問題の確認
wave#06各設問の思考プロセス
この問題は、定常波の腹における媒質の振動(単振動)の特性を理解し、時間の経過に伴う変位の変化を追跡することが求められます。
- 定常波の腹の振動の理解:
- 定常波の腹は、その場で最も大きな振幅で単振動を行います。
- その単振動の周期は、定常波を構成する元の波の周期、および定常波全体の振動周期と一致します。
- 腹における振幅は、問題文で与えられている \(15 \, \text{cm}\) です。
- 初期状態(ある時刻 \(t_0\))の特定:
- 位置O(腹)において、時刻 \(t_0\) の変位が \(-15 \, \text{cm}\) であると与えられています。
- 腹の振幅が \(15 \, \text{cm}\) であることから、変位 \(-15 \, \text{cm}\) は単振動の負の方向の最大変位(最下点、または振動の折り返し点)を意味します。
- 経過時間と周期の関係の分析:
- 求めたいのは、時刻 \(t_0\) から \(\Delta t = 0.30 \, \text{s}\) 経過した後の変位です。
- この経過時間 \(\Delta t\) が、振動の周期 \(T = 0.40 \, \text{s}\) の何倍に相当するかを計算します。(\(\Delta t / T\))
- 単振動の位相変化と変位の追跡:
- 単振動は、周期的な運動です。1周期の間に、変位は「最大変位(正) \(\rightarrow\) ゼロ \(\rightarrow\) 最大変位(負) \(\rightarrow\) ゼロ \(\rightarrow\) 最大変位(正)」というサイクルを繰り返します。
- 初期状態(負の最大変位)から、計算した周期の割合だけ時間が経過したときの振動の位相を特定し、そのときの変位を求めます。
各設問の具体的な解説と解答
問われている内容の明確化:
定常波の腹である位置Oが、変位 \(-15 \, \text{cm}\)(振動の最下点)の状態から \(0.30 \, \text{s}\) 経過した後の変位を求めます。
具体的な解説と計算手順:
1. 位置Oの振動特性の確認:
位置Oは定常波の腹であり、その振幅は \(A = 15 \, \text{cm}\)、振動の周期は \(T = 0.40 \, \text{s}\) です。腹の各点は単振動を行います。
2. 初期状態の把握:
ある時刻 \(t_0\) で、位置Oの変位は \(y(t_0) = -15 \, \text{cm}\) です。これは振幅 \(A\) の負の最大値 (\(-A\)) なので、この瞬間に位置Oの媒質は単振動の最下点(負の折り返し点)にあります。
3. 経過時間の評価:
求めたいのは時刻 \(t_0\) から \(\Delta t = 0.30 \, \text{s}\) 後の変位です。この経過時間が周期 \(T\) の何倍かを計算します。
$$\frac{\Delta t}{T} = \frac{0.30 \, \text{s}}{0.40 \, \text{s}} = \frac{3}{4}$$
つまり、\(0.30 \, \text{s}\) は周期の \(\frac{3}{4}\) (\(3T/4\)) に相当します。
4. 単振動の追跡と変位の決定:
単振動の1周期の動きを考えます。
- 時刻 \(t_0\) (初期状態): 変位 \(-A = -15 \, \text{cm}\) (最下点)
- 時刻 \(t_0 + T/4\) : 最下点から \(1/4\) 周期後、媒質は振動中心(変位 \(0 \, \text{cm}\))を正の向きに通過します。(\(T/4 = 0.10 \, \text{s}\))
- 時刻 \(t_0 + T/2\) : さらに \(1/4\) 周期後(合計 \(1/2\) 周期後)、媒質は最高点(変位 \(+A = +15 \, \text{cm}\))に達します。(\(T/2 = 0.20 \, \text{s}\))
- 時刻 \(t_0 + 3T/4\) : さらに \(1/4\) 周期後(合計 \(3/4\) 周期後)、媒質は再び振動中心(変位 \(0 \, \text{cm}\))を負の向きに通過します。(\(3T/4 = 0.30 \, \text{s}\))
したがって、時刻 \(t_0\) から \(0.30 \, \text{s}\) (\(3T/4\)) 後の位置Oにおける変位は \(0 \, \text{cm}\) となります。
参考: 三角関数を用いた表現
時刻 \(t_0\) を \(t’=0\) とすると、初期条件 \(y(0) = -A\) より、変位は \(y(t’) = -A \cos(\omega t’)\) と表せます。ここで、\(\omega = \frac{2\pi}{T} = \frac{2\pi}{0.40} = 5\pi \, \text{rad/s}\)。
\(t’ = 0.30 \, \text{s}\) のとき、
\(y(0.30) = -15 \cos(5\pi \times 0.30) = -15 \cos(1.5\pi) = -15 \cos(\frac{3\pi}{2}) = -15 \times 0 = 0 \, \text{cm}\)。
計算方法の平易な説明:
位置Oは、上下に \(15 \, \text{cm}\) の幅で揺れるブランコのような動き(単振動)をしています。1往復にかかる時間(周期)は \(0.40\) 秒です。
- スタート時: 一番下の \(-15 \, \text{cm}\) の位置にいます。
- \(0.10\) 秒後 (\(1/4\) 周期後): 真ん中の \(0 \, \text{cm}\) の位置を上に通過します。
- \(0.20\) 秒後 (\(1/2\) 周期後): 一番上の \(+15 \, \text{cm}\) の位置に達します。
- \(0.30\) 秒後 (\(3/4\) 周期後): 再び真ん中の \(0 \, \text{cm}\) の位置を今度は下に通過します。
- \(0.40\) 秒後 (\(1\) 周期後): スタート時の一番下の \(-15 \, \text{cm}\) の位置に戻ります。
問題で聞かれているのは \(0.30\) 秒後なので、そのときの変位は \(0 \, \text{cm}\) です。
この設問における重要なポイント:
- 定常波の腹は、与えられた周期と振幅で単振動を行う。
- 初期の変位が \(-A\) であることから、単振動のどの位相からスタートするかを把握する。
- 経過時間が周期の何倍であるかを計算し、単振動のサイクルに沿って変位を追跡する。
その \(0.30 \, \text{s}\) 後の変位は \(0 \, \text{cm}\) である。
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- 定常波: 互いに逆向きに進む同じ種類の波(振幅、波長、振動数が等しい)が重なり合うことによって生じる波。波形は空間的に進行せず、各点がその場で振動する。
- 腹 (Antinode): 定常波において、媒質の振動の振幅が最大になる点。腹における振幅は、元の進行波の振幅の2倍になる(元の波が同じ振幅の場合)。
- 節 (Node): 定常波において、媒質が全く振動しない点。
- 単振動: 復元力(変位に比例し中心を向く力)を受けて物体が平衡点を中心に行う周期的な往復運動。定常波の各点(節を除く)の媒質は単振動を行う。
- 周期 (\(T\)): 単振動や波の現象が1サイクル完了するのに要する時間。
- 振幅 (\(A\)): 単振動における、振動の中心からの最大の変位量。
- 位相: 振動や波の状態(サイクル中のどの段階か)を表す量。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 定常波の図の解釈: 定常波の図は、ある瞬間の波形や、各点の最大変位(振幅)を結んだ包絡線を示している。問題文や図のキャプションをよく読み、何を表しているかを理解する。
- 単振動のサイクルの理解: 単振動では、変位が \(0 \rightarrow A \rightarrow 0 \rightarrow -A \rightarrow 0\) と変化するのにそれぞれ \(T/4\) の時間がかかることを把握しておく。
- 初期条件の適用: 「ある時刻の変位が○○」という初期条件から、その単振動がどの位相から始まるのかを正確に把握することが重要。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 定常波と進行波の区別: 定常波はエネルギーを運ばない(節と腹の位置が固定されている)。進行波はエネルギーを運ぶ。
- 定常波の振幅: 定常波では振幅が場所によって異なる。腹で最大、節でゼロ。単に「振幅」と言われた場合、腹における振幅を指すことが多い。
- 時間の計算ミス: 経過時間と周期の関係を誤って計算する。例えば、\(3T/4\) のところを \(1/4T\) や \(T/2\) と勘違いする。
- 位相の誤解: 単振動の開始点が常に変位ゼロや最大変位とは限らない。初期位相を正しく考慮する必要がある。
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