無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「波形グラフの移動と媒質の振動(波長・周期・速さ・振動方向)」【高校物理対応】

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wave#04

各設問の思考プロセス

この問題は、2つの異なる時刻における波形(\(y-x\)グラフ)から、波の基本物理量(波長、振幅、周期、速さ)を特定し、さらに特定の瞬間の媒質の振動状態(速度がゼロになる点、特定の向きに速度が最大になる点)を見抜く能力を試すものです。

  1. 波長 \(\lambda\) と振幅 \(A\) の読み取り:
    • 与えられた \(y-x\) グラフ(実線、\(t=0 \, \text{s}\) の波形)から直接読み取ります。
    • 振幅 \(A\) は、\(y=0\) の中心からの最大の変位。
    • 波長 \(\lambda\) は、波1つ分の空間的な長さ(例: 山から次の山まで、谷から次の谷まで、または同じ位相の点から次の同じ位相の点まで)。
  2. 波の移動と周期 \(T\) の決定:
    • 実線の波形(\(t=0 \, \text{s}\))から破線の波形(\(t=1.5 \, \text{s}\))へ、波がどれだけ (\(\Delta x\))、どちらの向きに進んだかを読み取ります。問題文から波は \(+x\) 方向に進みます。
    • 「この間に実線が破線の状態になったことは一度もなかった」という条件は、波の移動距離 \(\Delta x\) が1波長 \(\lambda\) 未満であることを意味します。これにより、\(\Delta x\) の値が一意に定まります。
    • 波が \(\Delta x\) 進むのにかかった時間が \(\Delta t = 1.5 \, \text{s}\) です。この移動 \(\Delta x\) が1波長の何分のいくつ (\(\Delta x / \lambda\)) に相当するかを考え、それが1周期 \(T\) の同じ割合 (\(\Delta t / T\)) に等しいことから周期 \(T\) を求めます。(\(\frac{\Delta x}{\lambda} = \frac{\Delta t}{T}\))
  3. 波の速さ \(v\) の計算:
    • \(v = \frac{\Delta x}{\Delta t}\) (特定の距離を進むのにかかった時間から計算)
    • または、\(v = \frac{\lambda}{T}\) (波長と周期から計算)
  4. 媒質の振動速度がゼロとなる点の特定:
    • 横波では、媒質は波の進行方向と垂直な方向に単振動します。
    • 単振動において、速度がゼロになるのは変位が最大(つまり振動の両端)のときです。波で言えば、「山」と「谷」の頂点です。
  5. 媒質の振動速度が最大で特定の向きとなる点の特定:
    • 単振動において、速度の絶対値が最大になるのは変位がゼロ(振動の中心)のときです。
    • その向き(\(y\)軸正向きか負向きか)は、波の進行方向と、その点における波形の傾きから判断します。波が\(+x\)方向に進む場合、媒質の速度 \(v_y\) は \(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) という関係があります(\(v\)は波の速さ、\(\frac{dy}{dx}\)は\(y-x\)グラフの傾き)。または、波形を進行方向にわずかに動かしてみて、その点の \(y\) 座標が増加するか減少するかで判断します。

各設問の具体的な解説と解答

(1) この正弦波の波長 \(\lambda \, \text{[m]}\), 振幅 \(A \, \text{[m]}\), 周期 \(T \, \text{[s]}\), 波の速さ \(v \, \text{[m/s]}\) を求めよ。

問われている内容の明確化:
波の基本パラメータである波長 \(\lambda\)、振幅 \(A\)、周期 \(T\)、速さ \(v\) を求めます。

具体的な解説と計算手順:
振幅 \(A\) の導出:
実線のグラフ(\(t=0 \, \text{s}\) の波形)より、振動の中心 \(y=0\) からの最大の変位は \(0.2 \, \text{m}\) です。
$$A = 0.2 \, \text{m}$$

波長 \(\lambda\) の導出:
実線のグラフより、例えば \(x=0\) から \(x=12 \, \text{m}\) までが1波長分です。
$$\lambda = 12 \, \text{m}$$

周期 \(T\) の導出:
波は \(+x\) 方向に進み、\(t=0 \, \text{s}\) (実線) から \(t=1.5 \, \text{s}\) (破線) の間に波形が変化しました。この間、波の移動は1波長未満です。
実線の谷 (\(x=3 \, \text{m}\)) が、破線の谷 (\(x=6 \, \text{m}\)) に移動したと考えられます。
移動距離 \(\Delta x = 6 \, \text{m} – 3 \, \text{m} = 3 \, \text{m}\)。
この移動にかかった時間 \(\Delta t = 1.5 \, \text{s}\)。
この移動距離 \(\Delta x = 3 \, \text{m}\) は、波長 \(\lambda = 12 \, \text{m}\) の \(\displaystyle \frac{3}{12} = \frac{1}{4}\) 波長分です。
したがって、\(\displaystyle \frac{1}{4}\) 周期が \(1.5 \, \text{s}\) に相当します。

使用した物理公式: 波の周期と部分的な移動の関係
$$\frac{\Delta x}{\lambda} = \frac{\Delta t}{T}$$

$$\frac{1}{4} T = 1.5 \, \text{s}$$
$$T = 4 \times 1.5 \, \text{s} = 6.0 \, \text{s}$$

波の速さ \(v\) の導出:

使用した物理公式: 波の速さ
$$v = \frac{\lambda}{T} \quad \text{または} \quad v = \frac{\Delta x}{\Delta t}$$

周期 \(T\) を用いる場合:
$$v = \frac{12 \, \text{m}}{6.0 \, \text{s}} = 2.0 \, \text{m/s}$$
移動距離 \(\Delta x\) と時間 \(\Delta t\) を用いる場合:
$$v = \frac{3 \, \text{m}}{1.5 \, \text{s}} = 2.0 \, \text{m/s}$$

計算方法の平易な説明:

  1. 振幅 \(A\): 実線のグラフで、\(y=0\) から一番高い点(山)または低い点(谷)までの \(y\) 方向の距離です。図から \(0.2 \, \text{m}\)。
  2. 波長 \(\lambda\): 実線のグラフで、波1つ分の横の長さです。図の \(x=0\) から \(x=12 \, \text{m}\) まででちょうど波1つ分なので、\(12 \, \text{m}\)。
  3. 周期 \(T\): 実線の谷 (\(x=3 \, \text{m}\)) が、\(1.5\) 秒後に破線の谷 (\(x=6 \, \text{m}\)) に移動しました。進んだ距離は \(3 \, \text{m}\)。これは波長 \(12 \, \text{m}\) の \(1/4\) です。つまり、\(1/4\) 回振動するのに \(1.5\) 秒かかったので、1回振動する時間(周期)は \(1.5 \text{ s} \times 4 = 6.0 \text{ s}\)。
  4. 波の速さ \(v\): 「距離 \(\div\) 時間」で、\(3 \, \text{m} \div 1.5 \, \text{s} = 2.0 \, \text{m/s}\)。または、「波長 \(\div\) 周期」で、\(12 \, \text{m} \div 6.0 \, \text{s} = 2.0 \, \text{m/s}\)。

この設問における重要なポイント:

  • 振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) は \(y-x\) グラフから直接読み取る。
  • 周期 \(T\) は、波の移動の様子と「1波長未満の移動」という条件から正確に求める。
  • 波の速さ \(v\) は、複数の方法で計算でき、検算にもなる。
解答 (1):
波長 \(\lambda = 12 \, \text{m}\)
振幅 \(A = 0.2 \, \text{m}\)
周期 \(T = 6.0 \, \text{s}\)
波の速さ \(v = 2.0 \, \text{m/s}\)

(2) \(t=0 \, \text{s}\) のとき、振動の速度が \(0 \, \text{m/s}\) の媒質の位置は \(O \sim S\) のうちのどこか。

問われている内容の明確化:
\(t=0 \, \text{s}\) で、媒質の振動速度が \(0 \, \text{m/s}\) となる位置を、指定された点 O, P, Q, R, S から選びます。

具体的な解説と計算手順:
媒質の振動速度が \(0 \, \text{m/s}\) になるのは、媒質の変位が最大または最小のとき、すなわち波の「山」または「谷」の位置です。
\(t=0 \, \text{s}\) の波形は実線です。

  • 点P (\(x=3 \, \text{m}\)): 実線上で谷(変位 \(y=-0.2 \, \text{m}\))。
  • 点R (\(x=9 \, \text{m}\)): 実線上で山(変位 \(y=0.2 \, \text{m}\))。

点O (\(x=0\)), Q (\(x=6\)), S (\(x=12\)) は変位が \(y=0\) のため、速度はゼロではありません。

計算方法の平易な説明:
媒質が振動するとき、その速さが一瞬 \(0\) になるのは、振動の折り返し地点、つまり一番高い「山」と一番低い「谷」です。
\(t=0 \, \text{s}\) の波の形(実線)を見て、山と谷の頂点を探します。

  • 点P (\(x=3 \, \text{m}\)) は谷の底です。ここで速度は \(0 \, \text{m/s}\)。
  • 点R (\(x=9 \, \text{m}\)) は山の頂上です。ここで速度は \(0 \, \text{m/s}\)。

この設問における重要なポイント:

  • 媒質の振動速度がゼロになるのは、変位が最大(山)または最小(谷)の点。
  • 対象となる時刻の波形(この場合は \(t=0 \, \text{s}\) の実線)を参照する。
解答 (2):
P, R

(3) \(t=0 \, \text{s}\) のとき、\(y\)軸の正の向きの速度が最大の位置は \(O \sim S\) のうちのどこか。

問われている内容の明確化:
\(t=0 \, \text{s}\) で、媒質の振動速度が \(y\)軸正の向き(上向き)に最大となる位置を、指定された点 O, P, Q, R, S から選びます。

具体的な解説と計算手順:
媒質の振動速度の絶対値が最大になるのは、変位がゼロ(\(y=0\)、振動の中心)のときです。
\(t=0 \, \text{s}\) の波形(実線)で変位が \(y=0\) となるのは、点O (\(x=0\))、点Q (\(x=6\))、点S (\(x=12\)) です。

次に、これらの点での振動の向きを判断します。波は \(+x\) 方向(右向き)に進んでいます。
時刻 \(t=\Delta t\) (\(\Delta t\) は微小な正の時間) における点 \(x_0\) の変位は、時刻 \(t=0\) における点 \(x_0 – v\Delta t\) の変位に等しくなります。

  • 点O (\(x=0 \, \text{m}\)):
    \(t=0\) の波形において、\(x=0\) のわずかに左側(\(x = -v\Delta t < 0\))の変位は正です(例えば、図にはない \(x=-3 \, \text{m}\) の山から下ってくる途中)。したがって、点Oの媒質は次に \(y\) が正の方向に動くので、\(y\)軸正の向きに速度を持ちます。 または、\(t=0\) の実線で \(x=0\) におけるグラフの接線の傾き \(\frac{dy}{dx}\) は負です。媒質の速度 \(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) より、\(v_y = -(2.0 \, \text{m/s}) \times (\text{負の傾き}) > 0\)。よって \(y\) 軸正向き。
  • 点Q (\(x=6 \, \text{m}\)):
    \(t=0\) の波形において、\(x=6\) のわずかに左側(\(x = 6 – v\Delta t < 6\))の変位は負です(\(x=3 \, \text{m}\) の谷から上がってくる途中)。したがって、点Qの媒質は次に \(y\) が負の方向に動くので、\(y\)軸負の向きに速度を持ちます。
    または、\(t=0\) の実線で \(x=6\) におけるグラフの接線の傾き \(\frac{dy}{dx}\) は正です。\(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) より、\(v_y = -(2.0 \, \text{m/s}) \times (\text{正の傾き}) < 0\)。よって \(y\) 軸負向き。
  • 点S (\(x=12 \, \text{m}\)):
    点Sは点Oと1波長分離れているため、振動の状態は点Oと全く同じです。したがって、\(y\)軸正の向きに速度を持ちます。
    または、\(t=0\) の実線で \(x=12\) におけるグラフの接線の傾き \(\frac{dy}{dx}\) は負です。\(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) より、\(v_y > 0\)。よって \(y\) 軸正向き。

以上より、\(y\)軸の正の向きの速度が最大の位置は点Oと点Sです。

計算方法の平易な説明:
媒質の速さが最大になるのは \(y=0\) のときです。実線で \(y=0\) の点は O, Q, S です。
波は右に進むので、これらの点の媒質が次にどちらに動くか考えます。波の形をほんの少し右にずらしてみます。

  • 点O (\(x=0\)): 実線を少し右にずらすと、元の \(x=0\) の位置の \(y\) 座標はプラスになります(実線で \(x=0\) のすぐ左側は \(y\) が正なので)。よって、点Oは上向き (\(y\)軸正向き) に動きます。
  • 点Q (\(x=6\)): 実線を少し右にずらすと、元の \(x=6\) の位置の \(y\) 座標はマイナスになります(実線で \(x=6\) のすぐ左側は \(y\) が負なので)。よって、点Qは下向き (\(y\)軸負向き) に動きます。
  • 点S (\(x=12\)): 点Oと同じ理由で、上向き (\(y\)軸正向き) に動きます。

よって、\(y\)軸の正の向きに速度が最大なのは点Oと点Sです。

この設問における重要なポイント:

  • 媒質の振動速度が最大となるのは変位がゼロの点。
  • 速度の向きは、波の進行方向を考慮し、波形をわずかに動かすか、\(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) の関係を使って判断する。
解答 (3):
O, S

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 波の基本パラメータ: 振幅 \(A\)、波長 \(\lambda\)、周期 \(T\)、振動数 \(f\)、波の速さ \(v\)。これらの定義と相互関係 (\(f=1/T, v=\lambda/T=f\lambda\))。
  • \(y-x\) グラフの解釈: ある瞬間の波の形。波長と振幅、各点の変位がわかる。
  • 波の伝播と媒質の振動: 波は位相とエネルギーを運ぶが、媒質自体は定位置で単振動する(横波の場合)。
  • 媒質の振動速度: 変位ゼロで最大(絶対値)、変位最大(山・谷)でゼロ。向きの判断が重要。
  • 波形の時間変化: 「一度も重ならなかった」などの条件から、波の移動距離や時間を正しく読み取る。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • グラフの読み取りは丁寧に: 目盛りや、どの線がどの時刻に対応するかを正確に把握する。
  • 条件文の重要性: 「一度もなかった」のような文言は、解の候補を絞り込む上で決定的。
  • 媒質の振動方向の判断方法の習熟:
    • 波形を進行方向に少し動かしてみる。
    • \(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) の関係式を理解して使う(符号に注意)。
  • 図と点の対応: 問題文中の点(O, P, Qなど)がグラフ上のどの \(x\) 座標を指すのか明確にする。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 波の速さ \(v\) と媒質の振動速度 \(v_y\) の混同: これらは異なる物理量。
  • 波の移動距離 \(\Delta x\) の読み間違い: 特に複数波長移動した場合との区別。
  • 媒質の振動方向の誤判断: 波の進行方向と傾き、あるいは波形をずらす方向を間違える。例えば、波が \(+x\) 方向に進むとき、ある点の媒質は、その点の左側の波形がやってくることで動く。
  • 速度ゼロと速度最大の点の混同: 山・谷で速度ゼロ、変位ゼロ(\(y=0\))の点で速度最大。

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