未来の得点力へ!物理基礎 問題演習「波形グラフの移動と媒質の振動(波長・周期・速さ・振動方向)」【高校物理対応】

今回の問題

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【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波形グラフの読み取りと物理量の導出」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 波の基本パラメータ: グラフから波長\(\lambda\)と振幅\(A\)を直接読み取り、波形の時間変化から周期\(T\)と速さ\(v\)を導出します。
  • 波の基本公式: 波の速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)の関係式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を用います。
  • 媒質の振動: 波は進行しますが、媒質はその場で単振動しています。媒質の速度は、単振動における速度変化(変位ゼロで最大、変位最大でゼロ)に対応します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず\(t=0\) sの波形(実線)から振幅\(A\)と波長\(\lambda\)を読み取ります。次に、\(t=0\) sから\(t=1.5\) sへの波形の移動距離\(\Delta x\)を特定し、それを用いて周期\(T\)と速さ\(v\)を計算します。
  2. (2)では、媒質の振動速度がゼロになる条件(単振動の折り返し点=波の山・谷)を考え、\(t=0\) sのグラフ上で該当する点を探します。
  3. (3)では、媒質の振動速度が最大になる条件(単振動の中心=変位ゼロ)と、その速度の向きを判断する方法(波形を進行方向に少しずらす)を用いて、該当する点を探します。

問(1)

思考の道筋とポイント
波の基本的な4つの物理量(波長、振幅、周期、速さ)を求める問題です。振幅\(A\)と波長\(\lambda\)は\(t=0\) sの\(y-x\)グラフから直接読み取れます。周期\(T\)と速さ\(v\)は、\(1.5\) s後の波形(破線)への移動の様子から導出します。「この間に実線が破線の状態になったことは一度もなかった」という条件が、波の移動距離を特定する上で非常に重要です。
この設問における重要なポイント

  • 振幅\(A\): 振動の中心(\(y=0\))から山または谷までの最大の変位。
  • 波長\(\lambda\): 波1つ分の空間的な長さ。グラフの同じ位相の点(例:山から山)の間の距離。
  • 周期\(T\)の求め方: ある点(例:谷)が\(\Delta t\)秒間に\(\Delta x\)だけ移動したとき、移動距離の割合と時間の割合は等しい、すなわち \(\displaystyle\frac{\Delta x}{\lambda} = \frac{\Delta t}{T}\) の関係が成り立ちます。
  • 速さ\(v\)の求め方: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) または \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) で計算できます。

具体的な解説と立式
与えられた\(t=0\) sの波形(実線)のグラフから、各物理量を読み取ります。

振幅 \(A\)
グラフのy軸の最大値から、振幅は
$$ A = 0.2 \text{ [m]} $$

波長 \(\lambda\)
グラフは\(x=0\)から\(x=12\) mまででちょうど1波長分を描いています。したがって、波長は
$$ \lambda = 12 \text{ [m]} $$

周期 \(T\)
波は\(x\)軸の正の向きに進みます。\(t=0\) s(実線)の谷の位置は \(x=3\) mです。\(t=1.5\) s(破線)の谷の位置は \(x=6\) mです。
この時間 \(\Delta t = 1.5\) s の間に、波は \(\Delta x = 6 – 3 = 3\) m だけ進みました。
この移動距離 \(\Delta x\) は、波長 \(\lambda\) の \(\displaystyle\frac{3}{12} = \frac{1}{4}\) 倍です。
波の移動は1波長未満なので、経過時間 \(\Delta t\) も1周期 \(T\) 未満です。
したがって、経過時間 \(\Delta t\) は周期 \(T\) の \(\displaystyle\frac{1}{4}\) 倍に相当します。
$$ \Delta t = \frac{1}{4} T $$
数値を代入して、
$$ 1.5 = \frac{1}{4} T $$
よって、周期\(T\)は
$$ T = 1.5 \times 4 = 6.0 \text{ [s]} $$

波の速さ \(v\)
波の基本式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を用いて計算します。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
  • 波の移動と周期の関係: \(\displaystyle\frac{\Delta x}{\lambda} = \frac{\Delta t}{T}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
v &= \frac{\lambda}{T} \\[2.0ex]&= \frac{12}{6.0} \\[2.0ex]&= 2.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
(別のアプローチとして、\(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t} = \frac{3}{1.5} = 2.0\) m/s と計算することもでき、結果が一致することを確認できます。)

計算方法の平易な説明

振幅と波長は、\(t=0\)のグラフ(実線)から直接読み取ります。振幅は波の高さの半分で\(0.2\) m、波長は波一個の長さで\(12\) mです。次に、実線の谷(\(x=3\))が1.5秒後に破線の谷(\(x=6\))に移動したので、波は1.5秒で3 m進んだことがわかります。この3 mという距離は、波長12 mのちょうど4分の1です。つまり、4分の1回振動するのに1.5秒かかったので、1回振動する時間(周期)は \(1.5 \times 4 = 6.0\) sです。波の速さは「距離÷時間」で、\(3 \text{ m} \div 1.5 \text{ s} = 2.0\) m/sと計算できます。

結論と吟味

求めた各物理量は、振幅 \(A=0.2\) m、波長 \(\lambda=12\) m、周期 \(T=6.0\) s、速さ \(v=2.0\) m/sです。単位も正しく、計算結果も物理的に妥当です。

解答 (1) 振幅 \(A = 0.2\) m, 波長 \(\lambda = 12\) m, 周期 \(T = 6.0\) s, 速さ \(v = 2.0\) m/s

問(2)

思考の道筋とポイント
\(t=0\) sの瞬間に、媒質の振動速度が\(0\) m/sになる位置を特定する問題です。媒質は単振動しており、その速度がゼロになるのは振動の「折り返し点」です。波において、媒質の振動の折り返し点は「山」と「谷」の頂点に対応します。
この設問における重要なポイント

  • 媒質の振動速度がゼロになるのは、変位が最大(山)または最小(谷)の点である。
  • \(t=0\) sの波形である実線グラフ上で、山と谷の位置を特定する。

具体的な解説と立式
媒質の各点は、波の進行に伴って上下に単振動します。単振動において、速度が\(0\)になるのは、変位が最大となる両端、すなわち波の「山」と「谷」です。
\(t=0\) sの波形は実線で示されています。グラフ上で山と谷の位置を確認します。

  • 点P (\(x=3\) m): 実線グラフの谷の頂点です。ここで変位は最小(\(y=-0.2\) m)となり、振動速度は\(0\) m/sです。
  • 点R (\(x=9\) m): 実線グラフの山の頂点です。ここで変位は最大(\(y=0.2\) m)となり、振動速度は\(0\) m/sです。

点O, Q, Sは変位が\(0\)の位置であり、振動速度は最大となるため、該当しません。

計算過程

この設問は計算を必要とせず、物理法則の理解に基づきグラフから読み取る問題です。

  1. 媒質の速度が0になるのは、変位が最大・最小の点(山と谷)であることを理解する。
  2. \(t=0\) sの実線グラフ上で、山と谷の位置を探す。
  3. 山は \(x=9\) m (点R)、谷は \(x=3\) m (点P) であることを特定する。
計算方法の平易な説明

媒質の動きは、上下に揺れるブランコのようなものです。ブランコが一番高いところや一番低いところに来たときに一瞬止まるのと同じで、波の媒質も一番高い「山」と一番低い「谷」で速度がゼロになります。\(t=0\)の時の波の形(実線)を見ると、点Pが谷、点Rが山になっているので、この2点が答えです。

結論と吟味

\(t=0\) sにおいて振動速度が\(0\) m/sとなるのは、山の頂点Rと谷の頂点Pです。

解答 (2) P, R

問(3)

思考の道筋とポイント
\(t=0\) sの瞬間に、媒質の速度が\(y\)軸の正の向き(上向き)に最大となる位置を特定する問題です。まず、速度が最大になるのは変位がゼロの点であることを押さえます。次に、それらの点のうち、どちらの向きに動くかを判断します。波の進行方向が分かっているので、波形を少しだけ進行方向にずらしてみることで、各点の媒質の次の動きを予測できます。
この設問における重要なポイント

  • 媒質の振動速度が最大になるのは、変位がゼロ(振動の中心)の点である。
  • 速度の向きは、波の進行方向から判断する。波が\(+x\)方向に進む場合、ある点の媒質の動きは、その点の少し左側の波形がやってくることで決まる。
  • 簡単な判断方法として「波形を進行方向に少しずらして、元の位置のy座標の変化を見る」というテクニックが有効。

具体的な解説と立式
媒質の振動速度が最大になるのは、変位が\(y=0\)となる振動の中心です。
\(t=0\) sの波形(実線)で、変位が\(y=0\)となるのは、点O(\(x=0\))、点Q(\(x=6\))、点S(\(x=12\))です。

次に、これらの点での速度の向きを判断します。波は\(x\)軸の正の向き(右向き)に進んでいます。波形全体が少しだけ右にずれた後の様子を想像します。

  • 点O (\(x=0\)): 波が少し右にずれると、もともと\(x=0\)の左側にあった波の山に近い部分が\(x=0\)にやってきます。つまり、\(x=0\)の媒質の変位は正の方向に変化します。したがって、点Oの速度は\(y\)軸正の向きです。
  • 点Q (\(x=6\)): 波が少し右にずれると、もともと\(x=6\)の左側にあった波の谷に近い部分が\(x=6\)にやってきます。つまり、\(x=6\)の媒質の変位は負の方向に変化します。したがって、点Qの速度は\(y\)軸負の向きです。
  • 点S (\(x=12\)): 点Sは点Oからちょうど1波長分離れているため、振動の状態は点Oと全く同じです。したがって、点Sの速度も\(y\)軸正の向きです。

以上から、\(y\)軸の正の向きに速度が最大となるのは、点Oと点Sです。

計算過程

この設問も計算は不要で、物理的な考察から答えを導きます。

  1. 速度が最大になるのは変位が0の点であることを確認し、候補としてO, Q, Sを挙げる。
  2. 波が右に進むことを考慮し、波形を少し右にずらした図を頭に描く(または実際に描く)。
  3. 元の\(x\)座標(0, 6, 12)で、変位\(y\)がどう変化したかを見る。
    • \(x=0\): \(y\)は0から正へ → 正の向きの速度
    • \(x=6\): \(y\)は0から負へ → 負の向きの速度
    • \(x=12\): \(y\)は0から正へ → 正の向きの速度
  4. 正の向きの速度を持つOとSが答えであると結論づける。
計算方法の平易な説明

媒質の速さが一番速くなるのは、振動の真ん中(\(y=0\)の場所)を通過するときです。\(t=0\)のグラフ(実線)で\(y=0\)の点はO, Q, Sです。次に、これらの点が上向きに動くか下向きに動くかを見ます。波は右に進むので、波の形全体をほんの少し右にずらしてみましょう。すると、元のOとSの位置では波が上に動き、元のQの位置では波が下に動くことがわかります。したがって、上向き(正の向き)に最大の速さで動いているのはOとSです。

結論と吟味

\(t=0\) sにおいて、変位がゼロで、かつ\(y\)軸正の向きに速度を持つのは点Oと点Sです。これらは速度が最大となる点です。

解答 (3) O, S

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波形グラフ(\(y-x\)グラフ)の解読能力:
    • 核心: この問題は、ある瞬間の波の形を示す\(y-x\)グラフから、波の基本的な物理量(振幅\(A\)、波長\(\lambda\))を読み取り、さらに異なる時刻のグラフとの比較から動的な情報(周期\(T\)、速さ\(v\))を導き出す能力が問われています。
    • 理解のポイント: 最も重要なのは、波の進行(エネルギーが伝わる動き)と、媒質の振動(各点がその場で上下する動き)という2つの運動を明確に区別して理解することです。グラフ上の「形」の移動と、グラフ上の「点」の上下動は、連動しつつも異なる現象です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 波の進行方向が逆: 波が\(x\)軸の負の向きに進む場合、媒質の速度の向きの判断が逆になります(波形を左にずらして考える)。
    • \(y-t\)グラフが与えられた場合: ある一点の媒質の時間変化を示す\(y-t\)グラフからは、振幅\(A\)と周期\(T\)を直接読み取れますが、波長\(\lambda\)は直接読み取れません。\(v\)が分かっていれば \(\lambda = vT\) で計算できます。
    • 波の式を立てる問題: この問題で求めた\(A, T, \lambda\)を使って、\(y = A \sin 2\pi \left( \displaystyle\frac{t}{T} – \displaystyle\frac{x}{\lambda} \right)\) の形の式を立てる問題に発展することがあります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 静的な情報を読み取る: まず、1つの波形グラフから直接読み取れる静的な情報(振幅\(A\)、波長\(\lambda\))を確定させます。
    2. 動的な情報を読み取る: 次に、2つの時刻の波形を比較して、動的な情報(移動距離\(\Delta x\)、経過時間\(\Delta t\))を読み取ります。このとき、「一度も重ならなかった」などの制約条件に細心の注意を払います。
    3. 媒質の運動を考える: 媒質の速度に関する問いでは、必ず「単振動」の知識に立ち返ります。「速度ゼロはどこか?→折り返し点(山・谷)」「速度最大はどこか?→中心(変位ゼロ)」という対応関係を瞬時に思い出せるようにします。
    4. 速度の向きを判断する: 「波形を進行方向に少しずらす」という視覚的なテクニックは、向きを判断する上で非常に強力で間違いが少ない方法です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 波の速さ(\(v\))と媒質の振動速度(\(v_y\))の混同:
    • 誤解: 波の速さ\(v\)は一定ですが、媒質の速度\(v_y\)は単振動に従って刻一刻と変化します。これらは全く別の物理量です。
    • 対策: 「波の速さ」は波形全体が進む速さ、「媒質の速度」は媒質の一点が上下する速さ、と常に区別して考える癖をつけましょう。
  • 「一度もなかった」という条件の見落とし:
    • 誤解: この条件がないと、波の移動距離は \(\Delta x = 3 + n\lambda\) (nは整数) の可能性があり、周期が一意に定まりません。
    • 対策: 問題文の注釈や但し書きは、解を一つに絞るための重要なヒントです。必ず下線を引くなどして見落とさないようにしましょう。
  • 媒質の速度の向きの判断ミス:
    • 誤解: 波が右に進むのに、媒質も右に動くと勘違いする(横波ではありえません)。また、波形をずらす方向を間違える。
    • 対策: 「波形を進行方向にずらす」と覚え、実際に図に矢印を書き込んでみましょう。例えば、\(x=0\)の点の次の動きは、\(x=0\)の点の「未来」なので、波形を「未来」の形(少し右にずらした形)にして、\(x=0\)の位置の\(y\)座標を見ればよい、と論理的に理解します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) (波の基本式):
    • 選定理由: 波の最も基本的な性質を表す式であり、波の動的な側面(速さ)と静的な側面(波長、周期)を結びつけます。
    • 適用根拠: 「波は1周期(\(T\))の時間をかけて、ちょうど1波長(\(\lambda\))の距離を進む」という波の定義そのものを数式化したものです。速さ=距離÷時間の基本に立ち返れば自然に導かれます。
  • \(\displaystyle\frac{\Delta x}{\lambda} = \frac{\Delta t}{T}\) (移動の割合と時間の割合):
    • 選定理由: 周期\(T\)を直接求める際に非常に便利な考え方です。
    • 適用根拠: 波は一定の速さ\(v\)で進むので、進んだ距離は経過時間に比例します。したがって、全距離(\(\lambda\))に対する部分的な距離(\(\Delta x\))の割合は、全時間(\(T\))に対する部分的な時間(\(\Delta t\))の割合に等しくなります。これは、\(v = \frac{\Delta x}{\Delta t}\) と \(v = \frac{\lambda}{T}\) から \(\frac{\Delta x}{\Delta t} = \frac{\lambda}{T}\) となり、式変形すれば導けます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 複数の方法で検算する: (1)で速さ\(v\)を求めるとき、\(v = \lambda/T\) と \(v = \Delta x / \Delta t\) の両方で計算し、結果が一致するか確認しましょう。一致すれば、\(\lambda, T, \Delta x, \Delta t\) の読み取りがすべて正しかった可能性が非常に高まります。
  • 図に書き込む: 媒質の速度の向きを考えるとき、頭の中だけで処理せず、問題用紙の図に「波をずらした様子」や「媒質の動く向きの矢印」を実際に書き込みましょう。視覚化することで、ケアレスミスを劇的に減らせます。
  • 単位の確認: グラフの軸に書かれている単位([m], [s])を最初に確認し、最終的な答えにも正しい単位を付けることを徹底しましょう。
  • 物理量の定義に立ち返る: 「周期って何だっけ?→1回振動する時間」「波長って何だっけ?→波1個の長さ」のように、迷ったら基本の定義に立ち返ることで、混乱を防ぎ、正しいアプローチを選択できます。

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