「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(波動36〜40問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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波動範囲 36~40

36 屈折の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法(速さの比を直接用いる解法)を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 屈折率を用いて考える解法
      • 主たる解法が、屈折の法則を速さの比 \(\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\) で直接扱うのに対し、別解では、まず空気に対する水の屈折率 \(n\) を定義し、屈折の法則を \(\sin\theta_1 = n \sin\theta_2\) の形で表現して解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の一般化: 屈折率という概念は、光の分野で標準的に用いられる非常に重要な物理量です。音波の問題にもこの概念を適用することで、波に共通する法則の表現方法を学び、思考を一般化することができます。
    • 公式適用の訓練: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) という形の屈折の法則は非常に応用範囲が広いです。この形式の公式を使いこなす良い訓練になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「全反射とその条件(音波の場合)」です。前問と同様に、全反射が起こる条件と臨界角を問う問題ですが、今回は光ではなく音波を扱います。空気中と水中での音速の大小関係が、光の場合と逆であることに注意が必要です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 全反射が起こる条件: 波が、屈折率の大きい媒質(波の速さが遅い媒質)から屈折率の小さい媒質(波の速さが速い媒質)へ入射するときにのみ、全反射は起こりうる。
  2. 音速の媒質による違い: 一般に、音速は気体・液体・固体の順に速くなること。この問題では、空気中(気体)より水中(液体)の方が音速が速い。
  3. 臨界角の定義: 屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角のこと。
  4. 屈折の法則(スネルの法則): 2つの媒質中の波の速さを \(v_1, v_2\)、入射角を \(\theta_1\)、屈折角を \(\theta_2\) とすると、\(\displaystyle\frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\) という関係が成り立つこと。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、与えられた音速の値から、空気と水のどちらが「遅い媒質」で、どちらが「速い媒質」かを判断します。
  2. 全反射が起こる方向(遅い媒質 \(\rightarrow\) 速い媒質)を特定します。
  3. 次に、臨界角の条件(屈折角が \(90^\circ\))を屈折の法則の式に代入し、臨界角 \(\theta_0\) の正弦(\(\sin\theta_0\))を計算します。

全反射が起こる場合

思考の道筋とポイント
全反射は、波が「遅い媒質」から「速い媒質」へ進むときにのみ起こりえます。
問題で与えられた音速の値を確認し、空気と水のどちらが遅い媒質かを判断します。

  • 空気中の音速 \(v_{\text{空気}} = 340 \, \text{m/s}\)
  • 水中の音速 \(v_{\text{水}} = 1400 \, \text{m/s}\)

\(v_{\text{空気}} < v_{\text{水}}\) なので、空気が「遅い媒質」、水が「速い媒質」となります。
したがって、全反射が起こるのは、空気中から水中へ音が入射する場合です。
この設問における重要なポイント

  • 全反射は「遅い媒質 \(\rightarrow\) 速い媒質」への入射でのみ起こる。
  • 音速は、空気中よりも水中の方が速い。
  • したがって、音波の場合は「空気 \(\rightarrow\) 水」の入射で全反射が起こりうる。

具体的な解説と立式
問題文より、空気中の音速は \(v_{\text{空気}} = 340 \, \text{m/s}\)、水中の音速は \(v_{\text{水}} = 1400 \, \text{m/s}\) です。
\(v_{\text{空気}} < v_{\text{水}}\) であるため、空気は音波にとって「遅い媒質」(密な媒質)、水は「速い媒質」(疎な媒質)にあたります。
全反射は、波が遅い媒質から速い媒質へ入射する場合に起こりうる現象です。
よって、この場合は「空気中から水中へ」音が進む場合に全反射が起こる可能性があります。

この設問の平易な説明

光の場合、水中は空気中より「進みにくい」場所でしたが、音の場合は逆です。音は分子の振動で伝わるため、分子が密集している液体(水)の方が、気体(空気)よりもずっと速く伝わります。
全反射は、波が「進みにくい場所」から「進みやすい場所」へ向かうときにだけ起こります。音にとっては空気が「進みにくい場所」なので、全反射が起こるのは「空気中から水中へ」進む場合です。

結論と吟味

空気中から水中へ進む場合に全反射が起こりうると結論できました。光の場合(水中→空気)とは逆の関係になる点が重要です。

解答 (問1) 空気中から水中へ進む場合

臨界角 \(\theta_0\) の正弦

思考の道筋とポイント
臨界角 \(\theta_0\) は、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角です。
この条件を、空気中から水中へ入射する場合の屈折の法則に代入します。

  • 入射側:空気(入射角 \(\theta_0\))
  • 屈折側:水(屈折角 \(90^\circ\))

この関係を屈折の法則の式に当てはめて、\(\sin\theta_0\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 入射側が空気、屈折側が水である。
  • 入射角が臨界角 \(\theta_0\)、屈折角が \(90^\circ\)。
  • 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin(\text{空気中の角})}{\sin(\text{水中の角})} = \frac{v_{\text{空気}}}{v_{\text{水}}}\)。

具体的な解説と立式
空気中から水中へ入射する場合を考えます。入射角を \(\theta_0\)、屈折角を \(90^\circ\) として、屈折の法則を立てます。
$$ \frac{\sin \theta_0}{\sin 90^\circ} = \frac{v_{\text{空気}}}{v_{\text{水}}} $$
ここに、与えられた音速の値と \(\sin 90^\circ = 1\) を代入して \(\sin\theta_0\) を求めます。
$$ \frac{\sin \theta_0}{1} = \frac{340}{1400} $$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2} = \frac{v_1}{v_2}\)
  • 臨界角の条件: 屈折角が \(90^\circ\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\sin \theta_0 &= \frac{340}{1400} \\[2.0ex]
&= \frac{34}{140} \\[2.0ex]
&= \frac{17}{70} \\[2.0ex]
&\approx 0.2428\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(0.24\) となります。

この設問の平易な説明

臨界角とは、音がギリギリ水中に飛び出せる(屈折角が90°になる)限界の角度のことです。
この状況を屈折の法則の式に当てはめます。入射角が \(\theta_0\)、屈折角が \(90^\circ\) で、空気中と水中の速さはわかっています。この式を解くことで、\(\sin\theta_0\) の値を計算できます。

結論と吟味

臨界角の正弦は約 \(0.24\) となりました。この値は1より小さいので、物理的に妥当な値です。このときの臨界角 \(\theta_0\) は約 \(14^\circ\) であり、空気中から水面に対してこの角度より大きい入射角で音を入射させると、音は水中に入らずに全て水面で反射(全反射)されることになります。

解答 (問2) 約 \(0.24\)
別解: 屈折率を用いて考える解法

思考の道筋とポイント
光の屈折で標準的に使われる、屈折率 \(n\) を用いたスネルの法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) を使って解く方法です。
まず、基準となる媒質(例えば真空や空気)に対する各媒質の屈折率を定義します。屈折率 \(n\) は、基準媒質中の速さ \(c\) と、その媒質中の速さ \(v\) を用いて \(n=c/v\) と定義されます。
この問題では、空気自体が媒質なので、空気の屈折率を \(n_{\text{空気}}\)、水の屈折率を \(n_{\text{水}}\) とします。速さが遅いほど屈折率が大きくなる関係にあります。
この設問における重要なポイント

  • 屈折率は速さに反比例する (\(n \propto 1/v\))。
  • 空気(遅い)の屈折率 \(n_{\text{空気}}\) > 水(速い)の屈折率 \(n_{\text{水}}\)。
  • 屈折の法則は \(n_{\text{空気}} \sin\theta_{\text{空気}} = n_{\text{水}} \sin\theta_{\text{水}}\) と表せる。

具体的な解説と立式
空気の屈折率を \(n_{\text{空気}}\)、水の屈折率を \(n_{\text{水}}\) とします。屈折率は速さに反比例するので、
$$
\begin{aligned}
\frac{n_{\text{空気}}}{n_{\text{水}}} &= \frac{v_{\text{水}}}{v_{\text{空気}}} \\[2.0ex]
&= \frac{1400}{340} \\[2.0ex]
&= \frac{70}{17}
\end{aligned}
$$
全反射は、屈折率の大きい媒質(空気)から小さい媒質(水)へ入射するときに起こります。
入射角を \(\theta_0\)(空気側)、屈折角を \(90^\circ\)(水側)として、屈折の法則の式を立てます。
$$ n_{\text{空気}} \sin\theta_0 = n_{\text{水}} \sin 90^\circ $$
この式を \(\sin\theta_0\) について解きます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
  • 屈折率と速さの関係: \(n_1/n_2 = v_2/v_1\)
計算過程

立式した \(n_{\text{空気}} \sin\theta_0 = n_{\text{水}} \sin 90^\circ\) を変形します。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_0 &= \frac{n_{\text{水}}}{n_{\text{空気}}} \sin 90^\circ \\[2.0ex]
&= \frac{n_{\text{水}}}{n_{\text{空気}}} \times 1 \\[2.0ex]
&= \frac{v_{\text{空気}}}{v_{\text{水}}} \\[2.0ex]
&= \frac{340}{1400} \\[2.0ex]
&\approx 0.24
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

光の計算でよく使う「屈折率」という道具を、音波の問題でも使ってみる方法です。速さが遅いほど「屈折率が大きい」と定義します。
この問題では、空気の方が水より音が遅いので、空気の屈折率の方が大きくなります。
全反射は屈折率が大きい方(空気)から小さい方(水)へ進むときに起こります。
この条件で、屈折の法則の式 \((\text{空気の屈折率}) \times \sin\theta_0 = (\text{水の屈折率}) \times \sin 90^\circ\) を立てて解くと、同じ答えが得られます。

結論と吟味

主たる解法と完全に同じ結果が得られました。屈折率という概念を導入することで、速さの比を直接使う方法とは異なる視点から問題を解くことができます。特に、複数の媒質が関わる複雑な問題では、各媒質の屈折率を基準に考えるこの方法が有効になることがあります。

解答 約 \(0.24\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 全反射の条件と臨界角:
    • 核心: この問題の根幹は、波の屈折現象の特殊なケースである「全反射」が起こるための2つの条件を正確に理解していることです。
      1. 方向の条件: 全反射は、波が屈折率の大きい媒質(波速が遅い)から小さい媒質(波速が速い)へ進むときにしか起こらない。
      2. 角度の条件: 入射角が、ある特定の角度「臨界角 \(\theta_0\)」よりも大きい必要がある。
    • 理解のポイント:
      • なぜ方向の条件が必要か: 屈折の法則 \(\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2}\) より、屈折角 \(r\) が入射角 \(i\) より大きくなる(光線が法線から離れる)のは、\(v_2 > v_1\) のときだけです。この「離れる」動きが限界(\(r=90^\circ\))に達して初めて、全反射が可能になります。速い媒質から遅い媒質へ進む場合は、必ず法線に近づくため、屈折角が \(90^\circ\) になることはありません。
      • 臨界角の定義: 臨界角は、屈折角がちょうど \(90^\circ\) になる、まさに「限界」の入射角です。このときの状態を屈折の法則の式 \(n_2 \sin\theta_0 = n_1 \sin 90^\circ\) に代入することで、臨界角を求めることができます。
      • 音と光の逆転現象: 光の場合、空気(疎)より水(密)の方が進みにくい(遅い)ですが、音の場合は、空気(疎)より水(密)の方が進みやすい(速い)です。このため、全反射が起こる方向が光と音では逆になります(光:水中→空気中、音:空気中→水中)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光ファイバーの原理: 光ファイバーのコア(屈折率大)からクラッド(屈折率小)へ光が進む際、入射角が臨界角より大きくなるように設計することで、光を全反射させながら効率よく伝送します。
    • プリズムによる全反射: 直角二等辺三角形のプリズムを使い、特定の面で光を全反射させることで、光の進路を90°や180°変えることができます(双眼鏡などに利用)。
    • 水中からの見え方: 水中から空気中を見上げたとき、水面より上に見える景色は、臨界角で決まる特定の円の中にしか見えません。その円の外側は、水底の景色が全反射して映ります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「全反射」「臨界角」のキーワードに注目: これらの言葉が出てきたら、まず「遅い媒質 \(\rightarrow\) 速い媒質」という方向の条件をチェックします。
    2. 速さ(または屈折率)の大小関係を把握する: 問題文で与えられた数値や、物理的な常識(音は固体>液体>気体の順に速い)から、どちらの媒質が速いかを確定させます。
    3. 屈折の法則の式を正しく立てる: 臨界角を求める際は、入射側(遅い媒質)の角度を \(\theta_0\)、屈折側(速い媒質)の角度を \(90^\circ\) として、屈折の法則の式を立てます。
    4. 屈折率の定義に注意: 媒質Iに対する媒質IIの屈折率 \(n_{12} = v_1/v_2\) と、媒質IIに対する媒質Iの屈折率 \(n_{21} = v_2/v_1\) は逆数の関係になります。どちらの屈折率を使っているかを意識することが重要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 光の常識を音に当てはめてしまう:
    • 誤解: 光と同様に、音も空気中より水中の方が遅い(屈折率が大きい)と考えてしまい、全反射の方向を「水中→空気中」と間違える。
    • 対策: 「音は媒質の振動であり、密な媒質ほど速く伝わる」という基本原理を思い出しましょう。気体・液体・固体の順に速くなる、という一般的な傾向を覚えておくことが重要です。光(電磁波)と音(弾性波)では、媒質中での振る舞いが大きく異なることを認識します。
  • 屈折の法則の分子・分母を逆にする:
    • 誤解: 臨界角の計算で、\(\sin\theta_0 = v_{\text{速い}}/v_{\text{遅い}}\) のように、比を逆にしてしまう。
    • 対策: 屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) の形を基本とし、入射側(遅い媒質)と屈折側(速い媒質)を正しく対応させます。\(n_{\text{遅}} \sin\theta_0 = n_{\text{速}} \sin 90^\circ\) より、\(\sin\theta_0 = n_{\text{速}}/n_{\text{遅}} = v_{\text{遅}}/v_{\text{速}}\) となります。「サインの値は1を超えない」ので、もし計算結果が1より大きくなったら、比を逆にした可能性が高いと判断できます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\):
    • 選定理由: 全反射と臨界角は、屈折現象の特殊なケースです。したがって、その現象を支配する基本法則である屈折の法則(スネルの法則)が、思考の出発点となります。
    • 適用根拠: この法則は、媒質の境界を通過するあらゆる波(光、音、水面波など)に普遍的に成り立ちます。臨界角の定義である「屈折角が \(90^\circ\) になる」という条件を、この普遍的な法則に代入することで、特定の状況における入射角(臨界角)を求めることができます。これは、一般的な法則を特殊なケースに適用するという、物理学における基本的な問題解決のアプローチです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 有効数字の処理: 問題文の数値が \(340\) (3桁または2桁), \(1400\) (4桁または2桁) となっていますが、物理の問題では慣例的に与えられた桁数の中で最も少ないものに合わせることが多いです。\(340=3.4 \times 10^2\), \(1400=1.4 \times 10^3\) と解釈し、有効数字2桁で計算するのが妥当です。\(17/70 \approx 0.2428\dots\) を2桁に丸めて \(0.24\) とします。
  • 物理常識の活用: 「音速は 気体 < 液体 < 固体 の順」という知識は、問題を解く上での強力な武器になります。たとえ数値が与えられていなくても、空気と水のどちらが速いかを判断できます。また、「縦波はどこでも伝わるが、横波は固体中しか伝わらない」という豆知識も、関連事項として覚えておくと良いでしょう。

37 屈折の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波面で与えられた屈折の法則」です。波の進行方向を示す射線ではなく、波の位相が揃った面である「波面」の図から、入射角と屈折角を正しく読み取り、屈折率や全反射の条件を考察する問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波面と射線の関係: 波面と、波の進行方向を示す射線は常に垂直に交わること。
  2. 入射角・屈折角の定義: 角度は、射線と境界面の法線(境界面に垂直な線)とのなす角であること。あるいは、波面と境界面とのなす角としても定義できること。
  3. 屈折の法則(スネルの法則): 媒質Iに対する媒質IIの屈折率を \(n\) とすると、\(\displaystyle n = \frac{\sin i}{\sin r}\) が成り立つこと。
  4. 全反射の条件: 全反射は、屈折率の大きい媒質(波速が遅い)から小さい媒質(波速が速い)へ入射するときにのみ起こりうる。屈折率 \(n<1\) の場合、I→IIの屈折で \(r>i\) となるため、逆のII→Iの入射で全反射が起こりうる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、与えられた波面の図から、入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) を特定します。これには、波面に垂直な射線を描いて法線との角度を求める方法と、波面と境界面のなす角を直接使う方法があります。
  2. 屈折の法則の式に \(i\) と \(r\) を代入し、媒質Iに対する媒質IIの屈折率 \(n\) を計算します。
  3. 計算した屈折率 \(n\) の値が1より大きいか小さいか、あるいは屈折の様子から、どちらの媒質が速い(屈折率が小さい)かを判断し、全反射が起こる方向を決定します。
  4. 臨界角の条件(屈折角が \(90^\circ\))を屈折の法則の式に代入し、臨界角 \(\theta_0\) を計算します。

屈折率

思考の道筋とポイント
この問題の最大の注意点は、図に描かれている線が「射線」ではなく「波面」であることです。また、示されている角度も、境界面と波面がなす角です。
屈折の法則で用いる入射角・屈折角は、射線と法線のなす角ですが、幾何学的な関係から「波面と境界面のなす角」に等しくなります。
したがって、図に示された角度をそのまま入射角・屈折角として用いることができます。

  • 媒質Iにおいて、波面と境界面のなす角は \(30^\circ\)。よって入射角 \(i = 30^\circ\)。
  • 媒質IIにおいて、波面と境界面のなす角は \(45^\circ\)。よって屈折角 \(r = 45^\circ\)。

これらの値を屈折の法則の式に代入して、屈折率 \(n\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 図の線は「波面」であり、「射線」ではない。
  • 入射角 \(i\) = (媒質Iの波面)と(境界面)のなす角。
  • 屈折角 \(r\) = (媒質IIの波面)と(境界面)のなす角。
  • 屈折率 \(n\) は、媒質Iに対する媒質IIの屈折率を指す。

具体的な解説と立式
入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) は、それぞれ射線と法線のなす角として定義されますが、幾何学的な考察により、波面と境界面のなす角に等しくなります。
(証明:模範解答の図のように、波面に垂直な射線と境界面に垂直な法線を引くと、錯角や直角三角形の関係から、2つの角度が等しいことがわかります。)
したがって、問題の図から直接、角度を読み取ることができます。

  • 入射角 \(i = 30^\circ\)
  • 屈折角 \(r = 45^\circ\)

媒質Iに対する媒質IIの屈折率 \(n\) は、屈折の法則より、
$$ n = \frac{\sin i}{\sin r} $$
で与えられます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n = \displaystyle\frac{\sin i}{\sin r}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
n &= \frac{\sin 30^\circ}{\sin 45^\circ} \\[2.0ex]
&= \frac{1/2}{1/\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times \sqrt{2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{2}}{2} \quad \left( = \frac{1}{\sqrt{2}} \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この問題の図は、波の山の連なり(波面)を表しています。波の進む向き(射線)は、この山の連なりと常に垂直です。
屈折の法則で使う角度(入射角・屈折角)は、波の進む向きと境界面の垂線との角度ですが、実は図に描かれている「波面と境界面との角度」と全く同じになります。
なので、図の \(30^\circ\) と \(45^\circ\) をそのまま公式に入れて屈折率を計算できます。

結論と吟味

屈折率 \(n\) は \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) (\(\approx 0.707\)) となりました。屈折率が1より小さいということは、媒質IIの方が媒質Iよりも波の速さが速いことを意味します。図を見ると、屈折角が入射角より大きくなっている(\(45^\circ > 30^\circ\))ことから、波が法線から遠ざかるように屈折しており、これは速い媒質へ入ったときの特徴と一致します。

解答 (屈折率) \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\)

全反射が起こる場合と臨界角

思考の道筋とポイント
1. 全反射が起こる場合
全反射は、波が「遅い媒質」から「速い媒質」へ入射するときにのみ起こりえます。
先ほどの計算で、媒質Iに対する媒質IIの屈折率 \(n\) は \(1/\sqrt{2}\) であり、1より小さいです。
屈折率の定義 \(n = v_1/v_2\) より、\(v_1/v_2 < 1\)、すなわち \(v_1 < v_2\) であることがわかります。
つまり、媒質Iが「遅い媒質」、媒質IIが「速い媒質」です。
したがって、全反射が起こるのは、媒質Iから媒質IIへ入射する場合です。

2. 臨界角
臨界角 \(\theta_0\) は、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角です。
この条件を、媒質Iから媒質IIへ入射する場合の屈折の法則に代入します。

  • 入射側:媒質I(入射角 \(\theta_0\))
  • 屈折側:媒質II(屈折角 \(90^\circ\))

この関係を屈折の法則の式に当てはめて、\(\theta_0\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • \(n < 1 \rightarrow v_1 < v_2\)。媒質Iが遅く、媒質IIが速い。
  • 全反射は「遅い \(\rightarrow\) 速い」、つまり「I \(\rightarrow\) II」の入射で起こる。
  • 臨界角の計算では、入射角が \(\theta_0\)、屈折角が \(90^\circ\)。

具体的な解説と立式
全反射が起こる場合
屈折率 \(n = \displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \frac{1}{\sqrt{2}} < 1\) より、\(v_1 < v_2\) である。
全反射は、波の速さが遅い媒質から速い媒質へ入射するときに起こるため、媒質Iから媒質IIへ入射する場合に起こりうる。

臨界角
媒質Iから媒質IIへ入射する場合を考えます。入射角を \(\theta_0\)、屈折角を \(90^\circ\) として、屈折の法則を立てます。
$$ \frac{\sin \theta_0}{\sin 90^\circ} = \frac{v_1}{v_2} = n $$
ここに、\(n = 1/\sqrt{2}\) と \(\sin 90^\circ = 1\) を代入して \(\sin\theta_0\) を求めます。
$$ \frac{\sin \theta_0}{1} = \frac{1}{\sqrt{2}} $$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r} = n\)
  • 臨界角の条件: 屈折角が \(90^\circ\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\sin \theta_0 &= \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{aligned}
$$
\(\sin\theta_0 = 1/\sqrt{2}\) となる角度は \(45^\circ\) なので、
$$ \theta_0 = 45^\circ $$

この設問の平易な説明

屈折率が1より小さいということは、波が媒質IIに入るとスピードアップすることを意味します。全反射は、この「スピードアップ」する場合にのみ起こりえます。したがって、媒質IからIIへ入射する場合です。
臨界角は、屈折角が \(90^\circ\) になる特別な入射角です。この条件を屈折の法則の式に入れて計算すると、\(\sin\theta_0 = 1/\sqrt{2}\) となり、これは \(45^\circ\) のサインの値なので、臨界角は \(45^\circ\) とわかります。

結論と吟味

全反射は媒質IからIIへ入射する場合に起こり、その臨界角は \(45^\circ\) であると求められました。
これは、媒質Iから \(45^\circ\) 以上の角度で入射させると、波は媒質IIに入れずに全て反射されることを意味します。

解答 (全反射が起こる場合) Iから入射する場合, (臨界角) \(45^\circ\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波面と射線の関係 および 屈折角の定義:
    • 核心: この問題の根幹は、図で与えられた「波面」と「境界面とのなす角」から、屈折の法則に必要な「入射角」と「屈折角」を正しく導き出す点にあります。
    • 理解のポイント:
      • 波面 \(\perp\) 射線: 波面(波の位相が揃った面)と射線(波の進行方向)は常に垂直である、という関係が基本です。
      • 2つの角度定義の等価性: 屈折の法則で用いられる角度には、等価な2つの定義があります。
        1. 定義1(射線基準): (射線)と(境界面の法線)のなす角。
        2. 定義2(波面基準): (波面)と(境界面)のなす角。

        幾何学的に、この2つの定義による角度は常に等しくなります。この問題では、図に定義2の角度が直接与えられているため、それをそのまま入射角・屈折角として使えることに気づくのが最大の鍵です。

      • 早合点の危険性: 図の線を射線だと早合点すると、境界面とのなす角から法線とのなす角を計算しようとして、\(i=90^\circ-30^\circ=60^\circ\) のように誤った角度を導いてしまいます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ホイヘンスの原理との関連: 前問33のホイヘンスの原理による作図問題は、この問題の逆の操作と考えることができます。波面と境界面のなす角(入射角)から、速さの比を用いて屈折後の波面(と屈折角)を作図するのが前問、波面と境界面のなす角(入射角・屈折角)から速さの比(屈折率)を計算するのが本問です。
    • 波長を作図から求める問題: 図に波面が複数描かれている場合、波面と波面の間隔が波長 \(\lambda\) に対応します。図から入射側と屈折側の波長 \(\lambda_1, \lambda_2\) を読み取り、屈折の法則 \(\frac{\lambda_1}{\lambda_2} = \frac{\sin i}{\sin r}\) を検証する問題などに応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 図の線が「波面」か「射線」かを確認: 問題文を注意深く読み、図に描かれているのがどちらなのかを最初に確定させます。これが最も重要なステップです。
    2. 角度が何と何のなす角かを確認: 図に示された角度が、「法線」となす角か、「境界面」となす角かを明確にします。
    3. 入射角・屈折角を特定する: 上記の確認に基づき、屈折の法則に代入すべき入射角 \(i\) と屈折角 \(r\) を決定します。波面の図であれば、境界面とのなす角をそのまま使えます。
    4. 屈折率と速さの関係を判断する: 計算した屈折率 \(n\) が1より小さい場合 (\(n<1\))、それは \(v_1 < v_2\) を意味し、波が速い媒質へ進んでいる(法線から遠ざかっている)ことを示します。この関係が図の様子と一致するかを検算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波面と射線の混同(最重要):
    • 誤解: 図に描かれた平行線を、波の進行方向を示す射線だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 問題文を丁寧に読むことが第一です。「波面を表している」と明記されている場合は、必ず「射線はこれに垂直だ」と頭を切り替えましょう。必要であれば、模範解答のように、自分で射線と法線を描き加えてみると、角度の関係が明確になり、誤解を防げます。
  • 入射角・屈折角の定義の混乱:
    • 誤解: 射線と境界面のなす角や、波面と法線のなす角など、誤った組み合わせで角度を定義してしまう。
    • 対策: 「射線 \(\leftrightarrow\) 法線」または「波面 \(\leftrightarrow\) 境界面」という正しいペアをセットで覚えましょう。
  • 全反射の方向の判断ミス:
    • 誤解: 屈折率 \(n = 1/\sqrt{2}\) を求めた後、どちらから入射する場合に全反射が起こるか混乱してしまう。
    • 対策: 屈折率 \(n_{12}\) が1より小さいということは、媒質IIの方が速い(屈折率が小さい)ということです。全反射は常に「遅い \(\rightarrow\) 速い」(屈折率 大 \(\rightarrow\) 小)のときに起こるので、「I \(\rightarrow\) II」の入射で起こると判断できます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 \(n = \frac{\sin i}{\sin r}\):
    • 選定理由: この問題は、屈折現象における角度と媒質の性質(屈折率)の関係を問うています。これらの量を直接結びつけるのが屈折の法則(スネルの法則)です。
    • 適用根拠: この法則は、波の基本的な性質を表しており、媒質の境界を通過するあらゆる波に適用できます。問題の状況を正しく物理量(入射角、屈折角)に変換できれば、この公式を適用して未知の量(屈折率)を求めることができます。
  • 臨界角の公式 \(\sin\theta_0 = n_{21} = 1/n_{12}\):
    • 選定理由: 臨界角を問われた場合、その定義(屈折角=90°)に立ち返って屈折の法則から導出するのが基本です。
    • 適用根拠: 全反射が起こる媒質Iから媒質IIへの入射を考えます。入射角を \(\theta_0\)、屈折角を \(90^\circ\) として屈折の法則を立てると、\(\frac{\sin\theta_0}{\sin 90^\circ} = \frac{v_1}{v_2} = n_{12}\) となります。これを解くと \(\sin\theta_0 = n_{12}\) となります。この問題では \(n_{12} = 1/\sqrt{2}\) でした。模範解答の \(n=1/\sqrt{2} = \frac{\sin\theta_0}{\sin 90^\circ}\) という式は、この導出過程を直接記述したものです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 三角関数の値の習熟: \(\sin 30^\circ = 1/2\), \(\sin 45^\circ = 1/\sqrt{2}\) といった基本的な三角関数の値は、即座に使えるようにしておく必要があります。
  • 分数の計算: \(\frac{1/2}{1/\sqrt{2}}\) のような分数の割り算は、逆数を掛ける形 (\(\frac{1}{2} \times \frac{\sqrt{2}}{1}\)) に直してから計算すると、ミスが減ります。
  • 角度から答えを予測する: 臨界角 \(\theta_0\) を求める問題で、\(\sin\theta_0 = 1/\sqrt{2}\) という結果が出た場合、これが \(45^\circ\) のサインであることに気づけば、角度まで求めることができます。問題で「臨界角はいくらか」と問われている場合は、角度で答える必要があります。
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38 屈折の法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法(空気を複数の層に分け、屈折の法則を連続的に適用する解法)を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • ホイヘンスの原理を用いて波面の変形から考える解法
      • 主たる解法が、射線の屈折に着目するのに対し、別解では、波面の上側と下側で波の進む速さが異なることから、波面自体がどのように変形していくかを考え、そこから射線の軌跡を導き出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 「なぜ射線が曲がるのか」を、波面という波の本体の振る舞いから直感的に理解することができます。
    • 思考の柔軟性向上: 「射線」で考える視点と「波面」で考える視点の両方を学ぶことで、波の現象をより多角的に捉える能力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、作図される射線の概略は同じになります。

この問題のテーマは「連続的な屈折現象」です。温度によって音速が連続的に変化する媒質(大気)中を音がどのように伝わるかを、屈折の法則や波の基本的な性質に基づいて考察する定性的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 音速と温度の関係: 問題文にある通り、音速は温度が高いほど速くなること。
  2. 屈折の法則: 波が速さの異なる媒質へ斜めに入射すると、その進行方向が変わること。特に、遅い媒質から速い媒質へ進むときは、境界面の法線から遠ざかるように屈折する。
  3. 全反射: 遅い媒質から速い媒質へ入射する際、入射角がある一定の角度(臨界角)を超えると、波は透過せずにすべて反射されること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、夜間の温度分布「地面は冷え、上空ほど温度が高い」から、地面付近ほど音速が遅く、上空ほど音速が速いことを確認します。
  2. この連続的に音速が変化する空気を、「音速がわずかに異なる薄い層が何枚も重なったもの」としてモデル化します。
  3. 地上の音源から出た音が、下の層(遅い)から上の層(速い)へ進むときに、各層の境界で屈折の法則がどのように適用されるかを段階的に考察します。
  4. 連続的な屈折の結果、最終的に音がどのような軌跡を描くかを結論づけ、射線として作図します。

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