問題66 (防衛大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ポアソンの式の導出)
- 模範解答が与えられた公式 \(pV^{5/3}=\text{一定}\) を適用するのに対し、別解では熱力学第一法則と状態方程式の微分形からこの関係式を導出します。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ポアソンの式の導出)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 公式の暗記ではなく、エネルギー保存則(第一法則)という根本原理から現象を理解できます。特に断熱変化における圧力と体積の非線形な関係がなぜ生じるのか、そのメカニズムを深く理解するのに役立ちます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「断熱変化と気体の混合」です。理想気体の状態変化における基本法則と、複数の系が相互作用する場合の保存則を理解する力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 理想気体の状態方程式: 気体の圧力、体積、物質量、温度の関係式 \(pV=nRT\) です。
- 内部エネルギー: 単原子分子理想気体の場合、温度のみに比例します(\(U=\frac{3}{2}nRT\))。
- ポアソンの式: 断熱変化において成り立つ、圧力と体積(または温度と体積)の関係式です。
- 熱力学第一法則(エネルギー保存則): 断熱容器内での混合など、外部との熱や仕事のやり取りがない場合、系全体の内部エネルギーは保存されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、初期状態のAについて状態方程式と内部エネルギーの定義式を立てて計算します。
- (2)では、断熱圧縮の条件(ポアソンの式)を用いて変化後の圧力を求め、その後状態方程式から温度を求めます。
- (3)では、AとBを接続した系全体に着目し、混合前後での内部エネルギーの総和が変わらないことを利用して平衡状態の温度を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
容器A内の気体について、与えられた状態量(圧力 \(p\)、体積 \(V\)、温度 \(T\))から物質量 \(n_A\) を求めます。
次に、単原子分子理想気体の内部エネルギー \(U\) の公式を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- 状態方程式の適用: 物質量を求めるための基本です。
- 単原子分子の定数: 内部エネルギーの係数が \(\frac{3}{2}\) であることを確認します。
具体的な解説と立式
容器A内の気体の物質量を \(n_A\) とします。
状態方程式 \(pV = nRT\) より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
pV &= n_A RT \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
また、単原子分子理想気体の内部エネルギー \(U\) は、物質量 \(n_A\) と温度 \(T\) を用いて以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{3}{2} n_A RT \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: \(U = \frac{3}{2}nRT\)
式①より、\(n_A\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
n_A &= \displaystyle\frac{pV}{RT}
\end{aligned}
$$
求めた \(n_A\) を式②に代入して \(U\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{3}{2} \cdot \left( \displaystyle\frac{pV}{RT} \right) \cdot RT \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} pV
\end{aligned}
$$
まずは気体の「量」であるモル数を計算しました。圧力、体積、温度が分かれば、気体がどれくらいの粒子の数(モル)だけ入っているかが決まります。
次に、その気体が持っているエネルギー(内部エネルギー)を計算しました。単原子分子の場合、エネルギーは「圧力 \(\times\) 体積」の \(1.5\) 倍になるという単純な関係があります。
物質量は \(n_A = \displaystyle\frac{pV}{RT}\)、内部エネルギーは \(U = \frac{3}{2}pV\) です。
次元を確認すると、\(pV\) は \([\text{N}/\text{m}^2] \cdot [\text{m}^3] = [\text{N}\cdot\text{m}] = [\text{J}]\) となり、エネルギーの単位と一致しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
ピストンを動かして断熱圧縮を行います。
問題文に与えられた断熱変化の関係式 \(pV^{5/3}=\text{一定}\) を利用して、圧縮後の圧力 \(p’\) を求めます。
その後、圧縮後の状態(\(p’, V/8\))に対して状態方程式を適用し、温度 \(T’\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 断熱変化の式: \(pV^\gamma = \text{一定}\) の形(今回は \(\gamma=5/3\))を正しく適用します。
- 指数の計算: \(8 = 2^3\) であることを利用して、分数の指数計算を処理します。
- 温度上昇: 断熱圧縮されると、外部からされた仕事がすべて内部エネルギーの増加に使われるため、温度は必ず上昇します。
具体的な解説と立式
圧縮後の圧力を \(p’\)、温度を \(T’\) とします。体積は \(V/8\) です。
断熱変化の式 \(pV^{5/3} = \text{一定}\) より、変化前と変化後で以下の等式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
p V^{\frac{5}{3}} &= p’ \left( \displaystyle\frac{V}{8} \right)^{\frac{5}{3}} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
また、圧縮後の状態について状態方程式を立てます。物質量 \(n_A\) は変化しません。
$$
\begin{aligned}
p’ \cdot \left( \displaystyle\frac{V}{8} \right) &= n_A RT’ \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ポアソンの式(断熱変化): \(pV^\gamma = \text{一定}\)
- 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
式③より \(p’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
p’ &= p \cdot \left( \displaystyle\frac{V}{V/8} \right)^{\frac{5}{3}} \\[2.0ex]
&= p \cdot 8^{\frac{5}{3}} \\[2.0ex]
&= p \cdot (2^3)^{\frac{5}{3}} \\[2.0ex]
&= p \cdot 2^5 \\[2.0ex]
&= 32p
\end{aligned}
$$
この \(p’\) と、(1)で求めた \(n_A = \displaystyle\frac{pV}{RT}\) を式④に代入して \(T’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
32p \cdot \frac{V}{8} &= \left( \displaystyle\frac{pV}{RT} \right) RT’ \\[2.0ex]
4pV &= \frac{pV}{T} T’ \\[2.0ex]
T’ &= 4T
\end{aligned}
$$
空気を急激に圧縮すると熱くなる現象(断熱圧縮)を計算しました。
体積を \(1/8\) に押し縮めると、圧力は単に \(8\) 倍になるのではなく、熱が発生して膨張しようとする力が加わるため、\(32\) 倍もの高圧になります。
その結果、温度も元の \(4\) 倍に跳ね上がります。ディーゼルエンジンが点火プラグなしで燃料を燃やせるのも、この原理で空気を圧縮して高温にしているからです。
圧力は \(32p\)、温度は \(4T\) となりました。
断熱圧縮によって圧力と温度が上昇しており、物理的な直感と一致します。また、\(32p\) という大きな圧力上昇は、体積変化の指数乗で効いてくる断熱変化の特徴をよく表しています。
思考の道筋とポイント
問題文で与えられた \(pV^{5/3}=\text{一定}\) という公式を、熱力学第一法則という根本原理から導出します。
断熱変化とは「熱の出入りがない(\(dQ=0\))」変化のことです。これを第一法則 \(dQ = dU + dW\) に適用し、状態方程式の微分形と連立させることで、状態量の関係式を導きます。
この設問における重要なポイント
- 熱力学第一法則の微分形: 微小変化に対して \(0 = dU + p dV\) (気体が外部へ仕事をする場合)を立てます。
- 内部エネルギーの変化: 理想気体では常に \(dU = nC_V dT\) が成り立ちます。
- 変数分離と積分: \(T\) と \(V\) の変数を分離して積分することで、関係式を導きます。
具体的な解説と立式
断熱変化では、外部との熱のやり取りがないため \(dQ = 0\) です。
熱力学第一法則(\(dQ = dU + dW\))より、気体が外部へ仕事 \(dW = p dV\) をする場合、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
0 &= dU + p dV
\end{aligned}
$$
単原子分子理想気体の定積モル比熱は \(C_V = \frac{3}{2}R\) なので、内部エネルギーの微小変化は \(dU = n_A C_V dT\) です。これを代入します。
$$
\begin{aligned}
n_A C_V dT + p dV &= 0 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
ここで、変数 \(p\) を消去するために、状態方程式 \(pV = n_A RT\) を用います。\(p = \displaystyle\frac{n_A RT}{V}\) を式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
n_A C_V dT + \frac{n_A RT}{V} dV &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(dQ = dU + dW\)
- 内部エネルギーの微分: \(dU = nC_V dT\)
- 積分の公式: \(\int \frac{1}{x} dx = \ln |x| + C\)
両辺を \(n_A T\) で割り、変数を分離します。
$$
\begin{aligned}
C_V \frac{dT}{T} + R \frac{dV}{V} &= 0
\end{aligned}
$$
ここで、マイヤーの関係式 \(C_p = C_V + R\) より、\(R = C_p – C_V\) です。これを代入します。
$$
\begin{aligned}
C_V \frac{dT}{T} + (C_p – C_V) \frac{dV}{V} &= 0
\end{aligned}
$$
全体を \(C_V\) で割ります。比熱比 \(\gamma = \displaystyle\frac{C_p}{C_V}\) を用いると、
$$
\begin{aligned}
\frac{dT}{T} + (\gamma – 1) \frac{dV}{V} &= 0
\end{aligned}
$$
この式を積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \frac{dT}{T} + (\gamma – 1) \int \frac{dV}{V} &= \text{一定} \\[2.0ex]
\ln T + (\gamma – 1) \ln V &= \text{一定} \\[2.0ex]
\ln (T V^{\gamma – 1}) &= \text{一定}
\end{aligned}
$$
したがって、以下の関係が得られます。
$$
\begin{aligned}
T V^{\gamma – 1} &= \text{一定} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
さらに、\(T = \displaystyle\frac{pV}{n_A R}\) を代入して \(T\) を消去すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{pV}{n_A R} \cdot V^{\gamma – 1} &= \text{一定} \\[2.0ex]
p V^{\gamma} &= \text{一定}
\end{aligned}
$$
単原子分子の場合、\(\gamma = \displaystyle\frac{5/2 R}{3/2 R} = \frac{5}{3}\) なので、\(pV^{5/3} = \text{一定}\) が導かれました。
これを用いて計算すると、メインの解法と同様に \(p’ = 32p\) が得られます。
また、式⑥を用いて温度を直接求めることもできます。
$$
\begin{aligned}
T V^{\frac{2}{3}} &= T’ \left( \frac{V}{8} \right)^{\frac{2}{3}} \\[2.0ex]
T’ &= T \cdot \left( \frac{V}{V/8} \right)^{\frac{2}{3}} \\[2.0ex]
&= T \cdot (2^3)^{\frac{2}{3}} \\[2.0ex]
&= T \cdot 2^2 \\[2.0ex]
&= 4T
\end{aligned}
$$
「熱の出入りがない」という条件を数式にし、それを積分することで、「体積が変わるときに温度や圧力がどう変わるか」というルール(ポアソンの式)を自分で作り出しました。
公式を覚えていなくても、エネルギーの保存則さえ知っていれば、数学の力を使って物理法則を導き出せることを示しています。
導出された結果 \(p’ = 32p, T’ = 4T\) はメイン解法と完全に一致します。
この方法は、単原子分子に限らず、あらゆる理想気体の断熱変化に適用できる汎用的なものです。
問(3)
思考の道筋とポイント
ピストンを固定したまま弁を開くと、AとBの気体が混合し、やがて均一な圧力 \(p”\) と温度 \(T”\) になります。
容器全体は断熱されており、外部への仕事もしないため、系全体の内部エネルギーは保存されます。
「混合前のAとBの内部エネルギーの和」と「混合後の全体の内部エネルギー」が等しいという式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 系全体での保存則: 個々の気体ではなく、AとBを合わせた全体でエネルギー収支を考えます。
- 混合後の状態: 圧力と温度は全体で均一になります。
- 全物質量と全体積: 混合後の物質量は \(n_A + n_B\)、体積は \(V/8 + V\) となります。
具体的な解説と立式
まず、容器B内の気体の物質量 \(n_B\) を求めます。初期状態(圧力 \(2p\)、体積 \(V\)、温度 \(T\))より、
$$
\begin{aligned}
2p \cdot V &= n_B RT \\[2.0ex]
n_B &= \displaystyle\frac{2pV}{RT} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
次に、エネルギー保存則の式を立てます。
混合前のAの状態は(2)の結果より温度 \(4T\)、物質量 \(n_A\) です。
混合前のBの状態は温度 \(T\)、物質量 \(n_B\) です。
混合後の温度を \(T”\) とすると、
$$
\begin{aligned}
(\text{混合前の全内部エネルギー}) &= (\text{混合後の全内部エネルギー}) \\[2.0ex]
\frac{3}{2} n_A R (4T) + \frac{3}{2} n_B R T &= \frac{3}{2} (n_A + n_B) R T” \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
最後に、混合後の状態について状態方程式を立てます。混合後の圧力を \(p”\)、全体積を \(V_{\text{合計}} = \frac{V}{8} + V = \frac{9}{8}V\) とします。
$$
\begin{aligned}
p” V_{\text{合計}} &= (n_A + n_B) R T” \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 内部エネルギー保存則: \(U_{\text{前}} = U_{\text{後}}\)
- 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
式⑧の両辺を \(\frac{3}{2}R\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
4 n_A T + n_B T &= (n_A + n_B) T”
\end{aligned}
$$
これに \(n_A = \displaystyle\frac{pV}{RT}\)、\(n_B = \displaystyle\frac{2pV}{RT}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
4 \left( \frac{pV}{RT} \right) T + \left( \frac{2pV}{RT} \right) T &= \left( \frac{pV}{RT} + \frac{2pV}{RT} \right) T” \\[2.0ex]
\frac{pV}{R} (4 + 2) &= \frac{pV}{R} (1 + 2) \frac{T”}{T} \\[2.0ex]
6 &= 3 \frac{T”}{T} \\[2.0ex]
T” &= 2T
\end{aligned}
$$
求めた \(T”\) と \(n_A, n_B\) を式⑨に代入して \(p”\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
p” \cdot \frac{9}{8}V &= \left( \frac{pV}{RT} + \frac{2pV}{RT} \right) R (2T) \\[2.0ex]
p” \cdot \frac{9}{8}V &= \frac{3pV}{RT} \cdot R \cdot 2T \\[2.0ex]
p” \cdot \frac{9}{8}V &= 6pV \\[2.0ex]
p” &= 6p \cdot \frac{8}{9} \\[2.0ex]
&= \frac{16}{3} p
\end{aligned}
$$
熱い気体A(\(4T\))と冷たい気体B(\(T\))を混ぜ合わせる問題です。
魔法瓶のように熱を逃がさない容器の中で混ぜるので、エネルギーの総量は変わりません。
Aが持っていたエネルギーとBが持っていたエネルギーを足し合わせ、それを全体の人数(モル数)で分け合うことで、最終的な温度が決まります。
温度が決まれば、あとは「全体の広さ(体積)」と「全体の人数」から、その部屋の混雑具合(圧力)を計算できます。
温度は \(2T\)、圧力は \(\displaystyle\frac{16}{3}p\) です。
温度 \(2T\) は、高温の \(4T\) と低温の \(T\) の中間の値になっており妥当です(Bの方がモル数が多いので、\(T\) に近い値になっています)。
圧力 \(\displaystyle\frac{16}{3}p \approx 5.33p\) は、Aの \(32p\) より大幅に低く、Bの \(2p\) より高い値であり、混合によって圧力が均一化されたことを示しています。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 断熱変化におけるポアソンの式の適用
- 核心: 外部との熱のやり取りがない(\(Q=0\))断熱変化では、気体が仕事をするとその分だけ内部エネルギーが減少し(温度低下)、仕事をされると内部エネルギーが増加します(温度上昇)。このエネルギー収支の結果として、圧力 \(p\) と体積 \(V\) の間に \(pV^\gamma = \text{一定}\) という非線形な関係(ポアソンの式)が成立します。
- 理解のポイント:
- 温度変化の必然性: ボイルの法則(\(pV=\text{一定}\))は等温変化でのみ成り立ちます。断熱変化では温度が変わるため、\(pV\) の積は一定になりません。
- 指数の意味: \(\gamma = C_p/C_V > 1\) であるため、断熱圧縮時の圧力上昇は、等温圧縮時よりも急激になります(体積が半分になると圧力は2倍以上になる)。
- 系全体での内部エネルギー保存則
- 核心: 複数の気体を混合する場合や、断熱容器内で状態が変化する場合、外部との熱や仕事のやり取りがなければ、系全体の内部エネルギーの総和は保存されます。
- 理解のポイント:
- 混合の原理: 「Aのエネルギー \(+\) Bのエネルギー \(=\) 混合後の全エネルギー」という単純な足し算が成立します。
- 状態方程式との連携: 保存則で温度 \(T\) を決定し、その後に状態方程式 \(pV=nRT\) で圧力 \(p\) を決定するという手順が定石です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 断熱自由膨張: 真空への拡散など、仕事 \(W=0\) かつ断熱 \(Q=0\) の場合、第一法則 \(Q=\Delta U+W\) より \(\Delta U=0\)、つまり温度変化なし(\(T=\text{一定}\))となります。ポアソンの式は使えない(準静的過程ではないため)ことに注意が必要です。
- ピストン付き容器の連結: バネ付きピストンや重り付きピストンなど、圧力が一定でない場合でも、「力のつりあい」と「状態方程式」を連立させる基本は変わりません。
- 気球の問題: 内部と外部で圧力が等しい(穴が開いている場合など)条件と、浮力の式を組み合わせる問題も、状態方程式の応用です。
- 初見の問題での着眼点:
- 変化の種類を特定する: 「断熱」「等温」「定圧」「定積」のキーワードを探します。特に「断熱」なら \(Q=0\) とポアソンの式、「ゆっくり」なら準静的過程、「急に」なら非平衡過程(ポアソンの式不可、エネルギー保存のみ適用)を疑います。
- 保存量を見つける:
- 断熱容器 \(\rightarrow\) エネルギー保存
- 密閉容器 \(\rightarrow\) 物質量(モル数)保存
- シリンダー連結 \(\rightarrow\) 全体積保存(ピストンが動く場合)
- 状態変数のリストアップ: 変化前後の \(p, V, T, n\) を表に整理すると、未知数と式の関係が見えやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ポアソンの式の適用条件の誤解:
- 誤解: どんな断熱変化でも \(pV^\gamma = \text{一定}\) を使ってしまう。
- 対策: ポアソンの式は「可逆変化(準静的過程)」でのみ厳密に成立します。気体を真空に噴出させるような「断熱自由膨張」では成立しません。この問題のように「なめらかに動くピストン」で圧縮する場合は適用可能です。
- 混合後の圧力計算のミス:
- 誤解: 「圧力も足し算で保存する」と考えて \(p_A + p_B = p_{\text{混合}}\) としたり、単純に平均をとってしまう。
- 対策: 圧力は示強性変数(量に依存しない変数)であり、保存しません。必ず「物質量 \(n\)」と「エネルギー \(U\)」という示量性変数(量に比例する変数)の保存則を立て、最後に状態方程式で圧力を逆算してください。
- 指数の計算ミス:
- 誤解: \((V/8)^{5/3}\) の計算で、\(8^{5/3}\) を処理できずに手が止まる、あるいは \(8 \times 5/3\) と計算してしまう。
- 対策: 指数が分数のときは、底を素因数分解(\(8=2^3\))し、指数法則 \((a^m)^n = a^{mn}\) を適用する手順を徹底しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(2)での公式選択(ポアソンの式 vs 状態方程式):
- 選定理由: 変化の過程が「断熱変化」と明記されており、変化前後の \(p, V\) の関係を直接結びつける式が必要だからです。状態方程式だけでは \(T\) が未知のため、式が足りません。
- 適用根拠: 問題文で \(pV^{5/3}=\text{一定}\) が与えられているため、これを使うのが最短ルートです。もし与えられていなくても、断熱変化の条件から導出(別解参照)して適用します。
- 問(3)での公式選択(内部エネルギー保存則):
- 選定理由: 混合過程は複雑で、個々の気体の圧力や体積の変化を追うのは困難です。しかし、系全体が断熱されているという強力な拘束条件があるため、エネルギー保存則が最もシンプルかつ強力なツールとなります。
- 適用根拠: 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) において、系全体では \(Q=0, W=0\) なので \(\Delta U=0\) が確実に成立します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
- 答えの次元を確認する癖をつけましょう。例えば圧力 \(p\) の答えに \(V\) が残っていたり、温度 \(T\) の答えに \(R\) が含まれていないか(\(pV/nR\) の形ならOK)などをチェックします。
- 今回の問(3)の圧力 \(p” = \frac{16}{3}p\) は、係数が無次元数で、単位が圧力 \(p\) と一致しており、正しい形です。
- 比率計算の活用:
- \(p’ = p \times (V_{\text{前}}/V_{\text{後}})^\gamma\) のように、比率の形で計算を進めると、\(V\) などの文字が約分されて消え、計算ミスが減ります。具体的な値を代入するのは最後の最後にするのが鉄則です。
- 係数の処理:
- 単原子分子の \(\frac{3}{2}\) や、ポアソンの指数の \(\frac{5}{3}\) など、分数が多く登場します。繁分数の処理(分母の分母は分子へ)を丁寧に行い、書き写しミスを防ぐために式を大きく書くことを推奨します。
問題67 (京都府立大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(断熱仕事の積分計算)
- 模範解答が熱力学第一法則(結果)を用いて仕事を求めるのに対し、別解では仕事の定義式(\(P-V\) 積分の実行)から第一法則の結果を導きます。
- 設問(2)(3)の別解: ボイル・シャルルの法則を用いた解法
- 模範解答が状態方程式を連立させて解くのに対し、別解では物質量が一定であることに着目し、ボイル・シャルルの法則を用いて状態変化前後の比率計算を行います。
- 設問(5)の別解: 系全体(A+B)のエネルギー保存則を用いた解法
- 模範解答が気体B単体に注目して解くのに対し、別解ではAとBを一つの系とみなしてエネルギー収支を考えます。
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(断熱仕事の積分計算)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 「断熱変化では仕事が内部エネルギー変化に等しい」という事実を、熱力学第一法則の暗記ではなく、状態方程式と仕事の定義から数学的に導出することで、物理法則の整合性を深く理解できます。
- ボイル・シャルルの法則: 物質量が変化しない閉じた系では、状態方程式を毎回立てるよりも計算が迅速かつ直感的になります。
- 系全体の解法: ピストンを介してやり取りされる仕事(内部の仕事)を相殺して考えることができるため、計算ミスを減らし、現象の全体像を把握するのに役立ちます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「断熱シリンダー内での連結された2気体の状態変化」です。
断熱変化、状態方程式、そして熱力学第一法則を組み合わせ、複数の気体が連動して変化する様子を解き明かします。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 熱力学第一法則: エネルギーの保存則(\(Q_{\text{入}} = \Delta U + W_{\text{出}}\))。
- 断熱変化の性質: 外部との熱のやり取りがない(\(Q_{\text{入}}=0\))。
- 力のつりあい: なめらかに動くピストンの両側で、気体の圧力は常に等しく保たれます。
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、Aは断熱材で囲まれているため断熱変化をします。第一法則を用いて仕事を求めます。
- (2)〜(3)では、ピストンがつりあっていることから、AとBの圧力は常に等しいことを利用し、状態方程式(またはボイル・シャルルの法則)を用いて各物理量を求めます。
- (4)〜(5)では、Bについては、加熱による熱の流入があるため、第一法則を用いて熱量を計算します。その際、Aとの仕事のやり取りに注目します。
問(1)
思考の道筋とポイント
気体Aに着目します。
Aを取り囲む壁とピストンはすべて断熱材で作られているため、Aは外部と熱のやり取りを行いません。すなわち、断熱変化です。
気体Aがピストンから仕事をされることで、内部エネルギーが変化します。
この設問における重要なポイント
- 断熱変化: 熱の出入りがないので \(Q_{\text{入}} = 0\) です。
- 仕事の定義: 熱力学第一法則 \(Q_{\text{入}} = \Delta U + W_{\text{出}}\) において、\(W_{\text{出}}\) は気体が外部へした仕事です。
- 受けた仕事: 設問で問われている「受けた仕事」を \(W_{\text{受}}\) とすると、\(W_{\text{受}} = -W_{\text{出}}\) の関係があります。
- 単原子分子理想気体: 内部エネルギーの変化は \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\) で表されます。
具体的な解説と立式
気体Aについて、熱力学第一法則を立てます。
Aが外部から吸収した熱量を \(Q_{\text{A}}\)、内部エネルギーの変化を \(\Delta U_{\text{A}}\)、外部へした仕事を \(W_{\text{出}}\) とします。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{A}} &= \Delta U_{\text{A}} + W_{\text{出}}
\end{aligned}
$$
断熱変化より \(Q_{\text{A}} = 0\) です。
また、単原子分子理想気体(\(n=1\,\text{mol}\))の内部エネルギー変化は、温度変化が \(T_0 \rightarrow T_1\) であることから、以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{A}} &= \frac{3}{2}nR(T_1 – T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} \cdot 1 \cdot R(T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
これらを第一法則の式に代入します。
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(Q_{\text{入}} = \Delta U + W_{\text{出}}\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー変化: \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\)
第一法則の式に各値を代入して \(W_{\text{出}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
0 &= \frac{3}{2}R(T_1 – T_0) + W_{\text{出}} \\[2.0ex]
W_{\text{出}} &= -\frac{3}{2}R(T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
問われているのは「受けた仕事」\(W_{\text{受}}\) なので、符号を反転させます。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{受}} &= -W_{\text{出}} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R(T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
気体Aは断熱材で閉じ込められているため、熱の逃げ場も入り口もありません。この状態でピストンに押されて圧縮されると、された仕事のエネルギーはすべて気体分子の運動エネルギー(つまり内部エネルギー)に変換されます。
「された仕事 \(=\) 内部エネルギーの増加分」という関係式を使って、温度変化から仕事を計算しました。
答えは \(\frac{3}{2}R(T_1 – T_0)\) です。
圧縮されて体積が半分になっているため、通常は温度が上昇します(\(T_1 > T_0\))。したがって仕事 \(W_{\text{受}}\) は正の値となり、気体が仕事を「受けた」という事実と整合します。単位は \([\text{J}]\) であり、\(R\) の単位 \([\text{J}/(\text{mol} \cdot \text{K})]\) と温度 \([\text{K}]\) の積と一致しています。
思考の道筋とポイント
熱力学第一法則の結果(\(\Delta U = -W_{\text{出}}\))を前提とせず、仕事の定義 \(W_{\text{出}} = \int P dV\) から直接計算します。
断熱変化における状態方程式(ポアソンの式)を用いて圧力 \(P\) を体積 \(V\) の関数として表し、積分を実行します。
この設問における重要なポイント
- 仕事の定義: 気体が外部へする仕事は \(W_{\text{出}} = \int_{V_{\text{初}}}^{V_{\text{後}}} P dV\) です。
- ポアソンの式: 断熱変化では \(PV^\gamma = C\)(一定)が成り立ちます。単原子分子では \(\gamma = \frac{5}{3}\) です。
具体的な解説と立式
断熱変化において \(PV^\gamma = C\)(\(C\) は定数)が成り立つとします。
これより、\(P = C V^{-\gamma}\) と表せます。
気体Aが外部へする仕事 \(W_{\text{出}}\) を積分で求めます。初期体積を \(V_0\)、最終体積を \(V_1\)(ここでは \(V_0/2\))とします。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{出}} &= \int_{V_0}^{V_1} P \, dV \\[2.0ex]
&= \int_{V_0}^{V_1} C V^{-\gamma} \, dV
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 仕事の積分定義: \(W_{\text{出}} = \int P dV\)
- 積分の公式: \(\int x^n dx = \frac{1}{n+1}x^{n+1}\)
- ポアソンの式: \(PV^\gamma = C\)
- マイヤーの関係式: \(C_p – C_v = R\)(比熱比 \(\gamma = C_p/C_v\))
積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{出}} &= C \left[ \frac{1}{-\gamma + 1} V^{-\gamma + 1} \right]_{V_0}^{V_1} \\[2.0ex]
&= \frac{C}{1 – \gamma} \left( V_1^{1-\gamma} – V_0^{1-\gamma} \right)
\end{aligned}
$$
ここで \(C = P_1 V_1^\gamma = P_0 V_0^\gamma\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{出}} &= \frac{1}{1 – \gamma} \left( (P_1 V_1^\gamma) V_1^{1-\gamma} – (P_0 V_0^\gamma) V_0^{1-\gamma} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{1 – \gamma} (P_1 V_1 – P_0 V_0)
\end{aligned}
$$
理想気体の状態方程式 \(PV = nRT\) を用いると、\(P_1 V_1 = nRT_1\)、\(P_0 V_0 = nRT_0\) です。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{出}} &= \frac{nR}{1 – \gamma} (T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
単原子分子理想気体の場合、定積モル比熱 \(C_v = \frac{3}{2}R\)、定圧モル比熱 \(C_p = \frac{5}{2}R\) より、比熱比 \(\gamma = \frac{C_p}{C_v} = \frac{5}{3}\) です。
これを代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{1 – \gamma} &= \frac{1}{1 – \frac{5}{3}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{-\frac{2}{3}} \\[2.0ex]
&= -\frac{3}{2}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
W_{\text{出}} &= -\frac{3}{2}nR(T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
求める「受けた仕事」\(W_{\text{受}}\) は \(-W_{\text{出}}\) なので、\(n=1\) として、
$$
\begin{aligned}
W_{\text{受}} &= \frac{3}{2}R(T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
「圧力 \(\times\) 体積変化」の積み重ねである仕事を、積分を使って厳密に計算しました。
断熱変化特有のカーブ(\(PV^\gamma = \text{一定}\))に沿って計算を進めると、最終的に温度変化の式にたどり着きます。これが内部エネルギーの変化式と全く同じ形になることから、断熱変化では「仕事がそのまま内部エネルギーの変化になる」ことが数学的にも証明されました。
結果は \(\frac{3}{2}R(T_1 – T_0)\) となり、熱力学第一法則を用いた解法と完全に一致します。
問(2)
思考の道筋とポイント
変化の前と後で、気体Aの状態方程式を立てて比較します。
物質量 \(n\) は変化せず、気体定数 \(R\) も一定です。
この設問における重要なポイント
- 体積の変化: 問題文より、Aの体積はもとの半分になったので、\(V_1 = \frac{1}{2}V_0\) です。
- 状態方程式の比較: \(P, V, T\) の関係を式にします。
具体的な解説と立式
最初の状態(圧力 \(P_0\)、体積 \(V_0\)、温度 \(T_0\))におけるAの状態方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
P_0 V_0 &= R T_0 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
変化後の状態(圧力 \(P_1\)、体積 \(\frac{1}{2}V_0\)、温度 \(T_1\))におけるAの状態方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
P_1 \left( \frac{1}{2}V_0 \right) &= R T_1 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
求める倍率を \(k = \frac{P_1}{P_0}\) とし、①と②の比をとります。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
式②を式①で辺々割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{P_1 \cdot \frac{1}{2}V_0}{P_0 V_0} &= \frac{R T_1}{R T_0} \\[2.0ex]
\frac{P_1}{P_0} \cdot \frac{1}{2} &= \frac{T_1}{T_0} \\[2.0ex]
\frac{P_1}{P_0} &= \frac{2T_1}{T_0}
\end{aligned}
$$
気体の体積が半分に圧縮され(これだけで圧力は2倍になる効果)、さらに温度が \(T_0\) から \(T_1\) に変化しました。これらの効果を合わせると、圧力は \(\frac{2T_1}{T_0}\) 倍になります。
答えは \(\frac{2T_1}{T_0}\) 倍です。
断熱圧縮では温度が上昇する(\(T_1 > T_0\))ため、\(\frac{T_1}{T_0} > 1\) です。よって圧力は単なる体積圧縮による2倍よりもさらに大きくなります。これは物理的直感と合致します。
思考の道筋とポイント
気体Aは閉じ込められており、物質量 \(n\) が一定です。
このような場合、状態方程式を毎回立てる代わりに、ボイル・シャルルの法則 \(\frac{PV}{T} = \text{一定}\) を用いると計算がスムーズです。
この設問における重要なポイント
- 保存量: 物質量 \(n\) が一定なので、\(\frac{PV}{T}\) の値は変化しません。
- 状態の対応:
- 前: \(P_0, V_0, T_0\)
- 後: \(P_1, \frac{1}{2}V_0, T_1\)
具体的な解説と立式
気体Aについて、変化前後の状態でボイル・シャルルの法則を適用します。
$$
\begin{aligned}
\frac{P_0 V_0}{T_0} &= \frac{P_1 \left( \frac{1}{2}V_0 \right)}{T_1}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ボイル・シャルルの法則: \(\frac{PV}{T} = \text{一定}\)
上の式を変形して \(\frac{P_1}{P_0}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{P_0}{T_0} &= \frac{P_1}{2T_1} \\[2.0ex]
P_1 &= P_0 \cdot \frac{2T_1}{T_0} \\[2.0ex]
\frac{P_1}{P_0} &= \frac{2T_1}{T_0}
\end{aligned}
$$
「圧力 \(\times\) 体積 \(\div\) 温度」という値が常に変わらないというルールを使いました。
体積が半分になったので、バランスを取るために圧力は2倍になる必要があります。さらに温度が変わった分の補正も入ります。
メイン解法と同じく \(\frac{2T_1}{T_0}\) 倍という結果が得られました。
問(3)
思考の道筋とポイント
気体Bの状態に着目します。
ピストンはなめらかに動くため、停止しているときは左右の圧力がつりあっています。
また、シリンダー全体の体積は不変なので、Aが縮んだ分だけBは膨張しています。
この設問における重要なポイント
- 力のつりあい: 変化後のBの圧力 \(P_{\text{B}}\) は、Aの圧力 \(P_1\) と等しくなります(\(P_{\text{B}} = P_1\))。
- 体積の関係: 全体の体積は \(2V_0\) で一定です。Aの体積が \(\frac{1}{2}V_0\) なので、Bの体積 \(V_{\text{B}}\) は残りの分となります。
具体的な解説と立式
変化後のBの体積 \(V_{\text{B}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{B}} &= (\text{全体積}) – (\text{Aの体積}) \\[2.0ex]
&= 2V_0 – \frac{1}{2}V_0 \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}V_0
\end{aligned}
$$
変化後のBの温度を \(T_{\text{B}}\) とします。Bについても状態方程式を立てます。圧力はAと同じ \(P_1\) です。
$$
\begin{aligned}
P_1 \left( \frac{3}{2}V_0 \right) &= R T_{\text{B}} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
問(2)で求めた \(P_1\) の関係式(式② \(P_1 \frac{V_0}{2} = R T_1\))を利用して \(T_{\text{B}}\) を求めます。
使用した物理公式
- 力のつりあい: \(P_{\text{A}} = P_{\text{B}}\)
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
式③と式②(\(P_1 \frac{V_0}{2} = R T_1\))の比をとります。
$$
\begin{aligned}
\frac{P_1 \cdot \frac{3}{2}V_0}{P_1 \cdot \frac{1}{2}V_0} &= \frac{R T_{\text{B}}}{R T_1} \\[2.0ex]
\frac{\frac{3}{2}}{\frac{1}{2}} &= \frac{T_{\text{B}}}{T_1} \\[2.0ex]
3 &= \frac{T_{\text{B}}}{T_1} \\[2.0ex]
T_{\text{B}} &= 3T_1
\end{aligned}
$$
Bの圧力はAと同じです。しかし、Bの体積はAの3倍(\(\frac{3}{2}V_0\) 対 \(\frac{1}{2}V_0\))になっています。
同じ圧力で体積が3倍あるということは、気体分子がそれだけ激しく運動している、つまり温度も3倍である必要があります。
答えは \(3T_1\) です。
Bは加熱されて膨張したので、温度はかなり高くなっているはずです。Aの温度 \(T_1\) の3倍という結果は妥当です。
思考の道筋とポイント
気体Bについても物質量 \(n\) は一定です。
変化前後の状態でボイル・シャルルの法則を適用し、温度変化を求めます。
この設問における重要なポイント
- 状態の対応:
- 前: \(P_0, V_0, T_0\)
- 後: \(P_1, \frac{3}{2}V_0, T_{\text{B}}\)
- 圧力比の利用: 問(2)の結果 \(\frac{P_1}{P_0} = \frac{2T_1}{T_0}\) を利用します。
具体的な解説と立式
気体Bについて、変化前後の状態でボイル・シャルルの法則を適用します。
$$
\begin{aligned}
\frac{P_0 V_0}{T_0} &= \frac{P_1 \left( \frac{3}{2}V_0 \right)}{T_{\text{B}}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ボイル・シャルルの法則: \(\frac{PV}{T} = \text{一定}\)
上の式を \(T_{\text{B}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
T_{\text{B}} &= \frac{P_1}{P_0} \cdot \frac{\frac{3}{2}V_0}{V_0} \cdot T_0 \\[2.0ex]
&= \left( \frac{2T_1}{T_0} \right) \cdot \frac{3}{2} \cdot T_0 \\[2.0ex]
&= 3T_1
\end{aligned}
$$
Bについても「圧力 \(\times\) 体積 \(\div\) 温度」が一定であることを使いました。
圧力が \(\frac{2T_1}{T_0}\) 倍になり、体積が \(1.5\) 倍になったので、温度はその積の分だけ変化します。計算すると綺麗に \(3T_1\) になります。
メイン解法と同じく \(3T_1\) という結果が得られました。
問(4)
思考の道筋とポイント
内部エネルギーの変化量を問われています。
理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるため、問(3)で求めた温度 \(T_{\text{B}}\) を使えば計算できます。
この設問における重要なポイント
- 内部エネルギーの定義: 単原子分子理想気体の場合、\(U = \frac{3}{2}nRT\) です。
- 変化量: \(\Delta U_{\text{B}} = U_{\text{後}} – U_{\text{初}}\) を計算します。
具体的な解説と立式
Bの内部エネルギーの増加 \(\Delta U_{\text{B}}\) を立式します。
初期温度は \(T_0\)、変化後の温度は \(T_{\text{B}} = 3T_1\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{B}} &= \frac{3}{2}nR(T_{\text{B}} – T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} \cdot 1 \cdot R(3T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 内部エネルギーの変化: \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\)
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{B}} &= \frac{3}{2}R(3T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
内部エネルギーは「気体の温度(元気さ)」の指標です。温度が \(T_0\) から \(3T_1\) に上がったので、その温度差に比例する分だけエネルギーが増えました。
答えは \(\frac{3}{2}R(3T_1 – T_0)\) です。
単位は \([\text{J}]\) で正しいです。
問(5)
思考の道筋とポイント
気体Bが吸収した熱量 \(Q_{\text{B}}\) を求めます。
Bについては、熱の出入りがあり、体積も変化して仕事をしているため、熱力学第一法則をフル活用します。
この設問における重要なポイント
- Bの第一法則: \(Q_{\text{B}} = \Delta U_{\text{B}} + W_{\text{出, B}}\) (\(W_{\text{出, B}}\) はBが外部にした仕事)。
- 仕事の関係: Bが膨張してピストンを押した仕事 \(W_{\text{出, B}}\) は、そのままAを圧縮する仕事に使われました。つまり、\(W_{\text{出, B}} = W_{\text{受, A}}\) です。
- \(W_{\text{受, A}}\) の値: 問(1)で求めた値を使います。
具体的な解説と立式
気体Bについて熱力学第一法則を立てます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{B}} &= \Delta U_{\text{B}} + W_{\text{出, B}}
\end{aligned}
$$
ここで、ピストンはなめらかにゆっくり動いたので、Bがした仕事はすべてAがされた仕事になります。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{出, B}} &= W_{\text{受, A}} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R(T_1 – T_0) \quad (\text{問(1)より})
\end{aligned}
$$
また、\(\Delta U_{\text{B}}\) は問(4)で求めました。これらを代入します。
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(Q_{\text{入}} = \Delta U + W_{\text{出}}\)
- 仕事の連動: \(W_{\text{出, B}} = W_{\text{受, A}}\)
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{B}} &= \frac{3}{2}R(3T_1 – T_0) + \frac{3}{2}R(T_1 – T_0) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R \left( (3T_1 – T_0) + (T_1 – T_0) \right) \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}R (4T_1 – 2T_0) \\[2.0ex]
&= 3R(2T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
Bに与えられた熱エネルギーは、2つのことに使われました。
1つは、B自身の温度を上げて内部エネルギーを増やすこと(\(\Delta U_{\text{B}}\))。
もう1つは、膨張して隣のAを押し縮める仕事(\(W\))です。
これら2つの合計が、吸収した熱量になります。
答えは \(3R(2T_1 – T_0)\) です。
\(T_1 > T_0\) なので正の値となり、吸熱を表しています。
思考の道筋とポイント
気体Aと気体Bをあわせた「全体」を一つの系として考えます。
系全体で見ると、外部との仕事のやり取りはなく、熱の出入りのみがエネルギーを変化させます。
この設問における重要なポイント
- 系全体の仕事: シリンダーの両端は固定されているため、系全体としての体積変化はありません。よって、外部への仕事は \(0\) です。
- 内部の仕事: ピストンを介したAとBの間の仕事のやり取りは、系内部のエネルギー移動に過ぎず、総和には影響しません(相殺されます)。
- エネルギー収支: (入ってきた熱 \(Q_{\text{B}}\))\(=\) (Aの内部エネルギー増加)\(+\) (Bの内部エネルギー増加)。
具体的な解説と立式
系全体(A+B)に対して熱力学第一法則を適用します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{全}} &= \Delta U_{\text{全}} + W_{\text{全, 出}}
\end{aligned}
$$
ここで、
- \(Q_{\text{全}} = Q_{\text{B}}\) (B側からのみ加熱)
- \(\Delta U_{\text{全}} = \Delta U_{\text{A}} + \Delta U_{\text{B}}\)
- \(W_{\text{全, 出}} = 0\) (全体積一定)
したがって、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{B}} &= \Delta U_{\text{A}} + \Delta U_{\text{B}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- エネルギー保存則(系全体): \(Q_{\text{入}} = \Delta U_{\text{全}}\)
問(1)と問(4)の結果を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta U_{\text{A}} &= \frac{3}{2}R(T_1 – T_0) \quad (\text{問(1)の計算過程より}) \\[2.0ex]
\Delta U_{\text{B}} &= \frac{3}{2}R(3T_1 – T_0) \quad (\text{問(4)より})
\end{aligned}
$$
これらを足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{B}} &= \frac{3}{2}R(T_1 – T_0) + \frac{3}{2}R(3T_1 – T_0) \\[2.0ex]
&= 3R(2T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
AとBをまとめて「一つの大きな部屋」と考えます。部屋の大きさは変わらないので、外に対して仕事をしません。
したがって、外から入ってきた熱エネルギーは、すべて部屋の中の気体(AとB)の温度を上げるために使われます。AとBそれぞれのエネルギー増加分を足すだけで、入ってきた熱量が求まります。
メインの解法と全く同じ結果 \(3R(2T_1 – T_0)\) が、より少ない計算ステップで得られました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 断熱変化におけるエネルギー変換のメカニズム
- 核心: 断熱変化では、外部との熱のやり取りが遮断されているため、気体が外部から仕事をされると、そのエネルギーはすべて内部エネルギーの増加(温度上昇)に使われます。逆に、気体が仕事をすると、その分だけ内部エネルギーが減少します。
- 理解のポイント:
- 熱力学第一法則 \(Q_{\text{入}} = \Delta U + W_{\text{出}}\) において、\(Q_{\text{入}} = 0\) となるため、\(\Delta U = -W_{\text{出}} = W_{\text{受}}\) というシンプルな関係が成り立ちます。
- この関係は、微視的には気体分子がピストンに衝突して跳ね返る際、ピストンが動いていることで分子の速度が増減することに起因します。
- 連結された気体系の連動性と保存則
- 核心: ピストンで仕切られた複数の気体は、圧力のつりあいを保ちながら連動して変化します。また、系全体で見ると、内部での仕事のやり取りは相殺され、外部とのエネルギー収支のみが残ります。
- 理解のポイント:
- 力のつりあい: ピストンが静止している、あるいはゆっくり動いている限り、両側の圧力は常に等しい(\(P_{\text{A}} = P_{\text{B}}\))という条件が、未知数を減らす強力な武器になります。
- 系全体の視点: 個々の気体について第一法則を立てるだけでなく、全体を一つの箱とみなして \(Q_{\text{全}} = \Delta U_{\text{全}}\) (体積一定なら仕事なし)と考えることで、計算を大幅にショートカットできます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- バネ付きピストン: ピストンにバネがついている場合、力のつりあいの式に弾性力 \(kx\) が加わりますが、基本的な考え方は同じです。
- 断熱自由膨張: 真空への膨張では仕事 \(W=0\) かつ \(Q=0\) なので \(\Delta U=0\) (温度不変)となりますが、本問のようなピストン付きの断熱膨張では仕事をするため温度が下がる点に注意が必要です。
- ポアソンの式の利用: \(PV^\gamma = \text{一定}\) や \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\) の関係式は、断熱変化における \(P, V, T\) のいずれか2つが分かれば残りの1つを求められる強力なツールです。
- 初見の問題での着眼点:
- 壁の種類を確認する: 「断熱材」なら \(Q=0\)、「熱を通しやすい」なら \(T_{\text{A}}=T_{\text{B}}\)(熱平衡)が条件になります。
- ピストンの動きを確認する: 「なめらかに動く」なら \(P_{\text{A}}=P_{\text{B}}\)、「固定された」なら \(V=\text{一定}\) です。
- 変化の過程を追う: 「ゆっくり」なら準静的過程(常に平衡状態)、「急に」なら非平衡過程(第一法則のみ成立)です。
- 解法の選択:
- 「仕事」や「熱量」を問われたら \(\rightarrow\) 熱力学第一法則。
- 「状態量(\(P, V, T\))」を問われたら \(\rightarrow\) 状態方程式またはボイル・シャルルの法則。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 仕事の符号の取り違え:
- 誤解: 第一法則の式 \(Q = \Delta U + W\) において、\(W\) が「した仕事」なのか「された仕事」なのかを混同し、符号を逆にしてしまう。
- 対策: 常に「自分(気体)が主語」であることを意識しましょう。膨張するときは外を押すので「仕事をする(\(W_{\text{出}} > 0\))」、圧縮されるときは外から押されるので「仕事をされる(\(W_{\text{受}} > 0\))」と、体積変化のイメージと結びつけて記憶します。
- 断熱変化と等温変化の混同:
- 誤解: 「ボイルの法則 \(PV=\text{一定}\)」を断熱変化にも適用してしまう。
- 対策: \(PV=\text{一定}\) は「温度が一定」の場合のみ成立します。断熱変化では温度が変わるため、必ずポアソンの式 \(PV^\gamma=\text{一定}\) を使うか、状態方程式と第一法則を組み合わせて解く必要があります。
- 比熱比 \(\gamma\) の値の暗記ミス:
- 誤解: 単原子分子(\(\gamma=5/3\))と二原子分子(\(\gamma=7/5\))の値を逆にしてしまう。
- 対策: 丸暗記せず、\(C_v = \frac{3}{2}R\)(単原子)や \(C_v = \frac{5}{2}R\)(二原子)から、マイヤーの関係式 \(C_p = C_v + R\) を経て \(\gamma = C_p/C_v\) をその場で導けるようにしておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(熱力学第一法則):
- 選定理由: 「断熱変化」という条件から \(Q=0\) が確定しており、内部エネルギー変化 \(\Delta U\) は温度変化から計算可能です。残る未知数である「仕事」を求めるには、これらを結びつける第一法則が最適です。
- 適用根拠: 仕事の定義式 \(W = \int P dV\) から計算するには \(P\) の関数形が必要ですが(別解のアプローチ)、第一法則なら始状態と終状態の温度だけで求まるため、計算が圧倒的に楽です。
- 問(2)(3)での公式選択(状態方程式の比):
- 選定理由: 物質量 \(n\) が変化しない閉じた系での状態変化であり、変化前後の比率(倍率)を求める問題です。
- 適用根拠: \(PV=nRT\) をそのまま使うと \(R\) や \(n\) の値が必要になりますが、変化前後の式を並べて割り算(比をとる)することで、定数が消去され、変数間の関係だけを抽出できます。これは気体の問題で定石となるテクニックです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
- 答えが出たら、単位(次元)を確認しましょう。例えば仕事やエネルギーの答えなら、必ず \(RT\) (\([\text{J}/(\text{mol} \cdot \text{K})] \cdot [\text{K}] = [\text{J}]\)、\(n=1\)の場合)の次元になっているはずです。もし \(R/T\) や \(T\) だけになっていたら間違いです。
- 今回の解答 \(3R(2T_1 – T_0)\) も、括弧内が温度 \([\text{K}]\) なので、全体としてエネルギーの次元 \([\text{J}]\) を持っています。
- 係数の処理と分配法則:
- 問(5)の計算では、\(\frac{3}{2}R(3T_1 – T_0) + \frac{3}{2}R(T_1 – T_0)\) のように共通因数 \(\frac{3}{2}R\) を持つ項の足し算が登場しました。
- いきなり展開せず、まず \(\frac{3}{2}R\) でくくって中身を整理(\((3T_1 – T_0) + (T_1 – T_0) = 4T_1 – 2T_0\))してから、最後に係数を掛けることで、計算ミスを減らせます。
- 極限的なケースでの検算:
- もし断熱圧縮されなかったら(\(V_1 = V_0\))どうなるか? この場合、断熱なら温度も変わらないはず(\(T_1 = T_0\))です。
- 問(1)の答え \(\frac{3}{2}R(T_1 – T_0)\) に \(T_1 = T_0\) を代入すると \(0\) になり、仕事をしていないことと一致します。このように「変化がない場合」を想定して式が破綻しないか確認する癖をつけましょう。
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問題68 (東海大+名古屋大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(4)の別解1: エネルギーの変換と保存を用いた解法
- 模範解答が \(P-V\) グラフの面積から仕事を求めるのに対し、別解1では「気体がした仕事は、大気を押す仕事とばねの弾性エネルギーに変わった」というエネルギーの行き先に着目して立式します。
- 設問(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(仕事の積分計算)
- 物理的直感やグラフの幾何学的性質に頼らず、仕事の定義式 \(W = \int P dV\) に、問(2)で求めた圧力の関数 \(P(V)\) を代入して数学的に積分を実行します。
- 設問(4)の別解1: エネルギーの変換と保存を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- エネルギーの解法: 仕事が具体的に何に使われたのか(大気の排除とばねの圧縮)という物理的意味を明確に理解できます。
- 微積分の解法: グラフが直線(台形)にならない複雑な変化(例: 断熱変化など曲線の場合)であっても適用できる、最も普遍的で強力な方法論を習得できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ばね付きピストンに封入された気体の熱力学」です。
気体の圧力、体積、温度の変化が、ばねの弾性力や大気圧と密接に連動して起こります。力のつりあいと状態方程式、そして熱力学第一法則を連立させて解く力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 力のつりあい: ピストンがゆっくり動くとき、気体が押す力は、大気が押す力とばねが押す力の和とつりあっています。
- 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)。
- 仕事の定義: 気体が外部へする仕事は、\(P-V\) グラフの面積、あるいは \(\int P dV\) で表されます。
- 熱力学第一法則: \(Q_{\text{入}} = \Delta U + W_{\text{出}}\)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、力のつりあいの式と幾何学的な条件(体積と位置の関係)から圧力 \(P\) を決定し、状態方程式を用いて温度 \(T\) を求めます。
- (4)では、圧力が体積の一次関数となることを利用し、グラフの面積計算または積分によって仕事を求めます。
- (5)では、求めた内部エネルギー変化と仕事から、熱力学第一法則を用いて吸熱量を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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