「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 11】Step1 & 例題

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Step1

① ケプラーの第1法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ケプラーの第1法則」です。惑星の運動に関するケプラーの法則のうち、その軌道の形状について述べた第1法則の知識を問う、基本的な知識問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ケプラーの法則: ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが発見した、惑星の運動に関する3つの経験則。
  2. ケプラーの第1法則(楕円軌道の法則): 惑星の公転軌道に関する法則。
  3. 楕円の性質: 楕円には「焦点」と呼ばれる2つの特徴的な点があること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文が惑星の運動について述べていることから、ケプラーの法則を思い出す。
  2. ケプラーの第1法則の内容を正確に記述する。

思考の道筋とポイント
この問題は、ケプラーの第1法則の内容を正しく覚えているかどうかが全てです。計算は必要なく、法則のキーワードを正確に当てはめることが求められます。惑星の軌道が「円」ではなく「楕円」であること、そして太陽がその楕円の「中心」ではなく「焦点」の一つに位置することが、この法則の核心です。

この設問における重要なポイント

  • ケプラーの第1法則の内容: 「惑星は、太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を運動する。」
  • キーワード①: 焦点
  • キーワード②: 楕円

具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。
ケプラーの第1法則は、惑星の軌道について述べたものです。その内容は以下の通りです。

「それぞれの惑星は、太陽を1つの ①焦点 とする ②楕円 軌道上を運動する。」

  • ① 焦点(しょうてん): 楕円は、2つの定点(焦点)からの距離の和が一定である点の集まりとして定義されます。惑星の軌道では、太陽がこの2つの焦点のうちの1つに位置します。もう一方の焦点には何もありません。
  • ② 楕円(だえん): 惑星の軌道は、完全な円ではなく、少しつぶれた形である楕円を描きます。

したがって、空欄①には「焦点」、②には「楕円」が入ります。

使用した物理公式

  • ケプラーの第1法則
計算過程

この問題には計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

昔の人は、惑星は太陽を中心としたきれいな「円」を描いて回っていると考えていました。しかし、ケプラーは観測データを詳しく調べることで、実際には少しつぶれた「楕円」の軌道を描いていることを発見しました。
さらに、太陽はその楕円のど真ん中(中心)にいるのではなく、中心から少しずれた「焦点」という特別な位置にいることを見抜きました。これがケプラーの第1法則です。

解答 ① 焦点 ② 楕円

② ケプラーの第2法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ケプラーの第2法則」です。惑星の公転速度に関する法則であり、「面積速度一定の法則」とも呼ばれるケプラーの第2法則の知識を問う問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ケプラーの法則: 惑星の運動に関する3つの経験則。
  2. ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則): 惑星の公転速度に関する法則。
  3. 面積速度: 惑星と中心天体(太陽)を結ぶ線分が、単位時間あたりに掃く(描く)面積のこと。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文が「太陽と惑星とを結ぶ線分が単位時間に描く面積」について述べていることから、ケプラーの第2法則を思い出す。
  2. ケプラーの第2法則の内容を正確に記述する。

思考の道筋とポイント
この問題は、ケプラーの第2法則の定義とその内容を正しく覚えているかが問われます。計算は不要で、法則のキーワードを正確に当てはめることが求められます。この法則は、惑星が太陽に近いときには速く動き、遠いときにはゆっくり動くことを意味しています。

この設問における重要なポイント

  • ケプラーの第2法則の内容: 「惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積(面積速度)は、常に一定である。」
  • キーワード①: 面積速度
  • キーワード②: 一定

具体的な解説と立式
この問題は知識を問うものであり、計算式はありません。
ケプラーの第2法則は、惑星の公転速度について述べたものです。その内容は以下の通りです。

「太陽と惑星とを結ぶ線分が単位時間に描く面積を ①面積速度 といい、それぞれの惑星について ②一定 である。」

  • ① 面積速度: 太陽と惑星を結ぶ動径ベクトルが、微小時間 \(\Delta t\) の間に掃く面積を \(\Delta S\) とするとき、\(\frac{\Delta S}{\Delta t}\) で定義される量です。簡単に言えば、「惑星が動くときに、太陽との間の線がほうきで掃くようにして作る扇形の面積の、1秒あたりの広さ」のことです。
  • ② 一定: この面積速度は、惑星が軌道上のどこにあっても変わらない、というのがこの法則の主張です。この結果、惑星は太陽に近い「近日点」では速く動き、太陽から遠い「遠日点」ではゆっくり動くことになります。これは角運動量保存則から導かれます。

したがって、空欄①には「面積速度」、②には「一定」が入ります。

使用した物理公式

  • ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)
計算過程

この問題には計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ケプラーの第2法則は、よく「ピザの法則」に例えられます。
太陽を中心にしたピザ生地の上を、惑星という具材が動くとします。このとき、惑星が1ヶ月で移動した軌跡と太陽を結んでできるピザのスライスを考えます。
この法則が言っているのは、「どの1ヶ月間で切り取っても、そのピザのスライスの面積はいつも同じになる」ということです。
惑星が太陽に近いときは、細長いスライスになりますが、その分、弧の長さ(惑星の移動距離)は長くなります(=速く動く)。逆に太陽から遠いときは、幅の広いスライスになりますが、弧の長さは短くなります(=ゆっくり動く)。面積が一定に保たれるように、惑星は速さを調節しているのです。

解答 ① 面積速度 ② 一定

③ ケプラーの第2法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「面積速度の計算」です。ケプラーの第2法則で登場する面積速度を、具体的な数値を用いて計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 面積速度の定義: 惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間に掃く面積。
  2. 面積速度の計算式: 面積速度を \(S\)、半径を \(r\)、速さを \(v\) とすると、\(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\) と表される。
  3. 指数計算: \(10^n \times 10^m = 10^{n+m}\) のような指数法則を正しく使えること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、惑星の速さ \(v\) と軌道半径 \(r\) を特定する。
  2. 面積速度の公式 \(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\) に、これらの値を代入する。
  3. 指数を含んだ計算を正確に行い、有効数字を考慮して答えを求める。

思考の道筋とポイント
面積速度は、ケプラーの第2法則「面積速度一定の法則」で中心的な役割を果たす物理量です。その大きさは、微小時間 \(\Delta t\) に惑星が進む距離 \(v\Delta t\) と半径 \(r\) で作られる微小な三角形の面積 \(\Delta A \approx \frac{1}{2}r(v\Delta t)\) を、時間 \(\Delta t\) で割ることで求められます。その結果、\(S = \frac{\Delta A}{\Delta t} = \frac{1}{2}rv\) というシンプルな公式が得られます。この問題では、この公式に数値を代入するだけです。

この設問における重要なポイント

  • 面積速度の公式: \(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\)
  • 問題文の値の特定:
    • 速さ: \(v = 3.0 \times 10^4 \, \text{m/s}\)
    • 半径: \(r = 1.4 \times 10^{11} \, \text{m}\)

具体的な解説と立式
求める面積速度を \(S\) [\(\text{m}^2\text{/s}\)] とします。
面積速度は、半径 \(r\) と速さ \(v\) を用いて次の公式で与えられます。
$$ S = \frac{1}{2}rv $$
この式に、与えられた値を代入します。

使用した物理公式

  • 面積速度: \(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
S &= \frac{1}{2} \times (1.4 \times 10^{11}) \times (3.0 \times 10^4) \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \times (1.4 \times 3.0) \times (10^{11} \times 10^4) \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \times 4.2 \times 10^{11+4} \\[2.0ex]&= 2.1 \times 10^{15} \, \text{[m}^2\text{/s]}
\end{aligned}
$$
与えられた数値の有効数字は2桁なので、計算結果も有効数字2桁で表現されています。

計算方法の平易な説明

面積速度は、惑星と太陽を結ぶ線が1秒間に「ほうきで掃く」面積のことです。

  1. この面積は、底辺が「1秒間に進む距離(=速さ \(v\))」、高さが「半径 \(r\)」の三角形の面積とほぼ同じと考えることができます。
  2. 三角形の面積は「底辺 × 高さ ÷ 2」なので、面積速度の公式は \(S = \frac{1}{2}rv\) となります。
  3. この公式に、問題文の半径 \(r=1.4 \times 10^{11}\) と速さ \(v=3.0 \times 10^4\) を当てはめて計算するだけです。
解答 \(2.1 \times 10^{15} \, \text{m}^2\text{/s}\)

④ ケプラーの第3法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ケプラーの第3法則」です。惑星の公転周期と軌道半径の関係を示す法則を、数式として正しく理解しているかを問う知識問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ケプラーの法則: 惑星の運動に関する3つの経験則。
  2. ケプラーの第3法則(調和の法則): 惑星の公転周期の2乗と、軌道の半長軸(軌道長半径)の3乗の比が、中心天体が同じであれば、どの惑星でも一定であるという法則。
  3. 比例関係の数式化: 「AはBに比例する」という関係を、数式で正しく表現できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ケプラーの第3法則の内容を思い出す。
  2. 法則を数式で表現する。
  3. 惑星Aと惑星Bについてそれぞれ式を立て、それらが等しいことを示す関係式を導き、選択肢と照合する。

思考の道筋とポイント
この問題は、ケプラーの第3法則の公式そのものを問う問題です。法則の核心は「(周期の2乗)を(軌道半径の3乗)で割った値が、同じ太陽を回るどの惑星でも同じになる」という点です。選択肢には様々な指数の組み合わせがありますが、「周期は2乗、半径は3乗」という対応を正確に覚えておくことが重要です。

この設問における重要なポイント

  • ケプラーの第3法則の公式: \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (\(k\)は中心天体の質量のみで決まる定数)
  • 惑星Aについて: \(\displaystyle\frac{T_A^2}{a_A^3} = k\)
  • 惑星Bについて: \(\displaystyle\frac{T_B^2}{a_B^3} = k\)
  • 惑星AとBは同じ中心天体(太陽)の周りを公転しているので、定数 \(k\) の値は共通です。

具体的な解説と立式
ケプラーの第3法則(調和の法則)によると、惑星の公転周期 \(T\) の2乗は、その軌道の半長軸(軌道長半径) \(a\) の3乗に比例します。
これを数式で表すと、ある定数 \(k\) を用いて次のように書くことができます。
$$ \frac{T^2}{a^3} = k $$
この定数 \(k\) は、中心天体(この場合は太陽)の質量によって決まる値であり、同じ太陽の周りを公転するすべての惑星について共通です。
したがって、惑星Aと惑星Bについて、それぞれ以下の式が成り立ちます。
$$ \frac{T_A^2}{a_A^3} = k \quad \cdots ① $$
$$ \frac{T_B^2}{a_B^3} = k \quad \cdots ② $$
①と②から、定数 \(k\) を消去すると、次の関係式が導かれます。
$$ \frac{T_A^2}{a_A^3} = \frac{T_B^2}{a_B^3} $$
この式が、惑星AとBの間に成り立つ関係です。

使用した物理公式

  • ケプラーの第3法則: \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)
計算過程

この問題は公式の適用そのものであり、具体的な数値計算はありません。
上で立式した \(\displaystyle\frac{T_A^2}{a_A^3} = \frac{T_B^2}{a_B^3}\) は、選択肢③と一致します。

計算方法の平易な説明

ケプラーの第3法則は、惑星の「公転にかかる時間(周期)」と「太陽からの平均的な距離(軌道半径)」の関係を示した法則です。
具体的には、「(周期の2乗)÷(軌道半径の3乗)」という計算をすると、太陽系のどの惑星(地球、火星、木星など)で計算しても、答えが全部同じ不思議な値になる、というものです。
この法則を惑星Aと惑星Bに当てはめると、「惑星Aでの計算結果」と「惑星Bでの計算結果」が等しくなるはずです。
これを式にすると \(\displaystyle\frac{T_A^2}{a_A^3} = \frac{T_B^2}{a_B^3}\) となり、選択肢③が正解だとわかります。

解答

⑤ ケプラーの第3法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ケプラーの第3法則の応用」です。地球の公転周期と軌道半径を基準として、軌道半径が地球の5.2倍である木星の公転周期を計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ケプラーの第3法則: \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)
  2. 基準となる天体(地球)のデータの利用: 地球の公転周期が1年であること、軌道半径を基準値として設定すること。
  3. 平方根の計算: 計算過程で平方根を求める必要がある。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 地球と木星について、それぞれケプラーの第3法則の式を立てる。
  2. 2つの式を等しいとおき、比の形で関係式を作る。
  3. 地球の公転周期を1年、軌道半径を \(a\) とし、木星の軌道半径を \(5.2a\) として式に代入する。
  4. 木星の公전周期 \(T\) について解き、与えられた近似値を用いて数値を計算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、ケプラーの第3法則 \(\frac{T^2}{a^3} = k\) が、同じ中心天体(太陽)を公転する天体(地球と木星)で共通であることを利用します。つまり、\(\displaystyle\frac{T_{\text{地球}}^2}{a_{\text{地球}}^3} = \frac{T_{\text{木星}}^2}{a_{\text{木星}}^3}\) という関係式を立てることが核心です。地球の周期と半径を基準(それぞれ1年、1天文単位)とすることで、計算が非常に簡潔になります。

この設問における重要なポイント

  • ケプラーの第3法則: \(\displaystyle\frac{T_1^2}{a_1^3} = \frac{T_2^2}{a_2^3}\)
  • 基準値の設定:
    • 地球の公転周期: \(T_{\text{地球}} = 1\) [年]
    • 地球の軌道半径: \(a_{\text{地球}} = a\)
  • 木星のデータ:
    • 木星の公転周期: \(T_{\text{木星}} = T\) [年] (求めたい値)
    • 木星の軌道半径: \(a_{\text{木星}} = 5.2a\)
  • 計算の工夫: 式を \(T\) について解くと、\(T^2\) の形になるため、最後に平方根をとる必要がある。

具体的な解説と立式
地球の公転周期を \(T_E\)、軌道半径を \(a_E\) とします。
木星の公転周期を \(T_J\)、軌道半径を \(a_J\) とします。

ケプラーの第3法則より、地球と木星の間には以下の関係が成り立ちます。
$$ \frac{T_J^2}{a_J^3} = \frac{T_E^2}{a_E^3} $$
問題文の条件と、基準となる地球の値を代入します。

  • \(T_E = 1\) [年]
  • \(a_E = a\) (基準)
  • \(a_J = 5.2a\)
  • \(T_J = T\) (求めたい周期)

$$ \frac{T^2}{(5.2a)^3} = \frac{1^2}{a^3} $$

使用した物理公式

  • ケプラーの第3法則: \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を \(T\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{T^2}{5.2^3 a^3} &= \frac{1}{a^3} \\[2.0ex]T^2 &= 5.2^3 \\[2.0ex]T &= \sqrt{5.2^3} \\[2.0ex]&= \sqrt{5.2^2 \times 5.2} \\[2.0ex]&= 5.2\sqrt{5.2}
\end{aligned}
$$
ここで、問題で与えられた近似値 \(\sqrt{5.2} \approx 2.28\) を用います。
$$
\begin{aligned}
T &\approx 5.2 \times 2.28 \\[2.0ex]&= 11.856 \, \text{[年]}
\end{aligned}
$$
有効数字は、与えられた5.2倍、2.28の2桁または3桁に合わせて、2桁で答えるのが一般的です。
$$ T \approx 12 \, \text{[年]} $$

計算方法の平易な説明

ケプラーの第3法則 \(\frac{T^2}{a^3} = (\text{一定})\) を使います。

  1. 地球と木星でこの値が等しいので、\(\displaystyle\frac{(\text{地球の周期})^2}{(\text{地球の半径})^3} = \frac{(\text{木星の周期})^2}{(\text{木星の半径})^3}\) という式を立てます。
  2. 地球の周期を「1年」、地球の半径を「1」という基準の単位で考えます。すると、木星の周期は求めたい \(T\) 年、木星の半径は「5.2」となります。
  3. これを式に入れると、\(\displaystyle\frac{1^2}{1^3} = \frac{T^2}{5.2^3}\) となります。
  4. これを \(T\) について解くと、\(T^2 = 5.2^3\) となり、\(T = \sqrt{5.2^3} = 5.2\sqrt{5.2}\) となります。
  5. あとは与えられた \(\sqrt{5.2} \approx 2.28\) を使って計算すると、\(5.2 \times 2.28 \approx 11.856\)。およそ12年となります。
解答 12年

⑥ 万有引力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「万有引力の法則」です。質量を持つすべての物体間に働く引力(万有引力)の大きさを、公式に基づいて計算する基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 万有引力の法則: 2つの物体の間に働く引力の大きさは、両者の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するという法則。
  2. 万有引力の公式: \(F = G\displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\) を正しく使えること。
  3. 指数計算: 指数を含む数値の計算を正確に行えること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、2つの物体の質量 \(m_1, m_2\)、物体間の距離 \(r\)、そして万有引力定数 \(G\) の値を特定する。
  2. 万有引力の公式に、これらの値を代入する。
  3. 計算を実行し、有効数字を考慮して答えを求める。

思考の道筋とポイント
この問題は、ニュートンが発見した万有引力の法則の公式に、与えられた数値を代入するだけのシンプルな計算問題です。公式の形(質量は分子、距離の2乗は分母)を正確に覚えておくことと、指数を含む計算を間違えないことが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 万有引力の公式: \(F = G\displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\)
    • \(F\): 万有引力の大きさ [N]
    • \(G\): 万有引力定数 [\(\text{N}\cdot\text{m}^2\text{/kg}^2\)]
    • \(m_1, m_2\): 2つの物体の質量 [kg]
    • \(r\): 物体間の距離 [m]
  • 問題文の値の特定:
    • \(m_1 = 5.0 \, \text{kg}\)
    • \(m_2 = 2.0 \, \text{kg}\)
    • \(r = 1.0 \, \text{m}\)
    • \(G = 6.7 \times 10^{-11} \, \text{N}\cdot\text{m}^2\text{/kg}^2\)

具体的な解説と立式
求める万有引力の大きさを \(F\) [N] とします。
万有引力の公式に、問題文で与えられた値を代入します。
$$ F = G\frac{m_1 m_2}{r^2} $$

使用した物理公式

  • 万有引力の法則: \(F = G\displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= (6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{5.0 \times 2.0}{(1.0)^2} \\[2.0ex]&= (6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{10}{1.0} \\[2.0ex]&= 6.7 \times 10^{-11} \times 10 \\[2.0ex]&= 6.7 \times 10^{-11+1} \\[2.0ex]&= 6.7 \times 10^{-10} \, \text{[N]}
\end{aligned}
$$
与えられた数値の有効数字は2桁なので、計算結果も有効数字2桁で表現されています。

計算方法の平易な説明

万有引力とは、質量があるもの同士が互いに引き合う力のことです。その力の大きさは、ニュートンの発見した公式 \(F = G\frac{m_1 m_2}{r^2}\) で計算できます。

  1. この公式に、問題文にある数字(2つの質量、距離、そして万有引力定数という決まった値)をそのまま当てはめます。
  2. \(F = (6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{5.0 \times 2.0}{1.0^2}\)
  3. 分数の部分を計算すると \(\frac{10}{1} = 10\) となります。
  4. したがって、\(F = (6.7 \times 10^{-11}) \times 10 = 6.7 \times 10^{-10}\) となります。

これが2物体間にはたらく万有引力の大きさです。非常に小さい力であることがわかります。

解答 \(6.7 \times 10^{-10} \, \text{N}\)

⑦ 重力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「重力と万有引力の関係」です。地表での重力が、地球とその地上の物体との間に働く万有引力に等しいという関係を用いて、地球の質量を計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 重力の正体: 地表付近の物体が受ける重力は、地球が物体を引く万有引力そのものである。
  2. 重力と万有引力の関係式: \(mg = G\displaystyle\frac{Mm}{R^2}\)
  3. 式の変形: 上記の関係式を、求めたい地球の質量 \(M\) について解くことができる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 地表にある質量 \(m\) の物体が受ける力について、重力と万有引力の2つの側面から式を立てる。
  2. 「重力 = 万有引力」として等式を作る。
  3. その式を、地球の質量 \(M\) について変形する。
  4. 与えられた数値を代入し、地球の質量を計算する。

思考の道筋とポイント
私たちが普段「重力」と呼んでいる力の正体は、地球という巨大な質量が私たちを引っぱる「万有引力」です。この問題の核心は、この2つの表現が同じ力を指していることを理解し、\(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) という関係式を立てることにあります。この式を立てられれば、あとは求めたい地球の質量 \(M\) について解き、数値を代入するだけです。

この設問における重要なポイント

  • 重力と万有引力の関係: \(mg = G\displaystyle\frac{Mm}{R^2}\)
    • \(m\): 地上の物体の質量
    • \(g\): 重力加速度
    • \(G\): 万有引力定数
    • \(M\): 地球の質量(求めたいもの)
    • \(R\): 地球の半径
  • 式の簡略化: 両辺にある物体の質量 \(m\) は消去できるため、\(g = G\displaystyle\frac{M}{R^2}\) という関係が得られる。この形は非常に重要。
  • 問題文の値の特定:
    • \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\)
    • \(R = 6.4 \times 10^6 \, \text{m}\)
    • \(G = 6.7 \times 10^{-11} \, \text{N}\cdot\text{m}^2\text{/kg}^2\)

具体的な解説と立式
地表にある質量 \(m\) の物体が受ける重力の大きさは \(mg\) と表せます。
一方、この力は地球(質量 \(M\))と物体(質量 \(m\))の間に働く万有引力と考えることもできます。地球の半径を \(R\) とすると、その万有引力の大きさは \(G\frac{Mm}{R^2}\) と表せます。
これらは同じ力を表しているので、以下の等式が成り立ちます。
$$ mg = G\frac{Mm}{R^2} $$
この式の両辺から \(m\) を消去すると、
$$ g = G\frac{M}{R^2} $$
この式を、求めたい地球の質量 \(M\) について解くと、
$$ M = \frac{gR^2}{G} $$

使用した物理公式

  • 重力: \(F=mg\)
  • 万有引力の法則: \(F = G\displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
M &= \frac{9.8 \times (6.4 \times 10^6)^2}{6.7 \times 10^{-11}} \\[2.0ex]&= \frac{9.8 \times 6.4^2 \times (10^6)^2}{6.7 \times 10^{-11}} \\[2.0ex]&= \frac{9.8 \times 40.96 \times 10^{12}}{6.7 \times 10^{-11}} \\[2.0ex]&= \frac{401.408}{6.7} \times 10^{12 – (-11)} \\[2.0ex]&\approx 59.9 \times 10^{23} \\[2.0ex]&= 5.99 \times 10^{24} \, \text{[kg]}
\end{aligned}
$$
与えられた数値の有効数字は2桁なので、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$ M \approx 6.0 \times 10^{24} \, \text{[kg]} $$

計算方法の平易な説明
  1. 私たちが感じる「重力(\(mg\))」の正体は、地球が私たちを引っぱる「万有引力(\(G\frac{Mm}{R^2}\))」です。
  2. この2つをイコールで結びます: \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\)。
  3. この式を、求めたい地球の質量 \(M\) について整理すると、\(M = \frac{gR^2}{G}\) となります。
  4. あとは、問題文に書かれている \(g\) (重力加速度)、\(R\) (地球の半径)、\(G\) (万有引力定数)の値をこの式に代入して、電卓などで計算するだけです。
解答 \(6.0 \times 10^{24} \, \text{kg}\)

⑧ 万有引力による位置エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「万有引力による位置エネルギー」です。地球とその表面にある物体の間に蓄えられる位置エネルギーを、公式に基づいて計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 万有引力による位置エネルギーの定義: 無限遠を基準(0)としたとき、2つの物体が距離 \(r\) だけ離れている場合に持つ位置エネルギー。
  2. 位置エネルギーの公式: \(U = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) を正しく使えること。
  3. 負の符号の意味: 万有引力は引力であるため、無限遠の基準(0)よりもエネルギーが低い状態にあることを意味する。
  4. 指数計算: 指数を含む数値の計算を正確に行えること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、2つの物体の質量 \(M, m\)、物体間の距離 \(r\)(この場合は地球の半径)、そして万有引力定数 \(G\) の値を特定する。
  2. 万有引力による位置エネルギーの公式に、これらの値を代入する。
  3. 計算を実行し、有効数字を考慮して答えを求める。

思考の道筋とポイント
地表での重力による位置エネルギー \(mgh\) は、高さの変化が小さい範囲で使える近似式です。宇宙規模の大きなスケールでは、万有引力による位置エネルギーの本来の形である \(U = -G\frac{Mm}{r}\) を使う必要があります。この問題では、この公式に数値を代入するだけですが、公式のマイナス符号を忘れないこと、そして指数計算を正確に行うことが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 万有引力による位置エネルギーの公式: \(U = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)
    • \(U\): 位置エネルギー [J]
    • \(G\): 万有引力定数 [\(\text{N}\cdot\text{m}^2\text{/kg}^2\)]
    • \(M, m\): 2つの物体の質量 [kg]
    • \(r\): 物体間の距離 [m]
  • 問題文の値の特定:
    • 物体の質量: \(m = 3.2 \, \text{kg}\)
    • 地球の質量: \(M = 6.0 \times 10^{24} \, \text{kg}\)
    • 物体間の距離(地球の半径): \(r = 6.4 \times 10^6 \, \text{m}\)
    • 万有引力定数: \(G = 6.7 \times 10^{-11} \, \text{N}\cdot\text{m}^2\text{/kg}^2\)

具体的な解説と立式
求める万有引力による位置エネルギーを \(U\) [J] とします。
公式に、問題文で与えられた値を代入します。
$$ U = -G\frac{Mm}{r} $$

使用した物理公式

  • 万有引力による位置エネルギー: \(U = -G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
U &= -(6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{(6.0 \times 10^{24}) \times 3.2}{6.4 \times 10^6} \\[2.0ex]&= – \frac{6.7 \times 6.0 \times 3.2}{6.4} \times \frac{10^{-11} \times 10^{24}}{10^6} \\[2.0ex]&= – (6.7 \times 6.0 \times 0.5) \times 10^{-11+24-6} \\[2.0ex]&= – (20.1) \times 10^{7} \\[2.0ex]&= -2.01 \times 10^8 \, \text{[J]}
\end{aligned}
$$
与えられた数値の有効数字は2桁なので、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$ U \approx -2.0 \times 10^8 \, \text{[J]} $$

計算方法の平易な説明

万有引力が関わる宇宙スケールでの位置エネルギーは、\(U = -G\frac{Mm}{r}\) という公式で計算します。

  1. この公式に、問題文にある数字(地球の質量M, 物体の質量m, 地球の半径r, そして万有引力定数G)をそのまま当てはめます。
  2. \(U = -(6.7 \times 10^{-11}) \times \frac{(6.0 \times 10^{24}) \times 3.2}{6.4 \times 10^6}\)
  3. あとは、指数の計算と数字の計算を丁寧に行うだけです。
  4. 計算すると、約 \(-2.0 \times 10^8\) となります。マイナスが付くのは、無限に遠い場所(エネルギーが0)よりも、地球に引かれて表面にいる方がエネルギーが低い状態であることを示しています。
解答 \(-2.0 \times 10^8 \, \text{J}\)

⑨ 万有引力を受けて運動する物体のもつエネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「万有引力場における力学的エネルギー保存則」です。惑星の引力によって運動する物体の速さを、エネルギーの観点から求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存の法則: 物体に働く力が保存力(この場合は万有引力)のみの場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定に保たれます。
  2. 運動エネルギー: 物体の運動の状態を表すエネルギーで、\(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) で与えられます。
  3. 万有引力による位置エネルギー: 質量 \(M\) の物体から距離 \(r\) の位置にある質量 \(m\) の物体がもつ位置エネルギーで、\(U = -G \displaystyle\frac{Mm}{r}\) で与えられます。基準点は無限遠点です。
  4. 問題文の読解: 「静かにはなした」という記述から、初速度が \(0\) であることを正確に読み取ることが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 運動の初期状態(はなした瞬間)と最終状態(ある距離まで近づいた瞬間)を設定する。
  2. それぞれの状態で、運動エネルギーと万有引力による位置エネルギーを式で表す。
  3. 「初期の力学的エネルギー = 最終の力学的エネルギー」として、力学的エネルギー保存の法則の式を立てる。
  4. 式を整理して、求める速さ \(v\) について解き、与えられた数値を代入して計算する。

思考の道筋とポイント
小物体に働く力は、惑星が及ぼす万有引力のみです。万有引力は保存力であるため、小物体の運動において力学的エネルギーは保存されます。力学的エネルギーとは、運動エネルギーと万有引力による位置エネルギーの和のことです。
問題では、小物体を「静かにはなした」とあるので、初期状態での運動エネルギーは \(0\) です。その後、小物体は万有引力に引かれて惑星に近づいていきます。惑星に近づくということは、惑星からの距離 \(r\) が小さくなることを意味します。万有引力による位置エネルギー \(U = -G \displaystyle\frac{Mm}{r}\) は \(r\) が小さくなるほど減少します(負の値で絶対値が大きくなる)。
保存されるべき力学的エネルギーの総量は一定なので、位置エネルギーが減少した分だけ、運動エネルギーが増加します。この関係を利用して、指定された距離における小物体の速さを求めます。

この設問における重要なポイント

  • 力学的エネルギー保存則: \(K_{\text{初}} + U_{\text{初}} = K_{\text{後}} + U_{\text{後}}\) が成り立ちます。ここで \(K\) は運動エネルギー、\(U\) は万有引力による位置エネルギーです。
  • 運動エネルギーの公式: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)。質量 \(m\)、速さ \(v\) の物体の運動エネルギーです。
  • 万有引力による位置エネルギーの公式: \(U = -G \displaystyle\frac{Mm}{r}\)。質量 \(M\) と \(m\) の物体が距離 \(r\) だけ離れているときのエネルギーです。無限遠点を基準(\(U=0\))としており、引力なので必ず負の値になります。
  • エネルギーの変換: 物体が惑星に近づくにつれて、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されていきます。

具体的な解説と立式
求める速さを \(v_2\)、小物体の質量を \(m\) とします。惑星の質量を \(M = 4.0 \times 10^{24} \, \text{kg}\)、万有引力定数を \(G = 6.7 \times 10^{-11} \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{kg}^2\) とします。

運動の初期状態(添字1)と最終状態(添字2)の力学的エネルギーを考えます。

  • 初期状態:
    • 惑星からの距離: \(r_1 = 1.3 \times 10^{10} \, \text{m}\)
    • 速さ: \(v_1 = 0 \, \text{m/s}\) (「静かにはなした」ため)
    • 運動エネルギー: \(K_1 = \displaystyle\frac{1}{2}mv_1^2 = 0\)
    • 位置エネルギー: \(U_1 = -G \displaystyle\frac{Mm}{r_1}\)
    • 初期の力学的エネルギー: \(E_1 = K_1 + U_1 = -G \displaystyle\frac{Mm}{r_1}\)
  • 最終状態:
    • 惑星からの距離: \(r_2 = 6.7 \times 10^9 \, \text{m}\)
    • 速さ: \(v_2\) (求める速さ)
    • 運動エネルギー: \(K_2 = \displaystyle\frac{1}{2}mv_2^2\)
    • 位置エネルギー: \(U_2 = -G \displaystyle\frac{Mm}{r_2}\)
    • 最終の力学的エネルギー: \(E_2 = K_2 + U_2 = \displaystyle\frac{1}{2}mv_2^2 – G \displaystyle\frac{Mm}{r_2}\)

万有引力のみが仕事をするため、力学的エネルギー保存の法則 \(E_1 = E_2\) が成り立ちます。
$$ -G \frac{Mm}{r_1} = \frac{1}{2}mv_2^2 – G \frac{Mm}{r_2} \quad \cdots ① $$
この式を解くことで、速さ \(v_2\) を求めることができます。

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存の法則: \(K_{\text{初}} + U_{\text{初}} = K_{\text{後}} + U_{\text{後}}\)
  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  • 万有引力による位置エネルギー: \(U = -G \displaystyle\frac{Mm}{r}\)
計算過程

式①を \(v_2\) について解きます。まず、両辺に共通する小物体の質量 \(m\) で割ります。
$$ -G \frac{M}{r_1} = \frac{1}{2}v_2^2 – G \frac{M}{r_2} $$
次に、\(\displaystyle\frac{1}{2}v_2^2\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}v_2^2 &= G \frac{M}{r_2} – G \frac{M}{r_1}
\end{aligned}
$$
ここで各項を個別に計算すると、計算が簡単になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}v_2^2 &= \frac{G M}{r_2} – \frac{G M}{r_1} \\[2.0ex]&= \frac{(6.7 \times 10^{-11}) \times (4.0 \times 10^{24})}{6.7 \times 10^9} – \frac{(6.7 \times 10^{-11}) \times (4.0 \times 10^{24})}{1.3 \times 10^{10}} \\[2.0ex]&= \frac{6.7}{6.7} \times \frac{10^{-11} \times 4.0 \times 10^{24}}{10^9} – \frac{6.7 \times 4.0}{1.3} \times \frac{10^{-11} \times 10^{24}}{10^{10}} \\[2.0ex]&= 1 \times 4.0 \times 10^{(-11+24-9)} – \frac{26.8}{1.3} \times 10^{(-11+24-10)} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^4 – 20.61… \times 10^3 \\[2.0ex]&\approx 4.0 \times 10^4 – 2.06 \times 10^4 \\[2.0ex]&= 1.94 \times 10^4
\end{aligned}
$$
したがって、\(v_2^2\) は、
$$
\begin{aligned}
v_2^2 &= 2 \times (1.94 \times 10^4) \\[2.0ex]&= 3.88 \times 10^4
\end{aligned}
$$
よって、\(v_2\) は、
$$
\begin{aligned}
v_2 &= \sqrt{3.88 \times 10^4} \\[2.0ex]&= \sqrt{3.88} \times 10^2 \\[2.0ex]&\approx 1.969 \times 10^2
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(v_2 \approx 2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}\) となります。

計算方法の平易な説明

この問題は、惑星に引き寄せられる物体がどれだけ速くなるかを計算する問題です。物理では、このような問題を「エネルギー」という考え方を使って解くことができます。

  1. エネルギーの種類: 物体は「動きのエネルギー(運動エネルギー)」と「位置のエネルギー(位置エネルギー)」を持っています。
  2. エネルギーの保存: 物体に働く力が万有引力だけの場合、この2つのエネルギーの合計(力学的エネルギー)は、運動の前後で変わりません。
  3. エネルギーの変化: 物体は惑星に近づくので、「位置エネルギー」は減少します。その減った分が、そっくりそのまま「運動エネルギー」に変わります。つまり、スピードがアップするわけです。
  4. 立式: 「最初のエネルギーの合計 = 後のエネルギーの合計」という式を立てます。最初は止まっているので、運動エネルギーはゼロです。
  5. 計算のコツ: 式を立てた後、具体的な数字を入れて計算します。この問題では、万有引力定数 \(G\) の中の「\(6.7\)」と、後の距離 \(r_2\) の中の「\(6.7\)」が同じなので、先に割り算(約分)してしまうと、計算がずっと楽になります。この工夫で、複雑に見える計算もスッキリ解くことができます。
解答 \(2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}\)

例題

例題35 万有引力による運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「万有引力による円運動」です。人工衛星が地球の周りを円運動する状況を扱います。この運動の向心力は、地球と人工衛星の間に働く「万有引力」です。円運動の運動方程式と万有引力の法則を組み合わせることが基本となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 円運動の運動方程式: 人工衛星は等速円運動をしているとみなせるため、運動方程式 \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\) が成り立ちます。
  2. 万有引力の法則: 質量 \(M\) と \(m\) の物体が距離 \(r\) だけ離れているとき、互いに引かれ合う力 \(F = G\frac{Mm}{r^2}\) がはたらきます。これが向心力の正体です。
  3. 地表での重力との関係: 地表にある質量 \(m\) の物体にはたらく重力 \(mg\) は、地球(質量 \(M\), 半径 \(R\))とその物体の間の万有引力に等しいと考えられます。この関係式 \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) は、問題文に万有引力定数 \(G\) や地球の質量 \(M\) が与えられていない場合に、それらを消去するための鍵となります。
  4. 周期の計算: 速さ \(v\) が求まれば、周期 \(T\) は「(円周の長さ) ÷ (速さ)」で計算できます。\(T = \frac{2\pi r}{v}\)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、人工衛星の円運動について運動方程式を立てます。向心力は万有引力です。
  2. 次に、地表での重力と万有引力の関係式を立てます。
  3. この2つの式を連立させて、未知の \(G\) と \(M\) を消去し、速さ \(v\) を求めます。
  4. 最後に、求めた速さ \(v\) を用いて周期 \(T\) を計算します。

人工衛星の速さと周期

思考の道筋とポイント
人工衛星の「速さ」と「周期」を求める問題です。上記のアプローチに従って、2段階で計算を進めます。
この設問における重要なポイント

  • 円運動の半径: 人工衛星は地球の中心から \(R+h\) の距離を周回しているので、円運動の半径は \(r = R+h\) です。
  • 向心力: 地球と衛星の間の万有引力 \(F = G\frac{Mm}{(R+h)^2}\) が向心力となります。
  • \(GM\) の消去: 地表での重力との関係式 \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) から得られる \(GM = gR^2\) を用いて、運動方程式から \(G\) と \(M\) を消去します。

具体的な解説と立式
地球の質量を \(M\)、人工衛星の質量を \(m\)、速さを \(v\)、万有引力定数を \(G\) とします。

ステップ1: 人工衛星の運動方程式
円運動の半径は \(R+h\) です。この円運動の向心力は、地球と衛星の間の万有引力なので、運動方程式は以下のようになります。
$$ m\frac{v^2}{R+h} = G\frac{Mm}{(R+h)^2} \quad \cdots ① $$

ステップ2: 地表での重力と万有引力の関係
地表にある質量 \(m\) の物体にはたらく重力 \(mg\) は、地球との間の万有引力と等しいので、
$$ mg = G\frac{Mm}{R^2} \quad \cdots ② $$

ステップ3: 速さ \(v\) の導出
②式から \(GM = gR^2\) という関係が得られます。これを①式に代入して、\(G\) と \(M\) を消去し、\(v\) を求めます。

ステップ4: 周期 \(T\) の導出
周期 \(T\) は、円周の長さ \(2\pi(R+h)\) を速さ \(v\) で割ることで求められます。
$$ T = \frac{2\pi(R+h)}{v} $$

別解1: 周期を直接求める

思考の道筋とポイント
運動方程式を、速さ \(v\) ではなく周期 \(T\) を用いて立式し、周期 \(T\) を直接計算する方法です。
具体的な解説と立式
円運動の運動方程式は、角速度 \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) を用いて \(mr\omega^2 = F_{\text{向心}}\) とも書けます。半径 \(r=R+h\) なので、
$$ m(R+h)\left(\frac{2\pi}{T}\right)^2 = G\frac{Mm}{(R+h)^2} \quad \cdots ③ $$
この式と、地表での重力との関係式② (\(mg = G\frac{Mm}{R^2}\)) を連立させて \(G, M\) を消去し、\(T\) について解くこともできます。

別解2: 遠心力を用いた考え方

思考の道筋とポイント
人工衛星と一緒に回転する座標系(非慣性系)から見ると、衛星は静止して見えます。このとき、中心から遠ざかる向きの「遠心力」と、中心に向かう「万有引力」がつりあっていると考えます。
具体的な解説と立式
遠心力の大きさは \(m\frac{v^2}{R+h}\)、万有引力の大きさは \(G\frac{Mm}{(R+h)^2}\) です。
これらの力のつりあいの式は、
$$ m\frac{v^2}{R+h} = G\frac{Mm}{(R+h)^2} $$
となり、これは静止系で立てた運動方程式①と全く同じ形になります。したがって、以降の計算は同じです。

使用した物理公式

  • 円運動の運動方程式: \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)
  • 万有引力の法則: \(F = G\frac{Mm}{r^2}\)
  • 周期と速さの関係: \(T = \frac{2\pi r}{v}\)
計算過程

速さ \(v\) の計算:
②式より \(GM = gR^2\)。これを①式 \(m\frac{v^2}{R+h} = G\frac{Mm}{(R+h)^2}\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
m\frac{v^2}{R+h} &= \frac{m(gR^2)}{(R+h)^2} \\[2.0ex]\frac{v^2}{R+h} &= \frac{gR^2}{(R+h)^2} \\[2.0ex]v^2 &= \frac{gR^2}{R+h} \\[2.0ex]v &= \sqrt{\frac{gR^2}{R+h}} \\[2.0ex]v &= R\sqrt{\frac{g}{R+h}}
\end{aligned}
$$

周期 \(T\) の計算:
\(T = \frac{2\pi(R+h)}{v}\) に、上で求めた \(v\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi(R+h)}{R\sqrt{\frac{g}{R+h}}} \\[2.0ex]&= \frac{2\pi(R+h)}{R} \sqrt{\frac{R+h}{g}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

人工衛星が地球の周りを回り続けられるのは、地球が衛星を引っ張る「万有引力」が、衛星を円運動させるための「向心力」としてちょうどよく働いているからです。この「万有引力 = 向心力」という関係を数式にします。ただし、この式には未知の万有引力定数\(G\)や地球の質量\(M\)が含まれてしまいます。そこで、地表での重力も万有引力の一種であることを利用して、\(G\)と\(M\)を消去する別の式を作ります。この2つの式を組み合わせることで、速さが計算できます。周期は、速さがわかれば「円周÷速さ」で簡単に求まります。

結論と吟味

速さは \(R\sqrt{\frac{g}{R+h}}\)、周期は \(\frac{2\pi(R+h)}{R}\sqrt{\frac{R+h}{g}}\) です。高さ \(h\) が大きくなるほど、速さは遅くなり、周期は長くなることが式からわかります。これは、遠くの衛星ほどゆっくり回るという直感とも一致しており、妥当な結果です。

解答 速さ: \(R\sqrt{\displaystyle\frac{g}{R+h}}\) [m/s], 周期: \(\displaystyle\frac{2\pi(R+h)}{R}\sqrt{\displaystyle\frac{R+h}{g}}\) [s]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 万有引力と向心力の関係:
    • 核心: 人工衛星や惑星の円運動において、その運動を支配する向心力の正体は「万有引力」である、という点を理解することが全ての出発点です。
    • 理解のポイント: この関係を、円運動の運動方程式 \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\) と万有引力の法則 \(F = G\frac{Mm}{r^2}\) を組み合わせて、\(m\frac{v^2}{r} = G\frac{Mm}{r^2}\) という一つの式で表現できることが重要です。
  • 地表での重力と万有引力の等価性:
    • 核心: 地表での重力加速度 \(g\) は、万有引力定数 \(G\) や地球質量 \(M\) といった普遍的な定数から決まる量であり、\(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) という関係で結ばれていること。
    • 理解のポイント: この関係式は、問題文に \(G\) や \(M\) が与えられていない場合に、それらを消去して \(g\) と \(R\) で表現するための「変換キー」として非常に重要です。\(GM = gR^2\) という形は頻繁に利用します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ケプラーの第3法則の導出: 周期 \(T\) の式を2乗すると \(T^2 = \frac{4\pi^2}{GM}r^3\) となり、「周期の2乗は半径の3乗に比例する」というケプラーの第3法則が導出できます。
    • 第一宇宙速度・第二宇宙速度: 地表すれすれを飛ぶ衛星の速さ(第一宇宙速度)や、地球の重力圏を脱出するための速さ(第二宇宙速度)を求める問題。エネルギー保存則も併用します。
    • 静止衛星: 地球の自転と同じ周期(24時間)で公転する衛星。その高度を求める問題。周期 \(T\) が既知として、半径 \(r\) を逆算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 向心力の源泉を特定する: 天体の運動であれば、向心力はほぼ万有引力です。まず \(m\frac{v^2}{r} = G\frac{Mm}{r^2}\) の立式を目指します。
    2. 与えられた文字を確認する: 問題文で与えられている文字(\(g, R, h\) など)と、答えに含めてよい文字を確認します。もし \(G, M\) が答えに使えないなら、地表での重力の式 \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) を使って消去する必要があると判断します。
    3. 半径 \(r\) を正確に把握する: 円運動の半径 \(r\) が、地球の半径 \(R\) なのか、中心からの距離 \(R+h\) なのかを問題設定から正確に読み取ることが極めて重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 半径 \(r\) の取り違え:
    • 誤解: 運動方程式では半径を \(R+h\) としたのに、地表での重力の式では \(R\) とすべきところを混同してしまう。
    • 対策: 「衛星が運動している軌道半径は \(R+h\)」「地表での話をしているときの地球半径は \(R\)」と、場面ごとにどの距離を使うべきかを明確に区別する。図を描いて確認する習慣をつける。
  • \(GM=gR^2\) の暗記ミス:
    • 誤解: \(GM=gR\) や \(GM^2=gR\) のように、重要な関係式を誤って覚えてしまう。
    • 対策: 丸暗記に頼らず、いつでも「地表での万有引力=重力」(\(G\frac{Mm}{R^2} = mg\)) という基本の式から導出できるようにしておく。両辺の \(m\) を消せば \(G\frac{M}{R^2}=g\) となり、\(GM=gR^2\) が得られます。
  • 周期の計算ミス:
    • 誤解: 周期の公式 \(T = \frac{2\pi r}{v}\) の半径 \(r\) に、地球の半径 \(R\) を代入してしまう。
    • 対策: 周期は「実際に運動している円周の長さ」を「その速さ」で割ったもの。運動している軌道半径は \(R+h\) なので、円周も \(2\pi(R+h)\) となります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(m\frac{v^2}{R+h} = G\frac{Mm}{(R+h)^2}\) (運動方程式):
    • 選定理由: 人工衛星の円運動という物理現象を、力の観点から記述する中心的な方程式だから。
    • 適用根拠: 左辺は「円運動に必要な向心力」、右辺は「実際に働いている万有引力」。衛星が円軌道を保っているという事実は、この2つの力が等しいことを意味します。
  • \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) (地表での力のつりあい):
    • 選定理由: 運動方程式に含まれる未知の定数 \(G, M\) を、問題で与えられた既知の定数 \(g, R\) に変換するために必要だから。
    • 適用根拠: 我々が日常で「重力」と呼んでいるものは、地球と物体の間に働く「万有引力」の地表における現れである、という物理的な事実に基づいています。
  • \(T = \frac{2\pi(R+h)}{v}\) (周期の定義式):
    • 選定理由: 速さ \(v\) が求まった後、周期 \(T\) を計算するため。
    • 適用根拠: これは周期の定義そのものです。「時間 = 距離 ÷ 速さ」を、円運動の一周分に適用したものです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める: この問題のように、文字だけで計算を進める場合、どの文字を消去し、どの文字を残すのかを常に意識する。\(GM\) をひとまとまりの定数として扱うと、計算の見通しが良くなります。
  • 平方根の整理: \(v = \sqrt{\frac{gR^2}{R+h}}\) のように、根号の中に2乗の項があれば、外に出して \(v = R\sqrt{\frac{g}{R+h}}\) と整理する。計算結果がシンプルになり、検算もしやすくなります。
  • 分数の扱いに注意: 周期 \(T\) の計算で、分数の分母にさらに分数が入る形になります。(\(T = \frac{A}{\sqrt{B/C}} = A\sqrt{C/B}\)) このような分数計算を正確に行うことが重要です。

例題36 万有引力を受けて運動する物体のもつエネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「地球の重力圏からの脱出(第二宇宙速度)」です。物体が地球の引力を振り切って、無限の彼方へ飛び去るために必要な最小の初速度を求める問題です。この解析には、万有引力を考慮した力学的エネルギー保存則を用います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 万有引力による位置エネルギー: 質量 \(M\) と \(m\) の物体が距離 \(r\) だけ離れているとき、その位置エネルギーは \(U = -G\frac{Mm}{r}\) と定義されます。基準点は、引力が0になる無限遠点 (\(r \to \infty\)) にとるのが一般的です。負の符号は、引力によって束縛されている状態を表します。
  2. 力学的エネルギー保存則: 物体が地球の引力だけを受けて運動する場合、その力学的エネルギー(運動エネルギー+万有引力による位置エネルギー)は保存されます。
  3. 無限遠に到達する条件: 物体が無限遠に到達できるための条件は、「無限遠での力学的エネルギーが0以上」であることです。無限遠では位置エネルギーが0になるため、これは「無限遠での運動エネルギーが0以上」(\(\frac{1}{2}mv’^2 \ge 0\))、すなわち、無限遠に到達したときに速さが残っている(またはちょうど0になる)ことを意味します。力学的エネルギーは保存されるので、この条件は「打ち上げ時の力学的エネルギーが0以上」であることと等価です。
  4. 地表での重力との関係: 問題文に \(G\) や \(M\) が与えられていないため、地表での重力と万有引力の関係式 \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\) を用いて、これらを消去する必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 打ち上げ時(地表)と無限遠点での力学的エネルギーをそれぞれ立式する。
  2. 力学的エネルギー保存則を立てる。
  3. 無限遠に到達する条件(無限遠での力学的エネルギー \(\ge 0\))を適用し、打ち上げ時の初速度 \(v\) が満たすべき不等式を導く。
  4. 地表での重力と万有引力の関係式を用いて、\(G, M\) を消去し、最終的な答えを導出する。

地球の重力圏を脱出するための条件

思考の道筋とポイント
地球の引力を振り切って無限遠に到達するための条件を、力学的エネルギー保存則から導き出します。
この設問における重要なポイント

  • 万有引力による位置エネルギーの公式: \(U(r) = -G\frac{Mm}{r}\)。
  • 力学的エネルギー保存則: \(K_1 + U_1 = K_2 + U_2\)。
  • 無限遠に到達する条件: \(E_{\text{無限遠}} \ge 0\)。これは \(E_{\text{地表}} \ge 0\) と同値。
  • \(GM = gR^2\) の関係式を使って文字を消去する。

具体的な解説と立式
打ち上げる速さを \(v\)、地球の質量を \(M\)、物体の質量を \(m\)、万有引力定数を \(G\) とします。
無限遠点を位置エネルギーの基準点(\(U=0\))とします。

ステップ1: 打ち上げ時(地表)の力学的エネルギー \(E_{\text{地表}}\)
地表では、地球の中心からの距離は \(R\) です。
運動エネルギーは \(\frac{1}{2}mv^2\)、位置エネルギーは \(-G\frac{Mm}{R}\) なので、
$$ E_{\text{地表}} = \frac{1}{2}mv^2 + \left(-G\frac{Mm}{R}\right) $$

ステップ2: 無限遠点での力学的エネルギー \(E_{\text{無限遠}}\)
無限遠点での速さを \(v’\) とします。
運動エネルギーは \(\frac{1}{2}mv’^2\)、位置エネルギーは基準点なので0です。
$$ E_{\text{無限遠}} = \frac{1}{2}mv’^2 + 0 $$

ステップ3: 無限遠に到達する条件の適用
力学的エネルギー保存則 \(E_{\text{地表}} = E_{\text{無限遠}}\) が成り立ちます。
物体が無限遠にギリギリ到達できる条件は、無限遠での速さ \(v’\) が0以上であること、つまり \(v’ \ge 0\) です。
これにより、\(E_{\text{無限遠}} = \frac{1}{2}mv’^2 \ge 0\) となります。
エネルギーは保存されるので、この条件は打ち上げ時のエネルギーにも適用され、
$$ E_{\text{地表}} \ge 0 $$
となります。したがって、
$$ \frac{1}{2}mv^2 – G\frac{Mm}{R} \ge 0 \quad \cdots ① $$

ステップ4: \(G, M\) の消去
地表での重力と万有引力の関係式を用います。
$$ mg = G\frac{Mm}{R^2} \quad \cdots ② $$
この式を使って、①式の \(G, M\) を消去します。

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
  • 万有引力による位置エネルギー: \(U = -G\frac{Mm}{r}\)
  • 地表での重力と万有引力の関係: \(mg = G\frac{Mm}{R^2}\)
計算過程

まず、②式を変形して \(GM\) を求めます。
$$ GM = gR^2 $$
これを①式の不等式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 – \frac{m(gR^2)}{R} &\ge 0 \\[2.0ex]\frac{1}{2}mv^2 – mgR &\ge 0
\end{aligned}
$$
この不等式を \(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 &\ge mgR \\[2.0ex]v^2 &\ge 2gR \\[2.0ex]v &\ge \sqrt{2gR}
\end{aligned}
$$
したがって、求める速さは \(\sqrt{2gR}\) [m/s] 以上となります。

計算方法の平易な説明

ロケットが地球の引力を振り切って宇宙の彼方へ行くための条件を考えます。ロケットは打ち上げ時に大きな運動エネルギーを持っていますが、地球から遠ざかるにつれて、地球の引力に逆らうためにエネルギーを使い、だんだん遅くなります。このとき、持っている運動エネルギーが、地球の引力圏から脱出するのに必要な「位置エネルギーの変化」より大きければ、無限の彼方まで飛んでいけます。このエネルギーの収支計算を「力学的エネルギー保存則」を使って行い、「無限遠にギリギリたどり着ける(エネルギーがちょうど0になる)」という条件から、必要な最低限の初速を計算します。

結論と吟味

再び地球に戻ってこないようにするためには、\(\sqrt{2gR}\) [m/s] 以上の速さで打ち上げる必要があります。この速さは第二宇宙速度と呼ばれます。第一宇宙速度(地表すれすれを円運動する速さ)が \(\sqrt{gR}\) であることと比較すると、その \(\sqrt{2}\) 倍となっており、整合性が取れています。また、この結果は物体の質量 \(m\) に依存しないという点も重要です。

解答 \(\sqrt{2gR}\) [m/s] 以上

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 万有引力ポテンシャルと力学的エネルギー保存則:
    • 核心: 地球の重力圏のような広大なスケールでの運動を扱う場合、位置エネルギーはもはや \(mgh\) では表せず、万有引力による位置エネルギー \(U(r) = -G\frac{Mm}{r}\) を用いる必要があります。このエネルギーを含めた力学的エネルギーが保存される、という法則が解析の根幹をなします。
    • 理解のポイント: 無限遠点を基準(\(U=0\))にとるため、地表など有限の距離にある物体の位置エネルギーは必ず負の値になります。これは、物体が地球の引力に「束縛」されている状態を表します。
  • 無限遠に脱出する条件:
    • 核心: 物体が引力圏を脱して無限遠に到達するための条件は、その力学的エネルギーが0以上であること (\(E_{\text{力学}} \ge 0\))。
    • 理解のポイント: 力学的エネルギーが負 (\(E < 0\)) の場合、物体は地球の周りを回る楕円軌道(円軌道を含む)を描き、無限に去ることはできません。エネルギーがちょうど0 (\(E=0\)) のとき、無限遠でちょうど速さが0になる放物線軌道を描きます。エネルギーが正 (\(E>0\)) のとき、無限遠でも速さが残る双曲線軌道を描きます。したがって、脱出の境界条件は \(E=0\) となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 第一宇宙速度との比較: 地表すれすれを円運動する速さ(第一宇宙速度 \(v_1 = \sqrt{gR}\))と、地球の重力圏を脱出する速さ(第二宇宙速度 \(v_2 = \sqrt{2gR}\))の関係 (\(v_2 = \sqrt{2}v_1\)) を問う問題。
    • 人工衛星の軌道変更: ある円軌道から、よりエネルギーの高い別の円軌道へ移るために必要なエネルギー(仕事)を計算する問題。各軌道での力学的エネルギーの差を求めます。
    • 惑星探査機のスイングバイ: 探査機が惑星に接近し、その引力を利用して加速・減速する技術。惑星との相対運動におけるエネルギー保存を考えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. エネルギー保存則の適用を考える: 「打ち上げ」「衝突」「合体」以外の、天体の引力だけを受けて運動する場面では、まず力学的エネルギー保存則が使えないか検討します。
    2. 位置エネルギーの基準点を確認する: 万有引力の問題では、特に断りがなければ無限遠点を基準(\(U=0\))とします。
    3. 「脱出」「無限遠」のキーワード: これらの言葉が出てきたら、力学的エネルギーが0以上 (\(E \ge 0\)) という条件式を立てるサインだと判断します。
    4. \(GM=gR^2\) の変換: 問題文に \(G, M\) がなく、\(g, R\) が与えられている場合、必ずどこかで \(GM=gR^2\) を使って文字を変換する必要があると予測します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 位置エネルギーの符号ミス:
    • 誤解: 万有引力による位置エネルギーを、正の値 \(G\frac{Mm}{r}\) としてしまう。
    • 対策: 「引力」による位置エネルギーは、基準点(無限遠)より低いので「負」になると覚える。引力に逆らって物体を無限遠まで運ぶには正の仕事が必要で、その分だけ位置エネルギーが増加して0になる、というイメージを持つ。
  • \(mgh\) との混同:
    • 誤解: 地表から大きく離れる運動なのに、位置エネルギーを \(mgh\) で計算してしまう。
    • 対策: \(mgh\) は、重力加速度 \(g\) が一定とみなせる地表付近でのみ使える近似式であると理解する。人工衛星や惑星スケールの運動では、必ず万有引力による位置エネルギー \(U = -G\frac{Mm}{r}\) を使う。
  • 脱出条件の誤解:
    • 誤解: 無限遠に到達する条件を「無限遠で速さが0になる」(\(E=0\)) と限定してしまい、不等号(\(\ge\))を忘れる。
    • 対策: 「無限遠に到達し、さらに速さが残っていてもよい」ので、運動エネルギーは0以上 (\(K \ge 0\))。したがって、力学的エネルギーも0以上 (\(E \ge 0\)) となる。問題が「最小の速さ」を問うている場合は、等号成立の \(E=0\) のときを考えればよい。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(E = \frac{1}{2}mv^2 – G\frac{Mm}{r}\) (力学的エネルギー):
    • 選定理由: 万有引力という保存力のみがはたらく系のエネルギー状態を記述するため。
    • 適用根拠: 運動エネルギー \(K=\frac{1}{2}mv^2\) と、万有引力による位置エネルギー \(U=-G\frac{Mm}{r}\) の和として定義されます。この量が運動の前後で保存されることが、エネルギー保存則の主張です。
  • \(E_{\text{地表}} \ge 0\) (脱出条件):
    • 選定理由: 「地球に戻ってこない」という物理的な条件を、エネルギーという数学的な量で表現するため。
    • 適用根拠: 力学的エネルギーが保存されるため、無限遠でエネルギーが0以上であることと、打ち上げ時にエネルギーが0以上であることは同値です。打ち上げ時のエネルギーだけで脱出可能かどうかを判定できるため、この条件式が非常に強力なツールとなります。
  • \(GM = gR^2\) (定数変換式):
    • 選定理由: 物理学の基本定数である \(G, M\) を、問題で与えられた地球固有の測定値 \(g, R\) に変換するため。
    • 適用根拠: 地表での重力が万有引力と等しいという物理的な事実に基づいています。これにより、異なる場面で現れる物理法則(万有引力の法則と地表での重力)を連結させることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の整理: 計算過程で、両辺に共通する \(m\) を早い段階で消去すると、式がシンプルになり見通しが良くなります。
  • 不等式の変形: \(\frac{1}{2}mv^2 \ge mgR\) のような不等式を解く際、移項や割り算の操作を丁寧に行う。両辺が正であることを確認してから平方根をとるなど、基本的な数学操作を確実に行う。
  • 結果の比較: 第一宇宙速度 \(v_1 = \sqrt{gR}\) と第二宇宙速度 \(v_2 = \sqrt{2gR}\) は、万有引力の分野で最も基本的な結果です。これらの導出過程と結果をセットで覚えておくと、類似問題への応用や検算が非常にスムーズになります。
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