「物理のエッセンス(熱・電磁気・原子)」徹底解説(電磁気81〜85問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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電磁気範囲 81~85

81 コイル・コンデンサーの過渡現象

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている、コイルの電流連続性を利用した物理的な解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: スイッチOFF後の閉回路にキルヒホッフの第2法則を適用する解法
      • 主たる解法が、コイルの電圧が抵抗の電圧に等しいという関係から直感的に解を求めるのに対し、別解ではスイッチOFF後の閉回路全体に対してキルヒホッフの第2法則を立式し、そこからコイルの電圧を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: コイルが発生させる自己誘導起電力が、閉回路内でどのように電圧降下とつりあうかを数式レベルで明確に理解できます。
    • 解法の厳密性: 「コイルの電圧は抵抗の電圧に等しい」という関係が、キルヒホッフの法則から自然に導かれることを確認でき、解法の論理的な裏付けが強固になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「スイッチOFF時のコイルの過渡現象」です。定常電流が流れているコイルを含む回路のスイッチを開いたとき、コイルが蓄えたエネルギーを放出して電流を維持しようとする「自己誘導」の働きを定量的に理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コイルの電流連続性: コイルを流れる電流は瞬間的に変化することができない。したがって、スイッチを切り替える直前と直後で、コイルを流れる電流の大きさと向きは同じである。
  2. 定常状態におけるコイルの振る舞い: 十分に時間が経ち電流が一定になった状態では、コイルは単なる「導線」として扱える。
  3. 短絡(ショート)の概念: 抵抗と導線が並列に接続されている場合、電流は抵抗がゼロの導線側のみを流れる。
  4. オームの法則: 抵抗にかかる電圧は、流れる電流と抵抗値の積で与えられる (\(V=RI\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、「スイッチを開く直前」の状態を考えます。これは前問80(b)の「十分に時間がたった後」の状態と同じです。このときのコイルを流れる定常電流 \(I_0\) を求めます。
  2. 次に、「スイッチを開いた直後」の回路がどのようになるかを考えます。電源部分が切り離され、コイルと抵抗\(R_1\)だけの閉回路が形成されます。
  3. コイルの電流連続性の法則から、スイッチを開いた直後にも(1)で求めた電流 \(I_0\) が流れ続けると考えます。
  4. この電流 \(I_0\) が抵抗\(R_1\)を流れることで生じる電圧降下を計算します。この電圧が、コイルの両端の電圧に等しくなります。

スイッチを開いた直後のコイルの電圧

思考の道筋とポイント
この問題は、時間の流れに沿って2つのステップで考えます。

ステップ1:スイッチを開く「前」の状態把握

まず、スイッチを開く直前の、回路が定常状態にあるときの状況を正確に把握します。特に、主役である「コイルにどれだけの電流が流れていたか」を計算することが、すべての始まりです。

ステップ2:スイッチを開いた「後」の現象を追う

次に、スイッチを開いた瞬間に何が起こるかを考えます。ここで最も重要な物理法則が「コイルを流れる電流は急に変われない(電流の連続性)」です。コイルは、直前まで流れていた電流を、スイッチが開かれた後も同じように流し続けようとします。そのために、コイル自身が「一時的な電池」のように振る舞い、電圧(誘導起電力)を発生させます。この電圧の大きさを求めるのがこの問題のゴールです。
この設問における重要なポイント

  • スイッチを開く直前の状態: 前問80(b)の「十分後」の状態。コイルは「導線」として振る舞い、抵抗\(R_1\)を短絡している。
  • コイルを流れる初期電流\(I_0\): 上記の状態から、コイルには \(I_0 = V/R_2\) の電流が流れている。
  • スイッチを開いた直後の回路: 電源と\(R_2\)が切り離され、コイル\(L\)と抵抗\(R_1\)だけの閉回路が形成される。
  • 電流の連続性: コイルは、スイッチが開かれた直後も、\(I_0 = V/R_2\) の電流を同じ向きに流し続けようとする。
  • コイルの電圧: コイルが電流を流し続けるために発生させる電圧は、その電流が流れる先の抵抗\(R_1\)で生じる電圧降下に等しい。

具体的な解説と立式
1. スイッチを開く直前のコイルの電流 \(I_0\) を求める

スイッチを入れて十分に時間がたった状態では、コイル\(L\)は抵抗ゼロの「導線」として振る舞います。
このとき、抵抗\(R_1\)はコイル(導線)によって短絡(ショート)されるため、電流は\(R_1\)には流れません。
したがって、回路は電源\(V\)と抵抗\(R_2\)だけが接続されたものとみなせます。
このとき回路を流れる電流はすべてコイルを通るため、スイッチを開く直前にコイルを流れていた電流\(I_0\)は、
$$
\begin{aligned}
I_0 &= \frac{V}{R_2}
\end{aligned}
$$
となります。この電流は、回路図においてコイルの上から下の向きに流れています。

2. スイッチを開いた直後のコイルの電圧 \(V_L\) を求める

スイッチを開くと、電源\(V\)と抵抗\(R_2\)を含む部分は回路から切り離されます。残るのは、コイル\(L\)と抵抗\(R_1\)で構成される閉回路です。
コイルの「電流の連続性」という性質により、スイッチを開いた直後も、コイルは直前と同じ向き・同じ大きさの電流 \(I_0\) を流し続けようとします。
すなわち、コイルの上から下の向きに \(I_0 = \displaystyle\frac{V}{R_2}\) の電流が流れます。
この電流は、閉回路を循環するため、抵抗\(R_1\)を下から上の向きに流れることになります。
このとき、コイルは電流を流し続けるための電源として働き、誘導起電力を発生させています。コイルの両端の電圧 \(V_L\) は、この閉回路において抵抗\(R_1\)の両端の電圧に等しくなります。
オームの法則より、抵抗\(R_1\)にかかる電圧は \(R_1 I_0\) なので、
$$
\begin{aligned}
V_L &= R_1 I_0
\end{aligned}
$$
となります。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V=RI\)
  • コイルの電流連続性
計算過程

上で立式した \(V_L = R_1 I_0\) の式に、\(I_0 = \displaystyle\frac{V}{R_2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_L &= R_1 \times \frac{V}{R_2} \\[2.0ex]
&= \frac{R_1 V}{R_2}
\end{aligned}
$$
これ以上の計算は不要です。

この設問の平易な説明

コイルは、流れている電流という「流れ」を止められるのが大嫌いです。
スイッチを切られて電源からの供給が絶たれると、「まだ流したいのに!」と、コイル自身が発電機(電池)に変身して、蓄えていたエネルギーを使って無理やり電流を流し続けようとします。
このとき、コイルが作る電圧はいくらか?というと、電流の行き先である抵抗\(R_1\)で発生する電圧とちょうど同じ大きさになります。
なので、手順としては、まず「スイッチを切る直前の電流」を計算し、次にその電流が抵抗\(R_1\)を流れたと仮定したときの電圧を計算すれば、それが答えになります。

結論と吟味

スイッチを開いた直後のコイルの電圧は \(\displaystyle\frac{R_1 V}{R_2}\) となります。
この結果は興味深い物理現象を示唆しています。もし \(R_1\) が \(R_2\) よりも大きい場合(例えば \(R_1 = 1000 \, \Omega\), \(R_2 = 10 \, \Omega\))、コイルの電圧は \(V_L = \displaystyle\frac{1000}{10}V = 100V\) となり、元の電源電圧 \(V\) よりもはるかに高い電圧が発生することがあります。これは「キックバック」や「サージ電圧」と呼ばれる現象で、スイッチの接点で火花が飛んだり、電子部品を破壊したりする原因となります。このように、導出された式は物理的に重要な現象を正しく記述しており、妥当な結果と言えます。

解答 \(\displaystyle\frac{R_1 V}{R_2}\)
別解: スイッチOFF後の閉回路にキルヒホッフの第2法則を適用する解法

思考の道筋とポイント
主たる解法では「コイルの電圧が抵抗の電圧に等しい」という関係を直感的に用いました。この別解では、その関係をより厳密に、キルヒホッフの第2法則から導出します。スイッチを開いた後のコイルLと抵抗R1からなる閉回路全体に着目し、電圧の関係式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • スイッチOFF後の閉回路には外部電源が存在しない。
  • コイルが発生する自己誘導起電力 \(-L\displaystyle\frac{dI}{dt}\) が、回路に電流を流す唯一の起電力となる。
  • 閉回路において、起電力の和と電圧降下の和は等しい。

具体的な解説と立式
スイッチを開いた後の、コイル\(L\)と抵抗\(R_1\)からなる閉回路を考えます。
電流の向きを、コイルを上から下に流れる向きを正とします。このとき、電流 \(I\) は抵抗\(R_1\)を下から上に流れます。
この閉回路にキルヒホッフの第2法則を適用します。回路を電流の向きに一周すると、
$$ (\text{起電力の和}) = (\text{電圧降下の和}) $$
この回路では、コイルが発生する自己誘導起電力 \(-L\displaystyle\frac{dI}{dt}\) が起電力として働きます。電圧降下は、抵抗\(R_1\)で生じる \(R_1 I\) です。したがって、
$$ -L\frac{dI}{dt} = R_1 I $$
が成り立ちます。
ここで、問題で問われている「コイルの電圧」とは、コイルの両端の電位差 \(V_L\) のことです。コイルの自己誘導起電力は、コイル内部の電位差そのものですから、
$$ V_L = -L\frac{dI}{dt} $$
と表せます。したがって、上のキルヒホッフの法則の式から、
$$ V_L = R_1 I $$
という関係が導かれます。これは、コイルの電圧が抵抗\(R_1\)での電圧降下に等しいことを示しており、主たる解法で用いた関係式そのものです。
スイッチを開いた直後では、電流の連続性から \(I\) は直前の値 \(I_0 = \displaystyle\frac{V}{R_2}\) に等しいので、
$$
\begin{aligned}
V_L &= R_1 I_0 \\[2.0ex]
&= R_1 \frac{V}{R_2}
\end{aligned}
$$
となります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
  • 自己誘導起電力の定義: \(V_L = -L\displaystyle\frac{dI}{dt}\)
  • オームの法則: \(V_R = RI\)
計算過程

主たる解法と同じです。

この設問の平易な説明

この解き方は、主たる解法をより丁寧な数式で説明する方法です。
スイッチが切られた後の「コイルと抵抗だけの輪っか」に注目します。この輪っかの中では、「コイルが作り出す電圧」と「抵抗が消費する電圧」が常に等しくなっていなければならない、というエネルギー保存の法則(キルヒホッフの法則)を使います。
この法則を数式で書くと、結局「コイルの電圧 \(V_L\) = 抵抗の電圧 \(R_1 I\))」という、主たる解法で使ったのと同じ関係式が出てきます。あとは、スイッチを切った瞬間の電流の値を代入すれば、同じ答えにたどり着きます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(\displaystyle\frac{R_1 V}{R_2}\) が得られました。この別解は、主たる解法の直感的なアプローチが、電磁気学の基本法則であるキルヒホッフの法則に基づいていることを明確に示しており、理解をより確かなものにします。

解答 \(\displaystyle\frac{R_1 V}{R_2}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • コイルの電流連続性:
    • 核心: この問題の根幹は、スイッチを切り替えるという急激な変化に対し、コイルがその内部の磁場エネルギーを放出してでも「電流を一定に保とうとする」という、電流の連続性にあります。
    • 理解のポイント:
      • なぜ電流は連続か?: 電流がもし不連続に(瞬時に)変化すると、その時間変化率 \(\displaystyle\frac{dI}{dt}\) が無限大になってしまいます。すると、自己誘導起電力 \(V = -L\displaystyle\frac{dI}{dt}\) も無限大となり、物理的にありえません。そのため、コイルを流れる電流は必ず滑らかに(連続的に)変化します。
      • スイッチ切り替え時の応用: この法則は、スイッチを「開く」「閉じる」「切り替える」といった操作の「直前」と「直後」で、コイルを流れる電流の値は全く同じである、という強力な解析手法を与えてくれます。
      • 役割の変化: スイッチONの時は電流の変化を「妨げる」抵抗勢力だったコイルが、スイッチOFFの時には電流の減少を「妨げる」ために、自らが電源となって電流を「維持する」勢力へと役割を変える、というダイナミックな振る舞いを理解することが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コンデンサーの電圧連続性: コイルの電流連続性と対になる重要な性質として、「コンデンサーの両端の電圧は連続的に変化する」というものがあります。スイッチを切り替える直前と直後で、コンデンサーの電圧(蓄えられた電荷)は同じです。この性質を利用して、スイッチ切り替え直後の回路の電流などを求める問題に応用できます。
    • LC振動回路: スイッチの切り替えによって、充電されたコンデンサーとコイルだけの閉回路を作る問題。コンデンサーの電圧が連続であること、コイルの電流が連続であることを初期条件として、その後のエネルギーのやり取り(電気振動)を解析します。
    • ダイオードを含む回路: コイルのキックバック電圧から保護するために、コイルと並列にダイオードを接続した回路の問題。スイッチOFF時、コイルが発生させた誘導電流がダイオードを通って還流することで、高電圧の発生を抑える仕組みを解析する問題などがあります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 時間軸を3つに分ける: 「(1) スイッチ切り替えの十分前(初期定常状態)」「(2) 切り替え直前」「(3) 切り替え直後」の3つの時点を明確に区別します。
    2. 直前の状態を確定させる: まず、(1)の状態から(2)の直前の状態を解析します。特に、コイルを流れる電流やコンデンサーに蓄えられた電荷(電圧)を計算します。これが「引き継がれる初期値」となります。
    3. 直後の回路図を描く: スイッチを切り替えた後の、\(t=0\) の瞬間の回路図を描きます。電源が切り離されたり、新たな素子が接続されたりします。
    4. 連続則を適用する: (2)で求めたコイルの電流やコンデンサーの電圧を、(3)の回路図に初期値として書き込みます。「コイルは定電流源」「コンデンサーは定電圧源」として、その瞬間だけ振る舞うと考えることができます。
    5. 直後の値を計算する: 書き込んだ初期値と、新しい回路の構成から、オームの法則やキルヒホッフの法則を用いて、問題で問われている物理量(電圧、電流など)を計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • スイッチOFF直後の電流を0と考えてしまう:
    • 誤解: スイッチを開いて電源から切り離されたのだから、回路の電流は即座に0になるだろうと勘違いしてしまう。
    • 対策: これがコイルの性質を理解しているかどうかの分かれ目です。「コイルがある限り、電流は急に0にはなれない」と肝に銘じましょう。コイルは、自らが電源となることで、閉回路さえ形成されていれば電流を流し続けます。
  • スイッチOFF後の回路構成の誤認:
    • 誤解: スイッチを開いた後も、電源や\(R_2\)がまだ回路に関係していると考えてしまう。
    • 対策: スイッチが開いた部分を、物理的に「断線」、つまり道が途切れたものとして回路図から完全に消去し、残った部分だけで構成される新しい閉回路を描き直すことが重要です。この「回路の描き直し」を怠ると、どの素子が関係しているのかを正しく判断できません。
  • 電流の向きの混乱:
    • 誤解: スイッチOFF後、コイルが作る電流の向きを適当に決めてしまう。
    • 対策: 電流の向きは、必ず「スイッチOFF直前の向きと同じ」になります。コイルはあくまで現状維持をしようとする保守的な素子であり、自ら向きを反転させることはありません。直前の電流の向きを正確に把握し、その向きを維持するように矢印を描き込むことが大切です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • コイルの電流連続性 (\(I_{\text{直前}} = I_{\text{直後}}\)):
    • 選定理由: この問題は、スイッチを開くという「不連続な操作」の直後の「連続的な物理量」を問うています。コイルを含む回路において、このような状況を解析するための最も基本的で強力な法則が「電流連続性」です。
    • 適用根拠: 物理法則 \(V_L = -L\displaystyle\frac{dI}{dt}\) から導かれる数学的な要請です。もし電流が不連続(ジャンプする)ならば、その点での微分係数 \(\displaystyle\frac{dI}{dt}\) は発散し、無限大の電圧が生じることになります。現実には無限大はありえないため、電流は連続でなければならない、という論理に基づいています。
  • オームの法則 (\(V_R = RI\)):
    • 選定理由: コイルが発生させた誘導電流が、最終的にどこでエネルギーを消費するか(電圧降下を起こすか)を記述するために必要です。この問題では、電流の行き先は抵抗\(R_1\)しかないので、そこで生じる電圧を計算するためにオームの法則が選ばれます。
    • 適用根拠: 抵抗を流れる電流と、その両端の電位差が比例するという、電気回路における最も基本的な関係式です。スイッチOFF後の閉回路では、コイルが発生する電圧と抵抗が消費する電圧が等しくなるため、この法則がコイルの電圧を決定する鍵となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 段階的な思考を徹底する: この種の問題は、複数の時間ステップと思考の段階を経るため、焦ると混乱します。「(1)十分前 \(\rightarrow\) (2)直前 \(\rightarrow\) (3)直後」という時間の流れを意識し、各段階で必要な情報(特にコイルの電流)を一つずつ確実に計算し、次の段階に引き継いでいく、という丁寧な手順を心がけましょう。
  • 図を積極的に活用する:
    1. まず、スイッチOFF前の定常状態の回路図を描き、電流の向きと大きさを書き込みます。
    2. 次に、スイッチOFF後の閉回路だけを抜き出して描き直し、そこに直前の電流の向きと大きさを「初期値」として書き込みます。

    このように、状況ごとに図を描き分けることで、思考が整理され、ミスを防ぐことができます。

  • 文字式のまま計算を進める: \(I_0 = V/R_2\) のように、途中の計算結果を具体的な数値ではなく文字式のまま保持し、最後の式に代入するのが最も安全です。途中で数値を代入すると、計算ミスをしやすくなるだけでなく、物理的な意味も見失いがちになります。

82 交流のまとめ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流回路における素子の特定と特性値の計算」です。与えられた電圧と電流のグラフから、周期、周波数、実効値といった交流の基本的な量を読み取り、さらに両者の位相差に着目して、回路素子が抵抗、コイル、コンデンサーのいずれであるかを特定し、その特性値を求める総合的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. グラフからの基本量の読み取り: 交流電圧・電流のグラフから、周期\(T\)、最大値(振幅)\(V_0, I_0\)を正確に読み取る能力。
  2. 周波数と実効値の定義: 周期と周波数の関係 (\(f=1/T\))、および最大値と実効値の関係 (\(V_e = V_0/\sqrt{2}\)) を理解していること。
  3. 素子による位相差: 交流回路において、電圧と電流の位相関係が素子によって異なることを理解していること。
    • 抵抗: 電圧と電流は同位相。
    • コイル: 電流は電圧より位相が \(\pi/2\) (90°) 遅れる。
    • コンデンサー: 電流は電圧より位相が \(\pi/2\) (90°) 進む。
  4. リアクタンスの概念: コイルやコンデンサーが持つ、交流電流に対する「抵抗」に似た働き(リアクタンス)を理解し、その大きさを計算できること (\(V_0 = X I_0\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. グラフの横軸から波一つ分の時間(周期\(T\))を読み取り、\(f=1/T\) の関係式で周波数を求めます。
  2. グラフの縦軸から電圧の最大値\(V_0\)を読み取り、\(V_e = V_0/\sqrt{2}\) の関係式で実効値を求めます。
  3. 電圧(実線)のピークと電流(点線)のピークが現れる時間の前後関係を比較し、電流の位相が電圧に対して「進んでいる」か「遅れている」かを判断し、素子を特定します。
  4. 特定した素子のリアクタンスをオームの法則に似た関係式 \(V_0 = X I_0\) から計算し、インダクタンスまたは電気容量を求めます。

周波数、電圧の実効値、素子の特定と特性値の導出

思考の道筋とポイント
この問題は、グラフから読み取れる情報を一つずつ整理し、(1)周波数と実効値、(2)素子の種類、(3)特性値、という3つのステップを順番に解いていくことで答えにたどり着きます。
特に重要なのが(2)の素子の特定で、これは電圧と電流の位相差によって決まります。グラフの波のピーク(山)が現れる時刻を比較するのが、位相の進み・遅れを判断する上で最も確実で分かりやすい方法です。電圧のピークに対して電流のピークが時間的に遅れて現れれば「位相の遅れ」、先に現れれば「位相の進み」と判断します。
この設問における重要なポイント

  • グラフの軸の単位に注意する。特に横軸は \(\times 10^{-2}\) [s] となっている。
  • 電圧の実効値は、最大値(振幅)を \(\sqrt{2}\) で割ることで求められる。
  • 位相の進み・遅れの判断:
    • 電圧のピーク時刻 \(t_v\) と電流のピーク時刻 \(t_i\) を比較する。
    • \(t_i > t_v\) ならば、電流は「遅れ」。\(\rightarrow\) コイル
    • \(t_i < t_v\) ならば、電流は「進み」。\(\rightarrow\) コンデンサー
    • \(t_i = t_v\) ならば、「同位相」。\(\rightarrow\) 抵抗
  • コイルのリアクタンスは \(X_L = \omega L = 2\pi f L\)。

具体的な解説と立式
1. 周波数 \(f\) と電圧の実効値 \(V_e\) の導出

グラフから、電圧(実線)の波の周期 \(T\) を読み取ります。波が1サイクルを完了するのにかかる時間は \(2.0 \times 10^{-2}\) [s] です。
$$
\begin{aligned}
T &= 2.0 \times 10^{-2} \, \text{s}
\end{aligned}
$$
周波数 \(f\) は周期の逆数なので、
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T}
\end{aligned}
$$
次に、グラフから電圧の最大値(振幅)\(V_0\) を読み取ります。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= 120 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
電圧の実効値 \(V_e\) は、最大値を \(\sqrt{2}\) で割ることで求められます。
$$
\begin{aligned}
V_e &= \frac{V_0}{\sqrt{2}}
\end{aligned}
$$

2. 素子の種類の特定

グラフ上で、電圧と電流のピーク(山)が現れる時刻を比較します。

  • 電圧(実線)のピークは、\(t=1.5 \times 10^{-2}\) [s] の位置にあります。
  • 電流(点線)のピークは、\(t=2.0 \times 10^{-2}\) [s] の位置にあります。

電流のピークが電圧のピークよりも時間的に後に現れているため、「電流の位相は電圧よりも遅れている」と判断できます。
交流回路において、電流が電圧よりも遅れる素子はコイルです。

3. インダクタンス \(L\) の導出

素子がコイルであることがわかったので、そのインダクタンス \(L\) を求めます。
コイルにかかる電圧の最大値 \(V_0\) と、流れる電流の最大値 \(I_0\) の間には、コイルのリアクタンス \(X_L\) を用いて、オームの法則と同様の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= X_L I_0
\end{aligned}
$$
コイルのリアクタンス \(X_L\) は、角周波数 \(\omega\) とインダクタンス \(L\) を用いて \(X_L = \omega L\) と表せます。また、\(\omega = 2\pi f\) なので、
$$
\begin{aligned}
X_L &= 2\pi f L
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
V_0 &= (2\pi f L) I_0
\end{aligned}
$$
となります。この式を \(L\) について解くことで、インダクタンスを求めることができます。

使用した物理公式

  • 周期と周波数の関係: \(f = 1/T\)
  • 実効値と最大値の関係: \(V_e = V_0 / \sqrt{2}\)
  • コイルのリアクタンス: \(X_L = \omega L = 2\pi f L\)
  • 交流回路のオームの法則: \(V_0 = X_L I_0\)
計算過程

周波数 \(f\) の計算:
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{2.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= 0.5 \times 10^2 \\[2.0ex]
&= 50 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

電圧の実効値 \(V_e\) の計算:
$$
\begin{aligned}
V_e &= \frac{120}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{120\sqrt{2}}{2} \\[2.0ex]
&= 60\sqrt{2}
\end{aligned}
$$
ここで \(\sqrt{2} \approx 1.414\) を用いて近似計算すると、
$$
\begin{aligned}
V_e &\approx 60 \times 1.414 \\[2.0ex]
&= 84.84 \\[2.0ex]
&\approx 84.8 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

インダクタンス \(L\) の計算:

グラフから電流の最大値 \(I_0 = 3 \, \text{A}\) を読み取ります。
\(V_0 = (2\pi f L) I_0\) の式に、\(V_0=120 \, \text{V}\), \(f=50 \, \text{Hz}\), \(I_0=3 \, \text{A}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
120 &= (2\pi \times 50 \times L) \times 3 \\[2.0ex]
120 &= 300\pi L \\[2.0ex]
L &= \frac{120}{300\pi} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{5\pi}
\end{aligned}
$$
ここで \(\pi \approx 3.14\) を用いて近似計算すると、
$$
\begin{aligned}
L &\approx \frac{2}{5 \times 3.14} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{15.7} \\[2.0ex]
&\approx 0.127… \\[2.0ex]
&\approx 0.13 \, \text{H}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、グラフの波の形から基本的な情報を読み取ります。波が1回振動するのにかかる時間(周期)は \(0.02\) 秒なので、1秒間に振動する回数(周波数)は逆数の \(50\) ヘルツ(Hz)です。これは家庭用のコンセントと同じ周波数です。電圧の最大値は \(120\) Vですが、交流のパワーを表す実効値に直すには \(\sqrt{2}\) で割って、約 \(84.8\) Vとなります。
次に、素子の正体を探ります。グラフで電圧の波の山(\(t=0.015\)秒)と電流の波の山(\(t=0.020\)秒)を見比べると、電流の山の方が少し遅れてやってきています。交流回路で電流を「遅刻」させる素子は「コイル」です。
最後に、このコイルの性能(インダクタンス)を計算します。電圧と電流の最大値、そして周波数がわかっているので、コイルの交流に対する「通りにくさ」(リアクタンス)を計算し、そこからインダクタンスを求めると、約 \(0.13\) ヘンリー(H)となります。

結論と吟味

周波数は \(50 \, \text{Hz}\)、電圧の実効値は約 \(84.8 \, \text{V}\) となります。
また、電圧と電流の位相差をグラフのピークの時刻から判断し、電流が電圧より遅れていることから、素子はコイルであると特定できました。そのインダクタンスは約 \(0.13 \, \text{H}\) と計算されました。
一連の計算は交流回路の基本的な法則に則っており、妥当な結果です。グラフのピークの時間差は \(0.005\) 秒であり、これは周期 \(0.02\) 秒の \(1/4\) に相当します。これは位相差が \(\pi/2\) (\(90^\circ\)) であることに対応しており、純粋なコイルであるという仮定と矛盾しません。

解答
周波数: \(50 \, \text{Hz}\)
電圧の実効値: \(60\sqrt{2} \, \text{V}\) (または \(84.8 \, \text{V}\))
素子: コイル
インダクタンス: \(\displaystyle\frac{2}{5\pi} \, \text{H}\) (または \(0.13 \, \text{H}\))

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 交流回路における各素子の位相差:
    • 核心: この問題の根幹は、交流電圧をかけたときに、抵抗・コイル・コンデンサーで電流の位相がどのように変化するか、という各素子の基本的な性質を理解しているかどうかに尽きます。グラフの波形からこの位相差を読み取ることが、素子を特定するための決定的な鍵となります。
    • 理解のポイント:
      • 抵抗 (R): 電圧と電流の間に障害は何もなく、完全に足並みが揃います(同位相)。電圧が最大なら電流も最大、電圧がゼロなら電流もゼロです。
      • コイル (L): コイルは電流の変化を妨げる性質(自己誘導)を持ちます。電圧が最大になって電流を増やそうとしても、コイルの抵抗でのろのろとしか増えません。結果として、電流のピークは電圧のピークより90°(\(\pi/2\))遅れます
      • コンデンサー (C): コンデンサーは電圧の変化率に応じて電流が流れます。電圧のグラフの傾きが最大のとき(つまり、電圧がゼロを横切る瞬間)に電流が最大になります。結果として、電流のピークは電圧のピークより90°(\(\pi/2\))進みます
    • 覚え方: 電圧を基準に「コイルは電流が遅れる」「コンデンサーは電流が進む」と覚えるのが一般的です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • RLC直列回路: 抵抗・コイル・コンデンサーが直列につながった回路。この場合、電圧と電流の位相差は、コイルとコンデンサーの力関係(リアクタンスの大小)によって決まり、0°から90°の間のいずれかの値をとります。位相差から回路全体の性質(誘導性か容量性か)を判断する問題に応用できます。
    • 共振回路: RLC回路で、コイルとコンデンサーのリアクタンスが等しくなり(\(X_L=X_C\))、互いの効果を打ち消し合う「共振」という現象。このとき、回路は純粋な抵抗のように振る舞い、電圧と電流は同位相になります。共振周波数を求める問題は頻出です。
    • 消費電力を求める問題: 交流回路で電力を消費するのは抵抗だけです。コイルとコンデンサーはエネルギーを蓄えたり放出したりするだけで、平均的な消費電力はゼロです。素子を特定した後、その消費電力を問う問題では、コイルやコンデンサーなら \(0 \, \text{W}\)、抵抗なら \(P = V_e I_e\) で計算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 周期と振幅の読み取り: まずはグラフの全体像を把握し、横軸から周期\(T\)、縦軸から電圧と電流の最大値\(V_0, I_0\)を読み取ります。軸の単位(\(\times 10^{-2}\)など)に細心の注意を払います。
    2. 位相差の定性的判断: グラフのピーク(山)の位置関係を見ます。「電圧の山 \(\rightarrow\) 電流の山」の順なら「電流は遅れ \(\rightarrow\) コイル」。「電流の山 \(\rightarrow\) 電圧の山」の順なら「電流は進み \(\rightarrow\) コンデンサー」。山が同時なら「同位相 \(\rightarrow\) 抵抗」。まずはこの定性的な判断をします。
    3. 位相差の定量的判断: ピークの時間差 \(\Delta t\) を読み取り、周期 \(T\) と比較します。\(\Delta t\) が \(T/4\) になっていれば、位相差は90°(\(\pi/2\))であり、純粋なコイルまたはコンデンサーであると確定できます。
    4. リアクタンスの計算: \(V_0 = X I_0\) の関係から、リアクタンス \(X\) を求めます。
    5. 特性値の計算: リアクタンスの公式(\(X_L = 2\pi f L\) または \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\))を使い、インダクタンス \(L\) や電気容量 \(C\) を求めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 位相の「進み」と「遅れ」の誤認:
    • 誤解: \(t=0\) の点だけを見て、電流\(i\)が正の値で電圧\(v\)が0なので「電流が進んでいる」と早合点してしまう。
    • 対策: 位相差は波全体の形で判断する必要があります。最も確実なのは、同じ特徴を持つ点、例えば「正の最大値(ピーク)」同士を比較することです。時間軸上で後からピークが来る方が「遅れ」です。あるいは、「ゼロを横切って正になる瞬間」を比較しても同じ結果が得られます(電圧は\(t=1.0 \times 10^{-2}\)sで、電流は\(t=1.5 \times 10^{-2}\)sでゼロから正になるので、電流が遅れているとわかる)。
  • 最大値と実効値の混同:
    • 誤解: リアクタンスの計算で \(V_e = X I_e\) とすべきところを \(V_0 = X I_e\) のように、最大値と実効値を混ぜて使ってしまう。
    • 対策: オームの法則に似た関係式は、最大値同士 (\(V_0 = X I_0\)) または実効値同士 (\(V_e = X I_e\)) のどちらかで統一して使う、と徹底しましょう。グラフから直接読み取れるのは最大値なので、\(V_0 = X I_0\) を使うのが一般的で間違いが少ないです。
  • 角周波数 \(\omega\) と周波数 \(f\) の混同:
    • 誤解: リアクタンスの公式で \(X_L = fL\) や \(X_C = 1/fC\) のように、\(2\pi\) を忘れてしまう。
    • 対策: \(\omega\) は「角」周波数で単位は [rad/s]、\(f\) は周波数で単位は [Hz] であり、両者は \(\omega = 2\pi f\) という関係にあることを明確に区別して覚えることが重要です。「1秒間に\(f\)回転するなら、角度では \(f \times 2\pi\) ラジアン進む」というイメージを持つと忘れにくくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 位相差による素子の特定:
    • 選定理由: 抵抗、コイル、コンデンサーという3つの基本的な受動素子は、交流に対する応答(特に位相)がそれぞれ全く異なるため、位相差は素子の種類を特定するための「指紋」のような役割を果たします。
    • 適用根拠: これは各素子の電圧と電流の関係式に由来します。
      • 抵抗: \(v_R = Ri\)。\(v\)と\(i\)は単純な比例関係なので同位相。
      • コイル: \(v_L = L\displaystyle\frac{di}{dt}\)。電流\(i\)が\(\sin\)関数なら、その微分である電圧\(v\)は\(\cos\)関数となり、位相が90°進みます(逆に言えば、電流は電圧より90°遅れます)。
      • コンデンサー: \(i_C = C\displaystyle\frac{dv_C}{dt}\)。電圧\(v\)が\(\sin\)関数なら、その微分である電流\(i\)は\(\cos\)関数となり、位相が90°進みます。
  • 交流のオームの法則 (\(V_0 = X I_0\)):
    • 選定理由: 素子を特定した後、その特性値(\(L\)や\(C\))を求めるには、電圧と電流の「大きさ」の関係を数式化する必要があります。この関係を直流のオームの法則と同じ形式で扱えるように導入されたのがリアクタンス\(X\)です。
    • 適用根拠: 上記の微分関係式から、電圧と電流の振幅(最大値)の関係を計算すると、\(V_0 = (L\omega) I_0\) や \(V_0 = (\displaystyle\frac{1}{C\omega}) I_0\) となります。この比例定数部分をそれぞれ \(X_L\), \(X_C\) と定義したものがリアクタンスであり、この関係式は物理法則から直接導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの読み取りを丁寧に行う: 周期や最大値を読み取る際に、1目盛りがいくらに相当するのかをしっかり確認します。特に、今回のようにピークが目盛りと目盛りの間に来る場合は、対称性などから正確な位置を判断します。
  • 単位換算を忘れない: 横軸の \(\times 10^{-2}\) のような接頭辞を見落とすと、計算結果が100倍ずれるなど、致命的なミスにつながります。計算を始める前に、読み取った数値を \(T = 2.0 \times 10^{-2}\) のように、基本単位[s]に直してから使うのが安全です。
  • \(\sqrt{2}\) や \(\pi\) の扱い: 問題が有効数字を要求しているか、あるいは文字式のままで良いかを確認します。近似値計算が必要な場合は、\(\sqrt{2} \approx 1.41\), \(\pi \approx 3.14\) を用いて計算しますが、特に指定がなければ分数の形 (\(60\sqrt{2}\) や \(\displaystyle\frac{2}{5\pi}\)) で答えるのが最も正確です。
  • 逆算の練習: \(L = \displaystyle\frac{V_0}{2\pi f I_0}\) のように、最終的に求める文字について式を整理してから数値を代入する癖をつけると、計算途中のミスが減り、検算もしやすくなります。
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83 交流のまとめ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 回路の消費電力の別解: 電圧の実効値を用いる解法
      • 模範解答が抵抗を流れる電流の実効値から \(P=RI_e^2\) で計算するのに対し、別解では抵抗にかかる電圧の実効値から \(P=V_e^2/R\) で直接計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の柔軟性向上: 同じ物理量を、異なる公式を用いて導出する経験を積むことで、問題解決能力の幅が広がります。
    • 解法の効率化: 並列回路では各素子にかかる電圧が既知であるため、電流の実効値を経由せずに電圧の実効値から直接電力を計算する方が、計算ステップが少なく簡潔です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「RLC並列交流回路の解析」です。抵抗、コンデンサー、コイルが並列に接続された回路に交流電圧を加えたとき、各素子を流れる電流や回路全体での消費電力がどのように表されるかを問う、交流回路の総合的な理解力を試す問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 並列回路の特性: 並列に接続された各素子には、すべて同じ電圧がかかること。
  2. 各素子の位相関係: 抵抗(R)、コンデンサー(C)、コイル(L)それぞれについて、かかる電圧と流れる電流の位相関係(同位相、\(\pi/2\)進み、\(\pi/2\)遅れ)を正しく理解していること。
  3. キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路の分岐点において、流れ込む電流の和と流れ出す電流の和は等しい。全電流は各素子を流れる電流の和で与えられる。
  4. 交流電力の計算: 交流回路において、時間平均したときに電力を消費するのは抵抗のみであり、その計算には実効値を用いること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 並列回路の特性を利用し、各素子に電圧 \(v = V_0 \sin \omega t\) がかかることを確認します。
  2. 各素子について、リアクタンスを考慮したオームの法則と位相関係を用いて、電流の瞬時値の式を導出します。
  3. 消費電力は抵抗でのみ生じるため、抵抗を流れる電流または抵抗にかかる電圧の実効値を用いて計算します。
  4. 全電流は、キルヒホッフの第1法則に従い、各素子を流れる電流の瞬時値をすべて足し合わせることで求めます。

各素子を流れる電流、消費電力、全電流の導出

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