「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第25章】基本例題~基本問題432

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基本例題

基本例題83 直線電流がつくる磁場

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている「合成磁場の方向」から解く方法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: 磁針に働く力のモーメントのつり合いから解く方法
      • 模範解答が地磁気と電流による磁場のベクトル合成という幾何学的な関係から立式するのに対し、別解では磁針が地磁気と電流の磁場から受ける「力のモーメント」がつり合うという力学的な条件から立式します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: なぜ磁針が合成磁場の方向を向くのか、その背景にある力学的なつり合いを理解することで、磁場と力の関係についての理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: 一つの現象を、幾何学的な視点(ベクトルの合成)と力学的な視点(力のモーメントのつり合い)の両方から捉える経験は、問題解決能力の幅を広げます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、立式の根拠が異なるだけで、計算過程と最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電流と磁場の合成」です。もともと存在する地磁気に、直線電流が作る磁場が加わったとき、その空間の磁場がどうなるか、そしてその結果として磁針がどちらを向くかを理解することが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直線電流がつくる磁場: 無限に長い直線導線を流れる電流 \(I\) が、距離 \(r\) の点につくる磁場の強さ \(H\) は \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) で与えられること。
  2. 右ねじの法則: 電流の向きと、それがつくる磁場の向きの関係を正しく把握できること。
  3. 磁場の合成: 複数の原因によって磁場が生じている場合、その点での磁場は、各々の磁場をベクトルとして足し合わせたものになること(重ね合わせの原理)。
  4. 磁針の性質: 磁針は、その場所の磁場の方向を向いて静止すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、電流がない状態での磁場(地磁気)の向きと、電流を流したことによって新たに生じる磁場の向きを、右ねじの法則を使って特定します。
  2. 次に、地磁気と電流による磁場をベクトルとして合成し、その合成ベクトルがもとの地磁気の方向から \(30^\circ\) 傾いている、という条件を図に描きます。
  3. 図の幾何学的な関係(三角比)を用いて、電流による磁場の強さ \(H\) を、地磁気の強さ \(H_0\) を使って表します。
  4. 最後に、直線電流がつくる磁場の公式 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) と3.で求めた関係式を組み合わせ、未知の電流 \(I\) を計算します。

電流Iの大きさを求める

思考の道筋とポイント
この問題は、2つの磁場、すなわち「地球がもともと持っている磁場(地磁気)」と「人間が電流を流して作った磁場」が共存する状況を扱います。磁針は、これら2つの磁場が合成された「最終的な磁場」の方向を向きます。
地磁気 \(\vec{H_0}\) は北を向いています。問題文の「水平に南北方向に導線を張っ」て電流を流した結果、磁針が \(30^\circ\) 回転した、という状況を考えます。電流の向きは指定されていませんが、どちら向きに流しても、導線の下にある磁針の位置には東西方向の磁場が生じます。ここでは、磁針が西に \(30^\circ\) 回転したと仮定して考えを進めます。(東に回転したとしても、電流の向きが逆になるだけで、電流の大きさは同じになります。)
地磁気 \(\vec{H_0}\) (北向き)と、電流による磁場 \(\vec{H}\) (西向き)のベクトル合成を考え、三角比を使って2つの磁場の大きさの関係を導き出すことが最初のステップです。
この設問における重要なポイント

  • 磁針は、その点における合成磁場の方向を向く。
  • 地磁気 \(\vec{H_0}\) は北向き。
  • 南北に張った導線の下の点には、東西方向の磁場が生じる(右ねじの法則)。
  • 2つの垂直なベクトル \(\vec{H_0}\) (北向き) と \(\vec{H}\) (西向き) の合成を考える。

具体的な解説と立式
はじめに、電流が流れていないとき、磁針は地磁気の水平成分 \(\vec{H_0}\) の向き、すなわち真北を向いています。
次に、南北に張った導線に電流 \(I\) を流します。導線は磁針の上 \(1.0 \, \text{cm}\) の位置にあります。
ここで、電流が南から北へ流れていると仮定します。右ねじの法則により、導線の真下にある磁針の位置には、西向きの磁場 \(\vec{H}\) が生じます。

このとき、磁針の位置には北向きの地磁気 \(\vec{H_0}\) と、西向きの電流による磁場 \(\vec{H}\) が存在します。磁針は、この2つの磁場を合成した \(\vec{H}_{\text{合成}}\) の方向を向きます。
問題文より、磁針はもとの北向きから \(30^\circ\) 回転したので、\(\vec{H_0}\) と \(\vec{H}_{\text{合成}}\) のなす角が \(30^\circ\) となります。
\(\vec{H_0}\) と \(\vec{H}\) は垂直なので、これらのベクトルで構成される直角三角形を考えることができます。北向きの \(\vec{H_0}\) と西向きの \(\vec{H}\) を2辺とする長方形を描くと、その対角線が \(\vec{H}_{\text{合成}}\) となります。このとき、幾何学的な関係から、
$$ \tan 30^\circ = \frac{|\vec{H}|}{|\vec{H_0}|} = \frac{H}{H_0} $$
が成り立ちます。これを \(H\) について解くと、
$$ H = H_0 \tan 30^\circ \quad \cdots ① $$
一方で、直線電流がつくる磁場の強さの公式は、電流を \(I\)、導線からの距離を \(r\) として、
$$ H = \frac{I}{2\pi r} \quad \cdots ② $$
と表されます。

使用した物理公式

  • 磁場の合成(ベクトル和)
  • 直線電流がつくる磁場の公式: \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)
  • 三角比の関係: \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)
計算過程

式①と式②から、\(H\) を消去して \(I\) についての方程式を立てます。
$$ \frac{I}{2\pi r} = H_0 \tan 30^\circ $$
この式を \(I\) について解き、与えられた値を代入します。\(H_0 = 25 \, \text{A/m}\)、\(r = 1.0 \, \text{cm} = 1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\)、\(\tan 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)、\(\pi \approx 3.14\)、\(\sqrt{3} \approx 1.73\) です。
$$
\begin{aligned}
I &= H_0 \tan 30^\circ \times (2\pi r) \\[2.0ex]
&= 25 \times \frac{1}{\sqrt{3}} \times \{ 2 \times 3.14 \times (1.0 \times 10^{-2}) \} \\[2.0ex]
&\approx \frac{25}{1.73} \times (6.28 \times 10^{-2}) \\[2.0ex]
&\approx 14.45 \times 0.0628 \\[2.0ex]
&\approx 0.90666 \\[2.0ex]
&\approx 0.91 \, [\text{A}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

地球は大きな磁石なので、方位磁針は普通、北を指します。これが「地磁気」の力です。ここに、南北に電線を張って電気を流すと、電線の周りにも新しい磁場ができます。今回は電線が磁針の上にあるので、右ねじの法則から、この新しい磁場は東西方向を向きます。(電流が南→北なら西向き、北→南なら東向きです。)
すると、方位磁針は「北向きの地磁気」と「横向きの電流の磁場」の両方から力を受けることになります。結果として、磁針は2つの力が合わさった方向を向いて止まります。
今回は、その角度が \(30^\circ\) だった、ということです。この角度と地磁気の強さが分かっていれば、直角三角形の三角比(タンジェント)を使って、電流が作った磁場の強さを計算できます。そして、その磁場の強さから、原因となった電流の大きさを逆算できる、という仕組みです。

結論と吟味

流した電流の大きさは \(I \approx 0.91 \, \text{A}\) と求められました。地磁気という非常に弱い磁場を \(30^\circ\) も曲げるのに、約 \(1 \, \text{A}\) という、乾電池数個で流せる程度の電流で十分であることがわかります。これは物理的に妥当な大きさです。また、計算過程で単位をメートルに直すこと(\(1.0 \, \text{cm} \rightarrow 1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\))を忘れないように注意が必要です。

解答 \(0.91 \, \text{A}\)
別解: 磁針に働く力のモーメントのつり合いから解く方法

思考の道筋とポイント
主たる解法が「磁場の合成」という結果に着目したのに対し、この別解ではその原因である「力」に着目します。磁針(小さな棒磁石)は、磁場の中に置かれると力のモーメントを受け、回転しようとします。
地磁気は磁針を北向きに保とうとする力のモーメントを生み出し、電流の磁場は磁針を東西方向に回転させようとする力のモーメントを生み出します。磁針が \(30^\circ\) 回転した位置で静止したということは、この2つの力のモーメントがちょうどつり合った状態にあることを意味します。このつり合いの式から、電流による磁場の強さを求めます。
この設問における重要なポイント

  • 磁針(磁気モーメント \(\vec{M}\))は、磁場 \(\vec{H}\) の中で力のモーメント \(\vec{N} = \vec{M} \times \vec{H}\) を受ける。
  • 地磁気による「北向きに戻そうとする力のモーメント」と、電流の磁場による「横向きに回転させる力のモーメント」がつり合って静止する。
  • 力のモーメントのつり合いの式を立てることで、磁場の関係式を導出する。

具体的な解説と立式
磁針の磁気モーメントの大きさを \(M\) とします。磁針が北から西へ角度 \(\theta\) (\(=30^\circ\)) だけ回転して静止したとします。

このとき、磁針は地磁気 \(\vec{H_0}\) から、北向きに戻そうとする力のモーメント \(N_0\) を受けます。その大きさは、
$$ N_0 = M H_0 \sin\theta $$
となります。

同様に、磁針は西向きの電流の磁場 \(\vec{H}\) から、西向きに回転させようとする力のモーメント \(N\) を受けます。磁針の向きと磁場 \(\vec{H}\) のなす角は \(90^\circ – \theta\) なので、その大きさは、
$$ N = M H \sin(90^\circ – \theta) = M H \cos\theta $$
となります。

磁針が静止しているため、これらの力のモーメントはつり合っています。
$$ N_0 = N $$
よって、
$$ M H_0 \sin\theta = M H \cos\theta \quad \cdots ③ $$
この式と、直線電流がつくる磁場の公式を連立させます。
$$ H = \frac{I}{2\pi r} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 磁場中の磁石が受ける力のモーメント
  • 力のモーメントのつり合い
  • 直線電流がつくる磁場の公式: \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)
計算過程

式③の両辺を \(M \cos\theta\) で割ります(\(M \neq 0, \cos 30^\circ \neq 0\))。
$$
\begin{aligned}
H &= H_0 \frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[2.0ex]
H &= H_0 \tan\theta
\end{aligned}
$$
これは、主たる解法で導出した式①と全く同じ形です。ここに \(\theta = 30^\circ\) を代入すると、
$$ H = H_0 \tan 30^\circ $$
この後の計算は、主たる解法と完全に同じです。式②とこの式を等しいとおき、\(I\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{I}{2\pi r} &= H_0 \tan 30^\circ \\[2.0ex]
I &= H_0 \tan 30^\circ \times (2\pi r) \\[2.0ex]
&= 25 \times \frac{1}{\sqrt{3}} \times \{ 2 \times 3.14 \times (1.0 \times 10^{-2}) \} \\[2.0ex]
&\approx 0.91 \, [\text{A}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

方位磁針をコマのようなものだと考えてみましょう。地磁気は、このコマを「北向き」に安定させようとする働きをします。もしコマが少しでも北からずれると、北向きに戻そうとする回転力(力のモーメント)が働きます。
一方、電線を流れる電流は、コマを「横向き」にひねろうとする、別の回転力を加えます。
磁針が \(30^\circ\) 傾いて止まったのは、「地磁気が北に戻そうとする回転力」と「電流が横にひねろうとする回転力」が、ちょうど釣り合って、綱引きが引き分けになった状態です。この「回転力のつり合い」の式を立てることで、電流が作った磁場の強さがわかり、そこから電流の大きさを計算することができます。

結論と吟味

力のモーメントのつり合いという力学的なアプローチからも、主たる解法と全く同じ \(I \approx 0.91 \, \text{A}\) という結果が得られました。これは、「磁針が合成磁場の方向を向く」という現象の裏には、力のモーメントのつり合いという物理法則があることを示しています。異なる視点から同じ結論に至ることで、物理法則の整合性を確認できます。

解答 \(0.91 \, \text{A}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 場の重ね合わせの原理:
    • 核心: この問題の根幹は、複数の原因(地磁気と電流)によって作られる磁場が、単純なベクトルの足し算で求められるという「重ね合わせの原理」を理解し、応用することにあります。
    • 理解のポイント:
      • 磁針の位置には、もともと北向きの地磁気 \(\vec{H_0}\) が存在します。
      • そこに、電流 \(I\) が新たに東西方向の磁場 \(\vec{H}\) を作ります。
      • 磁針が実際に感じる磁場は、この2つを独立に計算し、ベクトルとして合成した \(\vec{H}_{\text{合成}} = \vec{H_0} + \vec{H}\) となります。
  • 磁針と磁場の関係:
    • 核心: 「磁針は、その場所の合成磁場の方向を向いて静止する」という基本性質を理解していることが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 磁針が北から \(30^\circ\) 傾いたという事実は、合成磁場 \(\vec{H}_{\text{合成}}\) が北の方向から \(30^\circ\) 傾いていることを直接意味します。
      • この関係を幾何学的に図示することで、未知の磁場 \(H\) と既知の地磁気 \(H_0\) の間に \(\tan 30^\circ = H/H_0\) という関係式を立てることができます。これが問題を解くための突破口となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 2本の平行電流が作る磁場: 2本の平行な直線電流が、ある点に作る磁場を求める問題。それぞれの電流が作る磁場を右ねじの法則で求め、ベクトルとして合成します。電流の向きによって磁場が強め合ったり弱め合ったりします。
    • 円形コイルの中心磁場と地磁気: 水平に置いた円形コイルの中心に磁針を置き、地磁気とコイルが作る磁場(上下方向)の合成を考える問題。磁針が傾く角度(伏角の変化)から電流を求めるなど、三次元的なベクトル合成が問われます。
    • 電場との類似問題: 2つの点電荷が作る電場を求める問題も、本質的には同じ考え方です。各々の点電荷が作る電場をクーロンの法則で計算し、ベクトルとして足し合わせることで合成電場を求めます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 場の源を特定する: まず、その空間に場(磁場や電場)を作っている原因がいくつあるか(この問題では地磁気と電流の2つ)をリストアップします。
    2. 各々の場の向きと大きさを求める: それぞれの原因が作る場の向きを法則(右ねじの法則など)で決定し、大きさを公式(\(H=I/2\pi r\)など)で表します。
    3. ベクトル図を描く: 特定した全ての場を、一つの点を始点とするベクトルとして図示します。特に、ベクトルの向きと、それらのなす角度を正確に描くことが重要です。
    4. 幾何学的な関係を利用する: 描いたベクトル図の中から、直角三角形や余弦定理が使える図形を見つけ出し、辺の長さ(場の強さ)や角度の関係を立式します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 右ねじの法則の適用ミス:
    • 誤解: 電流の向きと磁場の向きの関係を混同したり、導線の上側と下側で磁場の向きが逆になることを見落としたりする。
    • 対策: 問題を解く前に、親指を電流の向きに合わせた右手をイメージし、他の4本の指が巻く方向が磁場の向きであることを、頭の中で明確にシミュレーションする癖をつけましょう。「導線の上か下か」「右か左か」を問題文で正確に把握し、指をその位置に合わせて考えることが重要です。
  • 単位の換算忘れ:
    • 誤解: 距離 \(r\) を cm のまま計算してしまう。
    • 対策: 物理量の計算は、原則としてSI基本単位(メートル、アンペアなど)で行います。問題文に \( \text{cm} \) が出てきたら、計算を始める前に機械的に \( \times 10^{-2} \) を付けて \( \text{m} \) に変換する、という一手間を習慣にしましょう。
  • \(\tan\theta\) の逆数での誤り:
    • 誤解: ベクトル図を描いた際に、底辺と高さを取り違え、\(H = H_0 / \tan 30^\circ\) のように誤って立式してしまう。
    • 対策: 必ず「求めたい辺」と「既知の辺」の関係を明確にしてから三角比を選びます。この問題では、未知の \(H\) が角度 \(30^\circ\) の対辺、既知の \(H_0\) が底辺にあたるため、\(\tan 30^\circ = H/H_0\) となります。自信がなければ、\(\sin, \cos, \tan\) の定義(どれが分母でどれが分子か)を再確認してから立式しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 磁場のベクトル合成と三角比:
    • 選定理由: この問題では、最終的に磁針が「\(30^\circ\) 回転して静止した」という、向きに関する情報が与えられています。この「向き」や「角度」の情報を数式に落とし込むには、ベクトルの幾何学的な関係を利用するのが最も直接的です。
    • 適用根拠: 地磁気(北向き)と電流の磁場(西向き)は互いに直交しています。直交する2つのベクトルを合成する場合、そのベクトル図は必ず直角三角形を含みます。直角三角形の辺と角度の関係は三角比によって簡潔に記述できるため、\(\tan\) を用いるのが最も効率的な解法となります。
  • 力のモーメントのつり合い(別解):
    • 選定理由: 「静止した」というキーワードは、力学において「力がつり合っている」または「力のモーメントがつり合っている」ことを意味します。磁針は回転体なので、その静止を「力のモーメントのつり合い」として捉えるのは自然な発想です。
    • 適用根拠: 磁針は、地磁気から北向きに戻そうとする回転力(モーメント)と、電流の磁場から西向きにひねろうとする回転力を同時に受けます。この2つの回転力が等しくなったときに初めて、磁針は回転を止めて静止することができます。したがって、力のモーメントのつり合いの式を立てることは物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま進める:
    いきなり \(H_0=25\), \(r=0.01\) などを代入するのではなく、まずは \(I = H_0 \tan\theta \times (2\pi r)\) のように、求めたい量(\(I\))を文字式で表現しましょう。これにより、物理的な関係性が見通しやすくなり、代入ミスも防げます。
  • 複雑な数値計算の工夫:
    今回の計算 \(I = 25 \times \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}} \times 2 \times 3.14 \times 0.01\) は、掛ける順番を工夫すると少し楽になります。

    • \(I = (25 \times 2 \times 0.01) \times \displaystyle\frac{3.14}{\sqrt{3}} = 0.5 \times \displaystyle\frac{3.14}{1.73}\) のように、先に計算しやすい部分をまとめてしまうと、桁数の多い掛け算や割り算を後回しにでき、計算ミスを減らせます。
  • 有効数字を意識する:
    問題文で与えられている物理量は「\(1.0 \, \text{cm}\)」「\(25 \, \text{A/m}\)」であり、有効数字は2桁です。したがって、最終的な答えも有効数字2桁(または3桁)でまとめるのが適切です。計算途中の \(\pi\) や \(\sqrt{3}\) は、それより1桁多い3桁(\(3.14\), \(1.73\))で計算すると、丸め誤差の影響を小さくできます。最終的に \(0.906…\) となったら、有効数字2桁に合わせて \(0.91\) と四捨五入します。

基本例題84 磁場の合成

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複数の直線電流がつくる磁場の合成」です。空間のある一点に、複数の原因によって磁場が作られるとき、その点での最終的な磁場は、個々の磁場をベクトルとして足し合わせることで求められる、という「重ね合わせの原理」を正しく使えるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直線電流がつくる磁場の公式: 無限に長い直線導線を流れる電流 \(I\) が、距離 \(r\) の点につくる磁場の強さ \(H\) は \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) で与えられること。
  2. 右ねじの法則: 電流の向きと、それがつくる磁場の向きの関係を正確に把握できること。特に、観測点の位置によって磁場の向きがどう変わるかを理解している必要があります。
  3. 磁場の重ね合わせの原理: ある点における合成磁場は、それぞれの電流が単独でつくる磁場のベクトル和で与えられること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、導線Aを流れる電流 \(I_1\) が点Cにつくる磁場 \(\vec{H_1}\) の向きと大きさを求めます。
  2. 次に、導線Bを流れる電流 \(I_2\) が点Cにつくる磁場 \(\vec{H_2}\) の向きと大きさを求めます。
  3. 最後に、2つの磁場ベクトル \(\vec{H_1}\) と \(\vec{H_2}\) を合成します。今回は2つの磁場が一直線上で逆向きになるため、大きさの引き算によって合成磁場の強さを求め、より大きい方の磁場の向きを合成磁場の向きとします。

点Cにおける合成磁場

思考の道筋とポイント
この問題のポイントは、点Cという場所に、導線Aと導線Bという2つの異なる原因から磁場が作られていると考えることです。物理学の基本的な考え方である「重ね合わせの原理」に従い、それぞれの電流が作る磁場を独立に考え、最後にそれらをベクトルとして足し合わせることで、点Cでの最終的な磁場を求めます。
特に重要なのは、右ねじの法則を正しく適用して、それぞれの磁場の「向き」を正確に決定することです。向きを間違えると、足し算すべきところを引き算してしまったり、その逆になったりするからです。
この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの原理: 点Cにおける合成磁場 \(\vec{H}\) は、Aが作る磁場 \(\vec{H_1}\) とBが作る磁場 \(\vec{H_2}\) のベクトル和、すなわち \(\vec{H} = \vec{H_1} + \vec{H_2}\) で与えられる。
  • 右ねじの法則の適用:
    • 電流 \(I_1\)(紙面の裏から表)は、点Cに紙面にそって上向きの磁場 \(\vec{H_1}\) を作る。
    • 電流 \(I_2\)(紙面の表から裏)は、点Cに紙面にそって下向きの磁場 \(\vec{H_2}\) を作る。
  • 距離の計算:
    • 導線Aから点Cまでの距離 \(r_1\) は、\(2.0 \times 10^{-2} \, \text{m} + 2.0 \times 10^{-2} \, \text{m} = 4.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\)。
    • 導線Bから点Cまでの距離 \(r_2\) は、\(2.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\)。

具体的な解説と立式
まず、導線Aを流れる電流 \(I_1\) が点Cの位置につくる磁場を \(\vec{H_1}\) とします。
電流 \(I_1\) は紙面の裏から表へ向かう向きです。右ねじの法則を適用すると、導線Aの右側にある点Cでは、磁場は紙面にそって上向きとなります。
その大きさ \(H_1\) は、AからCまでの距離 \(r_1 = 4.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\) を用いて、
$$ H_1 = \frac{I_1}{2\pi r_1} \quad \cdots ① $$
と表せます。

次に、導線Bを流れる電流 \(I_2\) が点Cの位置につくる磁場を \(\vec{H_2}\) とします。
電流 \(I_2\) は紙面の表から裏へ向かう向きです。右ねじの法則を適用すると、導線Bの右側にある点Cでは、磁場は紙面にそって下向きとなります。
その大きさ \(H_2\) は、BからCまでの距離 \(r_2 = 2.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\) を用いて、
$$ H_2 = \frac{I_2}{2\pi r_2} \quad \cdots ② $$
と表せます。

点Cにおける合成磁場 \(\vec{H}\) は、\(\vec{H_1}\)(上向き)と \(\vec{H_2}\)(下向き)のベクトル和です。2つのベクトルは一直線上で逆向きなので、合成磁場の大きさ \(H\) は、それぞれの大きさの差で求められます。

使用した物理公式

  • 直線電流がつくる磁場の公式: \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)
  • 磁場の重ね合わせの原理
計算過程

まず、\(H_1\) と \(H_2\) のどちらが大きいかを比較し、合成磁場の向きを決定します。
問題文より \(I_1 = I_2 = 6.28 \, \text{A}\) です。
$$ H_1 = \frac{6.28}{2\pi (4.0 \times 10^{-2})} $$
$$ H_2 = \frac{6.28}{2\pi (2.0 \times 10^{-2})} $$
分母が小さいほど値は大きくなるので、\(r_1 > r_2\) であることから \(H_1 < H_2\) とわかります。
したがって、合成磁場の向きは、大きい方の磁場 \(\vec{H_2}\) の向き、すなわち「紙面にそって下向き」となります。

次に、合成磁場の大きさ \(H\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
H &= H_2 – H_1 \\[2.0ex]
&= \frac{I_2}{2\pi r_2} – \frac{I_1}{2\pi r_1}
\end{aligned}
$$
\(I_1 = I_2 = 6.28 \, \text{A}\) なので、これを \(I\) とおいて式を整理します。
$$
\begin{aligned}
H &= \frac{I}{2\pi} \left( \frac{1}{r_2} – \frac{1}{r_1} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{6.28}{2\pi} \left( \frac{1}{2.0 \times 10^{-2}} – \frac{1}{4.0 \times 10^{-2}} \right)
\end{aligned}
$$
ここで、\(6.28\) は \(2\pi\) (\(\approx 2 \times 3.14 = 6.28\)) の近似値なので、\(\displaystyle\frac{6.28}{2\pi} \approx 1\) となります。
$$
\begin{aligned}
H &\approx 1 \times \left( \frac{1}{0.02} – \frac{1}{0.04} \right) \\[2.0ex]
&= 50 – 25 \\[2.0ex]
&= 25 \, [\text{A/m}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

点Cという場所から見ると、2本の電線AとBから、それぞれ磁場が送られてきています。
右ねじの法則を使うと、Aの電流からは「上向きの磁場」が、Bの電流からは「下向きの磁場」が届いていることがわかります。
これは、点Cで上向きの力と下向きの力が綱引きをしているようなものです。どちらが勝つかは、どちらの磁場が強いかで決まります。磁場の強さは「電流が大きく、距離が近い」ほど強くなります。今回は電流の大きさが同じなので、距離が近いBからの磁場の方が勝ちます。
したがって、最終的な磁場の向きは、Bが作る磁場の向きである「下向き」になります。
その強さは、単純に強い方の磁場(Bから)の強さから、弱い方の磁場(Aから)の強さを引き算すれば求まります。

結論と吟味

合成磁場の強さは \(25 \, \text{A/m}\)、向きは紙面にそって下向きであると求められました。
この問題では、電流の値が \(I = 6.28 \, \text{A}\) と、\(2\pi\) の近似値に設定されています。これにより、計算途中で \(\displaystyle\frac{I}{2\pi}\) の部分が \(1\) となり、計算が大幅に簡略化されます。これは、計算の煩雑さではなく、物理法則の理解度を問うための問題作成者の配慮と考えられます。結果は物理的に妥当な値です。

解答 \(25 \, \text{A/m}\), 紙面にそって下向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 磁場の重ね合わせの原理:
    • 核心: この問題の根幹は、複数の電流が作る磁場は、それぞれの電流が単独でその場所に作る磁場を「ベクトルとして」足し合わせることで求められる、という「重ね合わせの原理」の理解にあります。
    • 理解のポイント:
      • この問題では、点Cに磁場を作る原因は導線Aと導線Bの2つです。
      • まずはAだけ、Bだけがそれぞれ点Cに作る磁場を、向きと大きさに分けて考えます。
      • Aが作る磁場 \(\vec{H_1}\) とBが作る磁場 \(\vec{H_2}\) は、一直線上で逆向きになります。
      • したがって、合成磁場 \(\vec{H}\) の大きさは、単純な大きさの引き算 \(H = |H_2 – H_1|\) で計算でき、向きは大きい方の磁場の向きになります。この「ベクトルとしての和(今回は引き算)」がポイントです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 磁場が0になる点を求める問題: 2本の平行電流の間に、合成磁場が0になる点を探す問題。それぞれの電流が作る磁場の大きさが等しく、向きが逆になる点を見つけることで解けます。\(H_1 = H_2\) より \(\displaystyle\frac{I_1}{r_1} = \frac{I_2}{r_2}\) という関係式を立てて距離の比を求めます。
    • 垂直な配置の導線が作る磁場: 2本の導線が紙面に垂直ではなく、紙面上で直交している場合など。この場合、それぞれの導線が作る磁場も直交することになるため、合成磁場の大きさは三平方の定理 \(H = \sqrt{H_1^2 + H_2^2}\) を使って求めることになります。
    • クーロン力や万有引力との関連: 複数の電荷から受けるクーロン力や、複数の天体から受ける万有引力を求める問題も、本質は全く同じです。それぞれの源から受ける力をベクトルとして個別に計算し、最後にベクトル合成します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 場の源を全てリストアップする: 問題の空間に場(磁場、電場、重力場など)を作っている原因(電流、電荷、質量など)を全て洗い出します。
    2. 観測点を中心に考える: 「点Cで」の磁場を問われているので、常に点Cを基準に物事を考えます。それぞれの源から点Cまでの「距離」と「方向」を正確に把握します。
    3. 向きを最優先で決定する: 計算を始める前に、まず右ねじの法則などを用いて、各々の源が作る場の「向き」を決定し、図に矢印で書き込みます。向きが同じか、逆か、直交しているかなどを把握することが、立式の第一歩です。
    4. 大きさを計算し、ベクトル合成する: 向きの関係がわかったら、それぞれの場の大きさを公式で計算し、向きに応じて足し算、引き算、三平方の定理などを使い分けて合成します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 距離の取り違え:
    • 誤解: 導線Aから点Cまでの距離を、図に書かれている \(2.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\) だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 必ず「どの導線から」「どの点まで」の距離なのかを一つ一つ確認する癖をつけましょう。この問題では、AからCまでは、A-B間とB-C間の距離を足し合わせる必要があります。\(r_1 = (2.0 \times 10^{-2}) + (2.0 \times 10^{-2}) = 4.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\) となります。
  • 右ねじの法則の適用ミス:
    • 誤解: 電流が作る磁場は常に円を描くため、点Cでの向きを接線方向ではなく、円の中心を向くなどと勘違いしてしまう。
    • 対策: 右ねじの法則は「親指が電流、他の4本の指の『接線方向』が磁場の向き」と正確に覚えましょう。導線を中心とする同心円を描き、点Cにおけるその円の接線の向きが磁場の向きである、とイメージすることが重要です。
  • 計算の順序ミス:
    • 誤解: \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi} (\frac{1}{r_2} – \frac{1}{r_1})\) のような式を立てた後、分数の計算で通分を間違えたり、\(10^{-2}\) の扱いを誤ったりする。
    • 対策: \( \displaystyle\frac{1}{2.0 \times 10^{-2}} = \frac{1}{0.02} = 50 \) のように、先にそれぞれの項を計算してから引き算する方が、計算ミスが減ることが多いです。焦らず、一つ一つの計算を丁寧に行いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 直線電流の磁場の公式 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\):
    • 選定理由: 問題で与えられているのが「長い直線の導線」を流れる電流だからです。物理では、状況設定(直線電流、円形電流、ソレノイドコイルなど)に応じて、用いるべき公式が決まっています。問題文のキーワードから、適切な公式を即座に選択できることが求められます。
    • 適用根拠: この公式は、ビオ・サバールの法則という、より根源的な法則から導出されたものです。高校物理では、この結果を公式として用いることが許されています。無限に長い直線電流という理想的な状況で成り立つ関係式です。
  • 重ね合わせの原理:
    • 選定理由: 磁場を作る原因が複数(今回は2つ)存在するからです。複数の要因が絡む問題を一度に解くのは困難なため、物理学では「一つずつ独立に考えて、後で足し合わせる」という強力な手法(重ね合わせの原理)を用います。
    • 適用根拠: 磁場(や電場)を記述する基本方程式(マクスウェル方程式)が線形性を持つため、重ね合わせの原理が成り立ちます。これは、一方の電流が作る磁場が、もう一方の電流が作る磁場の存在によって影響を受けない(磁場同士が互いに干渉しない)ことを意味しており、それぞれの効果を単純に足し合わせることが物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 特殊な数値に気づく:
    問題文の電流値 \(I = 6.28 \, \text{A}\) を見た瞬間に、「これは \(2\pi\) の近似値ではないか?」と気づくことができれば、計算の見通しが格段に良くなります。物理の問題では、計算を簡略化するために、\(\pi\) や \(g\)(重力加速度)に関連した数値が意図的に使われることがよくあります。
  • 共通因数でくくる:
    \(H = \displaystyle\frac{I_2}{2\pi r_2} – \frac{I_1}{2\pi r_1}\) の計算では、\(I_1=I_2=I\) であることから、共通因数 \(\displaystyle\frac{I}{2\pi}\) でくくると、\(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi} (\frac{1}{r_2} – \frac{1}{r_1})\) となり、計算の手間を減らすことができます。特に、文字式の段階で整理する癖をつけておくと、複雑な問題でも見通しが立ちやすくなります。
  • 単位を含めて検算する:
    最終的に得られた答えが \(25\) という数値だけでなく、単位が \([\text{A/m}]\) になっているかを確認しましょう。例えば、距離 \(r\) を \(m\) に直し忘れると、単位がおかしくなるはずです。計算の各ステップで単位が正しく扱われているか意識することで、間違いに気づきやすくなります。

基本例題85 平行電流が及ぼしあう力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: アンペールの法則(平行電流間にはたらく力の公式)を用いる解法
      • 模範解答が「(1)で求めた磁場から、導線が受ける力を求める」という段階的なアプローチを取るのに対し、別解では「平行な電流間にはたらく力」の公式を直接適用し、一気に答えを導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: 同じ現象を「磁場を介した力の作用」と「電流間の直接的な力の作用」という2つの視点から見ることができます。
    • 解法の効率化: 平行電流間の力を問われた際に、この公式を知っていれば、磁場を計算する中間ステップを省略し、より迅速に解に到達できます。これは特に、試験などで時間を節約したい場合に強力な武器となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「平行電流間にはたらく力」です。一本の電流がまず周囲に磁場を作り、その磁場の中にもう一本の電流が存在することによって、その電流が力を受ける、という二段階のプロセスを理解することが核心となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直線電流がつくる磁場: 電流 \(I\) が距離 \(r\) の点につくる磁場の強さ \(H\) は \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) で与えられること。
  2. 磁場と磁束密度の関係: 磁場の強さ \(H\) と磁束密度 \(B\) の間には、透磁率 \(\mu\) を用いて \(B = \mu H\) という関係があること。
  3. 電流が磁場から受ける力(ローレンツ力): 磁束密度 \(B\) の磁場中で、電流 \(I’\) が流れる長さ \(l\) の導線部分が受ける力の大きさ \(F\) は \(F = I’Bl\) で与えられること。
  4. 法則の使い分け: 磁場の向きを求める「右ねじの法則」と、力の向きを求める「フレミングの左手の法則」を正しく使い分けることができること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず電流 \(I\) が導線A’B’の位置につくる「磁場の強さ \(H\)」を公式で求め、次に \(B=\mu_0 H\) の関係を使って「磁束密度 \(B\)」に変換します。向きは「右ねじの法則」で決定します。
  2. (2)では、(1)で求めた磁束密度 \(B\) の中に、電流 \(I’\) が置かれていると考えます。公式 \(F=I’Bl\) を用いて力の大きさを計算し、向きは「フレミングの左手の法則」で決定します。

問(1)

思考の道筋とポイント
この設問は、2本ある導線のうち、まず導線ABを流れる電流 \(I\) だけに着目します。この電流 \(I\) が、もう一方の導線A’B’が存在する空間に、どのような磁場(正確には磁束密度)を作るかを問うています。
手順としては、まず「直線電流がつくる磁場の強さ \(H\)」の公式を使い、次にそれを「磁束密度 \(B\)」に変換します。向きの決定には「右ねじの法則」を用います。
この設問における重要なポイント

  • 原因となるのは電流 \(I\) のみ。電流 \(I’\) はまだ考えない。
  • 求める物理量は「磁束密度 \(B\)」。磁場の強さ \(H\) ではないことに注意。
  • 使う法則は「右ねじの法則」。

具体的な解説と立式
導線ABを流れる電流 \(I\) が、距離 \(r\) だけ離れた導線A’B’の位置につくる磁場の強さを \(H\) とします。無限に長い直線電流がつくる磁場の公式より、
$$ H = \frac{I}{2\pi r} $$
となります。
次に、この磁場の強さ \(H\) を磁束密度 \(B\) に変換します。真空の透磁率を \(\mu_0\) とすると、\(B = \mu_0 H\) の関係が成り立ちます。
$$ B = \mu_0 H \quad \cdots ① $$
向きについては、電流 \(I\) が図の右向きに流れているので、右ねじの法則を適用します。親指を右に向けると、導線ABの下側(A’B’の位置)では、他の4本の指は紙面の表から裏へ向かう方向を指します。したがって、磁場の向きは「紙面の表から裏の向き」となります。

使用した物理公式

  • 直線電流がつくる磁場の強さ: \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)
  • 磁場と磁束密度の関係: \(B = \mu H\)
計算過程

式①に \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) を代入して、\(B\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
B &= \mu_0 \times \frac{I}{2\pi r} \\[2.0ex]
&= \frac{\mu_0 I}{2\pi r}
\end{aligned}
$$
これ以上の計算は不要です。

この設問の平易な説明

まず、上の電線(AB)に電気が流れていることだけを考えます。電気が流れると、その周りには磁場ができます。この問題では、下の電線(A’B’)がある場所の磁場の強さ(専門用語で「磁束密度」)と向きを知りたい、ということです。
向きは「右ねじの法則」で決まります。右手の親指を電気の流れ(右向き)に合わせると、下の電線がある場所では、他の4本の指は紙面の奥を指します。これが磁場の向きです。
強さは公式で計算できます。まず「磁場の強さ \(H\)」を求め、それを物質(今回は真空)の種類で決まる定数「透磁率 \(\mu_0\)」を掛けて「磁束密度 \(B\)」に変換します。

結論と吟味

電流 \(I\) が導線A’B’の位置につくる磁束密度の大きさは \(B = \displaystyle\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\)、向きは紙面の表から裏の向きであると求められました。この結果は、(2)で力を計算するための準備となります。

解答 (1) 大きさ: \(\displaystyle\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\), 向き: 紙面の表から裏の向き

問(2)

思考の道筋とポイント
設問(1)で、導線A’B’の場所には「紙面の表から裏向きの磁場」ができていることがわかりました。この設問では、その磁場の中に置かれた導線A’B’が、電流 \(I’\) を流していることによって、どのような力を受けるかを考えます。
磁場の中で電流が受ける力を求めるので、使う法則は「フレミングの左手の法則」です。力の大きさは公式 \(F=I’Bl\) で計算します。
この設問における重要なポイント

  • 導線A’B’は、導線ABが作った磁場 \(B\) の中に置かれていると考える。
  • 力を受けるのは電流 \(I’\) が流れる導線A’B’。
  • 使う法則は「フレミングの左手の法則」。

具体的な解説と立式
(1)で求めたように、導線A’B’の位置には、導線ABによって作られた磁束密度 \(B = \displaystyle\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\) の磁場が、紙面の表から裏向きに存在します。
この磁場の中で、導線A’B’に電流 \(I’\) が流れています。磁場中の電流は力を受けるので、その力の大きさ \(F\) は、公式 \(F=I’Bl\) を用いて計算できます。ここで \(l\) は力を受ける導線の長さです。
$$ F = I’Bl \quad \cdots ② $$
力の向きは、フレミングの左手の法則で決定します。

  • 中指(電流): 図の右向き (\(I’\))
  • 人差し指(磁場): 紙面の表から裏向き (\(B\))

このとき、親指(力)は図の下から上の向きを指します。したがって、導線A’B’が受ける力は、導線ABに引き寄せられる向き、すなわち「図の下から上の向き」の引力となります。

使用した物理公式

  • 電流が磁場から受ける力: \(F = IBl\)
計算過程

式②に、(1)で求めた \(B = \displaystyle\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= I’ \left( \frac{\mu_0 I}{2\pi r} \right) l \\[2.0ex]
&= \frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r}
\end{aligned}
$$
これ以上の計算は不要です。

この設問の平易な説明

(1)で、下の電線(A’B’)の場所には、上の電線によって「紙面の奥向きの磁場」ができていることがわかりました。
(2)では、この磁場の中で、下の電線に電気が流れたらどうなるか、を考えます。「磁場」と「電気の流れ」がそろうと、「力」が発生します。これがモーターの原理です。
力の向きは「フレミングの左手の法則」でわかります。左手の中指を電気の流れ(右向き)、人差し指を磁場の向き(奥向き)に合わせると、親指は上を向きます。つまり、下の電線は上の電線に引っ張られる「引力」を受けることになります。
力の大きさは、公式 \(F = (\text{電流}) \times (\text{磁束密度}) \times (\text{長さ})\) で計算できます。

結論と吟味

導線A’B’が受ける力の大きさは \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r}\)、向きは図の下から上の向き(引力)であると求められました。
電流の向きが同じ平行電流の間には引力がはたらく、という重要な結論が得られました。もし電流の向きが逆であれば、力の向きも逆になり、斥力(反発しあう力)がはたらくことになります。

解答 (2) 大きさ: \(\displaystyle\frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r}\), 向き: 図の下から上の向き
別解: アンペールの法則(平行電流間にはたらく力の公式)を用いる解法

思考の道筋とポイント
設問(2)は、2本の平行な電流の間にはたらく力を問うています。この力は、(1)→(2)のプロセスで導出したように、常に \(\displaystyle\frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r}\) という形で表されます。この結果は非常に重要なので、「平行電流間にはたらく力の公式」として知られています。
この別解では、(1)の磁場計算をステップとせず、この公式を直接適用して一気に力の大きさを求めます。
この設問における重要なポイント

  • 平行電流間にはたらく力の公式 \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2 l}{2\pi r}\) を直接利用する。
  • 電流の向きが同じ場合は引力、逆の場合は斥力となることを知っている。

具体的な解説と立式
平行に置かれた2本の直線電流 \(I_1\), \(I_2\) の間には、単位長さあたり \(f = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi r}\) の力がはたらくことが知られています。
したがって、長さ \(l\) の部分にはたらく力の大きさ \(F\) は、
$$ F = fl = \frac{\mu_0 I_1 I_2 l}{2\pi r} $$
と表されます。
この問題では \(I_1 = I\), \(I_2 = I’\) なので、
$$ F = \frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r} $$
となります。
また、2つの電流 \(I\) と \(I’\) は、図から同じ向き(平行)に流れていることがわかります。平行な電流の間には引力がはたらくため、導線A’B’は導線ABの方向に力を受けます。すなわち、力の向きは「図の下から上の向き」となります。

使用した物理公式

  • 平行電流間にはたらく力の公式: \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2 l}{2\pi r}\)
計算過程

公式を適用するだけで、大きさの式は求められます。
$$ F = \frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r} $$
向きは、電流が平行であることから引力と判断し、図の下から上の向きとなります。

この設問の平易な説明

物理学では、よく使う便利な結果を「公式」として覚えることがあります。「2本の平行な電線の間に働く力」もその一つです。
この公式を使えば、(1)でやったような磁場の計算をすっ飛ばして、いきなり力の大きさを計算できます。
また、「同じ向きの電流は引き合い、逆向きの電流は反発しあう」というルールもセットで覚えておくと、フレミングの左手の法則を使わなくても、力の向きがすぐにわかります。今回は同じ向きなので「引力」、つまり下の電線は上に引っ張られます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果が得られました。この公式は、アンペア(電流の単位)の定義にも用いられるほど、電磁気学において基本的な関係式です。この公式を知っていれば、問題をより速く、かつ概念的に解くことが可能になります。

解答 (2) 大きさ: \(\displaystyle\frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r}\), 向き: 図の下から上の向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電流が磁場を作り、磁場が電流に力を及ぼすという相互作用:
    • 核心: この問題の根幹は、電磁気的な力が「(1) 一方の電流が周囲に磁場を作る → (2) その磁場の中にあるもう一方の電流が力を受ける」という2段階のプロセスで伝わることを理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 設問(1)は、まさにプロセス(1)そのものです。電流\(I\)が原因となって、導線A’B’の位置に磁場\(B\)が作られます。
      • 設問(2)は、プロセス(2)にあたります。(1)で作られた磁場\(B\)が、そこにある電流\(I’\)に力\(F\)を及ぼします。
      • このように、力が直接作用するのではなく「場」を介して作用するという考え方は、電磁気学だけでなく、重力など他の物理現象にも共通する非常に重要な概念です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 逆向きの平行電流: 本問とは逆に、2本の電流が逆向きに流れている場合。右ねじの法則とフレミングの左手の法則を適用すると、導線間には斥力(反発しあう力)がはたらくことがわかります。
    • 3本以上の平行電流: 3本の導線が並んでいる場合、例えば真ん中の導線が受ける力は、左の導線から受ける力と右の導線から受ける力をそれぞれ計算し、ベクトルとして合成することで求められます。
    • ローレンツ力との関連: 導線を流れる電流の正体は、荷電粒子(電子など)の運動です。磁場中を運動する荷電粒子1個が受ける力(ローレンツ力 \(f=qvB\))を、導線中の全粒子について合計したものが、導線全体が受ける力 \(F=IBl\) となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 原因と結果を分離する: 「どの電流が磁場を作り(原因)」「どの電流が力を受けるのか(結果)」を明確に区別します。
    2. 2つの法則を使い分ける:
      • 磁場の「向き」を考えるときは「右ねじの法則」を使います。
      • 電流が受ける力の「向き」を考えるときは「フレミングの左手の法則」を使います。この2つを混同しないことが絶対条件です。
    3. 段階的に考える: 焦って一度に力を求めようとせず、(1)まず磁場を求める、(2)次にその磁場から受ける力を求める、というように、問題を小さなステップに分解して考えることが確実な解法につながります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 右ねじの法則とフレミングの左手の法則の混同:
    • 誤解: 磁場の向きを求めたいのにフレミングの左手の法則を使ったり、力の向きを求めたいのに右ねじの法則を使ったりする。
    • 対策: 「ねじは回すと進む → 磁場は回る」「フレミングは力」のように、法則の名前と目的をセットで覚えましょう。「磁場(B)の向きは?」と聞かれたら右ねじ、「力(F)の向きは?」と聞かれたらフレミング、と機械的に判断できるように訓練することが重要です。
  • 磁場(H)と磁束密度(B)の混同:
    • 誤解: 力の公式 \(F=IBl\) に、磁場の強さ \(H\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: \(H\) は「磁場」、\(B\) は「磁束密度」と、名前と記号を正確に区別して覚えることが基本です。力の公式で使うのは、磁力線の「密度」を表す \(B\) の方である、と覚えましょう。\(B\) と \(H\) の間には \(B=\mu H\) という関係があり、透磁率 \(\mu\) を掛ける一手間が必要なことを常に意識します。
  • 電流の取り違え:
    • 誤解: 力の公式 \(F=I’Bl\) に、磁場を作った側の電流 \(I\) を代入してしまう。
    • 対策: \(F=I’Bl\) の \(I’\) は「力を受ける側の電流」、\(B\) は「磁場を作る側の電流 \(I\) から生じた磁束密度」と、それぞれの文字がどちらの導線に対応するのかを明確に意識しましょう。「力を受ける電流」と「磁場を作る電流」を区別することが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) と \(B=\mu_0 H\) の組み合わせ:
    • 選定理由: (1)では「磁束密度 \(B\)」を求めることが目的です。しかし、直線電流から直接 \(B\) を求める高校物理の公式はありません。そこで、まず扱いやすい「磁場の強さ \(H\)」を公式 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) で求め、それを \(B=\mu_0 H\) という普遍的な関係式を使って \(B\) に変換する、という2段階の戦略をとります。
    • 適用根拠: \(H\) は電流の分布のみで決まる量ですが、\(B\) はその空間の材質(透磁率 \(\mu\))にも依存します。この問題では真空(透磁率 \(\mu_0\))なので、この関係式が適用できます。
  • \(F=I’Bl\):
    • 選定理由: (2)では「磁場中の電流が受ける力」を求めることが目的だからです。この状況に完璧に対応するのが \(F=I’Bl\) という公式です。
    • 適用根拠: この公式は、磁場中を動く個々の荷電粒子が受けるローレンツ力を、導線全体について合計したマクロな表現です。電流と磁場が垂直であるという本問の状況では、この最もシンプルな形の公式が適用できます。
  • 平行電流間の力の公式(別解):
    • 選定理由: (2)の状況が、まさに「平行な電流」そのものであるため、この状況に特化した公式を直接適用するのが最も効率的です。
    • 適用根拠: この公式は、本解説の主たる解法(\(H\)を求め、\(B\)に変換し、\(F\)を求める)の計算結果を一般化したものです。したがって、物理的な背景は全く同じであり、ショートカットとして安心して使用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める:
    (2)の計算で、(1)で求めた \(B = \displaystyle\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\) をそのまま \(F=I’Bl\) に代入することで、最終的な力の式 \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I I’ l}{2\pi r}\) が得られます。もし(1)の段階で数値を代入してしまうと、この美しい関係性が見えにくくなり、計算もかえって煩雑になる可能性があります。
  • 向きの決定を先に行う:
    計算を始める前に、右ねじの法則やフレミングの左手の法則を使って、向きだけを先に確定させてしまいましょう。「向きは○○向き」とメモしておけば、後は大きさの計算に集中できます。これにより、思考が整理され、ミスが減ります。
  • 法則の指の役割を覚える歌や語呂合わせ:
    フレミングの左手の法則は「電・磁・力(でん・じ・りょく)」と中指・人差し指・親指の順で覚えるのが有名です。このような覚えやすいフレーズを活用して、法則を体に染み込ませることが、ケアレスミスを防ぐ上で非常に有効です。

基本例題86 ローレンツ力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 角速度を用いる解法
      • 模範解答が「距離÷速さ」で時間を求めるのに対し、別解では等速円運動の「回転角÷角速度」で時間を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 等速円運動を、直進運動的な視点(速さと距離)だけでなく、回転運動的な視点(角速度と回転角)からも捉える経験は、円運動の本質的な理解を深めます。
    • 思考の柔軟性向上: 一つの問題に対して異なる運動の捉え方でアプローチすることで、思考の幅が広がり、より複雑な問題への対応力が向上します。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ローレンツ力を向心力とする等速円運動」です。磁場中に垂直に入射した荷電粒子が、常に運動方向と垂直なローレンツ力を受け続ける結果、等速円運動をすることを理解し、その運動を力学的に分析できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ローレンツ力: 荷電粒子が磁場から受ける力。その大きさは \(F=qvB\)、向きはフレミングの左手の法則で決まることを理解していること。
  2. 等速円運動の運動方程式: 円運動を続けるためには向心力が必要であり、その運動方程式が \(m\displaystyle\frac{v^2}{r} = (\text{向心力})\) で表されることを理解していること。
  3. 軌道の幾何学的考察: 問題文の条件(入射位置、射出位置、それぞれの速度の向き)から、粒子がどのような軌道を描くかを幾何学的に特定できること。
  4. フレミングの左手の法則: 電流(正電荷の運動方向)、磁場、力の向きの関係を正しく適用できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず陽子の運動の軌跡を特定します。入射と射出の条件から、軌道が円の一部(円弧)であることを見抜き、その半径と中心を決定します。次に、円運動の向心力がローレンツ力であることから運動方程式を立て、磁束密度 \(B\) を求めます。磁場の向きは、力の向き(向心力の向き)と電流の向き(陽子の運動方向)から、フレミングの左手の法則を用いて決定します。
  2. (2)では、(1)で特定した円弧の長さを計算し、陽子の速さ \(v\) で割ることで、磁場内を通過する時間を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
この設問の最大の鍵は、問題文の記述から陽子の軌道を特定することです。「adに垂直に入射し、abに垂直に飛び出した」という条件は、速度ベクトルが \(90^\circ\) 回転したことを意味します。常に速度と垂直な力が働き続ける運動は等速円運動であり、この軌道は円の一部(円弧)となります。
この円弧の中心と半径を特定できれば、向心力がローレンツ力であるとして運動方程式を立てることができます。
この設問における重要なポイント

  • 陽子はローレンツ力を向心力として、等速円運動を行う。
  • 入射方向(右向き)と射出方向(上向き)が垂直であることから、軌道は中心角 \(90^\circ\) の円弧(四分円)を描く。
  • 図の幾何学的関係から、円運動の中心は点a、半径は \(r\) であることがわかる。
  • 向心力(ローレンツ力)は、常に円運動の中心である点aを向く。

具体的な解説と立式
陽子は、辺ad上の点(aから距離\(r\))からadに垂直、すなわち図の右向きに速さ \(v\) で入射し、辺ab上の点からabに垂直、すなわち図の上向きに飛び出します。速度の向きが \(90^\circ\) 変化していることから、陽子は等速円運動の軌道の一部を描いたことがわかります。
軌道の接線(速度の向き)が、入射点では右向き、射出点では上向きになるような円弧を考えると、その中心は点a、半径は入射点と中心aとの距離である \(r\) となります。

陽子は正の電荷 \(e\) を持つので、電流の向きは陽子の運動方向と同じとみなせます。
円運動のどの瞬間においても、向心力であるローレンツ力は常に中心aの方向を向いています。例えば、入射直後(陽子が右向きに運動している瞬間)のローレンツ力は上向き(点aの方向)にはたらきます。
ここでフレミングの左手の法則を適用します。

  • 中指(電流の向き): 右向き
  • 親指(力の向き): 上向き

とすると、人差し指(磁場の向き)は紙面の表から裏を向きます。

次に、磁束密度の大きさを \(B\) とします。等速円運動の運動方程式において、向心力がローレンツ力 \(evB\) なので、
$$ m\frac{v^2}{r} = evB \quad \cdots ① $$
が成り立ちます。

使用した物理公式

  • 等速円運動の運動方程式: \(m\displaystyle\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心力}}\)
  • ローレンツ力: \(F = qvB\)
  • フレミングの左手の法則
計算過程

式①を \(B\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
evB &= m\frac{v^2}{r} \\[2.0ex]
B &= \frac{mv^2}{evr} \\[2.0ex]
B &= \frac{mv}{er}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

磁場に飛び込んだ陽子は、進む向きに対して常に横向きの力(ローレンツ力)を受けます。まっすぐ進もうとしても常に横に押されるので、結果として陽子はぐるっと回る運動、つまり円運動をします。
問題文から、陽子は右向きに入ってきて、上向きに出ていった、つまり進む向きが \(90^\circ\) 変わったことがわかります。これは、ちょうど円を4分の1周だけ回ったことに相当します。図をよく見ると、その円の中心は点aで、半径は \(r\) であることがわかります。
この円運動をさせるための力(向心力)の正体がローレンツ力なので、「円運動に必要な力 = ローレンツ力」という運動方程式を立てることで、磁場の強さを計算できます。向きは、フレミングの左手の法則で「電流が右、力が上」となるように指を合わせれば、「磁場は奥向き」と決まります。

結論と吟味

磁場の向きは紙面の表から裏の向き、磁束密度の大きさは \(B = \displaystyle\frac{mv}{er}\) と求められました。この式は、粒子の運動量 \(mv\) が大きいほど、また電気量 \(e\) や半径 \(r\) が小さいほど、強い磁場が必要であることを示しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (1) 向き: 紙面の表から裏の向き, 大きさ: \(\displaystyle\frac{mv}{er}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
陽子が磁場内を運動する時間は、陽子が移動した道のり(円弧の長さ)を、その速さ \(v\) で割ることで求められます。(1)で、陽子の軌道が半径 \(r\) の円の4分の1であることがわかっているので、道のりは簡単に計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 陽子は速さ \(v\) の等速運動をしている。
  • 移動する道のりは、半径 \(r\) の円周の4分の1。
  • 時間 = 道のり ÷ 速さ

具体的な解説と立式
(1)より、陽子が磁場内を運動する軌道は、半径 \(r\) の円周の4分の1です。
この円弧の長さ \(L\) は、
$$ L = \frac{1}{4} \times (円周) = \frac{1}{4} \times 2\pi r = \frac{\pi r}{2} $$
となります。
陽子はこの距離 \(L\) を一定の速さ \(v\) で運動するので、かかる時間 \(t\) は、
$$ t = \frac{L}{v} \quad \cdots ② $$
と表せます。

使用した物理公式

  • 等速運動における時間、距離、速さの関係: \(t = \displaystyle\frac{L}{v}\)
  • 円周の長さ: \(L_{\text{円}} = 2\pi r\)
計算過程

式②に \(L = \displaystyle\frac{\pi r}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{\left( \displaystyle\frac{\pi r}{2} \right)}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{\pi r}{2v}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

陽子が磁場の中を走った時間を求める問題です。速さは \(v\) でずっと変わらないので、走った「道のり」がわかれば時間は計算できます。
(1)で、陽子は半径 \(r\) の円を4分の1周したことがわかっています。円1周の道のりは \(2\pi r\) なので、その4分の1は \(\displaystyle\frac{\pi r}{2}\) です。
あとは小学校で習った「時間=道のり÷速さ」の計算をするだけで、答えが求まります。

結論と吟味

陽子が磁場内を運動する時間は \(t = \displaystyle\frac{\pi r}{2v}\) と求められました。速さ \(v\) が大きいほど短時間で通過し、軌道の半径 \(r\) が大きいほど長い時間がかかるという、直感と一致する妥当な結果です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{\pi r}{2v}\)
別解: 角速度を用いる解法

思考の道筋とポイント
等速円運動をしている物体の運動時間を求めるもう一つの方法として、回転した「角度」を、回転の速さである「角速度」で割る、というアプローチがあります。速さ \(v\) と半径 \(r\) から角速度 \(\omega\) を求め、\(90^\circ\) という回転角を使って時間を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 陽子が回転した角度は \(90^\circ\)、すなわち \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) [rad]。
  • 速さ \(v\)、半径 \(r\)、角速度 \(\omega\) の間には \(v=r\omega\) の関係がある。
  • 時間 = 回転した角度 ÷ 角速度

具体的な解説と立式
陽子の等速円運動の角速度を \(\omega\) とします。速さ \(v\) と半径 \(r\) との間には、
$$ v = r\omega $$
という関係があるので、角速度 \(\omega\) は、
$$ \omega = \frac{v}{r} \quad \cdots ③ $$
と表せます。
一方、陽子は磁場内で速度の向きを \(90^\circ\) 変えました。これを弧度法で表すと、回転角 \(\theta\) は、
$$ \theta = 90^\circ = \frac{\pi}{2} \, [\text{rad}] $$
です。
一定の角速度 \(\omega\) で角度 \(\theta\) だけ回転するのにかかる時間 \(t\) は、
$$ t = \frac{\theta}{\omega} \quad \cdots ④ $$
で与えられます。

使用した物理公式

  • 速さと角速度の関係: \(v = r\omega\)
  • 等速円運動の時間、角度、角速度の関係: \(t = \displaystyle\frac{\theta}{\omega}\)
計算過程

式④に、式③で求めた \(\omega = \displaystyle\frac{v}{r}\) と \(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{\left( \displaystyle\frac{\pi}{2} \right)}{\left( \displaystyle\frac{v}{r} \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{\pi}{2} \times \frac{r}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{\pi r}{2v}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

陽子が磁場の中でどれだけ「首を振ったか(向きを変えたか)」という観点から時間を考えてみます。陽子は \(90^\circ\) 向きを変えました。もし、陽子が1秒間に何度のペースで向きを変えるか、という「回転の速さ(角速度)」がわかれば、時間を計算できます。
まず、陽子の移動速度 \(v\) を、この回転の速さ \(\omega\) に変換します。そのあと、「\(90^\circ\)」という角度を、この「回転の速さ \(\omega\)」で割ることで、時間を求めることができます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(t = \displaystyle\frac{\pi r}{2v}\) が得られました。これは、等速円運動を「線上を進む運動」として捉えても、「中心の周りを回る運動」として捉えても、物理的な内容は等価であることを示しています。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{\pi r}{2v}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ローレンツ力と円運動の運動方程式の融合:
    • 核心: この問題の根幹は、磁場から受ける「ローレンツ力」が、円運動を引き起こす「向心力」の役割を果たす、という点にあります。この2つの異なる物理概念を結びつけ、一つの運動方程式として立式できるかが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 荷電粒子が磁場から受ける力はローレンツ力 \(F=qvB\)。
      • 一方、円運動をする物体には、その中心に向かって \(F=m\displaystyle\frac{v^2}{r}\) という大きさの向心力が必要です。
      • 磁場による円運動では、この2つの力が等しい、すなわち「ローレンツ力=向心力」という関係が成り立ちます。この \(m\displaystyle\frac{v^2}{r} = qvB\) という式が、この種の問題を解くための万能の出発点となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 質量分析器: 速度選択器を通過したイオンを磁場に入射させ、その円運動の半径からイオンの質量を特定する装置。本問の運動方程式を \(m\) について解くことで、その原理を理解できます。
    • サイクロトロン: 磁場中で荷電粒子を円形に加速させる装置。円運動の周期 \(T = \displaystyle\frac{2\pi m}{qB}\) が速度や半径によらないことを利用しています。本問(2)の時間を周期の観点から考えると、理解が深まります。
    • 磁場に斜めに入射する運動: 粒子が磁場に斜めに入射した場合、運動は磁場に平行な「等速直線運動」と、磁場に垂直な「等速円運動」に分解され、全体として「らせん運動」になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 軌道を幾何学的に描く: まず、問題文の「入射条件」と「射出条件」から、粒子がどのような軌道を描くかを大まかに作図します。特に、速度ベクトルがどう変化したかに着目します。
    2. 円運動の中心と半径を特定する: 作図した軌道が円の一部であることを見抜き、その円の中心と半径を特定します。これが運動方程式を立てるための重要な情報になります。
    3. 力の向きを特定する: 円運動の中心がわかれば、向心力(=ローレンツ力)の向きが常に中心方向であることがわかります。
    4. 運動方程式を立てる: 最後に、万能の式 \(m\displaystyle\frac{v^2}{r} = qvB\) を立て、問題で求められている物理量(\(B\), \(r\), \(v\) など)について解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 円運動の半径の誤認:
    • 誤解: 問題文に出てくる長さの記号を、深く考えずに円運動の半径 \(r\) として使ってしまう。問題によっては、入射位置から中心までの距離が半径になるとは限りません。
    • 対策: 必ず軌道を図示し、「円運動の中心はどこか」「半径はどの長さに相当するか」を幾何学的に慎重に判断する癖をつけましょう。本問では、入射・射出の条件から、たまたま中心がa、半径が\(r\)と特定できました。
  • フレミングの左手の法則の適用ミス(正負電荷):
    • 誤解: 電子の運動など、負電荷の粒子に対しても、その運動方向をそのまま電流の向きとしてフレミングの左手の法則を適用してしまう。
    • 対策: フレミングの左手の法則における「電流の向き」は、あくまで「正電荷の運動方向」です。負電荷(電子など)が運動する場合は、「電流の向きはその運動方向と逆向き」と読み替えて適用する必要があります。この一手間を忘れないようにしましょう。
  • 向心力と遠心力の混同:
    • 誤解: 運動方程式を立てる際に、向心力と遠心力がつり合っている、といった誤った考え方をしてしまう。
    • 対策: 運動方程式は、運動している物体と同じ立場(慣性系)から見て、「物体に実際に働いている力(合力)が、その物体の運動(加速度)を生み出している」という因果関係を表す式です。円運動の場合、実際に働いている力は中心を向く向心力(本問ではローレンツ力)のみです。遠心力は、回転する物体と一緒に運動する観測者から見た「見かけの力」であり、運動方程式を立てる際には原則として登場しません。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 運動方程式 \(m\displaystyle\frac{v^2}{r} = qvB\):
    • 選定理由: この問題は、荷電粒子が磁場から力を受けて運動するという「力学」の問題です。力学の問題を解く基本は、運動方程式を立てることです。
    • 適用根拠: 運動方程式 \(ma = F\) は、物理学の根幹をなす法則です。円運動の場合、加速度 \(a\) は \(\displaystyle\frac{v^2}{r}\) であり、粒子に働く力 \(F\) はローレンツ力 \(qvB\) です。これらを \(ma=F\) に代入することで、この状況を記述する最も根源的な式が完成します。他の全ての量(半径、周期、磁束密度など)は、この式から導出される派生的な結果にすぎません。
  • 時間の計算 \(t = \displaystyle\frac{L}{v}\):
    • 選定理由: (2)では「時間」を求めることが目的です。粒子は「等速」円運動をしているため、速さは一定です。速さが一定の運動では、「時間=距離÷速さ」という最も基本的な関係式が使えます。
    • 適用根拠: 軌道が半径 \(r\) の四分円であることは(1)でわかっているので、その距離 \(L\) は \(\displaystyle\frac{2\pi r}{4}\) と確実に計算できます。既知の量(\(r, v\))だけで時間を表現できるため、このアプローチが最も直接的で合理的です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字の消去を丁寧に行う:
    運動方程式 \(m\displaystyle\frac{v^2}{r} = evB\) を \(B\) について解く際、両辺に \(v\) があるので、一つずつ消去できます。\(B = \displaystyle\frac{mv^2}{evr}\) とした後、分子と分母の \(v\) を約分して \(B = \displaystyle\frac{mv}{er}\) となります。このような基本的な計算を焦らず確実に行うことが重要です。
  • 角度の単位(rad)を意識する:
    別解のように角速度 \(\omega\) を使う場合、角度は必ず弧度法(ラジアン)で計算する必要があります。\(90^\circ\) をそのまま使わず、\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) [rad] に変換する一手間を忘れないようにしましょう。物理学の回転に関する公式は、基本的にラジアンを単位として作られています。
  • 周期の公式を覚えておく:
    ローレンツ力を受ける粒子の円運動の周期は \(T = \displaystyle\frac{2\pi m}{qB}\) となります。これは、運動方程式から導出できます。この公式を覚えておけば、(2)のような問題は「周期の4分の1」として \(t = \displaystyle\frac{T}{4} = \frac{1}{4} \times \frac{2\pi m}{eB}\) と計算することも可能です。さらに(1)で求めた \(B\) を代入すれば、同じ答えにたどり着きます。複数の解法を知っておくと、検算にも役立ちます。
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基本問題

430 直線電流がつくる磁場

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「直線電流がつくる磁場の向きの決定」です。電流がその周囲の空間に磁場を作り出すという基本的な現象を理解し、その磁場の向きを「右ねじの法則」を用いて正しく特定できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直線電流がつくる磁場: 直線状の導線を流れる電流は、その導線を中心とした同心円状の磁場を形成すること。
  2. 右ねじの法則: 電流の向きと、それがつくる磁場の回転方向の関係を決定するための法則。
  3. 磁針の性質: 磁針のN極は、その場所における磁場の向きを指して静止しようとすること。
  4. 空間認識能力: 「真上」「北側」「鉛直」といった言葉から、電流と磁針の三次元的な位置関係を正確にイメージする能力。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)、(2)の各状況について、電流が流れる向きと、観測点である磁針の位置関係を正確に把握します。
  2. 右ねじの法則を適用して、磁針の位置に電流が作る磁場の向きを決定します。
  3. 磁針のN極は、その磁場の向きに動くと結論づけます。(この問題では、地磁気の影響は無視して、電流による磁場の効果だけを考えます。)

問(1)

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