「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅰ 章 5】プロセス

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プロセス

1 力のモーメント

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「力のモーメントの計算」です。物体を回転させようとする能力の大きさである「力のモーそれに働く力の合力との関係を正しく理解しているかを問う、力学の基本中の基本となる概念問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のモーメントの定義: 物体をある点のまわりに回転させようとする能力の大きさ。
  2. モーメントの計算式: \(M = F \times L\)。ここで \(F\) は力の大きさ、\(L\) は「うでの長さ」。
  3. 「うでの長さ」の定義: 回転の中心(点O)から、力の作用線(力が働く方向を示す直線)に下ろした垂線の長さ。
  4. 単位の換算: 計算を行う前に、すべての単位をSI基本単位系(この場合は \(\text{N}\), \(\text{m}\))に統一する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文と図から、力の大きさ \(F\) と「うでの長さ」\(L\) を特定する。
  2. 「うでの長さ」の単位をセンチメートル(\(\text{cm}\))からメートル(\(\text{m}\))に換算する。
  3. 力のモーメントの公式 \(M=FL\) に値を代入して計算する。
  4. 計算結果を適切な有効数字でまとめる。

思考の道筋とポイント
力のモーメントは、ドアノブを回したり、スパナでボルトを締めたりするときに感じる「回転させやすさ」を数値化したものです。その大きさは、加える力の大きさと、「うでの長さ」の積で決まります。
この問題で最も重要なのは、「うでの長さ」を正しく見極めることです。図には、回転中心Oから力の作用点Pまでの距離(\(25 \, \text{cm}\))と、回転中心Oから力の作用線に下ろした垂線の長さ(\(22 \, \text{cm}\))の2つの長さが示されています。力のモーメントの定義で使われる「うでの長さ」とは、後者の「垂線の長さ(最短距離)」のことです。したがって、\(25 \, \text{cm}\) という情報は、この計算では使わないダミーの情報となります。

この設問における重要なポイント

  • モーメントの公式: \(M=FL\)。力のモーメント(\(\text{N} \cdot \text{m}\)) \(=\) 力の大きさ(\(\text{N}\)) \( \times \) うでの長さ(\(\text{m}\))。
  • うでの長さ \(L\) の特定: 回転軸から力の作用線までの最短距離(垂線の長さ)であるOQを選ぶ。作用点までの距離OPではない。
  • 単位換算: \(1 \, \text{m} = 100 \, \text{cm}\) の関係を用いて、\(22 \, \text{cm}\) を \(0.22 \, \text{m}\) に変換する。
  • 有効数字: 与えられた数値 \(2.0 \, \text{N}\) と \(22 \, \text{cm}\) はどちらも有効数字2桁なので、計算結果も有効数字2桁で答える。

具体的な解説と立式
問題文および図から、以下の物理量を読み取ります。

  • 力の大きさ: \(F = 2.0 \, \text{N}\)
  • うでの長さ: \(L = \text{OQ} = 22 \, \text{cm}\)

計算の前に、うでの長さの単位をメートル(\(\text{m}\))に換算します。
$$
L = 22 \, \text{cm} = 0.22 \, \text{m}
$$
点Oのまわりの力のモーメントの大きさを \(M\) とすると、公式 \(M=FL\) より、以下のように立式できます。
$$
M = F \times L
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = FL\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
M &= 2.0 \, \text{N} \times 0.22 \, \text{m} \\[2.0ex]
&= 0.44 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値はどちらも有効数字2桁なので、計算結果の \(0.44\) も有効数字2桁となり、このままで適切です。

この設問の平易な説明

「力のモーメント」は、ドアを開けるときの「回しやすさ」のようなものです。ドアの蝶番(ちょうつがい)が回転の中心O、ドアノブが力を加える点Pだと考えてみましょう。
この「回しやすさ」は、「加える力」と「うでの長さ」の掛け算で決まります。「うでの長さ」とは、回転の中心から力の方向までの最短距離のことです。
図を見ると、この最短距離はOQの \(22 \, \text{cm}\) だとわかりますね。(OPの \(25 \, \text{cm}\) は、ただの斜めの距離なので使いません。)
あとは、単位をメートルに直して掛け算するだけです。\(22 \, \text{cm}\) は \(0.22 \, \text{m}\) なので、
力のモーメント \( = 2.0 \, \text{N} \times 0.22 \, \text{m} = 0.44 \, \text{N} \cdot \text{m} \) となります。

解答 \(0.44 \, \text{N} \cdot \text{m}\)
別解: 力を分解してモーメントを計算する方法

思考の道筋とポイント
力のモーメントの計算には、もう一つの考え方があります。それは、力を「回転に寄与する成分」と「寄与しない成分」に分解する方法です。この方法では、モーメントの大きさは「(回転中心から作用点までの距離) \(\times\) (力の、距離の方向に垂直な成分)」で計算されます。このアプローチは、物理現象をより深く理解する上で役立ち、どちらの考え方でも同じ結果に至ることを確認できます。

この設問における重要なポイント

  • モーメントの別計算式: \(M = r F_{\perp}\)。ここで \(r\) は回転中心から作用点までの距離、\(F_{\perp}\) は力のベクトル \(F\) のうち、距離 \(r\) の方向に垂直な成分の大きさ。
  • 三角比の利用: 図の直角三角形OQPに注目し、三角比を用いて力の垂直成分を求める。

具体的な解説と立式
この方法では、回転中心Oから作用点Pまでの距離 \(r = \text{OP} = 25 \, \text{cm} = 0.25 \, \text{m}\) を使います。
力 \(F\) を、直線OPに沿った成分と、OPに垂直な成分 \(F_{\perp}\) に分解します。
力のモーメントを生み出すのは、回転に寄与する垂直成分 \(F_{\perp}\) のみです。
モーメントの大きさ \(M\) は、
$$
M = r \times F_{\perp}
$$
で計算できます。
図の直角三角形OQPにおいて、力 \(F\) の作用線と直線OPのなす角を \(\alpha\) とすると、\(F_{\perp} = F \sin\alpha\) となります。
$$
M = r \times (F \sin\alpha)
$$
ここで、三角比の定義から \(\sin\alpha = \displaystyle\frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}} = \frac{\text{OQ}}{\text{OP}}\) です。
これを代入すると、
$$
\begin{aligned}
M &= \text{OP} \times F \times \frac{\text{OQ}}{\text{OP}} \\[2.0ex]
&= F \times \text{OQ}
\end{aligned}
$$
となり、結局メインの解法と同じ \(M = F \times L\) の式に帰着します。

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = r F_{\perp}\)
  • 三角比の定義
計算過程

上記の \(M = F \times \text{OQ}\) の式に、具体的な数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
M &= 2.0 \, \text{N} \times 22 \, \text{cm} \\[2.0ex]
&= 2.0 \, \text{N} \times 0.22 \, \text{m} \\[2.0ex]
&= 0.44 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

もう一つの考え方を紹介します。今度は、距離ではなく「力」の方を分解します。
加えた力 \(2.0 \, \text{N}\) を、「点Oから点Pに向かう方向の成分」と、「その方向に垂直な成分」の2つに分けます。
OからPの方向に力を加えても物体は回転しないので、回転させる力は「垂直な成分」だけです。
この「垂直な成分」の大きさを計算し、それにOとPの間の距離 \(25 \, \text{cm} = 0.25 \, \text{m}\) を掛けても、力のモーメントを計算できます。
面白いことに、この計算を進めていくと、結局はメインの解法と全く同じ「\(2.0 \times 0.22\)」という計算になります。物理は、違う考え方をしても同じ正しい答えにたどり着くようにできている、という良い例ですね。

解答 \(0.44 \, \text{N} \cdot \text{m}\)

2 力のモーメント(斜めの力)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「力のモーメントの計算」です。力が斜めに加えられている場合に、力のモーメントを計算する2つの基本的なアプローチ、「うでの長さを求める方法」と「力を分解する方法」を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のモーメントの定義: 物体を回転させようとする能力の大きさ。
  2. モーメントの計算式: \(M = F \times L\)(力 \(\times\) うでの長さ)、または \(M = r \times F_{\text{垂直}}\)(距離 \(\times\) 力の垂直成分)。
  3. 三角関数の利用: 「うでの長さ」や「力の垂直成分」を求めるために、三角関数(特に \(\sin\theta\))を正しく用いる。
  4. 単位の換算: 計算前に単位をSI基本単位系(\(\text{N}\), \(\text{m}\))に統一する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文と図から、力の大きさ \(F\)、回転中心から作用点までの距離 \(r\)、力の向き(角度)を特定する。
  2. 「うでの長さ」を求める方法、または「力を分解する」方法のどちらかを選択する。
  3. 選択した方法に従って、三角関数を用いて必要な量(うでの長さ、または力の垂直成分)を計算する。
  4. モーメントの公式に値を代入して計算する。

思考の道筋とポイント
この問題のように、力が斜めに加えられている場合のモーメント計算には、2つの同等なアプローチがあります。

アプローチ1(うでの長さを求める): モーメントの定義 \(M=FL\) に忠実に従う方法です。回転中心Oから力の作用線に垂線を下ろし、その長さ(うでの長さ \(L\))を三角関数を使って求めます。図から、\(L\) は斜辺がOPの直角三角形の、\(30^\circ\) の角に対する対辺にあたるため、\(L = \text{OP} \sin 30^\circ\) と計算できます。

アプローチ2(力を分解する): 力を、棒に沿った成分と棒に垂直な成分に分解する方法です。棒を回転させるのに寄与するのは、棒に垂直な成分 \(F_{\text{垂直}}\) のみです。この \(F_{\text{垂直}}\) の大きさを三角関数で求め(\(F_{\text{垂直}} = F \sin 30^\circ\))、作用点までの距離OPを掛けることでモーメントを計算します(\(M = \text{OP} \times F_{\text{垂直}}\))。

どちらのアプローチでも、最終的な計算式は同じ形になり、同じ答えが得られます。自分が理解しやすい、あるいは計算しやすいと感じる方を使えるようになることが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 2つの計算アプローチ: \(M = F \times (r \sin\theta)\) と \(M = r \times (F \sin\theta)\) は、数学的には同じ計算 (\(M = rF\sin\theta\)) であり、物理的にも同等である。
  • 角度の特定: 三角関数を用いる際には、どの角を使うか、そしてその角に対して求める辺が「隣辺」なのか「対辺」なのかを正確に把握することが不可欠です。
  • 単位換算: 距離が \(\text{cm}\) で与えられているため、\(\text{m}\) に変換することを忘れないように注意が必要です。

具体的な解説と立式
アプローチ1: うでの長さを求める方法

回転中心Oから力の作用線に下ろした垂線の長さ(うでの長さ)を \(L\) とします。
図から、O, P, そして垂線の足で構成される直角三角形を考えると、斜辺は \(\text{OP} = 50 \, \text{cm} = 0.50 \, \text{m}\) です。
うでの長さ \(L\) は、この直角三角形の \(30^\circ\) の角に対する対辺にあたります。
したがって、三角関数の定義 \(\sin\theta = \displaystyle\frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}}\) より、
$$
L = \text{OP} \sin 30^\circ
$$
力のモーメントの大きさ \(M\) は、力の大きさ \(F = 8.0 \, \text{N}\) とこの \(L\) の積で求められます。
$$
M = F \times L = F \times (\text{OP} \sin 30^\circ)
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = FL\)
  • 三角比の定義
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
M &= 8.0 \, \text{N} \times (0.50 \, \text{m} \times \sin 30^\circ) \\[2.0ex]
&= 8.0 \times (0.50 \times \frac{1}{2}) \\[2.0ex]
&= 8.0 \times 0.25 \\[2.0ex]
&= 2.0 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値はすべて有効数字2桁なので、結果も有効数字2桁で適切です。

この設問の平易な説明

ドアノブを斜め上に引っ張って開けるような状況です。このときの回転力(モーメント)を計算します。
計算方法は2つあります。
1つ目は、「うでの長さ」を求める方法です。回転の中心Oから、力の矢印が伸びていく直線までの最短距離を計算します。これは三角関数を使うと \(50 \, \text{cm} \times \sin 30^\circ = 25 \, \text{cm} = 0.25 \, \text{m}\) となります。この「うでの長さ」に力の大きさ \(8.0 \, \text{N}\) を掛けると、\(8.0 \times 0.25 = 2.0 \, \text{N} \cdot \text{m}\) となります。

解答 \(2.0 \, \text{N} \cdot \text{m}\)
別解: 力を分解する方法

思考の道筋とポイント
力を、棒(OP)に沿った成分と、棒に垂直な成分に分解します。棒を回転させるのは垂直な成分だけなので、その大きさを求め、回転中心からの距離OPを掛け合わせることでモーメントを計算します。

この設問における重要なポイント

  • 力の分解: 力 \(F\) を、棒に沿った成分 \(F_{\text{平行}}\) と、棒に垂直な成分 \(F_{\text{垂直}}\) に分解する。
  • 回転への寄与: モーメントを生み出すのは \(F_{\text{垂直}}\) のみ。
  • モーメントの計算: \(M = (\text{距離}) \times (\text{力の垂直成分}) = \text{OP} \times F_{\text{垂直}}\)。

具体的な解説と立式
力 \(F = 8.0 \, \text{N}\) を、棒OPに垂直な成分 \(F_{\text{垂直}}\) と平行な成分 \(F_{\text{平行}}\) に分解します。
図から、\(F_{\text{垂直}}\) は力のベクトルを斜辺とする直角三角形の、\(30^\circ\) の角に対する対辺にあたります。
したがって、
$$
F_{\text{垂直}} = F \sin 30^\circ
$$
力のモーメントの大きさ \(M\) は、回転中心から作用点までの距離 \(r = \text{OP} = 50 \, \text{cm} = 0.50 \, \text{m}\) と、この \(F_{\text{垂直}}\) の積で求められます。
$$
M = r \times F_{\text{垂直}} = \text{OP} \times (F \sin 30^\circ)
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = r F_{\text{垂直}}\)
  • 力の成分分解
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
M &= 0.50 \, \text{m} \times (8.0 \, \text{N} \times \sin 30^\circ) \\[2.0ex]
&= 0.50 \times (8.0 \times \frac{1}{2}) \\[2.0ex]
&= 0.50 \times 4.0 \\[2.0ex]
&= 2.0 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

もう1つの計算方法です。
加えた力 \(8.0 \, \text{N}\) を、「棒を引っ張るだけの成分」と「棒を回転させる成分」に分解します。
棒を回転させるのは、棒に対して垂直な成分だけです。この成分の大きさは、三角関数を使うと \(8.0 \times \sin 30^\circ = 4.0 \, \text{N}\) と計算できます。
この「回転させる力」に、回転の中心からの距離 \(50 \, \text{cm} = 0.50 \, \text{m}\) を掛けると、モーメントが求まります。
\(4.0 \, \text{N} \times 0.50 \, \text{m} = 2.0 \, \text{N} \cdot \text{m}\)。
どちらの方法で計算しても、同じ答えになりますね。

解答 \(2.0 \, \text{N} \cdot \text{m}\)

3 偶力のモーメント

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「偶力のモーメント」です。物体に働く、大きさが等しく平行で逆向きの2つの力(偶力)が作る力のモーメントの性質について学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のモーメントの定義: \(M = F \times L\)。力の大きさと「うでの長さ」の積。
  2. モーメントの符号: 反時計回りを正(\(+\))、時計回りを負(\(-\))とする規約。
  3. モーメントの和: 複数の力が働く場合、全体のモーメントは各力のモーメントの代数和で求められる。
  4. 偶力のモーメント: 偶力が作るモーメントの大きさは、回転中心の選び方によらず一定であり、その大きさは「2つの力の大きさ \(\times\) 2つの力の作用線間の距離」で計算できる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問(点A, B, Cのまわり)について、2つの力がそれぞれどちら向きの回転(時計回りか反時計回りか)を生むかを判断し、符号を決める。
  2. 各力について、回転中心からの「うでの長さ」を求める。
  3. 各力のモーメントを計算し、それらの和を求める。
  4. すべての点について計算し、結果が同じになることを確認する。

思考の道筋とポイント
この問題で与えられている2つの力は、大きさが同じ(\(5.0 \, \text{N}\))で、向きが逆で、平行です。このような力のペアを「偶力」と呼びます。偶力は物体を並進運動させる(動かす)ことはありませんが、回転させる効果だけを持ちます。
この問題の最も重要な結論は、「偶力が作るモーメントの大きさは、回転の中心をどこに選んでも常に同じになる」という性質です。実際に点A, B, Cのそれぞれについて計算してみることで、この重要な法則を体験的に理解することができます。
計算にあたっては、モーメントの符号(回転の向き)を間違えないように注意することが重要です。「反時計回りが正」というルールに従い、各力が物体をどちらに回そうとするかを、回転中心を固定してイメージします。

この設問における重要なポイント

  • モーメントの符号: 回転中心にピンを刺し、力の矢印の向きに物体を引っ張ったときに、どちらに回るかを想像する。
    • 反時計回り → 正(\(+\))
    • 時計回り → 負(\(-\))
  • うでの長さ: 回転中心から、各力の作用線までの垂直距離。
  • 偶力のモーメントの性質: 回転中心の位置によらず、モーメントの和は一定値をとる。その大きさは \(M = F \times d\)(\(F\): 2つの力の大きさ、\(d\): 2力間の距離)となる。

点Aのまわりの力のモーメント

具体的な解説と立式
回転の中心は点Aです。

  • 点Aに働く力(\(5.0 \, \text{N}\), 上向き): この力は回転の中心である点A自身に働いているため、うでの長さが \(0\) です。したがって、この力が作るモーメントは \(0\) です。
  • 点Bに働く力(\(5.0 \, \text{N}\), 下向き): この力は、点Aを中心に物体を時計回りに回転させようとします。したがって、モーメントの符号は負(\(-\))です。うでの長さは、点Aから点Bまでの距離なので \(2.0 \, \text{m} + 1.0 \, \text{m} = 3.0 \, \text{m}\) です。

モーメントの和 \(M_A\) は、これらの和で求められます。
$$
M_A = (5.0 \times 0) + (-5.0 \times 3.0)
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = FL\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
M_A &= 0 – 15.0 \\[2.0ex]
&= -15 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると、\(5.0 \times 3.0 = 15\) であり、結果は有効数字2桁で適切です。

解答 \(-15 \, \text{N} \cdot \text{m}\)

点Bのまわりの力のモーメント

具体的な解説と立式
回転の中心は点Bです。

  • 点Aに働く力(\(5.0 \, \text{N}\), 上向き): この力は、点Bを中心に物体を時計回りに回転させようとします。したがって、モーメントの符号は負(\(-\))です。うでの長さは、点Bから点Aまでの距離なので \(3.0 \, \text{m}\) です。
  • 点Bに働く力(\(5.0 \, \text{N}\), 下向き): この力は回転の中心である点B自身に働いているため、うでの長さが \(0\) です。したがって、この力が作るモーメントは \(0\) です。

モーメントの和 \(M_B\) は、これらの和で求められます。
$$
M_B = (-5.0 \times 3.0) + (5.0 \times 0)
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = FL\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
M_B &= -15.0 + 0 \\[2.0ex]
&= -15 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$

解答 \(-15 \, \text{N} \cdot \text{m}\)

点Cのまわりの力のモーメント

具体的な解説と立式
回転の中心は点Cです。

  • 点Aに働く力(\(5.0 \, \text{N}\), 上向き): この力は、点Cを中心に物体を時計回りに回転させようとします。したがって、モーメントの符号は負(\(-\))です。うでの長さは、点Cから点Aまでの距離なので \(2.0 \, \text{m}\) です。
  • 点Bに働く力(\(5.0 \, \text{N}\), 下向き): この力も、点Cを中心に物体を時計回りに回転させようとします。したがって、モーメントの符号は負(\(-\))です。うでの長さは、点Cから点Bまでの距離なので \(1.0 \, \text{m}\) です。

モーメントの和 \(M_C\) は、これらの和で求められます。
$$
M_C = (-5.0 \times 2.0) + (-5.0 \times 1.0)
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメント: \(M = FL\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
M_C &= -10.0 – 5.0 \\[2.0ex]
&= -15 \, \text{N} \cdot \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

車のハンドルを両手で回す状況を想像してください。右手を上に、左手を下に動かすと、ハンドルは回転しますよね。この問題の力のかかり方は、それと同じです。
この「回転させる効果(モーメント)」の大きさを、A, B, Cの3つの点を中心として計算してみよう、という問題です。

  • A点を中心にすると: A点の力は中心なので回転効果ゼロ。B点の力は、距離 \(3.0 \, \text{m}\) で時計回りに回そうとするので、モーメントは \(-5.0 \times 3.0 = -15\)。
  • B点を中心にすると: B点の力は回転効果ゼロ。A点の力は、距離 \(3.0 \, \text{m}\) で時計回りに回そうとするので、モーメントは \(-5.0 \times 3.0 = -15\)。
  • C点を中心にすると: A点の力は距離 \(2.0 \, \text{m}\) で時計回り(\(-5.0 \times 2.0\))、B点の力も距離 \(1.0 \, \text{m}\) で時計回り(\(-5.0 \times 1.0\))に回そうとします。合計すると \(-10 – 5 = -15\)。

面白いことに、どこを中心と考えても、合計のモーメントは同じ \(-15 \, \text{N} \cdot \text{m}\) になります。これが「偶力」の持つ特別な性質です。

解答 すべて \(-15 \, \text{N} \cdot \text{m}\)
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4 重心

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「重心の計算」です。複数の質点が連結された物体系全体の重心の位置を、重心の公式を用いて求める方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 重心の定義: 物体系全体の重力が働く、代表点(みかけの作用点)。
  2. 重心の公式: 複数の質点(\(m_1, m_2, \dots\))が、それぞれ位置(\(x_1, x_2, \dots\))にあるとき、その系の重心の位置 \(x_G\) は、\(x_G = \displaystyle\frac{m_1x_1 + m_2x_2 + \dots}{m_1+m_2+\dots}\) で計算される。
  3. 座標軸の設定: 重心の位置を数値で表すために、基準となる原点と座標軸を自分で設定する必要がある。
  4. 質量と重さの比例関係: 重力加速度 \(g\) が一定の場所では、重さ \(w\) は質量 \(m\) に比例する (\(w=mg\))。そのため、重心の公式の質量 \(m\) を重さ \(w\) に置き換えて計算してもよい。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 計算の基準となる原点と座標軸を設定する(例:左端の物体を原点とする)。
  2. 設定した座標軸に沿って、各物体の位置座標を求める。
  3. 重心の公式に、各物体の重さ(または質量)と位置座標を代入する。
  4. 計算を実行し、重心の位置を求める。

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