「物理重要問題集2026」徹底解説(106〜108問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題106 ブラウン管の原理 (16 立命館大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問[ア]〜[エ]の別解1: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
      • 模範解答は等加速度運動の公式を個別に適用していますが、別解1では運動方程式を時間で積分することで、位置と速度の関数を導出し、全設問を一括して解きます。
    • 設問[エ]の別解2: 幾何学的性質(接線の中点通過則)を用いた解法
      • 「等加速度運動する物体の軌道(放物線)の接線は、変位の中点で軸と交わる」という幾何学的性質を利用し、複雑な計算を省略して答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 公式の暗記に頼らず、ニュートンの運動方程式という第一原理から全ての物理量を導出できるため、応用力が身につきます。
    • 幾何学的解法: ブラウン管やオシロスコープの問題において頻出のテクニックであり、計算時間を大幅に短縮できる強力な武器となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電場中における荷電粒子の運動(ブラウン管の原理)」です。
電子が電極間で電場から力を受けて軌道を曲げられ、その後等速直線運動をして蛍光面に到達する様子を解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電場と静電気力: 電場 \(E\) 中にある電荷 \(q\) は、力 \(F = qE\) を受けます。
  2. 運動の独立性: \(x\) 軸方向(電場による加速)と \(z\) 軸方向(等速運動)は独立して考えることができます。
  3. 放物線運動: 一様な力を受ける粒子の軌道は放物線を描きます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [ア][あ]では、電場の定義と電荷の符号から、力の大きさと向きを決定します。
  2. [イ]では、電極内での運動方程式から加速度を求め、等加速度運動の公式を用いて速度を計算します。
  3. [ウ]では、電極通過後の等速直線運動に着目し、到達時間を求めます。
  4. [エ]では、電極内での変位と電極後の変位を合計し、最終的な到達位置を導出します。

問[ア][あ]

思考の道筋とポイント
平行平板電極間の電場は一様であり、その強さは電位差と距離で決まります。
電子は負の電荷を持っているため、電場の向きとは逆向きに力を受けることに注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 一様電場の強さ: 電位差 \(V\)、極板間隔 \(d\) のとき、電場の強さは \(E = V/d\) です。
  • 力の向き: 正電荷は電場の向きに、負電荷は電場と逆向きに力を受けます。

具体的な解説と立式
電極 \(X_1\)(電位 \(V_x\))と \(X_2\)(電位 \(0\))の間の電位差は \(V_x\) です。
極板間隔は \(d\) なので、一様電場の強さ \(E_x\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
E_x &= \frac{V_x}{d}
\end{aligned}
$$
電子の電荷の大きさは \(e\) なので、電子が受ける力の大きさ \(F_x\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
F_x &= e E_x
\end{aligned}
$$
力の向きについては、電位の高低と電荷の符号から判断します。

使用した物理公式

  • 一様電場の式: \(E = \frac{V}{d}\)
  • 静電気力: \(F = qE\)
計算過程

\(E_x\) の式を \(F_x\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
F_x &= e \left( \frac{V_x}{d} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x}{d}
\end{aligned}
$$
力の向きの判定:
電位は \(X_1\) が高く \(X_2\) が低いため、電場の向きは \(X_1 \to X_2\)、すなわち \(x\) 軸の負の向き(下向き)です。
電子は負電荷(\(-e\))を持つため、電場と逆向き、すなわち \(x\) 軸の正の向き(上向き)に力を受けます。
したがって、選択肢の ① です。

この設問の平易な説明

電気の世界では、「高いところ(高電位)」から「低いところ(低電位)」へ向かって「電場」という流れができます。
プラスの電気はこの流れに乗って動きますが、マイナスの電気(電子)は天邪鬼なので、流れに逆らって「低いところ」から「高いところ」へ向かう力を受けます。
今回は上が高いので、電子は上向き(\(x\) 軸正方向)に引っ張られます。

結論と吟味

力の大きさは \(\frac{eV_x}{d}\)、向きは ① です。
単位を確認すると、\(\text{C} \cdot \text{V}/\text{m} = \text{C} \cdot (\text{J}/\text{C}) / \text{m} = \text{J}/\text{m} = \text{N}\) となり、力の単位として正しいです。

解答 [ア] \(\displaystyle \frac{eV_x}{d}\) 解答 [あ]

問[イ]

思考の道筋とポイント
電子が電極間(長さ \(l\))を通過する間の運動を考えます。
\(z\) 軸方向には力を受けないので等速直線運動、\(x\) 軸方向には一定の力を受けるので等加速度運動をします。
まず通過にかかる時間を求め、次に \(x\) 方向の加速度を求めて速度を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 運動の独立性: \(x\) 成分と \(z\) 成分を分けて考えます。
  • 通過時間: \(z\) 方向の速度 \(v_0\) は一定なので、距離 \(l\) を進む時間は \(t_0 = l/v_0\) です。

具体的な解説と立式
電子が電極間を通過する時間 \(t_0\) は、\(z\) 方向の等速運動(速度 \(v_0\)、距離 \(l\))より、以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
t_0 &= \frac{l}{v_0}
\end{aligned}
$$
\(x\) 軸方向の運動方程式を立てます。質量を \(m\)、加速度を \(a_x\) とします。
$$
\begin{aligned}
m a_x &= F_x
\end{aligned}
$$
電極を通過した直後の \(x\) 成分の速度 \(v_x\) は、初速度 \(0\) の等加速度運動の公式より、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_x &= a_x t_0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等加速度運動の速度: \(v = v_0 + at\)
計算過程

まず、運動方程式から加速度 \(a_x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_x &= \frac{F_x}{m} \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x}{md}
\end{aligned}
$$
次に、\(v_x\) の式に \(a_x\) と \(t_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_x &= \left( \frac{eV_x}{md} \right) \cdot \left( \frac{l}{v_0} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x l}{mdv_0}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子は横(\(z\) 方向)には一定のスピードで進みながら、縦(\(x\) 方向)には電気の力でどんどん加速されます。
電極の中にいる時間は「横の長さ \(\div\) 横のスピード」で決まります。
その時間の分だけ縦方向に加速され続けるので、最終的な縦のスピードは「加速度 \(\times\) 時間」で計算できます。

結論と吟味

答えは \(\frac{eV_x l}{mdv_0}\) です。
電圧 \(V_x\) が大きいほど、また電極が長い(\(l\) が大きい)ほど、より長く強く加速されるため速度 \(v_x\) は大きくなります。逆に質量 \(m\) や初速度 \(v_0\) が大きいと曲がりにくくなります。これらは物理的直感と一致します。

解答 [イ] \(\displaystyle \frac{eV_x l}{mdv_0}\)

問[ウ]

思考の道筋とポイント
電極を通過した後の電子の運動を考えます。
電極の外では電場がないため、力は働きません。
したがって、電子は慣性の法則により等速直線運動をします。

この設問における重要なポイント

  • 力の不在: 電極通過後は \(F_x = 0\) なので、加速度は \(0\) です。
  • \(z\) 成分の保存: \(z\) 方向の速度はずっと \(v_0\) のままです。

具体的な解説と立式
電極通過後の電子は、\(z\) 軸方向に速度 \(v_0\) の等速直線運動を続けます。
電極の右端から蛍光面までの距離は \(D\) です。
通過にかかる時間 \(t_1\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{D}{v_0}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(t = \frac{x}{v}\)
計算過程

式そのものが答えとなっているため、計算は不要です。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{D}{v_0}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電極を出た後は、もう誰も電子を押したり引いたりしません。
電子はそのままの勢いで真っ直ぐ飛び続けます。
横方向(\(z\) 方向)のスピードは最初から最後まで \(v_0\) で変わらないので、距離 \(D\) を進むのにかかる時間は単純な割り算で求まります。

結論と吟味

答えは \(\frac{D}{v_0}\) です。
距離に比例し、速さに反比例する妥当な結果です。

解答 [ウ] \(\displaystyle \frac{D}{v_0}\)

問[エ]

思考の道筋とポイント
蛍光面上での輝点の \(x\) 座標 \(x_c\) を求めます。
電子の \(x\) 方向の変位は、「電極内での変位」と「電極を出てから蛍光面に着くまでの変位」の合計です。
それぞれの区間での運動(等加速度運動と等速直線運動)の式を立てて足し合わせます。

この設問における重要なポイント

  • 変位の加算: 全変位 \(x_c = (\text{電極内での変位 } x_1) + (\text{電極後の変位 } x_2)\)。
  • 接続条件: 電極を出た瞬間の速度 \(v_x\) が、その後の等速運動の速度になります。

具体的な解説と立式
電極内での \(x\) 方向の変位 \(x_1\) を求めます。初速度 \(0\)、加速度 \(a_x\)、時間 \(t_0\) の等加速度運動です。
$$
\begin{aligned}
x_1 &= \frac{1}{2} a_x t_0^2
\end{aligned}
$$
電極を出てから蛍光面までの \(x\) 方向の変位 \(x_2\) を求めます。速度 \(v_x\)、時間 \(t_1\) の等速直線運動です。
$$
\begin{aligned}
x_2 &= v_x t_1
\end{aligned}
$$
蛍光面上での座標 \(x_c\) は、これら2つの変位の和として立式されます。
$$
\begin{aligned}
x_c &= x_1 + x_2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度運動の変位: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
  • 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
計算過程

\(x_1\) と \(x_2\) の式を \(x_c\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
x_c &= \frac{1}{2} a_x t_0^2 + v_x t_1
\end{aligned}
$$
ここで、\(v_x = a_x t_0\) の関係を用います。
$$
\begin{aligned}
x_c &= \frac{1}{2} a_x t_0^2 + (a_x t_0) t_1 \\[2.0ex]
&= a_x t_0 \left( \frac{1}{2} t_0 + t_1 \right)
\end{aligned}
$$
これに \(a_x = \frac{eV_x}{md}\)、\(t_0 = \frac{l}{v_0}\)、\(t_1 = \frac{D}{v_0}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_c &= \left( \frac{eV_x}{md} \right) \left( \frac{l}{v_0} \right) \left( \frac{l}{2v_0} + \frac{D}{v_0} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x l}{mdv_0} \cdot \frac{1}{v_0} \left( \frac{l}{2} + D \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x l}{mdv_0^2} \left( D + \frac{l}{2} \right)
\end{aligned}
$$
問題文の指定する形 \(x_c = \alpha_x V_x\) に合わせるため、\(V_x\) を分離し、括弧内を \(D\) でくくります。
$$
\begin{aligned}
x_c &= \frac{el}{mdv_0^2} \left( D \left( 1 + \frac{l}{2D} \right) \right) V_x \\[2.0ex]
&= \left[ \frac{elD}{mdv_0^2} \right] \left( 1 + \frac{l}{2D} \right) V_x
\end{aligned}
$$
したがって、[エ] に相当する部分は \(\frac{elD}{mdv_0^2}\) です。

この設問の平易な説明

電子がどれだけ上にずれるか(\(x_c\))を計算します。
電極の中では、加速しながらカーブを描いて上にずれます。
電極を出た後は、その時点での上向きの勢い(速度)を保ったまま、真っ直ぐ斜めに飛んでさらに上にずれます。
この2つのずれを足し合わせることで、最終的な到達点が分かります。
式変形をして、指定された形に整えると答えが出ます。

結論と吟味

答えは \(\frac{elD}{mdv_0^2}\) です。
\(D\) が大きいほど(スクリーンが遠いほど)、\(V_x\) が大きいほどずれは大きくなります。
また、\(v_0\) が大きいと(速すぎると)曲がりきる前に通り過ぎてしまうため、ずれは小さくなります(\(v_0^2\) に反比例)。これらは物理的に妥当です。

解答 [エ] \(\displaystyle \frac{elD}{mdv_0^2}\)
別解1: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)

思考の道筋とポイント
運動方程式を立て、それを時間で積分することで、時刻 \(t\) における速度 \(v(t)\) と位置 \(r(t)\) を導出します。
この方法なら、区間ごとの公式を繋ぎ合わせる必要がなく、一連の流れとして解くことができます。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: 加速度 \(a = \frac{d^2x}{dt^2}\) を積分して速度 \(v\)、さらに積分して位置 \(x\) を求めます。
  • 初期条件: \(t=0\) で \(x=0, z=0, v_x=0, v_z=v_0\) です。

具体的な解説と立式
(一括解説)
\(x\) 軸方向と \(z\) 軸方向の運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{d^2x}{dt^2} &= F_x \quad (0 \le t \le t_0) \\[2.0ex]
m \frac{d^2z}{dt^2} &= 0
\end{aligned}
$$
初期条件は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
x(0) &= 0, \quad v_x(0) = 0 \\[2.0ex]
z(0) &= 0, \quad v_z(0) = v_0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(m \frac{d^2 \vec{r}}{dt^2} = \vec{F}\)
  • 微積分の基本公式
計算過程

まず \(z\) 方向について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2z}{dt^2} &= 0
\end{aligned}
$$
積分して速度を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_z(t) &= v_0
\end{aligned}
$$
さらに積分して位置を求めます。
$$
\begin{aligned}
z(t) &= v_0 t
\end{aligned}
$$
電極通過時刻 \(t_0\) は \(z(t_0) = l\) より、
$$
\begin{aligned}
t_0 &= \frac{l}{v_0}
\end{aligned}
$$
蛍光面到達時刻 \(T\) は \(z(T) = l+D\) より、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{l+D}{v_0}
\end{aligned}
$$
よって、通過後の時間 \(t_1\) は、
$$
\begin{aligned}
t_1 &= T – t_0 \\[2.0ex]
&= \frac{D}{v_0} \quad (\text{問[ウ]の答え})
\end{aligned}
$$

次に \(x\) 方向について解きます。
電極内 (\(0 \le t \le t_0\)) では、
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} &= \frac{F_x}{m} \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x}{md}
\end{aligned}
$$
積分して速度を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_x(t) &= \frac{eV_x}{md} t
\end{aligned}
$$
時刻 \(t_0\) での速度 \(v_x(t_0)\) は、
$$
\begin{aligned}
v_x(t_0) &= \frac{eV_x}{md} \cdot \frac{l}{v_0} \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x l}{mdv_0} \quad (\text{問[イ]の答え})
\end{aligned}
$$
さらに積分して位置を求めます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= \frac{1}{2} \frac{eV_x}{md} t^2
\end{aligned}
$$
時刻 \(t_0\) での位置 \(x(t_0)\) は、
$$
\begin{aligned}
x(t_0) &= \frac{1}{2} \frac{eV_x}{md} t_0^2
\end{aligned}
$$

電極後 (\(t > t_0\)) では力が働かないため、速度は一定です。
$$
\begin{aligned}
v_x(t) &= v_x(t_0)
\end{aligned}
$$
位置 \(x(t)\) は、\(t_0\) からの変位を加えます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= x(t_0) + v_x(t_0) (t – t_0)
\end{aligned}
$$
蛍光面到達時の位置 \(x_c = x(T)\) を求めます。\(T – t_0 = t_1\) なので、
$$
\begin{aligned}
x_c &= x(t_0) + v_x(t_0) t_1 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} a_x t_0^2 + a_x t_0 t_1 \\[2.0ex]
&= a_x t_0 \left( \frac{t_0}{2} + t_1 \right)
\end{aligned}
$$
ここからの計算はメイン解法と同様です。

この設問の平易な説明

「公式」をパズルのように組み合わせるのではなく、「力があれば速度が変わり、速度があれば位置が変わる」という物理の根本ルール(微分・積分)を使って、時間の流れに沿って電子の動きを追跡しました。
結果として、公式を使った場合と同じ式が自然に現れることが確認できます。

結論と吟味

全ての結果が模範解答と一致しました。

解答 メイン解法と同じ
別解2: 幾何学的性質(接線の中点通過則)を用いた解法

思考の道筋とポイント
等加速度運動する物体の軌道は放物線になります。
「放物線上の点における接線は、軸方向の変位の中点で軸と交わる」という幾何学的性質を利用すると、複雑な計算をスキップして一瞬で答えにたどり着けます。

この設問における重要なポイント

  • 中点通過則: 電極を出た後の電子の軌道(直線)を逆向きに延長すると、電極の中央(\(z = l/2\))で \(z\) 軸と交わります。
  • 相似の利用: 直角三角形の相似比(タンジェント)を用いて座標を計算します。

具体的な解説と立式
電子の軌道は、電極内では放物線、電極後はその接線方向への直線運動となります。
上記の性質より、この直線は \(z\) 軸上の点 \(z = l/2\) から出たものとみなせます。
蛍光面は \(z = l + D\) にあるので、この「見かけの出発点」からの \(z\) 方向の距離 \(L\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
L &= (l + D) – \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$
偏向角(軌道の傾き)を \(\theta\) とすると、\(\tan \theta\) は速度成分の比で表されます。
$$
\begin{aligned}
\tan \theta &= \frac{v_x}{v_z}
\end{aligned}
$$
蛍光面上での座標 \(x_c\) は、底辺 \(L\)、傾き \(\tan \theta\) の直角三角形の高さに相当します。
$$
\begin{aligned}
x_c &= L \tan \theta
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 放物線の接線の性質
  • 三角比: \(x = L \tan \theta\)
計算過程

\(L\) を整理します。
$$
\begin{aligned}
L &= D + \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$
\(\tan \theta\) に速度成分を代入します。
$$
\begin{aligned}
\tan \theta &= \frac{v_x}{v_0}
\end{aligned}
$$
\(x_c\) の式に \(L\) と \(\tan \theta\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_c &= \left( D + \frac{l}{2} \right) \frac{v_x}{v_0}
\end{aligned}
$$
これに [イ] の結果 \(v_x = \frac{eV_x l}{mdv_0}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_c &= \left( D + \frac{l}{2} \right) \cdot \frac{1}{v_0} \cdot \frac{eV_x l}{mdv_0} \\[2.0ex]
&= \frac{eV_x l}{mdv_0^2} \left( D + \frac{l}{2} \right)
\end{aligned}
$$
これはメイン解法で導いた式と全く同じ形であり、同様に変形して[エ]が得られます。

この設問の平易な説明

電子が電極を出た後の直線を、定規で逆向きに伸ばしてみると、ちょうど電極の真ん中(\(l/2\))を通ります。
これを知っていれば、「真ん中からスクリーンまでの距離」に「傾き」を掛けるだけで、一発で到達点の高さが計算できます。
入試問題では非常に役立つテクニックです。

結論と吟味

計算量が大幅に減り、かつ同じ結果が得られました。

解答 メイン解法と同じ

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電場中での荷電粒子の運動
    • 核心: 電場 \(E\) から受ける静電気力 \(F=qE\) により、荷電粒子は電場方向に等加速度運動をし、電場と垂直な方向には等速直線運動をする。
    • 理解のポイント:
      • 運動の独立性: \(x\) 軸方向(加速)と \(z\) 軸方向(等速)を完全に分けて考える。
      • 放物線軌道: 一様な力を受けるため、電極内での軌道は放物線の一部となる。
  • 慣性の法則と等速直線運動
    • 核心: 電極を抜けた後は力が働かないため、その瞬間の速度ベクトルを保ったまま直進する。
    • 理解のポイント:
      • 接続条件: 「電極を出る瞬間の速度」が、その後の「等速運動の速度」になる。位置と速度が連続的につながることを意識する。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • オシロスコープ: 今回のように \(x\) 軸方向だけでなく、\(y\) 軸方向にも別の電極対がある場合でも、それぞれの方向で独立に運動方程式を立てればよい。
    • インクジェットプリンタ: 帯電したインク滴を電場で偏向させる仕組みも全く同じ原理。重力の影響を考慮するかどうかが違いとなる場合がある。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 領域分け: 「力が働く領域(電極内)」と「力が働かない領域(電極外)」を明確に区別し、境界線での速度と位置を計算する。
    2. 幾何学的性質の利用: 放物線運動から直線運動に移る場合、「直線を逆延長すると放物線区間の中点を通る」という性質が使えるか確認する。これを使えば計算時間を大幅に短縮できる。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 力の向きの取り違え:
    • 誤解: 電場 \(E\) の向きに力が働くと短絡的に考えてしまう。
    • 対策: 電荷 \(q\) の符号を必ず確認する。負電荷(電子)なら、電場と「逆向き」に力が働く。図に力の矢印を書き込む癖をつける。
  • 通過時間の計算ミス:
    • 誤解: 加速される \(x\) 方向の運動から時間を求めようとして行き詰まる。
    • 対策: 通過時間は、等速運動をしている方向(\(z\) 方向)の距離と速度から求めるのが鉄則(\(t = l/v_0\))。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動方程式の積分(別解1):
    • 選定理由: 公式を忘れても、\(F=ma\) さえ覚えていれば全ての物理量を導出できる最も確実な方法だから。
    • 適用根拠: 力が一定(または時間の関数)であれば、積分によって速度と位置を厳密に求めることができる。
  • 中点通過則(別解2):
    • 選定理由: 記述式試験での検算や、マーク式試験での時短テクニックとして最強だから。
    • 適用根拠: 初速度 \(0\) で等加速度運動する物体の軌道(\(x \propto t^2\))の接線は、必ず時間軸および距離軸の中点で交わるという数学的性質に基づく。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認:
    • 意識: 答えの式の単位が正しいか常にチェックする。
    • 実践: 例えば \(x_c\) の式なら、\(\text{m}\) の次元になっているか確認する。\(\frac{eVl}{mdv_0^2}D\) は \(\frac{\text{N}\cdot\text{m}}{\text{N}\cdot(\text{m}/\text{s})^2/(\text{m}/\text{s}^2)}\text{m} \dots\) のように複雑になるので、\(v^2 = 2ax\) の次元関係(\((\text{m}/\text{s})^2 = (\text{m}/\text{s}^2)\cdot\text{m}\))などを利用して簡易チェックを行う。
  • 極限の振る舞い:
    • 意識: 変数を \(0\) や \(\infty\) にしたとき、物理的に当たり前の結果になるか。
    • 実践: \(V_x = 0\) なら曲がらないので \(x_c = 0\)。\(v_0 \to \infty\) なら速すぎて曲がらないので \(x_c \to 0\)。これらが式と一致しているか確認する。
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問題107 電気力線 (東京大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問[A](2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
      • 模範解答はエネルギー保存則を既知として適用していますが、別解では運動方程式を位置で積分することで、仕事と運動エネルギーの関係(エネルギー保存則)を導出し、そこから速度を求めます。
    • 設問[B](1)の別解: 幾何学的性質(アポロニウスの円)を用いた解法
      • 模範解答は座標計算によって円の方程式を導出していますが、別解では「2定点からの距離の比が一定である点の軌跡は円になる(アポロニウスの円)」という幾何学的性質を利用して、中心と半径を直感的に求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 保存力が働く場におけるエネルギー保存則の起源を理解でき、公式の適用範囲や前提条件への理解が深まります。
    • 幾何学的解法: 複雑な計算を回避し、図形的な直感に基づいて迅速に解答にたどり着くための強力なツールとなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「点電荷による電場・電位と電気力線の性質」です。
クーロンの法則に基づく電場や電位の計算に加え、電気力線の本数と電荷量の関係(ガウスの法則の概念)を用いた定性的な考察が求められます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電位の重ね合わせ: 複数の点電荷がある場合、任意の点での電位は個々の点電荷による電位の代数和になります。
  2. エネルギー保存則: 静電力は保存力であり、荷電粒子の運動エネルギーと静電ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)の和は保存されます。
  3. 電気力線の性質:
    • 正電荷から出て負電荷(または無限遠)に入る。
    • 電荷 \(Q\) から出る(または入る)本数は \(Q\) に比例する。
    • 電気力線の密度は電場の強さを表す。
    • 電気力線は等電位面と直交する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [A]では、等しい正電荷のペアについて、対称性を考慮して電気力線を描き、エネルギー保存則を用いて粒子の速度を計算します。
  2. [B]では、正負の異なる電荷のペアについて、電位 \(0\) の軌跡(円)や力のつり合い点を計算します。さらに、電気力線の本数保存則(ガウスの法則的思考)を用いて、電気力線の広がり角度を幾何学的に考察します。

問[A](1)

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