【学校B:高2特進】1学期期末 全問解説 ─ 思考のクセ診断つき

夏は、物理を仕切り直す季節。
「これまで解けなかった」は"昔の自分"の話。夏休みの40日で、思考のクセから立て直してみませんか。
目次

§0. この解説の使い方

これは、文化学園杉並 高2(特進)1学期期末テスト(大問1〜5・全28問)の全問解説です。答え合わせをして終わりにするのではなく、「なぜ自分はそこで間違えたのか」という思考のクセを1つ見つけて、次のテストで直すことをねらいにしています。

問題文と図はこの記事には載せていません。手元の答案と問題冊子を横に置いて読み進めてください。各問では、問われている内容と与えられた数値だけを1〜2行で示します。

📋 読む前に用意するもの

① 返ってきた自分の答案

② テストの問題冊子(図つき)

③ 配られた模範解答

各問の読み方 ─ 2階建てになっています

すべての設問が、次の2階建てで書かれています。

1階:答え(グレーの枠): 答えと、1〜2行のサクッと解説。テスト直前の最終確認にも使えます。

2階:▶ 完全解説(緑の折りたたみ)

クリックで開くと「一見の罠(みんなが引っかかる誤答と、その思考のクセ)→ 正しい思考プロセス → この問題が教えてくれること」まで、じっくり深掘りします。

おすすめの使い方:まず自分の答案と「1階の答え」を照らし合わせ、間違えた問・迷った問だけ「2階の完全解説」を開いてください。最後に §6「テスト全体の振り返り」で、自分の弱点のクセを1つに絞ります。

§1. 大問1 ─ 小問集(運動量・力積・衝突・モーメント・重心・ケプラー)

※ この大問の問題文・図は手元の答案/問題冊子を参照してください。ここでは各小問のテーマと与えられた数値だけを示します。

§1.1 運動量の大きさと向き

※ 手元プリント参照。与えられた量: 質量\(0.60 \, \text{kg}\)、右向きに速さ\(13 \, \text{m}/\text{s}\)、有効数字2桁。

答え: 右向きに\(7.8 \, \text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}\)。運動量は\(p=mv=0.60\times13\)で計算でき、速度に向きがあるので運動量にも「右向き」という向きがつきます。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「\(7.8\)」とだけ書いて、向き(右向き)を書き忘れる。
診断: 運動量が「大きさと向きを両方持つ量(ベクトル)」だという意識が抜けている。速度に向きがある以上、運動量にも必ず向きがある、という土台が崩れています。
誤答パターン②: 単位を落として「\(7.8\)」で止める、または単位を\(\text{kg}\)や\(\text{m}/\text{s}\)だけにしてしまう。
診断: 公式を「数字を入れる箱」としてしか見ていない。単位は\(\text{kg}\times\text{m}/\text{s}\)を掛け合わせて生まれる、という「量の掛け算」の感覚が育っていません。
誤答パターン③: \(0.60\times13=7.8\)を「\(7.80\)」と3桁で書く。
診断: 与えられた数値の桁数を見ずに、電卓の表示や割り切れた数字をそのまま写している。問題文の「有効数字2桁」という指示を読み飛ばすクセです。

正しい思考プロセス

Step 1: まず絵にします。物体が右向きに動いている矢印を書く。運動量も同じ右向きの矢印です。Step 2: 使う公式を選びます。「運動量」と言われたら\(p=mv\)。質量と速さが両方与えられているので、これで一発です。Step 3: 式の意味を確認します。\(p=mv\)は「重いほど・速いほど、止めにくさ(勢い)が大きい」という素直な掛け算です。Step 4: 代入します。\(p=0.60\times13=7.8\)。Step 5: 妥当性をチェック。単位は\(\text{kg}\times\text{m}/\text{s}=\text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}\)、桁数は与えられた\(0.60\)と\(13\)がどちらも2桁なので答えも2桁。向きは速度と同じ右向き。これで「\(7.8 \, \text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}\)、右向き」と揃います。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: このあとの衝突や力積の問題は、すべて「運動量に向きがある」ことが前提。ここで向きを書く習慣をつけておくと、右向きを正としたときに左向きが負になる、という符号の扱いが自然にできるようになります。
波及②: 「速度に向きがあるなら、それを含む量にも向きがある」という考え方は、力積・力・電場・磁場などベクトルで表す量すべてに共通します。運動量はその入り口です。

§1.2 力積と運動量の変化

※ 手元プリント参照。与えられた量: 右向きに速さ\(1.0 \, \text{m}/\text{s}\)で動く質量\(1.5 \, \text{kg}\)の台車に、右向きの力\(3.0 \, \text{N}\)を\(0.60 \, \text{s}\)加える。

答え: 右向きに\(2.2 \, \text{m}/\text{s}\)。力積\(J=Ft\)の分だけ運動量が増える、という関係\(mv=mv_0+J\)を使います。加えた勢い\(J=3.0\times0.60=1.8 \, \text{N}\cdot\text{s}\)がもとの運動量に足し算されます。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 力\(3.0 \, \text{N}\)を見た瞬間に\(F=ma\)を持ち出し、加速度\(a=F/m=2.0 \, \text{m}/\text{s}^2\)を出して止まってしまう。
診断: 「力ときたら\(F=ma\)」という反射で公式を選んでいる。問われているのは\(0.60 \, \text{s}\)後の「速度」なので、時間が絡む力積のほうが直接的だ、という見極めができていません。
誤答パターン②: 力積\(J=Ft\)は出せたのに、もとの運動量\(mv_0\)を足し忘れて\(v=J/m=1.8/1.5=1.2 \, \text{m}/\text{s}\)としてしまう。
診断: 「力積=運動量そのもの」と勘違いしている。正しくは「力積=運動量の“変化”」。台車はもともと動いていたのだから、変化を初速の運動量に足す必要があります。
誤答パターン③: 力\(3.0\)と時間\(0.60\)を掛けずに、力をそのまま運動量に足して\(1.5\times1.0+3.0=4.5\)としてしまう。
診断: 単位への感覚が抜けている。\(\text{N}\)と\(\text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}\)は別物で、\(\text{N}\)に時間\(\text{s}\)を掛けて初めて運動量と足せる量になる、という「足し算できる相手かどうか」の確認が飛んでいます。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。右向きに動く台車に、同じ右向きの力を一定時間押し続けるイメージ。Step 2: 公式を選びます。「力を、ある時間、加えたあとの速度」を聞かれているので、時間を含む関係\(mv=mv_0+Ft\)が主役です。Step 3: 式の意味。左辺が「あとの勢い」、右辺が「もとの勢い+加えた勢い」。まさに勢いの足し算です。Step 4: 代入します。力積\(J=Ft=3.0\times0.60=1.8 \, \text{N}\cdot\text{s}\)、あとの運動量\(mv=1.5\times1.0+1.8=3.3 \, \text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}\)、速度\(v=3.3/1.5=2.2 \, \text{m}/\text{s}\)。Step 5: 妥当性チェック。押されたのだから初速\(1.0\)より速くなるはず。答え\(2.2\)は確かに大きい。向きも右向きのままでOK。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

$$\begin{aligned}
J &= Ft \\ &= 3.0\times0.60 \\ &= 1.8 \\
mv &= mv_0 + J \\
mv &= 1.5\times1.0 + 1.8 \\ &= 3.3 \\
v &= \displaystyle\frac{3.3}{1.5} \\ &= 2.2
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「力積=運動量の変化」は、ボールをバットで打つ・車が壁にぶつかるなど、短い時間に大きな力が働く現象すべてで使えます。時間が短くても力が大きければ勢いは大きく変わる、という発想はエアバッグの仕組みにもつながります。
波及②: 「時間を聞かれたら力積、位置や速さの二乗を聞かれたらエネルギー」という公式の選び分けは、力学の問題を解くときの地図になります。同じ力でも、何を求めたいかで使う道具が変わるのです。

§1.3 直線衝突・反発係数

※ 手元プリント参照。与えられた量: 右向きを正とし、物体A(質量\(5.0 \, \text{kg}\)、速度\(8.0 \, \text{m}/\text{s}\))と物体B(質量\(7.0 \, \text{kg}\)、速度\(-7.0 \, \text{m}/\text{s}\))が正面衝突し、反発係数\(e=0.36\)。

答え: 衝突後、\(v_1’=-3.9 \, \text{m}/\text{s}\)(Aは左向き)、\(v_2’=1.5 \, \text{m}/\text{s}\)(Bは右向き)。「運動量保存」と「反発係数の式」の2本を連立して解きます。衝突では合計の勢いが変わらず、はねかえり方は\(e\)が決める、という2つの条件がそろって初めて2つの未知数が決まります。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: Bの速度を\(+7.0\)として運動量保存に入れてしまう。
診断: 「速さ」と「速度」を区別できていない。右向きを正と決めた瞬間、左向きに動くBは必ず負の値。向きの取り決めを式に反映する、という基本動作が抜けています。
誤答パターン②: 反発係数の分母を「衝突後の速度差」にしてしまう。
診断: 反発係数の式\(e=-\displaystyle\frac{v_1′-v_2′}{v_1-v_2}\)を丸暗記して、分母=衝突前・分子=衝突後という役割を取り違えている。「はねかえりの勢い÷ぶつかる前の勢い」という意味で覚えていないから逆にしてしまうのです。
誤答パターン③: 式の頭のマイナス(負号)を落として\(e=\displaystyle\frac{v_1′-v_2′}{v_1-v_2}\)としてしまう。
診断: 反発係数は必ず\(0\)以上の数、という事実を計算のチェックに使えていない。負号を忘れると\(e\)が負になり、物理的にありえない値が出ますが、それに気づけません。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。右へ進むA(\(8.0\))と左へ進むB(\(-7.0\))が正面からぶつかる図。Step 2: 使う条件は2つ。1つ目は運動量保存(合計の勢いは衝突の前後で変わらない)、2つ目は反発係数の式(どれだけはねかえるか)。未知数が\(v_1’\)と\(v_2’\)の2つなので、式も2本必要です。Step 3: 式の意味。運動量保存は\(5.0\times8.0+7.0\times(-7.0)=5.0v_1’+7.0v_2’\)、左辺は\(40-49=-9\)。反発係数は\(e=-\displaystyle\frac{v_1′-v_2′}{8.0-(-7.0)}=0.36\)。Step 4: これを連立して解くと\(v_1’=-3.9\)、\(v_2’=1.5\)。Step 5: 妥当性。Aは右から来て左へはねかえされ(負)、Bは左から来て右へはねかえされる(正)。正面衝突で互いに向きが反転するのは自然。\(e=0.36\)は\(0\)と\(1\)の間で問題なし。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

$$\begin{aligned}
5.0\times8.0 + 7.0\times(-7.0) &= 5.0v_1′ + 7.0v_2′ \\
-9 &= 5.0v_1′ + 7.0v_2′ \\
v_1′ – v_2′ &= -0.36\times\{8.0-(-7.0)\} \\
v_1′ – v_2′ &= -5.4
\end{aligned}$$
第2式より\(v_1′ = v_2′ – 5.4\)。これを第1式へ代入します。
$$\begin{aligned}
5.0(v_2′-5.4) + 7.0v_2′ &= -9 \\
12.0v_2′ – 27 &= -9 \\
12.0v_2′ &= 18 \\
v_2′ &= 1.5
\end{aligned}$$
よって\(v_1′ = 1.5 – 5.4 = -3.9\)。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「未知数が2つなら式も2本」という発想は、衝突以外のあらゆる連立問題に効きます。運動量保存だけでは足りず、反発係数の式が“もう1本の情報”を与えている、と気づけると衝突問題は怖くなくなります。
波及②: 反発係数\(e=1\)なら完全弾性衝突(エネルギーも保存)、\(e=0\)なら合体してくっつく、という両極端を押さえると、玉突き・車の衝突・粘土のぶつかり合いが一つの式で見渡せます。

§1.4 斜め衝突・反発係数(床とのはねかえり)

※ 手元プリント参照。与えられた量: なめらかな床に小球が斜めに当たってはねかえる。床から測った入射角\(45^\circ\)、反射角\(30^\circ\)。反発係数\(e\)を根号分数のまま求める。

答え: \(e=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{3}\)。床に平行な方向の速さは変わらず、床に垂直な方向の速さだけが\(e\)倍になる、という性質を使います。速度を「床に沿う成分」と「床に垂直な成分」に分けて考えるのがカギです。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 反発係数を速さの比\(v’/v\)(はねかえったあとの速さ÷前の速さ)だと思って計算する。
診断: 反発係数は「床に垂直な成分」だけの比だ、という定義を押さえていない。床をこするような平行方向は摩擦がなければ変わらないので、全体の速さの比では\(e\)になりません。
誤答パターン②: 床に平行な成分も\(e\)倍になると思い込む。
診断: なめらかな床では、床に沿う向きに力が働かないので平行成分は不変。この「どの向きに力が働くか」を絵で確認せず、勢いが全体的に弱まるはず、という感覚だけで進めてしまっています。
誤答パターン③: 入射角・反射角を「床から測る」か「床に垂直な線から測る」かを取り違え、\(\sin\)と\(\cos\)を逆にする。
診断: 角度をどこから測っているかを図で確定しないまま三角比を当てている。ここでは床から測っているので、床に垂直な成分が\(\sin\)、床に平行な成分が\(\cos\)になります。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。斜めに落ちてきた小球が床でVの字にはねる図を書き、入射側の速さを\(v\)、反射側の速さを\(v’\)とします。Step 2: 速度を2方向に分けます。床に平行な成分と、床に垂直な成分。なめらかな床なので平行成分は不変、垂直成分だけが\(e\)倍。Step 3: 式にします。平行成分の不変から\(v\cos45^\circ=v’\cos30^\circ\)。垂直成分の比が反発係数で\(e=\displaystyle\frac{v’\sin30^\circ}{v\sin45^\circ}\)。Step 4: 計算します。平行の式から\(v’\)と\(v\)の比を求め、\(e\)の式に入れると\(e=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{3}\)。Step 5: 妥当性。反射角\(30^\circ\)が入射角\(45^\circ\)より小さい=より寝た角度になる=垂直成分が減っている、という向きと\(e \lt 1\)がぴったり合います。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

床に平行な成分は変わらないので、
$$\begin{aligned}
v\cos45^\circ &= v’\cos30^\circ \\
\displaystyle\frac{v’}{v} &= \displaystyle\frac{\cos45^\circ}{\cos30^\circ}
\end{aligned}$$
反発係数は床に垂直な成分の比なので、
$$\begin{aligned}
e &= \displaystyle\frac{v’\sin30^\circ}{v\sin45^\circ} \\ &= \displaystyle\frac{v’}{v}\cdot\displaystyle\frac{\sin30^\circ}{\sin45^\circ} \\
e &= \displaystyle\frac{\cos45^\circ}{\cos30^\circ}\cdot\displaystyle\frac{\sin30^\circ}{\sin45^\circ}
\end{aligned}$$
ここで\(\sin45^\circ=\cos45^\circ\)なので約分され、
$$\begin{aligned}
e &= \displaystyle\frac{\sin30^\circ}{\cos30^\circ} \\ &= \tan30^\circ \\ &= \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}} \\ &= \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{3}
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「ある向きだけ変化し、直角の向きは変わらない」という分解の発想は、斜方投射(横向きは等速、縦向きは重力で変化)とまったく同じ構造です。方向ごとに分けて別々に扱う、という力学の王道がここにも現れています。
波及②: 床を鏡、垂直成分の減り方を\(e\)と見ると、反発係数が\(1\)なら光の反射(入射角=反射角)とそっくりになります。\(e\)が小さいほど反射角が寝ていく理由も、垂直成分が削られるから、と一言で説明できます。

§1.5 力のモーメント(垂直な力)

※ 手元プリント参照。与えられた量: 点Oのまわりで、うでの長さ\(0.50 \, \text{m}\)の位置に、うでと垂直に\(20 \, \text{N}\)の力を上向きに加える。反時計回りを正とする。

答え: \(+10 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。モーメントは\(M=\)力\(\times\)うでの長さ\(=20\times0.50\)で求め、上向きの力がOを反時計回りに回そうとするので符号は正になります。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 大きさ\(10\)は出せたのに符号(回転の向き)を書かず、\(10 \, \text{N}\cdot\text{m}\)で止める。
診断: モーメントも向き(回す向き)を持つ量だ、という意識が薄い。「反時計回りを正とする」と指定された以上、答えに正負の符号をつけて向きまで答える必要があります。
誤答パターン②: 力と長さを取り違え、\(0.50 \, \text{N}\)や\(20 \, \text{m}\)のように役割を入れ替えてしまう。
診断: \(M=\)力\(\times\)長さの「どちらが力でどちらが長さか」を数値だけ見て機械的に掛けている。単位を意識すれば\(\text{N}\times\text{m}=\text{N}\cdot\text{m}\)となり、取り違えに気づけます。
誤答パターン③: 上向きの力がどちら回りに回すかを考えず、なんとなく負にしてしまう。
診断: 回転の向きを図で確かめていない。Oの右側で上向きに押せば反時計回り、という「実際にどう回るか」を絵で追う習慣がないと符号が当てずっぽうになります。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。点Oから右へ伸びたうでの先を上向きに押す図。Step 2: 公式を選びます。力がうでに垂直なので、モーメントはそのまま\(M=\)力\(\times\)うでの長さ。Step 3: 意味を確認。モーメントは「回す能力」で、力が大きいほど・支点から遠いほど大きくなります。ドアの取っ手が蝶番から遠い理由と同じです。Step 4: 代入します。\(M=20\times0.50=10\)。Step 5: 符号を決めます。Oの右側を上へ押すと反時計回り。反時計回りが正なので\(+10 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: このあとの重心やつり合いの問題は「モーメントの合計がゼロ」を使います。1つ1つのモーメントに正しい符号をつけられることが、その土台になります。
波及②: 「力×距離」でものを回す能力が決まる考え方は、てこ・レンチ・シーソーなど日常の道具すべてに共通します。同じ力でも遠くに加えるほどよく回る、という感覚がここで身につきます。

§1.6 力のモーメント(垂直な力)

※ 手元プリント参照。与えられた量: 点Oのまわりで、うでの長さ\(0.60 \, \text{m}\)の位置に、うでと垂直に\(15 \, \text{N}\)の力を下向きに加える。反時計回りを正とする。

答え: \(-9.0 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。大きさは\(15\times0.60=9.0\)ですが、下向きの力はOを時計回りに回そうとするので、反時計回りを正とした約束では符号が負になります。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 大きさ\(9.0\)を出したあと符号を正にして\(+9.0 \, \text{N}\cdot\text{m}\)としてしまう。
診断: 「下向き=どちら回りか」を絵で確認していない。前問が正だったから今回も正だろう、と力の向きの違いを見落としています。
誤答パターン②: 下向きの力だから答えの大きさもマイナスの数を掛ける、と勘違いして\(15\times(-0.60)\)のように距離まで負にする。
診断: 符号は「大きさ」ではなく「回転の向き」につくもの、という区別ができていない。長さは常に正で、正負は回る向きだけが決めます。
誤答パターン③: 有効数字を意識せず\(9\)とだけ書き、\(9.0\)としない。
診断: 与えられた\(15\)と\(0.60\)がともに2桁なので答えも2桁で\(9.0\)とすべきところ、桁数の指定を軽く見ています。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。点Oから右へ伸びたうでの先を、今度は下向きに引く図。Step 2: 公式は前問と同じ\(M=\)力\(\times\)うでの長さ。力がうでに垂直だからそのまま掛けられます。Step 3: 意味の確認。大きさの計算は前問と同じ形。違うのは力の向きだけ。Step 4: 代入します。\(M\)の大きさ\(=15\times0.60=9.0\)。Step 5: 符号を決めます。Oの右側を下へ引くと時計回り。反時計回りが正なので時計回りは負。したがって\(-9.0 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 前問と数字の形はそっくりでも、力の向きが変わるだけで符号が反転する。この一組を並べて見ると「符号は毎回、絵で回転の向きを確かめて決める」という鉄則が腹落ちします。
波及②: シーソーで、左に乗るか右に乗るかで傾く向きが逆になるのと同じ。複数の力が同時に働くつり合いの問題では、この符号づけが正しくできるかどうかで正解・不正解が分かれます。

§1.7 力のモーメント(斜めの力・分解)

※ 手元プリント参照。与えられた量: 点Oのまわりで、うでの長さ\(0.30 \, \text{m}\)の位置に、うでに対して\(30^\circ\)の角度で\(40 \, \text{N}\)の力を加える。反時計回りを正とする。

答え: \(+6.0 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。力を「うでに垂直な成分」と「うでに沿う成分」に分け、回すのに効くのは垂直成分\(40\sin30^\circ=20 \, \text{N}\)だけ。これにうでの長さを掛けて\(M=20\times0.30\)とします。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 力を分解せず、そのまま\(40\times0.30=12 \, \text{N}\cdot\text{m}\)としてしまう。
診断: 「\(M=\)力\(\times\)長さ」の公式は“力がうでに垂直なとき”限定だ、という前提を忘れている。斜めの力はそのままでは回転に全部効かない、という理解が抜けています。
誤答パターン②: 分解するときに\(\cos\)を使い、\(40\cos30^\circ\)を回転に効く成分だと勘違いする。
診断: どちらの成分が回転に効くかを図で確かめていない。うでと\(30^\circ\)の角度なので、うでに垂直な成分は\(\sin\)側。角度をどこから測っているかで\(\sin\)と\(\cos\)が入れ替わることを意識できていません。
誤答パターン③: うでに沿う成分\(40\cos30^\circ\)もモーメントに足してしまう。
診断: うでに沿う(支点をまっすぐ押す/引く)向きの力は回転させない、というイメージが持てていない。支点に向かう力ではものは回らない、という直感が育っていません。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。うでの先に、うでとのなす角\(30^\circ\)で力\(40 \, \text{N}\)を加えた図。Step 2: 力を2つに分けます。うでに垂直な成分(回すのに効く)と、うでに沿う成分(回さない)。Step 3: 意味を確認。回転に効くのは垂直成分だけ。角度\(30^\circ\)がうでから測られているので、垂直成分は\(40\sin30^\circ\)。Step 4: 計算します。垂直成分\(=40\sin30^\circ=40\times0.5=20 \, \text{N}\)、モーメント\(M=20\times0.30=6.0\)。Step 5: 符号と妥当性。反時計回りに回すので\(+6.0 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。分解せずに掛けた\(12\)より小さくなるのは、斜めの力の一部しか回転に効かないからで、方向として自然です。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

$$\begin{aligned}
F_\text{垂直} &= 40\sin30^\circ \\ &= 40\times0.5 \\ &= 20 \\
M &= F_\text{垂直}\times0.30 \\ &= 20\times0.30 \\ &= 6.0
\end{aligned}$$
反時計回りを正とするので\(M=+6.0 \, \text{N}\cdot\text{m}\)。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「斜めの力は分解してから使う」は力学全体の合言葉です。斜面上の物体・振り子・張力など、まっすぐでない力が出てきたら、まず必要な向きの成分を取り出す。この一手が身につくと応用問題が一気にほどけます。
波及②: ドアを蝶番から遠い端で、しかも面に垂直に押すと一番よく開くのは、垂直成分が最大になるから。斜めに押すと同じ力でも開きにくいのは、回転に効く成分が減るからだ、と説明できるようになります。

§1.8 重心の位置

※ 手元プリント参照。与えられた量: 質量の無視できる軽い棒の両端に、A端\(1.5 \, \text{kg}\)、B端\(2.5 \, \text{kg}\)のおもりをつける。AB間の長さ\(1.20 \, \text{m}\)。

答え: Aから右に\(0.75 \, \text{m}\)。重心は重いほうへ寄る、という原則どおりB側に近づきます。Aを基準にすると\(x=\displaystyle\frac{2.5\times1.20}{1.5+2.5}\)で位置が決まります。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 重いB側に寄るはずなのに、計算式の立て方を間違えてA寄りの\(0.45 \, \text{m}\)としてしまう。
診断: どちらのおもりの質量を分子に置くかで重心の寄る向きが決まる、という式の意味が押さえられていない。Aからの距離を求めるなら、遠いB側の質量を分子に置く、という対応が逆になっています。
誤答パターン②: 質量が違うのに、真ん中の\(0.60 \, \text{m}\)を答えにしてしまう。
診断: 「重心=中点」は質量が等しいときだけ成り立つ特別な場合、という条件を忘れている。質量に差があれば必ず重いほうへずれます。
誤答パターン③: 分母を全質量\(1.5+2.5=4.0\)にせず、片方の質量や\(2.5-1.5\)などにしてしまう。
診断: 重心の式の分母が「全部の質量の合計」である理由を理解していない。全体の重さで割ることで“平均の位置”になる、という意味づけが弱いのです。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。棒の左端Aに軽いおもり、右端Bに重いおもり、その間\(1.20 \, \text{m}\)。Step 2: 重心の考え方を選びます。重心は「質量で重みづけした平均の位置」。Aを原点(\(0\))、Bを\(1.20\)として位置を平均します。Step 3: 式にします。Aから測った重心の位置は\(x=\displaystyle\frac{1.5\times0+2.5\times1.20}{1.5+2.5}\)。Step 4: 計算します。分子は\(2.5\times1.20=3.0\)、分母は\(4.0\)、よって\(x=3.0/4.0=0.75\)。Step 5: 妥当性。中点\(0.60\)より右(B寄り)に来ている。Bのほうが重いので、重心がB側に寄るのは正しい方向です。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

Aを原点、Bを\(1.20\)の位置として、
$$\begin{aligned}
x &= \displaystyle\frac{1.5\times0 + 2.5\times1.20}{1.5+2.5} \\
x &= \displaystyle\frac{3.0}{4.0} \\ &= 0.75
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 重心は「質量で重みづけした平均」。これはおもり2つだけでなく、3つ・4つと増えても、複雑な形の板でも同じ考え方で求められます。位置を質量で平均する、という一本の芯が通っています。
波及②: シーソーがつり合う支点の位置は、まさにこの重心の計算そのもの。重いほうを支点に近づける、という遊びの直感が、そのまま公式の意味になっています。

§1.9 ケプラー第2法則(面積速度一定)

※ 手元プリント参照。与えられた量: だ円軌道の長軸の両端が点P・点Qで、太陽が焦点にある。太陽からPまで\(3.0\)天文単位、太陽からQまで\(2.0\)天文単位、点Pでの速さ\(v_\text{P}=10 \, \text{km}/\text{s}\)。

答え: \(v_\text{Q}=15 \, \text{km}/\text{s}\)。面積速度が一定という法則から、長軸の両端では\(r_\text{P}v_\text{P}=r_\text{Q}v_\text{Q}\)が成り立ちます。太陽に近い点ほど速い、という関係で\(3.0\times10=2.0\times v_\text{Q}\)を解きます。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 太陽から遠い点Pのほうが速いと思い込み、\(v_\text{Q}\)を\(10\)より小さく見積もる。
診断: 「近い点ほど速い」という近日点・遠日点の関係が逆になっている。地球でも太陽に近い時期のほうが公転が速い、という事実とつながっていません。
誤答パターン②: 面積速度一定を使わず、周期の式(第3法則)を持ち出して手が止まる。
診断: 「1つの軌道の中での速さの比」を聞かれているのに、複数の軌道を比べる第3法則を選んでしまう。どの法則がどの場面用かを区別できていません。
誤答パターン③: 距離と速さを足したり、\(r_\text{P}+v_\text{P}=r_\text{Q}+v_\text{Q}\)のように誤った保存を書いてしまう。
診断: 面積速度が「距離×速さ」に比例することを図で理解していない。単に一定のものがある、という記憶だけで式の形をあやふやにしています。

正しい思考プロセス

Step 1: 絵にします。だ円の長軸の両端がPとQ、太陽が中心からずれた焦点にある図。長軸の両端では、惑星の速度が太陽からの直線に対してちょうど垂直になります。Step 2: 使う法則を選びます。「同じ軌道の中で場所によって速さがどう変わるか」なので、面積速度一定(第2法則)。Step 3: 式の意味。面積速度は「太陽から惑星への線が一定時間に掃く面積」で、長軸両端では\(\displaystyle\frac{1}{2}rv\)の形。これが等しいので\(r_\text{P}v_\text{P}=r_\text{Q}v_\text{Q}\)。Step 4: 代入します。\(3.0\times10=2.0\times v_\text{Q}\)、よって\(v_\text{Q}=30/2.0=15\)。Step 5: 妥当性。Qのほうが太陽に近い(\(2.0 \lt 3.0\))ので速いはず。\(15 \gt 10\)で向きが正しい。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 面積速度一定は「距離が縮むと速くなる」という関係。フィギュアスケートの選手が腕を縮めると速く回るのと同じで、これは角運動量保存という共通のしくみから来ています。惑星と回転する人が同じ法則で説明できる、という広がりがあります。
波及②: 「同じ軌道内の速さ比なら第2法則、別々の軌道の周期比なら第3法則」という使い分けを押さえると、ケプラーの問題は迷わなくなります。次の第3法則の問題と対にして覚えるのが効率的です。

§1.10 ケプラー第3法則(公転周期)

※ 手元プリント参照。与えられた量: 地球の軌道長半径\(1.0\)天文単位・公転周期\(1.0\)年。ある小惑星の軌道長半径\(a=3.0\)天文単位。必要なら\(\sqrt{3}=1.7\)を使う。

答え: \(5.1\)年。ケプラー第3法則「周期の2乗は長半径の3乗に比例」を、天文単位・年の単位系で\(T^2=a^3\)と書けます。\(T=\sqrt{3.0^3}=\sqrt{27}=3\sqrt{3}=3\times1.7=5.1\)と求まります。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 法則を\(T=a^3\)と覚えていて、\(T=3.0^3=27\)年としてしまう。
診断: 第3法則は「周期の2乗=長半径の3乗」で、周期にも2乗がつく。左辺の2乗を落として覚えていると、答えが大きくずれます。
誤答パターン②: 指数を混同して\(T^2=a^2\)とし、\(T=a=3.0\)年としてしまう。
診断: 「2乗と3乗」という左右で違う数字を、同じにしてしまっている。周期は2乗・長半径は3乗、という非対称をしっかり区別できていません。
誤答パターン③: 天文単位や年をわざわざ\(\text{m}\)や秒に直そうとして、比例定数の計算で混乱する。
診断: 地球を基準にすれば\(T^2=a^3\)がそのまま使える、という単位系のうまみを活かせていない。基準になる天体があるときは、そこに合わせるのが最短だ、という発想が抜けています。

正しい思考プロセス

Step 1: 状況を整理します。地球は長半径\(1.0\)・周期\(1.0\)。この地球を「ものさし」にして小惑星の周期を測ります。Step 2: 法則を選びます。別々の天体の周期を比べるので第3法則\(T^2=a^3\)。地球で\(1^2=1^3\)が成り立つので、この単位系では比例定数が\(1\)になり、そのまま\(T^2=a^3\)。Step 3: 意味を確認。太陽から遠い天体ほど、1周にかかる時間が急激に長くなる、という関係です。Step 4: 代入します。\(T^2=3.0^3=27\)、よって\(T=\sqrt{27}\)。ここで\(\sqrt{27}=\sqrt{9\times3}=3\sqrt{3}=3\times1.7=5.1\)。Step 5: 妥当性。長半径が\(3\)倍でも周期はおよそ\(5\)倍と、距離以上に伸びている。遠いほど1周が長くなる関係と一致します。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

地球を基準にすると、この単位系では\(T^2=a^3\)。
$$\begin{aligned}
T^2 &= 3.0^3 \\ &= 27 \\
T &= \sqrt{27}
\end{aligned}$$
根号の中を\(9\times3\)に分けて外に出します。
$$\begin{aligned}
\sqrt{27} &= \sqrt{9\times3} \\ &= 3\sqrt{3} \\
T &= 3\times1.7 \\ &= 5.1
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「基準になる天体を1として比で解く」やり方は、月や人工衛星の周期を求めるときにも同じように使えます。数値をむやみに\(\text{m}\)や秒へ直さず、比で押し切ると計算がぐっと楽になります。
波及②: \(\sqrt{27}=3\sqrt{3}\)のように根号の中を整理する操作は、物理の答えを「きれいな形」で書くための必須技術です。数学で習う平方根の変形が、そのまま物理の最後のひと押しで効いてくる好例です。

§2. 大問2 ─ 弾丸が刺さる衝突とエネルギー・摩擦(2007 福岡大)

※ 問題文・図は手元プリント参照。設定: あらい水平面に静止した質量 \(M\) の物体Aに、左から質量 \(m\) の弾丸Bが速さ \(u_0\) で水平に飛び込み、瞬間的に刺さって一体となり右向きに速さ \(V\) で動き出す。重力加速度 \(g\)、Aと水平面のあいだの動摩擦係数 \(\mu\)。

§2.1 弾丸Bがはじめにもっていた運動エネルギー

※ 手元プリント参照。問われていること: 刺さる前の弾丸Bだけがもつ運動エネルギーを求める。

答え: \(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\)。運動エネルギーの定義「\(\displaystyle\frac{1}{2}\times\)質量\(\times\)速さの2乗」に、Bの質量 \(m\) と速さ \(u_0\) をそのまま代入するだけ。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 一体化したあとの速さ \(V\) を使って \(\displaystyle\frac{1}{2}mV^2\) と書いてしまう。
診断: 「はじめに」という言葉を読み飛ばし、問題の時間軸を取り違えている。エネルギーは「いつの時点の」値かで全く変わる。まず時刻を固定してから式を立てるクセが必要。
誤答パターン②: 質量に \(M+m\) を入れて \(\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)u_0^2\) とする。
診断: 動いているのはまだBだけなのに、Aの質量まで巻き込んでいる。「速さ \(u_0\) で動いているのは誰か」を主語で確認していない。
誤答パターン③: 運動量 \(mu_0\) とごちゃ混ぜにして、答えを \(mu_0\) と書く。
診断: 運動量(速さの1乗・向きあり)と運動エネルギー(速さの2乗・向きなし)を別物として区別できていない。単位を意識すれば取り違えは防げる。

正しい思考プロセス

Step 1: 「はじめに」=弾丸が刺さる直前の瞬間、と時刻を固定する。Step 2: その瞬間に動いているのは弾丸Bだけ(Aは静止)と主語を確認する。Step 3: 運動エネルギーの定義式に、Bの質量 \(m\)・速さ \(u_0\) を代入する。Step 4: \(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\) を得る。ここで大事なのは、この値がこの後の問題(失われるエネルギー)で「もとの残高」として効いてくるという意識だ。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: エネルギーや運動量を求めるときは、必ず「いつ・誰の」値かをセットで固定する。時刻と主語を書き添えるだけで、この手の取り違えはほぼ消える。
波及②: 運動量は「速さの1乗・向きつき」、運動エネルギーは「速さの2乗・向きなし」。この2つの見分けは衝突問題の土台になる。

§2.2 運動量保存則から一体化後の速さ \(V\)

※ 手元プリント参照。問われていること: 刺さって一体となった直後の速さ \(V\) を \(M,m,u_0\) で表す。

答え: \(V=\displaystyle\frac{mu_0}{M+m}\)。刺さる瞬間は外から水平方向の力がはたらかない(摩擦は瞬間的でほぼゼロ)ので、衝突の前後で運動量の合計が保存する。「刺さる前の運動量 \(mu_0\)」=「刺さった後の運動量 \((M+m)V\)」を解くだけ。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「エネルギーは保存するはず」と思い込み、\(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2=\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2\) から \(V\) を出す。
診断: 刺さって一体化する衝突(合体する衝突)では力学的エネルギーは保存しない。ここで使えるのは運動量保存だけ。「くっつく=エネルギーは減る」を体に入れておく。
誤答パターン②: 運動量保存は使えたが、分母を \(M\) だけにして \(V=\displaystyle\frac{mu_0}{M}\) とする。
診断: 刺さった後に動くのはAとBが合体した物体で、その質量は \(M+m\)。合体後の質量を「両方の和」にする、という当たり前を式で落としている。
誤答パターン③: Aは静止していたから運動量ゼロなのに、左辺にAの項を書こうとして詰まる。
診断: 静止=運動量ゼロ、という基本が式に反映できていない。ゼロの項は「書いて消す」と整理しやすい。

正しい思考プロセス

Step 1: 保存則を選ぶ。刺さる瞬間は外力(摩擦)が無視できるので運動量保存を選ぶ。Step 2: 衝突前の運動量を書く。Bが \(mu_0\)、Aは静止で \(0\)、合計 \(mu_0\)。Step 3: 衝突後の運動量を書く。一体の質量 \(M+m\) が速さ \(V\) なので \((M+m)V\)。Step 4: 等式 \(mu_0=(M+m)V\) を立てる。Step 5: \(V\) について解いて \(V=\displaystyle\frac{mu_0}{M+m}\)。分母が「両方の質量の和」になっているかを最後に必ず見直す。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 衝突問題ではまず「どの保存則が使えるか」を選ぶのが第一歩。合体・刺さる衝突では運動量だけ、はね返る衝突では反発係数も併用、と場面で使い分ける。
波及②: 合体後の質量は必ず「参加した質量の総和」。動く主役が途中で変わったら、質量も書き換える習慣をつける。

§2.3 刺さって失われた力学的エネルギー

※ 手元プリント参照。問われていること: 刺さる前後で減った力学的エネルギーを \(M,m,u_0\) で表す。

答え: \(\displaystyle\frac{Mmu_0^2}{2(M+m)}\)。「衝突前のエネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\)」から「衝突後のエネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2\)」を引き、\(V=\displaystyle\frac{mu_0}{M+m}\) を代入して整理すると出る。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 引く向きを逆にして「衝突後 − 衝突前」で計算し、答えが負になる/エネルギーが増えたと考える。
診断: 「失われた(減った)量」は必ず「前 − 後」。合体衝突で総エネルギーが増えることは絶対にない。符号がマイナスになったら向きの取り違えを疑う。
誤答パターン②: \(V\) を代入し忘れ、\(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2-\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2\) の形のまま「答え」とする。
診断: 問題は \(M,m,u_0\) だけで表せと言っている。\(V\) は未知量ではなく前問で求めた既知量なので、必ず代入して消す。文字の指定を先に読むクセが要る。
誤答パターン③: 代入までは進んだが、\((M+m)^2\) が分母に出る途中式で約分を止め、整理しきれずに複雑な形で終わる。
診断: 約分の手前で「もう十分」と諦めている。分子と分母に共通因数がないか最後まで見る根気が、計算の見通しを決める。

正しい思考プロセス

Step 1: 「失われた量」=衝突前エネルギー − 衝突後エネルギー、と定義を書く。Step 2: \(\Delta E=\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2-\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2\)。Step 3: \(V=\displaystyle\frac{mu_0}{M+m}\) を代入する。Step 4: \(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\) でくくり、括弧の中を通分して整理する。Step 5: 約分すると \(\displaystyle\frac{Mmu_0^2}{2(M+m)}\) に落ち着く。下のDC-09で1行ずつ確認しよう。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

まず \(V^2\) を作る。

$$\begin{aligned}
V^2 &= \left(\displaystyle\frac{mu_0}{M+m}\right)^2 \\
&= \displaystyle\frac{m^2u_0^2}{(M+m)^2}
\end{aligned}$$

これを \(\Delta E\) に代入し、\(\displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\) でくくる。

$$\begin{aligned}
\Delta E &= \displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2-\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)\cdot\displaystyle\frac{m^2u_0^2}{(M+m)^2} \\
&= \displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2-\displaystyle\frac{1}{2}\cdot\displaystyle\frac{m^2u_0^2}{M+m} \\
&= \displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\left(1-\displaystyle\frac{m}{M+m}\right) \\
&= \displaystyle\frac{1}{2}mu_0^2\cdot\displaystyle\frac{M}{M+m} \\
&= \displaystyle\frac{Mmu_0^2}{2(M+m)}
\end{aligned}$$

括弧の中は \(1-\displaystyle\frac{m}{M+m}=\displaystyle\frac{(M+m)-m}{M+m}=\displaystyle\frac{M}{M+m}\) と通分している。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 合体衝突では必ずエネルギーが減る。減少量が \(\displaystyle\frac{Mmu_0^2}{2(M+m)}\) のように「両質量の積 ÷ 和」の形になるのは典型で、答えの形を覚えておくと検算に使える。
波及②: 「何文字で表すか」の指定は、どの量を代入して消すかの地図。指定文字を先に読めば、途中で止まらずに済む。

§2.4 失われたエネルギーは何に変化したか

※ 手元プリント参照。問われていること: (3)で減った力学的エネルギーがどんな形のエネルギーに変わったかを文章で答える。

答え: 物体や床をつくる原子・分子の振動のエネルギー、つまり熱エネルギーに変化した。弾丸がめり込むときの変形や摩擦で発生する。エネルギーは消えたのではなく、目に見えない熱に姿を変えただけ。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「エネルギーが消えた」「なくなった」と書く。
診断: エネルギー保存の法則を理解できていない。エネルギーは形を変えるだけで、この世から消えることはない。「減った力学的エネルギーはどこへ行った?」と追いかける姿勢が正解の入口。
誤答パターン②: 「位置エネルギーに変わった」と書く。
診断: 水平面上の運動で高さは変わらないので位置エネルギーは増えない。場面をイメージせず、知っている用語をとりあえず当てている。
誤答パターン③: 「音エネルギーだけに変わった」と書く。
診断: 音になる分はごくわずかで、大半は変形と摩擦による熱。主役(熱)を落として脇役(音)だけを答えている。

正しい思考プロセス

Step 1: 力学的エネルギーが減ったという事実を、保存則の視点で「別の形に移った」と読み替える。Step 2: 現象を思い浮かべる。弾丸が物体にめり込む=激しい変形と摩擦が起きている。Step 3: 変形や摩擦は、物質をつくる原子・分子を細かく揺らす=熱の発生。Step 4: よって減った分は主に熱エネルギー(原子・分子の振動エネルギー)に変わった、と結論づける。「消えた」ではなく「移った」で答える。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 力学的エネルギーが減る問題では、その受け皿はたいてい熱。合体・摩擦・変形が出てきたら「熱に化けた」と考えると外さない。
波及②: エネルギー保存は「合計は不変・形は変わる」がすべて。減った量を必ず別の形で受け止めさせる、この追跡がエネルギー問題の核心。

§2.5 一体となったAにはたらく動摩擦力

※ 手元プリント参照。問われていること: 一体化した物体が床の上をすべるときに受ける動摩擦力の大きさを \(M,m,\mu,g\) で表す。

答え: \(\mu(M+m)g\)。動摩擦力は「動摩擦係数 \(\mu\) × 垂直抗力」。水平面では垂直抗力が重さ \((M+m)g\) に等しいので、そのまま掛け合わせる。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 質量にAの \(M\) だけを使い、\(\mu Mg\) とする。
診断: 床を押しているのは一体化した物体全体で、その質量は \(M+m\)。合体後の質量に頭を切り替えていない。前問までの「一体」を引き継ぐ。
誤答パターン②: \(\mu\) を掛け忘れて \((M+m)g\)(=ただの重さ)を摩擦力としてしまう。
診断: 垂直抗力と動摩擦力を混同している。垂直抗力に \(\mu\) を掛けて初めて摩擦力になる、という2段構えが抜けている。
誤答パターン③: 弾丸Bの \(m\) だけで \(\mu mg\) とする。
診断: 「刺さって一体になった」設定を忘れ、床に載っている質量を弾丸分だけと勘違いしている。誰が床を押しているのかを図で確認する。

正しい思考プロセス

Step 1: 動摩擦力の公式「摩擦力=動摩擦係数 × 垂直抗力」を思い出す。Step 2: 垂直抗力を求める。水平面で上下方向はつり合っているので、垂直抗力 \(N\) は一体の重さに等しく \(N=(M+m)g\)。Step 3: 公式に代入して \(f=\mu N=\mu(M+m)g\)。Step 4: 質量が「両方の和」になっているか、\(\mu\) が掛かっているかの2点を最後に確認する。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 摩擦力を出すときは、まず垂直抗力を正しく求めるのが先。水平面なら重さと同じだが、斜面や外力で押さえつけられていると変わるので油断しない。
波及②: 「動摩擦係数 × 垂直抗力」は二段構え。係数を掛け忘れると、力の大きさが桁違いになる。公式を分解して唱えると抜けが減る。

§2.6 止まるまでにすべった距離 \(s\)

※ 手元プリント参照。問われていること: 一体化した物体が距離 \(s\) だけすべって止まった。\(s\) を \(V,\mu,g\) で表す。

答え: \(s=\displaystyle\frac{V^2}{2\mu g}\)。動き出しの運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2\) が、動摩擦力のする仕事 \(\mu(M+m)g\cdot s\) ですべて消えて止まる、と考える。両辺から \((M+m)\) が消えるのがポイント。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 答えに質量 \((M+m)\) が残ると思い込み、\(s=\displaystyle\frac{(M+m)V^2}{2\mu(M+m)g}\) を約分せずに複雑なまま提出する。
診断: 運動エネルギーにも摩擦の仕事にも同じ \((M+m)\) が掛かるので、必ず消える。約分できる形を約分しきらないのは、式全体を見渡せていないサイン。
誤答パターン②: 仕事=力 × 距離の「距離」を取り違え、摩擦の仕事に \(s\) 以外の量を入れる。
診断: 仕事の距離は「力がはたらいた向きに動いた距離」。ここでは止まるまでにすべった距離 \(s\) そのもの。図で移動量を確認する習慣が要る。
誤答パターン③: エネルギーではなく等加速度の公式を無理に使い、加速度を出す途中で符号を間違える。
診断: 解けなくはないが遠回りで、符号ミスを招きやすい。「動き出しのエネルギーが摩擦の仕事で消える」というエネルギー収支で見ると一直線で解ける。道具の選び方が精度を分ける。

正しい思考プロセス

Step 1: エネルギー収支を立てる。動き出しの運動エネルギーが、摩擦力のする仕事だけ減って最後にゼロ(静止)になる。Step 2: 左辺=\(\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2\)、右辺=\(\mu(M+m)g\cdot s\) と書き、等号で結ぶ。Step 3: 両辺の共通因数 \((M+m)\) を約分して消す。Step 4: \(s\) について解いて \(s=\displaystyle\frac{V^2}{2\mu g}\)。質量が答えに残らないことを確認する。下のDC-09で約分を確認しよう。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

運動エネルギー=摩擦の仕事、で等式を立てる。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{2}(M+m)V^2 &= \mu(M+m)g\cdot s
\end{aligned}$$

両辺に共通の \((M+m)\) を約分して消す。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{2}V^2 &= \mu g\cdot s
\end{aligned}$$

\(s\) について解く。

$$\begin{aligned}
s &= \displaystyle\frac{V^2}{2\mu g}
\end{aligned}$$

質量が答えに一切残らないのは、動き出す力(エネルギー)も止める力(摩擦)も同じ質量に比例するから。重い物体ほど止めにくいが、重い物体ほど勢いも大きいので、結局すべる距離は質量によらない。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「動き出しのエネルギーが摩擦の仕事で消える」は、止まるまでの距離を出す万能の型。加速度や時間を経由せず一発で距離が出る。
波及②: 摩擦だけで止まる運動では、すべる距離が質量によらない。この「質量が消える」現象は、両辺に同じ質量が掛かるからで、答えの形がシンプルになったら物理的な意味を読み取るチャンス。

§3. 大問3 ─ 2物体の衝突を記号で追う(2022 金沢工大)

※ 手元プリント参照。設定: なめらかな(摩擦のない)水平な床の上で、質量 \(m\) の物体Aが \(x\) 軸の正の向きに速さ \(v_0\) で進み、静止している質量 \(M\) の物体Bに一直線上で衝突する。反発係数(はね返り係数)は \(e\)(\(0 \lt e \lt 1\))。衝突後のAの速度を \(v\)、Bの速度を \(V\) とする(どちらも \(x\) 正を正とする)。この流れで、最後にAが \(x\) 負の向きに進む条件までを記号選択で追っていく。

§3.(ア)運動量保存の関係式

※ 手元プリント参照。問われていること: 衝突の前後で成り立つ運動量保存の式を選ぶ。

答え: ⑤ \(mv_0=mv+MV\)。床がなめらかで水平方向に外力がないので、衝突前の運動量の合計(左辺)=衝突後の運動量の合計(右辺)。Bは最初静止しているので左辺にBの項はいらない。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 右辺の符号を間違えて \(mv_0=mv-MV\) とする。
診断: 「衝突後の運動量の合計」は、AもBも同じ正の向きを基準に足し算する。向きの符号は速度 \(v,V\) の中身が引き受けるので、式の骨組みではプラスで足す。引き算にする理由がない。
誤答パターン②: Bも最初動いていると勘違いし、左辺に \(MV_0\) のような項を足そうとして選択肢が見つからず混乱する。
診断: 設定文の「静止している質量 \(M\)」を読み落としている。静止=運動量ゼロなので左辺にBは現れない。前提を主語つきで確認する。
誤答パターン③: 反発係数の式((ウ)で使う式)とごちゃ混ぜにして、\(e\) を含む式を運動量保存として選ぶ。
診断: 運動量保存とはね返りの式は別の法則。運動量保存には \(e\) は登場しない。2つの式の役割を分けて覚える。

正しい思考プロセス

Step 1: どの法則かを決める。「衝突の前後で運動量の合計は変わらない」=運動量保存。Step 2: 衝突前の合計を書く。Aが \(mv_0\)、Bは静止で \(0\)、合計 \(mv_0\)。Step 3: 衝突後の合計を書く。Aが \(mv\)、Bが \(MV\)、合計 \(mv+MV\)。Step 4: 前=後で \(mv_0=mv+MV\)。この形の選択肢⑤を選ぶ。番号を覚えるのではなく、「前の合計=後の合計」という組み立てで毎回作れることが大事。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 運動量保存の式は「衝突前の全運動量=衝突後の全運動量」を、決めた正の向きに沿って足すだけ。向きの情報は速度の符号に任せ、骨組みは足し算にする。
波及②: 記号選択でも、選択肢を眺めて当てるのではなく自分で式を作ってから照合する。作ってから選べば、符号違いの引っかけに強くなる。

§3.(イ)Bから見たAの相対速度 \(v’\)

※ 手元プリント参照。問われていること: 衝突後、Bを基準にしたときのAの速度(相対速度)\(v’\) を表す式を選ぶ。

答え: ③ \(v’=v-V\)。「BからみたAの速さ」は、Aの速度からB自身の速度を引いたもの。基準にする側(B)の速度を引く、が相対速度の決まり。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 引く順番を逆にして \(v’=V-v\) を選ぶ。
診断: 「◯から見た△の速度」は必ず「△の速度 − ◯の速度」。ここでは「B(基準)から見たA(対象)」なので \(v-V\)。誰が基準で誰が対象かを言葉で固定してから引く。
誤答パターン②: 相対速度なのに足し算 \(v’=v+V\) を選ぶ。
診断: 相対速度は差(引き算)で決まる。速度どうしを足すのは向きが逆のものを合成するときなどで、基準からの見え方とは別の話。定義に立ち返る。
誤答パターン③: 衝突前後を混同し、衝突前の速度 \(v_0\) や \(0\) を使った式を選ぶ。
診断: ここで問われているのは衝突「後」の相対速度なので、使うのは衝突後の \(v\) と \(V\)。時刻を取り違えている。いつの話かを毎回確認する。

正しい思考プロセス

Step 1: 相対速度の定義を確認する。「◯から見た△の速度=△の速度 − ◯の速度」。Step 2: 基準と対象を特定する。基準はB、対象はA。Step 3: 定義に当てはめる。\(v’=(\text{Aの速度})-(\text{Bの速度})=v-V\)。Step 4: 選択肢③と照合する。順番を口に出して確認すると、逆向きの引っかけに引っかからない。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 相対速度は「対象 − 基準」。文章の「◯から見た」の◯が基準(引く側)だと決めておくと、順番で迷わない。
波及②: この相対速度は次の(ウ)で反発係数とつながる。反発係数は「衝突後の相対速度と衝突前の相対速度の比」なので、ここで相対速度をきちんと作れることが後半の土台になる。

§3.(ウ)反発係数 \(e\) を用いた \(v’\) と \(v_0\) の関係

※ 手元プリント参照。問われていること: 反発係数の定義から、衝突後の相対速度 \(v’\) を衝突前の速さ \(v_0\) と \(e\) で表す式を選ぶ。

答え: ⑥ \(v’=-ev_0\)。反発係数の定義は「衝突後の相対速度=\(-e\)×衝突前の相対速度」。衝突前のBから見たAの相対速度は \(v_0\)(Bは静止、Aは \(v_0\))なので \(v’=-ev_0\)。マイナスは「近づく向きから遠ざかる向きへ入れ替わる」ことを表す。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: マイナスを落として \(v’=ev_0\) を選ぶ。
診断: 反発係数の式にはマイナスがつくのが本質。衝突前は「近づく」、衝突後は「遠ざかる」で相対速度の向きが逆転するから、符号が反転する。この向きの入れ替わりを式で表すのがマイナスの正体。
誤答パターン②: 反発係数を「速さの比」とだけ覚えていて、衝突前の相対速度を \(v_0\) ではなく別の量にしてしまう。
診断: 衝突前のBから見たAの相対速度は、Aの速度 \(v_0\) からBの速度 \(0\) を引いた \(v_0\)。基準(B)が静止だと相対速度=Aの速度そのものになる。(イ)と同じ引き算を衝突前にも当てる。
誤答パターン③: 反発係数の式に運動量保存を混ぜて、\(m\) や \(M\) を含む式を選ぶ。
診断: 反発係数の式に質量は入らない。速度(相対速度)だけの関係。2つの法則の守備範囲を混同している。

正しい思考プロセス

Step 1: 反発係数の定義を書く。「衝突後の相対速度=\(-e\)×衝突前の相対速度」。Step 2: 衝突前のBから見たAの相対速度を作る。Aが \(v_0\)、Bが \(0\) なので \(v_0-0=v_0\)。Step 3: 定義に代入する。\(v’=-e\times v_0=-ev_0\)。Step 4: マイナスがついているか、\(e\) が掛かっているかを確認して⑥を選ぶ。マイナスの意味(向きが逆転する)を言葉で言えると忘れない。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 反発係数は「衝突後の相対速度=\(-e\)×衝突前の相対速度」。マイナスは近づく向きと遠ざかる向きの入れ替わりを表す。数値だけでなく符号の意味をつかむと、はね返り問題全体が見通せる。
波及②: 基準にする物体が静止していると、相対速度はもう一方の速度そのものになる。この単純化を使えると式が軽くなる。

§3.(エ)衝突後のAの速度 \(v\)

※ 手元プリント参照。問われていること: (ア)の運動量保存と(イ)(ウ)の反発の式を連立して、衝突後のAの速度 \(v\) を求める。

答え: ⑥ \(\displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0\)。(イ)(ウ)から \(v-V=-ev_0\)、すなわち \(V=v+ev_0\)。これを(ア)の \(mv_0=mv+MV\) に代入して \(v\) について解くと出る。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(V=v+ev_0\) を代入するとき、\(V\) と \(v\) を取り違えて代入する。
診断: 連立で消したいのは \(V\)(Bの速度)。求めたい \(v\) を残し、\(V\) の方を \(v\) の式に書き換えて消す、という段取りが崩れている。「何を残し何を消すか」を先に決める。
誤答パターン②: 分母を \(m\) だけ、または \(M\) だけにして \(\displaystyle\frac{m-eM}{m}v_0\) のようにする。
診断: \(v\) について整理すると \(v\) の係数は \(m+M\) にまとまる。片方の質量だけを分母に残すのは、\(mv\) と \(MV\) の両方から \(v\) の項が出ることを見落としている。
誤答パターン③: 分子の \(eM\) の符号を落として \(\displaystyle\frac{m+eM}{m+M}v_0\) とする。
診断: 反発の式 \(V=v+ev_0\) を代入すると \(MV\) から \(-eMv_0\) が現れる。(ウ)で確認したマイナスを、代入の途中でうっかり落としている。符号は代入の各段階で確認する。

正しい思考プロセス

Step 1: 使う式をそろえる。運動量保存 \(mv_0=mv+MV\) と、(イ)(ウ)から \(v-V=-ev_0\)。Step 2: 後者を \(V\) について解く。\(V=v+ev_0\)。Step 3: これを運動量保存に代入し、\(V\) を消す。Step 4: 右辺を \(v\) の項でまとめ、\(v\) について解く。Step 5: \(v=\displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0\)。分子の符号と分母の \(m+M\) を最後に確認する。下のDC-09で連立を1行ずつ追おう。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

(イ)\(v’=v-V\) と(ウ)\(v’=-ev_0\) を等しく置く。

$$\begin{aligned}
v-V &= -ev_0
\end{aligned}$$

これを \(V\) について解く。

$$\begin{aligned}
V &= v+ev_0
\end{aligned}$$

運動量保存の式に代入して \(V\) を消す。

$$\begin{aligned}
mv_0 &= mv+M(v+ev_0) \\
mv_0 &= mv+Mv+Mev_0 \\
mv_0-Mev_0 &= (m+M)v \\
(m-eM)v_0 &= (m+M)v
\end{aligned}$$

\(v\) について解く。

$$\begin{aligned}
v &= \displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 衝突後の速度は「運動量保存」と「反発係数」の2式を連立して出す。片方だけでは足りない、というのが衝突問題の基本構造。
波及②: 連立するときは「求めたい文字を残し、いらない文字を先に消す」段取りを決めてから代入する。消す相手を先に決めると計算が迷子にならない。

§3.(オ)衝突後のBの速度 \(V\)

※ 手元プリント参照。問われていること: 衝突後のBの速度 \(V\) を求める。

答え: ② \(\displaystyle\frac{m(1+e)}{m+M}v_0\)。\(V=v+ev_0\) に(エ)で求めた \(v\) を代入して整理すると、分子が \(m(1+e)\) にきれいにまとまる。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(V=v+ev_0\) の \(ev_0\) を足し忘れ、\(V=v\) としてしまう。
診断: \(V\) は \(v\) に \(ev_0\) を足したもの。反発の式を途中で使い切ったつもりになって、最後の一項を落としている。使った式を最後まで持ち歩く。
誤答パターン②: 通分・整理の途中で符号を間違え、分子を \(m(1-e)\) や \(m-e\) にしてしまう。
診断: \((m-eM)\) と \(e(m+M)\) を足すとき、\(-eM\) と \(+eM\) が打ち消し合うのを見落としている。項ごとに符号を書き出すと消え方が見える。
誤答パターン③: 分子を \(m(1+e)\) と因数分解できず、\(m+me\) のまま止まって選択肢と照合できない。
診断: \(m+me=m(1+e)\) の共通因数 \(m\) でくくる一手が抜けている。選択肢が因数分解の形なら、自分の答えも同じ形に整えて比べる。

正しい思考プロセス

Step 1: 使う関係を確認する。\(V=v+ev_0\)。Step 2: (エ)の \(v=\displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0\) を代入する。Step 3: 分母を \(m+M\) にそろえて、分子どうしを足す。Step 4: 分子 \((m-eM)+e(m+M)\) を展開すると \(-eM\) と \(+eM\) が消え、\(m+me=m(1+e)\)。Step 5: \(V=\displaystyle\frac{m(1+e)}{m+M}v_0\)。②を選ぶ。下のDC-09で変形を確認しよう。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

\(V=v+ev_0\) に \(v\) を代入する。

$$\begin{aligned}
V &= \displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0+ev_0
\end{aligned}$$

第2項を分母 \(m+M\) にそろえる。

$$\begin{aligned}
V &= \displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0+\displaystyle\frac{e(m+M)}{m+M}v_0 \\
&= \displaystyle\frac{(m-eM)+e(m+M)}{m+M}v_0
\end{aligned}$$

分子を展開すると \(-eM\) と \(+eM\) が打ち消し合う。

$$\begin{aligned}
(m-eM)+e(m+M) &= m-eM+em+eM \\
&= m+em \\
&= m(1+e)
\end{aligned}$$

よって次のようにまとまる。

$$\begin{aligned}
V &= \displaystyle\frac{m(1+e)}{m+M}v_0
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 片方の速度が出たら、もう片方は反発の式に代入するだけで出る。連立を一から解き直す必要はない。求めた結果を次の一手に使い回す。
波及②: 答えが選択肢と形が違うときは、因数分解や通分で見た目をそろえてから比べる。\(m+me\) と \(m(1+e)\) は同じもの。式変形で形を合わせる力は記号選択で効く。

§3.(カ)Aが \(x\) 負の向きに進む条件

※ 手元プリント参照。問われていること: 衝突後にAが \(x\) 軸の負の向き(はね返って戻る向き)に進む、つまり \(v \lt 0\) になる条件を選ぶ。

答え: ② \(m \lt eM\)。(エ)の \(v=\displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0\) で、分母 \(m+M \gt 0\)・\(v_0 \gt 0\) はいつも正。だから \(v \lt 0\) になるのは分子 \(m-eM \lt 0\)、つまり \(m \lt eM\) のとき。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 不等号の向きを逆にして \(m \gt eM\) を選ぶ。
診断: \(v \lt 0\)(負になる)=分子が負、なので \(m-eM \lt 0\)、移項して \(m \lt eM\)。「戻る=速度が負=分子が負」という向きの対応を、頭の中で言葉にしていない。負になる条件を丁寧に追う。
誤答パターン②: 分母 \(m+M\) の符号を気にして場合分けを始め、混乱する。
診断: 質量はどちらも正なので \(m+M\) は必ず正。正の分母は不等号の向きを変えない。分母がいつも正だと確認できれば、符号を決めるのは分子だけ、と割り切れる。
誤答パターン③: \(v_0\) の符号を負かもしれないと疑い、条件が定まらないとする。
診断: Aは \(x\) 正の向きに速さ \(v_0\) で進むと設定されているので \(v_0 \gt 0\) は確定。設定文で決まっている符号を、わざわざ未知扱いしている。前提を読み直す。

正しい思考プロセス

Step 1: 条件を数式に翻訳する。「Aが \(x\) 負の向きに進む」=衝突後のAの速度 \(v \lt 0\)。Step 2: (エ)の式 \(v=\displaystyle\frac{m-eM}{m+M}v_0\) を用意する。Step 3: 符号を決める部分を切り分ける。分母 \(m+M \gt 0\)、\(v_0 \gt 0\) はどちらも正で不等号に影響しない。Step 4: よって \(v\) の符号は分子 \(m-eM\) の符号で決まる。Step 5: \(v \lt 0\) となるのは \(m-eM \lt 0\)、移項して \(m \lt eM\)。②を選ぶ。「符号を決めるのは分子だけ」と見抜けるかが勝負どころ。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 分数式の符号は、分母と分子の符号に分けて考える。分母がつねに正とわかれば、符号を決めるのは分子だけ。この切り分けで不等式が一気に簡単になる。
波及②: 「戻る・止まる・追い越す」といった運動の様子は、速度の符号と大きさで言い換えられる。\(v \lt 0\) は戻る、\(v=0\) は止まる、\(v \gt 0\) は同じ向きに進む。日本語の条件を数式に翻訳する練習が、記号選択でも文章題でも効く。

§4. 大問4 ─ 棒の剛体のつり合い(2003 宮崎大)

※ 問題文・図は手元プリント参照。設定: 質量 \(M\)、長さ \((a+b)\) のまっすぐな棒ABがあり、重心はA端から \(a\) の位置。A端に糸をつけて天井からつるし、B端を水平方向に一定の力 \(F\) で引くと、棒ABは水平と \(30^\circ\)、A端の糸は水平と \(60^\circ\) をなして静止した。重力加速度 \(g\)。

§4.1 力のつりあいとモーメントのつりあいの式

※ 手元プリント参照。問われていること: 棒にはたらく力のつりあいの式(水平・鉛直)と、重心のまわりの力のモーメントのつりあいの式を書け。

答え: 水平方向 \(F=\displaystyle\frac{1}{2}T\)、鉛直方向 \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T=Mg\)、重心まわりのモーメント \(Ta=Fb\)。糸の張力を水平・鉛直に分け、回転軸を重心にとると重力が消えて糸と力Fだけが残る、という3本立てです。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 糸の張力の水平成分を \(T\sin60^\circ\) と書いてしまい、\(F=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T\) としてしまう。
診断: sin と cos を機械的に「水平だから sin」と覚えているクセ。角度は「どの軸から測った角か」で決まります。糸が水平と \(60^\circ\) をなすので、水平成分は水平軸に隣り合う辺、つまり \(T\cos60^\circ=\displaystyle\frac{1}{2}T\)。図を描いて直角三角形の「となりの辺」を毎回確認する習慣が処方箋です。
誤答パターン②: モーメントの回転軸を重心ではなくA端(糸の付け根)にとり、そこに重力の項 \(Mg\times a\) を残したまま式を立てて混乱する。
診断: 「軸はどこでもいい」までは正しいのですが、軸を選ぶ目的は「消したい力のうでをゼロにして式を軽くする」こと。重心を軸にすれば重力のうでが \(0\) になり、式が糸と力Fの2項だけになります。狙って軸を選ぶ発想が抜けているクセです。
誤答パターン③: うでの長さに棒の傾き \(30^\circ\) の三角比を掛けてしまい、\(Ta\cos30^\circ=Fb\cos30^\circ\) のような余計な因子を入れる。
診断: 糸の力も引く力Fもここでは「棒に垂直」ではなく「棒に沿った距離 \(a\)・\(b\) の点にはたらく力」ですが、モーメントは「力×軸から力の作用線までの垂直距離」。糸の張力・力Fそれぞれの向きと重心からの位置関係を丁寧に見ると、両辺に同じ \(30^\circ\) の因子が現れて約分で消えます。最初から余計な三角比を入れず、力と作用線の関係を図で確認するのが処方箋です。

正しい思考プロセス

Step 1: 棒にはたらく力を全部かき出す。糸の張力 \(T\)(A端・水平と \(60^\circ\))、重力 \(Mg\)(重心・真下)、引く力 \(F\)(B端・水平)。この3つだけです。

Step 2: 力を水平・鉛直に分解する。糸の張力は水平成分 \(T\cos60^\circ=\displaystyle\frac{1}{2}T\)、鉛直成分 \(T\sin60^\circ=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T\)。力Fは水平のみ、重力は鉛直のみ。

Step 3: 水平方向のつりあい。左向きの糸の水平成分と右向きの力Fがつり合うので \(F=\displaystyle\frac{1}{2}T\)。

Step 4: 鉛直方向のつりあい。上向きの糸の鉛直成分が重力を支えるので \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T=Mg\)。

Step 5: モーメントのつりあい。回転軸を重心にとると、重力は軸を通るのでうでが \(0\)、式から消えます。残るのは糸(A端・重心からの距離 \(a\))と力F(B端・重心からの距離 \(b\))。両者が重心まわりで逆回りにつり合うので \(Ta=Fb\)。なぜ重心を軸に選ぶと楽か──重力という「一番うっとうしい未知でない既知の力」を式から追い出せて、知りたい \(T\) と \(F\) の関係だけが残るからです。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

糸の張力の成分分解を、角度の測り方から順に確認します。

$$\begin{aligned}
T_{水平} &= T\cos60^\circ \\
T_{水平} &= \displaystyle\frac{1}{2}T \\
T_{鉛直} &= T\sin60^\circ \\
T_{鉛直} &= \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T
\end{aligned}$$

これを各方向のつりあいに入れます。

$$\begin{aligned}
F &= \displaystyle\frac{1}{2}T \\
\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T &= Mg
\end{aligned}$$

重心を軸にしたモーメントのつりあいは、糸と力Fの2項だけです。

$$\begin{aligned}
Ta &= Fb
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 剛体のつりあいは必ず「力の水平つりあい・力の鉛直つりあい・モーメントのつりあい」の3本セット。未知数が3つまでならこの3式で必ず解けます。まず力を全部かき出す→分解→3式、の順番を体にしみ込ませてください。
波及②: モーメントの軸は「消したい力が通る点」を狙って選ぶのが定石。重力を消したいなら重心、ある糸の張力を消したいならその糸の付け根。軸を賢く選ぶだけで計算量が半分になります。

§4.2 力F・張力T・比 \(\displaystyle\frac{b}{a}\)

※ 手元プリント参照。問われていること: 力F、張力T、および \(\displaystyle\frac{b}{a}\) を求めよ。

答え: \(F=\displaystyle\frac{Mg}{\sqrt{3}}\)、\(T=\displaystyle\frac{2Mg}{\sqrt{3}}\)、\(\displaystyle\frac{b}{a}=2\)。§4.1で作った3式を順に代入していくだけで、新しい発想は不要です。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 有理化のときに \(\displaystyle\frac{2Mg}{\sqrt{3}}\) を \(\displaystyle\frac{2\sqrt{3}Mg}{3}\) に直す途中で係数を落とし、\(T=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}Mg\) のように上下を取り違える。
診断: \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T=Mg\) を \(T\) について解くとき「両辺に \(\displaystyle\frac{2}{\sqrt{3}}\) を掛ける」を「\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を掛ける」と勘違いするクセ。分数の逆数をとる操作を1回ずつ紙に書いて確認しましょう。
誤答パターン②: 比を答えるときに \(\displaystyle\frac{b}{a}\) と \(\displaystyle\frac{a}{b}\) を逆にして \(\displaystyle\frac{1}{2}\) と答える。
診断: モーメント式 \(Ta=Fb\) を変形すると \(\displaystyle\frac{b}{a}=\displaystyle\frac{T}{F}\)。分母分子のどちらに \(a\)、どちらに \(b\) が来るかを、式を移項しながら実際に導くクセをつければ逆転ミスは防げます。暗記でなく毎回導出です。
誤答パターン③: モーメント式に代入するとき \(F\) と \(T\) を取り違えて \(Fa=Tb\) としてしまい、\(\displaystyle\frac{b}{a}=\displaystyle\frac{1}{2}\) を得る。
診断: どちらの力がどちらの端(A端かB端か)にはたらくかを図で確認していないクセ。糸の張力 \(T\) はA端(重心から \(a\))、力FはB端(重心から \(b\))。式は「力×その力のうで」で、\(T\) には \(a\)、\(F\) には \(b\) が付きます。

正しい思考プロセス

Step 1: 鉛直のつりあい \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T=Mg\) を \(T\) について解く。両辺に \(\displaystyle\frac{2}{\sqrt{3}}\) を掛けて \(T=\displaystyle\frac{2Mg}{\sqrt{3}}\)。

Step 2: 水平のつりあい \(F=\displaystyle\frac{1}{2}T\) に \(T\) を代入。\(F=\displaystyle\frac{1}{2}\times\displaystyle\frac{2Mg}{\sqrt{3}}=\displaystyle\frac{Mg}{\sqrt{3}}\)。

Step 3: モーメント式 \(Ta=Fb\) を比の形に直す。\(\displaystyle\frac{b}{a}=\displaystyle\frac{T}{F}\)。

Step 4: \(T\) と \(F\) の比を計算。\(\displaystyle\frac{T}{F}=\displaystyle\frac{2Mg/\sqrt{3}}{Mg/\sqrt{3}}=2\)。よって \(\displaystyle\frac{b}{a}=2\)。棒の右半分(B端側)が左半分(A端側)の2倍の長さ、と物理的な意味まで読み取れると完璧です。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

まず張力Tを鉛直式から出します。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}T &= Mg \\
T &= Mg\times\displaystyle\frac{2}{\sqrt{3}} \\
T &= \displaystyle\frac{2Mg}{\sqrt{3}}
\end{aligned}$$

次に力Fを水平式に代入して出します。

$$\begin{aligned}
F &= \displaystyle\frac{1}{2}T \\
F &= \displaystyle\frac{1}{2}\times\displaystyle\frac{2Mg}{\sqrt{3}} \\
F &= \displaystyle\frac{Mg}{\sqrt{3}}
\end{aligned}$$

最後にモーメント式から比を導きます。

$$\begin{aligned}
Ta &= Fb \\
\displaystyle\frac{b}{a} &= \displaystyle\frac{T}{F} \\
\displaystyle\frac{b}{a} &= \displaystyle\frac{2Mg/\sqrt{3}}{Mg/\sqrt{3}} \\
\displaystyle\frac{b}{a} &= 2
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: つりあいの式を「先に3本きちんと作ってから」代入で解くと、途中で迷子になりません。式を立てる段階と解く段階を分けるのが、剛体・力学全般で効く時間短縮術です。
波及②: 比を問われたら「同じ量どうしの割り算」で単位や定数が消える快感を味わってください。ここでも \(Mg\) と \(\sqrt{3}\) がまるごと消えて \(\displaystyle\frac{b}{a}=2\) というきれいな数だけが残りました。物理量の比はしばしばこうして簡単になります。

§5. 大問5 ─ 静止衛星(万有引力と等速円運動)

※ 手元プリント参照。設定: 質量 \(m\) の静止衛星が、質量 \(M\) の地球のまわりを半径 \(r\)・速さ \(v\) で等速円運動している。万有引力定数を \(G\) とする。静止衛星とは、地上から見ていつも同じ位置に止まって見える衛星のことです。

§5.1 静止衛星と地球の間の万有引力

※ 手元プリント参照。問われていること: 静止衛星と地球の間にはたらく万有引力の大きさを求めよ。

答え: \(G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)。万有引力の法則「2つの質量の積に比例し、距離の2乗に反比例する」にそのまま代入するだけです。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 距離を2乗せず \(G\displaystyle\frac{Mm}{r}\) と書く。
診断: 万有引力は距離の「2乗」に反比例。ここを忘れると次以降の運動方程式も全部ずれます。式を書くたびに「距離は2乗、質量は積」と口に出して確認しましょう。
誤答パターン②: 万有引力定数 \(G\) や地球の質量 \(M\) を書き落とし、\(\displaystyle\frac{m}{r^2}\) のようにする。
診断: 「引き合う2つの物体の質量が両方いる」ことを見落とすクセ。衛星の質量 \(m\) だけでなく相手(地球)の質量 \(M\) も掛かります。登場人物を先に全部書き出す習慣が処方箋です。
誤答パターン③: 距離を「地表からの高さ」で考えてしまい、地球の中心からの距離 \(r\) と取り違える。
診断: 万有引力の式の距離は必ず「2物体の中心間の距離」。地球については中心からはかった距離を使います。この問題では \(r\) が中心からの円運動の半径なので、そのまま \(r\) を使えばOKです。

正しい思考プロセス

Step 1: 万有引力の法則を思い出す。2物体の質量を \(M\)、\(m\)、中心間距離を \(r\) とすると、力は \(G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)。

Step 2: 登場する量を確認する。地球の質量 \(M\)、衛星の質量 \(m\)、中心からの距離 \(r\)、定数 \(G\)。すべてこの問題の記号でそろっています。

Step 3: そのまま代入して \(G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)。この力が次の設問で「円運動を続けさせている向心力の正体」になります。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 万有引力は「質量の積に比例・距離の2乗に反比例」。この形は惑星でも人工衛星でもリンゴでも同じ、宇宙で共通の法則です。まず正しい形で書けることが全ての出発点。
波及②: 距離はいつも「中心から中心まで」。地表からの高さと混同しないだけで、天体の問題のケアレスミスは激減します。

§5.2 円運動の運動方程式

※ 手元プリント参照。問われていること: 等速円運動の加速度が \(\displaystyle\frac{v^2}{r}\) であることを用いて、静止衛星の運動方程式を書け。

答え: \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)。向心方向のニュートンの運動方程式「質量×加速度=力」で、力の正体が万有引力です。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 万有引力とは別に「遠心力」を右辺にもう1つ足して、\(G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}+m\displaystyle\frac{v^2}{r}=0\) のような式を書く。
診断: 地上に立った視点(衛星と一緒に回らない外からの視点)で運動方程式を書くとき、遠心力は登場しません。遠心力は「衛星に乗った視点」でだけ現れる見かけの力。外から見て運動方程式を立てるなら、はたらく力は万有引力ただ1つです。視点を最初に固定するクセが処方箋。
誤答パターン②: 左辺の質量 \(m\) を付け忘れ、\(\displaystyle\frac{v^2}{r}=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\) と書く。
診断: 運動方程式は「質量×加速度=力」。加速度が \(\displaystyle\frac{v^2}{r}\) なら、必ず質量 \(m\) を掛けて \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}\) が左辺です。\(ma=F\) の形を毎回意識しましょう。
誤答パターン③: 加速度の向きを接線方向(進む向き)と勘違いし、向心方向(中心を向く向き)の式にしない。
診断: 等速円運動では速さが一定なので、加速度は進行方向にはなく、つねに中心を向いています。この中心向きの加速度をつくる力が万有引力。「向心方向で \(ma=F\)」と決めてから書くと迷いません。

正しい思考プロセス

Step 1: 視点を決める。地上(外)から静止衛星の円運動を眺める視点をとる。この視点では見かけの力(遠心力)は使わない。

Step 2: 向心方向の運動方程式 \(ma=F\) を用意する。加速度は中心向きで大きさ \(\displaystyle\frac{v^2}{r}\)、質量は \(m\)。

Step 3: 力の正体を入れる。中心を向く力は万有引力 \(G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\) ただ1つ。

Step 4: 等式にまとめて \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)。左辺は「回すのに必要な力」、右辺は「実際にそれを供給している力」で、両者が一致しているから円運動が保たれます。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 円運動の問題は「向心方向で \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}=(中心を向く力の合計)\)」を書くのが王道。中心を向く力が何かを見抜けば、あとは方程式を解くだけです。
波及②: 遠心力は「回転体に乗った視点」でだけ出る見かけの力。外から見るときは足さない。視点を混ぜないことが円運動最大のコツです。

§5.3 速さ \(v\) を \(T,r\) で表す

※ 手元プリント参照。問われていること: 地球の自転周期を \(T\) としたとき、静止衛星の速さ \(v\) を \(T\)、\(r\) で表せ。

答え: \(v=\displaystyle\frac{2\pi r}{T}\)。1周の道のり(円周 \(2\pi r\))を、1周にかかる時間(周期 \(T\))で割った「速さ=距離÷時間」そのものです。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 円周を直径 \(2r\) と勘違いして \(v=\displaystyle\frac{2r}{T}\) とする。
診断: 1周の道のりは「円周」であって直径ではありません。円周の公式は \(2\pi r\)(半径×2×円周率)。\(\pi\) が抜けているクセです。円運動では「1周=円周 \(2\pi r\)」と真っ先に確認しましょう。
誤答パターン②: 周期と速さの関係を混同し、\(v=2\pi r T\) のように周期を掛けてしまう。
診断: 速さは「距離÷時間」。周期 \(T\) は時間なので、掛けるのではなく割ります。単位で考えると、道のり(メートル)を時間(秒)で割って初めて速さになる、と確かめられます。
誤答パターン③: なぜ静止衛星の周期が地球の自転周期 \(T\) と同じなのか納得できず、別の周期を勝手に置いてしまう。
診断: 静止衛星は「地上から見ていつも同じ位置に止まって見える」衛星。止まって見えるためには、地球が1回自転する間に衛星もちょうど1周する必要があります。だから公転周期=自転周期 \(T\)。定義の意味を言葉で押さえるクセが処方箋です。

正しい思考プロセス

Step 1: 静止衛星の定義を思い出す。地上からいつも同じ真上に見える=地球の自転と歩調が完全に合っている。

Step 2: よって衛星が1周する時間(公転周期)は、地球が1回転する時間(自転周期)と等しく \(T\)。なぜ公転周期=自転周期か──もし少しでもずれていたら、衛星は空をゆっくり移動していき「静止」して見えないからです。

Step 3: 速さ=距離÷時間を使う。1周の距離は円周 \(2\pi r\)、それにかかる時間は \(T\)。よって \(v=\displaystyle\frac{2\pi r}{T}\)。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 円運動の速さは「円周 \(2\pi r\) ÷ 周期 \(T\)」で必ず出せます。周期がわかっているタイプの円運動では、この一本で速さに変換できると覚えておくと強い。
波及②: 「静止衛星=地球の自転と同期」という定義そのものが式を決めます。物理では、定義を言葉で正確に押さえることが、そのまま立式の第一歩になります。

§5.4 公転半径 \(r\) を \(G,M,T\) で表す

※ 手元プリント参照。問われていること: 静止衛星の公転半径 \(r\) を \(G\)、\(M\)、\(T\) で表せ。

答え: \(r=\sqrt[3]{\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}}\)。§5.2の運動方程式と§5.3の速さの式を組み合わせ、\(v\) を消してから \(r\) について解きます(3乗が出るので三乗根になります)。

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(r^3=\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\) まで出したのに三乗根を取り忘れ、\(r=\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\) と答える。
診断: 「求めたいのは \(r\)、いま手にしているのは \(r^3\)」を最後に確認しないクセ。式の左辺が \(r\) の何乗になっているかを常に見て、必要なら根号(ここでは三乗根)で戻す習慣をつけましょう。
誤答パターン②: \(v=\displaystyle\frac{2\pi r}{T}\) を代入するとき2乗を忘れ、\(v^2\) を \(\displaystyle\frac{2\pi r}{T}\) のまま入れて \(r\) の次数を間違える。
診断: 運動方程式に出てくるのは \(v^2\) なので、代入する前に \(v\) を2乗して \(v^2=\displaystyle\frac{4\pi^2 r^2}{T^2}\) を用意します。2乗すると分子の \(2\pi r\) も \(4\pi^2 r^2\) になる点を落とさないこと。丁寧に2乗するクセが処方箋です。
誤答パターン③: 両辺の \(r\) をまとめるときに移項を誤り、\(r^3\) ではなく \(r\) や \(r^2\) の式にしてしまう。
診断: 左辺 \(\displaystyle\frac{4\pi^2 r^2}{T^2}\) と右辺 \(\displaystyle\frac{GM}{r}\) を等号でつなぎ、右辺の分母 \(r\) を左辺に移すと \(r^2\times r=r^3\)。指数の足し算 \(r^2\times r=r^3\) を1ステップずつ書くと崩れません。

正しい思考プロセス

Step 1: §5.2の運動方程式 \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\) を整理する。両辺を \(m\) で割り、両辺に \(r\) を掛けると \(v^2=\displaystyle\frac{GM}{r}\)。衛星の質量 \(m\) が消えるのがポイントです。

Step 2: §5.3の \(v=\displaystyle\frac{2\pi r}{T}\) を2乗して \(v^2=\displaystyle\frac{4\pi^2 r^2}{T^2}\)。

Step 3: 2つの \(v^2\) を等しいと置く。\(\displaystyle\frac{4\pi^2 r^2}{T^2}=\displaystyle\frac{GM}{r}\)。これで未知数が \(r\) だけになりました。

Step 4: \(r\) について解く。両辺に \(r\) を掛けて \(\displaystyle\frac{4\pi^2 r^3}{T^2}=GM\)、さらに整理して \(r^3=\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\)。

Step 5: 最後に三乗根をとって \(r=\sqrt[3]{\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}}\)。これがケプラーの第3法則「周期の2乗は半径の3乗に比例」の正体でもあります。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る

まず運動方程式から \(v^2\) を \(r\) の式にします。

$$\begin{aligned}
m\displaystyle\frac{v^2}{r} &= G\displaystyle\frac{Mm}{r^2} \\
\displaystyle\frac{v^2}{r} &= \displaystyle\frac{GM}{r^2} \\
v^2 &= \displaystyle\frac{GM}{r}
\end{aligned}$$

次に速さの式を2乗します。

$$\begin{aligned}
v &= \displaystyle\frac{2\pi r}{T} \\
v^2 &= \displaystyle\frac{4\pi^2 r^2}{T^2}
\end{aligned}$$

2つの \(v^2\) を等しいと置いて \(r\) について解きます。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{4\pi^2 r^2}{T^2} &= \displaystyle\frac{GM}{r} \\
\displaystyle\frac{4\pi^2 r^3}{T^2} &= GM \\
r^3 &= \displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2} \\
r &= \sqrt[3]{\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}}
\end{aligned}$$

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「運動方程式」と「速さと周期の関係」の2式を連立し、共通の \(v\)(や \(v^2\))を消すのが天体の円運動の定石。文字が多くても、消す文字を先に決めれば道筋が見えます。
波及②: ここで得た \(r^3=\displaystyle\frac{GMT^2}{4\pi^2}\) は、周期の2乗と半径の3乗が比例するというケプラーの第3法則そのもの。定期テストの計算が、実は宇宙の惑星が従う法則と同じ形だと気づくと、物理がぐっと面白くなります。

§6. テスト全体の振り返り ─ 5大「思考のクセ」処方箋

ここまでの28問を通して、失点の裏にある「思考のクセ」は大きく5つに整理できます。自分がどのクセで落としたかを確かめ、次のテストで直す1つを決めましょう。

§6.1 クセ①:公式に飛びつくクセ(保存則の使い分け)

症状: どの法則を使うか考える前に、覚えている式へ数値を入れてしまう。

典型的な現れ: §2.2(非弾性衝突なのに力学的エネルギー保存で解こうとする)/§1.3(運動量保存と反発係数の「2本立て」が要ると気づかない)/§5.4(\(v^2=\displaystyle\frac{GM}{r}\) と \(v=\displaystyle\frac{2\pi r}{T}\) を連立する発想が出ない)。

診断: 「この現象では何が保存し、何が保存しないか」を最初に判定していない。

処方箋: 立式の前に「保存するもの(運動量)/保存しないもの(力学的エネルギー)」を声に出して仕分ける。衝突では運動量は必ず保存、エネルギーは弾性衝突のときだけ保存、とセットで覚える。

§6.2 クセ②:向きと符号を後回しにするクセ

症状: 大きさは合っているのに、向き・正負・回転の向きで点を落とす。

典型的な現れ: §1.1(向きの明記忘れ)/§1.3(Bの速度を \(+7.0\) にしてしまう)/§1.6(モーメントの符号)/§3.(カ)(不等号の向き)。

診断: 「正の向き」を最初に決めないまま計算を始めている。

処方箋: 問題を読んだ瞬間に「右向きを正」「反時計回りを正」と紙の端に書く。答えを出したら、符号と向きを必ず一言そえて締める。

§6.3 クセ③:「誰から見た」を忘れるクセ(相対速度・見る立場)

症状: 速度や力を全部同じ立場で書いてしまい、相対速度や運動方程式で混乱する。

典型的な現れ: §3.(イ)(Bから見たAの相対速度)/§1.4(床から見た水平・鉛直成分)/§5.2(運動方程式の右辺に遠心力を足してしまう)。

診断: 「今、誰の視点で速度・力を書いているか」を意識していない。

処方箋: 相対速度は「見る人の速度を引く」、運動方程式は「地面から見て \(ma=F\)」と、視点を1つに固定してから式を書く。遠心力を足すのは視点がずれたサイン。

§6.4 クセ④:力の分解を雑にするクセ(成分・うでの長さ)

症状: 斜めの力・斜めの糸で、\(\sin\) と \(\cos\) を取り違える、分解を忘れる。

典型的な現れ: §1.4(斜め衝突の水平・鉛直成分)/§1.7(斜めの力のモーメントは垂直成分だけ)/§4.1(糸の張力の水平成分 \(T\cos60^\circ\))。

診断: 図に成分の矢印を描かず、頭の中だけで \(\sin\) / \(\cos\) を決めている。

処方箋: 斜めの力は必ず図に直角三角形を描き足す。モーメントは「うでに垂直な成分」だけが効く、と確認してから式にする。

§6.5 クセ⑤:文字で答える問題に手が止まるクセ

症状: 数値なら解けるのに、\(M\)・\(m\)・\(g\) などの文字だけになると立式で固まる。

典型的な現れ: §2.2〜§2.6/§3.(エ)(オ)/§4.2/§5.3・§5.4(すべて文字式で答える設問)。

診断: 「数値が来たら計算する」練習にかたより、文字のまま最後まで運ぶ経験が足りない。

処方箋: 文字式でも数値問題とまったく同じ手順で進める。約分で消える文字(§2.6 で \((M+m)\) が消える等)に注目すると、文字式こそ式の構造が見えると体感できる。

§6.6 自分のクセを1つに絞ろう

間違えた設問の番号を、上の①〜⑤に振り分けてみてください。一番多かったクセが、いまのあなたの伸びしろです。それを1つだけ、次のテストの合言葉にしましょう。「1つに絞る」のが、確実に直すコツです。

§7. このテストの得点分布・出題傾向分析(採点データ 全38名)

ここからは、クラス全体の採点結果を数字で振り返ります。個人の点数や誰がどうだったかは一切扱いません。「クラスとしてどこが取れて・どこでつまずいたか」を見て、次のテストの復習の優先順位を決めるためのセクションです。

§7.1 全体統計

受験者数 満点 平均点 中央値 最高点 最低点 標準偏差
38名 100点 48.9点 49.0点 85点 16点 15.8

平均は約49点。中央値もほぼ同じ49点で、点数が平均のまわりにきれいに集まった「単峰型」のテストでした。極端に難しすぎ・易しすぎではなく、実力差がそのまま出た形です。

§7.2 得点分布(10点刻み)

10点台 ▌ 1人

20点台 ▌▌▌ 3人

30点台 ▌▌▌▌▌▌ 6人

40点台 ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌ 11人 ← 最も多い

50点台 ▌▌▌▌▌▌▌▌▌ 9人

60点台 ▌▌▌ 3人

70点台 ▌▌▌ 3人

80点台 ▌▌ 2人

40点台の山(11人)と50点台(9人)で全体の半分以上。「あと10点の壁」を越えられるかどうかがこのクラスの分かれ目で、その10点は下の大問別データがそのまま答えになっています。

§7.3 大問別の得点率

大問 テーマ 配点 得点率
大問1 小問集(運動量・力積・衝突・モーメント・重心・ケプラー) 30点 69.5%
大問2 弾丸が刺さる衝突とエネルギー・摩擦(福岡大) 19点 39.1%
大問3 2物体の衝突を記号で追う(金沢工大) 18点 44.7%
大問4 棒の剛体のつり合い(宮崎大) 6点 66.7%
大問5 静止衛星(万有引力と等速円運動) 27点 31.9%

取れているのは大問1(小問集・69.5%)と大問4(剛体・66.7%)。落としているのは大問5 静止衛星(31.9%)と大問2 弾丸(39.1%)。どちらも配点が大きい(27点・19点)ので、ここが平均を49点で止めている正体です。

§7.4 つまずきが集中した設問ワースト5

設問 テーマ 得点率 つまずきの正体(§6のクセ)
大問2 失われたエネルギーが何に変わったか(記述) 3.5% クセ⑤ 文字・言葉で答える問題に手が止まる
大問3 運動量保存を記号で立式する(ア) 5.3% クセ⑤+クセ① 記号のまま保存則を立てられない
大問5 静止衛星の公転半径を文字で導く 7.9% クセ⑤ 文字式の最後まで到達できない
大問5 等速円運動の運動方程式 10.5% クセ④+クセ① 向心方向の力を選べない
大問5 静止衛星の文字式(途中の空欄) 15.8% クセ⑤ 文字のまま計算を進められない

ワースト5のうち4つが「記述」か「文字式」。数値を入れれば解ける問題ではなく、文字や言葉のまま最後まで書き切るところで全員が止まっています。これは §6.5 で挙げたクセ⑤そのものです。

§7.5 取れていた設問ベスト5

設問 テーマ 得点率
大問1 力のモーメント 93.9%
大問1 ケプラー第2法則(面積速度一定) 91.2%
大問1 ケプラー第3法則(公転周期) 90.4%
大問1 力のモーメント(斜めの力・分解) 89.5%
大問1 重心の位置 83.3%

ベスト5は全て大問1(小問集)。公式に数値を入れて1つの答えを出す形は、しっかり得点できています。「公式を知らない」わけではないことがはっきり分かります。

§7.6 興味深い対比 ─ 「公式は言える」のに「使い分けで落ちる」

同じ「保存則」を使う問題でも、得点率が大きく割れています。

・大問1の単発問題(公式にあてはめる)… 69.5%(取れる)

・大問2 弾丸/大問5 静止衛星(文章から保存則を選んで立式)… 39.1% / 31.9%(落とす)

この差が示すのは、「公式は覚えているが、”どの区間に・どの保存則を”あてはめるかを文章から選べない」という一点。暗記の不足ではなく、状況を式に翻訳する訓練の不足です(§6.1 クセ①)。

§7.7 次のテストへの重点復習(金・銀・銅)

🥇 金=大問5 静止衛星(万有引力+等速円運動):得点率31.9%・配点27点と最大。向心方向の運動方程式を立て、文字式のまま半径・速さを導く流れを、動画で最初から。

🥈 銀=大問2 弾丸衝突:得点率39.1%。「衝突は運動量保存/刺さって止まる区間は摩擦」と、区間で保存則を切り替える練習。

🥉 銅=大問3 記号での衝突:得点率44.7%。数値がなくても、記号のまま運動量保存と反発係数を立てる練習。

§7.8 このデータから言える、たった1つのこと

公式は覚えている。落としているのは「文章の状況を、式に翻訳する」最後の一歩。だから伸ばすべきは暗記量ではなく、”翻訳”の練習量です。ワースト5=記述と文字式、ベスト5=公式あてはめ、という結果がそれを一直線に示しています。

§8. 次のステップ

この期末で出た「運動量・力積・衝突」「力のモーメント・剛体のつり合い」「万有引力と円運動(ケプラーの法則・静止衛星)」は、どれも入試の頻出単元です。つまずいた単元は、動画でもう一度、考え方から確認しておきましょう。

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各単元の授業動画・共通テスト解説・演習解説は、YouTubeチャンネル「まことの高校物理教室」で公開しています。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

800+解説記事
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14指導歴
🎯現在、全6分野制覇を目指してプレミアムパックを制作中(5/6完成)。制作ロードマップを見る →
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