プロセス
1 ケプラーの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ケプラーの第1法則(楕円軌道の法則)」です。惑星の運動に関する基本的な法則の理解が問われています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ケプラーの第1法則: 惑星の軌道が楕円であること。
- 楕円の幾何学的性質: 2つの焦点を持つこと。
- 太陽の位置: 惑星が描く楕円軌道の焦点の1つに太陽が存在すること。
- 円軌道との違い: 円は楕円の特別な場合であり、惑星の軌道は厳密には楕円であることの理解。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 惑星の運動を記述する「ケプラーの法則」を思い出す。
- 特に、軌道の形状と太陽の位置について述べた第1法則の内容を正確に把握する。
- 法則の記述に沿って、空欄(ア)と(イ)に当てはまる適切な語句を特定する。
思考の道筋とポイント
惑星の運動に関する法則といえば、まずケプラーの法則が思い浮かびます。ケプラーの法則は第1法則、第2法則、第3法則の3つから成り立っています。
問題文の「惑星は太陽を1つの( ア )とする( イ )上を運動する。」という記述は、惑星の軌道の「形」と、その中での「太陽の位置」について述べているため、これはまさにケプラーの第1法則の内容そのものです。
かつて、天体の軌道は完璧な「円」であると信じられていましたが、ケプラーは観測事実から、惑星の軌道が実際には「楕円」であることを発見しました。さらに、太陽はその楕円の中心ではなく、「焦点」と呼ばれる2つの特別な点のうちの1つに位置することも突き止めました。
この知識に基づいて空欄を埋めると、(ア)には「焦点」、(イ)には「楕円軌道」が入ることが分かります。
この設問における重要なポイント
- ケプラーの第1法則(楕円軌道の法則): すべての惑星は、太陽を1つの焦点とする楕円軌道上を運動する。
- 楕円とは: 幾何学的には、2つの定点(焦点)からの距離の和が一定であるような点の集まりです。
- 太陽の位置: 太陽は楕円軌道の中心にはありません。2つある焦点のうちの1つに位置します。このため、惑星と太陽の間の距離は一定ではなく、公転中に変化します(最も近い点を近日点、最も遠い点を遠日点と呼びます)。
- 円軌道との関係: 円は、楕円の2つの焦点が完全に一致した特別な場合(離心率が\(0\)の状態)と考えることができます。多くの惑星の軌道は円に近いですが、厳密には楕円です。
具体的な解説と立式
この問題は物理法則の定義に関する知識を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。
ヨハネス・ケプラーは、師であるティコ・ブラーエが残した膨大な天体観測データを何年もかけて分析し、惑星の運動に関する以下の3つの法則を発見しました。
- 第1法則(楕円軌道の法則): 惑星の軌道の「形」に関する法則。本問で問われている内容です。
- 第2法則(面積速度一定の法則): 惑星の「速さ」に関する法則。太陽と惑星を結ぶ線分が単位時間に掃く面積は一定である、というものです。これは、惑星が太陽に近いときは速く、遠いときは遅く動くことを意味します。
- 第3法則(調和の法則): 惑星の「公転周期」と「軌道の大きさ」の関係に関する法則。公転周期の\(2\)乗は、軌道の半長軸の\(3\)乗に比例するというものです。
本問は第1法則に関するものです。
- (ア): 惑星が公転する楕円軌道において、中心的な引力を及ぼす太陽が位置する場所を指します。これは「焦点」です。
- (イ): 惑星が太陽の周りを運動する際の軌道の形状を指します。これは「楕円軌道」です。
使用した物理公式
- ケプラーの第1法則: すべての惑星は、太陽を1つの焦点とする楕円軌道上を運動する。
この問題には計算過程はありません。ケプラーの第1法則の定義を正しく理解し、適切な語句を当てはめることが解答プロセスとなります。
- (ア)→ 焦点
- (イ)→ 楕円軌道
昔の人々は、神様が創った宇宙は完璧なはずだから、星はきれいな「まん丸(円)」を描いて空を回っているに違いない、と信じていました。
しかし、ケプラーという非常に粘り強い天文学者が、星の動きをものすごく詳しく調べた結果、「あれ?どうも軌道はまん丸じゃなくて、少しだけつぶれたラグビーボールのような形(楕円)をしているぞ」ということを発見しました。これが(イ)の答え「楕円軌道」です。
さらに驚くことに、太陽はその楕円のど真ん中にあるのではなく、中心から少しだけズレた「焦点」という特別な場所にポツンといることを見つけました。これが(ア)の答え「焦点」です。
この発見のおかげで、惑星は太陽の周りを回るとき、太陽に近づいたり(夏は暑いとは限りません!)、遠ざかったりしながら運動していることが分かったのです。
2 ケプラーの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)」です。惑星の速さが軌道上の位置によってどのように変化するかを、面積速度の概念を用いて理解することが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 面積速度の定義と導出。
- ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)。
- 近日点・遠日点における惑星の速度と太陽との位置関係(速度ベクトルと動径ベクトルが直交すること)。
- (発展)角運動量保存則との関係性。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、微小時間 \(\Delta t\) を考え、その間に惑星と太陽を結ぶ線分が掃く微小な三角形の面積を求めることで、面積速度の式を導出する。
- 次に、ケプラーの第2法則「面積速度は常に一定である」を用いて、近日点での面積速度と遠日点での面積速度が等しいという関係式を立てる。
- 立てた等式を、未知数である遠日点での速さについて解く。
問(2)
思考の道筋とポイント
この問題はケプラーの第2法則、別名「面積速度一定の法則」を扱います。まず「面積速度」という言葉の意味を正確に理解することが第一歩です。面積速度とは、太陽と惑星を結ぶ線分(動径ベクトル)が、単位時間あたりに掃く(通過する)面積のことを指します。
面積速度を計算するために、微小時間 \(\Delta t\) を考えます。この短い時間に惑星が進む距離は \(v\Delta t\) です。このとき動径が掃く図形は、底辺が \(v\Delta t\)、高さが太陽から惑星までの距離 \(r\) の、非常に細長い三角形と近似できます。
特に、問題で問われている「近日点」と「遠日点」は、軌道上で太陽に最も近い点と最も遠い点です。これらの点では、惑星の進行方向(速度ベクトル)と、太陽からの方向(動径ベクトル)がちょうど垂直に交わるという重要な特徴があります。そのため、先ほどの三角形の面積は「\(\displaystyle\frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\)」で正確に計算でき、面積速度の式が非常にシンプルになります。
ケプラーの第2法則によれば、この面積速度は軌道上のどこでも一定です。したがって、「近日点での面積速度」と「遠日点での面積速度」は等しくなります。この等式を立てることで、遠日点での速さを求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 面積速度 \(S\): 太陽と惑星を結ぶ線分が単位時間に掃く面積。一般的には、太陽からの距離 \(r\)、速さ \(v\)、そして動径ベクトルと速度ベクトルのなす角を \(\theta\) として、\(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\sin\theta\) で与えられます。
- 近日点・遠日点での特徴: これらの点では、動径ベクトルと速度ベクトルが直交するため、\(\theta = 90^\circ\) となり \(\sin\theta = 1\) です。その結果、面積速度は最も簡単な形 \(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\) で表せます。
- ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則): 面積速度 \(S\) は、惑星が軌道上のどの位置にあっても一定です。これは、惑星が太陽に近いときは速く動き、遠いときは遅く動くことを意味します。
- 物理的背景(角運動量保存則): 面積速度一定の法則は、物理学的には「角運動量保存則」と等価です。惑星に働く万有引力は常に太陽の中心を向く「中心力」であるため、惑星の角運動量は保存されます。惑星の質量を \(m\) とすると、角運動量 \(L = mrv\sin\theta\) と面積速度 \(S\) の間には \(S = \displaystyle\frac{L}{2m}\) という関係があり、\(L\) が一定なら \(S\) も一定となります。
具体的な解説と立式
この問題は2つのパートに分かれています。まず面積速度の式を示し、次にそれを用いて遠日点での速さを求めます。
1. 面積速度の式の導出
微小時間 \(\Delta t\) の間に、近日点にある惑星は距離 \(v_1 \Delta t\) だけ進みます。このとき、太陽と惑星を結ぶ線分が掃く面積 \(\Delta A\) を考えます。
\(\Delta t\) が非常に小さいため、この間に惑星が描く軌道は直線とみなせ、掃く領域は三角形で近似できます。
近日点では、惑星の速度ベクトル \(\vec{v_1}\) と、太陽からの位置ベクトル \(\vec{r_1}\) は垂直です。
したがって、この三角形の面積 \(\Delta A\) は、底辺を \(v_1 \Delta t\)、高さを \(r_1\) と考えることができ、
$$
\Delta A \approx \frac{1}{2} \times r_1 \times (v_1 \Delta t)
$$
と表せます。
面積速度 \(S_1\) は、単位時間あたりの面積変化なので、\(\Delta A\) を \(\Delta t\) で割ることで得られます。
$$
S_1 = \frac{\Delta A}{\Delta t} = \frac{1}{2}r_1v_1
$$
これが近日点における面積速度の式です。
2. 遠日点での速さの導出
遠日点での惑星の速さを \(v_2\) とします。遠日点でも、速度ベクトルと位置ベクトルは垂直なので、同様に面積速度 \(S_2\) を求めることができます。
$$
S_2 = \frac{1}{2}r_2v_2
$$
ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)により、軌道上のどの点でも面積速度は等しいので、\(S_1 = S_2\) が成り立ちます。
したがって、以下の関係式を立てることができます。
$$
\frac{1}{2}r_1v_1 = \frac{1}{2}r_2v_2 \quad \cdots ①
$$
使用した物理公式
- 面積速度の定義(近日点・遠日点): \(S = \displaystyle\frac{1}{2}rv\)
- ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則): \(\displaystyle\frac{1}{2}r_1v_1 = \displaystyle\frac{1}{2}r_2v_2\)
まず、問の前半である面積速度の式は、「具体的な解説と立式」で導出した通り \(\displaystyle\frac{1}{2}r_1v_1\) です。
次に、問の後半である遠日点での速さ \(v_2\) を求めます。「具体的な解説と立式」で立てた式①を \(v_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}r_1v_1 &= \frac{1}{2}r_2v_2 \\[2.0ex]
r_1v_1 &= r_2v_2 \\[2.0ex]
v_2 &= \frac{r_1}{r_2}v_1
\end{aligned}
$$
したがって、遠日点での速さは \(\displaystyle\frac{r_1}{r_2}v_1\) となります。
ケプラーの第2法則は「面積速度一定の法則」とも呼ばれます。「面積速度」とは、太陽と惑星をつなぐ線を一本の長いホウキだと想像したとき、そのホウキが1秒間に掃き掃除する面積のことです。この法則が言っているのは、「惑星が軌道上のどこを飛んでいても、1秒間に掃除する面積はいつも同じですよ」ということです。
惑星が太陽に一番近い「近日点」(距離 \(r_1\))にいるときを考えてみましょう。太陽からの距離が短いので、同じ面積を稼ぐためには、惑星はビュンと速く動く(速さ \(v_1\))必要があります。
逆に、太陽から一番遠い「遠日点」(距離 \(r_2\))にいるときは、太陽からの距離が長いので、ゆっくり動いても(速さ \(v_2\))広い面積を掃除できます。だから惑星の動きは遅くなります。
この「近いときは速く、遠いときは遅く」という関係を式にしたのが、\(\displaystyle\frac{1}{2}r_1v_1 = \displaystyle\frac{1}{2}r_2v_2\) という面積速度の式なのです。この式を使えば、遠日点での速さを計算することができます。
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3 ケプラーの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ケプラーの第3法則(調和の法則)」です。惑星の公転周期とその軌道の大きさの関係性を理解し、計算に適用する能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ケプラーの第3法則: 惑星の公転周期の\(2\)乗が、軌道の半長軸の\(3\)乗に比例すること。
- 比例関係の定式化: \(\displaystyle\frac{T^2}{a^3} = k\) (一定)という関係式を立てること。
- 基準天体との比較: 地球のデータ(周期\(1\)年)を基準として、他の惑星の周期を算出する考え方。
- 指数計算: \(3\)乗や平方根を含む計算を正確に行うこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 地球と問題の惑星、それぞれの公転周期と半長軸を文字で設定する。
- ケプラーの第3法則に基づき、「地球での\(\displaystyle\frac{T^2}{a^3}\)の値」と「惑星での\(\displaystyle\frac{T^2}{a^3}\)の値」が等しいという等式を立てる。
- 問題文で与えられた条件(半長軸の関係、地球の公転周期)を式に代入する。
- 惑星の公転周期について方程式を解く。