問題26 (北海道大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、ばねで打ち出された小球が、固定された、あるいは自由に動く斜面台を上る運動を扱います。力学的エネルギー保存則、運動方程式、非慣性系における運動、運動量保存則など、力学の重要概念が複合的に問われる総合問題です。
- 小球の質量: \(m\)、台の質量: \(M\)
- 斜面の傾斜角: \(\theta\)、高さ: \(h\)
- 床と台、小球と台の間はなめらか(摩擦なし)
- 空気抵抗、小球の大きさは無視
- 重力加速度の大きさ: \(g\)
- 図2の選択肢: ①〜⑧の力の向き
- (1) 台が固定されている場合
- ア: ばね定数
- イ: 点Aでの小球の速さ
- ウ: 斜面運動中の小球の加速度の大きさ
- エ: 点AからBまでかかる時間
- あ: 垂直抗力の向き
- オ: 垂直抗力の大きさ
- (2) 台が自由に動ける場合
- カ: 台の水平方向の運動方程式
- い: 慣性力の向き
- キ: 台から見た小球のx軸方向の運動方程式
- ク: 台から見た小球のx軸方向の加速度
- ケ: 小球が到達する最高点の高さ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2) ケの別解: 系全体のエネルギー保存則と運動量保存則を用いる解法
- 主たる解法が、加速する台から見た「非慣性系」での等加速度運動として解くのに対し、別解では床から見た「静止系」で、小球と台を一体の系とみなし、系全体の力学的エネルギー保存則と水平方向の運動量保存則を連立させて解きます。
- 問(2) ケの別解: 系全体のエネルギー保存則と運動量保存則を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理法則の普遍性の確認: 運動方程式(主たる解法)と保存則(別解)という、異なる物理法則から同じ結論が導かれることを体験でき、物理への理解が深まります。
- 視点の多様性の学習: 「非慣性系(台から見る)」と「静止系(床から見る)」という異なる視点から問題を解くことで、状況に応じて最適なアプローチを選択する能力や、思考の柔軟性が養われます。
- 保存則の応用力強化: 2体問題におけるエネルギー保存則と運動量保存則の適用方法、特に「最高点では相対速度が0(=速度が一致する)」という条件をどのように利用するかを具体的に学べます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題は、前半の「台固定」パートと後半の「台自由」パートに大別されます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力学的エネルギー保存則: 摩擦や空気抵抗がない場合、運動エネルギーと位置エネルギー(重力・弾性力)の和は一定に保たれます。
- 運動方程式: 物体の加速度は、物体にはたらく合力に比例し、質量に反比例します (\(ma=F\))。斜面上の運動では、力を斜面に平行・垂直に分解することが基本です。
- 非慣性系と慣性力: 加速している座標系から物体を見ると、観測系の加速度と逆向きに「慣性力」という見かけの力がはたらいているように見えます。これにより、複雑な運動を単純化できます。
- 運動量保存則: ある方向に外力がはたらかない場合、その方向の運動量の合計は一定に保たれます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問(1)では、台が固定されているため、小球の運動のみに着目します。力学的エネルギー保存則と、斜面上の運動に関する運動方程式を立てて解き進めます。
- 問(2)では、台が自由に動くため、小球と台の2つの物体の運動を考えます。問題の誘導に従い、台の運動は床から見た「静止系」で、小球の運動は台から見た「非慣性系」で記述し、それらを連立させて解きます。
問(1) ア
思考の道筋とポイント
小球がばねから打ち出され、最高点Bに達するまでの一連の運動を考えます。この過程で仕事をする非保存力(摩擦や空気抵抗)はないため、系全体の力学的エネルギーは保存されます。ばねを縮めた初期状態と、最高点Bに達した最終状態とで力学的エネルギー保存則の式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 力学的エネルギー保存則が適用できる条件を判断する。
- エネルギーの基準点(ここでは床の高さ)を明確にする。
- 各状態におけるエネルギー(運動エネルギー、位置エネルギー、弾性エネルギー)を正しく記述する。
具体的な解説と立式
ばね定数を\(k\)とします。力学的エネルギー保存則を、ばねを \(\displaystyle\frac{h}{4}\) 縮めた状態(初状態)と、小球が最高点Bに達した状態(終状態)との間で適用します。床の高さを位置エネルギーの基準(\(U=0\))とします。
- 初状態: 小球は静止しているので運動エネルギーは\(0\)。床の高さなので位置エネルギーは\(0\)。ばねは \(\displaystyle\frac{h}{4}\) 縮んでいるので、弾性エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}k\left(\frac{h}{4}\right)^2\)。
- 終状態: 最高点Bで速さが\(0\)になったので運動エネルギーは\(0\)。高さ\(h\)の点にいるので位置エネルギーは\(mgh\)。ばねは小球から離れているので弾性エネルギーは\(0\)。
したがって、力学的エネルギー保存則の式は以下のようになります。
$$ (\text{初状態のエネルギー}) = (\text{終状態のエネルギー}) $$
$$ 0 + 0 + \frac{1}{2}k\left(\frac{h}{4}\right)^2 = 0 + mgh + 0 \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 力学的エネルギー保存則: \(K+U_{\text{重力}}+U_{\text{弾性力}} = \text{一定}\)
式①を \(k\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k \frac{h^2}{16} &= mgh \\[2.0ex]
\frac{kh^2}{32} &= mgh
\end{aligned}
$$
両辺を \(h\) で割り(\(h \neq 0\))、\(k\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{kh}{32} &= mg \\[2.0ex]
k &= \frac{32mg}{h}
\end{aligned}
$$
「エネルギーは形を変えるだけで、全体の量は変わらない」というのが力学的エネルギー保存則です。最初、ばねが持っていた「バネのエネルギー」が、最終的に小球の「高さのエネルギー(位置エネルギー)」にすべて変換された、と考えます。この関係を数式にして、ばねの硬さ(ばね定数\(k\))を求めます。
ばね定数は \(k = \displaystyle\frac{32mg}{h}\) です。単位も[N/m]となり、物理的に妥当です。
問(1) イ
思考の道筋とポイント
小球が点Aを通過する瞬間と、最高点Bに達した瞬間との間で、再び力学的エネルギー保存則を適用します。点Aは床の高さにあるため、位置エネルギーは0です。
この設問における重要なポイント
- 考察する2つの状態を適切に選ぶ。ここでは点Aと点Bが適しています。
- 力学的エネルギー保存則を正しく立式する。
具体的な解説と立式
点Aを通過するときの小球の速さを \(v_A\) とします。点Aと最高点Bとの間で力学的エネルギー保存則を立てます。
- 点Aの状態: 速さは \(v_A\)、高さは0。エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}mv_A^2 + 0\)。
- 点Bの状態: 速さは0、高さは\(h\)。エネルギーは \(0 + mgh\)。
したがって、力学的エネルギー保存則の式は、
$$ \frac{1}{2}mv_A^2 + 0 = 0 + mgh \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 力学的エネルギー保存則
式②を \(v_A\) について解きます。
両辺の \(m\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}v_A^2 &= gh \\[2.0ex]
v_A^2 &= 2gh
\end{aligned}
$$
速さ \(v_A\) は正なので、
$$ v_A = \sqrt{2gh} $$
点Aで小球が持っていた「速さのエネルギー(運動エネルギー)」が、坂を上るにつれて「高さのエネルギー(位置エネルギー)」に変換され、頂点Bで運動エネルギーが0になった、と考えます。このエネルギーの変換を式にして、点Aでの速さを求めます。
点Aでの速さは \(v_A = \sqrt{2gh}\) です。これは、高さ\(h\)から物体を自由落下させたときに地面に達する速さと同じであり、エネルギー保存則から導かれる典型的な結果です。
問(1) ウ、エ、あ、オ
思考の道筋とポイント
小球が台の斜面を運動している間の運動を解析します。働く力は「重力」と「垂直抗力」のみです。力を斜面に平行・垂直に分解し、運動方程式と力のつりあいの式を立てます。斜面上の運動は等加速度運動になるため、運動学の公式を用いて時間などを求めます。
この設問における重要なポイント
- 力を斜面に平行な成分と垂直な成分に分解する。
- 運動方向(斜面平行)には運動方程式、運動しない方向(斜面垂直)には力のつりあいの式を立てる。
- 等加速度運動の公式を適切に選択して用いる。
具体的な解説と立式
(ウ) 加速度の大きさ
小球に働く重力 \(mg\) を、斜面に平行な成分 \(mg\sin\theta\) と垂直な成分 \(mg\cos\theta\) に分解します。斜面を上る向きを正とすると、運動方向と逆向きに \(mg\sin\theta\) が働くため、運動方程式は次のようになります。
$$ ma = -mg\sin\theta $$
よって加速度は \(a = -g\sin\theta\)。加速度の大きさは、この絶対値なので \(|a| = g\sin\theta\)。
(エ) 点AからBまでかかる時間
初速度 \(v_A = \sqrt{2gh}\)、加速度 \(a = -g\sin\theta\) で、終速度が0になるまでの時間 \(t_1\) を、等加速度運動の公式 \(v = v_0 + at\) を用いて求めます。
$$ 0 = \sqrt{2gh} + (-g\sin\theta)t_1 \quad \cdots ③ $$
(あ) 垂直抗力の向き
垂直抗力は面が物体を垂直に押す力です。図2で斜面から小球を垂直に押し上げる向きは ② です。
(オ) 垂直抗力の大きさ
斜面に垂直な方向では、力がつり合っています。垂直抗力を \(N_1\) とすると、重力の垂直成分とつりあうので、
$$ N_1 = mg\cos\theta $$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma=F\)
- 力のつりあい
- 等加速度運動の公式: \(v = v_0 + at\)
(エ)の計算:
式③を \(t_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
g\sin\theta \cdot t_1 &= \sqrt{2gh} \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{\sqrt{2gh}}{g\sin\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{\sin\theta}\sqrt{\frac{2gh}{g^2}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{\sin\theta}\sqrt{\frac{2h}{g}}
\end{aligned}
$$
(ウ) 坂を上るボールが遅くなるのは、重力が引き戻すからです。この引き戻す力から加速度がわかります。(エ) 初めの速さと加速度がわかれば、公式を使って止まるまでの時間が計算できます。(あ,オ) 小球は斜面にめり込んだり浮き上がったりしないので、斜面に垂直な方向の力はつり合っています。このつりあいの関係から垂直抗力の大きさが求まります。
(ウ) \(g\sin\theta\)、(エ) \(\displaystyle\frac{1}{\sin\theta}\sqrt{\frac{2h}{g}}\)、(あ) ②、(オ) \(mg\cos\theta\)。これらは斜面上の運動における基本的な結果であり、物理的に妥当です。
問(2) カ、い、キ
思考の道筋とポイント
ここからは台が自由に動ける2体問題です。問題の誘導に従い、台の運動は静止系(床)から、小球の運動は加速系(台)から考えます。
この設問における重要なポイント
- (カ) 作用・反作用の法則を元に、台を動かす力を特定し、静止系で運動方程式を立てる。
- (い,キ) 加速系(台)から小球を見る。慣性力を導入し、小球に働くすべての力をx軸(斜面)方向に分解して運動方程式を立てる。
具体的な解説と立式
(カ) 台の水平方向の運動方程式
台を水平方向に動かす力は、小球から受ける垂直抗力\(N\)の反作用です。この反作用の水平成分が台を動かします。小球が台を押す力(反作用)は、大きさが\(N\)で向きは斜面から垂直に台へ向かう方向です。この力の水平成分は、右向きに \(N\sin\theta\) となります。台の加速度を右向きに\(\beta\)とすると、運動方程式は、
$$ M\beta = N\sin\theta $$
(い) 慣性力の向き
台は右向きに加速度\(\beta\)で運動しています。台の上に乗った観測者から小球を見ると、観測系の加速度と逆向き、すなわち「左向き」に大きさ\(m\beta\)の慣性力が働いているように見えます。図2の選択肢では ③ です。
(キ) 台から見た小球のx軸方向の運動方程式
台から見た小球に働く力(重力、垂直抗力、慣性力)をx軸方向(斜面上向きが正)に分解します。垂直抗力はy軸方向の力なので、x成分は0です。
- 重力\(mg\)のx成分: \(-mg\sin\theta\)
- 慣性力\(m\beta\)(左向き)のx成分: \(-m\beta\cos\theta\)
台から見た小球のx軸方向の加速度を\(\alpha\)とすると、運動方程式は、
$$ m\alpha = -mg\sin\theta – m\beta\cos\theta $$
使用した物理公式
- 運動方程式
- 作用・反作用の法則
- 慣性力
(立式のみが問われているため、計算過程はありません)
(カ) \(M\beta = N\sin\theta\)、(い) ③、(キ) \(m\alpha = -mg\sin\theta – m\beta\cos\theta\)。これらは2体問題を解くための連立方程式の一部となります。
問(2) ク
思考の道筋とポイント
未知数\(\alpha, \beta, N\)に対して、方程式がまだ足りません。台から見た小球は、y軸方向(斜面に垂直な方向)には運動しないので、この方向の力はつり合っていると考えられます。この力のつりあいの式を立て、これまでに得た3つの式を連立させて、\(\alpha\)を求めます。
この設問における重要なポイント
- y軸方向(斜面に垂直)の力のつりあいの式を立てる。
- 3つの連立方程式を解く。ここでは\(N\)と\(\beta\)を消去することが目標。
具体的な解説と立式
まず、台から見た小球のy軸方向(斜面に垂直上向きが正)の力のつりあいの式を立てます。
慣性力\(m\beta\)のy成分は、y軸の正の向きに \(m\beta\sin\theta\) です。
重力\(mg\)のy成分は、y軸の負の向きに \(mg\cos\theta\) です。
よって、力のつりあいの式は、
$$ N + m\beta\sin\theta – mg\cos\theta = 0 $$
これを\(N\)について整理します。
$$ N = mg\cos\theta – m\beta\sin\theta \quad \cdots ④ $$
この式を、(カ)で立てた台の運動方程式 \(M\beta = N\sin\theta \quad \cdots ⑤\) に代入して\(N\)を消去し、\(\beta\)を求めます。
$$ M\beta = (mg\cos\theta – m\beta\sin\theta)\sin\theta $$
最後に、求めた\(\beta\)を(キ)の式 \(m\alpha = -mg\sin\theta – m\beta\cos\theta \quad \cdots ⑥\) に代入して\(\alpha\)を求めます。
使用した物理公式
- 運動方程式、力のつりあい
- 連立方程式の解法
まず、⑤式に④式を代入して\(\beta\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
M\beta &= (mg\cos\theta – m\beta\sin\theta)\sin\theta \\[2.0ex]
M\beta &= mg\sin\theta\cos\theta – m\beta\sin^2\theta \\[2.0ex]
M\beta + m\beta\sin^2\theta &= mg\sin\theta\cos\theta \\[2.0ex]
\beta(M + m\sin^2\theta) &= mg\sin\theta\cos\theta \\[2.0ex]
\beta &= \frac{mg\sin\theta\cos\theta}{M+m\sin^2\theta}
\end{aligned}
$$
この\(\beta\)を⑥式に代入します。
$$
\begin{aligned}
m\alpha &= -mg\sin\theta – m\left( \frac{mg\sin\theta\cos\theta}{M+m\sin^2\theta} \right)\cos\theta \\[2.0ex]
\alpha &= -g\sin\theta – \frac{mg\sin\theta\cos^2\theta}{M+m\sin^2\theta} \\[2.0ex]
&= -g\sin\theta \left( 1 + \frac{m\cos^2\theta}{M+m\sin^2\theta} \right) \\[2.0ex]
&= -g\sin\theta \left( \frac{M+m\sin^2\theta+m\cos^2\theta}{M+m\sin^2\theta} \right)
\end{aligned}
$$
ここで \(\sin^2\theta+\cos^2\theta=1\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
\alpha &= -g\sin\theta \left( \frac{M+m(\sin^2\theta+\cos^2\theta)}{M+m\sin^2\theta} \right) \\[2.0ex]
&= -g\sin\theta \left( \frac{M+m}{M+m\sin^2\theta} \right) \\[2.0ex]
&= -\frac{(M+m)g\sin\theta}{M+m\sin^2\theta}
\end{aligned}
$$
小球と台、両方の運動を記述する式を3つ立てました。これらは未知数(\(\alpha, \beta, N\))を含む連立方程式です。数学の計算と同じように、一つの式を代入して文字を消去していくことで、最終的に求めたい加速度\(\alpha\)を計算します。計算は複雑ですが、\(\sin^2\theta+\cos^2\theta=1\) を使うと式がきれいになるのがポイントです。
台から見た小球の加速度は \(\alpha = -\displaystyle\frac{(M+m)g\sin\theta}{M+m\sin^2\theta}\) です。負号は斜面を減速して上ることを意味します。もし台の質量\(M\)が非常に大きいと、分母の\(m\sin^2\theta\)は無視できて \(\alpha \approx -\frac{(M)g\sin\theta}{M} = -g\sin\theta\) となり、台が固定されている場合の結果に近づくため、物理的に妥当です。
問(2) ケ
思考の道筋とポイント
台の上から見た小球の運動は、初速度\(v_A\)、加速度\(\alpha\)の等加速度直線運動です。最高点では、台から見た小球の速度は0になります。この条件を使って、等加速度運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) から、斜面を上る距離を求め、その距離から高さを計算します。
この設問における重要なポイント
- 台から見た相対運動として捉える。問題の状況設定から、小球が斜面に乗り上げた直後の台に対する初速度の大きさは\(v_A\)と考える。
- 最高点では「相対速度」が0になる。
- 斜面上の距離と高さの関係 (\(高さ = 距離 \times \sin\theta\)) を使う。
具体的な解説と立式
台から見た小球の運動を考えます。
- 初速度: \(v_0 = v_A = \sqrt{2gh}\)
- 終速度: \(v = 0\)
- 加速度: \(\alpha = -\displaystyle\frac{(M+m)g\sin\theta}{M+m\sin^2\theta}\)
- 移動距離: \(s\) (斜面に沿った距離)
等加速度運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2\alpha s\) を用います。
$$ 0^2 – (\sqrt{2gh})^2 = 2\alpha s $$
求めたいのは最高点の高さ\(h’\)であり、\(h’ = s \cdot \sin\theta\) の関係があるので、\(s = \displaystyle\frac{h’}{\sin\theta}\)と表せます。これを上の式に代入します。
$$ -2gh = 2\alpha \frac{h’}{\sin\theta} $$
これを\(h’\)について解くと、
$$ h’ = -\frac{gh\sin\theta}{\alpha} $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の公式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
立式した \(h’ = -\displaystyle\frac{gh\sin\theta}{\alpha}\) に、(ク)で求めた\(\alpha\)を代入します。
$$
\begin{aligned}
h’ &= -gh\sin\theta \div \left( -\frac{(M+m)g\sin\theta}{M+m\sin^2\theta} \right) \\[2.0ex]
&= gh\sin\theta \times \frac{M+m\sin^2\theta}{(M+m)g\sin\theta}
\end{aligned}
$$
\(gh\sin\theta\) が約分されて、
$$ h’ = \frac{M+m\sin^2\theta}{M+m}h $$
台の上からボールの運動を見ると、これもただの等加速度運動です。初めの速さと、減速の度合い(加速度\(\alpha\))が分かっているので、「後の速さの2乗 – 初めの速さの2乗 = 2 × 加速度 × 距離」の公式から、坂をどれだけ上ったかが計算できます。最後に、その距離を高さに変換すれば、答えが求まります。
最高点の高さは \(h’ = \displaystyle\frac{M+m\sin^2\theta}{M+m}h\) です。
分母分子を比較すると、\(\sin^2\theta \le 1\) なので \(M+m\sin^2\theta \le M+m\) です。したがって、\(h’ \le h\) となります。これは、小球の運動エネルギーの一部が台を動かすエネルギーに使われたため、元の高さ\(h\)までは到達できないという直感と一致しており、妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
床から見た静止系で、小球と台を一つの「系」として考えます。この系には水平方向に外力が働かないため、水平方向の運動量が保存されます。また、摩擦がないため、系全体の力学的エネルギーも保存されます。最高点では、小球は台に対して一瞬静止するため、両者の速度は等しくなります。これら2つの保存則を連立させて解きます。
この設問における重要なポイント
- 「小球+台」を一つの系とみなし、保存則が適用できるか判断する。
- 最高点では、小球と台の速度が等しくなる(相対速度が0)という条件を理解する。
- 初期状態と最終状態を正しく設定し、2つの保存則を立式する。
具体的な解説と立式
問題の状況設定より、小球は点Aで滑らかに斜面に乗り上げ、速さ\(v_A\)で斜面方向に運動を始めると考えます。
- 初期状態(点Aを通過した直後)
- 小球の速度: 大きさ\(v_A\)、向きは斜面方向。水平成分は \(v_A\cos\theta\)。
- 台の速度: 0
- 系の水平運動量: \(P_{\text{初}} = m(v_A\cos\theta) + M \cdot 0 = mv_A\cos\theta\)
- 系の力学的エネルギー: \(E_{\text{初}} = \frac{1}{2}mv_A^2 + 0 = mgh\) (高さの基準は床)
- 最終状態(最高点\(h’\)に到達した瞬間)
- 小球と台は一体となり、共通の水平速度\(V\)で運動する。
- 系の水平運動量: \(P_{\text{終}} = (m+M)V\)
- 系の力学的エネルギー: \(E_{\text{終}} = mgh’ + \frac{1}{2}(m+M)V^2\)
水平方向の運動量保存則より、
$$ mv_A\cos\theta = (m+M)V \quad \cdots ⑦ $$
力学的エネルギー保存則より、
$$ \frac{1}{2}mv_A^2 = mgh’ + \frac{1}{2}(m+M)V^2 \quad \cdots ⑧ $$
使用した物理公式
- 運動量保存則
- 力学的エネルギー保存則
まず、⑦式から共通速度\(V\)を求めます。
$$ V = \frac{m\cos\theta}{m+M}v_A $$
次に、この\(V\)を⑧式に代入して\(h’\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv_A^2 &= mgh’ + \frac{1}{2}(m+M)\left(\frac{m\cos\theta}{m+M}v_A\right)^2 \\[2.0ex]
\frac{1}{2}mv_A^2 &= mgh’ + \frac{1}{2}(m+M)\frac{m^2\cos^2\theta}{(m+M)^2}v_A^2 \\[2.0ex]
\frac{1}{2}mv_A^2 &= mgh’ + \frac{1}{2}\frac{m^2\cos^2\theta}{m+M}v_A^2
\end{aligned}
$$
両辺を\(m\)で割り、\(gh’\)について整理します。
$$
\begin{aligned}
gh’ &= \frac{1}{2}v_A^2 – \frac{1}{2}\frac{m\cos^2\theta}{m+M}v_A^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}v_A^2 \left(1 – \frac{m\cos^2\theta}{m+M}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}v_A^2 \left(\frac{m+M – m\cos^2\theta}{m+M}\right)
\end{aligned}
$$
ここで、\(v_A^2 = 2gh\) と \(\cos^2\theta = 1-\sin^2\theta\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
gh’ &= \frac{1}{2}(2gh) \left(\frac{m+M – m(1-\sin^2\theta)}{m+M}\right) \\[2.0ex]
h’ &= h \left(\frac{m+M – m+m\sin^2\theta}{m+M}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{M+m\sin^2\theta}{M+m}h
\end{aligned}
$$
小球と台をまとめて一つのチームとして考えます。このチームには横方向の外からの力が加わらないので、チーム全体の横方向の勢い(運動量)は変わりません。また、摩擦がないので、チーム全体のエネルギーも変わりません。この2つの「変わらない」というルールを使って、最高点の高さを計算する方法です。
主たる解法と完全に同じ結果が得られました。これは、異なる物理的アプローチから同じ結論が導かれる良い例であり、両方の解法の正しさを裏付けています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 力学的エネルギー保存則:
- 核心: 摩擦や空気抵抗のような非保存力が仕事をしない限り、運動エネルギーと位置エネルギー(重力・弾性力)の和は一定に保たれるという法則です。問(1)のア、イで、ばねが縮んだ状態、点Aを通過する状態、最高点Bに達した状態の関係性を解き明かす鍵となります。
- 理解のポイント:
- 適用条件の確認: 問題文から「なめらか」「空気抵抗は無視」などのキーワードを読み取り、この法則が使えるか判断します。
- 状態の選定: どの2つの状態でエネルギーを比較するかを戦略的に選びます。未知数が少なく、情報が多い状態を選ぶのがコツです。
- エネルギーの種類の列挙: 各状態で、運動エネルギー、重力の位置エネルギー、弾性エネルギーがそれぞれ存在するか、0になるかを正確に把握します。
- 運動方程式 (\(ma=F\)) と力の分解:
- 核心: 物体の運動状態の変化(加速度)と、それに作用する力とを結びつける基本法則です。問(1)のウ、オ、そして問(2)のカ、キ、クの導出において中心的な役割を果たします。
- 理解のポイント: この問題のように斜面が関わる場合、力を「斜面に平行な方向」と「斜面に垂直な方向」に分解することが定石です。運動する方向(平行方向)と、運動しない方向(垂直方向、力のつりあい)に分けて考えることで、立式が容易になります。
- 非慣性系と慣性力:
- 核心: 加速する座標系(この問題では動く台)から物体の運動を観測する際に導入される「見かけの力」です。問(2)の「台に乗った座標系から見る」という視点変更で必須となります。
- 理解のポイント:
- 導入の利点: 床から見ると複雑な運動(小球も台も動く)が、台から見ると「斜面を上るだけの一次元運動」として単純化できます。
- 慣性力のルール: 向きは「観測系の加速度と逆向き」、大きさは「観測される物体の質量 \(m\) × 観測系の加速度 \(\beta\)」です。これを忘れずに加えることで、非慣性系でも運動方程式が立てられます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ばね付きの振り子や衝突: ばねの弾性エネルギーが運動エネルギーに変換され、さらに別の物体との相互作用に発展する問題。エネルギー保存則と運動量保存則を段階的に適用します。
- 動く斜面上の物体: 台と物体が相互作用する2体問題の典型例。静止系と加速系の両方から解くことができるスキルが求められます。
- 単振動との融合: 斜面上の運動が、特定の条件下で単振動になる問題。力が復元力(\(F=-kx\)の形)になることを見抜くのが鍵です。
- 初見の問題での着眼点:
- 系の設定: 「台が固定されている」のか「自由に動ける」のかで、考えるべき対象(小球だけか、小球と台の両方か)が根本的に変わります。まずこの区別を明確にします。
- エネルギーは保存されるか?: 問題文に「なめらか」「抵抗は無視」とあれば、力学的エネルギー保存則が有力な武器になります。「ばね」が出てきたら、弾性エネルギーを考慮したエネルギー保存則をまず考えます。
- 視点はどこか?: 「床から見る(静止系)」のか「台から見る(加速系)」のか。問題に誘導があればそれに従い、なければどちらが考えやすいかを判断します。「相対運動」を問われたり、運動が複雑だったりする場合は、加速系(慣性力)の視点が有効なことが多いです。
- 連立方程式の構造を見抜く: 問(2)のように、未知数(\(\alpha, \beta, N\))と、それらを結ぶ方程式(運動方程式やつりあいの式)が複数出てくる場合、どの式を組み合わせればどの未知数が消去できるか、という計算の見通しを立てることが重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- エネルギー保存則の適用範囲:
- 誤解: 問(2)の台が動く場合でも、安易に小球だけの力学的エネルギー保存則を立ててしまう。
- 対策: 台が動く場合、小球が台を押すことで台に仕事をします(台の運動エネルギーが増加する)。このため、小球単体の力学的エネルギーは保存されません。「小球と台を合わせた系全体のエネルギー」は保存されます(別解で利用)。法則の適用条件を常に意識することが重要です。
- 加速度の符号:
- 誤解: 運動方程式を立てる際に、力の向きと加速度の正の向きを混同し、符号を間違える。特に問(1)ウや問(2)キで、減速する運動の加速度を正としてしまう。
- 対策: 最初に「どちらの向きを正とするか」を座標軸で明確に定義し、すべての力と加速度をその座標軸に従って正負の符号付きで記述する習慣をつける。
- 慣性力の分解ミス:
- 誤解: 問(2)キ、クで、水平方向の慣性力 \(m\beta\) を斜面方向と垂直方向に分解する際、\(\cos\theta\) と \(\sin\theta\) を取り違える。
- 対策: 必ず図を描き、慣性力のベクトルと斜面がなす角度が\(\theta\)であることを確認し、分解先の成分が辺となる直角三角形をイメージする。斜面方向が\(\cos\theta\)、垂直方向が\(\sin\theta\)となることを丁寧に確認する。
- 連立方程式の計算ミス:
- 誤解: 問(2)クの導出のように、3つの文字式を連立させる際に、代入ミスや移項ミス、符号ミスを犯す。
- 対策: どの式をどの式に代入するのか、どの文字を消去したいのか、という目的を明確にする。計算過程を省略せず、一行ずつ丁寧に書き下す。特に、マイナス符号の分配法則には細心の注意を払う。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 力学的エネルギー保存則:
- 選定理由: 「ばね」「高さの変化」「速さ」といったキーワードがあり、かつ「なめらか」で非保存力が仕事をしないため。エネルギーというスカラー量で扱えるため、ベクトルの分解が不要で計算が楽なことが多い。
- 適用根拠: 問(1)の状況設定が、この法則の適用条件を完全に満たしている。問(2)ケの別解では、「小球+台」の系全体で適用した。
- 運動方程式 \(ma=F\):
- 選定理由: 「加速度」や「力(垂直抗力)」そのものを求めたい場合。
- 適用根拠: 問(1)ウ、オでは加速度と力を、問(2)では台と小球の間の力学的関係を記述するために必要不可欠。エネルギー保存則だけでは、途中の力や加速度は分からない。
- 運動量保存則:
- 選定理由: 複数の物体が相互作用し、かつ系に外力がはたらかない方向がある場合。
- 適用根拠: 問(2)ケの別解で、水平方向には外力がはたらかないため、小球と台の系の水平運動量が保存されることを利用した。
- 等加速度運動の公式 (\(v=v_0+at\), \(v^2-v_0^2=2ax\)):
- 選定理由: 運動方程式を解いて加速度が一定値だと分かった後、時間、距離、速度の関係を知りたい場合。
- 適用根拠: 問(1)エでは「時間」を、問(2)ケでは「距離」を求めるために、それぞれ最適な公式を選択して適用する。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の確認:
- 特に注意すべき点: 加速度の向きに注意が必要です。問(1)ウや問(2)クでは、斜面を上る向きを正としているため、減速する加速度は負の値になります。運動方程式を立てる際に、この符号を間違えないようにすることが重要です。また、慣性力や重力を成分分解する際の符号も、設定した座標軸に対して慎重に判断する必要があります。
- 日頃の練習: 式を立てる前に、必ず図に座標軸(正の向き)を明記する習慣をつけましょう。そして、すべての力ベクトルを図示し、各成分が座標軸の正の向きか負の向きかを確認してから立式に進むことで、符号ミスを大幅に減らせます。
- 文字式の整理:
- 特に注意すべき点: 問(2)ク、ケのように、\(m, M, g, \theta, \alpha, \beta, N\)など多くの文字が登場する連立方程式では、展開や移項、通分の過程でミスが起こりやすくなります。特に、分母に\(M+m\sin^2\theta\)のような複雑な項が含まれる計算は慎重に行う必要があります。
- 日頃の練習: 複雑な文字式の計算では、途中式を省略せずに一行ずつ丁寧に書くことが鉄則です。特に、括弧を展開する際の分配法則や、通分で分母分子に同じ式を掛ける操作は、焦らず確認しながら進めましょう。また、\(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) のような公式が使えないか、常に意識することで計算を簡略化できる場合があります。
- 代入のタイミング:
- 特に注意すべき点: 問(2)クの計算では、\(N\)の式を\(\beta\)の式に代入し、さらにその\(\beta\)の式を\(\alpha\)の式に代入するという段階的な手順を踏みます。早い段階で複雑な式を代入すると、式全体が長くなりすぎて計算ミスを誘発します。
- 日頃の練習: 複数の式を連立させる問題では、「どの文字を消去するために、どの式をどの式に代入するか」という計算の戦略を立てる練習をしましょう。まずは文字のまま計算を進め、できるだけ式が整理されてから具体的な表現を代入する癖をつけると、見通しが良くなりミスが減ります。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (ク) 加速度\(\alpha\): もし台の質量\(M\)が無限大なら、台は動かないはず。このとき、\(\alpha\)の式で \(M \rightarrow \infty\) の極限をとると、分母・分子を\(M\)で割って \(\alpha = -\displaystyle\frac{(1+m/M)g\sin\theta}{1+(m/M)\sin^2\theta} \rightarrow -g\sin\theta\) となり、問(1)ウの結果と一致します。これは、解の妥当性を示す強力な証拠です。
- (ケ) 高さ\(h’\): \(h’ = \displaystyle\frac{M+m\sin^2\theta}{M+m}h\) という結果について考えます。
- \(\sin^2\theta \le 1\) なので、分子 \(\le\) 分母です。したがって \(h’ \le h\) となり、元の高さには到達できないことがわかります。これは、エネルギーの一部が台の運動に使われたと考えると当然の結果です。
- もし \(M \rightarrow \infty\) なら、分母・分子を\(M\)で割って \(h’ = \displaystyle\frac{1+(m/M)\sin^2\theta}{1+m/M}h \rightarrow h\)。台が動かないので、これも問(1)の状況と同じになります。
- 条件を変えて思考実験:
- もし \(\theta=90^\circ\) ならどうなるか? 台は水平方向に動けず、小球は真上に上がって落ちるだけです。このとき \(\sin90^\circ=1\) なので、\(h’ = \displaystyle\frac{M+m}{M+m}h = h\)。台が動かないので、元の高さまで戻れるという結果になり、これも妥当です。
- このような思考実験は、式の正しさを多角的に検証し、物理現象への深い理解につながります。
問題27 (関西学院大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、滑車を介して糸で結ばれた2つの小物体(BとC)と、それらが乗っている斜面台(A)の運動を扱います。問題は大きく3つのパート〔A〕, 〔B〕, 〔C〕に分かれており、それぞれ台の運動条件が異なります。力学の様々な法則を複合的に適用する必要がある総合問題です。
- 台Aの質量: \(M\)、斜面の角度: \(\theta\)
- 小物体B, Cの質量: ともに \(m\)
- 糸は軽くて伸びない。滑車は軽くてなめらか。
- 重力加速度の大きさ: \(g\)
- 空気の影響、摩擦はすべて無視。
- 〔A〕 台Aを固定した場合
- (1) 小物体Cの運動方向(上昇か下降か)。
- (2) 小物体Cの加速度の大きさ。
- (3) 糸の張力の大きさ。
- (4) 糸が滑車を介して台Aを押す力の水平成分の大きさ。
- 〔B〕 台Aを一定の力で引き、等加速度運動させた場合
- (1) 台Aを引く力の向き。
- (2) 台Aの加速度の大きさ。
- (3) 小物体Bが受ける抗力の大きさ。
- (4) 台Aを引く力の大きさ。
- 〔C〕 台Aが自由に動ける(壁D付き)場合
- (1) 台Aの加速度\(a_A\)と、台から見たCの加速度\(a_C\)の比。
- (2) 加速度\(a_C\)の大きさ。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 〔A〕(2) 加速度の大きさの別解: 系全体で運動方程式を立てる解法
- 主たる解法が各物体について運動方程式を立てて連立するのに対し、別解では小物体BとCを一体の「系」とみなし、系全体を動かす力と妨げる力から直接加速度を求めます。
- 〔B〕(3) 抗力の大きさの別解: 静止系で力のつりあいを考える解法
- 主たる解法が加速する台から見た「非慣性系」での力のつりあいを考えるのに対し、別解では床から見た「静止系」で、小物体Bの鉛直方向の力がつり合っている(加速度が0)という条件から抗力を求めます。
- 〔C〕(1) 加速度の比の別解: 水平方向の運動量保存則(重心則)を用いる解法
- 主たる解法が各物体の運動方程式を複雑に連立させて解くのに対し、別解では系全体に水平方向の外力が働かないことに着目し、運動量保存則(または重心の加速度が0であること)から、より簡潔に加速度の比を導出します。
- 〔A〕(2) 加速度の大きさの別解: 系全体で運動方程式を立てる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 思考の効率化: 特に〔A〕(2)や〔C〕(1)の別解は、内力(張力など)を考慮せずに済むため、計算過程を大幅に簡略化できます。これは試験本番での時間短縮に直結する重要なテクニックです。
- 視点の多様性: 〔B〕(3)のように、同じ物理現象を「非慣性系」と「静止系」の両方の視点から解析することで、それぞれの考え方の長所と短所を理解し、思考の柔軟性を養うことができます。
- 保存則の威力: 〔C〕(1)の別解は、複雑に見える多体問題でも、適切な保存則を見つけ出すことで、問題の本質を鮮やかに抜き出せることを示しています。これは力学の応用問題全般に通じる重要な視点です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題は、複数の物体が糸で連結された「連結体の運動」をテーマとしています。各パートで状況設定が異なり、それぞれに適したアプローチが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動方程式: 物体の運動(加速度)とそれに働く力とを結びつける、力学の基本法則です。連結体では、各物体について式を立てて連立するのが基本です。
- 非慣性系と慣性力: 加速する座標系から物体を見ると、観測系の加速度と逆向きに「慣性力」という見かけの力がはたらきます。これにより、複雑な運動を単純化できます。
- 運動量保存則(重心則): ある方向に外力がはたらかない系では、その方向の運動量の合計は一定に保たれます。これは、その方向の重心の速度が一定(または加速度が0)であることと等価です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 〔A〕 台固定: 最も基本的な設定です。BとCは一体となって同じ大きさの加速度で運動します。それぞれの物体について運動方程式を立て、連立して解きます。
- 〔B〕 台が等加速度運動: 台Aが加速度運動するため、台Aの上からBとCの運動を見ると「非慣性系」での考察となります。BとCは台Aに対して静止しているので、慣性力を考慮した上で「力のつりあい」を考えます。
- 〔C〕 すべてが自由に運動: 最も複雑な設定です。この場合も「非慣性系」のアプローチが有効ですが、系全体に水平方向の外力が働かないため、「運動量保存則(重心則)」が強力な道具となります。
〔A〕(1)
思考の道筋とポイント
小物体BとCが動き出す原因となる力を比較します。Cを下に引く力はCの重力\(mg\)です。一方、Bを斜面下向きに引く力はBの重力の斜面成分\(mg\sin\theta\)です。これら2つの力の大きさを比較し、どちらが勝つかで全体の運動方向が決まります。
この設問における重要なポイント
- 系全体を動かそうとする力を特定する。
- 力の大きさを比較する。\(\sin\theta\)の値の範囲を考慮する。
具体的な解説と立式
小物体Cには、鉛直下向きに重力\(mg\)が働きます。これがCを下降させようとする力です。
小物体Bには、斜面下向きに重力の成分\(mg\sin\theta\)が働きます。これがBを滑り落とさせ、結果的にCを上昇させようとする力です。
ここで、\(\theta\)は斜面の角度なので \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) であり、したがって \(0 < \sin\theta < 1\) です。
よって、力の大きさを比較すると、
$$ mg\sin\theta < mg $$
となります。
Cを下降させようとする力(\(mg\))の方が、Cを上昇させようとする力(\(mg\sin\theta\))よりも大きいため、Cは下降し、それにつられてBは斜面を上昇します。
使用した物理公式
- 力の分解
(定性的な比較のため、計算過程はありません)
Cを下に引っ張る力は、Cの重さ\(mg\)まるごとです。一方、Bが坂を滑り落ちようとする力は、Bの重さの一部(\(mg\sin\theta\))だけです。\(mg\)と\(mg\sin\theta\)を比べると、必ず\(mg\)の方が大きいので、CがBを引っ張り上げる形で、Cは下に、Bは坂を上に動きます。
小物体Cは下降します。これは直感とも一致する妥当な結論です。
〔A〕(2), (3)
思考の道筋とポイント
小物体BとCは糸で繋がれているため、一体となって運動し、加速度の大きさは等しくなります。BとCそれぞれについて運動方程式を立て、連立させて加速度\(a\)と張力\(T\)を求めます。
この設問における重要なポイント
- 連結された物体の加速度の大きさは等しい。
- 各物体について、運動方向を正として運動方程式を立てる。
具体的な解説と立式
BとCの加速度の大きさを\(a\)、糸の張力の大きさを\(T\)とします。(1)の結果から、Cは下降し、Bは斜面を上昇します。それぞれの運動方向を正として運動方程式を立てます。
- 小物体Cの運動方程式 (鉛直下向き正):
$$ ma = mg – T \quad \cdots ① $$ - 小物体Bの運動方程式 (斜面上向き正):
$$ ma = T – mg\sin\theta \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma=F\)
(2) 加速度 \(a\) の計算:
①式と②式の両辺をそれぞれ足し合わせることで、\(T\)を消去します。
$$
\begin{aligned}
ma + ma &= (mg – T) + (T – mg\sin\theta) \\[2.0ex]
2ma &= mg – mg\sin\theta \\[2.0ex]
2ma &= mg(1 – \sin\theta) \\[2.0ex]
a &= \frac{g}{2}(1 – \sin\theta)
\end{aligned}
$$
(3) 張力 \(T\) の計算:
求めた\(a\)を①式に代入します。
$$
\begin{aligned}
m \cdot \frac{g}{2}(1 – \sin\theta) &= mg – T \\[2.0ex]
T &= mg – \frac{mg}{2}(1 – \sin\theta) \\[2.0ex]
&= \frac{2mg – mg(1 – \sin\theta)}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{2mg – mg + mg\sin\theta}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{mg + mg\sin\theta}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{mg}{2}(1 + \sin\theta)
\end{aligned}
$$
BとC、それぞれの物体について運動のルール(運動方程式)を立てます。この2つの式を足し算すると、お互いに引っ張り合う力(張力\(T\))が打ち消し合って消え、全体の加速度\(a\)が簡単に計算できます。次に、求まった\(a\)を元の式のどちらかに代入すれば、張力\(T\)も計算できます。
(2) 加速度の大きさは \(a = \displaystyle\frac{g}{2}(1 – \sin\theta)\) です。(3) 糸の張力の大きさは \(T = \displaystyle\frac{mg}{2}(1 + \sin\theta)\) です。どちらも物理的に妥当な式となっています。
思考の道筋とポイント
小物体BとCを一体の「系」として考えます。この系全体を動かす力(駆動力)と、運動を妨げる力(抵抗力)を考え、系全体の運動方程式 \((m_1+m_2)a = F_{\text{全体}}\) を立てます。この方法では、系内部の力である張力\(T\)を考慮する必要がなく、計算が簡潔になります。
この設問における重要なポイント
- 系全体を動かす力(駆動力)と妨げる力(抵抗力)を正しく特定する。
- 系全体の質量は \(2m\) であることを認識する。
- この方法では張力\(T\)は直接計算できないことを理解する。
具体的な解説と立式
BとCを一体の系とみなします。運動の方向は、Cが下がりBが上がる方向です。
- 運動を促進する力(駆動力): Cにはたらく重力 \(mg\)
- 運動を妨げる力(抵抗力): Bにはたらく重力の斜面成分 \(mg\sin\theta\)
系全体の質量は \(m+m=2m\) です。したがって、系全体の運動方程式は、
$$ (2m)a = mg – mg\sin\theta $$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(Ma=F\)
この式を\(a\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
2ma &= mg(1-\sin\theta) \\[2.0ex]
a &= \frac{g}{2}(1-\sin\theta)
\end{aligned}
$$
BとCを一つのチームと考えて、チーム全体に働く力を考えます。チームを前に進めようとする力(Cの重力)と、後ろに引っ張る力(Bの重りの斜面成分)の綱引きで、どちらにどれだけ加速するかを計算する方法です。チーム内の力(張力)は考えなくてよいので、計算が楽になります。
主たる解法と完全に一致する結果が、より直接的に得られました。この解法は加速度を求める際には非常に効率的ですが、張力\(T\)を求めるには、結局個別の運動方程式に戻る必要があります。
〔A〕(4)
思考の道筋とポイント
滑車は、小物体Bからの糸と小物体Cからの糸の2本に引かれています。これらの力の合力が、滑車が糸から受ける力です。作用・反作用の法則により、滑車が台Aを押す力は、この合力と大きさが等しく向きが反対になります。この力の水平成分を求めます。
この設問における重要なポイント
- 滑車に働く2つの張力をベクトルとして考える。
- 2つの張力ベクトルの合力の水平成分を計算する。
具体的な解説と立式
滑車が糸から受ける力は、斜面下向きの張力\(T\)と鉛直下向きの張力\(T\)の合力です。台Aが滑車から受ける力(押される力)は、この合力の反作用です。求めたいのは、この押される力の水平成分の大きさです。これは、滑車を引く2つの張力の合力の水平成分の大きさに等しくなります。
- 張力1(Bから)の水平成分: \(T\cos\theta\)(左向き)
- 張力2(Cから)の水平成分: 0
したがって、求める力の水平成分の大きさは \(T\cos\theta\) となります。これに(3)で求めた\(T\)を代入します。
$$ (\text{水平成分の大きさ}) = T\cos\theta = \frac{mg}{2}(1 + \sin\theta)\cos\theta $$
使用した物理公式
- 力の合成・分解
(上記で計算済み)
滑車は、BとCの両方から糸で引っ張られています。この2つの引っ張る力を合わせたものが、台をぐいっと押す力になります。この「合わせた力」の、水平方向の成分だけを計算するのがこの問題です。
求める力の水平成分の大きさは \(\displaystyle\frac{mg}{2}(1 + \sin\theta)\cos\theta\) です。
〔B〕(1), (2), (3), (4)
思考の道筋とポイント
台Aを一定の力で引き、右向きに加速度\(\alpha\)で運動させると、BとCが台上で静止した、という状況です。これは、台Aと同じ加速度で運動する観測者(非慣性系)から見ると、BとCに働く力(実在力+慣性力)が完全につり合っていることを意味します。
この設問における重要なポイント
- (1) Bが静止するために必要な慣性力の向きから、台の加速度の向きを特定する。
- (2) 非慣性系でBとCの力のつりあいを考え、連立させて加速度\(\alpha\)を求める。
- (3) Bの斜面に垂直な方向の力のつりあいから抗力\(N_B\)を求める。
- (4) A,B,Cを一体とみなし、系全体の運動方程式から引く力\(F\)を求める。
具体的な解説と立式
(1) 台Aを引く力の向き
〔A〕では、何もしなければBは斜面を上ろうとしました。Bをその場で静止させるには、Bに斜面下向きの力を加える必要があります。これを水平方向の慣性力で実現するには、Bに「水平左向き」の慣性力を働かせ、その斜面方向成分がBを押し下げるようにすればよいです。慣性力の向きは台の加速度と逆なので、台Aは「水平右向き」に加速させる必要があります。よって、引く力の向きはQです。
(2) 台Aの加速度の大きさ
台Aの加速度を右向きに\(\alpha\)とします。台A上の観測者から見ると、B, Cには左向きに大きさ\(m\alpha\)の慣性力が働きます。B, Cは静止しているので、力がつり合っています。糸の張力を\(T\)とします。
- Cの鉛直方向のつりあい:
$$ T = mg \quad \cdots ③ $$ - Bの斜面方向のつりあい:
慣性力\(m\alpha\)の斜面下向き成分は\(m\alpha\cos\theta\)。重力の斜面下向き成分は\(mg\sin\theta\)。
$$ T = mg\sin\theta + m\alpha\cos\theta \quad \cdots ④ $$
③を④に代入すると、
$$ mg = mg\sin\theta + m\alpha\cos\theta $$
(3) 小物体Bが台Aから受ける抗力の大きさ
Bの斜面に垂直な方向(上向き正)の力のつりあいを考えます。抗力を\(N_B\)とします。
慣性力\(m\alpha\)の斜面垂直上向き成分は\(m\alpha\sin\theta\)。重力の斜面垂直下向き成分は\(mg\cos\theta\)。
$$ N_B + m\alpha\sin\theta – mg\cos\theta = 0 $$
$$ N_B = mg\cos\theta – m\alpha\sin\theta \quad \cdots ⑤ $$
(4) 台Aを引く力の大きさ
A, B, Cを一つの系(全質量 \(M+2m\))と見なします。この系全体が加速度\(\alpha\)で運動しているので、運動方程式より、引く力\(F\)は、
$$ F = (M+2m)\alpha $$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma=F\)
- 力のつりあい: \(\sum F = 0\)
- 慣性力
(2)の計算:
\(mg = mg\sin\theta + m\alpha\cos\theta\) を\(\alpha\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
m\alpha\cos\theta &= mg – mg\sin\theta \\[2.0ex]
\alpha\cos\theta &= g(1-\sin\theta) \\[2.0ex]
\alpha &= \frac{g(1-\sin\theta)}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
(3)の計算:
⑤式に求めた\(\alpha\)を代入します。
$$
\begin{aligned}
N_B &= mg\cos\theta – m \left( \frac{g(1-\sin\theta)}{\cos\theta} \right) \sin\theta \\[2.0ex]
&= \frac{mg\cos^2\theta – mg(1-\sin\theta)\sin\theta}{\cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{mg(\cos^2\theta – \sin\theta + \sin^2\theta)}{\cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{mg(1 – \sin\theta)}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
(4)の計算:
\(F = (M+2m)\alpha\) に求めた\(\alpha\)を代入します。
$$ F = (M+2m)\frac{g(1-\sin\theta)}{\cos\theta} $$
(1) 普通ならBは坂を上るはずなのに、止まっている。これは、台が急発進(加速)したときに体が後ろに引っ張られる、あの「慣性力」がBを坂の下向きに押し付けているからです。この向きから、台がどちらに加速したかがわかります。
(2) 加速している台の上から見ると、BもCも止まって見えます。これは、重力や張力といった普通の力と、「慣性力」がちょうど釣り合っている状態です。この力の釣り合いの式を立てて、パズルのように解くと加速度が求まります。
(3) 抗力は、Bが台にめり込まないように台が押し返す力です。これも、斜面に垂直な方向の力の釣り合いを考えれば計算できます。
(4) 最後に、A, B, Cを全部まとめて一つの大きな塊だと考えます。この塊全体を(2)で求めた加速度で動かすにはどれくらいの力が必要か、というのを運動方程式で計算します。
得られた加速度\(\alpha = \displaystyle\frac{g(1-\sin\theta)}{\cos\theta}\)について、もし\(\theta=0\)とすると\(\alpha=g\)となります。これは、Bが水平面に置かれ、Cが真下にぶら下がっている状況で、Bを静止させるには慣性力\(m\alpha\)が張力\(T=mg\)とつりあう必要があり、\(m\alpha=mg \rightarrow \alpha=g\)となることと一致し、妥当です。
思考の道筋とポイント
加速する台の上から見るのではなく、静止した床からBの運動を見ます。Bは水平方向に加速していますが、鉛直方向には動いていない(加速度0)ので、鉛直方向の力はつり合っているはずです。この条件から抗力を求めるアプローチです。
この設問における重要なポイント
- 静止系から見たBの運動状態(水平方向: 加速、鉛直方向: 静止)を正しく把握する。
- Bに働くすべての「実在力」(重力、張力、抗力)を列挙する。
- 各力を水平・鉛直方向に分解する。
具体的な解説と立式
床から見た小物体Bに働く力は、重力\(mg\)、糸の張力\(T\)、台からの抗力\(N_B\)の3つです。これらの力を鉛直方向に分解し、力のつりあいを考えます。上向きを正とします。
- 張力\(T\)の鉛直成分: \(T\sin\theta\)
- 抗力\(N_B\)の鉛直成分: \(N_B\cos\theta\)
- 重力\(mg\): \(-mg\)
鉛直方向の加速度は0なので、力のつりあいの式は、
$$ T\sin\theta + N_B\cos\theta – mg = 0 $$
ここで、張力\(T\)は\(mg\)に等しいので(③式)、
$$ mg\sin\theta + N_B\cos\theta = mg $$
使用した物理公式
- 力のつりあい: \(\sum F_y = 0\)
この式を\(N_B\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
N_B\cos\theta &= mg – mg\sin\theta \\[2.0ex]
N_B\cos\theta &= mg(1-\sin\theta) \\[2.0ex]
N_B &= \frac{mg(1-\sin\theta)}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
電車が加速しているとき、中のつり革は斜めになりますが、上下には動きません。それと同じで、Bも横には動きますが上下には動きません。だから、Bに働く力の上向き成分と下向き成分は釣り合っているはずです。この関係から抗力を計算する方法です。
主たる解法(非慣性系)と結果が一致しました。視点を変えても同じ答えが出ることで、物理法則の普遍性と、解の正しさを確認できます。
〔C〕(1), (2)
思考の道筋とポイント
台A、B、C、壁Dからなる系全体を考えます。水平方向には外力が働かないため、「水平方向の運動量保存則(重心則)」が成り立ちます。また、BとCの運動は台Aの上から「非慣性系」で考えることで、関係式を立てやすくなります。
この設問における重要なポイント
- (1) 水平方向の運動量保存則(重心則)を用いて、加速度の比を求めるのが最も効率的。
- (2) 非慣性系でBとCの運動方程式を立て、(1)の結果と連立させて加速度\(a_C\)を求める。
具体的な解説と立式
台Aの加速度を左向きに\(a_A\)、台から見たCの加速度を鉛直下向きに\(a_C\)とします。
台A上の観測者から見ると、B,Cには右向きに慣性力\(ma_A\)が働きます。
- Cの運動方程式 (下向き正):
$$ ma_C = mg – T \quad \cdots ⑥ $$ - Bの運動方程式 (上向き正):
$$ ma_C = T – mg\sin\theta + ma_A\cos\theta \quad \cdots ⑦ $$
(1) 加速度の大きさの比 \(\displaystyle\frac{a_C}{a_A}\)
この設問は、各物体の運動方程式をすべて立てて連立することでも解けますが、非常に複雑になります。別解で示す重心則を用いるのが最もスマートです。ここではその結果のみを示します。
$$ \frac{a_C}{a_A} = \frac{M+2m}{m\cos\theta} $$
(2) \(a_C\) の大きさ
⑥式と⑦式を足し合わせると、張力\(T\)が消去できます。
$$ 2ma_C = mg(1-\sin\theta) + ma_A\cos\theta $$
ここに(1)の関係式 \(a_A = \displaystyle\frac{m\cos\theta}{M+2m}a_C\) を代入します。
$$ 2ma_C = mg(1-\sin\theta) + m \left( \frac{m\cos\theta}{M+2m}a_C \right) \cos\theta $$
使用した物理公式
- 運動方程式(非慣性系)
- 運動量保存則(重心則)
(2)の計算:
\(a_C\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
a_C \left( 2m – \frac{m^2\cos^2\theta}{M+2m} \right) &= mg(1-\sin\theta) \\[2.0ex]
a_C \left( \frac{2m(M+2m) – m^2\cos^2\theta}{M+2m} \right) &= mg(1-\sin\theta) \\[2.0ex]
a_C \frac{m(2(M+2m) – m\cos^2\theta)}{M+2m} &= mg(1-\sin\theta) \\[2.0ex]
a_C &= \frac{(M+2m)g(1-\sin\theta)}{2(M+2m) – m\cos^2\theta}
\end{aligned}
$$
(1) この問題では、誰も外から横向きに押していないので、A, B, Cのチーム全体の重心は横には動きません。BとCが動くと、それを打ち消すようにAが逆向きに動きます。この「重心が動かない」というルールから、Aの加速度とCの加速度の比率がわかります。
(2) あとは、〔B〕と同じように加速する台Aの上からBとCの運動を見ます。今度は止まっていないで動いているので、慣性力を加えた上で運動方程式を立てます。これと(1)で求めた比率の式を組み合わせれば、Cの加速度が計算できます。
もし台の質量\(M\)が無限に大きい(\(M \rightarrow \infty\))なら、台は動かないはずです。このとき、\(a_C\)の式の分母分子を\(M\)で割って極限をとると、\(a_C \rightarrow \displaystyle\frac{g(1-\sin\theta)}{2}\) となり、これは台固定の場合〔A〕(2)の結果と一致します。このことから、得られた答えは妥当であると判断できます。
思考の道筋とポイント
A, B, C, Dからなる系全体に着目します。この系には水平方向に外力が働かないため、系全体の重心は水平方向に動きません。この「重心の加速度が0」という条件から、各物体の加速度の関係式を導くアプローチです。複雑な力の連立方程式を解くよりもはるかに簡潔に答えにたどり着けます。
この設問における重要なポイント
- 系全体に水平方向の外力が働かないことを確認する。
- 床から見た各物体の水平加速度を、\(a_A\) と \(a_C\) を用いて正しく表現する。
- 重心則の式 \(\sum m_i a_{ix} = 0\) を適用する。
具体的な解説と立式
床から見た各物体の水平方向の加速度(右向き正)を考えます。
- 台Aの加速度: \(-a_A\)
- 小物体Cの加速度: \(-a_A\)
- 小物体Bの加速度: 台Aに対するBの加速度の水平成分は \(a_C\cos\theta\)。よって床から見たBの水平加速度は \(-a_A + a_C\cos\theta\)。
重心則 \(\sum m_i a_{ix} = 0\) より、
$$ M(-a_A) + m(-a_A + a_C\cos\theta) + m(-a_A) = 0 $$
使用した物理公式
- 運動量保存則(重心則)
この式を整理します。
$$
\begin{aligned}
-Ma_A – ma_A + ma_C\cos\theta – ma_A &= 0 \\[2.0ex]
-(M+2m)a_A + ma_C\cos\theta &= 0 \\[2.0ex]
(M+2m)a_A &= ma_C\cos\theta
\end{aligned}
$$
よって、加速度の比は、
$$ \frac{a_C}{a_A} = \frac{M+2m}{m\cos\theta} $$
A, B, Cのチーム全体を外から誰も横に押していないので、チームの“中心点”(重心)は横に動きません。BとCが動くと、それを打ち消すようにAが逆向きに動きます。この「重心が動かない」というバランスの関係から、Aの加速度とCの加速度の比率がわかる、という考え方です。
主たる解法(複雑な連立方程式)よりもはるかに簡潔に解けることがわかります。多体問題において、個々の力を追うのが大変なときは、まず保存則が使えないか考えるのが有効な戦略です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動方程式 (\(ma=F\)):
- 核心: 物体の運動(加速度)とそれに働く力とを結びつける、力学の最重要法則です。この問題のほぼ全ての設問で、運動方程式を立てることが解法の出発点となります。
- 理解のポイント:
- 着目物体の明確化: どの物体についての式を立てるのかを明確にします(Bか、Cか、Aか、あるいは系全体か)。
- 力の完全な列挙: 着目物体に働く力を、重力、張力、抗力、慣性力など、漏れなくダブりなくすべて図示します。
- 座標軸と力の分解: 運動の方向に合わせて座標軸を設定し、力をその成分に分解する技術が不可欠です。
- 非慣性系と慣性力:
- 核心: 加速する座標系(観測者)から物体の運動を見る際に導入される「見かけの力」です。〔B〕と〔C〕で、動く台Aの上からBやCの運動を考える際に中心的な役割を果たします。
- 理解のポイント:
- 導入の利点: 複雑な2体・3体の運動も、非慣性系から見ることで「静止(力のつりあい)」や「単純な直線運動」として捉え直すことができ、立式が容易になります。
- 慣性力のルール: 向きは「観測系の加速度と逆向き」、大きさは「観測される物体の質量 \(m\) × 観測系の加速度 \(\alpha\)」です。これを忘れずに加えることが、非慣性系で運動方程式を正しく立てるための絶対条件です。
- 運動量保存則(重心則):
- 核心: ある系に外力が働かない(または外力の合力が0の)方向では、その系の全運動量は一定に保たれるという法則です。〔C〕(1)のように、水平方向に外力が働かない状況で、複数の物体の運動の関係性を知る上で極めて強力な道具となります。
- 理解のポイント: この法則は、物体間の相互作用(内力)がどんなに複雑であっても、系全体の運動の拘束条件を与えてくれます。加速度の関係(\(\sum m_i a_i = 0\))や変位の関係(\(\sum m_i x_i = 0\))として利用できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- エレベーター内の連結体: 上下に加速するエレベーター内で、滑車を介して繋がれた物体の運動。慣性力(見かけの重力)を考慮した上で、〔A〕と同様の連結体の運動方程式を立てます。
- 動く台の上での相対運動: なめらかな床の上の台車の上で、人が歩いたり物体が滑ったりする問題。運動量保存則と、相対速度・相対加速度の概念が鍵となります。
- 複数の物体が絡む複雑な系: 3つ以上の物体が相互作用する問題では、個々の運動方程式だけでは解けないことが多いです。運動量保存則やエネルギー保存則といった「保存則」を組み合わせることで、解への突破口が開けます。
- 初見の問題での着眼点:
- 拘束条件の確認: 「台が固定」「一定の力で引く」「自由に動く」「壁がある」など、問題文中の条件が、各物体の運動をどのように制約しているか(例:加速度が0、加速度が一定、特定の方向に動けないなど)を最初に整理します。
- どの視点で見るか?:
- 静止系(床): すべての力が実在力なので直感的ですが、運動の軌道が複雑になることがあります。
- 加速系(動く台): 運動が単純に見えることが多いですが、慣性力を忘れずに導入する必要があります。〔B〕のように「止まったままになった」という記述があれば、非慣性系での「力のつりあい」を考えるのが定石です。
- 保存則は使えないか?:
- 運動量保存則: 系全体に外力が働かない方向はないか?(〔C〕の水平方向)
- エネルギー保存則: 非保存力(摩擦など)が仕事をしないか?(この問題では張力が仕事をするため、個々の物体の力学的エネルギーは保存されないことに注意)
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 張力\(T\)の扱い:
- 誤解: 1本の糸で繋がれた物体でも、働く張力の大きさが異なると考えてしまう。
- 対策: 「軽くて伸びない糸」の場合、糸のどの部分でも張力の大きさは等しい、と覚える。Bを引く力とCを引く力は同じ\(T\)として立式します。
- 慣性力の向きと作用点:
- 誤解: 慣性力の向きを加速度と同じ向きにしてしまう。また、系内のすべての物体に慣性力が働くことを見落とす(例:〔B〕でBにだけ慣性力を考え、Cを忘れる)。
- 対策: 慣性力は「観測系の加速度と逆向き」に「観測されるすべての物体」に働くと覚える。図を描く際に、慣性力を点線の矢印で描き加える習慣をつけると、忘れにくくなります。
- 力の分解のミス:
- 誤解: 水平方向の慣性力を斜面方向の成分に分解する際、\(\cos\theta\)と\(\sin\theta\)を取り違える。
- 対策: 必ず大きな図を描き、分解したいベクトルと座標軸がなす角度を正確に特定する。直角三角形のどの辺がどの三角関数に対応するか、落ち着いて確認する。
- 運動量保存則の適用条件:
- 誤解: 〔A〕や〔B〕のように、系に水平方向の外力(固定する力や引く力)が働いているのに、運動量保存則を使おうとしてしまう。
- 対策: 運動量保存則は「外力の合力が0の方向」にのみ適用できる、という大原則を常に意識する。適用前に「この方向に外力は働いていないか?」と自問する癖をつける。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 運動方程式 \(ma=F\):
- 選定理由: 物体の「加速度」と「力」の関係性を記述する、力学の根幹をなす法則だから。
- 適用根拠: 〔A〕では運動している物体の加速度を、〔B〕では静止している物体の力のつりあいを、〔C〕では複雑に運動する物体の関係性を記述するために、すべてのパートで必要となります。
- 力のつりあいの式 (\(\sum F = 0\)):
- 選定理由: 物体が「静止している」または「等速直線運動している」場合。
- 適用根拠: 〔B〕で、加速する台の上から見るとBとCは「静止」しているため、慣性力を加えた上でこの式を適用します。また、〔A〕や〔B〕のBの運動で、斜面に垂直な方向には動かないため、その方向の力のつりあいを考えます。
- 運動量保存則 / 重心則:
- 選定理由: 複数の物体が相互作用している系で、外力が働かない方向がある場合。
- 適用根拠: 〔C〕では、系全体に水平方向の外力が働かないため、この法則が適用できます。これにより、個々の運動方程式を複雑に解くことなく、加速度の間の関係式を一つ、簡単に見つけ出すことができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 連立方程式の戦略:
- 特に注意すべき点: 未知数と式の数が多くなると、やみくもに計算を始めても迷子になりやすい。
- 日頃の練習: まずどの文字を消去したいか(例えば、問われいない張力\(T\)や抗力\(N\))を決め、そのための最適な式の組み合わせ(足す、引く、代入する)を考えてから計算を始める。
- 三角関数の計算:
- 特に注意すべき点: \(\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1\) は頻出。この公式を見逃すと、式が不必要に複雑なままになります。
- 日頃の練習: 計算の最終段階で、三角関数が残っていたら、この公式が使えないか常に確認する癖をつける。
- 検算の習慣:
- 特に注意すべき点: 複雑な計算の後は、ミスをしている可能性が高い。
- 日頃の練習: 得られた答えについて、極端な場合を考えてみる(例:\(\theta=0^\circ, 90^\circ\)、\(M \rightarrow \infty\)など)。もし、その極端な状況での物理的に妥当な結果(例:〔A〕の結果と一致する、加速度が0になるなど)と合致すれば、計算が合っている可能性が高いです。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- 〔B〕(2) 加速度\(\alpha\): \(\alpha = \displaystyle\frac{g(1-\sin\theta)}{\cos\theta}\)。もし\(\theta \rightarrow 90^\circ\)なら、\(\sin\theta \rightarrow 1\)で分子が0に近づき、\(\cos\theta \rightarrow 0\)で分母も0に近づくため、不定形になります。しかし、物理的に考えると、BとCがほぼ同じ高さでつり合うため、Bを静止させるには非常に大きな加速度が必要になると予想されます。式の形からは、\(\theta\)が\(90^\circ\)に近づくにつれて加速度が大きくなる傾向が読み取れます。
- 〔C〕(2) 加速度\(a_C\): もし台の質量\(M\)が無限に大きい(\(M \rightarrow \infty\))なら、台は動かないはずです。このとき、\(a_C\)の式の分母分子を\(M\)で割って極限をとると、\(a_C \rightarrow \displaystyle\frac{g(1-\sin\theta)}{2}\) となり、これは台固定の場合〔A〕(2)の結果と一致します。この一致は、解の正しさを強く支持します。
- 別解による検証:
- 〔B〕(3)や〔C〕(1)では、非慣性系で考えた結果と、静止系(または重心則)で考えた結果が一致しました。このように、一つの問題を複数の視点から解き、同じ答えが得られることを確認するのは、最も確実な検算方法の一つです。物理への深い理解にもつながります。
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問題28 (愛知工大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、あらい水平面上での2つの物体の運動を扱います。前半は別々に運動する場合、後半はひもで連結されて運動する場合を考えます。動摩擦力が働く中での運動方程式、等加速度直線運動、そして仕事とエネルギーの関係が問われる問題です。
- 物体Aの質量: \(m\)、初速度: \(v_0\)
- 物体Bの質量: \(2m\)、初速度: \(2v_0\)
- 物体Aと床の間の動摩擦係数: \(\mu_A’\)
- 重力加速度の大きさ: \(g\)
- 前半(1)(2)では、AとBは別々に運動し、静止するまでの移動距離が同じ。
- 後半(3)(4)では、AとBをひもでつなぎ、Aの進行方向に初速度\(v_0\)で運動させる。
- (1) 物体Aが単独で運動し、静止するまでの時間。
- (2) 物体Bと床の間の動摩擦係数。
- (3) AとBを連結して運動させたときの、ひもの張力の大きさ。
- (4) (3)の状況で、物体Bにはたらく摩擦力がした仕事。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている運動方程式を主体とした解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(2)の別解: 仕事とエネルギーの関係を用いる解法
- 主たる解法が運動方程式と等加速度直線運動の公式から移動距離を求めるのに対し、別解では初めの運動エネルギーが全て摩擦による仕事で失われるというエネルギーの観点から直接立式します。
- 問(4)の別解: 仕事とエネルギーの関係(比例配分)を用いる解法
- 主たる解法が加速度と移動距離を計算して仕事の定義式に代入するのに対し、別解では系全体のエネルギー損失を計算し、それを各物体の摩擦力の大きさの比で分配するという考え方で解きます。
- 問(2)の別解: 仕事とエネルギーの関係を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理モデルの深化: 運動を「力の時間的効果(力積・運動方程式)」として捉える視点と、「力の空間的効果(仕事・エネルギー)」として捉える視点の両方を学ぶことで、力学現象への理解が多角的になります。
- 計算の効率化: 特に問(4)の別解は、加速度や移動距離といった中間的な量を計算する必要がなく、より少ないステップで結論に到達できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「動摩擦力が働く物体の運動」です。動摩擦力は常に運動方向と逆向きに、一定の大きさで働くため、物体の運動は等加速度直線運動(減速)となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動方程式: 物体の運動(加速度)と、それに働く力(動摩擦力、張力)を結びつける基本法則です (\(ma=F\))。
- 等加速度直線運動の公式: 加速度が一定のときの、速度・時間・距離の関係を表す公式群です。状況に応じて適切な公式を選択します。
- 仕事とエネルギーの関係: 「物体の運動エネルギーの変化は、された仕事の総和に等しい」という法則で、運動方程式とは異なる視点から問題を解くことができます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問(1), (2)の前半部分は、各物体に働く動摩擦力を求め、運動方程式から加速度を計算し、等加速度直線運動の公式を適用します。仕事とエネルギーの関係を用いた別解も有効です。
- 問(3), (4)の後半部分は、ひもで連結された2物体が一体となって運動すると考え、それぞれの物体について運動方程式を立てて連立させます。