物理専門の家庭教師として14年間指導を続ける中で、保護者の方から最も多くいただくのが、この種の相談です。
お子さんの物理の成績が上がらないとき、多くの親御さんは「やる気の問題」「理系のセンスがないのかも」と考えます。しかし、14年間の指導経験を通じて言えることは、物理への苦手意識の原因は、ほぼ例外なく「別のところ」にあるということです。
その前提として一つ、ぜひ知っておいていただきたい数字があります。2026年の大学入学共通テスト 物理の平均点は45.55点。前年(58.96点)から13.41点も下がりました(出典: 大学入試センター 最終発表)。お子さんが「努力しているのに点数が上がらない」と感じているのは、お子さんの能力の問題ではなく、試験そのものが前年より大きく難しくなっているからでもあるのです。
物理が苦手になる「本当の理由」
まず大前提として、お子さんが物理を苦手にしているのは「頭が悪いから」でも「理系センスがないから」でもありません。
物理という科目は、他の科目にはない特殊な構造を持っています。この構造を理解すると、「なぜお子さんがつまずいているのか」がはっきり見えてきます。
物理は「力学を土台に積み上がる」科目
物理には、力学・熱・波動・電磁気・原子という5つの分野があります。
重要なのは、これらの分野がバラバラではなく、力学を土台に積み上がっているという点です。熱では気体の分子の運動を、波動では振動する物体の運動を、電磁気では電気や磁気の力を受ける粒子の運動を考える——というように、熱・波動・電磁気のどれでも、力学の「力と運動」の考え方がくり返し使われます。
力学(土台)→ 熱・波動・電磁気 → 原子
(熱・波動・電磁気は力学の考え方を使って成り立ち、原子はそれらの上に立つ。力学の土台が崩れると、全体に影響する)
物理は「公式を覚えれば解ける科目」ではなくなり、現象の仕組みを言葉で考える力が問われるようになっています。お子さんが点数で苦戦しているのは、根性や暗記の不足ではなく、勉強の「型」を変える必要があるサインです。
つまり、「力学でつまずく → 熱でも波動でも電磁気でも苦労する」という連鎖が起きます。多くの場合、物理全体が苦手に見えても、根っこには力学での初期つまずきがあるのです。
一番の難関は「ファーストステップ」の力学
では、なぜ力学でつまずく子が多いのか。ここに物理の最大の特徴があります。
物理では、まず「どの物体に注目するか」を決め、その物体が周りから受ける力を一つずつ書き出してから考えます。ところが多くの生徒は、この手順を飛ばして日常の感覚で答えを出してしまいます。
物理では「日常の感覚」で考えると間違えてしまいます。
例えば真上に投げたボール。人間の感覚では「上がっている間は、上向きの力が残っている」と感じます——しかし物理では、手を離れたあとのボールにはたらく力は下向きの重力だけ(空気抵抗を考えない場合)。ボールが上へ進むのは、上向きの力があるからではなく、投げたときの上向きの速さが残っているから。その速さが重力で少しずつ減り、ゼロになったところが最高点です。この発想の転換ができるかどうかが、物理の最初の分かれ道です。
この「日常の感覚から物理の考え方へ」という切り替えは、才能やセンスの問題ではありません。お子さんがどこで日常の感覚に戻ってしまったのかを特定できれば、手順として直すことができます。だからこそ、適切なタイミングで適切なアドバイスがあるかどうかが、非常に重要になります。
「才能の問題ではない」と言える根拠
物理が苦手な子を見て、「うちの子は理系じゃないのかも」と感じる親御さんは少なくありません。しかし、それは少し違います。
14年間の指導を通じて見えてきたのは、学力の差は才能ではなく、「勉強の工夫」にあるということです。具体的には「分析・計画・実行」の繰り返しができているかどうか。これは誰でも身につけられるスキルです。
また、受験相談の専門家たちの調査によれば、大学受験の7割は親の関わり方で決まるとも言われています。子ども自身の「才能」の問題ではなく、どのような環境とサポートがあるかが鍵なのです。
具体的な数字も補強しています。教育研究の調査では、親の「期待する姿勢」は、親の「宿題の監督」よりも約10倍、子どもの成績向上に効果があると報告されています(カストロら2015年の分析調査)。声かけの仕方ひとつ、寄り添う姿勢ひとつで、結果は大きく変わるという裏付けです。
物理を諦めるという選択は、医学部・旧帝大理系・工学部のような難関理系の選択肢を入口で大きく狭めることを意味します。お子さんの将来の可能性を守るためにも、「苦手」のまま放置せず、つまずきを早めに修正する価値は十分にあります。
保護者がすぐにできる3つのサポート
お子さんが体調を崩したとき、ご家族はいきなり強い薬を飲ませたりはしません。まず「どこが、いつから、どんなふうに痛むのか」を一緒に確かめ、必要なら専門家に診せます。物理の苦手も、これとまったく同じです。焦って次々と参考書を渡す前に、「どこでつまずいているか」を一緒に見てあげる——この順番が、遠回りを防ぎます。
ここでは、ご家庭で今日からできる関わり方を3つ、具体的な「声のかけ方」つきでお伝えします。
① 「才能論」をやめる
まず最初にやめてほしいのは、「理系センスがないのかも」という言葉です。この言葉は本人の耳に入った瞬間、「どうせ無理だ」という思い込みを強化します。
物理の苦手は「才能」ではなく「どこで詰まっているか」の問題です。どこで詰まっているかが分かれば、対処できます。
② 「どこから苦手になったか」を一緒に確認する
物理の5分野は積み上げ式なので、「どの単元から点数が落ちたか」を確認することで、つまずきの起点が見えてきます。
テストや模試の答案を一緒に見返して、「力学の問題はどうだった?」「熱は?」という形で確認してみてください。責めるのではなく、「一緒に原因を探る」姿勢が大切です。
このとき比べる相手は、よその子や兄弟ではなく「3か月前のお子さん自身」にしてください。「前は手も足も出なかった等加速度の問題、今は式が立てられているね」——過去の本人と比べた小さな成長を具体的に言葉にすることが、物理を続ける力になります。
③ 第三者の力を積極的に使う
親だけで物理の指導を抱え込む必要はありません。
受験サポートの専門家も「親だけで抱え込まず、学校の先生や塾の講師など第三者を巻き込みながら、全包囲網のなかでサポートすることが大切」と述べています。
特に物理は、「日常の感覚から物理の考え方への切り替え」というハードルがある科目です。学校の授業でなかなか掴めなかった感覚を、専門的な指導で掴み直すことで、一気に理解が進むケースは珍しくありません。
数字が示すのは、「正しいサポートを得た子は、平均以下からでも逆転できる」という事実です。お子さんの現在地は、未来を決めません。
物理専門の伴走サポートが「効く」理由
私がオンライン家庭教師として物理を専門に指導しているのは、まさに「物理の苦手は専門的なアプローチで変えられる」という確信があるからです。
一般的な「解き方を教える」指導と私の指導の違いは、思考の「ずれ」を診断・矯正するという点にあります。
「このパターンは公式を当てはめる」
→ 別の問題では応用できない
「どこで日常の感覚に戻ったか」
→ 思考のクセを根本から矯正する
(暗記中心の指導は26.06%)
(公式に飛びつかない)
物理は「公式の暗記」(宣言的記憶)ではなく「使い方を自動化する」(手続き的記憶)の科目です。だからこそ、答えを覚える指導ではなく、お子さんの思考の手順を可視化して矯正する指導でなければ、点数は伸びません。(出典: Sari et al. 2021 / Chi et al. 1981 / 岡山大学 太田 2014)
「物理の考え方」がどこで日常の感覚に置き換わっているかを診断し、そこを直す。これは物理の専門知識と、思考プロセスへの深い理解がないとできません。
体験授業60分の中で、お子さんがどこで「日常の感覚」に戻ってしまっているかを特定し、その場で修正する体験をしてもらいます。
まとめ:物理の苦手は変えられる
「物理が苦手」という状態は、正しいアプローチで必ず変わります。ただし、変えるためには「どこでつまずいているか」を正確に把握することが最初の一歩です。
その診断を、体験授業の60分で一緒に行います。
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根本から改善するアプローチをご体験いただけます。
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