学校H:高校1年生1学期中間試験解説

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目次

§0. はじめに ─ この記事の使い方

令和8年5月19日(火)に実施された1学期中間考査・物理基礎の解説記事です。全11ブロック・44設問すべてに「思考のクセ診断つき」のフル解説をつけました。

この記事は、君がテストでつけた答えと模範解答を見比べる「答え合わせ」のためのものではありません。君がどんな思考のクセで間違えたのかを診断し、次のテストで同じ罠にハマらないようにするための処方箋です。

§0.1 読み方

各問題の解説は、次の2層構造になっています。

Layer 1(端的解答): 答えと、答えに至る最短の式・代入だけを示します。「とにかく答えを確認したい」「時間がない」人はここだけ読めばOKです。

Layer 2(💡 もっと深く理解したい人へ): 折りたたみ式の「思考のクセ診断+正しい思考プロセス5ステップ+一般化」。こちらが本体です。クリックして開いてください。

「Layer 1だけで答えが分かったから読み飛ばす」のではなく、正解した問題こそ Layer 2 を読むことを推奨します。正解=理解、ではないからです。たまたま当たった、覚えていた、ヤマが当たった、というケースはこの先のテストで必ず崩壊します。

§0.2 手元の問題冊子を必ず開いておいてください

著作権上、この記事には問題文そのものは載せていません。手元の問題冊子(5/19実施の試験問題)と模範解答を見ながら、この記事を読み進めてください。

📋 用意するもの
① 5/19実施の問題冊子(試験後に持ち帰った冊子)
② 模範解答(先生から配布された解答用紙の解答)
③ 自分が試験で書いた解答(覚えている範囲で再現したメモでも可)

§0.3 自分の「思考のクセ」を診断するために

各問題の Layer 2 には「誤答パターン①②③+診断」というブロックが入っています。自分の答えが模範解答と違っていた場合、まずどの誤答パターンに当てはまるかを探してください

そして、見つけた「思考のクセ」を、次の問題に進むときに声に出して言ってみてください。例えば次のような調子です。

「私は『公式を覚えて当てはめる』を最初にやってしまう。これからは『現象を絵にする』を最初にやる」
「私は『向き』を符号で考えるのを後回しにする。これからは座標軸を最初に書く」
「私は『どっちから見た速度か』をあいまいにする。これからは視点を毎回書き出す」

このように「自分のクセ+これからどうするか」をセットで言語化すると、次のテストで同じ罠にハマる確率が劇的に下がります。物理は暗記の科目ではなく、思考のクセを書き換える科目です。

§0.4 各問題の重さ

このテストは全11ブロック・44設問あり、それぞれ思考の負荷が違います。下の表で全体の地図を把握しておくと、どこに時間をかけるべきかが分かります。

場所 内容 設問数 思考の重さ
第1問 問1 有効数字 桁数判定 4 🟢 軽
第1問 問2 有効数字 2桁表記 6 🟢 軽
第1問 問3 相対速度 4 🟡 中
第1問 問4 等加速度運動 6 🟠 やや重
第1問 問5 川舟(相対速度+等速) 5 🔴 重
第2問 問1 v-t / \(x\)-\(t\) グラフ穴埋め 9 🔴 重
第2問 問2 連続写真から \(a\)-\(t\) グラフ 1 🟡 中
第2問 問3 \(v\)-\(t\) グラフから運動図並べ替え 1 🔴 重
第3問 問1 斜面3パターン 速さの大小 1 🔴 重
第3問 問2 斜面 A静止 + B上向き打出 1 🔴 重
第3問 問3 列車の前後端 通過 2 🔴 重

🔴 重 の問題ほど Layer 2 の診断が効きます。時間がない人は 🔴 から先に Layer 2 を読むのがおすすめです。

それでは、第1問から始めましょう。

§1. 第1問 問1 ─ 有効数字の桁数

有効数字は「測定したときに本当に意味のある数字」のことです。手元の問題冊子の第1問 問1を見ながら読んでください。ここで桁数を数え間違える人は、後の問2以降の表記問題と問3・問4の最終答にも同じクセが出ます。

§1.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §1.2 のアコーディオン内に展開しています。

① 3ケタ: 0.00345 の先頭側の0は位取り(小数点の位置を示すだけ)なので無効、有効なのは 3・4・5 の3桁。
② 5ケタ: 16600 は全部の数字が有効。末尾の0も「測って書いた」とみなして数える。
③ 2ケタ: 0.00090 の先頭側の0は位取りで無効、末尾の0は「測定で読んだ」として有効。9 と末尾の 0 で2桁。
④ 2ケタ: 0.047×10²⁵ は10のべき部分は桁数に数えない。0.047 の 4 と 7 が有効。

§1.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 0は「位取り役」か「測定結果」か

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

有効数字の桁数を「とにかく0以外の数を数える」「いや、書いてある数字を全部数える」と機械的に処理しようとすると、必ずどこかでつまずきます。0には2種類あり、その見分けが本問のすべてです。

誤答パターン①: ①を「0.00345 は 6 ケタ」と答える。
診断: 「とりあえず書いてある数字を全部数える」クセ。0.00345 の前にある 0 は、3 という数字を「小数第3位の場所」に置くための位取り役で、測定結果ではありません。「ここで止めたぞ」という意味を持つ 0 だけが有効数字に入ります。
誤答パターン②: ②16600 を「3 ケタ」と答える。
診断: 「末尾の 0 は位取り」と覚えてしまったクセ。確かに「末尾の 0 は曖昧」というルールはありますが、本問では問題文の指示や前後文脈から「16600 という測定値そのもの」を扱うため、5 ケタとして読みます。判断に迷ったときは \(1.6600 \times 10^4\) と書き直してみると 5 ケタとはっきり見えます。
誤答パターン③: ③0.00090 を「1 ケタ」と答える。
診断: 「最後の 0 は意味がない」と感覚で切り捨てるクセ。0.00090 の末尾 0 は「ここまで測りました、次の位は 0 でした」と主張する 0 です。書いた人がわざわざ 0 を残したということは「測定の結果として 0 だった」ことを伝えており、9 と末尾 0 の 2 ケタが有効数字になります。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

数を「ものさしの目盛り」に置き換えて想像します。0.00345 なら「目盛りの一番細かいところで、3・4・5 まで読めた」という記録です。前にある 0 は「ものさしの位置を合わせるための隙間」でしかありません。

Step 2: どの規則を選ぶか

有効数字の判定規則は次の 3 本です:
(規則 A)0 以外の数字は必ず有効。
(規則 B)数の前にある 0(先頭ゼロ)は位取り役なので有効ではない。
(規則 C)数の後ろにある 0(末尾ゼロ)は、小数点があれば有効、なければ曖昧で文脈判断。

Step 3: 規則の意味を読む

規則 B は「小さい数を表すために 0 を並べただけ」という意味です。\(0.00345 = 3.45 \times 10^{-3}\) と書き換えれば、前の 0 が消えて 3.45 だけが残り、3 ケタと一目で分かります。規則 C は「わざわざ 0 を書いた=測った結果」と解釈する規則です。

Step 4: 実際に当てはめて確かめる

📖 4 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 0.00345 → 先頭の 0, 0, 0 は規則 B より無視。残るのは 3, 4, 5 の 3 ケタ。書き換えると \(3.45 \times 10^{-3}\)。

② 16600 → 1, 6, 6, 0, 0 を全て有効と読む。書き換えると \(1.6600 \times 10^4\) で 5 ケタ。本問では問題文の流れから「整数 16600 という測定値」とみなします。

③ 0.00090 → 先頭 0, 0, 0 は規則 B で無視。残る 9 と末尾の 0 は規則 C(小数点あり)で有効。書き換えると \(9.0 \times 10^{-4}\) で 2 ケタ。

④ 0.047×10²⁵ → 後ろの \(10^{25}\) は位を動かしているだけで桁数には関係しません。前の 0.047 だけ見ます。先頭 0, 0 は規則 B で無視、残る 4 と 7 で 2 ケタ。書き換えると \(4.7 \times 10^{23}\)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

有効数字を確かめる最終手段は「\(a.bc \times 10^n\) の形(科学的記数法)に直すこと」です。この形にすると、前にある係数の数字をそのまま数えるだけで桁数が確定します。0.00345 → \(3.45 \times 10^{-3}\)、0.00090 → \(9.0 \times 10^{-4}\)。先頭 0 が自動的に消え、末尾 0 だけが係数として残るので、迷いが消えます。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

有効数字の桁数判定は、問2 の表記問題と問3・問4 の最終答の桁合わせに直結します。

波及①: 問2 で「有効数字 2 桁で答えよ」と言われたら、科学的記数法 \(a.b \times 10^n\) に揃えるのが最短手順。問1 の Step 5 がそのまま使えます。
波及②: 問3・問4 で計算した数値(例 3.5、6.0、0.80 など)の末尾 0 を消してはいけません。書いた 0 は「ここまで意味のある値」という宣言で、消すと評価が下がります。

§2. 第1問 問2 ─ 有効数字2桁表記

問1 で桁数を数えられるようになった人が、次に出会うのが「有効数字 2 桁で書き直しなさい」という指示です。手元の問題冊子の第1問 問2を見ながら読んでください。書き方の形式(科学的記数法)に揺れがあると、合っているのに減点されるので注意が必要です。

§2.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §2.2 のアコーディオン内に展開しています。

① \(3.0 \times 10^2\): 3桁目を四捨五入で1桁分丸めて、桁数を10のべきで合わせる。300→3.0×10²。
② 5.0: もとが1桁なので、後ろに 0 を補って2桁にそろえる。
③ \(6.9 \times 10^{-1}\): 0.6942 の3桁目 4 を四捨五入で切り捨て、10⁻¹形式で書き直す。
④ \(5.0 \times 10^5\): 499874 の3桁目を四捨五入すると 4→9 を巻き込んで繰り上がり、4.99…→5.0 になる。
⑤ \(4.7 \times 10^{23}\): 0.04737 の3桁目 3→7 を四捨五入して 4.7、10²⁵×10⁻²=10²³。
⑥ \(9.6 \times 10^{-15}\): 96048 を 9.6×10⁴ に直して、10⁴×10⁻¹⁹=10⁻¹⁵。

§2.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「位の感覚」と「四捨五入の場所」

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

「2 桁にする」を「数字を 2 個書く」と短絡的に覚えると、必ず ② や ④ や ⑥ で間違えます。本当に必要なのは「元の数の大きさを変えずに、有効数字だけを 2 つに削る」という思考です。

誤答パターン①: ① 300 を「3.0」と書く。
診断: 桁数だけ見て、大きさ(位)を捨ててしまうクセ。300 と 3.0 では値が 100 倍違います。「2 桁にする」とは「数字を 2 つにする」ことであり、「数の大きさを変える」ことではありません。位を保つために \(\times 10^2\) を必ず付けます。
誤答パターン②: ② 5 を「5」とだけ書く。
診断: 「2 桁とは数字を 2 個」という形式を破ったクセ。5 のままでは「1 桁の有効数字」と受け取られかねません。2 桁を明示するために 5.0 と書きます。末尾の 0 が「ここまで意味があります」という宣言になります。
誤答パターン③: ④ 499874 を「\(4.9 \times 10^5\)」と書く。
診断: 「四捨五入は左から 3 番目を見る」という規則を、左から 3 番目の「9」だけで判断して切り捨てたクセ。実際には 49 の次が 9 なので、繰り上がりが起きて 50 になり、答えは \(5.0 \times 10^5\) です。繰り上がりを忘れる典型例。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

数直線をイメージし、元の数がどこにあるかを確かめます。499874 なら \(5 \times 10^5 = 500000\) のすぐ手前。0.6942 なら \(7 \times 10^{-1} = 0.7\) のすぐ手前。最終的な答えがこの「目印」のどちら側に来るかを先に予想します。

Step 2: どの形式を選ぶか

形式は「科学的記数法 \(a.b \times 10^n\)」で統一します(\(1 \le a < 10\)、つまり整数部は 1 桁)。例外として、② 5 のように「位が 0 のとき」だけは \(5.0 \times 10^0\) でも \(5.0\) でも構いません。学校の慣習では \(5.0\) と書くのが普通です。

Step 3: 形式の意味を読む

\(a.b \times 10^n\) の \(a.b\) が「有効数字」、\(\times 10^n\) が「位」を表します。位と有効数字を分離して書くから、桁を削っても大きさが保たれるのです。これが科学的記数法の最大の利点。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 6 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 300 → \(3.00 \times 10^2\)。これを 2 桁に削るので 3 桁目(左から 3 つ目の 0)を四捨五入。0 のままなので繰り上がりなし。答えは \(3.0 \times 10^2\)。

② 5 → \(5.000 \times 10^0\)。2 桁に削るので 3 桁目を四捨五入。0 なのでそのまま。答えは \(5.0\)(または \(5.0 \times 10^0\))。

③ 0.6942 → \(6.942 \times 10^{-1}\)。3 桁目の 4 を四捨五入で切り捨て。答えは \(6.9 \times 10^{-1}\)。

④ 499874 → \(4.99874 \times 10^5\)。3 桁目の 9 を四捨五入。9 は 5 以上なので繰り上がり。すると 4.9 が 5.0 に繰り上がり、答えは \(5.0 \times 10^5\)。

⑤ 0.04737×10²⁵ → まず 0.04737 を \(4.737 \times 10^{-2}\) に直して全体は \(4.737 \times 10^{-2} \times 10^{25} = 4.737 \times 10^{23}\)。3 桁目の 3 を四捨五入で切り捨て。答えは \(4.7 \times 10^{23}\)。

⑥ 96048×10⁻¹⁹ → まず 96048 を \(9.6048 \times 10^4\) に直して全体は \(9.6048 \times 10^4 \times 10^{-19} = 9.6048 \times 10^{-15}\)。3 桁目の 0 を四捨五入で切り捨て。答えは \(9.6 \times 10^{-15}\)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

書いた答えを元の数と比べ、桁が同じか確かめます。④で「\(5.0 \times 10^5 = 500000\)」、元は 499874。差は \(126\) で、元の数の \(0.025\%\)。十分近いので合っています。⑥で「\(9.6 \times 10^{-15} = 0.0000000000000096\)」、元は \(96048 \times 10^{-19} = 0.0000000000000096048\)。やはり近い。位が合っていれば、ほぼ問題なし。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

有効数字 2 桁の表記は、問3・問4 の計算結果を書くときに毎回使います。形式を間違えると、せっかく数値を出しても満点が取れません。

波及①: 問3 ④で「8.0」、問4 ⑤で「1.0」など、末尾 0 を必ず書くこと。8 や 1 だけでは 1 桁とみなされます。
波及②: 大きい数(地球から太陽まで \(1.5 \times 10^{11}\) m など)や小さい数(電子の電荷 \(1.6 \times 10^{-19}\) C など)を扱う物理では、科学的記数法こそが基本形式です。日常の感覚で 1500000000000 と書くのは、本問の流れを忘れているシグナル。

§3. 第1問 問3 ─ 相対速度

相対速度は「誰から見た速度か」を切り替える練習です。手元の問題冊子の第1問 問3を見ながら読んでください。式は単純な引き算ですが、「向き」を符号でちゃんと扱えるかが分かれ目になります。

§3.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §3.2 のアコーディオン内に展開しています。

① 東向き \(3.5 \, \text{m}/\text{s}\): 電車は東向き5.0、人は電車内で西向き1.5。地面から見ると 5.0−1.5=3.5 で、向きは東。
② 東向き \(1.8 \, \text{m}/\text{s}\): 「電車内で見た人の速度 = 地面で見た人 − 地面で見た電車」を使って 9.7−7.9=1.8、向きは東。
③ 西向き \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\): 「Aから見たBの速度 = Bの速度 − Aの速度」で (−3.0)−(+3.0)=−6.0、符号がマイナスなので西向き6.0。
④ 東向き \(8.0 \, \text{m}/\text{s}\): 「地面で見たB = Aの速度 + Aから見たB」で 3.0+5.0=8.0、向きは東。

§3.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「A に対する B」の意味を式で押さえる

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

相対速度を「公式は \(v_{\text{AB}} = v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\)」と丸暗記すると、「A と B、どっちを引く側か」を毎回迷います。本当に必要なのは、なぜそういう引き算になるのかを「自分が動きながら見るとどう見えるか」で理解することです。

誤答パターン①: ①で「東向き \(5.0 + 1.5 = 6.5 \, \text{m}/\text{s}\)」と答える。
診断: 「電車内で歩いている」という言葉を見て、足し算してしまうクセ。実は「電車の進行方向と逆向きに歩く」と書いてあるため、人の電車内速度は西向き \(1.5 \, \text{m}/\text{s}\)。東向きを正とすると、電車 \(+5.0\)、人の電車内速度 \(-1.5\)、合わせて \(+3.5\)。向きの正負を取り違えると、ここで一発で死にます。
誤答パターン②: ③で「東向き \(0 \, \text{m}/\text{s}\)」(A と B の速さが同じだから打ち消し合う)と答える。
診断: 「速さ(数値)」と「速度(向き付き)」を区別していないクセ。A は東向き \(+3.0\)、B は西向き \(-3.0\)。「A に対する B の相対速度」は \(v_{\text{B}} – v_{\text{A}} = (-3.0) – (+3.0) = -6.0\)。マイナスは西向きを意味するので、答えは「西向き \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\)」。
誤答パターン③: ④で「東向き \(2.0 \, \text{m}/\text{s}\)」(\(5.0 – 3.0 = 2.0\))と答える。
診断: 「相対速度の式」を丸暗記して、引く向きを逆に使ったクセ。「A に対する B」の式は \(v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\) であり、地面から見た B(求めたい量)= A から見た B(与えられた 5.0)+ 地面から見た A(与えられた 3.0)= 8.0。逆を覚えると、毎回引き算と足し算がひっくり返ります。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

東を正、西を負と決めます。問題の登場人物(電車・人・自動車)の地面に対する速度を、矢印で図にします。「電車内で歩く人」のように二段構えのときは、いったん人の電車内速度を地面換算するのがコツです。

Step 2: どの式を選ぶか

使う式は 1 本だけ:

$$\begin{aligned}
v_{\text{AB}} &= v_{\text{B}} – v_{\text{A}}
\end{aligned}$$

これは「A から見た B の速度」を表します。「\(v_{\text{AB}}\)」と読まれる文字列の右側にある \(v_{\text{B}}\) が前、左側にある \(v_{\text{A}}\) が後に引かれる、と覚えると順序を間違えません。

Step 3: 式の数式構造を読む

なぜ引き算かというと、「自分が動いていれば、止まっているものが自分の動きの逆向きに見える」からです。たとえば自分が東向き \(3.0\) m/s で進めば、地面の電柱は西向き \(3.0\) m/s で流れていくように見える。これを式にすると \(v_{\text{自分から見た電柱}} = 0 – 3.0 = -3.0\)(西向き 3.0 m/s)。引き算は「自分の動きの分を差し引く」操作なのです。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 4 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 東を正とする。電車は \(+5.0\)、人は電車内で「進行方向と逆向きに \(1.5\)」だから電車内速度は \(-1.5\)。地面から見た人の速度は

$$\begin{aligned}
v_{\text{人}} &= v_{\text{電車}} + v_{\text{電車から見た人}} \\
v_{\text{人}} &= (+5.0) + (-1.5) \\
v_{\text{人}} &= +3.5 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので東向き 3.5 m/s。

② 東を正とする。地面から見た人 \(+9.7\)、地面から見た電車 \(+7.9\)。電車から見た人は

$$\begin{aligned}
v_{\text{電車から見た人}} &= v_{\text{人}} – v_{\text{電車}} \\
&= (+9.7) – (+7.9) \\
&= +1.8 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので東向き 1.8 m/s。

③ 東を正とする。A は \(+3.0\)、B は \(-3.0\)。A から見た B は

$$\begin{aligned}
v_{\text{AB}} &= v_{\text{B}} – v_{\text{A}} \\
&= (-3.0) – (+3.0) \\
&= -6.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

負なので西向き 6.0 m/s。

④ 東を正とする。A は \(+3.0\)、A から見た B は \(+5.0\)。地面から見た B は

$$\begin{aligned}
v_{\text{B}} &= v_{\text{A}} + v_{\text{AB}} \\
&= (+3.0) + (+5.0) \\
&= +8.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので東向き 8.0 m/s。

Step 5: 物理的妥当性チェック

答えが出たら「向き」を直感で確かめます。①は電車に乗って逆向きに歩いている人。地面から見ると、電車の速さよりは遅いはず。\(5.0\) より小さい \(3.5\) なので妥当。③は東向きの A から見ると、西向きに進んでいる B はもっと速く西へ離れていくはず。確かに \(6.0\) と \(3.0\) より速い、妥当。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

「向きを正負で扱う」という発想は、問4 の等加速度運動でも全く同じように出てきます。

波及①: 問4 ③で「西向きに進みながら東向きに加速」、⑥で「右向き初速度なのに左向き加速度」というような正負の混在問題が出ます。問3 で「東を正」と決めたのと同様に、問4 でも「右を正」「斜面上向きを正」とまず決めるのが鉄則。
波及②: 「A に対する B」「B に対する A」の入れ替えは、符号を反転するだけ。\(v_{\text{AB}} = -v_{\text{BA}}\)。これは速度に限らず、変位・加速度すべての相対量で同じ性質。

§4. 第1問 問4 ─ 等加速度運動

等加速度運動は「速度が一定の割合で変わる運動」のことです。手元の問題冊子の第1問 問4を見ながら読んでください。公式は 3 本だけですが、「どの場面でどの公式を使うか」を選ぶ判断が問われます。

§4.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §4.2 のアコーディオン内に展開しています。

① 左向き \(2.8 \, \text{m}/\text{s}^2\): 同じ左向きで速さが14→28に増加、変化量14を時間5.0で割って 14÷5.0=2.8、向きは速さが増した側=左。
② \(18 \, \text{m}/\text{s}\): 「6秒後に元の位置」=変位ゼロ。\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) に \(x=0\), \(t=6\), \(a=-6\) を代入して \(v_0=18\)。
③ 東向き \(0.80 \, \text{m}/\text{s}^2\): 西向き10m/sで進み10秒後に西60mに到達。等加速度公式から逆算すると加速度は0.80で、西進中に減速=向きは東。
④ 斜面上向き \(36 \, \text{m}\): 初速度12(上向き)、加速度−1.5、\(t=4\) を変位の式に代入して \(12 \times 4 – \displaystyle\frac{1}{2} \times 1.5 \times 16 = 48-12=36\)、向きは上向き。
⑤ \(1.0 \, \text{s}\) 後: \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\) に \(x=7\), \(v_0=5\), \(a=4\) を代入して \(2t^2+5t-7=0\)、因数分解 \((2t+7)(t-1)=0\) の正の解 \(t=1.0\)。
⑥ 左向き \(5.0 \, \text{m}/\text{s}\): \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) に \(v_0=3\) (右)、\(a=-2\) (左)、\(x=-4\) (左) を代入して \(v^2=25\)、向きは左に進んでいるので左向き5.0。

§4.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 公式 3 本の「選び方」を身につける

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

等加速度運動の公式は次の 3 本です:

$$\begin{aligned}
v &= v_0 + at \\
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
v^2 – v_0^2 &= 2 a x
\end{aligned}$$

多くの人は「とりあえず一番上の式から代入」「とにかく 3 本全部書いて連立」と進めます。本当に必要なのは「何が与えられて、何が問われているか」で公式を選ぶ判断力です。

誤答パターン①: ①で「左向き \(\displaystyle\frac{28 – 14}{5.0} = 2.8\) m/s² だから、左向き \(2.8 \, \text{m}/\text{s}^2\)」と「向きを考えずに数値だけ出す」。
診断: 数字は合っていても、向きの根拠を言語化していないクセ。「左向きの速度が大きくなった」→「速さが左へ増えた」→「加速度は左向き」という論理が頭に入っていないと、⑥のように向きが反転する問題で詰みます。
誤答パターン②: ②で「\(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) を使う」と考えて、変位 \(x\) が分からず手が止まる。
診断: 「打ち出した場所に戻る」の意味を読み取れないクセ。「打ち出した場所に戻る」=「6 秒間の変位がゼロ」を意味します。変位 \(x = 0\) を使うなら 2 本目の公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が最適。3 本目を選んだ瞬間、無駄に難しくなります。
誤答パターン③: ⑤で「\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を解いて \(t = 1.0\) または \(t = -3.5\)」と出して、「2 つ出たから両方答え」と書く。
診断: 二次方程式の解を物理的に吟味しないクセ。\(t\) は時間なので必ず \(t \ge 0\)。負の値は「\(3.5\) 秒前」を意味し、本問の状況では棄却します。式を解く=答えが出るではなく、「物理的に意味があるか」まで確かめてはじめて答え。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

各問で「向きの正」を決めて、初速度・加速度・変位を矢印で書きます。①なら左を正、③なら西を正、⑥なら右を正、というように毎回明示します。

Step 2: どの公式を選ぶか

選び方の判断表:
(A)時間 \(t\) が与えられ、速度 \(v\) が問われる → 1 本目 \(v = v_0 + at\)。
(B)時間 \(t\) が与えられ、変位 \(x\) が問われる → 2 本目 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)。
(C)時間 \(t\) が出てこない(速度と変位の関係) → 3 本目 \(v^2 – v_0^2 = 2 a x\)。

「与えられた量・問われている量に \(t\) があるかどうか」で 1・2 本目と 3 本目を切り分けるのが最大のコツ。

Step 3: 公式の数式構造を読む

1 本目は「速度の変化=加速度×時間」、つまり「加速度とは 1 秒あたり何 m/s 増える割合か」を表しています。2 本目は「変位=初速度ぶん+加速度ぶん」で、後ろの \(\displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が「加速度のおかげで余分に進む距離」を意味します。3 本目は時間を消した形で、「速度の 2 乗の変化が、変位に比例する」ことを示します。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 6 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 左を正とする。\(v_0 = +14\)、\(v = +28\)、\(t = 5.0\)。時間と速度が与えられ、加速度が問われる → 1 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
v &= v_0 + at \\
28 &= 14 + a \times 5.0 \\
5.0 a &= 14 \\
a &= 2.8 \, \text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}$$

正なので左向き 2.8 m/s²。

② 斜面上向きを正とする。\(v_0 = +v_0\)(求めたい)、\(a = -6.0\)(下向きなので負)、\(t = 6.0\)、\(x = 0\)(戻ってきた)。時間と変位が出てきた → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
0 &= v_0 \times 6.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times (-6.0) \times 6.0^2 \\
0 &= 6.0 v_0 – 108 \\
v_0 &= 18 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので斜面上向き 18 m/s。「打ち出した初速度の大きさ」を聞かれているので、答えは 18 m/s。

③ 西を正とする。\(v_0 = +10\)、\(t = 10\)、\(x = +60\)。時間と変位が与えられ、加速度が問われる → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
60 &= 10 \times 10 + \displaystyle\frac{1}{2} \times a \times 10^2 \\
60 &= 100 + 50 a \\
50 a &= -40 \\
a &= -0.80 \, \text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}$$

負なので、加速度は西向きの逆=東向き 0.80 m/s²。

④ 斜面上向きを正とする。\(v_0 = +12\)、\(a = -1.5\)(下向き)、\(t = 4.0\)、変位が問われる → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
&= 12 \times 4.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times (-1.5) \times 4.0^2 \\
&= 48 – 12 \\
&= 36 \, \text{m}
\end{aligned}$$

正なので斜面上向き 36 m。

⑤ 東を正とする。\(v_0 = +5.0\)、\(a = +4.0\)、\(x = +7.0\)、時間が問われる → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
7.0 &= 5.0 t + \displaystyle\frac{1}{2} \times 4.0 \times t^2 \\
7.0 &= 5.0 t + 2.0 t^2 \\
2.0 t^2 + 5.0 t – 7.0 &= 0
\end{aligned}$$

これを因数分解すると \((2.0 t + 7.0)(t – 1.0) = 0\)。よって \(t = 1.0\) または \(t = -3.5\)。時間は \(t \ge 0\) なので \(t = 1.0 \, \text{s}\)。

⑥ 右を正とする。\(v_0 = +3.0\)、\(a = -2.0\)、\(x = -4.0\)(左向きに 4.0 m)、速度が問われる。時間が出てこない → 3 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
v^2 – v_0^2 &= 2 a x \\
v^2 – 3.0^2 &= 2 \times (-2.0) \times (-4.0) \\
v^2 – 9.0 &= 16 \\
v^2 &= 25 \\
v &= \pm 5.0
\end{aligned}$$

左向きに 4.0 m 動いた時点では、すでに右向きの速度を使い切って左へ加速しているはずなので、\(v = -5.0\) を採用。負なので左向き 5.0 m/s。

Step 5: 物理的妥当性チェック

各問で「向き」と「単位」を確認します。①は左向きに加速していくのだから、加速度も左向き。②は「打ち出した場所に戻る」前提と \(v_0 = 18\) m/s の組合せで、6 秒後の速度 \(v = 18 + (-6.0)\times 6.0 = -18\) m/s。打ち出した速度と同じ大きさで逆向きに戻る、対称的で妥当。⑥は \(v^2 = 25\) から \(\pm 5.0\) の 2 解が出ますが、物理状況(すでに折り返している)で 1 つに絞ります。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

等加速度運動は「向きの正負を決める」「公式を 3 本のうちから選ぶ」「二次方程式の解を物理的に吟味する」という 3 段構えで解きます。

波及①: ②④のように「斜面上で打ち上げて戻ってくる」状況は、地面で真上に投げる運動と同じ構造です。本問の「斜面上向きを正」と決める手順は、上下方向の運動でもそのまま使えます。
波及②: ⑤⑥のように「二次方程式の 2 解のうち 1 つを物理的根拠で棄却する」という手順は、出題側がよく仕掛けてくる罠です。式を解いて答えが 2 つ出てきたら、必ず「時間は負ではないか」「向きは状況に合っているか」を確かめる習慣を付けてください。

§5. 第1問 問5 ─ 川舟(相対速度の総合演習)

静水のとき速さ \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) の船が、流れの速さ \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) の川の2点AB間(\(90 \, \text{m}\)・AはBの川上側)を往復する問題です。手元の問題冊子の第1問 問5の図を見ながら読んでください。この大問は「速度の合成」と「視点の切り替え」を5設問連続で問う、相対速度の総合演習になっています。

§5.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §5.2 のアコーディオン内に展開しています。

① 答え: 川下の向きに \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。岸から見た船の速度は「船自身の速度 \(6.0\) + 流れの速度 \(3.0\)」で、同じ向きなので足し算して \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。
② 答え: \(10 \, \text{s}\)。AB間 \(90 \, \text{m}\) を岸から見た速さ \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\) で割って \(90 \div 9.0 = 10 \, \text{s}\)。
③ 答え: \(99 \, \text{m}\)。\(10 \, \text{s}\) でBに到達し、残り \(3 \, \text{s}\) はBから川上へ折り返す。川上向きの速さは \(6.0 – 3.0 = 3.0 \, \text{m}/\text{s}\) で \(3 \, \text{s}\) 進むと \(9 \, \text{m}\)。Bの位置 \(90 \, \text{m}\) から見て進路は逆だが、出発点Aから測った道のりは \(90 + 9 = 99 \, \text{m}\)。
④ 答え: 川下の向きに \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)。船は岸から見て川上向きに \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) で動いているので、船から見た岸の人は逆向き、つまり川下向きに \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)。
⑤ 答え: \(4.0 \, \text{m}/\text{s}\)。鴨は船から見て川上向きに \(10 \, \text{m}/\text{s}\)、船は岸から見て川下向きに \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\) なので、鴨は岸から見ると川上向きに \(1.0 \, \text{m}/\text{s}\)。流れ \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) に逆らうので鴨自身の速さは \(1.0 + 3.0 = 4.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

§5.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「誰から見た速度か」を毎回紙に書く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: ①で「\(6.0 – 3.0 = 3.0 \, \text{m}/\text{s}\)」としてしまう。
診断: 「川は船の邪魔をするもの」という素朴な感覚で、無条件に引き算する思考停止です。船は川下へ進むので、川の流れは船を「押す」側です。向きを紙に矢印で書かず、頭の中で数字だけ操作した結果のズレです。
誤答パターン②: ③で「\(13 \, \text{s} \times 9.0 \, \text{m}/\text{s} = 117 \, \text{m}\)」としてしまう。
診断: 「速さ×時間=距離」の公式を、速さが変化することを忘れて全区間に当てはめてしまうパターンです。B到達後に船が向きを変えれば、岸から見た速さも変わるという当然の事実が、公式の機械適用で見えなくなっています。
誤答パターン③: ④で「船は \(3 \, \text{m}/\text{s}\) で進んでいるから、人を見ても \(3 \, \text{m}/\text{s}\)」と向きを書かずに答えてしまう。
診断: 「相対速度=引き算」の公式を覚えていても、「自分が動いていれば止まっている人が反対方向に動いて見える」という日常感覚と接続できていません。電車の窓から外を見ると景色が後ろに流れる、あの感覚です。
誤答パターン④: ⑤で「船から見て鴨が \(10 \, \text{m}/\text{s}\) なら、静水でも \(10 \, \text{m}/\text{s}\)」と即答してしまう。
診断: 視点が「船から見た速度」「岸から見た速度」「鴨が水をかく速さ(静水基準)」の3段階あることを整理せず、最初に出てきた数字をそのまま答えに採用する短絡です。鴨の問題は3段階の視点切り替えを順に踏まないと解けません。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

まず紙に川を横向きに描き、左を川上、右を川下とします。AはBの川上側なので、Aが左、Bが右。船は最初A→Bへ進むので、船は川下向きに動きます。「川下向きを正」と決めて、矢印に向きの記号を必ず付けます。流れは右向き(川下向き)に \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)、船自体が水をかいて進む速さは右向きに \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) です。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

使う道具は「速度の合成」と「相対速度」の2つだけです。岸から見た船の速度 \(v_{\text{船・岸}}\) は、船が水に対して持つ速度 \(v_{\text{船・水}}\) と水(流れ)の速度 \(v_{\text{水・岸}}\) を足したものです。式で書くと \(v_{\text{船・岸}} = v_{\text{船・水}} + v_{\text{水・岸}}\) 。Aから見たBの速度(=AにとってのBの相対速度)は \(v_{B \text{・} A} = v_{B \text{・岸}} – v_{A \text{・岸}}\) です。この2つの式に毎回当てはめれば、5設問すべて同じ枠組みで解けます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

速度合成の式が「足し算」になるのは、船は水の上に乗っていて、水自体も岸に対して動いているからです。船が水をかく速さ(=もし川が止まっていたら岸から見える速さ)に、水ごと流される速度を足す。船が川下に向かうとき、流れは「追い風」になるので加算、川上に向かうときは「向かい風」になるので減算(=向きを考えて足す)になります。相対速度 \(v_{B \text{・} A}\) は「Aを止めて見たときのBの速度」という意味です。Aが動いている分だけ、Bは余計に・あるいは少なく動いて見えます。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

① 岸から見た船の速度(A→B、川下向き): 川下向きを正とすると、船が水をかく速度は \(+6.0\)、流れは \(+3.0\)。

$$\begin{aligned}
v_{\text{船・岸}} &= (+6.0) + (+3.0) \\
&= +9.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正だから川下向き、大きさは \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

② AからBまでにかかる時間: 距離 \(90 \, \text{m}\) を岸から見た速さ \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\) で割る。

$$\begin{aligned}
t &= \displaystyle\frac{90}{9.0} \\
&= 10 \, \text{s}
\end{aligned}$$

③ 時刻 \(13 \, \text{s}\) までに移動した距離: B到達は \(t = 10 \, \text{s}\)。残り \(3 \, \text{s}\) は折り返してBから川上へ進む。川上向き(=負)に進むとき、岸から見た速さは船が水をかく \(+6.0\) と逆向きの流れ \(+3.0\) の合成。

$$\begin{aligned}
v_{\text{船・岸(B→A)}} &= (-6.0) + (+3.0) \\
&= -3.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

大きさ \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) で \(3 \, \text{s}\) 進むので、B から川上に \(3.0 \times 3 = 9 \, \text{m}\)。移動した「距離」(向きを問わず道のり)は A→B の \(90 \, \text{m}\) と B→ \(9 \, \text{m}\) の合計。

$$\begin{aligned}
\text{距離} &= 90 + 9 \\
&= 99 \, \text{m}
\end{aligned}$$

④ 船から見た「岸で静止している人」の速度: 船はこのとき川上向きに \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)(=岸から見て \(-3.0\))で動いている。岸の人は岸から見て \(0\)。相対速度の式 \(v_{\text{人・船}} = v_{\text{人・岸}} – v_{\text{船・岸}}\) に代入。

$$\begin{aligned}
v_{\text{人・船}} &= 0 – (-3.0) \\
&= +3.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正だから川下向き、大きさは \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

⑤ 鴨が静水を進む速さ: 時刻 \(5 \, \text{s}\) で船はまだ A→B 進行中(=岸から見て \(+9.0 \, \text{m}/\text{s}\))。船から見て鴨はAに向かって \(10 \, \text{m}/\text{s}\)(=船から見て川上向きに \(10\)、つまり \(-10\))。

視点1(船から見た鴨)から視点2(岸から見た鴨)へ:

$$\begin{aligned}
v_{\text{鴨・船}} &= v_{\text{鴨・岸}} – v_{\text{船・岸}} \\
-10 &= v_{\text{鴨・岸}} – (+9.0) \\
v_{\text{鴨・岸}} &= -1 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

つまり岸から見て鴨は川上向きに \(1 \, \text{m}/\text{s}\)。

視点2(岸から見た鴨)から視点3(鴨が水をかく速さ=静水基準)へ。水自体は岸から見て \(+3.0\)(川下向き)に流れているので:

$$\begin{aligned}
v_{\text{鴨・岸}} &= v_{\text{鴨・水}} + v_{\text{水・岸}} \\
-1 &= v_{\text{鴨・水}} + (+3.0) \\
v_{\text{鴨・水}} &= -4 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

大きさは \(4.0 \, \text{m}/\text{s}\)。鴨は川上向きに、水に対して \(4.0 \, \text{m}/\text{s}\) でかいている。

Step 5: 物理的妥当性チェック

①の \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\) は、船自身の \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) より速い。川が押してくれているのだから当然です。逆に③の折り返し後は \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) と遅くなる。船が頑張って \(6 \, \text{m}/\text{s}\) で水をかいても、流れに半分連れ戻されるイメージで合っています。⑤の鴨は静水で \(4 \, \text{m}/\text{s}\) で泳ぐ生き物として現実的な値です。もしここで \(15 \, \text{m}/\text{s}\) などになっていたら、視点切り替えのどこかで符号を間違えています。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 速度はベクトル(向きを持つ量)なので、足し算・引き算の前に必ず「正の向き」を1つ決めて符号を付ける。電車内でボールを投げる問題、エスカレーターを歩く問題、すべて同じ \(v_{A \text{・地}} = v_{A \text{・} B} + v_{B \text{・地}}\) の枠組みで解ける。
波及②: 視点が変わると速度は変わる。視点を切り替えるときは、必ず「誰から見たか」を添え字(船から見た、岸から見た、水に対して)で紙に書く。後の単元の「相対加速度」「慣性力」もこの添え字運用で迷子にならない。

§6. 第2問 問1 ─ \(v\)-\(t\) グラフ・\(x\)-\(t\) グラフの穴埋め

初速度 \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)、加速度 \(-3.0 \, \text{m}/\text{s}^2\) の等加速度運動を、\(v\)-\(t\) グラフ(速度-時間)と\(x\)-\(t\) グラフ(位置-時間)に書き分け、9個の数値を埋める問題です。手元の問題冊子の第2問 問1のグラフを見ながら読んでください。グラフ問題は「面積=変位」「傾き=加速度」という2つの幾何的意味を、暗記ではなく仕組みとして理解できているかが問われています。

§6.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §6.2 のアコーディオン内に展開しています。

① 答え: \(3.0\)。\(v\)-\(t\) グラフが \(t\) 軸と交わる時刻=速度が \(0\) になる瞬間。\(v = 9.0 – 3.0 t = 0\) より \(t = 3.0 \, \text{s}\)。
② 答え: \(4.0\)。グラフの右端=問題で指定された観測終了時刻 \(4.0 \, \text{s}\)(点線丸の位置)。
③ 答え: \(9.0\)。\(v\) 軸の切片=初速度 \(v_0 = 9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。
④ 答え: \(-3.0\)。\(t = 4.0 \, \text{s}\) のときの速度は \(v = 9.0 – 3.0 \times 4.0 = -3.0 \, \text{m}/\text{s}\)。折り返して逆向きに進んでいる証拠。
⑤ 答え: \(13.5\)。\(0 \sim 3.0 \, \text{s}\) の \(v\)-\(t\) グラフ下の三角形の面積=正方向の変位。底辺 \(3.0\)、高さ \(9.0\) で \(\displaystyle\frac{1}{2} \times 3.0 \times 9.0 = 13.5 \, \text{m}\)。
⑥ 答え: \(1.5\)。\(3.0 \sim 4.0 \, \text{s}\) の三角形の面積=戻り変位の大きさ。底辺 \(1.0\)、高さ \(3.0\) で \(\displaystyle\frac{1}{2} \times 1.0 \times 3.0 = 1.5 \, \text{m}\)。
⑦ 答え: \(3.0\)。\(x\)-\(t\) グラフが最大値をとる時刻=速度 \(0\) の瞬間= \(3.0 \, \text{s}\)。
⑧ 答え: \(4.0\)。\(x\)-\(t\) グラフの右端時刻は \(v\)-\(t\) と同じ \(4.0 \, \text{s}\)。
⑨ 答え: \(13.5\)。\(x\)-\(t\) グラフの最大値= \(0 \sim 3.0 \, \text{s}\) の変位累積= \(13.5 \, \text{m}\)。

§6.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「面積」と「傾き」の正体を見抜く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(v\)-\(t\) グラフの面積=変位の公式を「とにかく \(v \times t\)」で計算してしまう。
診断: 「面積=変位」を呪文として覚えていて、グラフが直線か曲線か、三角形か台形かを見分けずに代入する暗記思考です。速度が変化しているのに長方形の面積を出してしまう典型ミスにつながります。
誤答パターン②: 折り返し点(v=0)の意味が分からず、\(x\)-\(t\) グラフを右上がりの直線として描いてしまう。
診断: 「速度がゼロ=止まった一瞬」と「位置の変化方向が反転する瞬間」が同じ時刻だと結びついていません。v=0は「ここで物体が向きを変える=\(x\)-\(t\) グラフの山の頂上」というイメージが頭に入っていないと、グラフ全体の形が崩れます。
誤答パターン③: 戻った量 \(1.5 \, \text{m}\) と、t=\(4 \, \text{s}\)での位置とを別物として混乱する。
診断: 「3〜\(4 \, \text{s}\)の面積」と「t=\(4 \, \text{s}\)での位置」を別個に計算しようとするケースです。実は「t=\(4 \, \text{s}\)での位置=\(3 \, \text{s}\)での最大位置 − 3〜\(4 \, \text{s}\)で戻った量」と素直につながっていることが、面積の符号で読み取れていません。
誤答パターン④: 加速度 \(-3.0\) の負号を、\(v\)-\(t\) グラフでは右下がりの傾きと結びつけられるが、その「同じ負号」が\(x\)-\(t\) グラフでは「上に凸の曲がり具合」になることが見えない。
診断: 加速度・速度・位置を別々の量として暗記していて、\(x\)-\(t\) グラフの曲がり方=加速度の符号という関係まで降りていないパターンです。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

まず速度がどう変化するかを言葉で書きます。「初め \(+9.0 \, \text{m}/\text{s}\) で進む。毎秒 \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) ずつ遅くなる。3秒後に止まる。その後は逆向きに加速して、4秒の時点で \(-3.0 \, \text{m}/\text{s}\)」。これだけで\(v\)-\(t\) グラフは「右下がりの一直線」だと決まります。\(x\)-\(t\) グラフは「3秒で最大に達して山の頂上を作り、4秒に向かって少し戻る」形です。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

等加速度運動の3つの式 \(v = v_0 + at\)、\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) のうち、グラフ問題では特に「\(v\)-\(t\) グラフの面積=変位」が強力です。なぜ面積が変位になるかというと、速度を時間で足し合わせる(積分する)と移動した距離になるからです。長方形の面積 \(v \times t\) は速度が一定のときの変位そのものですし、速度が直線的に変わるなら台形・三角形の面積として同じ意味を持ちます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

\(v\)-\(t\) グラフでは、傾き=加速度、面積=変位。\(x\)-\(t\) グラフでは、傾き=速度。だから「v-tの傾きが負」⇔「速度が減る」⇔「x-tの傾きがだんだん小さくなる=上に凸の放物線」と読み替えられます。等加速度のとき\(x\)-\(t\) グラフが放物線になるのは、変位の式に \(t^2\) が入っているからです。3秒で速度ゼロ=\(x\)-\(t\) グラフの傾きゼロ=山の頂上です。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

①③④ 速度の式から: \(v = v_0 + at = 9.0 + (-3.0) \cdot t\)。

v=0となる時刻(=①):

$$\begin{aligned}
0 &= 9.0 – 3.0 \cdot t \\
t &= 3.0 \, \text{s}
\end{aligned}$$

初速度(=③)はそのまま \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

\(t = 4.0 \, \text{s}\) のときの速度(=④):

$$\begin{aligned}
v &= 9.0 – 3.0 \times 4.0 \\
&= -3.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

⑤ 0〜\(3 \, \text{s}\)の三角形面積(=正方向の変位): 底辺3、高さ9の三角形。

$$\begin{aligned}
S_1 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 3.0 \times 9.0 \\
&= 13.5 \, \text{m}
\end{aligned}$$

⑥ 3〜\(4 \, \text{s}\)の三角形面積(=戻った変位の大きさ): 底辺1、高さ3の三角形(v軸では負側だが、大きさで答える)。

$$\begin{aligned}
S_2 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 1.0 \times 3.0 \\
&= 1.5 \, \text{m}
\end{aligned}$$

⑦⑨ \(x\)-\(t\) グラフの最大値: v=0となる \(t = 3.0 \, \text{s}\) で位置は最大。最大値=0〜\(3 \, \text{s}\)の面積=\(13.5 \, \text{m}\)。だから⑦=3.0、⑨=13.5。

⑧ \(x\)-\(t\) グラフ右端の時刻: \(v\)-\(t\) グラフと同じ範囲なので \(t = 4.0 \, \text{s}\)。ちなみに \(t = 4.0 \, \text{s}\) の位置は \(13.5 – 1.5 = 12.0 \, \text{m}\)(出題は時刻のみ問うが、形を確認するのに使う)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

\(v\)-\(t\) グラフは t=0 で \(+9.0\)、t=3で0、t=4で \(-3.0\) を通る一直線。傾きは \(-3.0\)(=加速度)で問題文と一致します。\(x\)-\(t\) グラフは t=0 で原点、t=3で頂上 \(13.5 \, \text{m}\)、t=4で \(12.0 \, \text{m}\) と少し下がった放物線。「3秒で13.5m進んで、その後1秒で1.5m戻る」のは、減速して止まって逆向きに動き出すという日常イメージにも合います。もし⑤を \(27\) などと出していたら、三角形ではなく長方形で計算したサインです。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: \(v\)-\(t\) グラフの面積=変位、傾き=加速度。\(x\)-\(t\) グラフの傾き=速度。この「微分・積分の関係」を、面積と傾きという目で見える形で先取りしている。後の単元で公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が出てきても、「初速度の長方形+加速度分の三角形」として面積で再現できる。
波及②: 「v=0=折り返し点=\(x\)-\(t\) グラフの極値」は、後の鉛直投げ上げや単振動でも同じ。最高点で速度ゼロ、振動の端点で速度ゼロ、すべて同じ原理の応用。

§7. 第2問 問2 ─ \(a\)-\(t\) グラフ判定(等速運動)

一定時間間隔で撮影された3つの物体が、間隔等しく並んでいる写真の問題です。手元の問題冊子の第2問 問2の図を見ながら読んでください。物体の進行方向を正とするとき、加速度を縦軸・時間を横軸にとったグラフ(\(a\)-\(t\) グラフ)はア〜エのどれかを選びます。「写真の間隔=同じ」という1つの事実から、3段階の推論を踏みます。

§7.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えに加えて、1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §7.2 のアコーディオン内に展開しています。

答え: イ。連続写真の間隔が等しい=等速運動=速度変化なし=加速度 \(0\)。よって \(a\)-\(t\) グラフは \(t\) 軸上に重なる水平線(イ)。

§7.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「等間隔=等速=加速度ゼロ」の3段推論

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 写真が3つあるから「動いている=加速している」と思い、ア(正の一定値)やウ(右上がり)を選んでしまう。
診断: 「動いている=加速度がある」という日常語のずれです。物理での加速度は「速度の変化のしかた」であって「動いているか止まっているか」ではありません。等速直線運動なら加速度はゼロ、これが慣性の概念の入口です。
誤答パターン②: イ(a=0の水平線)を見て「動いていない物体のグラフだ」と勘違いして除外する。
診断: 縦軸が「a(加速度)」であって「v(速度)」「x(位置)」ではないことを読み飛ばしています。a=0は「加速度がゼロ」であって、「速度がゼロ」でも「位置の変化がゼロ」でもありません。グラフを読むとき、軸の文字を毎回確認する習慣がついていないサインです。
誤答パターン③: エ(t軸に垂直な直線)を「加速度がゼロから急に変わった」と解釈して選んでしまう。
診断: 縦線のグラフ自体が物理的に意味を持たないこと(同じ時刻に複数の加速度が存在することになり矛盾する)を見落としています。グラフの形そのものに対する物理的な吟味が抜けています。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

連続写真は、たとえば毎秒1枚ずつ撮ったコマ送り。3つの像の間隔が等しい=同じ時間に同じ距離を進んでいる、ということです。1秒あたり同じ長さだけ動く、これがまさに等速運動の定義です。図に矢印を3本書き込み、すべて同じ長さであることを目で確認します。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

定義に戻ります。速度の定義は「単位時間あたりの位置の変化」、加速度の定義は「単位時間あたりの速度の変化」。間隔が等しい=速度が一定=速度の変化がゼロ=加速度がゼロ。公式は要らず、定義の連鎖でゴールにたどり着きます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

加速度 \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\) で、\(\Delta v = 0\) なら \(a = 0\) です。これが\(a\)-\(t\) グラフでは「t軸そのもの(高さ0の水平線)」になります。アは「一定の正の加速度」=等加速度直線運動、ウは「加速度が時間とともに増える」=加加速度のある運動、エは「瞬間的に加速度が変わる」=物理的に不自然、と選択肢を1つずつ意味で読み解きます。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 推論過程を1つずつ丁寧に見る(クリックで開閉)

事実1: 写真の間隔(時間軸)が等しい。1コマあたりの時間を \(\Delta t\)、像と像の間の距離を \(\Delta x\) とすると、\(\Delta x\) はどのコマ間でも同じ。

推論1(速度): 速度の定義より

$$\begin{aligned}
v &= \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}
\end{aligned}$$

\(\Delta x\) も \(\Delta t\) も全コマで同じ値だから、\(v\) も時間によらず一定。これが等速運動。

推論2(加速度): 加速度の定義より

$$\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t} \\
&= \displaystyle\frac{0}{\Delta t} \\
&= 0
\end{aligned}$$

速度が一定(変化なし)だから \(\Delta v = 0\)、よって加速度はゼロ。

選択肢吟味: ア(a=正の一定値)は加速、イ(a=0で水平)は等速、ウ(a=右上がり)は加速度自体が増える、エ(t軸に垂直)は同じ瞬間に複数の値があり物理的に不可能。よってイ。

Step 5: 物理的妥当性チェック

「等間隔の連続写真=等速運動=加速度ゼロ」は、机の上を一定の速さで滑らせたボールや、エアトラック上の台車などで実験的にも確かめられる、最も基本的な現象です。慣性の法則の表れでもあります。もしアを選んでいたら、像と像の間隔が時間とともに広がっていく(加速していく)はずで、写真の見た目と合いません。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: グラフを読むときは、まず縦軸が何か(x なのか v なのか a なのか)を確認する。同じ「水平線」でも、x-tでは静止、v-tでは等速、a-tでは加速度ゼロ(等加速度直線運動なら等速も含む)と意味が全く変わる。
波及②: 「動いている」と「加速している」は別物。一定の速さで動いているとき、加速度はゼロ。この区別が、後の運動方程式で「合力ゼロなら等速運動」(=慣性の法則)の理解にそのまま接続する。

§8. 第2問 問3 ─ \(v\)-\(t\) グラフから運動図を並べ替える

\(v\)-\(t\) グラフの「正負」と「増減」をそのまま物体の動きに翻訳できるか、を問う問題です。手元の問題冊子の第2問 問3(\(v\)-\(t\) グラフと運動図A〜F)を見ながら読んでください。

§8.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文と図は手元プリント参照。ここでは答えに加えて1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §8.2 のアコーディオン内に展開しています。

答え: E → A → C → B: グラフを4区間に分けて読む。①\(t<t_1\) は v<0 で増加(左向きに減速)=E、②\(t_1<t<t_2\) は v>0 で増加(右向きに加速)=A、③\(t_2<t<t_3\) は v>0 一定(右向きに等速)=C、④\(t>t_3\) は v 減少から負へ(右向きに減速→停止→左向き加速の手前)=B。「速度の正負=動く向き」「速度の増減=加速か減速か」を分けて読み取るのがコツ。

§8.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「グラフの正負」と「動く向き」を別物として読み解く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(v\)-\(t\) グラフが上がっている=加速、下がっている=減速、と機械的に対応させてしまう。
診断: 「加速」「減速」を「速さが増える/減る」という日本語のままでしか捉えていない。速度 \(v\) は向きを持つベクトル、速さ \(|v|\) は大きさだけ、という区別ができていない。グラフが上がっていても、\(v\) が負の領域なら「速さは小さくなっている=減速」という現象がある。
誤答パターン②: \(v=0\) の瞬間(\(t=t_1\))を「物体が止まっている」と見て、運動図に「静止状態」を探してしまう。
診断: \(v=0\) は「その瞬間だけ速度がゼロ」であって、物体が長時間止まっているわけではない。直前は左向き、直後は右向きに動く「折り返し点」だと読めていない。瞬間と区間の混同。
誤答パターン③: \(v\)-\(t\) グラフの「\(t<t_1\) で値が増えている」を見て「ここは正方向に加速」と判断し、矢印が右向きで間隔が広がっていく運動図(Aのような図)を当ててしまう。
診断: 加速度の正負と速度の正負を混同している。\(t<t_1\) の領域は、加速度 \(a>0\)(グラフの傾きが正)で、速度 \(v<0\)。この組み合わせは「左向きに動いている物体が、右向きの力を受けて減速していく」という現象を表す。\(a\) と \(v\) の符号が逆 → 減速、という4象限のルールを身につけていない。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

\(v\)-\(t\) グラフを4つの時間帯に分けて、それぞれ「速度の符号」と「速度の変化(増減)」を読み取ります。

・\(t<t_1\):\(v<0\)(負)かつ、\(v\) は時間とともに大きくなり \(0\) に近づく。
・\(t_1 < t < t_2\):\(v>0\)(正)で、時間とともに増える。
・\(t_2 < t < t_3\):\(v>0\) で、一定値(水平線)。
・\(t>t_3\):\(v>0\) のまま減少していき、やがて \(v=0\) を通過する。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

ここでは公式ではなく、「\(v\)-\(t\) グラフの読み方の規約」を選びます。具体的には次の2つです。

・規約A:速度の符号(正/負)= 動く向き(正方向/負方向)。問題では「ある向きを正と定める」と必ず決まっている。
・規約B:速度の絶対値の増減 = 速さの増減 = 加速か減速か。

この2つを4象限の表にすると次のように整理できます。

・\(v>0\) かつ \(|v|\) 増 → 正方向へ加速(矢印は正方向、間隔は広がる)
・\(v>0\) かつ \(|v|\) 減 → 正方向へ減速(矢印は正方向、間隔は狭まる)
・\(v<0\) かつ \(|v|\) 増 → 負方向へ加速(矢印は負方向、間隔は広がる)
・\(v<0\) かつ \(|v|\) 減 → 負方向へ減速(矢印は負方向、間隔は狭まる)

Step 3: 公式の数式構造を読む

等加速度直線運動の式 \(v = v_0 + a t\) を考えます。これは「速度 \(v\) は、初速 \(v_0\) に、加速度×時間 \(at\) を足したもの」を意味します。グラフの傾きは \(a\)、切片は \(v_0\) です。重要なのは、\(v\) の符号と \(a\) の符号は独立だということ。両方の符号の組み合わせで4通りの現象が生まれます。

Step 4: 実際に区間ごとに運動図を当てはめる

📖 4つの時間帯を1つずつ丁寧に運動図と対応させる(クリックで開閉)

【\(t<t_1\):負方向に減速】

\(v<0\) なので物体は負方向(左)に動いています。\(|v|\) は時間とともに減って \(0\) に近づくので、これは「左向きに動きつつ、だんだんゆっくりになる」状態。連続写真で表すと、矢印は左向き、左へ行くにつれて打点の間隔が狭くなっていきます。これに対応するのが E

【\(t_1 < t < t_2\):正方向に加速】

\(t=t_1\) で速度がゼロを通過し、その直後 \(v>0\) になります。さらに時間とともに増加していくので「右向きに動き始め、だんだん速くなる」。矢印は右向き、右へ行くにつれて打点間隔が広がっていきます。これに対応するのが A

【\(t_2 < t < t_3\):正方向に等速(速い)】

\(v>0\) のまま一定値。これは「右向きに同じ速さで進み続ける」状態。矢印は右向き、打点間隔は一定。ただし加速で十分速くなった後の等速なので、間隔は広めの等間隔になります。これに対応するのが C

【\(t>t_3\):正方向に減速】

\(v>0\) のまま \(|v|\) が減っていきます。「右向きに動きつつ、だんだんゆっくりになる」。矢印は右向き、右へ行くにつれて打点間隔が狭まる。これに対応するのが B

よって順に並べると E → A → C → B

Step 5: 物理的妥当性チェック

「折り返し運動」になっているかを確認します。\(t<t_1\) は左向き、\(t>t_1\) は右向き。だから \(t=t_1\) で物体は一旦止まって(瞬間的に \(v=0\))、その後逆向きに動き出している。これは坂を登るボールが頂点で一瞬止まって落ちてくる、という典型現象と同じです。グラフの「\(v\) 軸を横切る点」は「折り返し点」というイメージが頭に入っていれば、E と A の境界(向きが変わる瞬間)を見落としません。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: \(v\)-\(t\) グラフの読み取りは「正負(向き)」と「増減(加速か減速か)」の2軸を独立に見る。この4象限の見方は、力学のあらゆる場面(鉛直投げ上げ、振動、衝突)で繰り返し使う。
波及②: 「v軸を横切る点=折り返し点」というイメージは、後で習う単振動でも投げ上げでも同じ。瞬間的に \(v=0\) になる点は「止まっている」のではなく「向きを変える瞬間」と読み替える。

§9. 第3問 問1 ─ 斜面3パターンでQ通過時の速さを比較

同じ斜面上で初期条件だけを変えた3パターンを比べる問題です。手元の問題冊子の第3問 問1(斜面上の点P、点Q、3通りの初期条件 (a)(b)(c))を見ながら読んでください。

§9.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文と図は手元プリント参照。ここでは答えに加えて1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §9.2 のアコーディオン内に展開しています。

答え: \(v_c < v_a = v_b\): なめらかな斜面なので摩擦損失ゼロ→力学的エネルギー保存則が成立。(a)上向き打出と(b)下向き打出は、P点での運動エネルギーが同じ \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) なので Q点での速さも同じ。(c)は初速度ゼロでP点のエネルギーが少ない分、Qで遅い。経路や向きではなく「P点でどれだけエネルギーを持っているか」で勝負が決まる。

§9.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ エネルギー保存則の「同じ高さ=同じ速さ」を見抜く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: (a) は「一度上に投げて戻ってくる間にエネルギーを失う」と感覚で考え、\(v_a < v_b\) と答えてしまう。
診断: 「上がって戻る」という見た目の動きが多いと、エネルギーも余計に消費されているように見える。しかし斜面はなめらか(摩擦なし)と書かれている。摩擦がなければ、どんな経路を通っても力学的エネルギーは保存される。「経路に時間がかかる=エネルギー損失」というのは、摩擦のある日常感覚を物理に持ち込んでしまった結果。
誤答パターン②: 等加速度の運動方程式を 3 回立てて、それぞれ \(t\) を消して \(v\) を出そうとし、計算量に押しつぶされる。
診断: 道具の選択ミス。「初期と終わりの 2 点だけが問われていて、途中経路を聞かれていない」とき、エネルギー保存則のほうが圧倒的に速い。問われ方を見て道具を選ぶ習慣がついていない。
誤答パターン③: (c) は初速が \(0\) なのに、なぜか \(v_c\) が \(v_a, v_b\) と等しいか、それより大きいと答える。
診断: 「P から Q まで滑り降りる距離が長いから速くなる」というイメージだけで判断している。エネルギー保存則を式で書けば、(c) には初期の運動エネルギーがない分、Q での速さが小さくなることが一目で見える。式で書く前に直感で結論を出してしまっている。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

斜面上の点 P、その下方に点 Q。P と Q の高さの差を \(h\) としておきます(PQ間の鉛直距離)。3 通りの初期条件は次の通りです。

(a) P で斜面上向きに速さ \(v\) を与える。物体は上昇し、最高点で一瞬止まり、戻ってきて P を通り、Q へ。
(b) P で斜面下向きに速さ \(v\) を与える。そのまま Q へ。
(c) P で静かに(速さ \(0\) で)放す。滑り降りて Q へ。

Step 2: どの公式を選ぶか

「初期(P 通過時)と終わり(Q 通過時)の速さだけ」を比較するので、力学的エネルギー保存則が最適です。なめらかな斜面なので摩擦による熱への損失はゼロ。

運動エネルギー \(K = \displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)、重力ポテンシャルエネルギー \(U = m g h\)。P と Q では \(K + U\) が等しい。

Step 3: 公式の数式構造を読む

P で持っているエネルギー \(=\) Q で持っているエネルギー、と書きます。

P の高さを基準(\(h=0\))と取ると、Q の高さは \(-h\)(下方なので負)。あるいは Q を基準にとって P が \(+h\) でも構いません。ここでは Q を基準にして、P の高さを \(h\) と置きます。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 3パターンを1つずつエネルギー保存則で書き下す(クリックで開閉)

【(a) 上向きに速さ \(v\) で打ち出し】

P で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)、ポテンシャル \(m g h\)。Q で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_a^2\)、ポテンシャル \(0\)。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{2} m v^2 + m g h &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_a^2 \\
v_a^2 &= v^2 + 2 g h
\end{aligned}$$

【(b) 下向きに速さ \(v\) で打ち出し】

P で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)、ポテンシャル \(m g h\)。Q で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_b^2\)、ポテンシャル \(0\)。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{2} m v^2 + m g h &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_b^2 \\
v_b^2 &= v^2 + 2 g h
\end{aligned}$$

運動エネルギーは速度の 2 乗で決まるので、向きが上か下かは関係ありません。\(\left(+v\right)^2 = \left(-v\right)^2 = v^2\) です。よって \(v_a = v_b\)。

【(c) 静かに放す】

P で:運動エネルギー \(0\)、ポテンシャル \(m g h\)。Q で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_c^2\)、ポテンシャル \(0\)。

$$\begin{aligned}
m g h &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_c^2 \\
v_c^2 &= 2 g h
\end{aligned}$$

3つを並べると、\(v_a^2 = v_b^2 = v^2 + 2 g h\)、\(v_c^2 = 2 g h\)。明らかに \(v_c^2 < v_a^2 = v_b^2\)、すなわち \(v_c < v_a = v_b\)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

(a) と (b) は P での運動エネルギーが等しいので、Q に着くまでに同じだけポテンシャルを運動エネルギーに変換すれば、当然同じ速さになります。(c) は P で運動エネルギーゼロからスタートするので、ポテンシャル \(m g h\) 分しか運動エネルギーをもらえず、最も遅い。極端ケースとして \(h \to 0\)(P と Q がほぼ同じ高さ)を考えると、\(v_a = v_b \to v\)、\(v_c \to 0\) となり、矛盾なく成り立っています。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 摩擦のない斜面・曲面では、最終的な速さは「初期の運動エネルギーと、落差から得るポテンシャルの和」だけで決まる。経路の形・かかった時間は関係ない。これがエネルギー保存則の威力。
波及②: 運動エネルギーは速度の 2 乗に比例するので、向きの違いは結果に出てこない。鉛直投げ上げで「上向きに投げても下向きに投げても、同じ高さに戻ってくる時の速さは同じ」というのと同じ原理。

§10. 第3問 問2 ─ 斜面A静止+B上向き打出の\(v\)-\(t\) グラフ選択

同じなめらかな斜面上に置かれた2物体 A, B の \(v\)-\(t\) グラフを4択から選ぶ問題です。手元の問題冊子の第3問 問2(斜面と A, B、初期条件、グラフ ①〜④)を見ながら読んでください。

§10.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文と図は手元プリント参照。ここでは答えに加えて1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §10.2 のアコーディオン内に展開しています。

答え: ②(右上のグラフ): 同じ斜面上にいるA、Bはどちらも斜面下向きに同じ大きさの加速度 \(g\sin\theta\) を受ける。だからグラフの傾き(=加速度)は同じ。Aは初速度0で原点から右下がりの直線、Bは正の初速度(上向き)から始まる右下がり直線で、Aと平行になる。これを示すのが②。「速度の向きが正でも、加速度は負(下向き)」というのが見抜きどころ。

§10.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「同じ斜面=同じ加速度=平行な直線」を見抜く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「B は上に打ち出されたので、最初は加速度が上向き(正方向)になっている」と考えてしまう。
診断: 「速度の向き」と「加速度の向き」を一緒くたに考えている。なめらかな斜面上で物体に働くのは重力の斜面成分だけ。これは常に斜面下向き(負方向)。B が上向きに動いている間も、加速度は下向き。だから B は「上向きに動いている間も、ずっと下向きの加速度を受け続けて減速している」のが正解。
誤答パターン②: 「A は静かに置いたのだから、しばらく静止していてから動き出す」と考え、グラフの A が原点付近で水平に張り付いている選択肢を選んでしまう。
診断: 「静かに放す」の意味を「しばらく置いておく」と読んでしまっている。物理での「静かに放す」は「初速度 \(0\) で離す」という意味であって、放した瞬間から加速度 \(g \sin\theta\) で動き始める。摩擦も止め具もない斜面で「しばらく静止」は起きない。
誤答パターン③: A の傾きと B の傾きが違う選択肢を選んでしまう。
診断: 「初速が違えばグラフの傾きも違う」と思い込んでいる。グラフの傾き=加速度。A も B も同じなめらかな斜面上にあるから、受ける加速度は両方とも \(-g \sin\theta\)(負方向)で等しい。だから \(v\)-\(t\) グラフ上では、A と B の直線は必ず平行になる。違うのは「切片(初速)」だけ。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

斜面の傾斜角を \(\theta\)、斜面上向きを速度の正の向きとします。物体 A は初速 \(0\) で静かに置かれ、物体 B は初速 \(v_0\)(正の値、上向き)で打ち出される。両者にかかる力は重力の斜面成分だけ(垂直抗力は運動方向に成分がない)。重力の斜面成分は常に斜面下向き、つまり負の方向。

Step 2: どの公式を選ぶか

等加速度直線運動の式 \(v = v_0 + a t\) を A、B それぞれに当てはめます。グラフを描くだけなので、運動方程式を解いて加速度を出すところまでで十分。

Step 3: 公式の数式構造を読む

運動方程式は質量を \(m\) として、A、B どちらも \(m a = -m g \sin\theta\)、よって \(a = -g \sin\theta\)。マイナスがついているのは「斜面上向きを正と定めた」から。重力の斜面成分は下向き=負。

A について:\(v_A = 0 + \left(-g \sin\theta\right) t = -g t \sin\theta\)。原点を通り、傾き \(-g \sin\theta\) の直線。

B について:\(v_B = v_0 + \left(-g \sin\theta\right) t = v_0 – g t \sin\theta\)。切片 \(v_0\)、傾き \(-g \sin\theta\) の直線。

2 つの直線の傾きは等しい \(\left(-g \sin\theta\right)\)。切片だけが違う(A は \(0\)、B は \(v_0\))。よって \(v\)-\(t\) グラフ上では A と B は平行な直線

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 グラフの特徴を選択肢と照合する(クリックで開閉)

選ぶべきグラフの特徴を整理します。

・A(実線):原点から始まり、右下がりの直線(負の傾き)。\(t>0\) では \(v<0\)(斜面を下る向き)。
・B(破線):正の切片 \(v_0\) から始まり、右下がりの直線。傾きは A と同じ。途中で \(v=0\) を通過し(折り返し点:最高点)、その後は負の領域に入る。
・A と B は \(v\)-\(t\) グラフ上で 平行(同じ斜面なので同じ加速度)。

選択肢 ①〜④ をこの 3 条件で絞ると:

・原点から始まる右下がり直線(A)
・正の切片から始まる右下がり直線(B)
・両者の傾きが等しい(平行)

3 条件すべてを満たすのが

① では A と B の傾きが違う、③ では A が初め水平で「しばらく静止」が描かれている、④ では B の傾きが正の領域だけ違う、といった違反が見られます(実際の選択肢は手元プリントで照合してください)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

B が \(v=0\) になる瞬間(直線が時間軸を横切る点)が「B が最高点に達した瞬間」を表しています。その後 \(v<0\) になるのは「斜面を下り始めた」ことを意味する。さらにこの瞬間以降、B のグラフは A のグラフと「同じ傾きの平行な直線」のまま下りていく。これは「B は最高点を過ぎてからは、A と同じく初速ゼロで斜面を下る運動と物理的に同等」だということを表しています。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 同じ場・同じ斜面・同じ重力下では、すべての物体に同じ加速度がかかる。だから \(v\)-\(t\) グラフでは、初速がいくつであっても直線の傾きは全部同じ=平行になる。これは鉛直投げ上げでも、自由落下でも、斜面落下でも共通の構造。
波及②: 「上向きに動いている間も、下向きの加速度は働き続けている」。速度の向きと加速度の向きは独立。これを \(v\)-\(t\) グラフ上で言えば「\(v>0\) の領域でも、直線の傾きは負のまま」。投げ上げの典型問題と同じ構造。

§11. 第3問 問3 ─ 列車の前端・後端がAを通過するときの時間と長さ

等加速度で走る列車について、地点 A を「前端」「後端」が通過するときの速度から、所要時間と列車の長さを文字式で求める問題です。手元の問題冊子の第3問 問3(列車と地点A、速度 \(u\), \(v\)、加速度 \(a\))を見ながら読んでください。

§11.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答+サクッと解説)

※ 問題文と図は手元プリント参照。ここでは答えに加えて1-2行の簡易解説を示します。詳細な思考プロセスや誤答パターン診断は §11.2 のアコーディオン内に展開しています。

(1) 答え: \(\displaystyle T = \frac{v – u}{a}\): 前端通過時の速度 u から後端通過時の速度 v に変わるまでの時間。等加速度の基本式 \(v = u + aT\) を T について解くだけ。
(2) 答え: \(\displaystyle L = \frac{v^2 – u^2}{2a}\): 列車の長さ=列車がT秒間に動いた距離。「前端がAを通過してから後端がAに来るまで」列車自身が長さL分だけ進むという翻訳。等加速度公式 \(v^2 – u^2 = 2aL\) を L について解くだけ。文字式に怯まず「長さ=動いた距離」と読み替えるのがカギ。

§11.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「列車の長さ=列車が動いた距離」の翻訳を身につける

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「前端での速度 \(u\)、後端での速度 \(v\) って、何の話?」と立ち止まってしまい、別の物体が 2 つあると勘違いする。
診断: 文章を「同じ列車の2つの部位(前端と後端)が、同じ地点 A を順番に通過する」という時間差として翻訳できていない。列車は一つ、地点 A も一つ、変わるのは「列車のどの部位が A を通った瞬間か」だけ、と読み解く言葉の翻訳力が不足。
誤答パターン②: 「列車全体が A を通過するのに要した時間」とは何の時間か、を絵で描けない。
診断: 「通過するのに要した時間」を、地面側(観察者)から見ると「前端が A に到達した瞬間から、後端が A から離れた瞬間まで」。これは時間の定義の問題で、図に書いて初めて整理できる。文章だけで処理しようとすると、時刻と時間の区別がぼやける。
誤答パターン③: 「列車の長さ」を求めるのに、何かもっと別の公式(たとえば質量・密度系の式)を持ち出そうとする。
診断: 列車の長さを「等加速度の \(t\) 秒間に列車が動いた距離」と翻訳することに気づいていない。前端が A を通過してから後端が A を通過するまでの間に、列車(地面から見たとき)は列車自身の長さ分だけ進んでいる、というイメージが描けていない。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

地面に固定した地点 A を考え、その上を等加速度 \(a\) で走る列車が右に通過していくとします。

・時刻 \(t=0\):列車の前端が A の真上にきた。このとき列車の速度は \(u\)。
・時刻 \(t=T\):列車の後端が A の真上にきた。このとき列車の速度は \(v\)。

地面から見ると、この \(T\) 秒間に列車全体が距離 \(L\)(列車の長さ)だけ進んでいる。なぜなら、最初 A にあった「前端の位置」が、\(T\) 秒後には「列車の長さ \(L\) だけ右に移動した位置」になり、ちょうどその時に後端が A の真上に来ているから。

Step 2: どの公式を選ぶか

等加速度直線運動の 3 つの式から、必要なものを 2 本選びます。

・\(v = v_0 + a t\)(速度と時間の関係)
・\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)(位置と時間の関係)
・\(v^2 – v_0^2 = 2 a x\)(速度と距離の関係:時間が出てこない)

(1) では「速度の変化から時間を求める」ので 1 番目の式。(2) では「速度の変化から距離を求める」ので 3 番目の式が一発で効きます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

(1) で使う \(v = v_0 + a t\) は、「終わりの速度 \(=\) 始めの速度 \(+\) 加速度 \(\times\) 時間」。今回は「始めの速度 \(= u\)、終わりの速度 \(= v\)、加速度 \(= a\)、時間 \(= T\)」と対応させる。

(2) で使う \(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) は、「速度の 2 乗の差 \(= 2 \times\) 加速度 \(\times\) 移動距離」。これは時間 \(t\) を含まない式で、「始めと終わりの速度がわかっていて、移動距離だけ知りたいとき」に最も速い道具。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 (1)(2) を1つずつ式変形する(クリックで開閉)

【(1) 通過に要した時間 \(T\)】

始めの速度 \(u\)、終わりの速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(T\) を \(v_0 + a t\) の関係に当てはめる。

$$\begin{aligned}
v &= u + a T \\
a T &= v – u \\
T &= \displaystyle\frac{v – u}{a}
\end{aligned}$$

【(2) 列車の長さ \(L\)】

始めの速度 \(u\)、終わりの速度 \(v\)、加速度 \(a\)、移動距離 \(L\) を \(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) に当てはめる。

$$\begin{aligned}
v^2 – u^2 &= 2 a L \\
L &= \displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}
\end{aligned}$$

分数は \(\displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}\) のままで OK。因数分解して \(\displaystyle\frac{\left(v – u\right)\left(v + u\right)}{2 a}\) と書いてもよい。後者は (1) の \(T = \displaystyle\frac{v – u}{a}\) と並べて見ると、列車の長さが \(L = \displaystyle\frac{u + v}{2} \cdot T\) という形に書けることがわかる。これは「平均の速度 \(\displaystyle\frac{u + v}{2}\) と時間 \(T\) の積が距離」という、等加速度運動で常に成り立つ関係。

Step 5: 物理的妥当性チェック

・単位の確認:(1) では \(\displaystyle\frac{v – u}{a}\) の単位が \(\displaystyle\frac{\text{m}/\text{s}}{\text{m}/\text{s}^2} = \text{s}\)(秒)になっており、時間として正しい。(2) では \(\displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}\) の単位が \(\displaystyle\frac{\text{m}^2/\text{s}^2}{\text{m}/\text{s}^2} = \text{m}\)(メートル)で、長さとして正しい。
・極端ケース:もし \(a \to 0\)(加速していない=等速)なら、前端通過時の速度 \(u\) と後端通過時の速度 \(v\) は同じになるはずなので、\(v = u\) であってほしい。式 (1) で \(v = u\) を入れると \(T = 0/0\) で不定形になり、\(a\) を 0 にすると公式自体が破綻するのは正しい挙動。等速の場合は別の式(\(L = u T\))で扱う必要がある。
・直感チェック:列車が加速していて、後端通過時の方が速い(\(v > u\))と仮定すると、\(T > 0\)、\(L > 0\) が両方成り立つ。逆に減速していて \(v < u\) なら、\(a < 0\) を入れることになり、やはり \(T, L\) は正になる。式は両方向の加速度に対応している。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「物体の長さを通過する時間」「ある区間を通り抜ける時間」のような長さと時間が絡む問題は、「ある部位が点 A を通る瞬間」と「別の部位が点 A を通る瞬間」を別の時刻として設定し、その間に物体が動いた距離が「長さ」に対応する、と翻訳すれば等加速度の 3 式で解ける。
波及②: 等加速度の 3 式のうち、「時間を含まない式」\(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) は、時間に興味がないときに最短の道具。問題文を読んだ瞬間に「何が問われていて、何が問われていないか」を区別して、適切な式を選ぶ習慣をつけたい。
波及③: 文字式問題は「文字のまま物理を読む訓練」。数値が出てこないので、計算ミスを心配する必要がない代わりに、式の各文字が「現象のどこを表しているか」を最後まで意識し続ける必要がある。\(\displaystyle\frac{v – u}{a}\) を見たら「速度差 ÷ 加速度 = 時間」と即座に翻訳できるようにする。

§12. テスト全体の振り返り ─ 5大「思考のクセ」処方箋

ここまで全11ブロック・44設問の解説を読んでくれたあなたは、もう気づいているはずです。このテストで現れた「思考のクセ」は、実は5つに集約できるということに。

個別の設問を一つずつ覚えようとしても、次のテストでは設定が変わるので意味がありません。それより、「自分はどの思考のクセで間違えるか」を5パターンの中から特定する方が、何倍も効きます。次のテストで同じ罠にハマらないための処方箋を、5つにまとめます。

§12.1 クセ①: 公式に飛びつくクセ(最頻発・全範囲共通)

症状: 問題を見た瞬間、頭の中で「v=v₀+at」「x=v₀t+½at²」「v²−v₀²=2ax」のどれかを探し始める。
典型的な現れ: 第1問 問4(等加速度運動)、第2問 問1(\(v\)-\(t\) グラフ穴埋め)、第3問 問3(列車の前後端)
診断: 「現象を頭の中で動かす」より先に「公式を当てはめる」が習慣化している。
処方箋: 公式を書く前に、必ず「現象を絵にする → 座標軸を書く → 何が分かっていて何を求めるかを言葉で書く」の3ステップを紙の上で実行する。これに30秒かけても、結果として速く正確に解ける。

§12.2 クセ②: 向きを後回しにするクセ(相対速度・等加速度で頻発)

症状: 速さ(大きさ)だけ計算して、向き(符号)を後付けで決める。
典型的な現れ: 第1問 問3 ③(A西向き × B東向き → 単純引き算で済ませる)、問4 ⑥(右向き初速度 × 左向き加速度の混合)、第3問 問2(\(v\)-\(t\) グラフの正負方向)
診断: 「速度」と「速さ」を日常語感覚で混同している。物理での速度は大きさと向きをセットで持つ量であることが体になじんでいない。
処方箋: 問題を読んだら真っ先に座標軸(右向きを正、上向きを正など)を紙に書く。すべての速度・加速度を符号付きで書き出す。「向き」を聞かれていなくても、答えの符号で向きを確認するクセをつける。

§12.3 クセ③: 「誰から見た」を忘れるクセ(相対速度・川舟・運動図で頻発)

症状: 「誰から見た速度か」「どの基準で測っているか」を確認しないまま計算を始める。
典型的な現れ: 第1問 問3(電車内/地面/車Aから見たBなど視点が毎問変わる)、問5(川舟の鴨問題=船視点→岸視点→静水基準の3段切替)、第2問 問3(\(v\)-\(t\) グラフの「正の向き」と「物体の進行方向」の独立性)
診断: 「速度は絶対的に決まる量」と無意識に思い込んでいる。実際の速度はすべて「誰から見た」が前提であることが意識化されていない。
処方箋: 問題に出てくるすべての速度に「誰から見た」を明示的に書き出す。例えば「v(地→人)=東向き\(3.5 \, \text{m}/\text{s}\)」「v(電→人)=西向き\(1.5 \, \text{m}/\text{s}\)」のように、矢印付きの記法で誰基準かを必ず明記する。

§12.4 クセ④: グラフの面積と傾きがつながらないクセ(v-t/x-t/a-tで頻発)

症状: 「\(v\)-\(t\) グラフの面積=変位」「\(v\)-\(t\) グラフの傾き=加速度」「\(x\)-\(t\) グラフの傾き=速度」を別々の公式として暗記している。
典型的な現れ: 第2問 問1(v-tと x-tの相互変換)、問2(連続写真→\(a\)-\(t\) グラフ)、問3(\(v\)-\(t\) グラフ→運動図)、第3問 問2(A静止+B上向きのv-t選択)
診断: グラフの「縦軸・横軸・面積・傾き」が一つの体系として接続しておらず、グラフごとにバラバラの暗記項目になっている。
処方箋: 紙に縦に3つ並べてv-t、x-t、\(a\)-\(t\) グラフを描き、「面積を取ると上に上がる」「傾きを取ると下に下がる」の階段関係を体で覚える。a-t→v-t→x-tは積分(面積)方向、x-t→v-t→a-tは微分(傾き)方向。具体的な問題で同じ運動を3つのグラフで描き直す訓練を週1回やる。

§12.5 クセ⑤: 文字で答える問題に手が止まるクセ(記述問題・列車問題で頻発)

症状: 問題文に数値が出てこないと「これは難しい問題だ」と感じて手が止まる。
典型的な現れ: 第3問 問3(列車の前後端通過・答えが文字式 \(\displaystyle\frac{v-u}{a}\), \(\displaystyle\frac{v^2-u^2}{2a}\))、第3問 問1(速さの大小関係を文字で)
診断: 「物理=数値計算」というイメージが固定化している。文字式は数値が決まる前の物理の本質構造であるという認識が弱い。
処方箋: 数値問題を解いた後に、必ず「これを文字式で書くとどうなるか」を1分だけ考える。例えば問4⑤を解いたら「もし初速度を \(v_0\)、加速度を \(a\)、変位を \(x\) としたら、時刻 \(t\) はどう書ける?」と自問する。文字式は数値問題の親であって、子ではない。

§12.6 自分のクセを1つに絞ろう

5つすべてに当てはまる人はいません。自分が一番痛いところはどれかを1つだけ選んでください。複数選ぶと意識が分散して結局どれも改善しません。

1つに絞れたら、次のテストまでの間、毎日の問題演習でそのクセが出ていないかだけをチェックする。これが最短の改善ルートです。物理は少しずつ全範囲を上げる科目ではなく、思考のクセを一つずつ書き換える科目です。

§13. このテストの得点分布・出題傾向分析

この記事を読んでくれているあなたは、自分の答案だけを見ているはずです。でも、他の人がどこでつまずいたかを知ると、自分のクセが本当に「あるある」なのか、それとも「自分だけ」のクセなのかが見えてきます。

4学年233人全員の採点結果から、このテストの傾向を分析しました。

§13.1 全体統計

項目 数値
受験者数 233人
満点 100点
平均点 58.8点
最高点 94点
最低点 23点

§13.2 得点分布(4学年全体)

下の表で、自分の点数がどのあたりに位置するか確認してみてください。

得点帯 人数 割合 分布
91〜100点 2人 0.9%
81〜90点 17人 7.3% ▌▌▌▌▌▌▌
71〜80点 36人 15.5% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
61〜70点 47人 20.2% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
51〜60点(最頻層) 62人 26.6% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
41〜50点 44人 18.9% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
31〜40点 16人 6.9% ▌▌▌▌▌▌▌
21〜30点 9人 3.9% ▌▌▌▌

もっとも多いゾーンは 51〜60点(26.6%)。70点を超えると上位約23%、80点を超えると上位約8%、90点を超えると上位1%以内です。

§13.3 大問別の得点率

このテストの「重さ」は大問ごとに大きく違いました。

大問 配点 全体得点率 難易度
第1問(計算基本) 68点 57.7% 🟡 中
第2問(グラフ) 24点 75.3% 🟢 取りやすい
第3問(記述・斜面・列車) 8点 18.6% 🔴 極端に低い

第3問の得点率18.6%は、配点8点に対して平均1.5点しか取れていない計算です。これは「分からなくて手が止まった」「文字式を見て諦めた」層が圧倒的に多かったことを意味します。

§13.4 つまずきが集中した設問ワースト5

正答率の低かった設問を順に並べると、共通する「思考のクセ」が浮かび上がります。

順位 設問 正答率 つまずきの正体
1位 第3問 問1(斜面3パターン速さ比較) 6.9% エネルギー保存の発想に飛べない/文字で答える問題に手が止まる
2位 第3問 問3(2)(列車の長さ) 10.9% 文字で答える問題に手が止まる/「列車の長さ=動いた距離」が見抜けない
3位 第3問 問2(斜面A静止+B上向きの\(v\)-\(t\) グラフ) 21.9% 速度の向きと加速度の向きの独立性が見えない
4位 第2問 問3(\(v\)-\(t\) グラフから運動図並べ替え) 24.2% グラフの正負と動く向きの対応・グラフの面積と傾きがつながらない
5位 第1問 問2 ④(499874 → 有効数字2桁) 26.2% 四捨五入で繰り上がり \(\to\) 5.0×10⁵ の処理ミス
気づき: ワースト1〜4はすべて第2問・第3問の概念理解問題です。第1問の計算問題は配点が大きいわりに取れていますが、概念を問う問題で点数が落ちる構造になっています。これは §12 で診断した クセ①「公式に飛びつく」+ クセ④「グラフの面積と傾きがつながらない」+ クセ⑤「文字で答える問題に手が止まる」がデータでも裏付けされたということです。

§13.5 取れていた設問ベスト5

逆に、多くの人が取れた設問です。これらは「物理基礎の最低限の理解」が定着している証拠なので、できなかった人は最優先で復習してください。

順位 設問 正答率
1位 第1問 問3 ④向き(東向き) 97.4%
2位 第1問 問4 ①向き(左向き) 96.6%
3位 第1問 問3 ②向き(東向き) 95.7%
4位 第1問 問5 ①向き(川下の向き) 94.0%
5位 第1問 問3 ①大きさ(\(3.5 \, \text{m}/\text{s}\)) 91.3%
気づき: 上位5問のうち4問が「向き」の答えです。問題文に「東向きに〜」「左向きに〜」と書かれていれば、それをそのまま答えに書けばよい。みんなが取れる「向き」を落とした人は、設問読解の段階で雑になっている可能性があります。

§13.6 興味深い対比 ─「向き」は取れて「大きさ」を落とす

第1問 問4 を見ると、こんな対比があります。

設問 向きの正答率 大きさの正答率
問4 ①(左向き加速) 96.6% 87.3% −9.3%
問4 ③(西向き等加速度) 57.1% 27.2% −29.9%
問4 ⑥(左向き減速 \(\to\) 折り返し) 68.2% 41.0% −27.2%

「向き」より「大きさ」の正答率が大きく落ちる設問では、計算自体でつまずいていることを示しています。特に問4③(西向きに10m/sで等加速度、10秒で60m進む、加速度の大きさは?)では 30%近い差 が出ています。

これは クセ①「公式に飛びつく」 の典型的な現れ方。問題を読んで「v=v₀+at」を試そうとして、時間と距離しか与えられていないことに気づかず公式を選び間違える。あるいは正しい公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を選んでも、移項計算で詰まる、という流れです。

§13.7 次のテストへの重点復習項目

このデータをもとに、次の期末考査までの優先復習リストを作りました。

🥇 最優先(正答率 30%以下)
・斜面の運動とエネルギー(第3問 問1の発想)
・列車のような「文字式で答える等加速度問題」(第3問 問3)
・斜面上の\(v\)-\(t\) グラフ読み取り(第3問 問2)
・運動図と\(v\)-\(t\) グラフの対応(第2問 問3)
・有効数字の繰り上がり処理(第1問 問2④)
・等加速度公式3本の使い分け(第1問 問4②③)🥈 中優先(正答率 30〜60%)
・川舟の鴨問題型の3段視点切替(第1問 問5⑤)
・\(v\)-\(t\) グラフの「戻り変位」の理解(第2問 問1⑥)
・有効数字の科学的記数法(第1問 問2 全般)🥉 維持(正答率 60%以上)
・基本的な相対速度(第1問 問3)
・\(v\)-\(t\) グラフからの値読み取り(第2問 問1 ①②③)
・川舟の岸視点速度(第1問 問5①)

大事なのは、「最優先」のリストにある項目を完璧にしてから「中優先」に進むこと。全部を平均的に上げようとすると、結局どれも中途半端になります。苦手なところに集中投下するのが、限られた時間で点数を最大化する道です。

§13.8 このデータから言えるたった1つのこと

233人の結果を見て、はっきり言えることがあります。

このテストの得点差は「計算ができるかどうか」ではなく、「概念を絵で描けるかどうか」で決まっている。

第1問の計算問題(68点分)の得点率は57.7%。第3問の概念問題(8点分)の得点率は18.6%。
ふつう「概念問題は配点が少ないから後回し」と考える人が多いのですが、データは逆を示しています。配点が少ない第3問こそ、上位層と下位層の差が出る分水嶺になっていたのです。

次のテストでも、必ず「概念を絵で描く力」を問う設問が混ざります。そのとき、§12 で診断した5大「思考のクセ」のどれを書き換えておけたか、が結果を決めます。

§14. 次のステップ

この記事を最後まで読んでくれたあなたへ。物理基礎の最初の中間考査、お疲れさまでした。テストは「終わったらおしまい」ではなく、「終わってからが本番」です。ここで「思考のクセ」を一つでも書き換えておけば、期末・夏休み明けの試験で必ず差が出ます。

§14.1 復習の手順

この記事を読んだ直後にやってほしいことを3つだけ挙げます。

① 自分の「思考のクセ」を1つ紙に書く
§12 の5大処方箋(公式に飛びつく / 向きを後回し / 視点切替 / グラフ二重関係 / 文字で答える問題に手が止まる)のうち、自分に一番当てはまるものを1つだけ選んで、紙に書いてください。複数選ばないこと。一番痛いところに集中するのがコツです。
② 次のテスト範囲を見て「同じクセが出そうな問題」を予測する
期末考査の範囲表を見て、自分のクセが顔を出しそうな単元を予測してください。等加速度なら自由落下・鉛直投げ上げ、相対速度なら2次元の相対速度(高1の範囲外なら高2で)、グラフなら力学全般。「予測する」ことで、テスト中に自分のクセに気づきやすくなります
③ 間違えた問題だけを、1週間後にもう一度解く
全部解き直すのではなく、間違えた問題だけを1週間後にもう一度。このとき、必ず白紙の状態から解いてください。模範解答を見ずに、自分の頭で「現象を絵にする → 公式を選ぶ → 代入 → 検算」の4ステップをやり直す。これが一番効きます。

§14.2 もっと深く学びたい人へ

「物理の解説をもっと色んな問題で読みたい」「自分の弱点を診断したい」という人には、まことの高校物理教室サイト内の以下のページが役立ちます。すべて無料です。

ページ こんな人におすすめ
ドクター・メソッド・シリーズ Hub 「思考のクセを書き換える」勉強法を体系的に学びたい人。全18記事
物理カルテ診断 自分の物理の「症状」を診断したい人。Dr.まことの簡易カルテ
YouTube 解説動画一覧 活字より動画で見たい人。本サイトのYouTube関連記事
指導哲学・プロフィール 「なぜ暗記物理を排するのか」という背景哲学を知りたい人

§14.3 最後に

物理基礎の最初の中間考査は、「物理がこれから得意になるか苦手になるか」の分岐点です。点数が良かった人も悪かった人も、ここで「思考のクセ」を書き換えておけば、次のテストでさらに伸びます。逆に、点数だけ見て「次は頑張ろう」で終わらせると、同じクセで同じ罠にハマります。

君のテストで間違えた1問が、3か月後の君を作ります。その1問を、今日ちゃんと書き換えてください

まこと先生

§0. はじめに ─ この記事の使い方

令和8年5月19日(火)に実施された1学期中間考査・物理基礎の解説記事です。全11ブロック・44設問すべてに「思考のクセ診断つき」のフル解説をつけました。

この記事は、君がテストでつけた答えと模範解答を見比べる「答え合わせ」のためのものではありません。君がどんな思考のクセで間違えたのかを診断し、次のテストで同じ罠にハマらないようにするための処方箋です。

§0.1 読み方

各問題の解説は、次の2層構造になっています。

Layer 1(端的解答): 答えと、答えに至る最短の式・代入だけを示します。「とにかく答えを確認したい」「時間がない」人はここだけ読めばOKです。

Layer 2(💡 もっと深く理解したい人へ): 折りたたみ式の「思考のクセ診断+正しい思考プロセス5ステップ+一般化」。こちらが本体です。クリックして開いてください。

「Layer 1だけで答えが分かったから読み飛ばす」のではなく、正解した問題こそ Layer 2 を読むことを推奨します。正解=理解、ではないからです。たまたま当たった、覚えていた、ヤマが当たった、というケースはこの先のテストで必ず崩壊します。

§0.2 手元の問題冊子を必ず開いておいてください

著作権上、この記事には問題文そのものは載せていません。手元の問題冊子(5/19実施の試験問題)と模範解答を見ながら、この記事を読み進めてください。

📋 用意するもの
① 5/19実施の問題冊子(試験後に持ち帰った冊子)
② 模範解答(先生から配布された解答用紙の解答)
③ 自分が試験で書いた解答(覚えている範囲で再現したメモでも可)

§0.3 自分の「思考のクセ」を診断するために

各問題の Layer 2 には「誤答パターン①②③+診断」というブロックが入っています。自分の答えが模範解答と違っていた場合、まずどの誤答パターンに当てはまるかを探してください

そして、見つけた「思考のクセ」を、次の問題に進むときに声に出して言ってみてください。例えば次のような調子です。

「私は『公式を覚えて当てはめる』を最初にやってしまう。これからは『現象を絵にする』を最初にやる」
「私は『向き』を符号で考えるのを後回しにする。これからは座標軸を最初に書く」
「私は『どっちから見た速度か』をあいまいにする。これからは視点を毎回書き出す」

このように「自分のクセ+これからどうするか」をセットで言語化すると、次のテストで同じ罠にハマる確率が劇的に下がります。物理は暗記の科目ではなく、思考のクセを書き換える科目です。

§0.4 各問題の重さ

このテストは全11ブロック・44設問あり、それぞれ思考の負荷が違います。下の表で全体の地図を把握しておくと、どこに時間をかけるべきかが分かります。

場所 内容 設問数 思考の重さ
第1問 問1 有効数字 桁数判定 4 🟢 軽
第1問 問2 有効数字 2桁表記 6 🟢 軽
第1問 問3 相対速度 4 🟡 中
第1問 問4 等加速度運動 6 🟠 やや重
第1問 問5 川舟(相対速度+等速) 5 🔴 重
第2問 問1 v-t / \(x\)-\(t\) グラフ穴埋め 9 🔴 重
第2問 問2 連続写真から \(a\)-\(t\) グラフ 1 🟡 中
第2問 問3 \(v\)-\(t\) グラフから運動図並べ替え 1 🔴 重
第3問 問1 斜面3パターン 速さの大小 1 🔴 重
第3問 問2 斜面 A静止 + B上向き打出 1 🔴 重
第3問 問3 列車の前後端 通過 2 🔴 重

🔴 重 の問題ほど Layer 2 の診断が効きます。時間がない人は 🔴 から先に Layer 2 を読むのがおすすめです。

それでは、第1問から始めましょう。

§1. 第1問 問1 ─ 有効数字の桁数

有効数字は「測定したときに本当に意味のある数字」のことです。手元の問題冊子の第1問 問1を見ながら読んでください。ここで桁数を数え間違える人は、後の問2以降の表記問題と問3・問4の最終答にも同じクセが出ます。

§1.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えを対応で示します。

① 0.00345 → 3ケタ
② 16600 → 5ケタ
③ 0.00090 → 2ケタ
④ 0.047×10²⁵ → 2ケタ

§1.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 0は「位取り役」か「測定結果」か

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

有効数字の桁数を「とにかく0以外の数を数える」「いや、書いてある数字を全部数える」と機械的に処理しようとすると、必ずどこかでつまずきます。0には2種類あり、その見分けが本問のすべてです。

誤答パターン①: ①を「0.00345 は 6 ケタ」と答える。
診断: 「とりあえず書いてある数字を全部数える」クセ。0.00345 の前にある 0 は、3 という数字を「小数第3位の場所」に置くための位取り役で、測定結果ではありません。「ここで止めたぞ」という意味を持つ 0 だけが有効数字に入ります。
誤答パターン②: ②16600 を「3 ケタ」と答える。
診断: 「末尾の 0 は位取り」と覚えてしまったクセ。確かに「末尾の 0 は曖昧」というルールはありますが、本問では問題文の指示や前後文脈から「16600 という測定値そのもの」を扱うため、5 ケタとして読みます。判断に迷ったときは \(1.6600 \times 10^4\) と書き直してみると 5 ケタとはっきり見えます。
誤答パターン③: ③0.00090 を「1 ケタ」と答える。
診断: 「最後の 0 は意味がない」と感覚で切り捨てるクセ。0.00090 の末尾 0 は「ここまで測りました、次の位は 0 でした」と主張する 0 です。書いた人がわざわざ 0 を残したということは「測定の結果として 0 だった」ことを伝えており、9 と末尾 0 の 2 ケタが有効数字になります。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

数を「ものさしの目盛り」に置き換えて想像します。0.00345 なら「目盛りの一番細かいところで、3・4・5 まで読めた」という記録です。前にある 0 は「ものさしの位置を合わせるための隙間」でしかありません。

Step 2: どの規則を選ぶか

有効数字の判定規則は次の 3 本です:
(規則 A)0 以外の数字は必ず有効。
(規則 B)数の前にある 0(先頭ゼロ)は位取り役なので有効ではない。
(規則 C)数の後ろにある 0(末尾ゼロ)は、小数点があれば有効、なければ曖昧で文脈判断。

Step 3: 規則の意味を読む

規則 B は「小さい数を表すために 0 を並べただけ」という意味です。\(0.00345 = 3.45 \times 10^{-3}\) と書き換えれば、前の 0 が消えて 3.45 だけが残り、3 ケタと一目で分かります。規則 C は「わざわざ 0 を書いた=測った結果」と解釈する規則です。

Step 4: 実際に当てはめて確かめる

📖 4 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 0.00345 → 先頭の 0, 0, 0 は規則 B より無視。残るのは 3, 4, 5 の 3 ケタ。書き換えると \(3.45 \times 10^{-3}\)。

② 16600 → 1, 6, 6, 0, 0 を全て有効と読む。書き換えると \(1.6600 \times 10^4\) で 5 ケタ。本問では問題文の流れから「整数 16600 という測定値」とみなします。

③ 0.00090 → 先頭 0, 0, 0 は規則 B で無視。残る 9 と末尾の 0 は規則 C(小数点あり)で有効。書き換えると \(9.0 \times 10^{-4}\) で 2 ケタ。

④ 0.047×10²⁵ → 後ろの \(10^{25}\) は位を動かしているだけで桁数には関係しません。前の 0.047 だけ見ます。先頭 0, 0 は規則 B で無視、残る 4 と 7 で 2 ケタ。書き換えると \(4.7 \times 10^{23}\)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

有効数字を確かめる最終手段は「\(a.bc \times 10^n\) の形(科学的記数法)に直すこと」です。この形にすると、前にある係数の数字をそのまま数えるだけで桁数が確定します。0.00345 → \(3.45 \times 10^{-3}\)、0.00090 → \(9.0 \times 10^{-4}\)。先頭 0 が自動的に消え、末尾 0 だけが係数として残るので、迷いが消えます。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

有効数字の桁数判定は、問2 の表記問題と問3・問4 の最終答の桁合わせに直結します。

波及①: 問2 で「有効数字 2 桁で答えよ」と言われたら、科学的記数法 \(a.b \times 10^n\) に揃えるのが最短手順。問1 の Step 5 がそのまま使えます。
波及②: 問3・問4 で計算した数値(例 3.5、6.0、0.80 など)の末尾 0 を消してはいけません。書いた 0 は「ここまで意味のある値」という宣言で、消すと評価が下がります。

§2. 第1問 問2 ─ 有効数字2桁表記

問1 で桁数を数えられるようになった人が、次に出会うのが「有効数字 2 桁で書き直しなさい」という指示です。手元の問題冊子の第1問 問2を見ながら読んでください。書き方の形式(科学的記数法)に揺れがあると、合っているのに減点されるので注意が必要です。

§2.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えを対応で示します。

① 300 → \(3.0 \times 10^2\)
② 5 → 5.0
③ 0.6942 → \(6.9 \times 10^{-1}\)
④ 499874 → \(5.0 \times 10^5\)
⑤ 0.04737×10²⁵ → \(4.7 \times 10^{23}\)
⑥ 96048×10⁻¹⁹ → \(9.6 \times 10^{-15}\)

§2.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「位の感覚」と「四捨五入の場所」

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

「2 桁にする」を「数字を 2 個書く」と短絡的に覚えると、必ず ② や ④ や ⑥ で間違えます。本当に必要なのは「元の数の大きさを変えずに、有効数字だけを 2 つに削る」という思考です。

誤答パターン①: ① 300 を「3.0」と書く。
診断: 桁数だけ見て、大きさ(位)を捨ててしまうクセ。300 と 3.0 では値が 100 倍違います。「2 桁にする」とは「数字を 2 つにする」ことであり、「数の大きさを変える」ことではありません。位を保つために \(\times 10^2\) を必ず付けます。
誤答パターン②: ② 5 を「5」とだけ書く。
診断: 「2 桁とは数字を 2 個」という形式を破ったクセ。5 のままでは「1 桁の有効数字」と受け取られかねません。2 桁を明示するために 5.0 と書きます。末尾の 0 が「ここまで意味があります」という宣言になります。
誤答パターン③: ④ 499874 を「\(4.9 \times 10^5\)」と書く。
診断: 「四捨五入は左から 3 番目を見る」という規則を、左から 3 番目の「9」だけで判断して切り捨てたクセ。実際には 49 の次が 9 なので、繰り上がりが起きて 50 になり、答えは \(5.0 \times 10^5\) です。繰り上がりを忘れる典型例。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

数直線をイメージし、元の数がどこにあるかを確かめます。499874 なら \(5 \times 10^5 = 500000\) のすぐ手前。0.6942 なら \(7 \times 10^{-1} = 0.7\) のすぐ手前。最終的な答えがこの「目印」のどちら側に来るかを先に予想します。

Step 2: どの形式を選ぶか

形式は「科学的記数法 \(a.b \times 10^n\)」で統一します(\(1 \le a < 10\)、つまり整数部は 1 桁)。例外として、② 5 のように「位が 0 のとき」だけは \(5.0 \times 10^0\) でも \(5.0\) でも構いません。学校の慣習では \(5.0\) と書くのが普通です。

Step 3: 形式の意味を読む

\(a.b \times 10^n\) の \(a.b\) が「有効数字」、\(\times 10^n\) が「位」を表します。位と有効数字を分離して書くから、桁を削っても大きさが保たれるのです。これが科学的記数法の最大の利点。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 6 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 300 → \(3.00 \times 10^2\)。これを 2 桁に削るので 3 桁目(左から 3 つ目の 0)を四捨五入。0 のままなので繰り上がりなし。答えは \(3.0 \times 10^2\)。

② 5 → \(5.000 \times 10^0\)。2 桁に削るので 3 桁目を四捨五入。0 なのでそのまま。答えは \(5.0\)(または \(5.0 \times 10^0\))。

③ 0.6942 → \(6.942 \times 10^{-1}\)。3 桁目の 4 を四捨五入で切り捨て。答えは \(6.9 \times 10^{-1}\)。

④ 499874 → \(4.99874 \times 10^5\)。3 桁目の 9 を四捨五入。9 は 5 以上なので繰り上がり。すると 4.9 が 5.0 に繰り上がり、答えは \(5.0 \times 10^5\)。

⑤ 0.04737×10²⁵ → まず 0.04737 を \(4.737 \times 10^{-2}\) に直して全体は \(4.737 \times 10^{-2} \times 10^{25} = 4.737 \times 10^{23}\)。3 桁目の 3 を四捨五入で切り捨て。答えは \(4.7 \times 10^{23}\)。

⑥ 96048×10⁻¹⁹ → まず 96048 を \(9.6048 \times 10^4\) に直して全体は \(9.6048 \times 10^4 \times 10^{-19} = 9.6048 \times 10^{-15}\)。3 桁目の 0 を四捨五入で切り捨て。答えは \(9.6 \times 10^{-15}\)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

書いた答えを元の数と比べ、桁が同じか確かめます。④で「\(5.0 \times 10^5 = 500000\)」、元は 499874。差は \(126\) で、元の数の \(0.025\%\)。十分近いので合っています。⑥で「\(9.6 \times 10^{-15} = 0.0000000000000096\)」、元は \(96048 \times 10^{-19} = 0.0000000000000096048\)。やはり近い。位が合っていれば、ほぼ問題なし。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

有効数字 2 桁の表記は、問3・問4 の計算結果を書くときに毎回使います。形式を間違えると、せっかく数値を出しても満点が取れません。

波及①: 問3 ④で「8.0」、問4 ⑤で「1.0」など、末尾 0 を必ず書くこと。8 や 1 だけでは 1 桁とみなされます。
波及②: 大きい数(地球から太陽まで \(1.5 \times 10^{11}\) m など)や小さい数(電子の電荷 \(1.6 \times 10^{-19}\) C など)を扱う物理では、科学的記数法こそが基本形式です。日常の感覚で 1500000000000 と書くのは、本問の流れを忘れているシグナル。

§3. 第1問 問3 ─ 相対速度

相対速度は「誰から見た速度か」を切り替える練習です。手元の問題冊子の第1問 問3を見ながら読んでください。式は単純な引き算ですが、「向き」を符号でちゃんと扱えるかが分かれ目になります。

§3.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えを対応で示します。

① 東向き \(3.5 \, \text{m}/\text{s}\)
② 東向き \(1.8 \, \text{m}/\text{s}\)
③ 西向き \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\)
④ 東向き \(8.0 \, \text{m}/\text{s}\)

§3.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「A に対する B」の意味を式で押さえる

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

相対速度を「公式は \(v_{\text{AB}} = v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\)」と丸暗記すると、「A と B、どっちを引く側か」を毎回迷います。本当に必要なのは、なぜそういう引き算になるのかを「自分が動きながら見るとどう見えるか」で理解することです。

誤答パターン①: ①で「東向き \(5.0 + 1.5 = 6.5 \, \text{m}/\text{s}\)」と答える。
診断: 「電車内で歩いている」という言葉を見て、足し算してしまうクセ。実は「電車の進行方向と逆向きに歩く」と書いてあるため、人の電車内速度は西向き \(1.5 \, \text{m}/\text{s}\)。東向きを正とすると、電車 \(+5.0\)、人の電車内速度 \(-1.5\)、合わせて \(+3.5\)。向きの正負を取り違えると、ここで一発で死にます。
誤答パターン②: ③で「東向き \(0 \, \text{m}/\text{s}\)」(A と B の速さが同じだから打ち消し合う)と答える。
診断: 「速さ(数値)」と「速度(向き付き)」を区別していないクセ。A は東向き \(+3.0\)、B は西向き \(-3.0\)。「A に対する B の相対速度」は \(v_{\text{B}} – v_{\text{A}} = (-3.0) – (+3.0) = -6.0\)。マイナスは西向きを意味するので、答えは「西向き \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\)」。
誤答パターン③: ④で「東向き \(2.0 \, \text{m}/\text{s}\)」(\(5.0 – 3.0 = 2.0\))と答える。
診断: 「相対速度の式」を丸暗記して、引く向きを逆に使ったクセ。「A に対する B」の式は \(v_{\text{B}} – v_{\text{A}}\) であり、地面から見た B(求めたい量)= A から見た B(与えられた 5.0)+ 地面から見た A(与えられた 3.0)= 8.0。逆を覚えると、毎回引き算と足し算がひっくり返ります。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

東を正、西を負と決めます。問題の登場人物(電車・人・自動車)の地面に対する速度を、矢印で図にします。「電車内で歩く人」のように二段構えのときは、いったん人の電車内速度を地面換算するのがコツです。

Step 2: どの式を選ぶか

使う式は 1 本だけ:

$$\begin{aligned}
v_{\text{AB}} &= v_{\text{B}} – v_{\text{A}}
\end{aligned}$$

これは「A から見た B の速度」を表します。「\(v_{\text{AB}}\)」と読まれる文字列の右側にある \(v_{\text{B}}\) が前、左側にある \(v_{\text{A}}\) が後に引かれる、と覚えると順序を間違えません。

Step 3: 式の数式構造を読む

なぜ引き算かというと、「自分が動いていれば、止まっているものが自分の動きの逆向きに見える」からです。たとえば自分が東向き \(3.0\) m/s で進めば、地面の電柱は西向き \(3.0\) m/s で流れていくように見える。これを式にすると \(v_{\text{自分から見た電柱}} = 0 – 3.0 = -3.0\)(西向き 3.0 m/s)。引き算は「自分の動きの分を差し引く」操作なのです。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 4 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 東を正とする。電車は \(+5.0\)、人は電車内で「進行方向と逆向きに \(1.5\)」だから電車内速度は \(-1.5\)。地面から見た人の速度は

$$\begin{aligned}
v_{\text{人}} &= v_{\text{電車}} + v_{\text{電車から見た人}} \\
v_{\text{人}} &= (+5.0) + (-1.5) \\
v_{\text{人}} &= +3.5 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので東向き 3.5 m/s。

② 東を正とする。地面から見た人 \(+9.7\)、地面から見た電車 \(+7.9\)。電車から見た人は

$$\begin{aligned}
v_{\text{電車から見た人}} &= v_{\text{人}} – v_{\text{電車}} \\
&= (+9.7) – (+7.9) \\
&= +1.8 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので東向き 1.8 m/s。

③ 東を正とする。A は \(+3.0\)、B は \(-3.0\)。A から見た B は

$$\begin{aligned}
v_{\text{AB}} &= v_{\text{B}} – v_{\text{A}} \\
&= (-3.0) – (+3.0) \\
&= -6.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

負なので西向き 6.0 m/s。

④ 東を正とする。A は \(+3.0\)、A から見た B は \(+5.0\)。地面から見た B は

$$\begin{aligned}
v_{\text{B}} &= v_{\text{A}} + v_{\text{AB}} \\
&= (+3.0) + (+5.0) \\
&= +8.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので東向き 8.0 m/s。

Step 5: 物理的妥当性チェック

答えが出たら「向き」を直感で確かめます。①は電車に乗って逆向きに歩いている人。地面から見ると、電車の速さよりは遅いはず。\(5.0\) より小さい \(3.5\) なので妥当。③は東向きの A から見ると、西向きに進んでいる B はもっと速く西へ離れていくはず。確かに \(6.0\) と \(3.0\) より速い、妥当。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

「向きを正負で扱う」という発想は、問4 の等加速度運動でも全く同じように出てきます。

波及①: 問4 ③で「西向きに進みながら東向きに加速」、⑥で「右向き初速度なのに左向き加速度」というような正負の混在問題が出ます。問3 で「東を正」と決めたのと同様に、問4 でも「右を正」「斜面上向きを正」とまず決めるのが鉄則。
波及②: 「A に対する B」「B に対する A」の入れ替えは、符号を反転するだけ。\(v_{\text{AB}} = -v_{\text{BA}}\)。これは速度に限らず、変位・加速度すべての相対量で同じ性質。

§4. 第1問 問4 ─ 等加速度運動

等加速度運動は「速度が一定の割合で変わる運動」のことです。手元の問題冊子の第1問 問4を見ながら読んでください。公式は 3 本だけですが、「どの場面でどの公式を使うか」を選ぶ判断が問われます。

§4.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文は手元プリント参照。ここでは問題番号と答えを対応で示します。

① 左向き \(2.8 \, \text{m}/\text{s}^2\)
② \(18 \, \text{m}/\text{s}\)
③ 東向き \(0.80 \, \text{m}/\text{s}^2\)
④ 斜面上向き \(36 \, \text{m}\)
⑤ \(1.0 \, \text{s}\) 後
⑥ 左向き \(5.0 \, \text{m}/\text{s}\)

§4.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 公式 3 本の「選び方」を身につける

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

等加速度運動の公式は次の 3 本です:

$$\begin{aligned}
v &= v_0 + at \\
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
v^2 – v_0^2 &= 2 a x
\end{aligned}$$

多くの人は「とりあえず一番上の式から代入」「とにかく 3 本全部書いて連立」と進めます。本当に必要なのは「何が与えられて、何が問われているか」で公式を選ぶ判断力です。

誤答パターン①: ①で「左向き \(\displaystyle\frac{28 – 14}{5.0} = 2.8\) m/s² だから、左向き \(2.8 \, \text{m}/\text{s}^2\)」と「向きを考えずに数値だけ出す」。
診断: 数字は合っていても、向きの根拠を言語化していないクセ。「左向きの速度が大きくなった」→「速さが左へ増えた」→「加速度は左向き」という論理が頭に入っていないと、⑥のように向きが反転する問題で詰みます。
誤答パターン②: ②で「\(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) を使う」と考えて、変位 \(x\) が分からず手が止まる。
診断: 「打ち出した場所に戻る」の意味を読み取れないクセ。「打ち出した場所に戻る」=「6 秒間の変位がゼロ」を意味します。変位 \(x = 0\) を使うなら 2 本目の公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が最適。3 本目を選んだ瞬間、無駄に難しくなります。
誤答パターン③: ⑤で「\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を解いて \(t = 1.0\) または \(t = -3.5\)」と出して、「2 つ出たから両方答え」と書く。
診断: 二次方程式の解を物理的に吟味しないクセ。\(t\) は時間なので必ず \(t \ge 0\)。負の値は「\(3.5\) 秒前」を意味し、本問の状況では棄却します。式を解く=答えが出るではなく、「物理的に意味があるか」まで確かめてはじめて答え。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

各問で「向きの正」を決めて、初速度・加速度・変位を矢印で書きます。①なら左を正、③なら西を正、⑥なら右を正、というように毎回明示します。

Step 2: どの公式を選ぶか

選び方の判断表:
(A)時間 \(t\) が与えられ、速度 \(v\) が問われる → 1 本目 \(v = v_0 + at\)。
(B)時間 \(t\) が与えられ、変位 \(x\) が問われる → 2 本目 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)。
(C)時間 \(t\) が出てこない(速度と変位の関係) → 3 本目 \(v^2 – v_0^2 = 2 a x\)。

「与えられた量・問われている量に \(t\) があるかどうか」で 1・2 本目と 3 本目を切り分けるのが最大のコツ。

Step 3: 公式の数式構造を読む

1 本目は「速度の変化=加速度×時間」、つまり「加速度とは 1 秒あたり何 m/s 増える割合か」を表しています。2 本目は「変位=初速度ぶん+加速度ぶん」で、後ろの \(\displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が「加速度のおかげで余分に進む距離」を意味します。3 本目は時間を消した形で、「速度の 2 乗の変化が、変位に比例する」ことを示します。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 6 問を 1 つずつ丁寧に見る(自信がない人向け・クリックで開閉)

① 左を正とする。\(v_0 = +14\)、\(v = +28\)、\(t = 5.0\)。時間と速度が与えられ、加速度が問われる → 1 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
v &= v_0 + at \\
28 &= 14 + a \times 5.0 \\
5.0 a &= 14 \\
a &= 2.8 \, \text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}$$

正なので左向き 2.8 m/s²。

② 斜面上向きを正とする。\(v_0 = +v_0\)(求めたい)、\(a = -6.0\)(下向きなので負)、\(t = 6.0\)、\(x = 0\)(戻ってきた)。時間と変位が出てきた → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
0 &= v_0 \times 6.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times (-6.0) \times 6.0^2 \\
0 &= 6.0 v_0 – 108 \\
v_0 &= 18 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正なので斜面上向き 18 m/s。「打ち出した初速度の大きさ」を聞かれているので、答えは 18 m/s。

③ 西を正とする。\(v_0 = +10\)、\(t = 10\)、\(x = +60\)。時間と変位が与えられ、加速度が問われる → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
60 &= 10 \times 10 + \displaystyle\frac{1}{2} \times a \times 10^2 \\
60 &= 100 + 50 a \\
50 a &= -40 \\
a &= -0.80 \, \text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}$$

負なので、加速度は西向きの逆=東向き 0.80 m/s²。

④ 斜面上向きを正とする。\(v_0 = +12\)、\(a = -1.5\)(下向き)、\(t = 4.0\)、変位が問われる → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
&= 12 \times 4.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times (-1.5) \times 4.0^2 \\
&= 48 – 12 \\
&= 36 \, \text{m}
\end{aligned}$$

正なので斜面上向き 36 m。

⑤ 東を正とする。\(v_0 = +5.0\)、\(a = +4.0\)、\(x = +7.0\)、時間が問われる → 2 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
x &= v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \\
7.0 &= 5.0 t + \displaystyle\frac{1}{2} \times 4.0 \times t^2 \\
7.0 &= 5.0 t + 2.0 t^2 \\
2.0 t^2 + 5.0 t – 7.0 &= 0
\end{aligned}$$

これを因数分解すると \((2.0 t + 7.0)(t – 1.0) = 0\)。よって \(t = 1.0\) または \(t = -3.5\)。時間は \(t \ge 0\) なので \(t = 1.0 \, \text{s}\)。

⑥ 右を正とする。\(v_0 = +3.0\)、\(a = -2.0\)、\(x = -4.0\)(左向きに 4.0 m)、速度が問われる。時間が出てこない → 3 本目を選ぶ。

$$\begin{aligned}
v^2 – v_0^2 &= 2 a x \\
v^2 – 3.0^2 &= 2 \times (-2.0) \times (-4.0) \\
v^2 – 9.0 &= 16 \\
v^2 &= 25 \\
v &= \pm 5.0
\end{aligned}$$

左向きに 4.0 m 動いた時点では、すでに右向きの速度を使い切って左へ加速しているはずなので、\(v = -5.0\) を採用。負なので左向き 5.0 m/s。

Step 5: 物理的妥当性チェック

各問で「向き」と「単位」を確認します。①は左向きに加速していくのだから、加速度も左向き。②は「打ち出した場所に戻る」前提と \(v_0 = 18\) m/s の組合せで、6 秒後の速度 \(v = 18 + (-6.0)\times 6.0 = -18\) m/s。打ち出した速度と同じ大きさで逆向きに戻る、対称的で妥当。⑥は \(v^2 = 25\) から \(\pm 5.0\) の 2 解が出ますが、物理状況(すでに折り返している)で 1 つに絞ります。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

等加速度運動は「向きの正負を決める」「公式を 3 本のうちから選ぶ」「二次方程式の解を物理的に吟味する」という 3 段構えで解きます。

波及①: ②④のように「斜面上で打ち上げて戻ってくる」状況は、地面で真上に投げる運動と同じ構造です。本問の「斜面上向きを正」と決める手順は、上下方向の運動でもそのまま使えます。
波及②: ⑤⑥のように「二次方程式の 2 解のうち 1 つを物理的根拠で棄却する」という手順は、出題側がよく仕掛けてくる罠です。式を解いて答えが 2 つ出てきたら、必ず「時間は負ではないか」「向きは状況に合っているか」を確かめる習慣を付けてください。

§5. 第1問 問5 ─ 川舟(相対速度の総合演習)

静水のとき速さ \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) の船が、流れの速さ \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) の川の2点AB間(\(90 \, \text{m}\)・AはBの川上側)を往復する問題です。手元の問題冊子の第1問 問5の図を見ながら読んでください。この大問は「速度の合成」と「視点の切り替え」を5設問連続で問う、相対速度の総合演習になっています。

§5.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

① 川下の向きに \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)
② \(10 \, \text{s}\)
③ \(99 \, \text{m}\)
④ 川下の向きに \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)
⑤ \(4.0 \, \text{m}/\text{s}\)

§5.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「誰から見た速度か」を毎回紙に書く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: ①で「\(6.0 – 3.0 = 3.0 \, \text{m}/\text{s}\)」としてしまう。
診断: 「川は船の邪魔をするもの」という素朴な感覚で、無条件に引き算する思考停止です。船は川下へ進むので、川の流れは船を「押す」側です。向きを紙に矢印で書かず、頭の中で数字だけ操作した結果のズレです。
誤答パターン②: ③で「\(13 \, \text{s} \times 9.0 \, \text{m}/\text{s} = 117 \, \text{m}\)」としてしまう。
診断: 「速さ×時間=距離」の公式を、速さが変化することを忘れて全区間に当てはめてしまうパターンです。B到達後に船が向きを変えれば、岸から見た速さも変わるという当然の事実が、公式の機械適用で見えなくなっています。
誤答パターン③: ④で「船は \(3 \, \text{m}/\text{s}\) で進んでいるから、人を見ても \(3 \, \text{m}/\text{s}\)」と向きを書かずに答えてしまう。
診断: 「相対速度=引き算」の公式を覚えていても、「自分が動いていれば止まっている人が反対方向に動いて見える」という日常感覚と接続できていません。電車の窓から外を見ると景色が後ろに流れる、あの感覚です。
誤答パターン④: ⑤で「船から見て鴨が \(10 \, \text{m}/\text{s}\) なら、静水でも \(10 \, \text{m}/\text{s}\)」と即答してしまう。
診断: 視点が「船から見た速度」「岸から見た速度」「鴨が水をかく速さ(静水基準)」の3段階あることを整理せず、最初に出てきた数字をそのまま答えに採用する短絡です。鴨の問題は3段階の視点切り替えを順に踏まないと解けません。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

まず紙に川を横向きに描き、左を川上、右を川下とします。AはBの川上側なので、Aが左、Bが右。船は最初A→Bへ進むので、船は川下向きに動きます。「川下向きを正」と決めて、矢印に向きの記号を必ず付けます。流れは右向き(川下向き)に \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)、船自体が水をかいて進む速さは右向きに \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) です。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

使う道具は「速度の合成」と「相対速度」の2つだけです。岸から見た船の速度 \(v_{\text{船・岸}}\) は、船が水に対して持つ速度 \(v_{\text{船・水}}\) と水(流れ)の速度 \(v_{\text{水・岸}}\) を足したものです。式で書くと \(v_{\text{船・岸}} = v_{\text{船・水}} + v_{\text{水・岸}}\) 。Aから見たBの速度(=AにとってのBの相対速度)は \(v_{B \text{・} A} = v_{B \text{・岸}} – v_{A \text{・岸}}\) です。この2つの式に毎回当てはめれば、5設問すべて同じ枠組みで解けます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

速度合成の式が「足し算」になるのは、船は水の上に乗っていて、水自体も岸に対して動いているからです。船が水をかく速さ(=もし川が止まっていたら岸から見える速さ)に、水ごと流される速度を足す。船が川下に向かうとき、流れは「追い風」になるので加算、川上に向かうときは「向かい風」になるので減算(=向きを考えて足す)になります。相対速度 \(v_{B \text{・} A}\) は「Aを止めて見たときのBの速度」という意味です。Aが動いている分だけ、Bは余計に・あるいは少なく動いて見えます。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

① 岸から見た船の速度(A→B、川下向き): 川下向きを正とすると、船が水をかく速度は \(+6.0\)、流れは \(+3.0\)。

$$\begin{aligned}
v_{\text{船・岸}} &= (+6.0) + (+3.0) \\
&= +9.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正だから川下向き、大きさは \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

② AからBまでにかかる時間: 距離 \(90 \, \text{m}\) を岸から見た速さ \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\) で割る。

$$\begin{aligned}
t &= \displaystyle\frac{90}{9.0} \\
&= 10 \, \text{s}
\end{aligned}$$

③ 時刻 \(13 \, \text{s}\) までに移動した距離: B到達は \(t = 10 \, \text{s}\)。残り \(3 \, \text{s}\) は折り返してBから川上へ進む。川上向き(=負)に進むとき、岸から見た速さは船が水をかく \(+6.0\) と逆向きの流れ \(+3.0\) の合成。

$$\begin{aligned}
v_{\text{船・岸(B→A)}} &= (-6.0) + (+3.0) \\
&= -3.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

大きさ \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) で \(3 \, \text{s}\) 進むので、B から川上に \(3.0 \times 3 = 9 \, \text{m}\)。移動した「距離」(向きを問わず道のり)は A→B の \(90 \, \text{m}\) と B→ \(9 \, \text{m}\) の合計。

$$\begin{aligned}
\text{距離} &= 90 + 9 \\
&= 99 \, \text{m}
\end{aligned}$$

④ 船から見た「岸で静止している人」の速度: 船はこのとき川上向きに \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)(=岸から見て \(-3.0\))で動いている。岸の人は岸から見て \(0\)。相対速度の式 \(v_{\text{人・船}} = v_{\text{人・岸}} – v_{\text{船・岸}}\) に代入。

$$\begin{aligned}
v_{\text{人・船}} &= 0 – (-3.0) \\
&= +3.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

正だから川下向き、大きさは \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

⑤ 鴨が静水を進む速さ: 時刻 \(5 \, \text{s}\) で船はまだ A→B 進行中(=岸から見て \(+9.0 \, \text{m}/\text{s}\))。船から見て鴨はAに向かって \(10 \, \text{m}/\text{s}\)(=船から見て川上向きに \(10\)、つまり \(-10\))。

視点1(船から見た鴨)から視点2(岸から見た鴨)へ:

$$\begin{aligned}
v_{\text{鴨・船}} &= v_{\text{鴨・岸}} – v_{\text{船・岸}} \\
-10 &= v_{\text{鴨・岸}} – (+9.0) \\
v_{\text{鴨・岸}} &= -1 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

つまり岸から見て鴨は川上向きに \(1 \, \text{m}/\text{s}\)。

視点2(岸から見た鴨)から視点3(鴨が水をかく速さ=静水基準)へ。水自体は岸から見て \(+3.0\)(川下向き)に流れているので:

$$\begin{aligned}
v_{\text{鴨・岸}} &= v_{\text{鴨・水}} + v_{\text{水・岸}} \\
-1 &= v_{\text{鴨・水}} + (+3.0) \\
v_{\text{鴨・水}} &= -4 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

大きさは \(4.0 \, \text{m}/\text{s}\)。鴨は川上向きに、水に対して \(4.0 \, \text{m}/\text{s}\) でかいている。

Step 5: 物理的妥当性チェック

①の \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\) は、船自身の \(6.0 \, \text{m}/\text{s}\) より速い。川が押してくれているのだから当然です。逆に③の折り返し後は \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) と遅くなる。船が頑張って \(6 \, \text{m}/\text{s}\) で水をかいても、流れに半分連れ戻されるイメージで合っています。⑤の鴨は静水で \(4 \, \text{m}/\text{s}\) で泳ぐ生き物として現実的な値です。もしここで \(15 \, \text{m}/\text{s}\) などになっていたら、視点切り替えのどこかで符号を間違えています。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 速度はベクトル(向きを持つ量)なので、足し算・引き算の前に必ず「正の向き」を1つ決めて符号を付ける。電車内でボールを投げる問題、エスカレーターを歩く問題、すべて同じ \(v_{A \text{・地}} = v_{A \text{・} B} + v_{B \text{・地}}\) の枠組みで解ける。
波及②: 視点が変わると速度は変わる。視点を切り替えるときは、必ず「誰から見たか」を添え字(船から見た、岸から見た、水に対して)で紙に書く。後の単元の「相対加速度」「慣性力」もこの添え字運用で迷子にならない。

§6. 第2問 問1 ─ \(v\)-\(t\) グラフ・\(x\)-\(t\) グラフの穴埋め

初速度 \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)、加速度 \(-3.0 \, \text{m}/\text{s}^2\) の等加速度運動を、\(v\)-\(t\) グラフ(速度-時間)と\(x\)-\(t\) グラフ(位置-時間)に書き分け、9個の数値を埋める問題です。手元の問題冊子の第2問 問1のグラフを見ながら読んでください。グラフ問題は「面積=変位」「傾き=加速度」という2つの幾何的意味を、暗記ではなく仕組みとして理解できているかが問われています。

§6.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

① \(3.0\)(\(v\)-\(t\) グラフでv=0となる時刻)
② \(4.0\)(\(v\)-\(t\) グラフのt軸右端の時刻)
③ \(9.0\)(v軸の初速度)
④ \(-3.0\)(v軸の \(t=4.0 \, \text{s}\) での速度)
⑤ \(13.5\)(0〜\(3 \, \text{s}\) の三角形面積=正方向の変位)
⑥ \(1.5\)(3〜\(4 \, \text{s}\) の三角形面積=負方向の戻り変位の大きさ)
⑦ \(3.0\)(\(x\)-\(t\) グラフの最大値の時刻)
⑧ \(4.0\)(\(x\)-\(t\) グラフのt軸右端の時刻)
⑨ \(13.5\)(\(x\)-\(t\) グラフの最大値=変位の最大)

§6.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「面積」と「傾き」の正体を見抜く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(v\)-\(t\) グラフの面積=変位の公式を「とにかく \(v \times t\)」で計算してしまう。
診断: 「面積=変位」を呪文として覚えていて、グラフが直線か曲線か、三角形か台形かを見分けずに代入する暗記思考です。速度が変化しているのに長方形の面積を出してしまう典型ミスにつながります。
誤答パターン②: 折り返し点(v=0)の意味が分からず、\(x\)-\(t\) グラフを右上がりの直線として描いてしまう。
診断: 「速度がゼロ=止まった一瞬」と「位置の変化方向が反転する瞬間」が同じ時刻だと結びついていません。v=0は「ここで物体が向きを変える=\(x\)-\(t\) グラフの山の頂上」というイメージが頭に入っていないと、グラフ全体の形が崩れます。
誤答パターン③: 戻った量 \(1.5 \, \text{m}\) と、t=\(4 \, \text{s}\)での位置とを別物として混乱する。
診断: 「3〜\(4 \, \text{s}\)の面積」と「t=\(4 \, \text{s}\)での位置」を別個に計算しようとするケースです。実は「t=\(4 \, \text{s}\)での位置=\(3 \, \text{s}\)での最大位置 − 3〜\(4 \, \text{s}\)で戻った量」と素直につながっていることが、面積の符号で読み取れていません。
誤答パターン④: 加速度 \(-3.0\) の負号を、\(v\)-\(t\) グラフでは右下がりの傾きと結びつけられるが、その「同じ負号」が\(x\)-\(t\) グラフでは「上に凸の曲がり具合」になることが見えない。
診断: 加速度・速度・位置を別々の量として暗記していて、\(x\)-\(t\) グラフの曲がり方=加速度の符号という関係まで降りていないパターンです。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

まず速度がどう変化するかを言葉で書きます。「初め \(+9.0 \, \text{m}/\text{s}\) で進む。毎秒 \(3.0 \, \text{m}/\text{s}\) ずつ遅くなる。3秒後に止まる。その後は逆向きに加速して、4秒の時点で \(-3.0 \, \text{m}/\text{s}\)」。これだけで\(v\)-\(t\) グラフは「右下がりの一直線」だと決まります。\(x\)-\(t\) グラフは「3秒で最大に達して山の頂上を作り、4秒に向かって少し戻る」形です。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

等加速度運動の3つの式 \(v = v_0 + at\)、\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) のうち、グラフ問題では特に「\(v\)-\(t\) グラフの面積=変位」が強力です。なぜ面積が変位になるかというと、速度を時間で足し合わせる(積分する)と移動した距離になるからです。長方形の面積 \(v \times t\) は速度が一定のときの変位そのものですし、速度が直線的に変わるなら台形・三角形の面積として同じ意味を持ちます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

\(v\)-\(t\) グラフでは、傾き=加速度、面積=変位。\(x\)-\(t\) グラフでは、傾き=速度。だから「v-tの傾きが負」⇔「速度が減る」⇔「x-tの傾きがだんだん小さくなる=上に凸の放物線」と読み替えられます。等加速度のとき\(x\)-\(t\) グラフが放物線になるのは、変位の式に \(t^2\) が入っているからです。3秒で速度ゼロ=\(x\)-\(t\) グラフの傾きゼロ=山の頂上です。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 計算過程を1つずつ丁寧に見る(計算が苦手な人向け・クリックで開閉)

①③④ 速度の式から: \(v = v_0 + at = 9.0 + (-3.0) \cdot t\)。

v=0となる時刻(=①):

$$\begin{aligned}
0 &= 9.0 – 3.0 \cdot t \\
t &= 3.0 \, \text{s}
\end{aligned}$$

初速度(=③)はそのまま \(9.0 \, \text{m}/\text{s}\)。

\(t = 4.0 \, \text{s}\) のときの速度(=④):

$$\begin{aligned}
v &= 9.0 – 3.0 \times 4.0 \\
&= -3.0 \, \text{m}/\text{s}
\end{aligned}$$

⑤ 0〜\(3 \, \text{s}\)の三角形面積(=正方向の変位): 底辺3、高さ9の三角形。

$$\begin{aligned}
S_1 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 3.0 \times 9.0 \\
&= 13.5 \, \text{m}
\end{aligned}$$

⑥ 3〜\(4 \, \text{s}\)の三角形面積(=戻った変位の大きさ): 底辺1、高さ3の三角形(v軸では負側だが、大きさで答える)。

$$\begin{aligned}
S_2 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 1.0 \times 3.0 \\
&= 1.5 \, \text{m}
\end{aligned}$$

⑦⑨ \(x\)-\(t\) グラフの最大値: v=0となる \(t = 3.0 \, \text{s}\) で位置は最大。最大値=0〜\(3 \, \text{s}\)の面積=\(13.5 \, \text{m}\)。だから⑦=3.0、⑨=13.5。

⑧ \(x\)-\(t\) グラフ右端の時刻: \(v\)-\(t\) グラフと同じ範囲なので \(t = 4.0 \, \text{s}\)。ちなみに \(t = 4.0 \, \text{s}\) の位置は \(13.5 – 1.5 = 12.0 \, \text{m}\)(出題は時刻のみ問うが、形を確認するのに使う)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

\(v\)-\(t\) グラフは t=0 で \(+9.0\)、t=3で0、t=4で \(-3.0\) を通る一直線。傾きは \(-3.0\)(=加速度)で問題文と一致します。\(x\)-\(t\) グラフは t=0 で原点、t=3で頂上 \(13.5 \, \text{m}\)、t=4で \(12.0 \, \text{m}\) と少し下がった放物線。「3秒で13.5m進んで、その後1秒で1.5m戻る」のは、減速して止まって逆向きに動き出すという日常イメージにも合います。もし⑤を \(27\) などと出していたら、三角形ではなく長方形で計算したサインです。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: \(v\)-\(t\) グラフの面積=変位、傾き=加速度。\(x\)-\(t\) グラフの傾き=速度。この「微分・積分の関係」を、面積と傾きという目で見える形で先取りしている。後の単元で公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が出てきても、「初速度の長方形+加速度分の三角形」として面積で再現できる。
波及②: 「v=0=折り返し点=\(x\)-\(t\) グラフの極値」は、後の鉛直投げ上げや単振動でも同じ。最高点で速度ゼロ、振動の端点で速度ゼロ、すべて同じ原理の応用。

§7. 第2問 問2 ─ \(a\)-\(t\) グラフ判定(等速運動)

一定時間間隔で撮影された3つの物体が、間隔等しく並んでいる写真の問題です。手元の問題冊子の第2問 問2の図を見ながら読んでください。物体の進行方向を正とするとき、加速度を縦軸・時間を横軸にとったグラフ(\(a\)-\(t\) グラフ)はア〜エのどれかを選びます。「写真の間隔=同じ」という1つの事実から、3段階の推論を踏みます。

§7.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

(a=0 でt軸に重なる水平な直線)

§7.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「等間隔=等速=加速度ゼロ」の3段推論

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 写真が3つあるから「動いている=加速している」と思い、ア(正の一定値)やウ(右上がり)を選んでしまう。
診断: 「動いている=加速度がある」という日常語のずれです。物理での加速度は「速度の変化のしかた」であって「動いているか止まっているか」ではありません。等速直線運動なら加速度はゼロ、これが慣性の概念の入口です。
誤答パターン②: イ(a=0の水平線)を見て「動いていない物体のグラフだ」と勘違いして除外する。
診断: 縦軸が「a(加速度)」であって「v(速度)」「x(位置)」ではないことを読み飛ばしています。a=0は「加速度がゼロ」であって、「速度がゼロ」でも「位置の変化がゼロ」でもありません。グラフを読むとき、軸の文字を毎回確認する習慣がついていないサインです。
誤答パターン③: エ(t軸に垂直な直線)を「加速度がゼロから急に変わった」と解釈して選んでしまう。
診断: 縦線のグラフ自体が物理的に意味を持たないこと(同じ時刻に複数の加速度が存在することになり矛盾する)を見落としています。グラフの形そのものに対する物理的な吟味が抜けています。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

連続写真は、たとえば毎秒1枚ずつ撮ったコマ送り。3つの像の間隔が等しい=同じ時間に同じ距離を進んでいる、ということです。1秒あたり同じ長さだけ動く、これがまさに等速運動の定義です。図に矢印を3本書き込み、すべて同じ長さであることを目で確認します。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

定義に戻ります。速度の定義は「単位時間あたりの位置の変化」、加速度の定義は「単位時間あたりの速度の変化」。間隔が等しい=速度が一定=速度の変化がゼロ=加速度がゼロ。公式は要らず、定義の連鎖でゴールにたどり着きます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

加速度 \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\) で、\(\Delta v = 0\) なら \(a = 0\) です。これが\(a\)-\(t\) グラフでは「t軸そのもの(高さ0の水平線)」になります。アは「一定の正の加速度」=等加速度直線運動、ウは「加速度が時間とともに増える」=加加速度のある運動、エは「瞬間的に加速度が変わる」=物理的に不自然、と選択肢を1つずつ意味で読み解きます。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 推論過程を1つずつ丁寧に見る(クリックで開閉)

事実1: 写真の間隔(時間軸)が等しい。1コマあたりの時間を \(\Delta t\)、像と像の間の距離を \(\Delta x\) とすると、\(\Delta x\) はどのコマ間でも同じ。

推論1(速度): 速度の定義より

$$\begin{aligned}
v &= \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}
\end{aligned}$$

\(\Delta x\) も \(\Delta t\) も全コマで同じ値だから、\(v\) も時間によらず一定。これが等速運動。

推論2(加速度): 加速度の定義より

$$\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t} \\
&= \displaystyle\frac{0}{\Delta t} \\
&= 0
\end{aligned}$$

速度が一定(変化なし)だから \(\Delta v = 0\)、よって加速度はゼロ。

選択肢吟味: ア(a=正の一定値)は加速、イ(a=0で水平)は等速、ウ(a=右上がり)は加速度自体が増える、エ(t軸に垂直)は同じ瞬間に複数の値があり物理的に不可能。よってイ。

Step 5: 物理的妥当性チェック

「等間隔の連続写真=等速運動=加速度ゼロ」は、机の上を一定の速さで滑らせたボールや、エアトラック上の台車などで実験的にも確かめられる、最も基本的な現象です。慣性の法則の表れでもあります。もしアを選んでいたら、像と像の間隔が時間とともに広がっていく(加速していく)はずで、写真の見た目と合いません。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: グラフを読むときは、まず縦軸が何か(x なのか v なのか a なのか)を確認する。同じ「水平線」でも、x-tでは静止、v-tでは等速、a-tでは加速度ゼロ(等加速度直線運動なら等速も含む)と意味が全く変わる。
波及②: 「動いている」と「加速している」は別物。一定の速さで動いているとき、加速度はゼロ。この区別が、後の運動方程式で「合力ゼロなら等速運動」(=慣性の法則)の理解にそのまま接続する。

§8. 第2問 問3 ─ \(v\)-\(t\) グラフから運動図を並べ替える

\(v\)-\(t\) グラフの「正負」と「増減」をそのまま物体の動きに翻訳できるか、を問う問題です。手元の問題冊子の第2問 問3(\(v\)-\(t\) グラフと運動図A〜F)を見ながら読んでください。

§8.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

答え: E → A → C → B

§8.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「グラフの正負」と「動く向き」を別物として読み解く

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: \(v\)-\(t\) グラフが上がっている=加速、下がっている=減速、と機械的に対応させてしまう。
診断: 「加速」「減速」を「速さが増える/減る」という日本語のままでしか捉えていない。速度 \(v\) は向きを持つベクトル、速さ \(|v|\) は大きさだけ、という区別ができていない。グラフが上がっていても、\(v\) が負の領域なら「速さは小さくなっている=減速」という現象がある。
誤答パターン②: \(v=0\) の瞬間(\(t=t_1\))を「物体が止まっている」と見て、運動図に「静止状態」を探してしまう。
診断: \(v=0\) は「その瞬間だけ速度がゼロ」であって、物体が長時間止まっているわけではない。直前は左向き、直後は右向きに動く「折り返し点」だと読めていない。瞬間と区間の混同。
誤答パターン③: \(v\)-\(t\) グラフの「\(t<t_1\) で値が増えている」を見て「ここは正方向に加速」と判断し、矢印が右向きで間隔が広がっていく運動図(Aのような図)を当ててしまう。
診断: 加速度の正負と速度の正負を混同している。\(t<t_1\) の領域は、加速度 \(a>0\)(グラフの傾きが正)で、速度 \(v<0\)。この組み合わせは「左向きに動いている物体が、右向きの力を受けて減速していく」という現象を表す。\(a\) と \(v\) の符号が逆 → 減速、という4象限のルールを身につけていない。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

\(v\)-\(t\) グラフを4つの時間帯に分けて、それぞれ「速度の符号」と「速度の変化(増減)」を読み取ります。

・\(t<t_1\):\(v<0\)(負)かつ、\(v\) は時間とともに大きくなり \(0\) に近づく。
・\(t_1 < t < t_2\):\(v>0\)(正)で、時間とともに増える。
・\(t_2 < t < t_3\):\(v>0\) で、一定値(水平線)。
・\(t>t_3\):\(v>0\) のまま減少していき、やがて \(v=0\) を通過する。

Step 2: どの公式(or 概念)を選ぶか

ここでは公式ではなく、「\(v\)-\(t\) グラフの読み方の規約」を選びます。具体的には次の2つです。

・規約A:速度の符号(正/負)= 動く向き(正方向/負方向)。問題では「ある向きを正と定める」と必ず決まっている。
・規約B:速度の絶対値の増減 = 速さの増減 = 加速か減速か。

この2つを4象限の表にすると次のように整理できます。

・\(v>0\) かつ \(|v|\) 増 → 正方向へ加速(矢印は正方向、間隔は広がる)
・\(v>0\) かつ \(|v|\) 減 → 正方向へ減速(矢印は正方向、間隔は狭まる)
・\(v<0\) かつ \(|v|\) 増 → 負方向へ加速(矢印は負方向、間隔は広がる)
・\(v<0\) かつ \(|v|\) 減 → 負方向へ減速(矢印は負方向、間隔は狭まる)

Step 3: 公式の数式構造を読む

等加速度直線運動の式 \(v = v_0 + a t\) を考えます。これは「速度 \(v\) は、初速 \(v_0\) に、加速度×時間 \(at\) を足したもの」を意味します。グラフの傾きは \(a\)、切片は \(v_0\) です。重要なのは、\(v\) の符号と \(a\) の符号は独立だということ。両方の符号の組み合わせで4通りの現象が生まれます。

Step 4: 実際に区間ごとに運動図を当てはめる

📖 4つの時間帯を1つずつ丁寧に運動図と対応させる(クリックで開閉)

【\(t<t_1\):負方向に減速】

\(v<0\) なので物体は負方向(左)に動いています。\(|v|\) は時間とともに減って \(0\) に近づくので、これは「左向きに動きつつ、だんだんゆっくりになる」状態。連続写真で表すと、矢印は左向き、左へ行くにつれて打点の間隔が狭くなっていきます。これに対応するのが E

【\(t_1 < t < t_2\):正方向に加速】

\(t=t_1\) で速度がゼロを通過し、その直後 \(v>0\) になります。さらに時間とともに増加していくので「右向きに動き始め、だんだん速くなる」。矢印は右向き、右へ行くにつれて打点間隔が広がっていきます。これに対応するのが A

【\(t_2 < t < t_3\):正方向に等速(速い)】

\(v>0\) のまま一定値。これは「右向きに同じ速さで進み続ける」状態。矢印は右向き、打点間隔は一定。ただし加速で十分速くなった後の等速なので、間隔は広めの等間隔になります。これに対応するのが C

【\(t>t_3\):正方向に減速】

\(v>0\) のまま \(|v|\) が減っていきます。「右向きに動きつつ、だんだんゆっくりになる」。矢印は右向き、右へ行くにつれて打点間隔が狭まる。これに対応するのが B

よって順に並べると E → A → C → B

Step 5: 物理的妥当性チェック

「折り返し運動」になっているかを確認します。\(t<t_1\) は左向き、\(t>t_1\) は右向き。だから \(t=t_1\) で物体は一旦止まって(瞬間的に \(v=0\))、その後逆向きに動き出している。これは坂を登るボールが頂点で一瞬止まって落ちてくる、という典型現象と同じです。グラフの「\(v\) 軸を横切る点」は「折り返し点」というイメージが頭に入っていれば、E と A の境界(向きが変わる瞬間)を見落としません。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: \(v\)-\(t\) グラフの読み取りは「正負(向き)」と「増減(加速か減速か)」の2軸を独立に見る。この4象限の見方は、力学のあらゆる場面(鉛直投げ上げ、振動、衝突)で繰り返し使う。
波及②: 「v軸を横切る点=折り返し点」というイメージは、後で習う単振動でも投げ上げでも同じ。瞬間的に \(v=0\) になる点は「止まっている」のではなく「向きを変える瞬間」と読み替える。

§9. 第3問 問1 ─ 斜面3パターンでQ通過時の速さを比較

同じ斜面上で初期条件だけを変えた3パターンを比べる問題です。手元の問題冊子の第3問 問1(斜面上の点P、点Q、3通りの初期条件 (a)(b)(c))を見ながら読んでください。

§9.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

答え: \(v_c < v_a = v_b\)

§9.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ エネルギー保存則の「同じ高さ=同じ速さ」を見抜く

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: (a) は「一度上に投げて戻ってくる間にエネルギーを失う」と感覚で考え、\(v_a < v_b\) と答えてしまう。
診断: 「上がって戻る」という見た目の動きが多いと、エネルギーも余計に消費されているように見える。しかし斜面はなめらか(摩擦なし)と書かれている。摩擦がなければ、どんな経路を通っても力学的エネルギーは保存される。「経路に時間がかかる=エネルギー損失」というのは、摩擦のある日常感覚を物理に持ち込んでしまった結果。
誤答パターン②: 等加速度の運動方程式を 3 回立てて、それぞれ \(t\) を消して \(v\) を出そうとし、計算量に押しつぶされる。
診断: 道具の選択ミス。「初期と終わりの 2 点だけが問われていて、途中経路を聞かれていない」とき、エネルギー保存則のほうが圧倒的に速い。問われ方を見て道具を選ぶ習慣がついていない。
誤答パターン③: (c) は初速が \(0\) なのに、なぜか \(v_c\) が \(v_a, v_b\) と等しいか、それより大きいと答える。
診断: 「P から Q まで滑り降りる距離が長いから速くなる」というイメージだけで判断している。エネルギー保存則を式で書けば、(c) には初期の運動エネルギーがない分、Q での速さが小さくなることが一目で見える。式で書く前に直感で結論を出してしまっている。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

斜面上の点 P、その下方に点 Q。P と Q の高さの差を \(h\) としておきます(PQ間の鉛直距離)。3 通りの初期条件は次の通りです。

(a) P で斜面上向きに速さ \(v\) を与える。物体は上昇し、最高点で一瞬止まり、戻ってきて P を通り、Q へ。
(b) P で斜面下向きに速さ \(v\) を与える。そのまま Q へ。
(c) P で静かに(速さ \(0\) で)放す。滑り降りて Q へ。

Step 2: どの公式を選ぶか

「初期(P 通過時)と終わり(Q 通過時)の速さだけ」を比較するので、力学的エネルギー保存則が最適です。なめらかな斜面なので摩擦による熱への損失はゼロ。

運動エネルギー \(K = \displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)、重力ポテンシャルエネルギー \(U = m g h\)。P と Q では \(K + U\) が等しい。

Step 3: 公式の数式構造を読む

P で持っているエネルギー \(=\) Q で持っているエネルギー、と書きます。

P の高さを基準(\(h=0\))と取ると、Q の高さは \(-h\)(下方なので負)。あるいは Q を基準にとって P が \(+h\) でも構いません。ここでは Q を基準にして、P の高さを \(h\) と置きます。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 3パターンを1つずつエネルギー保存則で書き下す(クリックで開閉)

【(a) 上向きに速さ \(v\) で打ち出し】

P で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)、ポテンシャル \(m g h\)。Q で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_a^2\)、ポテンシャル \(0\)。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{2} m v^2 + m g h &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_a^2 \\
v_a^2 &= v^2 + 2 g h
\end{aligned}$$

【(b) 下向きに速さ \(v\) で打ち出し】

P で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)、ポテンシャル \(m g h\)。Q で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_b^2\)、ポテンシャル \(0\)。

$$\begin{aligned}
\displaystyle\frac{1}{2} m v^2 + m g h &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_b^2 \\
v_b^2 &= v^2 + 2 g h
\end{aligned}$$

運動エネルギーは速度の 2 乗で決まるので、向きが上か下かは関係ありません。\(\left(+v\right)^2 = \left(-v\right)^2 = v^2\) です。よって \(v_a = v_b\)。

【(c) 静かに放す】

P で:運動エネルギー \(0\)、ポテンシャル \(m g h\)。Q で:運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_c^2\)、ポテンシャル \(0\)。

$$\begin{aligned}
m g h &= \displaystyle\frac{1}{2} m v_c^2 \\
v_c^2 &= 2 g h
\end{aligned}$$

3つを並べると、\(v_a^2 = v_b^2 = v^2 + 2 g h\)、\(v_c^2 = 2 g h\)。明らかに \(v_c^2 < v_a^2 = v_b^2\)、すなわち \(v_c < v_a = v_b\)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

(a) と (b) は P での運動エネルギーが等しいので、Q に着くまでに同じだけポテンシャルを運動エネルギーに変換すれば、当然同じ速さになります。(c) は P で運動エネルギーゼロからスタートするので、ポテンシャル \(m g h\) 分しか運動エネルギーをもらえず、最も遅い。極端ケースとして \(h \to 0\)(P と Q がほぼ同じ高さ)を考えると、\(v_a = v_b \to v\)、\(v_c \to 0\) となり、矛盾なく成り立っています。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 摩擦のない斜面・曲面では、最終的な速さは「初期の運動エネルギーと、落差から得るポテンシャルの和」だけで決まる。経路の形・かかった時間は関係ない。これがエネルギー保存則の威力。
波及②: 運動エネルギーは速度の 2 乗に比例するので、向きの違いは結果に出てこない。鉛直投げ上げで「上向きに投げても下向きに投げても、同じ高さに戻ってくる時の速さは同じ」というのと同じ原理。

§10. 第3問 問2 ─ 斜面A静止+B上向き打出の\(v\)-\(t\) グラフ選択

同じなめらかな斜面上に置かれた2物体 A, B の \(v\)-\(t\) グラフを4択から選ぶ問題です。手元の問題冊子の第3問 問2(斜面と A, B、初期条件、グラフ ①〜④)を見ながら読んでください。

§10.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

答え: ②

§10.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「同じ斜面=同じ加速度=平行な直線」を見抜く

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一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「B は上に打ち出されたので、最初は加速度が上向き(正方向)になっている」と考えてしまう。
診断: 「速度の向き」と「加速度の向き」を一緒くたに考えている。なめらかな斜面上で物体に働くのは重力の斜面成分だけ。これは常に斜面下向き(負方向)。B が上向きに動いている間も、加速度は下向き。だから B は「上向きに動いている間も、ずっと下向きの加速度を受け続けて減速している」のが正解。
誤答パターン②: 「A は静かに置いたのだから、しばらく静止していてから動き出す」と考え、グラフの A が原点付近で水平に張り付いている選択肢を選んでしまう。
診断: 「静かに放す」の意味を「しばらく置いておく」と読んでしまっている。物理での「静かに放す」は「初速度 \(0\) で離す」という意味であって、放した瞬間から加速度 \(g \sin\theta\) で動き始める。摩擦も止め具もない斜面で「しばらく静止」は起きない。
誤答パターン③: A の傾きと B の傾きが違う選択肢を選んでしまう。
診断: 「初速が違えばグラフの傾きも違う」と思い込んでいる。グラフの傾き=加速度。A も B も同じなめらかな斜面上にあるから、受ける加速度は両方とも \(-g \sin\theta\)(負方向)で等しい。だから \(v\)-\(t\) グラフ上では、A と B の直線は必ず平行になる。違うのは「切片(初速)」だけ。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

斜面の傾斜角を \(\theta\)、斜面上向きを速度の正の向きとします。物体 A は初速 \(0\) で静かに置かれ、物体 B は初速 \(v_0\)(正の値、上向き)で打ち出される。両者にかかる力は重力の斜面成分だけ(垂直抗力は運動方向に成分がない)。重力の斜面成分は常に斜面下向き、つまり負の方向。

Step 2: どの公式を選ぶか

等加速度直線運動の式 \(v = v_0 + a t\) を A、B それぞれに当てはめます。グラフを描くだけなので、運動方程式を解いて加速度を出すところまでで十分。

Step 3: 公式の数式構造を読む

運動方程式は質量を \(m\) として、A、B どちらも \(m a = -m g \sin\theta\)、よって \(a = -g \sin\theta\)。マイナスがついているのは「斜面上向きを正と定めた」から。重力の斜面成分は下向き=負。

A について:\(v_A = 0 + \left(-g \sin\theta\right) t = -g t \sin\theta\)。原点を通り、傾き \(-g \sin\theta\) の直線。

B について:\(v_B = v_0 + \left(-g \sin\theta\right) t = v_0 – g t \sin\theta\)。切片 \(v_0\)、傾き \(-g \sin\theta\) の直線。

2 つの直線の傾きは等しい \(\left(-g \sin\theta\right)\)。切片だけが違う(A は \(0\)、B は \(v_0\))。よって \(v\)-\(t\) グラフ上では A と B は平行な直線

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 グラフの特徴を選択肢と照合する(クリックで開閉)

選ぶべきグラフの特徴を整理します。

・A(実線):原点から始まり、右下がりの直線(負の傾き)。\(t>0\) では \(v<0\)(斜面を下る向き)。
・B(破線):正の切片 \(v_0\) から始まり、右下がりの直線。傾きは A と同じ。途中で \(v=0\) を通過し(折り返し点:最高点)、その後は負の領域に入る。
・A と B は \(v\)-\(t\) グラフ上で 平行(同じ斜面なので同じ加速度)。

選択肢 ①〜④ をこの 3 条件で絞ると:

・原点から始まる右下がり直線(A)
・正の切片から始まる右下がり直線(B)
・両者の傾きが等しい(平行)

3 条件すべてを満たすのが

① では A と B の傾きが違う、③ では A が初め水平で「しばらく静止」が描かれている、④ では B の傾きが正の領域だけ違う、といった違反が見られます(実際の選択肢は手元プリントで照合してください)。

Step 5: 物理的妥当性チェック

B が \(v=0\) になる瞬間(直線が時間軸を横切る点)が「B が最高点に達した瞬間」を表しています。その後 \(v<0\) になるのは「斜面を下り始めた」ことを意味する。さらにこの瞬間以降、B のグラフは A のグラフと「同じ傾きの平行な直線」のまま下りていく。これは「B は最高点を過ぎてからは、A と同じく初速ゼロで斜面を下る運動と物理的に同等」だということを表しています。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 同じ場・同じ斜面・同じ重力下では、すべての物体に同じ加速度がかかる。だから \(v\)-\(t\) グラフでは、初速がいくつであっても直線の傾きは全部同じ=平行になる。これは鉛直投げ上げでも、自由落下でも、斜面落下でも共通の構造。
波及②: 「上向きに動いている間も、下向きの加速度は働き続けている」。速度の向きと加速度の向きは独立。これを \(v\)-\(t\) グラフ上で言えば「\(v>0\) の領域でも、直線の傾きは負のまま」。投げ上げの典型問題と同じ構造。

§11. 第3問 問3 ─ 列車の前端・後端がAを通過するときの時間と長さ

等加速度で走る列車について、地点 A を「前端」「後端」が通過するときの速度から、所要時間と列車の長さを文字式で求める問題です。手元の問題冊子の第3問 問3(列車と地点A、速度 \(u\), \(v\)、加速度 \(a\))を見ながら読んでください。

§11.1 解答(Layer 1 ─ 端的解答)

※ 問題文と図は手元プリント参照。

答え:
(1) \(\displaystyle t = \displaystyle\frac{v – u}{a}\)
(2) \(\displaystyle L = \displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}\)

§11.2 💡 もっと深く理解したい人へ ─ 「列車の長さ=列車が動いた距離」の翻訳を身につける

▶ クリックして完全解説を開く ─ 思考のクセ診断つき

一見の罠 ─ ほとんどの人がこう考える

誤答パターン①: 「前端での速度 \(u\)、後端での速度 \(v\) って、何の話?」と立ち止まってしまい、別の物体が 2 つあると勘違いする。
診断: 文章を「同じ列車の2つの部位(前端と後端)が、同じ地点 A を順番に通過する」という時間差として翻訳できていない。列車は一つ、地点 A も一つ、変わるのは「列車のどの部位が A を通った瞬間か」だけ、と読み解く言葉の翻訳力が不足。
誤答パターン②: 「列車全体が A を通過するのに要した時間」とは何の時間か、を絵で描けない。
診断: 「通過するのに要した時間」を、地面側(観察者)から見ると「前端が A に到達した瞬間から、後端が A から離れた瞬間まで」。これは時間の定義の問題で、図に書いて初めて整理できる。文章だけで処理しようとすると、時刻と時間の区別がぼやける。
誤答パターン③: 「列車の長さ」を求めるのに、何かもっと別の公式(たとえば質量・密度系の式)を持ち出そうとする。
診断: 列車の長さを「等加速度の \(t\) 秒間に列車が動いた距離」と翻訳することに気づいていない。前端が A を通過してから後端が A を通過するまでの間に、列車(地面から見たとき)は列車自身の長さ分だけ進んでいる、というイメージが描けていない。

正しい思考プロセス(5ステップ)

Step 1: 現象を絵にする

地面に固定した地点 A を考え、その上を等加速度 \(a\) で走る列車が右に通過していくとします。

・時刻 \(t=0\):列車の前端が A の真上にきた。このとき列車の速度は \(u\)。
・時刻 \(t=T\):列車の後端が A の真上にきた。このとき列車の速度は \(v\)。

地面から見ると、この \(T\) 秒間に列車全体が距離 \(L\)(列車の長さ)だけ進んでいる。なぜなら、最初 A にあった「前端の位置」が、\(T\) 秒後には「列車の長さ \(L\) だけ右に移動した位置」になり、ちょうどその時に後端が A の真上に来ているから。

Step 2: どの公式を選ぶか

等加速度直線運動の 3 つの式から、必要なものを 2 本選びます。

・\(v = v_0 + a t\)(速度と時間の関係)
・\(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)(位置と時間の関係)
・\(v^2 – v_0^2 = 2 a x\)(速度と距離の関係:時間が出てこない)

(1) では「速度の変化から時間を求める」ので 1 番目の式。(2) では「速度の変化から距離を求める」ので 3 番目の式が一発で効きます。

Step 3: 公式の数式構造を読む

(1) で使う \(v = v_0 + a t\) は、「終わりの速度 \(=\) 始めの速度 \(+\) 加速度 \(\times\) 時間」。今回は「始めの速度 \(= u\)、終わりの速度 \(= v\)、加速度 \(= a\)、時間 \(= T\)」と対応させる。

(2) で使う \(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) は、「速度の 2 乗の差 \(= 2 \times\) 加速度 \(\times\) 移動距離」。これは時間 \(t\) を含まない式で、「始めと終わりの速度がわかっていて、移動距離だけ知りたいとき」に最も速い道具。

Step 4: 実際に代入して確かめる

📖 (1)(2) を1つずつ式変形する(クリックで開閉)

【(1) 通過に要した時間 \(T\)】

始めの速度 \(u\)、終わりの速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(T\) を \(v_0 + a t\) の関係に当てはめる。

$$\begin{aligned}
v &= u + a T \\
a T &= v – u \\
T &= \displaystyle\frac{v – u}{a}
\end{aligned}$$

【(2) 列車の長さ \(L\)】

始めの速度 \(u\)、終わりの速度 \(v\)、加速度 \(a\)、移動距離 \(L\) を \(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) に当てはめる。

$$\begin{aligned}
v^2 – u^2 &= 2 a L \\
L &= \displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}
\end{aligned}$$

分数は \(\displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}\) のままで OK。因数分解して \(\displaystyle\frac{\left(v – u\right)\left(v + u\right)}{2 a}\) と書いてもよい。後者は (1) の \(T = \displaystyle\frac{v – u}{a}\) と並べて見ると、列車の長さが \(L = \displaystyle\frac{u + v}{2} \cdot T\) という形に書けることがわかる。これは「平均の速度 \(\displaystyle\frac{u + v}{2}\) と時間 \(T\) の積が距離」という、等加速度運動で常に成り立つ関係。

Step 5: 物理的妥当性チェック

・単位の確認:(1) では \(\displaystyle\frac{v – u}{a}\) の単位が \(\displaystyle\frac{\text{m}/\text{s}}{\text{m}/\text{s}^2} = \text{s}\)(秒)になっており、時間として正しい。(2) では \(\displaystyle\frac{v^2 – u^2}{2 a}\) の単位が \(\displaystyle\frac{\text{m}^2/\text{s}^2}{\text{m}/\text{s}^2} = \text{m}\)(メートル)で、長さとして正しい。
・極端ケース:もし \(a \to 0\)(加速していない=等速)なら、前端通過時の速度 \(u\) と後端通過時の速度 \(v\) は同じになるはずなので、\(v = u\) であってほしい。式 (1) で \(v = u\) を入れると \(T = 0/0\) で不定形になり、\(a\) を 0 にすると公式自体が破綻するのは正しい挙動。等速の場合は別の式(\(L = u T\))で扱う必要がある。
・直感チェック:列車が加速していて、後端通過時の方が速い(\(v > u\))と仮定すると、\(T > 0\)、\(L > 0\) が両方成り立つ。逆に減速していて \(v < u\) なら、\(a < 0\) を入れることになり、やはり \(T, L\) は正になる。式は両方向の加速度に対応している。

この問題が教えてくれること ─ 一般化

波及①: 「物体の長さを通過する時間」「ある区間を通り抜ける時間」のような長さと時間が絡む問題は、「ある部位が点 A を通る瞬間」と「別の部位が点 A を通る瞬間」を別の時刻として設定し、その間に物体が動いた距離が「長さ」に対応する、と翻訳すれば等加速度の 3 式で解ける。
波及②: 等加速度の 3 式のうち、「時間を含まない式」\(v^2 – v_0^2 = 2 a x\) は、時間に興味がないときに最短の道具。問題文を読んだ瞬間に「何が問われていて、何が問われていないか」を区別して、適切な式を選ぶ習慣をつけたい。
波及③: 文字式問題は「文字のまま物理を読む訓練」。数値が出てこないので、計算ミスを心配する必要がない代わりに、式の各文字が「現象のどこを表しているか」を最後まで意識し続ける必要がある。\(\displaystyle\frac{v – u}{a}\) を見たら「速度差 ÷ 加速度 = 時間」と即座に翻訳できるようにする。

§12. テスト全体の振り返り ─ 5大「思考のクセ」処方箋

ここまで全11ブロック・44設問の解説を読んでくれたあなたは、もう気づいているはずです。このテストで現れた「思考のクセ」は、実は5つに集約できるということに。

個別の設問を一つずつ覚えようとしても、次のテストでは設定が変わるので意味がありません。それより、「自分はどの思考のクセで間違えるか」を5パターンの中から特定する方が、何倍も効きます。次のテストで同じ罠にハマらないための処方箋を、5つにまとめます。

§12.1 クセ①: 公式即代入クセ(最頻発・全範囲共通)

症状: 問題を見た瞬間、頭の中で「v=v₀+at」「x=v₀t+½at²」「v²−v₀²=2ax」のどれかを探し始める。
典型的な現れ: 第1問 問4(等加速度運動)、第2問 問1(\(v\)-\(t\) グラフ穴埋め)、第3問 問3(列車の前後端)
診断: 「現象を頭の中で動かす」より先に「公式を当てはめる」が習慣化している。
処方箋: 公式を書く前に、必ず「現象を絵にする → 座標軸を書く → 何が分かっていて何を求めるかを言葉で書く」の3ステップを紙の上で実行する。これに30秒かけても、結果として速く正確に解ける。

§12.2 クセ②: 向き軽視クセ(相対速度・等加速度で頻発)

症状: 速さ(大きさ)だけ計算して、向き(符号)を後付けで決める。
典型的な現れ: 第1問 問3 ③(A西向き × B東向き → 単純引き算で済ませる)、問4 ⑥(右向き初速度 × 左向き加速度の混合)、第3問 問2(\(v\)-\(t\) グラフの正負方向)
診断: 「速度」と「速さ」を日常語感覚で混同している。物理での速度は大きさと向きをセットで持つ量であることが体になじんでいない。
処方箋: 問題を読んだら真っ先に座標軸(右向きを正、上向きを正など)を紙に書く。すべての速度・加速度を符号付きで書き出す。「向き」を聞かれていなくても、答えの符号で向きを確認するクセをつける。

§12.3 クセ③: 視点切替忘れクセ(相対速度・川舟・運動図で頻発)

症状: 「誰から見た速度か」「どの基準で測っているか」を確認しないまま計算を始める。
典型的な現れ: 第1問 問3(電車内/地面/車Aから見たBなど視点が毎問変わる)、問5(川舟の鴨問題=船視点→岸視点→静水基準の3段切替)、第2問 問3(\(v\)-\(t\) グラフの「正の向き」と「物体の進行方向」の独立性)
診断: 「速度は絶対的に決まる量」と無意識に思い込んでいる。実際の速度はすべて「誰から見た」が前提であることが意識化されていない。
処方箋: 問題に出てくるすべての速度に「誰から見た」を明示的に書き出す。例えば「v(地→人)=東向き\(3.5 \, \text{m}/\text{s}\)」「v(電→人)=西向き\(1.5 \, \text{m}/\text{s}\)」のように、矢印付きの記法で誰基準かを必ず明記する。

§12.4 クセ④: グラフ二重関係未接続クセ(v-t/x-t/a-tで頻発)

症状: 「\(v\)-\(t\) グラフの面積=変位」「\(v\)-\(t\) グラフの傾き=加速度」「\(x\)-\(t\) グラフの傾き=速度」を別々の公式として暗記している。
典型的な現れ: 第2問 問1(v-tと x-tの相互変換)、問2(連続写真→\(a\)-\(t\) グラフ)、問3(\(v\)-\(t\) グラフ→運動図)、第3問 問2(A静止+B上向きのv-t選択)
診断: グラフの「縦軸・横軸・面積・傾き」が一つの体系として接続しておらず、グラフごとにバラバラの暗記項目になっている。
処方箋: 紙に縦に3つ並べてv-t、x-t、\(a\)-\(t\) グラフを描き、「面積を取ると上に上がる」「傾きを取ると下に下がる」の階段関係を体で覚える。a-t→v-t→x-tは積分(面積)方向、x-t→v-t→a-tは微分(傾き)方向。具体的な問題で同じ運動を3つのグラフで描き直す訓練を週1回やる。

§12.5 クセ⑤: 文字式忌避クセ(記述問題・列車問題で頻発)

症状: 問題文に数値が出てこないと「これは難しい問題だ」と感じて手が止まる。
典型的な現れ: 第3問 問3(列車の前後端通過・答えが文字式 \(\displaystyle\frac{v-u}{a}\), \(\displaystyle\frac{v^2-u^2}{2a}\))、第3問 問1(速さの大小関係を文字で)
診断: 「物理=数値計算」というイメージが固定化している。文字式は数値が決まる前の物理の本質構造であるという認識が弱い。
処方箋: 数値問題を解いた後に、必ず「これを文字式で書くとどうなるか」を1分だけ考える。例えば問4⑤を解いたら「もし初速度を \(v_0\)、加速度を \(a\)、変位を \(x\) としたら、時刻 \(t\) はどう書ける?」と自問する。文字式は数値問題の親であって、子ではない。

§12.6 自分のクセを1つに絞ろう

5つすべてに当てはまる人はいません。自分が一番痛いところはどれかを1つだけ選んでください。複数選ぶと意識が分散して結局どれも改善しません。

1つに絞れたら、次のテストまでの間、毎日の問題演習でそのクセが出ていないかだけをチェックする。これが最短の改善ルートです。物理は少しずつ全範囲を上げる科目ではなく、思考のクセを一つずつ書き換える科目です。

§12.5 このテストの得点分布・出題傾向分析

この記事を読んでくれているあなたは、自分の答案だけを見ているはずです。でも、他の人がどこでつまずいたかを知ると、自分のクセが本当に「あるある」なのか、それとも「自分だけ」のクセなのかが見えてきます。

4学年233人全員の採点結果から、このテストの傾向を分析しました。

§12.5.1 全体統計

項目 数値
受験者数 233人
満点 100点
平均点 58.8点
最高点 94点
最低点 23点

§12.5.2 得点分布(4学年全体)

下の表で、自分の点数がどのあたりに位置するか確認してみてください。

得点帯 人数 割合 分布
91〜100点 2人 0.9%
81〜90点 17人 7.3% ▌▌▌▌▌▌▌
71〜80点 36人 15.5% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
61〜70点 47人 20.2% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
51〜60点(最頻層) 62人 26.6% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
41〜50点 44人 18.9% ▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌▌
31〜40点 16人 6.9% ▌▌▌▌▌▌▌
21〜30点 9人 3.9% ▌▌▌▌

もっとも多いゾーンは 51〜60点(26.6%)。70点を超えると上位約23%、80点を超えると上位約8%、90点を超えると上位1%以内です。

§12.5.3 大問別の得点率

このテストの「重さ」は大問ごとに大きく違いました。

大問 配点 全体得点率 難易度
第1問(計算基本) 68点 57.7% 🟡 中
第2問(グラフ) 24点 75.3% 🟢 取りやすい
第3問(記述・斜面・列車) 8点 18.6% 🔴 極端に低い

第3問の得点率18.6%は、配点8点に対して平均1.5点しか取れていない計算です。これは「分からなくて手が止まった」「文字式を見て諦めた」層が圧倒的に多かったことを意味します。

§12.5.4 つまずきが集中した設問ワースト5

正答率の低かった設問を順に並べると、共通する「思考のクセ」が浮かび上がります。

順位 設問 正答率 つまずきの正体
1位 第3問 問1(斜面3パターン速さ比較) 6.9% エネルギー保存の発想に飛べない/文字式忌避
2位 第3問 問3(2)(列車の長さ) 10.9% 文字式忌避/「列車の長さ=動いた距離」が見抜けない
3位 第3問 問2(斜面A静止+B上向きの\(v\)-\(t\) グラフ) 21.9% 速度の向きと加速度の向きの独立性が見えない
4位 第2問 問3(\(v\)-\(t\) グラフから運動図並べ替え) 24.2% グラフの正負と動く向きの対応・グラフ二重関係未接続
5位 第1問 問2 ④(499874 → 有効数字2桁) 26.2% 四捨五入で繰り上がり \(\to\) 5.0×10⁵ の処理ミス
気づき: ワースト1〜4はすべて第2問・第3問の概念理解問題です。第1問の計算問題は配点が大きいわりに取れていますが、概念を問う問題で点数が落ちる構造になっています。これは §12 で診断した クセ①「公式即代入」+ クセ④「グラフ二重関係未接続」+ クセ⑤「文字式忌避」がデータでも裏付けされたということです。

§12.5.5 取れていた設問ベスト5

逆に、多くの人が取れた設問です。これらは「物理基礎の最低限の理解」が定着している証拠なので、できなかった人は最優先で復習してください。

順位 設問 正答率
1位 第1問 問3 ④向き(東向き) 97.4%
2位 第1問 問4 ①向き(左向き) 96.6%
3位 第1問 問3 ②向き(東向き) 95.7%
4位 第1問 問5 ①向き(川下の向き) 94.0%
5位 第1問 問3 ①大きさ(\(3.5 \, \text{m}/\text{s}\)) 91.3%
気づき: 上位5問のうち4問が「向き」の答えです。問題文に「東向きに〜」「左向きに〜」と書かれていれば、それをそのまま答えに書けばよい。みんなが取れる「向き」を落とした人は、設問読解の段階で雑になっている可能性があります。

§12.5.6 興味深い対比 ─「向き」は取れて「大きさ」を落とす

第1問 問4 を見ると、こんな対比があります。

設問 向きの正答率 大きさの正答率
問4 ①(左向き加速) 96.6% 87.3% −9.3%
問4 ③(西向き等加速度) 57.1% 27.2% −29.9%
問4 ⑥(左向き減速 \(\to\) 折り返し) 68.2% 41.0% −27.2%

「向き」より「大きさ」の正答率が大きく落ちる設問では、計算自体でつまずいていることを示しています。特に問4③(西向きに10m/sで等加速度、10秒で60m進む、加速度の大きさは?)では 30%近い差 が出ています。

これは クセ①「公式即代入」 の典型的な現れ方。問題を読んで「v=v₀+at」を試そうとして、時間と距離しか与えられていないことに気づかず公式を選び間違える。あるいは正しい公式 \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) を選んでも、移項計算で詰まる、という流れです。

§12.5.7 次のテストへの重点復習項目

このデータをもとに、次の期末考査までの優先復習リストを作りました。

🥇 最優先(正答率 30%以下)
・斜面の運動とエネルギー(第3問 問1の発想)
・列車のような「文字式で答える等加速度問題」(第3問 問3)
・斜面上の\(v\)-\(t\) グラフ読み取り(第3問 問2)
・運動図と\(v\)-\(t\) グラフの対応(第2問 問3)
・有効数字の繰り上がり処理(第1問 問2④)
・等加速度公式3本の使い分け(第1問 問4②③)🥈 中優先(正答率 30〜60%)
・川舟の鴨問題型の3段視点切替(第1問 問5⑤)
・\(v\)-\(t\) グラフの「戻り変位」の理解(第2問 問1⑥)
・有効数字の科学的記数法(第1問 問2 全般)🥉 維持(正答率 60%以上)
・基本的な相対速度(第1問 問3)
・\(v\)-\(t\) グラフからの値読み取り(第2問 問1 ①②③)
・川舟の岸視点速度(第1問 問5①)

大事なのは、「最優先」のリストにある項目を完璧にしてから「中優先」に進むこと。全部を平均的に上げようとすると、結局どれも中途半端になります。苦手なところに集中投下するのが、限られた時間で点数を最大化する道です。

§12.5.8 このデータから言えるたった1つのこと

233人の結果を見て、はっきり言えることがあります。

このテストの得点差は「計算ができるかどうか」ではなく、「概念を絵で描けるかどうか」で決まっている。

第1問の計算問題(68点分)の得点率は57.7%。第3問の概念問題(8点分)の得点率は18.6%。
ふつう「概念問題は配点が少ないから後回し」と考える人が多いのですが、データは逆を示しています。配点が少ない第3問こそ、上位層と下位層の差が出る分水嶺になっていたのです。

次のテストでも、必ず「概念を絵で描く力」を問う設問が混ざります。そのとき、§12 で診断した5大「思考のクセ」のどれを書き換えておけたか、が結果を決めます。

§13. 次のステップ

この記事を最後まで読んでくれたあなたへ。物理基礎の最初の中間考査、お疲れさまでした。テストは「終わったらおしまい」ではなく、「終わってからが本番」です。ここで「思考のクセ」を一つでも書き換えておけば、期末・夏休み明けの試験で必ず差が出ます。

§13.1 復習の手順

この記事を読んだ直後にやってほしいことを3つだけ挙げます。

① 自分の「思考のクセ」を1つ紙に書く
§12 の5大処方箋(公式即代入 / 向き軽視 / 視点切替 / グラフ二重関係 / 文字式忌避)のうち、自分に一番当てはまるものを1つだけ選んで、紙に書いてください。複数選ばないこと。一番痛いところに集中するのがコツです。
② 次のテスト範囲を見て「同じクセが出そうな問題」を予測する
期末考査の範囲表を見て、自分のクセが顔を出しそうな単元を予測してください。等加速度なら自由落下・鉛直投げ上げ、相対速度なら2次元の相対速度(高1の範囲外なら高2で)、グラフなら力学全般。「予測する」ことで、テスト中に自分のクセに気づきやすくなります
③ 間違えた問題だけを、1週間後にもう一度解く
全部解き直すのではなく、間違えた問題だけを1週間後にもう一度。このとき、必ず白紙の状態から解いてください。模範解答を見ずに、自分の頭で「現象を絵にする → 公式を選ぶ → 代入 → 検算」の4ステップをやり直す。これが一番効きます。

§13.2 もっと深く学びたい人へ

「物理の解説をもっと色んな問題で読みたい」「自分の弱点を診断したい」という人には、まことの高校物理教室サイト内の以下のページが役立ちます。すべて無料です。

ページ こんな人におすすめ
ドクター・メソッド・シリーズ Hub 「思考のクセを書き換える」勉強法を体系的に学びたい人。全18記事
物理カルテ診断 自分の物理の「症状」を診断したい人。Dr.まことの簡易カルテ
YouTube 解説動画一覧 活字より動画で見たい人。本サイトのYouTube関連記事
指導哲学・プロフィール 「なぜ暗記物理を排するのか」という背景哲学を知りたい人

§13.3 最後に

物理基礎の最初の中間考査は、「物理がこれから得意になるか苦手になるか」の分岐点です。点数が良かった人も悪かった人も、ここで「思考のクセ」を書き換えておけば、次のテストでさらに伸びます。逆に、点数だけ見て「次は頑張ろう」で終わらせると、同じクセで同じ罠にハマります。

君のテストで間違えた1問が、3か月後の君を作ります。その1問を、今日ちゃんと書き換えてください

まこと先生

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

800+解説記事
11,200YouTube登録者
4プレミアムパック
14指導歴
🎯現在、全6分野制覇を目指してプレミアムパックを制作中(5/6完成)。制作ロードマップを見る →

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