無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「抵抗率と抵抗の温度変化」【高校物理対応】

今回の問題

electromagnetic#26

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「抵抗率と抵抗の温度変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電気抵抗と形状の関係: 抵抗\(R\)が長さ\(l\)に比例し、断面積\(S\)に反比例すること (\(R \propto \displaystyle\frac{l}{S}\)) を理解していることが基本となります。
  • 抵抗率の定義: 電気抵抗\(R\)を、抵抗率\(\rho\)、長さ\(l\)、断面積\(S\)で表す公式 \(R = \rho \displaystyle\frac{l}{S}\) を正しく使えることが重要です。
  • 抵抗の温度変化: \(t\)[℃]のときの抵抗\(R_t\)と、\(0\)[℃]のときの抵抗\(R_0\)、抵抗の温度係数\(\alpha\)の関係式 \(R_t = R_0(1+\alpha t)\) を用いて、未知の量を計算できるかが問われます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、抵抗が長さに比例するという単純な関係を用いて、長さが2倍になったときの抵抗値を計算します。
  2. (2)では、抵抗率の公式 \(R = \rho \displaystyle\frac{l}{S}\) を\(\rho\)について解き、与えられた数値を代入して抵抗率を求めます。単位の換算に注意が必要です。
  3. (3)では、抵抗の温度変化の公式 \(R_t = R_0(1+\alpha t)\) を\(\alpha\)について解き、問題文で与えられた0℃と100℃のときの抵抗値を代入して温度係数を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
電気抵抗は、材質と断面積が同じであれば、長さに比例します。問題文では、長さ\(1.0 \, \text{m}\)の金属線の\(0\)[℃]における抵抗が与えられています。求めるのは、同じ金属線で長さが\(2.0 \, \text{m}\)になったときの抵抗です。長さが2倍になるので、抵抗も2倍になる、という比例計算で答えを導き出します。
この設問における重要なポイント

  • 電気抵抗は、導線の長さに比例する (\(R \propto l\))。
  • 問題文から必要な情報(基準となる長さと抵抗値)を正確に読み取る。

具体的な解説と立式
問題文より、長さ \(l_1 = 1.0 \, \text{m}\) の金属線の\(0\)[℃]における抵抗は \(R_1 = 5.0 \times 10^{-2} \, \Omega\) です。
求めるのは、長さ \(l_2 = 2.0 \, \text{m}\) のときの抵抗 \(R_2\) です。
抵抗は長さに比例するので、次の関係が成り立ちます。
$$ \frac{R_2}{R_1} = \frac{l_2}{l_1} $$
したがって、\(R_2\)は次のように計算できます。
$$ R_2 = R_1 \times \frac{l_2}{l_1} \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 電気抵抗と長さの比例関係: \(R \propto l\)
計算過程

式①に与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
R_2 &= (5.0 \times 10^{-2}) \times \frac{2.0}{1.0} \\[2.0ex]&= (5.0 \times 10^{-2}) \times 2.0 \\[2.0ex]&= 10 \times 10^{-2} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-1} \, [\Omega]\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると \(0.10 \, \Omega\) となります。

計算方法の平易な説明

抵抗の大きさは導線の長さに比例します。長さが\(1.0 \, \text{m}\)から\(2.0 \, \text{m}\)へと2倍になっているので、抵抗も単純に2倍になります。もとの抵抗 \(5.0 \times 10^{-2} \, \Omega\) を2倍して、\(10 \times 10^{-2} \, \Omega\)、つまり \(0.10 \, \Omega\) が答えです。

結論と吟味

\(0\)[℃]のとき、長さが\(2.0 \, \text{m}\)のこの金属線の抵抗は \(1.0 \times 10^{-1} \, \Omega\) (または \(0.10 \, \Omega\)) です。物理法則から導かれた妥当な値です。

解答 (1) \(1.0 \times 10^{-1} \, \Omega\)

問(2)

思考の道筋とポイント
\(0\)[℃]における抵抗率 \(\rho_0\) を求める問題です。抵抗率の公式 \(R = \rho \displaystyle\frac{l}{S}\) を使います。この式を \(\rho_0\) について解き、\(0\)[℃]における抵抗 \(R_0\)、長さ \(l\)、断面積 \(S\) の値を代入します。ここで最も注意すべきは単位の換算です。断面積が \(\text{mm}^2\) で与えられているため、これを基本単位である \(\text{m}^2\) に直してから計算する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗率の公式 \(R = \rho \displaystyle\frac{l}{S}\) を正しく適用する。
  • 単位の換算を正確に行う。特に \(1 \, \text{mm}^2 = (10^{-3} \, \text{m})^2 = 10^{-6} \, \text{m}^2\) であることを理解しているか。

具体的な解説と立式
抵抗率の公式は、
$$ R = \rho \frac{l}{S} $$
です。\(0\)[℃]における抵抗率を \(\rho_0\)、抵抗を \(R_0\) とすると、
$$ R_0 = \rho_0 \frac{l}{S} $$
となります。これを \(\rho_0\) について解くと、
$$ \rho_0 = R_0 \frac{S}{l} \quad \cdots ② $$
問題文より、\(0\)[℃]のとき、長さ \(l = 1.0 \, \text{m}\) の金属線の抵抗は \(R_0 = 5.0 \times 10^{-2} \, \Omega\) です。
断面積 \(S\) は \(1.0 \, \text{mm}^2\) なので、これを \(\text{m}^2\) に換算します。
\(1 \, \text{mm} = 10^{-3} \, \text{m}\) なので、
$$
\begin{aligned}
S &= 1.0 \, \text{mm}^2 \\[2.0ex]&= 1.0 \times (10^{-3} \, \text{m})^2 \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-6} \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電気抵抗と抵抗率の関係: \(R = \rho \displaystyle\frac{l}{S}\)
計算過程

式②に各値を代入して \(\rho_0\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\rho_0 &= (5.0 \times 10^{-2}) \times \frac{1.0 \times 10^{-6}}{1.0} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{-2} \times 1.0 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{-8} \, [\Omega \cdot \text{m}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

物質固有の抵抗のしやすさを表す「抵抗率」を求めます。公式は「抵抗率 = 抵抗 × 断面積 ÷ 長さ」です。計算する前に、単位をメートル(m)に揃える必要があります。断面積 \(1.0 \, \text{mm}^2\) は \(1.0 \times 10^{-6} \, \text{m}^2\) です。これらの値を公式に当てはめると、\((5.0 \times 10^{-2} \, \Omega) \times (1.0 \times 10^{-6} \, \text{m}^2) \div (1.0 \, \text{m})\) となり、答えは \(5.0 \times 10^{-8} \, \Omega \cdot \text{m}\) となります。

結論と吟味

\(0\)[℃]のとき、この金属線の抵抗率は \(5.0 \times 10^{-8} \, \Omega \cdot \text{m}\) です。単位も正しく、物理的に妥当な値です。

解答 (2) \(5.0 \times 10^{-8} \, \Omega \cdot \text{m}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
抵抗の温度係数 \(\alpha\) を求める問題です。抵抗の温度変化を表す公式 \(R_t = R_0(1+\alpha t)\) を利用します。この式を \(\alpha\) について解き、問題文で与えられている \(0\)[℃]のときの抵抗 \(R_0\) と \(100\)[℃]のときの抵抗 \(R_{100}\) の値を代入して計算します。温度 \(t\) には \(100\)[℃]を代入します。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗の温度変化の公式 \(R_t = R_0(1+\alpha t)\) を正しく使える。
  • 式を求めたい変数(今回は\(\alpha\))について正確に変形できる。
  • 温度変化 \(\Delta t\) はセルシウス温度[℃]でも絶対温度[K]でも同じ値であるため、温度係数の単位 [/K] と [/℃] は同じ意味で使われることを理解している。

具体的な解説と立式
\(t\)[℃]のときの抵抗を \(R_t\)、\(0\)[℃]のときの抵抗を \(R_0\)、抵抗の温度係数を \(\alpha\) とすると、次の関係式が成り立ちます。
$$ R_t = R_0 (1 + \alpha t) \quad \cdots ③ $$
この問題では、\(t = 100\)[℃]のときの抵抗 \(R_{100} = 7.5 \times 10^{-2} \, \Omega\) と、\(0\)[℃]のときの抵抗 \(R_0 = 5.0 \times 10^{-2} \, \Omega\) が与えられています。
式③を \(\alpha\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
R_t &= R_0 + R_0 \alpha t \\[2.0ex]R_t – R_0 &= R_0 \alpha t \\[2.0ex]\alpha &= \frac{R_t – R_0}{R_0 t}
\end{aligned}
$$
この式に、\(t=100\)、\(R_{100}\)、\(R_0\) の値を代入します。

使用した物理公式

  • 抵抗の温度変化: \(R_t = R_0(1+\alpha t)\)
計算過程

\(\alpha\) を求める式に、具体的な値を代入します。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= \frac{R_{100} – R_0}{R_0 \times 100} \\[2.0ex]&= \frac{(7.5 \times 10^{-2}) – (5.0 \times 10^{-2})}{(5.0 \times 10^{-2}) \times 100} \\[2.0ex]&= \frac{2.5 \times 10^{-2}}{5.0 \times 10^{-2} \times 10^2} \\[2.0ex]&= \frac{2.5 \times 10^{-2}}{5.0} \\[2.0ex]&= 0.50 \times 10^{-2} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^{-3} \, [/ \text{K}]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「温度係数」とは、温度が1℃(または1K)上がるごとに、抵抗がもとの何倍だけ増加するかを示す割合のことです。まず、温度が100℃上昇したことによる抵抗の増加分を計算します。\(7.5 \times 10^{-2} – 5.0 \times 10^{-2} = 2.5 \times 10^{-2} \, \Omega\) です。この増加分が、もとの抵抗 \(5.0 \times 10^{-2} \, \Omega\) の何倍かを計算すると、\( (2.5 \times 10^{-2}) \div (5.0 \times 10^{-2}) = 0.5 \) 倍です。これは100℃での増加割合なので、1℃あたりの増加割合(温度係数)は、これを100で割って \(0.5 \div 100 = 0.005 = 5.0 \times 10^{-3} \, \text{/K}\) となります。

結論と吟味

この金属線の抵抗の温度係数は \(5.0 \times 10^{-3} \, \text{/K}\) です。単位も正しく、物理的に妥当な値です。

解答 (3) \(5.0 \times 10^{-3} \, \text{/K}\)

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 抵抗に関する3つの基本法則の理解と適用:
    • 核心: この問題は、(1) 抵抗と形状の関係 (\(R \propto l\))、(2) 抵抗率の定義 (\(R = \rho l/S\))、(3) 抵抗の温度変化 (\(R_t = R_0(1+\alpha t)\)) という、電気抵抗に関する3つの柱となる法則を、それぞれ独立した設問で正確に適用できるかを問うています。
    • 理解のポイント: これら3つの法則が、それぞれ抵抗という物理量の異なる側面(形状依存性、材質依存性、温度依存性)を記述していることを理解することが重要です。どの設問がどの法則に対応するのかを瞬時に判断できることが、高得点への鍵となります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 基準温度が0℃でない場合: \(t_1\)[℃]での抵抗が\(R_1\)、\(t_2\)[℃]での抵抗が\(R_2\)の場合、\(R_1 = R_0(1+\alpha t_1)\) と \(R_2 = R_0(1+\alpha t_2)\) の連立方程式を解くことになります。比を取ると \(R_2/R_1 = (1+\alpha t_2)/(1+\alpha t_1)\) となり、\(R_0\)を消去して\(\alpha\)を求めることができます。
    • 抵抗率の温度変化: 抵抗率も同様に温度変化し、\(\rho_t = \rho_0(1+\alpha t)\) と表せます。抵抗率の温度係数を問われる場合もありますが、抵抗の温度係数と値は同じです。
    • グラフ問題: 抵抗\(R\)と温度\(t\)の関係がグラフで与えられ、グラフの切片から\(R_0\)を、傾きから\(\alpha\)を読み取る問題も頻出です。\(R_t = (R_0\alpha)t + R_0\) と見れば、グラフが直線になることがわかります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 単位のチェック: 問題文に \(\text{mm}^2\) のような基本単位でないものを見つけたら、計算を始める前に必ず \(\text{m}^2\) に変換し、メモしておきましょう。これが最もミスをしやすいポイントです。
    2. どの法則を使うか判断: 設問が「長さが変わったら?」と問えば比例関係、「抵抗率は?」と問えば\(R=\rho l/S\)、「温度が変わったら?」と問えば\(R_t=R_0(1+\alpha t)\)と、キーワードと公式を結びつけます。
    3. 基準値の確認: (3)のような温度変化の問題では、どの温度の抵抗値が基準(\(R_0\))になるのかを明確に意識することが重要です。この問題では\(0\)[℃]が基準です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 単位換算のミス(特に面積):
    • 誤解: \(1.0 \, \text{mm}^2 = 1.0 \times 10^{-3} \, \text{m}^2\) と間違える。
    • 対策: 面積は長さの2乗であることを常に意識し、\(1 \, \text{mm}^2 = (1 \, \text{mm})^2 = (10^{-3} \, \text{m})^2 = 10^{-6} \, \text{m}^2\) という変換プロセスを一度は自分で書いて確認しましょう。
  • 温度係数の式の変形ミス:
    • 誤解: \(R_t = R_0(1+\alpha t)\) から、\(\alpha = \displaystyle\frac{R_t – 1}{R_0 t}\) のように、分配法則を忘れて変形してしまう。
    • 対策: 式変形は焦らず一段階ずつ行いましょう。\(R_t = R_0 + R_0 \alpha t\) と展開してから、移項、割り算と進めることで、ケアレスミスを防げます。
  • 温度の単位:
    • 誤解: 温度係数の単位が [/K] なので、セルシウス温度[℃]を絶対温度[K]に変換(273を足す)しようとしてしまう。
    • 対策: 温度係数の定義式 \(R_t = R_0(1+\alpha t)\) の \(t\) はセルシウス温度[℃]です。温度「変化」の幅は、[℃]でも[K]でも同じ(例:100℃の上昇は100Kの上昇と同じ)なので、単位が [/K] でも [/℃] でも計算結果は変わりません。この式では \(t\) にセルシウス温度をそのまま代入すると覚えましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(R = \rho \displaystyle\frac{l}{S}\):
    • 選定理由: (2)で問われている「抵抗率\(\rho\)」を含む唯一の基本公式だからです。抵抗、形状、材質を結びつけるこの式以外に選択肢はありません。
    • 適用根拠: 抵抗\(R\)というマクロな物理量を、材質固有のミクロな性質である抵抗率\(\rho\)と、導線の形状\(l, S\)に分解して考えるための、物理学の基本的なアプローチを数式化したものです。
  • \(R_t = R_0(1+\alpha t)\):
    • 選定理由: (3)で問われている「温度係数\(\alpha\)」を含む、抵抗の温度変化を表す最も基本的な公式だからです。
    • 適用根拠: 多くの金属では、ある温度範囲内で抵抗が温度にほぼ比例して増加することが実験的に知られています。この式はその実験結果を一次関数で近似したものです。\(R_0\)が切片、\(R_0\alpha\)が傾きに対応する、現象のモデル化です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

    • 指数の計算は最後にまとめる: (2)の計算 \((5.0 \times 10^{-2}) \times (1.0 \times 10^{-6})\) では、まず係数部分 \(5.0 \times 1.0 = 5.0\) を計算し、次に指数部分 \(10^{-2} \times 10^{-6} = 10^{-8}\) を計算して、最後に合体させるとミスが減ります。
    • 分数の計算は先に約分: (3)の計算 \(\displaystyle\frac{2.5 \times 10^{-2}}{5.0 \times 10^{-2} \times 100}\) では、まず分子と分母にある共通の \(10^{-2}\) を約分して消すことで、式がシンプルになり、計算ミスを防げます。
    • 有効数字の意識: この問題では有効数字2桁で与えられているため、最終的な答えも2桁で答えるのが適切です。(1)の答えを \(0.1 \, \Omega\) ではなく \(0.10 \, \Omega\) や \(1.0 \times 10^{-1} \, \Omega\) と書く、(3)の答えを \(0.005 \, \text{/K}\) ではなく \(5.0 \times 10^{-3} \, \text{/K}\) と書くなど、日頃から意識することが大切です。
    • 逆算による検算: (3)で求めた \(\alpha = 5.0 \times 10^{-3} \, \text{/K}\) を使って、以下の計算で問題文の値と一致するか確かめることで、計算の正しさを確認できます。
      $$
      \begin{aligned}
      R_{100} &= R_0(1+\alpha \times 100) \\[2.0ex]&= (5.0 \times 10^{-2}) \times (1 + 5.0 \times 10^{-3} \times 100) \\[2.0ex]&= (5.0 \times 10^{-2}) \times (1+0.5) \\[2.0ex]&= 7.5 \times 10^{-2} \, [\Omega]\end{aligned}
      $$

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