「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第21章】基本問題361~369

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基本問題

361 箔検電器

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「箔検電器の動作原理と静電誘導」です。静電誘導という現象を、導体内の自由電子の動きによって段階的に説明し、箔検電器の箔が開いたり閉じたりする様子を正しく理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 導体と自由電子: 箔検電器は金属でできており、内部には自由に動き回れる「自由電子」(負の電荷)が存在します。
  2. 静電誘導: 帯電体を導体に近づけると、自由電子が静電気力(引力または斥力)を受けて移動し、導体内で電荷の偏りが生じます。
    • 帯電体に近い側には、帯電体と異種の電荷が現れます。
    • 帯電体から遠い側には、帯電体と同種の電荷が現れます。
  3. 接地(アース): 導体を指や地面に接続すること。これにより、導体は地球という巨大な導体と一体化し、電子が地球との間で自由に行き来できるようになります。
  4. 静電気力: 同種の電荷間には斥力(反発力)がはたらき、異種の電荷間には引力がはたらきます。箔が開くのは、2枚の箔が同種の電荷を帯びて反発しあうためです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、負に帯電した棒を近づけたときに、箔検電器全体でどのような静電誘導が起こるかを、自由電子の動きから考えます。
  2. (2)では、棒を近づけたまま指で触れる(接地する)ことで、電子がどこへ移動し、その結果として箔がどうなるかを考えます。
  3. (3)では、指を離し、次に棒を遠ざけるという操作の順序に従って、箔検電器全体の最終的な帯電状態と箔の様子を判断します。
  4. 最後の問いでは、(3)で帯電した箔検電器に、再び負の帯電体を近づけたときの箔の振る舞いを予測します。

問(1)

思考の道筋とポイント
負に帯電した棒を、電気的に中性な箔検電器に近づける場面です。箔検電器は金属(導体)なので、「静電誘導」が起こります。負の棒が近づくことで、導体内の自由電子(負)がどのような力を受けて移動するかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • (a) 箔検電器は金属(導体)なので、起こる現象は「静電誘導」。
  • (b) 負の棒が近づくと、自由電子は反発して下に逃げる。その結果、電子が不足した上部の金属円板は「正」に帯電する。
  • (c) 自由電子が逃げてきて過剰になった下部の箔は「負」に帯電する。
  • (d) 2枚の箔はどちらも負に帯電するため、同種電荷の斥力によって互いに反発し、「開く」。

具体的な解説と立式
(a) 箔検電器は金属でできているので、帯電体を近づけると自由電子が移動する「静電誘導」が起こります。

(b) 負に帯電した棒を金属円板に近づけると、棒の負電荷と金属内の自由電子(負)との間に斥力がはたらきます。このため、自由電子は棒からできるだけ遠くへ逃げようとし、金属円板から金属箔の方へ移動します。その結果、電子が不足した金属円板は正に帯電します。

(c) 一方、金属円板から移動してきた自由電子が集まった金属箔は、電子が過剰な状態となり、負に帯電します。

(d) 2枚の金属箔は、どちらも負に帯電します。同種の電荷は互いに反発しあうため、箔は斥力によって開きます。

使用した物理公式

  • 静電誘導の原理
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  1. 金属でできた箔検電器に、マイナスの電気を持つ棒を近づけます。
  2. 金属の中には、自由に動き回れるマイナスの粒「自由電子」がいます。自由電子は、近づいてきた棒のマイナス電気と反発し、「逃げろ!」と一斉に下の方(金属箔)へ避難します。
  3. その結果、上の方(金属円板)は電子に出ていかれてしまったのでプラスの状態に、下の箔は電子がたくさん集まってきてマイナスの状態になります。
  4. 2枚の箔は両方ともマイナスになったので、マイナス同士で反発しあい、箔は「パッ」と開きます。
結論と吟味

一連の現象は静電誘導の基本原理で説明でき、論理的に妥当です。

解答 (1) (a) ① 静電誘導, (b) ① 正, (c) ② 負, (d) ① 開く

問(2)

思考の道筋とポイント
帯電した棒を近づけたまま、金属円板に指で触れる(接地する)場面です。指(人体)も導体なので、箔検電器は地球という非常に大きな導体とつながった状態になります。箔に溜まっていた自由電子にとって、より遠くへ逃げるための「避難経路」ができたことになります。
この設問における重要なポイント

  • (e) 箔に溜まっていた自由電子は、指を通じて人体(地球)へと逃げていく。これにより箔の負電荷がなくなり、箔同士の斥力がなくなるため、箔は「閉じる」。
  • (f) 移動するのは負の電荷を持つ電子なので、箔検電器から人体へ逃げるのは「負」の電気である。

具体的な解説と立式
(e) 負の帯電棒を近づけたまま金属円板に指で触れると、箔検電器と人体が電気的につながります。箔に集まっていた自由電子は、帯電棒の負電荷からさらに遠くへ逃げようとし、指(人体)を通って地球へと移動していきます。その結果、箔は過剰な電子を失い、電気的に中性に戻ります。2枚の箔の間に斥力がはたらかなくなるため、箔は重力で垂れ下がり、「閉じる」ことになります。

(f) このとき、箔検電器から人体(地球)へ移動したのは、負の電荷を持つ自由電子です。

使用した物理公式

  • 接地の概念
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  1. (1)の状態で、箔にはマイナスの電子がたくさん集まっていました。
  2. ここに指で触れると、電子たちにとって「人体を通って地球へ」という、もっと広大な避難場所への道が開けます。
  3. 電子たちは喜んで指を伝って逃げていくので、箔には余分な電子がいなくなります。
  4. その結果、箔同士の反発力がなくなり、箔は「スッ」と閉じます。
  5. このとき逃げていったのは、もちろんマイナスの電気を持つ電子です。
結論と吟味

接地により箔の電子が人体へ逃げ、箔が閉じるという現象は、静電誘導と接地の組み合わせで起こる典型的な現象です。

解答 (2) (e) ④ 閉じる, (f) ② 負

問(3)

思考の道筋とポイント
(2)の状態から、「まず指を離し、次に棒を遠ざける」という操作を行います。この操作の順序が重要です。指を離した瞬間に、箔検電器は電気的に孤立し、その時点での電荷が閉じ込められます。
この設問における重要なポイント

  • (g) 指を離した時点では、負の棒がまだ近くにあるため、金属円板の正電荷は棒の引力によって円板部分に引きつけられています。このとき箔検電器全体としては電子不足(正に帯電)の状態です。次に棒を遠ざけると、円板に集まっていた正電荷が箔検電器全体(円板と箔)に広がります。その結果、2枚の箔はどちらも正に帯電し、斥力によって再び「開く」。

具体的な解説と立式
(g) (2)の指を触れている状態では、金属円板は正に帯電し、箔は中性でした。この状態で指を離すと、箔検電器は人体から電気的に切り離されます。このとき、箔検電器全体としては、電子が逃げていった分だけ電子不足、すなわち正に帯電した状態になっています。

次に、負に帯電した棒を遠ざけると、金属円板に引きつけられていた正電荷を縛り付けるものがなくなります。この正電荷(電子の不足分)は、導体である箔検電器全体に広がろうとし、金属円板と金属箔の両方に分布します。

その結果、2枚の箔はどちらも正に帯電することになり、同種電荷の斥力によって互いに反発しあい、再び「開く」ことになります。

使用した物理公式

  • 静電誘導による帯電のプロセス
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  1. (2)の最後、指を離した瞬間を考えます。このとき、箔検電器全体としては、電子が逃げてしまったので「プラス」に帯電しています。ただし、マイナスの棒がまだ近くにいるので、プラスの電気は棒に引かれて全部上の円板に集まっています。
  2. 次に、棒を遠ざけると、円板に集まっていたプラスの電気を縛り付けるものがなくなります。プラスの電気同士も反発するので、「みんな散らばろう!」と箔検電器全体(円板と箔)に広がります。
  3. その結果、下の箔もプラスの電気を帯びることになり、プラス同士で反発しあって、箔は再び「パッ」と開きます。
結論と吟味

一連の操作により、もともと中性だった箔検電器を正に帯電させることができました。これは静電誘導を利用した物体の帯電方法として基本的なものです。

解答 (3) (g) ① 開く

問:この後、再び負に帯電した棒を上部の金属円板に近づけると、箔はどうなるか。

思考の道筋とポイント
(3)の操作後、箔検電器は全体として正に帯電しており、箔は開いています。この状態の箔検電器に、再び負に帯電した棒を近づけたときの変化を考えます。静電誘導が再び起こりますが、今回は初期状態が中性ではなく、正に帯電している点が異なります。
この設問における重要なポイント

  • 箔検電器は全体として正に帯電している(=電子が不足している)。
  • 負の棒を近づけると、残っているわずかな自由電子が、棒からの斥力で下に追いやられる。
  • 同時に、箔検電器全体の正電荷(電子の不足分)は、棒の引力によって上に引き寄せられる。
  • この2つの効果により、箔の正電荷は減少し、箔の開きは小さくなる。

具体的な解説と立式
(3)の操作後、箔検電器は全体が正に帯電しています。これは、金属円板も金属箔も、どちらも電子が不足している状態を意味します。このため、箔は開いています。

ここに再び負に帯電した棒を近づけると、以下の2つの現象が同時に起こります。

  1. 自由電子の移動: 箔検電器内に残っている数少ない自由電子が、棒の負電荷からの斥力によって、金属円板から金属箔の方へ移動します。これにより、箔の電子不足が少し解消されます(正の度合いが弱まる)。
  2. 正電荷の移動: 箔検電器全体に分布している正電荷(正確には、電子が抜けた穴である正孔のようなもの)は、棒の負電荷からの引力によって、金属箔から金属円板の方へ引き寄せられます。これも、箔の電子不足を解消する(正の度合いを弱める)効果があります。

これらの結果、箔の正電荷は減少し、箔同士の斥力が弱まるため、箔は「閉じていく」ことになります。

(もし、棒の負電荷が非常に強ければ、箔の正電荷をすべて中和し、さらに電子を送り込んで箔を負に帯電させ、再び開かせることも可能ですが、一般的には「閉じていく」と考えます。)

使用した物理公式

  • 静電誘導の原理
計算過程

この設問は定性的な理解を問うものであり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  1. 今の箔検電器は、全体がプラスの電気を帯びていて、その反発力で箔が開いています。
  2. ここに、再びマイナスの棒を近づけます。
  3. すると、箔にあったプラスの電気は、棒のマイナスに引かれて、どんどん上の方(金属円板)へ吸い寄せられていきます。
  4. その結果、下の箔のプラス電気が減っていくので、箔同士の反発力が弱まり、箔は「しだいに閉じて」いきます。
結論と吟味

正に帯電して開いている箔検電器に負の帯電体を近づけると、箔は閉じていきます。これは、静電誘導によって箔の電荷が中和される方向に電荷が移動するためであり、物理的に妥当な結論です。

解答 閉じていく

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 静電誘導のメカニズム:
    • 核心: この問題は、「導体内の自由電子が、外部の電荷からの静電気力によって移動し、電荷の偏りを生み出す」という静電誘導のプロセスを、段階的に理解しているかを問うています。
    • 理解のポイント:
      • 主役は自由電子: 箔検電器の振る舞いは、すべて負の電荷を持つ「自由電子」の動きで説明されます。「正の電荷が動く」のではなく、「電子が去った跡が正になる」と理解することが極めて重要です。
      • 力の原因: 自由電子を動かす力の源は、近づいてきた帯電体との間に働くクーロン力(引力または斥力)です。
  • 接地(アース)の役割:
    • 核心: 「接地」とは、導体を地球という事実上無限の電子の供給源(または受け皿)に接続することである、という概念を理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 電子の逃げ道: 負の帯電体を近づけた場合、反発した電子は箔検電器内にとどまらず、人体(地球)というより広大な場所へ逃げていくことができます。
      • 電子の供給源: もし正の帯電体を近づけた場合、引き寄せられた電子は箔検電器内だけでなく、地球から無限に供給されます。
  • 操作の順序の決定的な重要性:
    • 核心: 静電誘導を利用して導体を帯電させるには、操作の順序が決定的な意味を持つことを理解する必要があります。
    • 理解のポイント:
      • 電荷の確定: 「帯電体を近づけたまま、接地を断つ(指を離す)」という操作が、箔検電器全体の電荷を確定させる(この問題では電子不足=正帯電に確定させる)ための鍵となります。
      • 順序を逆にすると: もし先に帯電体を遠ざけてから指を離すと、箔検電器内の電荷の偏りは解消され、電子は人体から戻ってきてしまい、結果として帯電しません。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 正の帯電体を近づける問題: すべての電子の動きが逆になります。正の棒を近づけると、電子は円板に引き寄せられ、箔が正に帯電して開きます。接地すると、地球から電子がやってきて箔は閉じます。指を離し棒を遠ざけると、箔検電器は負に帯電して開きます。
    • 帯電の有無と種類の判別: 帯電しているか不明な物体を、帯電済みの箔検電器に近づける問題。例えば、正に帯電して開いている箔検電器に未知の物体を近づけ、箔が「さらに開けば」物体は正、「閉じれば」物体は負であると判別できます。
    • 導体球と接地: 箔検電器の代わりに、金属球を接地しながら帯電させる問題も、電子の動きの原理は全く同じです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 帯電体の符号を確認: まず、近づける帯電体が正か負かを確認します。これが電子を「引き寄せる」か「反発させる」かを決定します。
    2. 自由電子の動きをステップごとに追跡: 「近づける」→「触れる」→「離す」→「遠ざける」という各操作段階で、自由電子がどこからどこへ移動するのかを一つずつ考え、図に書き込んでいきます。
    3. 箔の状態を判断: 各段階で、「2枚の箔が同種の電荷を帯びているか?」を考えます。同種(+と+、または-と-)であれば斥力で「開く」、そうでなければ(中性、または+と-)「閉じる」と判断します。
    4. 全体の電荷を意識する: 特に接地を断つ(指を離す)瞬間に、箔検電器「全体」として電子が過剰なのか不足しているのかを確定させることが、最終的な帯電状態を正しく予測する鍵です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 正の電荷が移動するという誤解:
    • 誤解: (1b)で金属円板が正になるのを、「正の電荷が集まってきた」と考えてしまう。
    • 対策: 金属内で動けるのは自由電子だけ、という大原則を徹底しましょう。正に帯電するのは、あくまで「負の電荷を持つ電子が去った結果、もともとそこにあった動けない原子核(正)が表面化した」状態です。
  • 接地したときの電子の動きの誤解:
    • 誤解: (2f)で指を触れると、棒の負電荷が人体に逃げると勘違いする。
    • 対策: 電気が移動するのは、あくまで導線でつながった部分だけです。棒と箔検電器は離れているので、棒の電荷は移動できません。移動するのは、箔検電器「内部」の自由電子です。
  • 最後の問いの挙動の誤解:
    • 誤解: (3)で正に帯電して開いた箔に、再び負の棒を近づけると、引力が働くから箔はさらに開くと考えてしまう。
    • 対策: 箔が開くのは「箔同士の斥力」が原因です。負の棒を近づけると、箔検電器全体の正電荷(電子の不足分)は、棒の引力によって上部の円板に引き寄せられます。その結果、下部の箔の正電荷が減るため、斥力が弱まり、箔は「閉じていく」のです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • この問題は公式ではなく、物理モデルの定性的・概念的な理解を問うています。
    • 自由電子モデル: 導体の振る舞いを説明する根拠は、金属内の電子が特定の原子に束縛されず、金属全体を自由に動き回るガスのようなものと見なす「自由電子モデル」に基づいています。外部から電場がかかると、この電子ガス全体が移動することで静電誘導が起こります。
    • クーロン力: 自由電子を動かす力の根源は、近づいてきた帯電体と自由電子との間に働くクーロン力(引力または斥力)です。このミクロな力が、マクロな現象である箔の開閉を引き起こします。
    • 思考のプロセス: この問題で求められるのは、公式を適用する能力ではなく、一連の物理現象を「自由電子の動き」というミクロな視点で再構築し、その結果を論理的に説明する能力です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題には定量的な計算は含まれませんが、論理的なミスをなくすためのテクニックは存在します。
  • 段階的な図解: 思考の各ステップを図に描くことが非常に有効です。
    1. 初期状態(中性、箔は閉じている)
    2. 負の棒を近づけた状態(円板に+、箔に-が偏り、箔が開く)
    3. 指で触れた状態(箔の-が地球に逃げ、箔が閉じる)
    4. 指を離した状態(全体が+に帯電確定、ただし+は円板に集中)
    5. 棒を遠ざけた状態(+が全体に広がり、箔が開く)

    このように段階を追って図を描くことで、思考のプロセスが明確になり、間違いを防ぐことができます。

  • 電子を主人公にする: 「もし自分が箔検電器内の自由電子だったら、この場面でどう動くか?」と考えることで、現象を直感的に理解しやすくなります。負の電荷が近づけば反発して逃げるし、接地されればもっと遠くに逃げる、といった具合です。

362 2つの点電荷による電場

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複数の点電荷が作る電場と重ね合わせの原理」です。一直線上に配置された2つの点電荷が、特定の点に作る電場を計算する問題です。電場がベクトル量であることを理解し、正しく合成(重ね合わせ)できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 点電荷が作る電場の公式: 点電荷\(Q\)から距離\(r\)離れた点の電場の強さは \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) で与えられます。
  2. 電場の向き:
    • 正電荷が作る電場は、電荷から遠ざかる向き。
    • 負電荷が作る電場は、電荷に近づく向き。
  3. 電場の重ね合わせの原理: ある点における合成電場は、それぞれの電荷が単独でその点に作る電場の「ベクトル和」で求められます。一直線上では、向きを正負の符号で区別し、スカラーの和として計算できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1), (2)では、点電荷が作る電場の公式を使い、それぞれの電荷が点Mに作る電場の大きさと向きを個別に求めます。
  2. (3)では、(1)と(2)で求めた2つの電場ベクトルを、重ね合わせの原理に従って合成します。
  3. (4)では、電場が0になる点を仮定し、その点における2つの電荷からの電場が「大きさが等しく、向きが逆」になるという条件から、その位置を特定します。

問(1)

思考の道筋とポイント
点Aにある正電荷\(+4q\)が、点Mに作る電場\(\vec{E}_A\)を求めます。点電荷が作る電場の公式 \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) に、電荷の大きさと距離を代入します。向きは、正電荷なので遠ざかる向きです。
この設問における重要なポイント

  • 電荷は \(Q = +4q\)。
  • 点MはABの中点なので、Aからの距離は \(r\)。
  • 電荷が正なので、電場の向きはAから遠ざかる向き、すなわちA→Bの向き。

具体的な解説と立式
点電荷のまわりの電場の式 \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) を用います。
点Aの電荷は \(Q = +4q\)、点Mまでの距離は \(r\) です。これらを代入して、電場の強さ\(E_A\)を求めます。
$$ E_A = k \frac{|+4q|}{r^2} $$
点Aの電荷は正なので、点Mに作る電場の向きは、Aから遠ざかる向き、すなわちA→Bの向きです。

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電場の式: \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
E_A &= k \frac{4q}{r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{4kq}{r^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

A地点にある「プラスの電気」が、真ん中のM地点にどれくらいの強さで、どちら向きの電場を作るかを計算します。公式に電気の量(\(4q\))と距離(\(r\))を当てはめるだけです。A地点の電気がプラスなので、電場はAから離れる向き、つまり右(A→B)向きになります。

結論と吟味

点Aの電荷による点Mの電場は、強さが \(\displaystyle\frac{4kq}{r^2}\) で、向きはA→Bの向きです。

解答 (1) A→Bの向きに \(\displaystyle\frac{4kq}{r^2}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
点Bにある負電荷\(-q\)が、点Mに作る電場\(\vec{E}_B\)を求めます。(1)と同様に、点電荷が作る電場の公式を適用します。向きは、負電荷なので近づく向きです。
この設問における重要なポイント

  • 電荷は \(Q = -q\)。
  • 点MはABの中点なので、Bからの距離は \(r\)。
  • 電荷が負なので、電場の向きはBに近づく向き、すなわちA→Bの向き。

具体的な解説と立式
点電荷のまわりの電場の式 \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) を用います。
点Bの電荷は \(Q = -q\)、点Mまでの距離は \(r\) です。これらを代入して、電場の強さ\(E_B\)を求めます。
$$ E_B = k \frac{|-q|}{r^2} $$
点Bの電荷は負なので、点Mに作る電場の向きは、Bに引き寄せられる向き、すなわちA→Bの向きです。

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電場の式: \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
E_B &= k \frac{q}{r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{kq}{r^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

B地点にある「マイナスの電気」が、真ん中のM地点に作る電場を計算します。(1)と同じ公式に、電気の量(\(q\))と距離(\(r\))を当てはめます。B地点の電気がマイナスなので、電場はBに引き寄せられる向き、つまりこれも右(A→B)向きになります。

結論と吟味

点Bの電荷による点Mの電場は、強さが \(\displaystyle\frac{kq}{r^2}\) で、向きはA→Bの向きです。

解答 (2) A→Bの向きに \(\displaystyle\frac{kq}{r^2}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
点Mにおける合成電場\(\vec{E}\)を求めます。重ね合わせの原理により、\(\vec{E} = \vec{E}_A + \vec{E}_B\) となります。(1)と(2)の結果を見ると、\(\vec{E}_A\)と\(\vec{E}_B\)はどちらも同じ向き(A→Bの向き)です。したがって、合成電場の強さは、2つの電場の強さの単純な和になります。
この設問における重要なポイント

  • 電場の重ね合わせの原理はベクトル和である。
  • 2つのベクトルが同じ向きなので、大きさの和を計算すればよい。

具体的な解説と立式
点Mにおける合成電場\(\vec{E}\)は、\(\vec{E}_A\)と\(\vec{E}_B\)のベクトル和です。
$$ \vec{E} = \vec{E}_A + \vec{E}_B $$
(1), (2)より、\(\vec{E}_A\)と\(\vec{E}_B\)はともにA→Bの向きを向いているため、合成電場の強さ\(E\)は、それぞれの強さの和となります。
$$ E = E_A + E_B $$

使用した物理公式

  • 電場の重ね合わせの原理
計算過程

$$
\begin{aligned}
E &= \frac{4kq}{r^2} + \frac{kq}{r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{5kq}{r^2}
\end{aligned}
$$
向きは、\(\vec{E}_A\), \(\vec{E}_B\)と同じくA→Bの向きです。

この設問の平易な説明

M地点での最終的な電場を求めます。(1)で計算したAからの電場と、(2)で計算したBからの電場を合体させます。今回は、たまたま両方の電場が同じ右向きだったので、単純に強さを足し算するだけでOKです。

結論と吟味

点Mにおける合成電場は、強さが \(\displaystyle\frac{5kq}{r^2}\) で、向きはA→Bの向きです。

解答 (3) A→Bの向きに \(\displaystyle\frac{5kq}{r^2}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
合成電場が0になる点を探す問題です。電場はベクトルなので、合成電場が0になるためには、2つの電荷が作る電場の「大きさが等しく、向きが逆」になる必要があります。
まず、どの領域にその点が存在しうるかを考えます。

  • AとBの間: \(\vec{E}_A\)も\(\vec{E}_B\)もA→Bの向きなので、打ち消しあうことはなく、電場は0になりません。
  • Aの左側: Aからの距離を\(x\)とすると、Bからの距離は\(2r+x\)。\(\vec{E}_A\)はB→A向き、\(\vec{E}_B\)はA→B向きで逆向きです。しかし、電荷の大きい\(+4q\)の方が常に近くにあるため、\(|\vec{E}_A| > |\vec{E}_B|\)となり、電場は0になりません。
  • Bの右側: この領域でのみ、電場が0になる可能性があります。電荷の大きい\(+4q\)から遠く、電荷の小さい\(-q\)に近いので、2つの電場の大きさが等しくなる点が存在し得ます。

この設問における重要なポイント

  • 合成電場が0になる条件は「大きさが等しく、向きが逆」。
  • どの領域に解が存在するかを、電荷の大小と距離の関係から定性的に判断する。
  • 方程式を立てて、数学的に解を求める。

具体的な解説と立式
上記の考察から、電場が0になる点は、線分AB上でBの右側にあるとわかります。その点をPとし、Bからの距離を\(x\)とします。
点Pにおける、A(\(+4q\))からの電場の強さ\(E’_A\)は、
$$ E’_A = k \frac{4q}{(2r+x)^2} \quad (\text{向きはA→B}) $$
点Pにおける、B(\(-q\))からの電場の強さ\(E’_B\)は、
$$ E’_B = k \frac{q}{x^2} \quad (\text{向きはB→A}) $$
点Pで電場が0になるためには、これらの大きさが等しくなければなりません。
$$ E’_A = E’_B $$
よって、
$$ k \frac{4q}{(2r+x)^2} = k \frac{q}{x^2} $$

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電場の式: \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\)
  • 電場の重ね合わせの原理
計算過程

上記で立式した方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{4}{(2r+x)^2} &= \frac{1}{x^2}
\end{aligned}
$$
両辺の正の平方根をとると、
$$
\begin{aligned}
\frac{2}{2r+x} &= \frac{1}{x}
\end{aligned}
$$
分母を払って整理します。
$$
\begin{aligned}
2x &= 2r+x \\[2.0ex]
x &= 2r
\end{aligned}
$$
したがって、電場が0になる点は、BからAと反対側に\(2r\)の距離にある点です。

この設問の平易な説明

Aからの電場とBからの電場が、ちょうど綱引きのように引き分けになる場所を探す問題です。
まず、AとBの間では、両方の電場が同じ右向きなので、引き分けにはなりません。
次に、Aの左側では、Aの方が力が強い(電気が4倍)のに距離も近いので、必ずAが勝ちます。
引き分けになる可能性があるのは、Bの右側だけです。力が強いAから遠く離れ、力が弱いBに近づくことで、ちょうど力がつりあう点が見つかるはずです。
この「力がつりあう」という条件を数式にして解くと、その場所がBから\(2r\)だけ離れた点であることがわかります。

結論と吟味

電場が0になる点は、線分AB上でBからAと反対側に\(2r\)の点です。電荷の大きい\(+4q\)から遠く、電荷の小さい\(-q\)に近いという、定性的な考察と一致する妥当な結果です。

解答 (4) 直線AB上でBからAと反対側に\(2r\)の点

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電場の重ね合わせの原理:
    • 核心: この問題の根幹は、「複数の電荷が存在するとき、ある点での電場は、各電荷が単独でその点に作る電場を、ベクトルとして足し合わせたものになる」という「重ね合わせの原理」を理解し、適用することです。
    • 理解のポイント:
      • 電場はベクトル: 電場には大きさと向きがあります。したがって、足し算は単純なスカラーの和ではなく、ベクトルの和で行う必要があります。
      • 一直線上のベクトル和: この問題のように、すべてのベクトルが一直線上にある場合、向きを正負の符号で区別することで、計算を単純な代数和(足し算・引き算)に帰着させることができます。
  • 点電荷が作る電場の性質:
    • 核心: 点電荷が作る電場の公式 \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) と、電荷の符号によって向きが決まるルールを正確に適用できることが基本となります。
    • 理解のポイント:
      • 向きの決定: 「正電荷からは湧き出し(遠ざかる向き)、負電荷へは吸い込み(近づく向き)」というイメージを確立することが重要です。これにより、各電場ベクトルの向きを機械的に決定できます。
      • 距離の2乗への反比例: 電場は距離の2乗で急激に弱くなるという性質が、(4)で電場が0になる点を探す上で重要な役割を果たします。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 同符号の電荷の場合: 例えば\(+4q\)と\(+q\)のように同符号の電荷が置かれた場合、電場が0になる点は、2つの電荷の「間」に存在します。この場合も、力のつりあいの式を立てて解くことができます。
    • 座標軸が設定されている問題: Aを原点、Bを\(x=2r\)のように座標が与えられている問題。この場合は、電場の向きを「x軸正の向き」「x軸負の向き」として扱い、ベクトルの和を成分計算として行うと分かりやすくなります。
    • 電位が0になる点を求める問題: 同じ電荷配置で「電位が0になる点」を問う問題。電位はスカラーなので、向きを考える必要がなく、各電荷が作る電位 \(V = k \displaystyle\frac{Q}{r}\) の単純な和が0になる点を求めます。電場と電位の扱いの違いを明確に区別することが重要です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 各電荷の符号と大きさを確認: まず、各電荷が正か負か、そしてその大きさの比率(この場合は4:1)を把握します。
    2. 各点での電場の向きを図示: (3)や(4)のように合成電場を考える場合、まず対象となる点に、各電荷がどちら向きの電場を作るかを矢印で図示します。これにより、足し算になるのか引き算になるのかが一目瞭然になります。
    3. (4)での領域の絞り込み: 電場が0になる点を求めるときは、いきなり式を立てるのではなく、まず「Aの左側」「AとBの間」「Bの右側」の3つの領域に分け、各領域で電場の向きがどうなるかを考えます。向きが逆になる領域だけが候補となり、さらに電荷の大小と距離の関係から、解が存在しうる領域を一つに絞り込むことができます。この定性的な考察が、計算ミスを防ぎ、答えの妥当性を確認する上で非常に有効です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ベクトル和とスカラー和の混同:
    • 誤解: (3)で、2つの電場の向きが同じであることに気づかず、大きさの差をとってしまう。あるいは、(4)で向きが逆であるにもかかわらず、大きさを足してしまう。
    • 対策: 「電場はベクトル量である」ということを常に意識し、「重ね合わせ=ベクトル和」と肝に銘じましょう。必ずベクトルを図示し、向きを考慮した上で、足し算か引き算かを判断する癖をつけます。
  • 距離の計算ミス:
    • 誤解: (4)で点Pの位置を設定する際に、Aからの距離を \(2r-x\) としたり、分母を2乗し忘れたりする。
    • 対策: 距離を文字で置くときは、どこを基準にした変数 \(x\) なのかを明確にしましょう。この問題では「Bからの距離を\(x\)」と設定したので、Aからの距離は \(2r+x\) となります。図を描いて距離関係を視覚的に確認することが有効です。
  • (4)の二次方程式の解法ミス:
    • 誤解: \(\frac{4}{(2r+x)^2} = \frac{1}{x^2}\) という式を、平方根をとらずに展開してしまい、複雑な二次方程式を解こうとして計算ミスをする。
    • 対策: この形の式は、まず両辺の平方根をとるのが定石です。\(\frac{2}{2r+x} = \pm \frac{1}{x}\) となりますが、物理的な状況(PがBの右側にある)から \(x>0\) かつ \(2r+x>0\) なので、正の平方根だけを考えればよいことがわかります。これにより、計算が一次方程式になり、非常に簡単になります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 点電荷が作る電場の公式:
    • 選定理由: 問題で扱われているのが「点電荷」であり、求めたいのが「電場」であるため、これらを直接結びつける定義式である \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) を選択します。
    • 適用根拠: この公式は、クーロンの法則 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) を、電場の定義 \(E=F/q\) (ある点での電場とは、その点に置いた単位電荷が受ける力である)に基づいて書き換えたものです。クーロンの法則が成り立つ物理的状況であれば、この公式も同様に適用できます。
  • 電場の重ね合わせの原理:
    • 選定理由: (3)と(4)では、複数の電荷源(AとB)が存在する空間のある一点での電場を求める、という状況設定そのものが、この原理の適用を要求しています。
    • 適用根拠: 電磁気学において、電場(や磁場)は重ね合わせの原理が成り立つ線形な系です。これは、一つの電荷が作る電場は、他の電荷の存在によって影響を受けない(歪められない)という実験事実に基づいています。したがって、各電荷が作る電場を独立に計算し、それらを後からベクトル的に足し合わせるという操作が物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 共通因数を活用する: (1)から(3)の計算では、\(\frac{kq}{r^2}\) という項が共通して現れます。これを一つの塊(例えば \(E_0 = \frac{kq}{r^2}\))として扱うと、計算の見通しが良くなります。
    • \(E_A = 4E_0\)
    • \(E_B = E_0\)
    • \(E = E_A + E_B = 4E_0 + E_0 = 5E_0 = \frac{5kq}{r^2}\)

    このように、文字式のまま計算を進めることで、単純な係数計算に集中でき、ミスを減らせます。

  • 比を利用する: (4)で \(E’_A = E’_B\) の式を立てた後、\(k\) や \(q\) をすぐに約分して消去することで、\(\frac{4}{(2r+x)^2} = \frac{1}{x^2}\) という、よりシンプルな比の関係式に帰着させることができます。不要な文字を早い段階で消去することが、計算を簡潔にするコツです。
  • 解の吟味: (4)で \(x=2r\) という解が得られたら、それが物理的に妥当かを確認します。この点は、電荷の大きい\(+4q\)からの距離が \(4r\)、電荷の小さい\(-q\)からの距離が \(2r\) となります。電場の強さは電荷の大きさに比例し、距離の2乗に反比例するので、強さの比は \(\frac{4q}{(4r)^2} : \frac{q}{(2r)^2} = \frac{4}{16} : \frac{1}{4} = \frac{1}{4} : \frac{1}{4}\) となり、確かにつりあっていることがわかります。このような検算(吟味)の習慣が、答えの確信度を高めます。

363 電場の重ねあわせ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「複数の点電荷が作る電場のベクトル合成と電気力線」です。2次元平面上に配置された点電荷が作る電場を、ベクトルとして正しく作図・合成できるか、また、その電場の様子を電気力線で視覚的に表現できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 点電荷が作る電場の公式: 点電荷\(Q\)から距離\(r\)離れた点の電場の強さは \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) で与えられます。
  2. 電場の向き:
    • 正電荷が作る電場は、電荷から遠ざかる向き(放射状に湧き出す)。
    • 負電荷が作る電場は、電荷に近づく向き(放射状に吸い込む)。
  3. 電場の重ね合わせの原理: ある点における合成電場は、それぞれの電荷が単独でその点に作る電場の「ベクトル和」で求められます。ベクトルの合成は、平行四辺形の法則に従います。
  4. 電気力線の性質:
    • 電気力線は、正電荷から出て負電荷に入る。
    • 電気力線の接線の向きは、その点での電場の向きと一致する。
    • 電気力線の密度は、その場所の電場の強さに比例する(密なところほど電場が強い)。
    • 電気力線は、途中で途切れたり、枝分かれしたり、交差したりしない。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず点Aの電荷が点Cに作る電場\(\vec{E}_A\)と、点Bの電荷が点Cに作る電場\(\vec{E}_B\)の向きをそれぞれ決定し、矢印で図示します。次に、この2つのベクトルを合成(平行四辺形の法則)して、合成電場\(\vec{E}\)の向きを決定します。最後に、図形の性質を利用して合成電場の大きさを計算します。
  2. (2)では、電気力線の基本的なルールと、電荷の配置(電気双極子)が持つ対称性に基づいて、全体の電気力線の概略図を描きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
点Cにおける合成電場を求める問題です。まず、点Aの電荷(\(+q\))と点Bの電荷(\(-q\))が、それぞれ単独で点Cにどのような電場を作るかを考えます。次に、それら2つの電場ベクトルを、重ね合わせの原理に従ってベクトル的に合成します。
この設問における重要なポイント

  • 各電場の向き:
    • \(\vec{E}_A\):点Aの電荷は正なので、AからCへ向かう向き(Aから遠ざかる向き)。
    • \(\vec{E}_B\):点Bの電荷は負なので、CからBへ向かう向き(Bに近づく向き)。
  • 各電場の大きさ: A, Bの電荷の絶対値は等しく、Cまでの距離も等しい(正三角形なのでAC=BC)ため、\(|\vec{E}_A| = |\vec{E}_B|\)となります。
  • ベクトル合成: 作図すると、\(\vec{E}_A\)と\(\vec{E}_B\)は、大きさが等しく、なす角が\(120^\circ\)の2つのベクトルとなります。これらを合成すると、ひし形(平行四辺形)の対角線が合成ベクトル\(\vec{E}\)となり、その向きはABと平行になります。

具体的な解説と立式
点Aの電荷(\(q_A = +2.0 \times 10^{-9} \, \text{C}\))が点Cに作る電場を\(\vec{E}_A\)、点Bの電荷(\(q_B = -2.0 \times 10^{-9} \, \text{C}\))が点Cに作る電場を\(\vec{E}_B\)とします。

  • 向き: \(\vec{E}_A\)はA→Cの向き、\(\vec{E}_B\)はC→Bの向きです。
  • 大きさ: A, Bの電荷の絶対値は等しく、距離もAC = BC = \(2.0 \, \text{m}\)で等しいので、それぞれの電場の大きさ\(E_A, E_B\)は等しくなります。
    $$ E_A = E_B = k \frac{|q_A|}{(\text{AC})^2} $$

合成電場\(\vec{E}\)は、\(\vec{E} = \vec{E}_A + \vec{E}_B\)で求められます。
\(\triangle ABC\)は正三角形なので、\(\angle ACB = 60^\circ\)です。\(\vec{E}_A\)と\(\vec{E}_B\)のなす角は\(120^\circ\)となります。
作図すると、\(\vec{E}_A\), \(\vec{E}_B\), \(\vec{E}\)が作る三角形は、辺の長さが\(E_A, E_B, E\)で、間の角が\(60^\circ\)の二等辺三角形、すなわち正三角形になることがわかります。
したがって、合成電場の大きさ\(E\)は、\(E_A\)(または\(E_B\))の大きさに等しくなります。
$$ E = E_A = E_B $$

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電場の式: \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\)
  • 電場の重ね合わせの原理
計算過程

$$
\begin{aligned}
E &= k \frac{|q_A|}{(\text{AC})^2} \\[2.0ex]
&= (9.0 \times 10^9) \times \frac{2.0 \times 10^{-9}}{(2.0)^2} \\[2.0ex]
&= (9.0 \times 10^9) \times \frac{2.0 \times 10^{-9}}{4.0} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times \frac{2.0}{4.0} \\[2.0ex]
&= 4.5 \, [\text{N/C}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

C地点での電場を調べます。

  1. まず、A地点のプラスの電気は、C地点に「AからCへ向かう向き」の電場を作ります。
  2. 次に、B地点のマイナスの電気は、C地点に「CからBへ向かう向き」の電場を作ります。
  3. この2つの電場(矢印)を合成します。図形の形がきれいな正三角形なので、2つの矢印の長さは同じで、なす角度は\(120^\circ\)です。これを合成すると、ちょうど真横(ABと平行)を向いた、同じ長さの矢印になります。
  4. したがって、最終的な電場の強さは、A(またはB)が単独で作る電場の強さを計算するだけで求めることができます。
結論と吟味

点Cでの電場ベクトルの大きさは \(4.5 \, \text{N/C}\) です。作図により、向きは辺ABと平行でA→Bの向きであることもわかります。

解答 (1) 大きさ: \(4.5 \, \text{N/C}\) (作図は解答図を参照)

問(2)

思考の道筋とポイント
電気力線の概略図を描く問題です。電気力線の基本的な性質と、この電荷配置(電気双極子)が持つ対称性を考慮して作図します。
この設問における重要なポイント

  • 始点と終点: 電気力線は正電荷(\(A\))から出て、負電荷(\(B\))に入る。
  • 対称性:
    • 電荷の絶対値が等しいので、電気力線は線分ABの垂直二等分線Lに関して線対称になる。
    • また、直線ABに関しても(上下で)線対称になる。
  • 密度: 電荷に近いところでは電気力線は密になり、遠くなるにつれて疎になる。
  • 直交性: 電気力線は、垂直二等分線Lと直交する。
  • 禁止事項: 電気力線同士が交差したり、枝分かれしたりすることはない。

具体的な解説と立式
この設問は作図問題であり、数式による立式はありません。以下のルールに従って作図します。

  1. 正電荷Aから、放射状に電気力線を描き始めます。
  2. 負電荷Bへ、放射状に電気力線が入るように描きます。
  3. Aから出た電気力線が、滑らかな曲線を描いてBに入るように結びます。
  4. 電荷の絶対値が等しいので、Aから出る本数とBに入る本数は同じにします。
  5. 全体の形が、直線ABと、その垂直二等分線Lの両方に対して対称になるように描きます。
  6. AからBへ向かう直線上の線や、Aから出て大きく迂回してBに入る線などを描き加えます。
  7. 最後に、すべての線にA→Bの向きを示す矢印を入れます。

使用した物理公式

  • 電気力線の性質
計算過程

この設問は作図問題であり、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

電気力線とは、電場の様子を視覚的に表した「流れの地図」のようなものです。以下のルールを守って地図を描きます。

  1. 流れは必ずプラス(A)から出発し、マイナス(B)でゴールする。
  2. 流れの線同士は、絶対に交わったり枝分かれしたりしない。
  3. 出発点とゴール地点の近くでは、流れは混み合っている(密度が高い)。
  4. 全体の形は、AとBを結ぶ線に対しても、その真ん中の垂直な線に対しても、上下左右で対称なきれいな形になる。

このルールに従うと、解答図のようなラグビーボールに似た形の模様が描けます。

結論と吟味

描かれた電気力線は、電気双極子が作る電場の特徴をよく表しています。正電荷から湧き出し、負電荷に吸い込まれる様子や、電荷の近くで電場が強く(線が密に)、遠くで弱い(線が疎に)様子が表現されています。

解答 (2) (解答図を参照)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電場の重ね合わせの原理(ベクトル和):
    • 核心: この問題の根幹は、「複数の電荷が存在するとき、ある点での電場は、各電荷が単独でその点に作る電場を、ベクトルとして足し合わせたものになる」という「重ね合わせの原理」を、2次元平面上で正しく適用することです。
    • 理解のポイント:
      • ベクトル作図の重要性: 電場はベクトル量であるため、その合成は必ず作図によって考える必要があります。平行四辺形の法則を用いて、大きさと向きの両方を考慮した合成を行わなければなりません。
      • 幾何学的性質の利用: この問題のように、電荷の配置が正三角形などの対称的な図形をなす場合、ベクトルの大きさや角度の関係から、合成ベクトルの大きさや向きを効率的に求めることができます。
  • 電気力線の概念と性質:
    • 核心: 電場という目に見えないものを視覚的に表現するためのツールである「電気力線」の定義と基本的な性質を理解していることが問われます。
    • 理解のポイント:
      • 電場の地図: 電気力線は、空間の各点での電場の向き(接線方向)と強さ(密度)を表す「地図」です。
      • 基本的なルール: 「正電荷から出て負電荷に入る」「交差しない」「枝分かれしない」といった、電気力線を描く上での絶対的なルールを記憶し、適用できることが重要です。
      • 対称性: 電荷の配置に対称性があれば、描かれる電気力線のパターンにもその対称性が反映されます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 正方形の頂点に電荷を置く問題: 正方形の4つの頂点に電荷を配置し、中心点での電場を求める問題。対称性から、対角線上にある電荷が作る電場同士が打ち消し合うなど、計算を簡略化できる場合が多いです。
    • 同符号の電荷(例:+qと+q)の場合: 2つの正電荷が作る電場を考える問題。この場合、電気力線は両方の正電荷から湧き出し、互いに反発しあうようなパターンを描きます。特に、2つの電荷を結ぶ線分の中点では、電場は対称性からゼロになります。
    • 電気双極子が作る電場(軸上): 本問のような電荷配置(電気双極子)で、2つの電荷を結ぶ直線上での電場を求める問題。場所によって、2つの電場が強め合うか弱め合うかが変わります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 電荷の配置と対称性の確認: まず、電荷がどのような幾何学的配置にあるかを確認し、対称性がないかを探します。対称性があれば、計算が大幅に楽になる可能性があります。
    2. 各電場ベクトルの作図: 対象となる点に、各電荷が作る電場ベクトルを、向きと相対的な大きさを考慮して丁寧に作図します。これがすべての基本です。
    3. ベクトル合成の方法を選択: 作図したベクトルを見て、合成の方法を考えます。
      • 幾何学的な性質(例:正三角形、二等辺三角形)が利用できれば、三角比や図形の性質で解くのが速いです。
      • 角度が複雑な場合は、各ベクトルをx, y成分に分解して、成分ごとに足し合わせる方法が確実です。
    4. 電気力線を描く際のポイント:
      • まず、電荷の符号から、線がどこから出てどこへ入るかを確定させます。
      • 次に、電荷配置の対称性を探し、作図のガイドラインとします。
      • 電荷の近くは密に、遠くは疎に描くことを意識します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ベクトル合成の誤り:
    • 誤解: (1)で、2つの電場の大きさ \(E_A\) と \(E_B\) を単純に足し算や引き算してしまう。
    • 対策: 電場はベクトルであることを常に念頭に置き、必ず作図を伴うベクトル合成(平行四辺形の法則)を行う癖をつけましょう。大きさが同じでも、向きが異なれば単純な足し算にはなりません。
  • ベクトルのなす角の間違い:
    • 誤解: \(\vec{E}_A\) と \(\vec{E}_B\) のなす角を、\(\triangle ABC\) の内角である \(60^\circ\) と勘違いしてしまう。
    • 対策: ベクトルは平行移動しても変わらないので、2つのベクトルの始点を点Cにそろえて考えます。\(\vec{E}_A\) は辺ACの延長線上、\(\vec{E}_B\) は辺BC上にあるので、そのなす角は \(180^\circ – 60^\circ = 120^\circ\) となります。必ず図を描いて角度を確認しましょう。
  • 電気力線のルール違反:
    • 誤解: 電気力線を途中で交差させたり、負電荷から線が出ているように描いてしまう。
    • 対策: 「正から出て、負に入る」「交差しない」「枝分かれしない」という電気力線の3大ルールを呪文のように覚えておき、作図後に必ずチェックする習慣をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 点電荷が作る電場の公式:
    • 選定理由: 問題で扱われているのが「点電荷」であり、求めたいのが「電場」であるため、これらを直接結びつける定義式である \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) を選択します。
    • 適用根拠: この公式は、クーロンの法則に基づいて定義されており、点電荷のまわりの空間の電気的な性質を記述する最も基本的な式です。
  • 電場の重ね合わせの原理:
    • 選定理由: 電荷源が複数(AとB)存在し、ある一点(C)での電場を求めるという状況設定そのものが、この原理の適用を要求しています。
    • 適用根拠: 電場は重ね合わせの原理が成り立つ線形な系です。これは、一つの電荷が作る電場は、他の電荷の存在によって影響を受けないという実験事実に基づいています。したがって、各電荷が作る電場を独立に計算し、それらを後からベクトル的に足し合わせるという操作が物理的に正当化されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 図形の性質を最大限に活用する: この問題では、\(\triangle ABC\)が正三角形であること、そして電荷の絶対値が等しいことから、\(|\vec{E}_A| = |\vec{E}_B|\) であることがすぐにわかります。これにより、合成後の図形がひし形になり、さらに角度の関係から、合成電場の大きさが \(|\vec{E}| = |\vec{E}_A|\) となることを見抜けます。このように、物理計算の前に幾何学的な考察をすることで、計算量を大幅に削減できます。
  • 単位と指数の確認: 計算結果が出たら、単位が電場の単位 [N/C] になっているかを確認します。また、\(10^9\) と \(10^{-9}\) のように、指数の打ち消し合いや計算を慎重に行うことが、桁の大きなミスを防ぐ上で重要です。
  • 電気力線のチェックリスト: (2)で作図した後は、以下の項目をセルフチェックすると良いでしょう。
    • 正電荷から出ているか?
    • 負電荷に入っているか?
    • 線は交差していないか?
    • 電荷の近くは密になっているか?
    • 対称性(線対称など)は保たれているか?
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364 ガウスの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ガウスの法則と無限に広い平面が作る電場」です。高校物理の発展的な内容であるガウスの法則を、無限に広い帯電平面という具体的な状況に適用し、電場の強さや電位を導出するプロセスを理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ガウスの法則(電気力線を用いた表現): 任意の閉曲面を貫いて出ていく電気力線の総本数\(N\)は、その閉曲面内部にある電気量\(Q\)を用いて \(N=4\pi k Q\) と表されます。
  2. 電場の強さと電気力線の密度: 電場の強さ\(E\)は、電場に垂直な単位面積を貫く電気力線の本数に等しい、と定義されます。
  3. 一様な電場と電位の関係: 一様な電場\(E\)の中で、電場の向きに沿って距離\(d\)だけ離れた2点間の電位差は \(V=Ed\) で与えられます。
  4. 電場の向きと電位の増減: 電場は、電位の高い方から低い方へ向かう向きに定義されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア)では、ガウスの法則の公式 \(N=4\pi k Q\) をそのまま適用し、仮想的な円筒(閉曲面)の内部にある電荷\(Q\)から、円筒全体を貫く電気力線の総本数を求めます。
  2. (イ)では、(ア)で求めた総本数と、電場の強さ\(E\)の定義(単位面積あたりの本数)との関係を考えます。円筒の上面と下面(合計面積\(2S\))を電気力線が貫くことから、\(E\)を求めます。
  3. (ウ)では、(イ)で求めた一様な電場\(E\)と、距離\(d\)を用いて、公式\(V=Ed\)からAと指定された点との電位差を計算します。Aの電位を0Vとする基準から、指定された点の電位を決定します。

空欄(ア)

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