問題40 小球と斜面とのくり返し衝突 (25 熊本大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: v-tグラフを用いた解法
- 等加速度運動の公式を機械的に適用するのではなく、速度と時間の関係をグラフ化し、幾何学的な性質(直線の傾きと面積)から直感的に時間を求めます。
- 設問(3)の別解: 速度のx成分を用いた表現
- 模範解答が初速 \(V\) を用いるのに対し、別解では変化しない \(x\) 成分 \(u_0\) と幾何学的関係を用いて \(v_1\) を表します。
- 設問(6)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式から無限級数まで)
- 設問(1)〜(6)の全プロセスを、ニュートンの運動方程式から出発して一貫して導出します。個別の公式暗記に頼らず、物理原理から現象を記述する力を養います。
- 設問(2)の別解: v-tグラフを用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- v-tグラフ: 運動の全体像を可視化でき、計算ミスを防ぎやすくなります。
- 微積分: 複雑な設定でも基本原理に立ち返ることで解法を見失わずに済みます。特に大学入試の難問では必須のスキルです。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「斜面上の放物運動と跳ね返りの繰り返し」です。斜面方向と斜面垂直方向に運動を分解し、衝突による速度変化を数列として捉える点が特徴です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の独立性: 斜面に沿った方向(\(x\) 方向)と、斜面に垂直な方向(\(y\) 方向)の運動は、互いに独立して扱うことができます。
- 等加速度直線運動: 重力加速度を成分分解することで、各方向について等加速度運動の公式が適用できます。
- 反発係数(はねかえり係数): 衝突直前と直後の相対速度の比は一定(\(e\))になります。
- 数列の和: 衝突を繰り返すごとに減少する物理量を、等比数列として扱い、その総和(無限級数)を計算します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、初回の衝突と飛行について、成分ごとに運動を解析し、基礎的な物理量を求めます。
- (4)では、衝突ごとの速度の変化を漸化式で表し、一般項を導出します。
- (5)〜(6)では、得られた時間の数列の和を計算し、無限回衝突した極限を考えます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、衝突直前の速度ベクトルを斜面方向(\(x\) 方向)と斜面垂直方向(\(y\) 方向)に分解します。
次に、衝突による速度変化を考えます。斜面はなめらかなので摩擦力は働かず、\(x\) 成分は変化しません。一方、\(y\) 成分は床(斜面)との衝突により、反発係数 \(e\) に従って向きが逆転し、大きさが変化します。
この設問における重要なポイント
- 速度の分解: 鉛直下向きの速度 \(V\) を、斜面に平行な成分と垂直な成分に正しく分解すること。
- 衝突の条件: なめらかな面との衝突では、面平行成分は保存し、面垂直成分のみが反発係数の影響を受けること。
具体的な解説と立式
図aを参照して、衝突直前の速度ベクトルを分解します。
鉛直下向きと斜面垂直方向のなす角は \(\theta\) です。
衝突直前の速度の \(x\) 成分を \(v_{x\text{直前}}\)、\(y\) 成分を \(v_{y\text{直前}}\) と置きます。
$$
\begin{aligned}
v_{x\text{直前}} &= V \sin\theta \\[2.0ex]
v_{y\text{直前}} &= -V \cos\theta
\end{aligned}
$$
(\(y\) 軸は斜面垂直上向きなので、直前の成分は負になります。)
衝突直後の速度成分を \(u_0\)(\(x\) 成分)、\(v_0\)(\(y\) 成分)とします。
斜面はなめらかなので、\(x\) 成分は変化しません。
$$
\begin{aligned}
u_0 &= v_{x\text{直前}}
\end{aligned}
$$
\(y\) 成分については、反発係数 \(e\) の定義式を用います。床は動かないので、速度成分の比のみを考えます。
$$
\begin{aligned}
e &= – \frac{v_0}{v_{y\text{直前}}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 反発係数の定義: \(e = – \frac{v’}{v}\)
\(x\) 成分について計算します。
$$
\begin{aligned}
u_0 &= V \sin\theta
\end{aligned}
$$
\(y\) 成分について、反発係数の式を変形して計算します。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= -e \cdot v_{y\text{直前}} \\[2.0ex]
&= -e \cdot (-V \cos\theta) \\[2.0ex]
&= eV \cos\theta
\end{aligned}
$$
ボールが斜面にドスンとぶつかる直前の様子を想像してください。ボールは真下に落ちてきますが、斜面から見ると「斜面に沿って滑り落ちる勢い」と「斜面に垂直に突っ込む勢い」の2つを持っています。
ぶつかった瞬間、ツルツルの斜面なので「滑る勢い」はそのまま変わりません。しかし、「突っ込む勢い」は斜面に跳ね返されて、逆向きの「飛び出す勢い」に変わります。このとき、勢いは少し弱まって \(e\) 倍になります。
\(u_0 = V \sin\theta\)、\(v_0 = eV \cos\theta\) となりました。
\(0 < \theta < \pi/2\) なので \(u_0 > 0\)、\(v_0 > 0\) であり、図の向きと一致します。また \(0 < e < 1\) なので、跳ね返り後の垂直速度は直前より小さくなります。これは物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
衝突後、小球は空中に飛び出します。この間の運動を \(x\) 方向と \(y\) 方向で別々に考えます。
特に「再び斜面に衝突する(点 \(\text{P}_1\) に到達する)」という条件は、\(y\) 座標が再び \(0\) になることを意味します。
\(y\) 方向の運動は、初速度 \(v_0\)、加速度 \(-g \cos\theta\) の等加速度直線運動(投げ上げ運動)と同じです。
この設問における重要なポイント
- 重力の分解: 重力加速度 \(g\) も \(x\) 成分 \(g \sin\theta\) と \(y\) 成分 \(-g \cos\theta\) に分解して考えます。
- 再衝突条件: 「斜面に戻ってくる」 \(\Leftrightarrow\) 「\(y\) 座標が \(0\) になる(\(t \neq 0\))」
具体的な解説と立式
\(y\) 方向の運動方程式を立てます。小球の質量を \(m\)、\(y\) 方向の加速度を \(a_y\) とします。
$$
\begin{aligned}
m a_y &= -mg \cos\theta
\end{aligned}
$$
これより、加速度は一定値 \(a_y = -g \cos\theta\) となります。
時刻 \(t\) における \(y\) 座標を表す式は、等加速度直線運動の公式より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
y &= v_0 t + \frac{1}{2} a_y t^2
\end{aligned}
$$
点 \(\text{P}_1\) に到達する時刻を \(t_1\) とすると、このとき \(y=0\) となります(ただし \(t_1 > 0\))。
$$
\begin{aligned}
0 &= v_0 t_1 + \frac{1}{2} (-g \cos\theta) t_1^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
先ほどの式を \(t_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v_0 t_1 – \frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t_1^2 &= 0 \\[2.0ex]
t_1 \left( v_0 – \frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t_1 \right) &= 0
\end{aligned}
$$
\(t_1 > 0\) なので、括弧の中身が \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
v_0 – \frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t_1 &= 0 \\[2.0ex]
\frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t_1 &= v_0 \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{2v_0}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$
斜面から垂直に飛び出したボールは、重力に引かれてだんだん遅くなり、最高点に達してから落ちてきて、また斜面にぶつかります。
この「行って帰ってくる」運動は、真上にボールを投げ上げるのと同じです。ただし、斜面の上なので重力の効果が少し弱まり(\(g\) ではなく \(g \cos\theta\))、その分だけ滞空時間が長くなります。
\(t_1 = \frac{2v_0}{g \cos\theta}\) です。
初速度 \(v_0\) が大きいほど滞空時間は長く、重力効果 \(g \cos\theta\) が大きいほど短くなるため、直感と一致します。
思考の道筋とポイント
\(y\) 方向の速度 \(v_y\) の時間変化をグラフにします。
加速度が負の定数なので、グラフは右下がりの直線になります。
「変位が \(0\) になる」ことは、\(v-t\) グラフと \(t\) 軸で囲まれた面積(正の部分と負の部分の和)が \(0\) になることに対応します。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフの面積: グラフと横軸で囲まれた面積は移動距離(変位)を表します。
- 対称性: 投げ上げ運動では、上昇時間と下降時間は等しくなります。
具体的な解説と立式
\(y\) 方向の初速度は \(v_0\)、加速度は \(-g \cos\theta\) です。
時刻 \(t\) における速度 \(v_y\) は以下の直線の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
v_y &= v_0 – (g \cos\theta) t
\end{aligned}
$$
\(t=0\) から \(t=t_1\) までの変位 \(y\) は、\(v_y – t\) グラフの面積に相当します。
出発点に戻る(\(y=0\))ためには、グラフの正の面積(上昇分)と負の面積(下降分)が打ち消し合う必要があります。
運動の対称性より、最高点(\(v_y=0\))に達する時間は \(t_1/2\) であり、そのときの速度変化は \(v_0\) です。
グラフの傾きの大きさは加速度の大きさ \(g \cos\theta\) に等しいので、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\text{速度変化}}{\text{時間}} &= \text{加速度の大きさ} \\[2.0ex]
\frac{v_0}{t_1 / 2} &= g \cos\theta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 加速度の定義: \(a = \frac{\Delta v}{\Delta t}\)
この式を \(t_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2v_0}{t_1} &= g \cos\theta \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{2v_0}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$
速度のグラフを描くと、綺麗な三角形が2つできます。
「登り」にかかる時間と「下り」にかかる時間は同じです。
「登り」だけで速度は \(v_0\) から \(0\) になるので、その時間は \(v_0\) を減速パワー(加速度)で割れば求まります。全体の時間はその2倍です。
メインの解法と同じ結果が得られました。グラフの対称性を利用することで、計算の見通しが良くなります。
問(3)
思考の道筋とポイント
\(\text{P}_1\) に衝突した「直後」の速度の \(y\) 成分 \(v_1\) を求めます。
まず、衝突「直前」の速度を考えます。放物運動の対称性により、同じ高さ(斜面上)に戻ってきたときの速度の \(y\) 成分は、初速度と大きさが同じで向きが逆になります。
その後、衝突によって速度がどう変化するかを反発係数を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 運動の対称性: 空気抵抗がない場合、投げ上げた物体が元の高さに戻ったとき、速さは同じになります。
- 衝突の反復: 1回目の衝突と同様に、反発係数 \(e\) を適用します。
具体的な解説と立式
\(\text{P}_1\) に衝突する直前の速度の \(y\) 成分を \(v_{y\text{直前}}\) とします。
(2)の運動方程式(等加速度運動)より、時刻 \(t_1\) での速度は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_{y\text{直前}} &= v_0 – g \cos\theta \cdot t_1
\end{aligned}
$$
次に、衝突直後の \(y\) 成分 \(v_1\) を求めます。反発係数の定義より、
$$
\begin{aligned}
e &= – \frac{v_1}{v_{y\text{直前}}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 速度の式: \(v = v_0 + at\)
- 反発係数の定義: \(e = – \frac{v’}{v}\)
まず \(v_{y\text{直前}}\) を計算します。(2) の結果 \(t_1 = \frac{2v_0}{g \cos\theta}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_{y\text{直前}} &= v_0 – g \cos\theta \cdot \frac{2v_0}{g \cos\theta} \\[2.0ex]
&= v_0 – 2v_0 \\[2.0ex]
&= -v_0
\end{aligned}
$$
次に、反発係数の式に \(v_{y\text{直前}} = -v_0\) を代入して \(v_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= -e \cdot (-v_0) \\[2.0ex]
&= e v_0
\end{aligned}
$$
ボールが戻ってきたとき、斜面に突っ込む速さは、飛び出したときの速さ \(v_0\) と全く同じです。
そして、再び斜面で跳ね返ります。跳ね返るたびに速さは \(e\) 倍になるので、今回の速さ \(v_1\) は \(v_0\) の \(e\) 倍になります。
\(v_1 = e v_0\) です。衝突するたびに垂直方向の速度成分が \(e\) 倍に減衰していくことがわかります。
思考の道筋とポイント
問題文には「\(m, e, g, \theta, v_0, u_0\) のうち必要なものを用いて」とあります。
\(v_0\) を使わずに、\(x\) 成分 \(u_0\) を用いて表現することも可能です。
初期状態の幾何学的関係に着目します。
この設問における重要なポイント
- 変数の変換: \(V\) を消去し、\(u_0\) と \(v_0\) の関係を導くこと。
具体的な解説と立式
問(1)より、以下の関係があります。
$$
\begin{aligned}
u_0 &= V \sin\theta \\[2.0ex]
v_0 &= eV \cos\theta
\end{aligned}
$$
この2式から \(V\) を消去して、\(v_0\) と \(u_0\) の関係を導きます。
上の式より \(V = \frac{u_0}{\sin\theta}\) なので、これを下の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= e \left( \frac{u_0}{\sin\theta} \right) \cos\theta
\end{aligned}
$$
これを用いると、\(v_1\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= e v_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三角関数の定義: \(\tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta}\)
まず \(v_0\) を \(u_0\) で表します。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= \frac{e u_0 \cos\theta}{\sin\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{e u_0}{\tan\theta}
\end{aligned}
$$
これを \(v_1\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= e \cdot \frac{e u_0}{\tan\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{e^2 u_0}{\tan\theta}
\end{aligned}
$$
最初の衝突のとき、ボールの速度成分 \(u_0\) と \(v_0\) の間には、角度 \(\theta\) と反発係数 \(e\) を通じた決まった比率があります。
この関係を使うと、\(v_0\) という記号を使わずに、\(u_0\) を使って答えを書くこともできます。
\(v_1 = \frac{e^2 u_0}{\tan\theta}\) という表現も可能です。これは \(V\) が未知で \(u_0\) が既知の場合などに有用です。模範解答の注釈にもある通り、これも正解となり得ます。
問(4)
思考の道筋とポイント
\(n\) 回目の飛行(\(\text{P}_{n-1} \to \text{P}_n\))にかかる時間 \(t_n\) を求めます。
(3)の結果から、衝突するたびに \(y\) 方向の初速度が \(e\) 倍になるという規則性(漸化式)が見えてきます。
これを利用して、\(n\) 回目の飛行の初速度 \(v_{n-1}\) を求め、それを用いて \(t_n\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 数列的思考: 物理現象を漸化式 \(v_k = e v_{k-1}\) として捉えること。
- 添字の対応: \(t_n\) は「\(n\) 回目の飛行」であり、その初速度は「\(n-1\) 回目の衝突直後」の速度 \(v_{n-1}\) であることに注意。
具体的な解説と立式
\(k\) 回目の衝突直後の \(y\) 成分を \(v_k\) とします。
(3)と同様の議論により、衝突のたびに速度は \(e\) 倍になるので、以下の漸化式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
v_k &= e v_{k-1}
\end{aligned}
$$
これより、\(v_{n-1}\) は初項 \(v_0\)、公比 \(e\) の等比数列の第 \(n\) 項(\(0\) スタートなら \(n-1\) 乗)として表せます。
$$
\begin{aligned}
v_{n-1} &= e^{n-1} v_0
\end{aligned}
$$
次に、飛行時間 \(t_n\) を考えます。
(2)の結果 \(t_1 = \frac{2v_0}{g \cos\theta}\) は、初速度が \(v_0\) のときの時間でした。
\(n\) 回目の飛行の初速度は \(v_{n-1}\) なので、\(t_n\) は \(v_0\) を \(v_{n-1}\) に置き換えるだけで求まります。
$$
\begin{aligned}
t_n &= \frac{2v_{n-1}}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等比数列の一般項: \(a_n = a_1 r^{n-1}\)
上の式に \(v_{n-1} = e^{n-1} v_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
t_n &= \frac{2 \cdot (e^{n-1} v_0)}{g \cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2 e^{n-1} v_0}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$
1回跳ね返るごとに、飛び出すスピードは \(e\) 倍になります。
滞空時間は飛び出すスピードに比例するので、滞空時間も毎回 \(e\) 倍になっていきます。
最初は \(t_1\) でした。次は \(e \times t_1\)、その次は \(e^2 \times t_1\) … となります。
\(n\) 回目の飛行時間は、\(e\) を \(n-1\) 回掛けたものになります。
\(t_n = \frac{2 e^{n-1} v_0}{g \cos\theta}\) です。
\(n=1\) のとき \(t_1 = \frac{2 v_0}{g \cos\theta}\) となり、(2)の結果と一致します。
\(0 < e < 1\) なので、回数を重ねるごとに時間は短くなっていきます。これは弾む高さが低くなっていく現象と対応しており妥当です。
問(5)
思考の道筋とポイント
\(\text{P}_0\) から \(\text{P}_n\) までの合計時間 \(T_n\) は、各区間の飛行時間 \(t_1, t_2, \dots, t_n\) の総和です。
(4)より、数列 \(\{t_n\}\) は公比 \(e\) の等比数列であることがわかっています。
等比数列の和の公式を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 等比数列の和: 初項 \(a\)、公比 \(r\)、項数 \(n\) の等比数列の和は \(S_n = \frac{a(1-r^n)}{1-r}\)。
具体的な解説と立式
合計時間 \(T_n\) は以下の和で表されます。
$$
\begin{aligned}
T_n &= t_1 + t_2 + \dots + t_n \\[2.0ex]
&= \sum_{k=1}^{n} t_k
\end{aligned}
$$
ここで、\(t_k = t_1 \cdot e^{k-1}\) です。
つまり、初項 \(t_1\)、公比 \(e\) の等比数列の和となります。
$$
\begin{aligned}
T_n &= t_1 \frac{1 – e^n}{1 – e}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等比数列の和の公式
\(t_1 = \frac{2v_0}{g \cos\theta}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T_n &= \frac{2v_0}{g \cos\theta} \cdot \frac{1 – e^n}{1 – e}
\end{aligned}
$$
さらに、(1)の結果 \(v_0 = eV \cos\theta\) を代入して、\(V\) を用いた式にします。
$$
\begin{aligned}
T_n &= \frac{2 (eV \cos\theta)}{g \cos\theta} \cdot \frac{1 – e^n}{1 – e} \\[2.0ex]
&= \frac{2eV}{g} \cdot \frac{1 – e^n}{1 – e}
\end{aligned}
$$
これまでの飛行時間を全部足し合わせます。
時間は毎回 \(e\) 倍になっていくので、これは「等比数列の足し算」です。
数学の公式を使って計算すると、シンプルな形にまとまります。
\(T_n = \frac{2eV}{g} \cdot \frac{1 – e^n}{1 – e}\) です。
単位を確認すると、\([V]/[g] = (\text{m}/\text{s}) / (\text{m}/\text{s}^2) = \text{s}\) となり、時間の次元を持っています。
また、\(e \to 1\) (完全弾性衝突に近い)の場合、分母が \(0\) に近づき時間は無限大に発散します(減衰しないので無限に跳ね続ける)。これも物理的に妥当です。
問(6)
思考の道筋とポイント
「限りなく多くの衝突をくり返した後」とは、\(n \to \infty\) の極限を考えることです。
(5)で求めた \(T_n\) の式において、\(n \to \infty\) としたときの極限値 \(T\) を求めます。
\(0 < e < 1\) であることが鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 無限等比級数の収束: 公比の絶対値が1未満(\(|r| < 1\))のとき、\(r^n \to 0\) となり、級数は収束します。
具体的な解説と立式
求める合計時間 \(T\) は、\(T_n\) の極限です。
$$
\begin{aligned}
T &= \lim_{n \to \infty} T_n
\end{aligned}
$$
反発係数 \(e\) は \(0 < e < 1\) の範囲にあるため、\(n\) が無限大になると \(e^n\) は \(0\) に収束します。
$$
\begin{aligned}
\lim_{n \to \infty} e^n &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 極限の性質: \(0 < r < 1 \Rightarrow \lim_{n \to \infty} r^n = 0\)
(5)の式で極限をとります。
$$
\begin{aligned}
T &= \lim_{n \to \infty} \frac{2eV}{g} \cdot \frac{1 – e^n}{1 – e} \\[2.0ex]
&= \frac{2eV}{g} \cdot \frac{1 – 0}{1 – e} \\[2.0ex]
&= \frac{2eV}{g(1-e)}
\end{aligned}
$$
ボールは無限回跳ね返りますが、跳ね返るたびに時間はどんどん短くなっていきます。
「無限回足す」といっても、足す数が急速にゼロに近づいていくので、合計時間は無限大にはならず、ある決まった値(有限の値)に落ち着きます。これが「無限等比級数の和」です。
最終的にボールは弾まなくなり、斜面を滑り落ち始めます。その瞬間までの時間が求まりました。
\(T = \frac{2eV}{g(1-e)}\) です。
\(e\) が小さい(跳ね返りにくい)ほど、分母の \(1-e\) は大きくなり、分子の \(e\) は小さくなるため、時間は短くなります。
逆に \(e\) が \(1\) に近いと時間は非常に長くなります。これらは直感と合致します。
思考の道筋とポイント
これまでの設問を、個別の公式ではなく、ニュートンの運動方程式という一つの原理から一貫して導出します。
運動方程式を積分して位置と速度を求め、衝突条件(\(y=0\))と反発条件(速度の跳躍)を境界条件として適用することで、全ての物理量を導きます。
この設問における重要なポイント
- 原理からの導出: 運動方程式 \(ma=F\) が全ての出発点であること。
- 境界条件の適用: 衝突の瞬間における位置と速度の関係を数式化すること。
具体的な解説と立式
1. 運動方程式の立式と積分
斜面垂直方向(\(y\) 方向)の運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{d^2 y}{dt^2} &= -mg \cos\theta
\end{aligned}
$$
両辺を \(m\) で割り、時刻 \(t\) で積分して速度 \(v_y(t)\) を求めます。\(k\) 回目の衝突直後(時刻 \(t=0\) と再定義)の初速度を \(v_{k-1}\) とします。
$$
\begin{aligned}
\frac{dy}{dt} &= v_{k-1} – (g \cos\theta) t
\end{aligned}
$$
さらに積分して位置 \(y(t)\) を求めます。初期位置は \(y(0)=0\) です。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= v_{k-1} t – \frac{1}{2} (g \cos\theta) t^2
\end{aligned}
$$
2. 衝突時間の導出
次の衝突時刻 \(t_k\) では再び \(y(t_k)=0\) (\(t_k > 0\))となります。
$$
\begin{aligned}
v_{k-1} t_k – \frac{1}{2} (g \cos\theta) t_k^2 &= 0 \\[2.0ex]
t_k \left( v_{k-1} – \frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t_k \right) &= 0
\end{aligned}
$$
これより、\(k\) 回目の飛行時間 \(t_k\) が求まります。
$$
\begin{aligned}
t_k &= \frac{2v_{k-1}}{g \cos\theta} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
3. 衝突による速度更新(漸化式の導出)
衝突直前の速度 \(v_{y\text{直前}}\) は、速度の式に \(t=t_k\) を代入して求めます。
$$
\begin{aligned}
v_{y\text{直前}} &= v_{k-1} – g \cos\theta \cdot \left( \frac{2v_{k-1}}{g \cos\theta} \right) \\[2.0ex]
&= -v_{k-1}
\end{aligned}
$$
衝突直後の速度 \(v_k\) は、反発係数 \(e\) の定義 \(v_k = -e v_{y\text{直前}}\) より、
$$
\begin{aligned}
v_k &= -e (-v_{k-1}) \\[2.0ex]
&= e v_{k-1}
\end{aligned}
$$
この漸化式より、\(v_k = e^k v_0\) が導かれます。
4. 全体の時間の計算
合計時間 \(T\) は無限級数の和として計算されます。
$$
\begin{aligned}
T &= \sum_{k=1}^{\infty} t_k
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 微積分の基本定理
- 無限等比級数の和: \(\sum r^k = \frac{1}{1-r}\)
式①に \(v_{k-1} = e^{k-1} v_0\) を代入すると、\(t_k = \frac{2 e^{k-1} v_0}{g \cos\theta}\) となります。
これを \(T\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \sum_{k=1}^{\infty} \frac{2 e^{k-1} v_0}{g \cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2v_0}{g \cos\theta} \sum_{k=0}^{\infty} e^k
\end{aligned}
$$
無限等比級数の和の公式 \(\sum_{k=0}^{\infty} r^k = \frac{1}{1-r}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2v_0}{g \cos\theta} \cdot \frac{1}{1-e}
\end{aligned}
$$
最後に \(v_0 = eV \cos\theta\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2 (eV \cos\theta)}{g \cos\theta (1-e)} \\[2.0ex]
&= \frac{2eV}{g(1-e)}
\end{aligned}
$$
運動方程式というたった一つのルールからスタートし、積分を使って位置と速度を追いかけました。
「地面に着いたら跳ね返る」というルールを数式で繰り返し適用することで、無限回の衝突の合計時間まで一気に計算できました。
物理の基本原理がいかに強力であるかがわかります。
運動方程式から出発し、積分と数列の知識を組み合わせることで、設問(1)〜(6)の全ての結果を体系的に導くことができました。物理現象の背後にある数学的構造が明確になります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動の独立性と成分分解
- 核心: 斜面上の運動を「斜面に平行な等速(または等加速度)運動」と「斜面に垂直な等加速度運動」に分解し、それぞれ独立して扱うことができるという原理です。
- 理解のポイント:
- 重力加速度 \(g\) も斜面成分 \(g \sin\theta\) と垂直成分 \(g \cos\theta\) に分解します。
- 衝突(跳ね返り)の影響を受けるのは、斜面に垂直な成分(\(y\) 成分)のみであり、平行成分(\(x\) 成分)は保存されます(なめらかな面の場合)。
- 反発係数と無限等比級数
- 核心: 衝突のたびに速度が一定の割合 \(e\) で減少するという物理現象を、数学的な「等比数列」としてモデル化し、その総和を無限級数として計算します。
- 理解のポイント:
- 速度が \(e\) 倍になると、滞空時間も \(e\) 倍、到達高さは \(e^2\) 倍になります。
- 無限回衝突しても、時間が無限大になるわけではなく、ある有限の値に収束するという直感的な理解が重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 床でのバウンド: 斜面ではなく水平な床でボールが弾む問題。重力の分解が不要(\(g\) そのまま)になるだけで、本質的な構造は全く同じです。
- 空気抵抗がある場合の減衰: 速度に比例する抵抗を受ける場合など、運動方程式が微分方程式となり、その解が指数関数的に減衰するパターン。微積分アプローチが威力を発揮します。
- 初見の問題での着眼点:
- 座標軸の設定: 斜面に沿った方向と垂直な方向に軸を取り、力(重力)を分解することから始めます。
- 1サイクルの解析: \(n\) 回目と \(n+1\) 回目の関係(漸化式)を見つけるために、まずは「1回の衝突と飛行」を丁寧に立式します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 重力加速度の分解ミス:
- 誤解: 斜面垂直方向の加速度を \(g\) そのまま、あるいは \(g \sin\theta\) と間違えてしまう。
- 対策: 図を描き、直角三角形の相似を利用して角度 \(\theta\) の位置を確認する習慣をつけましょう。「斜面が水平(\(\theta=0\))なら \(g\) になるはず」という極限チェックも有効です。
- 衝突直前・直後の混同:
- 誤解: 反発係数の式 \(e = -v’/v\) を使う際、分母と分子のどちらが直前・直後か、あるいは符号を逆にしてしまう。
- 対策: 「跳ね返った後は速度が小さくなる(\(|v’| < |v|\))」かつ「向きが逆になる」ことを常に意識し、計算結果の符号と大きさを必ず吟味しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 等加速度直線運動の公式:
- 選定理由: 斜面垂直方向には一定の重力成分しか働かないため、加速度が一定であることは明らかだからです。
- 適用根拠: 運動方程式 \(ma = F\) において \(F\) が定数であれば、\(a\) も定数となり、等加速度運動の公式が厳密に成立します。
- 無限等比級数の和の公式:
- 選定理由: 衝突ごとの時間が \(t_{n} = e t_{n-1}\) という単純な倍数関係(等比数列)になっていることが判明したため、総和計算に最適です。
- 適用根拠: 反発係数 \(e\) が \(0 < e < 1\) の範囲にあるため、公比の絶対値が1未満となり、級数が収束するという数学的条件を満たしています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
- 意識: 答えの式が物理的に正しい単位を持っているか常に確認します。
- 実践: 例えば時間の答えなら、単位は \([T]\) になるはずです。\(\frac{v}{g}\) は \((\text{m}/\text{s}) / (\text{m}/\text{s}^2) = \text{s}\) でOKですが、\(\frac{g}{v}\) なら間違いだと即座に気づけます。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 変数を極端な値(0, 1, \(\infty\))にしたとき、物理的にあり得ない挙動をしないか確認します。
- 実践: \(e=1\)(完全弾性衝突)のとき、時間は無限大になるはずです。答えの分母に \(1-e\) があれば、\(e \to 1\) で分母が0になり全体が発散するので、正しい可能性が高いと判断できます。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
問題41 曲面をもつ台上の小球の運動 (23 京都府大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)(4)(5)の別解: 重心系(重心座標系)を用いた解法
- 模範解答は実験室系(静止した床から見た座標系)で連立方程式を解いていますが、重心系(系全体の重心と共に動く座標系)を用いると、運動量保存則が「重心速度一定(今回は0)」という単純な事実に帰着され、計算が劇的に簡素化されます。特に設問(5)は計算なしで答えが見えるほど強力です。
- 設問(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの保存則の導出)
- 運動量保存則や力学的エネルギー保存則を既知の公式として適用するのではなく、ニュートンの運動方程式から出発し、積分操作を通じてこれらの保存則が成立する理由を数学的に導出します。
- 設問(2)(4)(5)の別解: 重心系(重心座標系)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 重心系: 2物体問題における計算量を大幅に削減でき、衝突やエネルギー変換の物理的本質(相対運動エネルギーと重心運動エネルギーの分離)が見えやすくなります。
- 微積分: 「なぜ保存則が成り立つのか」という根本原理を理解することで、応用問題への対応力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「水平方向に自由に動く台と小球の相互作用」です。
台が固定されていないため、小球が曲面を移動する際に台も反作用を受けて動きます。このとき、水平方向には外力が働かないため「運動量保存則」が成立し、摩擦がないため「力学的エネルギー保存則」が成立します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量保存則: 水平方向には外力が働かないため、小球と台の運動量の総和は保存されます。
- 力学的エネルギー保存則: 摩擦がなく、垂直抗力は仕事をしますが、系全体(小球+台)で見ると仕事は相殺される(あるいは保存力である重力のみが仕事をする)ため、エネルギーは保存されます。
- 相対速度と反発係数: 衝突現象において、跳ね返りの程度を表す係数です。
- 作用・反作用の法則: 小球が台を押す力と、台が小球を押す力は、大きさ等しく逆向きです。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、台が動かない区間を見極め、単純なエネルギー保存則を適用します。
- (2)では、台が動く区間について、運動量保存則とエネルギー保存則を連立させて速度を求めます。
- (3)では、相対速度を用いて到達時間を計算します。
- (4)では、衝突前後の運動量保存則と反発係数の式を連立させます。
- (5)では、最高点の条件(相対速度0)と保存則を用いて高さを求めます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
まずは2週間、無料でこの続きを読んでみませんか?