問題の確認
electromagnetic#12各設問の思考プロセス
この問題は、一様な電場に関する3つの基本的な物理量、「電場の強さ(E)」、「力(F)」、「仕事(W)」を、それぞれの定義式に基づいて順に計算していく、非常にオーソドックスな問題です。複雑な思考は必要なく、どの公式をどの順番で使うかを正確に判断することが鍵となります。
この問題を解く上で中心となる物理法則は、以下の3つの公式です。
- 電場と電位差の関係: \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)
- 電場中の電荷が受ける力: \(F = qE\)
- 静電気力がする仕事: \(W = qV\) または \(W = Fd\)
この問題を解くための手順は、設問の番号通りに進めるのが最も自然です。
- (1) 電場の強さを求める:
まず、与えられた電位差 \(V\) と距離 \(d\) を \(E = V/d\) の式に代入し、電場の強さ \(E\) を計算します。 - (2) 電荷が受ける力を求める:
次に、(1)で求めた電場の強さ \(E\) と、与えられた電荷 \(q\) を \(F = qE\) の式に代入し、力の大きさ \(F\) を計算します。 - (3) 静電気力がする仕事を求める:
最後に、与えられた電荷 \(q\) と電位差 \(V\) を \(W = qV\) の式に代入して、仕事 \(W\) を計算します。このとき、(1)と(2)で求めた \(E\) と \(F\) を使って \(W = Fd\) で検算することも可能です。
このように、一つ前の設問の答えを次の設問で使う「連鎖」構造になっているため、各ステップでの計算を正確に行うことが重要です。
各設問の具体的な解説と解答
(1) 電場の強さは何 V/m か。
問われている内容の明確化
平行金属板間の電場の強さ \(E\) を求めます。単位は V/m です。
具体的な解説と立式
平行金属板間に生じる電場は一様であるとみなせます。一様な電場 \(E\) と、電場の方向への距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差 \(V\) の間には、次の関係が成り立ちます。
$$V = Ed$$
この式を電場の強さ \(E\) について解くと、以下の方程式が得られます。
$$E = \frac{V}{d} \quad \cdots ①$$
この式を用いて電場の強さを計算します。
$$E = \frac{V}{d}$$
計算過程
式①に、問題で与えられた値を代入します。
- 電位差 \(V = 5.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
- 距離 \(d = 1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\)
$$E = \frac{5.0 \times 10^2 \, \text{V}}{1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}}$$
数値部分と指数部分(10のべき乗)を分けて計算します。
$$E = \frac{5.0}{1.0} \times \frac{10^2}{10^{-2}} = 5.0 \times 10^{2 – (-2)} = 5.0 \times 10^4 \, \text{V/m}$$
計算方法の平易な説明
- 電場の強さは、電圧(電位差)を金属板の間の距離で割ることで求められます。
- \(5.0 \times 10^2\) V を \(1.0 \times 10^{-2}\) m で割ります。
- 指数の計算は、\(10^2 \div 10^{-2} = 10^{2 – (-2)} = 10^4\) となります。
- したがって、答えは \(5.0 \times 10^4\) V/m となります。
この設問における重要なポイント
- 一様な電場における電場の強さ \(E\)、電位差 \(V\)、距離 \(d\) の関係式 \(E=V/d\) を正しく使うこと。
- 科学記数法(指数)の割り算を正確に行うこと。
\(5.0 \times 10^4 \, \text{V/m}\)
(2) この電場内の \(2.0 \times 10^{-8}\) C の正電荷は、電場から何 N の力を受けるか。
問われている内容の明確化
(1)で求めた電場の中に、\(q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) の正電荷を置いたとき、この電荷が受ける静電気力の大きさ \(F\) を求めます。単位は N(ニュートン)です。
具体的な解説と立式
電場の強さ \(E\) がわかっているとき、その電場内に置かれた電荷 \(q\) が受ける力の大きさ \(F\) は、以下の式で与えられます。
$$F = qE \quad \cdots ②$$
この式に、与えられた電荷 \(q\) と(1)で求めた電場の強さ \(E\) を代入して力を計算します。
$$F = qE$$
計算過程
式②に、各値を代入します。
- 電荷 \(q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)
- 電場の強さ \(E = 5.0 \times 10^4 \, \text{V/m}\) ((1)の答え)
$$F = (2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}) \times (5.0 \times 10^4 \, \text{V/m})$$
数値部分と指数部分を分けて計算します。
$$F = (2.0 \times 5.0) \times (10^{-8} \times 10^4) = 10.0 \times 10^{-8+4} = 10.0 \times 10^{-4}$$
有効数字を考慮して科学記数法の形に直します。\(10.0\) は \(1.0 \times 10^1\) と考えます。
$$F = (1.0 \times 10^1) \times 10^{-4} = 1.0 \times 10^{-3} \, \text{N}$$
計算方法の平易な説明
- 電場から受ける力は、「電気量 × 電場の強さ」で計算できます。
- \(2.0 \times 10^{-8}\) C に、(1)で求めた \(5.0 \times 10^4\) V/m を掛け合わせます。
- 指数の計算は、\(10^{-8} \times 10^4 = 10^{-8+4} = 10^{-4}\) となります。
- 数値部分の \(2.0 \times 5.0 = 10.0\) と合わせると \(10.0 \times 10^{-4}\) となり、これを整理すると \(1.0 \times 10^{-3}\) N となります。
この設問における重要なポイント
- 電場と力の関係式 \(F=qE\) を正しく使うこと。
- (1)で求めた値を正しく代入すること。
- 有効数字と科学記数法の扱いに注意して計算すること。
\(1.0 \times 10^{-3} \, \text{N}\)
(3) この正電荷を平行金属板間を運ぶとき、静電気力がする仕事は何 J か。
問われている内容の明確化
\(q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\) の正電荷を、片方の金属板からもう一方の金属板まで運ぶときに、静電気力(電場からの力)がする仕事 \(W\) を求めます。単位は J(ジュール)です。
具体的な解説と立式
電荷 \(q\) が電位差 \(V\) のある2点間を移動するとき、静電気力がする仕事 \(W\) は、電荷と電位差の積で与えられます。
$$W = qV \quad \cdots ③$$
この公式を使うのが最も直接的で簡単な方法です。
$$W = qV$$
(別解として \(W = Fd\) も利用可能)
計算過程
式③に、与えられた値を代入します。
- 電荷 \(q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)
- 電位差 \(V = 5.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
$$W = (2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}) \times (5.0 \times 10^2 \, \text{V})$$
数値部分と指数部分を分けて計算します。
$$W = (2.0 \times 5.0) \times (10^{-8} \times 10^2) = 10.0 \times 10^{-8+2} = 10.0 \times 10^{-6}$$
有効数字を考慮して科学記数法の形に直します。
$$W = 1.0 \times 10^1 \times 10^{-6} = 1.0 \times 10^{-5} \, \text{J}$$
計算方法の平易な説明
- 静電気力がする仕事は、「電気量 × 電圧(電位差)」で計算できます。
- \(2.0 \times 10^{-8}\) C に、\(5.0 \times 10^2\) V を掛け合わせます。
- 指数の計算は、\(10^{-8} \times 10^2 = 10^{-8+2} = 10^{-6}\) となります。
- 数値部分 \(2.0 \times 5.0 = 10.0\) と合わせると \(10.0 \times 10^{-6}\) となり、これを整理すると \(1.0 \times 10^{-5}\) J となります。
この設問における重要なポイント
- 仕事、電荷、電位差の関係式 \(W=qV\) を正しく使うこと。
- (1), (2)の結果を使わなくても、問題の初期条件だけで解けることに気づくと計算が速い。
- 仕事の単位がジュール(J)であることを理解していること。
- 前の設問で計算した値を使って \(W=Fd\) で検算すると、計算の確かさを確認できる。(\(W = (1.0 \times 10^{-3} \text{N}) \times (1.0 \times 10^{-2} \text{m}) = 1.0 \times 10^{-5} \text{J}\))
\(1.0 \times 10^{-5} \, \text{J}\)
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 一様な電場: 平行金属板間のように、場所によらず強さと向きが一定の電場。この電場では、物理量の計算が簡単な数式で表せる。
- 電場の3つの基本関係式:
- \(E = V/d\) (定義・関係): 電場の強さは、単位距離あたりの電位の変化を表す。
- \(F = qE\) (力の作用): 電場は、そこにある電荷に力を及ぼす。
- \(W = qV\) (仕事・エネルギー): 電場は、電荷を動かすときに仕事をし、エネルギーを変化させる。
これら3つの式は、一様な電場に関する問題を解くための基本ツールセットです。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 単位の換算: 問題によっては、距離が cm で与えられることがあります。計算する前に m に直すなど、単位をSI単位系に統一することが重要です。
- 設問の関連性: (1)の結果を(2)で使い、(2)の結果を(3)で使う(別解として)、というように連動している問題は多いです。前の設問で計算ミスをすると、後の設問も間違えてしまう可能性があるので、一つ一つの計算を丁寧に行いましょう。
- 別解による検算: この問題の(3)のように、複数の方法で解ける場合があります。時間があれば別解で計算してみて、同じ答えになるか確かめる(検算する)ことで、計算の正確性を高めることができます。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 指数の計算ミス: 科学記数法(\(10^n\))の掛け算や割り算で、指数の足し算や引き算を間違えるケースが非常に多いです。\(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\)、\(10^a \div 10^b = 10^{a-b}\) のルールを正確に使いましょう。
- 公式の混同: \(E, F, W, V, q, d\) と多くの記号が出てくるため、どの公式にどの記号を使うのかを混同してしまうことがあります。それぞれの記号が何を表す物理量なのか、単位は何なのかを意識することで、間違いを防げます。
- 有効数字の扱い: 問題文で与えられた数値が有効数字2桁(例: 5.0, 1.0, 2.0)なので、解答も有効数字2桁で答えるのが適切です。例えば、\(10 \times 10^{-4}\) を \(1 \times 10^{-3}\) とせず、\(1.0 \times 10^{-3}\) と答えるように注意しましょう。
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