問題136 (富山大+上智大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、抵抗(\(R\))、コンデンサー(\(C\))、コイル(\(L\))を直列に接続したRLC交流回路に関する問題です。抵抗の両端の電圧波形が与えられており、この情報をもとに、回路の様々な電気的性質を解析していきます。
- 抵抗 \(R\)、電気容量 \(C\) のコンデンサー、自己インダクタンス \(L\) のコイルが直列に接続されている。
- 抵抗 \(R\) の両端の電圧 \(v_R(t)\) は、周期 \(T\)、最大値 \(V_0\) の正弦曲線で変化する。
- (1) 交流の角周波数 \(\omega\)。
- (2) 抵抗に流れる電流 \(i\) の瞬時値と実効値。
- (3) 回路での消費電力(平均電力)。
- (4) コンデンサーにかかる電圧 \(v_C\) の実効値と瞬時値。
- (5) \(v_C\) が0になる時刻 \(t\)。
- (6) コイルにかかる電圧 \(v_L\) の実効値と瞬時値。
- (7) 電源電圧の最大値 \(V_1\) と、ab間の電圧の最大値 \(V_2\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2) 実効値の別解: 実効値に関するオームの法則を用いる解法
- 主たる解法が、最大値から実効値を定義に従って計算するのに対し、別解では実効値同士の関係式 \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\) を直接用いて導出します。
- 問(3) 消費電力の別解: 電圧と電流の実効値の積を用いる解法
- 主たる解法が、\(P = I_{\text{実効}}^2 R\) を用いるのに対し、別解では \(P = V_{R\text{実効}} I_{\text{実効}}\) を用いて計算します。
- 問(5) \(v_C=0\) となる時刻の別解: 位相差とグラフを利用する解法
- 主たる解法が、\(v_C(t)\) の数式を解くのに対し、別解では抵抗の電圧 \(v_R(t)\) とコンデンサーの電圧 \(v_C(t)\) の位相が \(\frac{\pi}{2}\) ずれていることを利用し、グラフから直感的に時刻を読み取ります。
- 問(7) 最大値の別解: 三角関数の合成を用いる解法
- 主たる解法が、インピーダンスを用いて最大値を計算するのに対し、別解では各素子の電圧の瞬時値の和をとり、三角関数の合成公式を用いて振幅(最大値)を直接求めます。
- 問(2) 実効値の別解: 実効値に関するオームの法則を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 実効値が直流と類似の法則を満たすことや、インピーダンスが三角関数の合成(ベクトルの合成)と等価であることを理解でき、交流回路の本質的な理解が深まります。
- 解法の多様性: 同じ問題に対して、数式で解く方法とグラフで直感的に解く方法の両方を学ぶことで、思考の柔軟性が養われ、検算能力も向上します。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題を解く上で中心となるのは、交流回路における各素子(抵抗、コンデンサー、コイル)の電圧と電流の位相関係、そしてリアクタンスの概念です。
- 抵抗 \(R\): 電圧と電流は同位相。
- コンデンサー \(C\): 電圧は電流より位相が \(\frac{\pi}{2}\) 遅れる。リアクタンスは \(X_C = \frac{1}{\omega C}\)。
- コイル \(L\): 電圧は電流より位相が \(\frac{\pi}{2}\) 進む。リアクタンスは \(X_L = \omega L\)。
問(1)
思考の道筋とポイント
交流の角周波数 \(\omega\) と周期 \(T\) の関係式を用います。
この設問における重要なポイント
- 角周波数 \(\omega\) と周期 \(T\) の関係式 \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) を理解していること。
具体的な解説と立式
角周波数 \(\omega\) は、周期 \(T\) と次の関係で結ばれています。
$$
\begin{aligned}
\omega &= \frac{2\pi}{T} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 角周波数と周期の関係: \(\omega = \frac{2\pi}{T}\)
式①がそのまま解答となります。
交流の振動の速さを表す「角周波数 \(\omega\)」は、振動が1往復するのにかかる時間「周期 \(T\)」と \(\omega = 2\pi / T\) という関係があります。
交流の角周波数 \(\omega\) は \(\displaystyle\frac{2\pi}{T}\) です。
問(2)
思考の道筋とポイント
抵抗 \(R\) にかかる電圧 \(v_R(t)\) が分かっているので、オームの法則を使って抵抗を流れる電流 \(i(t)\) を求めます。抵抗では電圧と電流の位相は同じです。電流の瞬時値の式から最大値を読み取り、実効値を計算します。
この設問における重要なポイント
- 抵抗における電圧と電流の位相関係(同位相)。
- オームの法則 \(v=Ri\) の適用。
- 電流の最大値から実効値を計算する方法 (\(I_{\text{実効}} = I_{\text{最大}} / \sqrt{2}\))。
具体的な解説と立式
抵抗 \(R\) にかかる電圧 \(v_R(t)\) は、図2より \(v_R(t) = V_0 \sin(\omega t)\) と表せます。
抵抗においては、電圧と電流の間にオームの法則が成り立ち、位相は同じです。したがって、電流 \(i(t)\) は、
$$
\begin{aligned}
i(t) &= \frac{v_R(t)}{R} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
電流の最大値を \(I_0\) とすると、電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) は、
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{I_0}{\sqrt{2}} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(v = Ri\)
- 実効値の定義: \(I_{\text{実効}} = I_{\text{最大}} / \sqrt{2}\)
式②に \(v_R(t) = V_0 \sin(\omega t)\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
i(t) &= \frac{V_0 \sin(\omega t)}{R} \\[2.0ex]
&= \left(\frac{V_0}{R}\right) \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
この式より、電流の最大値 \(I_0\) は \(I_0 = \frac{V_0}{R}\) です。
これを式③に代入して、実効値 \(I_{\text{実効}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{I_0}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0/R}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{\sqrt{2}R}
\end{aligned}
$$
抵抗にかかる電圧がわかっているので、オームの法則 \(i = v/R\) を使って電流を求めます。実効値は、この電流の最大値を \(\sqrt{2}\) で割ることで求められます。
抵抗に流れる電流 \(i(t)\) は \(\left(\displaystyle\frac{V_0}{R}\right) \sin(\omega t)\) であり、その実効値は \(\displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}R}\) です。
思考の道筋とポイント
実効値の間にもオームの法則 \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\) が成り立ちます。これを利用して電流の実効値を求めます。
この設問における重要なポイント
- 実効値に関するオームの法則 \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\) を利用する。
具体的な解説と立式
抵抗にかかる電圧の最大値は \(V_0\) なので、その実効値 \(V_{R\text{実効}}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{R\text{実効}} &= \frac{V_0}{\sqrt{2}}
\end{aligned}
$$
実効値に関するオームの法則より、
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{V_{R\text{実効}}}{R}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 実効値の定義: \(V_{\text{実効}} = V_{\text{最大}} / \sqrt{2}\)
- オームの法則(実効値): \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\)
上の式に \(V_{R\text{実効}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{V_0/\sqrt{2}}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{\sqrt{2}R}
\end{aligned}
$$
電圧の実効値は、最大値 \(V_0\) を \(\sqrt{2}\) で割ることで求められます。この電圧の実効値を抵抗Rで割れば、電流の実効値が直接計算できます。
主たる解法と完全に一致します。実効値が直流回路と同じように扱える便利な量であることがわかります。
問(3)
思考の道筋とポイント
交流回路で電力を消費するのは抵抗だけです。抵抗での消費電力は、実効電流と抵抗値を用いて計算できます。
この設問における重要なポイント
- 交流回路で電力を消費するのは抵抗のみであること。
- 消費電力の公式 \(P = I_{\text{実効}}^2 R\) を使えること。
具体的な解説と立式
RLC直列回路において、平均的に電力を消費するのは抵抗 \(R\) のみです。
抵抗 \(R\) での消費電力 \(P\) は、
$$
\begin{aligned}
P &= I_{\text{実効}}^2 R \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 抵抗での消費電力: \(P = I_{\text{実効}}^2 R\)
式④に、問(2)で求めた電流の実効値 \(I_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}R}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= \left(\frac{V_0}{\sqrt{2}R}\right)^2 R \\[2.0ex]
&= \left(\frac{V_0^2}{2R^2}\right) R \\[2.0ex]
&= \frac{V_0^2}{2R}
\end{aligned}
$$
交流回路で熱としてエネルギーを消費するのは抵抗だけです。消費電力は「(実効電流)\(^2\) × 抵抗値」で計算できます。(2)で求めた実効電流を2乗して \(R\) を掛けると、消費電力が求まります。
この直列回路での消費電力 \(P\) は \(\displaystyle\frac{V_0^2}{2R}\) です。
思考の道筋とポイント
消費電力は、抵抗にかかる電圧の実効値と電流の実効値の積 \(P = V_{R\text{実効}} I_{\text{実効}}\) でも計算できます。
この設問における重要なポイント
- 消費電力の別公式 \(P = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}}\) を利用する。
具体的な解説と立式
抵抗にかかる電圧の実効値 \(V_{R\text{実効}}\) は \(\frac{V_0}{\sqrt{2}}\)、電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) は \(\frac{V_0}{\sqrt{2}R}\) です。
消費電力 \(P\) は、
$$
\begin{aligned}
P &= V_{R\text{実効}} I_{\text{実効}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 消費電力: \(P = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}}\)
上の式に各実効値を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= \left(\frac{V_0}{\sqrt{2}}\right) \left(\frac{V_0}{\sqrt{2}R}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{V_0^2}{2R}
\end{aligned}
$$
消費電力は「電圧の実効値 × 電流の実効値」でも計算できます。この方法でも同じ結果が得られます。
主たる解法と完全に一致します。
問(4)
思考の道筋とポイント
コンデンサーにかかる電圧を考えます。コンデンサーでは、電圧の位相は電流の位相よりも \(\frac{\pi}{2}\) 遅れます。コンデンサーのリアクタンス \(X_C = \frac{1}{\omega C}\) を用いて電圧の最大値を計算し、そこから実効値と瞬時値を求めます。
この設問における重要なポイント
- コンデンサーのリアクタンス \(X_C = \frac{1}{\omega C}\)。
- コンデンサーの電圧と電流の位相関係(電圧が電流より \(\frac{\pi}{2}\) 遅れる)。
- 電圧の最大値 \(V_{C0} = X_C I_0\)。
具体的な解説と立式
回路を流れる電流の最大値は \(I_0 = \frac{V_0}{R}\) です。
コンデンサーのリアクタンス \(X_C\) は、
$$
\begin{aligned}
X_C &= \frac{1}{\omega C} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
コンデンサーにかかる電圧の最大値 \(V_{C0}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{C0} &= X_C I_0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
電圧の実効値 \(V_{C\text{実効}}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{C\text{実効}} &= \frac{V_{C0}}{\sqrt{2}} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
電圧の瞬時値 \(v_C(t)\) は、電流 \(i(t) = I_0 \sin(\omega t)\) より位相が \(\frac{\pi}{2}\) 遅れるので、
$$
\begin{aligned}
v_C(t) &= V_{C0} \sin\left(\omega t – \frac{\pi}{2}\right) \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 容量リアクタンス: \(X_C = \frac{1}{\omega C}\)
- 電圧・電流の最大値の関係: \(V_0 = X_C I_0\)
- コンデンサーの電圧の位相: 電流に対し \(\frac{\pi}{2}\) 遅れる。
まず、電圧の最大値 \(V_{C0}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{C0} &= \left(\frac{1}{\omega C}\right) \left(\frac{V_0}{R}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{\omega CR}
\end{aligned}
$$
次に、実効値 \(V_{C\text{実効}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{C\text{実効}} &= \frac{V_{C0}}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{\sqrt{2}\omega CR}
\end{aligned}
$$
最後に、電圧の瞬時値 \(v_C(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_C(t) &= \frac{V_0}{\omega CR} \sin\left(\omega t – \frac{\pi}{2}\right)
\end{aligned}
$$
コンデンサーの交流に対する「抵抗のようなもの」(リアクタンス)は \(X_C = 1/(\omega C)\) です。電圧の最大値は「リアクタンス × 電流の最大値」で計算できます。実効値はこの最大値を \(\sqrt{2}\) で割ります。コンデンサーでは、電圧の位相は電流よりも90°遅れるので、電流が \(\sin(\omega t)\) なら電圧は \(\sin(\omega t – \pi/2)\) となります。
コンデンサーにかかる電圧の実効値は \(\displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}\omega CR}\)、瞬時値は \(v_C(t) = \displaystyle\frac{V_0}{\omega CR} \sin\left(\omega t – \displaystyle\frac{\pi}{2}\right)\) です。
問(5)
思考の道筋とポイント
問(4)で求めたコンデンサーにかかる電圧 \(v_C(t)\) の瞬時値の式を使い、\(v_C(t)=0\) となる時刻 \(t\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 三角関数 \(\sin\phi = 0\) となる \(\phi\) の値を正しく求めること。
- \(\omega = 2\pi/T\) の関係を使って、時刻 \(t\) を周期 \(T\) で表すこと。
具体的な解説と立式
問(4)より、\(v_C(t) = \frac{V_0}{\omega CR} \sin\left(\omega t – \frac{\pi}{2}\right)\) です。
\(v_C(t)=0\) となるのは、
$$
\begin{aligned}
\sin\left(\omega t – \frac{\pi}{2}\right) &= 0 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
が成り立つときです。一般に \(\sin\phi = 0\) となるのは、\(\phi = n\pi\) (ここで \(n\) は整数)のときです。
したがって、
$$
\begin{aligned}
\omega t – \frac{\pi}{2} &= n\pi \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- \(\sin\phi = 0\) のとき、\(\phi = n\pi\) (nは整数)
- \(\omega = \frac{2\pi}{T}\)
式⑩に \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) を代入し、\(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2\pi}{T} t – \frac{\pi}{2} &= n\pi
\end{aligned}
$$
両辺を \(\pi\) で割り、移項すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{T} t &= n + \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
t &= \left(n + \frac{1}{2}\right) \frac{T}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{nT}{2} + \frac{T}{4}
\end{aligned}
$$
与えられた範囲 \(0 \le t \le T\) で考えると、
- \(n=0\) のとき: \(t = \frac{T}{4}\)
- \(n=1\) のとき: \(t = \frac{T}{2} + \frac{T}{4} = \frac{3T}{4}\)
したがって、条件を満たす時刻 \(t\) は \(\frac{T}{4}\) と \(\frac{3T}{4}\) です。
コンデンサーの電圧が0になる時刻を求めます。(4)で求めた電圧の式が0になる条件を考えます。三角関数 \(\sin\) が0になるのは、角度が \(0, \pi, 2\pi, \dots\) のときです。この条件から時刻 \(t\) を計算し、指定された範囲内のものを選びます。
コンデンサーにかかる電圧が0になる時刻 \(t\) は、\(t = \displaystyle\frac{T}{4}\) と \(t = \displaystyle\frac{3T}{4}\) です。
思考の道筋とポイント
コンデンサーの電圧 \(v_C(t)\) は、抵抗の電圧 \(v_R(t)\)(図2のグラフ)に対して位相が \(\frac{\pi}{2}\) 遅れます。時間のずれに換算すると、周期の \(\frac{1}{4}\) である \(\frac{T}{4}\) だけ遅れることになります。
この設問における重要なポイント
- 位相差 \(\frac{\pi}{2}\) が時間のずれ \(\frac{T}{4}\) に対応することを理解する。
- グラフを平行移動させて考える。
具体的な解説と立式
\(v_C(t)\) のグラフは、図2の \(v_R(t)\) のグラフを時間軸の正の方向に \(\frac{T}{4}\) だけ平行移動したグラフになります。
図2のグラフで \(v_R(t)\) が0になるのは \(t=0, \frac{T}{2}, T\) です。
したがって、\(v_C(t)\) が0になるのは、これらの時刻から \(\frac{T}{4}\) だけ後の時刻です。
- \(t = 0 + \frac{T}{4} = \frac{T}{4}\)
- \(t = \frac{T}{2} + \frac{T}{4} = \frac{3T}{4}\)
使用した物理公式
- 位相差と時間の関係
上記の考察により、\(t = \frac{T}{4}, \frac{3T}{4}\) が求められます。
コンデンサーの電圧の波は、抵抗の電圧の波(図2)よりタイミングが \(1/4\) 周期分だけ遅れます。図2の波が0になるのは \(t=0, T/2, T\) なので、コンデンサーの電圧が0になるのは、そこから \(T/4\) だけ後の \(t=T/4, 3T/4\) となります。
数式を解いた結果と完全に一致します。位相差をグラフの平行移動として視覚的に捉えることで、より直感的な理解が得られます。
問(6)
思考の道筋とポイント
コイルにかかる電圧を考えます。コイルでは、電圧の位相は電流の位相よりも \(\frac{\pi}{2}\) 進みます。コイルのリアクタンス \(X_L = \omega L\) を用いて電圧の最大値を計算し、そこから実効値と瞬時値を求めます。
この設問における重要なポイント
- コイルのリアクタンス \(X_L = \omega L\)。
- コイルの電圧と電流の位相関係(電圧が電流より \(\frac{\pi}{2}\) 進む)。
- 電圧の最大値 \(V_{L0} = X_L I_0\)。
具体的な解説と立式
回路を流れる電流の最大値は \(I_0 = \frac{V_0}{R}\) です。
コイルのリアクタンス \(X_L\) は、
$$
\begin{aligned}
X_L &= \omega L \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
コイルにかかる電圧の最大値 \(V_{L0}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{L0} &= X_L I_0 \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
電圧の実効値 \(V_{L\text{実効}}\) は、
$$
\begin{aligned}
V_{L\text{実効}} &= \frac{V_{L0}}{\sqrt{2}} \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
電圧の瞬時値 \(v_L(t)\) は、電流 \(i(t) = I_0 \sin(\omega t)\) より位相が \(\frac{\pi}{2}\) 進むので、
$$
\begin{aligned}
v_L(t) &= V_{L0} \sin\left(\omega t + \frac{\pi}{2}\right) \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 誘導リアクタンス: \(X_L = \omega L\)
- 電圧・電流の最大値の関係: \(V_0 = X_L I_0\)
- コイルの電圧の位相: 電流に対し \(\frac{\pi}{2}\) 進む。
まず、電圧の最大値 \(V_{L0}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{L0} &= (\omega L) \left(\frac{V_0}{R}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{\omega L V_0}{R}
\end{aligned}
$$
次に、実効値 \(V_{L\text{実効}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{L\text{実効}} &= \frac{V_{L0}}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{\omega L V_0}{\sqrt{2}R}
\end{aligned}
$$
最後に、電圧の瞬時値 \(v_L(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_L(t) &= \frac{\omega L V_0}{R} \sin\left(\omega t + \frac{\pi}{2}\right)
\end{aligned}
$$
コイルの交流に対する「抵抗のようなもの」(リアクタンス)は \(X_L = \omega L\) です。電圧の最大値は「リアクタンス × 電流の最大値」で計算できます。実効値はこの最大値を \(\sqrt{2}\) で割ります。コイルでは、電圧の位相は電流よりも90°進むので、電流が \(\sin(\omega t)\) なら電圧は \(\sin(\omega t + \pi/2)\) となります。
コイルにかかる電圧の実効値は \(\displaystyle\frac{\omega L V_0}{\sqrt{2}R}\)、瞬時値は \(v_L(t) = \displaystyle\frac{\omega L V_0}{R} \sin\left(\omega t + \displaystyle\frac{\pi}{2}\right)\) です。
問(7)
思考の道筋とポイント
電源電圧 \(v(t)\) は、各素子にかかる電圧の瞬時値の和です。回路全体のインピーダンス \(Z\) を求め、\(V_{\text{最大}} = Z I_0\) の関係を使います。ab間の電圧は抵抗とコンデンサーにかかる電圧の和なので、RC直列部分のインピーダンスを用います。
この設問における重要なポイント
- RLC直列回路のインピーダンス \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\)。
- RC直列部分のインピーダンス \(Z_{RC} = \sqrt{R^2 + X_C^2}\)。
- 電圧の最大値 \(V_{\text{最大}} = Z I_0\) の関係。
具体的な解説と立式
電源電圧の最大値 \(V_1\):
RLC直列回路全体のインピーダンス \(Z\) は、
$$
\begin{aligned}
Z &= \sqrt{R^2 + \left(\omega L – \frac{1}{\omega C}\right)^2} \quad \cdots ⑮
\end{aligned}
$$
電源電圧の最大値 \(V_1\) は、電流の最大値 \(I_0 = \frac{V_0}{R}\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= Z I_0 \quad \cdots ⑯
\end{aligned}
$$
ab間の電圧の最大値 \(V_2\):
ab間はRC直列部分なので、そのインピーダンス \(Z_{ab}\) は、
$$
\begin{aligned}
Z_{ab} &= \sqrt{R^2 + \left(\frac{1}{\omega C}\right)^2} \quad \cdots ⑰
\end{aligned}
$$
ab間の電圧の最大値 \(V_2\) は、
$$
\begin{aligned}
V_2 &= Z_{ab} I_0 \quad \cdots ⑱
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- RLC直列回路のインピーダンス
- 電圧の最大値: \(V_{\text{最大}} = Z I_0\)
電源電圧の最大値 \(V_1\) の計算
式⑯に \(I_0 = \frac{V_0}{R}\) と式⑮を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \left(\frac{V_0}{R}\right) \sqrt{R^2 + \left(\omega L – \frac{1}{\omega C}\right)^2}
\end{aligned}
$$
ab間の電圧の最大値 \(V_2\) の計算
式⑱に \(I_0 = \frac{V_0}{R}\) と式⑰を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \left(\frac{V_0}{R}\right) \sqrt{R^2 + \left(\frac{1}{\omega C}\right)^2}
\end{aligned}
$$
- 電源電圧: 回路全体の「合成抵抗」(インピーダンス \(Z\))を求め、それに電流の最大値 \(I_0\) を掛けることで、電源電圧の最大値が求まります。
- ab間の電圧: 抵抗RとコンデンサーCの部分だけの「合成抵抗」(インピーダンス \(Z_{ab}\))を求め、それに電流の最大値 \(I_0\) を掛けることで、ab間電圧の最大値が求まります。
電源電圧の最大値 \(V_1\) は \(\displaystyle\frac{V_0}{R}\sqrt{R^2 + \left(\omega L – \displaystyle\frac{1}{\omega C}\right)^2}\)、ab間の電圧の最大値 \(V_2\) は \(\displaystyle\frac{V_0}{R}\sqrt{R^2 + \left(\displaystyle\frac{1}{\omega C}\right)^2}\) です。
思考の道筋とポイント
各電圧の瞬時値の和をとり、三角関数の合成公式 \(A\sin\theta + B\cos\theta = \sqrt{A^2+B^2}\sin(\theta+\alpha)\) を用いて振幅(最大値)を直接求めます。
この設問における重要なポイント
- キルヒホッフの電圧則(瞬時値の和)を適用する。
- 三角関数の合成公式を利用する。
具体的な解説と立式
電源電圧の最大値 \(V_1\):
電源電圧の瞬時値 \(v_1(t)\) は、
$$
\begin{aligned}
v_1(t) &= v_R(t) + v_C(t) + v_L(t) \\[2.0ex]
&= V_0 \sin(\omega t) – \frac{V_0}{\omega CR} \cos(\omega t) + \frac{\omega L V_0}{R} \cos(\omega t) \\[2.0ex]
&= V_0 \sin(\omega t) + V_0 \left( \frac{\omega L}{R} – \frac{1}{\omega CR} \right) \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
この式の振幅(最大値) \(V_1\) は、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \sqrt{V_0^2 + \left( V_0 \left( \frac{\omega L}{R} – \frac{1}{\omega CR} \right) \right)^2}
\end{aligned}
$$
ab間の電圧の最大値 \(V_2\):
ab間の電圧の瞬時値 \(v_2(t)\) は、
$$
\begin{aligned}
v_2(t) &= v_R(t) + v_C(t) \\[2.0ex]
&= V_0 \sin(\omega t) – \frac{V_0}{\omega CR} \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
この式の振幅(最大値) \(V_2\) は、
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \sqrt{V_0^2 + \left( -\frac{V_0}{\omega CR} \right)^2}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- キルヒホッフの電圧則
- 三角関数の合成
\(V_1\) の計算
$$
\begin{aligned}
V_1 &= V_0 \sqrt{1 + \left( \frac{\omega L}{R} – \frac{1}{\omega CR} \right)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{R} \sqrt{R^2 \left( 1 + \left( \frac{\omega L}{R} – \frac{1}{\omega CR} \right)^2 \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{R} \sqrt{R^2 + \left( \omega L – \frac{1}{\omega C} \right)^2}
\end{aligned}
$$
\(V_2\) の計算
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V_0 \sqrt{1 + \left( \frac{1}{\omega CR} \right)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{R} \sqrt{R^2 \left( 1 + \left( \frac{1}{\omega CR} \right)^2 \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0}{R} \sqrt{R^2 + \left( \frac{1}{\omega C} \right)^2}
\end{aligned}
$$
各部品にかかる電圧の式をすべて足し合わせ、三角関数の合成を使って一つの波の式にまとめます。その波の振幅が、求めたい電圧の最大値になります。この方法は計算が複雑になりますが、インピーダンスの考え方の元になっている数学的な手法です。
インピーダンスを用いた主たる解法と完全に一致します。この解法は、インピーダンスがベクトルの合成(複素数の大きさ)と等価であることの数学的な背景を示しています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 交流回路における各素子の電圧と電流の位相関係とリアクタンス:
- 核心: 交流回路の挙動は、抵抗・コンデンサー・コイルがそれぞれ電流に対して電圧の位相をどうずらすか、そして交流に対する「見かけの抵抗」(リアクタンス)がどうなるかで決まります。
- 理解のポイント:
- 抵抗(\(R\)): 電圧 \(v_R\) と電流 \(i\) は同位相。
- コンデンサー(\(C\)): 電圧 \(v_C\) は電流 \(i\) より位相が \(\pi/2\) 遅れる。リアクタンス \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C}\)。
- コイル(\(L\)): 電圧 \(v_L\) は電流 \(i\) より位相が \(\pi/2\) 進む。リアクタンス \(X_L = \omega L\)。
- 実効値と最大値の関係:
- 核心: 交流の電圧や電流の「平均的な大きさ」を表すのが実効値です。電力計算などではこの実効値を用います。
- 理解のポイント: \(V_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{V_{\text{最大}}}{\sqrt{2}}\), \(I_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{I_{\text{最大}}}{\sqrt{2}}\) という関係を確実に使いこなすことが重要です。
- インピーダンスの概念:
- 核心: RLC直列回路全体の交流に対する「総合的な抵抗」がインピーダンス \(Z\) です。各素子の抵抗とリアクタンスを、位相を考慮して合成(ベクトル和)したものです。
- 理解のポイント: \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) という公式は、抵抗 \(R\) を横軸、リアクタンスの差 \(X_L – X_C\) を縦軸にとった直角三角形の斜辺の長さを求めることに相当します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- RLC並列回路:各素子にかかる電圧が共通となり、電流が分岐します。電流のベクトル和(または複素和)で全体の電流を考えます。
- 共振回路:\(X_L = X_C\) となる特定の角周波数(共振角周波数)での回路の振る舞い(インピーダンスが最小、電流が最大など)を問う問題。
- 電源電圧や全体の電流のグラフから、回路定数や各部の電圧・電流を求める問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 基準信号の特定: まず、どの物理量(電圧か電流か)が基準として与えられているかを確認します。本問では抵抗の電圧 \(v_R(t)\) が基準であり、直列回路なので電流 \(i(t)\) もこれと同位相であるため、実質的に電流が基準となります。
- 回路の接続形態: 直列か並列かを確認します。直列なら電流が全部品で共通、並列なら電圧が全部品で共通です。
- ベクトル図(フェーザ図)の活用: 電圧や電流の大きさと位相関係を視覚的に表現すると、合成電圧や合成電流の計算、位相差の理解が格段に容易になります。直列回路では電流を基準に各電圧のベクトルを描くのが定石です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電圧と電流の位相関係の混同:
- 誤解: コイル(L)とコンデンサー(C)で、電圧と電流のどちらが進み、どちらが遅れるかを混同する。
- 対策: 「CIVIL」の法則(C:IがVより進む、L:VがIより進む)や、各素子の物理的な動作(コイルは電流変化を妨げ、コンデンサは電荷を溜めてから電圧が生じる)をイメージして覚えましょう。
- 最大値と実効値の使い分けミス:
- 誤解: 電力計算に最大値を使ったり、\(V=ZI\) の関係で最大値と実効値を混用したりする。
- 対策: 問題で何が問われているか(最大値か実効値か)を常に確認し、計算過程で一貫性を持たせましょう。電力は実効値で計算するのが基本です。
- インピーダンス計算の単純な足し算:
- 誤解: 回路全体の抵抗を \(R + X_L + X_C\) のように、単純な足し算で計算してしまう。
- 対策: インピーダンスは位相を考慮した合成(ベクトルの合成)であることを理解し、三平方の定理の形 \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) を正しく使いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(\omega = 2\pi/T\):
- 選定理由: 周期 \(T\) で繰り返す正弦波の角振動数を定義するため。
- 適用根拠: 1周期(\(T\))で位相が \(2\pi\) 進むという、円運動との対応から導かれる基本的な関係式。
- \(v=Ri\):
- 選定理由: 抵抗における電圧と電流の瞬時的な比例関係を示すため。
- 適用根拠: 交流であっても、抵抗の両端の電位差とその瞬間を流れる電流の間には、常にオームの法則が成り立ちます。
- \(X_C = 1/(\omega C)\), \(X_L = \omega L\):
- 選定理由: コンデンサーとコイルが交流電流に対して示す「妨げにくさ」を定量化するため。
- 適用根拠: これらは \(i = C \frac{dv_C}{dt}\) や \(v_L = L \frac{di}{dt}\) という基本法則を、正弦波交流に適用して導かれる関係式 \(V_0 = X I_0\) の比例定数です。
- \(P = I_{\text{実効}}^2 R\):
- 選定理由: 交流回路で実際に消費される平均的な電力を計算するため。
- 適用根拠: 瞬時電力 \(p(t) = i(t)^2 R\) を1周期にわたって平均すると、この式が得られます。実効値を用いることで、直流と同じ形の電力式が使えるようになります。
- インピーダンス (\(Z = \sqrt{R^2 + (X_L-X_C)^2}\)):
- 選定理由: RLC直列回路における電圧と電流の大きさの比(総合的な抵抗)を求めるため。
- 適用根拠: 各素子の電圧の瞬時値の和 \(v_{\text{電源}} = v_R + v_L + v_C\) を、位相を考慮して合成(ベクトル和または三角関数の合成)した結果、その最大値が \(Z I_0\) となることから導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の確認:
- 特に注意すべき点: インピーダンス計算における \(X_L – X_C\) の項。コイルとコンデンサーのリアクタンスは互いに打ち消しあう効果があることを示しています。
- 日頃の練習: ベクトル図を描く習慣をつける。上向きの \(V_L\) と下向きの \(V_C\) の合成として視覚的に捉えることで、引き算になる理由が明確になります。
- 分数の計算:
- 特に注意すべき点: \(X_C = 1/(\omega C)\) や、それを含むインピーダンス計算など、分数の取り扱いは慎重に行う。逆数を取るのを忘れないようにする。
- 日頃の練習: 式を立てた後、いきなり代入するのではなく、まずは文字式のまま整理してから最後に値を代入する癖をつけると、計算が楽になりミスが減ります。
- 平方根の計算:
- 特に注意すべき点: インピーダンス計算や実効値の \(\sqrt{2}\) の扱い。二乗し忘れたり、ルートを取り忘れたりしないように注意する。
- 日頃の練習: \((\sqrt{2})^2 = 2\) や \(\sqrt{A^2+B^2}\) の形を、意識して丁寧に計算する。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- 共振条件 \(\omega L = 1/(\omega C)\) のときを考えてみます。このとき、インピーダンス \(Z=R\) となり最小になります。問(7)の \(V_1\) の式で \(X_L-X_C=0\) とすると \(V_1 = (V_0/R) \sqrt{R^2} = V_0\)。これは、共振時には抵抗にかかる電圧の最大値が電源電圧の最大値と等しくなることを意味し、物理的に正しいです。
- \(v_C(t)\) と \(v_L(t)\) の位相は互いに \(\pi\) (180°) ずれています(一方が \(\sin(\omega t – \pi/2)\)、もう一方が \(\sin(\omega t + \pi/2)\))。これは、コンデンサーとコイルが互いにエネルギーをやり取りし、電圧が常に逆符号になることを示しており、妥当です。
- 極端な場合や既知の状況との比較:
- もし \(L=0\) ならRC回路、\(C \rightarrow \infty\) (ほぼ短絡) ならRL回路になります。その場合のインピーダンスや電圧の式と、今回の結果が一致するか確認することで、式の正しさを検証できます。
- もし \(\omega \rightarrow 0\) (直流に近い) なら、\(X_L \rightarrow 0\), \(X_C \rightarrow \infty\) (コンデンサは開放)となり、回路に電流は流れません。
- もし \(\omega \rightarrow \infty\) なら、\(X_L \rightarrow \infty\), \(X_C \rightarrow 0\) (コイルは開放、コンデンサは短絡)となり、やはり回路に電流は流れません。
問題137 (横浜市立大+奈良女子大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、スイッチの切り替えによって回路の状態が変化する状況を扱います。前半(1)では、電池、抵抗、コンデンサーからなるRC回路の充電過程における過渡現象を、後半(2)では、充電されたコンデンサーとコイルからなるLC回路における電気振動を考察します。
- 回路構成: 起電力 \(V\) の電池、抵抗値 \(R\) の抵抗、電気容量 \(C\) のコンデンサー、自己インダクタンス \(L\) のコイル、スイッチS₁, S₂からなる。
- 初期状態: スイッチS₁, S₂は開いている。
- 操作(1): スイッチS₁を閉じる。
- 操作(2): S₁を閉じて十分時間が経過した後、S₁を開き、次にS₂を閉じる。
- (2)(イ)と(ウ)において、電流 \(i\) は時計回りの向きを正とする。
- (1) スイッチS₁を閉じたとき:
- (ア) 閉じた直後に抵抗に流れる電流 \(I_0\)。
- (イ) 電流が \(I\) になったとき、コンデンサーに蓄えられた電気量 \(q\)。
- (ウ) 十分時間が経過した後、コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\)。
- (2) S₁を閉じて十分時間経過後、S₁を開き、S₂を閉じたとき:
- (ア) 回路を流れる振動電流 \(i\) の最大値 \(i_m\)。
- (イ) S₂を閉じた直後からの \(i\) の時間変化の図示。
- (ウ) S₂を閉じてから、コンデンサーの下側極板Bの電荷が正で最大となるまでにかかる時間。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(1)(ア) 電位の別解: キルヒホッフの第二法則を用いる解法
- 主たる解法が、オームの法則 \(V=IR\) から直接電位差を求めるのに対し、別解では回路のループに沿って電位の変化を追跡するキルヒホッフの第二法則を用いて、より厳密に電位差を導出します。
- 問(1)(ア) 電位の別解: キルヒホッフの第二法則を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 回路解析能力の向上: キルヒホッフの法則は、より複雑な回路を解析する上での基本となる考え方です。この問題のような単純な回路で適用方法を練習することで、応用力が養われます。
- 物理モデルの深化: 電位が回路の各点でどのように変化していくかを視覚的に追うことで、電圧降下や起電力といった概念の理解が深まります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題を解くためには、以下の物理法則や概念を理解しておく必要があります。
- RC回路の過渡現象:
- スイッチ投入直後、コンデンサーはまだ電荷を蓄えていないため、両端の電圧は0(導線とみなせる)。
- 十分時間経過後(直流回路において)、コンデンサーは充電を完了し、電流を流さなくなる(断線とみなせる)。
- LC電気振動:
- 抵抗がないLC回路では、コンデンサーの静電エネルギーとコイルの磁気エネルギーの和が保存される。
- 固有角振動数は \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\)、周期は \(T_0 = 2\pi\sqrt{LC}\)。
問(1)(ア)
思考の道筋とポイント
スイッチS₁を閉じた「直後」という条件が重要です。この瞬間、コンデンサーにはまだ電荷が蓄えられておらず、電圧は0です。
この設問における重要なポイント
- スイッチを閉じた直後、コンデンサーの電荷は0。
- 電荷が0のコンデンサーの両端の電圧は0であり、導線(短絡状態)とみなせる。
- 回路は実質的に電池と抵抗のみの単純な回路となる。
具体的な解説と立式
スイッチS₁を閉じた直後の瞬間、コンデンサー \(C\) には電荷が蓄積されていません (\(q=0\))。
コンデンサーの電圧 \(V_C\) は \(V_C = q/C\) なので、\(V_C=0\) となります。
これは、コンデンサーが電圧降下を引き起こさないただの導線として振る舞うことを意味します。
その結果、この瞬間の回路は、起電力 \(V\) の電池と抵抗 \(R\) のみが接続されたものと等価になります。
この回路に流れる電流を \(I_0\) とすると、オームの法則により、
$$
\begin{aligned}
I_0 &= \frac{V}{R} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- コンデンサーの電圧と電荷の関係: \(V_C = q/C\)
- オームの法則: \(I = V/R\)
式①がそのまま解答となります。
スイッチを入れた瞬間、コンデンサーはまだ空っぽなので、電圧がかかっていません。そのため、コンデンサーはただの電線のように振る舞います。すると、回路は電池と抵抗だけがつながった形になるので、電流はオームの法則から \(V/R\) と計算できます。
S₁を閉じた直後に抵抗に流れる電流 \(I_0\) は \(\displaystyle\frac{V}{R}\) です。
問(1)(イ)
思考の道筋とポイント
回路に電流 \(I\) が流れている(充電が進んでいる途中の)状態を考えます。このとき、抵抗 \(R\) での電圧降下と、コンデンサー \(C\) にかかる電圧の関係をキルヒホッフの第2法則を用いて記述し、コンデンサーの電気量 \(q\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 回路に電流 \(I\) が流れているとき、抵抗 \(R\) で \(RI\) の電圧降下が生じる。
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)を閉回路に適用する。
- コンデンサーの基本式 \(q = CV_C\) を用いる。
具体的な解説と立式
回路に電流 \(I\) が流れているとき、抵抗 \(R\) での電圧降下は \(V_R = RI\) です。
コンデンサーにかかっている電圧を \(V_C\) とします。
電池、抵抗、コンデンサーを含む閉回路に対してキルヒホッフの第2法則を適用すると、
$$
\begin{aligned}
V &= V_R + V_C \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
ここに \(V_R = RI\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
V &= RI + V_C \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
この式から、コンデンサーにかかる電圧 \(V_C\) は、
$$
\begin{aligned}
V_C &= V – RI \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
コンデンサーに蓄えられている電気量 \(q\) は、
$$
\begin{aligned}
q &= C V_C \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(V_R = RI\)
- キルヒホッフの第2法則
- コンデンサーの基本式: \(q = CV_C\)
式④を式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
q &= C(V – RI)
\end{aligned}
$$
電流 \(I\) が回路を流れているとき、抵抗 \(R\) の部分で \(RI\) だけ電圧が下がります。電池の電圧は \(V\) なので、コンデンサーにかかる電圧は、残りの \(V – RI\) となります。コンデンサーにたまる電気の量 \(q\) は、「容量 \(C\) × 電圧 \(V_C\)」なので、\(q = C (V – RI)\) と計算できます。
電流が \(I\) のときにコンデンサーに蓄えられた電気量 \(q\) は \(C(V-RI)\) です。
問(1)(ウ)
思考の道筋とポイント
スイッチS₁を閉じて「十分時間が経過した」後を考えます。この状態ではコンデンサーの充電が完了し、回路には直流電流が流れなくなります。
この設問における重要なポイント
- 十分時間が経過すると、コンデンサーへの充電が完了し、電流を流さなくなる(断線状態)。
- 回路電流が0になると、抵抗での電圧降下も0になる。
- コンデンサーの電圧は電池の起電力に等しくなる。
具体的な解説と立式
スイッチS₁を閉じてから十分な時間が経過すると、コンデンサー \(C\) は充電を完了し、回路に電流は流れなくなります (\(I=0\))。
このとき、抵抗 \(R\) での電圧降下は \(V_R = R \cdot 0 = 0\) となります。
キルヒホッフの第2法則(式②: \(V = V_R + V_C\)) より、
$$
\begin{aligned}
V &= 0 + V_C
\end{aligned}
$$
となり、コンデンサーにかかる電圧 \(V_C\) は電池の起電力 \(V\) に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
V_C &= V \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
このときにコンデンサーに蓄えられている電気量を \(Q\) とすると、
$$
\begin{aligned}
Q &= CV_C \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- キルヒホッフの第2法則
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV_C\)
式⑥を式⑦に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= CV
\end{aligned}
$$
十分に時間が経つと、コンデンサーは電気でいっぱいになり、電流が流れなくなります。電流が流れないので、抵抗での電圧降下は0になります。その結果、電池の電圧 \(V\) がそのままコンデンサーにかかることになり、たまる電気の量は \(Q = CV\) となります。
十分時間が経過した後にコンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) は \(CV\) です。
問(2)(ア)
思考の道筋とポイント
S₁を開き、S₂を閉じると、充電されたコンデンサー \(C\) とコイル \(L\) のみからなるLC回路が形成されます。このLC回路では、抵抗がないためエネルギー損失がなく、電気振動が起こります。コンデンサーの静電エネルギーとコイルの磁気エネルギーの和が保存されることを利用して、電流の最大値を求めます。
この設問における重要なポイント
- S₂を閉じる直前のコンデンサーのエネルギーがLC回路の全エネルギーとなる。
- LC回路におけるエネルギー保存則: \(\frac{1}{2}\frac{q^2}{C} + \frac{1}{2}Li^2 = \text{一定}\)。
- 電流が最大のとき、コンデンサーの電荷は0になる。
具体的な解説と立式
S₂を閉じた直後、コンデンサーには電気量 \(Q=CV\) が蓄えられており、その静電エネルギーは \(U_C = \frac{1}{2}CV^2\) です。このとき、回路に電流は流れていないので、コイルの磁気エネルギーは \(U_L = 0\) です。
回路の全エネルギー \(E_{\text{全}}\) は、
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= \frac{1}{2}CV^2 + 0
\end{aligned}
$$
回路を流れる振動電流が最大値 \(i_m\) に達したとき、コンデンサーの電荷は一時的に0になり、その静電エネルギーも0になります。この瞬間、全てのエネルギーはコイルの磁気エネルギーとして蓄えられています。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= 0 + \frac{1}{2}Li_m^2
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}CV^2 &= \frac{1}{2}Li_m^2 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- コンデンサーの静電エネルギー: \(U_C = \frac{1}{2}CV^2\)
- コイルの磁気エネルギー: \(U_L = \frac{1}{2}Li^2\)
- LC回路におけるエネルギー保存則
式⑧の両辺に2を掛けて整理すると、
$$
\begin{aligned}
CV^2 &= Li_m^2
\end{aligned}
$$
\(i_m^2\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
i_m^2 &= \frac{C}{L}V^2
\end{aligned}
$$
\(i_m\) は正の値なので、
$$
\begin{aligned}
i_m &= V\sqrt{\frac{C}{L}}
\end{aligned}
$$
S₂を閉じると、コンデンサーに蓄えられたエネルギーとコイルのエネルギーの間で「エネルギーのキャッチボール」(電気振動)が始まります。エネルギーの合計は一定です。電流が一番大きくなる瞬間には、コンデンサーのエネルギーは0になり、すべてのエネルギーがコイルに移ります。したがって、「最初のコンデンサーのエネルギー = 電流最大時のコイルのエネルギー」という式が成り立ち、これを解けば電流の最大値が求まります。
回路を流れる振動電流の最大値 \(i_m\) は \(V\sqrt{\displaystyle\frac{C}{L}}\) です。
問(2)(イ)
思考の道筋とポイント
S₂を閉じた直後からのLC振動における電流 \(i\) の時間変化をグラフで示します。S₂を閉じた瞬間の初期条件(電荷、電流)と、電流が流れ始める向きから、グラフの形を決定します。
この設問における重要なポイント
- LC振動の電流は正弦波(または余弦波)になる。
- 固有角振動数 \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\)、周期 \(T_0 = 2\pi\sqrt{LC}\)。
- S₂を閉じた直後 (\(t’=0\)) の初期条件: \(q(0) = CV\), \(i(0)=0\)。
- 電流の正の向き(時計回り)の定義に従う。
具体的な解説と立式
S₂を閉じた瞬間を新しい時刻の基準 \(t’=0\) とします。
- コンデンサーの上側極板Aには正の電荷 \(+CV\) が蓄えられています。
- 回路に流れる電流 \(i(0)\) は0です。
S₂を閉じると、コンデンサーは放電を開始します。上側極板Aの正電荷がコイルLを通って下側極板Bへ流れ込もうとします。この電流の向きは時計回りであり、問題の定義で正の向きです。
したがって、\(t’=0\) の直後、電流 \(i\) は0から正の方向へ増加していきます。
この振る舞いは、原点から始まり正の方向に増加する正弦曲線 \(i(t’) = i_m \sin(\omega_0 t’)\) で表されます。
ここで、\(i_m\) は(ア)で求めた最大値、\(\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}\) はLC回路の固有角振動数です。
グラフの周期は \(T_0 = 2\pi/\omega_0 = 2\pi\sqrt{LC}\) です。
使用した物理公式
- LC回路の固有角振動数: \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\)
- LC回路の周期: \(T_0 = 2\pi\sqrt{LC}\)
作図のための情報を整理します。
- グラフの形: 正弦波 (\(\sin\))。
- 振幅: \(i_m\)。
- 周期: \(2\pi\sqrt{LC}\)。
- 初期値 (\(t’=0\)): \(i(0)=0\)。
- 初期傾き: 正。
S₂を閉じた瞬間は電流が0なので、グラフは原点からスタートします。コンデンサーのプラスの電気が時計回りに流れ出すので、電流はプラスの方向に増え始めます。電流の振動はきれいなサインカーブを描き、1周して元に戻るまでの時間(周期)は \(2\pi\sqrt{LC}\) です。
グラフは、原点から始まり正弦的に増加する、振幅 \(i_m\)、周期 \(2\pi\sqrt{LC}\) のグラフとなります。
問(2)(ウ)
思考の道筋とポイント
S₂を閉じた直後のコンデンサーの極板Bの電荷は負です。これが時間とともに変化し、正で最大になるまでの時間を求めます。LC振動における電荷の時間変化を考え、その周期性を利用します。
この設問における重要なポイント
- S₂を閉じた直後 (\(t’=0\)): 上極板Aが \(+CV\), 下極板Bが \(-CV\)。
- 下極板Bの電荷が正で最大 (\(+CV\)) となるのは、電荷の極性が完全に反転したとき。
- これはLC振動の半周期に相当する。
具体的な解説と立式
S₂を閉じた時刻を \(t’=0\) とします。このとき、下側極板Bの電荷は \(q_B(0) = -CV\) です。
電気振動が起こり、コンデンサーの電荷の極性が反転します。下側極板Bの電荷が正で最大 (\(+CV\)) になるのは、振動がちょうど半分の周期を経過したときです。
LC振動の周期 \(T_0\) は、
$$
\begin{aligned}
T_0 &= 2\pi\sqrt{LC}
\end{aligned}
$$
したがって、求める時間はその半分の \(\frac{T_0}{2}\) です。
使用した物理公式
- LC振動の周期: \(T_0 = 2\pi\sqrt{LC}\)
求める時間は、
$$
\begin{aligned}
t’ &= \frac{T_0}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi\sqrt{LC}}{2} \\[2.0ex]
&= \pi\sqrt{LC}
\end{aligned}
$$
LC振動では、コンデンサーの電気がプラスとマイナスの間を行ったり来たりします。スタート時に下側極板Bはマイナスの電気で最大です。Bの電気がプラスで最大になるのは、ちょうど振動の半分の時間が経過したときです。振動が1周する時間(周期)は \(2\pi\sqrt{LC}\) なので、その半分の時間は \(\pi\sqrt{LC}\) となります。
S₂を閉じてから、コンデンサーの下側極板Bの電荷が正で最大となるまでにかかる時間は \(\pi\sqrt{LC}\) です。これはLC振動の半周期に相当し、物理的に妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- コンデンサーの過渡特性 (RC回路):
- 核心: コンデンサーは「電圧の変化を嫌う」性質を持ちます。この性質が、スイッチ操作の「直後」と「十分な時間が経過した後」で、コンデンサーの振る舞いを劇的に変えます。
- 理解のポイント:
- スイッチON直後: 電荷が0なので電圧も0。回路的には「短絡(導線)」しているとみなせます。
- 十分時間経過後(直流): 充電が完了し電流が流れなくなる。回路的には「断線(開放)」しているとみなせます。
- LC電気振動:
- 核心: 抵抗がないLC回路では、エネルギー保存則(\(\frac{1}{2}\frac{q^2}{C} + \frac{1}{2}Li^2 = \text{一定}\))が成り立ちます。
- 理解のポイント: コンデンサーの静電エネルギーとコイルの磁気エネルギーが、互いに移り変わりながら保存される現象です。電荷が最大のとき電流はゼロ、電流が最大のとき電荷はゼロ、というエネルギーの交換関係を理解することが重要です。
- コイルの過渡特性(電流の連続性):
- 核心: コイルは「電流の変化を嫌う」性質を持ちます。スイッチ操作の直前と直後で、コイルを流れる電流は急に変化しません。
- 理解のポイント: この問題では直接問われていませんが、LC振動の開始時に電流が0であるのは、スイッチS₂を閉じる直前にコイルに電流が流れていなかったからです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- RLC回路の過渡現象(特に減衰振動): 回路に抵抗が含まれると、エネルギーがジュール熱として失われ、振動が減衰します。
- 複数のスイッチがあり、操作の順番によって回路構成が変わる問題: 各段階での定常状態や過渡状態を正しく把握する必要があります。
- LC振動の初期条件が異なる場合(例えば、S₂を閉じたときにコイルにも初期電流が流れている、コンデンサーの初期電荷が異なるなど)。
- 初見の問題での着眼点:
- 「直後」か「十分な時間が経過した後」か?: この言葉が、コンデンサーとコイルをどう扱うかを決定する最大のヒントです。
- 直後 \(\rightarrow\) Cは短絡、Lは開放
- 十分後 \(\rightarrow\) Cは開放、Lは短絡
- スイッチ操作で回路がどう変わるか?: 操作前後の有効な回路図(等価回路)を必ず描きましょう。特にスイッチOFF後は、電源が切り離された新しい閉回路が形成されることを見抜くのが重要です。
- エネルギー保存則の適用条件: 回路に抵抗成分が含まれず、エネルギーの散逸がない場合にLC振動の解析に有効です。
- 「直後」か「十分な時間が経過した後」か?: この言葉が、コンデンサーとコイルをどう扱うかを決定する最大のヒントです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 「スイッチON直後」のコンデンサー/コイルの扱い:
- 誤解: コンデンサーを「開放」、コイルを「短絡」と逆に考えてしまう。
- 対策: 「コンデンサーは電圧変化を嫌う(だから最初は電圧0=短絡)」「コイルは電流変化を嫌う(だから最初は電流0=開放)」と、それぞれの素子の性質と結びつけて覚えましょう。
- LC振動の初期位相の決定ミス:
- 誤解: \(q(t)\) や \(i(t)\) を \(\sin\) や \(\cos\) で表す際、\(t=0\) の値だけで判断してしまう。
- 対策: \(t=0\) の値だけでなく、その変化の向き(増加するか減少するか)も考慮しないと位相は一意に決まりません。\(i(0)=0\) で放電が始まるなら、電流は増加するので \(i(t) = i_m \sin(\omega_0 t)\) となります。
- 電荷の符号と電流の向きの混乱:
- 誤解: コンデンサーのどちらの極板の電荷を \(q\) としているか、電流のどの向きを正としているかで、\(i=dq/dt\) なのか \(i=-dq/dt\) なのかが変わることを無視する。
- 対策: 問題文の定義((2)(イ)の但し書きなど)をしっかり確認し、自分で図に正の向きを書き込んで統一的に扱いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- キルヒホッフの第2法則(電圧則):
- 選定理由: RC回路の充電途中など、回路の各点の電位関係を記述するため。
- 適用根拠: 閉回路を一周すると電位が元に戻るという、電位の保存的性質の現れであり、あらゆる電気回路の基本法則です。
- エネルギー保存則(LC回路 \(\frac{1}{2}\frac{q^2}{C} + \frac{1}{2}Li^2 = \text{一定}\)):
- 選定理由: 抵抗のないLC回路で、ある瞬間の状態から別の瞬間の状態(特にエネルギーが片方の素子に集中する瞬間)を関係づけるため。
- 適用根拠: 抵抗によるエネルギー散逸がない理想的なLC回路では、電磁場のエネルギーの総和が時間的に変化しないという物理法則。
- LC振動の周期 (\(T_0=2\pi\sqrt{LC}\)) と角振動数 (\(\omega_0=1/\sqrt{LC}\)):
- 選定理由: LC回路の振動の速さを特徴づけるため。
- 適用根拠: LC回路の回路方程式が、力学における単振動の運動方程式と数学的に同じ形をしていることから導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の確認:
- 特に注意すべき点: 問(2)(イ)のグラフを描く際、初期の電流の向きが正か負かを正しく判断すること。これはコンデンサーの初期の極性と電流の正の向きの定義から決まります。
- 日頃の練習: 回路図にコンデンサーの+-を書き込み、電流の正の向きの矢印を描いて、物理的な状況と数式の符号を一致させる練習をする。
- 文字の定義を正確に:
- 特に注意すべき点: \(I_0\) はRC回路の初期電流、\(i_m\) はLC回路の最大電流と、異なる物理量であることを明確に区別する。
- 日頃の練習: 問題文で定義された文字と、自分で設定した文字を明確に区別し、式の意味を考えながら計算を進める。
- 平方根と二乗の計算:
- 特に注意すべき点: エネルギーの式や \(i_m\) の計算でルートや二乗を間違えないようにする。
- 日頃の練習: \(i_m = V\sqrt{\frac{C}{L}}\) のような公式は、エネルギー保存則から毎回導出できるようにしておくと、記憶違いを防げます。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1)の各段階: (ア) \(I_0=V/R\) \(\rightarrow\) (イ) \(q=C(V-RI)\) \(\rightarrow\) (ウ) \(Q=CV\)。電流が \(I_0\) から 0 に減少するにつれて、電荷 \(q\) が 0 から \(Q\) に増加していく様子が、(イ)の式で連続的に記述されており、物理的に滑らかな変化を表しています。
- (2)LC振動: \(i_m = V\sqrt{C/L}\) という結果は、コンデンサーの初期エネルギーが大きいほど(\(C\) や \(V\) が大きいほど)、またコイルの慣性(インダクタンス \(L\))が小さいほど、振動電流が大きくなることを示しており、直感と一致します。
- 極端な場合や既知の状況との比較:
- もし \(R \rightarrow \infty\) なら: (1)(ア)で \(I_0 \rightarrow 0\)。充電に無限の時間がかかります。
- もし \(C \rightarrow 0\) なら: (1)(ウ)で \(Q \rightarrow 0\)。コンデンサーがなければ電荷は蓄えられません。
- もし \(L \rightarrow 0\) なら: (2)(ア)で \(i_m \rightarrow \infty\)。コイルがなければ電流を妨げるものがなく、非常に大きな電流が流れようとします(非現実的)。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]
問題138 (自治医科大+山形大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、スイッチ操作によってRLC回路の接続状態が変化し、それに伴う過渡現象や電気振動を扱う問題です。スイッチを閉じた直後や十分時間が経過した後のコイルとコンデンサーの振る舞い、そしてスイッチを開いた後に生じるLC電気振動の性質を理解しているかが問われます。
- 電気容量 \(C\) のコンデンサー、自己インダクタンス \(L\) のコイル、抵抗値 \(R\) の抵抗、起電力 \(V\) の電池が図のように接続されている。
- 初めスイッチSは開いている。
- \(R\) 以外の抵抗はないものとする。
- (1) Sを閉じた直後に電池を流れる電流 \(I_0\)。
- (2) Sを閉じてから十分に時間がたったとき、コイルを流れる電流 \(I_L\)。また、このときのコンデンサーの電気量。
- (3) 次にSを開いた。コイルを流れる電流が最初に0になるまでの時間。
- (4) その後のコンデンサーの電位差の最大値 \(V_m\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(1)の別解: キルヒホッフの法則を厳密に適用する解法
- 主たる解法が、コイルとコンデンサーの振る舞いを「開放」「短絡」とモデル化して直感的に解くのに対し、別解では回路の各ループにキルヒホッフの第二法則を適用し、初期条件を代入することで厳密に電流値を導出します。
- 問(3)の別解: 電荷の時間変化から考察する解法
- 主たる解法が、電流が最大からゼロになるまでの時間が1/4周期であることから解くのに対し、別解ではLC振動におけるコンデンサーの電荷の時間変化の式を立て、そこから電流の式を導出して、電流がゼロになる時刻を計算します。
- 問(1)の別解: キルヒホッフの法則を厳密に適用する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 「短絡」「開放」といったモデル化が、なぜ成り立つのかをキルヒホッフの法則という基本法則から確認できます。また、LC振動における電荷と電流の位相関係(\(\sin\)と\(\cos\)の関係)を数式的に追うことで、現象の理解がより深まります。
- 論理的思考力の養成: 直感的なモデル化と、厳密な数式処理の両方のアプローチを学ぶことで、物理現象を多角的に捉える能力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題を解く上で基本となるのは、直流回路におけるコイルとコンデンサーの過渡的な振る舞いと定常状態での振る舞い、そしてLC回路における電気振動とエネルギー保存則です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- スイッチ操作直後のコイルとコンデンサー:
- コイル: 直前に電流が流れていなければ、急な電流変化を妨げるため、電流を流さない「開放」状態に近い。
- コンデンサー: 直前に電荷が蓄えられていなければ、電圧は0で、電流を妨げない「短絡」状態に近い。
- 直流定常状態でのコイルとコンデンサー:
- コイル: 電流の時間変化がなくなると誘導起電力は0となり、抵抗のない導線(短絡)として振る舞う。
- コンデンサー: 充電が完了すると電流を流さなくなり、「開放」状態となる。
- LC電気振動:
- コイルの磁気エネルギーとコンデンサーの静電エネルギーが互いに変換し合いながら振動する。
- 回路に抵抗がなければ、全電磁エネルギーは保存される。
- 固有角振動数は \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\)、周期は \(T_0 = 2\pi\sqrt{LC}\)。