「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(力学31〜35問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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力学範囲 31~35

31 剛体のつり合い

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問の別解1: 棒の先端を回転中心としてモーメントのつり合いを考える解法
      • 模範解答がちょうつがいO点を回転中心にするのに対し、別解では棒の先端(糸の取付点)を中心に取ることで、張力\(T\)のモーメントを計算から除外します。
    • 設問の別解2: 3力の作用線が1点で交わることを利用する解法
      • 模範解答が力のつり合いとモーメントのつり合いを連立させる代数的な解法であるのに対し、別解では剛体がつり合うための幾何学的な条件から直接答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: モーメントの回転中心は任意に選べること、そしてその選び方によって計算の戦略が変わることを体験できます。
    • 物理的本質の深化: 「3つの力がつり合うとき、作用線は1点で交わる」という重要な定理を具体的な問題で活用することで、力のつり合い条件への理解が深まります。
    • 解法の効率化: 別解2のように、幾何学的な考察を用いることで、モーメント計算をせずに張力\(T\)を求めることができ、異なる視点からのアプローチを学べます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ちょうつがいで支えられた剛体のつり合い」です。ちょうつがいのように、力の向きが自明でない点からの力をどう扱うかがポイントとなります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 剛体のつり合いの条件: 物体が静止するためには、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」の2つの条件を同時に満たす必要があります。
  2. ちょうつがいが及ぼす力: ちょうつがいが及ぼす力は、その大きさと向きが事前に分かりません。したがって、未知の力として扱い、水平成分と鉛直成分に分解するか、大きさと角度の2つの未知数として設定する必要があります。
  3. モーメントの計算: 回転中心を決め、各力の「腕の長さ」(回転中心から力の作用線への垂線の距離)を正しく求めて式を立てる能力が求められます。
  4. 戦略的な立式: 未知数が複数ある場合、どのつり合いの式から手をつけるかによって計算の複雑さが大きく変わります。未知の力が集中する点を回転中心に選ぶのが定石です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 棒に働く3つの力(重力、張力、ちょうつがいからの力)を図示します。
  2. 未知の力が最も多いちょうつがいO点を回転の中心に選び、「力のモーメントのつり合い」の式を立てて、まず張力\(T\)を求めます。
  3. 次に、「水平方向の力のつり合い」と「鉛直方向の力のつり合い」の式を立てます。
  4. 求めた\(T\)を力のつり合いの式に適用し、ちょうつがいからの力\(F\)の大きさと向き(\(\tan\theta\))を求めます。

張力\(T\)とちょうつがいからの力\(F\)

思考の道筋とポイント
この問題で最も注意すべき点は、「ちょうつがいOから受ける力」の扱いです。模範解答の”Miss”にもあるように、この力の向きは棒の方向(鉛直から60°)とは限りません。大きさも向きも分からない、全くの未知数として扱う必要があります。
そこで、このやっかいな未知の力\(F\)を計算から一時的に消去する戦略を取ります。剛体のつり合いでは、任意の点のまわりのモーメントが釣り合います。そこで、未知の力\(F\)が働くちょうつがいO点を回転の中心に選べば、\(F\)の腕の長さが0になるため、モーメントの式に\(F\)が現れなくなります。これにより、張力\(T\)と重力\(mg\)だけの関係式が得られ、まず\(T\)を求めることができます。
\(T\)が分かれば、残る未知数は力\(F\)の大きさと向きだけなので、最後に力のつり合い(水平・鉛直)の式を立ててこれらを求めます。
この設問における重要なポイント

  • ちょうつがいの力は、大きさと向きがともに未知数である。
  • モーメントの回転中心は、未知の力が集中するO点を選ぶのが最も効率的。
  • 腕の長さは「回転中心から力の作用線への垂線の距離」であり、図から正しく読み取る。
  • 力のつり合いを考える際は、力を水平・鉛直成分に分解する。

具体的な解説と立式
棒に働く力は以下の3つです。

  • 重力: 棒の中心Gから鉛直下向きに\(mg\)。
  • 糸の張力: 棒の先端Pから水平右向きに\(T\)。
  • ちょうつがいからの力: O点から棒を支える向きに\(F\)。この力は未知なので、鉛直方向となす角を\(\theta\)とし、左上向きに働くと仮定します。

1. O点のまわりの力のモーメントのつり合い
O点を回転の中心に選びます。力\(F\)のモーメントは0になります。

  • 反時計回りのモーメント: 重力\(mg\)によるもの。重力は棒の中心に下向きに働き、O点の周りに棒を反時計回りに回転させようとします。腕の長さは、O点から重力の作用線(鉛直線)までの垂線の距離なので、\(\frac{l}{2}\sin60^\circ\)。モーメントは\(mg\frac{l}{2}\sin60^\circ\)。
  • 時計回りのモーメント: 張力\(T\)によるもの。張力は棒の先端に右向きに働き、O点の周りに棒を時計回りに回転させようとします。腕の長さは、O点から張力の作用線(水平線)までの垂線の距離なので、\(l\cos60^\circ\)。モーメントは\(T l\cos60^\circ\)。

(反時計回りのモーメントの和)=(時計回りのモーメントの和)より、
$$
\begin{aligned}
mg\frac{l}{2}\sin60^\circ &= T l\cos60^\circ \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

2. 力のつり合い
力\(F\)を水平左向きの成分\(F\sin\theta\)と鉛直上向きの成分\(F\cos\theta\)に分解して考えます。

  • 水平方向のつり合い:
    (左向きの力の和)=(右向きの力の和)より、
    $$
    \begin{aligned}
    F\sin\theta &= T \quad \cdots ②
    \end{aligned}
    $$
  • 鉛直方向のつり合い:
    (上向きの力の和)=(下向きの力の和)より、
    $$
    \begin{aligned}
    F\cos\theta &= mg \quad \cdots ③
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \((水平方向の力の和)=0\), \((鉛直方向の力の和)=0\)
  • 力のモーメントのつり合い: \((反時計回りのモーメントの和) = (時計回りのモーメントの和)\)
計算過程

まず、モーメントのつり合いの式①から張力\(T\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
mg \cdot \frac{l}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} &= T \cdot l \cdot \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
両辺の \(\frac{l}{2}\) を消去して、
$$
\begin{aligned}
\frac{\sqrt{3}}{2}mg &= T
\end{aligned}
$$
次に、この\(T\)の結果を用いて、力のつり合いの式②と③から\(F\)と\(\tan\theta\)を求めます。

\(\tan\theta\)の計算:
式②を式③で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{F\sin\theta}{F\cos\theta} &= \frac{T}{mg} \\[2.0ex]
\tan\theta &= \frac{T}{mg}
\end{aligned}
$$
ここに\(T\)の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}mg}{mg} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$

\(F\)の計算:
式②と式③の両辺をそれぞれ2乗して足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
(F\sin\theta)^2 + (F\cos\theta)^2 &= T^2 + (mg)^2 \\[2.0ex]
F^2(\sin^2\theta + \cos^2\theta) &= T^2 + (mg)^2 \\[2.0ex]
F^2 &= T^2 + (mg)^2
\end{aligned}
$$
ここに\(T\)の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
F^2 &= \left(\frac{\sqrt{3}}{2}mg\right)^2 + (mg)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}m^2g^2 + m^2g^2 \\[2.0ex]
&= \left(\frac{3}{4} + 1\right)m^2g^2 \\[2.0ex]
&= \frac{7}{4}m^2g^2
\end{aligned}
$$
\(F>0\)なので、
$$
\begin{aligned}
F &= \sqrt{\frac{7}{4}m^2g^2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{7}}{2}mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この問題は、壁にちょうつがいで取り付けられた棒が、糸で右向きに引っ張られて静止している状態を分析するものです。ポイントは、ちょうつがいが棒を支える力です。この力は、どれくらいの強さで、どの方向を向いているか分かりません。
そこで、賢い方法を使います。まず、ちょうつがい自身を中心点として「回転の釣り合い」を考えます。そうすると、中心にかかる力は回転に影響しないので、向きの分からないちょうつがいの力を無視して、先に糸の張力\(T\)を計算できます。
糸の張力が分かれば、あとは「力の釣り合い」を考えます。ちょうつがいの力は、棒にかかる「重力(下向き)」と「糸の張力(右向き)」の両方を打ち消す役割を担っています。したがって、ちょうつがいの力は「上向き」と「左向き」の成分を持つはずです。これらの成分の大きさは、それぞれ重力と張力の大きさに等しくなります。この2つの成分から、ちょうつがいの力の全体の大きさと向きを求めることができます。

結論と吟味

糸の張力\(T\)は\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}mg\)、ちょうつがいから受ける力\(F\)の大きさは\(\displaystyle\frac{\sqrt{7}}{2}mg\)、その向きは\(\tan\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)となります。
\(T \approx 0.866mg\)であり、重力\(mg\)より小さいです。したがって、ちょうつがいが支える力の水平成分は鉛直成分より小さくなります。このため、力の向きを表す\(\tan\theta = \frac{(\text{水平成分})}{(\text{鉛直成分})}\)が1より小さい\(\frac{\sqrt{3}}{2}\)となるのは、物理的に妥当な結果です。

解答 \(T = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}mg\), \(F = \displaystyle\frac{\sqrt{7}}{2}mg\), \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)
別解1: 棒の先端を回転中心としてモーメントのつり合いを考える解法

思考の道筋とポイント
モーメントのつり合いはどの点を中心に考えても成り立ちます。この別解では、糸が結ばれている棒の先端Pを回転中心に選びます。この点のまわりでは、張力\(T\)のモーメントが0になるため、ちょうつがいからの力\(F\)と重力\(mg\)の関係式を直接立てることができます。ちょうつがいの力を未知の水平左向きの成分\(F_x\)と鉛直上向きの成分\(F_y\)に分けて考えるのが有効です。
この設問における重要なポイント

  • モーメントの回転中心は任意に選べる。
  • 棒の先端Pを中心とすることで、張力\(T\)のモーメントが0になる。
  • ちょうつがいの力を水平・鉛直成分(\(F_x, F_y\))に分解して扱う。

具体的な解説と立式
棒に働く力は、重力\(mg\)、張力\(T\)、そしてちょうつがいからの力です。ちょうつがいからの力を、水平左向きの成分\(F_x\)と鉛直上向きの成分\(F_y\)に分解します。
力のつり合いより、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
F_x &= T \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
F_y &= mg \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
次に、棒の先端Pのまわりの力のモーメントのつり合いを考えます。

  • 反時計回りのモーメント:
    • 重力\(mg\)によるもの。腕の長さは\(\frac{l}{2}\sin60^\circ\)。モーメントは\(mg\frac{l}{2}\sin60^\circ\)。
    • ちょうつがいからの水平成分\(F_x\)によるもの。腕の長さは\(l\cos60^\circ\)。モーメントは\(F_x l\cos60^\circ\)。
  • 時計回りのモーメント: ちょうつがいからの鉛直成分\(F_y\)によるもの。腕の長さは\(l\sin60^\circ\)。モーメントは\(F_y l\sin60^\circ\)。

(反時計回りのモーメントの和)=(時計回りのモーメントの和)より、
$$
\begin{aligned}
mg\frac{l}{2}\sin60^\circ + F_x l\cos60^\circ &= F_y l\sin60^\circ \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \((水平方向の力の和)=0\), \((鉛直方向の力の和)=0\)
  • 力のモーメントのつり合い: \((反時計回りのモーメントの和) = (時計回りのモーメントの和)\)
計算過程

モーメントの式⑥に、力のつり合いの式⑤ (\(F_y=mg\)) を代入します。
$$
\begin{aligned}
mg\frac{l}{2}\sin60^\circ + F_x l\cos60^\circ &= mg l\sin60^\circ
\end{aligned}
$$
移項して整理します。
$$
\begin{aligned}
F_x l\cos60^\circ &= mg l\sin60^\circ – mg\frac{l}{2}\sin60^\circ \\[2.0ex]
F_x l\cos60^\circ &= mg\frac{l}{2}\sin60^\circ
\end{aligned}
$$
両辺を\(l\)で割り、三角関数の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
F_x \cdot \frac{1}{2} &= mg\frac{1}{2}\cdot\frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]
\frac{1}{2}F_x &= \frac{\sqrt{3}}{4}mg \\[2.0ex]
F_x &= \frac{\sqrt{3}}{2}mg
\end{aligned}
$$
力のつり合いの式④より、\(T = F_x\) なので、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{\sqrt{3}}{2}mg
\end{aligned}
$$
ちょうつがいの力\(F\)の大きさと向きは、その成分\(F_x, F_y\)から求められます。
$$
\begin{aligned}
F &= \sqrt{F_x^2 + F_y^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\left(\frac{\sqrt{3}}{2}mg\right)^2 + (mg)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{3}{4}m^2g^2 + m^2g^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{7}{4}m^2g^2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{7}}{2}mg
\end{aligned}
$$
壁からの角度\(\theta\)は鉛直方向となす角なので、
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{F_x}{F_y} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}mg}{mg} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

主たる解法とは逆に、糸が結ばれている棒の先っぽを中心にして回転の釣り合いを考えてみる方法です。この場合、糸の張力は回転に影響しなくなります。回転の釣り合いは、「重力とちょうつがいが棒を水平に押す力」と、「ちょうつがいが棒を上に持ち上げようとする力」の勝負になります。この釣り合いの式を解くことで、主たる解法と全く同じ答えを導き出すことができます。

結論と吟味

棒の先端を回転中心としても、主たる解法と全く同じ結果が得られました。これは、モーメントのつり合いはどの点を中心に考えても物理的に等価な条件を与えることを示しています。

解答 \(T = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}mg\), \(F = \displaystyle\frac{\sqrt{7}}{2}mg\), \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)
別解2: 3力の作用線が1点で交わることを利用する解法

思考の道筋とポイント
剛体に働く力が3つだけでつり合っている場合、それらの力の作用線は必ず1つの点で交わる、という性質を利用します。この問題では、棒に働く力は(1)重力\(mg\)、(2)張力\(T\)、(3)ちょうつがいからの力\(F\)の3つです。したがって、これらの作用線は1点で交わります。この交点の位置を幾何学的に求めることで、モーメント計算なしに力の関係を導き出します。
この設問における重要なポイント

  • 3力のみが働く剛体のつり合いでは、3力の作用線は1点で交わる。
  • 図形的な関係(直線の交点、傾き)を利用して方程式を立てる。

具体的な解説と立式
ちょうつがいO点を座標の原点\((0, 0)\)とし、壁をy軸とします。棒は鉛直から60°傾いているので、x軸の正方向に伸びています。

  • 棒の先端Pの座標は \((l\sin60^\circ, -l\cos60^\circ) = (\frac{\sqrt{3}}{2}l, -\frac{1}{2}l)\)。
  • 棒の中心Gの座標は \((\frac{l}{2}\sin60^\circ, -\frac{l}{2}\cos60^\circ) = (\frac{\sqrt{3}}{4}l, -\frac{1}{4}l)\)。

次に、3つの力の作用線を考えます。

1. 張力\(T\)の作用線: 点Pを通り水平な直線。方程式は \(y = -\frac{1}{2}l\)。
2. 重力\(mg\)の作用線: 点Gを通り鉛直な直線。方程式は \(x = \frac{\sqrt{3}}{4}l\)。

この2つの作用線の交点をQとすると、その座標は \(Q(\frac{\sqrt{3}}{4}l, -\frac{1}{2}l)\) となります。
3力のつり合いの条件から、3つ目の力であるちょうつがいからの力\(F\)の作用線も、この交点Qを通らなければなりません。力\(F\)は原点O\((0,0)\)から働くので、その作用線は原点Oと点Qを結ぶ直線OQとなります。

ここで、力\(F\)の水平左向きの成分を\(F_x\)、鉛直上向きの成分を\(F_y\)とすると、力のつり合いから \(F_x = T\), \(F_y = mg\) です。
力\(F\)の作用線の傾きは、その成分の比で決まります。直線OQの傾きは、
$$
\begin{aligned}
(\text{直線OQの傾き}) &= \frac{y_Q – 0}{x_Q – 0} \\[2.0ex]
&= \frac{-\frac{1}{2}l}{\frac{\sqrt{3}}{4}l} \\[2.0ex]
&= \frac{-1/2}{\sqrt{3}/4} \\[2.0ex]
&= -\frac{2}{\sqrt{3}}
\end{aligned}
$$
力\(F\)は左上向きに働くので、そのベクトルが作る直線の傾きは \(\frac{F_y}{-F_x}\) と表せます。これが直線OQの傾きと等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\frac{F_y}{-F_x} &= -\frac{2}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]
\frac{mg}{-T} &= -\frac{2}{\sqrt{3}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 3力のつり合いの条件: 3力の作用線は1点で交わる。
  • 力のつり合い
計算過程

上記で立式した関係式から、まず\(T\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{mg}{T} &= \frac{2}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]
T &= \frac{\sqrt{3}}{2}mg
\end{aligned}
$$
これは主たる解法の結果と一致します。
\(T\)が求まれば、あとは主たる解法と同様に、力のつり合いの式から\(F\)と\(\tan\theta\)を計算できます。
$$
\begin{aligned}
F &= \sqrt{T^2 + (mg)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\left(\frac{\sqrt{3}}{2}mg\right)^2 + (mg)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{7}{4}m^2g^2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{7}}{2}mg
\end{aligned}
$$
問題で問われている\(\tan\theta\)は、力\(F\)の鉛直方向からの角度であり、\(\frac{F_x}{F_y}\)に等しいです。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{F_x}{F_y} \\[2.0ex]
&= \frac{T}{mg} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}mg}{mg} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物体が3つの力だけを受けて静止しているとき、3つの力を表す矢印の延長線は、必ず1つの点で交わるという便利な性質があります。この問題では、棒に働く力は「重力」「糸の張力」「ちょうつがいの力」の3つです。
そこで、「重力の線」と「張力の線」が交わる点を探します。図を描いてみると、この交差点の位置が計算で分かります。3つ目の「ちょうつがいの力」の線も、必ずこの交差点を通るはずです。この「3本の線が1点で交わる」という図形的な条件を数式にすることで、モーメントの計算を一切せずに、力の関係を導き出すことができます。

結論と吟味

3力の作用線が1点で交わるという幾何学的な条件を用いることで、主たる解法と全く同じ結果が得られました。この解法は、モーメントの腕の長さを計算する手間が省け、図形的な考察から直接力の比率を求めることができるエレガントなアプローチです。

解答 \(T = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}mg\), \(F = \displaystyle\frac{\sqrt{7}}{2}mg\), \(\tan\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 剛体のつり合いの二大条件:
    • 核心: この問題の根幹は、物体が静止し続けるための2つの絶対条件、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」を理解し、正しく適用することにあります。物体がただ動かないだけでなく、回転もしない状態を数式で表現することが求められます。
    • 理解のポイント:
      • 力のつり合い(並進しない条件): 物体に働く全ての力をベクトル的に足し合わせるとゼロになる、ということです。具体的には、「右向きの力の合計 = 左向きの力の合計」と「上向きの力の合計 = 下向きの力の合計」という2つの式を立てます。
      • 力のモーメントのつり合い(回転しない条件): 物体を回転させようとする効果(モーメント)が、どの点のまわりでも釣り合っている、ということです。「反時計回りに回そうとする力の効果の合計 = 時計回りに回そうとする力の効果の合計」という式を立てます。この2つの条件が揃って初めて、物体は完全に静止できます。
  • 未知の力の戦略的処理:
    • 核心: 「ちょうつがいが及ぼす力」のように、大きさと向きが事前に分からない未知の力をどう扱うかが、この問題の最大の鍵です。
    • 理解のポイント:
      • 力の分解: 未知の力は、水平成分と鉛直成分に分解するか、大きさと角度という2つの未知数として設定します。これにより、力のつり合いの式を立てることができます。
      • モーメント中心の選択: 未知の力が作用している点(この問題ではちょうつがいO)を回転中心に選ぶのが極めて有効な戦略です。その点のまわりのモーメントを考えれば、未知の力の腕の長さがゼロになり、モーメントの式からその力を消去できます。これにより、他の未知数を先に求めることが可能になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 壁に立てかけた看板の問題: 蝶番(ちょうつがい)で壁に取り付けられ、ケーブルで吊るされた看板のつり合いを考える問題は、本問と全く同じ構造です。
    • クレーンアームのつり合い: 根元が回転軸で支えられ、ケーブルで吊り上げられたクレーンのアームに荷物がぶら下がっている状況も、同様の考え方で解くことができます。
    • 開いた状態の扉: 蝶番で支えられ、ドアノブに水平な力がかかって静止している扉なども、蝶番からの未知の力を考える点で共通しています。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 力の全洗い出しと分類: まず、物体に働く力を全て図示します。その際、「大きさと向きが分かっている力(重力など)」「向きは分かっているが大きさが未知の力(張力など)」「大きさと向きの両方が未知の力(ちょうつがいの力など)」に分類して頭を整理します。
    2. モーメントの中心選びの戦略: 式を立てる前に、「どこを回転中心にすれば計算が一番楽になるか?」を考えます。鉄則は「未知の力が最も多く集まっている点」を選ぶことです。これにより、最も厄介な未知数をモーメントの式から消去し、問題を単純化できます。
    3. 立式の順番: 上記の戦略に従い、まず「モーメントのつり合い」の式を立てて、求めやすい未知数(本問の\(T\))を先に計算します。その結果を利用して、次に「力のつり合い」の式を解き、残りの未知数を求める、という手順が最もスムーズです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ちょうつがいの力の向きの思い込み:
    • 誤解: ちょうつがいからの力は、棒の方向や壁に垂直な方向など、何か特定の向きに働くと勘違いしてしまう。(模範解答の”Miss”の例)
    • 対策: 「ちょうつがいの力は、大きさと向きがともに未知である」と肝に銘じることが重要です。力のつり合いから、他の力の合力を打ち消す向きに働く、と考えるのが最も安全です。必ず、水平成分と鉛直成分に分解するか、大きさと角度の2つの未知数として扱いましょう。
  • モーメントの腕の長さの誤認:
    • 誤解: 力の作用点から回転中心までの直線距離を、そのまま腕の長さとしてしまう。
    • 対策: モーメントの「腕の長さ」とは、「回転中心から、力の作用線に下ろした垂線の長さ」であると正確に定義を覚えることが重要です。図を大きく描き、回転中心から力の矢印の延長線上に垂線を引く練習をしましょう。特に、本問の重力のように、棒の途中に働く力の腕の長さを間違えやすいので注意が必要です。
  • 力の分解における角度の混同:
    • 誤解: ちょうつがいの力\(F\)を分解する際、壁からの角度\(\theta\)と棒の傾き60°を混同し、\(F\cos60^\circ\)や\(F\sin60^\circ\)としてしまう。
    • 対策: 自分で設定した角度(この問題では\(\theta\))と、問題で与えられた角度(60°)は全く別物であることを意識します。力の分解は、必ず自分で設定した角度\(\theta\)を用いて行いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • モーメントのつり合いから先に解く戦略:
    • 選定理由: この問題では、未知数が\(T\)、\(F\)、\(\theta\)の3つあります(あるいは\(T\)、\(F_x\)、\(F_y\)の3つ)。これらを解くには3つの独立した方程式が必要です。力のつり合い(水平・鉛直)で2式、モーメントのつり合いで1式が立てられます。
    • 適用根拠: 3つの式のうち、ちょうつがいO点を中心としたモーメントの式は、未知の力\(F\)を含まない唯一の式です。したがって、この式から計算を始めることで、未知数が\(T\)だけの単純な方程式となり、最も効率的に解を進めることができます。これは、連立方程式を解く上での論理的な最適戦略です。
  • 力のつり合いで\(F\)を成分分解する理由:
    • 選定理由: 力のつり合いは「ベクトル和がゼロ」という条件です。ベクトル計算を代数的に行う最も基本的な方法が、直交する成分に分解して、成分ごとに和がゼロになるという式を立てることです。
    • 適用根拠: 水平方向の運動と鉛直方向の運動は互いに独立しているため、力のつり合いも水平方向と鉛直方向で独立して成り立ちます。したがって、\(F\)を水平成分\(F\sin\theta\)と鉛直成分\(F\cos\theta\)に分解し、それぞれが張力\(T\)と重力\(mg\)と釣り合う、という2つの式を立てることが物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 力の図示の徹底: 計算を始める前に、必ずフリーハンドでよいので、物体に働く全ての力を矢印で図示しましょう。特に、ちょうつがいからの未知の力\(F\)を仮の向き(例えば左上)で描き、その成分(\(F_x, F_y\))も点線などで描き加えると、立式のミスを劇的に減らせます。
  • 腕の長さを図に書き込む: モーメントを計算する際には、回転中心から各力の作用線への垂線を実際に図に描き込み、その長さを三角関数を使って書き出してみましょう。この一手間が、腕の長さの間違いを防ぎます。
  • 三角関数の値の代入は最後に: \(\cos60^\circ = 1/2\)などの具体的な数値の代入は、できるだけ計算の最後の段階で行うのが鉄則です。文字式のまま整理を進めることで、計算過程がすっきりし、途中の間違いを発見しやすくなります。
  • 答えの吟味: 計算結果が出たら、物理的に妥当か考えます。例えば、\(\tan\theta = \frac{T}{mg} = \frac{\sqrt{3}}{2} \approx 0.866 < 1\)なので、\(\theta < 45^\circ\)となります。これは、ちょうつがいの力が支える鉛直成分(\(mg\))の方が水平成分(\(T\))より大きいことを意味し、直感と一致します。このような簡単なチェックが有効です。

32 剛体のつり合い

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 板の重心を回転中心としてモーメントのつり合いを考える解法
      • 模範解答が板の左端Aを回転中心にするのに対し、別解では重心を中心に取ることで、重力のモーメントを計算から除外します。
    • 設問(2)の別解: 模範解答に記載されている別解と同様の解法
      • 主たる解法が(1)の結果を利用する代数的なアプローチであるのに対し、別解では「傾き始める」という物理現象に注目し、机の端を回転軸としたモーメントのつり合いから直接答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: モーメントの回転中心は任意に選べること、そしてその選び方によって計算の戦略が変わることを体験できます。
    • 物理的本質の深化: 別解のように、問題の状況が変化する「まさにその瞬間」の物理状態(回転軸がどこになるか)を捉えて立式することで、現象へのより深い理解が得られます。
    • 解法の効率化: (2)の別解のように、問題の本質を捉えることで、(1)の答えを必要とせず、より少ない計算ステップで簡潔に解に至る強力な手法を学ぶことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「剛体のつり合いと、条件変化による力の作用点の移動」です。特に、物体を支える力がどのように分布し、その代表点(作用点)が外部からの力によってどう変化するかを理解することが重要です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 剛体のつり合いの条件: 物体が静止するためには、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」の2つの条件を同時に満たす必要があります。
  2. 垂直抗力の作用点: 机のような面で物体を支えるとき、垂直抗力は面に分布して働きます。その合力の作用点は、力の加わり方によって移動します。この問題では、作用点の位置が未知数となります。
  3. 剛体が傾き始めるときの条件: 板が傾き始める瞬間、それは板が机の端の一点を支点(回転軸)として回転運動を開始する直前の状態です。このとき、全ての垂直抗力はこの回転軸となる一点に集中していると考えることができます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、板に働く力(重力、押す力\(F\)、垂直抗力\(N\))を図示し、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」を連立させて、垂直抗力の作用点の位置\(x\)を求めます。
  2. (2)では、「板が傾き始める」という物理的条件を「垂直抗力の作用点が机の端に移動する」と解釈し、(1)で得られた式にその条件を代入して力\(F\)の値を求めます。

問(1) 垂直抗力の作用点の位置

思考の道筋とポイント
まず、静止している板に働く力をすべて特定します。鉛直方向には、下向きに重力\(mg\)と押す力\(F\)、上向きに机からの垂直抗力\(N\)が働いています。これらの力について、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」の2つの式を立てます。
未知数は垂直抗力の大きさ\(N\)とその作用点の位置\(x\)の2つなので、2つの式を連立させることで解くことができます。モーメントのつり合いを考える際には、計算が簡単になるように、板の左端Aを回転の中心に選ぶのが有効です。
この設問における重要なポイント

  • 垂直抗力\(N\)は、机が板を支える力の「合力」であり、その作用点\(x\)は未知数として扱う。
  • 未知数が2つ(\(N, x\))なので、方程式も2つ(力のつり合い、モーメントのつり合い)必要。
  • モーメントの回転中心は、基準点であるA点に取ると立式しやすい。

具体的な解説と立式
板に働く力は以下の通りです。

  • 重力: 板の中心(Aから\(L/2\)の位置)から鉛直下向きに\(mg\)。
  • 押す力: 板の右端(Aから\(L\)の位置)から鉛直下向きに\(F\)。
  • 垂直抗力: 机と接している面のどこか(Aから\(x\)の位置)から鉛直上向きに\(N\)。

1. 鉛直方向の力のつり合い
(上向きの力の和)=(下向きの力の和)より、
$$
\begin{aligned}
N &= mg + F \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

2. A点のまわりの力のモーメントのつり合い
A点を回転の中心に選びます。

  • 反時計回りのモーメント: 垂直抗力\(N\)によるもの。腕の長さは\(x\)。モーメントは\(Nx\)。
  • 時計回りのモーメント:
    • 重力\(mg\)によるもの。腕の長さは\(L/2\)。モーメントは\(mg \cdot \frac{L}{2}\)。
    • 押す力\(F\)によるもの。腕の長さは\(L\)。モーメントは\(FL\)。

(反時計回りのモーメントの和)=(時計回りのモーメントの和)より、
$$
\begin{aligned}
Nx &= mg \frac{L}{2} + FL \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \((鉛直方向の力の和)=0\)
  • 力のモーメントのつり合い: \((反時計回りのモーメントの和) = (時計回りのモーメントの和)\)
計算過程

式②を\(x\)について解き、式①を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{mg \frac{L}{2} + FL}{N}
\end{aligned}
$$
この式の\(N\)に、式①の \(N = mg + F\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{mg \frac{L}{2} + FL}{mg + F} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{1}{2}(mg + 2F)}{mg + F} L \\[2.0ex]
&= \frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

板がシーソーのようにバランスを取って静止している状態を考えます。このとき、「上向きの力と下向きの力」が釣り合っています。これが力の釣り合いです。また、「板を時計回りに回そうとする力」と「反時計回りに回そうとする力」も釣り合っています。これがモーメントの釣り合いです。
この問題では、机が板を支える点(垂直抗力の作用点)がどこになるか分かりません。そこで、この位置を\(x\)として、力の釣り合いとモーメントの釣り合いの2つの式を立てます。この連立方程式を解くことで、作用点の位置\(x\)を力の大きさ\(F\)などを使って表すことができます。

結論と吟味

垂直抗力の作用点は、左端Aから \(x = \displaystyle\frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L\) の位置になります。
この結果を吟味してみましょう。もし、押す力\(F=0\)なら、\(x = \frac{mg}{2mg}L = \frac{L}{2}\) となります。これは、板の重さだけがかかっている場合、垂直抗力の作用点は重心の真下にくることを意味し、物理的に正しいです。また、\(F\)を大きくしていくと、\(x\)の値は大きくなる(作用点が右にずれる)こともこの式から分かり、直感と一致します。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L\)
別解: 板の重心を回転中心としてモーメントのつり合いを考える解法

思考の道筋とポイント
モーメントのつり合いはどの点を中心に考えても成り立ちます。この別解では、板の重心Gを回転中心に選びます。この点のまわりでは、重力\(mg\)のモーメントが0になるため、垂直抗力\(N\)と押す力\(F\)のモーメントだけでつり合いの式を立てることができます。
この設問における重要なポイント

  • 重心を回転中心に選ぶと、重力のモーメントが0になる。
  • 押す力\(F\)が加わると、垂直抗力の作用点\(x\)は重心より右側(\(x > L/2\))に移動する。

具体的な解説と立式
力のつり合いの式は主たる解法と全く同じです。
$$
\begin{aligned}
N &= mg + F \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
次に、板の重心G(Aから\(L/2\)の位置)のまわりの力のモーメントのつり合いを考えます。

  • 反時計回りのモーメント: 垂直抗力\(N\)によるもの。作用点はAから\(x\)の位置なので、腕の長さは\(x – L/2\)。モーメントは\(N(x – L/2)\)。
  • 時計回りのモーメント: 押す力\(F\)によるもの。作用点はAから\(L\)の位置なので、腕の長さは\(L – L/2 = L/2\)。モーメントは\(F \cdot \frac{L}{2}\)。

(反時計回りのモーメントの和)=(時計回りのモーメントの和)より、
$$
\begin{aligned}
N\left(x – \frac{L}{2}\right) &= F \frac{L}{2} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつり合い: \((鉛直方向の力の和)=0\)
  • 力のモーメントのつり合い: \((反時計回りのモーメントの和) = (時計回りのモーメントの和)\)
計算過程

式③を\(x\)について解き、式①を代入します。
$$
\begin{aligned}
x – \frac{L}{2} &= \frac{FL}{2N} \\[2.0ex]
x &= \frac{L}{2} + \frac{FL}{2N}
\end{aligned}
$$
この式の\(N\)に、式①の \(N = mg + F\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{L}{2} + \frac{FL}{2(mg + F)} \\[2.0ex]
&= \frac{L(mg+F) + FL}{2(mg+F)} \\[2.0ex]
&= \frac{mgL + FL + FL}{2(mg+F)} \\[2.0ex]
&= \frac{mgL + 2FL}{2(mg+F)} \\[2.0ex]
&= \frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

メインの解法では板の左端をシーソーの支点と見なしましたが、この別解では板のちょうど真ん中(重心)を支点として考えます。重心を支点にすると、板自身の重さは回転に影響しなくなります。すると、回転の釣り合いは「机が板を押し上げる力(垂直抗力)」と「右端を押す力\(F\)」の2つの勝負になります。この釣り合いの式と、力の釣り合いの式を組み合わせることで、メインの解法と全く同じ答えを導き出すことができます。

結論と吟味

重心を回転中心として計算しても、主たる解法と全く同じ結果が得られました。これは、モーメントのつり合いはどの点を中心に考えても物理的に等価な条件を与えることを示しています。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L\)

問(2) 板が傾き始めるときの\(F\)の値

思考の道筋とポイント
「板が傾き始める」という物理的な現象を、数式で表現できる条件に置き換えることが鍵となります。
力\(F\)を大きくしていくと、(1)の結果から垂直抗力の作用点\(x\)はどんどん右に移動していきます。しかし、作用点は机の面がある範囲、すなわちAから机の端(Aから\(L-L/3 = 2L/3\)の位置)までしか移動できません。
作用点がこの机の端に達した瞬間が、板がこれ以上支えられなくなり、傾き始める直前の状態に対応します。したがって、「傾き始めるときの条件」とは「\(x = 2L/3\)となるとき」と読み替えることができます。
この設問における重要なポイント

  • 「傾き始める」 \(\iff\) 垂直抗力の作用点が支点の端(机の角)に移動する。
  • 机の端の位置は、左端Aから \(L – L/3 = 2L/3\)。
  • (1)で求めた\(x\)の式に、この条件を代入する。

具体的な解説と立式
(1)で求めた垂直抗力の作用点の位置の式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L
\end{aligned}
$$
板が傾き始めるのは、作用点\(x\)が机の端の位置に来たときです。机の端は、板の左端Aから \(L – L/3 = 2L/3\) の距離にあります。
したがって、傾き始める条件は \(x = 2L/3\) となります。この条件を上の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{2L}{3} &= \frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 設問(1)で導出した作用点の式: \(x = \displaystyle\frac{mg + 2F}{2(mg + F)} L\)
計算過程

上記で立式した方程式を\(F\)について解きます。まず、両辺の\(L\)を消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{3} &= \frac{mg + 2F}{2(mg + F)}
\end{aligned}
$$
分母を払うために、両辺に \(3 \cdot 2(mg+F)\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
2 \cdot 2(mg + F) &= 3(mg + 2F) \\[2.0ex]
4(mg + F) &= 3(mg + 2F) \\[2.0ex]
4mg + 4F &= 3mg + 6F \\[2.0ex]
4mg – 3mg &= 6F – 4F \\[2.0ex]
mg &= 2F \\[2.0ex]
F &= \frac{1}{2}mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

右端を押す力\(F\)を強くしていくと、てこの原理で、机が板を支えるポイントがだんだん右にずれていきます。そして、その支えるポイントが机のギリギリの角まで来たとき、板はもう支えきれなくなり、ガタッと傾き始めます。
この問題は、その「傾き始める瞬間」の力\(F\)を求めるものです。(1)で計算した「支えるポイントの位置の式」に、「机の角の位置」を代入して方程式を解けば、その瞬間の力\(F\)が計算できる、というわけです。

結論と吟味

板が傾き始めるときの力は \(F = \displaystyle\frac{1}{2}mg\) となります。これは、板の重さの半分の力で右端を押すと、板が傾き始めることを意味します。物理的に妥当な値と考えられます。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{1}{2}mg\)
別解: 机の端を回転中心としてモーメントのつり合いを考える解法

思考の道筋とポイント
(1)の結果を使わずに、(2)を直接解く非常にエレガントな方法です。「板が傾き始める」という瞬間に注目します。このとき、板はまさに机の端を回転軸(支点)として、時計回りに回転しようとしています。
この回転軸のまわりでの力のモーメントが、ギリギリつり合っている状態を考えます。このアプローチの最大の利点は、回転軸上に作用する垂直抗力\(N\)のモーメントが0になるため、計算が非常にシンプルになることです。
この設問における重要なポイント

  • 傾き始める瞬間、回転軸は「机の端」になる。
  • 回転軸のまわりでモーメントのつり合いを考えると、垂直抗力\(N\)を考慮する必要がなくなる。
  • 重力と押す力\(F\)のモーメントのつり合いだけで式が立てられる。

具体的な解説と立式
回転軸を机の端(点Cとします)に取ります。点CはAから\(2L/3\)の位置にあります。

  • 反時計回りのモーメント: 重力\(mg\)によるもの。重力の作用点は板の中心(Aから\(L/2\))なので、回転軸Cからの腕の長さは \(2L/3 – L/2 = L/6\)。モーメントは \(mg \cdot \frac{L}{6}\)。
  • 時計回りのモーメント: 押す力\(F\)によるもの。\(F\)の作用点は板の右端(Aから\(L\))なので、回転軸Cからの腕の長さは \(L – 2L/3 = L/3\)。モーメントは \(F \cdot \frac{L}{3}\)。

傾き始める直前では、これらのモーメントがつり合っています。
(反時計回りのモーメントの和)=(時計回りのモーメントの和)より、
$$
\begin{aligned}
mg \cdot \frac{L}{6} &= F \cdot \frac{L}{3}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のモーメントのつり合い: \((反時計回りのモーメントの和) = (時計回りのモーメントの和)\)
計算過程

上記で立式した方程式を\(F\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
mg \frac{L}{6} &= F \frac{L}{3}
\end{aligned}
$$
両辺を\(L\)で割り、3を掛けます。
$$
\begin{aligned}
mg \frac{1}{2} &= F
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{1}{2}mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(1)の答えを使わずに、もっと直接的に考える方法です。「板が傾き始める」という瞬間を想像してみましょう。このとき、板は机の角を支点にして、シーソーのように回転し始めます。つまり、この瞬間だけは「机の角」が回転の中心になっているのです。この回転の中心の周りで、「板自身の重さが起こす回転(反時計回り)」と「押す力\(F\)が起こす回転(時計回り)」がギリギリ釣り合っている、という式を立てます。この考え方だと、机が板を押し上げる力(垂直抗力)は回転の中心にかかるので、計算に入れる必要がなくなり、非常にシンプルに答えが出せます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(F = \displaystyle\frac{1}{2}mg\) が、より少ない計算で得られました。この別解は、「傾き始める」という物理現象の本質を捉え、最も適切な回転軸を選ぶことで問題を劇的に単純化する好例です。剛体のつり合いの問題では、このような物理的洞察に基づいた解法が非常に強力な武器となります。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{1}{2}mg\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 剛体のつり合いの二大条件:
    • 核心: この問題の根幹は、物体が静止し続けるための2つの絶対条件、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」を理解し、正しく適用することにあります。物体がただ動かないだけでなく、回転もしない状態を数式で表現することが求められます。
    • 理解のポイント:
      • 力のつり合い(並進しない条件): 物体に働く全ての力を足し合わせるとゼロになる、ということです。具体的には、「上向きの力の合計 = 下向きの力の合計」という式を立てます。
      • 力のモーメントのつり合い(回転しない条件): 物体を回転させようとする効果(モーメント)が、どの点のまわりでも釣り合っている、ということです。「反時計回りに回そうとする力の効果の合計 = 時計回りに回そうとする力の効果の合計」という式を立てます。
  • 垂直抗力の作用点の移動:
    • 核心: 机のような面から受ける垂直抗力は、実は一点に集中しているのではなく、接触面全体に分布しています。その合力の作用点は、力の加わり方によって移動する、という物理的実体を理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 設問(1)は、この「作用点の移動」を数式で表現する問題です。右端を押す力\(F\)が大きくなるほど、作用点が右にずれていく様子が式から読み取れます。
      • 設問(2)の「傾き始める」という現象は、この作用点が支えることができる限界、すなわち机の端に達した瞬間としてモデル化されます。この物理的解釈が、問題を解く上での最大の鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 物体が倒れる条件を問う問題: 直方体などの物体を水平に押したとき、「滑るのが先か、倒れるのが先か」を問う問題。倒れる条件は、本問と同様に、垂直抗力の作用点が物体の底面の端に移動したときとして考えます。
    • 重心の位置を求める問題: 形が複雑な物体の重心を求める際に、ナイフエッジなどで支えてつり合う点を探す実験があります。これは、支点(垂直抗力の作用点)の真上に重心がある、というつり合いの条件を利用したものです。
    • 自動車や電車の安定性: 車両がカーブを曲がるときの遠心力によって、内側の車輪と外側の車輪にかかる垂直抗力が変化します。速度が速すぎると、内側の車輪が浮き上がり(垂直抗力が0になり)、横転します。これも作用点の移動と限界の問題です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 力の作用点を明確にする: 図を描く際に、重力は重心に、押す力は指定された点に、そして垂直抗力は「未知の位置\(x\)」に作用するものとして、全ての力の作用点を明確に区別します。
    2. 「~し始める」という言葉に注目: 「滑り始める」「傾き始める」「浮き上がり始める」といった言葉は、物理状態が変化する「限界点」を示唆しています。この限界点で何が起きているのか(最大摩擦力になる、垂直抗力の作用点が端に来る、垂直抗力が0になるなど)を物理的に解釈することが、立式の突破口になります。
    3. 最も賢い回転軸を探す: 設問(2)の別解のように、現象の本質を捉えた回転軸(この場合は机の端)を見つけることができると、計算が劇的に簡単になります。「傾く」「回転する」といった言葉が出てきたら、「その回転の中心はどこか?」と自問する癖をつけましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 垂直抗力の作用点を固定してしまう:
    • 誤解: 垂直抗力は、常に接触面の中心に働くと勘違いしてしまう。
    • 対策: 垂直抗力は分布荷重の合力であり、その作用点は力のバランスによって移動する「変数」であると認識することが重要です。特にモーメントが関わる問題では、作用点の位置を安易に決めつけず、未知数として扱うか、物理的条件から特定する必要があります。
  • モーメントの腕の長さの計算ミス:
    • 誤解: 回転中心から力の作用点までの距離を、そのまま腕の長さとしてしまう。特に、回転中心がA点や重心以外の場合(設問(2)の別解など)に間違いやすい。
    • 対策: 腕の長さは、常に「回転中心」と「力の作用線」との間の垂直距離です。どの点を回転中心に選んだかを常に意識し、そこからの距離を一つ一つ丁寧に計算しましょう。図に長さを書き込むのが有効です。
  • 「傾き始める」条件の誤解:
    • 誤解: 傾き始めるときの条件が何を表すのか分からず、式を立てられない。
    • 対策: 「少しだけ傾いた状態」をイメージしてみましょう。板は机の角を支点にして回転します。つまり、この角が回転の中心軸になるということです。この瞬間、板と机が接触しているのはこの一点だけなので、垂直抗力の全てがこの点に集中している、と考えることができます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 設問(1)で力のつり合いとモーメントのつり合いを連立する理由:
    • 選定理由: この設問では、未知数が垂直抗力の大きさ\(N\)とその作用点の位置\(x\)の2つです。数学の基本原則として、2つの未知数を決定するには、2つの独立した方程式が必要です。
    • 適用根拠: 剛体の静止という物理状態は、「並進しない」と「回転しない」という2つの独立した条件によって保証されます。これらがそれぞれ「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」という方程式に対応するため、この2式を連立させることが、問題を解くための論理的に必然な手順となります。
  • 設問(2)の別解で机の端を回転軸に選ぶ理由:
    • 選定理由: 設問(2)は「傾き始める」という、静止状態が破れる限界点を問うています。この現象は「机の端を軸とした回転運動の開始」と物理的に解釈できます。
    • 適用根拠: この回転運動のまさに始まりの瞬間を考えれば、その回転軸のまわりでのモーメントのつり合いが破れる直前、と考えるのが最も自然です。この点を回転中心に選ぶと、つり合いの式に未知の垂直抗力\(N\)を含める必要がなくなり、問題が「重力と力\(F\)のモーメントのつり合い」という、より本質的で単純な構造に還元されます。これは、物理現象を的確にモデル化することで、最も効率的な解法を選択する思考プロセスです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の整理を丁寧に行う: この問題の答えのように、分母・分子に式が入る複雑な分数が現れる計算では、途中の整理が重要です。特に、通分や約分を焦らず、一行一行丁寧に行いましょう。
  • 文字式のまま計算を進める: この問題は元々文字式ですが、もし数値が与えられていても、まずは文字のまま最後まで計算し、最後に数値を代入するのが鉄則です。これにより、計算ミスを発見しやすくなるだけでなく、答えの物理的な意味(何に比例し、何に反比例するかなど)を考察できます。
  • 別解による検算: 設問(2)のように、全く異なるアプローチで同じ答えが導出できる場合、それは非常に強力な検算手段になります。もし主たる解法で計算ミスをしていたら、別解の答えと一致しないはずです。時間に余裕があれば、別のアプローチで解き直してみる習慣は、解答の確実性を飛躍的に高めます。
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33 剛体のつり合い

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 物体の重心を回転中心としてモーメントのつり合いを考える解法
      • 模範解答が物体の角Bを回転中心にするのに対し、別解では重心を中心に取ることで、垂直抗力の作用点が移動する様子を数式で追いながら解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 力\(f\)の増加に伴い、垂直抗力の作用点がどのように移動し、最終的に角Bに達して転倒に至るか、という物理プロセスへの理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: モーメントの回転中心は任意に選べること、そしてその選び方によって問題の見え方や解法の戦略が変わることを体験できます。
    • 応用力の養成: 作用点の移動を考えるアプローチは、「滑るのが先か、倒れるのが先か」を判断するような、より複雑な問題に応用できる基礎的な考え方です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「剛体が滑る条件と倒れる条件」です。剛体のつり合いの基本法則に加え、「転倒する」という現象を物理的にどう捉え、数式に落とし込むかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 剛体のつり合いの条件: 物体が静止するためには、「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」の2つの条件を同時に満たす必要があります。
  2. 転倒する条件: 物体が傾き(転倒し)始める直前、物体は支えられている面の角を回転軸として回転しようとします。このとき、床からの垂直抗力や摩擦力は、すべてこの回転軸となる一点に作用していると考えることができます。
  3. 滑らない条件: 物体が滑り出さずに静止し続けるためには、働く静止摩擦力が最大静止摩擦力(\(\mu N\))を超えてはなりません。
  4. モーメントの回転中心の選び方: どこを回転中心に選ぶかによって、計算の複雑さが大きく変わります。未知の力が集中する点を選ぶのが定石です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 設問の前半(\(f_1\)を求める)では、「転倒しはじめる」という条件から、回転軸を物体の左下の角B点と特定し、その点のまわりのモーメントのつり合いを立てて力\(f_1\)を求めます。
  2. 設問の後半(\(\mu\)の条件を求める)では、転倒が起こるためには「その前に滑らない」ことが前提である、という条件を考えます。力のつり合いから静止摩擦力と垂直抗力を求め、「静止摩擦力 \(\le\) 最大静止摩擦力」という関係式を立てて\(\mu\)の条件を導きます。

問(1) 転倒しはじめるときの力 \(f_1\)

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