圧降下がない)として扱います。
- 交流回路のインピーダンスと共振: RLC直列回路において、コイルとコンデンサーのリアクタンスが等しくなる周波数(共振周波数)でインピーダンスが最小となり、電流が最大になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、各測定状態における電流の経路を特定し、キルヒホッフの法則を用いて連立方程式を立てて抵抗値を求めます。
- (2)では、直流電圧をかけた際の電流の時間変化(過渡現象)から素子の種類を特定し、初期状態の回路方程式から抵抗値を求めます。
- (3)では、交流電源の周波数を変化させた際の電流の変化から素子を特定し、インピーダンスの式と共振条件を用いて周波数の比を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
各測定状態において、回路のどの部分に電流が流れているかを正確に把握します。
電圧計をつないだ部分は電流が流れないため断線とみなし、電流計をつないだ部分は抵抗ゼロの導線とみなします。
それぞれの状態について、キルヒホッフの第2法則(閉回路の電位降下の和=起電力)を用いて方程式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 測定器の理想化: 電圧計には電流が流れないため、初めの状態では回路全体に電流が流れていません。
- 閉回路の特定: 電流計を接続した際、電流がどの抵抗を通って電池に戻るかをたどります。
具体的な解説と立式
電池の起電力を \(E\) とします。
初めの状態(模範解答の図a)では、回路に電流が流れていないため、電池の内部抵抗 \(r\) や抵抗 \(R_{\text{d}}\) での電圧降下は \(0\,\text{V}\) です。
したがって、dc間の電圧 \(8.40\,\text{V}\) は、そのまま電池の起電力 \(E\) と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
E &= 8.40
\end{aligned}
$$
ac間に電流計を接続した状態(模範解答の図b)では、電流は c \(\rightarrow\) \(r\) \(\rightarrow\) E \(\rightarrow\) \(R_{\text{a}}\) \(\rightarrow\) a \(\rightarrow\) 電流計 \(\rightarrow\) c の閉回路を流れます。
電流 \(I_{\text{a}} = 1.00\,\text{A}\) なので、キルヒホッフの第2法則より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{起電力}) &= (\text{電圧降下の和}) \\[2.0ex]
E &= r I_{\text{a}} + R_{\text{a}} I_{\text{a}}
\end{aligned}
$$
bc間に電流計を接続した状態(模範解答の図c)では、電流は c \(\rightarrow\) \(r\) \(\rightarrow\) E \(\rightarrow\) \(R_{\text{b}}\) \(\rightarrow\) b \(\rightarrow\) 電流計 \(\rightarrow\) c の閉回路を流れます。
電流 \(I_{\text{b}} = 3.50\,\text{A}\) なので、同様に立式します。
$$
\begin{aligned}
E &= r I_{\text{b}} + R_{\text{b}} I_{\text{b}}
\end{aligned}
$$
dc間に電流計を接続した状態(模範解答の図d)では、電流は c \(\rightarrow\) \(r\) \(\rightarrow\) E \(\rightarrow\) \(R_{\text{d}}\) \(\rightarrow\) d \(\rightarrow\) 電流計 \(\rightarrow\) c の閉回路を流れます。
電流 \(I_{\text{d}} = 2.10\,\text{A}\) なので、同様に立式します。
$$
\begin{aligned}
E &= r I_{\text{d}} + R_{\text{d}} I_{\text{d}}
\end{aligned}
$$
ab間を導線で接続し、ac間に電流計を接続した状態(模範解答の図e)では、抵抗 \(R_{\text{a}}\) と \(R_{\text{b}}\) が並列接続になります。
この並列部分の合成抵抗 \(R_{\text{ab}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{ab}} &= \frac{R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}}
\end{aligned}
$$
電流 \(I_{\text{ab}} = 4.20\,\text{A}\) なので、キルヒホッフの第2法則より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E &= r I_{\text{ab}} + R_{\text{ab}} I_{\text{ab}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- キルヒホッフの第2法則: \(\sum E = \sum RI\)
- 並列回路の合成抵抗: \(R = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\)
各方程式に数値と \(E = 8.40\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
8.40 &= 1.00(r + R_{\text{a}}) \\[2.0ex]
r + R_{\text{a}} &= 8.40 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
8.40 &= 3.50(r + R_{\text{b}}) \\[2.0ex]
r + R_{\text{b}} &= 2.40 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
8.40 &= 2.10(r + R_{\text{d}}) \\[2.0ex]
r + R_{\text{d}} &= 4.00 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
8.40 &= 4.20 \left( r + \frac{R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} \right) \\[2.0ex]
r + \frac{R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 2.00 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
式①から式②を引いて \(r\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{a}} – R_{\text{b}} &= 6.00 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
式①から式④を引いて \(r\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{a}} – \frac{R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 6.40 \\[2.0ex]
\frac{R_{\text{a}}(R_{\text{a}} + R_{\text{b}}) – R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 6.40 \\[2.0ex]
\frac{R_{\text{a}}^2}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 6.40 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
式②から式④を引いて \(r\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{b}} – \frac{R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 0.40 \\[2.0ex]
\frac{R_{\text{b}}(R_{\text{a}} + R_{\text{b}}) – R_{\text{a}} R_{\text{b}}}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 0.40 \\[2.0ex]
\frac{R_{\text{b}}^2}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}} &= 0.40 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
式⑥を式⑦で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\frac{R_{\text{a}}^2}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}}}{\frac{R_{\text{b}}^2}{R_{\text{a}} + R_{\text{b}}}} &= \frac{6.40}{0.40} \\[2.0ex]
\frac{R_{\text{a}}^2}{R_{\text{b}}^2} &= 16 \\[2.0ex]
\left( \frac{R_{\text{a}}}{R_{\text{b}}} \right)^2 &= 4.0^2
\end{aligned}
$$
抵抗値は正なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{R_{\text{a}}}{R_{\text{b}}} &= 4.0 \\[2.0ex]
R_{\text{a}} &= 4.0 R_{\text{b}}
\end{aligned}
$$
これを式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
4.0 R_{\text{b}} – R_{\text{b}} &= 6.00 \\[2.0ex]
3.0 R_{\text{b}} &= 6.00 \\[2.0ex]
R_{\text{b}} &= 2.0\,\Omega
\end{aligned}
$$
これを用いて他の値を求めます。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{a}} &= 4.0 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 8.0\,\Omega
\end{aligned}
$$
式②より \(r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
r + 2.0 &= 2.40 \\[2.0ex]
r &= 0.40\,\Omega
\end{aligned}
$$
式③より \(R_{\text{d}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
0.40 + R_{\text{d}} &= 4.00 \\[2.0ex]
R_{\text{d}} &= 3.6\,\Omega
\end{aligned}
$$
回路のどこに電流計をつなぐかによって、電気が通るルートが変わります。
それぞれのルートについて、「電池が押し出す力(電圧)は、途中の抵抗で使われる力の合計と同じ」というルール(キルヒホッフの法則)を使って式を作ります。
4つの異なるルートから4つの式ができるので、それを連立方程式として解けば、隠れていた抵抗の大きさがすべて明らかになります。
求めた抵抗値 \(R_{\text{a}}, R_{\text{b}}, R_{\text{d}}, r\) はすべて正の値となっており、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
問題文の図2のグラフから、素子Xの性質を読み取ります。
直流電圧をかけた際、電流が時間とともに減少し、最終的に \(0\) になるのはコンデンサーの特徴です。
コンデンサーは、接続した瞬間(電荷が \(0\) のとき)は電圧降下がなく、抵抗ゼロの導線(短絡)とみなせることを利用して、初期状態の回路方程式を立てます。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーの過渡現象: 直流回路において、コンデンサーは接続直後は短絡(導線)、十分時間経過後は断線とみなせます。
- 素子Yの特定: 直流電圧をかけて十分時間が経過しても電流が流れ続ける素子は、直流を遮断するコンデンサーではありません。
具体的な解説と立式
図2のグラフより、cf間を接続した直後は電流が流れ、その後徐々に減少して最終的に \(0\,\text{A}\) になっています。
これはコンデンサーが充電されていく過程を示しているため、素子Xはコンデンサーであると考えられます。
cf間を接続した瞬間(\(t=0\))、コンデンサーXにはまだ電荷が蓄えられていないため、極板間の電位差は \(0\,\text{V}\) です。
したがって、この瞬間の回路(模範解答の図g)は、コンデンサー部分をただの導線とみなすことができます。
閉回路は c \(\rightarrow\) \(0.600\,\Omega\) \(\rightarrow\) \(10.0\,\text{V}\) \(\rightarrow\) X(短絡) \(\rightarrow\) \(R_{\text{f}}\) \(\rightarrow\) f \(\rightarrow\) 電流計 \(\rightarrow\) c となります。
この瞬間の電流 \(I_{\text{初}} = 2.00\,\text{A}\) なので、キルヒホッフの第2法則より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{起電力}) &= (\text{電圧降下の和}) \\[2.0ex]
E_{\text{新}} &= r_{\text{新}} I_{\text{初}} + R_{\text{f}} I_{\text{初}}
\end{aligned}
$$
次に、df間を導線で接続し、ce間に電流計を接続した状態(模範解答の図h)を考えます。
閉回路は c \(\rightarrow\) \(0.600\,\Omega\) \(\rightarrow\) \(10.0\,\text{V}\) \(\rightarrow\) \(R_{\text{d}}\) \(\rightarrow\) d(f) \(\rightarrow\) \(R_{\text{f}}\) \(\rightarrow\) X(コンデンサー) \(\rightarrow\) Y \(\rightarrow\) e \(\rightarrow\) 電流計 \(\rightarrow\) c となります。
もし素子Yがコンデンサーであれば、回路は直流を完全に遮断するため、十分時間が経過した後の電流は \(0\,\text{A}\) になるはずです。
しかし、問題文には「電流は \(0\) ではない一定値となった」とあるため、素子Yはコンデンサー以外(抵抗またはコイル)であると考えられます。
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- キルヒホッフの第2法則: \(\sum E = \sum RI\)
回路方程式に数値を代入して \(R_{\text{f}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
10.0 &= 0.600 \times 2.00 + R_{\text{f}} \times 2.00 \\[2.0ex]
10.0 &= 1.20 + 2.00 R_{\text{f}} \\[2.0ex]
2.00 R_{\text{f}} &= 10.0 – 1.20 \\[2.0ex]
2.00 R_{\text{f}} &= 8.80 \\[2.0ex]
R_{\text{f}} &= 4.4\,\Omega
\end{aligned}
$$
スイッチを入れた瞬間、空っぽのコンデンサーは電気を勢いよく吸い込むため、ただの導線のように振る舞います。
時間が経つとコンデンサーはいっぱいになり、電気を通さなくなります。グラフがこの「最初は流れて、だんだん減る」形になっているので、Xはコンデンサーだとわかります。
最初の瞬間の電流の大きさから、回路全体の抵抗の大きさが逆算できます。
また、Yについては、時間が経っても電気が流れ続けていることから、電気をせき止めてしまうコンデンサーではないことがわかります。
求めた抵抗値 \(R_{\text{f}} = 4.4\,\Omega\) は正の値であり、物理的に妥当です。また、グラフの形状から素子を特定する論理も整合しています。
思考の道筋とポイント
RC直列回路の過渡現象を、キルヒホッフの法則に基づく微分方程式から厳密に解き明かします。
コンデンサーの極板の電荷 \(q(t)\) と回路を流れる電流 \(I(t)\) の関係 \(I = \frac{dq}{dt}\) を用いて、電流の時間変化を表す関数を導出します。
この設問における重要なポイント
- 回路方程式の微分形: コンデンサーの電圧降下は \(\frac{q}{C}\) であり、これを時間微分することで電流 \(I\) の微分方程式が得られます。
具体的な解説と立式
時刻 \(t\) におけるコンデンサーXの電荷を \(q(t)\)、回路を流れる電流を \(I(t)\) とします。
電流の定義より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
I(t) &= \frac{dq(t)}{dt}
\end{aligned}
$$
閉回路におけるキルヒホッフの第2法則より、以下の回路方程式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{起電力}) &= (\text{抵抗での電圧降下}) + (\text{コンデンサーでの電圧降下}) \\[2.0ex]
E_{\text{新}} &= (r_{\text{新}} + R_{\text{f}}) I(t) + \frac{q(t)}{C}
\end{aligned}
$$
この式の両辺を時間 \(t\) で微分します。起電力 \(E_{\text{新}}\) は定数なので微分すると \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
0 &= (r_{\text{新}} + R_{\text{f}}) \frac{dI(t)}{dt} + \frac{1}{C} \frac{dq(t)}{dt}
\end{aligned}
$$
\(\frac{dq(t)}{dt} = I(t)\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
(r_{\text{新}} + R_{\text{f}}) \frac{dI(t)}{dt} &= – \frac{1}{C} I(t)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電流の定義: \(I = \frac{dq}{dt}\)
- コンデンサーの電圧: \(V = \frac{q}{C}\)
- 微分方程式の変数分離法
微分方程式を変数分離形に変形します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{I(t)} dI &= – \frac{1}{C(r_{\text{新}} + R_{\text{f}})} dt
\end{aligned}
$$
両辺を積分します。積分定数を \(A\) とします。
$$
\begin{aligned}
\int \frac{1}{I} dI &= – \int \frac{1}{C(r_{\text{新}} + R_{\text{f}})} dt \\[2.0ex]
\log_e |I(t)| &= – \frac{1}{C(r_{\text{新}} + R_{\text{f}})} t + A
\end{aligned}
$$
指数関数の形に直します。\(I_{\text{初}} = e^A\) とおきます。
$$
\begin{aligned}
I(t) &= I_{\text{初}} e^{- \frac{1}{C(r_{\text{新}} + R_{\text{f}})} t}
\end{aligned}
$$
この式は、電流が時間とともに指数関数的に減少し、\(t \to \infty\) で \(0\) に近づくことを示しており、問題文の図2のグラフと完全に一致します。したがってXはコンデンサーです。
\(t=0\) のとき、初期条件より \(I(0) = 2.00\,\text{A}\) です。
$$
\begin{aligned}
I(0) &= I_{\text{初}} e^0 \\[2.0ex]
&= I_{\text{初}}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_{\text{初}} &= 2.00
\end{aligned}
$$
一方、最初の回路方程式において、\(t=0\) ではコンデンサーに電荷が溜まっていないため \(q(0) = 0\) です。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{新}} &= (r_{\text{新}} + R_{\text{f}}) I(0) + 0
\end{aligned}
$$
数値を代入して \(R_{\text{f}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
10.0 &= (0.600 + R_{\text{f}}) \times 2.00 \\[2.0ex]
5.00 &= 0.600 + R_{\text{f}} \\[2.0ex]
R_{\text{f}} &= 4.4\,\Omega
\end{aligned}
$$
回路に流れる電流とコンデンサーに溜まる電気の量の関係を、微分の式(変化の割合を表す式)で表しました。
この式を数学的に解くと、「電流は最初が一番大きく、その後カーブを描きながら減っていく」という結果が得られます。これが図2のグラフの正体です。
最初の瞬間の電流の値から、抵抗の大きさを逆算することができます。
微分方程式から導かれた電流の式が、問題で与えられたグラフの形状を正確に説明しており、物理的原理に基づいた妥当な結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
交流回路におけるインピーダンスの概念を用いて、素子Yの特定と周波数の比を求めます。
まず、図3の回路(RC直列回路)から、コンデンサーXのリアクタンスを計算します。
次に、図4の回路(R, X, Y直列回路)の周波数特性に注目します。周波数を変化させて電流が最大になる(インピーダンスが最小になる)現象は直列共振であり、これからYがコイルであることを特定し、共振条件を利用して計算を進めます。
この設問における重要なポイント
- 交流のオームの法則: 電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\) と電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) の間には \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) の関係があります。
- 直列回路のインピーダンス: 抵抗 \(R\)、コイル \(L\)、コンデンサー \(C\) の直列回路のインピーダンスは \(Z = \sqrt{R^2 + (X_{\text{コイル}} – X_{\text{コンデンサー}})^2}\) となります。
- 直列共振: コイルのリアクタンス \(X_{\text{コイル}}\) とコンデンサーのリアクタンス \(X_{\text{コンデンサー}}\) が等しくなるとき、インピーダンスが最小となり、電流が最大となります。
具体的な解説と立式
図3の回路(模範解答の図k)は、d \(\rightarrow\) \(R_{\text{d}}\) \(\rightarrow\) X(コンデンサー) \(\rightarrow\) \(R_{\text{f}}\) \(\rightarrow\) f の閉回路です。
抵抗成分の和は \(R_{\text{d}} + R_{\text{f}} = 4.00 + 4.00 = 8.00\,\Omega\) です。
コンデンサーの静電容量を \(C\) とすると、周波数 \(f_1\) におけるリアクタンスは以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
X_{\text{コンデンサー}} &= \frac{1}{2\pi f_1 C}
\end{aligned}
$$
この回路のインピーダンス \(Z_1\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Z_1 &= \sqrt{(R_{\text{d}} + R_{\text{f}})^2 + X_{\text{コンデンサー}}^2}
\end{aligned}
$$
交流のオームの法則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{実効}} &= Z_1 I_{\text{実効1}}
\end{aligned}
$$
図4の回路(模範解答の図j)は、b \(\rightarrow\) \(R_{\text{b}}\) \(\rightarrow\) X(コンデンサー) \(\rightarrow\) Y \(\rightarrow\) e の閉回路です。
問題文より、周波数を大きくすると電流が最大値をとりました。インピーダンスが最小になるこの現象は直列共振であり、コンデンサーと直列共振を起こす素子はコイルです。よってYはコイル(自己インダクタンス \(L\))です。
抵抗成分は \(R_{\text{b}} = 4.00\,\Omega\) です。
コイルのリアクタンスは以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
X_{\text{コイル}} &= 2\pi f L
\end{aligned}
$$
周波数 \(f_1\) のときのインピーダンス \(Z_2\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Z_2 &= \sqrt{R_{\text{b}}^2 + \left( 2\pi f_1 L – \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2}
\end{aligned}
$$
交流のオームの法則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{実効}} &= Z_2 I_{\text{実効2}}
\end{aligned}
$$
周波数 \(f_2\) で電流が最大(共振)になるため、このときリアクタンス成分が \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
2\pi f_2 L – \frac{1}{2\pi f_2 C} &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 交流のオームの法則: \(V = ZI\)
- RC直列インピーダンス: \(Z = \sqrt{R^2 + \left( \frac{1}{\omega C} \right)^2}\)
- RLC直列インピーダンス: \(Z = \sqrt{R^2 + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right)^2}\)
- 共振条件: \(\omega L = \frac{1}{\omega C}\)
図3の回路について計算します。
$$
\begin{aligned}
Z_1 &= \frac{10.0}{1.00} \\[2.0ex]
&= 10.0\,\Omega
\end{aligned}
$$
これをインピーダンスの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{8.00^2 + \left( \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2} &= 10.0
\end{aligned}
$$
両辺を2乗して整理します。
$$
\begin{aligned}
64.0 + \left( \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2 &= 100 \\[2.0ex]
\left( \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2 &= 36.0
\end{aligned}
$$
\(\frac{1}{2\pi f_1 C} > 0\) より、以下の値を得ます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2\pi f_1 C} &= 6.0\,\Omega \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
図4の回路について計算します。
$$
\begin{aligned}
Z_2 &= \frac{10.0}{2.00} \\[2.0ex]
&= 5.00\,\Omega
\end{aligned}
$$
これをインピーダンスの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{4.00^2 + \left( 2\pi f_1 L – \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2} &= 5.00
\end{aligned}
$$
両辺を2乗して整理します。
$$
\begin{aligned}
16.0 + \left( 2\pi f_1 L – \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2 &= 25.0 \\[2.0ex]
\left( 2\pi f_1 L – \frac{1}{2\pi f_1 C} \right)^2 &= 9.00
\end{aligned}
$$
ここで平方根を外す際の符号を判定します。共振周波数 \(f_2\) において \(2\pi f_2 L = \frac{1}{2\pi f_2 C}\) です。
問題文より、周波数を \(f_1\) から大きくしていくと電流が増加し、\(f_2\) で最大になったので、\(f_1 < f_2\) です。
\(f_1 < f_2\) のとき、コイルのリアクタンスは小さく、コンデンサーのリアクタンスは大きくなります。
$$
\begin{aligned}
2\pi f_1 L &< 2\pi f_2 L \\[2.0ex] \frac{1}{2\pi f_1 C} &> \frac{1}{2\pi f_2 C}
\end{aligned}
$$
したがって、\(2\pi f_1 L < \frac{1}{2\pi f_1 C}\) となり、括弧の中身は負になります。
$$
\begin{aligned}
2\pi f_1 L – \frac{1}{2\pi f_1 C} &= -3.0 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
式⑧を式⑨に代入します。
$$
\begin{aligned}
2\pi f_1 L – 6.0 &= -3.0 \\[2.0ex]
2\pi f_1 L &= 3.0\,\Omega \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
求めたいのは \(\frac{f_1^2}{f_2^2}\) です。共振条件より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{1}{2\pi \sqrt{LC}} \\[2.0ex]
f_2^2 &= \frac{1}{4\pi^2 LC}
\end{aligned}
$$
式⑧と式⑩を用いて、\(4\pi^2 f_1^2 LC\) の値を作ります。式⑩を式⑧で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{2\pi f_1 L}{\frac{1}{2\pi f_1 C}} &= \frac{3.0}{6.0} \\[2.0ex]
4\pi^2 f_1^2 LC &= 0.50
\end{aligned}
$$
これを用いて比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{f_1^2}{f_2^2} &= f_1^2 \div \frac{1}{4\pi^2 LC} \\[2.0ex]
&= 4\pi^2 f_1^2 LC \\[2.0ex]
&= 0.50
\end{aligned}
$$
交流回路では、コンデンサーやコイルは「周波数によって通りにくさが変わる抵抗」のように働きます。
コンデンサーは周波数が高いほど電気を通しやすく、コイルは周波数が高いほど電気を通しにくくなります。
この2つを直列につなぐと、ある特定の周波数(共振周波数)で、お互いの「通りにくさ」を打ち消し合い、最も電気が流れやすくなります。
問題文の「周波数を大きくすると電流が最大になった」という現象から、Yがコイルであることがわかります。
あとは、それぞれの状態での「通りにくさ(インピーダンス)」を計算し、パズルのように組み合わせていけば、周波数の比が求まります。
\(f_1 < f_2\) であるため、\(\frac{f_1^2}{f_2^2} < 1\) となるはずであり、計算結果の \(0.50\) はこれと整合しています。また、リアクタンスの符号判定も物理的な周波数特性と一致しています。
思考の道筋とポイント
RLC直列回路のインピーダンスの公式を、キルヒホッフの法則に基づく微分方程式から三角関数の合成を用いて原理的に導出します。
交流電源の電圧を \(V(t) = V_{\text{最大}} \sin(\omega t)\) とし、定常状態の電流 \(I(t) = I_{\text{最大}} \sin(\omega t – \phi)\) を仮定して方程式を解きます。
この設問における重要なポイント
- 回路方程式: コイルの誘導起電力は \(-L \frac{dI}{dt}\)、コンデンサーの電圧降下は \(\frac{1}{C} \int I dt\) です。
- 三角関数の合成: \(a \sin \theta + b \cos \theta = \sqrt{a^2 + b^2} \sin(\theta + \alpha)\) を用いて、電圧と電流の振幅比(インピーダンス)を導きます。
具体的な解説と立式
図4の回路(RLC直列回路)について考えます。交流電源の角周波数を \(\omega = 2\pi f\) とします。
回路を流れる電流を \(I(t) = I_{\text{最大}} \sin(\omega t)\) と仮定します。
キルヒホッフの第2法則より、電源電圧 \(V(t)\) は各素子の電圧降下の和に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
(\text{電源電圧}) &= (\text{抵抗の電圧降下}) + (\text{コイルの電圧降下}) + (\text{コンデンサーの電圧降下}) \\[2.0ex]
V(t) &= R_{\text{b}} I(t) + L \frac{dI(t)}{dt} + \frac{1}{C} \int I(t) dt
\end{aligned}
$$
\(I(t) = I_{\text{最大}} \sin(\omega t)\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V(t) &= R_{\text{b}} I_{\text{最大}} \sin(\omega t) + L \frac{d}{dt}(I_{\text{最大}} \sin(\omega t)) + \frac{1}{C} \int I_{\text{最大}} \sin(\omega t) dt \\[2.0ex]
&= R_{\text{b}} I_{\text{最大}} \sin(\omega t) + \omega L I_{\text{最大}} \cos(\omega t) – \frac{1}{\omega C} I_{\text{最大}} \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
\(\cos(\omega t)\) の項をまとめます。
$$
\begin{aligned}
V(t) &= I_{\text{最大}} \left\{ R_{\text{b}} \sin(\omega t) + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right) \cos(\omega t) \right\}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- コイルの電圧: \(V = L \frac{dI}{dt}\)
- コンデンサーの電圧: \(V = \frac{1}{C} \int I dt\)
- 三角関数の合成公式
中括弧の中を三角関数の合成公式を用いて変形します。
$$
\begin{aligned}
V(t) &= I_{\text{最大}} \sqrt{R_{\text{b}}^2 + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right)^2} \sin(\omega t + \phi)
\end{aligned}
$$
ただし、\(\tan \phi = \frac{\omega L – \frac{1}{\omega C}}{R_{\text{b}}}\) です。
電源電圧の振幅を \(V_{\text{最大}}\) とすると、\(V(t) = V_{\text{最大}} \sin(\omega t + \phi)\) と表せるため、振幅の比較から以下の関係が得られます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= I_{\text{最大}} \sqrt{R_{\text{b}}^2 + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right)^2}
\end{aligned}
$$
実効値 \(V_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{最大}}}{\sqrt{2}}\)、 \(I_{\text{実効}} = \frac{I_{\text{最大}}}{\sqrt{2}}\) を用いると、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{実効}} &= I_{\text{実効}} \sqrt{R_{\text{b}}^2 + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right)^2}
\end{aligned}
$$
この式の平方根の部分がインピーダンス \(Z\) であり、公式が導出されました。
$$
\begin{aligned}
Z &= \sqrt{R_{\text{b}}^2 + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right)^2}
\end{aligned}
$$
電流の実効値 \(I_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{実効}}}{Z}\) が最大になるのは、分母の \(Z\) が最小になるときです。
\(Z\) が最小になるのは、平方根の中の2乗の項が \(0\) になるとき、すなわち \(\omega L – \frac{1}{\omega C} = 0\) のときです。これが共振条件です。
これ以降の計算(\(f_1\) と \(f_2\) の関係から数値を求める過程)は、メインの解法と全く同じになります。
$$
\begin{aligned}
2\pi f_1 L – \frac{1}{2\pi f_1 C} &= -3.0 \\[2.0ex]
\frac{1}{2\pi f_1 C} &= 6.0 \\[2.0ex]
2\pi f_1 L &= 3.0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{f_1^2}{f_2^2} &= 4\pi^2 f_1^2 LC \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi f_1 L}{\frac{1}{2\pi f_1 C}} \\[2.0ex]
&= \frac{3.0}{6.0} \\[2.0ex]
&= 0.50
\end{aligned}
$$
交流回路の公式を丸暗記するのではなく、「コイルは電流の変化を嫌がる」「コンデンサーは電気が溜まると電圧が上がる」という基本的な性質を数式(微分・積分)で表しました。
その数式を数学のテクニック(三角関数の合成)で整理すると、自然とインピーダンスの公式や、電流が最大になる条件(共振)が導き出されます。
公式の成り立ちを理解することで、複雑な回路にも応用できる力が身につきます。
微分方程式から導出されたインピーダンスの式は、既知の公式と完全に一致しており、原理的なアプローチの正しさが確認できます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- キルヒホッフの法則と理想的な測定器の扱い
- 核心: 理想的な電圧計は電流を流さず(断線)、電流計は電圧降下を生じない(短絡)という性質を利用して、測定ごとに異なる閉回路を特定し、キルヒホッフの第2法則を適用します。
- 理解のポイント:
- 電圧計が接続された部分は回路が切れていると考え、電流計が接続された部分はただの導線と考えます。
- 電流が流れるルート(閉回路)を正確にたどり、起電力と電圧降下の和が等しいという式を立てます。
- コンデンサーの過渡現象と交流回路の共振
- 核心: コンデンサーは直流電圧をかけた瞬間は短絡(導線)、十分時間が経つと断線として振る舞い、交流回路ではコイルと組み合わさることで特定の周波数でインピーダンスが最小になる共振を起こします。
- 理解のポイント:
- 直流回路におけるコンデンサーの振る舞い(時間変化)をグラフの形状から読み取ることが重要です。
- 交流回路では、電流が最大になる条件が「コイルとコンデンサーのリアクタンスが等しくなる(共振)」ことであると見抜く必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ブラックボックス問題(未知素子の決定): 箱の中に何が入っているか分からない問題では、直流を入れたときの時間変化(過渡現象)と、交流を入れたときの周波数特性(インピーダンスの変化)の2つの視点から素子を特定するアプローチがそのまま使えます。
- スイッチの切り替えによる回路変化: スイッチを切り替えて電流計や電圧計の場所を変える問題は、本問の(1)と同様に、状態ごとに回路図を描き直し、それぞれでキルヒホッフの法則を立てて連立させる解法が有効です。
- 初見の問題での着眼点:
- 測定器の理想化を回路図に反映する: 問題文を読んだら、まず電圧計を「×(断線)」、電流計を「ただの線」として回路図に書き込み、電流が流れる一本道のルートをマーカーなどでなぞって視覚化します。
- 極端な状態(\(t=0\), \(t \to \infty\), 共振)に注目する: グラフや問題文から、「スイッチを入れた瞬間」「十分時間が経った後」「電流が最大になったとき」などの極端な状態を見つけ、そこから素子の性質や方程式のヒントを引き出します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 測定器の内部抵抗の誤解:
- 誤解: 電圧計にもわずかに電流が流れると考えたり、電流計の抵抗を考慮してしまったりして、式が複雑になり解けなくなる。
- 対策: 問題文に「内部抵抗は十分に大きく、電流は流れない」「内部抵抗は無視できる」といった記述があるか必ず確認し、理想的な測定器として大胆に「断線」「短絡」とみなして立式する癖をつけましょう。
- 交流インピーダンスの平方根の外し忘れ・符号ミス:
- 誤解: インピーダンスの式 \(Z = \sqrt{R^2 + (X_{\text{コイル}} – X_{\text{コンデンサー}})^2}\) を計算する際、平方根を外すときに中身の正負を確認せず、常に \(X_{\text{コイル}} – X_{\text{コンデンサー}} > 0\) だと思い込んで計算を進めてしまう。
- 対策: 共振周波数 \(f_2\) と現在の周波数 \(f_1\) の大小関係から、コイルとコンデンサーのどちらのリアクタンスが大きいかを必ず論理的に判定し、絶対値を外す際の符号(\(\pm\))を慎重に決定してください。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- キルヒホッフの第2法則:
- 選定理由: 複数の抵抗や電池が複雑に接続された回路網において、電流の経路さえ特定できれば、機械的に立式して確実に未知数を求められる最も汎用性の高い手法だからです。
- 適用根拠: 任意の閉回路において、静電気力が電荷にする仕事が一周でゼロになるというエネルギー保存則が成り立っているため適用可能です。
- RLC直列回路のインピーダンス公式:
- 選定理由: 交流回路において、電圧と電流の実効値の比(インピーダンス)を計算する際、微分方程式を毎回解くよりも、公式として適用する方が圧倒的に早く、試験時間内に解き切るために必須だからです。
- 適用根拠: 回路が直列であり、すべての素子に同じ電流が流れている定常状態の交流回路であるため適用可能です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 連立方程式の文字消去の順序:
- 意識: むやみに代入を繰り返すと式が膨れ上がり、計算ミスを誘発します。どの文字を先に消去するか、見通しを立てることが重要です。
- 実践: 本問の(1)のように、すべての式に共通して含まれる文字(今回は \(r\))を見つけ、辺々を引くことで一気に消去し、変数の少ない式を作り出すテクニックを使いましょう。
- 比の計算の活用:
- 意識: 交流回路の計算では、具体的な数値をすべて代入して計算すると桁数が大きくなりミスしやすくなります。
- 実践: 本問の(3)のように、求めたいものが \(\frac{f_1^2}{f_2^2}\) という「比」である場合、\(4\pi^2 f_1^2 LC\) のような塊(ブロック)を作り、その塊のまま割り算を行って数値を出すことで、計算を劇的にシンプルにできます。
問題163 陽電子断層撮影法のしくみ (20 福井大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(放射性崩壊の微分方程式)
- 模範解答が半減期の公式を既知として適用するのに対し、別解では崩壊速度が原子核の数に比例するという原理から微分方程式を立て、積分によって指数関数的な減衰を導出します。
- 設問(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法(極座標における運動方程式の導出)
- 模範解答が円運動の加速度の公式を既知とするのに対し、別解では位置ベクトルの2階微分から向心加速度を数学的に導出し、運動方程式を立式します。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(放射性崩壊の微分方程式)
- 上記の別解が有益である理由
- 放射性崩壊の微分方程式は、化学反応の速度論やコンデンサーの放電など、自然界の様々な減衰現象に共通する数理モデルであり、応用範囲が広いため。
- 円運動の加速度公式を暗記に頼らず、ベクトルの微分という数学的・物理的原理から導出することで、力学の基礎概念をより深く理解できるため。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「陽電子断層撮影法(PET)の物理的原理」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 原子核反応と保存則: 核反応の前後で、質量数(核子の数)と原子番号(電荷)の総和が保存されます。
- 質量とエネルギーの等価性: 質量 \(m\) の粒子は、静止していても \(E = mc^2\) のエネルギーを持ちます。対消滅ではこの質量が光(\(\gamma\) 線)のエネルギーに変換されます。
- 運動量保存則とエネルギー保存則: 外力が働かない衝突や対消滅の前後において、系全体の運動量ベクトルと総エネルギーは保存されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、核反応式を立て、質量数と原子番号の保存則から未知の原子核を特定します。
- (2)では、半減期の定義に基づき、原子核の数が指数関数的に減少するグラフを選択します。
- (3)・(4)では、対消滅の前後で運動量保存則とエネルギー保存則を立式し、\(\gamma\) 線の放出方向を幾何学的に解析します。
- (5)では、ボーアモデルに基づく電子の円運動の運動方程式から速さを求め、(4)の結果を用いて幾何学的なズレの距離を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
核反応の前後で、質量数(陽子と中性子の数の和)と原子番号(陽子の数、すなわち電荷)が保存されることを利用します。
陽電子は電子の反粒子であり、質量は電子と同じ(質量数 \(0\))、電荷は \(+e\)(原子番号に相当する値は \(+1\))です。
この設問における重要なポイント
- 質量数の保存: 反応前の質量数の和は、反応後の質量数の和に等しくなります。
- 原子番号の保存: 反応前の原子番号の和は、反応後の原子番号の和に等しくなります。
具体的な解説と立式
未知の原子核「ア」の元素記号を \(\text{X}\)、質量数を \(A\)、原子番号を \(Z\) とし、\({}_{Z}^{A}\text{X}\) と表します。
陽電子は質量数が \(0\)、電荷が \(+e\) なので、\({}_{+1}^{0}\text{e}\) と表せます。ニュートリノは質量数も電荷も \(0\) です。
問題文の核反応式は以下のように書けます。
$$
\begin{aligned}
{}_{9}^{18}\text{F} &\rightarrow {}_{Z}^{A}\text{X} + {}_{+1}^{0}\text{e} + \text{ニュートリノ}
\end{aligned}
$$
質量数の保存より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の質量数}) &= (\text{反応後の質量数}) \\[2.0ex]
18 &= A + 0 + 0
\end{aligned}
$$
原子番号(電荷)の保存より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の原子番号}) &= (\text{反応後の原子番号}) \\[2.0ex]
9 &= Z + 1 + 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 質量数の保存則
- 原子番号(電荷)の保存則
質量数の式より、\(A\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
A &= 18
\end{aligned}
$$
原子番号の式より、\(Z\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Z &= 9 – 1 \\[2.0ex]
&= 8
\end{aligned}
$$
原子番号が \(8\) の元素は酸素(\(\text{O}\))です。
したがって、未知の原子核は \({}_{8}^{18}\text{O}\) となります。
原子核の反応では、「陽子と中性子の合計の数(左上の数字)」と「電気の量(左下の数字)」が、反応の前と後で変わりません。
フッ素(\(\text{F}\))から陽電子(電気の量が \(+1\))が飛び出したので、残った原子核は電気の量が \(1\) 減って \(8\) になります。左上の数字はそのまま \(18\) です。
周期表で8番目の元素は酸素(\(\text{O}\))なので、答えがわかります。
質量数と原子番号の保存則から一意に決定され、選択肢②と一致します。
問(2)
思考の道筋とポイント
放射性同位体が崩壊して減少していく様子を表すグラフを選びます。
半減期 \(T\) ごとに原子核の数が半分になるという性質(指数関数的な減少)を理解しているかが問われています。
この設問における重要なポイント
- 半減期の定義: 放射性同位体の原子核の数が、崩壊によって元の数の半分になるまでの時間です。
- 減衰の関数形: 一定の割合で減少するため、グラフは下に凸の減少曲線(指数関数)になります。
具体的な解説と立式
時刻 \(t\) における原子核の数を \(N(t)\)、初期の数を \(N_{\text{初}}\)、半減期を \(T\) とします。
半減期の定義より、時間 \(T\) が経過するごとに数は \(\frac{1}{2}\) 倍になります。
したがって、時刻 \(t\) における原子核の数 \(N(t)\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
N(t) &= N_{\text{初}} \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 放射性崩壊の法則(半減期の公式): \(N = N_{\text{初}} \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}}\)
式に具体的な時刻を代入して、グラフの通る点を確認します。
\(t = 0\) のとき:
$$
\begin{aligned}
N(0) &= N_{\text{初}} \left( \frac{1}{2} \right)^0 \\[2.0ex]
&= N_{\text{初}}
\end{aligned}
$$
\(t = T\) のとき:
$$
\begin{aligned}
N(T) &= N_{\text{初}} \left( \frac{1}{2} \right)^1 \\[2.0ex]
&= 0.5 N_{\text{初}}
\end{aligned}
$$
\(t = 2T\) のとき:
$$
\begin{aligned}
N(2T) &= N_{\text{初}} \left( \frac{1}{2} \right)^2 \\[2.0ex]
&= 0.25 N_{\text{初}}
\end{aligned}
$$
この変化は直線的(一定量ずつ減る)ではなく、指数関数的(一定の割合で減る)であり、下に凸の曲線を描きます。
選択肢のグラフを見ると、
①は直線的に減少しているため誤りです。
②は周期的に増減しているため誤りです。
③は \(t=T\) で \(0.5 N_{\text{初}}\) を通り、下に凸の曲線となっているため正しいです。
④は \(t=2T\) で \(0\) になっているため誤りです。
放射性物質は、「1秒間に何個減るか」ではなく、「今ある数のうち何割が減るか」というルールで減っていきます。
最初はたくさんあるので一気に減りますが、残り少なくなると減るペースもゆっくりになります。
そのため、グラフは直線ではなく、だんだん平らになっていく滑らかなカーブ(下に凸の曲線)になります。
半減期の公式が示す指数関数的な減衰の性質と、グラフ③の形状が完全に一致しています。
思考の道筋とポイント
放射性崩壊の法則を、微分方程式から導出します。
「単位時間あたりに崩壊する原子核の数は、その時刻に存在する原子核の数に比例する」という物理的原理を数式化し、積分して関数形を求めます。
この設問における重要なポイント
- 崩壊速度の微分方程式: \(\frac{dN}{dt} = -\lambda N\) (\(\lambda\) は崩壊定数)
具体的な解説と立式
時刻 \(t\) における原子核の数を \(N(t)\) とします。
微小時間 \(dt\) の間に崩壊する原子核の数 \(-dN(t)\) は、その時刻の原子核の数 \(N(t)\) と微小時間 \(dt\) に比例します。比例定数(崩壊定数)を \(\lambda\)(\(\lambda > 0\))とすると、以下の微分方程式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
-dN(t) &= \lambda N(t) dt \\[2.0ex]
\frac{dN(t)}{dt} &= -\lambda N(t)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 放射性崩壊の微分方程式: \(\frac{dN}{dt} = -\lambda N\)
- 微分方程式の変数分離法
微分方程式を変数分離形に変形します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{N(t)} dN &= -\lambda dt
\end{aligned}
$$
両辺を積分します。積分定数を \(C\) とします。
$$
\begin{aligned}
\int \frac{1}{N} dN &= \int -\lambda dt \\[2.0ex]
\log_e |N(t)| &= -\lambda t + C
\end{aligned}
$$
\(N(t) > 0\) なので絶対値を外し、指数関数の形に直します。
$$
\begin{aligned}
N(t) &= e^{-\lambda t + C} \\[2.0ex]
&= e^C e^{-\lambda t}
\end{aligned}
$$
\(t=0\) のとき \(N(0) = N_{\text{初}}\) なので、\(e^C = N_{\text{初}}\) となります。
$$
\begin{aligned}
N(t) &= N_{\text{初}} e^{-\lambda t}
\end{aligned}
$$
半減期 \(T\) のとき、\(N(T) = \frac{1}{2} N_{\text{初}}\) となるので、\(\lambda\) と \(T\) の関係を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} N_{\text{初}} &= N_{\text{初}} e^{-\lambda T} \\[2.0ex]
\frac{1}{2} &= e^{-\lambda T} \\[2.0ex]
2^{-1} &= e^{-\lambda T}
\end{aligned}
$$
両辺を \(\frac{t}{T}\) 乗します。
$$
\begin{aligned}
(2^{-1})^{\frac{t}{T}} &= (e^{-\lambda T})^{\frac{t}{T}} \\[2.0ex]
2^{-\frac{t}{T}} &= e^{-\lambda t} \\[2.0ex]
\left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}} &= e^{-\lambda t}
\end{aligned}
$$
これを \(N(t)\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
N(t) &= N_{\text{初}} \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}}
\end{aligned}
$$
この関数は下に凸の単調減少関数であり、グラフ③と一致します。
「減るスピードが、今ある量に比例する」というルールを微分の式で書き、それを数学的に解きました。
結果として現れる \(e\) のマイナス何乗という式(指数関数)は、まさにグラフ③のような「最初は急激に減り、だんだん緩やかになる」カーブを表しています。
微分方程式から導出された関数形が、既知の半減期の公式およびグラフ③と完全に一致しており、原理的なアプローチの正しさが確認できます。
問(3)
思考の道筋とポイント
電子と陽電子が対消滅して2つの \(\gamma\) 線になる現象において、運動量保存則を適用します。
問題の条件「運動量の和が \(0\) の場合」に注目し、反応前後の運動量ベクトルを比較します。
この設問における重要なポイント
- 運動量保存則: 外力が働かない系では、反応前後の運動量ベクトルの総和は一定に保たれます。
- ベクトルの関係: 和が \(\vec{0}\) になる2つのベクトルは、大きさが等しく向きが逆になります。
具体的な解説と立式
対消滅する前の電子と陽電子の運動量ベクトルの和を \(\vec{P}_{\text{前}}\) とします。問題の条件より、これは \(\vec{0}\) です。
$$
\begin{aligned}
\vec{P}_{\text{前}} &= \vec{0}
\end{aligned}
$$
対消滅によって放出される2つの \(\gamma\) 線の運動量ベクトルをそれぞれ \(\vec{p}_1, \vec{p}_2\) とします。
反応の前後で外力は働かないため、運動量保存則が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の運動量の和}) &= (\text{反応後の運動量の和}) \\[2.0ex]
\vec{P}_{\text{前}} &= \vec{p}_1 + \vec{p}_2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動量保存則: \(\sum \vec{p}_{\text{前}} = \sum \vec{p}_{\text{後}}\)
運動量保存則の式に \(\vec{P}_{\text{前}} = \vec{0}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\vec{0} &= \vec{p}_1 + \vec{p}_2
\end{aligned}
$$
\(\vec{p}_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\vec{p}_2 &= -\vec{p}_1
\end{aligned}
$$
この式は、2つの \(\gamma\) 線の運動量ベクトルが、大きさが等しく、向きが正反対であることを示しています。
運動量の向きは \(\gamma\) 線の進行方向と同じであるため、2つの \(\gamma\) 線は互いに反対方向に放出されます。
衝突する前の電子と陽電子の「勢い(運動量)」を合計するとゼロでした。
衝突して光(\(\gamma\) 線)に変わった後も、全体の「勢い」の合計はゼロのままでなければなりません。
2つの光の勢いを足してゼロになるということは、2つの光が全く同じ勢いで、真っ向から反対の方向に飛んでいくしかない、ということです。
運動量保存則から論理的に導かれた結論であり、物理的に妥当です。
問(4)
思考の道筋とポイント
電子が速さ \(v\) で動き、陽電子が静止している場合の対消滅を考えます。
この反応の前後で、「エネルギー保存則」と「運動量保存則」の2つの方程式を立てます。
エネルギーには、運動エネルギーだけでなく、質量と等価なエネルギー(静止エネルギー \(mc^2\))も含めることが最大のポイントです。
運動量はベクトルであるため、電子の進行方向(水平方向)とそれに垂直な方向の2成分に分けて立式します。
この設問における重要なポイント
- 質量とエネルギーの等価性: 質量 \(m\) の粒子は \(mc^2\) のエネルギーを持ちます。対消滅ではこの質量がすべて \(\gamma\) 線のエネルギーに変換されます。
- \(\gamma\) 線のエネルギーと運動量の関係: \(p = \frac{E}{c}\)
- 運動量の成分分解: 図3を参考に、角度 \(\theta\) を用いて運動量ベクトルを分解します。
具体的な解説と立式
対消滅前の状態を考えます。
電子の質量を \(m\)、速さを \(v\) とします。陽電子の質量も \(m\) で、静止しています。
反応前の総エネルギー \(E_{\text{前}}\) は、電子の運動エネルギー、電子の静止エネルギー、陽電子の静止エネルギーの和です。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{前}} &= \frac{1}{2}mv^2 + mc^2 + mc^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv^2 + 2mc^2
\end{aligned}
$$
反応前の運動量は、電子の運動量のみです。電子の進行方向を \(x\) 軸の正の向きとします。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の}x\text{方向の運動量}) &= mv \\[2.0ex]
(\text{反応前の}y\text{方向の運動量}) &= 0
\end{aligned}
$$
対消滅後の状態を考えます。
図3のように、2つの \(\gamma\) 線が \(x\) 軸から角度 \(\theta\) ずつずれた方向に放出されたとします。
上向きに放出された \(\gamma\) 線のエネルギーを \(E_1\)、下向きに放出された \(\gamma\) 線のエネルギーを \(E_2\) とします。
それぞれの運動量の大きさは \(p_1 = \frac{E_1}{c}\)、\(p_2 = \frac{E_2}{c}\) です。
反応後の総エネルギー \(E_{\text{後}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{後}} &= E_1 + E_2
\end{aligned}
$$
反応後の運動量を \(x\) 方向と \(y\) 方向に分解します。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応後の}x\text{方向の運動量}) &= p_1 \cos\theta + p_2 \cos\theta \\[2.0ex]
&= \frac{E_1}{c} \cos\theta + \frac{E_2}{c} \cos\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
(\text{反応後の}y\text{方向の運動量}) &= p_1 \sin\theta – p_2 \sin\theta \\[2.0ex]
&= \frac{E_1}{c} \sin\theta – \frac{E_2}{c} \sin\theta
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{前}} &= E_{\text{後}} \\[2.0ex]
\frac{1}{2}mv^2 + 2mc^2 &= E_1 + E_2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
運動量保存則より、各方向について以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の}x\text{方向}) &= (\text{反応後の}x\text{方向}) \\[2.0ex]
mv &= \frac{E_1}{c} \cos\theta + \frac{E_2}{c} \cos\theta \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の}y\text{方向}) &= (\text{反応後の}y\text{方向}) \\[2.0ex]
0 &= \frac{E_1}{c} \sin\theta – \frac{E_2}{c} \sin\theta \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- エネルギー保存則
- 運動量保存則
- 質量とエネルギーの等価性: \(E = mc^2\)
- 光子の運動量: \(p = \frac{E}{c}\)
式③より、\(E_1\) と \(E_2\) の関係を求めます。\(\sin\theta \neq 0\) として両辺を割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{E_1}{c} \sin\theta &= \frac{E_2}{c} \sin\theta \\[2.0ex]
E_1 &= E_2
\end{aligned}
$$
2つの \(\gamma\) 線のエネルギーは等しいことがわかります。これを \(E\) とおきます(\(E_1 = E_2 = E\))。
式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 + 2mc^2 &= E + E \\[2.0ex]
\frac{1}{2}mv^2 + 2mc^2 &= 2E \quad \cdots ①’
\end{aligned}
$$
式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
mv &= \frac{E}{c} \cos\theta + \frac{E}{c} \cos\theta \\[2.0ex]
mv &= \frac{2E}{c} \cos\theta
\end{aligned}
$$
この式を \(2E\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2E &= \frac{mvc}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
これを式①’に代入して \(E\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 + 2mc^2 &= \frac{mvc}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
両辺を \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}v^2 + 2c^2 &= \frac{vc}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
\(\cos\theta\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &= \frac{vc}{\frac{1}{2}v^2 + 2c^2}
\end{aligned}
$$
分母と分子を \(c^2\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &= \frac{\frac{v}{c}}{\frac{1}{2}\left(\frac{v}{c}\right)^2 + 2}
\end{aligned}
$$
分母と分子に \(2\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &= \frac{2\left(\frac{v}{c}\right)}{\left(\frac{v}{c}\right)^2 + 4} \\[2.0ex]
&= \frac{2\left(\frac{v}{c}\right)}{4 + \left(\frac{v}{c}\right)^2}
\end{aligned}
$$
電子と陽電子がぶつかって光(\(\gamma\) 線)になるとき、「エネルギーの合計」と「勢い(運動量)の合計」の2つが守られます。
エネルギーには、動いているエネルギーだけでなく、「質量そのものが持っている莫大なエネルギー(\(mc^2\))」も足し合わせるのがポイントです。
勢い(運動量)については、縦方向と横方向に分けて考えます。縦方向は最初はゼロだったので、2つの光は上下に同じ勢いで飛んでいくことがわかります。
横方向の勢いの式と、エネルギーの式を組み合わせることで、光が飛んでいく角度を計算することができます。
得られた式は無次元量であり、\(\cos\theta\) の次元として正しいです。また、\(v \to 0\) の極限をとると \(\cos\theta \to 0\) となり、\(\theta \to 90^\circ\) となります。これは問(3)の「静止している場合は反対方向(\(180^\circ\)、つまり進行方向から \(90^\circ\) ずつ)に放出される」という結果と整合します。
問(5)
思考の道筋とポイント
まず、図4の幾何学的な関係から、求めたい距離 \(d\) を \(\cos\theta\) を用いて表します。
次に、水素原子のボーアモデルにおける電子の円運動の運動方程式を立て、電子の運動エネルギー(あるいは速さ \(v\))を求めます。
求めた \(v\) を(4)の結果に代入して \(\cos\theta\) を計算し、最終的な距離 \(d\) を導き出します。その際、\(\left(\frac{v}{c}\right)^2\) が非常に小さいことを利用して近似計算を行います。
この設問における重要なポイント
- 幾何学的関係: 図4より、直角三角形に着目して \(d = \frac{D}{2} \cos\theta\) を見出します。
- 円運動の運動方程式: クーロン力が向心力としてはたらくことを立式します。
- 微小量の近似: \(v \ll c\) のとき、分母の \(\left(\frac{v}{c}\right)^2\) を \(4\) に対して無視できるか評価します。
具体的な解説と立式
図4において、PET装置の中心から検出器までの距離(半径)は \(\frac{D}{2}\) です。
対消滅が起きた中心から、\(\gamma\) 線が飛んだ方向と水平線のなす角が \(\theta\) です。
直角三角形の幾何学的関係から、距離 \(d\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{D}{2} \cos\theta \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
次に、電子の速さ \(v\) を求めます。
質量 \(m\)、速さ \(v\) で半径 \(r\) の円軌道を回る電子の運動方程式を立てます。
陽子(電荷 \(+e\))と電子(電荷 \(-e\))の間にはたらくクーロン引力が向心力となります。
$$
\begin{aligned}
(\text{質量}) \times (\text{向心加速度}) &= (\text{向心力}) \\[2.0ex]
m \frac{v^2}{r} &= k \frac{e^2}{r^2}
\end{aligned}
$$
両辺に \(r\) を掛けて整理します。
$$
\begin{aligned}
mv^2 &= k \frac{e^2}{r} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
問題文より、電子の位置エネルギーは \(-k \frac{e^2}{r} = -4 \times 10^{-18}\,\text{J}\) です。
したがって、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
k \frac{e^2}{r} &= 4 \times 10^{-18}\,\text{J} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 円運動の運動方程式: \(m \frac{v^2}{r} = F\)
- クーロンの法則: \(F = k \frac{q_1 q_2}{r^2}\)
- 位置エネルギーの定義
式⑥を式⑤に代入して、\(mv^2\) の値を求めます。
$$
\begin{aligned}
mv^2 &= 4 \times 10^{-18}
\end{aligned}
$$
(4)で求めた \(\cos\theta\) の式に含まれる \(\left(\frac{v}{c}\right)^2\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\left(\frac{v}{c}\right)^2 &= \frac{v^2}{c^2} \\[2.0ex]
&= \frac{mv^2}{mc^2}
\end{aligned}
$$
数値を代入します。\(m = 9 \times 10^{-31}\,\text{kg}\)、\(c = 3 \times 10^8\,\text{m}/\text{s}\) です。
$$
\begin{aligned}
\left(\frac{v}{c}\right)^2 &= \frac{4 \times 10^{-18}}{(9 \times 10^{-31}) \times (3 \times 10^8)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{4 \times 10^{-18}}{9 \times 10^{-31} \times 9 \times 10^{16}} \\[2.0ex]
&= \frac{4 \times 10^{-18}}{81 \times 10^{-15}} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{81} \times 10^{-3}
\end{aligned}
$$
これから \(\frac{v}{c}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{v}{c} &= \sqrt{\frac{4}{81} \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{40}{81} \times 10^{-4}} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{40}}{9} \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= \frac{2\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2}
\end{aligned}
$$
(4)の \(\cos\theta\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &= \frac{2\left(\frac{v}{c}\right)}{4 + \left(\frac{v}{c}\right)^2}
\end{aligned}
$$
ここで、分母の \(\left(\frac{v}{c}\right)^2 = \frac{4}{81} \times 10^{-3} \approx 0.00005\) は、\(4\) に対して非常に小さいため無視できます(\(4 + \left(\frac{v}{c}\right)^2 \approx 4\))。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &\approx \frac{2\left(\frac{v}{c}\right)}{4} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \left(\frac{v}{c}\right)
\end{aligned}
$$
\(\frac{v}{c}\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &\approx \frac{1}{2} \times \frac{2\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2}
\end{aligned}
$$
最後に、式④を用いて距離 \(d\) を計算します。\(D = 0.6\,\text{m}\) です。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{0.6}{2} \times \frac{\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= 0.3 \times \frac{\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{10} \times \frac{\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{10}}{30} \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{10}}{3} \times 10^{-3}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
単位を \(\text{mm}\) に直します(\(10^{-3}\,\text{m} = 1\,\text{mm}\))。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{\sqrt{10}}{3}\,\text{mm}
\end{aligned}
$$
\(\sqrt{10} = 3.16\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{3.16}{3}\,\text{mm} \\[2.0ex]
&\approx 1.05\,\text{mm}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮し、最も近い選択肢を選ぶと \(1\,\text{mm}\) となります。
まず、図形的な関係から、ズレの距離 \(d\) は角度 \(\theta\) を使って計算できることを確認します。
次に、電子がどれくらいのスピードで飛んでいるかを計算します。電子は陽子に引っ張られながら回っているので、その引っ張る力(クーロン力)と遠心力が釣り合っているという式を立てます。
計算してみると、電子のスピードは光のスピードに比べて非常に遅いことがわかります。
そのため、(4)で作った複雑な式を、少しだけ簡単な式に「近似(およそこれくらい、とみなすこと)」することができます。
最後に数値を当てはめて計算すると、ズレの距離は約 \(1\,\text{mm}\) になることがわかります。
計算結果は約 \(1.05\,\text{mm}\) となり、選択肢④の \(1\,\text{mm}\) が最も適切です。近似の妥当性も \(\left(\frac{v}{c}\right)^2 \ll 4\) により保証されています。
思考の道筋とポイント
円運動の加速度公式 \(a = \frac{v^2}{r}\) を既知とせず、極座標系における位置ベクトルの時間微分から向心加速度を厳密に導出し、運動方程式を立式します。
この設問における重要なポイント
- 極座標における位置ベクトル: \(\vec{r} = r(\cos\omega t, \sin\omega t)\)
- 加速度ベクトルの導出: 位置ベクトルを時間 \(t\) で2回微分します。
具体的な解説と立式
陽子を原点とし、電子が半径 \(r\)、一定の角速度 \(\omega\) で円運動しているとします。
時刻 \(t\) における電子の位置ベクトル \(\vec{r}(t)\) は、極座標を用いて以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\vec{r}(t) &= (r \cos\omega t, r \sin\omega t)
\end{aligned}
$$
速度ベクトル \(\vec{v}(t)\) は、位置ベクトルを時間 \(t\) で微分して求めます。
$$
\begin{aligned}
\vec{v}(t) &= \frac{d\vec{r}(t)}{dt} \\[2.0ex]
&= (-r\omega \sin\omega t, r\omega \cos\omega t)
\end{aligned}
$$
速さ \(v\) は速度ベクトルの大きさです。
$$
\begin{aligned}
v &= |\vec{v}(t)| \\[2.0ex]
&= \sqrt{(-r\omega \sin\omega t)^2 + (r\omega \cos\omega t)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{r^2\omega^2 (\sin^2\omega t + \cos^2\omega t)} \\[2.0ex]
&= r\omega
\end{aligned}
$$
加速度ベクトル \(\vec{a}(t)\) は、速度ベクトルをさらに時間 \(t\) で微分して求めます。
$$
\begin{aligned}
\vec{a}(t) &= \frac{d\vec{v}(t)}{dt} \\[2.0ex]
&= (-r\omega^2 \cos\omega t, -r\omega^2 \sin\omega t) \\[2.0ex]
&= -\omega^2 (r \cos\omega t, r \sin\omega t) \\[2.0ex]
&= -\omega^2 \vec{r}(t)
\end{aligned}
$$
この結果から、加速度は常に原点(中心)を向き、その大きさ \(a\) は以下のようになることがわかります。
$$
\begin{aligned}
a &= \omega^2 r
\end{aligned}
$$
\(v = r\omega\) より \(\omega = \frac{v}{r}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \left(\frac{v}{r}\right)^2 r \\[2.0ex]
&= \frac{v^2}{r}
\end{aligned}
$$
ニュートンの運動方程式 \(m\vec{a} = \vec{F}\) を中心方向について立てます。中心に向かう力はクーロン力 \(k\frac{e^2}{r^2}\) です。
$$
\begin{aligned}
(\text{質量}) \times (\text{向心加速度}) &= (\text{向心力}) \\[2.0ex]
m \frac{v^2}{r} &= k \frac{e^2}{r^2}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 位置、速度、加速度の微積分関係
- ニュートンの運動方程式
これ以降の計算過程は、メインの解法と全く同じになります。
$$
\begin{aligned}
mv^2 &= k \frac{e^2}{r} \\[2.0ex]
&= 4 \times 10^{-18}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\left(\frac{v}{c}\right)^2 &= \frac{mv^2}{mc^2} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{81} \times 10^{-3}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\cos\theta &\approx \frac{1}{2} \left(\frac{v}{c}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{10}}{9} \times 10^{-2}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{D}{2} \cos\theta \\[2.0ex]
&\approx 1.05\,\text{mm}
\end{aligned}
$$
円運動の「加速度が \(\frac{v^2}{r}\) になる」という公式を丸暗記するのではなく、電子の座標を三角関数で表し、それを時間で2回微分するという数学的な手続きによって、自らの手で公式を導き出しました。
結果として得られる運動方程式はメイン解法と同じになり、そこから先の計算も同様に進めることができます。
微積分を用いた厳密な導出からも、既知の公式と同じ運動方程式が得られ、最終的な結論も完全に一致しました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 質量とエネルギーの等価性(\(E = mc^2\))
- 核心: 対消滅において、電子と陽電子の「質量」という物質そのものが、完全に「光(\(\gamma\) 線)のエネルギー」に変換されるというアインシュタインの相対性理論の帰結です。
- 理解のポイント:
- エネルギー保存則を立てる際、運動エネルギーだけでなく、必ず静止エネルギー(\(mc^2\))を足し合わせる必要があります。
- 対消滅前は2つの粒子(電子と陽電子)が存在するため、静止エネルギーは \(2mc^2\) となります。
- 運動量保存則のベクトル的扱い
- 核心: 対消滅の前後で外力が働かないため、系全体の運動量ベクトルは保存されます。これを直交する2つの成分(進行方向とそれに垂直な方向)に分けて立式します。
- 理解のポイント:
- 光子(\(\gamma\) 線)も運動量 \(p = \frac{E}{c}\) を持ちます。
- 角度 \(\theta\) を用いて、運動量を \(\cos\theta\) 成分と \(\sin\theta\) 成分に正しく分解することが不可欠です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 粒子の衝突と崩壊(コンプトン散乱など): 光子と電子の衝突や、1つの粒子が2つに分裂する問題では、本問と全く同じ「エネルギー保存則」と「運動量のベクトル保存則(縦・横成分)」の連立方程式が解法の基本となります。
- 原子物理におけるボーアモデル: 水素原子の電子の軌道半径やエネルギーを求める問題では、本問の(5)のように「クーロン力を向心力とする円運動の運動方程式」が常に出発点となります。
- 初見の問題での着眼点:
- 反応前後の状態を図示する: 衝突前と衝突後(または崩壊前と崩壊後)の粒子の速度ベクトルや運動量ベクトルを、必ず自分で図に描き込み、角度 \(\theta\) を明確に定義します。
- 保存される量をリストアップする: 「外力がないから運動量が保存される」「エネルギーが保存される(質量の変化に注意)」と、適用できる保存則を宣言してから立式に入ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 静止エネルギーの足し忘れ:
- 誤解: エネルギー保存則を立てる際、対消滅前のエネルギーを電子の運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) だけで計算してしまう。
- 対策: 素粒子反応や核反応の問題では、質量が変化(消滅・生成)するため、必ず「質量 \(\times c^2\)」の項をエネルギーの式に含めることを習慣づけましょう。
- 光子の運動量の公式忘れ:
- 誤解: 光子(\(\gamma\) 線)の運動量を \(mv\) のような物質粒子の公式で表そうとして行き詰まる。
- 対策: 光子は質量を持たないため \(mv\) は使えません。問題文にも与えられていますが、光子の運動量は \(p = \frac{E}{c}\) (または \(p = \frac{h}{\lambda}\))であることをしっかり記憶しておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 運動量保存則(ベクトル成分):
- 選定理由: 2つの \(\gamma\) 線が異なる方向(角度 \(\theta\))に放出されるという2次元的な現象を記述するためには、スカラー量であるエネルギー保存則だけでは情報が足りず、方向を扱える運動量保存則が必須だからです。
- 適用根拠: 対消滅という現象は、電子と陽電子という系内でのみ相互作用が完結しており、外部からの力が働いていないため適用可能です。
- 円運動の運動方程式:
- 選定理由: 電子の速さ \(v\) を求めるために、電子がどのような力学的な制約を受けて運動しているかを記述する必要があるからです。
- 適用根拠: 問題文に「電子の運動はボーアの理論に従い…円軌道を…回っている」と明記されているため、円運動のモデルを適用することが正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 微小量の近似(テーラー展開の一次近似):
- 意識: 物理の計算では、非常に小さい値(\(x \ll 1\))を含む複雑な式が現れた場合、そのまま計算するのではなく、近似を用いて式を劇的にシンプルにすることが求められます。
- 実践: 本問の(5)のように、分母が \(4 + \left(\frac{v}{c}\right)^2\) となったとき、\(\left(\frac{v}{c}\right)^2\) の値を実際に計算して \(4\) と比較し、「\(4\) に対して無視できるほど小さい」ことを確認した上で、\(4\) と近似して計算を進めるテクニックを身につけましょう。
- 文字式のまま限界まで計算する:
- 意識: 途中で具体的な数値を代入すると、式が煩雑になり、計算ミスや書き写しミスが発生しやすくなります。
- 実践: 本問の(4)のように、\(\cos\theta\) を求める過程では、\(m, v, c, E\) などの文字のまま連立方程式を解き、最終的なシンプルな形(\(\frac{v}{c}\) の関数)になってから初めて数値を代入するようにしましょう。
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