今回の問題
dynamics#56【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ばねを介した弾性衝突と保存則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量保存則: 2つの台車を一つの「系」とみなすと、なめらかな水平面上にあるため、水平方向には外力が働きません。したがって、衝突の全過程を通じて、系の水平方向の運動量は常に保存されます。
- 力学的エネルギー保存則: 問題文に「衝突のときに力学的エネルギーが保存される」と明記されています。これは、ばねの弾性力という保存力のみが仕事をし、摩擦などによるエネルギー損失がないことを意味します。したがって、衝突の全過程を通じて、系の力学的エネルギー(運動エネルギーと弾性エネルギーの和)は常に保存されます。
- 最も接近する条件: 2つの台車が最も接近するのは、ばねの縮みが最大になるときです。この瞬間、両者の相対速度が0、すなわち床から見た速度が等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、台車AとBを一つの系とみなし、運動量保存則を適用します。衝突前の状態と、両台車の速度が等しくなった状態とで式を立て、そのときの速度\(V\)を求めます。
- (2)では、(1)で求めた速度\(V\)を使い、力学的エネルギー保存則を適用します。衝突前の系の力学的エネルギーと、ばねが最大に縮んだとき(両台車の速度が\(V\)のとき)の力学的エネルギーが等しいという式から、最大の縮み\(d\)を求めます。
- (3)では、衝突が完了し、Aがばねから離れた後の状態を考えます。このとき、ばねは自然長に戻っています。衝突前と衝突後で、運動量保存則と力学的エネルギー保存則の2つの式を立て、これらを連立させて解くことで、両台車の最終的な速度\(V_A, V_B\)を求めます。