問題133 傾斜したレール上をすべる導体棒 (21 京都工繊大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: ローレンツ力を用いた電位の判定
- 模範解答の別解※Aと同様に、導体内の自由電子が受けるローレンツ力の向きから電位の大小を判断します。
- 設問(6)の別解1: エネルギー保存則(仕事率のつりあい)を用いた解法
- 重力が単位時間にする仕事と、抵抗で発生するジュール熱が等しいという関係から、速さを一発で導出します。
- 設問(6)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式と回路方程式の連立)
- 運動方程式を微分方程式として立式し、速度 \(v\) が時間とともにどのように変化し、最終的に終端速度に達するかを数学的に示します。
- 設問(1)の別解: ローレンツ力を用いた電位の判定
- 上記の別解が有益である理由
- エネルギー保存則: 力の分解や成分計算が複雑な場合でも、スカラー量であるエネルギーに着目することで計算ミスを防げます。
- 微積分の解法: 「なぜ一定の速さになるのか」という過渡現象のプロセスを深く理解でき、難関大で問われる時間変化の問題に対応できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「磁場中を斜めに運動する導体棒の電磁誘導と力学」です。
3次元的な空間配置(斜面、鉛直磁場、水平レール)を正しく把握し、速度や力のベクトルを適切に分解する幾何学的な処理能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- レンツの法則: 磁束の変化を妨げる向きに誘導起電力が生じます。
- ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子や電流は力を受けます。
- 誘導起電力の公式: \(V = v_{\perp} B l\)(\(v_{\perp}\) は磁場に垂直な速度成分)。
- 終端速度: 重力成分とアンペール力がつりあうと、導体棒は等速運動になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(2): 幾何学的な関係から速度の磁場に垂直な成分を求め、誘導起電力を計算します。
- (3)〜(6): スイッチ \(S_1\) を閉じた回路において、キルヒホッフの法則と力のつりあいを連立させ、終端速度を求めます。
- (7)〜(8): 力学的エネルギーの減少とジュール熱の関係(エネルギー保存則)を確認します。
- (9)〜(10): 電源を含む回路(スイッチ \(S_2\))において、静止状態や上昇運動における力のつりあいと回路方程式を解きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
導体棒PQが落下(斜面下向きに移動)するとき、閉回路を貫く磁束が変化します。
レンツの法則を用いて誘導電流の向きを判断し、そこから電位の高低を決定します。
また、導体内の電荷が受けるローレンツ力からも判断できます。
この設問における重要なポイント
- レンツの法則: 回路を貫く磁束の変化を打ち消す向きに誘導電流が流れます。
- 電池としての振る舞い: 誘導起電力が生じている導体棒は「電池」とみなせます。電池内部では、電流は負極(低電位)から正極(高電位)へ流れます。
具体的な解説と立式
図aおよび図bを参照します。
導体棒PQが斜面を滑り落ちると、閉回路(a-P-Q-c-a)の面積が減少します。
磁場 \(B\) は鉛直上向きなので、回路を貫く上向きの磁束が減少することになります。
レンツの法則より、この減少を妨げるため、上向きの磁束を補う向き(上から見て反時計回り)に誘導電流を流そうとする起電力が生じます。
上から見て反時計回りとは、回路図aにおいて \(a \to P \to Q \to c \to a\) の向きです。
したがって、導体棒PQ内部では PからQの向き に電流を流そうとする力が働きます。
導体棒を電池とみなすと、電流が流れ出る側が正極(高電位)となるため、Qが高電位となります。
使用した物理公式
- レンツの法則
(計算なし)
棒が滑り落ちると、回路の窓が狭くなります。
窓を通る上向きの磁力線が減ってしまうので、回路は「減らさないで!」と抵抗して、自分で上向きの磁力線を作ろうとします。
右ねじの法則で考えると、上向きの磁場を作るには反時計回りに電流を流す必要があります。
棒の中ではPからQへ電流が流れるので、Q側が電気の出口(プラス極)になります。
答えは Q です。
思考の道筋とポイント
導体内の自由電子(負電荷)が受けるローレンツ力の向きを考えます。
この設問における重要なポイント
- 自由電子の運動: 棒と共に斜面下向き(水平成分は左向き)に運動します。
- 力の向き: 負電荷は \(q\vec{v} \times \vec{B}\) と逆向きの力を受けます。
具体的な解説と立式
自由電子は左向きの速度成分を持っています。
フレミングの左手の法則(あるいは外積)を適用すると、正電荷なら「奥向き(Q側)」に力を受けますが、電子は負電荷なので逆の「手前向き(P側)」にローレンツ力を受けます。
その結果、P側に負電荷が、Q側に正電荷が偏るため、電位が高いのは Q となります。
使用した物理公式
- ローレンツ力: \(\vec{F} = q(\vec{v} \times \vec{B})\)
(計算なし)
棒の中にある自由電子(マイナスの電気)は、棒と一緒に左へ動いています。
磁場の中を動く電気は力を受けますが、マイナスの電気はプラスの電気と逆向きの力を受けます。
左手の法則を使うと、マイナスの電気は手前(P側)に集まることがわかります。
マイナスがP側に集まるということは、反対側のQ側はプラスになるので、Qの方が電位が高くなります。
答えは Q です。レンツの法則を用いた場合と同じ結論が得られました。
問(2)
思考の道筋とポイント
誘導起電力の大きさは、導体棒が単位時間に横切る磁束の量、あるいは公式 \(V = v_{\perp} B l\) で求められます。
ここで \(v_{\perp}\) は、磁場 \(B\) に対して垂直な速度成分です。
この設問における重要なポイント
- 速度の分解: 導体棒の速度 \(v\)(斜面下向き)を、磁場(鉛直上向き)に垂直な成分(水平成分)と平行な成分(鉛直成分)に分解します。
- 等加速度運動: 初速度0で滑り落ちる物体の時刻 \(t\) における速度を求めます。
具体的な解説と立式
時刻 \(t\) における導体棒の速さ \(v_1\) は、斜面方向の加速度が \(g \sin \theta\) であることから、等加速度運動の公式より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= g \sin \theta \cdot t
\end{aligned}
$$
図bに示すように、磁場 \(B\) は鉛直上向きです。誘導起電力に寄与するのは、磁場に垂直な速度成分、すなわち水平成分 \(v_{1\perp}\) です。
幾何学的な関係から、水平成分は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
v_{1\perp} &= v_1 \cos \theta
\end{aligned}
$$
誘導起電力の大きさ \(V_1\) は、公式 \(V = v_{\perp} B l\) より、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= v_{1\perp} B l
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等加速度運動: \(v = at\)
- 誘導起電力: \(V = v_{\perp} B l\)
\(v_1\) と \(v_{1\perp}\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= (v_1 \cos \theta) B l \\[2.0ex]
&= (g \sin \theta \cdot t \cos \theta) B l \\[2.0ex]
&= g B l t \sin \theta \cos \theta
\end{aligned}
$$
棒は斜面を滑り落ちながら加速していきます。磁石の力(磁場)は縦向きなので、棒の動きのうち「横向きの動き」だけが発電に使われます。
「今のスピード」×「横向き成分の割合」×「磁場の強さ」×「棒の長さ」を計算しました。
答えは \(g B l t \sin \theta \cos \theta\) です。
時間が経つにつれて速くなり、起電力も比例して大きくなります。
\(\theta \to 0\)(水平)のとき \(V_1 \to 0\)(加速しない)、\(\theta \to 90^\circ\)(鉛直)のとき \(\cos 90^\circ = 0\) なので \(V_1 \to 0\)(磁束を切らない)となり、物理的に妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_1\) を閉じて棒を落下させます。
速さが \(v\) のときの誘導起電力を求めます。考え方は(2)と同じです。
この設問における重要なポイント
- 変数の置き換え: (2)では時刻 \(t\) の関数でしたが、今回は速さ \(v\) を用いて表します。
具体的な解説と立式
速さが \(v\) のとき、磁場に垂直な速度成分(水平成分)は \(v \cos \theta\) です。
よって、誘導起電力の大きさ \(V\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V &= (v \cos \theta) B l
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 誘導起電力: \(V = v_{\perp} B l\)
式を整理します。
$$
\begin{aligned}
V &= v B l \cos \theta
\end{aligned}
$$
(2)と同じ計算ですが、今回は「速さ \(v\)」を使って答えなさい、という問題です。
答えは \(v B l \cos \theta\) です。速さ \(v\) に比例しています。
問(4)
思考の道筋とポイント
誘導起電力を電源とみなして、閉回路における電流を求めます。
キルヒホッフの第2法則(回路方程式)を適用します。
この設問における重要なポイント
- 等価回路: 導体棒PQは、電圧 \(V = v B l \cos \theta\) の電池(Q側がプラス)になります。
- 回路構成: 抵抗 \(R\) と導体棒PQのみの閉回路です(図c参照)。
具体的な解説と立式
回路に流れる電流の大きさを \(I\) とします。
オームの法則(またはキルヒホッフの法則)より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V – I R &= 0
\end{aligned}
$$
または単に
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{V}{R}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(I = V/R\)
(3)の結果 \(V = v B l \cos \theta\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{v B l \cos \theta}{R}
\end{aligned}
$$
棒が発電した電圧 \(V\) が、そのまま抵抗 \(R\) にかかります。オームの法則「電圧÷抵抗=電流」で計算しました。
答えは \(\displaystyle \frac{v B l \cos \theta}{R}\) です。速さが速いほど、大きな電流が流れます。
問(5)
思考の道筋とポイント
「速さが一定になった」ということは、導体棒に働く力がつりあっている状態(加速度が0)です。
導体棒には、重力、垂直抗力、そして磁場からの力(アンペール力)が働いています。
この設問における重要なポイント
- アンペール力の向き: 電流 \(I\) は P \(\to\) Q(奥向き)に流れます。磁場 \(B\) は上向きです。フレミングの左手の法則(または外積)より、力は 水平右向き に働きます。
- 力の分解: アンペール力は水平方向なので、これを斜面方向(運動を妨げる上向き)に分解する必要があります。
具体的な解説と立式
一定になったときの電流を \(I_2\) とします。
導体棒に働くアンペール力の大きさ \(F_{\text{磁気}}\) は、
$$
\begin{aligned}
F_{\text{磁気}} &= I_2 B l
\end{aligned}
$$
この力は水平右向きです(図d参照)。
斜面方向の力のつりあいを考えます。
斜面下向きの力は重力の成分 \(mg \sin \theta\) です。
斜面上向きの力はアンペール力の成分 \(F_{\text{磁気}} \cos \theta\) です。
これらがつりあうので、
$$
\begin{aligned}
(\text{下向きの力}) &= (\text{上向きの力}) \\[2.0ex]
mg \sin \theta &= (I_2 B l) \cos \theta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- アンペール力: \(F = I B l\)
- 力のつりあい
\(I_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
I_2 B l \cos \theta &= mg \sin \theta \\[2.0ex]
I_2 &= \frac{mg \sin \theta}{B l \cos \theta} \\[2.0ex]
&= \frac{mg}{B l} \tan \theta
\end{aligned}
$$
棒が加速しなくなるとき、重力で落ちようとする力と、磁場がブレーキをかける力がぴったり同じになっています。
磁場の力(アンペール力)は真横に働きますが、斜面を登る方向の成分だけがブレーキとして役立ちます。このバランスから電流を逆算しました。
答えは \(\displaystyle \frac{mg}{B l} \tan \theta\) です。
質量 \(m\) が大きいほど大きな電流(ブレーキ)が必要になり、磁場 \(B\) が強ければ少ない電流で済むため、妥当です。
また、\(\theta \to 0\)(水平)なら \(I_2 \to 0\)(落ちないので電流不要)、\(\theta \to 90^\circ\)(鉛直)なら \(I_2 \to \infty\)(ブレーキが効かない)となり、物理的直感と一致します。
問(6)
思考の道筋とポイント
(5)で求めた電流 \(I_2\) が流れるときの速さ \(v_2\)(終端速度)を求めます。
(4)で求めた電流と速さの関係式を利用します。
この設問における重要なポイント
- 関係式の連立: 「回路の式(オームの法則)」と「力学の式(つりあい)」をつなぐのが電流 \(I\) です。
具体的な解説と立式
(4)の式において \(I = I_2\)、\(v = v_2\) とすると、
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{v_2 B l \cos \theta}{R}
\end{aligned}
$$
これに(5)の結果 \(I_2 = \frac{mg \sin \theta}{B l \cos \theta}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{mg \sin \theta}{B l \cos \theta} &= \frac{v_2 B l \cos \theta}{R}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則
- 力のつりあい(の結果)
\(v_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= \frac{R}{B l \cos \theta} \cdot \frac{mg \sin \theta}{B l \cos \theta} \\[2.0ex]
&= \frac{mg R \sin \theta}{(B l)^2 \cos^2 \theta}
\end{aligned}
$$
模範解答の形 \(\frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}\) に合わせます。
さっき求めた「つりあうための電流」を流すためには、棒がどれくらいの速さで動いて発電すればいいか?を計算しました。
答えは \(\displaystyle \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}\) です。
抵抗 \(R\) が大きいと電流が流れにくくブレーキが弱まるため、終端速度は大きくなります。式は \(R\) に比例しており、妥当です。
思考の道筋とポイント
等速運動をしているとき、重力が供給するエネルギー(仕事率)は、すべて抵抗でのジュール熱として消費されます。
この設問における重要なポイント
- 重力の仕事率: \(P_{\text{重力}} = F \cdot v = (mg \sin \theta) \cdot v_2\)
- 消費電力: \(P_{\text{ジュール熱}} = \frac{V^2}{R} = \frac{(v_2 B l \cos \theta)^2}{R}\)
具体的な解説と立式
エネルギー保存則より、\(P_{\text{重力}} = P_{\text{ジュール熱}}\) が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
mg \sin \theta \cdot v_2 &= \frac{(v_2 B l \cos \theta)^2}{R}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 仕事率: \(P = Fv\)
- 消費電力: \(P = V^2/R\)
両辺を \(v_2\) で割り(\(v_2 \neq 0\))、整理します。
$$
\begin{aligned}
mg \sin \theta &= \frac{v_2 (B l \cos \theta)^2}{R} \\[2.0ex]
v_2 &= \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}
\end{aligned}
$$
重力が1秒間にする仕事と、抵抗が1秒間に熱として捨てるエネルギーが等しいという関係を使いました。
力の分解や電流計算を経由せず、一発で同じ答えが得られました。
答えは \(\displaystyle \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}\) です。メイン解法と完全に一致します。
思考の道筋とポイント
運動方程式を微分方程式として立て、速度 \(v(t)\) の時間変化を解析します。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: \(m \frac{dv}{dt} = mg \sin \theta – I B l \cos \theta\)
- 回路方程式: \(I = \frac{v B l \cos \theta}{R}\)
具体的な解説と立式
回路方程式を運動方程式に代入して \(I\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= mg \sin \theta – \left( \frac{v B l \cos \theta}{R} \right) B l \cos \theta \\[2.0ex]
m \frac{dv}{dt} &= mg \sin \theta – \frac{(B l \cos \theta)^2}{R} v
\end{aligned}
$$
十分時間が経過して等速になったとき、加速度 \(\frac{dv}{dt} = 0\) となります。
$$
\begin{aligned}
0 &= mg \sin \theta – \frac{(B l \cos \theta)^2}{R} v_2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- オームの法則
これを \(v_2\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
v_2 &= \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}
\end{aligned}
$$
速度に比例する空気抵抗を受けて落下する雨粒と同じ形の式(微分方程式)になります。最初は重力で加速しますが、速度が出るとブレーキ(アンペール力)が強くなり、最終的に力がつりあって一定速度になります。
答えは \(\displaystyle \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}\) です。微積分を用いても同様の結果が得られます。
問(7)
思考の道筋とポイント
単位時間当たりに失う力学的エネルギーを求めます。
等速運動なので運動エネルギーは変化しません。減少するのは重力による位置エネルギーのみです。
この設問における重要なポイント
- 位置エネルギーの減少: 単位時間に落下する鉛直距離 \(\Delta h\) に着目します。
- 鉛直成分: 斜面方向の速さ \(v_2\) の鉛直成分は \(v_2 \sin \theta\) です。
具体的な解説と立式
単位時間(1秒間)に進む斜面方向の距離は \(v_2\) です。
この間の鉛直方向の落下距離 \(\Delta h\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta h &= v_2 \sin \theta
\end{aligned}
$$
失う位置エネルギー \(\Delta E\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= mg \Delta h \\[2.0ex]
&= mg v_2 \sin \theta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 位置エネルギー: \(U = mgh\)
(6)の結果 \(v_2 = \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= mg \sin \theta \cdot \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{(mg \sin \theta)^2 R}{(B l \cos \theta)^2} \\[2.0ex]
&= R \left( \frac{mg \sin \theta}{B l \cos \theta} \right)^2 \\[2.0ex]
&= R \left( \frac{mg}{B l} \tan \theta \right)^2
\end{aligned}
$$
1秒間にどれだけ高さが下がったかを計算し、それによる位置エネルギーの減り分を求めました。
答えは \(R \left( \frac{mg}{B l} \tan \theta \right)^2\) です。
単位は \([\Omega] \cdot [\text{A}]^2 = [\text{W}]\)(ワット)となり、単位時間当たりのエネルギー(仕事率)の次元と一致します。
問(8)
思考の道筋とポイント
抵抗で発生するジュール熱(消費電力)を求めます。
公式 \(P = I^2 R\) を用います。
この設問における重要なポイント
- エネルギー保存: (7)で求めた失われた力学的エネルギーと一致するはずです。
具体的な解説と立式
単位時間当たりのジュール熱 \(P\) は、
$$
\begin{aligned}
P &= I_2^2 R
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 消費電力: \(P = I^2 R\)
(5)の結果 \(I_2 = \frac{mg}{B l} \tan \theta\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= \left( \frac{mg}{B l} \tan \theta \right)^2 R \\[2.0ex]
&= R \left( \frac{mg}{B l} \tan \theta \right)^2
\end{aligned}
$$
抵抗に流れる電流から発熱量を計算しました。(7)の結果と完全に一致しており、重力がした仕事がすべて熱に変わったことが確認できます。
答えは \(R \left( \frac{mg}{B l} \tan \theta \right)^2\) です。エネルギー保存則が成立しています。
問(9)
思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_2\) を閉じて固定を外すと、導体棒は静止したままでした。
これは、重力による下滑り力と、電源 \(E\) からの電流によるアンペール力がつりあっていることを意味します。
この設問における重要なポイント
- 静止状態: 速さ \(v=0\) なので、誘導起電力は発生しません。
- 回路: 電源 \(E\) と抵抗 \(R\) の単純な回路です。
具体的な解説と立式
静止しているので、力のつりあいの式は(5)と同じ形になります(電流を \(I_3\) とします)。
$$
\begin{aligned}
(\text{下向きの力}) &= (\text{上向きの力}) \\[2.0ex]
mg \sin \theta &= I_3 B l \cos \theta
\end{aligned}
$$
よって必要な電流は、
$$
\begin{aligned}
I_3 &= \frac{mg}{B l} \tan \theta
\end{aligned}
$$
回路方程式(キルヒホッフの法則)より、
$$
\begin{aligned}
E – I_3 R &= 0
\end{aligned}
$$
すなわち
$$
\begin{aligned}
E &= I_3 R
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力のつりあい
- オームの法則
\(I_3\) を代入して \(E\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E &= \left( \frac{mg}{B l} \tan \theta \right) R \\[2.0ex]
&= \frac{mg R}{B l} \tan \theta
\end{aligned}
$$
棒が落ちないように、電気の力で支えています。支えるのに必要な電流を計算し、その電流を流すために必要な電池の電圧を求めました。
答えは \(\displaystyle \frac{mg R}{B l} \tan \theta\) です。
重い棒(\(m\)大)を支えるには大きな電圧が必要であり、磁場 \(B\) が強ければ小さな電圧で済むため、妥当です。
問(10)
思考の道筋とポイント
電圧を \(V\) に上げると、棒は斜面を上昇し、一定の速さ \(u\) になりました。
上昇する場合、誘導起電力の向きや力のつりあいの式が変わる点に注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 誘導起電力の向き: 棒が上昇(右上へ移動)すると、回路の磁束が増加します。レンツの法則より、磁束を減らす向き(時計回り)に起電力が生じます。つまり、電源 \(V\) とは逆向き(逆起電力)になります。
- 大きさ: \(V_4 = u B l \cos \theta\)
- 力のつりあい: 棒は上昇しているので、アンペール力の斜面上向き成分が、重力の斜面下向き成分とつりあっています(等速なので)。
具体的な解説と立式
回路に流れる電流を \(I_4\) とします。
キルヒホッフの第2法則より(図g参照)、
$$
\begin{aligned}
V – I_4 R – V_4 &= 0
\end{aligned}
$$
ここで \(V_4 = u B l \cos \theta\) なので、
$$
\begin{aligned}
I_4 &= \frac{V – u B l \cos \theta}{R}
\end{aligned}
$$
力のつりあいの式(斜面方向)は、アンペール力の上向き成分と重力の下向き成分がつりあうので、
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\[2.0ex]
I_4 B l \cos \theta &= mg \sin \theta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- キルヒホッフの第2法則
- 力のつりあい
力のつりあいの式に \(I_4\) を代入して \(u\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{V – u B l \cos \theta}{R} \right) B l \cos \theta &= mg \sin \theta \\[2.0ex]
(V – u B l \cos \theta) B l \cos \theta &= mg R \sin \theta \\[2.0ex]
V B l \cos \theta – u (B l \cos \theta)^2 &= mg R \sin \theta \\[2.0ex]
u (B l \cos \theta)^2 &= V B l \cos \theta – mg R \sin \theta
\end{aligned}
$$
両辺を \((B l \cos \theta)^2\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
u &= \frac{V B l \cos \theta – mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{V B l \cos \theta}{(B l \cos \theta)^2} – \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{V}{B l \cos \theta} – \frac{mg R \sin \theta}{(B l \cos \theta)^2}
\end{aligned}
$$
模範解答の形に合わせるため、通分して整理します。
$$
\begin{aligned}
u &= \frac{V B l \cos \theta – mg R \sin \theta}{(B l)^2 \cos^2 \theta}
\end{aligned}
$$
分子分母を \(\cos \theta\) で割ると、
$$
\begin{aligned}
u &= \frac{V B l – mg R \tan \theta}{(B l)^2 \cos \theta}
\end{aligned}
$$
電池のパワーを上げて、棒をグイグイ持ち上げます。
棒が動くと「逆向きの発電(逆起電力)」が起きて電流を減らそうとします。
最終的に、持ち上げる力(電流による力)と重さが釣り合うスピードで落ち着きます。
※注: \(V\) は(9)の \(E\) より大きくないと上昇しません。\(V > V_4\) であるため、電流は電源の向きに流れます。
答えは \(\displaystyle \frac{V B l – mg R \tan \theta}{(B l)^2 \cos \theta}\) です。
\(V\) が大きければ速さ \(u\) も大きくなり、\(V\) が(9)の \(E\)(静止電圧)と等しいときは \(u=0\) となります。これは物理的に妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 3次元的な力の分解と幾何学
- 核心: 磁場が鉛直、レールが斜めという配置では、速度や力のベクトル分解が複雑になります。「磁場に垂直な成分」や「斜面に平行な成分」を正確に見抜く図形的なセンスが問われます。
- 理解のポイント:
- 誘導起電力: 速度の「水平成分」\(v \cos \theta\) が磁場に垂直です。
- アンペール力: 力は「水平方向」に働きますが、運動に影響するのはその「斜面成分」\(F \cos \theta\) です。
- エネルギー保存則と終端速度
- 核心: 最終的に等速になる現象は、力のつりあいだけでなく、エネルギー収支(重力の仕事率=ジュール熱)からも理解できます。
- 理解のポイント:
- 計算が複雑になったときこそ、スカラー量であるエネルギーで検算する習慣をつけましょう。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 磁場が斜面に垂直な場合: 速度分解が不要になり、\(V = vBl\) となります。問題設定をよく読みましょう。
- コンデンサーを含む回路: 電流が \(I = dq/dt\) となり、加速度運動が続きます(等加速度運動になることが多い)。
- 初見の問題での着眼点:
- 磁場の向き: 鉛直か、斜面に垂直か? これで分解の要否が決まります。
- 「一定の速さ」: \(a=0\)(力のつりあい)の合図です。
- 「静止」: \(v=0\)(誘導起電力なし)の合図です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 力の向きの勘違い:
- 誤解: アンペール力は斜面に沿って上向きに働くと思い込む。
- 対策: フレミングの左手の法則は、必ず「電流」と「磁場」の向きに忠実に適用してください。今回は \(I\)(奥)\(\times B\)(上)\(\to F\)(右)です。そこから分解します。
- 誘導起電力の成分忘れ:
- 誤解: \(V = vBl\) と書いてしまう。
- 対策: 「磁場を横切る成分」だけが発電に寄与します。速度ベクトルと磁場ベクトルのなす角を確認しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(6)での公式選択(力のつりあい vs エネルギー保存):
- 選定理由: 模範解答は力のつりあいを採用していますが、別解のエネルギー保存則の方が計算量が少なく、ミスのリスクが低いです。
- 適用根拠: 等速運動では運動エネルギーが変化しないため、エネルギー収支が単純(位置エネルギー減少=ジュール熱)になるからです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 三角関数のチェック:
- 意識: \(\theta = 0\)(水平)や \(\theta = 90^\circ\)(鉛直)の極限を考えます。
- 実践: 例えば(2)の \(V = vBl \cos \theta\)。水平なら \(\cos 0 = 1\) で \(V=vBl\)(最大)、鉛直なら \(\cos 90^\circ = 0\) で \(V=0\)(磁束を切らない)。これは物理的直感と一致します。
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問題134 長方形コイルに生じる誘導起電力 (21 高知大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 導体棒の誘導起電力(ローレンツ力)を用いた解法
- 模範解答が「コイルを貫く磁束の時間変化」からファラデーの法則を用いて起電力を求めるのに対し、別解では「磁場中を動く導体棒に生じる起電力(\(V=vBl\))」に着目し、各辺の起電力を合成して回路全体の電流を求めます。
- 設問(1)〜(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法
- 磁束 \(\Phi\) を位置 \(x\) の関数として厳密に定義し、誘導起電力を \(\Phi\) の時間微分(合成関数の微分)として導出します。また、仕事とエネルギーの関係を積分計算によって一般的に証明します。
- 設問(2)の別解: 導体棒の誘導起電力(ローレンツ力)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 導体棒の解法: 磁束の変化が見えにくい複雑な状況でも、各部分ごとの起電力を足し合わせることで直感的に解けるため、実戦的な応用力が身につきます。特に本問の(ウ)のように、左右で異なる磁場中にある場合に威力を発揮します。
- 微積分の解法: 「公式の暗記」ではなく、物理現象の因果関係(位置→磁束→起電力→電流→力→仕事)を数理的に繋げて理解することで、物理学の全体像を把握する力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「不均一な磁場中を移動するコイルの電磁誘導」です。磁束密度が変化する領域をコイルが通過する際、磁束の変化、誘導電流、そして磁場から受ける力がどのように推移するかを時系列で追跡します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束 \(\Phi\) が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力 \(V = -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) が生じます。
- レンツの法則: 誘導電流は、磁束の変化を打ち消す向きに流れます。
- 導体棒の誘導起電力: 磁束密度 \(B\) の中を速さ \(v\) で動く長さ \(l\) の導体棒には、\(V = vBl\) の誘導起電力が生じます。
- 磁場中の電流が受ける力: 磁束密度 \(B\) の中で電流 \(I\) が流れる長さ \(l\) の導線は、\(F = IBl\) の力を受けます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、コイルの位置 \(x\) に応じて、磁場中にある部分の面積を幾何学的に求め、磁束 \(\Phi = BS\) を計算します。
- (2)では、(1)で求めた磁束の変化率から誘導起電力を求め、オームの法則で電流を計算します。
- (3)では、各辺(PQとRS)がそれぞれの位置の磁場から受ける力を計算し、それらを合成します。
- (4)では、消費電力 \(P=I^2R\) を時間について合計し、エネルギー保存則の観点から外力の仕事と比較します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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