基礎CHECK
1 波の干渉
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の干渉条件の理解と適用」です。2つの波源から出る波が、ある点で強めあうか弱めあうかを、経路差を用いて判断します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は各波の変位の和になります。
- 干渉: 複数の波が重なり合って、互いに強めあったり弱めあったりする現象。
- 同位相の波源からの波が強めあう条件: 2つの波源からの経路差が、波長の整数倍であること。
- 同位相の波源からの波が弱めあう条件: 2つの波源からの経路差が、波長の半整数倍(整数+0.5倍)であること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 各点について、2つの波源A, Bからの距離を特定する。
- 2つの距離の差(経路差)を計算する。
- 経路差が、与えられた波長 \(\lambda\) の整数倍になるか、半整数倍になるかを判定する。
- 判定結果に基づいて、その点が強めあうか弱めあうかを結論付ける。
問(1)
思考の道筋とポイント
点Pが強めあう点か弱めあう点かを判断するには、2つの波源A, Bから点Pまでの距離の差(経路差)を計算し、その値が波長 \(\lambda\) の何倍になっているかを調べます。問題文から、波源A, Bは同位相で振動していることが分かっているので、干渉条件を直接適用できます。
この設問における重要なポイント
- 波源が同位相の場合、2つの波源からの経路差 \(\Delta L\) が、波長 \(\lambda\) を用いて以下のように表されるとき、干渉が起こります。
- 強めあう条件(腹): \(\Delta L = |L_1 – L_2| = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
- 弱めあう条件(節): \(\Delta L = |L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
- ここで、\(L_1\), \(L_2\) はそれぞれの波源から観測点までの距離です。
- この問題では、波長 \(\lambda = 4 \, \text{cm}\) と与えられています。
具体的な解説と立式
点Pについて、波源Aからの距離は \(AP = 30 \, \text{cm}\)、波源Bからの距離は \(BP = 22 \, \text{cm}\) です。
したがって、点Pにおける2つの波の経路差 \(\Delta L_P\) は、これらの距離の差の絶対値として計算できます。
$$ \Delta L_P = |AP – BP| $$
この \(\Delta L_P\) と波長 \(\lambda = 4 \, \text{cm}\) の関係を調べます。
使用した物理公式
- 同位相の波源による強めあいの条件: 経路差 \(|L_1 – L_2| = m\lambda\) (\(m\) は整数)
- 同位相の波源による弱めあいの条件: 経路差 \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m\) は整数)
与えられた値を代入して、経路差 \(\Delta L_P\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_P &= |AP – BP| \\[2.0ex]&= |30 – 22| \\[2.0ex]&= 8 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$
次に、この経路差が波長 \(\lambda = 4 \, \text{cm}\) の何倍かを計算します。
$$ \displaystyle\frac{\Delta L_P}{\lambda} = \displaystyle\frac{8}{4} = 2 $$
これは整数なので、\(\Delta L_P = 2\lambda\) となります。
経路差が波長の整数倍(この場合は2倍)であるため、点Pは強めあう点(腹)となります。
波源Aから点Pまでの道のりは \(30 \, \text{cm}\)、波源Bからは \(22 \, \text{cm}\) です。この道のりの差は \(30 – 22 = 8 \, \text{cm}\) です。
波の1つ分の長さ(波長)は \(4 \, \text{cm}\) なので、道のりの差 \(8 \, \text{cm}\) は、ちょうど波長2つ分(\(4 \, \text{cm} \times 2 = 8 \, \text{cm}\))です。
道のりの差が波長の「整数倍」になっているとき、2つの波はピッタリ重なり合って強めあいます。したがって、点Pは強めあう点です。
問(2)
思考の道筋とポイント
問(1)と同様に、点Qにおける経路差を計算し、それが波長 \(\lambda\) の整数倍か、あるいは半整数倍(\(m + 1/2\) 倍)になるかを調べます。これにより、点Qが強めあうか弱めあうかを判断します。
この設問における重要なポイント
- 弱めあう条件は、経路差が波長の「半整数倍」、つまり \(\displaystyle\frac{1}{2}\lambda, \displaystyle\frac{3}{2}\lambda, \displaystyle\frac{5}{2}\lambda, \dots\) となる場合です。
- これは、一方の波の山ともう一方の波の谷が重なり、打ち消しあうことを意味します。
- 数式で表すと、経路差 \(\Delta L = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))となります。
具体的な解説と立式
点Qについて、波源Aからの距離は \(AQ = 30 \, \text{cm}\)、波源Bからの距離は \(BQ = 24 \, \text{cm}\) です。
点Qにおける2つの波の経路差 \(\Delta L_Q\) は、これらの距離の差の絶対値として計算できます。
$$ \Delta L_Q = |AQ – BQ| $$
この \(\Delta L_Q\) と波長 \(\lambda = 4 \, \text{cm}\) の関係を調べます。
使用した物理公式
- 同位相の波源による強めあいの条件: 経路差 \(|L_1 – L_2| = m\lambda\) (\(m\) は整数)
- 同位相の波源による弱めあいの条件: 経路差 \(|L_1 – L_2| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m\) は整数)
与えられた値を代入して、経路差 \(\Delta L_Q\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_Q &= |AQ – BQ| \\[2.0ex]&= |30 – 24| \\[2.0ex]&= 6 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$
次に、この経路差が波長 \(\lambda = 4 \, \text{cm}\) の何倍かを計算します。
$$ \displaystyle\frac{\Delta L_Q}{\lambda} = \displaystyle\frac{6}{4} = \displaystyle\frac{3}{2} = 1 + \displaystyle\frac{1}{2} $$
これは半整数(\(m=1\) の場合)なので、\(\Delta L_Q = \displaystyle\frac{3}{2}\lambda\) となります。
経路差が波長の半整数倍であるため、点Qは弱めあう点(節)となります。
波源Aから点Qまでの道のりは \(30 \, \text{cm}\)、波源Bからは \(24 \, \text{cm}\) です。この道のりの差は \(30 – 24 = 6 \, \text{cm}\) です。
波長は \(4 \, \text{cm}\) なので、道のりの差 \(6 \, \text{cm}\) は、波長の \(1.5\) 倍(\(\displaystyle\frac{3}{2}\) 倍)です。
道のりの差が波長の「\(0.5, 1.5, 2.5, \dots\)」倍のように「整数 + 0.5」倍になっているとき、2つの波は互いに打ち消しあって弱めあいます。したがって、点Qは弱めあう点です。
問(3)
思考の道筋とポイント
点Mは線分ABの中点です。中点であるという幾何学的な性質から、2つの波源A, Bからの距離を考え、経路差を求めます。その経路差が干渉条件のどちらを満たすかを判定します。
この設問における重要なポイント
- 「中点」とは、2つの点から等しい距離にある点のことです。
- したがって、点Mは \(AM = BM\) という関係を満たします。
- 経路差がゼロになる点は、強めあいの条件 \(m\lambda\) において \(m=0\) の場合に相当します。これは最も強く強めあう点の一つです。
具体的な解説と立式
点Mは線分ABの中点なので、波源Aからの距離 \(AM\) と波源Bからの距離 \(BM\) は等しくなります。
$$ AM = BM $$
したがって、点Mにおける2つの波の経路差 \(\Delta L_M\) は、これらの距離の差の絶対値として計算できます。
$$ \Delta L_M = |AM – BM| $$
この \(\Delta L_M\) と波長 \(\lambda = 4 \, \text{cm}\) の関係を調べます。
使用した物理公式
- 同位相の波源による強めあいの条件: 経路差 \(|L_1 – L_2| = m\lambda\) (\(m\) は整数)
\(AM = BM\) の関係を用いて、経路差 \(\Delta L_M\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_M &= |AM – BM| \\[2.0ex]&= 0 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$
経路差が \(0\) です。これは、波長 \(\lambda\) の \(0\) 倍と考えることができます。
$$ \Delta L_M = 0 = 0 \times \lambda $$
\(0\) は整数なので、これは強めあいの条件(\(m=0\))を満たします。
したがって、点Mは強めあう点(腹)となります。
点Mは、波源Aと波源Bのちょうど真ん中の点です。
したがって、AからMまでの距離とBからMまでの距離は全く同じです。
道のりの差は \(0 \, \text{cm}\) ということになります。
道のりの差が \(0\) の場合は、波長の \(0\) 倍と考えることができ、これは「整数倍」の一種です。
そのため、2つの波は完全に同じタイミングで点Mに到着し、強めあいます。
2 ホイヘンスの原理
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の反射と波面の作図」です。与えられた入射波の情報から、反射の法則を用いて反射波の進行方向と波面を正しく描くことが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 反射の法則: 境界面で波が反射するとき、入射角と反射角は等しくなる。
- 波面と進行方向の関係: 波の進行方向(光線)は、波面に常に垂直である。
- 入射角・反射角の定義: 波の進行方向と、境界面に立てた法線とのなす角。
- ホイヘンスの原理: 波面の各点が新しい波源(素元波)となり、それらの素元波に共通に接する面(包絡面)が次の波面を形成するという原理。反射の法則はこの原理から導かれる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、反射の法則を用いて反射波の進行方向を決定する。
- 次に、波面が進行方向に垂直であるという関係を利用して、指定された点Pを通る反射波の波面を作図する。
思考の道筋とポイント
この問題では、「反射波の進行方向」と「点Pを通る反射波の波面」という2つの要素を作図する必要があります。これらは「反射の法則」と「波面と進行方向の関係」という2つの基本ルールに従って、段階的に作図することで求められます。
この設問における重要なポイント
- 入射角・反射角の定義: それぞれ、波の進行方向と境界面の法線(境界面に垂直な線)とのなす角です。図に示された \(30^\circ\) がそのまま入射角となることを確認します。
- 反射の法則: 入射角を \(i\)、反射角を \(r\) とすると、\(i=r\) が成り立ちます。
- 波面と進行方向: 波面は、同じ位相の点を連ねた面です。そして、波の進行方向は、常に波面に対して垂直です。この関係は作図において極めて重要です。
具体的な解説と立式
この問題は計算ではなく作図が中心です。以下の手順に従って作図を行います。
Step 1: 反射波の進行方向の決定
- まず、入射波が境界面に当たる点Oに、境界面と垂直な線(法線)を点線で描きます。
- 入射波の進行方向と法線のなす角が「入射角 \(i\)」です。図から、入射角は \(i = 30^\circ\) であることが読み取れます。
- 反射の法則 \(i=r\) より、反射角 \(r\) も \(30^\circ\) となります。
- 法線を基準にして、入射波とは反対側に \(30^\circ\) の角度で、点Oから出ていく矢印を描きます。これが「反射波の進行方向」です。
Step 2: 点Pを通る反射波の波面の作図
- 波の基本的な性質として、「波面」と「波の進行方向」は常に垂直に交わります。
- したがって、Step 1で描いた「反射波の進行方向」の線に対して、点Pを通り、かつ垂直に交わる直線を引きます。
- この直線が、求める「点Pを通る反射波の波面」となります。
使用した物理公式
- 反射の法則: 入射角 \(i\) = 反射角 \(r\)
- 波面と進行方向の関係: 波面 \(\perp\) 波の進行方向
この問題は作図が主体であり、厳密な数値計算はありません。作図に必要な角度を求める過程が計算に相当します。
- 入射角の読み取り: \(i = 30^\circ\)
- 反射の法則の適用: \(r = i = 30^\circ\)
この情報に基づき、分度器や三角定規を用いて正確に作図します。
この作図は、2つの簡単なステップで完成します。
1. ボールの跳ね返る向きを決める
鏡のような境界面にボールを投げたときの跳ね返りを想像してください。境界面に垂直な線(法線)を基準にすると、「入ってくる角度」と「跳ね返っていく角度」は必ず同じになります。これが「反射の法則」です。
問題の図では、入ってくる角度が \(30^\circ\) なので、跳ね返っていく角度も \(30^\circ\) になるように、反射波が進む向きの矢印を描きましょう。
2. 波の「戦線」(波面)を描く
波が進む向き(矢印)と、波の面(波面)は、常に直角の関係にあります。これは、行進する兵隊の列(波面)と、その行進方向(進行方向)が直角であるのと似ています。
問題では「点Pを通る波面を描け」と指示されているので、先ほど描いた反射波の矢印に対して、点Pを通り、かつ直角に交わるように直線を引けば、それが答えの波面になります。
思考の道筋とポイント
ここでは「反射の法則」を既知のものとせず、より根本的な「ホイヘンスの原理」から反射波の波面を作図します。このアプローチにより、なぜ反射の法則が成り立つのかを理解することができます。波面上の各点から出る素元波の包絡面として、次の波面が形成される過程を追います。
この設問における重要なポイント
- ホイヘンスの原理: 波面上の各点が新しい波源(素元波の中心)となり、そこから広がる無数の素元波の共通接線(包絡面)が次の瞬間の波面を形成します。
- 作図の鍵: ある時間 \(t\) の間に、入射波面の一部が進む距離と、境界面上の点から素元波が広がる半径は等しくなります(どちらも \(vt\)、\(v\) は波の速さ)。
具体的な解説と立式
ホイヘンスの原理に基づき、反射波の波面を直接作図し、その結果として反射の法則が導かれることを示します。
- 入射波の波面が境界面上の点Aに達した瞬間を考えます。この波面上の別の点Bは、まだ境界面に達していません。この入射波面をABとします。
- 点Bが境界面上の点Cに達するまでの時間を \(t\) とします。波の速さを \(v\) とすると、距離BCの長さは \(BC = vt\) となります。
- この時間 \(t\) の間に、点Aからは二次波(素元波)が発生し、半径 \(r = vt\) の半円状に広がります。
- 点Cに達した波と、点Aから広がった素元波の両方に接する線(包絡面)を引きます。具体的には、点Cから、点Aを中心とする半径 \(vt\) の円に接線を引きます。この接線CD(Dは接点)が、\(t\) 時間後の反射波の波面となります。
- ここで、2つの直角三角形 \(\triangle ABC\) と \(\triangle ADC\) を比較します。
- 斜辺ACは共通です。
- 辺の長さは \(BC = AD = vt\) です。
- よって、直角三角形の合同条件(斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい)より、\(\triangle ABC \equiv \triangle ADC\) が成り立ちます。
- 合同な図形の対応する角は等しいので、\(\angle BAC = \angle DCA\) となります。
- 幾何学的に、\(\angle BAC\) は入射角 \(i\) に等しく、\(\angle DCA\) は反射角 \(r\) に等しいことがわかります。したがって、ホイヘンスの原理から作図することで、反射の法則 \(i=r\) が証明されます。
- この作図法で得られた反射波の波面(CD)と、そこから垂直に引いた進行方向は、主解法で得られた結果と一致します。
使用した物理公式
- ホイヘンスの原理
- 三角形の合同条件
このアプローチは幾何学的な作図と証明が中心であり、数値計算は伴いません。
「反射の法則」がなぜ成り立つのか、その理由を探る方法です。
- 波の面が壁に斜めにぶつかる時、壁に先に着いた端(点A)と、まだ着いていない端(点B)があります。
- まだ着いていない端(点B)が壁(点C)にたどり着くまでの間に、先に着いた端(点A)からは、水面に石を投げたときのような「波紋(素元波)」が広がります。
- 波が進む速さは同じなので、「点Bが壁まで進む距離」と「点Aから広がる波紋の半径」は同じ長さになります。
- この広がった波紋に、壁にたどり着いた点Cからうまく接するように線を引くと、それが反射した後の新しい波の面になります。この作図をしてみると、入ってきた角度と出ていく角度が自然に同じになることがわかります。これが反射の法則の正体です。
3 波の屈折
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の屈折における角度の定義と波面の作図」です。境界面で波が屈折する際の入射角と屈折角を正しく求め、指定された点を通る波面を作図する能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 入射角・屈折角の定義: 波の進行方向と、境界面に垂直な線(法線)とのなす角。
- 波面と進行方向の関係: 波の進行方向は、常に波面に垂直である。
- 幾何学的な角度の計算: 直角(\(90^\circ\))を利用して、図から角度を求める。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、境界面に垂直な線(法線)を作図する。
- 次に、法線と波の進行方向とのなす角として、入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) を図形的に計算する。
- 最後に、入射波と屈折波それぞれの進行方向に対して、点Pを通り、かつ垂直に交わる直線を引くことで波面を作図する。
思考の道筋とポイント
この問題で最も注意すべき点は、入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) の定義です。問題の図に示されている \(30^\circ\) や \(60^\circ\) という角度は、進行方向と「境界面」がなす角であり、入射角・屈折角そのものではありません。まず境界面に垂直な「法線」を引き、この法線を基準として角度を考えることが、正解への第一歩です。
この設問における重要なポイント
- 法線: 境界面上の点Pを通り、境界面ABに垂直な直線のこと。作図の基準となります。
- 入射角 \(i\): 入射波の進行方向と法線のなす角。
- 屈折角 \(r\): 屈折波の進行方向と法線のなす角。
- 波面と進行方向の関係: 波面と波の進行方向は、常に直角(\(90^\circ\))に交わります。この関係は波面の作図において絶対的なルールです。
具体的な解説と立式
この問題は、角度の計算と作図の2つのパートからなります。
1. 入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) の計算
まず、点Pを通り境界面ABに垂直な法線(点線)を引きます。法線と境界面ABのなす角は \(90^\circ\) です。
- 入射角 \(i\) の計算
図より、入射波の進行方向と境界面ABのなす角は \(30^\circ\) です。入射角 \(i\) は法線と入射波の進行方向のなす角なので、次のように計算できます。
$$ i = 90^\circ – 30^\circ $$ - 屈折角 \(r\) の計算
同様に、図より、屈折波の進行方向と境界面ABのなす角は \(60^\circ\) です。屈折角 \(r\) は法線と屈折波の進行方向のなす角なので、次のように計算できます。
$$ r = 90^\circ – 60^\circ $$
2. 点Pを通る波面の作図
波面は進行方向に常に垂直です。
- 媒質1の波面: 点Pを通り、入射波の進行方向を示す矢印に対して垂直な直線を引きます。
- 媒質2の波面: 点Pを通り、屈折波の進行方向を示す矢印に対して垂直な直線を引きます。
使用した物理公式
- 入射角の定義: (入射波の進行方向)と(法線)のなす角
- 屈折角の定義: (屈折波の進行方向)と(法線)のなす角
- 波面と進行方向の関係: 波面 \(\perp\) 進行方向
「具体的な解説と立式」で立てた式を計算します。
- 入射角 \(i\)
$$
\begin{aligned}
i &= 90^\circ – 30^\circ \\[2.0ex]&= 60^\circ
\end{aligned}
$$ - 屈折角 \(r\)
$$
\begin{aligned}
r &= 90^\circ – 60^\circ \\[2.0ex]&= 30^\circ
\end{aligned}
$$
波面の作図は、上記の計算結果と「波面は進行方向に垂直」というルールに基づいて行います。
角度を間違えないためのコツ
物理で「入射角」や「屈折角」というときは、必ず「境界面に垂直な線(法線)」を基準にして測ります。地面(境界面)との角度ではない、と覚えておきましょう。
- まず、地面(境界面AB)に対して、点Pから真上に垂直な線(法線)を引きます。地面と法線の角度は \(90^\circ\) です。
- 入射角: 図を見ると、入ってくる波は地面と \(30^\circ\) の角度をなしています。求めたい入射角は法線との間の角度なので、\(90^\circ\) から \(30^\circ\) を引いて、\(i = 90^\circ – 30^\circ = 60^\circ\) となります。
- 屈折角: 同様に、屈折していく波は地面と \(60^\circ\) の角度をなしています。求めたい屈折角は法線との間の角度なので、\(90^\circ\) から \(60^\circ\) を引いて、\(r = 90^\circ – 60^\circ = 30^\circ\) となります。
波面の描き方
波面は、波が進む向き(矢印)に対して、常に直角に交わる線です。
- 点Pを通るように、入射波の矢印に直角な線を引きます。
- 同じく点Pを通るように、屈折波の矢印に直角な線を引きます。
これで完成です。
4 波の屈折
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の屈折と、それに伴う物理量の変化」です。波がある媒質から別の媒質へ進む際に、速さ、波長、振動数、そして屈折率がどのように関連し合っているかを理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 相対屈折率の定義: 2つの媒質における波の速さの比で定義される。
- 屈折における振動数の不変性: 波が屈折しても、その振動数は変化しない。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の関係式 \(v = f\lambda\)。
- 物理量(速さ、波長、振動数)が屈折時にどう変化するか(またはしないか)の理解。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問(1)では、屈折率の定義式に、与えられた速さの値を代入して計算する。
- 設問(2)では、まず「屈折しても振動数は変わらない」という法則を適用して振動数を求める。
- 次に、波の基本式 \(v=f\lambda\) を変形し、媒質2における波長を計算する。
問(1)
思考の道筋とポイント
媒質1に対する媒質2の相対屈折率 \(n_{12}\) を求める問題です。屈折率にはいくつかの定義(速さの比、波長の比、sinの比)がありますが、この問題では各媒質での波の速さが与えられています。したがって、速さの比で定義される屈折率の公式を用いるのが最も直接的です。
この設問における重要なポイント
- 相対屈折率の定義: 媒質1に対する媒質2の屈折率 \(n_{12}\) は、媒質1での波の速さ \(v_1\) と媒質2での波の速さ \(v_2\) の比で定義されます。
- 定義式: \(n_{12} = \displaystyle\frac{v_1}{v_2}\)。添字の順番(1→2)と、分数の分子・分母(\(v_1\)が分子、\(v_2\)が分母)の対応を正確に覚えることが重要です。
- 屈折率が1より大きい(\(n_{12} > 1\))場合、波は媒質1から媒質2に入ると速さが遅くなることを意味します。この問題では \(v_1 > v_2\) なので、屈折率は1より大きくなると予想できます。
具体的な解説と立式
媒質1に対する媒質2の屈折率 \(n_{12}\) は、媒質1における波の速さ \(v_1\) と媒質2における波の速さ \(v_2\) を用いて、以下の式で定義されます。
$$ n_{12} = \displaystyle\frac{v_1}{v_2} $$
問題文より、\(v_1 = 8.0 \, \text{m/s}\)、\(v_2 = 5.0 \, \text{m/s}\) です。これらの値を上の式に代入します。
使用した物理公式
- 相対屈折率: \(n_{12} = \displaystyle\frac{v_1}{v_2}\)
与えられた値を公式に代入して、屈折率 \(n_{12}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
n_{12} &= \displaystyle\frac{v_1}{v_2} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{8.0}{5.0} \\[2.0ex]&= 1.6
\end{aligned}
$$
したがって、媒質1に対する媒質2の屈折率は \(1.6\) です。
「媒質1に対する媒質2の屈折率」とは、「媒質1に比べて、媒質2ではどれくらい波が進みにくくなるか」を表す指標だと考えましょう。
計算式は単純に「(元の媒質での速さ)÷(新しい媒質での速さ)」です。
この問題では、元の速さが \(8.0 \, \text{m/s}\)、新しい媒質での速さが \(5.0 \, \text{m/s}\) なので、\(8.0 \div 5.0 = 1.6\) と計算できます。屈折率が \(1.6\) ということは、媒質2では媒質1に比べて波の速さが \(1/1.6\) 倍に遅くなる、という意味合いになります。
問(2)
思考の道筋とポイント
屈折後の媒質2での振動数 \(f_2\) と波長 \(\lambda_2\) を求める問題です。ここで最も重要な物理法則は「屈折が起きても、波の振動数は変化しない」という点です。これにより、\(f_2\) は計算するまでもなく即座に求まります。波長 \(\lambda_2\) は、波の基本式 \(v=f\lambda\) を媒質2について適用することで計算できます。
この設問における重要なポイント
- 振動数の不変性: 波が異なる媒質に進む(屈折する)とき、その振動数 \(f\) は変化しません。これは、境界面で波が滑らかにつながるためには、単位時間あたりに境界面を通過する波の数(=振動数)が両側で同じでなければならないためです。したがって、\(f_1 = f_2\) が成り立ちます。
- 速さと波長の変化: 振動数が一定なので、波の基本式 \(v=f\lambda\) より、速さ \(v\) が変化すると波長 \(\lambda\) もそれに比例して変化します(\(v \propto \lambda\))。
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)。この式は物理の様々な場面で登場する最重要公式の一つです。この問題では \(\lambda = \displaystyle\frac{v}{f}\) の形で使用します。
具体的な解説と立式
振動数 \(f_2\) の決定
波が媒質1から媒質2へ屈折する際、波源の振動は変わらないため、振動数 \(f\) は一定に保たれます。
したがって、媒質1での振動数 \(f_1\) と媒質2での振動数 \(f_2\) は等しくなります。
$$ f_2 = f_1 $$
波長 \(\lambda_2\) の計算
媒質2における波の基本式は \(v_2 = f_2 \lambda_2\) です。
この式を \(\lambda_2\) について解くと、次のようになります。
$$ \lambda_2 = \displaystyle\frac{v_2}{f_2} $$
使用した物理公式
- 屈折における振動数の不変性: \(f_1 = f_2\)
- 波の基本式: \(v_2 = f_2 \lambda_2\)
振動数 \(f_2\) の計算
問題文より、媒質1での振動数は \(f_1 = 20 \, \text{Hz}\) です。振動数は屈折しても変化しないので、
$$ f_2 = f_1 = 20 \, \text{Hz} $$
波長 \(\lambda_2\) の計算
媒質2での速さ \(v_2 = 5.0 \, \text{m/s}\) と、上で求めた振動数 \(f_2 = 20 \, \text{Hz}\) を波の基本式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_2 &= \displaystyle\frac{v_2}{f_2} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{5.0}{20} \\[2.0ex]&= \displaystyle\frac{1}{4} \\[2.0ex]&= 0.25 \, (\text{m})
\end{aligned}
$$
- 振動数について: 波が媒質を移動するとき、その「揺れのペース(振動数)」は、波を作り出している大元の波源で決まります。途中で水中からガラスに入るように媒質が変わっても、このペース自体は変わりません。したがって、媒質2での振動数も、もとの \(20 \, \text{Hz}\) のままです。
- 波長について: 波の「一歩の大きさ(波長)」は、速さが変わると変化します。速さが遅くなれば、同じペースで進んでも一歩は小さくなります。計算は「速さ ÷ 振動数」でできます。媒質2では速さが \(5.0 \, \text{m/s}\)、振動数が \(20 \, \text{Hz}\) なので、波長は \(5.0 \div 20 = 0.25 \, \text{m}\) となります。
5 波の回折
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の回折が顕著に起こる条件」です。波が障害物の後ろに回り込む「回折」という現象が、どのような条件下で目立つようになるかを、波長と障害物の大きさの関係から理解することが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 回折の定義: 波が障害物の背後に回り込んだり、すき間を通過した後に広がったりする現象。
- ホイヘンスの原理: 波面の各点が新しい波源(素元波)となり、それらの素元波が作る共通の接線(包絡面)が次の波面を形成するという考え方。回折現象はこの原理によって説明される。
- 回折が顕著になる条件: 波の波長が、すき間の幅や障害物の大きさと同程度か、それよりも長い場合。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、「回折が目立つ」とはどのような状態かを理解する。
- 次に、波の回折が起こりやすくなる条件を、波長 \(\lambda\) とすき間の幅 \(d\) の大小関係で考える。
- 与えられた選択肢の中から、その条件に合致するものを選ぶ。
思考の道筋とポイント
波は、障害物があってもその背後に回り込む性質を持っています。これを「回折」と呼びます。この回り込みの度合いは、波の波長 \(\lambda\) と、波が通過するすき間の幅(または障害物の大きさ)\(d\) の関係によって決まります。この問題では、どちらの条件下で回折が「目立つ」か、つまり、より大きく回り込むかを考えます。
この設問における重要なポイント
- 回折とは、波が直進するだけでなく、障害物の影の部分にも回り込んで伝わっていく現象です。
- 回折のしやすさは、波長 \(\lambda\) とすき間の幅 \(d\) の比 \(\displaystyle\frac{\lambda}{d}\) によって決まります。この値が大きいほど、回折は顕著になります。
- 回折が目立つ条件: 波長 \(\lambda\) がすき間の幅 \(d\) と同程度か、それよりも長いとき。数式で表すと \(\lambda \ge d\) の場合です。このとき、波はすき間を通過した後、大きく広がります。
- 回折が目立たない条件: 波長 \(\lambda\) がすき間の幅 \(d\) に比べて非常に短いとき。数式で表すと \(\lambda \ll d\) の場合です。このとき、波はほとんど回折せず、直進性が強くなります。
- 身近な例: 音は壁の向こう側にも聞こえますが、光は壁の向こう側を照らしません。これは、音の波長(数十cm〜数m)がドアのすき間などの障害物と同程度の大きさであるため回折しやすいのに対し、光の波長(数百nm)は非常に短いため、ほとんど回折せず直進するからです。
具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。回折が目立つ条件を知識として適用します。
- 選択肢① \(d\) と同程度かそれ以上: この条件は、\(\lambda \ge d\) に相当します。これは、波が顕著に回折する条件そのものです。すき間を通過した波は、すき間が新たな点波源になったかのように、半円状に大きく広がっていきます。
- 選択肢② \(d\) に比べて十分に小さい: この条件は、\(\lambda \ll d\) に相当します。このとき、波はほとんど回折せず、すき間の形を保ったまま直進していきます。
したがって、回折が目立つのは、波長 \(\lambda\) がすき間の間隔 \(d\) と同程度かそれ以上の場合です。
使用した物理公式
- 回折が顕著になる条件: \(\lambda \ge d\) (\(\lambda\): 波長, \(d\): すき間の幅や障害物の大きさ)
この問題には計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた、回折の条件に関する知識の吟味そのものが解答プロセスとなります。
「回折」を「波の回り込み」と考えてみましょう。
大きな船(波長の長い波)が狭い水路(すき間 \(d\))を通るときを想像してください。船が水路を抜けた後、船が起こす波は港全体に大きく広がっていきます。これが「回り込みが目立つ」状態です。
一方、小さな模型のボート(波長の短い波)が同じ水路を通るとき、ボートが起こす波は、水路の幅のまま、あまり広がらずにまっすぐ進んでいくでしょう。これが「回り込みが目立たない」状態です。
このように、波の大きさ(波長)が、通り抜けるすき間の大きさと同程度か、それより大きい場合に、波は大きく回り込みます(回折が目立ちます)。
したがって、正解は「\(\lambda\) が \(d\) と同程度かそれ以上」となります。
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