学校H:高校2年生1学期期末考査解説

  • 2020年10月10日
  • 2026年7月15日
  • 学校
夏は、物理を仕切り直す季節。
「これまで解けなかった」は"昔の自分"の話。夏休みの40日で、思考のクセから立て直してみませんか。
目次

§0. はじめに ─ この記事の使い方

令和8年7月7日(火)に実施された1学期期末考査・物理の解説記事です。全9大問すべてに「思考のクセ診断つき」のフル解説をつけました。今回のテーマは、運動量保存・力積・反発係数(衝突)・円運動・慣性力。1学期の力学の総仕上げにあたる範囲です。

この記事は、君がテストでつけた答えと模範解答を見比べる「答え合わせ」のためのものではありません。君がどんな思考のクセで間違えたのかを診断し、次のテストで同じ罠にハマらないようにするための処方箋です。

今回のテストは全体平均 \(50.0\) 点、最高 \(91\) 点、最低 \(20\) 点。一方で、第6問(動く台)の全体平均はわずか \(12.4\)%、第8問(半円筒の円運動)も \(13.8\)% と、後半の思考問題で大きく差がつきました。観点別に見ると「知識・技能」は \(64.1\)% 取れているのに、「思考・判断・表現」は \(27.8\)% しか取れていません。公式は覚えているのに、それを『どう使うか』の場面で崩れている──今回の失点の正体はここにあります。本記事は、その崩れが君のどんな思考のクセから来ているかを丁寧に診断します。

§0.1 読み方 ─ 2層構造になっています

各問題の解説は、次の2層構造になっています。

Layer 1(端的解答+サクッと解説): 答えと、答えに至る最短の根拠を1〜2行で示します。「とにかく答えを確認したい」「時間がない」人はここだけ読めばOKです。
Layer 2(💡 もっと深く理解したい人へ): 折りたたみ式の「思考のクセ診断+正しい思考プロセス+一般化」。こちらが本体です。クリックして開いてください。

「Layer 1だけで答えが分かったから読み飛ばす」のではなく、正解した問題こそ Layer 2 を読むことを強く推奨します。正解=理解、ではないからです。たまたま当たった、覚えていた、ヤマが当たった、というケースはこの先のテストで必ず崩壊します。

§0.2 手元の問題冊子を必ず開いておいてください

著作権上、この記事には問題文そのものは載せていません。手元の問題冊子(7/7実施の試験問題)と模範解答を見ながら、この記事を読み進めてください。

📋 用意するもの
① 7/7実施の問題冊子(試験後に返却された冊子)
② 模範解答(先生から配布された解答)
③ 自分が試験で書いた解答(覚えている範囲で再現したメモでも可)

§0.3 自分の「思考のクセ」を診断するために

各問題の Layer 2 には「誤答パターン①②③+診断」というブロックが入っています。自分の答えが模範解答と違っていた場合、まずどの誤答パターンに当てはまるかを探してください

そして、見つけた「思考のクセ」を、次の問題に進むときに声に出して言ってみてください。例えばこんな調子です。

「私は『運動量は保存する』と反射的に決めつける。これからは『外から力が働いていないか』を最初に確認する」
「私は速さだけ見て向きを後回しにする。これからは矢印(ベクトル)を先に描く」
「私は『誰から見た運動か』を意識しない。これからは電車の外か中か、床か台かを最初に決める」

このように「自分のクセ+これからどうするか」をセットで言語化すると、次のテストで同じ罠にハマる確率が劇的に下がります。物理は暗記の科目ではなく、思考のクセを書き換える科目です。

§0.4 各問題の重さ ─ 全体の地図

このテストは全9大問あり、それぞれ思考の負荷が違います。下の表で全体の地図を把握しておくと、どこに時間をかけて復習すべきかが分かります。得点率が低い問題ほど「差がつく=伸びしろが大きい」問題です。

大問 テーマ 全体得点率 重さ
[1] 運動量・反発係数の正誤選択 68.8% 🟡中
[2] 力積・合体・衝突・円運動・慣性力(小問集) 72.2% 🟡中
[3] 2連結トロッコの分離(運動量保存) 47.8% 🟠やや重
[4] 2次元の直交衝突 77.0% 🟢軽
[5] 追突+反発係数+失われた力学的エネルギー 46.8% 🟠やや重
[6] 動く台+壁(運動量保存×エネルギー×反発) 12.4% 🔴最難
[7] 円錐振り子(半径・張力・角速度・周期) 42.1% 🔴重
[8] 半円筒内の円運動(エネルギー保存+最高点条件) 13.8% 🔴最難
[9] 電車内のおもり・慣性力(非慣性系) 29.0% 🔴重

全体を貫くメッセージはひとつ。「公式は知っている。でも、その公式を『いつ・どの向きで・誰から見て』使うかで崩れている」。この記事は、その一点を君の中で書き換えるために書きました。

§1. 運動量保存と反発係数の「成立条件」を見抜く(\(e\)・運動量 使用)

大問[1]は、運動量が保存するかしないか・力学的エネルギーが増えるか変わらないか、といった「保存則が成り立つ条件」を言葉で問う3つの正誤選択だ。計算は要らないのに全体の得点率は68.8%、しかも(1)(3)は58.7%まで落ちる。※ 問題文は手元プリント参照。

§1.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示す。詳しい思考プロセスは §1.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: エ。ばねでつながれ振動する2物体は、系の外から水平な力を受けないので運動量は保存する。落下・地面衝突は外力(重力・床)を受けるので保存しない。
(2) 答え: ウ。反発係数 \(e=1\) は弾性衝突で、力学的エネルギーは「増加する」のではなく保存(変化しない)。だからこの文が誤り。
(3) 答え: ア。合体(完全非弾性)でも外力がなければ運動量は保存するが、運動エネルギーは衝突で失われて変化する。

§1.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「保存する/しない」を判定する軸

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。ここでの本当のテーマは、公式を覚えることではなく「保存則が成り立つ条件を毎回確認するクセ」をつけることだ。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

(1) 運動量が保存するのはどの系か(答え=エ)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「合体するんだから運動量は保存する」とだけ考えて、外力の有無をチェックせずウを選ぶ。
診断: 「合体=保存」と丸暗記していて、外力があるかを見ないクセ。ウの選択肢は外力の条件が抜けている(または外力ありの設定)から誤りなのに、そこを読まずに結論だけで飛びつく。
誤答パターン②: 「落ちている物体も、途中では何も触れていないから運動量は保存する」とアを正しいと思ってしまう。
診断: 重力を「力」だと数えないクセ。接触していなくても重力は外力。鉛直下向きに力積を受け続けるので、落下物体の運動量は増え続ける(保存しない)。
誤答パターン③: 「地面にぶつかった瞬間も物体だけを見れば運動量は保存する」とイを選ぶ。
診断: 系の境界を勝手に狭めるクセ。物体だけを系にすると、地面から受ける垂直抗力が外力になる。外力があれば運動量は保存しない。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: それぞれの選択肢で「何を系(着目するかたまり)にしているか」を丸で囲み、その丸の外から矢印(力)が入ってこないかを描く。エなら、ばねでつながれた2つの物体をまとめて1つの丸にする。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 使う原理は運動量保存則。選ぶ理由は「注目したい向き(ここでは水平)に、系の外からの力=外力が働いていないか」を判定したいから。内力(ばねが互いを引く力、合体時に押し合う力)は作用反作用で打ち消し合い、系全体の運動量を変えない。

Step 3 式の意味を読む: 運動量保存則は「外力の力積がゼロなら系の運動量の総和は一定」。式で言えば、系にあるすべての物体の運動量 \(m\vec{v}\) を足し合わせたものが時間で変わらない、という意味だ(言葉で言えば「全部の運動量を足したものが変わらない」)。カギは左辺ではなく「外力ゼロ」という前提のほう。

Step 4 各選択肢を判定する: ア=重力(外力)あり→保存しない。イ=床の垂直抗力(外力)あり→保存しない。ウ=外力の条件が満たされていない(または外力あり)→この設定では保存すると言い切れず誤り。エ=ばねの力は2物体の間の内力だけ、水平外力なし→保存する。よって正しい文はエ。

Step 5 妥当性チェック: 「保存する」と判定したエで、もし水平に摩擦や外から押す手があったら保存は崩れる。今回はそれが無いことを確認できる。逆にア・イは外力の向き(重力は下、抗力は上)がはっきり言えるので、保存しない理由に矛盾がない。極端ケースで確認:ばね2物体を宇宙空間に置いても重心は動かない=運動量の総和は初期値のまま、という直感とも一致する。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 運動量保存を使う前に必ず「どの向きに外力がゼロか」を口に出す。鉛直方向は重力があって保存しなくても、水平方向だけは保存する、という「向きごと判定」がとても多い([6]の動く台がまさにこれ)。
波及②: 「保存する/しない」は現象の名前(合体・分裂・衝突)では決まらない。決めるのは外力の有無だけ。名前で反射的に答えるクセを、条件確認のクセに置きかえる。
波及③: 内力(ばね・衝突の押し合い・作用反作用のペア)は系全体の運動量を絶対に変えない。系を大きく取って内力にできれば、保存則が使える。

(2) 反発係数と力学的エネルギーの誤り探し(答え=ウ)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「弾性衝突ではエネルギーが保存される、と習った。ウにも“弾性衝突”と書いてあるから正しい文だ」と読み、正しい文を誤りと勘違いして別の選択肢を選ぶ。
診断: キーワードの一致だけで正誤を決めるクセ。ウは「弾性衝突では力学的エネルギーが増加する」と書いてある。前半は合っていても、動詞(増加する)が間違い。文の最後まで意味を追わないと引っかかる。
誤答パターン②: \(0 \leq e \leq 1\)(イ)を見て「\(e\) が1より大きいこともある気がする」と誤りだと思ってしまう。
診断: 反発係数の範囲を体で覚えていないクセ。衝突ではね返る相対速度が、ぶつかる前の相対速度を超えることはない(エネルギーが増えてしまう)から \(e \leq 1\)。くっつく極限が \(e=0\)。だからイは正しい。
誤答パターン③: エ「衝突後の速さ0は完全非弾性衝突」を、\(e=0\) の意味とつなげられずに誤りだと思う。
診断: \(e=0\) を「速さ0」と混同するクセ。\(e=0\) は「はね返り係数が0=相対速度が0=2物体が一体になる」こと。片方が止まって見える設定は完全非弾性の一例で、文としては正しい。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 4つの文を「定義の話(ア・イ)」「エネルギーの話(ウ)」「くっつく話(エ)」に仕分ける。誤り探しは、1つずつ独立に○×をつけるのが絵にあたる。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 反発係数の定義 \(e=\displaystyle\frac{v’}{v}\)(正面衝突で壁相手なら跳ね返る速さ/当たる速さ)と、力学的エネルギーは「保存=変化しない/減る」ことはあっても「衝突で増える」ことはない、という2本を軸にする。

Step 3 式の意味を読む: 弾性衝突 \(e=1\) は「相対速度の大きさが衝突前後で変わらない」こと。相対速度が変わらなければ運動エネルギーの総和も変わらない。つまり \(e=1\) ↔ 力学的エネルギー保存(一定)であって、増加ではない。

Step 4 1つずつ判定: ア=定義そのまま、正しい。イ=\(0 \leq e \leq 1\)、正しい。ウ=「増加する」が誤り(正しくは変化しない)。エ=完全非弾性の説明として正しい。誤っている文はウ。

Step 5 妥当性チェック: もしウが正しければ「ぶつけるほどエネルギーが湧く」ことになり、永久機関ができてしまう。直感・エネルギー保存の大原則と矛盾するので、ウが誤りで確定。範囲 \(0 \leq e \leq 1\) の両端(\(e=1\) 弾性・\(e=0\) 完全非弾性)も一致している。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 正誤問題は「主語(弾性衝突)」ではなく「述語(増加する)」に誤りを仕込むことが多い。文末の動詞まで指でなぞって読む。
波及②: \(e\) の値と衝突の名前を1対1で言えるようにする:\(e=1\) 弾性(エネルギー保存)、\(0 \lt e \lt 1\) 非弾性、\(e=0\) 完全非弾性(一体化)。この対応表があれば正誤判定が一瞬になる。

(3) 合体衝突での運動量とエネルギー(答え=ア)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「衝突なんだから運動量もエネルギーも両方保存する」と考えて、両方保存の選択肢を選ぶ。
診断: 運動量とエネルギーを同じ箱に入れるクセ。この2つは別物。外力ゼロなら運動量は必ず保存するが、運動エネルギーは衝突(特に合体)では音・熱・変形に化けて減る。
誤答パターン②: 「合体して1つになるんだから、運動量も途中で変わるはず」と、運動量まで保存しないと思ってしまう。
診断: 合体の押し合いを外力と勘違いするクセ。ぶつかるときに互いを押す力は2球の間の内力。外力(重力は鉛直、水平には無し)が水平に無ければ、水平の運動量は保存する。
誤答パターン③: 「運動エネルギーが減るなら運動量も減っているはず」と、2つを連動させて考える。
診断: 「減る」を全部にかけるクセ。運動量はベクトルの総和で保存、運動エネルギーはスカラーで減少。片方が減ってももう片方は保存、という「別会計」になっている。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 大小2球が一直線で近づき、ぶつかって1つのかたまりになって進む図を描く。系=2球をまとめて1つの丸で囲む。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 運動量については保存則(外力ゼロだから)。運動エネルギーについては「合体=完全非弾性なので必ず一部が失われる」。この2本立てで判定する。

Step 3 式の意味を読む: 運動量は \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = (m_1+m_2)V\) で総和が保たれる。一方、合体後の運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}(m_1+m_2)V^2\) は、衝突前の \(\displaystyle\frac{1}{2}m_1 v_1^2 + \displaystyle\frac{1}{2}m_2 v_2^2\) より必ず小さい(\(e=0\) のとき失うエネルギーが最大)。

Step 4 判定: 運動量は保存する、運動エネルギーは変化する(減る)。この組み合わせはア。

Step 5 妥当性チェック: 極端ケースで確認。同じ質量・同じ速さで正面から合体すると、合体後は静止=運動エネルギーは全部消えるが、運動量ももともと総和ゼロで前後とも0=ちゃんと保存している。「エネルギーは消えても運動量は保存」という別会計の直感と一致。よってアで確定。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 衝突問題は「運動量は保存(外力ゼロなら)/運動エネルギーは弾性のときだけ保存、非弾性なら減る」を2本の別レーンで管理する。この切り分けが[5]の“失われたエネルギー”計算に直結する。
波及②: 運動量はベクトル(向きつきの総和)、運動エネルギーはスカラー(向きなしの合計)。性質が違うから、片方の増減からもう片方を推測してはいけない。
波及③: 「合体・完全非弾性=失うエネルギー最大」「弾性=失うエネルギーゼロ」。エネルギーがどれだけ減るかは \(e\) が握っている、と覚えておくと後半の難問で効く。

§2. 運動量・力積・円運動・慣性力の小問集(力積・\(\omega\) 使用)

大問[2]は6つの小問。運動量保存の代入だけで解けるもの((2)(3)(4))は得点率が高いが、力積をベクトルの差として扱う(1)は42.5%、円運動の加速度(5)・慣性力(6)も6割前後まで落ちる。ここで効いてくるのは「向きを最後まで捨てないクセ」と「どの式をなぜ選ぶかを言葉にするクセ」だ。※ 問題文は手元プリント参照。

§2.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示す。詳しい思考プロセスは §2.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(1.4\times10^{2}\,\text{N}\cdot\text{s}\)。力積=運動量変化ベクトルの差。水平の \(-20\) から鉛直の \(+20\) へ、直交する2つの矢印の差なので大きさは \(\sqrt{2}\) 倍。\(5.0\times20\times\sqrt{2}=141\)。
(2) 答え: \(2.5\,\text{m}/\text{s}\)。合体は完全非弾性。運動量保存 \(5.0\times10=(5.0+15)v\)。
(3) 答え: 右向きに \(1.5\,\text{m}/\text{s}\)。運動量保存 \(1.0\times3.0=2.0\times v_{\text{A}}\)。
(4) 答え: \(0.60\)。壁相手の反発係数 \(e=\displaystyle\frac{3.0}{5.0}\)。
(5) 答え: \(4.9\,\text{m}/\text{s}^2\)。等速円運動の加速度 \(a=r\omega^2=r\left(\displaystyle\frac{2\pi}{T}\right)^2\)。
(6) 答え: \(1.8\times10^{2}\,\text{N}\)。等加速度で \(a=\displaystyle\frac{30}{10}=3.0\,\text{m}/\text{s}^2\)、慣性力 \(=ma=60\times3.0\)。

§2.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「向き」と「式選びの理由」を全部言葉にする

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。特に(1)は、答えを出せた人でも「なぜ \(\sqrt{2}\) 倍なのか」を絵で説明できるか試してほしい。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

(1) 直交する速度変化と力積(答え=\(1.4\times10^{2}\,\text{N}\cdot\text{s}\))

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「速さは \(20\) から \(20\) で変わっていないから、力積は0だ」と考える。
診断: 速さ(大きさ)だけ見て向きを捨てるクセ。力積が変えるのは運動量ベクトル。大きさが同じでも、水平から鉛直へ向きが90°変わっていれば運動量は確実に変化していて、力積はゼロではない。
誤答パターン②: 向きが変わったことには気づくが、\(m\times(20-20)=0\)、あるいは \(m\times(20+20)=200\) とスカラーで引き算・足し算してしまう。
診断: ベクトルをスカラーで引くクセ。前後の運動量が同じ直線上(正面衝突など)なら符号つきの引き算でよいが、今回は水平と鉛直で直交している。直交するものは単純に足し引きできず、直角三角形で結ばないといけない。
誤答パターン③: 直角三角形までは描けたが、力積の向きを「変化後の向き(鉛直上)」と勘違いする、あるいは \(\sqrt{2}\) をかけ忘れて \(100\) にする。
診断: 「差のベクトル」の作図が雑なクセ。力積 \(=\vec{p}_{\text{後}}-\vec{p}_{\text{前}}\)。始点をそろえて後ろの矢印から前の矢印を引く(前の矢印を逆向きにして足す)と、斜辺が力積になる。この作図を飛ばすと大きさも向きも外す。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 打つ前の運動量を「右向き(水平)の矢印、大きさ \(mv=5.0\times20=100\)」、打った後を「上向き(鉛直)の矢印、大きさ \(100\)」で描く。2本は直角に交わる。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 使うのは力積と運動量の関係「力積 \(=\) 運動量の変化 \(=\vec{p}_{\text{後}}-\vec{p}_{\text{前}}\)」。ボールが受けた合計の力の効果を、途中の力の詳細なしに前後の運動量だけで出せるから、この関係を選ぶ。

Step 3 式の意味を読む: \(\vec{p}_{\text{後}}-\vec{p}_{\text{前}}\) は「後ろの矢印」に「前の矢印を逆向きにしたもの」を継ぎ足すこと。逆向きにした前の矢印(左向き100)と、後ろの矢印(上向き100)が直角。だから力積の大きさは直角三角形の斜辺 \(\sqrt{100^2+100^2}=100\sqrt{2}\)。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} p_{\text{前}} &= m v \\ &= 5.0 \times 20 \\ &= 100 \\ p_{\text{後}} &= m v \\ &= 5.0 \times 20 \\ &= 100 \\ |{\vec{I}}| &= \sqrt{p_{\text{前}}^2 + p_{\text{後}}^2} \\ |{\vec{I}}| &= \sqrt{100^2 + 100^2} \\ |{\vec{I}}| &= 100\sqrt{2} \\ |{\vec{I}}| &= 100 \times 1.41 \\ |{\vec{I}}| &= 141 \end{aligned}$$

単位は \(\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\)、これは \(\text{N}\cdot\text{s}\) と同じ。有効数字2桁で \(1.4\times10^{2}\,\text{N}\cdot\text{s}\)。

Step 5 妥当性チェック: 大きさ \(141\) は、片方向ぶんの \(100\) より大きく、まっすぐ跳ね返した場合の \(200\)(\(100+100\))より小さい。90°の向き変えは「無変化(0)」と「正反対(200)」の中間なので \(141\) は妥当。単位も \(\text{N}\cdot\text{s}\) で力積として正しい。向きは、左下から右上へ45°(水平の逆向きと鉛直上の間)を向く。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 力積・運動量変化は必ずベクトルの引き算。前後が一直線でないときは、成分に分けるか直角三角形で結ぶ。「速さが同じ=変化ゼロ」は向きが変わる瞬間に必ず裏切られる。
波及②: 「差のベクトル」は、引く方の矢印を逆向きにして足す、と手を動かして作図する。壁での反射([2](4)や[6])、2次元衝突([4])でも同じ作図がそのまま効く。
波及③: 直交する2つが同じ大きさなら合成・差は \(\sqrt{2}\) 倍、と体で覚えておくと検算が速い。45°がからむと \(\sqrt{2}\) が顔を出す。

(2) 合体(完全非弾性)の運動量保存(答え=\(2.5\,\text{m}/\text{s}\))

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 合体後の質量を \(15\) だけ、あるいは \(5.0\) だけにして \(5.0\times10=15\times v\) と立てる。
診断: 合体後の質量を合算し忘れるクセ。くっついたら1つのかたまり。右辺の質量は \(5.0+15=20\) にする。
誤答パターン②: 「衝突だから力学的エネルギーも保存」と考え、エネルギー式で解こうとする。
診断: 非弾性でエネルギー保存を持ち込むクセ。合体は完全非弾性でエネルギーは失われる。使えるのは運動量保存だけ。
誤答パターン③: 静止していた \(15\,\text{kg}\) の運動量を、なぜか初速つきで足してしまう。
診断: 「静止=運動量0」を式に反映しないクセ。止まっている物体の運動量は0。左辺は動いている方の \(5.0\times10\) だけ。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: \(5.0\,\text{kg}\) が \(10\,\text{m}/\text{s}\) で右へ、\(15\,\text{kg}\) は静止。ぶつかって \(20\,\text{kg}\) の1つになり右へ \(v\) で進む図。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 水平に外力なし+合体なので運動量保存だけを選ぶ。エネルギーは失われるので使わない。

Step 3 式の意味を読む: 「ぶつかる前の運動量の総和=ぶつかった後の運動量」。左辺は動いている物体のみ、右辺は合体した質量×共通の速さ。

Step 4 代入して確かめる: \(5.0\times10 + 15\times0 = (5.0+15)v\)。\(50=20v\)、\(v=2.5\)。

Step 5 妥当性チェック: 重い相手(\(15\,\text{kg}\))にぶつかって一体化したので、速さは元の \(10\,\text{m}/\text{s}\) よりぐっと下がるはず。\(2.5\,\text{m}/\text{s}\) は元の \(1/4\) で妥当。単位も \(\text{m}/\text{s}\)。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「合体」を見たら反射で「運動量保存・エネルギーは使わない・後の質量は合算」の3点セットを思い出す。
波及②: 静止物体は運動量0。式に0を書く習慣で、代入ミスが減る。

(3) 正面衝突で片方が静止(答え=右向き \(1.5\,\text{m}/\text{s}\))

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: ぶつかった後の \(\text{B}\) の運動量を残したまま式を立てる。
診断: 問題文の「Bは静止」を式に落とし込まないクセ。衝突後の \(\text{B}\) の運動量は0。だから \(\text{B}\) の初めの運動量がまるごと \(\text{A}\) に移る。
誤答パターン②: 質量を取り違えて \(1.0\times v_{\text{A}}=2.0\times3.0\) と逆に立てる。
診断: どちらが動いていたかを図で確認しないクセ。動いていたのは \(\text{B}\)(\(1.0\,\text{kg}\))、止まっていたのが \(\text{A}\)(\(2.0\,\text{kg}\))。左辺は \(\text{B}\) の運動量。
誤答パターン③: 大きさだけ出して向きを書かない。
診断: 答えの向きを書き忘れるクセ。運動量はベクトル。\(v_{\text{A}}\) が正なら初速の \(\text{B}\) と同じ「右向き」と明記する。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 右へ \(3.0\,\text{m}/\text{s}\) の \(\text{B}\)(\(1.0\,\text{kg}\))が、静止した \(\text{A}\)(\(2.0\,\text{kg}\))に正面衝突。衝突後 \(\text{B}\) は止まり、\(\text{A}\) が右へ \(v_{\text{A}}\)。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 水平外力なし→運動量保存。向きは「右を正」と最初に決める。

Step 3 式の意味を読む: 衝突前の総和(\(\text{B}\) の運動量のみ)=衝突後の総和(\(\text{A}\) の運動量のみ)。

Step 4 代入して確かめる: \(1.0\times3.0 + 2.0\times0 = 1.0\times0 + 2.0\times v_{\text{A}}\)。\(3.0=2.0 v_{\text{A}}\)、\(v_{\text{A}}=1.5\)。正なので右向き。

Step 5 妥当性チェック: 重い \(\text{A}\) が軽い \(\text{B}\) に押されて動くので、\(\text{A}\) の速さは \(\text{B}\) の初速 \(3.0\) より小さいはず。\(1.5\,\text{m}/\text{s}\) は妥当。ちなみに反発係数を確かめると \(e=\displaystyle\frac{1.5-0}{3.0-0}=0.50\) で \(0 \leq e \leq 1\) に収まり、物理的にありうる衝突だと分かる。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 衝突問題は「右を正」と最初に決め、全部の運動量に符号をつけて足す。答えは大きさ+向きで書く。
波及②: 出した答えは反発係数 \(e\) を逆算して \(0 \leq e \leq 1\) に入るか検算できる。範囲外なら立式ミス。

(4) 壁との反発係数(答え=\(0.60\))

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(e=\displaystyle\frac{5.0}{3.0}\) と上下を逆にして \(1.67\) にする。
診断: 定義の分母・分子をあいまいにするクセ。反発係数は「跳ね返った後の速さ÷当たる前の速さ」。後が分子、前が分母。
誤答パターン②: 向きが逆になるからと、速さの差 \(5.0-3.0=2.0\) や和 \(5.0+3.0=8.0\) を使ってしまう。
診断: 壁相手の反発係数の形を運動する2物体と混同するクセ。壁は動かないので、壁相手では単純に「後の速さ/前の速さ」でよい。相対速度の差を作るのは2物体が両方動くとき。
誤答パターン③: 速度に符号をつけたまま \(e=\displaystyle\frac{-3.0}{5.0}\) として \(-0.60\) と負にする。
診断: 符号の扱いが中途半端なクセ。定義に負号を含めて \(e=-\displaystyle\frac{v’}{v}\)(速度で扱う)とするか、速さ(大きさ)で \(e=\displaystyle\frac{3.0}{5.0}\) とするか、どちらかに統一する。\(e\) は必ず0以上。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: \(5.0\,\text{m}/\text{s}\) で壁に向かい、\(3.0\,\text{m}/\text{s}\) で逆向きに跳ね返る図。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 壁相手なので反発係数の定義 \(e=\displaystyle\frac{\text{跳ね返る速さ}}{\text{当たる速さ}}\) を使う。壁は静止しているので相対速度の引き算は不要。

Step 3 式の意味を読む: \(e\) は「はね返りの勢いが元の何割か」。1に近いほどよく跳ね、0だとくっつく。

Step 4 代入して確かめる: \(e=\displaystyle\frac{3.0}{5.0}=0.60\)。

Step 5 妥当性チェック: \(0.60\) は \(0 \leq e \leq 1\) の範囲内で、跳ね返り後(3.0)が当たる前(5.0)より遅い=エネルギーが減っている、という非弾性の直感と一致。もし1を超えたら計算ミス。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 壁(動かない相手)の反発係数は「後の速さ÷前の速さ」。両方動く2物体では「離れる相対速度÷近づく相対速度」。相手が動くかどうかで式が変わる。
波及②: \(e\) は必ず0以上1以下。出た値がこの範囲を外れたら、分母分子か符号を間違えている合図。

(5) 等速円運動の加速度(答え=\(4.9\,\text{m}/\text{s}^2\))

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「等速だから加速度は0」と考える。
診断: 速さと速度を同じものと思うクセ。速さ(大きさ)は一定でも、向きが刻々と変わるので速度は変化している。円運動では中心向きの加速度(向心加速度)が必ずある。
誤答パターン②: 角速度 \(\omega\) を出すのに \(\omega=\displaystyle\frac{T}{2\pi}\) と逆数にする、または周期 \(T\) をそのまま \(\omega\) に使う。
診断: \(\omega\) と \(T\) の関係を丸暗記で取り違えるクセ。1周 \(2\pi\) を1周にかかる時間 \(T\) で割るので \(\omega=\displaystyle\frac{2\pi}{T}\)。単位(\(\text{rad}/\text{s}\))で確認できる。
誤答パターン③: \(a=r\omega^2\) と \(a=r\omega\)、\(a=\displaystyle\frac{v^2}{r}\) がごちゃ混ぜになり、\(\omega\) を2乗し忘れる。
診断: 公式を形だけ覚えて次元(単位)で確かめないクセ。\(r\omega^2\) は \(\text{m}\times(\text{1}/\text{s})^2=\text{m}/\text{s}^2\) で加速度の単位。\(r\omega\) だと \(\text{m}/\text{s}\)(速さ)になり、加速度ではないと単位で気づける。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 半径 \(2.0\,\text{m}\) の円周上を、\(4.0\,\text{s}\) で1周する点。加速度は常に中心を向く。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): 半径 \(r\) と周期 \(T\) が分かっているので、向心加速度を \(a=r\omega^2\) の形で使う。\(v\) は与えられていないので \(\omega\) 経由が最短。\(\omega=\displaystyle\frac{2\pi}{T}\) を代入する。

Step 3 式の意味を読む: \(a=r\omega^2=r\left(\displaystyle\frac{2\pi}{T}\right)^2\)。角速度 \(\omega\) は「1秒で何ラジアン回るか」。それを2乗して半径をかけると、中心へ引かれる加速度になる。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} \omega &= \displaystyle\frac{2\pi}{T} \\ \omega &= \displaystyle\frac{2\pi}{4.0} \\ \omega &= \displaystyle\frac{\pi}{2} \\ a &= r\omega^2 \\ a &= 2.0 \times \left(\displaystyle\frac{\pi}{2}\right)^2 \\ a &= 2.0 \times (1.57)^2 \\ a &= 2.0 \times 2.46 \\ a &= 4.93 \end{aligned}$$

有効数字2桁で \(a=4.9\,\text{m}/\text{s}^2\)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は \(\text{m}\times(\text{rad}/\text{s})^2=\text{m}/\text{s}^2\) で加速度として正しい。値 \(4.9\,\text{m}/\text{s}^2\) は重力加速度の半分ほどで、周期 \(4.0\,\text{s}\)(ゆっくり)・半径 \(2.0\,\text{m}\) の円運動としてありえない大きさではない。向きは常に中心向き。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「等速円運動でも加速度はある(中心向き)」。速さが一定でも向きが変われば加速度ゼロではない、はベクトルの基本。
波及②: 向心加速度は \(a=r\omega^2=\displaystyle\frac{v^2}{r}=v\omega\) の3つの顔がある。与えられた量(今回は \(r\) と \(T\))から一番近い形を選ぶ。迷ったら単位で \(\text{m}/\text{s}^2\) になるかを確かめる。
波及③: \(\omega=\displaystyle\frac{2\pi}{T}\)、\(v=r\omega\) の橋渡しを覚えておくと、周期・速さ・角速度のどれで与えられても同じ土俵に乗せられる。

(6) 等加速度で止まる車内の慣性力(答え=\(1.8\times10^{2}\,\text{N}\))

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 慣性力を \(f=mg\) だと思って重力で計算する。
診断: 慣性力の中身を確かめないクセ。慣性力は「(乗り物の)加速度 \(a\)」を使って \(f=ma\)。重力加速度 \(g\) ではなく、車の減速の加速度を使う。
誤答パターン②: 加速度を \(a=30\times10=300\) や \(a=\displaystyle\frac{10}{30}\) と、割る向きを間違える。
診断: 等加速度の定義を単位で確かめないクセ。加速度は「速度変化÷かかった時間」。\(a=\displaystyle\frac{30}{10}=3.0\,\text{m}/\text{s}^2\)。単位 \((\text{m}/\text{s})/\text{s}=\text{m}/\text{s}^2\) で検算できる。
誤答パターン③: 「止まるんだから加速度も力も0」と考える。
診断: 「最終的に止まる」と「その途中」を混同するクセ。止まるまでの10秒間は減速し続けていて加速度は0でない。人はその間ずっと前向きの慣性力(つんのめる力)を受ける。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: \(30\,\text{m}/\text{s}\) の車が \(10\,\text{s}\) かけて止まる。車内の \(60\,\text{kg}\) の人は、減速中は進行方向へ引かれる(慣性力)。

Step 2 どの原理を選ぶか(+なぜ): まず等加速度から車の加速度 \(a=\displaystyle\frac{\text{速度変化}}{\text{時間}}\) を出す。次に、車内(加速する乗り物の中)から見た人にかかる見かけの力=慣性力 \(f=ma\) を使う。

Step 3 式の意味を読む: 慣性力 \(f=ma\) は「乗り物が加速度 \(a\) で動くとき、中の人が逆向きに感じる見かけの力」。大きさは人の質量×乗り物の加速度。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} a &= \displaystyle\frac{30}{10} \\ a &= 3.0 \\ f &= ma \\ f &= 60 \times 3.0 \\ f &= 180 \end{aligned}$$

有効数字2桁で \(f=1.8\times10^{2}\,\text{N}\)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は \(\text{kg}\times\text{m}/\text{s}^2=\text{N}\) で力として正しい。加速度 \(3.0\,\text{m}/\text{s}^2\) は重力加速度 \(9.8\,\text{m}/\text{s}^2\) の3割ほどなので、慣性力 \(180\,\text{N}\) も体重ぶんの力(約 \(60\times9.8=588\,\text{N}\))の3割程度で、つじつまが合う。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 慣性力は \(f=ma\)(乗り物の加速度 \(a\))。重力 \(mg\) と混ぜない。加速・減速・カーブ、どれでも「乗り物の加速度」を先に出すのが第一手。
波及②: 「止まる」「一定速度になる」は最終状態。途中で加速度があるかどうかは別問題。時間をかけて速度が変わっている区間は必ず加速度がある。
波及③: 迷ったら単位で確かめる。加速度は \(\text{m}/\text{s}^2\)、力は \(\text{N}=\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}^2\)。式の形が正しければ単位もそろう。

§3. 2連結トロッコの分離 ─ 「系全体」の運動量保存(\(p=mv\) 使用)

走っている2両編成のトロッコの上に人Aが乗っている。連結を外し、Aが後ろのトロッコを後方へ蹴る。蹴った後の後ろトロッコの速さと、Aが後ろトロッコへ与えた力積を求める問題。全体の得点率は47.8%と低く、「運動量保存の対象を何にとるか」でつまずく。※ 問題文は手元プリント参照。

§3.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §3.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(4.8 \, \text{m}/\text{s}\)。全体(\(350 \, \text{kg}\))の運動量が蹴る前後で保存する。\(350\times 6.0 = 200\times 6.9 + 150\times v_{\text{後}}\) を解く。
(2) 答え: \(1.8\times 10^{2} \, \text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\)。Aから後ろトロッコが受けた力積は、後ろトロッコの運動量変化そのもの。\(150\times(6.0-4.8)=180\)。

§3.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「系全体」でとらえる目と「相手」を取り違えない目

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。

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(1) 後ろトロッコの速さ ─ 何を「系」にとるか

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: Aの乗るトロッコを \(200 \, \text{kg}\)、後ろを \(150 \, \text{kg}\) と正しく分けたのに、保存の式を「先頭トロッコだけ」で立ててしまい \(200\times 6.0=200\times 6.9\) と手が止まる。
診断: 「運動量保存はどの範囲で成り立つか」を意識せず、目に入った物体1つだけで式を立てる「系を狭くとりすぎるクセ」。保存が成り立つのは「外から水平の力が働かない、Aと2台をまとめた全体」だ。
誤答パターン②: 全体の質量を \(200 \, \text{kg}\)(先頭トロッコ+A)だと思い込み、\(200\times 6.0\) を初期運動量にしてしまう。
診断: 「連結中は2台+Aが一体で動いている」という初期状態の把握が甘い「初期の全質量を数え落とすクセ」。蹴る前は \(200+150=350 \, \text{kg}\) が丸ごと \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) で走っている。
誤答パターン③: 後ろトロッコは「後方へ蹴られた」から、速さが負(逆向き)になるはずだと決めつける。
診断: 「相対的に後ろへ蹴る」ことと「地面に対して後ろ向きに動く」ことを混同する「誰から見た向きかを忘れるクセ」。元々前へ \(6.0\) で走っていたので、少し減速して前向き \(4.8\) で進むのが自然。式が符号を教えてくれる。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 蹴る前は「A+先頭トロッコ(\(200 \, \text{kg}\))」と「後ろトロッコ(\(150 \, \text{kg}\))」がくっついて前へ \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\)。蹴った後は前者が \(6.9 \, \text{m}/\text{s}\)、後者が \(v_{\text{後}}\)。前向きを正とする。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 蹴る力はA・トロッコ間の内力で、系の外から水平の力は働かない(床はなめらか)。だから「全体の運動量保存」を選ぶ。エネルギー保存は使えない(蹴る=Aの筋力が仕事をするので力学的エネルギーは増える)。

Step 3 式の意味を読む: 「蹴る前の全運動量」=「蹴った後の全運動量」。左辺は一体の \(350 \, \text{kg}\)、右辺は2つに分かれた運動量の和。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} (200+150)\times 6.0 &= 200\times 6.9 + 150\times v_{\text{後}} \\ 2100 &= 1380 + 150\, v_{\text{後}} \\ 150\, v_{\text{後}} &= 2100 – 1380 \\ 150\, v_{\text{後}} &= 720 \\ v_{\text{後}} &= \displaystyle\frac{720}{150} \\ v_{\text{後}} &= 4.8 \end{aligned}$$

よって \(v_{\text{後}}=4.8 \, \text{m}/\text{s}\)(前向き)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は \(\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\) で両辺一致。符号は正=前向きで、元の \(6.0\) より遅い(後方へ蹴った反動でAのトロッコが加速し、その分後ろが減速)ので直感と合う。極端に見ると、もしAのトロッコが加速しなければ後ろも \(6.0\) のまま。加速した分だけ後ろが遅くなる、という関係が成り立っている。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 分離・爆発・反動の問題では、まず「外力が働かないひとかたまり(系)」を先に決め、その全質量×全速度を初期運動量にする。ロケット・大砲の反動・人が台車から飛び降りる問題まで同じ骨格。
波及②: 「後ろへ蹴る」のような相対的な表現は、必ず「地面から見た速さ」に翻訳してから式に入れる。向きの正負は自分で決めた正の向きに従わせ、答えの符号で現実の向きを読む。
波及③: 運動量は保存するがエネルギーは保存しない(人が仕事をする)場面を見分けられると、使う式を取り違えなくなる。

(2) Aから後ろトロッコへの力積 ─ 「作用の相手」を正しく取る

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 力積を「Aの運動量変化」で計算してしまう(\(50\times(6.9-6.0)\) など)。
診断: 「Aが後ろトロッコに与えた力積」の主語と相手を取り違える「作用の相手を取り違えるクセ」。求めたいのは後ろトロッコが受けた力積なので、見るべきは後ろトロッコの運動量変化。
誤答パターン②: 力積を「\(150\times 4.8\)」(後の運動量だけ)としてしまう。
診断: 力積=運動量の変化(後−前)なのに、変化ではなく後の値そのものを出す「差をとり忘れるクセ」。後ろトロッコは元々 \(6.0\) で動いていたので、その分を引かないといけない。
誤答パターン③: 速さが \(6.0\to 4.8\) と減ったので力積を負にし「\(-180\)」とし、大きさを聞かれているのに符号つきで答える。
診断: 「向き」と「大きさ」を混同する「大きさの問いに符号をつけるクセ」。力積は後ろ向き(減速方向)に \(180\) だが、大きさは \(1.8\times 10^{2}\)。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 後ろトロッコ(\(150 \, \text{kg}\))は \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) から \(4.8 \, \text{m}/\text{s}\) へ。この速度変化を起こした唯一の水平の力が、Aの足による蹴り。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 「物体が受けた力積=その物体の運動量変化」(力積・運動量定理)を選ぶ。後ろトロッコが受けた力積を知りたいので、後ろトロッコの運動量変化を見ればよい。作用反作用より、Aが与えた力積とトロッコが受けた力積は大きさが等しい。

Step 3 式の意味を読む: 力積 \(I=m v_{\text{後}} – m v_{\text{前}}\)。前より後が遅いので値は負、つまり進行方向と逆(後ろ向き)の力積。

Step 4 代入して確かめる:

$$\begin{aligned} I &= 150\times 4.8 – 150\times 6.0 \\ I &= 720 – 900 \\ I &= -180 \end{aligned}$$

大きさは \(180 = 1.8\times 10^{2} \, \text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は \(\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\)(=\(\text{N}\cdot\text{s}\))でOK。符号が負=後ろ向きで、「後ろへ蹴った反動で後ろトロッコが減速した」という現象と一致。作用反作用で見ると、後ろトロッコもAを前へ \(180\) の力積で押し返しており、そのおかげでAのトロッコが加速したと読める。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「AがBに与えた力積」を求めるときは、B(受け手)の運動量変化を計算する。主語と相手が入れ替わっても、作用反作用で大きさは同じ。
波及②: 力積は必ず「後−前」の引き算。速度の初期値が0でない問題(走行中・回転中)では、引き忘れが致命傷になる。
波及③: 「大きさを求めよ」なら符号を外して答える。向きが必要なら別に言葉で添える。この一手間が減点を防ぐ。

§4. 2次元の直交衝突 ─ 運動量を「成分ごと」に保存する(\(p_x,\,p_y\) 使用)

x軸方向に進むA(\(1.0 \, \text{kg}\))と、y軸方向に進むB(\(1.5 \, \text{kg}\))が原点で衝突し、衝突後はAがy方向、Bがx方向へ進む。衝突後それぞれの速さを求める問題。得点率は77.0%と高めだが、「ベクトルをスカラーのまま混ぜる」落とし穴が残る。※ 問題文は手元プリント参照。

§4.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §4.2 のアコーディオン内。

(答え): A \(1.5 \, \text{m}/\text{s}\) / B \(2.0 \, \text{m}/\text{s}\)。運動量をx成分・y成分に分け、それぞれ独立に保存させる。x方向 \(1.0\times 3.0 = 1.5\times v_{\text{B}}\)、y方向 \(1.5\times 1.0 = 1.0\times v_{\text{A}}\)。

§4.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ ベクトルは「軸ごとに別会計」

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

衝突後の速さ ─ x成分とy成分を混ぜない

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 向きの違うAとBの運動量を、大きさだけ足して「\(1.0\times 3.0 + 1.5\times 1.0 = 4.5\)」を保存量にしてしまう。
診断: 向きの違うベクトルを、数字だけ見て足す「ベクトルをスカラーで混ぜるクセ」。Aは横向き、Bは縦向きで、そもそも足せない。運動量は矢印(ベクトル)で、軸をそろえてからでないと足し引きできない。
誤答パターン②: x方向とy方向を1本の式にまとめようとして、\(1.0\times 3.0 + 1.5\times 1.0 = 1.0\times v_{\text{A}} + 1.5\times v_{\text{B}}\) と書く。
診断: 「保存は1本の式」という思い込みで、直交する2方向を1本に押し込む「軸を分けないクセ」。2次元ではx用とy用の2本の式が立つ。それぞれが独立した会計簿だ。
誤答パターン③: 衝突後の向きが「入れ替わる」ことを読み落とし、Aは相変わらずx方向、Bはy方向のまま式を立てる。
診断: 問題文の「衝突後Aはy方向、Bはx方向」を絵に落とさない「条件を絵にしないクセ」。誰がどの軸に移ったかを図に描けば、どの成分が0になるか一目でわかる。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 衝突前、Aはx正方向に \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)(y成分0)、Bはy正方向に \(1.0 \, \text{m}/\text{s}\)(x成分0)。衝突後、Aはy正方向に \(v_{\text{A}}\)(x成分0)、Bはx正方向に \(v_{\text{B}}\)(y成分0)。矢印を十字に描く。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 外力が働かない衝突なので運動量保存。ただしベクトルなのでx成分・y成分それぞれで保存する。理由は、運動量保存が「向きも込めて」成り立つから。向きの異なる量は軸に分解して初めて足し引きできる。

Step 3 式の意味を読む: x方向の会計簿は「Aが持っていたx運動量が、衝突後Bへ渡る」。y方向の会計簿は「Bが持っていたy運動量が、衝突後Aへ渡る」。2つの軸は互いに干渉しない。

Step 4 代入して確かめる:

x成分(左辺=衝突前、右辺=衝突後。衝突後Aはx成分を持たない):

$$\begin{aligned} 1.0\times 3.0 &= 1.5\times v_{\text{B}} \\ v_{\text{B}} &= \displaystyle\frac{3.0}{1.5} \\ v_{\text{B}} &= 2.0 \end{aligned}$$

y成分(衝突後Bはy成分を持たない):

$$\begin{aligned} 1.5\times 1.0 &= 1.0\times v_{\text{A}} \\ v_{\text{A}} &= \displaystyle\frac{1.5}{1.0} \\ v_{\text{A}} &= 1.5 \end{aligned}$$

よってA \(1.5 \, \text{m}/\text{s}\)、B \(2.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は両辺 \(\text{kg}\cdot\text{m}/\text{s}\) で一致。x方向はAだけが運動量を持ち込みBだけが持ち去る、y方向はBだけが持ち込みAだけが持ち去る、という「きれいな受け渡し」になっており、直交の対称性と合う。値も正で向きの矛盾なし。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 2次元・3次元の運動量保存は「軸ごとに別々の保存式」を立てるのが鉄則。x会計・y会計は独立で、決して1本にまとめない。斜め衝突・分裂・散乱すべてこの手順。
波及②: ベクトル量(運動量・力・速度)は、大きさだけで足し引きしない。まず座標軸を決め、各量を成分に分解してから計算する。この一手が「スカラーで混ぜる」事故を根絶する。
波及③: 衝突後に成分が0になる方向があると、式が1つの未知数だけになって一気に解ける。問題文の「どちらの軸へ進むか」を最初に絵にしておくと、この単純化を逃さない。

§5. 追突と反発係数、失われたエネルギー ─ 2式の連立と熱への変換(\(e\)・\(K\) 使用)

なめらかな水平面で、前を進むA(\(1.0 \, \text{kg}\)・\(2.0 \, \text{m}/\text{s}\))に、後ろから来たB(\(2.0 \, \text{kg}\)・\(8.0 \, \text{m}/\text{s}\))が追突する。反発係数は \(0.50\)。衝突後の各速さと、衝突で失われた力学的エネルギーを求める。得点率は全体46.8%、特に(2)は31.7%と低い。※ 問題文は手元プリント参照。

§5.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §5.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(v_{\text{A}}=8.0 \, \text{m}/\text{s}\)、\(v_{\text{B}}=5.0 \, \text{m}/\text{s}\)。運動量保存(\(18=2v_{\text{B}}+v_{\text{A}}\))と反発係数の式(\(v_{\text{A}}-v_{\text{B}}=3.0\))を連立して解く。
(2) 答え: \(9 \, \text{J}\)。失われたエネルギー=衝突前の運動エネルギー \(66 \, \text{J}\) − 衝突後 \(57 \, \text{J}\)。この差が熱や音に変わって消えた分。

§5.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 相対速度の向きと「消えたエネルギー」の正体

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

(1) 衝突後の速さ ─ 保存式と反発係数の連立

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 反発係数の式を \(e=\displaystyle\frac{v_{\text{B}}-v_{\text{A}}}{8.0-2.0}\) と、分子の速度を逆に置く。
診断: 「分子は衝突の相対速度、分母は衝突の相対速度」で、しかも引く順番を前後でそろえる、という約束を崩す「相対速度の向きを取り違えるクセ」。分母を「後ろのB基準で前のAを見る(\(8.0-2.0\)=近づく速さ)」ととったなら、分子も同じ並びで \(v_{\text{A}}-v_{\text{B}}\)(追い抜き後に離れる速さ)にそろえる。
誤答パターン②: 運動量保存だけ、あるいは反発係数だけで解こうとして、未知数2つに式1本で行き詰まる。
診断: 「衝突後の速さが2つある=式も2本要る」という自由度の勘定を飛ばす「連立を立て損なうクセ」。運動量保存1本+反発係数1本の2本セットで必ず解ける。
誤答パターン③: 運動量保存で、後ろから追突するBの運動量を \(2.0\times 8.0\) と正しく置けず、質量と速度を取り違える/Aの \(1.0\times 2.0\) を足し忘れる。
診断: どちらがどの質量・速さかを図に固定しない「登場物の値を取り違えるクセ」。前がA(軽い・遅い)、後ろがB(重い・速い)と絵に書き込んでから式へ。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 同じ向き(右)に、前A \(2.0\)、後ろB \(8.0\)。Bが速いので追いつき追突。衝突後も両方右向きに \(v_{\text{A}},\,v_{\text{B}}\)。右向きを正とする。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 外力なし→運動量保存が1本。速さが2つ未知なので、もう1本として反発係数の定義式を使う。反発係数は「衝突後に離れる相対速度÷衝突前に近づく相対速度」。

Step 3 式の意味を読む: 運動量保存は「衝突前の全運動量=衝突後の全運動量」。反発係数の式は「跳ね返りの勢い」を表し、\(v_{\text{A}}-v_{\text{B}}\)(後ろのBから見て前のAが離れていく速さ)が、近づく速さ \(8.0-2.0\) の \(0.50\) 倍になる、という意味。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

運動量保存:

$$\begin{aligned} 2.0\times 8.0 + 1.0\times 2.0 &= 2.0\, v_{\text{B}} + 1.0\, v_{\text{A}} \\ 16 + 2 &= 2\, v_{\text{B}} + v_{\text{A}} \\ 18 &= 2\, v_{\text{B}} + v_{\text{A}} \end{aligned}$$

反発係数:

$$\begin{aligned} 0.50 &= \displaystyle\frac{v_{\text{A}} – v_{\text{B}}}{8.0 – 2.0} \\ v_{\text{A}} – v_{\text{B}} &= 0.50\times 6.0 \\ v_{\text{A}} – v_{\text{B}} &= 3.0 \end{aligned}$$

下の式より \(v_{\text{A}}=v_{\text{B}}+3.0\)。これを上の式へ代入:

$$\begin{aligned} 18 &= 2\, v_{\text{B}} + (v_{\text{B}} + 3.0) \\ 18 &= 3\, v_{\text{B}} + 3.0 \\ 3\, v_{\text{B}} &= 15 \\ v_{\text{B}} &= 5.0 \end{aligned}$$

よって \(v_{\text{A}}=5.0+3.0=8.0\)。

したがって \(v_{\text{A}}=8.0 \, \text{m}/\text{s}\)、\(v_{\text{B}}=5.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

Step 5 妥当性チェック: 衝突後は前のAが \(8.0\)、後ろのBが \(5.0\) で、Aが速い=ちゃんと前へ離れていく(めり込まない)ので現実的。両方正で右向き。もし \(v_{\text{A}}\lt v_{\text{B}}\) なら後ろが前を追い越して通り抜ける不自然な結果になるので、\(v_{\text{A}}\gt v_{\text{B}}\) は良い符号。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「衝突後の速さが2つ未知」なら、運動量保存+反発係数の2本連立が定石。どんな一直線上の衝突も、この2本で必ず解ける。
波及②: 反発係数の式は、分母(近づく相対速度)と分子(離れる相対速度)で引く順番をそろえる。「後ろの物体から見て前の物体を引く」と決めて前後で統一すれば符号ミスが消える。
波及③: \(e=1\) なら弾性衝突(跳ね返り最大)、\(e=0\) なら合体。\(0\leq e\leq 1\) の範囲で「どれだけ跳ね返るか」を1つの数で表しているとイメージすると、値の妥当性を検算できる。

(2) 失われた力学的エネルギー ─ 「差」が消えた分

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「運動量が保存するのだから、エネルギーも保存して失われた分は0」と考える。
診断: 運動量保存とエネルギー保存を同一視する「2つの保存則を混同するクセ」。\(e\lt 1\) の衝突では運動量は保存しても、力学的エネルギーは減る(一部が熱・音・変形に化ける)。保存するのは運動量だけ。
誤答パターン②: 運動エネルギーの \(\displaystyle\frac{1}{2}\) を付け忘れ、\(mv^2\) で計算して2倍の値を出す。
診断: 公式の係数を落とす「½を書き忘れるクセ」。運動エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)。前後どちらも同じ係数なので、忘れると差も狂う。
誤答パターン③: 「衝突後−衝突前」と引いて負の値を出し、そのまま \(-9 \, \text{J}\) を「失われたエネルギー」と答える。
診断: 「失われた量=減った量=前−後」の向きを取り違える「引く向きを逆にするクセ」。失われた分は正の量として「前−後」で出す。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 衝突前は速いB+遅いA、衝突後はやや速いA+遅くなったB。全体の運動エネルギーが衝突前後でどれだけ目減りしたかを見る。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 失われた力学的エネルギー=(衝突前の運動エネルギーの和)−(衝突後の運動エネルギーの和)。高さ変化がないので位置エネルギーは無視でき、運動エネルギーだけ見ればよい。

Step 3 式の意味を読む: この差こそが、衝突の瞬間に熱・音・変形に変わって力学の世界から消えたエネルギー。\(e\lt 1\) だから必ず正になる。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

衝突前の運動エネルギー(B \(8.0\)、A \(2.0\)):

$$\begin{aligned} K_{\text{前}} &= \displaystyle\frac{1}{2}\times 2.0\times 8.0^2 + \displaystyle\frac{1}{2}\times 1.0\times 2.0^2 \\ K_{\text{前}} &= 64 + 2 \\ K_{\text{前}} &= 66 \end{aligned}$$

衝突後の運動エネルギー(B \(5.0\)、A \(8.0\)):

$$\begin{aligned} K_{\text{後}} &= \displaystyle\frac{1}{2}\times 2.0\times 5.0^2 + \displaystyle\frac{1}{2}\times 1.0\times 8.0^2 \\ K_{\text{後}} &= 25 + 32 \\ K_{\text{後}} &= 57 \end{aligned}$$

失われた分:

$$\begin{aligned} \Delta K &= K_{\text{前}} – K_{\text{後}} \\ \Delta K &= 66 – 57 \\ \Delta K &= 9 \end{aligned}$$

失われた力学的エネルギーは \(9 \, \text{J}\)。

Step 5 妥当性チェック: 値が正なので「エネルギーが減った」という物理と一致(増えることはあり得ない)。もし \(e=1\) を代入して解いた別世界なら \(\Delta K=0\) になるはずで、\(e=0.50\) はそれより跳ね返りが弱いから正の目減りが出る、という関係とも整合する。単位は \(\text{J}\) でOK。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 衝突で「失われたエネルギー」を問われたら、\(\text{(前の運動エネルギーの和)}-\text{(後の運動エネルギーの和)}\) を正の向きで計算する。答えは必ず0以上。
波及②: 運動量は保存するがエネルギーは保存しない、という2つの保存則の性格の違いを切り分ける。合体(\(e=0\))で失うエネルギーは最大、弾性衝突(\(e=1\))で0。
波及③: 消えたエネルギーは無くなったのではなく熱・音・変形へ移った。「力学的エネルギーは保存しないが、全エネルギーは保存する」という上位の見方につながる。

§6. 動く台+壁 ─ 「床から見た運動量保存」が二重に効く最難問(\(m\), \(M\), \(h\), \(e\) 使用)

なめらかな床の上に、なめらかな曲面と鉛直な壁を持つ質量 \(M\) の台がある。曲面の左端は右端より \(h\) だけ高い。その左端から質量 \(m\) の小球を静かに滑らせる。台は床の上を自由に動ける。小球は右端で壁にぶつかり、反発係数 \(e\) ではね返る。※ 問題文は手元プリント参照。

この大問は全体得点率12.4%、しかも(1)は得点率0%。ほぼ全員が落とした。理由ははっきりしている。「台が動く」という一言を、多くの人が無意識に消してしまうからだ。台を壁や地面のように固定して考えた瞬間、答えは全部ずれる。ここを一緒に立て直そう。

§6.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §6.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(v_1=\sqrt{\displaystyle\frac{2M}{M+m}gh}\)、\(V_1=\displaystyle\frac{m}{M}\sqrt{\displaystyle\frac{2M}{M+m}gh}\)。床から見た水平方向の運動量保存 \(m v_1 = M V_1\) と、力学的エネルギー保存 \(mgh=\displaystyle\frac{1}{2}mv_1^2+\displaystyle\frac{1}{2}MV_1^2\) を連立するだけ。台が動く分だけ、小球の速さは「台が固定のときの \(\sqrt{2gh}\)」より小さくなる。
(2) 答え: \(v_2=e v_1\)、\(V_2=e V_1\)。壁は台の一部なので、衝突は「小球と台の衝突」。相対速度が \(e\) 倍になり、この設定では小球・台それぞれの速さがそのまま \(e\) 倍になる。
(3) 答え: \(h_1=e^2 h\)。はね返った後、小球と台が再び相対的に静止する(同じ速度になる)瞬間が最高点。エネルギーが \(e^2\) 倍になっているので、上がれる高さも \(e^2\) 倍。

§6.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「動く台」を固定と思い込むクセを外す

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。この大問は、正しく解けた人でも「たまたま」のことが多い。原理から組み立て直そう。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

(1) 壁に当たる直前の速さ \(v_1\) と \(V_1\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「高さ \(h\) を落ちるんだから \(v_1=\sqrt{2gh}\) でしょ」と即答する。
診断: 台を床にネジ止めされた固定物だと思い込む「動く基準系を固定と思い込むクセ」。台が動くと、位置エネルギーは小球の運動エネルギーだけでなく、台の運動エネルギーにも分配される。だから小球は \(\sqrt{2gh}\) より遅くなる。得点率0%の主犯がこれ。
誤答パターン②: 「文字だけで答える問題」を見た瞬間、何をどう置けばいいか分からず手が止まる。
診断: 数字が無いと式が立てられない「数値待ちのクセ」。文字問題こそ、原理(保存則)を先に日本語で言い切ってから式に翻訳すれば必ず立つ。「静かに滑らせる=初速0=はじめの運動量0」がスタート地点だ。
誤答パターン③: 運動量保存は使ったが、\(m v_1 = M V_1\) を \(m v_1 = (M+m)V_1\) のように「台と小球を一体」で書く。
診断: 衝突直前は小球と台が別々に動いている(小球は右へ、台は左へ)のに、合体しているかのように扱う「系の分け方を雑にするクセ」。この瞬間は2物体が逆向きに動く2体問題だ。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 床の上に台。小球が曲面を下りながら台を左へ押す。作用反作用で台は左へ、小球は右へ動き出す。壁に当たる直前、小球は右向きに速さ \(v_1\)、台は左向きに速さ \(V_1\)。この「逆向き」の絵が命。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ)。 床はなめらか=水平方向に外から力が働かない。だから床から見た水平方向の運動量は保存する(はじめ0なので、ずっと0)。さらに、曲面もなめらかで摩擦熱が出ない=力学的エネルギーも保存する。使う武器はこの2本。

Step 3 式の意味を読む。 右向きを正とすると、運動量の合計は「小球 \(m v_1\)(右)」+「台 \(-M V_1\)(左)」で、これが0。だから \(m v_1 = M V_1\)。エネルギーは、失った位置エネルギー \(mgh\) が、小球の運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv_1^2\) と台の運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}MV_1^2\) に分かれる。

$$\begin{aligned} m v_1 &= M V_1 \\ mgh &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_1^2 + \displaystyle\frac{1}{2} M V_1^2 \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 1本目から \(V_1=\displaystyle\frac{m}{M}v_1\)。これを2本目へ入れて \(v_1\) を求める。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} V_1 &= \displaystyle\frac{m}{M} v_1 \\ mgh &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_1^2 + \displaystyle\frac{1}{2} M \left(\displaystyle\frac{m}{M} v_1\right)^2 \\ mgh &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_1^2 + \displaystyle\frac{1}{2} \displaystyle\frac{m^2}{M} v_1^2 \\ mgh &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_1^2 \left(1 + \displaystyle\frac{m}{M}\right) \\ mgh &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_1^2 \cdot \displaystyle\frac{M+m}{M} \\ v_1^2 &= \displaystyle\frac{2M}{M+m} gh \\ v_1 &= \sqrt{\displaystyle\frac{2M}{M+m} gh} \end{aligned}$$

そして \(V_1\) は \(v_1\) を \(\displaystyle\frac{m}{M}\) 倍して、

$$\begin{aligned} V_1 &= \displaystyle\frac{m}{M} \sqrt{\displaystyle\frac{2M}{M+m} gh} \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック(必ず全部やる)。 ①極端ケース:台がとても重い(\(M\) が \(m\) よりずっと大きい)と \(\displaystyle\frac{2M}{M+m}\) は 2 に近づき、\(v_1\to\sqrt{2gh}\)。これは「台が動かない=固定」の答えに一致。物理的に完璧。②同時に \(V_1\to0\)(重い台はほとんど動かない)。③次元:ルートの中は \(gh\)=(\(\text{m}/\text{s}^2\))×(\(\text{m}\))=速さの2乗。単位も合う。④符号:\(v_1,V_1\) とも正で、絵の向き(右・左)と矛盾なし。

ここが分かれ道: 「台が動くと、小球の速さは固定台のときより小さくなる」。エネルギーの一部を台に取られるから。この一文を絵と一緒に覚えておけば、(1)の0%から抜け出せる。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「なめらかな床に置かれた台の上での運動」は必ず床から見た水平運動量保存+力学的エネルギー保存の2本セットで攻める。台が動く問題の8割はこの型だ。
波及②: 「静かに」「そっと」「初速0」は、はじめの運動量=0という強力な出発点。運動量の合計がずっと0なので、\(m v_1 = M V_1\) のように2物体の速さが常に反比例する。
波及③: 重い方(\(M\to\infty\))で「固定物の答え」に戻るか、を極端チェックにすると、立てた式の正しさを自分で検算できる。

(2) はね返った直後の速さ \(v_2\)、\(V_2\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「壁は動かないから小球だけ \(e\) 倍。答えは \(v_2=e v_1\) で台は \(V_2=V_1\) のまま」とする。
診断: 壁を「床に固定された壁」だと思い込む「動く基準系を固定と思い込むクセ」の(1)からの再発。壁は台にくっついている。壁が動く=台が動く。だから台の速さも変わる。
誤答パターン②: 反発係数を「小球の速さの前後の比 \(e=v_2/v_1\)」と単純に置く。
診断: 反発係数は2物体の相対速度の比、という定義を落とす「定義の主語を忘れるクセ」。ここでの相対速度は「小球から見た台」。壁が動く以上、地面基準の小球の速さだけでは決まらない。
誤答パターン③: 衝突で運動量保存を忘れ、反発係数の式1本だけで解こうとする。
診断: 衝突=「運動量保存+反発係数」の2本セット、を片方だけにする「セットを崩すクセ」。壁との衝突も、小球と台の間の力は内力なので合計の運動量は保存する(ずっと0のまま)。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 衝突の相手は「壁」ではなく「壁を含む台」。小球(右向き \(v_1\))と台(左向き \(V_1\))がぶつかり、はね返って向きが入れ替わる。はね返り後は小球が左へ \(v_2\)、台が右へ \(V_2\)。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 床はなめらかなので、衝突の前後でも合計の運動量は0のまま保存。加えて反発係数の定義を相対速度で立てる。

Step 3 式の意味を読む。 右向きを正とする。運動量保存は、はね返り後も合計0だから \(-m v_2 + M V_2 = 0\)、つまり \(m v_2 = M V_2\)。反発係数は「離れる相対速度 ÷ 近づく相対速度」。

$$\begin{aligned} m v_2 &= M V_2 \\ e &= \displaystyle\frac{v_2 + V_2}{v_1 + V_1} \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 \(V_1=\displaystyle\frac{m}{M}v_1\)、\(V_2=\displaystyle\frac{m}{M}v_2\) を反発係数の式へ。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

近づく相対速度は、小球(右 \(v_1\))と台(左 \(V_1\))が向かい合うので \(v_1+V_1\)。離れる相対速度は、小球(左 \(v_2\))と台(右 \(V_2\))が離れるので \(v_2+V_2\)。それぞれ \(V=\displaystyle\frac{m}{M}v\) を入れる。

$$\begin{aligned} v_1 + V_1 &= v_1 + \displaystyle\frac{m}{M} v_1 \\ v_1 + V_1 &= v_1 \left(1 + \displaystyle\frac{m}{M}\right) \\ v_2 + V_2 &= v_2 \left(1 + \displaystyle\frac{m}{M}\right) \\ e &= \displaystyle\frac{v_2 \left(1 + \displaystyle\frac{m}{M}\right)}{v_1 \left(1 + \displaystyle\frac{m}{M}\right)} \\ e &= \displaystyle\frac{v_2}{v_1} \end{aligned}$$

共通因数 \(\left(1+\displaystyle\frac{m}{M}\right)\) が約分で消え、きれいに \(v_2=e v_1\)。台の方も \(V_2=\displaystyle\frac{m}{M}v_2=\displaystyle\frac{m}{M}e v_1=e V_1\)。

$$\begin{aligned} v_2 &= e v_1 \\ V_2 &= e V_1 \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①極端ケース:\(e=1\)(完全弾性)なら \(v_2=v_1,V_2=V_1\) で、速さがそっくりそのまま反転。エネルギーも減らない。正しい。②\(e=0\)(完全非弾性)なら \(v_2=V_2=0\)、小球と台がぴたっと同じ速度(合計0だから両方静止)。壁に張り付くイメージで納得。③\(0 \leq e \leq 1\) なので \(v_2 \leq v_1\)、はね返りで遅くなる。符号・向きも絵と一致。

波及①: 「壁」「床」「レール」が動く物体の一部なら、それは固定物ではなく質量ありの衝突相手。「誰にくっついているか」を必ず確認する。
波及②: 反発係数はいつでも相対速度で書く。相手が動くとき「片方の速さの比」で書くと必ず間違える。定義の主語は「離れる/近づく2物体の相対速度」。

(3) はね返り後に上がれる最高の高さ \(h_1\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「小球の速さ \(v_2\) が全部高さに変わる」として \(\displaystyle\frac{1}{2}mv_2^2=mgh_1\) から \(h_1=e^2\displaystyle\frac{v_1^2}{2g}\)…と台のエネルギーを無視する。
診断: 最高点でも台は動いている、を忘れる「台のエネルギーを取り忘れるクセ」。実は最高点では別のことが起きている(下記)。
誤答パターン②: 「最高点=小球の速さが0」と考える。
診断: 地面基準で小球が止まると思い込む「基準系を忘れるクセ」。小球が台の上で一番高く上がる瞬間は、小球が台に対して止まる=小球と台が同じ速度で動く瞬間。地面から見れば両方まだ動きうる。
誤答パターン③: \(h_1=e h\)(\(e\) の1乗)と即答する。
診断: 速さが \(e\) 倍なら高さも \(e\) 倍、と直感で飛びつく「1乗と2乗を取り違えるクセ」。高さはエネルギー(速さの2乗)に比例する。速さ \(e\) 倍→エネルギー \(e^2\) 倍→高さ \(e^2\) 倍。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 はね返った小球は台の曲面を左へ駆け上がる。上がるほど遅くなり、やがて小球は台に対して止まる。この「台と一緒に動く(相対的に静止)」瞬間が最高点。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 はね返り後も外力なしなので合計の運動量は0のまま。小球と台が共通の速度 \(u\) になった瞬間、\(m u + M u = (m+M)u = 0\) だから \(u=0\)。つまり最高点では小球も台も一瞬止まる。あとは力学的エネルギー保存

Step 3 式の意味を読む。 はね返り直後の運動エネルギーの合計が、すべて位置エネルギー \(mgh_1\) に変わる(最高点では運動エネルギー0)。

$$\begin{aligned} mgh_1 &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_2^2 + \displaystyle\frac{1}{2} M V_2^2 \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 \(v_2=e v_1,\ V_2=e V_1\) を入れ、(1)で分かった「\(\displaystyle\frac{1}{2}mv_1^2+\displaystyle\frac{1}{2}MV_1^2=mgh\)」を使う。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} mgh_1 &= \displaystyle\frac{1}{2} m (e v_1)^2 + \displaystyle\frac{1}{2} M (e V_1)^2 \\ mgh_1 &= e^2 \left(\displaystyle\frac{1}{2} m v_1^2 + \displaystyle\frac{1}{2} M V_1^2\right) \\ mgh_1 &= e^2 \cdot mgh \\ h_1 &= e^2 h \end{aligned}$$

カッコの中身は(1)のエネルギー保存の右辺そのもので、値は \(mgh\)。だから \(mgh_1=e^2 mgh\)、両辺を \(mg\) で割って \(h_1=e^2 h\)。

Step 5 妥当性チェック。 ①極端ケース:\(e=1\) なら \(h_1=h\)、エネルギーが減らないので元の高さまで戻る。完璧。②\(e=0\) なら \(h_1=0\)、はね返らず上がらない。納得。③\(0 \leq e \leq 1\) なので \(h_1 \leq h\)、必ず元より低い。④次元:\(e^2\) は無次元、\(h\) は長さ。\(h_1\) も長さで合う。

美しいポイント: 最終結果 \(h_1=e^2 h\) に \(m\) も \(M\) も残らない。台の質量に関係なく、高さは \(e^2\) 倍。これは「エネルギーが衝突で \(e^2\) 倍に減る」という反発係数の本質そのものだ。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「動く台の上で最高点/最遠点/折り返し」を問われたら、条件は「相対速度0=2物体が同じ速度」。地面基準で片方が止まる、ではない。合計運動量が0のときだけ、その共通速度も0になる。
波及②: 反発係数 \(e\) は「速さを \(e\) 倍」=「運動エネルギーを \(e^2\) 倍」=「上がれる高さを \(e^2\) 倍」。1乗・2乗の橋渡しをいつでも即答できるようにしておく。
波及③: (1)(2)(3)は独立問題ではなく、(1)のエネルギー \(mgh\)、(2)の \(e\) 倍が(3)へ流れ込む「連鎖」。前問の結果を「部品」として使う視点が、この型を速く解く鍵。

§7. 円錐振り子 ─ 張力を「鉛直」と「水平」に切り分けられるかが全て(\(l\), \(\theta\), \(m\), \(g\) 使用)

長さ \(l\) の軽い糸の上端を固定し、下端に質量 \(m\) の小球をつける。小球は水平な円をえがいて等速で回り、糸は鉛直方向と角 \(\theta\) をなす。※ 問題文は手元プリント参照。

全体得点率42.1%。(1)半径は78.2%取れるのに、(3)角速度25.0%、(4)周期17.5%と、後半で一気に崩れる。原因はただ一つ。糸の張力を「鉛直成分」と「水平成分」に分解して、鉛直は『つり合い』・水平は『向心力(運動方程式)』という別の役割を割り当てる、この切り分けができるかどうか。ここを丁寧に開こう。

§7.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §7.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(r=l\sin\theta\)。円の半径は、糸を鉛直から \(\theta\) 傾けたときの水平方向の張り出し。糸の長さ \(l\) に \(\sin\theta\) をかけるだけ。
(2) 答え: \(T=\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\)。鉛直方向は上下でつり合う(小球は上下に動かない)。張力の鉛直成分 \(T\cos\theta\) が重力 \(mg\) を支える。
(3) 答え: \(\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}}\)。水平方向は張力の水平成分 \(T\sin\theta\) が向心力 \(mr\omega^2\) になる。(2)の \(T\) と(1)の \(r\) を入れて \(\omega\) を出す。
(4) 答え: \(T_{\text{周期}}=2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l\cos\theta}{g}}\)。周期は \(\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\)。(3)の \(\omega\) の逆数に \(2\pi\) をかける。

§7.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「糸方向のまま」を捨てて2方向に分ける

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。円錐振り子は、力の分解の練習として最高の教材だ。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき
この大問の背骨(先に読む): 小球にはたらく力は重力 \(mg\)(真下)と糸の張力 \(T\)(糸に沿って斜め上)の2つだけ。この張力を「鉛直成分 \(T\cos\theta\)」と「水平成分 \(T\sin\theta\)」に分ける。鉛直=上下に動かないからつり合い水平=円の中心へ向かう向心力。この2行を(2)以降ずっと使い回す。

(1) 円の半径 \(r\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 半径を \(r=l\) とする(糸の長さそのもの)。
診断: 糸は斜めに傾いているのに、真横に伸びていると錯覚する「立体を平面でつぶすクセ」。糸の長さ \(l\) は斜辺。半径は水平方向の底辺だから \(l\sin\theta\)。
誤答パターン②: \(r=l\cos\theta\) と、\(\sin\) と \(\cos\) を取り違える。
診断: 角 \(\theta\) が「鉛直から測った角」なのに、水平から測ったつもりで三角比を当てる「基準の辺を確認しないクセ」。\(\theta\) は鉛直(糸の上)と糸のなす角。水平方向の成分は \(\sin\theta\) 側。
誤答パターン③: 高さ \(l\cos\theta\) を半径と混同する。
診断: 図の中の「縦(固定点から円の面までの高さ)」と「横(半径)」を混ぜる「縦横ごちゃまぜのクセ」。固定点から下ろした鉛直の長さが \(l\cos\theta\)、そこから水平に張り出したのが半径 \(l\sin\theta\)。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 固定点から糸が斜めに垂れ、小球が水平円をえがく。固定点・小球・円の中心を結ぶと直角三角形。斜辺=糸 \(l\)、鉛直から測る角=\(\theta\)。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 ここは力ではなくただの三角比。鉛直を基準に \(\theta\) を測るので、水平方向(半径)は \(\sin\)、鉛直方向(高さ)は \(\cos\)。

Step 3 式の意味を読む。 半径は「斜辺 × \(\sin\)(対辺/斜辺)」。

$$\begin{aligned} r &= l\sin\theta \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 文字のまま。数値代入は不要。

Step 5 妥当性チェック。 ①\(\theta=0\)(糸が真下)なら \(r=0\)、回っていない。正しい。②\(\theta\to90^\circ\)(糸が水平近く)なら \(r\to l\)、糸いっぱいに張り出す。納得。③長さの単位。合う。

波及①: 「鉛直から角 \(\theta\)」なら水平成分=\(\sin\theta\)、鉛直成分=\(\cos\theta\)。角をどこから測るかを毎回口に出して確認する。
波及②: 円運動の半径は「回転軸から小球までの水平距離」。糸の長さそのものではない、を反射にする。

(2) 糸の張力 \(T\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(T=mg\) とする(重力とそのままつり合うと思う)。
診断: 張力が斜めなのに真上を向いていると思う「力の向きを無視するクセ」。重力を支えるのは張力全体ではなく、その鉛直成分だけ。斜めな分、張力全体は \(mg\) より大きくなる。
誤答パターン②: 鉛直のつり合いを \(T\sin\theta=mg\) と書く(\(\sin\) と \(\cos\) が逆)。
診断: 張力を分解するとき、どちらの成分が鉛直かを確認しない「分解の割り当てを間違えるクセ」。鉛直(糸に近い側)は \(\cos\theta\)、水平(張り出す側)は \(\sin\theta\)。
誤答パターン③: 鉛直方向に「向心力」や「遠心力」を混ぜて式を立てる。
診断: 円運動=どこかに \(mr\omega^2\) を入れなきゃ、と焦る「向心力を全方向にばらまくクセ」。向心力は水平(中心向き)だけ。鉛直方向は純粋な上下のつり合いで、円運動の項は入らない。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 小球は上下には動かない(水平面内を回るだけ)。だから鉛直方向は力がつり合っている。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 鉛直方向のつり合い。上向きは張力の鉛直成分 \(T\cos\theta\)、下向きは重力 \(mg\)。

Step 3 式の意味を読む。 上下がつり合うので、両者が等しい。

$$\begin{aligned} T\cos\theta &= mg \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 \(T\) について解く。

$$\begin{aligned} T &= \displaystyle\frac{mg}{\cos\theta} \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①\(\theta=0\) なら \(T=mg\)、真下にぶら下がって静止した糸の張力に一致。②\(\theta\) が大きい(水平に近い)ほど \(\cos\theta\) は小さく \(T\) は大きくなる。傾けるほど糸がピンと張る、直感と一致。③\(\theta\to90^\circ\) で \(T\to\infty\)、水平に回すには無限の張力が要る(=不可能)。物理的に正しい。④単位=力。合う。

波及①: 斜めのひも・斜面の垂直抗力など「斜めの力が重力を支える」場面は、必ず鉛直成分だけが \(mg\) とつり合う。だから支える力の全体は \(mg\) より大きい。
波及②: 「動かない方向=つり合い」「加速する方向=運動方程式」。円錐振り子は鉛直がつり合い・水平が運動方程式、と方向で役割を割り振る。

(3) 角速度 \(\omega\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 向心力を \(T=mr\omega^2\)(張力まるごとが向心力)とする。
診断: (2)と同じ「力の向きを無視するクセ」。向心力は水平方向。張力のうち水平成分 \(T\sin\theta\) だけが中心を向く。張力全体ではない。
誤答パターン②: 向心力を \(mg\) や重力の成分で書こうとする。
診断: 「円の中心へ向かう力」を取り違える「向心力の担い手を見失うクセ」。重力は真下向きで、水平な中心方向には成分を持たない。中心へ向くのは張力の水平成分だけ。
誤答パターン③: 半径に糸の長さ \(l\) をそのまま使い \(T\sin\theta=ml\omega^2\) とする。
診断: (1)の結果 \(r=l\sin\theta\) を使い忘れる「前問の部品を拾い忘れるクセ」。向心力の \(r\) は円の半径であって糸の長さではない。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 小球は水平円を等速で回る。中心へ向かう加速度をつくる力=張力の水平成分。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 水平方向(中心向き)の運動方程式。向心力 = \(mr\omega^2\)。担い手は \(T\sin\theta\)。

Step 3 式の意味を読む。

$$\begin{aligned} T\sin\theta &= mr\omega^2 \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 (2)の \(T=\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\) と(1)の \(r=l\sin\theta\) を入れる。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} \displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\sin\theta &= m(l\sin\theta)\omega^2 \\ mg\tan\theta &= ml\sin\theta\,\omega^2 \\ g\tan\theta &= l\sin\theta\,\omega^2 \\ \displaystyle\frac{g\sin\theta}{\cos\theta} &= l\sin\theta\,\omega^2 \\ \displaystyle\frac{g}{\cos\theta} &= l\,\omega^2 \\ \omega^2 &= \displaystyle\frac{g}{l\cos\theta} \\ \omega &= \sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}} \end{aligned}$$

両辺の \(m\) が消え、\(\sin\theta\) も左右で1個ずつ約分されて消える。残るのがきれいな \(\omega^2=\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}\)。

$$\begin{aligned} \omega &= \sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}} \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①\(\theta\to90^\circ\) で \(\cos\theta\to0\)、\(\omega\to\infty\)。水平に近づけるには猛烈に速く回す必要がある。(2)で \(T\to\infty\) だったのと一致。②\(\theta\to0\) で \(\omega\to\sqrt{g/l}\)、これは長さ \(l\) の(小さく振れる)振り子の角振動数と同じで気持ちいい。③次元:\(g/l\) は(\(\text{m}/\text{s}^2\))÷(\(\text{m}\))=\(1/\text{s}^2\)、ルートで \(1/\text{s}\)、角速度の単位。合う。④\(m\) が消える=重い球も軽い球も同じ角度なら同じ速さで回る。振り子の等時性と同じ味わい。

波及①: 円運動の運動方程式は「中心へ向かう向きだけ」に立てる。斜めの力は必ず成分に割ってから、中心向き成分だけを向心力にする。
波及②: 前問の答え(\(T\) と \(r\))は次の問題の「部品」。円錐振り子は(1)→(2)→(3)→(4)が一直線につながる連鎖問題。部品を拾い直すクセをつける。

(4) 周期 \(T_{\text{周期}}\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 周期を \(2\pi\omega\)(\(\omega\) をかける)とする。
診断: 周期と角速度の関係をうろ覚えで逆にする「定義式の向きを取り違えるクセ」。角速度は「1秒あたりの回転角」、周期は「1周にかかる時間」。1周は \(2\pi\) ラジアンなので \(T_{\text{周期}}=\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\)。割り算。
誤答パターン②: ルートの中を逆さにして \(2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}}\) と書く。
診断: \(\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\) で「逆数を取る=ルートの中も上下ひっくり返す」を忘れる「逆数操作の詰めが甘いクセ」。\(\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}}\) の逆数は \(\sqrt{\displaystyle\frac{l\cos\theta}{g}}\)。
誤答パターン③: (3)で角速度を出したのに、周期でまた一から力の式を立て直そうとして時間切れ。
診断: 「周期はもう \(\omega\) から一発」と気づかない「使える結果を寝かせるクセ」。(4)は(3)の答えの逆数に \(2\pi\) をかけるだけの1行問題。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 1周=角度 \(2\pi\) を回るのにかかる時間が周期。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 定義 \(T_{\text{周期}}=\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\)。新しい力の式は不要。(3)の結果を使うだけ。

Step 3 式の意味を読む。 \(\omega\) が大きい(速く回る)ほど周期は短い、の反比例。

Step 4 代入して確かめる。 (3)の \(\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}}\) を入れる。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} T_{\text{周期}} &= \displaystyle\frac{2\pi}{\omega} \\ T_{\text{周期}} &= \displaystyle\frac{2\pi}{\sqrt{\displaystyle\frac{g}{l\cos\theta}}} \\ T_{\text{周期}} &= 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l\cos\theta}{g}} \end{aligned}$$

分母のルートの逆数を取ると、中身の分数が上下ひっくり返って \(\sqrt{\displaystyle\frac{l\cos\theta}{g}}\) になる。それに \(2\pi\) をかけて完成。

$$\begin{aligned} T_{\text{周期}} &= 2\pi\sqrt{\displaystyle\frac{l\cos\theta}{g}} \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①\(\theta\to0\)(真下に近い小さな振れ)で \(T_{\text{周期}}\to2\pi\sqrt{l/g}\)、長さ \(l\) の単振り子の周期に一致。美しい。②\(\theta\) が大きいほど \(\cos\theta\) が小さく周期は短い=速く回る。(3)で \(\omega\) が大きくなったのと一致。③次元:\(l/g\) は(\(\text{m}\))÷(\(\text{m}/\text{s}^2\))=\(\text{s}^2\)、ルートで秒。時間の単位。合う。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 円錐振り子の核は「鉛直=つり合い、水平=向心力の2本立て」。この2本を書けば(2)(3)は自動的に解ける。逆にここを混ぜると(3)25.0%の壁に落ちる。
波及②: \(\omega\)・周期・回転数・速さ \(v=r\omega\) は全部つながった仲間。ひとつ出れば残りは定義式で一発。\(T_{\text{周期}}=\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\) は必ず「割り算」。
波及③: 極端ケース \(\theta\to0\) で「単振り子の周期 \(2\pi\sqrt{l/g}\)」に戻るか、が最強の検算。ルートの上下を逆にする凡ミスもこれで一発で気づける。

§8. 半円筒内の円運動 ─ 「向心方向だけで運動方程式」と「最高点の条件は \(N=0\)」(\(r\), \(m\), \(v_0\), \(g\), \(\theta\) 使用)

半径 \(r\) のなめらかな半円筒の内面がある。最下点で質量 \(m\) の小球に水平な初速 \(v_0\) を与えると、小球は内面に沿って円をえがいて上っていく。※ 問題文は手元プリント参照。\(\theta\) は中心から見た小球の位置を表す角で、模範解答に合わせると点 \(B\) の高さは \(r(1+\cos\theta)\) となる。

全体得点率13.8%。(2)は9.5%、(3)は8.7%。ほぼ全滅だ。崩れる原因は2つ。①円運動の運動方程式に「向心方向(中心を向く方向)以外の力」まで混ぜてしまう②最高点を通れるかどうかを「速さ」だけで考え、本当の条件『垂直抗力 \(N\ge0\)』を使わない。この2点を軸に開いていこう。

§8.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §8.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(v_B=\sqrt{v_0^2-2gr(1+\cos\theta)}\)。力学的エネルギー保存。点 \(B\) の高さ \(r(1+\cos\theta)\) を正しく取り、上がった分だけ運動エネルギーが減る。
(2) 答え: \(N_B=\displaystyle\frac{mv_0^2}{r}-mg(2+3\cos\theta)\)。向心方向(中心向き)の運動方程式 \(N_B+mg\cos\theta=\displaystyle\frac{mv_B^2}{r}\) に(1)の \(v_B^2\) を入れて整理。
(3) 答え: \(v_{\text{最小}}=\sqrt{5gr}\)。最高点で内面から離れない限界は「垂直抗力 \(N=0\)」。このとき \(v_{\text{頂}}^2=gr\)。高さ \(2r\) までのエネルギー保存とあわせて \(v_0^2=5gr\)。

§8.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「向心方向だけ」と「\(N\ge0\)」の2枚看板

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。鉛直面内の円運動は、入試でも最頻出のうえ差がつく。原理を骨まで見よう。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき
この大問の背骨(先に読む): 鉛直面内の円運動は2つの道具を使い分ける①速さを出すとき=力学的エネルギー保存(なめらか=摩擦熱なし)。②垂直抗力や「通れるか」を出すとき=向心方向の運動方程式。運動方程式は中心を向く方向だけで立てる(接線方向の力は混ぜない)。この振り分けが全問の土台。

(1) 点 \(B\) での速さ \(v_B\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 点 \(B\) の高さを \(r\cos\theta\) や \(r\sin\theta\) と取る。
診断: 角 \(\theta\) の基準と、最下点からの高さの測り方を確認しない「高さの取り方を雑にするクセ」。ここでは中心から見た角の取り方に合わせ、最下点を基準にした高さが \(r(1+\cos\theta)\)。ここを外すと(1)以降が全部ずれる。
誤答パターン②: 円運動だからと、いきなり運動方程式や向心力の式で速さを出そうとする。
診断: 「速さ」を出す道具を取り違える「道具の選び違いクセ」。速さはエネルギー保存で出す。運動方程式は垂直抗力を出す道具。役割が違う。
誤答パターン③: 垂直抗力 \(N\) がした仕事をエネルギー保存に入れてしまう。
診断: 抗力も力だから仕事をするはず、と考える「仕事をする力を見極めないクセ」。垂直抗力はつねに運動方向と直角なので仕事をしない。だからエネルギー保存が使える。ここは面がなめらかであることと合わせて確認する。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 最下点で水平に \(v_0\)。内面を上るほど遅くなる。点 \(B\) は最下点より \(r(1+\cos\theta)\) だけ高い。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 面はなめらか、垂直抗力は仕事をしない=力学的エネルギー保存。最下点を高さの基準にする。

Step 3 式の意味を読む。 最下点の運動エネルギーが、点 \(B\) の運動エネルギーと位置エネルギーに分かれる。

$$\begin{aligned} \displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 &= \displaystyle\frac{1}{2}mv_B^2 + mgr(1+\cos\theta) \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 \(v_B\) について解く。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} \displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 &= \displaystyle\frac{1}{2}mv_B^2 + mgr(1+\cos\theta) \\ \displaystyle\frac{1}{2}v_0^2 &= \displaystyle\frac{1}{2}v_B^2 + gr(1+\cos\theta) \\ \displaystyle\frac{1}{2}v_B^2 &= \displaystyle\frac{1}{2}v_0^2 – gr(1+\cos\theta) \\ v_B^2 &= v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta) \\ v_B &= \sqrt{v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)} \end{aligned}$$

両辺の \(m\) を先に消し、次に両辺を2倍すると \(v_B^2\) がむき出しになる。最後にルートを取る。

$$\begin{aligned} v_B &= \sqrt{v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)} \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①最下点付近(\(\theta\to180^\circ\)、\(\cos\theta\to-1\))で高さ \(r(1+\cos\theta)\to0\)、\(v_B\to v_0\)。出発点の速さに戻る。②最高点(\(\theta=0\)、高さ \(2r\))で \(v_B=\sqrt{v_0^2-4gr}\)、いちばん遅い。③次元:\(gr\) は速さの2乗。ルートの中身が合う。④ルートの中が負なら「そこまで届かない」の合図。物理の警告灯として使える。

波及①: 円運動でも「速さ」を出すのはエネルギー保存。運動方程式ではない。道具を役割で選ぶ。
波及②: 垂直抗力・張力・レールの抗力は運動方向と直角=仕事0。だからなめらかな面や糸ではエネルギー保存が成り立つ。高さの取り方だけを慎重に。

(2) 点 \(B\) で面から受ける垂直抗力 \(N_B\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 運動方程式を \(N_B-mg=\displaystyle\frac{mv_B^2}{r}\) と、重力まるごとを入れる。
診断: 円運動の運動方程式は「中心を向く方向だけ」なのに、重力の全体を放り込む「向心方向に成分を割らないクセ」。点 \(B\) では重力 \(mg\)(真下)のうち中心を向く成分 \(mg\cos\theta\) だけが効く。得点率9.5%の主犯。
誤答パターン②: 接線方向の力(重力の接線成分 \(mg\sin\theta\))まで向心方向の式に足す。
診断: 「はたらく力を全部1本の式に入れる」クセ。円運動の運動方程式は向心(中心向き)と接線(速さを変える向き)を別々に立てる。垂直抗力を出したいなら向心方向だけ。接線成分は混ぜない。
誤答パターン③: 中心を向く重力成分の符号を逆にして \(N_B-mg\cos\theta=\displaystyle\frac{mv_B^2}{r}\) とする。
診断: 点 \(B\) が中心より高い位置にあることを図で確認しない「力の向きを図で詰めないクセ」。点 \(B\) は中心より上なので、重力の向心成分は垂直抗力と同じく中心向き。だから足し算 \(N_B+mg\cos\theta\) が正しい。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 点 \(B\) は円の中心より上にある。内面は小球を中心へ向かって押す(垂直抗力 \(N_B\)、中心向き)。重力 \(mg\) は真下だが、その一部(\(mg\cos\theta\))も中心を向く。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 向心方向(中心向き)の運動方程式。中心を向く力の合計 = \(\displaystyle\frac{mv_B^2}{r}\)。担い手は \(N_B\) と \(mg\cos\theta\) の2つ、どちらも中心向き。

Step 3 式の意味を読む。

$$\begin{aligned} N_B + mg\cos\theta &= \displaystyle\frac{mv_B^2}{r} \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 (1)の \(v_B^2=v_0^2-2gr(1+\cos\theta)\) を入れて \(N_B\) を出す。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)
$$\begin{aligned} N_B &= \displaystyle\frac{mv_B^2}{r} – mg\cos\theta \\ N_B &= \displaystyle\frac{m}{r}\left(v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)\right) – mg\cos\theta \\ N_B &= \displaystyle\frac{mv_0^2}{r} – 2mg(1+\cos\theta) – mg\cos\theta \\ N_B &= \displaystyle\frac{mv_0^2}{r} – 2mg – 2mg\cos\theta – mg\cos\theta \\ N_B &= \displaystyle\frac{mv_0^2}{r} – 2mg – 3mg\cos\theta \\ N_B &= \displaystyle\frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3\cos\theta) \end{aligned}$$

\(\displaystyle\frac{m}{r}\times2gr=2mg\) の \(r\) が約分で消えるのがポイント。最後に \(mg\) でくくって \((2+3\cos\theta)\) にまとめる。

$$\begin{aligned} N_B &= \displaystyle\frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3\cos\theta) \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①最高点(\(\theta=0\)、\(\cos\theta=1\))で \(N_B=\displaystyle\frac{mv_0^2}{r}-5mg\)。これが0になる条件が(3)の \(v_0^2=5gr\) とつながる(前触れ)。②\(N_B\) が負に出たら「面から離れている=そこまで到達していない」の合図。③次元:\(\displaystyle\frac{mv_0^2}{r}\) は力、\(mg\) も力。合う。④\(\theta\) が大きい(下の方)ほど \(\cos\theta\) が小さく、引かれる量が減って \(N_B\) は大きい。下ほど強く押される、直感と一致。

波及①: 鉛直面内の円運動で垂直抗力・張力を出すときは、必ず向心方向(中心向き)だけで運動方程式を立てる。重力は中心を向く成分だけを取り出す。接線成分は速さを変える役で、この式には入れない。
波及②: 力が中心を向くか外を向くかは、その点が中心より上か下かで決まる。必ず図で位置を確かめてから符号を決める。上側では重力の向心成分と垂直抗力が同じ向き(足し算)。

(3) 最高点を通るための初速 \(v_0\) の最小値 \(v_{\text{最小}}\)

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「最高点で速さが0以上ならいい」として \(v_{\text{頂}}=0\) を条件にし、\(\displaystyle\frac{1}{2}v_0^2=g(2r)\) から \(v_0=\sqrt{4gr}=2\sqrt{gr}\) とする。
診断: 通過条件を「速さ」で考える「\(N\ge0\) を速さにすり替えるクセ」。得点率8.7%の主犯。速さが少しでも残っていても、内面を押し返す力(垂直抗力)が足りなければ小球は面から離れて落ちる。本当の条件は最高点で \(N=0\)
誤答パターン②: 最高点の運動方程式に垂直抗力を上向き(重力と逆)に置いて \(N-mg=\displaystyle\frac{mv_{\text{頂}}^2}{r}\) とする。
診断: 内面がどちら向きに押すかを取り違える「抗力の向きを決め打ちするクセ」。半円筒の面は小球を中心へ、つまり最高点では下向きに押す。だから \(N+mg=\displaystyle\frac{mv_{\text{頂}}^2}{r}\)。両方とも下(中心向き)。
誤答パターン③: 最高点の高さを \(r\) と取る(半径ぶんしか上がらないと思う)。
診断: 最下点から最高点までは直径ぶん、を見落とす「高さを半分にするクセ」。最下点から最高点までの高さは \(2r\)(直径)。ここを \(r\) にすると答えが崩れる。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする。 最高点(最下点の真上、高さ \(2r\))。内面は小球を下(中心)へ押す。速すぎず遅すぎず、内面にギリギリ触れているのが限界の状態。

Step 2 どの原理・式を選ぶか。 「通れる限界」=最高点で垂直抗力 \(N=0\)。このとき最高点の運動方程式は「重力だけが向心力」。速さの関係はここから。次に最下点から最高点までのエネルギー保存で \(v_0\) と結ぶ。

Step 3 式の意味を読む。 最高点で \(N=0\) だから、中心向き(下向き)の力は重力 \(mg\) だけ。それが向心力になる。

$$\begin{aligned} mg &= \displaystyle\frac{mv_{\text{頂}}^2}{r} \end{aligned}$$

Step 4 代入して確かめる。 まず最高点の速さの2乗を出し、次にエネルギー保存(高さ \(2r\))で \(v_0\) を出す。

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

まず最高点での臨界条件から速さの2乗を出す。

$$\begin{aligned} mg &= \displaystyle\frac{mv_{\text{頂}}^2}{r} \\ v_{\text{頂}}^2 &= gr \end{aligned}$$

次に最下点(速さ \(v_0\)、高さ0)から最高点(速さ \(v_{\text{頂}}\)、高さ \(2r\))へエネルギー保存。

$$\begin{aligned} \displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2 &= \displaystyle\frac{1}{2}mv_{\text{頂}}^2 + mg(2r) \\ \displaystyle\frac{1}{2}v_0^2 &= \displaystyle\frac{1}{2}v_{\text{頂}}^2 + 2gr \\ v_0^2 &= v_{\text{頂}}^2 + 4gr \\ v_0^2 &= gr + 4gr \\ v_0^2 &= 5gr \\ v_0 &= \sqrt{5gr} \end{aligned}$$

臨界の \(v_{\text{頂}}^2=gr\) を代入するのが要。これがこの限界での最小初速なので、\(v_{\text{最小}}=\sqrt{5gr}\)。

$$\begin{aligned} v_{\text{最小}} &= \sqrt{5gr} \end{aligned}$$

Step 5 妥当性チェック。 ①誤答①の \(2\sqrt{gr}=\sqrt{4gr}\) より大きい。速さ0では足りず、もっと速くないと通れない、という物理と一致。②(2)で最高点(\(\theta=0\))の \(N_B=\displaystyle\frac{mv_0^2}{r}-5mg\)。これを0とおくと \(v_0^2=5gr\)、まったく同じ答え。別ルートで一致=正しさの裏付け。③次元:\(gr\) は速さの2乗、ルートで速さ。合う。④「鉛直円の頂点を通る最小の速さは \(\sqrt{5gr}\)」は定番の結論。覚えておくと検算が速い。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 鉛直面内の円運動を「最後まで通れるか」は、いちばん苦しい点(最高点)で \(N\ge0\)(糸なら張力 \(\ge0\))で判定する。速さ \(\ge0\) では甘い。限界は \(N=0\)。
波及②: 「速さはエネルギー保存、力(抗力・張力)は向心方向の運動方程式」の2枚看板で、鉛直円の問題はほぼ全部解ける。最小初速 \(\sqrt{5gr}\) は内面レール型・糸型に共通の定番値。
波及③: 内面(内側から押す)と外面(外側に乗る)で垂直抗力の向きが逆。どちら側に接しているかを図で確かめてから運動方程式の符号を決める。

§9. 電車内のおもりと慣性力 ─ 「誰から見るか」で式が変わる(\(f\)・\(a\) 使用)

右向きに加速する電車の中で、糸でつるしたおもり(\(0.50 \, \text{kg}\))が、糸が鉛直と \(30^\circ\) をなす位置で静止して見える。おもりに働く慣性力の大きさと、電車の加速度を求める。得点率は全体29.0%と低く、「電車の外から見るか、中から見るか」を混ぜてしまうのが最大の壁。※ 問題文は手元プリント参照。

§9.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。答えと1-2行の要点だけ先に示します。詳しい思考プロセスは §9.2 のアコーディオン内。

(1) 答え: \(2.8 \, \text{N}\)。電車の中の人から見ると、おもりは重力・張力・慣性力の3力でつり合って静止。水平・鉛直のつり合いから \(f=mg\tan 30^\circ = 0.50\times 9.8\times \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)。
(2) 答え: \(5.6 \, \text{m}/\text{s}^2\)。慣性力は \(f=ma\) なので \(a=\displaystyle\frac{f}{m}=\displaystyle\frac{2.83}{0.50}\)(=\(g\tan 30^\circ\))。

§9.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「見る立場」を最初に1つに決める

ここから先は「なぜそうなるか」を完全に開く。正解できた人こそ開いてほしい。

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

(1) おもりに働く慣性力 ─ 3力のつり合い図を描く

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 電車の中の人から見ているのに、慣性力を描き忘れて「重力と張力だけ」でつり合わせようとする。すると糸が傾く理由が説明できず手が止まる。
診断: 加速する箱の中(非慣性系)から見るときは慣性力を必ず足す、という約束を落とす「見る立場を決めずに描くクセ」。中の人から見るなら、重力・張力に加えて、加速と逆向き(左向き)の慣性力を必ず1本描く。
誤答パターン②: 慣性力の向きを電車の加速と同じ右向きに描く。
診断: 慣性力は「加速の向きと」という符号を取り違える「慣性力を加速と同じ向きにするクセ」。電車が右へ加速するとき、中のおもりは相対的に左へ置いていかれるように振れる。だから慣性力は左向き。
誤答パターン③: つり合いの分解で \(\tan\) と \(\sin,\cos\) を取り違え、\(f=mg\sin 30^\circ\) や \(f=mg\cos 30^\circ\) としてしまう。
診断: 「水平の力÷鉛直の力」の関係を図から読まず公式を当てずっぽうで選ぶ「三角比を絵から読まないクセ」。水平つり合い \(f=T\sin 30^\circ\)、鉛直つり合い \(T\cos 30^\circ=mg\) を割り算すれば \(f=mg\tan 30^\circ\) が自動的に出る。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: 電車の中の人の視点に立つ。おもりは静止して見える。働く力は3つ。下向きに重力 \(mg\)、糸に沿って斜め上向きに張力 \(T\)、水平左向きに慣性力 \(f\)。糸は鉛直から \(30^\circ\) 傾く。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 中の人(非慣性系)から見るとおもりは静止=力のつり合い。ただし非慣性系なので慣性力 \(f=ma\) を加える。慣性力を入れて初めて「静止」がつじつま合う。

Step 3 式の意味を読む: 水平方向のつり合いは「張力の水平成分=慣性力」、鉛直方向は「張力の鉛直成分=重力」。この2式で \(T\) を消すと、傾き \(30^\circ\) が \(f\) と \(mg\) の比を決める。

Step 4 代入して確かめる:

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

水平つり合い・鉛直つり合い:

$$\begin{aligned} f &= T\sin 30^\circ \\ T\cos 30^\circ &= mg \end{aligned}$$

上を下で割ると \(T\) が消える:

$$\begin{aligned} \displaystyle\frac{f}{mg} &= \tan 30^\circ \\ f &= mg\tan 30^\circ \end{aligned}$$

数値を代入(\(\tan 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)、\(\sqrt{3}=1.73\)):

$$\begin{aligned} f &= 0.50\times 9.8\times \displaystyle\frac{1}{1.73} \\ f &= \displaystyle\frac{4.9}{1.73} \\ f &= 2.83 \end{aligned}$$

よって慣性力の大きさは \(f\approx 2.8 \, \text{N}\)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は \(\text{N}\) でOK。傾きが \(30^\circ\)(比較的小さい)なので、水平の慣性力は重力 \(mg=4.9 \, \text{N}\) より小さい \(2.8 \, \text{N}\)。もし傾きが \(45^\circ\) なら \(f=mg\) と等しくなるはずで、\(30^\circ\lt 45^\circ\) だから \(f\lt mg\) は正しい大小関係。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 加速する箱の中の物体を「中の人」から解くときは、必ず慣性力(大きさ \(ma\)・加速と逆向き)を力の図に加える。これで箱の中では「静止=つり合い」として扱える。
波及②: 糸の傾き \(\theta\) が絡むつり合いは、水平・鉛直の2式を割り算して \(\tan\theta\) の形にすると張力が自動で消え、\(\sin,\cos,\tan\) の取り違えも起きない。
波及③: 慣性力の向きは「電車が進む向き」ではなく「加速の向きと逆」。減速中なら前向きに振れる。向きは加速度ベクトルを基準に決める。

(2) 電車の加速度 ─ 慣性力から逆算する

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「電車の外(地面・慣性系)から見る」立場と、(1)で使った「中から見る」立場を混ぜ、慣性力 \(f\) を残したまま外の視点で \(f=ma\) 以外の式を立てて混乱する。
診断: 途中で視点を乗り換える「誰から見たを忘れるクセ」。外から見るなら慣性力は存在せず、張力の水平成分がおもりを加速させる(\(T\sin 30^\circ=ma\))。中から見るなら慣性力とつり合う。どちらか一方に統一すれば、結局 \(a=g\tan 30^\circ\) に行き着く。
誤答パターン②: (1)の \(f\) を使わず、いきなり \(a=g\) や \(a=g\sin 30^\circ\) などと当てずっぽうで置く。
診断: 前問の結果を次問へつなげない「小問の連続性を切るクセ」。慣性力の定義 \(f=ma\) から \(a=\displaystyle\frac{f}{m}\) と一直線に逆算できる。
誤答パターン③: \(f\) を四捨五入した \(2.8\) で割り、\(a=\displaystyle\frac{2.8}{0.50}=5.6\) は合うが、途中を \(2.8\) に丸めてから割ると桁がぶれる場面で誤差を出す。
診断: 途中の丸めを早めにやりすぎる「早すぎる四捨五入のクセ」。逆算は \(a=g\tan 30^\circ=\displaystyle\frac{9.8}{1.73}\) と、\(m\) を通さず一気に出すと丸め誤差が最小。

正しい思考プロセス

Step 1 現象を絵にする: おもりは電車と一緒に右へ加速度 \(a\) で動いている。中から見た慣性力 \(f\) は、この \(a\) と質量 \(m\) で決まる。

Step 2 どの原理・式を選ぶか(+なぜ): 慣性力の定義 \(f=ma\) を使う。(1)で \(f\) が出ているので、\(a\) について解くだけ。あるいは外から見て \(T\sin 30^\circ=ma\) と \(T\cos 30^\circ=mg\) を割って \(a=g\tan 30^\circ\) でも同じ。

Step 3 式の意味を読む: \(a=\displaystyle\frac{f}{m}\) は「慣性力を質量で割れば加速度」。\(a=g\tan 30^\circ\) は「加速度は重力加速度の \(\tan 30^\circ\) 倍」を意味し、\(m\) に依らない。

Step 4 代入して確かめる:

$$\begin{aligned} a &= \displaystyle\frac{f}{m} \\ a &= \displaystyle\frac{2.83}{0.50} \\ a &= 5.66 \end{aligned}$$

よって \(a\approx 5.6 \, \text{m}/\text{s}^2\)(\(=g\tan 30^\circ=\displaystyle\frac{9.8}{1.73}\) と一致)。

Step 5 妥当性チェック: 単位は \(\displaystyle\frac{\text{N}}{\text{kg}}=\text{m}/\text{s}^2\) で加速度としてOK。\(a=5.6\) は \(g=9.8\) より小さく、傾き \(30^\circ\) が \(45^\circ\) 未満なので \(a\lt g\) は妥当(\(45^\circ\) なら \(a=g\))。質量 \(m\) が答えに残らないのも「傾きは加速度だけで決まる」という物理と合う。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 加速する乗り物の中でつるした物体の傾き \(\theta\) と加速度 \(a\) は \(a=g\tan\theta\) で結ばれる。傾きを測れば加速度がわかる(簡易な加速度計の原理)。
波及②: 同じ問題を「中から(慣性力あり・つり合い)」でも「外から(慣性力なし・運動方程式)」でも解けて、必ず同じ答えになる。大事なのは途中で立場を混ぜないこと。
波及③: 傾きも加速度も質量 \(m\) に依らない。重いおもりでも軽いおもりでも同じ角度に振れる。「答えに \(m\) が残らない」ことが立式が正しいかの検算になる。

§12. テスト全体の振り返り ─ 5大「思考のクセ」処方箋

ここまで9大問を1問ずつ診断してきました。最後に、今回のテスト全体を通して見えた5つの「思考のクセ」をまとめます。君の失点は、たいていこの5つのどれか(または複数)に当てはまります。自分に当てはまるクセを見つけて、次のテストまでに1つずつ書き換えていきましょう。

§12.1 クセ①: 「なんでも保存する」と思い込むクセ

症状: 「運動量保存」と聞いた瞬間、条件を確かめずに \(m_1 v_1 = m_2 v_2\) を書き始める。
典型的な現れ: [1](1)(2)(保存する/しないの判定)、[1](3)(合体でも運動量は保存・エネルギーは変化)。得点率が概念問題なのに \(58.7\)% と低かった原因。
診断: 保存則は「魔法の公式」ではなく「外から力が働いていないときだけ成り立つ約束」。落下中は重力、地面衝突時は床からの力という外力があるので運動量は保存しない。この「成立条件を確認する」一手が抜けている。
処方箋: 運動量保存を使う前に、必ず口に出す。「この系に、外から水平方向の力は働いていないか?」働いていれば保存しない。働いていなければ保存する。エネルギーについても同じく「熱や音に消える衝突か?(=非弾性なら運動エネルギーは減る)」を毎回確認する。

§12.2 クセ②: 向きを後回しにするクセ

症状: 速さ(数値)だけを見て、向き(矢印)を後から付け足そうとする。ベクトルの引き算をスカラーの引き算で済ませてしまう。
典型的な現れ: [2](1) 力積(水平 \(20\) → 鉛直 \(20\) の向き変化で、大きさは \(20\sqrt{2}\) 倍になる)が得点率 \(42.5\)% と小問集で突出して低かった。[4] の直交衝突。
診断: 力積も運動量もベクトル。向きが変われば、たとえ速さが同じでも変化量はゼロではない。「向きは最後に考える」という順番が、根本の誤りを生んでいる。
処方箋: 運動量・力積の問題は、数値を書く前に矢印を描く。座標軸(\(x\) 右・\(y\) 上)を最初に決め、各運動量を成分に分ける。「力積 = 後の運動量ベクトル − 前の運動量ベクトル」を成分ごとに引く。これを最初にやれば、向きの取り違えは起きない。

§12.3 クセ③: 「誰から見た運動か」を忘れるクセ

症状: 「電車の外から見た運動」と「電車の中から見た運動」を混ぜてしまう。動く台の上の現象を、止まっている地面から見ているのか台から見ているのか決めないまま式を立てる。
典型的な現れ: [9] 慣性力(得点率 \(29.0\)%、問2は \(21.2\)%)、[6] 動く台(問1は得点率 \(0\)%)。
診断: 慣性力は「非慣性系(加速する電車の中)から見たときだけ登場する見かけの力」。外の地面から見れば慣性力は存在しない。この「視点」を決めないまま式を書くと、力が1つ多かったり少なかったりする。動く台も同じで、「床から見た運動量保存」なのか「台から見た相対運動」なのかを最初に固定しないと崩れる。
処方箋: 問題を読んだら真っ先に「今、私はどこに立ってこの運動を見ているか」を紙の隅に書く。「地面(慣性系)」なら慣性力は書かない。「電車の中(非慣性系)」なら慣性力 \(ma\) を逆向きに書き足す。動く台では「床から見た水平方向の運動量は保存」を出発点にする。

§12.4 クセ④: 公式に飛びつくクセ

症状: 円運動と見た瞬間 \(F = \displaystyle\frac{mv^2}{r}\) を書くが、「その向心力を何が担っているか」「向心方向に働く力はどれとどれか」を絵にしないまま代入する。
典型的な現れ: [7] 円錐振り子(周期の得点率 \(17.5\)%)、[8] 半円筒(垂直抗力・最高点条件がいずれも \(10\)% 前後)。
診断: 円運動の運動方程式は「向心方向の力の合計 = \(\displaystyle\frac{mv^2}{r}\)」。張力・重力・垂直抗力のうちどれが向心方向に効くかを図で仕分けせずに公式へ飛びつくと、力を1つ入れ忘れる・向きを間違える。
処方箋: 円運動は「① 円の中心はどこか → ② その中心を向く方向(向心方向)に働く力を全部描く → ③ 向心方向の力の合計 = \(\displaystyle\frac{mv^2}{r}\) を書く」の順を必ず守る。公式を書くのは③、つまり一番最後。絵が先、公式が後。

§12.5 クセ⑤: 文字で答える問題に手が止まるクセ

症状: 数値なら解けるのに、答えを \(m,M,g,h\) などの文字で表せと言われると手が止まる。
典型的な現れ: [6] 動く台(全問文字式・得点率 \(12.4\)%)、[7] 円錐振り子・[8] 半円筒の文字式設問。観点「思考・判断・表現」が \(27.8\)% と沈んだ最大の原因。
診断: 文字式は「数値計算より難しい別物」ではなく、数値を文字に置き換えただけの同じ手順。「文字だから」と身構えて、いつもやっている「保存則を立てる → 連立する」という手が止まっている。
処方箋: 文字式の問題こそ、数値問題とまったく同じ手順を踏む。「① 保存則・運動方程式を文字のまま立てる → ② 連立して解く → ③ 指定された文字だけで表す」。途中で数字が出てこなくても不安がらない。むしろ文字式は「約分できて形がきれいになる」ので、慣れると数値計算より速い。

§12.6 自分のクセを1つに絞ろう

5つ全部を一度に直そうとすると、たいてい何も変わりません。今回いちばん痛かったクセを1つだけ選んでください。動く台や円運動で全滅した人はクセ④かクセ⑤、概念問題や力積を落とした人はクセ①かクセ②です。

💡 1つのクセを書き換えるのに、平均で約3週間と言われています。今日から1つ選んで意識すれば、2学期最初の物理の授業では、その1つが君の「新しい当たり前」になっています。

§13. このテストの得点分布・出題傾向分析

ここでは、今回のテスト全体(受験者 \(63\) 名)のデータを分析します。個人の点数は一切扱わず、全体の傾向だけを見ます。自分がどの位置にいたかを把握し、次にどこを重点的に復習すべきかの参考にしてください。

§13.1 全体統計

受験者数: \(63\) 名  満点: \(100\) 点
平均点: \(50.0\) 点(得点率 \(50.0\)%)
最高点: \(91\) 点  最低点: \(20\) 点

§13.2 得点分布

得点率の分布です。中央のボリュームゾーンは \(51\)〜\(60\)%(\(18\) 名)。平均 \(50.0\)% 前後に山があり、\(70\)% を超えられた人は \(63\) 名中 \(7\) 名だけでした。

91〜100% ▌ \(1\) 名
81〜90% (\(0\) 名)
71〜80% ▌▌▌▌▌▌ \(6\) 名
61〜70% ▌▌▌▌▌▌▌▌ \(8\) 名
51〜60% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌ \(18\) 名
41〜50% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌ \(13\) 名
31〜40% ▌▌▌▌▌▌▌▌ \(8\) 名
21〜30% ▌▌▌▌▌▌▌ \(7\) 名
11〜20% ▌▌ \(2\) 名
0〜10% (\(0\) 名)

§13.3 大問別の得点率

大問 テーマ 配点 全体得点率
[1]運動量・反発係数の正誤9点68.8%
[2]小問集24点72.2%
[3]トロッコ分離8点47.8%
[4]直交衝突8点77.0%
[5]追突+失われたエネルギー12点46.8%
[6]動く台+壁10点12.4%
[7]円錐振り子16点42.1%
[8]半円筒の円運動6点13.8%
[9]電車内の慣性力7点29.0%

§13.4 つまずきが集中した設問ワースト5

正答率の低い順に並べたものです。ここが「差がつく=伸ばせば大きい」設問です。右の列で、対応する「思考のクセ」(§12)を示しました。

設問 正答率 つまずきの正体(§12)
[6] 問1(動く台の速さ・文字式)0.0%クセ③+⑤
[8] 問3(最高点の通過条件)8.7%クセ④
[8] 問2(垂直抗力)9.5%クセ④
[6] 問3(はね返り後の最高点)12.7%クセ③+⑤
[6] 問2(壁との反発)15.1%クセ③+⑤

§13.5 取れていた設問ベスト5

逆に、しっかり取れていた設問です。基本的な「1回の衝突・1回の代入」で答えが出る問題は、多くの人が得点できていました。

設問 正答率
[2] (3) 向き100.0%
[2] (3) 大きさ95.2%
[2] (4) 反発係数91.7%
[1] 問2(反発係数の正誤)88.9%
[2] 問2(合体の速さ)80.6%

§13.6 興味深い対比 ─ データが語る3つの事実

① 小問集[2]の中で、力積だけが沈んでいる
[2]の他の小問が \(80\)〜\(100\)% なのに、(1)の力積だけ \(42.5\)%。同じ「1行で解ける小問」でも、向きが変わる問題になった途端に半減する。これがクセ②(向きを後回し)の動かぬ証拠。
② 慣性力は「出せても使えない」
[9] 問1(慣性力の大きさ)\(34.9\)% に対し、問2(加速度)\(21.2\)%。慣性力 \(f\) は出せても、\(f = ma\) から加速度に変換する最後の一歩で崩れている。公式の丸暗記ではなく「慣性力=質量×加速度」の意味の理解が問われた。
③ 概念問題こそ差がついた
[1] は計算のいらない正誤問題なのに、(1)(3)が \(58.7\)%。「知っているつもり」で保存則の成立条件を詰めていない人が、ここで落としている。暗記では届かない領域。

§13.7 次のテストへの重点復習項目

🥇 金(最優先): 円運動の運動方程式([7][8])。「中心はどこ → 向心方向の力を描く → 公式は最後」の順を体に入れる。配点も大きく([7]は16点)、伸びしろ最大。
🥈 銀: 動く台・非慣性系([6][9])。「誰から見た運動か」を最初に固定する練習。
🥉 銅: 保存則の成立条件([1])と力積のベクトル性([2](1))。ここは「1つ確認する手順」を足すだけで取れる。

§13.8 このデータから言える、たった1つのこと

知識・技能は \(64.1\)% 取れている。足りないのは知識ではなく、「その知識をどの場面で・どの向きで・誰から見て使うか」という思考。今回の \(50.0\) 点は、暗記量の問題ではなく、思考のクセの問題です。だからこそ、書き換えれば必ず伸びます。

§14. 次のステップ ─ 自分の思考のクセをもっと深く知る

この記事で自分のクセの「あたり」がついた人へ。次にやることは2つです。

§14.1 「数字は合ってたのに×」で悔しかった人へ

文字式や向きの取り違えで、計算は合っていたのに点にならなかった経験がある人は、その「取りこぼしの正体」を体系的にまとめた記事があります。

物理で「数字は合ってたのに×」が起きる4つのメカニズム:
https://makoto-physics-school.com/article-butsuri-keishiki-miss-mechanism/

§14.2 自分の物理力を5問で診断してみる

「自分のクセが見えた気がするけど、本当にそれだけなのか確信が持てない」という人は、もう一段詳しい診断ツールを用意しています。5問の質問に答えるだけで、自分の思考のクセが4タイプのうちどれに当てはまるかが分かります。

Dr.まことの物理カルテ診断(無料・所要約3分):
https://makoto-physics-school.com/physics-diagnosis/
診断結果に対して、対応する処方箋(記事・動画)も自動で示されます。

診断の背景をもっと知りたい人は、思考のクセ5タイプを解説した記事もあわせてどうぞ。

物理が苦手な根本原因は「思考のクセ」5タイプ診断で分かる:
https://makoto-physics-school.com/study-method-physics-thinking-habit-diagnosis/

§14.3 授業動画で復習する

運動量・円運動・慣性力の基本を動画で見直したい人は、YouTubeチャンネルに範囲別の授業動画があります。

まことの高校物理教室(YouTube):
http://www.youtube.com/@まことの高校物理教室

§14.4 最後に

テストは、自分を測るためのツールではなく、自分のクセを見つけるためのツールです。\(50.0\) 点という平均点が示すように、今回多くの人がつまずきました。でも、つまずいたままで終わるか、つまずきの正体を知って次に活かすかで、2学期のテストはまったく違う景色になります。

1つのクセを書き換えるのに、平均的には3週間かかると言われています。今日から始めて、夏休みのうちに1つ、2学期が始まる頃にもう1つ。それくらいのペースで、次のテストの当日を迎えてください。

うまくいかなかったら、もう一度この記事に戻ってきてください。クセは何度でも書き換えられます。物理は、書き換え可能な科目です。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

800+解説記事
11,200YouTube登録者
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14指導歴
🎯現在、全6分野制覇を目指してプレミアムパックを制作中(5/6完成)。制作ロードマップを見る →
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