プロセス
1 気温と音速の計算
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「音速と気温の関係」です。音波が空気中を伝わるとき、その速さは気温によって変化することを理解し、計算式を適用します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 音速の公式(近似式): 気温 \(t \, [^\circ\text{C}]\) における音速 \(V \, [\text{m/s}]\) は、\(0 \, ^\circ\text{C}\) のときの音速 \(331.5 \, \text{m/s}\) を基準として、\(1 \, ^\circ\text{C}\) 上昇するごとに約 \(0.6 \, \text{m/s}\) ずつ速くなります。
- 摂氏温度と音速の比例関係: 日常的な温度範囲では、音速は摂氏温度 \(t\) の一次関数として近似できます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から気温 \(t\) の値を読み取ります。
- 音速の公式 \(V = 331.5 + 0.6t\) に値を代入し、計算します。
思考の道筋とポイント
空気中の音速は一定ではなく、気温(温度)に依存して変化します。「気温 \(15 \, ^\circ\text{C}\)」という情報が与えられているので、物理で学習する「音速の近似公式」を思い出して適用します。
この設問における重要なポイント
- 音速の公式: \(V = 331.5 + 0.6t\)
- \(331.5\): \(0 \, ^\circ\text{C}\) のときの音速 \([\text{m/s}]\) です。
- \(0.6\): 気温が \(1 \, ^\circ\text{C}\) 上がるごとの音速の増加分です。
- \(t\): 摂氏温度 \([^\circ\text{C}]\) です。
- この式は、乾燥した空気中での近似式ですが、高校物理では標準的に使用されます。
具体的な解説と立式
求める音速を \(V \, [\text{m/s}]\)、気温を \(t \, [^\circ\text{C}]\) とします。
音速の公式より、以下の関係が成り立ちます。
$$ V = 331.5 + 0.6t $$
問題文より、気温 \(t = 15 \, ^\circ\text{C}\) です。これを上式に代入して、音速 \(V\) を求める式を立てます。
$$ V = 331.5 + 0.6 \times 15 $$
使用した物理公式
- 音速の公式: \(V = 331.5 + 0.6t\)
立式した式を計算します。
$$
\begin{aligned}
V &= 331.5 + 0.6 \times 15 \\[2.0ex]
&= 331.5 + 9.0 \\[2.0ex]
&= 340.5
\end{aligned}
$$
計算結果は \(340.5\) となります。
よって、求める音速は \(340.5 \, \text{m/s}\) です。
音は空気の分子が振動して伝わっていきます。気温が高くなると、空気の分子はエネルギーをもらって、より激しく活発に動き回るようになります。
分子が活発に動くと、隣の分子に「動け!」という合図(振動)を伝えるスピードも速くなります。だから、寒い冬よりも暖かい夏の方が、音は速く伝わるのです。
具体的には、\(1 \, ^\circ\text{C}\) 暖かくなるごとに、秒速 \(0.6 \, \text{m}\) ずつ速くなると覚えておきましょう。今回は \(15 \, ^\circ\text{C}\) なので、\(0 \, ^\circ\text{C}\) のときより \(0.6 \times 15 = 9 \, \text{m/s}\) だけ速くなっています。
思考の道筋とポイント
高校物理では通常 \(V = 331.5 + 0.6t\) という便利な一次式を使いますが、本来、気体中の音速は「絶対温度 \(T \, [\text{K}]\) の平方根」に比例します。ここでは、より厳密な式を使って計算し、近似式の精度を確認してみましょう。
この設問における重要なポイント
- 厳密な比例関係: \(V \propto \sqrt{T}\)
- 絶対温度: \(T = 273 + t\)
- 音速の厳密な式(の変形): \(0 \, ^\circ\text{C}\)(\(273 \, \text{K}\))のときの音速を \(V_0 = 331.5 \, \text{m/s}\) とすると、気温 \(t \, [^\circ\text{C}]\) での音速 \(V\) は次のように表せます。
$$ V = V_0 \sqrt{\frac{273 + t}{273}} = 331.5 \sqrt{1 + \frac{t}{273}} $$
具体的な解説と立式
気温 \(t = 15 \, ^\circ\text{C}\) を厳密な式に代入します。
$$ V = 331.5 \times \sqrt{1 + \frac{15}{273}} $$
使用した物理公式
- 音速と絶対温度の関係: \(V \propto \sqrt{T}\)
ルートの中身を計算し、近似値を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= 331.5 \times \sqrt{1 + 0.0549\dots} \\[2.0ex]
&= 331.5 \times \sqrt{1.0549\dots}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{1.0549} \approx 1.0271\) なので(電卓等を用いた場合)、
$$
\begin{aligned}
V &\approx 331.5 \times 1.0271 \\[2.0ex]
&\approx 340.48
\end{aligned}
$$
この結果 \(340.48 \, \text{m/s}\) は、近似式で求めた \(340.5 \, \text{m/s}\) と非常によく一致しています。
これにより、普段使っている \(V = 331.5 + 0.6t\) という式が、日常的な気温の範囲では非常に精度の高い便利な式であることが分かります。
物理の世界では、温度を「絶対温度(ケルビン)」で考えるのが基本です。音速も本来は絶対温度のルート(\(\sqrt{\quad}\))に関係しています。
しかし、ルートの計算は毎回やるのが大変です。そこで、私たちが普段生活している温度(\(-20 \, ^\circ\text{C}\) 〜 \(40 \, ^\circ\text{C}\) くらい)の範囲なら、「\(1 \, ^\circ\text{C}\) で \(0.6\) 増える」という単純な足し算で計算しても、ほとんど誤差が出ないように数式が作られています。この別解は、その「手軽な式」が実はちゃんと正しいことを確かめるための計算でした。
2 音の波長の計算
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の基本要素の関係」です。波の速さ、振動数、波長という3つの物理量が、どのような関係式で結ばれているかを理解し、計算を行います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本公式: 波の速さ \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V = f\lambda\) という関係が成り立ちます。
- 物理量の定義:
- 振動数 \(f \, [\text{Hz}]\): 1秒間に波源が振動する回数(=1秒間に送り出される波の数)。
- 波長 \(\lambda \, [\text{m}]\): 波1つ分の長さ。
- 速さ \(V \, [\text{m/s}]\): 波が1秒間に進む距離。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から与えられた物理量(振動数 \(f\)、音速 \(V\))を整理します。
- 波の基本公式 \(V = f\lambda\) を、求めたい物理量(波長 \(\lambda\))について解く形に変形します。
- 数値を代入して計算します。
思考の道筋とポイント
「振動数」「音速(波の速さ)」「波長」という3つのキーワードが登場しています。これらを見た瞬間に、高校物理で最も重要な公式の一つである「波の基本公式 \(V = f\lambda\)」を思い浮かべる必要があります。今回は波長を求めたいので、公式を変形して活用します。
この設問における重要なポイント
- 公式の物理的意味: 「1秒間に進む距離(速さ \(V\))」は、「波1個の長さ(波長 \(\lambda\))」に「1秒間に出る波の個数(振動数 \(f\))」を掛けたものに等しい、という意味です。
- 例えるなら、「歩く速さ」=「歩幅」×「1秒間の歩数」と同じ関係です。
- 指数表記の計算: 数値が \(A \times 10^n\) の形で与えられています。このまま計算することで、桁数のミスを防ぎやすくなります。
具体的な解説と立式
求める波長を \(\lambda \, [\text{m}]\)、音速を \(V \, [\text{m/s}]\)、振動数を \(f \, [\text{Hz}]\) とします。
波の基本公式より、以下の関係が成り立ちます。
$$ V = f\lambda $$
求めたいのは \(\lambda\) なので、両辺を \(f\) で割って式を変形します。
$$ \lambda = \frac{V}{f} $$
問題文より、\(V = 3.4 \times 10^2 \, \text{m/s}\)、\(f = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) です。これらを代入します。
$$ \lambda = \frac{3.4 \times 10^2}{2.0 \times 10^2} $$
使用した物理公式
- 波の基本公式: \(V = f\lambda\)
立式した式を計算します。分母と分子にある \(10^2\) が約分できることに注目します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{3.4 \times 10^2}{2.0 \times 10^2} \\[2.0ex]
&= \frac{3.4}{2.0} \times \frac{10^2}{10^2} \\[2.0ex]
&= 1.7 \times 1 \\[2.0ex]
&= 1.7
\end{aligned}
$$
よって、求める波長は \(1.7 \, \text{m}\) です。
波の速さが「秒速 \(340 \, \text{m}\)」で、振動数が「\(200 \, \text{Hz}\)」ということは、どういう状況でしょうか。
これは、「1秒間に \(200\) 個の波が送り出され、その先頭は \(340 \, \text{m}\) 先まで進んでいる」という状況です。
\(340 \, \text{m}\) の列の中に、波が \(200\) 個きれいに並んでいるわけです。
では、波1個分の長さ(波長)はどれくらいでしょうか?
全体の長さ(\(340 \, \text{m}\))を個数(\(200\) 個)で割れば求められますね。
\(340 \div 200 = 1.7 \, \text{m}\)。これが公式 \(V = f\lambda\) (変形すると \(\lambda = V/f\))の意味です。
思考の道筋とポイント
指数表記(\(\times 10^2\))に慣れていない場合や、数値が直感的にイメージしにくい場合は、一度普通の数字(整数や小数)に戻してから計算するのも有効な手段です。検算としても役立ちます。
この設問における重要なポイント
- 指数の変換: \(10^2 = 100\) なので、\(2.0 \times 10^2 = 200\)、\(3.4 \times 10^2 = 340\) と変換できます。
- 計算のしやすさ: 整数同士の割り算になるため、筆算や暗算がしやすくなる場合があります。
具体的な解説と立式
与えられた数値を通常の表記に直します。
- 振動数 \(f = 2.0 \times 10^2 = 2.0 \times 100 = 200 \, \text{Hz}\)
- 音速 \(V = 3.4 \times 10^2 = 3.4 \times 100 = 340 \, \text{m/s}\)
これを公式 \(\lambda = \frac{V}{f}\) に代入します。
$$ \lambda = \frac{340}{200} $$
使用した物理公式
- 波の基本公式: \(V = f\lambda\)
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{340}{200} \\[2.0ex]
&= \frac{34}{20} \\[2.0ex]
&= \frac{17}{10} \\[2.0ex]
&= 1.7
\end{aligned}
$$
当然ですが、結果は同じ \(1.7 \, \text{m}\) になります。
指数(\(10^2\) など)がついていると難しく見えますが、要するに「\(340\) を \(200\) で割る」というだけの計算です。
物理の問題では、非常に大きな数や小さな数を扱うために指数表記がよく使われますが、今回のように具体的な数字に直してみると、実は単純な割り算であることがよく分かります。計算ミスが不安なときは、このように書き直して確認することをお勧めします。
3 オクターブと振動数の関係
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「音程と振動数の関係」です。音楽で使われる「オクターブ」という言葉が、物理学的には振動数のどのような変化に対応しているかを理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- オクターブの定義: 音の高さが「1オクターブ上がる」ということは、物理的には「振動数が2倍になる」ことを意味します。
- 逆の関係: 逆に「1オクターブ下がる」場合は、振動数は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文にある「1オクターブ高い」という条件を、「振動数を2倍にする」という計算操作に変換します。
- 与えられた振動数に2を掛けて計算します。
思考の道筋とポイント
「1オクターブ高い音」という表現を、物理的な数式に翻訳できるかが問われています。音楽的な感覚ではなく、物理の定義として「オクターブ=振動数2倍」という知識を適用します。
この設問における重要なポイント
- 比例関係: 音の高さ(音程)と振動数は対数的な関係にありますが、オクターブという単位においては単純な倍数関係(2倍、4倍、8倍…)として扱えます。
- 有効数字と指数表記: 元の数値が \(4.4 \times 10^2\) (有効数字2桁)で与えられているため、答えも同様の形式で答えるのが一般的です。
具体的な解説と立式
元の音の振動数を \(f_0 \, [\text{Hz}]\)、求める1オクターブ高い音の振動数を \(f \, [\text{Hz}]\) とします。
「1オクターブ高い」という定義より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ f = 2 \times f_0 $$
問題文より、\(f_0 = 4.4 \times 10^2 \, \text{Hz}\) です。これを代入します。
$$ f = 2 \times (4.4 \times 10^2) $$
使用した物理公式
- オクターブの関係: \(f_{\text{1オクターブ上}} = 2 \times f_{\text{基準}}\)
立式した式を計算します。指数の部分はそのままに、係数部分を計算します。
$$
\begin{aligned}
f &= 2 \times 4.4 \times 10^2 \\[2.0ex]
&= 8.8 \times 10^2
\end{aligned}
$$
よって、求める振動数は \(8.8 \times 10^2 \, \text{Hz}\) です。
ピアノの鍵盤をイメージしてください。真ん中の「ラ(A)」の音から、右側にある次の「ラ」の音までが1オクターブです。
このとき、弦が震える速さ(振動数)は、ちょうど2倍になっています。
波の形で見ると、1オクターブ高い音は、元の音の波1つ分のスペースに、ぎゅっと2つの波が詰め込まれている状態です。
今回は \(440 \, \text{Hz}\)(時報の「ポ・ポ・ポ」の音に近い高さ)の1オクターブ上なので、\(880 \, \text{Hz}\)(「ポーン」の音)になります。
思考の道筋とポイント
指数表記(\(\times 10^2\))のまま計算するのが不安な場合や、具体的な数値の大きさを実感したい場合は、一度通常の整数表記に戻してから計算します。
この設問における重要なポイント
- 数値の変換: \(4.4 \times 10^2\) は \(440\) です。これは音楽における基準音(A4)としてよく知られる振動数です。
- 計算の確実性: 整数での掛け算を行うことで、小数点の位置ミスなどを防げます。
具体的な解説と立式
まず、与えられた振動数を整数に直します。
$$ f_0 = 4.4 \times 10^2 = 440 \, \text{Hz} $$
1オクターブ高い音の振動数 \(f\) は、これを2倍します。
$$ f = 2 \times 440 $$
使用した物理公式
- オクターブの関係: \(f_{\text{1オクターブ上}} = 2 \times f_{\text{基準}}\)
$$
\begin{aligned}
f &= 2 \times 440 \\[2.0ex]
&= 880
\end{aligned}
$$
これを再び問題文の形式(有効数字2桁の指数表記)に戻します。
$$
\begin{aligned}
f &= 8.80 \times 10^2 \\[2.0ex]
&\approx 8.8 \times 10^2
\end{aligned}
$$
結果はメインの解法と同じ \(8.8 \times 10^2 \, \text{Hz}\) となります。
「\(4.4 \times 10^2\)」という書き方は科学的ですが、日常感覚では「\(440\)」と言われた方がピンとくるかもしれません。
\(440\) を2倍すると \(880\) になります。これを科学的な書き方(\(8.8 \times 100\))に戻すと、\(8.8 \times 10^2\) になります。
やっていることは単純な「2倍」の計算ですが、書き方のルールに合わせて最後に形を整えるのがポイントです。
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4 うなりの回数と振動数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「うなり」です。振動数がわずかに異なる2つの音が重なるときに生じる、音の大きさの周期的な変化(うなり)を利用して、未知の振動数を特定します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
-
- うなりの公式: 1秒間のうなりの回数 \(f \, [\text{Hz}]\) は、2つの音の振動数 \(f_1, f_2\) の差の絶対値に等しくなります。
$$ f = |f_1 – f_2| $$ - おんさの性質: おんさに針金などを巻いて質量を増やすと、振動しにくくなり、振動数は減少します(低くなります)。
- うなりの公式: 1秒間のうなりの回数 \(f \, [\text{Hz}]\) は、2つの音の振動数 \(f_1, f_2\) の差の絶対値に等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- うなりの公式を用いて、未知の振動数の候補を2つ挙げます。
- 「針金を巻くと振動数は減少する」という物理的な条件を用いて、正しい振動数を1つに絞り込みます。