基礎CHECK
1 光子のエネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「光子のエネルギーの計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光量子仮説: 光は、光子とよばれるエネルギーの粒子の集まりであるという考え方。
- 光子のエネルギーの公式: 光子1個が持つエネルギー \(E\) は、振動数 \(\nu\) に比例し、\(E=h\nu\) と表される。ここで \(h\) はプランク定数。
- 指数計算: \(10\) のべき乗を含む数値の掛け算。
- 有効数字の処理: 物理計算における有効数字の考え方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 光子のエネルギーを求める公式 \(E=h\nu\) を確認する。
- 問題文で与えられたプランク定数 \(h\) と振動数 \(\nu\) の値を公式に代入する。
- 計算結果を、与えられた数値の有効数字に合わせて整理する。
思考の道筋とポイント
アインシュタインの光量子仮説によれば、光は「光子」というエネルギーの粒の流れとして考えることができます。そして、光子1個が持つエネルギー \(E\) は、その光の振動数 \(\nu\)(ニュー)に比例することが知られています。この関係を表すのが、物理学の根幹をなす公式の一つ、\(E=h\nu\) です。この問題では、この公式に与えられた値を代入するだけで、光子のエネルギーを直接計算することができます。計算の最後には、有効数字の桁数に注意して答えをまとめることが重要です。
この設問における重要なポイント
- 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)。ここで \(E\) はエネルギー[\(\text{J}\)], \(h\) はプランク定数[\(\text{J} \cdot \text{s}\)], \(\nu\) は振動数[\(\text{Hz}\)]。
- プランク定数: \(h \approx 6.626 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\)。問題では \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\) として計算します。
- 有効数字: 計算に用いる数値の有効数字の桁数を確認します。この問題では、振動数が「\(2.0\)」で2桁、プランク定数が「\(6.6\)」で2桁です。したがって、計算結果も2桁で答えるのが適切です。
具体的な解説と立式
光子のエネルギー \(E\) は、プランク定数を \(h\)、光の振動数を \(\nu\) とすると、次の式で与えられます。
$$ E = h\nu $$
問題文より、プランク定数 \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\)、振動数 \(\nu = 2.0 \times 10^{15} \, \text{Hz}\) です。これらの値を上の式に代入する準備をします。
使用した物理公式
- 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
E &= (6.6 \times 10^{-34}) \times (2.0 \times 10^{15}) \\[2.0ex]&= (6.6 \times 2.0) \times (10^{-34} \times 10^{15}) \\[2.0ex]&= 13.2 \times 10^{-34+15} \\[2.0ex]&= 13.2 \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= 1.32 \times 10^1 \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= 1.32 \times 10^{-18}
\end{aligned}
$$
ここで、計算に用いた振動数 \(2.0 \times 10^{15} \, \text{Hz}\) とプランク定数 \(6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\) は、どちらも有効数字が2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁で表す必要があります。\(1.32 \times 10^{-18}\) を四捨五入して有効数字2桁にすると、\(1.3 \times 10^{-18} \, \text{J}\) となります。
光は波の性質と粒の性質をあわせ持っています。この「粒」としての光を「光子」と呼びます。光子1個がどれくらいのエネルギーを持っているかは、その光が1秒間に何回振動するか(振動数)で決まります。振動数が大きい光ほど、光子1個のエネルギーも大きくなります。
この問題は、「振動数がこれくらいの光があります。この光のつぶつぶ(光子)1個のエネルギーはどれくらいですか?」と聞いているのと同じです。
物理学には「エネルギー \(=\) プランク定数 \(\times\) 振動数」という便利な公式 (\(E=h\nu\)) があるので、問題に書かれている数字をこの公式に入れるだけで答えが計算できます。
\(6.6 \times 10^{-34}\) というとても小さな数と、\(2.0 \times 10^{15}\) というとても大きな数を掛け合わせる計算ですが、落ち着いて計算すれば大丈夫です。最後に、問題で使われている数字の細かさ(有効数字)に合わせて答えを丸めるのがポイントです。
2 光子のエネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「光子のエネルギーと波長の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光子のエネルギーの公式: 光子1個が持つエネルギー \(E\) は、振動数 \(\nu\) に比例する (\(E=h\nu\))。
- 波の基本式: 波の速さ \(c\)、振動数 \(\nu\)、波長 \(\lambda\) の間には \(c=\nu\lambda\) の関係が成り立つ。
- エネルギーと波長の関係式: 上記2式を組み合わせることで、エネルギーを波長で表す公式 \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) が導かれる。
- 有効数字の処理: 計算結果を適切な有効数字でまとめる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 光子のエネルギーと波長の関係式 \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) を用いる。
- 問題文で与えられたプランク定数 \(h\)、光速 \(c\)、波長 \(\lambda\) の値を公式に代入する。
- 計算結果を、与えられた数値の有効数字(この問題では2桁)に合わせて整理する。
思考の道筋とポイント
光子のエネルギー \(E\) は、基本的には振動数 \(\nu\) を使って \(E=h\nu\) と表されます。しかし、問題で与えられているのは振動数ではなく波長 \(\lambda\) です。ここで、あらゆる波に共通する基本式 \(c=\nu\lambda\)(速さ = 振動数 × 波長)を思い出します。この式を \(\nu\) について解くと \(\nu = \displaystyle\frac{c}{\lambda}\) となり、これを \(E=h\nu\) に代入することで、エネルギーを波長 \(\lambda\) で直接表す便利な公式 \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) を得ることができます。この問題では、この公式に数値を代入するのが最も効率的な解法です。
この設問における重要なポイント
- 光子のエネルギーと波長: \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\)。この公式は \(E=h\nu\) と \(c=\nu\lambda\) から導出される。波長 \(\lambda\) が短いほど、エネルギー \(E\) は大きくなる(反比例の関係)。
- 物理定数:
- プランク定数: \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\)
- 真空中の光速: \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\)
- 有効数字: 問題で与えられている波長 \(\lambda = 4.4 \times 10^{-7} \, \text{m}\)、光速 \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\)、プランク定数 \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\) は、いずれも有効数字が2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答える必要があります。
具体的な解説と立式
光子のエネルギー \(E\) は、プランク定数を \(h\)、光の振動数を \(\nu\) として \(E=h\nu\) と表されます。
また、光の速さ \(c\) と振動数 \(\nu\)、波長 \(\lambda\) の間には、波の基本式 \(c=\nu\lambda\) が成り立ちます。
この式を \(\nu\) について解くと、
$$ \nu = \frac{c}{\lambda} $$
となります。これをエネルギーの式 \(E=h\nu\) に代入すると、
$$ E = h \left( \frac{c}{\lambda} \right) = \frac{hc}{\lambda} $$
という、エネルギーを波長で表す式が得られます。
この式に、問題文で与えられた \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\), \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\), \(\lambda = 4.4 \times 10^{-7} \, \text{m}\) を代入します。
使用した物理公式
- 光子のエネルギー: \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\)
- (参考)波の基本式: \(c = \nu\lambda\)
「具体的な解説と立式」で導いた式に、各値を代入してエネルギー \(E\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{hc}{\lambda} \\[2.0ex]&= \frac{(6.6 \times 10^{-34}) \times (3.0 \times 10^8)}{4.4 \times 10^{-7}} \\[2.0ex]&= \frac{6.6 \times 3.0}{4.4} \times \frac{10^{-34} \times 10^8}{10^{-7}} \\[2.0ex]&= \frac{19.8}{4.4} \times 10^{-34+8-(-7)} \\[2.0ex]&= 4.5 \times 10^{-19}
\end{aligned}
$$
計算に用いた各値の有効数字は2桁なので、この結果はそのまま答えとなります。
したがって、光子のエネルギーは \(4.5 \times 10^{-19} \, \text{J}\) です。
光のエネルギーは、その光の「波長」が分かれば計算できます。波長は、波の山から次の山までの長さのことです。イメージとして、波長が短い光ほど、波がギュッと詰まっていて振動が激しいので、エネルギーが大きくなります。
この問題では、「波長が \(4.4 \times 10^{-7} \, \text{m}\) の光のエネルギーは?」と聞かれています。
物理には \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) という、波長 \(\lambda\) から直接エネルギー \(E\) を計算できる便利な公式があります。ここに、問題文に書かれているプランク定数 \(h\)、光の速さ \(c\)、波長 \(\lambda\) の値を代入すれば、答えを求めることができます。分数の計算と、\(10\) の何乗という指数の計算を間違えないように注意しましょう。
思考の道筋とポイント
光子のエネルギーを求める基本公式は \(E=h\nu\) です。この問題では波長 \(\lambda\) が与えられているため、まず波の基本式 \(c=\nu\lambda\) を使って振動数 \(\nu\) を計算し、その結果を \(E=h\nu\) に代入するという、2段階で解くこともできます。この方法は、公式の成り立ちを理解しながら計算を進めるため、物理的な思考力を養う上で非常に有益です。
この設問における重要なポイント
- 二つの基本公式、波の基本式 \(c=\nu\lambda\) と光子のエネルギーの公式 \(E=h\nu\) を順番に適用します。
- 途中で計算した振動数 \(\nu\) の値は、丸めずにそのまま次の計算に使うことで、計算誤差を防ぎます。
具体的な解説と立式
この解法は2つのステップで進めます。
ステップ1: 波の基本式を用いて振動数 \(\nu\) を求める。
波の基本式 \(c=\nu\lambda\) を \(\nu\) について解きます。
$$ \nu = \frac{c}{\lambda} \quad \cdots ① $$
ステップ2: 光子のエネルギーの公式を用いてエネルギー \(E\) を求める。
求めた振動数 \(\nu\) を使い、エネルギー \(E\) を計算します。
$$ E = h\nu \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 波の基本式: \(c = \nu\lambda\)
- 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)
まず、ステップ1として式①に値を代入し、振動数 \(\nu\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\nu &= \frac{c}{\lambda} \\[2.0ex]&= \frac{3.0 \times 10^8}{4.4 \times 10^{-7}} \\[2.0ex]&= \frac{3.0}{4.4} \times 10^{8 – (-7)} \\[2.0ex]&= \frac{30}{44} \times 10^{15} \\[2.0ex]&= \frac{15}{22} \times 10^{15} \, [\text{Hz}]\end{aligned}
$$
次に、ステップ2として、この \(\nu\) の値を式②に代入します。(途中で小数に直して丸めず、分数のまま代入するのが正確な計算のコツです。)
$$
\begin{aligned}
E &= h\nu \\[2.0ex]&= (6.6 \times 10^{-34}) \times \left( \frac{15}{22} \times 10^{15} \right) \\[2.0ex]&= \frac{6.6 \times 15}{22} \times 10^{-34} \times 10^{15} \\[2.0ex]&= \frac{66 \times 15}{22 \times 10} \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= \frac{3 \times 15}{10} \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= \frac{45}{10} \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= 4.5 \times 10^{-19} \, [\text{J}]\end{aligned}
$$
有効数字2桁で \(4.5 \times 10^{-19} \, \text{J}\) となり、メインの解法と同じ結果が得られました。
別の考え方として、2段階に分けて解く方法もあります。
1. まず、光の「振動数(1秒間に何回波打つか)」を計算します。これは「速さ ÷ 波長」で求められます。
2. 次に、その振動数を使って、エネルギーを計算します。エネルギーは「プランク定数 × 振動数」で求められます。
このように、基本的な公式を一つずつ使って段階的に解いていくと、なぜその答えになるのかがより分かりやすくなります。結果はもちろん、一発で計算する方法と同じになります。
3 光電効果
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「光電効果の基本法則の適用」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光電効果: 金属に特定の振動数以上の光を当てると、電子が表面から飛び出す現象。
- アインシュタインの光電方程式: 光のエネルギー保存則を表す式。
- 仕事関数: 電子を1個、金属の表面から引き出すのに必要な最小エネルギー。金属の種類によって決まる。
- 限界振動数: 光電効果を起こすことができる光の、最も小さい振動数。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問(1)では、アインシュタインの光電方程式に与えられた値を代入し、飛び出す電子の運動エネルギーの最大値を計算する。
- 問(2)では、仕事関数と限界振動数の関係式を用いて、この金属の限界振動数を計算する。
問(1)
思考の道筋とポイント
光電効果は、光の粒子性を示す重要な現象です。アインシュタインは、光子1個が持つエネルギー \(h\nu\) が、金属中の1個の電子に吸収されると考えました。吸収されたエネルギーは、まず電子を金属表面から引き出すための「仕事関数 \(W\)」として使われ、その残りが電子が飛び出す際の「運動エネルギー \(K_0\)」になると説明しました。これはエネルギー保存則そのものであり、\(h\nu = W + K_0\) という関係式で表されます。この問題では、光子のエネルギー \(h\nu\) と仕事関数 \(W\) が直接与えられているため、この関係式から \(K_0\) を求めることができます。
この設問における重要なポイント
- アインシュタインの光電方程式: \(K_0 = h\nu – W\) または \(h\nu = W + K_0\)
- \(K_0\): 飛び出す光電子の運動エネルギーの最大値 [\(\text{J}\)]
- \(h\nu\): 入射した光子1個のエネルギー [\(\text{J}\)]
- \(W\): 仕事関数 [\(\text{J}\)]。金属に固有の値。
- この関係は、「(電子が)もらったエネルギー \(h\nu\)」が「(脱出に)使ったエネルギー \(W\)」と「(残って運動するための)余ったエネルギー \(K_0\)」に分配される、というエネルギーの収支を表しています。
具体的な解説と立式
金属に光子エネルギー \(h\nu\) の光を当てたとき、飛び出す電子の運動エネルギーの最大値を \(K_0\)、金属の仕事関数を \(W\) とすると、エネルギー保存則から以下の光電方程式が成り立ちます。
$$ h\nu = W + K_0 $$
この式を \(K_0\) について解くと、
$$ K_0 = h\nu – W $$
となります。問題文より、光子のエネルギーは \(h\nu = 6.1 \times 10^{-19} \, \text{J}\)、仕事関数は \(W = 3.5 \times 10^{-19} \, \text{J}\) です。これらの値を上式に代入します。
使用した物理公式
- アインシュタインの光電方程式: \(K_0 = h\nu – W\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
K_0 &= 6.1 \times 10^{-19} – 3.5 \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= (6.1 – 3.5) \times 10^{-19} \\[2.0ex]&= 2.6 \times 10^{-19} \, [\text{J}]\end{aligned}
$$
計算に用いた値の有効数字は2桁(小数第1位まで)なので、この結果はそのまま答えとなります。
光を金属に当てると電子が飛び出す現象を「光電効果」といいます。これを、ボール(光子)を壁にぶつけて、壁にくっついているピン(電子)を弾き飛ばすゲームに例えてみましょう。
ボールが持っているエネルギー(光子のエネルギー \(h\nu\))の一部は、ピンを壁から引き剥がすためのエネルギー(仕事関数 \(W\))として使われます。そして、残ったエネルギーが、弾き飛ばされたピンの運動エネルギー \(K_0\) になります。
つまり、「ピンの運動エネルギー = ボールのエネルギー – 引き剥がすのに使ったエネルギー」という、単純な引き算で計算できるわけです。
問(2)
思考の道筋とポイント
「限界振動数 \(\nu_0\)」とは、その名の通り「光電効果が起こるか起こらないかの限界となる振動数」のことです。これは、電子を金属表面から引き出すだけで精一杯で、飛び出すための運動エネルギーがゼロ (\(K_0=0\)) になる状態に対応します。
光電方程式 \(h\nu = W + K_0\) において、\(K_0=0\) となる特別な場合の振動数を \(\nu_0\) とおくと、\(h\nu_0 = W + 0\)、すなわち \(W = h\nu_0\) という関係式が成り立ちます。仕事関数 \(W\) は金属固有の定数なので、限界振動数 \(\nu_0\) もその金属に固有の値となります。この関係式を使えば、仕事関数 \(W\) から限界振動数 \(\nu_0\) を計算できます。
この設問における重要なポイント
- 仕事関数と限界振動数の関係: \(W = h\nu_0\)
- 限界振動数 \(\nu_0\) の物理的意味: 光電効果を起こすために必要な、光子の最小の振動数。振動数が \(\nu_0\) 未満の光をいくら強く当てても、電子は1つも飛び出してきません。
- 仕事関数 \(W\) は「電子を1個取り出すのに必要な最小エネルギー」と定義されるため、エネルギーが \(W\) に等しい光子 (\(E=h\nu_0\)) を考えれば、この関係式は直感的に理解できます。
具体的な解説と立式
限界振動数 \(\nu_0\) は、飛び出す電子の運動エネルギーの最大値 \(K_0\) が \(0\) となるときの入射光の振動数です。光電方程式 \(K_0 = h\nu – W\) に \(K_0=0\), \(\nu=\nu_0\) を代入すると、
$$ 0 = h\nu_0 – W $$
したがって、仕事関数 \(W\) と限界振動数 \(\nu_0\) の間には以下の関係が成り立ちます。
$$ W = h\nu_0 $$
この式を \(\nu_0\) について解くと、
$$ \nu_0 = \frac{W}{h} $$
となります。問題文で与えられた仕事関数 \(W = 3.5 \times 10^{-19} \, \text{J}\) と、プランク定数 \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\) を代入します。
使用した物理公式
- 仕事関数と限界振動数の関係: \(W = h\nu_0\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\nu_0 &= \frac{W}{h} \\[2.0ex]&= \frac{3.5 \times 10^{-19}}{6.6 \times 10^{-34}} \\[2.0ex]&= \frac{3.5}{6.6} \times 10^{-19 – (-34)} \\[2.0ex]&= 0.5303… \times 10^{15} \\[2.0ex]&= 5.303… \times 10^{14}
\end{aligned}
$$
有効数字は、\(3.5\) と \(6.6\) のいずれも2桁なので、計算結果も2桁に丸めます。したがって、
$$ \nu_0 \approx 5.3 \times 10^{14} \, [\text{Hz}] $$
となります。
「限界振動数」とは、(1)のゲームの例えで言うと、「ピンを壁から引き剥がすだけで精一杯で、弾き飛ばす勢い(運動エネルギー)がゼロになってしまう」ような、ギリギリのエネルギーしか持たないボールの振動数のことです。
つまり、「引き剥がすのに必要なエネルギー(仕事関数 \(W\))」と「ギリギリのボールが持つエネルギー(\(h\nu_0\))」がちょうど等しくなる、という関係 (\(W=h\nu_0\)) が成り立ちます。
この式を使えば、仕事関数 \(W\) が分かっていれば、その金属の限界振動数 \(\nu_0\) を計算することができるのです。
4 光電子の運動エネルギーの最大値
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「阻止電圧と光電子の運動エネルギーの関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 阻止電圧(逆電圧): 光電効果で飛び出した電子の流れ(光電流)を止めるためにかける逆向きの電圧。
- 仕事とエネルギーの定理: 物体の運動エネルギーの変化は、その物体にされた仕事に等しい。
- 静電気力がする仕事: 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) のある区間を移動するとき、静電気力がする仕事は \(W=qV\) で表される。
- 電子ボルト(\(\text{eV}\)): 原子や素粒子の分野でよく用いられるエネルギーの単位。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 阻止電圧の定義を理解し、最も運動エネルギーの大きい光電子が止められる条件を考える。
- 仕事とエネルギーの定理を用いて、光電子の運動エネルギーの最大値 \(K_0\) と阻止電圧 \(V_0\) の関係式を導く。
- 与えられた値を代入し、エネルギーをジュール[\(\text{J}\)]単位で計算する。
- 電子ボルト[\(\text{eV}\)]の定義に基づき、エネルギーを[\(\text{eV}\)]単位でも表現する。
思考の道筋とポイント
光電管では、陰極から飛び出した電子が陽極に向かって飛んでいくことで電流が流れます。このとき、陽極側にマイナス、陰極側にプラスになるような逆向きの電圧(阻止電圧)をかけると、電子は電場から進行方向と逆向きの力を受け、減速させられます。
この電圧を大きくしていくと、やがて最も勢いよく飛び出した電子(運動エネルギーが最大の電子)でさえも陽極にたどり着けなくなり、光電流がゼロになります。このときの電圧が「阻止電圧 \(V_0\)」です。
これは、電子が持つ運動エネルギー \(K_0\) が、電位差 \(V_0\) の「電位の坂」を上ることで完全に失われる状況と考えることができます。したがって、電子の運動エネルギーの最大値 \(K_0\) は、阻止電圧 \(V_0\) によってされる仕事 \(eV_0\) に等しくなります。
この設問における重要なポイント
- 阻止電圧と運動エネルギーの関係: 飛び出す光電子の運動エネルギーの最大値を \(K_0\)、阻止電圧を \(V_0\)、電気素量を \(e\) とすると、以下の関係が成り立ちます。
$$ K_0 = eV_0 $$
これは、運動エネルギー \(K_0\) を持つ電子が、電位差 \(V_0\) の電場に逆らって進むときにされる仕事 \(eV_0\) によって、ちょうど止められることを意味します。 - 電子ボルト(\(\text{eV}\))という単位:
- 定義: 電子1個(電気量 \(e\))が、電位差 \(1 \, \text{V}\) で加速されたときに得るエネルギーを \(1 \, \text{eV}\)(1電子ボルト)と定義します。
- 換算: \(1 \, \text{eV} = e \times (1 \, \text{V}) = (1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}) \times (1 \, \text{V}) = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}\) となります。
- 利便性: この問題のように、阻止電圧が \(V_0\) ボルトの場合、光電子の運動エネルギーの最大値は、定義から直ちに \(V_0\) 電子ボルトであると分かります。原子物理の分野では非常に便利な単位です。
具体的な解説と立式
運動エネルギーの最大値 \(K_0\) を持つ光電子が、阻止電圧 \(V_0\) によって作られる逆向きの電場によって止められる状況を考えます。
仕事とエネルギーの定理「運動エネルギーの変化 = された仕事」を適用します。
- 電子が陰極を飛び出した直後の運動エネルギー: \(K_{\text{始}} = K_0\)
- 電子が陽極に到達する直前でちょうど止まるので、その運動エネルギー: \(K_{\text{終}} = 0\)
- 電子(電荷 \(-e\))が、電位が \(V_0\) だけ高い陽極へ向かうとき、静電気力がする仕事は \(W = qV = (-e) \times V_0 = -eV_0\)。
これらを仕事とエネルギーの定理 \(K_{\text{終}} – K_{\text{始}} = W\) に代入すると、
$$ 0 – K_0 = -eV_0 $$
したがって、次の関係式が得られます。
$$ K_0 = eV_0 $$
この式に、問題で与えられた電気素量 \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) と阻止電圧 \(V_0 = 2.0 \, \text{V}\) を代入します。
使用した物理公式
- 光電子の運動エネルギーと阻止電圧の関係: \(K_0 = eV_0\)
- (導出の参考)仕事とエネルギーの定理: \(K_{\text{終}} – K_{\text{始}} = W\)
- (導出の参考)静電気力がする仕事: \(W = qV\)
まず、エネルギーをジュール[\(\text{J}\)]単位で計算します。
$$
\begin{aligned}
K_0 &= eV_0 \\[2.0ex]&= (1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}) \times (2.0 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 3.2 \times 10^{-19} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
次に、電子ボルト[\(\text{eV}\)]単位で考えます。
電子ボルトの定義は「電子1個が \(1 \, \text{V}\) の電位差で動くときのエネルギー」です。
阻止電圧が \(2.0 \, \text{V}\) なので、電子を止めるのに必要なエネルギーは、定義からそのまま \(2.0 \, \text{eV}\) となります。
したがって、光電子の運動エネルギーの最大値は \(K_0 = 2.0 \, \text{eV}\) です。
「阻止電圧」とは、光電管の中を飛んでくる電子を止めるための「ブレーキ」のようなものです。
この問題では、「\(2.0 \, \text{V}\) のブレーキをかけたら、一番元気な電子が陽極にたどり着く直前でピッタリ止まった」という状況を表しています。
これは、一番元気な電子が持っていた運動エネルギーが、\(2.0 \, \text{V}\) のブレーキによってすべて奪われた、ということです。
したがって、電子の運動エネルギーは「\(2.0 \, \text{V}\) のブレーキに相当するエネルギー」と等しくなります。
物理の世界では、電子1個を \(1 \, \text{V}\) の電圧で動かすエネルギーを「\(1 \, \text{eV}\)(電子ボルト)」という特別な単位で呼ぶことがあります。この単位を使えば、答えはすぐに「\(2.0 \, \text{eV}\)」と分かります。
これを、普段使われるエネルギーの単位「\(\text{J}\)(ジュール)」に直すには、電子1個が持つ電気の量(電気素量 \(1.6 \times 10^{-19}\))を掛けてあげればよく、\(3.2 \times 10^{-19} \, \text{J}\) と計算できます。
5 電子ボルト
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「エネルギーの単位、電子ボルト(\(\text{eV}\))とジュール(\(\text{J}\))の換算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電子ボルト(\(\text{eV}\))の定義: 原子物理学などで用いられるエネルギーの単位。
- 静電気力がする仕事: 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) を移動するときにされる仕事は \(W=qV\)。
- 電気素量 \(e\) の値: 電子1個が持つ電気量の大きさ。
- 有効数字の処理: 計算結果を適切な有効数字でまとめる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 電子ボルト(\(\text{eV}\))の定義を思い出し、\(1 \, \text{eV}\) が何ジュール(\(\text{J}\))に相当するかを確認する。
- 与えられたエネルギー \(50 \, \text{eV}\) に、この換算係数を掛けてジュールに変換する。
- 計算結果を有効数字に注意してまとめる。
思考の道筋とポイント
原子や電子といったミクロな世界を扱う物理学では、私たちが日常で使うエネルギーの単位「ジュール(\(\text{J}\))」は、あまりにも大きすぎて不便な場合があります。そこで、このような小さなスケールの現象を記述するのに適した、新しいエネルギーの単位として「電子ボルト(\(\text{eV}\))」が導入されました。
電子ボルトは、「電子1個が、\(1 \, \text{V}\)の電位差によって加速されるときに得るエネルギー」と定義されています。この定義と、静電気力がする仕事の公式 \(W=qV\) を使えば、電子ボルトとジュールの関係を導き出すことができます。この問題は、その関係を正しく理解し、単位換算ができるかを問う基本的な問題です。
この設問における重要なポイント
- 電子ボルトの定義: \(1 \, \text{eV}\) は、電気素量 \(e\) を持つ粒子(電子など)が、\(1 \, \text{V}\) の電位差がある区間を移動したときに得る、または失うエネルギーのことです。
- ジュールへの換算: 静電気力がする仕事の公式 \(W=qV\) から、\(1 \, \text{eV}\) は \(e \times (1 \, \text{V})\) の仕事に相当します。電気素量 \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) を用いると、\(1 \, \text{eV} = (1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}) \times (1 \, \text{V}) = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}\) となります。この換算式は非常に重要なので必ず覚えましょう。
- 有効数字: 問題で与えられている電気素量 \(e\) は「\(1.6\)」で2桁、エネルギーは「\(50\)」で2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答える必要があります。
具体的な解説と立式
エネルギーの単位である電子ボルト(\(\text{eV}\))は、その定義からジュール(\(\text{J}\))に変換することができます。
電子ボルトの定義は、「電気素量 \(e\) を持つ荷電粒子が、電位差 \(1 \, \text{V}\) によってされる仕事(エネルギー)」です。
仕事 \(W\) は、電荷 \(q\) と電位差 \(V\) を用いて \(W=qV\) と表せるので、\(1 \, \text{eV}\) をジュールで表すと、
$$ 1 \, \text{eV} = e \times (1 \, \text{V}) $$
となります。ここで、電気素量 \(e\) の値は \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) ですから、
$$ 1 \, \text{eV} = (1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}) \times (1 \, \text{V}) = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J} $$
という換算関係が成り立ちます。
この関係を用いて、\(50 \, \text{eV}\) をジュールに換算します。
使用した物理公式
- 電子ボルトとジュールの換算式: \(1 \, \text{eV} = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}\)
- (参考)静電気力がする仕事: \(W = qV\)
「具体的な解説と立式」で確認した換算関係を用いて、\(50 \, \text{eV}\) をジュールに変換します。
$$
\begin{aligned}
E &= 50 \, [\text{eV}] \\[2.0ex]&= 50 \times (1 \, \text{eV}) \\[2.0ex]&= 50 \times (1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}) \\[2.0ex]&= (5.0 \times 10^1) \times (1.6 \times 10^{-19}) \, [\text{J}] \\[2.0ex]&= (5.0 \times 1.6) \times (10^1 \times 10^{-19}) \, [\text{J}] \\[2.0ex]&= 8.0 \times 10^{1-19} \, [\text{J}] \\[2.0ex]&= 8.0 \times 10^{-18} \, [\text{J}]\end{aligned}
$$
計算結果は、有効数字2桁で \(8.0 \times 10^{-18} \, \text{J}\) となります。
「電子ボルト(\(\text{eV}\))」というのは、原子や電子のような、ものすごく小さな世界の出来事を話すときに便利なエネルギーの単位です。
「\(1 \, \text{eV}\)」は、「電子くん1人が、\(1\)ボルトの電圧がかかった坂を上ったり下りたりしたときに得たり失ったりするエネルギー」とイメージすると分かりやすいです。
この「\(1 \, \text{eV}\)」が、私たちが普段の生活で使うエネルギーの単位「ジュール(\(\text{J}\))」で言うとどれくらいの量になるかは、物理学でちゃんと決まっています。それが、問題にも書かれている電気素量の値を使って、\(1 \, \text{eV} = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}\) という関係です。
この問題は、「\(50 \, \text{eV}\) は何ジュールですか?」と聞いているだけなので、\(50\) にこの決まった換算の値を掛けてあげるだけで答えが出ます。
6 X線回折
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「X線の回折とブラッグの条件」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- X線の回折: X線が波としての性質を持ち、結晶格子のような規則正しい構造によって特定の方向に強く散乱される現象。
- ブラッグの条件: 結晶格子によるX線の回折が、原子面からの「反射波」の干渉として扱えるとし、その反射波が強め合う条件を定式化したもの。
- 波の干渉: 複数の波が重なり合うとき、位相がそろうと強め合い、逆になると弱め合う現象。
- 三角関数の知識: \(\sin30^\circ\) の値を正しく計算できること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- X線回折における強め合いの条件である「ブラッグの条件」の公式を確認する。
- 問題文で与えられたX線の波長 \(\lambda\)、入射角度 \(\theta\)、反射の次数 \(n\) を公式に代入する。
- 方程式を、求めたい結晶面の原子間隔 \(d\) について解く。
思考の道筋とポイント
結晶にX線を照射すると、結晶を構成する原子によってX線が散乱されます。結晶は原子が規則正しく配列した構造を持っているため、各原子から散乱されたX線は互いに干渉し合い、特定の方向で強く観測されます。この現象がX線回失です。
ブラッグ親子は、この複雑な現象を「結晶内の平行な原子面でX線が反射され、それらが干渉し合う」という非常にシンプルで強力なモデルで説明しました。このモデルにおける強め合いの条件が「ブラッグの条件」です。この問題は、ブラッグの条件を正しく理解し、与えられた数値を代入して未知数を求める、基本的な適用問題です。
この設問における重要なポイント
- ブラッグの条件: \(2d\sin\theta = n\lambda\)
- \(d\): 結晶の格子面(原子が並ぶ面)の間隔 [\(\text{m}\)]
- \(\theta\): 入射X線と格子面のなす角(入射角や屈折角とは異なるので注意)
- \(\lambda\): 入射X線の波長 [\(\text{m}\)]
- \(n\): 反射の次数と呼ばれる正の整数 (\(n=1, 2, 3, \dots\))。\(n=1\) を「1次の反射」という。
- 経路差: ブラッグの条件の左辺 \(2d\sin\theta\) は、隣り合う原子面で反射したX線同士の経路差(進む距離の差)を表しています。この経路差が波長 \(\lambda\) の整数倍になるとき、波の山と山、谷と谷が重なり、強め合いが起こります。
具体的な解説と立式
X線が結晶格子に入射し、隣り合う原子面で反射される状況を考えます。原子面の間隔を \(d\)、X線と原子面のなす角を \(\theta\) とすると、隣り合う原子面で反射したX線の経路差は \(2d\sin\theta\) となります。
この経路差が、X線の波長 \(\lambda\) の整数 \(n\) 倍に等しいとき、反射してきたX線は強め合います。これがブラッグの条件(反射条件)です。
$$ 2d\sin\theta = n\lambda $$
この問題では、結晶面の原子間隔 \(d\) を求めたいので、この式に与えられた値を代入します。
問題文より、波長 \(\lambda = 5.0 \times 10^{-9} \, \text{m}\)、角度 \(\theta = 30^\circ\)、そして「1次の反射」とあるので次数は \(n=1\) です。
使用した物理公式
- ブラッグの条件: \(2d\sin\theta = n\lambda\)
ブラッグの条件の式に、与えられた値を代入します。
$$ 2d\sin30^\circ = 1 \times (5.0 \times 10^{-9}) $$
ここで、\(\sin30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2} = 0.5\) ですから、
$$
\begin{aligned}
2d \times \frac{1}{2} &= 5.0 \times 10^{-9} \\[2.0ex]d &= 5.0 \times 10^{-9} \, [\text{m}]\end{aligned}
$$
計算に用いた波長の有効数字が2桁なので、この結果はそのまま答えとなります。
結晶というのは、原子がとてもきれいに整列した棚のようなものです。この「原子の棚」にX線を当てると、それぞれの棚の面でX線が鏡のように反射します。
このとき、ある特定の角度でX線を当てると、それぞれの棚から反射してきたX線の波が、ちょうどタイミングよく重なり合って、非常に強い反射X線として観測されます。
この「タイミングよく重なり合って強くなる」ための条件を数式で表したのが「ブラッグの条件」(\(2d\sin\theta = n\lambda\))です。
この問題は、この魔法の公式に、問題文で与えられた「X線の波長 \(\lambda\)」「当てる角度 \(\theta\)」「何番目の強め合いか \(n\)」という情報を当てはめて、残った未知数である「棚の間隔 \(d\)」を求める、というパズルのようなものです。
7 光子の運動量
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「光子のエネルギーと運動量の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光の粒子性: 光はエネルギーと運動量を持つ「光子」という粒子の性質も持つ。
- 光子のエネルギー: 光子のエネルギー \(E\) は、振動数を \(\nu\) として \(E=h\nu\) と表される。
- 光子の運動量: 光子の運動量 \(p\) は、そのエネルギー \(E\) と光速 \(c\) を用いて \(p = \displaystyle\frac{E}{c}\) と表される。
- ド・ブロイ波との関連: 物質はすべて波の性質も持ち、その運動量 \(p\) と波長 \(\lambda\) の間には \(p = \displaystyle\frac{h}{\lambda}\) の関係がある。光子もこの関係に従う。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 光子の運動量 \(p\) とエネルギー \(E\) の関係式 \(p = \displaystyle\frac{E}{c}\) を用いる。
- 問題文で与えられた光子のエネルギー \(E\) と光速 \(c\) の値を公式に代入する。
- 計算結果を、与えられた数値の有効数字に合わせて整理する。
思考の道筋とポイント
光は波の性質を持つと同時に、粒子(光子)としての性質も持ちます。古典的な力学では、運動量は「質量×速度」で計算されますが、光子の質量はゼロです。では、光子の運動量はどう考えればよいのでしょうか。
アインシュタインの特殊相対性理論によれば、質量がゼロであっても、エネルギーを持つものは運動量を持つことが示されています。光子の場合、そのエネルギー \(E\) と運動量 \(p\) の間には \(E=pc\) という非常にシンプルな関係が成り立ちます。この問題では、光子のエネルギーが与えられているので、この関係式を \(p\) について解いた \(p = \displaystyle\frac{E}{c}\) を使って、運動量を直接計算することができます。
この設問における重要なポイント
- 光子のエネルギーと運動量の関係:
$$ p = \frac{E}{c} $$
ここで \(p\) は運動量[\(\text{kg} \cdot \text{m/s}\)], \(E\) はエネルギー[\(\text{J}\)], \(c\) は光速[\(\text{m/s}\)]です。 - 公式の導出(参考): この関係式は、以下の3つの基本式から導かれます。
- 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)
- ド・ブロイ波の関係式: \(p = \displaystyle\frac{h}{\lambda}\)
- 波の基本式: \(c = \nu\lambda\)
式(3)を \(\lambda\) について解くと \(\lambda = \displaystyle\frac{c}{\nu}\)。これを式(2)に代入すると、
$$ p = \frac{h}{c/\nu} = \frac{h\nu}{c} $$
ここで式(1)より \(E=h\nu\) なので、
$$ p = \frac{E}{c} $$
が得られます。これらの式のつながりを理解しておくことが重要です。
具体的な解説と立式
光子の運動量の大きさ \(p\) は、そのエネルギーを \(E\)、光速を \(c\) とすると、
$$ p = \frac{E}{c} $$
と表されます。
問題文より、光子のエネルギーは \(E = 1.5 \times 10^{-15} \, \text{J}\)、真空中の光の速さは \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\) です。これらの値を上の式に代入します。
使用した物理公式
- 光子の運動量: \(p = \displaystyle\frac{E}{c}\)
- (参考)光子のエネルギー: \(E=h\nu\)
- (参考)ド・ブロイ波の関係式: \(p = \displaystyle\frac{h}{\lambda}\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
p &= \frac{1.5 \times 10^{-15}}{3.0 \times 10^8} \\[2.0ex]&= \frac{1.5}{3.0} \times \frac{10^{-15}}{10^8} \\[2.0ex]&= 0.50 \times 10^{-15-8} \\[2.0ex]&= 0.50 \times 10^{-23} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{-1} \times 10^{-23} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{-24} \, [\text{kg} \cdot \text{m/s}]\end{aligned}
$$
計算に用いた値の有効数字は2桁(\(1.5\), \(3.0\))なので、計算結果も有効数字2桁で \(5.0 \times 10^{-24} \, \text{kg} \cdot \text{m/s}\) となります。
光の粒である「光子」は、不思議なことに質量がゼロなのに、ボールのように「運動量」を持っています。そして、その運動量の大きさは、光子が持つ「エネルギー」を「光の速さ」で割るだけで計算できる、というとても便利な関係があります。
この問題は、「ある光子のエネルギーがこれだけです。運動量はいくらですか?」と聞いているので、この関係式 (\(p = E/c\)) に、問題文で与えられたエネルギーと光の速さをそのまま当てはめて割り算をするだけで、答えを求めることができます。
8 電子波
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「物質波(ド・ブロイ波)の波長の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 物質波(ド・ブロイ波)の概念: 電子のような粒子も波の性質を持つという考え方。
- ド・ブロイ波長の公式: 粒子の運動量と波長の関係式 \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{p}\)。
- 運動量の定義: 運動量 \(p\) は質量 \(m\) と速さ \(v\) の積 \(p=mv\) で表される。
- 指数計算と有効数字: 科学的記数法での計算と、結果の丸め方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- ド・ブロイ波長の公式 \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\) を確認する。
- 問題文で与えられたプランク定数 \(h\)、電子の質量 \(m\)、速さ \(v\) を公式に代入する。
- 計算結果を有効数字2桁に丸める。
思考の道筋とポイント
光が波と粒子の二重性を持つという考え方に触発され、ド・ブロイは「電子のような粒子もまた、波としての性質を持つのではないか」という大胆な仮説を提唱しました。この粒子に伴う波は「物質波」または「ド・ブロイ波」と呼ばれます。
ド・ブロイは、その波長 \(\lambda\) が、粒子の運動量 \(p\) に反比例するという関係式 \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{p}\) を導きました。運動量は質量と速さの積 (\(p=mv\)) で表されるため、この式は \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\) とも書けます。これは、粒子が速く動くほど、また質量が大きいほど、その波長は短くなることを意味します。この問題は、このド・ブロイ波長の公式に与えられた値を代入する、基本的な計算問題です。
この設問における重要なポイント
- ド・ブロイ波長(物質波の波長):
$$ \lambda = \frac{h}{p} = \frac{h}{mv} $$- \(\lambda\): ド・ブロイ波長 [\(\text{m}\)]
- \(h\): プランク定数 [\(\text{J} \cdot \text{s}\)]
- \(p\): 粒子の運動量 [\(\text{kg} \cdot \text{m/s}\)]
- \(m\): 粒子の質量 [\(\text{kg}\)]
- \(v\): 粒子の速さ [\(\text{m/s}\)]
- 運動量と波長の関係: 粒子の運動量が大きいほど、物質波の波長は短くなります(反比例の関係)。
- 有効数字: 問題で与えられている速さ(\(1.0\))、プランク定数(\(6.6\))、電子の質量(\(9.1\))は、すべて有効数字が2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁に丸めて答える必要があります。
具体的な解説と立式
ド・ブロイの物質波の考え方によれば、運動量 \(p\) を持つ粒子は、波長 \(\lambda\) の波としての性質も持ちます。その関係は、プランク定数 \(h\) を用いて次のように表されます。
$$ \lambda = \frac{h}{p} $$
ここで、粒子の運動量 \(p\) は、その質量を \(m\)、速さを \(v\) とすると \(p=mv\) と表せるので、ド・ブロイ波長の式は以下のように書き換えられます。
$$ \lambda = \frac{h}{mv} $$
この式に、問題文で与えられたプランク定数 \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{J} \cdot \text{s}\)、電子の質量 \(m = 9.1 \times 10^{-31} \, \text{kg}\)、電子の速さ \(v = 1.0 \times 10^5 \, \text{m/s}\) を代入します。
使用した物理公式
- ド・ブロイ波長: \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\)
- (参考)運動量の定義: \(p=mv\)
「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{h}{mv} \\[2.0ex]&= \frac{6.6 \times 10^{-34}}{(9.1 \times 10^{-31}) \times (1.0 \times 10^5)} \\[2.0ex]&= \frac{6.6}{9.1 \times 1.0} \times \frac{10^{-34}}{10^{-31} \times 10^5} \\[2.0ex]&= \frac{6.6}{9.1} \times 10^{-34 – (-31) – 5} \\[2.0ex]&= 0.7252… \times 10^{-34 + 31 – 5} \\[2.0ex]&= 0.7252… \times 10^{-8} \\[2.0ex]&= 7.252… \times 10^{-9}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値はすべて有効数字2桁なので、計算結果を有効数字3桁目で四捨五入して、有効数字2桁で表します。
$$ \lambda \approx 7.3 \times 10^{-9} \, [\text{m}] $$
「光は波であり、同時に粒でもある」という不思議な性質があります。フランスの物理学者ド・ブロイは、「それなら、電子や野球のボールのような『粒』も、実は波の性質を持っているのではないか?」と考えました。この考えは正しく、今ではすべての物質が波の性質を持つこと(物質波)が分かっています。
その物質波の「波長」は、粒子の「運動量(質量×速さ)」が大きければ大きいほど、短くなるという関係があります。
この問題は、「この速さで飛んでいる電子は、波として見ると、どれくらいの波長を持っていますか?」と聞いています。これは、ド・ブロイ波長の公式 \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\) に、プランク定数、電子の質量、電子の速さを代入するだけで計算できます。
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