問題71 (山形大+山梨大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、\(x\)軸の正方向に進む正弦波のグラフが与えられ、波の基本的な性質(振幅、波長、速さ、振動数、周期)や、特定の時間・位置における媒質の変位、速度について考察する問題です。特に、時間経過による波形の移動と、速さの条件から波の速さを特定する部分がポイントとなります。
- 波は \(x\) 軸の正方向に進む正弦波である。
- 実線: \(t=0[\text{s}]\) の波形。 (問題図参照)
- 点線: \(t=10[\text{s}]\) の波形。 (問題図参照)
- 波の速さ \(v\) は \(3 [\text{cm/s}] < v < 15 [\text{cm/s}]\)。
- グラフから読み取れる振幅 \(A=1[\text{cm}]\)。
- グラフから読み取れる波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\)。
- (1) 波の振幅、波長、速さ、振動数、周期。
- (2) \(t=0[\text{s}]\)、\(x=220[\text{cm}]\) での変位 \(y\)。
- (3) \(x=100[\text{cm}]\)、\(t=6[\text{s}]\) での変位 \(y\)。
- (4) \(t=0[\text{s}]\) で、媒質の速度が \(0\) の位置と、\(+y\) 方向で最大の速度の位置(図の範囲 \(0 \le x \le 150 [\text{cm}]\) で)。
- (5) \(x=500[\text{cm}]\)、\(t=20[\text{s}]\) での変位 \(y\)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は「波の性質」に関する典型的な問題です。波のグラフの読み取り、波の基本式 \(v=f\lambda\)、波の周期性と媒質の単振動の理解が求められます。
鍵となる物理法則・概念は以下の通りです。
- 波の基本要素: 振幅、波長、周期、振動数、速さ。
- 波の基本式: \(v = f\lambda\), \(T = 1/f\)。
- 波形の移動: 波は速さ \(v\) で形を保ったまま進行する。\(t\) 秒間で \(vt\) だけ進む。
- 媒質の振動: 定位置の媒質は、波が通過する際に単振動する。その変位や速度は、波形と位相によって決まる。
- 波の周期性: 波は波長 \(\lambda\) ごとに同じ形状を繰り返し(空間的周期性)、媒質の各点は周期 \(T\) ごとに同じ振動状態を繰り返す(時間的周期性)。
全体的な戦略としては、まずグラフと条件から波の基本量を特定し、それらを用いて各設問の物理状況を分析していきます。
問1
思考の道筋とポイント
まず、問題のグラフから直接読み取れる振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) を確認します。次に、実線で示された \(t=0[\text{s}]\) の波形と、点線で示された \(t=10[\text{s}]\) の波形に注目します。波は \(x\) 軸の正方向に進むので、実線の波形が \(10[\text{s}]\) かけて点線の波形に移動したと考えます。このとき、波の周期性を考慮すると、波が進んだ距離には複数の可能性が出てきます(例えば、実線のある山が点線の最も近い山に移動した場合、その次に \(1\lambda\) だけ余分に進んだ山に移動した場合、など)。それぞれの可能性について速さを計算し、問題文で与えられた速さの条件(\(3 [\text{cm/s}] < v < 15 [\text{cm/s}]\))を満たすものを特定します。速さが決まれば、基本公式 \(v=f\lambda\) と \(T=1/f\) を用いて振動数 \(f\) と周期 \(T\) を算出します。
この設問における重要なポイント
- 波形グラフから振幅と波長を正確に読み取ること。
- 波の進行距離の候補を複数考え(波の周期性を考慮して \(d, d+\lambda, d+2\lambda, \dots\) のように)、与えられた条件(速さの範囲)で絞り込むこと。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\) および \(T=1/f\) を正しく適用すること。
具体的な解説と立式
問題のグラフから、波の振幅 \(A\) は最大変位の大きさなので \(A=1[\text{cm}]\)。
波長 \(\lambda\) は、グラフ上で同じ位相の点(例えば山から次の山まで)の距離なので、\(x=0[\text{cm}]\) の山から \(x=80[\text{cm}]\) の山までを読むと \(\lambda=80[\text{cm}]\)。
次に、波の速さ \(v\) を求めます。実線の波形 (\(t=0[\text{s}]\)) が点線の波形 (\(t=10[\text{s}]\)) になるには、波が \(x\) 軸正方向に進んだと考えます。
例えば、\(t=0[\text{s}]\) で \(x=0[\text{cm}]\) にあった山が、\(t=10[\text{s}]\) 後に点線の波形の山に移動したと考えます。点線の波形では、\(x=20[\text{cm}], 100[\text{cm}], 180[\text{cm}], \dots\) に山があります。
よって、\(10[\text{s}]\) 間に波が進んだ可能性のある距離 \(d_{\text{進}}\) は、
\(d_{\text{進}} = 20[\text{cm}]\) (\(n=0\) の場合)
または
\(d_{\text{進}} = 20[\text{cm}] + 1 \times 80[\text{cm}] = 100[\text{cm}]\) (\(n=1\) の場合)
または
\(d_{\text{進}} = 20[\text{cm}] + 2 \times 80[\text{cm}] = 180[\text{cm}]\) (\(n=2\) の場合)
など、一般に \(d_{\text{進}} = 20 + n \times 80\) [\(\text{cm}\)](ここで \(n=0, 1, 2, \dots\))となります。
それぞれの速さ \(v = \displaystyle\frac{d_{\text{進}}}{10[\text{s}]}\) は、
\(n=0\) のとき \(d_{\text{進}}=20[\text{cm}]\)、よって \(v = \displaystyle\frac{20}{10} = 2[\text{cm/s}]\)。
\(n=1\) のとき \(d_{\text{進}}=100[\text{cm}]\)、よって \(v = \displaystyle\frac{100}{10} = 10[\text{cm/s}]\)。
\(n=2\) のとき \(d_{\text{進}}=180[\text{cm}]\)、よって \(v = \displaystyle\frac{180}{10} = 18[\text{cm/s}]\)。
問題の条件より、速さ \(v\) は \(3 [\text{cm/s}] < v < 15 [\text{cm/s}]\) なので、これを満たすのは \(v=10[\text{cm/s}]\)。
振動数 \(f\) は \(v=f\lambda\) より、
$$f = \frac{v}{\lambda}$$
周期 \(T\) は \(T=1/f\) または \(T=\lambda/v\) より、
$$T = \frac{1}{f} = \frac{\lambda}{v}$$
使用した物理公式
- 振幅・波長のグラフからの読み取り
- 波の速さ: \(v = \displaystyle\frac{\text{距離}}{\text{時間}}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
- 周期と振動数の関係: \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\)
振幅: \(A = 1 [\text{cm}]\) (グラフより読み取り)
波長: \(\lambda = 80 [\text{cm}]\) (グラフより読み取り)
可能な速さ \(v\) の候補を計算します:
- \(n=0\) のとき: \(d_{\text{進}} = 20 [\text{cm}]\)。 \(v = \displaystyle\frac{20 \text{ [cm]}}{10 \text{ [s]}} = 2 \text{ [cm/s]}\)。
- \(n=1\) のとき: \(d_{\text{進}} = 20 + 80 = 100 [\text{cm}]\)。 \(v = \displaystyle\frac{100 \text{ [cm]}}{10 \text{ [s]}} = 10 \text{ [cm/s]}\)。
- \(n=2\) のとき: \(d_{\text{進}} = 20 + 2 \times 80 = 180 [\text{cm}]\)。 \(v = \displaystyle\frac{180 \text{ [cm]}}{10 \text{ [s]}} = 18 \text{ [cm/s]}\)。
与えられた条件 \(3 [\text{cm/s}] < v < 15 [\text{cm/s}]\) を満たすのは、\(v = 10 \text{ [cm/s]}\)。
振動数 \(f\) を求めます:
$$f = \frac{v}{\lambda} = \frac{10 \text{ [cm/s]}}{80 \text{ [cm]}} = \frac{1}{8} \text{ [Hz]} = 0.125 \text{ [Hz]}$$
周期 \(T\) を求めます:
$$T = \frac{1}{f} = \frac{1}{1/8 \text{ [Hz]}} = 8 \text{ [s]}$$
または、
$$T = \frac{\lambda}{v} = \frac{80 \text{ [cm]}}{10 \text{ [cm/s]}} = 8 \text{ [s]}$$
まず、グラフを見て、波の高さの半分である振幅が \(1[\text{cm}]\)、波一つ分の長さである波長が \(80[\text{cm}]\) であることを読み取ります。
次に、実線の波(0秒後)が点線の波(10秒後)に変わったことに注目します。波は右に進むので、例えば0秒のときの \(x=0\) の「山」が、10秒後には \(x=20[\text{cm}]\) の「山」に移動したと考えられます。でも、波は繰り返しているので、もしかしたら \(x=20[\text{cm}]\) ではなく、さらに \(80[\text{cm}]\) 進んだ \(x=100[\text{cm}]\) の「山」まで進んだかもしれませんし、さらに \(80[\text{cm}]\) 進んだ \(x=180[\text{cm}]\) の「山」かもしれません。
もし進んだ距離が \(20[\text{cm}]\) なら速さは \(20/10 = 2[\text{cm/s}]\)。
もし \(100[\text{cm}]\) なら速さは \(100/10 = 10[\text{cm/s}]\)。
もし \(180[\text{cm}]\) なら速さは \(180/10 = 18[\text{cm/s}]\)。
問題に「速さは \(3[\text{cm/s}]\) より速く \(15[\text{cm/s}]\) より遅い」とあるので、この中で当てはまるのは \(10[\text{cm/s}]\) です。
速さが \(10[\text{cm/s}]\) と分かれば、振動数 \(f\) は公式 \(v=f\lambda\) から \(f = v/\lambda = 10/80 = 0.125[\text{Hz}]\)。周期 \(T\) は公式 \(T=1/f\) から \(T = 1/0.125 = 8[\text{s}]\) と求まります。
波の振幅 \(A=1[\text{cm}]\)、波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\)、速さ \(v=10[\text{cm/s}]\)、振動数 \(f=0.125[\text{Hz}]\)、周期 \(T=8[\text{s}]\)。
これらの値は物理的に妥当であり、特に速さが与えられた条件を満たすように複数の可能性から一つに定まった点が重要です。単位もそれぞれ物理量として適切です。
問2
思考の道筋とポイント
この設問では、\(t=0[\text{s}]\) のときの波形(実線グラフ)について、特定の位置 \(x=220[\text{cm}]\) における変位 \(y\) を求めます。波は波長 \(\lambda\) ごとに同じ形を繰り返すという「空間的な周期性」を利用します。具体的には、\(x=220[\text{cm}]\) という位置が、波長の整数倍だけ移動したときにグラフのどの位置と等価になるかを考え、その等価な位置での変位をグラフから読み取ります。
この設問における重要なポイント
- 波の空間的な周期性(\(1\lambda\) ごとに同じ位相、同じ変位になる)を理解し、適用すること。
- 対象となる位置を、グラフで読み取れる範囲(\(0 \le x < \lambda\))の等価な位置に正しく変換すること。
具体的な解説と立式
\(t=0[\text{s}]\) のときの波形(実線グラフ)について考えます。波は波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\) ごとに同じ形を繰り返します。
位置 \(x=220[\text{cm}]\) について、この位置が \(1\) 波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\) の何倍の位置に対応するかを調べます。
$$220[\text{cm}] = q \times \lambda + x’$$
の形で表し、\(x’\)(ただし \(0 \le x’ < \lambda\))を求めます。
$$220[\text{cm}] = 2 \times 80[\text{cm}] + 60[\text{cm}]$$
したがって、\(x=220[\text{cm}] = 2\lambda + 60[\text{cm}]\)。
これは、\(x=220[\text{cm}]\) の点の変位は、\(x=60[\text{cm}]\) の点の変位と同じであることを意味します。
\(t=0[\text{s}]\) のグラフ(実線)で \(x=60[\text{cm}]\) の位置を見ると、波の谷にあたり、変位は \(y=-1[\text{cm}]\) です。
使用した物理公式
- 波の空間的周期性: \(y(x,t) = y(x+n\lambda, t)\) (\(n\) は整数)
与えられた位置 \(x=220[\text{cm}]\) と波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\) から、
$$220 \div 80 = 2 \text{ 余り } 60$$
この計算は、\(220[\text{cm}] = 2 \times 80[\text{cm}] + 60[\text{cm}]\) を意味します。
よって、\(x=220[\text{cm}]\) での変位は、\(t=0[\text{s}]\) の波形の \(x=60[\text{cm}]\) での変位と同じになります。
問題のグラフ(実線)より、\(x=60[\text{cm}]\) のとき \(y=-1[\text{cm}]\)。
\(t=0\) の時の波の形について考えます。波は \(80[\text{cm}]\) 進むごとに同じ形が繰り返されます。\(x=220[\text{cm}]\) という場所がどんな状態かを知りたいのですが、\(220\) を \(80\) で割ると、\(220 = 2 \times 80 + 60\) となります。これは、\(x=220[\text{cm}]\) の場所は、\(x=60[\text{cm}]\) の場所と波の形としては全く同じ状態だということです(\(2\)波長分だけ離れているだけ)。そこで、\(t=0\) のグラフ(実線)で \(x=60[\text{cm}]\) の場所を見ると、ちょうど波の谷になっていて、変位は \(y=-1[\text{cm}]\) です。
\(t=0[\text{s}]\)、\(x=220[\text{cm}]\) における変位は \(y=-1[\text{cm}]\)。
この結果は振幅 \(A=1[\text{cm}]\) の範囲内であり、波の空間的な周期性を正しく利用して求めることができました。
問3
思考の道筋とポイント
この設問では、特定の位置 \(x=100[\text{cm}]\) における、特定の時刻 \(t=6[\text{s}]\) での変位 \(y\) を求めます。これには主に二つの考え方があります。
方法A: 媒質の単振動を追跡する
1. まず、\(t=0[\text{s}]\) における \(x=100[\text{cm}]\) の点の状態(変位と、もし必要なら振動の方向)を把握します。波の空間的周期性を利用して、\(x=100[\text{cm}]\) がグラフ上のどの点と等価かを見ます。
2. その点の媒質が単振動をすると考え、周期 \(T\)(問1で求めた \(8[\text{s}]\))のうち \(t=6[\text{s}]\) がどの位相に相当するかを計算します(\(t/T\) を考える)。
3. 単振動の変位の時間変化(例えば、山から始まれば \(A \rightarrow 0 \rightarrow -A \rightarrow 0 \rightarrow A\))を元に、\(6[\text{s}]\) 後の変位を決定します。
方法B: 波形を平行移動させて考える(別解として模範解答にも示唆あり)
1. 波は速さ \(v=10[\text{cm/s}]\) で \(x\) 軸正方向に進みます。\(t=6[\text{s}]\) 間で波が進む距離は \(d = vt = 10[\text{cm/s}] \times 6[\text{s}] = 60[\text{cm}]\)。
2. \(x=100[\text{cm}]\) における \(t=6[\text{s}]\) の変位は、\(t=0[\text{s}]\) の波形における \(x’ = 100[\text{cm}] – 60[\text{cm}] = 40[\text{cm}]\) の位置の変位と同じであると考えられます。
3. \(t=0[\text{s}]\) のグラフ(実線)で \(x=40[\text{cm}]\) の変位を読み取ります。
この設問における重要なポイント
- 特定点の媒質の振動を時間追跡できること(単振動の位相の変化を理解していること)。
- または、波形が \(vt\) だけ移動するという事実を使って、過去の波形の対応する点を見つけることができること。
- 波の周期 \(T\) と経過時間 \(t\) の関係(\(t/T\))を正しく評価すること。
具体的な解説と立式
(方法A: 媒質の単振動を追跡する)
まず、\(x=100[\text{cm}]\) の位置が \(t=0[\text{s}]\) でどのような状態かを確認します。
波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\) なので、\(100[\text{cm}] = 1 \times 80[\text{cm}] + 20[\text{cm}] = \lambda + 20[\text{cm}]\)。
したがって、\(x=100[\text{cm}]\) の点の \(t=0[\text{s}]\) での変位は、\(x=20[\text{cm}]\) の点の変位と同じです。
グラフ(実線)より、\(t=0[\text{s}]\) で \(x=20[\text{cm}]\) は山であり、変位は \(y=1[\text{cm}]\)。
つまり、\(x=100[\text{cm}]\) の媒質は、時刻 \(t=0[\text{s}]\) に振幅の正の端(山、\(y=A=1[\text{cm}]\))にいます。
この媒質の振動の周期は波の周期 \(T=8[\text{s}]\) と同じです。求めたいのは \(t=6[\text{s}]\) での変位です。
経過時間 \(t=6[\text{s}]\) が、周期 \(T=8[\text{s}]\) の何倍かを考えます。
$$\frac{t}{T} = \frac{6[\text{s}]}{8[\text{s}]} = \frac{3}{4}$$
時刻 \(t=0\) で \(y=A\) (山) の状態から単振動を始める媒質が、\(\frac{3}{4}T\) 経過した後の変位は、以下のように考えられます。
- \(t=0\): \(y=A\) (山)
- \(t=\frac{1}{4}T\): \(y=0\) (振動中心、速度は \(-y\) 方向)
- \(t=\frac{2}{4}T = \frac{1}{2}T\): \(y=-A\) (谷)
- \(t=\frac{3}{4}T\): \(y=0\) (振動中心、速度は \(+y\) 方向)
したがって、\(t=6[\text{s}]\)(つまり \(\frac{3}{4}T\) 後)での変位は \(y=0[\text{cm}]\)。
使用した物理公式
- 波の空間的周期性: \(y(x,t) = y(x+n\lambda, t)\)
- 単振動の周期的な変位変化
- (別解用) 波の進行距離: \(d=vt\)
方法Aの計算:
1. \(x=100[\text{cm}]\) の初期状態の特定:
\(100[\text{cm}] = 1 \times 80[\text{cm}] + 20[\text{cm}]\)。
よって、\(x=100[\text{cm}]\) は \(t=0[\text{s}]\) において \(x=20[\text{cm}]\) と同じ状態。
グラフ(実線)から \(t=0[\text{s}], x=20[\text{cm}]\) で \(y=1[\text{cm}]\) (山)。
2. 経過時間の周期に対する割合の計算:
周期 \(T=8[\text{s}]\)、経過時間 \(t=6[\text{s}]\)。
\(\displaystyle\frac{t}{T} = \frac{6}{8} = \frac{3}{4}\)。
3. 変位の決定:
\(t=0\) で山 (\(y=A\)) の状態から \(\frac{3}{4}T\) 後の変位は \(y=0\)。
したがって、\(y=0[\text{cm}]\)。
方法B(別解)の計算:
1. 波が \(6[\text{s}]\) 間に進む距離の計算:
\(d = v \times t = 10[\text{cm/s}] \times 6[\text{s}] = 60[\text{cm}]\)。
2. \(t=0[\text{s}]\) の波形で参照すべき位置の計算:
\(x_{\text{参照}} = x_{\text{注目点}} – d = 100[\text{cm}] – 60[\text{cm}] = 40[\text{cm}]\)。
3. 変位の読み取り:
\(t=0[\text{s}]\) のグラフ(実線)で \(x=40[\text{cm}]\) の変位を見ると \(y=0[\text{cm}]\)。
\(x=100[\text{cm}]\) の場所の、\(6\) 秒後の揺れ具合(変位)を知りたいですね。
考え方1:その場の揺れを追いかける
まず、\(0\) 秒のとき、\(x=100[\text{cm}]\) はどんな状態でしょう? 波長が \(80[\text{cm}]\) なので、\(100 = 80+20\) ですから、\(x=20[\text{cm}]\) の場所と同じ状態です。\(0\) 秒のグラフ(実線)で \(x=20[\text{cm}]\) は「山」(\(y=1[\text{cm}]\)) ですね。
この「山」の状態から \(6\) 秒後を考えます。波の揺れの周期は \(8\) 秒でした。
\(6\) 秒というのは、周期 \(8\) 秒の \(6/8 = 3/4\) にあたります。
「山」からスタートして、\(1/4\)周期で真ん中(\(y=0\))、\(2/4\)周期(つまり\(1/2\)周期)で「谷」(\(y=-1\))、そして \(3/4\)周期でまた真ん中(\(y=0\))に戻ってきます。
ですから、\(6\) 秒後の変位は \(y=0[\text{cm}]\) です。
考え方2:波の形を動かして見る(別解)
波は \(1\) 秒間に \(10[\text{cm}]\) 進みます。なので \(6\) 秒間では \(10 \times 6 = 60[\text{cm}]\) 進みます。
ということは、\(x=100[\text{cm}]\) の場所の \(6\) 秒後の状態は、時間を巻き戻して考えると、\(0\) 秒のときの波の形の \(100-60=40[\text{cm}]\) の場所の状態と同じはずです。
\(0\) 秒のグラフ(実線)で \(x=40[\text{cm}]\) の場所を見ると、変位は \(y=0[\text{cm}]\) です。
どちらの考え方でも同じ答えになりますね。
\(x=100[\text{cm}]\)、\(t=6[\text{s}]\) での変位は \(y=0[\text{cm}]\)。
二つの異なるアプローチ(媒質の単振動を追う方法と、波形を移動させて考える方法)で同じ結果が得られたため、解答の信頼性が高まります。どちらの方法も波を理解する上で重要です。
問4
思考の道筋とポイント
この設問では、\(t=0[\text{s}]\) のときの波形(実線グラフ)について、図の範囲(\(0 \le x \le 150 [\text{cm}]\))で、媒質の速度に関する条件を満たす位置を探します。
1. 媒質の速度が \(0\) の位置: 媒質が単振動をするとき、速度が \(0\) になるのは振動の端、つまり変位が最大または最小となるときです。波形でいうと、これは「山」または「谷」の位置に対応します。グラフからこれらの位置を読み取ります。
2. 媒質の速度が \(+y\) 方向で最大の位置: 媒質の速度が最大になるのは、振動の中心、つまり変位 \(y=0[\text{cm}]\) の位置です。さらに、その速度の向きが \(+y\) 方向(上向き)であるものを探します。波は \(x\) 軸の正方向に進んでいることを考慮する必要があります。\(y=0\) の点で、これから波の山がやってくるような位置(波形が下り坂になっている点)の媒質が \(+y\) 方向に動きます。
この設問における重要なポイント
- 媒質の速度が \(0\) になるのは、単振動の変位の端(波の山・谷)であることを理解している。
- 媒質の速度が最大になるのは、単振動の変位 \(0\) の点(振動中心)であることを理解している。
- 波の進行方向と波形グラフの傾きから、媒質の振動の向き(速度の向き)を正しく判断できること。(\(x\)軸正方向に進む波では、\(v_y = -v \frac{\partial y}{\partial x}\) の関係があり、波形の傾きが負 (\(\frac{\partial y}{\partial x} < 0\)) のとき \(v_y > 0\) となる。)
具体的な解説と立式
\(t=0[\text{s}]\) の波形(実線グラフ)について、図の範囲 \(0 \le x \le 150 [\text{cm}]\) で考えます。
媒質の速度が \(0\) の位置:
媒質が単振動をするとき、速度が \(0\) になるのは変位が最大または最小のとき、つまり振動の端です。これは波形でいうと「山」または「谷」の位置に対応します。
グラフ(実線)から、図の範囲で山と谷の位置を読み取ると、
山となっている位置: \(x=20[\text{cm}]\), \(x=20+80=100[\text{cm}]\)
谷となっている位置: \(x=60[\text{cm}]\), \(x=60+80=140[\text{cm}]\)
よって、媒質の速度が \(0\) の位置は \(x=20, 60, 100, 140[\text{cm}]\)。
媒質の速度が \(+y\) 方向で最大の位置:
媒質の速度が最大になるのは、振動の中心、つまり変位 \(y=0[\text{cm}]\) の位置です。
さらに、その速度の向きが \(+y\) 方向であるものを探します。波は \(x\) 軸の正方向に進んでいます。
\(y=0\) となる位置で、波形が「下り坂」(グラフの傾きが負、\(\displaystyle\frac{dy}{dx} < 0\))になっている点では、これから波の山がやってくる(あるいはその部分の媒質が上に持ち上げられる)ので、媒質は \(+y\) 方向に動きます。
(模範解答の図Bのような状況です。B点では \(y=0\) であり、波が右に進むとB点は上に変位します。)
グラフ(実線)から \(y=0\) となる位置で、波形が下り坂になっている点を探します。
- \(x=0[\text{cm}]\): 山 (\(y=1\)) なので速度 \(0\)。
- \(x=40[\text{cm}]\): \(y=0\)。この点の右側は谷 (\(x=60\)) に向かっており、波形は下り坂。よって媒質は \(+y\) 方向に動き、速度は最大。
- \(x=80[\text{cm}]\): 山 (\(y=1\)) なので速度 \(0\)。
- \(x=120[\text{cm}]\): \(y=0\)。この点の右側は谷 (\(x=140\)) に向かっており、波形は下り坂。よって媒質は \(+y\) 方向に動き、速度は最大。
したがって、図の範囲 \(0 \le x \le 150 [\text{cm}]\) では、媒質の速度が \(+y\) 方向で最大となるのは \(x=40[\text{cm}]\) と \(x=120[\text{cm}]\) です。
使用した物理公式
- 媒質の単振動における速度と変位の関係:
- 速度 \(0 \iff\) 変位が端(山・谷)
- 速度最大 \(\iff\) 変位 \(0\)(振動中心)
- 波の進行方向と媒質の振動方向の関係
媒質の速度が \(0\) の位置の特定:
グラフ(実線、\(0 \le x \le 150 [\text{cm}]\))から山と谷の \(x\) 座標を読み取ります。
山: \(x=20[\text{cm}]\), \(x=100[\text{cm}]\)。
谷: \(x=60[\text{cm}]\), \(x=140[\text{cm}]\)。
これらの位置で媒質の速度は \(0\) です。
媒質の速度が \(+y\) 方向で最大の位置の特定:
グラフ(実線、\(0 \le x \le 150 [\text{cm}]\))から \(y=0\) となり、かつその点で波形が下り坂(傾きが負)となっている \(x\) 座標を読み取ります。
\(x=40[\text{cm}]\): \(y=0\)。\(x=20\) (山) と \(x=60\) (谷) の間にあり、傾きは負。
\(x=120[\text{cm}]\): \(y=0\)。\(x=100\) (山) と \(x=140\) (谷) の間にあり、傾きは負。
これらの位置で媒質の速度は \(+y\) 方向で最大です。
\(0\) 秒の時の波の形(実線グラフ)を見て考えます。
まず、媒質の速さが \(0\) になる場所:
これは、ブランコで一番高いところに来て一瞬止まるのと同じで、波の「山」のてっぺんや「谷」の底です。グラフで \(0[\text{cm}]\) から \(150[\text{cm}]\) の間を探すと、
山は \(x=20[\text{cm}]\) と \(x=100[\text{cm}]\)。
谷は \(x=60[\text{cm}]\) と \(x=140[\text{cm}]\)。
これらの場所では、媒質の上下の動きが一瞬止まります。
次に、媒質の速さが \(+y\) 方向(上向き)に最大になる場所:
速さが最大になるのは、ブランコが一番低いところ(真ん中)を通過するときと同じで、波の変位が \(y=0[\text{cm}]\) の場所です。
さらに「上向き」に動いている点を探します。波は右に進んでいます。
想像してみてください。波の「坂道」があります。
・もし坂が「下り坂」だったら、その場所にいる媒質はこれから上に持ち上げられます(山が近づいてくる途中か、谷を過ぎた直後で \(y=0\) の場合)。
・もし坂が「上り坂」だったら、その場所にいる媒質はこれから下に引き下げられます。
なので、\(y=0\) で、かつ波形が「下り坂」になっている場所を探します。
グラフを見ると、
\(x=40[\text{cm}]\) は \(y=0\) で、山の \(x=20\) から谷の \(x=60\) へ向かう途中の下り坂です。なので、ここは上向きに速度最大。
\(x=120[\text{cm}]\) も \(y=0\) で、山の \(x=100\) から谷の \(x=140\) へ向かう途中の下り坂です。なので、ここも上向きに速度最大。
となります。
\(t=0[\text{s}]\) において、
媒質の速度が \(0\) の位置は、\(x=20, 60, 100, 140[\text{cm}]\)。
媒質の速度が \(+y\) 方向で最大の速度の位置は、\(x=40, 120[\text{cm}]\)。
これらは、波における媒質の単振動の基本的な性質(端で速度ゼロ、中心で速度最大)と、波の進行方向からくる位相の関係を正しく反映しています。
問5
思考の道筋とポイント
この設問では、特定の位置 \(x=500[\text{cm}]\) における、特定の時刻 \(t=20[\text{s}]\) での変位 \(y\) を求めます。これは問2と問3の考え方を組み合わせたものです。
1. 位置の周期性を利用: まず、\(x=500[\text{cm}]\) という位置が、波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\) の周期性を考えると、\(t=0[\text{s}]\) においてグラフ上のどの位置(\(0 \le x’ < \lambda\))と等価であるかを特定します。これにより、\(x=500[\text{cm}]\) の点が \(t=0[\text{s}]\) でどのような状態(例えば、山、谷、変位0など)にあるかが分かります。
2. 時間の周期性を利用: 次に、時刻 \(t=20[\text{s}]\) が、波の周期 \(T=8[\text{s}]\) の周期性を考えると、実質的にどの時間経過(\(0 \le t’ < T\))と同じであるかを特定します。
3. 変位の決定: ステップ1で特定した \(t=0[\text{s}]\) での状態から、ステップ2で特定した実質的な時間だけ経過したときに、その媒質がどのような変位になるかを、単振動の周期的な変化を元に考えます。
この設問における重要なポイント
- 波の空間的周期性 \(y(x,t) = y(x+n\lambda, t)\) を用いて、遠くの位置を基準範囲内の位置に換算すること。
- 波の時間的周期性 \(y(x,t) = y(x, t+mT)\) を用いて、未来の時刻を基準周期内の時刻に換算すること(\(n, m\) は整数)。
- 換算後の初期状態と経過時間から、単振動の変位を正確に求めること。
具体的な解説と立式
まず、位置 \(x=500[\text{cm}]\) について、波長 \(\lambda=80[\text{cm}]\) を用いて基準化します。
$$500[\text{cm}] = q \times 80[\text{cm}] + x’$$
\(500 \div 80 = 6\) 余り \(20\)。
なので、\(x=500[\text{cm}] = 6\lambda + 20[\text{cm}]\)。
これは、\(x=500[\text{cm}]\) の点の振る舞いは、\(x=20[\text{cm}]\) の点の振る舞いと同じであることを意味します。
\(t=0[\text{s}]\) において、グラフ(実線)から \(x=20[\text{cm}]\) の点は山であり、変位は \(y=1[\text{cm}]\)。
次に、時間 \(t=20[\text{s}]\) について、周期 \(T=8[\text{s}]\) を用いて基準化します。
$$20[\text{s}] = q’ \times 8[\text{s}] + t’$$
\(20 \div 8 = 2\) 余り \(4\)。
なので、\(t=20[\text{s}] = 2T + 4[\text{s}]\)。
これは、\(t=20[\text{s}]\) 後の状態は、\(t=0[\text{s}]\) の状態から \(4[\text{s}]\) だけ時間が経過した状態と同じであることを意味します。
したがって、この問題は「\(t=0[\text{s}]\) で山 (\(y=1[\text{cm}]\)) の状態にある媒質(元は \(x=20[\text{cm}]\) の点)が、\(4[\text{s}]\) 後にどのような変位になるか」という問いに帰着されます。
経過時間 \(4[\text{s}]\) は、周期 \(T=8[\text{s}]\) の \(\displaystyle\frac{4[\text{s}]}{8[\text{s}]} = \frac{1}{2}\) 倍です。つまり、\(\frac{1}{2}T\) だけ時間が経過します。
\(t=0\) で \(y=A\) (山) の状態から単振動を始める媒質が、\(\frac{1}{2}T\) 経過した後の変位は、
- \(t=0\): \(y=A\) (山)
- \(t=\frac{1}{4}T\): \(y=0\)
- \(t=\frac{1}{2}T\): \(y=-A\) (谷)
となるので、変位は \(y=-A = -1[\text{cm}]\)。
使用した物理公式
- 波の空間的周期性: \(y(x,t) = y(x+n\lambda, t)\)
- 波の時間的周期性: \(y(x,t) = y(x, t+mT)\)
- 単振動の周期的な変位変化
1. 位置の換算:
\(x=500[\text{cm}]\)。 \(\lambda=80[\text{cm}]\)。
\(500 \div 80 = 6\) 余り \(20\)。
よって、\(x=500[\text{cm}]\) は \(x=20[\text{cm}]\) と等価な振る舞いをします。
\(t=0[\text{s}]\) で \(x=20[\text{cm}]\) は山 (\(y=1[\text{cm}]\))。
2. 時間の換算:
\(t=20[\text{s}]\)。 \(T=8[\text{s}]\)。
\(20 \div 8 = 2\) 余り \(4\)。
よって、\(t=20[\text{s}]\) 後の状態は、\(t=0[\text{s}]\) の状態から \(4[\text{s}]\) 後の状態と同じ。
3. 変位の計算:
\(t=0\) で山 (\(y=1[\text{cm}]\)) の媒質が、\(4[\text{s}]\) 後(これは周期 \(T=8[\text{s}]\) の \(\frac{4}{8} = \frac{1}{2}T\) に相当)の変位を求めます。
単振動において、山 (\(y=A\)) の状態から \(\frac{1}{2}T\) 後は谷 (\(y=-A\)) になります。
振幅 \(A=1[\text{cm}]\) なので、変位は \(y = -1[\text{cm}]\)。
\(x=500[\text{cm}]\) という遠い場所の、\(20\) 秒後という未来の揺れ具合(変位)を知りたい問題です。
まず場所について:波は \(80[\text{cm}]\) ごとに同じ形が繰り返されます。\(500\) を \(80\) で割ると \(500 = 6 \times 80 + 20\) なので、\(x=500[\text{cm}]\) の場所は、\(x=20[\text{cm}]\) の場所と全く同じように揺れます。\(0\) 秒のとき、\(x=20[\text{cm}]\) はグラフ(実線)から「山」(\(y=1[\text{cm}]\)) です。
次に時間について:波の揺れの周期は \(8\) 秒です。\(20\) 秒後というのは、\(8\) 秒たったら元に戻り、また \(8\) 秒(合計 \(16\) 秒)たっても元に戻るので、実質的には \(20 – 16 = 4\) 秒後と同じ状態です。
つまり、この問題は「\(0\) 秒のとき山 (\(y=1[\text{cm}]\)) だった点が、\(4\) 秒後にはどうなっているか?」という問題に言い換えられます。
\(4\) 秒というのは、周期 \(8\) 秒のちょうど半分 (\(1/2\)周期) です。
「山」からスタートして \(1/2\)周期後は、反対側の「谷」になります。
ですから、変位は \(y=-1[\text{cm}]\) です。
\(x=500[\text{cm}]\)、\(t=20[\text{s}]\) での変位は \(y=-1[\text{cm}]\)。
波の空間的な周期性(波長ごと)と時間的な周期性(周期ごと)を正しく組み合わせて考えることで、複雑に見える問題も単純化して解くことができました。答えは振幅の範囲内であり、妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の基本特性の理解: 振幅 \(A\)、波長 \(\lambda\)、速さ \(v\)、振動数 \(f\)、周期 \(T\) といった波を表す基本的な物理量の定義と、それらの間の関係式 (\(v=f\lambda\), \(T=1/f\)) を正確に理解し、使いこなせることが最も重要でした。特に問1ではこれらの知識が直接問われました。
- 波の進行と波形の移動: 波が一定の速さでその形を保ったまま空間を伝わっていくという現象の理解。これにより、ある時刻の波形から別の時刻の波形を推測したり、逆に異なる時刻の波形から波の速さを決定したりすることができます(問1)。
- 波の周期性(空間的・時間的):
- 空間的周期性: 波は波長 \(\lambda\) ごとに同じパターンを繰り返すため、\(x\) と \(x+n\lambda\) ( \(n\) は整数) の位置は同じ振動状態となります(問2、問5)。
- 時間的周期性: 媒質の各点は周期 \(T\) で同じ振動を繰り返すため、時刻 \(t\) と \(t+mT\) ( \(m\) は整数) の状態は同じになります(問3、問5)。
- 媒質の単振動: 波が伝わる媒質の各点は、その場で単振動(この場合は上下の往復運動)をします。その変位、速度は時間とともに周期的に変化します。媒質の速度が0になるのは振動の端(山や谷)、最大になるのは振動の中心(変位0)であるという理解が問4で必要でした。
- 条件からの情報抽出: 問題文中の「波の速さは \(3 [\text{cm/s}]\) より速く \(15 [\text{cm/s}]\) より遅い」といった付加的な条件を正しく利用して、複数の可能性の中から唯一の解を絞り込む論理的な思考力が問1で試されました。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 類似問題への応用:
- 異なる種類の波(音波、光波、弦を伝わる波など)に関する同様の問題。基本的な考え方は共通です。
- \(y-t\) グラフ(ある位置の媒質の時間変化を表すグラフ)が与えられ、そこから \(y-x\) グラフ(ある瞬間の波形)を推測したり、その逆を行ったりする問題。
- 定常波の問題(入射波と反射波の重ね合わせ)。定常波の腹や節の位置、振動の様子を理解する上で、進行波の知識が基礎となります。
- 波の式 (\(y = A \sin(2\pi(t/T – x/\lambda))\) など) を用いて具体的な値を計算する問題。
- 初見の問題への着眼点:
- 何が与えられているか? (\(y-x\) グラフか \(y-t\) グラフか、波の進む向き、初期条件など)
- 何を問われているか? (波の基本量か、特定位置・時刻の変位・速度かなど)
- グラフから直接読み取れる情報は何か? (振幅、波長、周期など)
- 複数の波形や時刻の情報がある場合、それらの関係性は? (波の移動距離、経過時間など)
- 付加的な条件や制約はないか? (速さの範囲、位相の情報など)
- 波の基本式 \(v=f\lambda\), \(T=1/f\) は常に念頭に置く。
- ヒント・注意点:
- 波の進む向きを常に意識する。これにより媒質の速度の向きなどを判断しやすくなります。
- 空間的な周期性 (\(\lambda\)) と時間的な周期性 (\(T\)) を混同しないように注意する。
- 位相の考え方をしっかり身につける。「山」「谷」「変位0で速度正」「変位0で速度負」など、代表的な位相の状態を把握する。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 波の速さと媒質の速さの混同: 波の速さ \(v\) は波形が進む速さであり一定ですが、媒質の速さ \(v_y\) は単振動の速度なので時間とともに変化します。これらを混同しないように。
- 波の移動距離の解釈: 問1のように、時間差のある2つの波形から波の速さを求める際、波が進んだ距離が \(d\) なのか \(d+n\lambda\) なのかを正しく考慮する必要があります。図だけ見て最短距離で判断してしまうと、条件に合う解を見逃す(あるいは間違う)可能性があります。
- 媒質の速度の向きの判断ミス: 問4で、波の進行方向と波形から媒質の振動方向を判断する際、直感的に間違えやすいポイントです。「波が進む向きに媒質も動く」わけではありません。媒質はその場で振動するだけです。波形のある部分の媒質が次にどちらへ動くかは、波の形とその進行方向から論理的に導く必要があります(例:波形の傾きを利用する)。
- 正弦波の式の符号の混乱: 波の式を \(y = A \sin(\omega t – kx)\) や \(y = A \sin(kx – \omega t)\) などで表す際、符号の選び方で波の進行方向や初期位相が変わります。グラフと式を結びつける際に注意が必要です。
- 周期と波長の単位の混同: 周期 \(T\) は時間 [\(\text{s}\)]、波長 \(\lambda\) は長さ [\(\text{m}\)] または [\(\text{cm}\)] です。基本的なことですが、混乱すると計算結果が大きく狂います。
対策: 基本に立ち返り、定義を正確に覚え、図を描き、物理現象をイメージしながら考える習慣をつけましょう。簡単なケースで検算することも有効です。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題で有効だったイメージ化と図示:
- \(y-x\) グラフ (波形グラフ): これが問題の出発点であり、振幅、波長、特定位置の変位などを視覚的に捉えるために不可欠でした。
- 波形の平行移動のイメージ: \(t=0\) の波形が時間とともに \(x\) 軸正方向に形を保ったまま移動していくイメージは、問1での速さの特定や、問3の別解で役立ちました。
- 媒質の単振動のイメージ: 波形のある一点に着目し、その点が時間とともに上下に単振動する様子をイメージすることは、問3、問4、問5を解く上で重要でした。特に、山 \(\rightarrow\) 0 \(\rightarrow\) 谷 \(\rightarrow\) 0 \(\rightarrow\) 山という \(1/4\) 周期ごとの変化を把握することが役立ちました。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 軸のラベル(\(x, y, t\) など)と単位を明記する。
- 振幅、波長、周期などの重要なパラメータが図から読み取れるように、目盛りを適切に設定したり、特徴的な点(山、谷、変位0の点)を強調したりする。
- 波の進行方向を矢印などで明確に示す。
- 複数の波形を比較する場合は、実線、点線、色分けなどで区別し、それぞれの時刻や条件を明記する。
- 媒質の速度などを考える際は、波形に加えて、その点での速度ベクトルを模式的に描き加えると理解しやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v=f\lambda\): 波の速さ、振動数、波長の普遍的な関係を示すため。問1で速さと波長から振動数を求めるのに使用。
- \(T = 1/f\): 周期と振動数の定義に基づく逆数関係。問1で使用。
- 波の進行距離 \(d = vt\): 一定速度運動の基本。問1で時間と距離から速度を議論する際、また問3の別解で波の移動距離を計算する際に暗黙的に使用。
- 空間的周期性 (\(x \equiv x+n\lambda\)): 波形が空間的に繰り返す性質を利用し、遠くの点の状態を基準範囲内の点の状態に置き換えるため。問2、問3、問5で使用。
- 時間的周期性 (\(t \equiv t+mT\)): 媒質の振動が時間的に繰り返す性質を利用し、未来の時刻の状態を基準周期内の時刻の状態に置き換えるため。問5で使用。
- 単振動の位相変化 (山 \(\rightarrow\) 0 \(\rightarrow\) 谷 \(\rightarrow\) 0 \(\rightarrow\) 山): 特定の初期状態からの時間経過による変位を具体的に知るため。問3、問5で使用。
- 媒質の速度が0 \(\iff\) 変位が端 (山・谷): 単振動のエネルギー保存則から(あるいは運動の折り返し点として)導かれる性質。問4で使用。
- 媒質の速度が最大 \(\iff\) 変位が0 (振動中心): 同様に単振動の性質。問4で使用。
- 波の進行方向と媒質の速度の向きの関係: \(y(x-vt)\) のような進行波の関数形から、\(v_y = \partial y/\partial t\) と \(v_x = v\) および \( \partial y/\partial x\) の関係を導き出すことで、波形の傾きと媒質速度の向きを結びつけるため。問4で使用。
これらの公式や法則の選択は、問題で何が問われ、何が与えられているかを正確に把握し、それらを結びつける論理的な思考に基づいています。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (問1) 波の基本量の同定:
- グラフから \(A, \lambda\) を読み取る。
- \(t=0\) と \(t=10\text{s}\) の波形変化に着目し、波が進んだ距離の候補 \(d_k = d_0 + k\lambda\) を列挙する。
- 各 \(d_k\) から速さ \(v_k = d_k/10\) を計算する。
- 問題文の速さの条件 (\(3 < v < 15\)) で \(v\) を一意に決定する。
- \(v\) と \(\lambda\) から、\(f=v/\lambda\), \(T=1/f\) を計算する。
- (問2, 3, 5) 特定点・時刻の変位の決定:
- 対象の \(x\) 座標を、空間周期性 \(\lambda\) を用いて \(x’ = x \pmod \lambda\) の形に正規化する。
- \(t=0\) での \(x’\) における変位(初期状態)をグラフから読み取る。
- 対象の時刻 \(t\) を、時間周期性 \(T\) を用いて \(t’ = t \pmod T\) の形に正規化する(問5の場合)。問3では \(t=6\text{s}\) をそのまま使う。
- 初期状態から \(t’\) (または \(t\)) だけ時間が経過したときの変位を、単振動の周期的な変化(山 \(\rightarrow\) 0 \(\rightarrow\) 谷 \(\rightarrow\) 0 \(\rightarrow\) 山 のサイクル)を元に判断する。
- (問3別解) \(t=0\) の波形を \(x\) 軸正方向に \(vt\) だけ平行移動させ、移動後の波形の \(x_{\text{対象}}\) での変位を読む(これは \(t=0\) の波形の \(x_{\text{対象}}-vt\) での変位と同じ)。
- (問4) 媒質の速度に関する条件を満たす位置の特定:
- 速度ゼロの条件: 媒質の単振動の端であること。これは波の山または谷の位置に該当する。\(t=0\) のグラフから該当する \(x\) を列挙する。
- 速度最大 (\(+y\) 方向)の条件: 媒質の単振動の中心 (\(y=0\)) であり、かつ \(+y\) 方向へ運動中であること。これは波が \(x\) 軸正に進む場合、\(t=0\) の \(y-x\) グラフで \(y=0\) かつ波形の傾きが負の点に該当する。グラフから該当する \(x\) を列挙する。
この論理の流れを意識し、各ステップで何をしているのかを明確にしながら解き進めることが重要です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の確認: 今回の問題では単位系が [\(\text{cm}\)] と [\(\text{s}\)] で統一されていましたが、異なる単位が混在する場合は必ず統一してから計算しましょう。最終的な答えの単位も物理的に正しいか確認します。
- 数値の正確な読み取り: グラフから振幅、波長、特定点の \(y\) 座標などを読み取る際には、目盛りの誤読をしないように細心の注意を払うこと。
- 周期性の計算 (剰余計算) の正確性: \(x \pmod \lambda\) や \(t \pmod T\) の計算(割り算の余りを求める操作)は、商と余りを混同しないように正確に行う。
- 例: \(220 \div 80 = 2\) 余り \(60\)。この「\(2\)」や「\(60\)」といった数値を正しく使う。
- 符号の扱いに注意: 変位 \(y\) の正負、速度 \(v_y\) の正負を正確に扱うこと。特に媒質の速度の向きを判断する際には、波の進行方向と波形との関係を正しく理解しておく必要があります。
- 分数の計算や約分: 問1で \(f=10/80 = 1/8\) と簡単化する部分など、基本的な計算も丁寧に行う。
- 複数の可能性の列挙と選択の確認: 問1で速さの候補を列挙する際に、計算間違いや列挙漏れがないかを確認する。また、与えられた条件による絞り込みを確実に行う。
日頃の練習:
- 途中式を省略せずに、論理のステップが追えるように丁寧に書く癖をつける。
- 計算結果が出たら、それが物理的に現実的な値か(例えば、振幅を超えた変位になっていないか、速さが光速のような非現実的な値になっていないかなど)を少し立ち止まって考える。
- 可能であれば検算を行う(例えば、問3のように別のアプローチで解いてみて同じ結果になるか確認する)。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 物理的な妥当性の確認:
- 問1で得られた \(v, f, T\) の値は、他の条件と矛盾しないか?例えば、速さの条件 \(3 < v < 15\) をきちんと満たしているか?
- 問2,3,5で得られた変位 \(y\) は、必ず振幅 \(A=1[\text{cm}]\) の範囲内 (\(-1 \le y \le 1\)) に収まっているか?(これを超えていたら明らかな計算ミスや考え方の誤り)。
- 問4で「媒質の速度が0となる点が山・谷」「速度最大となる点が \(y=0\)」というのは、単振動の基本的な性質と整合しているか?
- 単位の整合性の再確認:
- 計算の各ステップや最終的な答えの単位が、その物理量に対して正しいものになっているか?(例:速さなら [\(\text{cm/s}\)]、振動数なら [\(\text{Hz}\)]、周期なら [\(\text{s}\)] など)。
- グラフとの整合性の確認:
- 計算で求めた変位や位置が、実際に問題のグラフから読み取れる値(あるいはその延長線上で視覚的に予測される値)と大きく矛盾していないか?
- 例えば問3で \(y=0\) となったのは、\(x=100[\text{cm}]\) の点が \(t=0\) で山から出発して \(3/4\) 周期後の状態であり、グラフの単振動の動きを考えれば妥当な結果です。
- 特殊なケースや極端な場合を考えてみる(思考実験):
- もし波長が非常に長かったら、周期はどうなるだろうか?(\(v\)が一定なら \(T=\lambda/v\) より \(T\) も長くなる)
- もし波の速さが非常に遅かったら、\(10\text{s}\) 後の波形はどうなるだろうか?(ほとんど動かないはず)
このような思考実験は、物理法則の理解を深めるのに役立ちます。
- この問題から得られる教訓の再認識:
- 波の問題では、空間的な側面(波形、波長、位置 \(x\))と時間的な側面(振動、周期、時刻 \(t\))を常に関連付けて考えることが重要である。
- グラフは情報の宝庫。丁寧に読み取り、図形的な意味だけでなく物理的な意味も考える。
- 問題文中の条件(例えば速さの範囲)は、解を一つに定めるための重要な手がかりとなることが多いので、見落とさないようにする。
問題72 (九州工大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、\(x\) 軸の正方向に進む縦波に関するものです。\(x=0\) の点の媒質の変位の時間変化 (\(y-t\) グラフ) から波の基本量を求め、ある時刻の波形 (\(y-x\) グラフ、横波表示) を描き、特定の位置の媒質の振動の様子や、縦波特有の「密」な部分について考察します。縦波の変位の向き(\(+x\) 方向を正)と、横波表示の関係を正確に理解することが重要です。
- 波は縦波で、\(x\) 軸の正方向に速さ \(v = 100 \text{ cm/s}\) で進行する。
- 媒質の変位 \(y\) は、\(+x\) 方向を正とする。
- \(x=0\) の媒質の変位 \(y\) の時間変化を示す \(y-t\) グラフが与えられている。(問題図参照)
- グラフから読み取れる振幅 \(A = 2 \text{ [mm]}\)。
- グラフから読み取れる周期 \(T = 8 \times 10^{-2} \text{ [s]}\)。
- \(t=0\) で \(y=0\)、その後 \(y\) は正の方向に増加する。
- 波は \(t=0\) よりもずっと以前から存在しているものとする。
- (1) この波の周期 \(T\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\)。
- (2) 時刻 \(t=0\) での波形を示す \(y-x\) グラフ(横波表示)を \(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) の範囲で描く。
- (3) \(x=4 \text{ [cm]}\) の媒質の振動グラフ (\(y-t\) グラフ) を問題図中に点線で記入する。
- (4) \(x=0\) の点の負の \(x\) 方向の速さが最大になる時刻(図の時間範囲内)。
- (5) \(t=0\) で、媒質の密度が最大の点(\(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) の範囲)。
- (6) \(x=4 \text{ [cm]}\) で、媒質の密度が最大になる時刻(図の時間範囲内)。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は「縦波の性質」と「波のグラフの解釈」がテーマです。特に、\(y-t\) グラフ(ある一点の媒質の時間の振動の様子)と \(y-x\) グラフ(ある瞬間の波の形)の関係を正しく理解し、相互に変換できるかがポイントになります。また、縦波における媒質の変位と「疎密」の関係も重要な考察点です。
鍵となる物理法則・概念は以下の通りです。
- 波の基本要素と関係式: 周期 \(T\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\)、速さ \(v\)。\(f=1/T\)、\(v=f\lambda\)。
- \(y-t\) グラフの読み取り: 振幅、周期、特定の時刻における変位や速度の向き。
- \(y-x\) グラフ(波形)の作成: \(y-t\) グラフと波の進行方向・速さから、ある瞬間の空間的な波の形を推測する。
- 縦波の変位と表示: 縦波の変位は波の進行方向と同じ方向だが、グラフに描く際は横波のように進行方向と垂直な方向に変位を描く「横波表示」がよく用いられる。変位の正負の定義をしっかり確認する。
- 縦波の疎密: 媒質の変位によって、媒質が密になったり疎になったりする部分が生じる。\(y-x\) グラフ(横波表示)から疎密の状態を判断する方法を理解する。
全体的な戦略としては、まず与えられた \(y-t\) グラフから波の基本量を算出し、それらを用いて各設問で問われる波形、振動、疎密の状態を段階的に明らかにしていきます。
問1
思考の道筋とポイント
この設問では、波の基本的なパラメータである周期 \(T\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) を求めます。
1. まず、\(x=0\) の媒質の変位の時間変化を示すグラフ(問題図の \(y-t\) グラフ)から、1回の完全な振動にかかる時間である周期 \(T\) を直接読み取ります。
2. 次に、振動数 \(f\) を周期 \(T\) との関係式 \(f=1/T\) を用いて計算します。
3. 最後に、波の速さ \(v\) が問題文で与えられているので、波の基本式 \(v=f\lambda\) (または \(\lambda=vT\))を用いて波長 \(\lambda\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- \(y-t\) グラフから周期 \(T\) を正確に読み取ること。グラフの横軸の単位(\( \times 10^{-2} \text{ [s]} \))に注意する。
- 波の基本公式である \(f=1/T\) と \(v=f\lambda\)(または等価な \(\lambda=vT\))を正しく理解し、適用すること。
- 単位の扱いに注意し、計算結果の単位が適切であることを確認すること。
具体的な解説と立式
問題図に示された \(x=0\) における媒質の変位 \(y\) と時間 \(t\) の関係を示すグラフ(\(y-t\) グラフ)を見ると、媒質は \(t=0\) で \(y=0\) の状態から変位を開始し、1回の完全な振動(例えば、\(y=0\) から出発し、正の最大変位、\(y=0\)、負の最大変位を経て、再び \(y=0\) に戻り同じ運動状態になるまで)にかかる時間は \(8 \times 10^{-2} \text{ [s]}\) であることが読み取れます。これがこの波の周期 \(T\) です。
$$T = 8.0 \times 10^{-2} \text{ s}$$
振動数 \(f\) は周期 \(T\) の逆数として定義されるため、
$$f = \frac{1}{T}$$
波長 \(\lambda\) は、波の速さ \(v\) と振動数 \(f\) (または周期 \(T\))を用いて、波の基本式 \(v = f\lambda\) から求められます。
$$\lambda = \frac{v}{f} = vT$$
問題文より、波の速さは \(v = 100 \text{ cm/s}\) と与えられています。
使用した物理公式
- 周期 \(T\): \(y-t\) グラフから読み取り
- 振動数と周期の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\) または \(\lambda = vT\)
1. 周期 \(T\) の読み取り:
問題図の \(y-t\) グラフから、1サイクルの時間は \(8\) 目盛り分であり、横軸の1目盛りが \(1 \times 10^{-2} \text{ s}\) なので、
$$T = 8 \times (1 \times 10^{-2} \text{ s}) = 8.0 \times 10^{-2} \text{ s}$$
2. 振動数 \(f\) の計算:
$$f = \frac{1}{T} = \frac{1}{8.0 \times 10^{-2} \text{ s}} = \frac{100}{8.0} \text{ Hz} = 12.5 \text{ Hz}$$
3. 波長 \(\lambda\) の計算:
波の速さ \(v = 100 \text{ cm/s}\) を用いて、
$$\lambda = vT = (100 \text{ cm/s}) \times (8.0 \times 10^{-2} \text{ s}) = 100 \times 0.08 \text{ cm} = 8.0 \text{ cm}$$
または、振動数 \(f\) を用いて、
$$\lambda = \frac{v}{f} = \frac{100 \text{ cm/s}}{12.5 \text{ Hz}} = \frac{100}{12.5} \text{ cm} = 8.0 \text{ cm}$$
まず、問題の図(\(x=0\)の点の揺れ方を示すグラフ)を見ます。このグラフの横軸は時間(単位は \(10^{-2}\)秒)です。波が一回揺れて元に戻るまでの時間、つまり「周期 \(T\)」をグラフから読み取ると、\(0\)から出発して山、谷を通り、再び同じ状態に戻るのが \(8\) 目盛り後です。1目盛りが \(10^{-2}\) 秒なので、周期 \(T = 8 \times 10^{-2}\) 秒となります。
次に、「振動数 \(f\)」は1秒間に何回揺れるかを表し、周期の逆数なので、\(f = 1/T = 1/(8 \times 10^{-2}) = 100/8 = 12.5\) ヘルツです。
最後に、「波長 \(\lambda\)」は波1つ分の長さです。波の速さ \(v\) が \(100 \text{ cm/s}\) と与えられています。1周期の時間 \(T\) で波は1波長 \(\lambda\) だけ進むので、\(\lambda = v \times T = 100 \text{ [cm/s]} \times (8 \times 10^{-2} \text{ [s]}) = 8 \text{ cm}\) と計算できます。あるいは、\(v=f\lambda\) の関係から \(\lambda = v/f = 100 / 12.5 = 8 \text{ cm}\) としても求められます。
この波の周期は \(T = 8.0 \times 10^{-2} \text{ s}\)、振動数は \(f = 12.5 \text{ Hz}\)、波長は \(\lambda = 8.0 \text{ cm}\)。
これらの値は、与えられたグラフの情報と波の速さから、基本的な物理法則に基づいて導出されており、互いに整合性が取れています。単位もそれぞれ時間、振動数、長さを表すものとして適切です。
問2
思考の道筋とポイント
この設問では、時刻 \(t=0\) における波の形(\(y-x\) グラフ)を、指定された範囲 (\(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\)) で描きます。これは、与えられた \(x=0\) の点の時間変化のグラフ (\(y-t\) グラフ) から空間的な波の形を推測する作業です。
1. まず、\(t=0\) における \(x=0\) の点の状態(変位 \(y\) とその時間変化の傾向 \(dy/dt\))を \(y-t\) グラフから正確に読み取ります。
2. 波が \(x\) 軸の正方向に進むという情報を利用します。ある時刻 \(t=0\) における位置 \(x\) での変位 \(y(x,0)\) は、\(x=0\) の点での過去の時刻 \(t’ = -x/v\) における変位 \(y(0, t’)\) に等しいと考えられます。
3. より具体的に波の式を考えると、\(x=0\) での振動が \(y(0,t) = A\sin(\omega t)\) (\(t=0\)で\(y=0\), \(dy/dt>0\)を満たす形)で表される場合、\(x\)軸正方向に進む波の一般式は \(y(x,t) = A\sin(\omega t – kx)\) と書けます。これに \(t=0\) を代入すると、\(y(x,0) = A\sin(-kx) = -A\sin(kx)\) となります。
4. この式に、問1で求めた振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\)(から波数 \(k=2\pi/\lambda\) を計算)を代入し、指定された \(x\) の範囲でグラフを描きます。
この設問における重要なポイント
- \(y-t\) グラフ(特定点の時間変化)と \(y-x\) グラフ(特定時刻の空間的な波の形)の違いと関係を正確に理解すること。
- \(x=0, t=0\) での初期条件(変位と速度の向き)を \(y-t\) グラフから正しく読み取り、それを \(y-x\) グラフの原点の状態に反映させること。
- 波の進行方向を考慮して、\(y-x\) グラフの形(例えば、\(\sin\)型か \(-\sin\)型か、\(\cos\)型か \(-\cos\)型かなど)を決定すること。
- 縦波の変位を「横波表示」で描く際の意味を理解していること(この問題では \(y\) が \(+x\) 方向の変位)。
具体的な解説と立式
時刻 \(t=0\) における波形、すなわち \(y-x\) グラフを作成します。
\(x=0\) の媒質の \(y-t\) グラフ(問題図)から、\(t=0\) のとき \(y=0\) であり、かつ \(t\) が微小に増加すると \(y>0\) となる(つまり \(t=0\) での \(x=0\) の媒質の速度は \(+y\) 方向である)ことがわかります。
この \(x=0\) での振動が、例えば \(y(0,t) = A\sin(\omega t)\) と表される場合を考えます(\(A=2 \text{ mm}\), \(\omega = 2\pi/T = 2\pi/(8.0 \times 10^{-2}) = 25\pi \text{ rad/s}\))。この式は \(t=0\) で \(y=0\) かつ \(dy/dt = A\omega\cos(\omega t)|_{t=0} = A\omega > 0\) を満たします。
波は \(x\) 軸の正方向に速さ \(v\) で進むので、時刻 \(t\)、位置 \(x\) における変位 \(y(x,t)\) は、
$$y(x,t) = A\sin\left(\omega\left(t – \frac{x}{v}\right)\right) = A\sin(\omega t – kx)$$
と書くことができます。ここで、波数 \(k = \omega/v = (25\pi \text{ rad/s}) / (100 \text{ cm/s}) = \pi/4 \text{ rad/cm}\)(これは \(k=2\pi/\lambda = 2\pi/8 = \pi/4\) とも一致します)。
時刻 \(t=0\) での波形は、この式に \(t=0\) を代入して、
$$y(x,0) = A\sin(-kx) = -A\sin(kx)$$
となります。
これに \(A=2 \text{ mm}\) と \(k=\pi/4 \text{ rad/cm}\) を代入すると、
$$y(x,0) = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right) \text{ [mm]}$$
この関数のグラフを \(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) の範囲で描きます。
主な点の \(y\) 座標は以下の通りです:
- \(x=0 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(0) = 0 \text{ mm}\)
- \(x=2 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(\frac{\pi}{4} \times 2) = -2\sin(\frac{\pi}{2}) = -2 \times 1 = -2 \text{ mm}\) (谷)
- \(x=4 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(\frac{\pi}{4} \times 4) = -2\sin(\pi) = -2 \times 0 = 0 \text{ mm}\)
- \(x=6 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(\frac{\pi}{4} \times 6) = -2\sin(\frac{3\pi}{2}) = -2 \times (-1) = 2 \text{ mm}\) (山)
- \(x=8 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(\frac{\pi}{4} \times 8) = -2\sin(2\pi) = -2 \times 0 = 0 \text{ mm}\) (1波長終了)
- \(x=10 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(\frac{\pi}{4} \times 10) = -2\sin(\frac{5\pi}{2}) = -2\sin(\frac{\pi}{2}) = -2 \text{ mm}\) (谷)
- \(x=12 \text{ cm}\) のとき \(y = -2\sin(\frac{\pi}{4} \times 12) = -2\sin(3\pi) = 0 \text{ mm}\)
このグラフは模範解答の図aと一致します。
使用した物理公式
- 進行波の変位の式: \(y(x,t) = A\sin(\omega t – kx)\) (\(+x\)方向に進む波で、\(y(0,t)=A\sin(\omega t)\)の場合)
- 波数と波長の関係: \(k = \displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}\)
1. \(x=0\) の振動の初期条件 (\(t=0\)) から、\(y(0,t)\) の形を \(A\sin(\omega t)\) と仮定。
2. \(+x\) 方向に進む波の式 \(y(x,t) = A\sin(\omega t – kx)\) を適用。
3. \(t=0\) を代入し、\(y(x,0) = -A\sin(kx)\) を得る。
4. \(A=2 \text{ mm}\), \(k=\pi/4 \text{ rad/cm}\) を代入: \(y(x,0) = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right) \text{ [mm]}\)。
5. 主要な \(x\) の値(\(0, 2, 4, 6, 8, 10, 12 \text{ cm}\))に対して \(y\) を計算し、グラフを描画する。(結果は上記の「具体的な解説と立式」セクションのリスト参照)
時刻 \(0\) 秒の瞬間の、波全体の形(\(y-x\)グラフ)を描きましょう。
まず、\(x=0\) の点の揺れ方は問題の図の通りです。\(0\) 秒の瞬間は変位 \(y=0\) で、この直後に \(y\) はプラスの方向に動きます(つまり上に動く)。
波は右(\(+x\)方向)に進んでいます。
この情報から、\(0\) 秒の瞬間の波の形は \(y = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\) という式で表されることが分かります(単位はmm)。ここで、\(2\) は振幅、\(\pi/4\) は波長 \(8\text{cm}\) から決まる数です。
この式に \(x\) の値を代入していくと、
・\(x=0\) のとき \(y=0\)。
・\(x=2\) のとき \(y=-2\text{mm}\)(谷)。
・\(x=4\) のとき \(y=0\)。
・\(x=6\) のとき \(y=2\text{mm}\)(山)。
・\(x=8\) のとき \(y=0\)。
このパターンが繰り返されます。これを \(x=0\) から \(x=12\text{cm}\) まで描けば完成です。
時刻 \(t=0\) での波形を示す \(y-x\) グラフは、\(y = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\) で表される、振幅 \(2\text{ mm}\)、波長 \(8\text{ cm}\) の正弦波(の符号を反転させた形)である。このグラフは、\(x=0\) における \(t=0\) での媒質の初期状態(変位 \(0\)、速度 \(+y\) 方向)と、波が \(+x\) 方向に進行するという条件から論理的に導かれ、模範解答の図aとも一致します。
問3
思考の道筋とポイント
この設問では、\(x=4 \text{ [cm]}\) の位置にある媒質の振動の様子を \(y-t\) グラフとして、問題図(\(x=0\) の \(y-t\) グラフ)に点線で記入します。
1. まず、\(x=4 \text{ [cm]}\) という位置が、基準となる \(x=0\) の位置から波長 \(\lambda\) (問1で \(8 \text{ cm}\) と計算済み) のどれだけの距離にあるかを確認します。\(4 \text{ cm} = \lambda/2\) です。
2. 波が進行する際、半波長 (\(\lambda/2\)) だけ離れた二つの点の振動は「逆位相」になります。つまり、一方の変位が正の最大なら他方は負の最大、一方が \(0\) なら他方も \(0\) ですが、その後の動きの向きが逆になります。
3. したがって、\(x=4 \text{ [cm]}\) の媒質の \(y-t\) グラフは、\(x=0\) の媒質の \(y-t\) グラフ(問題図の実線)を \(y=0\) の軸に関して上下反転させたものになります。
別の考え方として、\(x=4 \text{ [cm]}\) の点に波が到達するのは、\(x=0\) の点よりも時間 \(\Delta t = x/v = 4\text{ cm} / 100\text{ cm/s} = 0.04\text{ s} = 4 \times 10^{-2}\text{ s}\) だけ遅れます。この遅れは周期 \(T=8 \times 10^{-2}\text{ s}\) のちょうど半分 (\(T/2\)) です。よって、\(x=0\) のグラフを \(T/2\) だけ右にずらしたグラフも同じ結果を与えます。
この設問における重要なポイント
- 異なる位置にある媒質の振動の「位相差」を正しく理解していること。特に、半波長 (\(\lambda/2\)) 離れた点では振動が逆位相になることを把握している。
- 基準となる \(y-t\) グラフを元にして、位相差を考慮して別の点の \(y-t\) グラフを正確に描けること(この場合は上下反転、または \(T/2\) の時間的ずれ)。
具体的な解説と立式
\(x=4 \text{ [cm]}\) の位置にある媒質の振動の様子(\(y-t\) グラフ)を考えます。
問1で計算した波長は \(\lambda = 8 \text{ cm}\) です。したがって、\(x=4 \text{ cm}\) は、\(x=0\) の位置から \(\lambda/2\) (半波長) だけ離れた位置にあります。
波が \(x\) 軸の正方向に進むとき、半波長離れた2点の媒質の振動は互いに逆位相になります。これは、一方の変位が \(y\) ならば、もう一方の変位は \(-y\) となる関係を意味します。
したがって、\(x=4 \text{ cm}\) の媒質の \(y-t\) グラフは、\(x=0\) の媒質の \(y-t\) グラフ(問題図の実線)を、\(t\) 軸(\(y=0\) の線)に関して対称に(つまり上下を反転させて)描いたものになります。
具体的に各時刻の変位を見てみると:
- \(t=0\): \(x=0\) で \(y=0\)。逆位相なので \(x=4\) でも \(y=0\)。ただし、\(x=0\) ではこの後 \(y>0\) になるので、\(x=4\) ではこの後 \(y<0\) になる。
- \(t=2 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(x=0\) で \(y=2 \text{ mm}\) (山)。逆位相なので \(x=4\) では \(y=-2 \text{ mm}\) (谷)。
- \(t=4 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(x=0\) で \(y=0\)。逆位相なので \(x=4\) でも \(y=0\)。
- \(t=6 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(x=0\) で \(y=-2 \text{ mm}\) (谷)。逆位相なので \(x=4\) では \(y=2 \text{ mm}\) (山)。
- \(t=8 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(x=0\) で \(y=0\)。逆位相なので \(x=4\) でも \(y=0\)。
この点を結んでグラフを描くと、模範解答の図bの点線と一致します。
使用した物理公式
- 位相と距離の関係: 半波長 (\(\lambda/2\)) 離れた点は逆位相。
- 逆位相の振動: \(y_2(t) = -y_1(t)\)
1. \(x=0\) と \(x=4 \text{ cm}\) の距離と波長 \(\lambda=8 \text{ cm}\) を比較する。
距離 \(4 \text{ cm} = \lambda/2\)。
2. 半波長離れた点の振動は逆位相であるため、\(x=0\) の \(y-t\) グラフ(問題図の実線)を上下反転させて \(x=4 \text{ cm}\) の \(y-t\) グラフ(点線)を描く。
(主要な点の変位は上記の「具体的な解説と立式」セクションのリスト参照)
\(x=4 \text{ [cm]}\) の場所の揺れ方(\(y-t\)グラフ)を、問題の図(\(x=0\)の揺れ方)に点線で描き加えます。
波長は \(8 \text{ cm}\) でしたね。\(x=4 \text{ cm}\) というのは、\(x=0\) からちょうど半波長(\(8/2 = 4 \text{ cm}\))だけ離れた場所です。
波の世界では、半波長分離れた場所の揺れは、元の場所と「逆位相」といって、動きが常に正反対になります。つまり、\(x=0\) の点が上に動けば \(x=4 \text{ cm}\) の点は下に動き、\(x=0\) が山なら \(x=4 \text{ cm}\) は谷、という具合です。
ですから、問題の図に描かれている実線(\(x=0\) の揺れ)を、\(y=0\) の線を鏡として上下ひっくり返したような点線を描けば、それが \(x=4 \text{ cm}\) の場所の揺れ方になります。
\(x=4 \text{ [cm]}\) の媒質の振動グラフは、\(x=0\) の媒質の振動グラフ(問題図の実線)と逆位相の関係にあるため、実線を \(t\) 軸に関して対称に折り返した形となる。これは、半波長分離れた点の振動が互いに逆になるという波の性質を正しく反映しており、模範解答の図bとも一致します。
問4
思考の道筋とポイント
この設問では、\(x=0\) の点の「負の \(x\) 方向の速さが最大になる時刻」を図で示された時間内で求めます。
1. まず、問題の定義「変位 \(y\) は \(+x\) 方向を正にとる」を再確認します。したがって、「負の \(x\) 方向の速さ」とは、「変位 \(y\) が負の方向への速さ」を意味します。
2. 媒質の速さが最大になるのは、その媒質が振動の中心(つまり変位 \(y=0\))を通過するときです。
3. 上記の条件に加えて、速度の向きが「負の \(y\) 方向」である必要があります。これは、\(y=0\) を通過した直後に \(y\) が負の値になる(グラフで言うと、\(y=0\) の点を下向きに通過する)瞬間を指します。
4. \(x=0\) の \(y-t\) グラフ(問題図の実線)上で、これらの条件(\(y=0\) かつ \(dy/dt < 0\))を満たす時刻を読み取ります。
この設問における重要なポイント
- 媒質の速さが最大となるのは振動中心 (\(y=0\)) であることを理解している。
- \(y-t\) グラフにおいて、傾きが媒質の速度 (\(v_y = dy/dt\)) に対応することを理解している。負の傾きは負の \(y\) 方向の速度を意味する。
- 問題文の「負の \(x\) 方向の速さ」という表現を、変位 \(y\) の定義と照らし合わせて「負の \(y\) 方向の速さ」と正しく解釈すること。
具体的な解説と立式
\(x=0\) の点について考えます。媒質の変位 \(y\) は \(+x\) 方向を正としています。したがって、「負の \(x\) 方向の速さが最大になる」とは、「変位 \(y\) について、負の方向への速度が最大になる」ときを指します。
媒質の速さが最大になるのは、媒質がその振動の中心(つまり変位 \(y=0\))を通過するときです。
このうち、速度の向きが負の \(y\) 方向であるのは、\(y=0\) の点を通過した直後に \(y\) が負の値をとる(グラフが \(y=0\) の線を上から下へ横切る)ときです。
問題図の \(x=0\) の \(y-t\) グラフ(実線)を見ると、以下のようになります。
- \(t=0\): \(y=0\)。この直後 \(y>0\) となるので、速度は \(+y\) 方向。
- \(t=2 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(y=2\text{ mm}\) (山)。速度は \(0\)。
- \(t=4 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(y=0\)。この直後 \(y<0\) (谷に向かう) となるので、速度は \(-y\) 方向で最大。これが条件に合致します。
- \(t=6 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(y=-2\text{ mm}\) (谷)。速度は \(0\)。
- \(t=8 \times 10^{-2} \text{ s}\): \(y=0\)。この直後 \(y>0\) (山に向かう) となるので、速度は \(+y\) 方向で最大。
- 次の周期を考えると、\(t=8 \times 10^{-2} \text{ s} + 4 \times 10^{-2} \text{ s} = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\) のとき、再び \(y=0\) であり、その直後 \(y<0\) となるので、速度は \(-y\) 方向で最大。これも条件に合致します。
図で示された時間範囲はおおよそ \(0\) から \(12 \times 10^{-2} \text{ s}\) までなので、該当する時刻は \(t = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) と \(t = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\) です。
使用した物理公式
- 単振動における速度と変位の関係: 速度最大は \(y=0\) のとき。
- \(y-t\) グラフの傾きと速度の向きの関係: 傾きが負のとき、速度は負の \(y\) 方向。
問題図の \(x=0\) の \(y-t\) グラフ(実線)から、以下の条件を満たす時刻 \(t\) を読み取ります。
1. 変位 \(y=0\) であること。
2. その時刻の直後に変位 \(y\) が負になること(グラフの傾き \(dy/dt\) が負であること)。
グラフから、これらの条件を満たすのは、
- \(t = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\)
- \(t = (8+4) \times 10^{-2} \text{ s} = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\)
となります。
\(x=0\) の点(問題のグラフで揺れ方が示されている点)が、「負の \(x\) 方向へ最も速く動く」のはいつかを考えます。問題では「変位 \(y\) は \(+x\) 方向を正」とされているので、これは「変位 \(y\) で見て、負の方向(グラフで下向き)への速さが最大になる」のと同じ意味です。
物体が振動するとき、速さが最大になるのは振動の真ん中(つまり \(y=0\))を通過するときです。
さらに、そのときに「下向き」に動いていなければなりません。
問題のグラフ(実線)を見てみましょう。
・\(t=0\) のとき、\(y=0\) ですが、この後グラフは上に行くので、上向きの速さです。
・\(t=4 \times 10^{-2}\) 秒のとき、\(y=0\) で、この後グラフは下に行き谷になります。なので、このとき下向きに速さ最大です。これが一つ目の答え。
・\(t=8 \times 10^{-2}\) 秒のとき、\(y=0\) ですが、この後グラフは上に行くので、上向きの速さです。
・その次に \(y=0\) で下向きに動くのは、\(t=8 \times 10^{-2}\) 秒からさらに \(4 \times 10^{-2}\) 秒後、つまり \(t=(4+8) \times 10^{-2} = 12 \times 10^{-2}\) 秒のときです。これも二つ目の答え。
グラフに描かれている範囲ではこの二つが該当します。
\(x=0\) の点の負の \(x\) 方向の速さが最大になる時刻は、\(t = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) および \(t = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\)。
これは、\(y-t\) グラフ上で \(y=0\) であり、かつグラフの傾きが負となる点に対応します。媒質の単振動の性質と照らし合わせても妥当な結果です。
問5
思考の道筋とポイント
この設問では、時刻 \(t=0\) において、媒質の密度が最大となる点(「密」な点)を、指定された範囲 (\(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\)) で見つけます。
1. まず、縦波における「密」の状態がどのような媒質の変位に対応するのかを理解します。「密」とは媒質が通常よりも集まっている状態です。
2. 変位 \(y\)(\(+x\) 方向を正とする)の \(y-x\) グラフ(問2で描いた横波表示のグラフ)と「密」の関係を考えます。一般的に、\(y-x\) グラフにおいて、変位 \(y=0\) であり、かつその点でグラフの傾き \(dy/dx\) が負となる点が「密」な部分の中心に対応します。これは、その点の左側の媒質が \(+x\) 方向に、右側の媒質が \(-x\) 方向に変位して集まってくるためです(模範解答の図解も参照)。
3. 問2で作成した \(t=0\) での \(y-x\) グラフ(\(y(x,0) = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\))上で、上記の条件(\(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\))を満たす \(x\) の値を、指定された範囲内で探し出します。
この設問における重要なポイント
- 縦波における「密」の物理的な意味(媒質が集まっている状態)を理解していること。
- \(y-x\) グラフ(横波表示)から「密」な点を特定する方法を習得していること。具体的には、変位 \(y=0\) であり、かつその点での波形の傾き \(dy/dx\) が負である点(つまり、波形が山から谷へ向かう途中で \(x\) 軸を横切る点)が「密」の中心となる。
- 変位 \(y\) の正方向の定義(この問題では \(+x\) 方向)を常に意識すること。
具体的な解説と立式
縦波において、媒質の密度が最大となる「密」な点を特定します。変位 \(y\) は \(+x\) 方向を正としています。
媒質が「密」になるのは、ある点の左右の媒質がその点に向かって集まってくるときです。
問2で求めた \(t=0\) での波形は \(y(x,0) = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\) です。
「密」な点は、この \(y-x\) グラフ(横波表示)において、\(y=0\) であり、かつその点でのグラフの傾き \(dy/dx\) が負である点に相当します。
まず、\(y=0\) となるのは、\(\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right) = 0\) のときなので、
\(\frac{\pi}{4}x = n\pi\) (\(n\) は整数)
よって、\(x = 4n \text{ [cm]}\)。
次に、これらの点での傾き \(dy/dx\) を調べます。
$$\frac{dy}{dx} = \frac{d}{dx}\left(-2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\right) = -2 \times \frac{\pi}{4} \cos\left(\frac{\pi}{4}x\right) = -\frac{\pi}{2}\cos\left(\frac{\pi}{4}x\right)$$
この傾きが負 (\(dy/dx < 0\)) となる条件は、\(-\frac{\pi}{2}\cos\left(\frac{\pi}{4}x\right) < 0\)、つまり \(\cos\left(\frac{\pi}{4}x\right) > 0\)。
\(x=4n\) を代入すると、\(\cos(n\pi) > 0\)。
\(\cos(n\pi)\) は、\(n\) が偶数のとき \(1\)、\(n\) が奇数のとき \(-1\) となります。
よって、\(\cos(n\pi) > 0\) となるのは \(n\) が偶数のときです。
したがって、密な点は \(x = 4n\) で \(n\) が偶数(\(n=0, \pm 2, \pm 4, \dots\))の点となります。
\(n=0\) のとき \(x = 0 \text{ cm}\)。
\(n=2\) のとき \(x = 8 \text{ cm}\)。
\(n=4\) のとき \(x = 16 \text{ cm}\) (範囲外)。
\(n=-2\) のとき \(x = -8 \text{ cm}\) (範囲外)。
指定された範囲 \(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) 内で考えると、媒質の密度が最大の点(密な点)は \(x=0 \text{ cm}\) と \(x=8 \text{ cm}\) です。
これは模範解答の図aにおける疎密の判断と一致します。
使用した物理公式
- 縦波の「密」の条件: 横波表示の \(y-x\) グラフで \(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\)。
- 三角関数の微分: \((\sin(ax))’ = a\cos(ax)\)
1. \(t=0\) の波形 \(y(x,0) = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\) において、「密」の条件 \(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\) を満たす \(x\) を探す。
2. \(y=0\) となる \(x\):
\(\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right) = 0\) より \(\frac{\pi}{4}x = n\pi\)。したがって \(x = 4n\) ( \(n\) は整数)。
範囲 \(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) では、\(x=0, 4, 8, 12 \text{ cm}\)。
3. 傾き \(dy/dx\) の計算:
$$\frac{dy}{dx} = -\frac{\pi}{2}\cos\left(\frac{\pi}{4}x\right)$$
4. 各 \(x\) での \(dy/dx\) の符号を調べる:
- \(x=0 \text{ cm}\): \(dy/dx = -\frac{\pi}{2}\cos(0) = -\frac{\pi}{2} < 0\)。よって密。
- \(x=4 \text{ cm}\): \(dy/dx = -\frac{\pi}{2}\cos(\pi) = -\frac{\pi}{2}(-1) = \frac{\pi}{2} > 0\)。よって疎。
- \(x=8 \text{ cm}\): \(dy/dx = -\frac{\pi}{2}\cos(2\pi) = -\frac{\pi}{2} < 0\)。よって密。
- \(x=12 \text{ cm}\): \(dy/dx = -\frac{\pi}{2}\cos(3\pi) = -\frac{\pi}{2}(-1) = \frac{\pi}{2} > 0\)。よって疎。
指定された範囲内で密な点は \(x=0 \text{ cm}\) と \(x=8 \text{ cm}\)。
時刻 \(0\) 秒のときに、媒質の密度が一番高くなっている「密」な場所はどこか、という問題です。
縦波では、媒質がギュッと集まっているところが「密」になります。これを、問2で描いた波の形(\(y-x\)グラフ、横波表示)から見つけます。
横波表示では、変位 \(y\) が \(0\) で、かつグラフの線が右肩下がり(傾きが負)になっている点が「密」の中心になります。これは、その点の左側の媒質が右に、右側の媒質が左にズレてきて、その点に集まってくるイメージです。
問2のグラフ \(y = -2\sin\left(\frac{\pi}{4}x\right)\) を見てみましょう。
・\(x=0\) のとき、\(y=0\) で、グラフはここから下向きに始まります(傾きが負)。なので、\(x=0\) は「密」です。
・\(x=4\) のとき、\(y=0\) ですが、グラフはここから上向きに変わります(傾きが正)。なので、\(x=4\) は「疎」(密度が薄い)です。
・\(x=8\) のとき、\(y=0\) で、グラフの形は \(x=0\) のときと同じように下向きに始まります(傾きが負)。なので、\(x=8\) も「密」です。
・\(x=12\) のとき、\(y=0\) で、グラフの形は \(x=4\) のときと同じように上向きに変わります(傾きが正)。なので、\(x=12\) は「疎」です。
したがって、\(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) の範囲で密度が最大の点(密な点)は、\(x=0 \text{ cm}\) と \(x=8 \text{ cm}\) です。
\(t=0\) で、媒質の密度が最大の点(密な点)は、\(0 \le x \le 12 \text{ [cm]}\) の範囲で \(x=0 \text{ cm}\) と \(x=8 \text{ cm}\)。
これは、\(y-x\) グラフ(横波表示)において \(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\) となる点であり、縦波の「密」の定義と一致します。模範解答の図aの疎密の判断とも整合しています。
問6
思考の道筋とポイント
この設問では、\(x=4 \text{ [cm]}\) の位置で、媒質の密度が最大になる時刻(「密」になる時刻)を図に示された時間内で求めます。
1. まず、\(t=0\) における \(x=4 \text{ [cm]}\) の点の状態(疎か密か)を問5の考察から確認します。問5では \(x=4 \text{ [cm]}\) は \(t=0\) で「疎」であると判断されました。
2. ある特定の点の媒質の疎密の状態は、時間とともに周期的に変化します。「疎」の状態から次に「密」の状態になるまでには、波の周期 \(T\) の半分、つまり \(T/2\) の時間がかかります。同様に、「密」から「疎」へも \(T/2\) かかります。
3. 周期 \(T = 8 \times 10^{-2} \text{ s}\) なので、\(T/2 = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) です。
4. \(x=4 \text{ [cm]}\) は \(t=0\) で「疎」なので、最初に「密」になるのは \(t = T/2\) の時刻です。その後は、1周期 \(T\) ごとに再び「密」な状態が訪れます。
5. これらの時刻を計算し、問題図に示された時間範囲内で該当するものを答えとします。
この設問における重要なポイント
- 特定の位置における媒質の疎密の状態が、時間とともに周期的に変化することを理解していること。
- 「疎」の状態から「密」の状態へ(またはその逆へ)変化するのに要する時間は、周期の半分 (\(T/2\)) であることを把握している。
- 基準となる時刻(この場合は \(t=0\))での状態を元に、その後の状態変化を追跡できること。
具体的な解説と立式
\(x=4 \text{ [cm]}\) の位置にある媒質が「密」になる時刻を考えます。
問5の考察において、\(t=0\) のとき \(x=4 \text{ [cm]}\) の点は「疎」であると判断しました。
(\(t=0\) で \(x=4 \text{ cm}\) は \(y=0\) かつ \(dy/dx = \pi/2 > 0\) なので疎。)
ある固定された位置の媒質の疎密の状態は、波が通過することにより時間とともに変化します。振動の1周期 \(T\) の間に、疎 \(\rightarrow\) 密 \(\rightarrow\) 疎 \(\rightarrow\) 密 \(\rightarrow \dots\) のように状態が変わるのではなく、「疎」の状態から「密」の状態になるまでには半周期 \(T/2\) かかり、さらに半周期 \(T/2\) 経つと元の「疎」の状態に戻ります。つまり、疎密の状態は \(T/2\) ごとに反転します。
周期 \(T = 8 \times 10^{-2} \text{ s}\) なので、半周期は \(T/2 = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) です。
\(x=4 \text{ cm}\) の点は、\(t=0\) で「疎」であるため、
最初に「密」になるのは、\(t = 0 + T/2 = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) の時刻です。
次に「密」になるのは、その \(T/2\) 後に「疎」になり、さらに \(T/2\) 後、つまり \(t = 4 \times 10^{-2} \text{ s} + T = 4 \times 10^{-2} \text{ s} + 8 \times 10^{-2} \text{ s} = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\) の時刻です。
その次の「密」は \(t = 12 \times 10^{-2} \text{ s} + T = 20 \times 10^{-2} \text{ s}\) となりますが、これは問題図に示された時間範囲(おおよそ \(0 \sim 12 \times 10^{-2} \text{ s}\) まで)を超える可能性があります。
したがって、図に示された時間内で \(x=4 \text{ [cm]}\) が密になる時刻は、\(t = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) と \(t = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\) です。
これは模範解答と一致します。
使用した物理公式
- 縦波の疎密の時間変化: 疎の状態から密の状態へは \(T/2\) 時間かかる。
1. \(t=0\) における \(x=4 \text{ cm}\) の状態の確認: 問5より「疎」。
2. 疎から密への変化にかかる時間: \(T/2 = (8.0 \times 10^{-2} \text{ s}) / 2 = 4.0 \times 10^{-2} \text{ s}\)。
3. 最初に密になる時刻 \(t_1\):
$$t_1 = 0 \text{ s} (\text{初期時刻}) + 4.0 \times 10^{-2} \text{ s} = 4.0 \times 10^{-2} \text{ s}$$
4. 次に密になるのは \(t_1\) から1周期 \(T\) 後(または、\(t_1\) から \(T/2\) 後に疎になり、さらに \(T/2\) 後に密になるので、結果的に \(t_1\) から \(T\) 後)。
$$t_2 = t_1 + T = 4.0 \times 10^{-2} \text{ s} + 8.0 \times 10^{-2} \text{ s} = 12.0 \times 10^{-2} \text{ s}$$
問題図に示された時間範囲内で考えると、これらの時刻が該当します。
\(x=4 \text{ [cm]}\) の場所で、媒質の密度が一番高くなる「密」の状態になるのはいつかを考えます。
まず、\(0\) 秒のとき、\(x=4 \text{ [cm]}\) の場所は「疎」(密度が薄い状態)でした(問5で確認しました)。
ある場所の媒質の状態は、波が通り過ぎるにつれて「疎」\(\rightarrow\)「密」\(\rightarrow\)「疎」\(\rightarrow\)「密」\(\rightarrow \dots\) と変わっていきます。「疎」から次に「密」になるまでには、波の周期 \(T\) の半分の時間 (\(T/2\)) がかかります。
周期 \(T\) は \(8 \times 10^{-2}\) 秒だったので、半周期 \(T/2\) は \(4 \times 10^{-2}\) 秒です。
\(x=4 \text{ [cm]}\) は \(0\) 秒のときに「疎」だったので、
・最初に「密」になるのは、\(0\) 秒から \(4 \times 10^{-2}\) 秒後の、\(t = 4 \times 10^{-2}\) 秒です。
・その次にまた「密」になるのは、この時刻からさらに \(1\) 周期 (\(T = 8 \times 10^{-2}\) 秒) 後です。つまり、\(t = 4 \times 10^{-2} + 8 \times 10^{-2} = 12 \times 10^{-2}\) 秒です。
問題のグラフに示されている時間範囲では、これらの時刻が答えになります。
\(x=4 \text{ [cm]}\) で、媒質の密度が最大になる時刻は、図に示された時間内で \(t = 4 \times 10^{-2} \text{ s}\) と \(t = 12 \times 10^{-2} \text{ s}\)。
これは、\(t=0\) における \(x=4 \text{ cm}\) の点が疎であることから、半周期後に密になり、その後1周期ごとに再び密になるという物理的な考察と一致しています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 縦波の性質の理解: 縦波は媒質の振動方向が波の進行方向と平行であり、それによって媒質に「疎密」が生じること。
- 波の基本パラメータと関係式: 周期 \(T\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\)、速さ \(v\) の間の関係 (\(f=1/T\), \(v=f\lambda\))。これらは横波・縦波共通の基本です。
- グラフの的確な解釈 (\(y-t\) グラフ \(\Leftrightarrow\) \(y-x\) グラフ):
- \(y-t\) グラフ (変位-時間グラフ): 特定の「一点」の媒質の時間的振動(単振動)を示す。グラフから振幅 \(A\) と周期 \(T\) が読み取れます。
- \(y-x\) グラフ (変位-位置グラフ、波形): 特定の「瞬間」の波の空間的な形を示す。グラフから振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) が読み取れます。
- これらのグラフは、波の進行方向と速さを介して相互に変換可能です。問2では \(y-t\) から \(y-x\) を導きました。
- 縦波の横波表示とその意味: 縦波の変位(波の進行方向と同じ向きの変位)を、グラフの見やすさのために進行方向と垂直な向きの変位として描く「横波表示」の理解。変位の正負の定義(この問題では \(+x\) 方向を正)が重要です。
- 縦波の疎密と媒質変位の関係:
- 「密」な点: 周りの媒質が集まってきている点。横波表示の \(y-x\) グラフで、変位 \(y=0\) であり、かつグラフの傾き \(dy/dx < 0\) となる点(山から谷へ向かう途中の変位ゼロ点)がこれに相当します。
- 「疎」な点: 周りの媒質が離れていっている点。横波表示の \(y-x\) グラフで、変位 \(y=0\) であり、かつグラフの傾き \(dy/dx > 0\) となる点(谷から山へ向かう途中の変位ゼロ点)がこれに相当します。
- 媒質の単振動の特性: 波が伝わる際、媒質の各点はその場で単振動します。その速度は振動中心 (\(y=0\)) で最大となり、振動の端 (\(y=\pm A\)) で \(0\) となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 類似問題への応用:
- 音波は縦波の代表例であり、音波の疎密、定常波(気柱の共鳴など)、ドップラー効果といった問題の基礎として、本問の理解は非常に役立ちます。
- ばねの振動が伝わる縦波(粗密波)など、他の縦波現象にも同様の考え方を適用できます。
- 横波の問題であっても、\(y-t\) グラフと \(y-x\) グラフの相互変換、位相の概念、波の基本式の適用といった点は共通して重要です。
- 初見の問題への着眼点:
- 波の種類は何か? (縦波なら「疎密」を、横波なら「偏光」などを意識する可能性があります。)
- 与えられたグラフは \(y-t\) か \(y-x\) か? (グラフの横軸・縦軸が何を表すかを最初に確認!)
- 変位の正の向きはどちらか? (特に縦波では、変位の方向と波の進行方向の関係を明確に。)
- 波の進行方向と速さは? (これらはグラフ間の変換や位相差の計算に必須。)
- 基準点(例: \(x=0, t=0\))での状態は? (ここから波全体の様子を組み立てていくことが多い。)
- 問われている物理量は何か? (波の基本量か、特定の変位・速度か、疎密の状態か、など。)
- 問題解決のヒントや特に注意すべき点:
- 縦波を横波表示で扱う場合、その \(y\) 軸が「実際の空間的な方向」ではなく「変位の大きさや向き」を示していることを常に念頭に置く。
- 「疎密」の判断は、単に変位 \(y\) の大小ではなく、\(y\) の空間的な変化 (\(dy/dx\)) や、変位の向きを考慮して行う(定義をしっかり理解するか、変位の矢印を模式的に描いて判断する)。
- 位相のズレを考える際に、時間的なズレ(\(\Delta t = \text{距離}/v\))と空間的なズレ(例:\(\lambda/2\) で逆位相)を区別し、正しく関連付ける。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(y-t\) グラフと \(y-x\) グラフの混同: グラフの軸のラベル(\(t\) なのか \(x\) なのか)をしっかり確認する習慣をつける。模範解答の冒頭にも「与えられた図は波形(\(y-x\)グラフ)ではない!」との注意書きがあるほど重要。
- 縦波の変位の向きの誤解: 変位 \(y\) がどちらの方向を正としているか(本問では \(+x\) 方向)を常に意識する。これが媒質の速度の向きや疎密の判断に直接影響する。
- 疎密の判断ミス:
- 変位が最大の点や最小の点が密や疎だと誤解しやすいが、実際には変位が \(0\) の点での \(dy/dx\) の符号が重要。
- 横波表示の「山」や「谷」がそのまま「密」や「疎」に対応するわけではない(問題設定や変位の定義による)。定義に基づいて判断するか、変位の矢印表示で視覚的に確認する。
- 媒質の速度と波の速度の混同: 波の伝播速度 \(v\) は一定だが、媒質の各点の振動速度はその場所や時刻によって変化する(単振動の速度)。
- 逆位相の適用の誤り: 例えば、\(x=4 \text{ cm}\) (\(=\lambda/2\)) の点の \(y-t\) グラフは、\(x=0\) の点の \(y-t\) グラフを単純に \(T/2\) 時間ずらすだけでなく、位相が反転すること(つまり上下反転)を正確に反映させる必要がある。
対策: 各グラフや物理量が「何を表しているのか」という定義に常に立ち返る。公式やパターンを丸暗記するのではなく、その背景にある物理的な意味や現象をイメージしながら理解するよう努める。縦波の疎密のように複雑に感じられる概念は、簡単な模式図を描いて確認する習慣をつけると良い。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題で有効だったイメージと図:
- \(y-t\) グラフ (変位-時間グラフ): \(x=0\) の点が一つの「おもり」だとして、それが時間とともに左右に単振動する様子をイメージする(縦波なので実際は \(x\) 軸方向の振動)。
- \(y-x\) グラフ (変位-位置グラフ、波形を横波表示): ある瞬間に、たくさんの媒質の「おもり」がそれぞれどの位置にズレているかを一斉に写真に撮ったようなイメージ。この「ズレ」の分布が波の形となる。
- 縦波の変位の矢印表示 (疎密の理解のため): \(y-x\) グラフ(横波表示)の各点について、その \(y\) の値を実際の \(x\) 軸方向の変位(ズレ)として矢印で示す。これにより、媒質がどの部分で集まり(密)、どの部分で離れているか(疎)が視覚的に非常に分かりやすくなる(模範解答の図a下部のような図)。
- 疎密の概念図: 媒質が均等に分布している状態から、波の通過によって部分的に圧縮されたり引き伸ばされたりする様子を、点の密度などで模式的に描いてイメージする。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 必ず軸の名称(\(t, x, y\) など)と単位を明記する。
- 変位の正方向を矢印などで明確に示す(特に縦波の場合)。
- \(y-t\) グラフと \(y-x\) グラフを混同しないよう、それぞれの特徴(周期 \(T\) が読み取れるか、波長 \(\lambda\) が読み取れるかなど)を意識して描く。
- 縦波の疎密を考える際には、横波表示のグラフだけでなく、上記の「変位の矢印表示」のような補助的な図を自分で描いてみると、理解が格段に深まる。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(f=1/T\), \(v=f\lambda\) (または \(\lambda=vT\)): これらは波の速さ、振動数、波長、周期という基本的な物理量を相互に関連付ける定義的・普遍的な関係式であり、波の種類(縦波・横波)や媒質によらず成り立つ。
- 波の式 \(y(x,t) = A\sin(\omega t – kx)\) (または類似の形): これは、\(x=0\) での振動が \(A\sin(\omega t)\) であり、波が \(+x\) 方向に歪みなく伝播するという物理的状況を数学的に表現したもの。初期条件や進行方向によって、\(\sin\) が \(\cos\) になったり、符号が変わったりするが、本質は「\(t-x/v\)」の形に依存する関数であること。問2で \(t=0\) の波形を導く際に、この一般形を念頭に置くことで論理的に式を立てられる。
- 半波長 (\(\lambda/2\)) 離れた点の逆位相: 波の正弦関数的な形から、空間的に \(\lambda/2\) ずれると位相が \(\pi\) (180度) ずれることによる。これにより、一方の変位が他方の変位の符号を反転させたものになる。問3で利用。
- 媒質速度と変位の関係 (単振動の性質): 波の媒質の各点は単振動するので、その速度は変位が \(0\) (振動中心) のときに最大、変位が \(\pm A\) (振動の端) のときに \(0\) となる。問4で利用。
- 縦波の「密」の条件 (\(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\)): これは、媒質が集まるという「密」の物理的状態を、横波表示された変位 \(y(x)\) の数学的条件に翻訳したもの。\(y=0\) は変位の基準からのズレがないことを意味し、\(dy/dx < 0\) はその点の右側の媒質が相対的に負の方向に、左側の媒質が相対的に正の方向に変位している(結果としてその点に集まる)ことを示唆する。問5, 問6で利用。この条件の理解が曖昧な場合は、変位の矢印を図示して確認することが推奨される。
これらの公式や条件を選択・適用する際には、「今、どのような物理現象を考えているのか」「何が与えられていて、何を求めたいのか」を常に明確にし、それぞれの量が持つ物理的意味を理解した上で論理的に結びつける訓練が重要です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (問1) 波の基本量の特定:
- \(y-t\)グラフから周期 \(T\) を読み取る。
- \(f=1/T\) より振動数 \(f\) を計算。
- \(v=f\lambda\) または \(\lambda=vT\) より波長 \(\lambda\) を計算。
- (問2) \(t=0\) の波形 (\(y-x\)グラフ) 作成:
- \(x=0, t=0\) での \(y\) の値と \(dy/dt\) の符号を \(y-t\)グラフから特定。
- 波が \(+x\) 方向に進むことを考慮し、\(y(x,0)\) の関数形を決定 (例: \(y=-A\sin(kx)\))。
- 求めた \(A, \lambda\) (から \(k=2\pi/\lambda\)) を用い、指定範囲でグラフを描画。
- (問3) 特定位置 (\(x=4\text{cm}\)) の振動 (\(y-t\)グラフ) 作成:
- \(x=4\text{cm}\) と \(x=0\) の間の距離が \(\lambda/2\) であることを確認。
- 半波長離れた点は逆位相であることから、\(x=0\) の \(y-t\)グラフを上下反転させて描画。
- (問4) 特定の運動状態になる時刻 (\(x=0\) で負の \(x\) 方向の速さが最大):
- 「負の \(x\) 方向の速さが最大」を「\(y\) が負の方向の速度が最大」と解釈。
- 速度最大は \(y=0\) のとき。
- \(y-t\)グラフ上で \(y=0\) であり、かつ \(dy/dt < 0\) (下向きに通過) となる時刻を読み取る。
- (問5) 密度が最大の点 (\(t=0\)):
- 縦波の「密」の条件 (\(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\)) を確認。
- (2)で描いた \(t=0\) の \(y-x\)グラフ上で、この条件を満たす \(x\) を指定範囲で特定。
- (問6) 密度が最大になる時刻 (\(x=4\text{cm}\)):
- \(t=0\) での \(x=4\text{cm}\) の状態 (疎か密か) を(5)の考察から判断 (疎)。
- 疎密の状態は \(T/2\) ごとに反転することを利用。
- \(t=0\) で疎なので、\(t=T/2, T/2+T, T/2+2T, \dots\) に密になる。指定時間範囲で該当時刻を列挙。
このように、各設問が前の設問の結果を利用したり、共通の物理概念に基づいていたりすることを意識し、一貫した論理で解き進めることが大切です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の取り扱いに細心の注意を払う:
- 問題文やグラフで与えられる数値の単位([mm], [cm], [s], \( \times 10^{-2} \) など)を正確に把握する。
- 計算途中で単位換算が必要な場合は、間違えないように慎重に行う (本問では比較的単位系が揃っているが、一般的に注意)。
- 最終的な答えの単位が、問われている物理量に対して適切であるかを確認する。
- グラフの目盛りの正確な読み取り: \(y-t\) グラフから周期や振幅を読み取る際、また \(y-x\) グラフを描画・解釈する際に、目盛りの値を誤読しないように注意する。特に横軸の \( \times 10^{-2} \text{ [s]} \) のようなスケールファクターを見落とさない。
- 三角関数の扱いに慣れる: 波の式や位相を扱う際に、\(\sin\) や \(\cos\) の値(特に \(0, \pi/2, \pi, 3\pi/2, 2\pi\) などの代表的な角度に対して)を正確に把握しておく。符号のミスにも注意。
- 縦波の疎密の条件の正確な適用: 「密」は \(y=0\) かつ \(dy/dx < 0\)、「疎」は \(y=0\) かつ \(dy/dx > 0\) という条件を、横波表示の \(y-x\) グラフに正しく適用する。どちらが密でどちらが疎か混乱しやすいので、定義に戻って確認する。
- 図や模式図を積極的に活用する: 特に縦波の疎密や変位の様子は、言葉や式だけではイメージしにくいことがある。簡単な模式図(変位の矢印など)を描くことで、直感的な理解を助け、計算ミスや解釈ミスを防ぐことができる。
日頃の練習において心がけること:
- 途中式や思考のプロセスを、自分だけでなく他人にも分かるように丁寧に記述する習慣をつける。
- 計算結果が出たら、それが物理的に見て極端に変な値でないか(例えば、振幅を超えた変位になっていないか、波長が異常に短すぎたり長すぎたりしないかなど)を一度立ち止まって考える。
- 検算できる箇所があれば行う。例えば、\(\lambda = vT\) と \(\lambda = v/f\) の両方で計算して一致するか確認するなど。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 物理的な妥当性の検討:
- 問1で計算された波長や周期は、与えられた波の速さと整合性が取れているか?
- 問2,3で描いたグラフは、\(x=0, t=0\) での初期条件や、波の進行、位相差といった物理法則を正しく反映しているか?(例えば、振幅が保存されているか、波形が歪んでいないかなど)
- 問4で求めた時刻は、\(y-t\) グラフの周期性の中で自然なタイミングか?
- 問5,6で特定した疎密の位置や時刻は、縦波の媒質の動きとして矛盾がないか?
- 単位の一貫性と正しさの最終確認:
- 全ての計算結果について、その物理量に適切な単位が付与されているか。
- グラフとの視覚的な整合性の確認:
- 例えば、問3で描いた \(x=4\text{ cm}\) の \(y-t\) グラフが、問2で描いた \(t=0\) の \(y-x\) グラフにおける \(x=4\text{ cm}\) の点 (\(y=0\)) から出発し、その後の時間変化(\(t=2 \times 10^{-2}\text{s}\) で谷になるなど)と視覚的に整合しているかを確認する。
- 問5の疎密の判断が、問2の \(y-x\) グラフの形状(特に \(y=0\) での傾き)と一致しているか。
- 既知の事実や類似問題との比較:
- もし同様のパターンの問題を以前に解いたことがあれば、その時の解法や結果と照らし合わせて、おかしな点がないか確認する。
- 縦波の疎密の性質(例:疎から密へは \(T/2\) で変化)は一般的な知識と合致しているか。
- この問題から得られる教訓やキーポイントの再認識:
- 縦波の問題では、横波表示されたグラフと実際の媒質の動き(特に疎密)を正確に結びつけるための想像力と理解が鍵となること。
- \(y-t\) グラフと \(y-x\) グラフは、波を異なる側面から見たものであり、両者を自在に行き来できる能力が求められること。
- 問題文で与えられた条件(変位の正の向き、波の進行方向、速さなど)を一つ一つ丁寧に見落とさずに活用することの重要性。
問題73 (東京理科大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、波の基本的な性質、観測者が動く場合のドップラー効果(相対速度による影響)、複数の波源からの波の重ね合わせによって生じる定常波、そして壁での反射によって生じる定常波という、波の分野における重要な概念を網羅的に扱っています。各設問で異なる状況設定が与えられ、それに応じて波の振る舞いを考察する必要があります。
- 波源A、波源B、観測器Mは媒質中の \(x\) 軸上に配置されている。
- AとBの間隔: \(L = 250 \text{ m}\)。
- A、Bから送り出される波について:
- 振幅 \(A_0 = 3.0 \text{ m}\)(A, B共通)。
- 波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\)(A, B共通)。
- 互いに向かって送り出される(Aからは \(+x\) 方向、Bからは \(-x\) 方向)。
- 観測器Mは、AとBの間で \(x\) 軸上を自由に動くことができる。
- 波源AとBは同位相で波を送り出す。
- 波の減衰は無視する。
- 設問(1)において、Mを静止させAからの波を観測した際、連続する2つの山の時間間隔が \(4.0 \text{ s}\) であった。
- 設問(2)において、Mは正の向き(\(+x\) 方向、つまりAからBへ向かう向き)に速さ \(u = 2.0 \text{ m/s}\) で運動する。
- 設問(4)において、Aから正の方向に \(d_{\text{AR}} = 75 \text{ m}\) の位置に自由端反射をする反射板Rを \(x\) 軸に垂直に置く。
- (1) 波の速さ \(v\)。
- (2) Mが正の向きに速さ \(2.0 \text{ m/s}\) で運動しているときに観測する、Aからの波の連続する2つの山の時間間隔 \(t’\)。
- (3) Mを静止させ、AとBからの合成波を観測したときの最大振幅と、AとBの間(A, B上は含まないことが多いが、ここでは両端の扱いを問題の意図に合わせて解釈する必要がある。模範解答では両端を含めずに数えているように見えるが、中点が腹になることから、その腹が端点と重なるかどうかも考慮する)で振幅が最大となる位置の数。
- (4) 反射板Rを置いたとき、AR間で振幅が \(0\) となる点(節)のうち、Aに最も近い点のAからの距離。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は「波の伝播と重ね合わせ」に関する総合的な理解を問うています。波の基本的な性質から始まり、観測者の運動による効果(ドップラー効果)、複数の波源による干渉(定常波)、そして境界での反射とそれによる定常波の形成へと展開していきます。
各現象の物理的な意味を正確に捉え、適切な公式や考え方を適用することが重要です。
- 波の基本性質: 波の速さ \(v\)、波長 \(\lambda\)、周期 \(T\)、振動数 \(f\) の間の関係式 \(v = f\lambda\) および \(T=1/f\) は全ての設問の基礎となります。
- ドップラー効果: 観測者や波源が運動すると、観測される波の振動数や周期が変化します。ここでは観測者の運動に注目します。
- 波の重ね合わせと干渉: 複数の波が同じ場所で出会うと、それぞれの変位が足し合わされます(重ね合わせの原理)。これにより波は強め合ったり弱め合ったりします(干渉)。
- 定常波: 振幅、波長、速さが等しく互いに逆向きに進む2つの波が干渉すると、空間に固定された振動パターンである定常波が生じます。大きく振動する「腹」と全く振動しない「節」が特徴です。
- 波の反射 (自由端反射): 波が境界で反射する際、境界の条件(自由端か固定端か)によって反射波の位相が決まります。自由端反射では位相は変わらず、反射点は定常波の「腹」となります。
これらの概念を一つ一つ丁寧に適用していくことで、各設問を解き進めることができます。
問1
思考の道筋とポイント
この設問では、波の基本的な性質を用いて波の速さ \(v\) を求めます。
1. 観測器Mが静止している状態で、波源Aからの波の「連続する2つの山」を観測する時間間隔が与えられています。これは、波の周期 \(T\) そのものを表しています。
2. 波の波長 \(\lambda\) は問題文で与えられています (\(16 \text{ m}\))。
3. 波の速さ \(v\)、波長 \(\lambda\)、周期 \(T\) の間には \(v = \lambda/T\) という基本的な関係式が成り立ちます。これを用いて \(v\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 静止した観測者が観測する、波の連続する同位相の点(例えば、山と山、谷と谷)の時間間隔が、その波の周期 \(T\) に等しいことを理解していること。
- 波の速さ、波長、周期の間の基本関係式 \(v = \lambda/T\) (または、振動数 \(f\) を介して \(v=f\lambda\) と \(f=1/T\))を正しく適用できること。
- 与えられた数値の単位を確認し、計算結果の単位も適切であることを確認すること。
具体的な解説と立式
観測器Mが静止しているとき、波源Aから到来する波の連続する2つの山を観測する時間間隔は、その波の周期 \(T\) に他なりません。
問題文より、この時間間隔は \(4.0 \text{ s}\) と与えられているので、周期は \(T = 4.0 \text{ s}\) です。
また、波源Aから送り出される波の波長 \(\lambda\) は \(16 \text{ m}\) と与えられています。
波の速さ \(v\) は、波長 \(\lambda\) と周期 \(T\) を用いて次のように表されます。
$$v = \frac{\lambda}{T}$$
使用した物理公式
- 波の周期 \(T\): 連続する同位相の点を観測する時間間隔
- 波の速さ・波長・周期の関係: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
与えられた値は以下の通りです。
周期 \(T = 4.0 \text{ s}\)
波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\)
これらの値を波の速さの公式に代入します。
$$v = \frac{16 \text{ m}}{4.0 \text{ s}} = 4.0 \text{ m/s}$$
観測器Mが止まっているとき、Aからの波の「山」がやってきてから、次の「山」がやってくるまでの時間が \(4.0\) 秒だった、と問題に書かれています。この「山から山までの時間」というのは、波が1回ブルンと振動するのにかかる時間、つまり「周期 \(T\)」のことです。なので、周期 \(T = 4.0\) 秒です。
波の「波長 \(\lambda\)」(波1つ分の長さ)は \(16 \text{ m}\) と与えられています。
波の速さ \(v\) は、距離を時間で割って求められます。波は1周期 \(T\) の間に1波長 \(\lambda\) だけ進むので、速さ \(v = \lambda / T\) という式が使えます。
これに値を代入すると、\(v = 16 \text{ m} / 4.0 \text{ s} = 4.0 \text{ m/s}\) となります。
波の速さは \(4.0 \text{ m/s}\)。
これは、波の基本的な定義(周期と波長)から直接導かれる値であり、物理的に妥当です。単位も速度の単位 (\(\text{m/s}\)) として正しいです。
問2
思考の道筋とポイント
この設問では、観測器Mが波源Aから遠ざかる向き(正の向き)に速さ \(u = 2.0 \text{ m/s}\) で運動しながら、Aからの波を観測する場合の「連続する2つの山を観測する時間間隔 \(t’\)」を求めます。これはドップラー効果の一種と考えることができますが、ここでは波の山と観測器の相対的な動きから直接求めるアプローチ(模範解答で示されている方法)で解説します。
1. 観測器Mが1番目の山を観測した瞬間を基準(時刻 \(0\)、位置 \(0\))とします。
2. 次の2番目の山は、その瞬間、Mの後方 \(\lambda\) の位置にあります。
3. Mが \(t’\) 時間後に2番目の山を観測すると仮定します。この間に、Mは \(ut’\) だけ進みます。一方、2番目の山は \(vt’\) だけ進みます。
4. Mが2番目の山を観測するということは、2番目の山が進んだ距離が、Mが進んだ距離に最初の山と次の山の間の距離 \(\lambda\) を加えたものに等しくなるときです(波がMに追いつく状況)。つまり、\(vt’ = \lambda + ut’\) という関係が成り立ちます。
5. この関係式を \(t’\) について解きます。
この設問における重要なポイント
- 観測者が波の進行方向と同じ向きに運動する場合(波から遠ざかる場合)、観測される波の周期(山と山の時間間隔)が長くなる(振動数が小さくなる)ことを理解している。
- 波と観測者の相対的な動きを正確に把握し、山と山の間隔(波長)を相対速度で進む時間として計算できる。または、ドップラー効果の公式を正しく適用できる。
- 各速度(波の速さ \(v\)、観測者の速さ \(u\))の向きを考慮して立式すること。
具体的な解説と立式
観測器Mは、波源Aからの波の進行方向と同じ向き(正の向き)に速さ \(u = 2.0 \text{ m/s}\) で運動しています。波の速さは問1より \(v = 4.0 \text{ m/s}\)、波長は \(\lambda = 16 \text{ m}\) です。
Mが最初の山(山1)を観測した時刻を \(t=0\)、その位置を \(x=0\) とします。このとき、次の山(山2)はMの後方 \(\lambda\) の位置、つまり \(x=-\lambda\) にあります。
Mが \(t’\) 秒後に山2を観測したとします。この \(t’\) 秒の間に、
・観測器Mは \(ut’\) だけ進み、その位置は \(x_M = ut’\) となります。
・山2は \(vt’\) だけ進み、その位置は \(x_{\text{山2}} = -\lambda + vt’\) となります。
Mが山2を観測するのは、\(x_M = x_{\text{山2}}\) となるときなので、
$$ut’ = -\lambda + vt’$$
この式を \(t’\) について整理すると、
$$vt’ – ut’ = \lambda$$
$$(v-u)t’ = \lambda$$
よって、
$$t’ = \frac{\lambda}{v-u}$$
これは、観測者が波源から遠ざかる場合のドップラー効果によって観測される周期の式に相当します。
使用した物理公式
- 相対速度の考え方に基づく追いつき・出会いの時間の計算
- (またはドップラー効果の公式: \(f’ = \frac{v-u}{v}f\), \(t’ = 1/f’\))
与えられた値と問1の結果を用います。
波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\)
波の速さ \(v = 4.0 \text{ m/s}\)
観測器Mの速さ \(u = 2.0 \text{ m/s}\) (波と同じ向き)
連続する2つの山を観測する時間間隔 \(t’\) は、
$$t’ = \frac{\lambda}{v-u} = \frac{16 \text{ m}}{4.0 \text{ m/s} – 2.0 \text{ m/s}} = \frac{16 \text{ m}}{2.0 \text{ m/s}} = 8.0 \text{ s}$$
観測器Mは、Aからの波と同じ向きに速さ \(2.0 \text{ m/s}\) で進んでいます。波自体は速さ \(4.0 \text{ m/s}\) で進んでいます。山から次の山までの長さ(波長)は \(16 \text{ m}\) です。
Mが最初の山に追い越された(観測した)と考えましょう。次の山は \(16 \text{ m}\) 後ろからやってきます。
Mは逃げているので、波はMに対して通常よりゆっくりと追いついてきます。波がMに追いつく相対的な速さは、波の速さからMの速さを引いた \(v-u = 4.0 – 2.0 = 2.0 \text{ m/s}\) です。
この \(2.0 \text{ m/s}\) の相対速さで \(16 \text{ m}\) の距離(波長分)を詰めるのにかかる時間が、Mが連続して山を観測する時間間隔になります。
時間 \(=\) 距離 \(\div\) 速さ なので、\(t’ = 16 \text{ m} / 2.0 \text{ m/s} = 8.0\) 秒です。
Mが動いているときに観測する、Aからの波の連続する2つの山の時間間隔は \(8.0 \text{ s}\)。
静止していたときの観測間隔(周期 \(T=4.0 \text{ s}\))と比較すると、観測器が波の進行方向と同じ向きに動いている(波から遠ざかっている)ため、観測される時間間隔は長くなっています。これはドップラー効果の定性的な結果と一致しており、物理的に妥当です。
模範解答の別解で示されているように、ドップラー効果の公式 \(f’ = \frac{v-u}{v}f\) を使い、観測される周期 \(t’ = 1/f’\) と元の周期 \(T=1/f\) の関係から \(t’ = \frac{v}{v-u}T\) としても、\(t’ = \frac{4.0}{4.0-2.0} \times 4.0 = 8.0 \text{ s}\) と同じ結果が得られます。
問3
思考の道筋とポイント
この設問では、観測器Mを静止させ、波源AとBの両方から発せられる波の合成波を考えます。AとBは同位相で、同じ振幅・波長・速さの波を互いに逆向きに送り出しているので、AB間には定常波が生じます。
1. 最大振幅の決定: 定常波の「腹」の位置では、2つの波が常に強め合います(同位相で重なる)。したがって、腹における振幅(最大振幅)は、元の波の振幅の2倍になります。
2. 腹の位置の特定:
* 波源AとBが同位相であるため、AB間の中点は必ず定常波の「腹」になります。
* 定常波において、隣り合う腹と腹の間隔は半波長 (\(\lambda/2\)) です。
* この性質を利用して、AB間に存在する腹の総数を数えます。中点を基準に、両側に \(\lambda/2\) の間隔で腹が並ぶ様子を考えます。
この設問における重要なポイント
- 逆向きに進む同じ種類・同じ振幅・同じ波長(または振動数)の波が干渉すると定常波が生じることを理解している。
- 定常波の「腹」では振幅が最大となり、その値は元の波の振幅の2倍になること(波が強め合うため)。
- 2つの波源が同位相の場合、波源間の中点は定常波の「腹」になること。
- 定常波の隣り合う腹と腹の間隔は半波長 (\(\lambda/2\)) であること。
- 与えられた区間内に存在する腹の数を正確に数える方法を理解している。
具体的な解説と立式
波源Aから右向き (\(+x\) 方向) に進む波と、波源Bから左向き (\(-x\) 方向) に進む波は、振幅 \(A_0 = 3.0 \text{ m}\)、波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\)、速さ \(v = 4.0 \text{ m/s}\) がすべて等しいです。これらの波がAB間で重なり合うと、定常波が生じます。
最大振幅:
定常波の腹の位置では、2つの波が常に同じ位相で重なり強め合います。したがって、腹における振幅(これが観測される最大振幅)は、それぞれの波の振幅の和となります。
最大振幅 \(A_{\text{max}} = A_0 + A_0 = 2A_0\)。
$$A_{\text{max}} = 2 \times 3.0 \text{ m} = 6.0 \text{ m}$$
振幅が最大となる位置の数:
振幅が最大となるのは定常波の「腹」の位置です。
波源AとBは同位相で波を送り出しているので、AとBの中点Cは定常波の腹になります。
AとBの間の距離は \(L = 250 \text{ m}\) なので、中点CはA (またはB) から \(L/2 = 125 \text{ m}\) の位置にあります。
隣り合う腹と腹の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
$$\frac{\lambda}{2} = \frac{16 \text{ m}}{2} = 8 \text{ m}$$
中点Cが腹であり、ここからAの方向(またはBの方向)に \(8 \text{ m}\) ごとに腹が並びます。
AC間の距離 \(125 \text{ m}\) に、この \(8 \text{ m}\) 間隔の腹がいくつ存在するかを考えます(点C自身を除く)。
$$125 \text{ m} \div 8 \text{ m/腹} = 15.625$$
これは、中点CからAに向かって \(8 \text{ m}, 16 \text{ m}, \dots, 8 \times 15 = 120 \text{ m}\) の位置に15個の腹があることを意味します。この15個の腹はAとCの間にあります(A上、C上は含まず)。
同様に、中点CからBに向かっても \(125 \text{ m}\) の間に15個の腹が存在します。
したがって、AとBの間(波源A, B上は通常含めないが、問題の意図と模範解答の数え方を考慮する)にある腹の総数は、
中点Cにある1つの腹 + AC間にある15個の腹 + BC間にある15個の腹
合計 \(1 + 15 + 15 = 31\) 箇所となります。
(模範解答では点Cを含め、AC間、BC間それぞれCを除いて15個ずつ、として合計31箇所としています。)
使用した物理公式
- 定常波の腹における振幅: \(A_{\text{腹}} = 2A_0\) (\(A_0\) は入射波の振幅)
- 同位相波源による定常波: 波源間の中点は腹。
- 定常波の腹と腹の間隔: \(\lambda/2\)
1. 最大振幅の計算:
元の波の振幅 \(A_0 = 3.0 \text{ m}\)。
最大振幅 \(A_{\text{max}} = 2 A_0 = 2 \times 3.0 \text{ m} = 6.0 \text{ m}\)。
2. 腹の数の計算:
波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\)、よって腹と腹の間隔は \(\lambda/2 = 8 \text{ m}\)。
AとBの間の距離 \(L = 250 \text{ m}\)。中点C (Aから \(125 \text{ m}\)) は腹。
区間AC (\(0 < x < 125 \text{ m}\)) にある腹の数を数える。CからAに向かって \(8\text{m}, 16\text{m}, \dots\) の位置に腹がある。
\(125 \text{ m} / 8 \text{ m} = 15\) 余り \(5 \text{ m}\)。
これは、Cのすぐ隣から数えて15番目の腹がCから \(15 \times 8 = 120 \text{ m}\) の位置にあり、A (Cから \(125 \text{ m}\)) までにはこれ以上腹は存在しない(ただしA自身が腹になるかは別途検討)。
模範解答の図では、AとBの端点も腹としてカウントしているように見えますが、通常「間」と言われれば端を含みません。しかし、模範解答の個数(31個)は中点の腹1個 + 左右にそれぞれ15個という計算なので、中点Cとその左右 \(15 \times 2 = 30\) 個の腹で合計31個となります。これは、\(L = n (\lambda/2) + \delta\) で、\(250 = n \times 8 + \delta\)。\(250/8 = 31.25\)。これは中点対象なので、\(250 = 2 \times (15 \times 8 + 5)\)。
中点Cが腹。CからA(またはB)までの距離 \(125\text{m}\) に \(125/8 = 15.625\) より15個の \(\lambda/2\) が入るので、Cを除いて片側に15個の腹がある。
よって合計 \(15 (\text{A側}) + 1 (\text{C}) + 15 (\text{B側}) = 31\) 箇所。
波源Aからの波と波源Bからの波が、ABの間で出会うと、互いに強め合ったり弱め合ったりして「定常波」という特別な波ができます。
最大振幅:定常波で最も大きく揺れる場所を「腹」といいます。腹では、Aからの波の山とBからの波の山(または谷と谷)がちょうど重なるので、振幅は元の波の振幅の2倍になります。元の波の振幅が \(3.0 \text{ m}\) なので、最大振幅は \(3.0 \text{ m} + 3.0 \text{ m} = 6.0 \text{ m}\) です。
腹の数:AとBは同じタイミング(同位相)で波を出すので、AとBのちょうど真ん中の点Cは必ず「腹」になります。そして、「腹」と次の「腹」の間隔は、波長 \(\lambda\) の半分 (\(\lambda/2\)) です。波長は \(16 \text{ m}\) なので、腹の間隔は \(16/2 = 8 \text{ m}\) です。
AとBの距離は \(250 \text{ m}\) です。中点CはAから \(125 \text{ m}\) の位置にあります。
中点CからAまでの \(125 \text{ m}\) の間に、\(8 \text{ m}\) ごとに腹がいくつあるか考えます。\(125 \div 8 = 15\) で余りが出るので、中点Cの他にAの方向に15個の腹があります。同じように、中点CからBの方向にも15個の腹があります。
ですから、AとBの間にある腹の総数は、A側の15個 + B側の15個 + 真ん中のC点の1個 で、合計31箇所になります。
その最大振幅は \(6.0 \text{ m}\)。また、AとBの間で合成波の振幅が最大となる位置(腹)は31箇所ある。
定常波の基本的な性質(腹の振幅、同位相波源の場合の中点の状態、腹の間隔)を正しく適用して得られた結果であり、模範解答とも一致しています。
問4
思考の道筋とポイント
この設問では、波源Aから正の方向に \(75 \text{ m}\) 離れた位置に自由端反射をする反射板Rを置いた場合に、AR間にできる定常波について考えます。特に、振幅が \(0\) となる点(節)のうち、Aに最も近い点の位置を求めます。
1. 自由端反射と定常波の腹: 波が自由端で反射する場合、反射点で位相の変化はありません(山は山のまま反射する)。その結果、自由端である反射板Rの位置は、できる定常波の「腹」になります。
2. 節の位置: 定常波において、振幅が \(0\) となるのは「節」の位置です。
3. 腹と節の間隔: 隣り合う腹と節の間隔は \(\lambda/4\) です。また、隣り合う節と節の間隔は \(\lambda/2\) です。
4. 節の特定: 反射板R(腹)の位置から、まずRに最も近い節の位置を \(\lambda/4\) を使って特定します。その後、その節からAの方向へ \(\lambda/2\) の間隔で節が並ぶことを利用し、Aに最も近い節の位置を求めます。
この設問における重要なポイント
- 自由端反射では、反射点が定常波の「腹」になることを理解している。
- 定常波の「節」では振幅が \(0\) になることを理解している。
- 定常波の腹と節の間隔が \(\lambda/4\)、節と節の間隔が \(\lambda/2\) であることを正しく適用できる。
- 基準点(この場合は反射板R)から節の位置を順に特定し、与えられた条件(Aに最も近い)を満たす点を見つけることができる。
具体的な解説と立式
波源A (\(x=0\) とする) から出た波が、\(x_R = 75 \text{ m}\) の位置にある反射板Rで自由端反射します。このとき、入射波と反射波が干渉し、AR間に定常波が形成されます。
自由端反射なので、反射板Rの位置 (\(x_R = 75 \text{ m}\)) は定常波の腹となります。
振幅が \(0\) となるのは定常波の節の位置です。
腹とそれに最も近い節との間の距離は \(\lambda/4\) です。波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\) なので、
$$\frac{\lambda}{4} = \frac{16 \text{ m}}{4} = 4 \text{ m}$$
反射板R (\(x_R = 75 \text{ m}\), 腹) からAの方向に \(\lambda/4 = 4 \text{ m}\) だけ進んだ位置に、Rに最も近い節が存在します。この節の \(x\) 座標は、
$$x_{\text{節1}} = x_R – \frac{\lambda}{4} = 75 \text{ m} – 4 \text{ m} = 71 \text{ m}$$
節と隣の節との間隔は \(\lambda/2 = 16 \text{ m} / 2 = 8 \text{ m}\) です。
したがって、\(x=71 \text{ m}\) の節からAの方向に \(8 \text{ m}\) ごとに節が並びます。これらの節の \(x\) 座標は、一般に
$$x_{\text{節}} = 71 – n \times 8 \quad (n = 0, 1, 2, \dots)$$
と書けます。ここで \(x_{\text{節}}\) が \(0 \le x_{\text{節}} < 75\) の範囲にあるものを考えます。
Aに最も近い節は、この \(x_{\text{節}}\) が正で最小となるものです。
\(71\) を \(8\) で割ると、\(71 = 8 \times 8 + 7\)。
これは、\(x_{\text{節}} = 71 – 8 \times 8 = 7\) が、\(n=8\) のときの節の位置であり、これがAに最も近い正の \(x\) 座標を持つ節であることを示します。
つまり、Aから \(7 \text{ m}\) の位置に、Aに最も近い節が存在します。
使用した物理公式
- 自由端反射: 反射点は定常波の腹。
- 定常波の節: 振幅が \(0\) となる点。
- 腹と節の間隔: \(\lambda/4\)
- 節と節の間隔: \(\lambda/2\)
1. 波長 \(\lambda = 16 \text{ m}\)。
\(\lambda/4 = 4 \text{ m}\)。
\(\lambda/2 = 8 \text{ m}\)。
2. 反射板RはAから \(75 \text{ m}\) の位置にあり、自由端なので腹となる。
3. Rに最も近い節は、RからAの方向に \(\lambda/4\) の位置。
そのAからの距離は \(x_1 = 75 \text{ m} – 4 \text{ m} = 71 \text{ m}\)。
4. これよりAに近い節は、\(x_1\) から \(8 \text{ m}\) 間隔でAの方向に存在する。
Aからの距離を \(x\) とすると、\(x = 71 – 8n\) (\(n\) は \(0\) 以上の整数)で表される。
この \(x\) が正で最小となる値を求める。
\(71 \div 8 = 8\) 余り \(7\)。
したがって、\(n=8\) のとき \(x = 71 – 8 \times 8 = 71 – 64 = 7 \text{ m}\)。
これがAに最も近い節の位置である。
波源Aから出た波が、\(75 \text{ m}\) 先の反射板Rで反射します。Rは「自由端」なので、Rの場所は定常波の「腹」(大きく揺れる点)になります。
私たちが探しているのは、振幅が \(0\) になる点、つまり定常波の「節」(全く揺れない点)です。
「腹」と一番近い「節」との間の距離は、波長の \(1/4\) です。波長は \(16 \text{ m}\) なので、\(\lambda/4 = 4 \text{ m}\) です。
ということは、反射板R(腹)から \(4 \text{ m}\) だけ波源A側に戻った位置、つまりAから \(75 – 4 = 71 \text{ m}\) の位置に、Rに一番近い節があります。
「節」と次の「節」との間隔は、波長の \(1/2\) です。つまり \(\lambda/2 = 8 \text{ m}\) です。
Aから \(71 \text{ m}\) の位置に節があるので、そこからAに向かって \(8 \text{ m}\) ごとに節が並びます。
\(71 \text{ m}, (71-8)=63 \text{ m}, (63-8)=55 \text{ m}, \dots\)
Aに最も近い節を見つけるには、\(71\) を \(8\) で何回引けるか、そして最後にどれだけ残るかを考えます。
\(71 \div 8 = 8\) あまり \(7\)。
これは、Aから \(71 \text{ m}\) の節から \(8 \text{ m}\) 間隔で8個節を取ると、最後にAから \(7 \text{ m}\) の位置に節が来ることを意味します。これがAに最も近い節です。
AR間で振幅が \(0\) となる点(節)のうち、Aに最も近い点はAから \(7.0 \text{ m}\) 離れている。
自由端反射で反射点が腹になること、腹と節の間隔が \(\lambda/4\)、節と節の間隔が \(\lambda/2\) であるという定常波の基本的な性質を正しく適用して導かれた結果であり、模範解答とも一致します。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の基本パラメータと関係式: 波の速さ \(v\)、波長 \(\lambda\)、周期 \(T\)、振動数 \(f\) の間の基本的な関係 (\(v = \lambda/T\), \(f=1/T\), \(v=f\lambda\)) は、あらゆる波の問題の出発点です。問1で直接的にこれらの理解が問われました。
- ドップラー効果 (相対速度による現象の理解): 観測者や波源が運動することにより、観測される波の振動数(または周期や波長)が変化する現象。問2では観測者が運動する場合の効果を、相対速度の考え方に基づいて導出しました。
- 波の重ね合わせの原理と干渉: 複数の波が同じ媒質中を伝播するとき、各点の変位は個々の波による変位の代数和(ベクトル和)として表されます。これにより波同士が強め合ったり弱め合ったりする「干渉」が起こります。
- 定常波の形成と性質: 振幅、波長、速さが等しく互いに逆向きに進む2つの波が重なると、空間的に固定された振動パターンである「定常波(定在波)」が生じます。定常波は、振幅が最大の「腹」と全く振動しない「節」を持ちます。
- 腹と節の間隔: 隣り合う腹と腹(または節と節)の間隔は \(\lambda/2\)、隣り合う腹と節の間隔は \(\lambda/4\) です。
- 同位相波源による定常波: 2つの波源が同位相で振動する場合、波源間の中点は「腹」になります(問3)。
- 波の反射と定常波: 波が境界で反射する際、境界の条件(自由端か固定端か)によって反射波の位相が影響を受け、入射波と反射波の干渉によって定常波が形成されます。
- 自由端反射: 位相の変化なく反射し、反射点は定常波の「腹」となります(問4)。
- (参考)固定端反射: 位相が \(\pi\) (180°) ずれて反射し、反射点は定常波の「節」となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 類似問題への応用:
- 音波に関する問題: 音波のドップラー効果(救急車のサイレンなど)、気柱の共鳴(定常波)、うなり(振動数の近い音の干渉)など、本問の概念が広く応用されます。
- 光波に関する問題: ヤングの実験、薄膜による干渉、回折格子など、光の波動性に基づく干渉現象の理解に繋がります。これらの問題では経路差と位相差の関係が重要になります。
- 弦の振動: 弦楽器の弦の振動も定常波の典型例です。弦の端が固定端となるため、反射の条件が異なります。
- 初見の問題への着眼点:
- 波源や観測者の運動状態: 静止しているか、運動しているか。運動しているならその向きと速さは? (ドップラー効果の適否判断)
- 波源が複数ある場合: 波源の数、それぞれの波の特性(振幅、波長、位相)、波源間の位置関係は? (干渉・定常波の条件判断)
- 反射がある場合: 反射面の位置、反射の条件(自由端か固定端か)は? (反射波の位相、定常波の腹・節の位置判断)
- 問われている物理量は何か: 波の速さ、周期、波長か? 観測される振動数や周期か? 合成波の振幅か? 定常波の腹や節の位置・数か?
- 与えられた距離や時間は、波長や周期と比較してどの程度の大きさか: これにより、干渉の次数や腹・節の個数などを大まかに見積もることができます。
- 問題解決のヒントや特に注意すべき点:
- 必ず図を描いて物理的な状況を視覚的に把握する。特に定常波では、腹と節の位置関係を波長と関連付けて図示することが極めて有効。
- 「位相」の概念を正確に理解する(同位相、逆位相、位相差など)。これが干渉の結果を左右する。
- 「腹」と「節」の定義、およびそれらがどのような条件で生じるのか(強め合いか弱め合いか、反射端の条件など)を明確に区別して理解しておく。
- ドップラー効果の公式は、導出過程や各変数の意味(特に符号)を理解しておくと、適用ミスを防げる。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ドップラー効果の公式の符号ミス: 波源が動くか観測者が動くか、近づくか遠ざかるかで公式の分子・分母の符号の組み合わせが変わるため、意味を理解せずに丸暗記していると間違いやすい。相対速度の考え方から導出できるようにするか、状況に応じた正しい公式を選択する訓練が必要。
- 定常波の腹と節の位置の誤解:
- 波源の位相関係(同位相か逆位相か)によって、波源間の中点が腹になるか節になるかが逆転する。
- 反射端が固定端か自由端かで、反射点が節になるか腹になるかが逆転する。これらの条件を見落とすと、腹・節のパターン全体がずれてしまう。
- 隣り合う腹(または節)の間隔を波長 \(\lambda\) と誤解する(正しくは \(\lambda/2\))。腹と節の間隔を \(\lambda/2\) と誤解する(正しくは \(\lambda/4\))。
- 腹・節の個数の数え間違い: 特に区間の端点を含むか含まないか、基準点をどこに取るかで数え間違いが頻発する。区間の長さを \(\lambda/2\) や \(\lambda/4\) で割り、商と余りから慎重に判断する。図を描いて一つ一つ確認するのが確実。模範解答(3)の \(125 = 8 \times 15 + 5\) のような計算は、個数を正確に把握する上で有効。
- 「波長分離れている」と「周期分離れている」の混同: 波長は空間的な繰り返しの単位、周期は時間的な繰り返しの単位。これらを混同すると、位相の計算などで誤りが生じる。
対策: 各物理現象の定義と基本原理に立ち返り、公式の導出過程や適用条件を理解するよう努める。曖昧な点は必ず教科書や参考書で確認する。図を丁寧に描いて状況を整理し、具体的な数値で検算する習慣をつける。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題で有効だったイメージと図:
- (問2) ドップラー効果のイメージ: 波の山が等間隔(波長\(\lambda\))で進んでくる中を、観測者が動くことで山に出会う頻度(時間間隔)が変わる様子。模範解答(2)の「Mが山1を観測してから次の山2に出合うまで」の図は、相対的な動きを理解する上で非常に有効。
- (問3) 定常波 (2つの波源による干渉): 左右から同じ波がやってきて重なり、空間に腹と節の縞模様ができるイメージ。波源A, Bと中点C、そして \(\lambda/2\) 間隔で並ぶ腹の位置関係を図で示す(模範解答(3)の図参照)。
- (問4) 定常波 (反射による干渉): Aからの波が反射板Rで跳ね返り、入射波と反射波が干渉して定常波ができるイメージ。Rが自由端であるため腹となり、そこから \(\lambda/4\) の位置に最初の節、さらに \(\lambda/2\) ごとに節が並ぶ様子を図で示す(模範解答(4)の図参照)。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 波の進行方向を明確に矢印で示す。
- 波源、観測者、反射板などの重要な点の位置関係(距離など)を正確に図に反映させる。
- 定常波の場合、腹(振幅最大)と節(振幅ゼロ)の位置を、波長との関係(\(\lambda/2, \lambda/4\)など)を意識しながら明記する。
- 波源の位相関係(同位相、逆位相など)や反射の条件(自由端、固定端)を図に反映させ、それによって腹・節のパターンがどうなるかを考察する。例えば、同位相波源なら中点が腹、自由端反射なら反射点が腹、など。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v = \lambda/T\): 波の速さの定義そのもの。波が1周期 \(T\) の間に1波長 \(\lambda\) 進むという普遍的な性質を表す。問1で速さを求める根拠。
- \(t’ = \lambda/(v-u)\): 問2で、観測者が波の進行方向と同じ向きに速さ \(u\) で動く場合に、連続する波面(山)を観測する時間間隔。これは、波長 \(\lambda\) の距離を、波が観測者に追いつく相対速度 \(v-u\) で進む時間として導かれる。ドップラー効果の公式の一つの現れ。
- 定常波の腹の振幅 \(A_{\text{腹}} = 2A_0\): 2つの波が同位相で重なり、それぞれの振幅 \(A_0\) が足し合わされるため。問3で使用。
- 定常波の腹(節)の間隔が \(\lambda/2\): 逆向きに進む2つの波の位相が、\(\lambda/2\) 進むごとに \(\pi\) (180°) ずつずれていくため、同じ干渉条件(強め合い、または弱め合い)が \(\lambda/2\) ごとに繰り返されることによる。問3, 問4で使用。
- 腹と節の間隔が \(\lambda/4\): 強め合いの点(腹)と弱め合いの点(節)の間の最短距離。位相が \(\pi/2\) (90°) ずれる距離に相当。問4で使用。
- 自由端反射では反射点が腹となる: 自由端では媒質の運動が拘束されないため、変位が最大(つまり腹)となりうる。反射の際に位相が反転しないことと同等。問4で使用。
これらの公式や条件は、それぞれが特定の物理現象や定義、あるいは数学的な導出に基づいている。なぜその公式がその場面で適用できるのか、その根拠を常に意識することが、物理の論理的な思考力を養う上で不可欠です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (問1) 波の速さの特定:
- 静止観測者が観測する「山から山への時間」が周期 \(T\) であると認識。
- 与えられた波長 \(\lambda\) と周期 \(T\) から、基本公式 \(v=\lambda/T\) を用いて速さ \(v\) を算出。
- (問2) 運動する観測者が観測する周期 \(t’\) の特定:
- 観測者の運動方向と波の進行方向を確認(同じ向き)。
- 観測者に対する波の相対速度 \(v_{\text{相対}} = v-u\) を考える。
- 波長 \(\lambda\) の距離をこの相対速度で通過する時間として \(t’ = \lambda/v_{\text{相対}}\) を計算。
- (問3) 2波源による定常波 (腹の振幅と数):
- 逆向きに進む同条件の波による定常波形成を認識。
- 腹での最大振幅は \(2A_0\) となることを理解。
- 波源が同位相なので、波源間の中点が腹になることを適用。
- 腹と腹の間隔が \(\lambda/2\) であることを用い、中点から両端までの区間に存在する腹の数を計算し、合計する。
- (問4) 反射による定常波 (節の位置):
- 自由端反射の条件(反射点が腹)を適用。
- 腹と節の間隔が \(\lambda/4\)、節と節の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用。
- 反射板(腹)から最も近い節の位置を \(x_R – \lambda/4\) として特定。
- その節から波源Aに向かって \(\lambda/2\) 間隔で節が並ぶと考え、Aに最も近い節の位置を計算(剰余などを利用)。
この一連の思考プロセスにおいて、各ステップで「何を明らかにしようとしているのか」「そのためにどの物理法則や条件が利用できるか」を常に自問自答し、論理のつながりを明確に保つことが、複雑な問題でも正確な解答にたどり着くための鍵となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の一貫性を常に確認する: 問題全体で長さの単位は[m]、時間の単位は[s]、速さの単位は[m/s]で統一されているかを確認する。計算途中や最終結果の単位が物理的に正しいかもチェックする。
- 与えられた数値の正確な代入: 波長 \(\lambda=16\text{ m}\)、波の速さ \(v=4.0\text{ m/s}\)、観測者の速さ \(u=2.0\text{ m/s}\)、振幅 \(A_0=3.0\text{ m}\) などの値を、計算式に正確に代入する。単純なミスが結果を大きく狂わせることがある。
- 腹・節の個数の数え方に注意: 問3や問4のように、特定の区間内に存在する腹や節の数を数える問題では、区間の端を含むのか含まないのか、基準点をどこに置くのかによって数え間違いが起こりやすい。図を描いて視覚的に確認したり、区間の長さを \(\lambda/2\) や \(\lambda/4\) で割って商と余りから慎重に判断したりすることが重要。模範解答で用いられている \(125 = 8 \times 15 + 5\) のような整数での割り算と余りを利用する方法は、個数を正確に把握する上で非常に有効。
- 自由端反射・固定端反射の条件の区別を明確に: 反射の問題では、反射端が自由端なのか固定端なのかで、反射点が腹になるか節になるかが決まる。これを間違えると、定常波全体のパターンがずれてしまうため、問題文をよく読み条件を正確に把握する。
- ドップラー効果の公式の適用時の符号: 公式を丸暗記するだけでなく、観測者や波源が近づくのか遠ざかるのか、その結果として振動数が増えるのか減るのか、といった物理的な意味を理解した上で符号を判断する。相対速度の考え方から導出できるとより確実。
日頃の練習において心がけること:
- 複雑な状況設定の問題では、まず簡単な図を描いて物理的な状況や位置関係を整理する習慣をつける。
- 計算過程を省略せずに丁寧に記述し、論理の飛躍がないか確認する。
- 問題文で与えられた条件をリストアップし、全ての条件を考慮したか、見落としがないかを確認する癖をつける。
- 基本的な公式や法則は、その導出過程や適用限界も含めて理解を深めておく。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 物理的な直観との照らし合わせ:
- 問2で求めた観測周期 \(t’=8.0\text{ s}\) は、静止時の周期 \(T=4.0\text{ s}\) よりも長くなっています。観測者が波から遠ざかる(波の進行と同じ向きに動く)場合、波の山に追い越されるまでの時間が長くなるのは直観的にも理解できるか?(はい、妥当です。)
- 問3で求めた腹の最大振幅 \(6.0\text{ m}\) は、元の波の振幅 \(3.0\text{ m}\) のちょうど2倍です。これは2つの波が強め合った結果として妥当か?(はい、妥当です。)
- 問3, 問4で求めた腹や節の個数、位置関係は、波長との関係 (\(\lambda/2, \lambda/4\)) から考えて不自然な点はないか?
- 単位の最終確認:
- 全ての計算結果について、問われている物理量の単位として正しいか(例:速さなら \(\text{m/s}\)、時間なら \(\text{s}\)、長さなら \(\text{m}\)、振幅なら \(\text{m}\))。
- 極端な条件や特殊な場合を想定してみる(思考実験):
- (問2) もし観測者の速さ \(u\) が波の速さ \(v\) と同じだったら、\(t’\) はどうなるか?(式上は \(v-u=0\) で割れなくなり、無限大。物理的には追いつけない。)もし \(u\) が \(0\) なら \(t’=T\) に戻るか?(はい、戻ります。)
- (問3) もし波源AとBが逆位相だったら、中点は腹ではなく節になるはず。その場合、腹の配置はどう変わるか?
- (問4) もし反射板が固定端だったら、反射点は節になる。その場合、Aに最も近い節の位置はどう変わるか?
このような思考実験は、法則の理解度を深め、応用力を高めます。
- 既知のパターンや法則との整合性:
- 定常波の腹・節の配置パターンは、教科書などで学習した一般的な知識と矛盾していないか?
- ドップラー効果の定性的な傾向(近づけば振動数増、遠ざかれば振動数減)と結果が一致しているか?
- この問題から得られるキーポイントの再確認と一般化:
- 波の問題では、まず波の基本的なパラメータ(速さ、波長、周期、振動数)を確定させることが第一歩である。
- 観測者や波源の運動は、観測される波の特性に影響を与える(ドップラー効果)。
- 複数の波の重ね合わせは、干渉という現象を引き起こし、特定の条件下では定常波を形成する。
- 境界での反射条件(自由端か固定端か)は、反射波の位相を決定し、定常波のパターンに大きく影響する。
- 図を描いて物理現象を視覚化することは、複雑な状況を理解し、計算ミスを防ぐ上で非常に有効な手段である。
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