問題の確認
wave#11各設問の思考プロセス
この問題は、波がある媒質から別の媒質へ進む「屈折」の現象を扱います。屈折の際に、波の速さ・波長・振動数がどのように変化するか(あるいはしないか)という、基本的な法則を正しく適用できるかが問われます。
この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。
- 屈折の基本法則:
波が異なる媒質の境界を通過するとき、振動数\(f\)は変化しません。これは、波の振動が波源によって決まるためです。一方で、速さ\(v\)と波長\(\lambda\)は媒質によって変化します。 - 波の基本式:
どの媒質においても、速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には \(v = f\lambda\) という関係が成り立ちます。 - 屈折率の定義:
媒質Iに対する媒質IIの屈折率 \(n_{12}\) は、各媒質での速さの比、および波長の比で定義されます。
$$n_{12} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2}$$
この問題を解くための手順は、これらの公式に与えられた値を当てはめていくだけの、非常にシンプルなものです。
- (1) 媒質Ⅱでの速さ\(v_2\): 屈折率の定義式 \(n_{12} = v_1/v_2\) を使って求めます。
- (2) 媒質Iでの波長\(\lambda_1\): 波の基本式 \(v_1 = f_1\lambda_1\) を使って求めます。
- (3) 媒質Ⅱでの振動数\(f_2\): 「振動数は不変」という法則から、\(f_2 = f_1\) となります。
- (4) 媒質Ⅱでの波長\(\lambda_2\): (1)と(3)で求めた値を使って、波の基本式 \(v_2 = f_2\lambda_2\) から求めます。
それぞれの問いが独立しているように見えますが、物理法則を通じて互いに関連しています。
各設問の具体的な解説と解答
(1) この波の媒質Ⅱでの速さは何m/sか。
問われている内容の明確化
波が媒質Ⅱを進むときの速さ \(v_2\) を求めます。
具体的な解説と立式
媒質Iに対する媒質IIの屈折率 \(n_{12}\) は、媒質Iでの速さ \(v_1\) と媒質IIでの速さ \(v_2\) の比で定義されます。
$$n_{12} = \frac{v_1}{v_2}$$
この式を、求めたい \(v_2\) について解くと、以下の方程式が得られます。
$$v_2 = \frac{v_1}{n_{12}} \quad \cdots ①$$
この式に与えられた値を代入して計算します。
$$n_{12} = \frac{v_1}{v_2}$$
計算過程
式①に、問題で与えられた値を代入します。
- 媒質Iでの速さ: \(v_1 = 330 \, \text{m/s}\)
- 屈折率: \(n_{12} = 1.50\)
$$v_2 = \frac{330}{1.50}$$
分母の 1.50 は分数の \(\displaystyle\frac{3}{2}\) に等しいので、
$$v_2 = 330 \div \frac{3}{2} = 330 \times \frac{2}{3} = 110 \times 2 = 220$$
したがって、媒質Ⅱでの速さは \(220 \, \text{m/s}\) となります。
計算方法の平易な説明
- 媒質Ⅱでの速さは、媒質Iでの速さを屈折率で割ることで求められます。
- \(330 \, \text{m/s}\) を \(1.50\) で割ります。
- \(330 \div 1.5 = 220\) なので、答えは \(220 \, \text{m/s}\) です。
この設問における重要なポイント
- 屈折率の定義式 \(n_{12} = v_1/v_2\) を正しく理解し、変形して使えること。
\(220 \, \text{m/s}\)
(2) この波の媒質 I での波長は何mか。
問われている内容の明確化
波が媒質Iを進むときの波長 \(\lambda_1\) を求めます。
具体的な解説と立式
波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(v = f\lambda\) という関係があります。これを媒質Iに適用すると、
$$v_1 = f_1 \lambda_1$$
となります。求めたいのは波長 \(\lambda_1\) なので、この式を \(\lambda_1\) について解きます。
$$\lambda_1 = \frac{v_1}{f_1} \quad \cdots ②$$
$$v = f\lambda$$
計算過程
式②に、与えられた値を代入します。
- 媒質Iでの速さ: \(v_1 = 330 \, \text{m/s}\)
- 媒質Iでの振動数: \(f_1 = 550 \, \text{Hz}\)
$$\lambda_1 = \frac{330}{550} = \frac{33}{55}$$
分子と分母は両方とも11で割り切れるので、
$$\lambda_1 = \frac{33 \div 11}{55 \div 11} = \frac{3}{5} = 0.60$$
したがって、媒質Iでの波長は \(0.60 \, \text{m}\) です。
この設問における重要なポイント
- 波の基本式 \(v=f\lambda\) を使いこなせること。
\(0.60 \, \text{m}\)
(3) この波の媒質Ⅱでの振動数は何Hzか。
問われている内容の明確化
波が媒質Ⅱを進むときの振動数 \(f_2\) を求めます。
具体的な解説と立式
波が屈折して異なる媒質に進んでも、その振動数は変化しません。振動数は波源の振動によって決まり、媒質を通過する際に1秒あたりの波の数(振動数)が増えたり減ったりすることはないためです。
したがって、媒質Ⅱでの振動数 \(f_2\) は、媒質Iでの振動数 \(f_1\) と等しくなります。
$$f_2 = f_1 \quad \cdots ③$$
波が屈折しても振動数は変化しない。
計算過程
式③より、媒質Iでの振動数が \(f_1 = 550 \, \text{Hz}\) であるため、
$$f_2 = 550 \, \text{Hz}$$
となります。
この設問における重要なポイント
- 屈折の際、振動数は一定に保たれるという大原則を理解していること。これは計算不要の知識問題です。
\(550 \, \text{Hz}\)
(4) この波の媒質Ⅱでの波長は何mか。
問われている内容の明確化
波が媒質Ⅱを進むときの波長 \(\lambda_2\) を求めます。
具体的な解説と立式
媒質Ⅱにおいても、波の基本式 \(v = f\lambda\) が成り立ちます。
$$v_2 = f_2 \lambda_2$$
求めたいのは波長 \(\lambda_2\) なので、この式を \(\lambda_2\) について解きます。
$$\lambda_2 = \frac{v_2}{f_2} \quad \cdots ④$$
ここで、\(v_2\) は(1)で、\(f_2\) は(3)で求めた値を用います。
$$v = f\lambda$$
計算過程
式④に、(1)と(3)の結果を代入します。
- 媒質Ⅱでの速さ: \(v_2 = 220 \, \text{m/s}\)
- 媒質Ⅱでの振動数: \(f_2 = 550 \, \text{Hz}\)
$$\lambda_2 = \frac{220}{550} = \frac{22}{55}$$
分子と分母は両方とも11で割り切れるので、
$$\lambda_2 = \frac{22 \div 11}{55 \div 11} = \frac{2}{5} = 0.40$$
したがって、媒質Ⅱでの波長は \(0.40 \, \text{m}\) です。
この設問における重要なポイント
- 前の設問で求めた値を正しく使って、波の基本式を適用すること。
- 別解として屈折率と波長の関係 \( \lambda_2 = \lambda_1 / n_{12} = 0.60 / 1.50 = 0.40 \, \text{m} \) からも求められることを知っておくと、検算に役立つ。
\(0.40 \, \text{m}\)
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 波の基本式 \(v=f\lambda\): 波に関する計算の出発点となる最も重要な公式です。速さ、振動数、波長のうち2つが分かれば、残りの1つを計算できます。
- 屈折: 波が異なる媒質の境界を通過する際に進行方向が変わる現象です。このとき、振動数は変わらず、速さと波長が変わるという性質を理解することが核心です。
- 屈折率 \(n\): 媒質中での波の進みにくさを表す指標で、速さや波長がどのくらい変化するかを定量的に示します。屈折率 \(n_{12} = v_1/v_2 = \lambda_1/\lambda_2\) という定義式は必ず覚えておく必要があります。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 不変量を見つける: 物理現象を考えるとき、「何が変化して、何が変化しないのか」を最初に見極めることが重要です。屈折の場合は「振動数」が不変量(変わらない量)です。
- 一貫した添え字を使う: 媒質Iに関する量には添え字「1」(\(v_1, f_1, \lambda_1\))、媒質IIに関する量には添え字「2」(\(v_2, f_2, \lambda_2\))のように、自分でルールを決めて一貫した表記をすると、混乱を防げます。
- 情報の整理: 問題文で与えられた数値を、どの物理量(\(v_1\) なのか \(f_2\) なのか等)に対応するのかを正確に整理してから計算を始めましょう。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 振動数が変わるという誤解: 屈折の際に振動数も速さと同じ比率で変わってしまうと勘違いするケースが最も多い間違いです。振動数は一定です。
- 屈折率の定義式の混同: 屈折率 \(n_{12}\) が \(v_1/v_2\) なのか \(v_2/v_1\) なのかを混同しやすいです。屈折率が大きい媒質ほど波の速さは「遅くなる」と覚えておくと良いでしょう。この問題でも \(n_{12}=1.50 > 1\) なので、\(v_2\) は \(v_1\) より遅くなっています。
- 単純な計算ミス: 特に小数や分数の計算でミスが起きやすいです。\(1.5 = 3/2\) のように、簡単な整数比に直すなど工夫して正確に計算しましょう。
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