「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(波動1〜5問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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波動範囲 01~05

1 波の性質

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 速さ、振動数を求める問題の別解: 原点の媒質の振動から直接周期を求める解法
      • 主たる解法が波形の空間的な移動距離の候補を複数考え、条件で絞り込むのに対し、別解では原点の媒質の時間的な振動の条件を不等式で表現し、周期の範囲を特定してから解を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 波の「時間的な振動」と「空間的な伝播」という二つの側面からアプローチすることで、波動現象への理解が多角的になります。
    • 思考の柔軟性向上: 一つの問題に対し、異なる視点からアプローチする経験を積むことで、問題解決能力の幅が広がります。
    • 論理的思考力の養成: 「〜の間に1度」という条件を不等式で表現するプロセスは、物理現象を数学的に翻訳する良い訓練になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
    • なお、模範解答の解説文は説明が簡略化されているため、本解説ではその思考プロセスを物理的に厳密な議論で補い、結論に至る論理的なプロセスを詳細に解説します。

この問題のテーマは「波のグラフの読み取りと基本量の計算」です。空間的な波形を表す \(y-x\) グラフと、ある点の時間的な振動を表す \(y-t\) グラフの関係を正しく理解し、与えられた断片的な情報から波の全体像を復元する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-x\)グラフの読解: グラフから振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) を直接読み取る能力。
  2. 波の進行方向と媒質の振動方向: 波が \(+x\) 方向に進むとき、各媒質は自分のすぐ左側(\(x\)が小さい側)の媒質の動きを少し遅れて真似る、という関係を理解していること。これにより、各点の初動の向きが判断できます。
  3. 波の周期性: \(t=0\) の波形と \(t=\Delta t\) の波形を比較する際、波が見た目上 \(\Delta x’\) 進んで見えても、実際の移動距離は \(n\) 波長分を加えた \(\Delta x = \Delta x’ + n\lambda\) である可能性を常に考慮すること。
  4. 波の基本公式: 速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間の関係式 \(v=f\lambda\) と、周期 \(T\) と振動数の関係式 \(T=1/f\) を自在に使いこなせること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、\(t=0\) の \(y-x\) グラフ(実線)から、振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) を直接読み取ります。
  2. 次に、\(t=0\) と \(t=5\) の波形を比較し、波の移動距離の候補を複数考えます。
  3. それぞれの候補について周期を計算し、「この間に原点では1度谷になった」という時間的な条件を満たすものを選択します。これにより、正しい移動距離が確定し、速さ \(v\) と振動数 \(f\) が求まります。
  4. 最後に、\(x=0.3 \, \text{m}\) の点の初期状態(\(t=0\))と初動の向きを調べ、求めた周期 \(T\) を使って振動の様子(\(y-t\) グラフ)を描きます。

振幅、波長、速さ、振動数の計算

思考の道筋とポイント
まずグラフから振幅と波長を読み取ります。次に、模範解答のアプローチに沿って、波の空間的な移動に着目します。\(t=0\)から\(t=5\)の間に波が進んだ距離の候補を複数考え、それぞれの候補が「この間に原点では1度谷になった」という条件を満たすかどうかを検証します。この検証の過程で、原点の媒質の振動の様子を正しく把握し、各候補の場合の周期を計算することが鍵となります。
この設問における重要なポイント

  • 振幅と波長: \(y-x\) グラフの縦軸の最大値が振幅、波1つ分の横軸の長さが波長。
  • 波の移動距離の任意性: \(t=0\) の波形と \(t=5\) の波形を比較してわかるのは、最小の移動距離のみ。実際の移動距離は \(\Delta x = (\text{最小移動距離}) + n\lambda\) と考える必要がある。
  • 条件による絞り込み: 各移動距離の候補について周期を計算し、「原点が1度谷になった」という条件に合うものを選択する。

具体的な解説と立式
1. 振幅と波長の決定
\(t=0\) の波形(実線)のグラフから、振動の中心(\(y=0\))からの最大の変位は \(2 \, \text{cm}\) です。
$$ A = 2 \, \text{cm} $$
波長\(\lambda\)は、波形が1サイクルする空間的な長さです。\(t=0\)の波形(実線)に注目すると、山となっている位置が \(x=0 \, \text{m}\)、隣の山となっている位置が \(x=0.4 \, \text{m}\) です。したがって、波長は
$$ \lambda = 0.4 \, \text{m} $$
と読み取れます。

2. 移動距離の候補と条件による検証
\(t=0\) の波形(実線)と \(t=5\) の波形(点線)を比較します。例えば、\(t=0\) で \(x=0\) にあった山が、\(t=5\) では \(x=0.1 \, \text{m}\) に移動したように見えます。この見た目上の移動距離は \(0.1 \, \text{m}\) です。
しかし、波は \(5 \, \text{s}\) の間に \(n\) 回(\(n\) は0以上の整数)の波長分だけ余計に進んでいる可能性があるため、実際の移動距離 \(\Delta x\) の候補は、
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= 0.1 + n\lambda \\[2.0ex]
&= 0.1 + 0.4n \quad (n=0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
となります。

これらの候補が「この間に原点では1度谷になった」という条件を満たすか、一つずつ検証します。
まず、原点(\(x=0\))の媒質の振動の様子を考えます。\(t=0\) で原点は山(\(y=2\))にいます。その後の振動は、山 \(\rightarrow\) \(y=0\) \(\rightarrow\) 谷 \(\rightarrow\) \(y=0\) \(\rightarrow\) 山 … となります。
谷になる時刻は、\(t = T/2, 3T/2, 5T/2, \dots\) となります。
問題の条件「この間に1度谷になった」は、\(0 < t \le 5\) の範囲に谷になる時刻がちょうど1回だけ存在することを意味します。

    • 候補1: \(n=0\) の場合 (\(\Delta x = 0.1 \, \text{m}\))
      速さ \(v\) は、
      $$
      \begin{aligned}
      v &= \frac{0.1}{5} \\[2.0ex]
      &= 0.02 \, \text{m/s}
      \end{aligned}
      $$
      周期 \(T\) は、
      $$
      \begin{aligned}
      T &= \frac{\lambda}{v} \\[2.0ex]
      &= \frac{0.4}{0.02} \\[2.0ex]
      &= 20 \, \text{s}
      \end{aligned}
      $$
      このとき、最初の谷の時刻は \(t=T/2 = 10 \, \text{s}\)。\(0 < t \le 5\) の範囲に谷になる時刻が存在しないため、条件を満たしません。

 

    • 候補2: \(n=1\) の場合 (\(\Delta x = 0.5 \, \text{m}\))
      速さ \(v\) は、
      $$
      \begin{aligned}
      v &= \frac{0.5}{5} \\[2.0ex]
      &= 0.1 \, \text{m/s}
      \end{aligned}
      $$
      周期 \(T\) は、
      $$
      \begin{aligned}
      T &= \frac{\lambda}{v} \\[2.0ex]
      &= \frac{0.4}{0.1} \\[2.0ex]
      &= 4 \, \text{s}
      \end{aligned}
      $$
      このとき、谷になる時刻は \(t=T/2=2 \, \text{s}\), \(t=3T/2=6 \, \text{s}\), …。
      \(0 < t \le 5\) の範囲に \(t=2 \, \text{s}\) という谷になる時刻が1回だけ存在します。これは条件を満たします。

 

  • 候補3: \(n=2\) の場合 (\(\Delta x = 0.9 \, \text{m}\))
    速さ \(v\) は、
    $$
    \begin{aligned}
    v &= \frac{0.9}{5} \\[2.0ex]
    &= 0.18 \, \text{m/s}
    \end{aligned}
    $$
    周期 \(T\) は、
    $$
    \begin{aligned}
    T &= \frac{\lambda}{v} \\[2.0ex]
    &= \frac{0.4}{0.18} \\[2.0ex]
    &= \frac{20}{9} \approx 2.22 \, \text{s}
    \end{aligned}
    $$
    このとき、谷になる時刻は \(t=T/2 \approx 1.11 \, \text{s}\), \(t=3T/2 \approx 3.33 \, \text{s}\), …。
    \(0 < t \le 5\) の範囲に谷になる時刻が2回存在するため、条件を満たしません。

以上より、条件を満たすのは \(n=1\) の場合のみです。
このとき、速さは \(v=0.1 \, \text{m/s}\)、周期は \(T=4 \, \text{s}\) と確定します。

使用した物理公式

  • 波の速さ: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
  • 周期と波長、速さの関係: \(T = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\)
  • 周期と振動数の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
計算過程

上記の検証プロセスより、\(n=1\) の場合が条件を満たすことがわかりました。
振動数 \(f\) は、周期 \(T=4 \, \text{s}\) から、
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} \\[2.0ex]
&= 0.25 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
と求まります。

この設問の平易な説明

まずグラフから、波の高さ(振幅)が \(2 \, \text{cm}\)、波の長さ(波長)が \(0.4 \, \text{m}\) と読み取ります。
次に、波が5秒間でどれだけ進んだかを考えます。グラフの見た目だけでは「\(0.1 \, \text{m}\) 進んだ」のか、「\(0.1+0.4=0.5 \, \text{m}\) 進んだ」のか、「\(0.1+0.8=0.9 \, \text{m}\) 進んだ」のか、たくさんの候補が考えられます。
そこで「原点が1回谷になった」というヒントを使います。原点は \(t=0\) で山のてっぺんにいるので、谷になるのは半周期後、1.5周期後、…です。
それぞれの移動距離の候補について、周期を計算し、このヒントに合うか調べます。

  • \(0.1 \, \text{m}\) の移動なら周期は \(20\) 秒。最初の谷は \(10\) 秒後なので、5秒までの間に谷になれず、条件に合いません。
  • \(0.5 \, \text{m}\) の移動なら周期は \(4\) 秒。最初の谷は \(2\) 秒後、次の谷は \(6\) 秒後。5秒までの間に谷になったのは1回だけなので、条件にぴったり合います。
  • \(0.9 \, \text{m}\) の移動なら周期は約 \(2.22\) 秒。谷になるのは約 \(1.11\) 秒後と約 \(3.33\) 秒後。5秒までの間に2回谷になるので、条件に合いません。

このように、条件に合うのは移動距離が \(0.5 \, \text{m}\) の場合だけだと特定できます。あとは速さや振動数を計算するだけです。

結論と吟味

振幅は \(2 \, \text{cm}\)、波長は \(0.4 \, \text{m}\)、速さは \(0.1 \, \text{m/s}\)、振動数は \(0.25 \, \text{Hz}\) となります。これらの値は \(v=f\lambda\) の関係を満たしており、問題のすべての条件と整合性がとれている妥当な結果です。

解答 振幅: \(2 \, \text{cm}\), 波長: \(0.4 \, \text{m}\), 速さ: \(0.1 \, \text{m/s}\), 振動数: \(0.25 \, \text{Hz}\)
別解: 原点の媒質の振動から直接周期を求める解法

思考の道筋とポイント
波の空間的な移動ではなく、原点(\(x=0\))の媒質の時間的な振動に注目します。\(t=0\)で山にいる原点が、その後どのように振動するかを考え、「この間に1度谷になった」という条件を不等式で表現することで、周期 \(T\) の範囲を絞り込みます。この範囲と、波形の移動から考えられる周期の候補を組み合わせることで、解を一つに特定します。
この設問における重要なポイント

  • 原点の初期状態: \(t=0\)で原点は山(\(y=2\))。
  • 時間的条件の不等式化: 「\(0 < t \le 5\) の間に谷が1回だけ」という条件を、最初の谷の時刻 \(T/2\) と2番目の谷の時刻 \(3T/2\) を使って \(T/2 \le 5 < 3T/2\) という不等式で表現する。
  • 波形の移動と周期の関係: 波形の移動距離 \(\Delta x\) と周期 \(T\) は、\(T = \lambda/v = \lambda \Delta t / \Delta x\) の関係で結びついている。

具体的な解説と立式
原点(\(x=0\))の媒質の振動に着目します。
\(t=0\)で原点は山(\(y=2\))にいます。その後の振動で谷になる時刻は \(t = T/2, 3T/2, 5T/2, \dots\) です。
問題の条件「この間に1度谷になった」は、\(0 < t \le 5\) の範囲に谷になる時刻がちょうど1回だけ存在することを意味します。
これは、最初の谷の時刻 \(T/2\) がこの範囲に入り、かつ2番目の谷の時刻 \(3T/2\) がこの範囲の外にある、ということなので、以下の不等式が成り立ちます。
$$ \frac{T}{2} \le 5 < \frac{3T}{2} $$ 左側の不等式から \(T \le 10\)。右側の不等式から \(T > 10/3 \approx 3.33\)。まとめると、周期 \(T\) の範囲は、
$$ 3.33 < T \le 10 $$
となります。

一方、波形の移動から考えられる周期 \(T\) の候補を考えます。
移動距離の候補は \(\Delta x = 0.1 + 0.4n\) でした。
速さ \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{5} = \frac{0.1+0.4n}{5}\) なので、周期 \(T\) は
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{\lambda}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{0.4}{(0.1+0.4n)/5} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{0.1+0.4n}
\end{aligned}
$$
と表せます。

この式で与えられる \(T\) が、先ほど求めた範囲 \(3.33 < T \le 10\) を満たす整数 \(n\) を探します。

使用した物理公式

  • 単振動における各位相までの時間
  • 周期と波長、速さの関係: \(T = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\)
計算過程

周期の式 \(T = \displaystyle\frac{2}{0.1 + 0.4n}\) が、\(3.33 < T \le 10\) の範囲に入る整数 \(n\) を探します。

  • \(n=0\) のとき: \(T = \displaystyle\frac{2}{0.1} = 20 \, \text{s}\)。範囲外です。
  • \(n=1\) のとき: \(T = \displaystyle\frac{2}{0.1 + 0.4} = \displaystyle\frac{2}{0.5} = 4 \, \text{s}\)。これは範囲内 (\(3.33 < 4 \le 10\)) です。
  • \(n=2\) のとき: \(T = \displaystyle\frac{2}{0.1 + 0.8} = \displaystyle\frac{2}{0.9} \approx 2.22 \, \text{s}\)。範囲外です。

したがって、条件を満たすのは \(n=1\) のみであり、周期は \(T=4 \, \text{s}\) と確定します。
速さ \(v\) は、
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{\lambda}{T} \\[2.0ex]
&= \frac{0.4}{4} \\[2.0ex]
&= 0.1 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
振動数 \(f\) は、
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} \\[2.0ex]
&= 0.25 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
主たる解法と同じ結果が得られました。

この設問の平易な説明

この解き方では、まず原点の揺れ方に注目します。原点は山のてっぺんからスタートし、半周期後に谷になります。ヒント「5秒後までに谷になったのは1回だけ」から、最初の谷になる時間(半周期)は5秒以下で、2回目の谷になる時間(1.5周期)は5秒より後だ、ということがわかります。これを計算すると、周期 \(T\) は「約3.33秒より長く、10秒以下」の範囲にあるはずだと絞り込めます。
一方、波の見た目の移動からは、周期の候補が \(20\) 秒、\(4\) 秒、約 \(2.22\) 秒、…と計算できます。
この二つの情報を照らし合わせると、両方を満たすのは \(T=4\) 秒しかありません。このようにして、答えを一つに決めることができます。

結論と吟味

主たる解法とは異なるアプローチで、同じ結論に至りました。物理現象を異なる側面から分析し、同じ答えが導かれることを確認するのは、理解を深め、間違いを防ぐ上で非常に有効です。

解答 振幅: \(2 \, \text{cm}\), 波長: \(0.4 \, \text{m}\), 速さ: \(0.1 \, \text{m/s}\), 振動数: \(0.25 \, \text{Hz}\)

x=0.3 m の媒質の振動グラフ

思考の道筋とポイント
特定の位置の媒質の時間変化(\(y-t\) グラフ)を描く問題です。まず、その位置の初期状態、つまり \(t=0\) での変位 \(y\) を \(y-x\) グラフから読み取ります。次に、その後の動きの向き(初動)を、波の進行方向から判断します。最後に、これまでに求めた周期 \(T\) を使って、時間軸に沿った変化をグラフに描きます。
この設問における重要なポイント

  • 初期状態の把握: \(y-t\) グラフの出発点 (\(t=0\)) は、\(y-x\) グラフの \(x=0.3 \, \text{m}\) の点の \(y\) 座標。
  • 初動の向きの判断: \(x=0.3 \, \text{m}\) の媒質は、すぐ左の点の動きを追いかける。\(t=0\) で \(x=0.2 \, \text{m}\) は谷なので、\(x=0.3 \, \text{m}\) の媒質は谷に向かって下向きに動く。
  • 周期の適用: グラフの横軸は時間 \(t\)。1サイクルにかかる時間が周期 \(T\) である。

具体的な解説と立式
振動グラフを描きたい位置は \(x=0.3 \, \text{m}\) です。
1. 初期状態(\(t=0\))の確認
\(t=0\) の波形(実線)のグラフを見ると、\(x=0.3 \, \text{m}\) の点では、変位は \(y=0\) です。したがって、\(y-t\) グラフは \(t=0\) で \(y=0\) の点から始まります。

2. 初動の向きの判断
波は \(+x\) 方向に進むので、\(x=0.3 \, \text{m}\) の媒質は、すぐ左側(例:\(x=0.2 \, \text{m}\))の媒質の動きを少し遅れて真似します。\(t=0\) において、\(x=0.2 \, \text{m}\) の点は谷(\(y=-2\))にいます。したがって、\(x=0.3 \, \text{m}\) の媒質は、この後、谷に向かって下向きに動き始めます。

3. グラフの作成
以上から、\(x=0.3 \, \text{m}\) の媒質の振動は、\(t=0\) で \(y=0\) から始まり、その後 \(y\) が減少していく(下向きに動く)運動となります。これは、\(y-t\) グラフでいうと、マイナスのsin型 (\(y = -A \sin(\omega t)\)) のグラフになります。
求めた周期 \(T=4 \, \text{s}\) を用いてグラフを描きます。

  • \(t=0\): 変位が0 (\(y=0\))、下向きに運動開始
  • \(t=T/4=1 \, \text{s}\): 谷 (\(y=-2\))
  • \(t=T/2=2 \, \text{s}\): 変位が0になる (\(y=0\))
  • \(t=3T/4=3 \, \text{s}\): 山 (\(y=2\))
  • \(t=T=4 \, \text{s}\): 再び変位が0に戻る (\(y=0\))

これらの点を滑らかな曲線(正弦曲線)で結びます。

計算過程

グラフ作成のためのプロット点を上記で計算済みのため、ここではグラフの形状を示すに留めます。

この設問の平易な説明

「\(x=0.3 \, \text{m}\) 地点での、時間の経過と揺れの様子のグラフ」を描く問題です。
まず、スタート時点(\(t=0\))の様子を調べます。最初の波形グラフを見ると、\(x=0.3\) 地点はちょうど真ん中の高さ(\(y=0\))にいることがわかります。
次に、この後どう動くかを考えます。波は右に進んでくるので、この地点はすぐ左の \(x=0.2\) 地点の動きを真似します。\(x=0.2\) 地点は谷底なので、\(x=0.3\) 地点はこれから谷に向かって下に動いていきます。
これまでの計算で、この波の1サイクル(同じ状態に戻るまで)の時間は \(4\) 秒だとわかっています。
したがって、グラフは「\(t=0\) で \(y=0\) からスタートし、下に下がっていき、\(1\) 秒後に一番下の谷底 \(y=-2\) に到達し、また登って \(2\) 秒後に \(y=0\) に戻り、\(3\) 秒後に一番上の山 \(y=2\) に到達し、\(4\) 秒後にスタート地点の \(y=0\) に戻ってくる」というカーブを描くことになります。

結論と吟味

\(t=0\) で \(y=0\) から下向きに動き始め、周期 \(4 \, \text{s}\) で振動するグラフが描かれます。これは問題のすべての条件と整合性が取れています。模範解答のグラフは \(x=0.2 \, \text{m}\) の点の振動グラフに相当するため、注意が必要です。

解答 (本文で説明したマイナスsin型のグラフ)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の時間的側面と空間的側面の連携:
    • 核心: この問題の根幹は、ある瞬間の波形(空間的な情報)と、ある地点の振動の様子(時間的な情報)という、波動現象の二つの側面を結びつけて考えることにあります。
    • 理解のポイント:
      • 空間の情報(\(y-x\)グラフ): 振幅\(A\)や波長\(\lambda\)といった、波の「形」に関する情報を与えます。
      • 時間の情報(問題文の条件): 「原点が1度谷になった」という記述は、特定の点の「歴史」に関する情報を与えます。
      • 連携: 波の速さ\(v\)や周期\(T\)は、この時間と空間を結びつける重要な物理量です。\(v=\lambda/T\)という関係式がその橋渡し役となります。問題では、波形の空間的な移動距離の候補(空間情報)を複数考え、それぞれの候補が時間的な条件を満たすかを検証することで、正しい物理量を特定していきます。
  • 波の周期性と任意性の理解:
    • 核心: 観測される波形は同じでも、その間に波が何波長分進んだかには任意性がある、という波動特有の性質を理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 関係式: \(t=0\)の波形と\(t=\Delta t\)の波形を比較して、見た目上\(\Delta x’\)だけ移動していたとしても、実際の移動距離は\(\Delta x = \Delta x’ + n\lambda\)(\(n\)は整数)と考える必要があります。
      • 応用: この任意性があるために、通常は解が一つに定まりません。しかし、本問のように「その間に起こったこと」に関する追加情報が与えられることで、整数\(n\)が特定され、解が一意に定まるという構造になっています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 波形の重ね合わせ問題: 2つの波源から出る波が特定の点で強め合うか弱め合うかを問う問題。各波源からの距離の差が波長の整数倍か半整数倍かを考える点で、波の空間的な周期性(波長)の理解が問われます。
    • ドップラー効果の問題: 音源や観測者が動くことで振動数が変化する問題。波の速さと波長の関係を、相対速度を考慮して考える必要があり、本問で用いた思考を発展させたものと言えます。
    • 未知の波形を決定する問題: 「\(t=t_1\)の波形と、点\(x=x_1\)の\(y-t\)グラフが与えられ、\(t=t_2\)の波形を描け」といった問題。与えられた情報から波の速さと進行方向を特定し、波を時間的・空間的に平行移動させる能力が問われます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 与えられた情報の分類: 問題文やグラフの情報が、「空間的な情報(\(y-x\)グラフ、波長など)」なのか、「時間的な情報(\(y-t\)グラフ、周期、特定の点の振動の様子など)」なのかをまず整理します。
    2. 未知数と既知数の確認: 振幅\(A\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)、振動数\(f\)、速さ\(v\)のうち、何が分かっていて、何を求めるべきかを確認します。
    3. 解法の選択:
      • 空間情報が豊富なら、本問の主たる解法のように「波形の移動距離の候補」から考えるのが有効です。
      • 時間情報が豊富なら、別解のように「特定の点の振動の様子」から周期の範囲を絞り込むアプローチが有効です。
    4. 媒質の初動の確認: 波の進行方向が分かっている場合、「ある点の媒質は、すぐ左の点の動きを真似る」という原則を使って、必ず初動の向き(\(y\)が増加するか減少するか)を確認する癖をつけます。これは\(y-t\)グラフを描く際に必須のステップです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波の移動距離の勘違い:
    • 誤解: \(t=0\)と\(t=5\)の波形を比較し、見た目の移動距離(\(0.1 \, \text{m}\))だけが実際の移動距離だと思い込んでしまう。
    • 対策: 「波は1周期経つと元の形に戻る」という大原則を常に意識します。波形を比較する問題では、必ず「\(n\lambda\)の任意性」を考慮し、\(\Delta x = (\text{見た目の移動距離}) + n\lambda\)と立式することを徹底します。
  • 媒質の振動方向の誤認:
    • 誤解: 波が\(+x\)方向に進むとき、媒質も\(+x\)方向に動くと勘違いする。あるいは、初動の向きを直感で間違える。
    • 対策: 「波の進行はエネルギー(位相)の伝播であり、媒質自体はその場で単振動するだけ」という基本を再確認します。初動の向きは、「少し未来の波形を描いてみる」か、「すぐ左の点の現在の状態を見る」のどちらかの方法で、機械的に判断するように習慣づけます。後者の方が素早く確実です。
  • \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの混同:
    • 誤解: \(y-x\)グラフの横軸(位置)と\(y-t\)グラフの横軸(時間)を混同し、波長と周期を取り違える。
    • 対策: グラフを見たら、まず「縦軸と横軸が何を表しているか」を指差し確認する癖をつけます。\(y-x\)グラフは波の「スナップ写真」、\(y-t\)グラフは特定の点の「定点観測ビデオ」というイメージを持つと区別しやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 移動距離の候補を立てるアプローチ(主たる解法):
    • 選定理由: この問題では、2つの瞬間の空間的な波形が与えられており、空間情報が豊富です。一方で、時間情報は「1度谷になった」という定性的なものに留まります。このような場合、確実な空間情報から「あり得る可能性」をすべてリストアップし、それを時間情報で絞り込む、というアプローチが最も論理的で確実です。
    • 適用根拠: 波の周期性(同じ波形が\(\lambda\)ごとに繰り返す)という物理的性質が、\(\Delta x = \Delta x’ + n\lambda\)という形で移動距離の候補を立てることを正当化します。そして、それぞれの候補は物理的に起こりうる異なる状況(波がゆっくり進んだ場合、速く進んだ場合など)に対応しており、その中から問題の条件に合う唯一の状況を選び出すというプロセスは、科学的な推論そのものです。
  • 周期の範囲を絞るアプローチ(別解):
    • 選定理由: 「〜の間に〜が〜回起こった」という形式の条件は、不等式で表現するのに非常に適しています。このアプローチは、時間情報を先に数学的な制約(不等式)に変換し、その制約を満たす解を探すという、別の論理の流れを試すものです。
    • 適用根拠: 媒質の単振動という物理モデルが、山や谷になる時刻を周期\(T\)を用いて\(T/2, 3T/2, \dots\)と表現することを可能にします。この時間表現と問題文の条件を組み合わせることで、未知数である周期\(T\)に関する不等式を立てることができ、これは物理的にも数学的にも妥当な操作です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 候補の検証を体系的に行う: 主たる解法のように複数の候補を検証する場合、場当たり的に計算するのではなく、表を作るなどして整理するとミスが減ります。
    \(n\) \(\Delta x\) (m) \(v\) (m/s) \(T\) (s) 谷になる時刻 (s) 条件を満たすか
    0 0.1 0.02 20 10 ×
    1 0.5 0.1 4 2, 6
    2 0.9 0.18 2.22 1.11, 3.33 ×

    このように整理することで、思考が明確になり、計算ミスや条件の見落としを防げます。

  • グラフの読み取りを丁寧に行う: 振幅、波長、特定の点の変位などをグラフから読み取る際は、必ず軸の単位(cmかmか、sか)を確認します。また、1マスがいくつに対応するのかを最初に確認し、思い込みで数値を読まないように注意します。
  • 分数の計算を確実に行う: 周期や速さの計算では、\(T = \lambda/v\) のように分数が頻出します。特に、\(v\)自体が分数になる場合(例:\(v = \Delta x / \Delta t\))、分母に分数が来る形になります。焦らずに「分母の逆数を掛ける」という操作を丁寧に行いましょう。例えば、別解の計算では、
    $$
    \begin{aligned}
    T &= \frac{0.4}{(0.1+0.4n)/5} \\[2.0ex]
    &= 0.4 \times \frac{5}{0.1+0.4n} \\[2.0ex]
    &= \frac{2}{0.1+0.4n}
    \end{aligned}
    $$
    と、一段階ずつ変形するとミスが減ります。

2 波の性質

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 全設問に共通する別解: 波の式を立てて解く解法
      • 主たる解法が波の周期性や媒質の単振動を図的・物理的に追跡するのに対し、別解では最初に波の様子を表す一般式 \(y(x,t)\) を導出し、その後は各設問の \(x\) と \(t\) の値を代入して機械的に計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理現象の数式化能力の向上: グラフから振幅、波長、初期位相などを読み取り、波の進行方向を考慮して一つの数式にまとめるプロセスは、物理現象を数学の言葉で表現する重要な訓練になります。
    • 解法の一般性と応用力: 一度式を立ててしまえば、どんな位置や時刻の変位も計算できるため、非常に汎用性が高い解法です。複雑な条件の問題に対しても、機械的な計算で答えを導ける強力な武器となります。
    • 思考の多角化: 物理的なイメージで解く方法と、数式で機械的に解く方法の両方を経験することで、問題に応じて最適なアプローチを選択する能力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「波の周期性を利用した変位の計算」です。波が持つ空間的な周期性(同じ形が波長\(\lambda\)ごとに繰り返されること)と、時間的な周期性(各点が周期\(T\)ごとに同じ振動を繰り返すこと)を理解し、指定された場所と時刻での波の高さを求める問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の空間的周期性: ある位置\(x\)での変位は、そこから波長\(\lambda\)の整数倍だけ離れた位置\(x+n\lambda\)での変位と常に等しいこと。
  2. 波の時間的周期性: ある時刻\(t\)での媒質の変位は、そこから周期\(T\)の整数倍だけ時間が経過した時刻\(t+nT\)での変位と常に等しいこと。
  3. 波の基本公式: 波の速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)の関係式 \(v = \lambda/T\) を使って、未知の量を計算できること。
  4. 波の進行と媒質の単振動: 波が進むとき、各媒質はその場で単振動をしています。その振動の出発点(\(t=0\)での変位)と初動の向きを正しく把握することが重要です。特に初動の向きは、波の進行方向から判断します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、指定された位置\(x=15 \, \text{m}\)がグラフの範囲外なので、波の空間的周期性を利用して、グラフ範囲内で同じ変位を持つ等価な位置を探し、変位を読み取ります。
  2. (2)では、指定された位置\(x=3 \, \text{m}\)の媒質の時間変化を考えます。まず周期\(T\)を計算し、\(t=0\)の状態から指定時刻\(t=1 \, \text{s}\)後までに媒質がどのように単振動するかを追跡します。
  3. (3)では、位置と時刻の両方がグラフの範囲外なので、空間的周期性と時間的周期性の両方を使って、グラフ範囲内の等価な位置と、1周期内の等価な時間に変換してから、(2)と同様に単振動の動きを追跡します。

問(1)

思考の道筋とポイント
指定された位置 \(x=15 \, \text{m}\) は、グラフが描かれている \(x=0 \sim 5 \, \text{m}\) の範囲を大きく超えています。しかし、波は波長\(\lambda\)ごとに全く同じ形を繰り返すという性質(空間的周期性)を持っています。この性質を利用して、\(x=15 \, \text{m}\) と同じ変位を持つ、グラフ範囲内の点を探し出すことが解法の鍵となります。
この設問における重要なポイント

  • グラフから波長\(\lambda\)を正確に読み取る。
  • 波の空間的周期性を利用する。具体的には、位置\(x\)を波長\(\lambda\)で割った「余り」に相当する位置の変位を調べればよい。

具体的な解説と立式
まず、グラフから波長\(\lambda\)を読み取ります。例えば、山になっている \(x=3 \, \text{m}\) と、その手前の谷になっている \(x=1 \, \text{m}\) に注目します。山と谷の間の水平距離は半波長(\(\lambda/2\))なので、
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda}{2} &= 3 – 1 \\[2.0ex]
&= 2 \, \text{m}
\end{aligned}
$$
よって、波長は \(\lambda = 4 \, \text{m}\) です。

波は \(4 \, \text{m}\) ごとに同じ形を繰り返します。したがって、\(x=15 \, \text{m}\) での変位は、\(15\) を \(4\) で割った余りの位置での変位と同じになります。
$$ 15 = 3 \times 4 + 3 $$
この式は、\(x=15 \, \text{m}\) の点が、\(x=0\) から見て波3つ分進んだ先の、\(x=3 \, \text{m}\) の点と同じ位相にあることを示しています。
よって、\(x=15 \, \text{m}\) での変位を求めるには、グラフ上の \(x=3 \, \text{m}\) での変位を読み取ればよいことになります。

使用した物理公式

  • 波の空間的周期性: \(y(x, t) = y(x+n\lambda, t)\)
計算過程

グラフから \(x=3 \, \text{m}\) の位置での変位 \(y\) を読み取ります。
グラフより、\(x=3 \, \text{m}\) は山の頂上なので、その変位は
$$ y = 0.2 \, \text{m} $$
となります。

この設問の平易な説明

波というのは、同じ形の模様がどこまでも続いている壁紙のようなものです。この波の模様は、\(4 \, \text{m}\) ごとに繰り返されています。今知りたいのは、スタート地点から \(15 \, \text{m}\) 先の壁紙の高さです。
\(15 \, \text{m}\) というのは、\(4 \, \text{m}\) の模様が3回繰り返された(\(4 \times 3 = 12 \, \text{m}\))後、さらに \(3 \, \text{m}\) 進んだ場所です。つまり、\(15 \, \text{m}\) 地点の高さは、スタートから \(3 \, \text{m}\) 地点の高さと全く同じになるはずです。グラフを見ると、\(3 \, \text{m}\) 地点は一番高い山になっているので、高さは \(0.2 \, \text{m}\) です。

結論と吟味

\(x=15 \, \text{m}\) での \(t=0\) における変位は \(0.2 \, \text{m}\) となります。波の周期性を正しく適用した、妥当な結果です。

解答 (1) \(0.2 \, \text{m}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
この設問では、特定の位置(\(x=3 \, \text{m}\))の、ある時刻(\(t=1 \, \text{s}\))での変位を求めます。これは、\(x=3 \, \text{m}\) にある媒質が時間とともにどのように振動するかを追跡する問題です。
まず、媒質の振動の周期 \(T\) を計算する必要があります。周期 \(T\) は、波の速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) から求めることができます。次に、\(t=0\) のときの \(x=3 \, \text{m}\) の状態(変位)を確認し、そこから \(t=1 \, \text{s}\) 後に単振動によってどの位置まで移動するかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 波の基本公式 \(v = \lambda/T\) を使って周期 \(T\) を計算する。
  • \(t=0\) での媒質の状態(変位)をグラフから読み取る。
  • 単振動の基本的な動き(山 \(\rightarrow\) 中心 \(\rightarrow\) 谷 \(\rightarrow\) 中心 \(\rightarrow\) 山)と、それぞれにかかる時間(\(T/4\) ずつ)を理解している。

具体的な解説と立式
まず、波の周期 \(T\) を求めます。問題文より速さ \(v=1 \, \text{m/s}\)、(1)より波長 \(\lambda=4 \, \text{m}\) なので、公式 \(v = \lambda/T\) より、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{\lambda}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{1} \\[2.0ex]
&= 4 \, \text{s}
\end{aligned}
$$
となります。媒質は \(4 \, \text{s}\) で1回の単振動をします。

次に、\(x=3 \, \text{m}\) の媒質の振動を考えます。
\(t=0\) のとき、グラフから \(x=3 \, \text{m}\) の変位は \(y=0.2 \, \text{m}\) です。これは山の頂上であり、単振動の端にあたります。
求めたいのは \(t=1 \, \text{s}\) 後の変位です。\(t=1 \, \text{s}\) は、周期 \(T=4 \, \text{s}\) の \(1/4\) の時間です。
$$
\begin{aligned}
t &= 1 \, \text{s} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4}T
\end{aligned}
$$
単振動では、端(山)から出発して \(T/4\) の時間が経過すると、振動の中心(\(y=0\))に到達します。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v = \lambda/T\)
  • 単振動の周期性
計算過程

\(t=0\) で山の頂上(\(y=0.2 \, \text{m}\))にいた \(x=3 \, \text{m}\) の媒質は、\(T/4 = 1 \, \text{s}\) 後には振動の中心に移動します。
したがって、\(t=1 \, \text{s}\) での変位は、
$$ y = 0 \, \text{m} $$
となります。

この設問の平易な説明

この問題は、「\(x=3 \, \text{m}\) 地点に浮かんでいる浮き輪が、1秒後にどの高さにいるか?」という問いです。
まず、この浮き輪が1回上下に揺れるのに何秒かかるか(周期)を計算します。波の速さが秒速 \(1 \, \text{m}\)、波の長さが \(4 \, \text{m}\) なので、周期は \(4 \div 1 = 4\) 秒です。
次に、\(t=0\) の瞬間の浮き輪の位置を確認します。グラフを見ると、\(x=3 \, \text{m}\) 地点は一番高い山のてっぺんにいます。
一番高い位置からスタートして、\(4\) 秒で1周する運動を考えます。知りたいのは \(1\) 秒後の位置です。\(1\) 秒は、ちょうど1周の \(1/4\) の時間です。ブランコが一番高いところから動き始めて、\(1/4\) 周したら一番下の真ん中に来るのと同じように、この浮き輪も振動の中心、つまり高さ \(0 \, \text{m}\) の位置に来ます。

結論と吟味

\(x=3 \, \text{m}\), \(t=1 \, \text{s}\) での変位は \(0 \, \text{m}\) となります。物理法則に則った妥当な結果です。
別のアプローチとして、\(t=0\) の波形全体を、波の進行方向(\(-x\)方向)に \(v \times t = 1 \, \text{m/s} \times 1 \, \text{s} = 1 \, \text{m}\) だけ平行移動させて \(t=1 \, \text{s}\) の波形を描き、そのグラフの \(x=3 \, \text{m}\) の値を読み取っても同じ結果が得られます。

解答 (2) \(0 \, \text{m}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
指定された位置 \(x=22 \, \text{m}\) と時刻 \(t=11 \, \text{s}\) は、どちらも直接は扱えません。そこで、(1)で使った空間的周期性と、(2)で使った時間的周期性の両方を利用します。
手順は以下の通りです。

  1. 空間的周期性を使い、\(x=22 \, \text{m}\) と同じ振動をするグラフ範囲内の等価な位置 \(x’\) を見つけます。
  2. 時間的周期性を使い、\(t=11 \, \text{s}\) を1周期内の等価な時間 \(t’\) に変換します。
  3. 最終的に、「位置 \(x’\) の媒質が、\(t=0\) から \(t’\) だけ時間が経ったときの変位」を求める問題に帰着させます。このとき、\(x’\) の媒質の \(t=0\) での初動の向きを正しく判断することが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 空間的周期性と時間的周期性の両方を適用する。
  • 媒質の初動の向きを、波の進行方向から正しく判断する。「\(-x\)方向に進む波の場合、ある点の媒質は、そのすぐ右側の点の動きを真似る」。

具体的な解説と立式
1. 位置の変換
(1)と同様に、\(x=22 \, \text{m}\) を波長 \(\lambda=4 \, \text{m}\) で割った余りを考えます。
$$ 22 = 5 \times 4 + 2 $$
よって、\(x=22 \, \text{m}\) での振動は、\(x=2 \, \text{m}\) での振動と全く同じです。

2. 時刻の変換
(2)で求めた周期 \(T=4 \, \text{s}\) を使って、\(t=11 \, \text{s}\) を周期で割った余りを考えます。
$$ 11 = 2 \times 4 + 3 $$
よって、\(t=11 \, \text{s}\) での変位は、\(t=0\) から \(2\)周期と\(3 \, \text{s}\) 経過した時点の変位と同じです。周期が経過すると元の状態に戻るので、結局 \(t=3 \, \text{s}\) 後の変位を調べればよいことになります。

3. \(x=2 \, \text{m}\) の媒質の \(3 \, \text{s}\) 後の変位を求める
問題は「\(x=2 \, \text{m}\) の媒質の、\(t=0\) から \(t=3 \, \text{s}\) 後の変位はいくつか?」という問いに単純化されました。
まず、\(t=0\) での \(x=2 \, \text{m}\) の状態を確認します。グラフより、変位は \(y=0\) です。
次に、初動の向きを判断します。波は \(-x\) 方向(左向き)に進むので、\(x=2 \, \text{m}\) の媒質は、すぐ右隣(\(x\)が少し大きい場所)の媒質の動きを真似します。グラフを見ると、\(x=2 \, \text{m}\) のすぐ右側では変位が正(\(y>0\))です。したがって、\(x=2 \, \text{m}\) の媒質は \(t=0\) の直後、上向き(\(y\)が正の方向)に動き始めます。

\(y=0\) の位置から上向きに始まる単振動を考えます。経過時間 \(t=3 \, \text{s}\) は、周期 \(T=4 \, \text{s}\) を使うと、
$$
\begin{aligned}
t &= 3 \, \text{s} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4}T
\end{aligned}
$$
です。\(y=0\)(上向き)\(\rightarrow\) \(T/4\)後 に 山 \(\rightarrow\) \(T/2\)後 に \(y=0\) \(\rightarrow\) \(3T/4\)後 に 谷、という動きをします。
したがって、\(3T/4\) 後には谷の底に到達します。

使用した物理公式

  • 波の空間的・時間的周期性
  • 波の進行方向と媒質の初動の関係
計算過程

\(x=2 \, \text{m}\) の媒質は、\(t=0\) で \(y=0\) から上向きに動き始め、\(3T/4 = 3 \, \text{s}\) 後には谷の底に達します。
谷の底の変位は、振幅から \(-0.2 \, \text{m}\) です。
よって、
$$ y = -0.2 \, \text{m} $$
となります。

この設問の平易な説明

この問題は「スタートから \(22 \, \text{m}\) 地点にいる人が、\(11\) 秒後にどの高さにいるか?」という、場所も時間も遠い未来の話です。
まず場所を考えます。波の模様は \(4 \, \text{m}\) ごとに繰り返すので、\(22 \, \text{m}\) 地点の人の動きは、\(2 \, \text{m}\) 地点の人と全く同じです。
次に時間を考えます。この波は \(4\) 秒で1周するので、\(4\) 秒後、\(8\) 秒後には元の状態に戻ります。したがって、\(11\) 秒後の状態は、スタートから \(3\) 秒後の状態と同じです。
これで問題は「\(2 \, \text{m}\) 地点の人が、\(3\) 秒後にどの高さにいるか?」という簡単な問いに変わりました。
\(t=0\) のグラフを見ると、\(2 \, \text{m}\) 地点の人は高さ \(0\) にいます。波は左に進むので、この人はすぐ右の波(山の斜面)の影響を受けて、まず上に動き始めます。
高さ \(0\) から上に動き始めるブランコが、\(3/4\) 周したらどこにいるかを考えます。\(1/4\) 周で一番上、\(2/4\) 周で真ん中、\(3/4\) 周で一番下に来ます。したがって、答えは一番下の谷底、高さ \(-0.2 \, \text{m}\) です。

結論と吟味

\(x=22 \, \text{m}\), \(t=11 \, \text{s}\) での変位は \(-0.2 \, \text{m}\) となります。空間と時間の周期性を組み合わせ、媒質の単振動を正しく追跡した、妥当な結果です。

解答 (3) \(-0.2 \, \text{m}\)
別解: 波の式を立てて解く解法

思考の道筋とポイント
この問題の波の振る舞いを、位置\(x\)と時刻\(t\)の関数 \(y(x,t)\) として一つの式で表現します。一度この式を立ててしまえば、あとは各設問で与えられた \(x\) と \(t\) の値を代入するだけで、機械的に変位を計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • グラフから波の基本量(振幅\(A\)、波長\(\lambda\))を読み取る。
  • 基本量と速さ\(v\)から、周期\(T\)を計算する。
  • \(t=0\)の波形(\(y-x\)グラフ)と進行方向から、正しい波の式を立てる。

具体的な解説と立式
1. 波の基本量の確認
グラフと問題文から、以下の量がわかっています。

  • 振幅: \(A = 0.2 \, \text{m}\)
  • 波長: \(\lambda = 4 \, \text{m}\)
  • 速さ: \(v = 1 \, \text{m/s}\)
  • 進行方向: \(-x\) 方向

2. 周期の計算
周期 \(T\) は、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{\lambda}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{1} \\[2.0ex]
&= 4 \, \text{s}
\end{aligned}
$$
となります。

3. 波の式の導出
\(t=0\) のときの波形 \(y(x,0)\) は、グラフより \(x=3\) で最大値をとる \(cos\) 型なので、
$$
\begin{aligned}
y(x,0) &= A \cos\left(\frac{2\pi}{\lambda}(x-3)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos\left(\frac{2\pi}{4}(x-3)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(x-3)\right)
\end{aligned}
$$
と表せます。
この波が \(-x\) 方向に速さ \(v\) で進むとき、時刻 \(t\) での波の式は、\(x\) を \(x+vt\) で置き換えることで得られます。
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}((x+vt)-3)\right)
\end{aligned}
$$
ここに \(v=1 \, \text{m/s}\) を代入すると、この波を表す式は
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(x+t-3)\right)
\end{aligned}
$$
となります。

使用した物理公式

  • 正弦波の式: \(y(x,t) = A \cos\left(2\pi\left(\frac{t}{T} + \frac{x-x_0}{\lambda}\right)\right)\) (\(t=0, x=x_0\)で山となる\(-x\)方向の波)
計算過程

この式に、各設問の \(x\) と \(t\) の値を代入していきます。

(1) \(x=15 \, \text{m}, t=0 \, \text{s}\)
$$
\begin{aligned}
y(15, 0) &= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(15+0-3)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(12)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos(6\pi) \\[2.0ex]
&= 0.2 \times 1 \\[2.0ex]
&= 0.2 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

(2) \(x=3 \, \text{m}, t=1 \, \text{s}\)
$$
\begin{aligned}
y(3, 1) &= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(3+1-3)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \times 0 \\[2.0ex]
&= 0 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

(3) \(x=22 \, \text{m}, t=11 \, \text{s}\)
$$
\begin{aligned}
y(22, 11) &= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(22+11-3)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos\left(\frac{\pi}{2}(30)\right) \\[2.0ex]
&= 0.2 \cos(15\pi) \\[2.0ex]
&= 0.2 \times (-1) \\[2.0ex]
&= -0.2 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この波の動きをすべて表現できる万能な数式 \(y = 0.2 \cos(\frac{\pi}{2}(x+t-3))\) を最初に作ってしまいます。この式の \(x\) に場所、\(t\) に時間を代入すれば、いつでもどこでも波の高さが計算できる「魔法の箱」のようなものです。

  1. (1) \(x=15, t=0\) を代入して計算すると \(y=0.2\)。
  2. (2) \(x=3, t=1\) を代入して計算すると \(y=0\)。
  3. (3) \(x=22, t=11\) を代入して計算すると \(y=-0.2\)。

このように、物理的なイメージを毎回考えなくても、数学的な計算だけで答えを出すことができます。

結論と吟味

すべての設問で主たる解法と一致した答えが得られました。波の式を正しく立てることができれば、非常に強力で間違いの少ない解法であることがわかります。

解答 (1) \(0.2 \, \text{m}\) (2) \(0 \, \text{m}\) (3) \(-0.2 \, \text{m}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の周期性(空間と時間):
    • 核心: この問題の根幹は、波が持つ「空間的な周期性」と「時間的な周期性」という二つの性質を深く理解し、自在に応用することにあります。
    • 理解のポイント:
      • 空間的周期性: 波は波長\(\lambda\)ごとに同じ形を繰り返します。これにより、遠く離れた点 \(x\) の状態を、グラフの範囲内にある等価な点 \(x’ = x \pmod \lambda\) の状態に置き換えて考えることができます((1), (3)で活用)。
      • 時間的周期性: 各媒質は周期\(T\)ごとに同じ振動を繰り返します。これにより、遠い未来の時刻 \(t\) の状態を、1周期内の等価な時刻 \(t’ = t \pmod T\) の状態に置き換えて考えることができます((3)で活用)。
      • 連携: これら二つの周期性は独立しておらず、\(v=\lambda/T\)という関係で結びついています。この関係を使うことで、空間情報(\(\lambda\))と時間情報(\(T\))を相互に変換できます((2)で活用)。
  • 波の伝播と媒質の単振動の関係:
    • 核心: 「波が進む」という現象と、「各点の媒質がその場で振動する」という現象は、表裏一体の関係にあることを理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 波形はスナップショット: \(y-x\)グラフは、ある瞬間の各媒質の変位の集合体(写真)です。
      • 媒質の振動は定点観測: \(y-t\)グラフは、ある一点の媒質の変位の時間変化(ビデオ)です。
      • 初動の決定: 波の進行方向が分かっていれば、ある点の媒質が次にどちらに動くか(初動)が分かります。これは、波形という「未来の予定表」がどちらからやってくるかを見ているのと同じです。\(-x\)方向なら右側、\(+x\)方向なら左側の波形がやってきます。この理解が(3)を解く鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 波の式を求める問題: 本問の別解のように、\(y-x\)グラフから波の式 \(y(x,t)\) を立式させる問題は頻出です。振幅、波長、周期、進行方向、初期位相の5つの要素を正しく式に反映させる練習が有効です。
    • 2点間の位相差を求める問題: 2点 \(x_1, x_2\) が与えられ、それらの振動の位相がどれだけずれているかを問う問題。距離の差 \(|x_1-x_2|\) が波長\(\lambda\)の何倍かを計算することで求められ、空間的周期性の理解が直接問われます。
    • 波形が反転する問題: 固定端反射のように、波形が上下反転する現象を含む問題。周期性に加えて、位相が\(\pi\)ずれる(山が谷になる)という変化を考慮する必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 周期性の利用可能性を探る: 問題で与えられた位置\(x\)や時刻\(t\)が、グラフの範囲や1周期の時間より大きい場合、まず「周期性を使って簡単な問題に変換できないか?」と考えます。\(x\)を\(\lambda\)で、\(t\)を\(T\)で割る、という操作が定石です。
    2. 「波の移動」と「媒質の振動」のどちらで考えるかを選択する:
      • ある時刻の「波形全体」を知りたい場合は、波を平行移動させる考え方(波の移動)が有効です。
      • ある地点の「特定の時刻」での変位を知りたい場合は、その点での単振動を追跡する考え方(媒質の振動)が有効です。本問の主たる解法はこちらです。
    3. 波の式を立てるという最終手段: 物理的なイメージで追跡するのが難しい複雑な問題では、別解のように最初に波の式を立ててしまうのが最も確実なアプローチです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 初動の向きの判断ミス:
    • 誤解: 波が\(-x\)方向に進むのに、媒質の動きを考える際に、つい左側の波形を見てしまう。
    • 対策: 「波はタイムマシン。進行方向から未来の波形がやってくる」と覚えます。\(-x\)方向(左)に進むなら、未来の波形は右側にあります。したがって、「媒質は右側の点の動きを真似る」と機械的に判断する癖をつけましょう。
  • 空間と時間の周期の混同:
    • 誤解: 位置\(x\)を周期\(T\)で割ってしまう、あるいは時刻\(t\)を波長\(\lambda\)で割ってしまう。
    • 対策: 「空間の物差しは\(\lambda\)、時間の物差しは\(T\)」と明確に区別して覚えます。単位を見ても、\(x\) [m] と \(\lambda\) [m]、\(t\) [s] と \(T\) [s] が対応することは明らかです。
  • 三角関数の位相の扱いのミス(別解):
    • 誤解: 波の式を立てる際に、\(t=0\)の波形が\(cos\)型なのに\(sin\)で立式したり、位相のずれ(初期位相)を正しく式に反映できなかったりする。
    • 対策: \(t=0\)のグラフが、基本的な\(sin\)カーブや\(cos\)カーブからどれだけ平行移動しているかを考え、その移動量を位相の項として正しく追加する練習が必要です。例えば、\(x=3\)で山になる\(cos\)波は、基準となる\(x=0\)で山の\(cos\)波を\(+3\)だけ平行移動したものなので、\(x\)を\((x-3)\)に置き換える、といった操作に慣れましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 周期性を利用した剰余計算:
    • 選定理由: (1)や(3)のように、問題のスケールが基本単位(\(\lambda\)や\(T\))よりはるかに大きい場合、全体を律儀に考えるのは非効率です。周期的な現象では、整数周期分は無視して「余り」の部分だけに着目すればよい、という考え方は、物理学における非常に強力な問題単純化の手法です。
    • 適用根拠: 波の定義そのものが、空間と時間に関する周期関数に基づいています。数学的に \(f(x) = f(x+L)\) という周期関数の性質を、物理的な波長\(\lambda\)や周期\(T\)に当てはめて利用しているだけであり、論理的に極めて妥当です。
  • 波の式の立式(別解):
    • 選定理由: このアプローチは、問題の個別性((1)は空間だけ、(2)は時間だけ、(3)は両方)を無視し、最初から最も一般的で普遍的な表現(波の式)を求めることを目指します。これにより、個々の設問を場当たり的に解くのではなく、一つの原理からすべての答えを演繹的に導出できます。
    • 適用根拠: 正弦波という物理モデルは、数学的には三角関数で完全に記述できます。グラフから読み取れる物理量(\(A, \lambda, T\), 進行方向, 初期位相)は、この三角関数のパラメータに一対一で対応します。したがって、これらのパラメータを決定して式を完成させることは、物理現象を数学モデルに正確に落とし込む操作であり、その後の計算はそのモデル内での論理的な帰結を求めているに過ぎません。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 剰余計算の可視化: \(x=22\)を\(\lambda=4\)で割る際に、「\(22 = 5 \times 4 + 2\)」と式で書くだけでなく、「波5個分進んで、さらに2m進んだ場所」のように物理的なイメージを頭に描くと、ケアレスミスが減ります。時刻についても同様に「2周期分時間が経って、さらに3秒後」と考えます。
  • 単振動の動きを指でなぞる: (3)のように媒質の振動を追跡する際、グラフの\(y\)軸や、模範解答にあるような単振動の軌跡図を指でなぞりながら考えるのが有効です。「\(t=0\)で中心、初動は上。\(T/4\)後(1秒後)に山、\(T/2\)後(2秒後)に中心、\(3T/4\)後(3秒後)に谷」と、時間と位置を対応させながら具体的に動かすことで、勘違いを防げます。
  • 三角関数の単位円による確認(別解): 波の式の計算で、\(\cos(15\pi)\)のような大きな角度が出てきた場合、単位円を描いて確認する癖をつけると安全です。\(15\pi\)は、\(\pi\)(180度回転)を15回繰り返した位置なので、スタート地点(角度0)から見て奇数回の\(\pi\)回転、つまり角度\(\pi\)の位置と同じになります。したがって、\(\cos(15\pi) = \cos(\pi) = -1\)と確実に計算できます。
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3 横波と縦波

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「横波における媒質の速度」です。波が進むとき、波を構成する各点(媒質)は、その場で上下に振動しているにすぎません。この媒質の運動が「単振動」であることを理解し、単振動における変位と速度の関係を波のグラフ上で正しく読み取れるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 媒質の運動は単振動: 波の各点は、振動の中心(\(y=0\))を中心として単振動を行っていること。
  2. 単振動における変位と速度の関係:
    • 振動の端(変位が最大・最小の点)で、速度は一瞬 \(0\) になる。
    • 振動の中心(変位が \(0\) の点)で、速さは最大になる。
  3. 波の進行方向と媒質の振動方向の関係: 波が \(+x\) 方向に進むとき、各媒質は「自分のすぐ左側(\(x\)が小さい側)の媒質の動き」を少し遅れて真似する。これにより、各点の速度の向き(初動の向き)が判断できます。
  4. 単振動の速さの最大値: 振幅を \(A\)、周期を \(T\)、角振動数を \(\omega\) とすると、速さの最大値は \(u_{\text{max}}=A\omega\) と表され、\(\omega=2\pi/T\) の関係があること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、単振動で速度が \(0\) になるのは「振動の端」であることを利用し、グラフ上で山と谷の位置を探します。
  2. (2)では、単振動で速さが最大になるのは「振動の中心」であることを利用し、まず \(y=0\) の点に注目します。次に、速度が「負」(\(y\)軸の負の向き、つまり下向き)になる点を、波の進行方向から判断して選び出します。
  3. (3)では、媒質の運動が振幅\(A\)、周期\(T\)の単振動であることから、単振動の速さの最大値の公式を適用して式を導きます。

問(1)

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