「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅴ 章 17】プロセス

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

プロセス

1 静電誘導と静電気力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「静電誘導と導体にはたらく静電気力」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 静電誘導: 導体に帯電体を近づけると、導体内の自由電子が移動し、帯電体に近い側に異符号、遠い側に同符号の電荷が現れる現象。
  2. クーロンの法則: 2つの点電荷の間にはたらく静電気力の大きさは、電荷量の積に比例し、距離の2乗に反比例する。
  3. 力の合成: 物体にはたらく正味の力(合力)の向きに物体は動き出す。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、負に帯電したストローを近づけたとき、アルミ缶(導体)内部の電荷がどのように移動するかを図示します。
  2. 次に、ストローとアルミ缶の各部分(近い側・遠い側)の間にはたらく静電気力の向き(引力か斥力か)を特定します。
  3. 最後に、距離の違いによる力の大きさの関係を比較し、アルミ缶全体にはたらく合力の向きを判断します。

思考の道筋とポイント

  1. 対象の性質: アルミ缶は金属製なので「導体」です。導体内部には、自由に移動できる「自由電子(負電荷)」が無数に存在します。
  2. 電荷の移動: 負に帯電したストローが近づくと、アルミ缶の中の自由電子はストローの負電荷から反発力(斥力)を受けます。その結果、自由電子はストローから遠い側(缶の奥側)へ移動します。
  3. 電荷の分布: 電子が移動した結果、ストローに近い側は電子不足となり「正」に帯電し、遠い側は電子過剰となり「負」に帯電します。これが静電誘導です。
  4. 力の向き:
    • ストロー(負)と缶の近い側(正)の間には、異符号なので「引力」がはたらきます。
    • ストロー(負)と缶の遠い側(負)の間には、同符号なので「斥力」がはたらきます。
  5. 力の大きさの比較: 静電気力は距離が近いほど強くなります。引力がはたらく場所の方が距離が近いため、引力は斥力よりも大きくなります。
  6. 結論: 引力が斥力に勝るため、アルミ缶全体としてはストローに近づく向きに力を受けます。

この設問における重要なポイント

  • 導体と不導体の違い: 導体(金属など)では自由電子が移動して静電誘導が起こります。不導体(プラスチックなど)では誘電分極が起こりますが、結果として引力がはたらく点は共通しています。
  • 距離依存性: クーロン力(静電気力)は距離の2乗に反比例して急激に弱まるため、わずかな距離の差でも力の大きさに明確な差が生じます。

具体的な解説と立式
ここでは、クーロンの法則を用いて、はたらく力の大小関係を数式で表現し、物理的な根拠を明確にします。
クーロンの法則より、電気量 \(q_1, q_2\) を持つ2つの点電荷間の距離が \(r\) のとき、その間にはたらく静電気力の大きさ \(F\) は、クーロンの法則の比例定数を \(k\) として以下の式で表されます。
$$ F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2} $$
今、ストローの電荷を \(-Q \ (Q>0)\)、アルミ缶の近い側に誘起された正電荷を \(+q\)、遠い側に移動した負電荷を \(-q \ (q>0)\) とモデル化します(電荷保存則より、誘起される正負の電荷量の絶対値は等しいと考えます)。
また、ストローから近い側の電荷までの距離を \(r_{\text{近}}\)、遠い側の電荷までの距離を \(r_{\text{遠}}\) とします。配置より明らかに以下の関係が成り立ちます。
$$ r_{\text{近}} < r_{\text{遠}} $$
このとき、ストローが缶の近い側(正電荷)から受ける引力の大きさ \(F_{\text{引}}\) と、遠い側(負電荷)から受ける斥力の大きさ \(F_{\text{斥}}\) は、それぞれ次のように立式できます。
$$ \begin{aligned} F_{\text{引}} &= k \frac{|-Q \cdot (+q)|}{r_{\text{近}}^2} \\[2.0ex] &= k \frac{Qq}{r_{\text{近}}^2} \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} F_{\text{斥}} &= k \frac{|-Q \cdot (-q)|}{r_{\text{遠}}^2} \\[2.0ex] &= k \frac{Qq}{r_{\text{遠}}^2} \end{aligned} $$
アルミ缶にはたらく合力 \(F_{\text{合}}\) を、ストローに近づく向き(引力の向き)を正として立式します。
$$ \begin{aligned} F_{\text{合}} &= (\text{近づく向きの力}) – (\text{遠ざかる向きの力}) \\[2.0ex] &= F_{\text{引}} – F_{\text{斥}} \end{aligned} $$

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

先ほど立てた式に基づいて、合力の符号(向き)を確認します。
\(r_{\text{近}} < r_{\text{遠}}\) であり、\(r > 0\) なので、2乗しても大小関係は変わりません。
$$ r_{\text{近}}^2 < r_{\text{遠}}^2 $$ 分母が小さい分数の値は大きくなるため、力の大きさの関係は以下のようになります。 $$ \begin{aligned} \frac{1}{r_{\text{近}}^2} &> \frac{1}{r_{\text{遠}}^2} \\[2.0ex] k \frac{Qq}{r_{\text{近}}^2} &> k \frac{Qq}{r_{\text{遠}}^2} \end{aligned} $$
よって、次の関係が成り立ちます。
$$ F_{\text{引}} > F_{\text{斥}} $$
これより、合力 \(F_{\text{合}}\) は次のように計算されます。
$$ \begin{aligned} F_{\text{合}} &= F_{\text{引}} – F_{\text{斥}} \\[2.0ex] &> 0 \end{aligned} $$
合力が正の値、つまり「近づく向き」であることが示されました。

この設問の平易な説明

綱引きをイメージしてみましょう。
ストロー君(マイナス)が、アルミ缶の手前にいる「プラス・チーム」と、奥にいる「マイナス・チーム」の両方と同時に綱引きをしています。

  • ストロー君とプラス・チーム(手前)は引き合います(好き)。
  • ストロー君とマイナス・チーム(奥)は押し合います(嫌い)。

ここで重要なのは「距離」です。プラス・チームの方がストロー君のすぐ近くにいるので、お互いに引き合う力はとても強く伝わります。一方、マイナス・チームは遠くにいるので、押し合う力は少し弱くなります。
「強い引き合い」と「弱い押し合い」が同時に起こると、結果として「引き合う力」が勝ちます。だから、アルミ缶はストローの方へゴロゴロと転がっていくのです。

解答 近づく
別解: 「電場」の概念を用いたアプローチ

思考の道筋とポイント
メインの解説では「電荷と電荷の力」として考えましたが、ここでは「電場の中に置かれた電荷が受ける力」という視点で考えます。

  1. 負に帯電したストローは、周囲に「自分に向かう向き」の電場を作ります。
  2. この電場の強さは、ストローに近いほど強く、遠ざかると弱くなります。
  3. アルミ缶の近い側(正電荷)と遠い側(負電荷)が、この電場から受ける力を考えます。

この設問における重要なポイント

  • 電場の定義: 電場 \(E\) とは、\(+1 \ \text{C}\) の電荷が受ける静電気力のことです。
  • 電場から受ける力: 電荷 \(q\) が電場 \(E\) から受ける力は \(F = qE\) です。

具体的な解説と立式
ストローが作る電場の強さを \(E(r)\) とします(\(r\) はストローからの距離)。
負電荷が作る電場なので、電場の向きはストローに向かう向きです。また、距離 \(r\) が小さいほど電場は強くなります。
$$ E(r_{\text{近}}) > E(r_{\text{遠}}) $$
アルミ缶の電荷 \(+q\)(近い側)と \(-q\)(遠い側)が電場から受ける力 \(F\) は、公式 \(F = qE\) より求められます。

  • 近い側の正電荷 \(+q\) が受ける力 \(F_{\text{近}}\):
    電場の向き(ストローに向かう向き)に力を受けます。
    $$ F_{\text{近}} = q E(r_{\text{近}}) $$
  • 遠い側の負電荷 \(-q\) が受ける力 \(F_{\text{遠}}\):
    電場と逆向き(ストローから遠ざかる向き)に力を受けます。
    $$ F_{\text{遠}} = q E(r_{\text{遠}}) $$

使用した物理公式

  • 電場から受ける力: \(F = qE\)
計算過程

合力 \(F_{\text{合}}\) をストローに向かう向きを正として計算します。
$$ \begin{aligned} F_{\text{合}} &= F_{\text{近}} – F_{\text{遠}} \\[2.0ex] &= q E(r_{\text{近}}) – q E(r_{\text{遠}}) \\[2.0ex] &= q \{ E(r_{\text{近}}) – E(r_{\text{遠}}) \} \end{aligned} $$
ここで、近い場所ほど電場は強い(\(E(r_{\text{近}}) > E(r_{\text{遠}})\))ため、カッコ内は正になります。
$$ E(r_{\text{近}}) – E(r_{\text{遠}}) > 0 $$
したがって、
$$ F_{\text{合}} > 0 $$
となり、アルミ缶は電場の強い方、つまりストローに近づく向きに動きます。

この設問の平易な説明

ストローの周りには、電気的な「流れ(電場)」ができていて、ストローに近いほどその流れは激しくなっています。
アルミ缶の手前にあるプラスの電気は、その激しい流れに乗ってストローの方へ強く流されます。
一方、奥にあるマイナスの電気は、流れに逆らおうとしますが、奥の方は流れが緩やかなので、その力は弱いです。
結果として、激しい流れに乗ったプラスの電気の勢いが勝り、缶全体がストローの方へ動きます。

解答 近づく

2 電荷の移動と電気量保存則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「摩擦帯電と電子の移動」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 静電気の発生: 異なる物質をこすり合わせると、一方から他方へ電子が移動し、正負に帯電する。
  2. 電子の性質: 電子は負の電荷を持ち、その電気量の大きさ(電気素量)は \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) である。
  3. 電気量保存の法則: 電荷の移動の前後で、系全体の電気量の総和は変わらない。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、帯電した符号(正か負か)を見て、電子が「入ってきた」のか「出ていった」のかを判断し、移動の向きを決定します。
  2. 次に、生じた電気量の大きさを電子1個分の電気量(電気素量)で割り算し、移動した電子の個数を計算します。

思考の道筋とポイント

  1. 移動する粒子の特定: 原子の構造上、原子核(陽子)は重くて動けませんが、電子は軽くて移動しやすい性質があります。したがって、帯電の原因は常に「電子の移動」です。
  2. 移動の向きの判定:
    • 電子は「負(マイナス)」の電荷を持っています。
    • 塩化ビニル管は「負」に帯電しました。これは、負の電荷を持つ電子が過剰になったことを意味します。
    • つまり、電子は相手(毛皮)から塩化ビニル管へ移動してきました。
  3. 個数の計算:
    • 全体の電気量の大きさは、移動した電子の個数に比例します。
    • 「全体の電気量の大きさ」を「電子1個の電気量の大きさ(電気素量)」で割ることで、個数を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 電気量の量子化: どのような帯電体であっても、その電気量は電気素量 \(e\) の整数倍になります(\(Q = ne\))。
  • 正負の符号の意味: 「正に帯電」=電子が不足している状態、「負に帯電」=電子が過剰な状態、と理解することが重要です。

具体的な解説と立式
まず、電子の移動方向を決定します。
塩化ビニル管に生じた電荷 \(Q\) は負の値(\(-4.8 \times 10^{-6} \, \text{C}\))です。
物体が負に帯電するのは、負の電荷を持つ電子を受け取った場合です。
したがって、電子は毛皮から塩化ビニル管へ移動しました。
次に、移動した電子の個数 \(N\) を求めます。
電子1個の持つ電気量は \(-e = -1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) です。
\(N\) 個の電子が移動したことによって生じた総電気量が \(Q\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ Q = N \times (-e) $$
ここで、個数 \(N\) を求めるために、両辺の絶対値(大きさ)をとって立式するのが計算ミスを防ぐコツです。
$$ |Q| = N \times e $$
この式に値を代入します。
$$ |-4.8 \times 10^{-6}| = N \times (1.6 \times 10^{-19}) $$

使用した物理公式

  • 電気量と電子の個数の関係: \(|Q| = N e\)
計算過程

先ほどの式を \(N\) について解き、計算を進めます。
$$ \begin{aligned} N &= \frac{|-4.8 \times 10^{-6}|}{1.6 \times 10^{-19}} \\[2.0ex] &= \frac{4.8 \times 10^{-6}}{1.6 \times 10^{-19}} \end{aligned} $$
数値を仮数部(数字の部分)と指数部(10の何乗の部分)に分けて計算します。
$$ \begin{aligned} N &= \frac{4.8}{1.6} \times \frac{10^{-6}}{10^{-19}} \\[2.0ex] &= 3.0 \times 10^{-6 – (-19)} \\[2.0ex] &= 3.0 \times 10^{-6 + 19} \\[2.0ex] &= 3.0 \times 10^{13} \end{aligned} $$
したがって、移動した電子の数は \(3.0 \times 10^{13}\) 個です。

この設問の平易な説明

電子を「マイナスの借金カード」だと考えてみましょう。
塩化ビニル管さんは、最初はお金も借金もない状態(プラスマイナスゼロ)でした。
ところが、毛皮さんとこすれ合った後、塩化ビニル管さんは「マイナスの借金」を抱えてしまいました(負に帯電)。
借金が増えたということは、誰かから「借金カード」を押し付けられたということです。つまり、カード(電子)は毛皮さんから塩化ビニル管さんへ移動しました。
借金の総額(\(4.8 \times 10^{-6}\))を、カード1枚あたりの額面(\(1.6 \times 10^{-19}\))で割れば、何枚のカードを押し付けられたかが分かります。

解答 毛皮から塩化ビニル管に \(3.0 \times 10^{13}\) 個
別解: 「電気量保存の法則」に着目したアプローチ

思考の道筋とポイント
メインの解説では塩化ビニル管(受け取り側)に着目しましたが、ここでは毛皮(渡した側)の変化に着目して解きます。

  1. 電気量保存の法則: こする前、両者の電気量の合計は \(0\) でした。こすった後も、2つの物体の電気量の合計は \(0\) のまま保存されます。
  2. 毛皮の電気量: 塩化ビニル管が負になった分だけ、毛皮は正に帯電しているはずです。
  3. 正帯電の意味: 正に帯電するということは、電子が失われた(出ていった)ことを意味します。

この設問における重要なポイント

  • 電気量保存の法則: 閉じた系(外部とのやり取りがない系)では、電荷の総和は常に一定です。

具体的な解説と立式
電気量保存の法則より、こすった後の「塩化ビニル管の電荷」と「毛皮の電荷」の和は \(0\) になります。
塩化ビニル管の電荷を \(Q_{\text{管}}\)、毛皮の電荷を \(Q_{\text{毛}}\) とすると、
$$ Q_{\text{管}} + Q_{\text{毛}} = 0 $$
より、
$$ \begin{aligned} Q_{\text{毛}} &= -Q_{\text{管}} \\[2.0ex] &= -(-4.8 \times 10^{-6}) \\[2.0ex] &= +4.8 \times 10^{-6} \, \text{C} \end{aligned} $$
毛皮は正の電荷を持ちました。これは、毛皮から電子が失われたことを意味します。つまり、電子は毛皮から塩化ビニル管へ移動しました。
失われた電子の個数を \(N\) とすると、失った電子の総電気量の大きさは毛皮の正電荷の大きさに等しいので、
$$ N \times e = Q_{\text{毛}} $$
と立式できます。

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則: \(Q_{\text{前}} = Q_{\text{後}}\)
計算過程

数値を代入して \(N\) を求めます。
$$ \begin{aligned} N &= \frac{Q_{\text{毛}}}{e} \\[2.0ex] &= \frac{4.8 \times 10^{-6}}{1.6 \times 10^{-19}} \\[2.0ex] &= 3.0 \times 10^{13} \end{aligned} $$
結果はメインの解法と一致します。

この設問の平易な説明

2人で「電子」というボールを交換していると考えます。
最初は2人ともボールを同じ数だけ持っていてバランスが取れていました。
こすり合わせた後、塩化ビニル管側が「マイナス」になったということは、ボールが増えたということです。
逆に言えば、相手の毛皮側はボールが減って「プラス」になったはずです。
毛皮側から見て「ボールが何個減ったか?」を計算しても、移動したボールの数は同じになります。

解答 毛皮から塩化ビニル管に \(3.0 \times 10^{13}\) 個

3 クーロンの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「点電荷の間にはたらく静電気力(クーロン力)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. クーロンの法則: 2つの点電荷の間にはたらく力の大きさは、両者の電気量の積に比例し、距離の2乗に反比例する。
  2. 力の向き(符号則): 同符号の電荷同士は反発し合い(斥力)、異符号の電荷同士は引き合う(引力)。
  3. 作用・反作用の法則: 2つの電荷が及ぼし合う力は、大きさが等しく、互いに逆向きである。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、2つの帯電球の符号(プラス・マイナス)を確認し、力の向き(引力か斥力か)を判定します。
  2. 次に、クーロンの法則の公式に与えられた数値を代入し、力の大きさを計算します。

思考の道筋とポイント

  1. 力の向きの判定:
    • 一方の電荷は \(+2.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\)(正)、もう一方は \(-3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\)(負)です。
    • 「プラス」と「マイナス」の組み合わせ、つまり異符号なので、お互いに引き合う「引力」がはたらきます。
  2. 力の大きさの計算:
    • クーロンの法則 \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) を使用します。
    • 力の「大きさ」を求めるので、電荷 \(q_1, q_2\) は絶対値(符号なしの大きさ)で計算します。
    • 距離 \(r\) は \(3.0 \, \text{m}\) です。単位が \(\text{m}\) であることを確認します(もし \(\text{cm}\) なら換算が必要ですが、今回は不要です)。

この設問における重要なポイント

  • 比例定数 \(k\) の扱い: 問題文で与えられた \(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2\) を正確に使用します。
  • 指数計算: \(10^{-6}\) や \(10^9\) といった指数の計算が出てくるため、数字部分と指数部分を分けて整理するとミスが減ります。

具体的な解説と立式
静電気力の大きさを \(F\)、比例定数を \(k\)、2つの電荷の電気量を \(q_1, q_2\)、距離を \(r\) とします。
与えられた値は以下の通りです。
$$ \begin{aligned} k &= 9.0 \times 10^9 \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2 \\ q_1 &= +2.0 \times 10^{-6} \, \text{C} \\ q_2 &= -3.0 \times 10^{-6} \, \text{C} \\ r &= 3.0 \, \text{m} \end{aligned} $$
クーロンの法則より、力の大きさ \(F\) は次のように立式できます。
$$ \begin{aligned} F &= k \frac{|q_1 q_2|}{r^2} \\[2.0ex] &= (9.0 \times 10^9) \times \frac{|(2.0 \times 10^{-6}) \times (-3.0 \times 10^{-6})|}{(3.0)^2} \end{aligned} $$

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

立式した式を計算していきます。
まず、絶対値の中身を計算し、分母を展開します。
$$ F = (9.0 \times 10^9) \times \frac{2.0 \times 10^{-6} \times 3.0 \times 10^{-6}}{9.0} $$
次に、数値を「係数部分(数字)」と「10のべき乗部分」に分けて整理します。
$$ \begin{aligned} F &= \frac{9.0 \times 2.0 \times 3.0}{9.0} \times 10^{9} \times 10^{-6} \times 10^{-6} \\[2.0ex] &= (2.0 \times 3.0) \times 10^{9 – 6 – 6} \\[2.0ex] &= 6.0 \times 10^{-3} \, \text{N} \end{aligned} $$
力の向きについては、異符号(正と負)の電荷間にはたらく力なので「引力」となります。

この設問の平易な説明

磁石のN極とS極が引き合うように、電気の世界でも「プラス」と「マイナス」は引き合います。これを「引力」と呼びます。
力の強さは、電気の量が大きいほど強くなり、距離が離れるほど弱くなります。
今回は公式という「計算ルール」に数字を当てはめるだけで正確な力が求まります。数字が少し複雑に見えますが、\(10\) の何乗という部分はまとめて計算すれば怖くありません。

解答 \(6.0 \times 10^{-3} \, \text{N}\), 引力
別解: 「電場」を経由して力を求めるアプローチ

思考の道筋とポイント
クーロンの法則の公式に直接代入する代わりに、「一方の電荷が作る電場」を考え、その電場から「もう一方の電荷が受ける力」を計算します。

  1. 電荷A(\(+2.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\))が、距離 \(3.0 \, \text{m}\) の地点に作る電場の強さ \(E\) を求めます。
  2. その電場 \(E\) の中に、電荷B(\(-3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\))を置いたときに受ける力 \(F = qE\) を計算します。

この手順を踏むことで、静電気力の背後にある「場の相互作用」という物理的本質が見えてきます。
この設問における重要なポイント

  • 電場の重ね合わせ: 複数の電荷がある場合、それぞれの電荷が作る電場をベクトルとして足し合わせることで、合成電場を求めることができます(今回は2つだけなので単純です)。

具体的な解説と立式
まず、電荷 \(q_1 = +2.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\) が距離 \(r = 3.0 \, \text{m}\) の地点に作る電場の強さ \(E_1\) を求めます。
電場の公式 \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\) より、
$$ \begin{aligned} E_1 &= k \frac{|q_1|}{r^2} \\[2.0ex] &= (9.0 \times 10^9) \times \frac{2.0 \times 10^{-6}}{3.0^2} \end{aligned} $$
次に、この電場 \(E_1\) から電荷 \(q_2 = -3.0 \times 10^{-6} \, \text{C}\) が受ける力の大きさ \(F\) を求めます。
力と電場の関係式 \(F = |q|E\) より、
$$ \begin{aligned} F &= |q_2| E_1 \\[2.0ex] &= |-3.0 \times 10^{-6}| \times E_1 \end{aligned} $$
これらを組み合わせると、
$$ F = (3.0 \times 10^{-6}) \times \left( (9.0 \times 10^9) \times \frac{2.0 \times 10^{-6}}{3.0^2} \right) $$
となり、これはクーロンの法則の式と完全に一致します。

使用した物理公式

  • 点電荷が作る電場: \(E = k \displaystyle\frac{|Q|}{r^2}\)
  • 電場から受ける力: \(F = qE\)
計算過程

電場 \(E_1\) の値を先に計算してみましょう。
$$ \begin{aligned} E_1 &= 9.0 \times 10^9 \times \frac{2.0 \times 10^{-6}}{9.0} \\[2.0ex] &= 2.0 \times 10^3 \, \text{N/C} \end{aligned} $$
この電場は、正電荷 \(q_1\) が作るものなので、\(q_1\) から遠ざかる向きです。
次に、力 \(F\) を計算します。
$$ \begin{aligned} F &= |q_2| E_1 \\[2.0ex] &= (3.0 \times 10^{-6}) \times (2.0 \times 10^3) \\[2.0ex] &= 6.0 \times 10^{-3} \, \text{N} \end{aligned} $$
負電荷 \(q_2\) は電場と逆向き(つまり \(q_1\) に近づく向き)に力を受けるため、これは「引力」となります。

この設問の平易な説明

「力」がいきなり遠くへ伝わるのではなく、「場」という空間の歪みが力を伝えていると考えます。

  1. プラスの球が、周りの空間に「電気の坂道(電場)」を作ります。
  2. その坂道にマイナスの球を置くと、坂道を転がるように力を受けます。

この2段階で考えても、計算結果は全く同じになります。

解答 \(6.0 \times 10^{-3} \, \text{N}\), 引力
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4 電場の強さと向き

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電場の定義と静電気力」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電場の定義: 電場とは、\(+1 \, \text{C}\) の正電荷が受ける静電気力のことです。
  2. 電場と力の関係: 電荷 \(q\) が電場 \(\vec{E}\) から受ける力 \(\vec{F}\) は、\(\vec{F} = q\vec{E}\) で表されます。
  3. 力の向き:
    • 正電荷 (\(q > 0\)) は、電場と同じ向きに力を受けます。
    • 負電荷 (\(q < 0\)) は、電場と逆向きに力を受けます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、電荷の符号(正か負か)と、実際に受けた力の向きから、電場の向きを決定します。
  2. 次に、力の大きさと電荷の大きさ(絶対値)を用いて、電場の強さを計算します。

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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