「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅳ 章 16】基本問題409~416

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基本問題

409 ヤングの実験

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 図形的な近似を用いた解法
      • 模範解答が三平方の定理と代数的な近似式を用いて経路差を導出しているのに対し、別解では「スクリーンまでの距離がスリット間隔に比べて十分に大きい」という条件から、光線がほぼ平行であるとみなして図形的に経路差を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 直感的理解の促進: 複雑な計算を経ずに、図形的な位置関係から直感的に経路差を把握できます。
    • 応用性の向上: この考え方は、回折格子における経路差の導出など、他の波動分野でも頻繁に用いられる重要なアプローチです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、導かれる経路差の式は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ヤングの干渉実験」です。光が波としての性質(回折と干渉)を持つことを示す歴史的にも重要な実験であり、経路差の導出から干渉縞の考察まで、波動分野の基礎が詰まっています。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光の回折と干渉: 光がスリットを通るときに広がり(回折)、重なり合って強め合ったり弱め合ったりする(干渉)現象。
  2. 経路差と位相差: 2つの光源から観測点までの距離の差(経路差)が、波長の整数倍なら強め合い(明線)、半波長の奇数倍なら弱め合う(暗線)。
  3. 近似計算: 物理では、ある量が他の量に比べて非常に小さい場合(\(x \ll L\) など)、近似式を用いて式を簡単にする手法がよく使われます。
  4. 光の色と波長: 可視光線において、色は波長に対応しており、赤色は波長が長く、紫色は波長が短いという性質。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、幾何学的な条件(三平方の定理)から光路長を立式し、与えられた近似式を用いて経路差を計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた経路差を用いて明線の条件式を立て、隣り合う明線の間隔 \(\Delta x\) を表す式を導きます。そこに数値を代入して波長を求めます。
  3. (3)〜(5)では、導出した \(\Delta x\) の式に基づいて、波長や屈折率が変化したときに干渉縞がどう変わるかを考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
まず、スリット \(\text{S}_1\)、\(\text{S}_2\) からスクリーン上の点 \(\text{R}\) までの距離 \(\overline{\text{S}_1\text{R}}\) と \(\overline{\text{S}_2\text{R}}\) を、三平方の定理を使って厳密に立式します。
次に、問題文で与えられた近似式 \((1+h)^n \approx 1+nh\) (ただし \(|h| \ll 1\))を利用して、ルートを外します。
最後に、2つの距離の差(経路差)を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 直角三角形を見つけ出し、三平方の定理を正しく適用すること。
  • 近似式を使える形(\(1 + \text{微小量}\) の形)に変形するテクニック。
  • \(x\) や \(d\) が \(L\) に比べて十分に小さいという条件 \(x, d \ll L\) を利用すること。

具体的な解説と立式
図より、点 \(\text{R}\) の座標を \(x\) とすると、スリット \(\text{S}_1\)(座標 \(-d/2\))と点 \(\text{R}\) の間の垂直方向の距離は \(x + \frac{d}{2}\) です。同様に、スリット \(\text{S}_2\)(座標 \(d/2\))と点 \(\text{R}\) の間の距離は \(|x – \frac{d}{2}|\) です。
スクリーンまでの水平距離は \(L\) なので、三平方の定理より、それぞれの距離は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\overline{\text{S}_1\text{R}} &= \sqrt{L^2 + \left(x + \frac{d}{2}\right)^2} \\[2.0ex]
\overline{\text{S}_2\text{R}} &= \sqrt{L^2 + \left(x – \frac{d}{2}\right)^2}
\end{aligned}
$$
ここで、近似式 \((1+h)^{\frac{1}{2}} \approx 1 + \frac{1}{2}h\) を利用するために、根号の中身を \(L^2\) でくくり出し、\(1 + (\dots)\) の形に変形します。
$$
\begin{aligned}
\overline{\text{S}_1\text{R}} &= \sqrt{L^2 \left\{ 1 + \left( \frac{x + d/2}{L} \right)^2 \right\}} \\[2.0ex]
&= L \left\{ 1 + \left( \frac{x + d/2}{L} \right)^2 \right\}^{\frac{1}{2}}
\end{aligned}
$$
同様に、
$$
\begin{aligned}
\overline{\text{S}_2\text{R}} &= L \left\{ 1 + \left( \frac{x – d/2}{L} \right)^2 \right\}^{\frac{1}{2}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理: \(c = \sqrt{a^2 + b^2}\)
  • 近似式: \((1+h)^n \approx 1+nh\) (\(|h| \ll 1\))
計算過程

近似式を用いて計算を進めます。ここで、\(h = \left( \frac{x \pm d/2}{L} \right)^2\)、\(n = \frac{1}{2}\) に対応します。
$$
\begin{aligned}
\overline{\text{S}_1\text{R}} &\approx L \left\{ 1 + \frac{1}{2} \left( \frac{x + d/2}{L} \right)^2 \right\} \\[2.0ex]
&= L + \frac{L}{2} \cdot \frac{(x + d/2)^2}{L^2} \\[2.0ex]
&= L + \frac{(x + d/2)^2}{2L}
\end{aligned}
$$
同様に、
$$
\begin{aligned}
\overline{\text{S}_2\text{R}} &\approx L + \frac{(x – d/2)^2}{2L}
\end{aligned}
$$
求める経路差 \(|\overline{\text{S}_1\text{R}} – \overline{\text{S}_2\text{R}}|\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
|\overline{\text{S}_1\text{R}} – \overline{\text{S}_2\text{R}}| &= \left| \left( L + \frac{(x + d/2)^2}{2L} \right) – \left( L + \frac{(x – d/2)^2}{2L} \right) \right| \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2L} \left| (x + d/2)^2 – (x – d/2)^2 \right| \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2L} \left| \left( x^2 + xd + \frac{d^2}{4} \right) – \left( x^2 – xd + \frac{d^2}{4} \right) \right| \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2L} \cdot 2xd \\[2.0ex]
&= \frac{dx}{L}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

スリットからスクリーン上の点までの距離を、直角三角形の斜辺として計算します。ただし、そのまま引き算するとルートが残って計算できないので、「スクリーンまでの距離 \(L\) がとても長い」ということを利用して、「ルート付きの式」を「ルートなしの簡単な式」に書き換える(近似する)テクニックを使います。その結果、経路の差は非常にシンプルな形になります。

結論と吟味

経路差は \(d\frac{x}{L}\) と求まりました。これは \(x\) に比例しており、中心から離れるほど経路差が大きくなることを示しています。次元を確認すると、\([L] \cdot [L] / [L] = [L]\) となり、長さの次元を持っているため妥当です。

解答 (1) \( d\frac{x}{L} \)
別解: 図形的な近似を用いた解法

思考の道筋とポイント
スクリーンまでの距離 \(L\) がスリット間隔 \(d\) に比べて非常に大きい(\(L \gg d\))ため、スリット \(\text{S}_1\) と \(\text{S}_2\) から点 \(\text{R}\) に向かう2本の光線は、ほぼ平行であるとみなせます。この平行性を利用して、図形的に経路差を求めます。
この設問における重要なポイント

  • \(L \gg d\) のとき、\(\text{S}_1\text{R} \parallel \text{S}_2\text{R}\) と近似できること。
  • スリット \(\text{S}_2\) から \(\text{S}_1\text{R}\) に下ろした垂線の足 \(\text{H}\) を考えると、\(\text{S}_1\text{H}\) が経路差になること。
  • 図形の角度関係から、\(\angle \text{S}_2\text{S}_1\text{H} \approx \theta\) (\(\theta\) は中心軸と \(\text{OR}\) のなす角)となること。

具体的な解説と立式
図のように、\(\text{S}_2\) から \(\text{S}_1\text{R}\) に垂線 \(\text{S}_2\text{H}\) を下ろします。
点 \(\text{R}\) が遠方にあるため、\(\text{S}_1\text{R}\) と \(\text{S}_2\text{R}\) はほぼ平行とみなせます。すると、\(\text{H}\) から先、\(\text{HR}\) と \(\text{S}_2\text{R}\) の長さは等しいと考えられます。
したがって、経路差は \(\text{S}_1\text{H}\) の長さに等しくなります。
スクリーン中心 \(\text{O}\) から点 \(\text{R}\) を見込む角を \(\theta\) とすると、直角三角形 \(\text{S}_1\text{S}_2\text{H}\) において、\(\angle \text{S}_2\text{S}_1\text{H} \approx \theta\) となります。
よって、経路差は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
|\overline{\text{S}_1\text{R}} – \overline{\text{S}_2\text{R}}| &\approx d \sin\theta
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 三角比の定義: \(\sin\theta = \frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}}\)
  • 小角度の近似: \(\theta \ll 1\) のとき、\(\sin\theta \approx \tan\theta\)
計算過程

ここで、\(x \ll L\) なので、角度 \(\theta\) は非常に小さく、\(\sin\theta \approx \tan\theta\) と近似できます。
図の直角三角形 \(\triangle \text{O}’\text{OR}\)(\(\text{O}’\)はスリットの中点)に着目すると、
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{x}{L}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
|\overline{\text{S}_1\text{R}} – \overline{\text{S}_2\text{R}}| &\approx d \tan\theta \\[2.0ex]
&= d \cdot \frac{x}{L}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

遠くの点を見るとき、2つのスリットから出る光はほとんど平行に進みます。このとき、片方の光が余分に進む距離(経路差)は、スリット間隔 \(d\) と角度 \(\theta\) を使って直角三角形の辺として求められます。さらに、角度が小さいときは「サイン」と「タンジェント」がほぼ同じ値になることを使うと、計算なしでサッと答えが出せます。

結論と吟味

模範解答の代数的な計算結果と完全に一致しました。この方法は計算量が少なく、物理的な状況(平行光線)をイメージしやすいため、検算や素早い導出に役立ちます。

解答 (1) \( d\frac{x}{L} \)

問(2)

思考の道筋とポイント
干渉縞の明線ができる条件は、「経路差が波長の整数倍になること」です。(1)で求めた経路差の式を使って、\(m\) 番目の明線の位置 \(x_m\) を求めます。
次に、隣り合う明線の間隔 \(\Delta x\) を計算します。これは \(m+1\) 番目の位置と \(m\) 番目の位置の差です。
最後に、与えられた数値(\(d, L, \Delta x\))を代入して、波長 \(\lambda\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 明線の干渉条件: \(\text{経路差} = m\lambda\) (\(m\) は整数)
  • 明線間隔 \(\Delta x\) の定義: \(\Delta x = x_{m+1} – x_m\)
  • 数値計算における単位の統一と指数の扱い。

具体的な解説と立式
まず、明線ができる条件式を立てます。経路差が波長 \(\lambda\) の整数倍 \(m\lambda\) になるとき、光は強め合います。
$$
\begin{aligned}
d\frac{x}{L} &= m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
この式を \(x\) について解き、\(m\) 番目の明線の位置 \(x_m\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_m &= \frac{mL\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
隣り合う明線の間隔 \(\Delta x\) は、\(m+1\) 番目の明線と \(m\) 番目の明線の位置の差です。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= x_{m+1} – x_m
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 干渉条件(明線): \(\text{経路差} = m\lambda\)
計算過程

まず、\(\Delta x\) を \(\lambda\) を用いて表します。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= \frac{(m+1)L\lambda}{d} – \frac{mL\lambda}{d} \\[2.0ex]
&= \frac{L\lambda}{d} (m+1 – m) \\[2.0ex]
&= \frac{L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
この式を \(\lambda\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{d \Delta x}{L}
\end{aligned}
$$
与えられた数値 \(d = 4.0 \times 10^{-4}\,\text{m}\)、\(L = 2.0\,\text{m}\)、\(\Delta x = 3.0 \times 10^{-3}\,\text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{(4.0 \times 10^{-4}) \times (3.0 \times 10^{-3})}{2.0} \\[2.0ex]
&= \frac{12.0 \times 10^{-7}}{2.0} \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^{-7}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「経路差が波長の何倍か」によって、光が強め合う場所が決まります。計算すると、強め合う場所(明線)は等間隔に並ぶことがわかります。この間隔の広さは、光の波長と装置のサイズ(スリット間隔やスクリーンまでの距離)で決まります。逆に、間隔を測れば、目に見えない光の波長を計算で求めることができます。

結論と吟味

波長は \(6.0 \times 10^{-7}\,\text{m}\) と求まりました。これは可視光線(橙色〜赤色付近)の波長として妥当な値です。

解答 (2) \( 6.0 \times 10^{-7}\,\text{m} \)

問(3)

思考の道筋とポイント
(2)で導出した明線間隔の式 \(\Delta x = \frac{L\lambda}{d}\) に基づいて考察します。\(L\) と \(d\) は一定なので、\(\Delta x\) は波長 \(\lambda\) に比例します。したがって、波長が大きい色ほど、明線間隔 \(\Delta x\) は大きくなります。可視光線の色の順序(赤、緑、紫)と波長の大小関係を思い出して答えます。
この設問における重要なポイント

  • 明線間隔 \(\Delta x\) と波長 \(\lambda\) の比例関係: \(\Delta x \propto \lambda\)
  • 可視光線の波長の大小関係: 赤 \(>\) 緑 \(>\) 紫

具体的な解説と立式
明線間隔の式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= \frac{L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
この式より、\(\Delta x\) は波長 \(\lambda\) に比例することがわかります。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &\propto \lambda
\end{aligned}
$$
したがって、波長 \(\lambda\) が大きい順に、\(\Delta x\) も大きくなります。

使用した物理公式

  • 明線間隔の式: \(\Delta x = \frac{L\lambda}{d}\)
計算過程

可視光線の波長は、一般的に以下の順序で小さくなります。
赤(約 \(700\,\text{nm}\)) \(>\) 緑(約 \(550\,\text{nm}\)) \(>\) 紫(約 \(400\,\text{nm}\))
よって、\(\Delta x\) が大きい順(波長が大きい順)に並べると、赤、緑、紫となります。

この設問の平易な説明

縞模様の間隔は、光の波長に比例して広くなります。つまり、波長の長い光ほど縞模様は広がり、波長の短い光ほど縞模様は細かくなります。虹の色で言うと、赤が一番波長が長く、紫が一番短いので、縞の間隔も赤が一番広く、紫が一番狭くなります。

結論と吟味

波長の長い順に並べるという物理的な推論に基づき、赤、緑、紫という順序が得られました。これは一般的な知識とも合致します。

解答 (3) 赤, 緑, 紫

問(4)

思考の道筋とポイント
装置全体を水中に入れると、光の速さが遅くなり、それに伴って波長が変化します。屈折率 \(n\) の媒質中での波長 \(\lambda’\) と真空(空気)中での波長 \(\lambda\) の関係式を思い出します。そして、変化した波長 \(\lambda’\) を明線間隔の式に代入して、\(\Delta x\) がどう変化するかを判断します。
この設問における重要なポイント

  • 媒質中での波長の変化: \(\lambda’ = \frac{\lambda}{n}\)
  • 水の屈折率 \(n\) は空気の屈折率(約1)より大きい(\(n > 1\))。

具体的な解説と立式
屈折率 \(n\) の水中における光の波長 \(\lambda’\) は、空気中の波長 \(\lambda\) を用いて以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= \frac{\lambda}{n}
\end{aligned}
$$
水中での明線間隔 \(\Delta x’\) は、この波長 \(\lambda’\) を用いて表されます。
$$
\begin{aligned}
\Delta x’ &= \frac{L\lambda’}{d}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 媒質中の波長: \(\lambda’ = \frac{\lambda}{n}\)
計算過程

\(\lambda’\) の式を \(\Delta x’\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta x’ &= \frac{L}{d} \cdot \frac{\lambda}{n} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{n} \cdot \frac{L\lambda}{d} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{n} \Delta x
\end{aligned}
$$
水の屈折率は \(n > 1\) なので、\(\frac{1}{n} < 1\) となります。
したがって、
$$
\begin{aligned}
\Delta x’ &< \Delta x
\end{aligned}
$$
となり、明線の間隔は小さくなります。

この設問の平易な説明

水の中では光の進むスピードが落ちるため、波の「歩幅(波長)」が短くなります(ギュッと縮むイメージです)。縞模様の間隔は波長に比例するので、波長が縮むと、縞模様の間隔も同様に狭くなります。

結論と吟味

屈折率 \(n > 1\) の媒質中では波長が短くなるため、干渉縞の間隔も狭くなるという結論は物理的に妥当です。

解答 (4) 小さくなる

問(5)

思考の道筋とポイント
白色光は、様々な波長の光(赤〜紫)が混ざった光です。中心(\(m=0\))では全ての色の光が強め合うため白色に見えますが、1次の明線(\(m=1\))の位置 \(x_1 = \frac{L\lambda}{d}\) は波長によって異なります。(3)で考察したように、波長が短い紫色は中心近くに、波長が長い赤色は中心から遠くに明線を作ります。これにより、色が分離して虹のように見えます。
この設問における重要なポイント

  • 白色光は連続スペクトル(様々な波長の光の混合)である。
  • 0次の明線(\(x=0\))は波長によらず同じ位置にできるため、色が混ざって白色になる。
  • 1次以上の明線は、波長によってできる位置がずれる(色分散)。

具体的な解説と立式
\(m=1\) の明線(1次の明線)の位置 \(x_1\) は、波長 \(\lambda\) に依存します。
$$
\begin{aligned}
x_1 &= \frac{L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
この式から、\(x_1\) は \(\lambda\) に比例します。
$$
\begin{aligned}
x_1 &\propto \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 明線の位置: \(x_m = \frac{mL\lambda}{d}\)
計算過程

波長の大小関係は \(\lambda_{\text{紫}} < \lambda_{\text{赤}}\) です。
したがって、1次の明線ができる位置 \(x_1\) についても、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
x_{1(\text{紫})} < x_{1(\text{赤})}
\end{aligned}
$$
つまり、スクリーン中心 \(\text{O}\) から見て、波長の短い紫色の明線が近い側に、波長の長い赤色の明線が遠い側に現れます。その間の波長の光(青、緑、黄、橙)も順に並ぶため、全体として色づいて見えます。

この設問の平易な説明

白い光はいろいろな色の光のチームです。真ん中のゴール(0次)には全員同時に着くので白く見えますが、次のゴール(1次)は、波長の短い紫チームが手前に、波長の長い赤チームが奥に到着します。その結果、光が色ごとに分けられて、中心から外側に向かって紫から赤へと色が変化する虹のような縞模様が見えます。

結論と吟味

波長による回折角の違い(分散)により、白色光を用いた干渉実験では明線が色づく現象が説明できました。中心に近い側が紫、遠い側が赤という順序も、波長と位置の比例関係から正しく導かれています。

解答 (5) Oから近い側で紫,遠い側で赤が強めあい,色づいて見える

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 経路差の導出と干渉条件の適用
    • 核心: ヤングの実験に限らず、干渉問題のゴールは常に「(光路差) = (波長の整数倍 または 半波長の奇数倍)」という式を作ることです。この問題では、幾何学的な条件から経路差 \(d\frac{x}{L}\) を導き出し、それを明線の条件 \(m\lambda\) と結びつけるプロセスが全ての土台となります。
    • 理解のポイント:
      • 幾何学的アプローチ: 経路差は、スリットとスクリーンの位置関係(直角三角形)から三平方の定理を用いて導かれます。
      • 近似の必然性: \(L\) が非常に大きいため、厳密な計算ではなく近似計算が必須となります。この「物理的な状況に応じた数学的処理」が物理の核心部分です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 回折格子: スリットが多数になった場合です。経路差の式は \(d\sin\theta\) となりますが、\(x \ll L\) の近似を使えば \(d\frac{x}{L}\) となり、ヤングの実験と同じ形になります。
    • ロイド鏡やフレネルの複プリズム: 装置は違いますが、結局は「2つの光源からの光の干渉」に帰着します。虚光源の位置を特定し、ヤングの実験と同様に \(d\)(光源間距離)と \(L\)(スクリーン距離)を設定すれば、同じ式が使えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まずは経路差(光路差)の特定: どこで距離の差が生まれているかを図形的に探します。
    2. 屈折率と反射の確認: 光が媒質を通る場合は「光路長(幾何学的距離 \(\times\) 屈折率)」を考えます。また、固定端反射(屈折率の小さい媒質から大きい媒質への反射)がある場合は、位相が \(\pi\)(半波長分)ずれることに注意が必要です。ヤングの実験では反射がないので考慮不要ですが、薄膜干渉などでは必須です。
    3. 近似の可否: 「十分に遠い」「十分に小さい」というキーワードがあれば、近似計算の出番です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 近似式の適用ミス:
    • 誤解: \(\sqrt{1+h} \approx 1+h\) と、係数 \(\frac{1}{2}\) を忘れて計算してしまう。
    • 対策: \((1+h)^n \approx 1+nh\) という一般式を記憶し、ルートの場合は \(n=\frac{1}{2}\) であることを意識して、必ず \(\frac{1}{2}\) を掛ける癖をつけましょう。
  • 媒質中の波長の取り違え:
    • 誤解: 水中での波長を \(\lambda’ = n\lambda\) と大きくしてしまう。
    • 対策: 「屈折率 \(n\) の媒質中では光の進みが遅くなる(抵抗があるイメージ)」\(\rightarrow\) 「速さが \(1/n\) 倍になる」\(\rightarrow\) 「振動数は変わらないので、波長も \(1/n\) 倍に縮む」という論理鎖で覚えましょう。
  • 明線間隔と座標の混同:
    • 誤解: 明線の位置 \(x_m\) を求めて、それをそのまま明線間隔 \(\Delta x\) だと勘違いする。
    • 対策: \(x_m\) は原点からの距離、\(\Delta x\) は隣り合う縞の距離です。必ず \(\Delta x = x_{m+1} – x_m\) の引き算を行うか、\(m\) に比例する係数部分が間隔であると理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 問(1)での公式選択(三平方の定理と近似式):
    • 選定理由: 求めたいのは斜めの距離を含む「経路差」です。直交座標系(\(L\) と \(x\))において斜めの長さを厳密に記述できるのは三平方の定理だけです。しかし、そのままでは差をとってもルートが消えず計算が進まないため、\(x \ll L\) という物理的条件を利用して式を簡略化する近似式が必要不可欠となります。
    • 適用根拠: 問題の図に直角三角形が存在すること、および問題文に「\(x\) は \(L\) よりも十分に小さく」という近似適用のための条件が明記されていることが根拠です。
  • 問(2)での公式選択(干渉条件):
    • 選定理由: 求めたいのは「明線(強め合う点)」の位置や波長です。波動光学において、明線ができる条件を記述する法則は「経路差 \(=\) 波長の整数倍」という干渉条件以外にありません。
    • 適用根拠: 2つのスリットから出た光(可干渉光)がスクリーン上で重なり合っている状況であり、波の重ね合わせの原理が成立するためです。
  • 問(1)別解でのアプローチ選択(図形的な近似):
    • 選定理由: 複雑な代数計算(ルートの展開など)を回避し、幾何学的な位置関係から直感的に経路差を求めたい場合に有効なアプローチです。
    • 適用根拠: 「スクリーンまでの距離 \(L\) がスリット間隔 \(d\) に比べて十分に大きい(\(L \gg d\))」という条件により、2本の光線が実質的に平行であるとみなせるため、垂線を下ろして経路差を直角三角形の辺として扱えることが根拠となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま最後まで計算する:
    • 問(2)でいきなり数値を代入せず、まず \(\lambda = \frac{d\Delta x}{L}\) という文字式を導いてから代入しましょう。これにより、式の形から物理的な意味(比例・反比例)を確認でき、計算ミスも減らせます。
  • 指数の取り扱いに注意:
    • \(d = 4.0 \times 10^{-4}\)、\(\Delta x = 3.0 \times 10^{-3}\) のように、桁数が異なる数値の掛け算が出てきます。指数部分(\(10^{-4} \times 10^{-3} = 10^{-7}\))と仮数部分(\(4.0 \times 3.0 = 12.0\))を分けて計算し、最後に合わせる手順を徹底しましょう。
  • 単位の確認:
    • 全ての長さの単位がメートル \([\text{m}]\) に統一されているか確認します。問題によっては \([\text{mm}]\) や \([\text{cm}]\) が混在することがあるので要注意です。

410 回折格子

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「回折格子による光の干渉」です。多数のスリットを持つ回折格子を通った光が、特定の方向で強め合う現象を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 回折格子の干渉条件(明線): 隣り合うスリットを通る光の経路差 \(d\sin\theta\) が波長 \(\lambda\) の整数倍になるとき、明線が生じます。式で表すと \(d\sin\theta = m\lambda\) です。
  2. 格子定数 \(d\): 隣り合うスリット(すじ)同士の間隔のことです。
  3. 格子定数とすじの本数の関係: \(1\,\text{m}\)(または \(1\,\text{cm}\))あたりのすじの本数 \(N\) と格子定数 \(d\) は、逆数の関係にあります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず干渉条件の式を用いて格子定数 \(d\) を求めます。その後、単位長さ(\(1.0\,\text{cm}\))の中にその間隔 \(d\) がいくつ入るかを計算して、すじの本数を求めます。
  2. (2)では、すじの本数が増えたときに格子定数 \(d\) がどう変化するかを考え、それが干渉条件式の角度 \(\theta\) にどう影響するかを数式から判断します。

問(1)

思考の道筋とポイント
まず、回折格子の明線の条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) を立てて、格子定数(すじの間隔)\(d\) を求めます。
次に、求めた \(d\) を使って、\(1.0\,\text{cm}\) の中に何本のすじが入っているかを計算します。このとき、単位(\(\text{m}\) と \(\text{cm}\))の扱いに注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • 明線の条件式: \(d\sin\theta = m\lambda\)
  • 入射角 \(\theta = 30^\circ\)、次数 \(m = 4\)、波長 \(\lambda = 5.0 \times 10^{-7}\,\text{m}\) を代入する。
  • 最後に \(1.0\,\text{cm} = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{m}\) として単位を揃えて割り算する。

具体的な解説と立式
格子定数を \(d\) とします。隣り合うスリットからの光の経路差は \(d\sin\theta\) で表されます。これが波長 \(\lambda\) の整数倍 \(m\lambda\) になるとき、明線が生じます。
したがって、明線の条件式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
d\sin\theta &= m\lambda
\end{aligned}
$$
ここに、問題で与えられた値 \(\theta = 30^\circ\)、\(m = 4\)、\(\lambda = 5.0 \times 10^{-7}\,\text{m}\) を代入して、\(d\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
d \sin 30^\circ &= 4 \times (5.0 \times 10^{-7})
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 回折格子の干渉条件: \(d\sin\theta = m\lambda\)
計算過程

まず、格子定数 \(d\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
d \times \frac{1}{2} &= 20.0 \times 10^{-7} \\[2.0ex]
d &= 40.0 \times 10^{-7} \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 10^{-6}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
次に、\(1.0\,\text{cm}\) あたりのすじの本数 \(N\) を求めます。
\(1.0\,\text{cm} = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{m}\) なので、この長さを格子定数 \(d\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
N &= \frac{1.0 \times 10^{-2}}{d} \\[2.0ex]
&= \frac{1.0 \times 10^{-2}}{4.0 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= \frac{1.0}{4.0} \times 10^{4} \\[2.0ex]
&= 0.25 \times 10^{4} \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{3}\,\text{本}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回折格子とは、とても細かい隙間(スリット)がたくさん並んだものです。光が特定の方向に強め合う条件(公式)を使って、まず隙間の間隔(格子定数)を計算します。
計算の結果、隙間の間隔は \(4.0 \times 10^{-6}\,\text{m}\)(4マイクロメートル)だとわかりました。
問われているのは「\(1\,\text{cm}\) の中に隙間が何本あるか」なので、\(1\,\text{cm}\) という長さを、隙間1つ分の幅で割り算すれば、本数が出てきます。

結論と吟味

答えは \(2.5 \times 10^3\,\text{本}\) です。\(1\,\text{cm}\) に数千本というオーダーは、一般的な回折格子のスペックとして妥当な値です。

解答 (1) \( 2.5 \times 10^3\,\text{本} \)

問(2)

思考の道筋とポイント
「すじの本数が多くなる」ということは、すじがより密集することを意味します。つまり、格子定数(すじの間隔)\(d\) は小さくなります。
このとき、干渉条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) において、\(d\) が小さくなった場合に角度 \(\theta\) がどう変化するかを考察します。\(m\) と \(\lambda\) は変化しません。
この設問における重要なポイント

  • すじの本数が増える \(\rightarrow\) 格子定数 \(d\) が小さくなる。
  • 式変形により \(\sin\theta\) と \(d\) の関係(反比例)を見抜く。
  • \(0^\circ \le \theta \le 90^\circ\) の範囲では、\(\sin\theta\) が大きくなれば \(\theta\) も大きくなる。

具体的な解説と立式
まず、すじの本数が増えたときの格子定数 \(d\) の変化を確認します。単位長さあたりの本数が増えるということは、すじ1本あたりの間隔は狭くなるため、\(d\) は小さくなります。
次に、干渉条件式を \(\sin\theta\) について解いた形に変形して考えます。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &= \frac{m\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
この式の右辺において、次数 \(m\)(\(=4\))と波長 \(\lambda\) は一定です。

使用した物理公式

  • 回折格子の干渉条件: \(d\sin\theta = m\lambda\)
計算過程

式 \(\sin\theta = \frac{m\lambda}{d}\) において、分母の \(d\) が小さくなると、分数全体の値(つまり \(\sin\theta\))は大きくなります。
$$
\begin{aligned}
d \text{が小さくなる} &\rightarrow \sin\theta \text{は大きくなる}
\end{aligned}
$$
\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲において、\(\sin\theta\) が大きくなると、角度 \(\theta\) も大きくなります。
したがって、4次の明線が得られる角度は \(30^\circ\) よりも大きくなります。

この設問の平易な説明

すじの本数を増やすということは、隙間の間隔 \(d\) を狭くするということです。
光の干渉では、隙間が狭くなればなるほど、光はより大きく広がろうとします(回折角が大きくなります)。
数式で見ても、\(d \times \sin\theta = \text{一定}\) という関係があるので、\(d\) が小さくなれば、バランスを取るために \(\sin\theta\)(つまり角度 \(\theta\))は大きくならなければなりません。

結論と吟味

すじの間隔が狭くなると回折角が大きくなるという物理的直感とも一致します。よって、角度は大きくなります。

解答 (2) 大きい

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 回折格子の干渉条件
    • 核心: 回折格子における明線の条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) が全ての出発点です。この式は、隣り合うスリットを通る光の経路差 \(d\sin\theta\) が波長 \(\lambda\) の整数倍 \(m\) になるときに、波が強め合うことを表しています。
    • 理解のポイント:
      • 経路差の幾何学的意味: 図を描いて、隣り合う光線の経路差が直角三角形の辺として \(d\sin\theta\) になることを確認しましょう。
      • 格子定数 \(d\) の定義: \(d\) は「スリットの間隔」であり、「\(1\,\text{cm}\) あたりの本数」の逆数であることを理解するのが鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 白色光を入射させる問題: 波長 \(\lambda\) によって回折角 \(\theta\) が異なるため、スペクトル(虹色の縞)が生じます。式 \(\sin\theta = \frac{m\lambda}{d}\) から、波長が大きい(赤色)ほど角度 \(\theta\) が大きくなることが分かります。
    • 垂直ではなく斜めに入射させる問題: 入射角を \(i\)、回折角を \(\theta\) とすると、経路差が \(d(\sin\theta – \sin i)\) (または \(+\))のように変化します。基本原理(経路差=波長の整数倍)に戻って図を描けば対応できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 格子定数 \(d\) の算出: 問題文で直接 \(d\) が与えられず、「\(1\,\text{mm}\) あたり \(N\) 本」のように与えられることが多いです。まずは \(d = \frac{1}{N}\) (単位に注意)を計算する準備をしましょう。
    2. 次数の確認: 「\(m\) 次の明線」という記述を見逃さないようにしましょう。特に \(m=0\) は直進光、\(m=1, 2, \dots\) が回折光です。
    3. 角度の範囲: \(\sin\theta \le 1\) という数学的な制約から、観測可能な最大の次数 \(m\) を求める問題も頻出です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位換算のミス:
    • 誤解: 「\(1\,\text{cm}\) あたり」という条件を、そのままメートル単位の計算式に混ぜてしまう。
    • 対策: 物理公式(SI単位系)では長さはメートル \([\text{m}]\) が基本です。\(1\,\text{cm} = 10^{-2}\,\text{m}\) や \(1\,\text{mm} = 10^{-3}\,\text{m}\) の換算を、計算の最初の段階で確実に行いましょう。
  • 格子定数と本数の関係の混同:
    • 誤解: 本数 \(N\) が増えると格子定数 \(d\) も増える(あるいは比例する)と勘違いする。
    • 対策: 「\(d\) は隙間の幅」とイメージしましょう。同じ長さにたくさんの線を引けば(\(N\) 増)、当然隙間は狭くなります(\(d\) 減)。\(d = \frac{1}{N}\) という反比例の関係を常に意識してください。
    • \(\sin\theta\) と \(\theta\) の関係:
      • 誤解: \(\sin\theta\) が大きくなると \(\theta\) がどうなるか瞬時に判断できない。
      • 対策: \(0^\circ \le \theta \le 90^\circ\) の範囲では、\(\sin\theta\) は単調増加関数です。つまり、\(\sin\theta\) が大きければ \(\theta\) も大きいと即断できるようにしておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 問(1)での公式選択(回折格子の干渉条件):
    • 選定理由: 問題設定が「回折格子」であり、「明線が得られた」という現象を扱っているため、回折格子の明線条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) を選択するのは必然です。
    • 適用根拠: 多数のスリットからの光が干渉して強め合う条件を記述する唯一の基本式だからです。
  • 問(2)でのアプローチ選択(数式による定性評価):
    • 選定理由: 具体的な数値を求めるのではなく、「大きいか小さいか」という変化の傾向(定性的な変化)を問われています。
    • 適用根拠: 干渉条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) を変形して \(\sin\theta = \frac{m\lambda}{d}\) とすることで、\(d\) の変化が直接 \(\sin\theta\)(そして \(\theta\))にどう影響するかを論理的に説明できるからです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数計算を丁寧に行う:
    • \(10^{-7}\) や \(10^{-6}\) といった小さな数が頻出します。\(4 \times (5.0 \times 10^{-7}) = 20.0 \times 10^{-7} = 2.0 \times 10^{-6}\) のように、指数部分と仮数部分を整理して計算する癖をつけましょう。
  • 割り算を分数で行う:
    • \(N = \frac{1.0 \times 10^{-2}}{4.0 \times 10^{-6}}\) の計算では、いきなり小数で割るのではなく、\(\frac{1}{4} \times \frac{10^{-2}}{10^{-6}} = 0.25 \times 10^4\) のように、係数と10の累乗を分けて処理するとミスが激減します。
  • 最終的な単位の確認:
    • 答えが「本」なのか「m」なのか、問われている物理量に合わせて単位を書き添えることで、次元の不整合(例:長さを求めているのに本数になっているなど)に気づくことができます。

411 回折格子

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 経路差を図形的に導出する解法
      • 模範解答が公式 \(d\sin\theta = m\lambda\) を出発点としているのに対し、別解では回折格子のスリット間での経路差を図形的に \(d\sin\theta\) と導出し、そこから近似を用いて立式します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の理解: 公式を暗記するのではなく、なぜ \(d\sin\theta\) が経路差になるのかという幾何学的な意味を再確認できます。
    • 応用力の向上: 公式を忘れてしまった場合や、斜め入射などの応用問題においても、自分で式を導き出す力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • 最終的に得られる式は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「回折格子による光の干渉とスペクトル」です。回折格子を通った光が干渉して明線を作る条件と、白色光を用いた場合に色が分離する現象(分光)を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 回折格子の干渉条件: 格子定数 \(d\)、回折角 \(\theta\)、波長 \(\lambda\)、次数 \(m\) の間に \(d\sin\theta = m\lambda\) が成り立ちます。
  2. 近似式: 角度 \(\theta\) が十分に小さいとき、\(\sin\theta \approx \tan\theta\) が成り立ちます。
  3. 白色光の性質: 白色光は様々な波長の光(赤〜紫)が混ざったものであり、波長によって回折角が異なるため、スペクトル(虹色の縞)として観察されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、回折格子の干渉条件式を立て、与えられた近似式と図形の幾何学的関係を用いて、波長 \(\lambda\) を \(d, L, x\) で表します。
  2. (2)では、(1)の結果をもとに、波長 \(\lambda\) と明線の位置 \(x\) の関係を考察します。白色光に含まれる各色の光がどの位置に明線を作るかを考え、色の見え方を答えます。

問(1)

思考の道筋とポイント
まず、回折格子の明線の条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) を立てます。ここでは1次の明線なので \(m=1\) です。
次に、問題文で与えられた近似 \(\sin\theta \approx \tan\theta\) を利用します。
さらに、図から \(\tan\theta\) を \(x\) と \(L\) で表し、これらを組み合わせて \(\lambda\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 干渉条件式: \(d\sin\theta = m\lambda\)
  • 近似と幾何学的関係: \(\sin\theta \approx \tan\theta = \frac{x}{L}\)
  • 次数 \(m=1\) の適用。

具体的な解説と立式
回折格子の明線の条件式は、格子定数を \(d\)、回折角を \(\theta\)、次数を \(m\)、波長を \(\lambda\) として以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
d\sin\theta &= m\lambda
\end{aligned}
$$
ここで、1次の明線を考えているので \(m=1\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
d\sin\theta &= 1 \times \lambda
\end{aligned}
$$
また、\(\theta\) が十分に小さいとき、\(\sin\theta \approx \tan\theta\) が成り立ちます。図の直角三角形に着目すると、\(\tan\theta\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{x}{L}
\end{aligned}
$$
これらを組み合わせて立式します。
$$
\begin{aligned}
d \cdot \frac{x}{L} &= \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 回折格子の干渉条件: \(d\sin\theta = m\lambda\)
  • 三角比の定義と近似: \(\sin\theta \approx \tan\theta = \frac{x}{L}\)
計算過程

立てた式を \(\lambda\) について整理するだけです。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= d \frac{x}{L}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回折格子の公式 \(d\sin\theta = \lambda\)(\(m=1\)の場合)を使います。ここで、角度 \(\theta\) がとても小さいときは、\(\sin\theta\) を \(\tan\theta\)(底辺分の高さ、つまり \(x/L\))と置き換えて計算してよいというルールを使います。これらを組み合わせると、波長 \(\lambda\) を長さ \(x, L, d\) だけで表すことができます。

結論と吟味

波長 \(\lambda\) は \(d\frac{x}{L}\) と表されました。次元を確認すると、\([L] \cdot [L] / [L] = [L]\) となり、長さの次元を持っているため妥当です。

解答 (1) \( d\frac{x}{L} \)
別解: 経路差を図形的に導出する解法

思考の道筋とポイント
公式を暗記していなくても、図を描いて経路差を導出することで解くことができます。隣り合うスリットから出る光線が平行であるとみなし、垂線を下ろして直角三角形を作ることで経路差を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 隣り合うスリット間隔 \(d\) と回折角 \(\theta\) から、経路差が \(d\sin\theta\) であることを図形的に見出す。
  • 経路差が波長 \(\lambda\) の整数倍(ここでは1倍)になることが強め合う条件である。

具体的な解説と立式
隣り合うスリットからスクリーン上の点に向かう光線は、スクリーンが遠方にあるため平行とみなせます。
一方のスリットから他方の光線に垂線を下ろすと、直角三角形ができます。このとき、垂線の足までの距離の差(経路差)は、スリット間隔 \(d\) と回折角 \(\theta\) を用いて \(d\sin\theta\) と表せます。
1次の明線ができる条件は、この経路差が波長 \(\lambda\) の1倍になることです。
$$
\begin{aligned}
d\sin\theta &= \lambda
\end{aligned}
$$
ここから先はメインの解法と同様に、近似 \(\sin\theta \approx \tan\theta = \frac{x}{L}\) を適用します。
$$
\begin{aligned}
d \cdot \frac{x}{L} &= \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 経路差の導出: \(\Delta L = d\sin\theta\)
  • 干渉条件: \(\Delta L = m\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\lambda &= d\frac{x}{L}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

公式を忘れても大丈夫です。隣り合う光の通り道を拡大して描いてみましょう。斜めに進む分だけ、片方の光が余分に距離を走っています。その「余分な距離」がちょうど波長1つ分になれば、波の山と山が揃って強め合います。図形的にその距離を計算すると、やはり同じ式にたどり着きます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。公式の成り立ちを理解していることは、応用問題への対応力につながります。

解答 (1) \( d\frac{x}{L} \)

問(2)

思考の道筋とポイント
白色光は、様々な波長の光(可視光線)の混合光です。
「最も明るい明線」とは、回折せずに直進する光(0次明線、\(m=0\))のことです。ここでは波長によらず全ての光が同じ場所に到達します。
「1次の明線」の位置 \(x\) は、(1)で求めた式 \(\lambda = d\frac{x}{L}\) を変形して \(x = \frac{L\lambda}{d}\) とすることで、波長 \(\lambda\) に依存することがわかります。波長が短い光(紫)と長い光(赤)で \(x\) がどう違うかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 0次明線(\(m=0\)): 経路差が0なので、波長に関係なく全ての光が強め合う。
  • 1次明線(\(m=1\)): 位置 \(x\) は波長 \(\lambda\) に比例する(\(x \propto \lambda\))。
  • 可視光線の波長の大小関係: 紫(短) \(<\) 赤(長)。

具体的な解説と立式
【最も明るい明線(0次明線)について】
最も明るい明線は、入射光の延長線上(\(x=0\))にできる0次の明線(\(m=0\))です。
干渉条件式 \(d\sin\theta = 0 \times \lambda = 0\) より、波長 \(\lambda\) によらず常に \(\theta = 0\) となります。
したがって、全ての色(波長)の光が同じ位置で重なり合うため、元の光と同じ色に見えます。

【1次の明線について】
(1)の結果 \(\lambda = d\frac{x}{L}\) を \(x\) について解くと、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
この式から、明線の位置 \(x\) は波長 \(\lambda\) に比例することがわかります。
$$
\begin{aligned}
x &\propto \lambda
\end{aligned}
$$
可視光線の波長は、紫が最も短く、赤が最も長いです(\(\lambda_{\text{紫}} < \lambda_{\text{赤}}\))。
したがって、明線の位置 \(x\) も以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{紫}} < x_{\text{赤}}
\end{aligned}
$$
つまり、中心(最も明るい明線)に近い側に紫色の明線ができ、遠い側に赤色の明線ができます。その間には虹色(スペクトル)が並びます。

使用した物理公式

  • 明線の位置の式: \(x = \frac{L\lambda}{d}\)
計算過程

(計算というよりは論理的推論が主となります)
0次明線: 全波長が集合 \(\rightarrow\) 白色
1次明線: \(x \propto \lambda\) かつ \(\lambda_{\text{紫}} < \lambda_{\text{赤}}\) より、内側(\(x\)小)が紫、外側(\(x\)大)が赤。

この設問の平易な説明

真ん中の明線(0次)には、すべての色の光が寄り道せずに真っ直ぐ届くので、全部混ざって元の白色に見えます。
一方、1次の明線は、波長によって曲がる角度が違います。波長の短い紫色はあまり曲がらず近くに、波長の長い赤色は大きく曲がって遠くに届きます。その結果、光が色ごとに分けられて、内側が紫、外側が赤の虹色に見えます。

結論と吟味

最も明るい明線は白色、1次の明線は内側(最も明るい明線側)が紫、外側が赤に色づいて見えます。これはプリズムや回折格子を通した白色光の典型的な見え方と一致します。

解答 (2) 最も明るい明線:入射光と同じ白色に見える。 1次の明線:最も明るい明線側が紫,2次の明線側が赤に色づいて見える。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 回折格子の干渉条件と近似計算
    • 核心: 回折格子の問題は、干渉条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) が全ての基本です。さらに、実験室レベルの配置では回折角 \(\theta\) が非常に小さくなることが多いため、\(\sin\theta \approx \tan\theta \approx \frac{x}{L}\) という近似式を組み合わせて使うことが定石となります。
    • 理解のポイント:
      • 物理的意味: \(d\sin\theta\) は隣り合うスリットを通る光の経路差を表しています。
      • 近似の妥当性: \(L \gg x\) のとき、直角三角形の斜辺 \(L’\) と底辺 \(L\) がほぼ等しくなるため、\(\sin\theta = x/L’\) と \(\tan\theta = x/L\) がほぼ等しくなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ヤングの実験: スリットが2つだけの場合ですが、経路差の導出 \(d\sin\theta \approx d\frac{x}{L}\) や明線の位置 \(x = \frac{mL\lambda}{d}\) の形は回折格子と全く同じです。ただし、回折格子の方が明線が鋭く明るいという特徴があります。
    • 単スリットの回折: スリット幅 \(a\) の単スリットの場合、暗線の条件が \(a\sin\theta = m\lambda\) (\(m \neq 0\))となり、回折格子の明線条件と形が似ていますが意味が逆になるので注意が必要です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 近似の指示を確認: 問題文に「\(\theta\) は十分に小さく」や「\(\sin\theta \approx \tan\theta\)」という記述があるか確認します。あれば、迷わず \(x/L\) を代入します。
    2. 白色光のスペクトル: 「白色光」というキーワードが出たら、波長による回折角の違い(分散)を問われる可能性が高いです。「\(x \propto \lambda\)」の関係式を導き、赤(長波長)が外側、紫(短波長)が内側になることを即座に想起できるようにしましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 次数 \(m\) の取り違え:
    • 誤解: 0次明線(\(m=0\))を忘れて、1次明線を「最も明るい明線」と勘違いしたり、次数の数え方を間違える。
    • 対策: \(m=0\) は直進光(経路差0)、\(m=1\) はその隣、と順番に整理しましょう。特に白色光の場合、\(m=0\) だけが色づかない(白色)という特徴は重要です。
  • 波長と色の関係の逆転:
    • 誤解: 紫の方が波長が長いと勘違いして、スペクトルの並び順を逆にしてしまう。
    • 対策: 「赤外線(熱線)=波長が長い」「紫外線(高エネルギー)=波長が短い」というイメージや、虹の配色(赤が外側)を覚えておきましょう。可視光線は概ね \(380\,\text{nm}\)(紫)〜 \(780\,\text{nm}\)(赤)です。
  • 近似式の無条件適用:
    • 誤解: どんな場合でも \(\sin\theta \approx \tan\theta\) が使えると思い込む。
    • 対策: この近似が使えるのは \(\theta\) が小さい(\(x \ll L\))場合のみです。回折角が大きい場合(例えば \(30^\circ\) や \(45^\circ\))は、近似を使わずに三角関数そのままで計算する必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 問(1)での公式選択(干渉条件と近似):
    • 選定理由: 回折格子による明線の位置を問われているため、基本となる干渉条件式 \(d\sin\theta = m\lambda\) が必要です。さらに、\(x\) と \(L\) を用いて表すよう指示があり、近似式も与えられているため、これらを組み合わせる方針が確定します。
    • 適用根拠: 問題文の「1次の明線(\(m=1\))」および「\(\sin\theta \approx \tan\theta\)」という条件に合致します。
  • 問(2)でのアプローチ選択(比例関係の考察):
    • 選定理由: 具体的な数値計算ではなく、色の並び順(定性的な配置)を問われています。そのため、明線の位置 \(x\) が波長 \(\lambda\) にどう依存するかを示す関数関係(\(x \propto \lambda\))を導くのが最適です。
    • 適用根拠: (1)で導出した式を変形することで、物理量間の依存関係が明確になるためです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の変形を確実に行う:
    • いきなり数値を代入せず、まずは \(\lambda = d\frac{x}{L}\) や \(x = \frac{L\lambda}{d}\) のように、求めたい文字について式を解いた形(主語を変える)を作りましょう。これにより、比例・反比例の関係が見えやすくなり、ケアレスミスも減ります。
  • 次元の確認(次元解析):
    • 求めた式 \(\lambda = d\frac{x}{L}\) の右辺の単位を確認します。\([\text{m}] \times \frac{[\text{m}]}{[\text{m}]} = [\text{m}]\) となり、左辺の波長(長さ)と一致していることを確認する癖をつけましょう。もし \(x = \frac{d\lambda}{L}\) のように間違っていたら、単位が合わないのですぐに気づけます。
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412 光学距離

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 媒質中の光速を用いた解法
      • 模範解答が光学距離(光路長)を用いて時間を求めているのに対し、別解では媒質中での光の速さを直接求めてから、距離を速さで割って時間を計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的意味の明確化: 光学距離という概念を使わずに、「速さが遅くなるから時間がかかる」という直感的な理解に基づいた計算が可能です。
    • 概念の相互補完: 光学距離の定義(\(nd\))が、実は「真空中の光速 \(c\) で進んだ場合に同じ時間がかかる距離」であることを逆説的に理解する助けになります。
  3. 結果への影響
    • どちらの方法で計算しても、最終的な答えは完全に一致します。

この問題のテーマは「光学距離(光路長)」です。光が媒質中を進むとき、見かけ上の距離(幾何学的な距離)よりも「光にとっての距離」が長くなるという概念を扱います。これは、ヤングの実験や薄膜干渉など、光の干渉問題を解く上で基礎となる非常に重要な考え方です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 屈折率 \(n\) の定義: 真空中の光速を \(c\)、媒質中の光速を \(v\) とすると、\(n = \frac{c}{v}\) です。つまり、媒質中では光速が \(1/n\) 倍になります。
  2. 光学距離(光路長): 屈折率 \(n\) の媒質中の距離 \(d\) は、真空中での距離 \(nd\) に相当します。これを光学距離と呼びます。
  3. 時間と距離の関係: 時間 \(t = \frac{\text{距離}}{\text{速さ}}\) です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、光学距離の定義に基づいて、幾何学的距離 \(d\) を光学距離に換算します。
  2. (2)では、(1)で求めた光学距離を用いて、光が平板を通過するのにかかる時間を計算します。あるいは別解として、媒質中の光速を求めてから時間を計算します。

問(1)

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