授業動画
講義ノート(板書PDF)
P-V図が「読める」ようになる思考矯正プログラム
講義ノート
【今回のポイント】
- 物質が状態変化(固体→液体、液体→気体)する間は、熱を加えても温度が一定に保たれる
- 温度変化を伴う過程の熱量は \( Q = mc\Delta T \) で計算する
- 状態変化を伴う過程(温度一定)の熱量は、潜熱(融解熱・気化熱)を用いて計算する
- 加熱時間と温度変化のグラフから、各状態における比熱や潜熱を読み取る方法を習得する
【講義解説】
状態変化と潜熱の基本
前回の第1講では、比熱の公式 \( Q = mc\Delta T \) を使って熱量を計算する方法を学びました。この公式は強力ですが、これだけでは太刀打ちできない現象があります。それが「状態変化」を含むケースです。第2講では、この壁を「公式の追加」ではなく、「現象のどこを式で写し取っているのか」を診断する視点で乗り越えていきます。これがまこと先生のドクター・メソッドの最初のステップ、診断です。
物質は温度に応じて固体・液体・気体の3つの状態をとります。氷(固体)に熱を加え続ければ水(液体)になり、さらに熱を加えれば水蒸気(気体)になります。ここで多くの人がつまずくのが次の事実です。状態変化が起きている最中は、いくら熱を加えても温度が変化しない──熱を入れているのに温度計の針が動かない、という現象です。
例えば、0℃の氷が0℃の水になる過程を考えましょう。この過程では温度変化 \( \Delta T = 0 \) です。もしこの過程の熱量を、第1講の公式 \( Q = mc\Delta T \) でそのまま計算しようとすると、
$$
\begin{aligned}
Q &= mc \times 0 \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
よくあるつまずき
症状:状態変化中の熱量を \( Q = mc\Delta T \) に代入し、\( \Delta T = 0 \) なので「熱量は0」と結論してしまう。
診断:「温度が変わらない=熱が出入りしていない」と直結させる思考のクセ。第1講の比熱の式を、適用範囲を意識せずあらゆる過程に当てはめている。
処方箋:立式の前に必ず「温度が変化する区間か、状態が変化する区間か」を1秒だけ自問する。前者なら \( Q = mc\Delta T \)、後者なら \( Q = mL \) と公式選択を分岐させる。
となり、「熱を一切加えていない」という結論になってしまいます。しかし実際は、氷を溶かすために大量の熱が必要なことを私たちは経験的に知っています。ここに公式と現実のズレ──思考のクセが生み出す矛盾が現れます。
このズレを解消する処方箋として導入されるのが「潜熱」という概念です。「公式が使えないから別の公式を覚えよう」ではなく、「現象のどの部分を、どの式で写し取るのか」を診断し直す──これが第2講の本質です。
状態変化中に温度が上がらないのは、加えた熱が「温度を上げる仕事」ではなく「分子と分子の手をほどく仕事」に全部使われているからです。鍵のかかった金庫をイメージしてください。お金(温度)を引き出すためには、まず鍵を回す手間(潜熱)が必要です。鍵を回している間、お金は1円も増えも減りもしません。けれど確実にエネルギーは使われている。状態変化中の熱は、まさにこの「鍵を回す手間」に相当します。だから温度計の針は動かないのに、熱は確かに入っているのです。
このシミュレーションでは水(H₂O)をモデルにしており、0℃で氷(固体)、100℃で水蒸気(気体)になります。
※キャンバス内をなぞると、指で粒子をかき混ぜることができます。
- 固体 (氷):引力が熱運動に勝り、粒子が規則的に集まって微小振動します。
- 液体 (水):粒子が一部の引力を振り切り、集まりながらも流動します。
- 気体 (水蒸気):熱運動が引力に完全に打ち勝ち、空間全体を飛び回ります。
潜熱(融解熱・気化熱)とは
状態変化に必要な熱量は、比熱の公式とは別の窓から計算します。同じ「熱量」でも、現象のどの部分を写し取っているかが違うので、使う式も変わる──ここが処方箋のポイントです。
融解熱:固体1gが同じ温度の液体に変化するために必要な熱量(\( \text{J}/\text{g} \))
気化熱:液体1gが同じ温度の気体に変化するために必要な熱量(\( \text{J}/\text{g} \))
どちらも「1gあたり何ジュール必要か」という1gあたりの値として与えられている点に注目してください。だから全体の熱量を出すには、質量をかけ算するだけでよい、というシンプルな構造になっています。
状態変化に必要な熱量の公式は次の通りです。
$$
Q = m \times L
$$
ここで、\( m \) は質量、\( L \) は融解熱または気化熱です。比熱の公式 \( Q = mc\Delta T \) と見比べると、「比熱 × 温度変化」のセットがそのまま「潜熱 \( L \)」という1つの量に置き換わっていることが分かります。温度変化が0でも、\( L \) という1gあたりの値が定義されているので、計算ができるわけです。
例えば、融解熱が \( 336\,\text{J}/\text{g} \) のとき、100gの氷を溶かすために必要な熱量は、
$$
\begin{aligned}
Q &= 100 \times 336 \\[2.0ex]
&= 33600\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 3.36 \times 10^4\,\text{J}
\end{aligned}
$$
となります。
融解熱と気化熱の値の大きさを比べてみます。水の融解熱は約 \( 336\,\text{J}/\text{g} \)、水の気化熱は約 \( 2260\,\text{J}/\text{g} \)。同じ100gの水で考えると、
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{融解}} &= 100 \times 336 \\[2.0ex]
&= 33600\,\text{J}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{気化}} &= 100 \times 2260 \\[2.0ex]
&= 226000\,\text{J}
\end{aligned}
$$
気化のほうが融解の約7倍の熱量を必要としています。固体から液体になるとき(分子の手を少しほどく)よりも、液体から気体になるとき(分子を完全に飛び去らせる)のほうが、はるかに大きなエネルギーが必要だ、ということが数値からはっきり読み取れます。やかんでお湯を沸かしてから蒸発しきるまでに時間がかかるのは、この比の差そのものです。
温度変化と状態変化の区別
熱量の問題で最も重要なのは、「温度変化を伴う過程」と「状態変化を伴う過程」を明確に分けて計算することです。ここで思考のクセが出やすいのが、「氷から温水まで全部1本の式でまとめてしまおう」とする発想。それでは式が現実と噛み合いません。
温度変化を伴う過程(見た目は変わらず、温度だけが変化する区間)
→ \( Q = mc\Delta T \) を使う
状態変化を伴う過程(温度は一定のまま、見た目が変わる区間)
→ \( Q = m \times L \)(潜熱)を使う
つまり、「温度が動いている区間」と「温度が止まっている区間」を分けて、それぞれに合った式を当てる──これがドクター・メソッドの処方箋です。
例えば、\( -10\,\text{℃} \) の氷を加熱して最終的に温かい水にする過程は、以下の3つのステップに分けられます。
ステップ1:\( -10\,\text{℃} \) の氷 → \( 0\,\text{℃} \) の氷(温度変化、\( Q = mc\Delta T \)、比熱は氷の比熱を使用)
ステップ2:\( 0\,\text{℃} \) の氷 → \( 0\,\text{℃} \) の水(状態変化、\( Q = m \times \text{融解熱} \))
ステップ3:\( 0\,\text{℃} \) の水 → \( t\,\text{℃} \) の水(温度変化、\( Q = mc\Delta T \)、比熱は水の比熱を使用)
各ステップで使う公式と比熱が違うことに注意してください。氷と水では比熱の値が異なるため、ステップ1とステップ3では別の比熱を使って計算します。「同じ物質だから比熱は1つ」と思い込んでしまうのがよくある思考のクセ。氷と水は分子の並び方が違う別の状態なので、温まりやすさも別物だ──と診断しておきましょう。
3ステップに分ける考え方は、乗り換え時刻表そのものです。東京から博多まで一気に「平均時速で割って所要時間」を出そうとしても、新幹線・在来線・徒歩で速さがバラバラなので正確には出ません。区間ごとに乗り物(速度)を確認して、それぞれの時間を計算してから合計する──これと全く同じことを、熱量計算でもやっています。氷区間(比熱2.1)・融解区間(潜熱336)・水区間(比熱4.2)と、3つの”区間ダイヤ”を別々に処理してから合計するのです。
よくあるつまずき
症状:氷→水→お湯と加熱していく過程で、ステップ1(氷の温度上昇)とステップ3(水の温度上昇)に同じ比熱を当てはめて計算してしまう。
診断:「同じ物質(\( \text{H}_2\text{O} \))だから比熱も同じ」という直感的思考。氷の比熱と水の比熱が約2倍違う(氷 \( 2.1 \) / 水 \( 4.2 \))という事実が頭から抜けている。
処方箋:「状態が違えば比熱も違う」と覚えておく。問題文の比熱表を確認し、各ステップで「いまどの状態にあるか」をチェックしてから比熱の値を選ぶ習慣をつける。
🩺 要点整理
温度変化と状態変化が混ざる問題は、次の3ステップで”診断”すると公式の取り違えを防げます。
この順序を毎回守ることが、第1講の比熱公式と第2講の潜熱公式を取り違えない処方箋です。
加熱グラフの読み方
状態変化を伴う加熱の問題では、横軸に「加熱時間」、縦軸に「温度」をとったグラフがよく登場します。このグラフは、現象を文字どおり「写し取った」ものなので、図の中で何が起きているのかを診断できれば計算は半分終わったようなものです。
傾きがある区間(斜めの線)→ 温度が変化している = 比熱を使う区間
水平な区間(横ばいの線)→ 温度が一定 = 状態変化が起きている区間
グラフから比熱を求める手順は以下の通りです。
- 傾きがある区間の「加熱時間」を読み取る
- 「毎秒の加熱量 × 加熱時間」で、その区間に加えた全熱量を計算する
- \( Q = mc\Delta T \) に代入して、比熱 \( c \) を逆算する
同様に、水平な区間から潜熱を求める手順は以下の通りです。
- 水平な区間の「加熱時間」を読み取る
- 「毎秒の加熱量 × 加熱時間」で、状態変化に使われた全熱量を計算する
- 全熱量を質量で割り、1gあたりの潜熱を求める
最大のポイントは、どの区間がどの状態(固体・液体・気体)に対応しているかを正確に読み取ることです。横軸の数字だけを見て式を立てると、固体と液体を取り違えて比熱を逆算してしまう──これも典型的な思考のクセなので、まずは「ここは氷/ここは融解中/ここは水」と図に色分けする習慣をつけましょう。経過観察として、グラフの右側からだけでなく、毎回区間に印を入れて自分の診断が合っているか確認してください。
加熱グラフの「斜め区間」と「水平区間」は、エレベーターの動きと階の踊り場に例えると一気に腑に落ちます。エレベーターが上に動いているとき(斜め区間)は階数(温度)が変わっています。一方、踊り場で人が乗り降りしている間(水平区間)は階数(温度)は変わらず、別の仕事(状態変化)が進んでいる。エレベーターが「動く時間」と「停まる時間」を分けて読むのと同じように、グラフも斜めと水平を別物として扱う──これが処方箋です。
🩺 要点整理
加熱グラフの読み取りは、次の流れで”診断”します。
グラフの形(斜め/水平)が、そのまま使う公式を指定してくれる──それが加熱グラフの最大のヒントです。
🔗 関連単元
第1講「熱と温度」で学んだ比熱の公式 \( Q = mc\Delta T \) は、温度が変化する区間でしか使えません。本講ではその境界線を越えて「温度が変わらないのに熱が出入りする」状態変化を扱いました。次の第3講「状態方程式の基本 ─ \( PV = nRT \)」からはブロック2(気体)に入り、圧力・体積・温度という別の量の収支を見ていきます。同じ「熱」でも、見るべき主役の量が変わる──この切り替えに備えてください。
練習問題の解説
① 状態変化を伴う熱量保存(問5)
【問題】
質量 \( 100\,\text{g} \),温度 \( -10\,\text{℃} \) の氷を,質量 \( 200\,\text{g} \),温度 \( 65\,\text{℃} \) の湯の中に入れた。氷の比熱を \( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \),氷の融解熱を \( 336\,\text{J}/\text{g} \),水の比熱を \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) とし,また,容器などとの熱のやりとりはないものとして,次の各問いに答えよ。
(1) はじめの \( -10\,\text{℃} \) の氷の温度が \( 0\,\text{℃} \) まで上がるのに要する熱量は何 \( \text{J} \) か。
(2) \( 0\,\text{℃} \) の氷 \( 100\,\text{g} \) が,\( 0\,\text{℃} \) の水になるのに必要な熱量は何 \( \text{J} \) か。
(3) \( 0\,\text{℃} \) の水 \( 100\,\text{g} \) が温度 \( t\,[\text{℃}] \) まで上がるのに必要な熱量 \( Q_1\,[\text{J}] \) を \( t \) を用いた式で表せ。
(4) \( 65\,\text{℃} \) の湯 \( 200\,\text{g} \) が温度 \( t\,[\text{℃}] \) に下がるとき,失う熱量 \( Q_2\,[\text{J}] \) を \( t \) を用いた式で表せ。
(5) \( -10\,\text{℃} \) の氷がとけて \( t\,[\text{℃}] \) になるまでに得た熱量と,\( 65\,\text{℃} \) の湯が \( t\,[\text{℃}] \) に下がるまでに失った熱量との間の関係から,温度 \( t\,[\text{℃}] \) を求めよ。
【解説】
この問題は、まず現象を診断するところから始まります。\( -10\,\text{℃} \) の氷が \( 65\,\text{℃} \) の湯に入って最終的に \( t\,\text{℃} \) の水になる──この間に、氷側では何が起きているでしょうか。氷の温度が上がり、ある瞬間に溶け始め、最後は水として温度上昇する。つまり、氷側だけで3つの異なる現象が連続して起きています。だから処方箋は明らかで、3つのステップに分けてそれぞれに合った式を当てるのです。一気に1本の式で書こうとすると、必ずどこかで現象と式が噛み合わなくなります。
(1) ステップ1:\( -10\,\text{℃} \) の氷 → \( 0\,\text{℃} \) の氷
このステップで起きているのは「氷のまま温度だけが上がる」現象なので、温度変化を伴う過程の窓 \( Q = mc\Delta T \) を選びます。注意すべきは比熱で、ここでは氷の比熱を使うこと。同じH₂Oでも氷と水で比熱は別物だという診断結果を、ここで処方箋に反映させます。
$$
\begin{aligned}
Q &= mc\Delta T \\[2.0ex]
&= 100 \times 2.1 \times \{0 – (-10)\} \\[2.0ex]
&= 100 \times 2.1 \times 10 \\[2.0ex]
&= 2100\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 2.1 \times 10^3\,\text{J}
\end{aligned}
$$
【答え】\( 2.1 \times 10^3\,\text{J} \)
(2) ステップ2:\( 0\,\text{℃} \) の氷 → \( 0\,\text{℃} \) の水
温度は0℃のまま変わらず、見た目だけが氷から水へ変わる──これは状態変化を伴う過程の窓に切り替える合図です。融解熱を使い、温度差ではなく「1gあたりに必要なエネルギー × 質量」で熱量を出します。ここで温度差 \( \Delta T = 0 \) を見て \( Q = mc\Delta T \) を使うと0になってしまうのが思考のクセ。式そのものを切り替えるのが正しい処方箋です。
$$
\begin{aligned}
Q &= m \times \text{融解熱} \\[2.0ex]
&= 100 \times 336 \\[2.0ex]
&= 33600\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 3.36 \times 10^4\,\text{J}
\end{aligned}
$$
【答え】\( 3.36 \times 10^4\,\text{J} \)
(3) ステップ3:\( 0\,\text{℃} \) の水 → \( t\,\text{℃} \) の水
再び温度が動く現象なので、窓は \( Q = mc\Delta T \) に戻ります。ただし、今度の主役は氷ではなく水。だから水の比熱に差し替えます。「ステップ1と同じだろう」と前の比熱を使い回すのが典型的な失敗パターン。ステップが変わるたびに「主役は誰/比熱は誰のもの?」と毎回診断しましょう。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= mc\Delta T \\[2.0ex]
&= 100 \times 4.2 \times (t – 0) \\[2.0ex]
&= 420t\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 4.2t \times 10^2\,\text{J}
\end{aligned}
$$
【答え】\( Q_1 = 4.2t \times 10^2\,\text{J} \)
(4) お湯が \( t\,\text{℃} \) に下がる際に失う熱量
お湯(水)が \( 65\,\text{℃} \) から \( t\,\text{℃} \) に下がります。状態変化は起きず、温度だけが動く現象なので窓は \( Q = mc\Delta T \)。失う熱量を正の値で表すため、温度差は「高い温度 − 低い温度」で計算します。マイナスをそのまま付けて立式して符号で混乱するのも思考のクセの一つ。「失う側は大−小・得る側も大−小、向きは式の左右で表現する」と最初に決めておくと迷いません。
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= mc\Delta T \\[2.0ex]
&= 200 \times 4.2 \times (65 – t) \\[2.0ex]
&= 840(65 – t)\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 8.4 \times 10^2 \times (65 – t)\,\text{J}
\end{aligned}
$$
【答え】\( Q_2 = 8.4 \times 10^2 \times (65 – t)\,\text{J} \)
(5) 熱量保存の法則で \( t \) を求める
最後は熱の収支を取ります。氷側が得た熱量の合計(ステップ1+ステップ2+ステップ3)と、お湯が失った熱量が等しい──第1講で学んだ熱量保存の法則を、3ステップに分けた現象に適用するだけです。途中の途方もない数字に怯まず、「左辺は氷側の合計、右辺は湯側」と現象構造を式に写すことを意識してください。
$$
\begin{aligned}
\text{得た熱量} &= \text{失った熱量} \\[2.0ex]
2100 + 33600 + 420t &= 840(65 – t) \\[2.0ex]
35700 + 420t &= 54600 – 840t \\[2.0ex]
420t + 840t &= 54600 – 35700 \\[2.0ex]
1260t &= 18900 \\[2.0ex]
t &= 15\,\text{℃}
\end{aligned}
$$
【答え】\( t = 15\,\text{℃} \)
② 加熱時間と温度変化のグラフ(問6)
【問題】
図は \( -40\,\text{℃} \) の氷 \( 100\,\text{g} \) に一定の熱量を加えつづけたときの,状態の変化と温度の関係を表したものである。加熱の割合は毎秒 \( 420\,\text{J} \)(\( = 420\,\text{W} \))である。
(1) 氷,水および水蒸気の比熱はそれぞれ何 \( \text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) か。
(2) \( 0\,\text{℃} \) の氷 \( 1\,\text{g} \) が同じ温度の水に変わるのに必要な熱量(融解熱)は何 \( \text{J}/\text{g} \) か。
(3) \( 100\,\text{℃} \) の水 \( 1\,\text{g} \) が同じ温度の水蒸気に変わるのに必要な熱量(気化熱)は何 \( \text{J}/\text{g} \) か。
【解説】
グラフ問題で最も大事な処方箋は、計算に入る前にグラフの各区間を「現象」に翻訳しておくことです。横軸の数字をいきなり式に入れず、まず「ここは何状態か/温度が動いているか止まっているか」を診断する。これだけで取り違えがほぼゼロになります。
- \( 0\,\text{s} \) 〜 \( 20\,\text{s} \):\( -40\,\text{℃} \) → \( 0\,\text{℃} \)(氷の温度上昇)
- \( 20\,\text{s} \) 〜 \( 100\,\text{s} \):\( 0\,\text{℃} \) のまま一定(氷→水の融解)
- \( 100\,\text{s} \) 〜 \( 200\,\text{s} \):\( 0\,\text{℃} \) → \( 100\,\text{℃} \)(水の温度上昇)
- \( 200\,\text{s} \) 〜 \( 740\,\text{s} \):\( 100\,\text{℃} \) のまま一定(水→水蒸気の気化)
- \( 740\,\text{s} \) 〜 \( 760\,\text{s} \):\( 100\,\text{℃} \) → \( 140\,\text{℃} \)(水蒸気の温度上昇)
こうして区間ごとに「何が起きているのか」というラベルを貼り終えれば、あとは斜め区間には \( Q = mc\Delta T \)、水平区間には \( Q = mL \) を当てるだけです。
(1) 氷・水・水蒸気の比熱
傾きがある3つの区間に注目します。共通しているのは「加えた全熱量は \( 420\,\text{J}/\text{s} \) × 加熱時間」で求まること。加えた熱量と温度変化が分かれば、\( Q = mc\Delta T \) の比熱 \( c \) だけが未知数になる──式を「比熱を逆算する道具」として使う、という見方の切り替えがポイントです。
【氷の比熱】(\( 0\,\text{s} \) 〜 \( 20\,\text{s} \) の区間)
$$
\begin{aligned}
Q &= 420 \times 20 = 8400\,\text{J} \\[2.0ex]
Q &= mc\Delta T \\[2.0ex]
8400 &= 100 \times c_{\text{氷}} \times \{0 – (-40)\} \\[2.0ex]
8400 &= 4000\, c_{\text{氷}} \\[2.0ex]
c_{\text{氷}} &= 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})
\end{aligned}
$$
【水の比熱】(\( 100\,\text{s} \) 〜 \( 200\,\text{s} \) の区間)
$$
\begin{aligned}
Q &= 420 \times 100 = 42000\,\text{J} \\[2.0ex]
42000 &= 100 \times c_{\text{水}} \times (100 – 0) \\[2.0ex]
42000 &= 10000\, c_{\text{水}} \\[2.0ex]
c_{\text{水}} &= 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})
\end{aligned}
$$
【水蒸気の比熱】(\( 740\,\text{s} \) 〜 \( 760\,\text{s} \) の区間)
$$
\begin{aligned}
Q &= 420 \times 20 = 8400\,\text{J} \\[2.0ex]
8400 &= 100 \times c_{\text{蒸}} \times (140 – 100) \\[2.0ex]
8400 &= 4000\, c_{\text{蒸}} \\[2.0ex]
c_{\text{蒸}} &= 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})
\end{aligned}
$$
【答え】氷:\( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \),水:\( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \),水蒸気:\( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)
水だけが比熱が約2倍大きい点に注目しておきましょう。これは水分子同士が手をつなぐ力が強いから(水素結合)──同じH₂Oでも、状態によって温まりやすさが2倍違うという経過観察できる事実です。
(2) 融解熱
水平な区間(\( 20\,\text{s} \) 〜 \( 100\,\text{s} \)、加熱時間 \( 80\,\text{s} \))に注目します。温度が動いていない区間なので、加えた熱はすべて状態変化に使われた──ここで窓を \( Q = mL \) に切り替え、全熱量を質量で割れば1gあたりの潜熱が出ます。
$$
\begin{aligned}
Q &= 420 \times 80 = 33600\,\text{J} \\[2.0ex]
\text{融解熱} &= \displaystyle\frac{Q}{m} = \displaystyle\frac{33600}{100} \\[2.0ex]
&= 336\,\text{J}/\text{g}
\end{aligned}
$$
【答え】\( 336\,\text{J}/\text{g} \)
(3) 気化熱
同じく水平な区間(\( 200\,\text{s} \) 〜 \( 740\,\text{s} \)、加熱時間 \( 540\,\text{s} \))を見ます。融解の80秒に対して気化は540秒──実に6倍以上の時間がかかっています。これがそのまま気化熱が融解熱より大きいことの現れです。「水→水蒸気には大量のエネルギーが要る」という現象の重さを、グラフが時間で示してくれているわけです。
$$
\begin{aligned}
Q &= 420 \times 540 = 226800\,\text{J} \\[2.0ex]
\text{気化熱} &= \displaystyle\frac{Q}{m} = \displaystyle\frac{226800}{100} \\[2.0ex]
&= 2268\,\text{J}/\text{g}
\end{aligned}
$$
【答え】\( 2268\,\text{J}/\text{g} \)
鍋の中に \( 0\,\text{℃} \) の氷 \( 100\,\text{g} \) が入っており、毎秒 \( 200\,\text{W} \)(=毎秒 \( 200\,\text{J} \))で加熱した。氷の融解熱を \( 336\,\text{J}/\text{g} \) とするとき、すべて \( 0\,\text{℃} \) の水に変わるまでに要する時間は何秒か。
解答と思考プロセスを見る
診断:温度は \( 0\,\text{℃} \) のまま一定で「氷→水」の状態変化が起きている区間 → 比熱 \( Q = mc\Delta T \) ではなく潜熱 \( Q = mL \) を使う。
融解に必要な熱量:
$$
\begin{aligned}
Q &= mL \\[2.0ex]
&= 100 \times 336 \\[2.0ex]
&= 33600\,\text{J}
\end{aligned}
$$
毎秒 \( 200\,\text{J} \) で加熱しているので、必要な時間 \( t \) は、
$$
\begin{aligned}
t &= \displaystyle\frac{Q}{200} \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{33600}{200} \\[2.0ex]
&= 168\,\text{秒}
\end{aligned}
$$
答えは168秒(約2分48秒)。\( \Delta T = 0 \) で比熱の式に飛びつくと0秒になってしまいます。状態変化の区間は潜熱の出番、という公式選択の分岐ができるかが問われています。
\( 100\,\text{℃} \) の水蒸気 \( 300\,\text{g} \) が、すべて \( 100\,\text{℃} \) の水に変化(凝縮)するとき、外に放出される熱量は何 \( \text{J} \) か。気化熱を \( 2268\,\text{J}/\text{g} \) とする。
解答と思考プロセスを見る
診断:温度は \( 100\,\text{℃} \) で変わらず、状態だけが「水蒸気→水」と変わる区間 → 潜熱 \( Q = mL \) を使う。気化熱は「液体が気体になるのに吸う熱」だが、逆の凝縮では「同じ量だけ放出する」と覚えておく。
放出される熱量:
$$
\begin{aligned}
Q &= mL \\[2.0ex]
&= 300 \times 2268 \\[2.0ex]
&= 680400\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 6.804 \times 10^5\,\text{J}
\end{aligned}
$$
答えは\( 6.804 \times 10^5\,\text{J} \)。水蒸気のやけどが熱湯のやけどより重症になりやすいのは、この大きな潜熱がそのまま皮膚に流れ込むからです。気化熱 \( 2268\,\text{J}/\text{g} \) は \( 1\,\text{℃} \) 上げる熱量(水の比熱 \( 4.2 \))の約540倍──このスケール感を体で覚えておきましょう。
\( -20\,\text{℃} \) の氷 \( 50\,\text{g} \) を加熱して \( 30\,\text{℃} \) の水にするのに必要な熱量を求めよ。氷の比熱 \( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)、融解熱 \( 336\,\text{J}/\text{g} \)、水の比熱 \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) とする。
解答と思考プロセスを見る
診断:温度変化2区間+状態変化1区間 → 3ステップに分けて、それぞれで \( Q = mc\Delta T \) か \( Q = mL \) を選び、最後に足し合わせる。
ステップ1:\( -20\,\text{℃} \) の氷 → \( 0\,\text{℃} \) の氷(温度変化・氷の比熱)
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= mc\Delta T \\[2.0ex]
&= 50 \times 2.1 \times \{0 – (-20)\} \\[2.0ex]
&= 50 \times 2.1 \times 20 \\[2.0ex]
&= 2100\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ2:\( 0\,\text{℃} \) の氷 → \( 0\,\text{℃} \) の水(状態変化・融解熱)
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= mL \\[2.0ex]
&= 50 \times 336 \\[2.0ex]
&= 16800\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ3:\( 0\,\text{℃} \) の水 → \( 30\,\text{℃} \) の水(温度変化・水の比熱)
$$
\begin{aligned}
Q_3 &= mc\Delta T \\[2.0ex]
&= 50 \times 4.2 \times (30 – 0) \\[2.0ex]
&= 50 \times 4.2 \times 30 \\[2.0ex]
&= 6300\,\text{J}
\end{aligned}
$$
合計:
$$
\begin{aligned}
Q &= Q_1 + Q_2 + Q_3 \\[2.0ex]
&= 2100 + 16800 + 6300 \\[2.0ex]
&= 25200\,\text{J} \\[2.0ex]
&= 2.52 \times 10^4\,\text{J}
\end{aligned}
$$
答えは\( 2.52 \times 10^4\,\text{J} \)。3つのステップのうち\( Q_2 \)(融解)が全体の約67%を占めることに注目してください。「氷を溶かす」工程は、見た目の温度変化がないのに最も多くの熱を要する──状態変化が”熱の隠れ家”であることを実感する問題です。
ある固体物質 \( 200\,\text{g} \) を融点で完全に液体にするのに、\( 5.0 \times 10^4\,\text{J} \) の熱量が必要だった。この物質の融解熱は何 \( \text{J}/\text{g} \) か。
解答と思考プロセスを見る
診断:状態変化の区間で「全熱量」と「質量」が分かっていて、融解熱を逆算する → \( Q = mL \) を \( L \) について解く。
$$
\begin{aligned}
L &= \displaystyle\frac{Q}{m} \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{5.0 \times 10^4}{200} \\[2.0ex]
&= 250\,\text{J}/\text{g}
\end{aligned}
$$
答えは\( 250\,\text{J}/\text{g} \)。グラフから潜熱を求める問6の手順と全く同じ構造です。「公式 \( Q = mL \) は4つの量(\( Q, m, L \))のうち1つを残り2つから求める関係式」と見られるかが要点です。
\( 80\,\text{℃} \) のお湯 \( 500\,\text{g} \) に、\( 0\,\text{℃} \) の氷 \( 100\,\text{g} \) を入れた。氷がすべて溶け、お湯と混ざって熱平衡に達したとき、最終温度 \( t’ \) を求めよ。氷の融解熱は \( 336\,\text{J}/\text{g} \)、水の比熱は \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) とする。容器との熱のやり取りはないものとする。
解答と思考プロセスを見る
診断:氷側は「融解(状態変化)」+「水になった後の温度上昇」の2段階で熱を得る。お湯側は温度下降で熱を失う。氷側を \( Q_{\text{融解}} + Q_{\text{水昇温}} \) と分けて立式するのがポイント。
氷が得た熱量(融解+温度上昇):
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{氷}} &= 100 \times 336 + 100 \times 4.2 \times (t’ – 0) \\[2.0ex]
&= 33600 + 420\,t’
\end{aligned}
$$
お湯が失った熱量:
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{湯}} &= 500 \times 4.2 \times (80 – t’) \\[2.0ex]
&= 2100(80 – t’)
\end{aligned}
$$
「得た熱量=失った熱量」で立式:
$$
\begin{aligned}
33600 + 420\,t’ &= 2100(80 – t’) \\[2.0ex]
33600 + 420\,t’ &= 168000 – 2100\,t’ \\[2.0ex]
420\,t’ + 2100\,t’ &= 168000 – 33600 \\[2.0ex]
2520\,t’ &= 134400 \\[2.0ex]
t’ &\approx 53.3\,\text{℃}
\end{aligned}
$$
答えは約 \( 53.3\,\text{℃} \)。融解熱 \( 33600\,\text{J} \) を立式に入れ忘れると最終温度を高く見積もりすぎてしまいます。「氷が溶ける工程の熱も、氷側が得る熱量に含める」──これが問5(熱湯+氷)の発展形での最大の処方箋です。
\( 120\,\text{℃} \) の水蒸気 \( 50\,\text{g} \) を冷却して \( -10\,\text{℃} \) の氷にするとき、放出される総熱量を求めよ。水蒸気の比熱 \( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)、気化熱 \( 2268\,\text{J}/\text{g} \)、水の比熱 \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)、融解熱 \( 336\,\text{J}/\text{g} \)、氷の比熱 \( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) とする。
解答と思考プロセスを見る
診断:冷却(放熱)も加熱と対称の構造。温度変化3区間+状態変化2区間 → 5ステップに分けて \( Q = mc\Delta T \) と \( Q = mL \) を組み合わせ、最後に合計する。気化熱・融解熱は「液→気」「固→液」の吸熱量だが、逆向きの「気→液」「液→固」では同じ大きさを放熱する。
ステップ1:\( 120\,\text{℃} \) の水蒸気 → \( 100\,\text{℃} \) の水蒸気
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 50 \times 2.1 \times (120 – 100) \\[2.0ex]
&= 2100\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ2:\( 100\,\text{℃} \) の水蒸気 → \( 100\,\text{℃} \) の水(凝縮)
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= 50 \times 2268 \\[2.0ex]
&= 113400\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ3:\( 100\,\text{℃} \) の水 → \( 0\,\text{℃} \) の水
$$
\begin{aligned}
Q_3 &= 50 \times 4.2 \times (100 – 0) \\[2.0ex]
&= 21000\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ4:\( 0\,\text{℃} \) の水 → \( 0\,\text{℃} \) の氷(凝固)
$$
\begin{aligned}
Q_4 &= 50 \times 336 \\[2.0ex]
&= 16800\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ5:\( 0\,\text{℃} \) の氷 → \( -10\,\text{℃} \) の氷
$$
\begin{aligned}
Q_5 &= 50 \times 2.1 \times \{0 – (-10)\} \\[2.0ex]
&= 1050\,\text{J}
\end{aligned}
$$
合計:
$$
\begin{aligned}
Q &= 2100 + 113400 + 21000 + 16800 + 1050 \\[2.0ex]
&= 154350\,\text{J} \\[2.0ex]
&\approx 1.54 \times 10^5\,\text{J}
\end{aligned}
$$
答えは約 \( 1.54 \times 10^5\,\text{J} \)。\( Q_2 \)(凝縮)と \( Q_3 \)(水の冷却)がほぼ全体の87%を占めています。「水蒸気から水になる瞬間」が冷却の主役であることを数値で確認しておきましょう。
\( 20\,\text{℃} \) のアルミニウム容器 \( 200\,\text{g} \) に \( 80\,\text{℃} \) の水 \( 300\,\text{g} \) を入れたところ、容器と水が同じ温度で熱平衡に達した。最終温度 \( t \) を求めよ。アルミニウムの比熱 \( 0.90\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)、水の比熱 \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)、外部との熱のやり取りは無視する。
解答と思考プロセスを見る
診断:状態変化なし・温度変化のみの2物質熱平衡 → \( Q = mc\Delta T \) を両物質に適用し「得た熱量=失った熱量」で立式。比熱が違うことに注意する。
容器(アルミ)が得た熱量:
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{容器}} &= 200 \times 0.90 \times (t – 20) \\[2.0ex]
&= 180(t – 20)
\end{aligned}
$$
水が失った熱量:
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{水}} &= 300 \times 4.2 \times (80 – t) \\[2.0ex]
&= 1260(80 – t)
\end{aligned}
$$
「得た熱量=失った熱量」で立式:
$$
\begin{aligned}
180(t – 20) &= 1260(80 – t) \\[2.0ex]
180\,t – 3600 &= 100800 – 1260\,t \\[2.0ex]
1440\,t &= 104400 \\[2.0ex]
t &\approx 72.5\,\text{℃}
\end{aligned}
$$
答えは約 \( 72.5\,\text{℃} \)。比熱の比 \( 4.2:0.90 \approx 4.7 \) と質量比 \( 300:200 = 1.5 \) を掛け合わせると、水のほうが容器より約7倍「熱を貯めやすい」。だから水の温度はあまり下がらず、容器の温度が大きく上がる──このバランス感覚が熱量保存の処方箋です。
\( 100\,\text{℃} \) の熱湯 \( 200\,\text{g} \) に、\( 0\,\text{℃} \) の氷 \( 80\,\text{g} \) を入れた。最終的に何℃の水になるか、または氷が残るかを判定せよ。融解熱 \( 336\,\text{J}/\text{g} \)、水の比熱 \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) とする。
解答と思考プロセスを見る
診断:氷が全部融けるかどうかを先に判定するのがコツ。「氷を全部溶かすのに必要な熱量」と「熱湯が \( 0\,\text{℃} \) まで下がるときに放出する熱量」を比較する。前者≤後者なら氷は全融解→共通温度を求める、前者>後者なら氷が残る。
氷の融解に必要な熱量:
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{融解必要}} &= 80 \times 336 \\[2.0ex]
&= 26880\,\text{J}
\end{aligned}
$$
熱湯が \( 0\,\text{℃} \) まで下がるときの放熱量:
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{湯最大}} &= 200 \times 4.2 \times (100 – 0) \\[2.0ex]
&= 84000\,\text{J}
\end{aligned}
$$
\( 84000 > 26880 \) なので氷は全部融ける。融解後、氷から生まれた \( 0\,\text{℃} \) の水80gがさらに \( t\,\text{℃} \) まで温まる。熱量保存:
$$
\begin{aligned}
80 \times 336 + 80 \times 4.2 \times (t – 0) &= 200 \times 4.2 \times (100 – t) \\[2.0ex]
26880 + 336\,t &= 84000 – 840\,t \\[2.0ex]
1176\,t &= 57120 \\[2.0ex]
t &\approx 48.6\,\text{℃}
\end{aligned}
$$
答えは約 \( 48.6\,\text{℃} \) の水(氷は全部融解)。最初に「全融解判定」をせず、いきなり \( t \) を解こうとすると、もし氷が残るケースでは式が破綻します。先に判定、後で計算──これがこのタイプの処方箋です。
体表面で水 \( 10\,\text{g} \) が蒸発するとき、体から奪われる熱量は何 \( \text{J} \) か。また、その熱量で体重 \( 60\,\text{kg} \) の体(比熱を水と同じ \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) と仮定)の温度を何 \( \text{℃} \) 下げられるか。気化熱は \( 2268\,\text{J}/\text{g} \) とする。
解答と思考プロセスを見る
診断:気化(蒸発)は「液→気」の状態変化なので潜熱の出番。体側は温度変化なので比熱の式。気化で奪われた熱量=体の温度を下げるのに使われた熱量として両者を等しく置く。
汗(水)の蒸発で奪われる熱量:
$$
\begin{aligned}
Q &= 10 \times 2268 \\[2.0ex]
&= 22680\,\text{J}
\end{aligned}
$$
体の温度低下:
$$
\begin{aligned}
Q &= m\,c\,\Delta T \\[2.0ex]
22680 &= 60000 \times 4.2 \times \Delta T \\[2.0ex]
22680 &= 252000 \times \Delta T \\[2.0ex]
\Delta T &\approx 0.09\,\text{℃}
\end{aligned}
$$
答えは熱量約 \( 2.27 \times 10^4\,\text{J} \)、温度低下約 \( 0.09\,\text{℃} \)。たった10gの汗で体温が0.09℃下がる──気化熱がいかに大きいかを実感する問題です。夏に運動で500g(コップ約2.5杯)汗をかけば、計算上は約4.5℃の冷却効果に相当します(実際は外気との熱交換もあるので単純ではないですが、潜熱のスケール感を掴めます)。
\( -20\,\text{℃} \) の氷 \( 50\,\text{g} \) を毎秒 \( 100\,\text{J} \) で加熱し続けた。加熱開始から \( t = 200\,\text{秒} \) 後、物質の状態(固体/液体/気体)と温度を求めよ。氷の比熱 \( 2.1\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \)、融解熱 \( 336\,\text{J}/\text{g} \)、水の比熱 \( 4.2\,\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K}) \) とする。
解答と思考プロセスを見る
診断:加熱の各ステップに必要な熱量を順に積算し、\( 200\,\text{秒} \) で得た総熱量 \( 100 \times 200 = 20000\,\text{J} \) がどのステップまで到達したかを判定する。グラフ問題の「途中時刻スナップショット」型。
200秒で得た総熱量:
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{総}} &= 100 \times 200 = 20000\,\text{J}
\end{aligned}
$$
各ステップに必要な熱量:
ステップ1(\( -20\,\text{℃} \) 氷 → \( 0\,\text{℃} \) 氷):
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 50 \times 2.1 \times 20 = 2100\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ2(\( 0\,\text{℃} \) 氷 → \( 0\,\text{℃} \) 水・融解):
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= 50 \times 336 = 16800\,\text{J}
\end{aligned}
$$
ステップ1+2の累計:\( 2100 + 16800 = 18900\,\text{J} \)
\( 20000 > 18900 \) なのでステップ2(融解)は終了済み。残りの熱量 \( 20000 – 18900 = 1100\,\text{J} \) がステップ3(\( 0\,\text{℃} \) 水の温度上昇)に使われている。
ステップ3 で上昇した温度:
$$
\begin{aligned}
1100 &= 50 \times 4.2 \times \Delta T \\[2.0ex]
\Delta T &= \displaystyle\frac{1100}{210} \\[2.0ex]
&\approx 5.2\,\text{℃}
\end{aligned}
$$
答えは液体(水)・約 \( 5.2\,\text{℃} \)。「200秒経った時点で物質はどこにいるか」を地図で追うように、各ステップに必要な熱量と比較しながら順に潰していく──これが加熱曲線スナップショット問題の処方箋です。
【重要公式まとめ】
$$
Q = mc\Delta T
$$
\( Q \):熱量 \( [\text{J}] \) \( m \):質量 \( [\text{g}] \) \( c \):比熱 \( [\text{J}/(\text{g}\cdot\text{K})] \) \( \Delta T \):温度変化 \( [\text{K}] \) または \( [\text{℃}] \)
$$
Q = m \times L
$$
\( Q \):状態変化に必要な熱量 \( [\text{J}] \) \( m \):質量 \( [\text{g}] \) \( L \):融解熱または気化熱 \( [\text{J}/\text{g}] \)状態変化中は温度が一定のため、比熱の公式 \( Q = mc\Delta T \) は使えない(\( \Delta T = 0 \) になってしまう)。
以下のテキストをコピーして、「まことAI」にそのまま貼り付けてみてください。別の角度からわかりやすく解説してくれます。
タップ(クリック)すると答えが表示されます。
Q1. 0℃の氷を加熱して水にしている最中、熱を加え続けているのに温度はどうなるでしょうか?
状態変化が起きている最中は、加えられた熱エネルギーがすべて「状態を変えること(固体から液体の状態へ結合を緩めること)」に使われるため、温度自体は上昇しません。
Q2. 物質の温度を上げるための公式 \( Q = mc\Delta T \) と、状態変化させるための公式 \( Q = m \times L \)。「 \( -10 \)℃ の氷を \( 0 \)℃ の氷にする」計算で使うのはどちら?
「\( -10 \)℃の氷」が「\( 0 \)℃の氷」になるのは単なる「温度変化」の過程です。見た目(状態)は固体のままで変わっていないため、比熱を使った公式を用います。
Q3. 加熱時間と温度の関係を表したグラフにおいて、「水平な線(横ばい)」になっている区間は何が起きている状態を表している?
グラフの水平な区間は「熱を加えているのに温度が変わらない」ことを示しており、まさに氷が溶けたり水が沸騰したりする「状態変化」の最中であることを表しています。この区間の熱量計算には潜熱の公式 \( Q = m \times L \) を使います。
「AIを使ったことがない」「どう質問していいか分からない」という方も大丈夫!以下のステップに沿って進めるだけで、まこと先生の分身があなたのスマホに現れ、分かるまでトコトン付き合ってくれます。
まずは、無料のAIを「まこと先生」に変身させるための呪文(プロンプト)が必要です。以下の「モザイクを解除する」ボタンをタップしてください。
普段お使いのブラウザやアプリで、無料のAI(ChatGPTやGeminiなど)を開きます。
入力欄に先ほどコピーした文章をそのまま貼り付け、一番下の入力欄を自分の言葉に書き換えてから送信してください。
💡 ヒント:「自分なりに考えたこと」は、「PV=nRTに数字を代入したけど答えが合わなかった」「熱力学第一法則でQとWの符号がどっちか迷った」など、素直な気持ちでOKです!
まことAIから返信が来たら、そこからが本番です!一度の質問で終わらせず、LINEで先生と話すように会話を続けてみましょう。
💬 こんな風に返信してみて!(質問のコツ)
風船の例え話は分かったけど、断熱変化になるとどうなるの? → 分かった部分と、分からない部分を切り分けて伝える!
ごめん、やっぱりイメージできない!自転車の空気入れの例え話で説明してみて! → 自分の好きなスポーツや身近な現象に例えてもらう!
要するに、内部エネルギーは温度だけで決まるってことだよね? → 自分の言葉でまとめ直して、合っているか確認してもらう!
まことAIは絶対に怒りませんし、呆れません。「なんかフワッとしてるな…」と思ったら、無理矢理飲み込まずに「まだ腑に落ちない!」と伝えてください。あなたが「完璧!そういうこと!」とスッキリするまで、様々な角度からアプローチし続けます。
PREMIUM
この問題の「なぜそう解くのか」も
全て言語化されています。
問題集の解答が省略する思考プロセスを、現役講師が1人で書き続けています。650問超の「なぜ」を、1週間無料で読めます。
物理基礎の全分野を1記事で総復習できるまとめページ
