今回の問題
electromagnetic#33【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「電圧計の内部抵抗と回路の読み替え」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電圧計の内部抵抗: 理想的な電圧計の内部抵抗は無限大ですが、実際の電圧計は有限の、しかし非常に大きな内部抵抗を持ちます。電圧計を回路に接続するということは、その部分に抵抗を並列に接続することと等価です。
- 直並列回路の合成抵抗: 回路をブロックに分け、並列部分と直列部分の合成抵抗を正しく計算する能力が求められます。
- オームの法則とキルヒホッフの法則: 回路の各部分における電圧、電流、抵抗の関係を正しく立式するために不可欠です。特に、キルヒホッフの第2法則(電圧則)を用いて、回路全体の電圧の関係を捉えることが重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず電圧計が接続された状態の回路を考えます。電圧計は内部抵抗 \(R_V = 72 \, \text{k}\Omega\) を持つ抵抗とみなせます。この電圧計が、ab間の抵抗 \(R_{ab} = 24 \, \text{k}\Omega\) に並列に接続されています。
- この並列部分の電圧が \(180 \, \text{V}\) と与えられているので、キルヒホッフの第2法則を用いて、抵抗 \(r\) にかかる電圧を求めます。
- 次に、並列部分を流れる電流の合計を計算し、それが抵抗 \(r\) を流れる電流と等しいことを利用して、オームの法則から \(r\) の値を求めます。
- (2)では、電圧計を接続しない、元の単純な直列回路を考えます。この回路で、抵抗の比に応じて電源電圧がどのように分圧されるかを計算し、ab間の電圧を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
bc間の抵抗 \(r\) を求める問題です。まず、問題で与えられた「電圧計を接続した状態」の回路を正確に把握することが重要です。内部抵抗 \(R_V = 72 \, \text{k}\Omega\) の電圧計をab間に接続するということは、\(24 \, \text{k}\Omega\) の抵抗に \(72 \, \text{k}\Omega\) の抵抗を並列に接続することと同じです。
この並列部分の電圧が \(V_{ab} = 180 \, \text{V}\) と分かっています。回路全体は、この「ab間の並列部分」と「bc間の抵抗 \(r\)」が直列に接続されたものと見なせます。
全体の電圧は \(540 \, \text{V}\) なので、キルヒホッフの第2法則(電圧則)から、bc間にかかる電圧 \(V_{bc}\) を求めることができます。
次に、ab間の並列部分を流れる電流の合計を計算します。この電流が、直列接続されたbc間を流れる電流と等しくなります。最後に、bc間についてオームの法則を適用すれば、抵抗 \(r\) の値が求まります。
この設問における重要なポイント
- 電圧計の接続を、抵抗の並列接続として正しくモデル化できるか。
- キルヒホッフの電圧則を用いて、回路の各部分の電圧配分を理解する。
- 直列部分では電流が共通であることを利用する。
- 単位 k\(\Omega\) (キロオーム) の扱いに注意する。計算を k\(\Omega\), V, mA の単位系で行うと簡潔になる。
具体的な解説と立式
電圧計の内部抵抗を \(R_V = 72 \, \text{k}\Omega\)、ab間の抵抗を \(R_1 = 24 \, \text{k}\Omega\) とします。
電圧計を接続したとき、ab間は \(R_1\) と \(R_V\) の並列接続となります。この並列部分にかかる電圧が、電圧計の読みである \(V_{ab} = 180 \, \text{V}\) です。
回路全体は、このab間の並列部分と、bc間の抵抗 \(r\) の直列接続です。電源電圧は \(E = 540 \, \text{V}\) です。
キルヒホッフの第2法則より、電源電圧は各部分の電圧降下の和に等しいので、
$$ E = V_{ab} + V_{bc} $$
ここで \(V_{bc}\) はbc間にかかる電圧です。この式から \(V_{bc}\) を求めます。
$$ V_{bc} = E – V_{ab} \quad \cdots ① $$
次に、回路を流れる電流 \(I\) を求めます。この電流は、ab間の並列部分全体を流れ、そのままbc間の抵抗 \(r\) を流れます。
ab間の並列部分を流れる電流は、\(R_1\) を流れる電流 \(I_1\) と電圧計を流れる電流 \(I_V\) の和です。
$$ I = I_1 + I_V $$
オームの法則より、\(I_1 = \displaystyle\frac{V_{ab}}{R_1}\), \(I_V = \displaystyle\frac{V_{ab}}{R_V}\) なので、
$$ I = \frac{V_{ab}}{R_1} + \frac{V_{ab}}{R_V} \quad \cdots ② $$
最後に、bc間についてオームの法則を適用します。
$$ V_{bc} = r I \quad \cdots ③ $$
この式を \(r\) について解き、①と②の結果を代入します。
使用した物理公式
- キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(E = V_1 + V_2\)
- オームの法則: \(V = RI\)
まず、式①を用いて \(V_{bc}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{bc} &= 540 – 180 \\[2.0ex]&= 360 \, [\text{V}]\end{aligned}
$$
次に、式②を用いて電流 \(I\) を計算します。単位を V, k\(\Omega\) に揃えると、電流の単位は mA になります。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{180}{24} + \frac{180}{72} \\[2.0ex]&= 7.5 + 2.5 \\[2.0ex]&= 10.0 \, [\text{mA}]\end{aligned}
$$
最後に、式③を \(r\) について解き、求めた値を代入します。
$$ r = \frac{V_{bc}}{I} $$
ここに \(V_{bc} = 360 \, \text{V}\), \(I = 10.0 \, \text{mA}\) を代入します。V, mA, k\(\Omega\) の単位系で計算すると、
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{360 \, [\text{V}]}{10.0 \, [\text{mA}]} \\[2.0ex]&= 36 \, [\text{k}\Omega]\end{aligned}
$$
と直接求めることができます。
電圧計をつなぐと、その場所に \(72 \, \text{k}\Omega\) の抵抗が追加されたのと同じことになります。まず、回路全体の電圧 \(540 \, \text{V}\) のうち、ab間に \(180 \, \text{V}\) かかっているので、残りの電圧 \(540 – 180 = 360 \, \text{V}\) が抵抗 \(r\) にかかっていることがわかります。次に、ab間を流れる電流を計算します。これは、\(24 \, \text{k}\Omega\) の抵抗を流れる電流と、電圧計(\(72 \, \text{k}\Omega\) の抵抗)を流れる電流の合計です。この合計電流が、そのまま抵抗 \(r\) にも流れます。最後に、抵抗 \(r\) についてオームの法則「抵抗 = 電圧 ÷ 電流」を使えば、\(r\) の値が求まります。
bc間の抵抗 \(r\) は \(36 \, \text{k}\Omega\) となります。計算過程、単位の扱いともに問題なく、物理的に妥当な値です。
思考の道筋とポイント
電圧計を含めたab間の並列部分の合成抵抗を先に計算し、回路全体を単純な直列回路とみなして解くアプローチです。これにより、未知数が抵抗 \(r\) と全体の電流 \(I\) のみとなり、見通しが良くなります。
この設問における重要なポイント
- 電圧計を抵抗とみなし、並列合成抵抗を計算する。
- 単純化した直列回路にオームの法則とキルヒホッフの法則を適用する。
具体的な解説と立式
まず、\(R_1 = 24 \, \text{k}\Omega\) と電圧計の内部抵抗 \(R_V = 72 \, \text{k}\Omega\) の並列合成抵抗 \(R_p\) を求めます。
$$ \frac{1}{R_p} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_V} \quad \cdots ④ $$
このとき、回路は合成抵抗 \(R_p\) と抵抗 \(r\) の直列接続とみなせます。この回路を流れる電流を \(I\) とします。
ab間の電圧は \(V_{ab} = 180 \, \text{V}\) なので、オームの法則より、
$$ V_{ab} = R_p I \quad \cdots ⑤ $$
また、回路全体についてキルヒホッフの第2法則を考えると、
$$ E = (R_p + r)I \quad \cdots ⑥ $$
これらの式を連立して \(r\) を求めます。
使用した物理公式
- 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \displaystyle\frac{1}{R_1} + \displaystyle\frac{1}{R_2}\)
- オームの法則: \(V = RI\)
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)
まず、式④から合成抵抗 \(R_p\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_p} &= \frac{1}{24} + \frac{1}{72} \\[2.0ex]&= \frac{3}{72} + \frac{1}{72} \\[2.0ex]&= \frac{4}{72} \\[2.0ex]&= \frac{1}{18}
\end{aligned}
$$
よって、\(R_p = 18 \, [\text{k}\Omega]\) です。
次に、式⑤から回路全体の電流 \(I\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{V_{ab}}{R_p} \\[2.0ex]&= \frac{180 \, [\text{V}]}{18 \, [\text{k}\Omega]} \\[2.0ex]&= 10 \, [\text{mA}]\end{aligned}
$$
最後に、この \(I\) と \(R_p\) の値を式⑥に代入して \(r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
540 &= (18 + r) \times 10 \\[2.0ex]54 &= 18 + r \\[2.0ex]r &= 54 – 18 \\[2.0ex]&= 36 \, [\text{k}\Omega]\end{aligned}
$$
(計算では単位を V, k\(\Omega\), mA に統一しています)
まず、電圧計を含んだab間の部分を、一つの抵抗とみなしてその大きさを計算します。すると \(18 \, \text{k}\Omega\) になります。この \(18 \, \text{k}\Omega\) の抵抗に \(180 \, \text{V}\) の電圧がかかっているので、オームの法則から回路全体を流れる電流が \(10 \, \text{mA}\) だとわかります。この電流は抵抗 \(r\) にも流れます。回路全体で見ると「\(18 \, \text{k}\Omega\) の抵抗と抵抗 \(r\) が直列につながっている」ので、全体の電圧 \(540 \, \text{V}\) についてオームの法則を立てれば、\(r\) が求まります。
メインの解法と同じく、\(r = 36 \, \text{k}\Omega\) が得られました。合成抵抗を先に求めることで、回路の見通しを立てやすくなる有効なアプローチです。
問(2)
思考の道筋とポイント
電圧計を接続しないときのab間の電圧 \(V_{ab}\) を求める問題です。電圧計を外すと、この回路は \(R_1 = 24 \, \text{k}\Omega\) の抵抗と、(1)で求めた \(r = 36 \, \text{k}\Omega\) の抵抗が、電源 \(E = 540 \, \text{V}\) に直列に接続されただけの単純な回路になります。
直列回路では、各抵抗にかかる電圧は、抵抗の大きさに比例して分配されます(分圧)。この「分圧の法則」を用いて \(V_{ab}\) を求めるのが最も効率的です。
この設問における重要なポイント
- 電圧計を外した、本来の回路構成を考える。
- 単純な直列回路における電圧の分配(分圧)を理解している。
- 分圧の公式 \(V_1 = E \times \displaystyle\frac{R_1}{R_1+R_2}\) を使えるか。
具体的な解説と立式
電圧計を接続しない場合、回路は抵抗 \(R_1 = 24 \, \text{k}\Omega\) と \(r = 36 \, \text{k}\Omega\) の直列接続となります。
電源電圧 \(E = 540 \, \text{V}\) が、これら2つの抵抗に分圧されます。
ab間の電圧 \(V_{ab}\) は、抵抗 \(R_1\) にかかる電圧です。分圧の公式より、
$$ V_{ab} = E \times \frac{R_1}{R_1 + r} \quad \cdots ⑦ $$
この式に、与えられた値と(1)で求めた \(r\) の値を代入します。
使用した物理公式
- 分圧の公式: \(V_1 = E \times \displaystyle\frac{R_1}{R_1+R_2}\)
式⑦に \(E = 540 \, \text{V}\), \(R_1 = 24 \, \text{k}\Omega\), \(r = 36 \, \text{k}\Omega\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_{ab} &= 540 \times \frac{24}{24 + 36} \\[2.0ex]&= 540 \times \frac{24}{60} \\[2.0ex]&= 540 \times \frac{2}{5} \\[2.0ex]&= 216 \, [\text{V}]\end{aligned}
$$
今度は電圧計がない状態の回路を考えます。これは、\(24 \, \text{k}\Omega\) と \(36 \, \text{k}\Omega\) の抵抗が一本道でつながっているだけの簡単な直列回路です。直列回路では、電源の電圧が、抵抗の大きさの比に応じて分けられます。抵抗の比は \(24:36 = 2:3\) なので、電圧も \(2:3\) の比で分けられます。全体の電圧 \(540 \, \text{V}\) を \(2:3\) に分けたときの、\(2\) の方の電圧を計算すれば、それがab間の電圧になります。
電圧計を接続しないときのab間の電圧は \(216 \, \text{V}\) となります。
ここで、(1)の電圧計の読み \(180 \, \text{V}\) と比較してみましょう。電圧計を接続すると、測定対象の電圧が \(216 \, \text{V}\) から \(180 \, \text{V}\) に変化してしまいました。これは、電圧計自身の内部抵抗が回路に影響を与え、本来の電圧よりも低い値が測定されてしまうことを示しています。この問題は、測定機器が測定対象に影響を与えるという、物理実験における重要な概念を教えてくれます。
思考の道筋とポイント
分圧の公式を直接使わず、より基本に立ち返り、まず回路全体の電流を計算し、その電流からオームの法則を使って目的の電圧を求める方法です。分圧の公式の導出過程をなぞるアプローチであり、基本に忠実な解法です。
この設問における重要なポイント
- 直列回路の合成抵抗を求める。
- 回路全体の電流をオームの法則で計算する。
- 目的の部分の電圧をオームの法則で計算する。
具体的な解説と立式
まず、電圧計を外した直列回路全体の合成抵抗 \(R_{AC}\) を求めます。
$$ R_{AC} = R_1 + r \quad \cdots ⑧ $$
次に、この回路を流れる電流 \(I’\) をオームの法則で求めます。
$$ I’ = \frac{E}{R_{AC}} \quad \cdots ⑨ $$
最後に、この電流 \(I’\) を用いて、ab間の電圧 \(V_{ab}\) をオームの法則で求めます。
$$ V_{ab} = R_1 I’ \quad \cdots ⑩ $$
使用した物理公式
- 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
- オームの法則: \(V = RI\)
式⑧より、合成抵抗 \(R_{AC}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R_{AC} &= 24 \, [\text{k}\Omega] + 36 \, [\text{k}\Omega] \\[2.0ex]&= 60 \, [\text{k}\Omega]\end{aligned}
$$
式⑨より、電流 \(I’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I’ &= \frac{540 \, [\text{V}]}{60 \, [\text{k}\Omega]} \\[2.0ex]&= 9.0 \, [\text{mA}]\end{aligned}
$$
式⑩より、電圧 \(V_{ab}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{ab} &= 24 \, [\text{k}\Omega] \times 9.0 \, [\text{mA}] \\[2.0ex]&= 216 \, [\text{V}]\end{aligned}
$$
分圧の公式を使わなくても、まず回路全体の抵抗(\(24+36=60 \, \text{k}\Omega\))を計算し、次にオームの法則で全体の電流(\(540 \div 60 = 9.0 \, \text{mA}\))を求めます。最後に、この電流を使ってab間の電圧をオームの法則(\(24 \times 9.0 = 216 \, \text{V}\))で計算することもできます。
メインの解法と同じく、\(V_{ab} = 216 \, \text{V}\) が得られました。段階的に計算を進めることで、分圧の公式を忘れても対応できる確実な方法です。
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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 測定機器の非理想性(内部抵抗)の理解:
- 核心: この問題の最も重要なポイントは、「電圧計を接続する」という行為が、単に電圧を読み取るだけでなく、「回路に内部抵抗という名の抵抗を並列に組み込む」ことと等価であると理解できるかです。理想的な測定は不可能であり、測定行為自体が測定対象の状態を変化させてしまう、という物理の根源的なテーマを内包しています。
- 理解のポイント: 電圧計は内部抵抗が(理想的には無限に)大きい抵抗、電流計は内部抵抗が(理想的にはゼロに)小さい抵抗として回路図に書き込んでしまうのが、この種の問題を解く上での定石です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 電流計の内部抵抗: 電流計を回路に直列に接続して電流を測る問題。この場合、電流計は小さな内部抵抗を持つ抵抗として扱い、直列に回路に組み込んで計算します。
- ホイートストンブリッジと検流計: ブリッジ回路の平衡を調べる検流計にも内部抵抗があります。平衡していないブリッジ回路の計算では、この検流計の内部抵抗を考慮する必要があります。
- 分圧器・分流器: 抵抗を組み合わせて、大きな電圧や電流を測定可能な範囲に変換する回路の問題。これも内部抵抗の考え方の応用です。
- 初見の問題での着眼点:
- 測定器のモデル化: 問題文に「内部抵抗〜の電圧計(電流計)」とあったら、即座にそれをただの抵抗器に置き換えて回路図を書き直します。電圧計なら並列に、電流計なら直列に接続します。
- 「測定前」と「測定後」の回路を区別する: この問題のように、測定器を接続する前と後で状況が異なる場合は、それぞれ別の回路図として考え、混同しないようにします。
- 既知の電圧・電流から攻める: 問題文で測定値(この問題では \(180 \, \text{V}\))が与えられている場合、その値が回路のどの部分に対応するのかを正確に特定し、そこを起点にオームの法則やキルヒホッフの法則を適用して、未知の量を逆算していきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電圧計の扱い:
- 誤解: 電圧計を接続しても回路は変化しないと思い込み、(1)の計算を電圧計がない状態で考えてしまう。
- 対策: 「測定器は回路の一部」という意識を徹底すること。電圧計は「並列抵抗」、電流計は「直列抵抗」と機械的に変換する癖をつけましょう。
- 単位の混同 (k, Mなど):
- 誤解: k\(\Omega\) (キロオーム) や mA (ミリアンペア) の計算で、\(10^3\) や \(10^{-3}\) の扱いを間違える。
- 対策: 計算を始める前に、全ての単位を基本単位(V, A, \(\Omega\))に統一するのが最も安全です。あるいは、(V, mA, k\(\Omega\)) のように、整合性の取れた単位系で計算を進める方法に習熟するのも有効です。後者の場合、\(V = \text{k}\Omega \times \text{mA}\) という関係が成り立ちます。
- 分圧の公式の分子・分母の混同:
- 誤解: \(V_1 = E \times \displaystyle\frac{R_2}{R_1+R_2}\) のように、分圧の公式の分子に来る抵抗を間違える。
- 対策: 「求めたい部分の電圧は、その部分の抵抗に比例する」と意味で覚えること。\(R_1\) にかかる電圧を求めたいなら、分子には \(R_1\) が来ると覚えれば間違いません。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電圧計を並列抵抗とみなす考え方:
- 選定理由: これはこの種の問題を解くための「解釈」あるいは「モデル化」であり、最も重要な第一歩です。
- 適用根拠: 電圧は2点間の「電位差」を測るものです。したがって、測定したい2点間に電圧計の端子を接続する必要があります。これは回路構造上、必然的に並列接続となります。電圧計が電流を全く吸い込まなければ(内部抵抗が無限大なら)回路に影響を与えませんが、実際にはわずかに電流が流れ込むため、内部抵抗を持つ抵抗として扱うのが物理的に正しいモデルとなります。
- 分圧の法則:
- 選定理由: 直列回路における各抵抗への電圧の配分を、電流を計算せずに直接求めることができるため、計算が非常に速く、効率的です。
- 適用根拠: 直列回路では電流 \(I\) が共通なので、各抵抗にかかる電圧は \(V_1 = R_1 I\), \(V_2 = R_2 I\) となります。したがって、電圧の比は \(V_1 : V_2 = R_1 I : R_2 I = R_1 : R_2\) となり、抵抗の比に等しくなります。全体の電圧 \(E\) をこの比で分配することから、\(V_1 = E \times \displaystyle\frac{R_1}{R_1+R_2}\) という公式が導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位系を統一して計算する: (1)の計算で、\(r = V_{bc}/I\) を計算する際に、\(V_{bc}=360\), \(I=10\) と単純に代入すると \(r=36\) となりますが、単位が \(\Omega\) なのか k\(\Omega\) なのか混乱しがちです。\(I = 10 \times 10^{-3}\) A と基本単位に直してから計算すれば、\(r = 36 \times 10^3 \, \Omega = 36 \, \text{k}\Omega\) となり、間違いがありません。
- 図を書き直す: 問題の図に直接書き込むだけでなく、(1)の「電圧計を接続した回路」と(2)の「電圧計を外した回路」を、それぞれ別の簡単な図として自分で書き直してみましょう。思考が整理され、ケアレスミスを防げます。
- 比の計算を活用する: (2)の分圧の計算で、\(R_1:r = 24:36 = 2:3\) と簡単な整数比に直してから計算すると、\(V_{ab} = 540 \times \displaystyle\frac{2}{2+3} = 540 \times \frac{2}{5}\) となり、暗算でもできるほど計算が楽になります。
- 測定値の意味を吟味する: (2)で求めた「本来の電圧」\(216 \, \text{V}\) と、(1)の「測定値」\(180 \, \text{V}\) を比較し、「なぜ値が変わったのか?」を考えることが、物理的洞察を深める上で非常に重要です。「電圧計を繋ぐと、ab間の並列合成抵抗が元の \(24 \, \text{k}\Omega\) より小さくなる。だから、分圧される電圧も小さくなるはずだ」と予測できれば、計算結果の妥当性をより深く吟味できます。
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