Step 2
223 波のグラフ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波形グラフの解釈と媒質の単振動」です。与えられた波形グラフ(\(y-x\)グラフ)と波の移動情報から、波の基本的な物理量を計算し、それを用いて特定の媒質の未来の運動を予測する能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本要素の定義: 波長、振幅、速さ、周期、振動数の物理的な意味を正確に理解していること。
- \(y-x\)グラフからの情報読み取り: ある瞬間の波の形を表す\(y-x\)グラフから、波長と振幅を直接読み取れること。
- 波の基本式: 波の速さ\(v\)、周期\(T\)、波長\(\lambda\)、振動数\(f\)の間の関係式(\(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\), \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\))を使いこなせること。
- 波の伝播と媒質の単振動の区別: 波形が空間を伝わっていく現象と、媒質の各点がその場で単振動する現象を明確に区別して理解すること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず\(y-x\)グラフから直接読み取れる波長と振幅を求めます。次に、問題文の「山PがQまで移動した」という情報から、移動距離と時間を用いて波の速さを計算します。最後に、波の基本式を使って周期と振動数を導出します。
- (2)では、まず実線の状態における原点Oの媒質の状態(山か谷かなど)をグラフから読み取ります。次に、その状態から「初めて谷になる」までの時間を、(1)で求めた周期を用いて考えます。媒質の運動が周期的な単振動であることを利用するのがポイントです。
問(1)
思考の道筋とポイント
波の5つの基本量(波長、振幅、速さ、周期、振動数)を求める問題です。まず、与えられた\(y-x\)グラフから直接読み取れる「空間的」な情報である「波長」と「振幅」を確定させます。次に、問題文の「山PがQまで移動した」という「時間的」な情報から、波の「速さ」を計算します。最後に、これらの物理量を波の基本式に代入して、残りの「周期」と「振動数」を計算するという手順で進めます。
この設問における重要なポイント
- 波長 \(\lambda\): 1波長分の長さ。グラフの同じ位相の点(例:山と隣の山)の間の距離。
- 振幅 \(A\): 振動の中心(\(y=0\))からの最大の変位。
- 速さ \(v\): 波形(位相)が単位時間あたりに進む距離。
- 周期 \(T\): 媒質が1回振動するのにかかる時間。波が1波長進むのにかかる時間でもあります。
- 振動数 \(f\): 媒質が1秒あたりに振動する回数。\(f=1/T\) の関係があります。
具体的な解説と立式
波長 \(\lambda\) と 振幅 \(A\)
\(y-x\)グラフから直接読み取ります。
グラフで、山(例えば\(x=0 \text{ m}\))から次の山(\(x=8.0 \text{ m}\))までの距離が1波長なので、
$$ \lambda = 8.0 \text{ [m]} $$
振幅は振動の中心からの最大の変位なので、グラフの山の高さから、
$$ A = 0.20 \text{ [m]} $$
速さ \(v\)
波の山P(\(x_{\text{P}}=8.0 \text{ m}\))が、山Q(\(x_{\text{Q}}=10.0 \text{ m}\))まで \(\Delta t = 0.50 \text{ s}\) かけて移動したとあります。この間の移動距離 \(\Delta x\) は、
$$ \Delta x = x_{\text{Q}} – x_{\text{P}} = 10.0 – 8.0 = 2.0 \text{ [m]} $$
したがって、速さ \(v\) は次式で求められます。
$$ v = \frac{\Delta x}{\Delta t} $$
周期 \(T\)
波の基本式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を \(T\) について解くと、
$$ T = \frac{\lambda}{v} $$
振動数 \(f\)
周期 \(T\) と振動数 \(f\) の間には逆数の関係があります。
$$ f = \frac{1}{T} $$
使用した物理公式
- 波の速さ: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
- 波の基本式: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
- 周期と振動数の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
速さ \(v\) の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{2.0}{0.50} \\[2.0ex]
&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
周期 \(T\) の計算:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{8.0}{4.0} \\[2.0ex]
&= 2.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
振動数 \(f\) の計算:
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{2.0} \\[2.0ex]
&= 0.50 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
「波長」は波一つ分の長さなので、グラフの山から次の山までで \(8.0 \text{ m}\) です。「振幅」は波の揺れの高さで、グラフから \(0.20 \text{ m}\) と読み取れます。
波の「速さ」は、「進んだ距離 ÷ かかった時間」です。山がPからQまで \(2.0 \text{ m}\) を \(0.50\) 秒で進んだので、速さは \(2.0 \div 0.50 = 4.0 \text{ m/s}\) です。
「周期」は、波が1波長(\(8.0 \text{ m}\))進むのにかかる時間なので、「距離 ÷ 速さ」で \(8.0 \div 4.0 = 2.0\) 秒です。
「振動数」は、1秒間に何回振動するかを表し、周期の逆数なので \(1 \div 2.0 = 0.50 \text{ Hz}\) となります。
求めた値は、波長 \(8.0 \text{ m}\)、振幅 \(0.20 \text{ m}\)、速さ \(4.0 \text{ m/s}\)、周期 \(2.0 \text{ s}\)、振動数 \(0.50 \text{ Hz}\) です。グラフと問題文から論理的に導出されており、物理的に妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
特定の媒質(原点O)の運動に着目し、その状態が変化するまでの時間を求める問題です。重要なのは、「波が進む」ことと「媒質がその場で振動する」ことを区別して考えることです。
まず、\(t=0\)(実線の状態)での原点Oの媒質の状態をグラフから読み取ります。次に、その状態から「初めて谷になる」までには、単振動の周期のうちどれくらいの時間がかかるかを考えます。
この設問における重要なポイント
- 媒質は波と共に進行方向へ移動するのではなく、その場で上下に単振動する。
- 媒質の単振動の1周期は、波の周期\(T\)と等しい。
- 媒質が「山」の状態から「谷」の状態へ移動するには、単振動の半周期 (\(T/2\)) の時間がかかる。
具体的な解説と立式
1. 原点Oの初期状態の確認
\(t=0\) の \(y-x\) グラフ(実線)を見ると、原点O(\(x=0\))の媒質は変位が \(y = +0.20 \text{ m}\) となっており、正の向きに最大変位、つまり「山」の状態にあります。
2. 状態変化にかかる時間の考察
原点Oの媒質は、この「山」の状態から単振動を開始します。1回の単振動(周期\(T\))で、「山 \(\rightarrow\) 振動中心 \(\rightarrow\) 谷 \(\rightarrow\) 振動中心 \(\rightarrow\) 山」という運動をします。
問題で問われているのは、「山」の状態から「初めて谷になる」までの時間です。これは、単振動の運動のちょうど半分、つまり半周期分の時間に相当します。
したがって、求める時間 \(t\) は、
$$ t = \frac{T}{2} $$
(1)で求めた周期 \(T=2.0 \text{ s}\) を代入して計算します。
使用した物理公式
- 媒質の単振動の周期性
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{2.0}{2} \\[2.0ex]
&= 1.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
まず、スタート時点での原点Oの様子を見ます。グラフから、原点Oは「山」のてっぺんにいることがわかります。
この後、原点Oの媒質は上下に揺れる運動(単振動)をします。山のてっぺんから谷の底まで移動するのは、ちょうど1往復の半分の運動です。
(1)で計算したように、1往復にかかる時間(周期)は \(2.0\) 秒なので、その半分の \(1.0\) 秒後に初めて谷になります。
原点Oの媒質は\(t=0\)で山の状態にあり、半周期後に初めて谷の状態になる、という考え方で時間を求めました。媒質の運動を正しく単振動として捉えており、物理的に正しい解法です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の二重性(伝播と振動)の理解:
- 核心: この問題は、波という現象が持つ二つの側面、すなわち「波形が空間を伝播していく側面」と「各点の媒質がその場で単振動する側面」を明確に区別し、両者を正しく結びつけられるかを問うています。
- 理解のポイント:
- (1) 伝播する波として分析: 波長\(\lambda\)、速さ\(v\)は、波形全体が空間を移動していく様子を捉える量です。\(y-x\)グラフと波の移動情報から求めます。
- (2) 振動する媒質として分析: 原点Oの媒質が「谷になる」のはいつか、という問いは、波形全体の移動ではなく、\(x=0\)という一点の上下運動(単振動)に焦点を当てて考えます。
- 周期\(T\)が両者をつなぐ: 周期\(T\)(および振動数\(f\))は、波が1波長\(\lambda\)進む時間であり、同時に媒質が1回振動する時間でもあります。この周期\(T\)が、波の伝播と媒質の振動という二つの側面を結びつける重要な鍵となります。
- 波の基本公式の体系的運用:
- 核心: 波の5つの基本量(\(A, \lambda, v, T, f\))を、定義と基本公式(\(v=\Delta x/\Delta t\), \(v=\lambda/T\), \(f=1/T\))を用いて、与えられた情報から未知の量を連鎖的に導出する能力。
- 理解のポイント:
- グラフから直接読み取る: \(y-x\)グラフから\(A, \lambda\)を確定。
- 移動情報から計算する: \(\Delta x, \Delta t\)から\(v\)を確定。
- 基本式で変換する: \(v, \lambda\)から\(T\)を、\(T\)から\(f\)を導出する。
この一連の流れをスムーズに実行できることが求められます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- \(y-t\)グラフが与えられる問題: ある一点の媒質の振動の様子(\(y-t\)グラフ)が与えられ、そこから周期\(T\)と振幅\(A\)を読み取り、波の速さ\(v\)などの情報と組み合わせて波長\(\lambda\)や波形(\(y-x\)グラフ)を決定する逆パターンの問題。
- 任意の点の未来を予測する問題: (2)のように原点Oだけでなく、「\(x=2.0 \text{ m}\)の媒質が初めて山になるのは何秒後か」といった問題。この場合、まず\(x=2.0 \text{ m}\)の位相が原点Oの位相からどれだけずれているかを考え、その位相の波が到達するまでの時間と、到達してから山になるまでの時間を足し合わせる必要があります。
- 波の式を扱う問題: \(y(x, t) = A \sin 2\pi (\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda})\) のような波の式を決定したり、式から各物理量を読み取ったりする問題。本問の知識は、この式を構成する各パラメータを求めるための基礎となります。
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられた情報の種類を分類: 問題文とグラフから得られる情報を「空間情報(\(y-x\)グラフ、位置など)」と「時間情報(移動時間、周期など)」に分類して整理します。
- 何が問われているかを明確にする: 問いが「波全体の性質(\(\lambda, v\)など)」についてなのか、「特定点の媒質の運動(\(t\)秒後の変位など)」についてなのかを区別します。
- (2)のような問いの解法パターン: 「点Xの媒質がYの状態になるのはいつか」という問いに対しては、以下の2ステップで考えます。
- ステップ1: \(t=0\)の瞬間に、点Xの媒質はどのような状態(変位、速度の向き)にあるか?
- ステップ2: その状態からYの状態になるまで、単振動の周期\(T\)を基準にどれくらいの時間がかかるか?(例: 山→谷なら\(T/2\)、山→中心なら\(T/4\))
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 波の速さと媒質の速さの混同:
- 誤解: 波の速さ\(v=4.0 \text{ m/s}\)を、媒質が上下に動く速さと勘違いする。
- 対策: 波の速さ\(v\)は波形が水平に進む速さ、媒質の速さは各点がその場で上下に振動する速さであり、全くの別物であることを常に意識する。媒質の速さは常に変化しており、振動中心で最大、端で0になります。
- 波の移動と媒質の移動の混同:
- 誤解: (2)で「原点Oの媒質が谷になる」時間を求めるのに、最も近い谷(\(x=4.0 \text{ m}\))が原点Oに到達するまでの時間を計算してしまう。(\(t = \Delta x / v = 4.0 / 4.0 = 1.0 \text{ s}\)となり、偶然答えは一致するが、考え方が根本的に違う)
- 対策: この問題では偶然答えが合いますが、例えば「原点Oが初めて振動中心(\(y=0\))に戻るのはいつか」という問いの場合、この考え方では解けません。あくまで「原点Oの媒質がその場で単振動する」というモデルで考えることが重要です。「山にいる媒質は、\(T/4\)秒後に中心に、\(T/2\)秒後に谷に、\(3T/4\)秒後に中心に、\(T\)秒後に山に戻る」という振動のサイクルを理解することが本質です。
- 周期と時間の関係のミス:
- 誤解: (2)で、山から谷への移動時間を1周期\(T\)と勘違いしてしまう。
- 対策: 単振動の動きを具体的にイメージする。「山→谷」は往復運動の「片道」であり、半周期(\(T/2\))に相当することをしっかり理解する。図を描いて確認するのも有効です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 速さの定義式 (\(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
- 選定理由: (1)で速さを求めるために使用。問題文に「山PがQまで移動した」という、特定の位相が「距離\(\Delta x\)を時間\(\Delta t\)で移動した」という情報が直接与えられているため、速さの定義式をそのまま適用するのが最も合理的です。
- 適用根拠: 波の速さとは、波の特定の位相(山、谷など)が進む速さのことです。問題文の情報は、まさにこの位相の移動を記述しているため、定義式が完全に適合します。
- 波の基本式 (\(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)):
- 選定理由: (1)で周期\(T\)を求めるために使用。この時点で、速さ\(v\)と波長\(\lambda\)が既知となっています。これら3つの基本量を結びつけるこの公式を使えば、未知数である\(T\)を算出できます。
- 適用根拠: この式は「波が1周期\(T\)の時間で1波長\(\lambda\)の距離を進む」という、波の根源的な性質を表したものです。したがって、どんな正弦波にも普遍的に適用できます。この式は、波の空間的性質(\(\lambda\))と時間的性質(\(T\))を、運動(\(v\))を介して結びつける重要な関係式です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の確認: 問題文とグラフの単位(m, s)を最初に確認し、計算結果の単位もそれに合わせる。特に、cmとmが混在する問題では注意が必要です。
- 小数の割り算: (1)の速さの計算 \(2.0 / 0.50\) は、分母分子を100倍して \(200 / 50 = 4\) と整数に直して計算するとミスが減ります。
- グラフの読み取り精度: グラフから波長や振幅を読み取る際は、軸の目盛りを注意深く確認する。特に、1目盛りが1ではない場合や、原点から始まっていない場合に注意が必要です。
- 物理量の関係性の再確認: (1)で全ての量を計算した後、「振動数0.50Hz」は「1秒間に0.5回振動する」という意味で、「周期2.0s」は「1回の振動に2秒かかる」という意味。両者が逆数の関係にあり、意味的にも矛盾がないことを確認する癖をつけると、検算になります。
224 波のグラフと媒質の運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「\(y-t\)グラフと\(y-x\)グラフの相互変換」です。ある一点の媒質の振動の様子(\(y-t\)グラフ)と波の速さが与えられた条件から、波全体の性質(波長など)を求め、ある瞬間の波の形(\(y-x\)グラフ)や、別の点の振動の様子(\(y-t\)グラフ)を復元する、総合的な理解力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(y-t\)グラフと\(y-x\)グラフの役割: \(y-t\)グラフが「一点の時間を追った記録」であるのに対し、\(y-x\)グラフは「ある瞬間の空間全体の写真」であることを明確に区別すること。
- 波の基本式: 波の速さ\(v\)、周期\(T\)、波長\(\lambda\)を結びつける基本式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を使いこなせること。
- 波の伝播とグラフの変換: 波が伝わるという事象を利用して、\(y-t\)グラフの情報から\(y-x\)グラフの情報を、またその逆を導き出す論理的な思考。
- 媒質の振動方向の判断: 波の進行方向と波形から、各点の媒質が次にどちらの向きに動くかを判断できること(「微小時間後の波形」を描く方法が有効)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず与えられた\(y-t\)グラフから、原点Oの振動の周期と振幅を直接読み取ります。次に、問題文で与えられた波の速さと、読み取った周期を波の基本式に適用して、波長を計算します。
- (2)では、\(t=0\)の波形(\(y-x\)グラフ)を作成します。\(y-t\)グラフから\(t=0\)の原点の状態を特定し、波が負の向きに進むことを利用して、空間に広がる波の形を復元します。
- (3)では、(2)で作成した\(y-x\)グラフを用いて、\(x=10 \text{ m}\)の点が\(t=0\)でどのような状態にあるか(変位と初動の向き)を読み取ります。その初期状態から始まる、周期\(T\)の単振動のグラフ(\(y-t\)グラフ)を描きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
波の基本量(周期、振幅、波長)を求める問題です。まず、与えられた原点Oの\(y-t\)グラフから、直接読み取れる「時間的」な情報である「周期」と「振幅」を確定させます。次に、問題文で与えられた波の速さ\(v\)と、グラフから読み取った周期\(T\)を波の基本式 \(v = \lambda/T\) に代入して、残りの「空間的」な情報である「波長」を計算します。
この設問における重要なポイント
- \(y-t\)グラフは、ある一点(ここでは原点\(x=0\))の媒質の単振動の様子を表す。
- 周期 \(T\): グラフが1回振動して元の形に戻るまでの時間。
- 振幅 \(A\): 振動の中心からの最大の変位。
- 波長 \(\lambda\): 波の速さ\(v\)と周期\(T\)から、\(\lambda = vT\) で計算できる。
具体的な解説と立式
周期 \(T\) と 振幅 \(A\)
与えられた原点Oの\(y-t\)グラフから直接読み取ります。
グラフは、\(t=0\)から始まり、\(t=8.0 \text{ s}\)でちょうど1回の振動を終えています。したがって、周期は、
$$ T = 8.0 \text{ [s]} $$
振幅は振動の最大変位なので、グラフの最大値から、
$$ A = 0.20 \text{ [m]} $$
波長 \(\lambda\)
波の速さ\(v\)、周期\(T\)、波長\(\lambda\)の間には、\(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) の関係があります。これを\(\lambda\)について解くと、
$$ \lambda = vT $$
問題文より \(v=5.0 \text{ m/s}\)、グラフから読み取った \(T=8.0 \text{ s}\) を代入して波長を計算します。
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
$$
\begin{aligned}
\lambda &= vT \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 8.0 \\[2.0ex]
&= 40 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
「周期」は、グラフの1回の揺れにかかる時間なので、図から\(8.0\)秒と読み取れます。「振幅」は揺れの大きさ(高さ)で、\(0.20 \text{ m}\)です。
「波長」は、波が1周期の間に進む距離のことです。速さが\(5.0 \text{ m/s}\)で、周期が\(8.0\)秒なので、波長は「速さ × 時間」で \(5.0 \times 8.0 = 40 \text{ m}\) と計算できます。
求めた値は、周期 \(8.0 \text{ s}\)、振幅 \(0.20 \text{ m}\)、波長 \(40 \text{ m}\) です。与えられたグラフと情報から論理的に導出されており、妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
\(t=0\)の瞬間の波形(\(y-x\)グラフ)を描く問題です。これは、\(y-t\)グラフという「時間の情報」から、\(y-x\)グラフという「空間の情報」への変換作業です。波がx軸負の向きに伝わることを利用して、原点(\(x=0\))の振動の様子から、他の点(\(x>0\))の\(t=0\)での変位を決定していきます。
この設問における重要なポイント
- \(y-x\)グラフは、ある時刻における空間全体の波の「スナップショット」である。
- 波が負の向きに速さ\(v\)で進むとき、位置\(x\)での現象は、原点での現象より時間 \(x/v\) だけ「早く」起こる。
- 逆に言えば、\(t=0\)の瞬間の位置\(x\)での変位は、原点が時刻 \(t=x/v\) になったときの変位と同じになる。
具体的な解説と立式
波はx軸負の向きに速さ\(v=5.0 \text{ m/s}\)で進みます。このとき、\(t=0\)における位置\(x\)の変位 \(y(x,0)\) は、原点\(x=0\)が時刻 \(t’ = x/v\) のときに示す変位 \(y(0, t’)\) と等しくなります。
この関係 \(y(x,0) = y(0, x/v)\) を使って、\(y-x\)グラフ上の各点の変位を求めていきます。
- \(x=0 \text{ m}\)の点: \(t’=0/5.0=0 \text{ s}\)。\(y-t\)グラフより、\(y(0,0)=0 \text{ m}\)。
- \(x=10 \text{ m}\)の点: \(t’=10/5.0=2.0 \text{ s}\)。\(y-t\)グラフより、\(y(0,2.0)=0.20 \text{ m}\)(山)。
- \(x=20 \text{ m}\)の点: \(t’=20/5.0=4.0 \text{ s}\)。\(y-t\)グラフより、\(y(0,4.0)=0 \text{ m}\)。
- \(x=30 \text{ m}\)の点: \(t’=30/5.0=6.0 \text{ s}\)。\(y-t\)グラフより、\(y(0,6.0)=-0.20 \text{ m}\)(谷)。
- \(x=40 \text{ m}\)の点: \(t’=40/5.0=8.0 \text{ s}\)。\(y-t\)グラフより、\(y(0,8.0)=0 \text{ m}\)。
これらの点をプロットし、滑らかな正弦波で結ぶことで、\(t=0\)の波形(\(y-x\)グラフ)が完成します。
使用した物理公式
- 波の伝播による位相のずれの考え方。
上記で示した各点の計算過程が該当します。
\(t=0\)の瞬間の、波全体の「写真」を撮ることを考えます。波は左(負の向き)へ秒速\(5.0 \text{ m}\)で進んでいます。
ある場所(例えば\(x=10 \text{ m}\))の\(t=0\)での波の高さは、波が\(10 \text{ m}\)進むのにかかる時間(\(10 \div 5.0 = 2.0\)秒)だけ未来の、原点の波の高さと同じになります。
与えられた原点のグラフを見ると、\(2.0\)秒後には山のてっぺん(\(y=0.20 \text{ m}\))にいます。なので、\(t=0\)のとき\(x=10 \text{ m}\)の場所は山になっています。
同様に、\(x=20 \text{ m}\)の場所は\(20 \div 5.0 = 4.0\)秒後の原点の高さ(\(y=0\))に、\(x=30 \text{ m}\)の場所は\(30 \div 5.0 = 6.0\)秒後の原点の高さ(谷、\(y=-0.20 \text{ m}\))に対応します。これを繋げると波全体の形が描けます。
作成した\(y-x\)グラフは、\(x=0\)で\(y=0\)であり、波が負の向きに進むことから、その直後の原点の媒質の動きは正の向きになるはずです。作成したグラフを少し左にずらすと、原点の変位は正になるため、すべての条件と矛盾しません。
問(3)
思考の道筋とポイント
\(x=10 \text{ m}\)の点の媒質の振動の様子(\(y-t\)グラフ)を描く問題です。これは、(2)で作成した\(y-x\)グラフという「空間の情報」から、特定の点の「時間の情報」への再変換です。まず、\(t=0\)における\(x=10 \text{ m}\)の点の初期状態(初期変位と初動の向き)を(2)のグラフから読み取ります。そして、その初期状態から始まる周期\(T\)の単振動のグラフを描きます。
この設問における重要なポイント
- \(y-t\)グラフは、ある一点の媒質の単振動の記録である。
- グラフを描くには、初期状態(\(t=0\)での変位と初動の向き)の特定が不可欠。
- 初動の向きは、\(y-x\)グラフと波の進行方向から判断する。
具体的な解説と立式
1. \(x=10 \text{ m}\)の点の初期状態の確認
(2)で作成した\(t=0\)の\(y-x\)グラフを見ると、\(x=10 \text{ m}\)の点の媒質は変位が \(y = +0.20 \text{ m}\) となっており、「山」の状態にあります。
2. 初動の向きの判断
波はx軸の負の向きに進んでいます。\(t=0\)の波形を、微小時間後に少しだけ左にずらした波形を想像します。すると、\(x=10 \text{ m}\)という固定された位置で観測すると、波の山の少し右側の部分がやってくることになり、変位は減少します。
したがって、\(x=10 \text{ m}\)の媒質は、\(t=0\)の直後にy軸の負の向きに動き始めます。
3. \(y-t\)グラフの作成
以上の初期条件「\(t=0\)で山の状態(\(y=0.20 \text{ m}\))から始まり、負の向きに動き出す」と、(1)で求めた周期\(T=8.0 \text{ s}\)を満たす単振動のグラフを描きます。これは、cos型のカーブになります。
使用した物理公式
- 媒質の単振動の周期性
この設問は作図が中心であり、数値計算は不要です。
(2)で描いた波の形のスナップショットを見ると、\(t=0\)のとき、\(x=10 \text{ m}\)の場所は「山」のてっぺんにいます。これがスタート地点です。
この後、波全体が左に動いていくので、\(x=10 \text{ m}\)の場所の媒質は、山の頂上から下り坂を下るように、下向きに動き始めます。
したがって、「山のてっぺんからスタートし、周期\(8.0\)秒で1往復する」ような波線グラフを描けばよいことになります。
\(x=10 \text{ m}\)の点の初期状態を\(y-x\)グラフから正しく読み取り、cos型の\(y-t\)グラフを描きました。これは物理的に正しい手順です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- \(y-t\)グラフと\(y-x\)グラフの相互変換能力:
- 核心: この問題の核心は、波の「時間的側面」を表す\(y-t\)グラフと、「空間的側面」を表す\(y-x\)グラフが、それぞれ独立した情報ではなく、波の伝播という物理現象を通じて相互に変換可能であることを深く理解しているか、という点にあります。
- 理解のポイント:
- \(y-t\)グラフ \(\rightarrow\) \(y-x\)グラフへの変換(問2): 原点(\(x=0\))の過去から未来までの振動の記録(\(y-t\)グラフ)と波の進行方向・速さを組み合わせることで、ある一瞬の空間全体の波の形(\(y-x\)グラフ)を復元できます。
- \(y-x\)グラフ \(\rightarrow\) \(y-t\)グラフへの変換(問3): ある一瞬の空間全体の波の形(\(y-x\)グラフ)から、特定の点(\(x=10\))の初期状態(変位と初動)を読み取り、その後の振動の記録(\(y-t\)グラフ)を予測できます。
この双方向の変換を自由自在に行えることが、波の深い理解につながります。
- 波の伝播と位相のずれの概念:
- 核心: 波が伝わるということは、各点の媒質の振動のタイミング(位相)が少しずつずれているということです。この「位相のずれ」を、時間と空間の座標を用いて定量的に扱えることが重要です。
- 理解のポイント:
- 波が負の向きに進む場合、位置\(x\)(\(x>0\))の振動は、原点\(x=0\)の振動よりも時間的に「遅れて」います。
- しかし、\(t=0\)の瞬間の波形を考えるとき、位置\(x\)の変位は、原点が時間\(t=x/v\)だけ「未来」の時刻にとる変位と同じになります。この一見逆説的な関係(「空間的に先 \(\leftrightarrow\) 時間的に過去」または「空間的に後 \(\leftrightarrow\) 時間的に未来」)を正しく理解することが、グラフ変換の鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 波の式を求める問題: 本問で求めた\(y-x\)グラフや\(y-t\)グラフの情報を元に、波の一般式 \(y(x, t) = A\sin(\omega t \pm kx + \phi)\) の各パラメータ(\(A, \omega, k, \phi\))を決定する問題。本問はその前段階の演習として最適です。
- 2点間の位相差を問う問題: 2つの異なる点(例: \(x=0\)と\(x=10\))の振動の位相がどれだけずれているかを問う問題。\(y-t\)グラフを2つ描いて比較したり、波長と距離の関係から計算したりします。
- 進行方向が逆の場合: もし波がx軸「正」の向きに進む場合、(2)の\(y-x\)グラフは左右反転した形になります。進行方向によってグラフの形がどう変わるかを考察する問題は頻出です。
- 初見の問題での着眼点:
- 与えられたグラフの軸を絶対確認: まず、与えられたグラフが\(y-t\)グラフ(一点の時間変化)なのか、\(y-x\)グラフ(一瞬の空間分布)なのかを厳密に区別します。
- グラフから直接読み取れる情報を全て抜き出す:
- \(y-t\)グラフなら \(\rightarrow\) 周期\(T\)、振幅\(A\)、初期変位\(y(0,0)\)、初動の向き。
- \(y-x\)グラフなら \(\rightarrow\) 波長\(\lambda\)、振幅\(A\)。
- グラフ変換の際の思考法:
- \(y-t\)から\(y-x\)へ: 「\(t=0\)の瞬間の、位置\(x\)の変位は? \(\rightarrow\) それは、波が\(x\)から原点まで来るのにかかる時間だけ、原点の振動を巻き戻した(or 先送りした)ものと同じ」と考えます。
- \(y-x\)から\(y-t\)へ: 「位置\(x\)の点の、時刻\(t\)での変位は? \(\rightarrow\) まず\(t=0\)のときの変位と初動を\(y-x\)グラフから読み取り、そこから始まる周期\(T\)の単振動を描く」と考えます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(y-t\)グラフと\(y-x\)グラフの形の混同:
- 誤解: (2)で\(t=0\)の波形を描く際に、与えられた\(y-t\)グラフの形をそのまま\(y-x\)グラフとして描いてしまう。
- 対策: 2つのグラフは全くの別物であることを常に意識する。\(y-t\)グラフは「時間の波」、\(y-x\)グラフは「空間の波」であり、両者は波の速さ\(v\)を介して初めて関係づけられる、と理解する。
- 波の進行方向とグラフの形の関係のミス:
- 誤解: (2)で、波が負の向きに進むのに、\(y-t\)グラフを単純に左右反転させて\(y-x\)グラフを描いてしまう。
- 対策: 「波が負の向きに進む」\(\rightarrow\)「位置\(x\)の揺れは原点より遅れる」\(\rightarrow\)「\(t=0\)の\(x\)の変位は、原点の未来(\(t=x/v\))の変位と同じ」という論理を丁寧にたどる。直感に頼らず、論理でグラフを構築する癖をつける。
- 媒質の初動の向きの判断ミス:
- 誤解: (3)で\(x=10 \text{ m}\)の点の初動を考える際、(2)で描いた\(y-x\)グラフの\(x=10 \text{ m}\)が山の頂上なので、動きが止まっていると勘違いする。あるいは、進行方向(左)に動くと勘違いする。
- 対策: 媒質の運動は上下方向の単振動であると徹底する。山の頂点にいる媒質は、次の瞬間には必ず振動中心に向かって動き出す。どちら向きに動き出すかは、波形全体がどちらにずれるかで判断する。「波形を少しずらして、定点のy座標の変化を見る」というテクニックが最も確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 波の基本式 (\(\lambda = vT\)):
- 選定理由: (1)で波長\(\lambda\)を求めるために使用。この時点で、問題文から速さ\(v\)が、\(y-t\)グラフから周期\(T\)が与えられており、未知数は\(\lambda\)のみです。これら3者を結びつけるこの公式が唯一の選択肢となります。
- 適用根拠: この式は「波は速さ\(v\)で進み、1周期\(T\)の時間でちょうど1波長\(\lambda\)分の距離を進む」という、波の運動の定義そのものを表しています。空間的な量(\(\lambda\))を、運動の量(\(v\))と時間的な量(\(T\))から導出するための、物理学の基本的な思考法を体現しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- グラフの読み取り: 周期や振幅をグラフから読み取る際は、軸の単位([s], [m])を必ず確認する。1サイクルの終わりがどこか、最大値がどこかを慎重に見極める。
- 単純な掛け算: (1)の波長の計算 \(5.0 \times 8.0\) は簡単な計算ですが、油断せずに実行する。有効数字も考慮し、\(5.0\)(2桁) \(\times\) \(8.0\)(2桁) なので、答えも2桁の \(40\) とするのが適切です。
- 作図の丁寧さ: (2), (3)の作図問題では、特徴的な点(山、谷、ゼロクロス点)の位置を正確にプロットすることが重要です。
- (2)では、\(x=0, 10, 20, 30, 40\) [m] の各点が、\(y-t\)グラフの \(t=0, 2, 4, 6, 8\) [s] に対応することを明確にしてからプロットする。
- (3)では、\(t=0\)で山、\(t=T/2=4.0\)で谷、\(t=T=8.0\)で山、というキーポイントを押さえてから滑らかな曲線で結ぶ。
- 自己矛盾のチェック: (2)で描いた\(y-x\)グラフと(3)で描いた\(y-t\)グラフに矛盾がないか確認する。(2)のグラフから\(x=10\)の初期状態を読み取ると、(3)のグラフの\(t=0\)の状態と一致するはず。このようなチェックでミスを発見できます。
225 縦波のグラフ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「縦波の横波表示グラフの解釈」です。与えられた縦波の横波表示グラフ(\(y-x\)グラフ)と振動数の情報から、波の基本量を計算し、媒質の速さや密度といった縦波特有の性質を読み解き、特定の点の振動の様子(\(y-t\)グラフ)を予測する総合的な能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 縦波の横波表示: 媒質のx軸方向の変位をy軸の値に置き換えてグラフ化する手法。\(y>0\)はx軸正方向への変位、\(y<0\)はx軸負方向への変位を意味します。
- 波の基本式: 波の速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)、振動数\(f\)の間の関係式(\(T = 1/f\), \(v = f\lambda\))を使いこなせること。
- 媒質の速度と変位: 媒質の運動は単振動であり、速度は振動の中心(変位\(y=0\))で最大、振動の端(変位が最大・最小)で0になります。
- 媒質の密度とグラフの傾き: 横波表示グラフの傾きが媒質の疎密の状態を表します。傾きが負で最小となる点が最も密(密部)、傾きが正で最大となる点が最も疎(疎部)になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず\(y-x\)グラフから波長と振幅を直接読み取ります。次に、問題文で与えられた振動数から周期を計算し、波の基本式を用いて速さを求めます。
- (2)では、媒質の速さが最大になる条件(変位が0)を満たす点をグラフから探します。
- (3)では、媒質の密度が最大(密部)になる条件(横波表示グラフの傾きが負で最小)を満たす点をグラフから探します。
- (4)では、\(t=0\)の\(y-x\)グラフから\(x=10 \text{ m}\)の点の初期状態(変位と初動の向き)を特定し、そこから始まる周期\(T\)の単振動のグラフ(\(y-t\)グラフ)を描きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
波の4つの基本量(波長、振幅、周期、速さ)を求める問題です。まず、与えられた\(y-x\)グラフから「空間的」な情報である「波長」と「振幅」を読み取ります。次に、問題文で与えられた「時間的」な情報である「振動数」から「周期」を計算します。最後に、これらの物理量を波の基本式 \(v = f\lambda\) に当てはめて「速さ」を導出します。
この設問における重要なポイント
- \(y-x\)グラフから波長\(\lambda\)と振幅\(A\)を読み取る。
- 振動数\(f\)と周期\(T\)は逆数の関係にある (\(T=1/f\))。
- 速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)は \(v=f\lambda\) の関係で結ばれる。
具体的な解説と立式
波長 \(\lambda\) と 振幅 \(A\)
与えられた\(y-x\)グラフから直接読み取ります。
グラフは、\(x=0\)から\(x=20 \text{ m}\)でちょうど1波長分となっているため、
$$ \lambda = 20 \text{ [m]} $$
振幅は振動の中心からの最大の変位なので、グラフの最大値から、
$$ A = 0.01 \text{ [m]} = 1.0 \times 10^{-2} \text{ [m]} $$
周期 \(T\)
問題文より振動数 \(f=5.0 \text{ Hz}\) が与えられています。周期\(T\)と振動数\(f\)は逆数の関係にあるため、
$$ T = \frac{1}{f} $$
速さ \(v\)
波の基本式 \(v = f\lambda\) を用いて計算します。
$$ v = f\lambda $$
使用した物理公式
- 周期と振動数の関係: \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
周期 \(T\) の計算:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{1}{5.0} \\[2.0ex]
&= 0.20 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
速さ \(v\) の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= 5.0 \times 20 \\[2.0ex]
&= 100 \text{ [m/s]} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
「波長」は波一つ分の長さなので、グラフから\(20 \text{ m}\)と読み取れます。「振幅」は揺れの大きさで、\(0.01 \text{ m}\)です。
「周期」は、1回の揺れにかかる時間です。振動数が\(5.0 \text{ Hz}\)(1秒間に5回揺れる)なので、周期は \(1 \div 5.0 = 0.20\)秒です。
「速さ」は、「振動数 × 波長」で計算できるので、\(5.0 \times 20 = 100 \text{ m/s}\)となります。
求めた値は、波長 \(20 \text{ m}\)、振幅 \(1.0 \times 10^{-2} \text{ m}\)、周期 \(0.20 \text{ s}\)、速さ \(1.0 \times 10^2 \text{ m/s}\) です。与えられた情報から論理的に導出されており、妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
媒質の「振動の速さ」が最大となる位置を特定する問題です。波の各点の媒質は単振動をしていることを思い出しましょう。単振動において、物体の速さが最大になるのは、振動の中心を通過するときです。この問題では、横波表示の変位\(y\)が0になる点が振動の中心に対応します。
この設問における重要なポイント
- 媒質の運動は単振動である。
- 単振動において、速さは変位が0の点(振動の中心)で最大となる。
- 横波表示グラフで変位\(y=0\)となる点を探す。
具体的な解説と立式
媒質の各点は、それぞれのつり合いの位置を中心に単振動をしています。単振動において、物体の速さは振動の中心(変位が0の位置)で最大となります。
与えられた\(y-x\)グラフは、\(t=0\)における各点の変位を表しています。したがって、このグラフ上で変位\(y=0\)となっている点を探せばよいことになります。
グラフから、\(y=0\)となるのは \(x=0, 10, 20, \dots\) です。
問題で指定された範囲 \(0 \le x \le 15\) の中で、この条件を満たすのは、
$$ x = 0 \text{ [m]}, 10 \text{ [m]} $$
です。
使用した物理公式
この設問では、公式は使用せず、単振動の性質に関する定性的な理解が求められます。
この設問はグラフの形状から判断するため、計算は不要です。
媒質の速さは、ブランコが一番下の位置を通過するときに最も速くなるのと同じで、振動の真ん中(変位\(y=0\))で最大になります。グラフを見て、高さが0になっている場所を探します。指定された範囲(0から15mまで)では、\(x=0 \text{ m}\) と \(x=10 \text{ m}\) の2箇所が該当します。
媒質の速さが最大になるのは変位が0の点である、という単振動の基本性質から、グラフ上で\(y=0\)となる点を正しく特定しました。
問(3)
思考の道筋とポイント
媒質の「密度」が最大となる位置を特定する問題です。これは縦波の「密部」を探す問題です。縦波の横波表示グラフにおいて、媒質の疎密はグラフの「傾き」と関連しています。媒質が圧縮されて最も密度が高くなる「密部」は、グラフの傾きが負で最小(最も急な下り坂)になる点に対応します。
この設問における重要なポイント
- 縦波の「密部」とは、媒質の密度が最大になる点のこと。
- 横波表示グラフにおいて、密部はグラフの傾きが負で最小になる点に対応する。
具体的な解説と立式
縦波の横波表示では、y軸の値は媒質のx軸方向の変位を表します。
媒質の密度が最大になる「密部」とは、前後の媒質がその点に向かって集まってくる場所です。
これを横波表示グラフで考えると、その点より少し手前(\(x\)が小さい側)の媒質は正の変位(右向きにずれる)を持ち、少し先(\(x\)が大きい側)の媒質は負の変位(左向きにずれる)を持つような場所です。
このような状況は、グラフの傾きが負になる領域で起こります。特に、媒質の圧縮の度合いが最も大きいのは、グラフの傾きが負で最小(最も急な下り坂)になる点です。
与えられたグラフを見ると、
- \(x=5\)(山)や\(x=15\)(谷)では傾きは0。
- \(x=0, 10, 20\)では傾きの絶対値が最大。
- \(x=10\)では傾きは負で、その絶対値が最大です。
グラフの \(x=5\) から \(x=15\) の区間を見ると、傾きは常に負であり、その傾きが最も急になるのは中心の \(x=10 \text{ m}\) です。
したがって、指定された範囲 \(0 \le x \le 15\) で密度が最大となるのは \(x=10 \text{ m}\) です。
使用した物理公式
この設問では、公式は使用せず、縦波の横波表示に関する定性的な理解が求められます。
この設問はグラフの形状から判断するため、計算は不要です。
縦波の横波表示では、「坂道の傾き」が「混み具合」を表します。「下り坂」の部分は媒質が圧縮されてギュウギュウな状態(密)に対応します。問題のグラフで、指定された範囲(0から15mまで)で最も急な「下り坂」になっているのは \(x=10 \text{ m}\) の点です。したがって、ここが最も密度が最大(密)な点となります。
縦波の密部が横波表示グラフの傾きが負で最小の点に対応するという関係性に基づき、\(x=10 \text{ m}\) が答えであると結論付けました。これは物理的に正しい解釈です。
問(4)
思考の道筋とポイント
\(x=10 \text{ m}\) の点の媒質の振動の様子(\(y-t\)グラフ)を描く問題です。\(y-t\)グラフを描くには、まず\(t=0\)における初期状態(初期変位と初動の向き)を正確に把握することが第一歩です。これを元に、(1)で求めた周期\(T\)の単振動としてグラフを描きます。
この設問における重要なポイント
- \(y-t\)グラフは、ある一点の媒質の単振動の記録である。
- グラフを描くには、初期状態(\(t=0\)での変位と初動の向き)の特定が不可欠。
- 初動の向きは、\(y-x\)グラフと波の進行方向から判断する。
具体的な解説と立式
1. \(x=10 \text{ m}\)の点の初期状態の確認
\(t=0\)の\(y-x\)グラフを見ると、\(x=10 \text{ m}\)の点の媒質の変位は \(y=0\) です。
2. 初動の向きの判断
問題文より、波はx軸の正の向きに進んでいます。\(t=0\)の波形を、微小時間後に少しだけ右にずらした波形を想像します。すると、\(x=10 \text{ m}\)という固定された位置で観測すると、波の山の部分がやってくることになり、変位は正の値に変化します。
したがって、\(x=10 \text{ m}\)の媒質は、\(t=0\)の直後にy軸の正の向きに動き始めます。
3. \(y-t\)グラフの作成
以上の初期条件「\(t=0\)で変位\(y=0\)から始まり、正の向きに動き出す」と、(1)で求めた周期\(T=0.20 \text{ s}\)を満たす単振動のグラフを描きます。これは、sin型のカーブになります。
使用した物理公式
- 媒質の単振動の周期性
この設問は作図が中心であり、数値計算は不要です。
まず、スタート地点(\(t=0\))での\(x=10 \text{ m}\)の様子を見ます。\(y-x\)グラフから、高さは\(y=0\)です。
次に、どちらに動き出すかを調べます。波は右に進むので、ほんの少しだけ時間が経った後の波形を想像してみましょう(元の波を少し右にずらす)。すると、\(x=10 \text{ m}\)の場所の波は、少し上に上がっていることがわかります。つまり、y軸のプラスの方向に動き始めます。
したがって、「\(t=0\)で\(y=0\)から始まり、上に動き出し、周期\(0.20\)秒で1往復する」ような波線グラフ(sinカーブ)を描けばよいことになります。
\(x=10 \text{ m}\)の点の初期状態を\(y-x\)グラフから正しく読み取り、sin型の\(y-t\)グラフを描きました。これは物理的に正しい手順です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 縦波の横波表示グラフの二重の解読法:
- 核心: この問題の最大の鍵は、縦波を表現した横波グラフが持つ「二重の意味」を正確に理解し、問われている物理量に応じて解読法を切り替える能力です。
- 理解のポイント:
- y座標 \(\rightarrow\) 媒質の「変位」と「速さ」: グラフのy座標そのものは、媒質が元の位置からx軸方向にどれだけ「ずれたか」という変位を表します。媒質の運動は単振動なので、この変位から速さの状態(変位0で速さ最大、変位最大で速さ0)を判断できます。(問2)
- グラフの傾き \(\rightarrow\) 媒質の「密度(疎密)」: グラフの接線の傾きは、隣り合う媒質との「間隔の変化」を表し、結果として密度の状態を示します。傾きが負で最小(最も急な下り坂)なら最も密度が高い「密部」、傾きが正で最大(最も急な上り坂)なら最も密度が低い「疎部」となります。(問3)
この2つの意味を混同せず、自在に使い分けることが核心です。
- 波の伝播と媒質の振動の連携:
- 核心: 波全体の情報(\(y-x\)グラフ)と、一点の媒質の情報(\(y-t\)グラフ)を、波の進行という現象を通じて相互に変換できること。
- 理解のポイント: (4)では、\(t=0\)の波形グラフ(\(y-x\)グラフ)から\(x=10 \text{ m}\)という一点の初期状態(変位と初動の向き)を読み取り、そこから未来の振動の様子(\(y-t\)グラフ)を予測します。この変換能力は、波の理解度を測る上で非常に重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 音波の圧力変化: 音波は縦波であり、媒質の「密」な点で圧力は最大、「疎」な点で圧力は最小となります。本問の(3)の考え方は、音波の圧力変化を問う問題に直接応用できます。変位のグラフと圧力変化のグラフは位相がずれることを理解するのがポイントです。
- 縦波の定常波: 縦波でも定常波は生じます。変位が最大になる「腹」と、全く動かない「節」が存在します。さらに、密度変化が最大になる点と、常に密度が一定の点も存在し、それぞれ変位の腹・節とは位置がずれます。
- 波の式との関連付け: 本問で得られた情報から、波の式 \(y(x, t) = A\sin(\omega t – kx + \phi)\) を立てる問題。\(A, \omega=2\pi/T, k=2\pi/\lambda\) を計算し、初期条件から位相\(\phi\)を決定します。
- 初見の問題での着眼点:
- 「縦波」というキーワードをチェック: 問題文に「縦波」とあれば、即座に「横波表示」であると判断し、「y軸は変位」「傾きは疎密」という二重の意味を念頭に置きます。
- 問われている物理量で思考を切り替える:
- 「速さ」を問われたら \(\rightarrow\) 思考を「単振動モデル(変位\(y\)の値)」に切り替える。
- 「密度」「疎密」を問われたら \(\rightarrow\) 思考を「グラフの傾き」モードに切り替える。
- 媒質の動きを問われたら: (4)のように特定の点の時間変化を問われたら、まず\(t=0\)の\(y-x\)グラフからその点の「初期変位」と「初動の向き」の2つを特定することから始めます。初動の向きは「微小時間後の波形をずらして描く」のが鉄則です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 変位と密度の混同:
- 誤解: (3)で「密度が最大」の点を探す際、変位が最大(山)や最小(谷)の点を選んでしまう。
- 対策: 「密」とは媒質がぎゅっと集まった状態であり、変位の大きさとは無関係です。「密度は傾き」と強く意識する。山の頂上や谷の底は傾きが0なので、密度は周囲と同じ(疎でも密でもない)です。
- 速さとグラフの傾きの混同:
- 誤解: (2)で「速さが最大」の点を探す際に、グラフの傾きが最も急な点(\(x=10\)など)を選んでしまう。
- 対策: \(y-x\)グラフの傾きはあくまで「密度」の状態を表し、「速さ」ではありません。速さは媒質の「単振動」の性質から考え、「変位が0の点で速さ最大」というルールを適用します。
- 初動の向きの判断ミス:
- 誤解: (4)で\(x=10 \text{ m}\)の点の初動を考える際、グラフが下り坂だから下向き(負の向き)に動くと勘違いする。
- 対策: 媒質の動きは、あくまで波形全体が進行方向にずれることで決まります。波が右(正の向き)に進むので、\(x=10 \text{ m}\)の点には、その少し左にあった山の部分がやってきます。したがって、媒質は上(正の向き)に動きます。「波形をずらして、定点のy座標の変化を見る」という操作を必ず行うようにしましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 周期と振動数の関係 (\(T = 1/f\)):
- 選定理由: (1)で周期\(T\)を求めるために使用。問題文で振動数\(f\)が与えられており、周期\(T\)を求める最も直接的な関係式だからです。
- 適用根拠: 振動数は「1秒あたりの振動回数」、周期は「1回の振動にかかる時間」であり、両者は定義からして逆数の関係にあります。これはあらゆる周期的現象に共通する普遍的な関係です。
- 波の基本式 (\(v = f\lambda\)):
- 選定理由: (1)で速さ\(v\)を求めるために使用。この時点で、振動数\(f\)が与えられ、波長\(\lambda\)がグラフから読み取れています。これら3つの基本量を結びつけるこの公式が最適です。
- 適用根拠: この式は「波は1秒間に\(f\)回振動し、1回の振動で\(\lambda\)の距離を進む。よって1秒間に進む距離(速さ)は\(v=f\lambda\)となる」という波の運動の定義そのものです。
- 縦波の密度の解釈(傾きとの関係):
- 選定理由: (3)で密度最大の位置を特定するために、この物理モデル(解釈)を用います。
- 適用根拠: 媒質が集まって「密」になるのは、ある点の手前の媒質がその点に向かって(正の向きに)変位し、先の媒質もその点に向かって(負の向きに)変位するときです。これは横波表示グラフで、y座標が正から負に減少する「下り坂」に対応します。圧縮の度合いが最大になるのは、この下り坂が最も急な点、つまり傾きが負で最小の点となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位と有効数字: 振幅を \(0.01 \text{ m}\) から \(1.0 \times 10^{-2} \text{ m}\) へ、速さを \(100 \text{ m/s}\) から \(1.0 \times 10^2 \text{ m/s}\) へと、問題文の有効数字(5.0Hzは2桁)に合わせて表現する意識が大切です。
- グラフの読み取り: 波長を読み取る際に、1つの波がどこからどこまでかを正確に見る。\(x=0\)から\(x=20\)までが1サイクルであることを確認します。
- 作図の初期条件: (4)で\(y-t\)グラフを描く前に、必ず「初期変位 \(y(0)\) = ?」「初動の向きは正 or 負?」の2点をメモする癖をつける。
- \(t=0\)の\(y-x\)グラフより、\(x=10\)では\(y=0\)。
- 波は右に進むので、\(x=10\)の媒質は次に山が来て上に動く \(\rightarrow\) 初動は正。
- よって「原点から正の向きに始まるsin型」と確定してから描くことで、ミスを防ぎます。
- 周期の確認: (4)でグラフを描き終えたら、1サイクルが(1)で求めた周期 \(T=0.20 \text{ s}\) になっているかを必ず確認します。
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