「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第24章】基礎CHECK

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基礎CHECK

1 電流計・電圧計

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電流計と電圧計の正しい接続方法とその理由」です。それぞれの計器の役割と理想的な性質から、なぜそのように接続するのかを理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電流計の役割(電流の測定)と理想的な内部抵抗(ゼロ)。
  2. 電圧計の役割(電圧の測定)と理想的な内部抵抗(無限大)。
  3. 直列接続では、各素子に流れる電流が等しい。
  4. 並列接続では、各素子にかかる電圧が等しい。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、(ア)の電流計について、その測定原理を考える。電流は「流れ」であるため、その流れの途中に割り込んで測定する必要があることを理解する。
  2. 次に、(イ)の電圧計について、その測定原理を考える。電圧は「2点間の電位差」であるため、測定したい2点間にまたがって接続する必要があることを理解する。
  3. それぞれの接続方法が、なぜそうでなければならないのかを、計器の内部抵抗と回路への影響という観点から考察する。

(ア) 電流計の接続方法

思考の道筋とポイント
電流計は、回路のある部分を流れる「電流の大きさ」を測定するための計器です。電流とは、導線のある断面を単位時間あたりに通過する電気量のことで、いわば「電気の流れの勢い」です。この流れの量を正確に測るためには、測定したい場所に電流計を「割り込ませて」、そこを通過する電流をすべて電流計の内部にも流す必要があります。このような接続方法を「直列接続」と呼びます。

なぜ直列に接続するのか、その理由を電流計の理想的な性質から考えるとより深く理解できます。電流計は、接続することで元の回路の状態を変化させないのが理想です。もし電流計自身に抵抗があると、回路全体の抵抗値が増加し、流れる電流が本来の値より小さくなってしまいます。そのため、理想的な電流計の内部抵抗は \(0\) とされています。

この設問における重要なポイント

  • 電流計の接続: 測定したい回路の部分に「直列」に接続する。
  • 電流計の内部抵抗: 理想的な電流計の内部抵抗は \(0\,\Omega\) である。現実の電流計も、内部抵抗が非常に小さくなるように作られている。
  • 直列接続の理由: 回路を流れる電流を、その値を変化させることなく、すべて電流計に通過させて測定するため。
  • 誤った接続(並列): もし抵抗と並列に電流計を接続すると、内部抵抗が極めて小さい電流計の方にほとんどの電流が流れてしまい、測定したい抵抗に流れる電流を正しく測れません。また、大電流が流れて電流計が破損する危険もあります。

具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の概念的な理解を問うものであり、数式を立てる必要はありません。

  1. 電流の定義: 電流は、回路のある一点を通過する電荷の流れです。これを測定するには、その流れの「通り道」に計器を設置する必要があります。
  2. 接続方法の選択: 回路の途中に割り込む形の接続は「直列接続」です。これにより、測定したい部分を流れる電流と、電流計を流れる電流が等しくなります。
  3. 内部抵抗の影響: 電流計を接続しても、回路に流れる電流の値が変わってしまっては意味がありません。オームの法則 \(V=IR\) より、回路全体の電圧が一定の場合、回路の抵抗 \(R\) が小さいほど大きな電流 \(I\) が流れます。電流計を直列に接続すると、その内部抵抗の分だけ回路全体の抵抗が増加します。この影響を最小限にするため、電流計の内部抵抗は可能な限り小さく(理想は \(0\,\Omega\))設計されています。

したがって、空欄(ア)は「直列」となります。

使用した物理公式
この問題は知識を問うものであり、直接的な計算式は使用しません。

  • 電流計の接続方法: 直列接続
  • 理想的な電流計の内部抵抗: \(r_{\text{A}} = 0\,\Omega\)
計算過程

この問題に計算過程はありません。

この設問の平易な説明

電流を「高速道路を流れる車の台数」に例えてみましょう。ある地点を1分間に何台の車が通過するかを数えたい場合、道路の途中に料金所のようなカウンターを設置して、すべての車をそこを通過させる必要がありますよね。このように、流れの「途中」に割り込んで測定するのが「直列」接続です。もし、カウンターを道路の脇に(並列に)設置したら、ほとんどの車はカウンターを通らずに素通りしてしまうので、正確な台数は数えられません。電流計もこれと同じで、電流の通り道に直列に接続するのが正しい使い方です。

解答 (ア) 直列

(イ) 電圧計の接続方法

思考の道筋とポイント
電圧計は、回路のある2点間の「電圧(電位差)」を測定するための計器です。電圧とは、電気的な位置エネルギーの差、つまり「電気的な高低差」のようなものです。この高低差を測るためには、測定したい2つの地点に電圧計を「またがせる」ように接続する必要があります。例えば、抵抗 \(R\) の両端の電圧を測りたいなら、抵抗 \(R\) の両端の点に電圧計の端子をそれぞれ接続します。このような接続方法を「並列接続」と呼びます。

なぜ並列に接続するのか、その理由を電圧計の理想的な性質から考えます。電圧計を接続することで、元の回路の状態(特に電流の流れ)を乱さないのが理想です。もし電圧計に電流が流れ込んでしまうと、その分だけ測定したい抵抗を流れる電流が減ってしまい、測定される電圧(\(V=IR\))が本来の値とずれてしまいます。そのため、電圧計には電流が流れ込まないように、内部抵抗が非常に大きく作られています。理想的な電圧計の内部抵抗は無限大(\(\infty\))とされています。

この設問における重要なポイント

  • 電圧計の接続: 測定したい回路の部分に「並列」に接続する。
  • 電圧計の内部抵抗: 理想的な電圧計の内部抵抗は無限大(\(\infty\,\Omega\))である。現実の電圧計も、内部抵抗が非常に大きくなるように作られている。
  • 並列接続の理由: 回路の電流分布を乱すことなく、測定したい2点間の電位差を正確に測定するため。
  • 誤った接続(直列): もし電圧計を直列に接続すると、その非常に大きな内部抵抗によって回路全体の抵抗が極端に大きくなり、回路にほとんど電流が流れなくなってしまいます。その結果、回路は正常に機能しなくなり、正しい電圧を測定することはできません。

具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の概念的な理解を問うものであり、数式を立てる必要はありません。

  1. 電圧の定義: 電圧(電位差)は、回路上の2点間の電気的なポテンシャルの差です。これを測定するには、その2点間に計器を接続する必要があります。
  2. 接続方法の選択: 測定したい素子と「同じ電位差」がかかるように接続するには、「並列接続」を行います。これにより、測定したい部分にかかる電圧と、電圧計にかかる電圧が等しくなります。
  3. 内部抵抗の影響: 電圧計を並列に接続すると、元の回路から分岐して電圧計にも電流が流れる経路ができます。もし電圧計に多くの電流が流れてしまうと、測定したい抵抗を流れる電流が減少し、オームの法則 \(V=IR\) から、測定される電圧も本来の値より小さくなってしまいます。この影響を最小限にするため、電圧計には電流がほとんど流れないように、内部抵抗は可能な限り大きく(理想は \(\infty\,\Omega\))設計されています。

したがって、空欄(イ)は「並列」となります。

使用した物理公式
この問題は知識を問うものであり、直接的な計算式は使用しません。

  • 電圧計の接続方法: 並列接続
  • 理想的な電圧計の内部抵抗: \(r_{\text{V}} = \infty\,\Omega\)
計算過程

この問題に計算過程はありません。

この設問の平易な説明

電圧を「山の2地点の標高差」に例えてみましょう。A地点とB地点の標高差を測りたい場合、測量計を使ってA地点とB地点の両方を「見渡せる」ようにして、それぞれの高さを測って差を計算します。このように、測定したい区間の両端に「またがる」ように接続するのが「並列」接続です。もし、登山道の途中に測量計を無理やり割り込ませるように(直列に)置いたら、登山道を塞いでしまって誰も通れなくなりますよね。電圧計もこれと同じで、内部の抵抗がとても大きいので、直列に繋ぐと電流が流れなくなってしまいます。だから、回路の流れを邪魔しないように、並列に接続するのです。

解答 (イ) 並列

2 電流計と電圧計の内部抵抗

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電流計と電圧計の理想的な内部抵抗とその理由」です。それぞれの計器が測定対象の回路に与える影響を最小限に抑える、という原則から理想的な性質を導き出します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電流計は測定したい部分に「直列」に接続する。
  2. 電圧計は測定したい部分に「並列」に接続する。
  3. 理想的な測定器は、接続しても元の回路の状態(電流や電圧)を変化させない。
  4. オームの法則(\(V=IR\))に基づき、抵抗が電流に与える影響を理解する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 電流計と電圧計、それぞれの接続方法と役割を再確認する。
  2. 「回路に影響を与えない」という理想的な条件を満たすためには、それぞれの内部抵抗がどうあるべきかを考察する。
  3. 電流計は「電流をスムーズに通す」必要があり、電圧計は「電流を流れ込ませない」必要がある、という対比から結論を導く。

 

思考の道筋とポイント
この問題を解く鍵は、「なぜそのように接続するのか」という前問の知識と、「測定器を接続することによる回路への影響」を考えることにあります。理想的な測定器とは、それ自身が存在しないかのように振る舞い、測定対象のありのままの値を読み取れるものです。

  1. 電流計について考える
    電流計は、電流の通り道に「直列」に割り込んで接続します。もし電流計の内部抵抗が大きければ、その分だけ回路全体の抵抗が増加してしまい、オームの法則 \(I = V/R\) に従い、本来流れるはずだった電流よりも小さな値になってしまいます。これでは正確な測定ができません。したがって、電流計は回路の抵抗を変化させないように、その内部抵抗は可能な限り小さく作られています。理想的な電流計の内部抵抗は \(0\,\Omega\) です。
  2. 電圧計について考える
    電圧計は、電圧を測りたい2点間に「並列」に接続します。もし電圧計の内部抵抗が小さければ、回路を流れていた電流の一部が電圧計の方へ「バイパス」してしまいます。すると、測定したかった抵抗に流れる電流が減少し、その結果、抵抗の両端の電圧(\(V=IR\))も本来の値より小さくなってしまいます。これを防ぐため、電圧計には電流が流れ込まないように、その内部抵抗は可能な限り大きく作られています。理想的な電圧計の内部抵抗は無限大(\(\infty\,\Omega\))です。

以上の考察から、内部抵抗を「大きく」するのは電圧計であると結論付けられます。

この設問における重要なポイント

  • 測定の基本原則: 測定器は、測定対象の物理量(電流、電圧など)を、その値を変化させることなく測定できなければならない。
  • 電流計の理想: 直列に接続するため、電流の流れを妨げないように内部抵抗は極めて小さい(理想は \(r_{\text{A}} = 0\,\Omega\))。
  • 電圧計の理想: 並列に接続するため、電流が分岐して流れ込まないように内部抵抗は極めて大きい(理想は \(r_{\text{V}} = \infty\,\Omega\))。
  • 結論: 内部抵抗を大きくするのは「電圧計」である。

具体的な解説と立式
この問題は計算式を立てるのではなく、各計器の理想的な性質を物理的に考察します。

  1. 電流計の内部抵抗
    抵抗 \(R\) を流れる電流を測るため、電流計(内部抵抗 \(r_{\text{A}}\))を直列に接続すると、回路の合成抵抗は \(R + r_{\text{A}}\) となります。電源電圧を \(V\) とすると、測定される電流 \(I’\) は \(I’ = \displaystyle\frac{V}{R+r_{\text{A}}}\) となります。本来の電流は \(I = \displaystyle\frac{V}{R}\) ですから、\(I’ = I\) となるためには \(r_{\text{A}}\) が \(0\) であることが理想です。したがって、電流計の内部抵抗は極めて小さくします。
  2. 電圧計の内部抵抗
    抵抗 \(R\) にかかる電圧を測るため、電圧計(内部抵抗 \(r_{\text{V}}\))を並列に接続します。このとき、電圧計を接続した部分の合成抵抗 \(R’\) は、\(\displaystyle\frac{1}{R’} = \frac{1}{R} + \frac{1}{r_{\text{V}}}\) より、\(R’ = \displaystyle\frac{Rr_{\text{V}}}{R+r_{\text{V}}}\) となります。測定される電圧は \(V’ = I R’\)(\(I\) は回路全体を流れる電流)です。本来測定したかった電圧は \(V=IR\) ですから、\(V’ = V\) となるためには \(R’ = R\) である必要があります。
    $$ R’ = \frac{Rr_{\text{V}}}{R+r_{\text{V}}} = \frac{R}{1 + R/r_{\text{V}}} $$
    この式で \(R’ \approx R\) となるためには、分母の \(R/r_{\text{V}}\) が \(0\) に近づけばよい、つまり \(r_{\text{V}}\) が無限大(\(\infty\))であることが理想です。したがって、電圧計の内部抵抗は極めて大きくします。

以上の比較から、内部抵抗を大きくするのは電圧計です。

使用した物理公式
この問題は知識を問うものであり、直接的な計算式は使用しません。

  • 理想的な電流計の内部抵抗: \(r_{\text{A}} = 0\,\Omega\)
  • 理想的な電圧計の内部抵抗: \(r_{\text{V}} = \infty\,\Omega\)
計算過程

この問題に計算過程はありません。

この設問の平易な説明

測定器を「邪魔にならないように」使う、と考えると分かりやすいです。

  • 電流計は「流れの量を測る」道具です。川の水の流量を測るときに、川の途中に設置する流量計が水の流れをせき止めるような大きな障害物だったら、正しい流量は測れませんよね。だから、電流計は電流がスムーズに流れるように、邪魔(抵抗)がとても小さいのです。
  • 電圧計は「2点間の高低差を測る」道具です。ダムのA地点とB地点の水圧の差を測るとき、測定のためにA地点とB地点の間を太いパイプで繋いでしまうと、水がそのパイプを勢いよく流れてしまい、ダム全体の水の流れが変わり、正しい水圧差が測れなくなります。測定用のパイプは、水がほとんど流れないように、とても細く(抵抗が大きく)する必要があります。

このように考えると、「抵抗を大きくする」のは電圧計だと分かります。

解答 電圧計

3 キルヒホッフの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「キルヒホッフの法則を用いた回路方程式の立式」です。複数の抵抗や電源を含む複雑な電気回路は、オームの法則だけでは解くことができず、キルヒホッフの法則が必要となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの第1法則(電流則):回路の分岐点における電荷の保存。
  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則):任意の閉回路におけるエネルギーの保存。
  3. オームの法則:抵抗における電圧降下 \(V=RI\) の関係。
  4. 立式のためのループ(閉回路)の正しい選び方。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 回路内の分岐点を一つ選び、キルヒホッフの第1法則を適用して電流に関する式を立てる。
  2. 回路内の閉回路(ループ)を一つ選び、キルヒホッフの第2法則を適用して電圧に関する式を立てる。
  3. 問題で求められているのは2つの関係式なので、上記で立てた2つの式を解答とする。

 

思考の道筋とポイント
複雑な電気回路を解析するための最も強力なツールがキルヒホッフの法則です。この法則は2つの法則から成り立っています。

第一に、キルヒホッフの第1法則(電流則)です。これは「回路のどの分岐点においても、流入する電流の総和と流出する電流の総和は等しい」というもので、電気量が保存されること(電荷保存則)を意味します。

第二に、キルヒホッフの第2法則(電圧則)です。これは「回路内の任意の閉じたループを一周するとき、電位の上昇(起電力)の総和と電位の下降(電圧降下)の総和は等しい」というものです。これは、ループを一周して同じ点に戻ってくると電位も元に戻る、というエネルギー保存則に基づいています。

この問題では、これら2つの法則を適用して、未知の電流 \(I_1, I_2, I_3\) の間の関係式を導出します。

この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): ある点に流入する電流の和=その点から流出する電流の和。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): 任意の閉回路(ループ)において、「起電力の和=電圧降下の和」。
  • 電圧降下の計算: 抵抗 \(R\) を電流 \(I\) と同じ向きにたどる場合、電位は \(RI\) だけ下がる(電圧降下)。逆向きにたどる場合は \(RI\) だけ上がる。
  • 起電力の計算: 電池の負極から正極の向きにたどる場合、電位は起電力 \(E\) だけ上がる。逆向きにたどる場合は \(E\) だけ下がる。
  • ループの選び方: 第2法則を適用するループは、含まれるすべての抵抗値や起電力が分かっているものを選ぶ必要があります。

具体的な解説と立式
この問題では、キルヒホッフの第1法則と第2法則をそれぞれ適用して、合計2つの関係式を立てます。

  1. キルヒホッフの第1法則(電流則)の適用
    回路図の分岐点aに着目します。

    • 点aに流入する電流:\(I_1\)
    • 点aから流出する電流:\(I_2\) と \(I_3\)

    第1法則「流入する電流の和=流出する電流の和」より、以下の関係式が成り立ちます。
    $$ I_1 = I_2 + I_3 \quad \cdots ① $$
    (分岐点bに着目しても、流入が \(I_2, I_3\)、流出が \(I_1\) となり、同じ式が得られます。)

  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則)の適用
    次に、閉回路(ループ)を選んで第2法則を適用します。ここで、すべての抵抗値と起電力が分かっているループを選ぶ必要があります。図の左側にある、電源と \(2.0\,\Omega\), \(3.0\,\Omega\), \(4.0\,\Omega\) の抵抗を含む閉回路を選びます。(右側のループや外側全体のループは、電流 \(I_2\) が流れる部分の抵抗値が不明なため、式を立てることができません。)
    この閉回路を、解説の図にあるように時計回りにたどることにします。

    • 起電力: \(6.0\,\text{V}\) の電池を負極から正極へ通過するので、電位は \(6.0\,\text{V}\) 上がります。
    • 電圧降下:
      • \(2.0\,\Omega\) の抵抗:電流 \(I_1\) と同じ向きに通過するので、\(2.0 I_1\) の電圧降下が生じます。
      • \(3.0\,\Omega\) の抵抗:電流 \(I_1\) と同じ向きに通過するので、\(3.0 I_1\) の電圧降下が生じます。
      • \(4.0\,\Omega\) の抵抗:電流 \(I_3\) と同じ向きに通過するので、\(4.0 I_3\) の電圧降下が生じます。

    第2法則「起電力の和=電圧降下の和」より、以下の関係式が成り立ちます。
    $$ 6.0 = 2.0 I_1 + 3.0 I_1 + 4.0 I_3 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則(電流則): \(\Sigma I_{\text{in}} = \Sigma I_{\text{out}}\)
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(\Sigma E = \Sigma RI\)
計算過程

この問題は関係式を立てることが目的なので、連立方程式を解く必要はありません。

ただし、式②は \(I_1\) の項をまとめることで、より簡潔にできます。
$$
\begin{aligned}
6.0 &= 2.0 I_1 + 3.0 I_1 + 4.0 I_3 \\[2.0ex]&= (2.0 + 3.0) I_1 + 4.0 I_3 \\[2.0ex]&= 5.0 I_1 + 4.0 I_3
\end{aligned}
$$
したがって、式②は \(6.0 = 5.0 I_1 + 4.0 I_3\) と書くこともできます。問題の解答としては、整理する前の \(6.0 = 2.0 I_1 + 3.0 I_1 + 4.0 I_3\) でも、整理後の式でもどちらも正解です。

この設問の平易な説明

キルヒホッフの法則は、複雑な迷路のような電気回路を解くための2つのルールです。

  • ルール1(電流のルール): 道路の交差点をイメージしてください。交差点に入ってくる車の台数と、交差点から出ていく車の台数は必ず同じになりますよね。電気回路の分岐点でも同じで、「入ってくる電流の合計」と「出ていく電流の合計」は等しくなります。これが \(I_1 = I_2 + I_3\) の意味です。
  • ルール2(電圧のルール): 山登りと下りをイメージしてください。スタート地点から山をぐるっと一周して、元のスタート地点に戻ってきたら、結局、登った高さと下りた高さの合計は同じになり、標高は元に戻ります。電気回路では、電池が「坂を上る(電位が上がる)」役割、抵抗が「坂を下る(電位が下がる)」役割をします。回路を一周すると、電池で上がった電位の合計と、抵抗で下がった電位の合計が等しくなり、元の電位に戻ります。これが2つ目の式の意味です。
解答 \(I_1 = I_2 + I_3\), \(6.0 = 2.0 I_1 + 3.0 I_1 + 4.0 I_3\)

4 電池の端子電圧

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「内部抵抗を持つ電池の端子電圧」の計算です。電池の起電力と、実際に回路で使用できる端子電圧の違いを理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電池のモデル化(理想的な電源と内部抵抗の直列接続)。
  2. 起電力 \(E\) の定義(電池が回路に電流を流そうとする能力)。
  3. 内部抵抗 \(r\) による電圧降下(電池内部でのエネルギー損失)。
  4. 端子電圧 \(V\) の定義(電池の両極間の実際の電位差)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から起電力 \(E\)、内部抵抗 \(r\)、電流 \(I\) の値を正確に読み取る。
  2. 電池がエネルギーを供給している状態(放電)であることを確認する。
  3. 放電時の端子電圧を求める公式 \(V = E – rI\) を適用し、値を代入して計算する。

 

思考の道筋とポイント
現実の電池は、完全に理想的な電源ではありません。電池の内部にも電気抵抗が存在し、これを「内部抵抗」と呼びます。そのため、電池は「理想的な電源(起電力 \(E\) を生み出す部分)」と「内部抵抗 \(r\)」が直列に接続されたものとしてモデル化できます。

電池から電流 \(I\) を取り出して外部の回路で使うとき(これを「放電」といいます)、この電流は電池の内部抵抗 \(r\) も通過します。その際、オームの法則に従って \(rI\) だけの電圧が内部抵抗で消費されてしまいます。これを「内部電圧降下」と呼びます。

その結果、電池のプラス極とマイナス極の間(端子)から実際に取り出せる電圧、すなわち「端子電圧 \(V\)」は、電池が本来持っている起電力 \(E\) から、内部で失われた電圧降下分 \(rI\) を差し引いたものになります。この関係を式で表したものが \(V = E – rI\) です。

この設問における重要なポイント

  • 起電力 \(E\): 電池が化学反応などによって生み出す、回路に電流を流すための根本的な能力。電流が流れていないときに測定される電圧に等しい。
  • 内部抵抗 \(r\): 電池の材料などが持つ電気抵抗。電流が流れると、ここでエネルギーの一部が熱として失われる。
  • 内部電圧降下 \(rI\): 内部抵抗によって失われる電圧のこと。電流が大きいほど、この損失も大きくなる。
  • 端子電圧 \(V\): 実際に電池の端子間に現れる電圧で、外部の回路に供給される電圧。放電時は \(V = E – rI\) となる。
  • 放電と充電: この問題のように、電池から電流が流れ出ている状態を「放電」という。逆に、外部電源から電池に電流を流し込む「充電」の場合、端子電圧は \(V = E + rI\) となり、起電力より高くなる。

具体的な解説と立式
まず、問題文で与えられている物理量を整理します。

  • 起電力: \(E = 1.6 \, \text{V}\)
  • 内部抵抗: \(r = 0.50 \, \Omega\)
  • 電流: \(I = 1.0 \, \text{A}\)

問題文には「電池から \(1.0\,\text{A}\) の電流が起電力の向きに流れている」とあります。これは電池がエネルギーを外部に供給している状態、すなわち「放電」していることを意味します。

放電しているときの電池の端子電圧 \(V\) は、起電力 \(E\) から内部抵抗による電圧降下 \(rI\) を差し引いた値で与えられます。

したがって、用いる公式は以下の通りです。
$$ V = E – rI $$

使用した物理公式

  • 電池の端子電圧(放電時): \(V = E – rI\)
計算過程

上記で立てた式に、問題文の値を代入して端子電圧 \(V\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V &= E – rI \\[2.0ex]&= 1.6 – 0.50 \times 1.0 \\[2.0ex]&= 1.6 – 0.50 \\[2.0ex]&= 1.1 \, (\text{V})
\end{aligned}
$$
したがって、端子電圧は \(1.1\,\text{V}\) となります。

この設問の平易な説明

電池を「お小遣いをくれるお父さん」に例えてみましょう。

  • お父さんは「毎月160円あげるよ」と約束しています。これが電池のパワーの源である「起電力 \(E=1.6\,\text{V}\)」です。
  • しかし、お父さんは君にお小遣いを渡す前に、途中のコンビニで「自分のジュース代」としていくらか使ってしまいます。この「内部でのロス」が「内部抵抗」の働きです。
  • 君がお小遣いをもらって何かを買いに行く(=電流が流れる)と、お父さんはジュースを買います。今回は \(1.0\,\text{A}\) という量の電流が流れているので、お父さんはジュース代として \(0.50\,\Omega \times 1.0\,\text{A} = 0.5\,\text{V}\)(50円)を使ってしまいました。これが「内部電圧降下」です。
  • その結果、君が実際に手にできるお小遣い(=端子電圧 \(V\))は、約束の160円からお父さんのジュース代50円を引いた、110円(\(1.1\,\text{V}\))になってしまいます。

このように、電池が本来持っているパワー(起電力)から、内部でのロス(内部電圧降下)を引いたものが、私たちが実際に使える電圧(端子電圧)になるのです。

解答 1.1 V

5 ホイートストンブリッジ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ホイートストンブリッジの平衡条件」です。この回路は未知の抵抗値を精密に測定するために用いられ、その原理を理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ホイートストンブリッジ回路の構成。
  2. 検流計に電流が流れない「平衡状態」の意味。
  3. 平衡状態における各抵抗の電位の関係。
  4. オームの法則(\(V=RI\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、回路が「平衡状態」にあることを読み取る(検流計Gに電流が流れない)。
  2. ホイートストンブリッジの平衡条件の公式を思い出す。
  3. 公式に与えられた抵抗値を代入し、未知の抵抗 \(R_x\) を求める。

 

思考の道筋とポイント
ホイートストンブリッジは、図のように4つの抵抗をひし形(ブリッジ状)に接続した回路です。この回路の最大の特徴は、中央に接続された検流計Gに電流が流れなくなる「平衡状態」という特別な条件が存在することです。

検流計に電流が流れないということは、検流計の両端の点の電位が等しいことを意味します。図の回路で、\(R_1\) と \(R_3\) の接続点をP、\(R_2\) と \(R_x\) の接続点をQとすると、平衡状態ではP点とQ点の電位が等しくなります(\(V_P = V_Q\))。

この電位が等しいという条件から、各抵抗に成り立つ関係式を導出することができます。

電源の電圧を \(E\) とすると、P点の電位は \(R_1\) と \(R_2\) で電圧が分圧される点、Q点の電位は \(R_3\) と \(R_x\) で電圧が分圧される点と考えることができます。

  • \(R_1\) にかかる電圧 \(V_1\) と \(R_2\) にかかる電圧 \(V_2\) は、\(V_1 = R_1 I_1\), \(V_2 = R_2 I_1\) となります(平衡状態なので、電流は \(R_1 \rightarrow R_2\) と流れる)。
  • \(R_3\) にかかる電圧 \(V_3\) と \(R_x\) にかかる電圧 \(V_x\) は、\(V_3 = R_3 I_2\), \(V_x = R_x I_2\) となります(平衡状態なので、電流は \(R_3 \rightarrow R_x\) と流れる)。

P点とQ点の電位が等しいので、電源の負極側から見た電位を考えると、\(R_2\) での電圧降下と \(R_x\) での電圧降下が等しくなります。つまり \(V_2 = V_x\)。同様に、電源の正極側から見ると \(R_1\) での電圧降下と \(R_3\) での電圧降下が等しくなります。つまり \(V_1 = V_3\)。

\(R_1 I_1 = R_3 I_2\) と \(R_2 I_1 = R_x I_2\) という2つの式が得られ、これらの比を取ることで、
$$ \frac{R_1 I_1}{R_2 I_1} = \frac{R_3 I_2}{R_x I_2} $$
となり、電流 \(I_1, I_2\) が消去され、有名な平衡条件の式が得られます。

この設問における重要なポイント

  • 平衡条件: 検流計Gに電流が流れない状態。
  • 平衡の物理的意味: 検流計の両端の点の電位が等しい。
  • 平衡条件の公式(たすき掛けの積が等しい): \(R_1 R_x = R_2 R_3\)
  • 平衡条件の公式(比が等しい): \(\displaystyle\frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_x}\)
  • 公式の覚え方: 対角線上にある抵抗の積が等しくなると覚える(たすき掛け)。

具体的な解説と立式
この問題では、検流計Gに電流が流れないと明記されているため、ホイートストンブリッジは平衡状態にあります。

したがって、平衡条件の公式を利用できます。対角線上にある抵抗の積が等しくなるという関係(たすき掛け)を用いると、
$$ R_1 R_x = R_2 R_3 $$
この式を、未知の抵抗 \(R_x\) について解く形に変形します。
$$ R_x = \frac{R_2 R_3}{R_1} $$
これが、この問題を解くために使用する立式です。

使用した物理公式

  • ホイートストンブリッジの平衡条件: \(R_1 R_x = R_2 R_3\)
計算過程

上記で立てた式に、問題文で与えられた値を代入して \(R_x\) を計算します。

  • \(R_1 = 10 \, \Omega\)
  • \(R_2 = 20 \, \Omega\)
  • \(R_3 = 30 \, \Omega\)

$$
\begin{aligned}
R_x &= \frac{R_2 R_3}{R_1} \\[2.0ex]&= \frac{20 \times 30}{10} \\[2.0ex]&= \frac{600}{10} \\[2.0ex]&= 60 \, (\Omega)
\end{aligned}
$$
したがって、未知の抵抗 \(R_x\) の値は \(60\,\Omega\) となります。

この設問の平易な説明

ホイートストンブリッジを「2つの分かれ道がある川」に例えてみましょう。

川がA地点で2つに分かれ(左ルートと右ルート)、B地点でまた合流します。そして、2つのルートの途中にあるP地点とQ地点の間に、小さな水路(検流計)が架かっているとします。

  • 各ルートには、水の流れを妨げる「岩」(抵抗)が2つずつあります。左ルートには \(R_1\) と \(R_2\)、右ルートには \(R_3\) と \(R_x\) です。
  • 「検流計に電流が流れない」というのは、「P地点とQ地点の間の水路に水が流れない」ということです。水が流れないのは、P地点とQ地点の「水位」(電位)が全く同じだからです。
  • 水位が同じになるのは、A地点からの水の流れが、両方のルートで「ちょうど良いバランス」で妨げられているときです。
  • 物理学の計算によると、その「ちょうど良いバランス」は、向かい合う岩の大きさ(抵抗値)を掛け算したものが等しくなるとき、つまり「\(R_1 \times R_x = R_2 \times R_3\)」という関係が成り立つときに実現します。

この問題では、この「魔法のバランス条件」を使って、4つ目の岩の大きさ \(R_x\) を計算しているのです。

解答 60 Ω

6 不純物半導体

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「不純物半導体の種類(n型・p型)の判別」です。半導体の基本的な性質である共有結合と、不純物を添加(ドーピング)した際のキャリア(電荷の運び手)の発生メカニズムを理解することが鍵となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 真性半導体(Si:ケイ素)の結晶構造と価電子数(4価)。
  2. 共有結合の概念。
  3. 不純物原子(P:リン)の価電子数(5価)。
  4. キャリアとしての「自由電子」と「正孔(ホール)」の概念。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、半導体の母体となるSi原子の価電子数を確認する。
  2. 次に、不純物として添加するP原子の価電子数を確認する。
  3. Siの結晶格子の中にP原子が置き換わって入ったとき、共有結合を形成した結果、電子が「余る」のか「不足する」のかを判断する。
  4. 電子が余る場合はn型、電子が不足して正孔ができる場合はp型と結論づける。

 

思考の道筋とポイント
純粋なケイ素(Si)のような真性半導体は、そのままだとあまり電気を通しません。そこで、電気的性質をコントロールするために、意図的に微量の不純物を加える操作(ドーピング)が行われます。これにより作られるのが不純物半導体で、加える不純物の種類によってn型とp型の2種類ができます。

Siは周期表で14族に属する原子で、4つの価電子を持っています。Siの結晶中では、1つのSi原子が周囲にある4つのSi原子とそれぞれ価電子を1つずつ出し合い、安定した共有結合を形成しています。

この問題では、4価のSiの結晶に、5つの価電子を持つ5価のリン(P)原子を不純物として加えます。P原子が結晶中のSi原子と置き換わると、P原子は周囲の4つのSi原子と共有結合を形成するために、自身の持つ5つの価電子のうち4つを使います。その結果、結合に関与しない電子が1つ余ることになります。

この余った電子は原子核からの束縛が緩く、結晶内を比較的自由に動き回ることができます。この電子を「自由電子」と呼びます。自由電子は負(negative)の電荷を持っているため、これが電気伝導の主な担い手(多数キャリア)となる半導体を「n型半導体」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • 真性半導体: Si(ケイ素)やGe(ゲルマニウム)など、不純物を含まない純粋な半導体。4価の原子からなる。
  • 不純物半導体: 真性半導体に微量の不純物を添加(ドーピング)して作られる半導体。
  • n型半導体:
    • キャリア(電荷の運び手): 自由電子(負の電荷)。
    • 作り方: 4価の半導体(Siなど)に、5価の不純物(P, Asなど)を添加する。
    • 原理: 価電子が1つ余り、それが自由電子となる。不純物は電子を与えるのでドナーと呼ばれる。
  • p型半導体:
    • キャリア(電荷の運び手): 正孔(ホール)。電子の抜けた穴で、正の電荷を持つかのように振る舞う。
    • 作り方: 4価の半導体(Siなど)に、3価の不純物(B, Al, Gaなど)を添加する。
    • 原理: 価電子が1つ不足し、電子の空席(正孔)ができる。不純物は電子を受け入れるのでアクセプタと呼ばれる。

具体的な解説と立式
この問題は、半導体の構造に関する概念的な理解を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。

  1. Si結晶の基本構造: Si原子は4つの価電子を持つ4価の原子です。結晶中では、各Si原子が周囲の4つのSi原子と共有結合を形成し、すべての価電子が結合に使われている安定した状態です。
  2. 不純物Pの添加: P原子は5つの価電子を持つ5価の原子です。このP原子が、Si結晶中のSi原子があった場所に置き換わります。
  3. 共有結合の形成と余剰電子: P原子は、周囲の4つのSi原子と共有結合を形成するために、5つの価電子のうち4つを使用します。これにより、P原子の価電子が1つ余ります。
  4. 自由電子の生成: この余った1つの電子は、特定の結合に束縛されていないため、結晶内を自由に移動できる「自由電子」となります。
  5. 半導体の種類の決定: 電気伝導の主な担い手(多数キャリア)が、負(negative)の電荷を持つ自由電子であるため、この半導体はn型半導体となります。

使用した物理公式
この問題は知識を問うものであり、直接的な計算式は使用しません。

  • n型半導体の定義: 4価の半導体に5価の不純物を添加し、自由電子をキャリアとしたもの。
計算過程

この問題に計算過程はありません。

この設問の平易な説明

半導体の結晶を「4人1組で手をつないでいるダンスパーティー」に例えてみましょう。

  • Si(ケイ素)原子は、4本の手(価電子)を持った人たちです。会場では、全員が周りの4人としっかり手をつないで(共有結合)、安定した輪を作っています。
  • そこへ、P(リン)という「手が5本ある人」(5価の原子)がやってきて、Siさんの1人と交代します。
  • このPさんは、周りの4人のSiさんと手をつなぐために4本の手を使いますが、1本の手が余ってしまいます。
  • この「余った手」(自由電子)は誰ともつながずブラブラしているので、会場内を自由に動き回ることができます。
  • 電子はマイナス(Negative)の電気を持っているので、この「余った電子」が動き回ることで電気が流れる半導体を「n型半導体」と呼びます。
  • もし、手が3本しかない人(3価の原子)が来たら、1人だけ手をつなげない「空席」(正孔)ができます。この空席がプラス(Positive)の役割をするので、その場合は「p型半導体」になります。
解答 n型

7 ダイオード

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「pn接合ダイオードの基本原理と整流作用」です。p型半導体とn型半導体を接合して作られるダイオードが、なぜ一方向にしか電流を流さないのか、その仕組みを理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. p型半導体とn型半導体の多数キャリア(正孔と自由電子)。
  2. pn接合と、接合面にできるキャリアの存在しない層(空乏層)。
  3. 順方向バイアス(電流が流れる条件)と逆方向バイアス(電流が流れない条件)。
  4. 整流作用の定義。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア)(イ)について:ダイオードに電流が流れる「順方向」とは、p型とn型のどちらからどちらへ電圧をかける場合かを考える。それぞれの半導体内のキャリア(電荷の運び手)の動きから、なぜその向きに電流が流れるのかを理解する。
  2. (ウ)について:ダイオードが持つ、一方向にしか電流を流さない性質の名称を答える。

 

思考の道筋とポイント
半導体ダイオードは、p型半導体とn型半導体を接合して作られた電子部品です。この接合面(pn接合)では、p型の多数キャリアである正孔と、n型の多数キャリアである自由電子が互いに拡散して打ち消し合い、「空乏層」と呼ばれるキャリアのいない層が形成されます。この空乏層が、ダイオードの電気的な性質を決定づけます。

  1. 電流が流れる向き(順方向バイアス)
    ダイオードに電流を流すには、この空乏層をキャリアが乗り越えられるようにする必要があります。そのためには、p型半導体側に電源の正極を、n型半導体側に負極を接続します。

    • p型側では、正極からの反発力で正孔が接合面に向かって押しやられます。
    • n型側では、負極からの反発力で自由電子が接合面に向かって押しやられます。
    • これにより、正孔と電子が接合面に集まり、空乏層が非常に狭くなります。その結果、キャリアは次々と接合面を乗り越えて移動できるようになり、大きな電流が流れます。

    このときの電流の向きは、正の電荷の流れの向きと定義されるため、「p型からn型へ」となります。

  2. 電流が流れない向き(逆方向バイアス)
    逆に、p型半導体側に負極を、n型半導体側に正極を接続すると、

    • p型側の正孔は負極に引きつけられ、接合面から遠ざかります。
    • n型側の電子は正極に引きつけられ、接合面から遠ざかります。
    • これにより、空乏層がさらに広がり、キャリアが接合面を越えることができなくなるため、電流はほとんど流れません。
  3. 整流作用
    このように、ダイオードは電圧をかける向きによって、電流を流したり、ほとんど流さなかったりします。この「一方向にしか電流を流さない性質」を「整流作用」と呼びます。この性質を利用することで、時間とともに向きが変化する交流電流を、一方向にしか流れない直流電流に変換することができます。

この設問における重要なポイント

  • pn接合ダイオード: p型半導体とn型半導体を接合した電子部品。
  • 順方向電圧(順方向バイアス): p型側に正極、n型側に負極を接続する。電流が流れやすい。
  • 逆方向電圧(逆方向バイアス): p型側に負極、n型側に正極を接続する。電流がほとんど流れない。
  • 電流の向き: 電流は「p型 → n型」の向きに流れる。これはダイオードの回路記号(矢印)の向きと一致する。
  • 整流作用: 電流を特定の方向にしか流さない性質。交流を直流に変換する基本原理である。

具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の概念的な理解を問うものであり、数式を立てる必要はありません。

  1. (ア)と(イ)の解説
    問題文では「[ア]型半導体→[イ]型半導体の向きに電圧を加えると電流が流れる」とあります。これはダイオードに順方向バイアスをかけた状態を指します。

    • 電流が流れるのは、p型半導体の多数キャリアである正孔(正電荷)と、n型半導体の多数キャリアである自由電子(負電荷)が、外部からの電圧によって接合面に向かって移動し、そこで再結合を繰り返すときです。
    • これを実現する電圧のかけ方は、p型側に正極、n型側に負極を接続することです。
    • 電流の向きは「正の電荷が移動する向き」と定義されているため、正孔が移動する向き、すなわち「p型からn型へ」の向きとなります。
    • したがって、(ア)にはp、(イ)にはnが入ります。
  2. (ウ)の解説
    問題文では、この一方向にしか電流が流れない性質を何と呼ぶかが問われています。

    • 前述の通り、電圧の向きによって電流を流したり流さなかったりする性質を「整流作用」と呼びます。
    • したがって、(ウ)には整流が入ります。

使用した物理公式
この問題は知識を問うものであり、直接的な計算式は使用しません。

  • ダイオードの順方向条件: p型に正電圧、n型に負電圧を印加。
  • ダイオードの逆方向条件: p型に負電圧、n型に正電圧を印加。
  • 整流作用の定義。
計算過程

この問題に計算過程はありません。

この設問の平易な説明

ダイオードを「一方通行の改札口」に例えてみましょう。

  • p型半導体は「プラスの切符(正孔というプラスの電気を持つ粒)」を持った人がたくさんいるエリアです。
  • n型半導体は「マイナスの切符(電子というマイナスの電気を持つ粒)」を持った人がたくさんいるエリアです。
  • ダイオードという改札口は、「pエリア → nエリア」という向きにしか通れない一方通行になっています。
  • pエリア側からプラスの力で、nエリア側からマイナスの力で人々を押してあげると(順方向電圧)、人々はスムーズに改札を通り抜け、大きな人の流れ(電流)ができます。
  • しかし、逆向きに力をかけると(逆方向電圧)、人々は改札口からどんどん離れていってしまい、誰も通れなくなります。
  • このように、一方にしか流れを許さない改札口の働きを「整流作用」と呼びます。家庭用のコンセントに来る交流電気を、乾電池のような直流電気に変えるときに、この働きが使われています。
解答 (ア) p (イ) n (ウ) 整流

8 トランジスター

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「トランジスターの基本機能である増幅作用」です。トランジスターが現代の電子機器に不可欠な部品である理由の一つが、この増幅作用にあります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. トランジスターの基本構造(npn型またはpnp型)。
  2. 3つの端子(エミッタ、ベース、コレクタ)の役割。
  3. ベース電流 \(I_{\text{B}}\) がコレクタ電流 \(I_{\text{C}}\) を制御する仕組み。
  4. 電流増幅率の概念。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. トランジスターの3つの端子の関係性を理解する。
  2. 「小さな入力で大きな出力を制御する」というトランジスターの核心的な働きを把握する。
  3. その働きを表す適切な物理用語を答える。

 

思考の道筋とポイント
トランジスターは、n型とp型の半導体を「npn」または「pnp」の順にサンドイッチ状に接合した電子部品です。3つの領域からそれぞれ端子が出ており、エミッタ(E)、ベース(B)、コレクタ(C)と呼ばれます。

トランジスターの最も重要な機能は、ベースとエミッタの間に流れる非常に小さな電流(ベース電流 \(I_{\text{B}}\))を変化させることで、コレクタとエミッタの間に流れる大きな電流(コレクタ電流 \(I_{\text{C}}\))を制御できる点にあります。

具体的には、コレクタ電流 \(I_{\text{C}}\) はベース電流 \(I_{\text{B}}\) にほぼ比例し、その比例定数である電流増幅率 \(h_{FE}\) は数十から数百という大きな値になります。
$$ I_{\text{C}} = h_{FE} I_{\text{B}} $$
この関係式が示すように、ベース電流 \(I_{\text{B}}\) をわずかに変化させるだけで、コレクタ電流 \(I_{\text{C}}\) はその \(h_{FE}\) 倍も大きく変化します。例えば、マイクに入力された小さな音声信号(微弱な電流の変化)をベース電流として流すと、スピーカーを鳴らすことができるほど大きな電流の変化をコレクタ電流として取り出すことができます。

このように、小さな信号(電流や電圧)の変化を、形は保ったまま振幅だけを大きくする作用を「増幅作用」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • トランジスター: n型とp型の半導体をpnpまたはnpnの順に接合した電子部品。
  • 3つの端子: エミッタ(キャリアを放出する)、ベース(キャリアの流れを制御する)、コレクタ(キャリアを集める)。
  • 増幅作用: 小さな入力信号(ベース電流 \(I_{\text{B}}\) の変化)を、大きな出力信号(コレクタ電流 \(I_{\text{C}}\) の変化)に変換する作用。
  • スイッチング作用: 増幅作用の応用で、ベース電流を流す(ON)か流さない(OFF)かによって、大きなコレクタ電流をON/OFFする作用。コンピュータの論理回路などで利用される。

具体的な解説と立式
この問題は、トランジスターの機能に関する知識を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。

トランジスターの動作は、水道の蛇口に例えることができます。

  1. コレクタ電流 \(I_{\text{C}}\): 水道管を流れる大量の水。
  2. ベース電流 \(I_{\text{B}}\): 蛇口のハンドルをひねる小さな力。

蛇口のハンドルを少しひねる(小さなベース電流を流す)だけで、水道管から大量の水(大きなコレクタ電流)が流れ出します。ハンドルのひねり具合をわずかに変える(ベース電流を変化させる)と、流れ出る水の量(コレクタ電流)も大きく変化します。

この「小さな力(入力)で大きな流れ(出力)を制御し、変化を大きくする」という働きが、問題文で問われている「小さな電流の変化を、大きな電流の変化に変える」作用であり、これを「増幅作用」と呼びます。

使用した物理公式
この問題は知識を問うものであり、直接的な計算式は使用しません。

  • 増幅作用の定義。
  • (参考)コレクタ電流とベース電流の関係: \(I_{\text{C}} = h_{FE} I_{\text{B}}\) (\(h_{FE}\)は直流電流増幅率)
計算過程

この問題に計算過程はありません。

この設問の平易な説明

トランジスターの働きを、マイクとスピーカーで考えてみましょう。

私たちがマイクに向かって話す声は、空気のとても小さな振動です。マイクは、この小さな振動を「とても小さな電気信号(電流の変化)」に変えます。しかし、この電気信号はあまりにも小さすぎて、そのままスピーカーにつないでも音は聞こえません。

そこで、トランジスターの出番です。

  1. マイクからの「小さな電流の変化」を、トランジスターの「ベース」という入力端子に入れます。
  2. トランジスターは、この小さな変化を元にして、「とても大きな電流の変化」を「コレクタ」という出力端子から作り出します。これが「増幅作用」です。
  3. この増幅された大きな電流の変化をスピーカーに送ることで、スピーカーは力強く振動し、私たちの耳に聞こえる大きな音を出すことができるのです。

このように、トランジスターは「小さな信号を大きくする」という、電子回路にとって魔法のような働きをしています。

解答 増幅作用
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