問題の確認
wave#12各設問の思考プロセス
この問題は、波がある媒質から別の媒質へ進む「屈折」の現象について、その基本法則を総合的に適用する問題です。速さ、波長、振動数、屈折率といった物理量たちの関係を正しく理解し、連鎖的に計算していくことが求められます。
この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。
- 波の基本式:
どの媒質においても、速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には \(v = f\lambda\) という関係が成り立ちます。 - 屈折の法則(スネルの法則):
波が屈折する際、振動数\(f\)は不変です。そして、入射角\(i\)、屈折角\(r\)と、各媒質での速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、屈折率\(n\)の間には以下の関係が成り立ちます。
$$\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2} = n_{12}$$
ここで、\(n_{12}\)は媒質1に対する媒質2の屈折率です。 - 屈折率の合成:
媒質1、2、3の間の屈折率には、\(n_{13} = n_{12} \times n_{23}\) という関係があります。
入射角や屈折角は、波の進行方向と境界面の法線(境界面に垂直な線)とのなす角です。図に示されている「波面と境界面とのなす角」は、幾何学的に入射角・屈折角と等しくなります。したがって、この問題では入射角 \(i=45^\circ\)、屈折角 \(r=30^\circ\) として計算できます。
この問題を解くための手順は、設問の番号通りに基本公式を適用していくのが最も素直なアプローチです。
- (1) \(v_1\)の計算: 媒質1の\(f_1, \lambda_1\)から\(v_1 = f_1\lambda_1\)で求めます。
- (2) \(n_{12}\)の計算: 入射角\(i\)と屈折角\(r\)をスネルの法則 \(n_{12} = \sin i / \sin r\) に当てはめます。
- (3) \(\lambda_2\)の計算: (2)で求めた\(n_{12}\)を使い、\(n_{12} = \lambda_1 / \lambda_2\) の関係から求めます。
- (4) \(f_2\)の計算: 「振動数は不変」という大原則を適用します。
- (5) \(n_{23}\)の計算: 屈折率の合成則 \(n_{23} = n_{13} / n_{12}\) を使って求めます。
各設問の具体的な解説と解答
(1) 媒質1の中での波の速さは何cm/sか。
問われている内容の明確化
媒質1における波の速さ \(v_1\) を求めます。単位は cm/s です。
具体的な解説と立式
波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(v = f\lambda\) という基本的な関係があります。これを媒質1に適用すると、
$$v_1 = f_1 \lambda_1 \quad \cdots ①$$
となります。問題文で与えられた振動数 \(f_1\) と波長 \(\lambda_1\) をこの式に代入します。
$$v = f\lambda$$
計算過程
式①に、与えられた値を代入します。
- 振動数 \(f_1 = 50 \, \text{Hz}\)
- 波長 \(\lambda_1 = 1.4 \, \text{cm}\)
$$v_1 = 50 \, \text{Hz} \times 1.4 \, \text{cm} = 70 \, \text{cm/s}$$
したがって、媒質1での波の速さは \(70 \, \text{cm/s}\) となります。
この設問における重要なポイント
- 波の速さ・振動数・波長の基本関係式を正しく使えること。
\(70 \, \text{cm/s}\)
(2) 媒質1に対する媒質2の屈折率はいくらか。
問われている内容の明確化
媒質1に対する媒質2の相対屈折率 \(n_{12}\) を求めます。
具体的な解説と立式
屈折の法則(スネルの法則)によれば、屈折率 \(n_{12}\) は入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) の正弦(sin)の比で与えられます。
$$n_{12} = \frac{\sin i}{\sin r} \quad \cdots ②$$
図から、入射角 \(i = 45^\circ\)、屈折角 \(r = 30^\circ\) であることがわかります。これらの値を式に代入して計算します。
$$n_{12} = \frac{\sin i}{\sin r}$$
計算過程
式②に、\(i = 45^\circ\)、\(r = 30^\circ\) を代入します。
$$n_{12} = \frac{\sin 45^\circ}{\sin 30^\circ}$$
三角関数の値を代入します: \(\sin 45^\circ = \frac{1}{\sqrt{2}}\)、\(\sin 30^\circ = \frac{1}{2}\)。
$$n_{12} = \frac{\frac{1}{\sqrt{2}}}{\frac{1}{2}} = \frac{1}{\sqrt{2}} \times 2 = \frac{2}{\sqrt{2}} = \sqrt{2}$$
問題の指示より \(\sqrt{2} = 1.4\) を用いて、
$$n_{12} = 1.4$$
となります。
この設問における重要なポイント
- 図から入射角と屈折角を正しく読み取ること。
- スネルの法則の式を正しく適用すること。
\(1.4\)
(3) 媒質2の中での波の波長は何cmか。
問われている内容の明確化
媒質2における波の波長 \(\lambda_2\) を求めます。
具体的な解説と立式
屈折率 \(n_{12}\) は、媒質1での波長 \(\lambda_1\) と媒質2での波長 \(\lambda_2\) の比でも表されます。
$$n_{12} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}$$
求めたいのは \(\lambda_2\) なので、この式を変形します。
$$\lambda_2 = \frac{\lambda_1}{n_{12}} \quad \cdots ③$$
この式に、与えられた \(\lambda_1\) と(2)で求めた \(n_{12}\) を代入します。
$$n_{12} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}$$
計算過程
式③に、各値を代入します。
- 媒質1での波長 \(\lambda_1 = 1.4 \, \text{cm}\)
- 屈折率 \(n_{12} = 1.4\) ((2)の答え)
$$\lambda_2 = \frac{1.4 \, \text{cm}}{1.4} = 1.0 \, \text{cm}$$
したがって、媒質2での波長は \(1.0 \, \text{cm}\) となります。
この設問における重要なポイント
- 屈折率が波長の比で表されることを理解していること。
- 前の設問で求めた屈折率の値を正しく使うこと。
\(1.0 \, \text{cm}\)
(4) 媒質2の中での波の振動数は何Hzか。
問われている内容の明確化
媒質2における波の振動数 \(f_2\) を求めます。
具体的な解説と立式
波が屈折して異なる媒質に進んでも、その振動数は変化しません。これは、振動数が波を発生させる波源によってのみ決まるからです。
したがって、媒質2での振動数 \(f_2\) は、媒質1での振動数 \(f_1\) と等しくなります。
$$f_2 = f_1 \quad \cdots ④$$
波が屈折しても振動数は変化しない。
計算過程
式④より、媒質1での振動数が \(f_1 = 50 \, \text{Hz}\) であるため、
$$f_2 = 50 \, \text{Hz}$$
となります。
この設問における重要なポイント
- 屈折の際、振動数は一定に保たれるという大原則を理解していること。これは知識を問う問題です。
\(50 \, \text{Hz}\)
(5) 媒質2に対する媒質3の屈折率はいくらか。
問われている内容の明確化
媒質2に対する媒質3の相対屈折率 \(n_{23}\) を求めます。
具体的な解説と立式
媒質1、2、3の間の相対屈折率には、以下の関係が成り立ちます。
$$n_{13} = n_{12} \times n_{23}$$
これは、媒質1から3へ進むときの全体の屈折の効果は、1から2への効果と2から3への効果の掛け算で表される、と解釈できます。
この式を、求めたい \(n_{23}\) について解くと、
$$n_{23} = \frac{n_{13}}{n_{12}} \quad \cdots ⑤$$
となります。この式に、問題文で与えられた \(n_{13}\) と、(2)で求めた \(n_{12}\) を代入します。
$$n_{13} = n_{12} n_{23} \quad \text{または} \quad n_{23} = \frac{n_{13}}{n_{12}}$$
計算過程
式⑤に、各値を代入します。
- 媒質1に対する媒質3の屈折率: \(n_{13} = 0.70\)
- 媒質1に対する媒質2の屈折率: \(n_{12} = 1.4\) ((2)の答え)
$$n_{23} = \frac{0.70}{1.4} = \frac{0.7}{1.4} = \frac{7}{14} = \frac{1}{2} = 0.50$$
したがって、媒質2に対する媒質3の屈折率は \(0.50\) となります。
この設問における重要なポイント
- 複数の媒質をまたぐ際の、相対屈折率の関係式を正しく理解し、適用できること。
\(0.50\)
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 波の基本式 \(v=f\lambda\): あらゆる波の現象を考える上での基礎となる式です。
- スネルの法則: 屈折現象を定量的に記述する中心的な法則です。\(n_{12} = \sin i / \sin r = v_1/v_2 = \lambda_1/\lambda_2\) という複数の等式関係をまとめて覚えておくことが重要です。
- 振動数の不変性: 屈折や反射が起きても、波の振動数は波源に依存するため変化しません。これは非常に重要な原則です。
- 相対屈折率: 2つの媒質間の屈折率の関係性を表すもので、\(n_{ab} = 1/n_{ba}\) や \(n_{ac} = n_{ab} \times n_{bc}\) のような関係式を使いこなせることが求められます。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 角度の定義: 図から入射角・屈折角を読み取る際、それが「法線とのなす角」なのか「境界面とのなす角」なのかを常に確認する癖をつけましょう。
- 情報の整理: 問題で与えられている多くの数値を、どの媒質のどの物理量(例: \(\lambda_1\), \(n_{13}\))なのかを明確に整理してから解き始めると、混乱が少なくなります。
- 単位の確認: この問題では cm/s と cm が使われていますが、問題によっては m と cm が混在することもあります。単位を揃える必要があるかどうかも注意点です。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 振動数が変化すると考える: 屈折の際に最も多い誤解です。振動数は不変です。
- 屈折率の比の逆転: スネルの法則や屈折率の定義式で、分子と分母を逆にしてしまうミスです。屈折率が大きいほど波は遅くなる(波長は短くなる)という物理的なイメージを持つことで、間違いを減らせます。
- 三角関数の値の間違い: \(\sin 45^\circ\) や \(\sin 30^\circ\) などの基本的な三角関数の値を正確に覚えておく必要があります。
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