「重要問題集」徹底解説(81〜85問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題81 (埼玉大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、水面波を題材に、波の基本的な性質である「屈折」「反射」、そしてそれらが引き起こす「干渉(定在波)」という3つの重要現象を総合的に扱っています。前半(1)~(4)では屈折現象に焦点を当て、後半(5)~(7)では反射と干渉によって生じる定在波の性質を問うています。
この問題の核心は、波の基本公式、屈折の法則、そして定在波の幾何学的な条件という複数の物理法則を、段階的に正しく適用していくことです。

与えられた条件
  • 水槽: 領域A(水深\(2h\)、速さ\(v\)、波長\(\lambda\))と領域B(水深\(h\)、速さ\(v’\)、波長\(\lambda’\))
  • 入射条件: 領域Aから領域Bへ、波面と境界面のなす角\(45^\circ\)で入射。
  • 反射条件: 領域Bの壁面で自由端反射。
  • 干渉条件: 領域Bで定在波が観測され、境界面上に節があり、それ以外に6本の節線が存在する(合計7本の節)。
  • 物理法則: 波の速さは水深の平方根に比例する。
問われていること
  • (1) 領域Aでの波の周期\(T\)。
  • (2) 領域Bでの波の速さ\(v’\)を\(v\)で表す。
  • (3) 領域Aに対する領域Bの屈折率\(n\)と、領域Bでの屈折角\(\theta’\)。
  • (4) 領域Bでの波の周期\(T’\)と波長\(\lambda’\)。
  • (5) 壁面を平行に進む波の波長\(\lambda_s\)と速さ\(v_s\)。
  • (6) 境界面と壁面の距離\(L\)を\(\lambda\)で表す。
  • (7) 領域Aで生じる定在波の隣り合う節線間の距離\(d\)を\(\lambda\)で表す。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の屈折、反射、干渉」の総合的な応用です。特に、異なる媒質での波の振る舞いの変化と、干渉による定在波の幾何学的性質を理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の関係式 \(v=f\lambda\) は、あらゆる波の問題の出発点です。周期\(T=1/f\)との関係も重要です。
  2. 屈折の法則: 異なる媒質へ波が進む際のルールです。屈折率\(n\)、速さ\(v\)、入射角・屈折角\(\theta\)の関係 \(n_{12} = \displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2}\) を正しく適用します。このとき、振動数(周期)は変化しないことがポイントです。
  3. 波の干渉と定在波: 入射波と反射波が重なり合ってできる定在波について、節や腹の位置がどのような幾何学的条件で決まるかを理解する必要があります。作図による考察が有効です。
  4. 反射の境界条件: 「自由端反射」では反射点が腹(振動の最大点)になるという条件が、定在波の腹と節の配置を決める上で決定的な役割を果たします。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、(1)から(4)にかけては、波の基本式と屈折の法則を順に適用し、領域Aと領域Bにおける波のパラメータ(周期、速さ、波長、角度)を一つずつ確定させていきます。
  2. 次に、(5)では、屈折波が壁面を伝わる「見かけの波」について、作図からその波長と速さを求めます。
  3. 最後の(6)と(7)では、屈折波と反射波の干渉によって生じる定在波について、作図から節線間隔を求め、与えられた境界条件(壁面が腹、節の本数)を用いて距離を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間の基本的な関係式 \(v=f\lambda\) を用います。周期\(T\)は振動数\(f\)の逆数、\(T=1/f\)であることから、周期\(T\)を速さ\(v\)と波長\(\lambda\)で表します。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本公式 \(v=f\lambda\) を正しく理解していること。
  • 周期\(T\)と振動数\(f\)の関係 \(T=1/f\) を理解していること。

具体的な解説と立式
波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、波の基本式
$$v = f\lambda$$
が成り立ちます。また、周期\(T\)と振動数\(f\)の間には、
$$T = \frac{1}{f}$$
という関係があります。上の式を \(f\) について解くと \(f = \displaystyle\frac{v}{\lambda}\) となり、これを下の式に代入します。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
  • 周期と振動数の関係: \(T=1/f\)
計算過程

\(f = \displaystyle\frac{v}{\lambda}\) を \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\) に代入すると、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{1}{v/\lambda} \\[2.0ex]&= \frac{\lambda}{v}
\end{aligned}
$$
これが求める周期\(T\)です。

計算方法の平易な説明

周期とは、波が1波長分進むのにかかる時間のことです。したがって、距離である波長\(\lambda\)を、速さ\(v\)で割ることで、時間である周期\(T\)が求まります。

結論と吟味

領域Aでの波の周期は \(T = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\) です。これは波の基本的な性質を表す普遍的な式であり、物理的に妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{\lambda}{v}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
問題文にある「波の速さは、水深の平方根に比例する」という物理的条件を数式で表現します。比例定数を導入して領域Aと領域Bについてそれぞれ式を立て、その2式の比をとることで、領域Bの速さ\(v’\)を領域Aの速さ\(v\)で表します。

この設問における重要なポイント

  • 問題文で与えられた物理的条件を、比例定数を用いて正しく数式化すること。
  • 比を計算することで、未知の比例定数を消去するテクニックを理解していること。

具体的な解説と立式
波の速さが水深の平方根に比例する、という条件から、比例定数を\(k\)とすると、速さ\(u\)と水深\(d_{\text{水深}}\)の関係は \(u = k\sqrt{d_{\text{水深}}}\) と表せます。

  • 領域A: 速さ\(v\)、水深\(2h\)。よって、\(v = k\sqrt{2h}\)。
  • 領域B: 速さ\(v’\)、水深\(h\)。よって、\(v’ = k\sqrt{h}\)。

この2つの式の比をとることで、\(v’\)と\(v\)の関係を求めます。
$$\frac{v’}{v} = \frac{k\sqrt{h}}{k\sqrt{2h}}$$

使用した物理公式

  • 問題文で与えられた条件: \(v \propto \sqrt{\text{水深}}\)
計算過程

立式した比の式を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{v’}{v} &= \frac{k\sqrt{h}}{k\sqrt{2h}} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{h}}{\sqrt{2}\sqrt{h}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{aligned}
$$
この式を\(v’\)について解くと、
$$v’ = \frac{1}{\sqrt{2}}v$$

計算方法の平易な説明

水深が\(2h\)から\(h\)へと半分になると、速さは\(\sqrt{2h}\)に比例する値から\(\sqrt{h}\)に比例する値へと変化します。つまり、速さは\(\displaystyle\frac{\sqrt{h}}{\sqrt{2h}} = \frac{1}{\sqrt{2}}\)倍になります。この関係を使って、領域Bでの速さ\(v’\)を領域Aでの速さ\(v\)で表します。

結論と吟味

領域Bでの波の速さは \(v’ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}v\) です。水深が浅くなるので速さが遅くなるという結果は、物理現象として妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}v\)

問(3)

思考の道筋とポイント
屈折の法則を適用します。領域Aに対する領域Bの屈折率\(n\)は、速さの比 \(v/v’\) と、入射角と屈折角のsinの比 \(\sin 45^\circ / \sin \theta’\) で定義されます。まず、問(2)で求めた速さの関係から屈折率\(n\)を計算し、次にその値を使って屈折角\(\theta’\)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 屈折の法則の定義式 \(n = \displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2}\) を正しく理解していること。
  • 問題の「波面と境界面のなす角」が、屈折の法則で用いる入射角・屈折角と等しいことを理解していること。

具体的な解説と立式
領域A(媒質1)から領域B(媒質2)へ波が進むときの、領域Aに対する領域Bの屈折率\(n\)は、屈折の法則により次のように表されます。
$$n = \frac{v}{v’} \quad \cdots ①$$
$$n = \frac{\sin 45^\circ}{\sin \theta’} \quad \cdots ②$$
まず、式①に問(2)の結果を用いて屈折率\(n\)を求めます。次に、その結果を式②に用いて屈折角\(\theta’\)を求めます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_{12} = \displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2}\)
計算過程

まず、式①から屈折率\(n\)を求めます。問(2)の結果 \(v’ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}v\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{v}{\frac{1}{\sqrt{2}}v} \\[2.0ex]&= \sqrt{2}
\end{aligned}
$$
次に、この結果 \(n=\sqrt{2}\) を式②に代入し、\(\theta’\)を求めます。
$$\sqrt{2} = \frac{\sin 45^\circ}{\sin \theta’}$$
この式を \(\sin\theta’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\sin \theta’ &= \frac{\sin 45^\circ}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]&= \frac{1/\sqrt{2}}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
\(0^\circ \le \theta’ \le 90^\circ\) の範囲でこの式を満たす\(\theta’\)は、
$$\theta’ = 30^\circ$$

計算方法の平易な説明

波が速い媒質から遅い媒質に入ると、波は境界面に近づくように曲がります(屈折)。この曲がり具合は「屈折の法則」というルールに従います。まず速さの比から「屈折率」という値を求め、その屈折率を使って、曲がった後の角度(屈折角)を計算します。

結論と吟味

屈折率は \(n=\sqrt{2}\)、屈折角は \(\theta’=30^\circ\) です。波の速さが遅くなる媒質に入るため、屈折角(\(30^\circ\))が入射角(\(45^\circ\))より小さくなるという結果は、物理的に正しい現象です。

解答 (3) 屈折率: \(\sqrt{2}\), 角度: \(30^\circ\)

問(4)

思考の道筋とポイント
屈折現象における不変量と変化量を正しく理解することが鍵です。波が屈折するとき、波源の振動は変わらないため、振動数\(f\)(したがって周期\(T\))は変化しません。一方、速さ\(v\)は変化するため、波の基本式 \(v=f\lambda\) に従い、波長\(\lambda\)も変化します。まず周期\(T’\)を求め、次に波の基本式 \(\lambda’ = v’T’\) を使って波長\(\lambda’\)を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 屈折の際、振動数と周期は不変であるという重要な性質を理解していること。
  • 波長は速さに比例して変化すること (\(\lambda’/\lambda = v’/v\)) を理解していること。

具体的な解説と立式
波が異なる媒質に進入(屈折)しても、波を送り出している波源の振動数は変わらないため、波の振動数\(f\)と周期\(T=1/f\)は一定に保たれます。
したがって、領域Bでの周期\(T’\)は、領域Aでの周期\(T\)に等しくなります。
$$T’ = T$$
問(1)の結果 \(T = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\) を用いると、
$$T’ = \frac{\lambda}{v}$$
次に、領域Bでの波長\(\lambda’\)を、波の基本式 \(\lambda’ = v’T’\) を用いて求めます。

使用した物理公式

  • 屈折における周期の不変性: \(T’ = T\)
  • 波の基本式: \(\lambda’ = v’T’\)
計算過程

\(\lambda’ = v’T’\) の式に、問(2)で求めた \(v’ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}v\) と、上で求めた \(T’ = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= v’ T’ \\[2.0ex]&= \left( \frac{1}{\sqrt{2}}v \right) \cdot \left( \frac{\lambda}{v} \right) \\[2.0ex]&= \frac{1}{\sqrt{2}}\lambda
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

媒質が変わっても、波の「リズム」(周期や振動数)は変わりません。しかし、進む速さが変わるため、1周期の間に進む距離である「波長」は変化します。問(2)で速さが\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\)倍になったことがわかっているので、波長も同じく\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\)倍になります。

結論と吟味

周期は \(T’ = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\)、波長は \(\lambda’ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\lambda\) です。速さが遅くなった分だけ波長が短くなるという結果は物理的に妥当です。

解答 (4) 周期: \(\displaystyle\frac{\lambda}{v}\), 波長: \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\lambda\)

問(5)

思考の道筋とポイント
壁面で観測される波は、屈折波の波面が壁面に到達することで生じる「見かけの波」です。模範解答の図bを参考に、幾何学的な関係からこの見かけの波の波長\(\lambda_s\)を求めます。次に、速さ\(v_s\)は、この波長\(\lambda_s\)を1周期\(T’\)の間に進む速さとして計算します。

この設問における重要なポイント

  • 壁面上の波が、屈折波の波面が壁を滑っていくことによって生じる現象であることを理解すること。
  • 作図から、壁面上の波長\(\lambda_s\)、屈折波の波長\(\lambda’\)、屈折角\(\theta’\)の間の三角比の関係を導き出すこと。

具体的な解説と立式
模範解答の図bのように、屈折波の波面(山の線)が壁面に到達する点を考えます。ある山の波面が壁面上の点(谷1)に到達したとします。1周期\(T’\)後、この波面は進行方向に垂直に距離\(\lambda’\)だけ進み、次の山の波面が壁面上の点(谷2)に到達します。この2点間の距離が、壁面を伝わる波の波長\(\lambda_s\)です。
図bの直角三角形に着目すると、斜辺が\(\lambda_s\)、高さが\(\lambda’\)、その間の角が\(\theta’ = 30^\circ\)なので、以下の関係が成り立ちます。
$$\lambda’ = \lambda_s \sin 30^\circ$$
壁面上の波の速さ\(v_s\)は、距離\(\lambda_s\)を時間\(T’\)で進む速さなので、次式で与えられます。
$$v_s = \frac{\lambda_s}{T’}$$

使用した物理公式

  • 三角比
  • 速さの定義: 速さ = 距離 / 時間
計算過程

まず\(\lambda_s\)を計算します。上の関係式を\(\lambda_s\)について解くと、
$$\lambda_s = \frac{\lambda’}{\sin 30^\circ}$$
問(4)で求めた \(\lambda’ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\lambda\) と、\(\sin 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_s &= \frac{\frac{1}{\sqrt{2}}\lambda}{1/2} \\[2.0ex]&= \sqrt{2}\lambda
\end{aligned}
$$
次に\(v_s\)を計算します。\(v_s = \displaystyle\frac{\lambda_s}{T’}\) の式に、上で求めた \(\lambda_s = \sqrt{2}\lambda\) と、問(4)で求めた \(T’ = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_s &= \frac{\sqrt{2}\lambda}{\lambda/v} \\[2.0ex]&= \sqrt{2}v
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

斜めに進む波が壁にぶつかると、壁に沿って波が伝わっているように見えます。この「見かけの波」の波長と速さを求めます。作図をして三角形の辺の長さの関係(三角比)を使うと、見かけの波長が計算できます。速さは、その波長を周期で割れば求まります。

結論と吟味

壁面上の波の波長は \(\lambda_s = \sqrt{2}\lambda\)、速さは \(v_s = \sqrt{2}v\) です。入射波の波長\(\lambda\)、速さ\(v\)と比較すると、それぞれ\(\sqrt{2}\)倍になっています。これは、波が斜めに壁に当たることで、壁に沿った成分が引き伸ばされるためであり、妥当な結果です。

解答 (5) 波長: \(\sqrt{2}\lambda\), 速さ: \(\sqrt{2}v\)

問(6)

思考の道筋とポイント
領域Bで観測される定在波の節の位置について考えます。まず、節と節の間隔(節線間距離)\(\Delta x\)を、作図によって波長\(\lambda’\)と屈折角\(\theta’\)を用いて表します。次に、問題文の条件「壁面での反射は自由端反射」「境界面の節が壁面から数えて7番目」を用いて、境界面と壁面の距離\(L\)を\(\Delta x\)で表し、最終的に\(\lambda\)で表します。

この設問における重要なポイント

  • 定在波の節線間隔の作図による導出方法を理解していること。
  • 自由端反射では反射点が「腹」になることを理解していること。
  • 腹と隣接する節の間の距離が、節線間隔の半分になることを理解していること。

具体的な解説と立式
Step 1: 節線間距離 \(\Delta x\) を求める
模範解答の図dのように、入射波(屈折波)と反射波の波面を考えます。2つの波が弱め合ってできる節線の間隔を\(\Delta x\)とすると、図の菱形の部分に着目することで、幾何学的に以下の関係が導かれます。
$$2\Delta x \cos \theta’ = \lambda’$$
ここで \(\theta’ = 30^\circ\) です。

Step 2: 距離 \(L\) を \(\Delta x\) で表す
壁面での反射は自由端反射なので、壁面は定在波の「腹」(振動が最大になる場所)となります。定在波では、腹とそれに最も近い節の間の距離は、節と節の間の距離\(\Delta x\)の半分、つまり \(\displaystyle\frac{\Delta x}{2}\) です。
問題文より、境界面上の節は、壁面から数えて7番目の節です。壁面(腹)から1番目の節までの距離が \(\displaystyle\frac{\Delta x}{2}\)、その後は\(\Delta x\)間隔で節が並ぶので、1番目の節から7番目の節までの距離は \(6\Delta x\) となります。
したがって、壁面から境界面(7番目の節)までの総距離\(L\)は、
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{\Delta x}{2} + 6\Delta x \\[2.0ex]&= \frac{13}{2}\Delta x
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 定在波の節線間隔の条件式(作図より)
  • 自由端反射の条件(壁面が腹)
計算過程

まず、Step 1の式から \(\Delta x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= \frac{\lambda’}{2\cos 30^\circ} \\[2.0ex]&= \frac{\lambda’}{2 \cdot (\sqrt{3}/2)} \\[2.0ex]&= \frac{\lambda’}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\sqrt{3}} \left( \frac{1}{\sqrt{2}}\lambda \right) \\[2.0ex]&= \frac{\lambda}{\sqrt{6}}
\end{aligned}
$$
次に、この\(\Delta x\)をStep 2で立てた\(L\)の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{13}{2}\Delta x \\[2.0ex]&= \frac{13}{2} \cdot \frac{\lambda}{\sqrt{6}} \\[2.0ex]&= \frac{13\lambda}{2\sqrt{6}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、干渉によってできる定在波の「節のしま模様」の間隔(\(\Delta x\))を、作図と三角比を使って計算します。次に、壁は「腹」(最も大きく振動する場所)で、境界面が7番目の「節」(全く振動しない場所)であるという条件を使います。腹から1番目の節までの距離は間隔の半分で、その後は等間隔で節が並ぶので、全ての距離を足し合わせることで、壁から境界面までの距離\(L\)が計算できます。

結論と吟味

境界面と壁面の距離は \(L = \displaystyle\frac{13\lambda}{2\sqrt{6}}\) です。問題で与えられたすべての条件を組み合わせて導出した結果であり、妥当です。

解答 (6) \(\displaystyle\frac{13\lambda}{2\sqrt{6}}\)

問(7)

思考の道筋とポイント
領域Aでも、領域Bと同様に定在波が形成されると考えます。領域Bとの違いは、波長が\(\lambda\)であり、波面と境界面のなす角が\(45^\circ\)である点です。問(6)で用いたのと同じ作図と幾何学的関係を用いて、領域Aでの節線間距離\(d\)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 問(6)の考え方を、異なるパラメータ(波長、角度)を持つ領域Aに適用できること。
  • 節線間隔を求める幾何学的な関係式を正しく立てられること。

具体的な解説と立式
領域Aにおいても、入射波と反射波が干渉して定在波が形成されます。
領域Aでは、波長は\(\lambda\)、波面と境界面(または壁面と平行な線)のなす角は\(45^\circ\)です。
問(6)の図dと同様の作図を領域Aについて行うと、隣り合う節線間の距離を\(d\)として、以下の関係式が成り立ちます。
$$2d \cos 45^\circ = \lambda$$

使用した物理公式

  • 定在波の節線間隔の条件式(作図より)
計算過程

上の式を\(d\)について解きます。
$$d = \frac{\lambda}{2\cos 45^\circ}$$
\(\cos 45^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{\lambda}{2 \cdot (1/\sqrt{2})} \\[2.0ex]&= \frac{\lambda}{\sqrt{2}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

領域Aでも、領域Bと同じように干渉による定在波ができます。ただし、波長と角度が異なります。領域Bのときと同じように、作図から節と節の間隔\(d\)を計算する式を立て、値を代入して計算します。

結論と吟味

領域Aにおける節線間距離は \(d = \displaystyle\frac{\lambda}{\sqrt{2}}\) です。領域Bの節線間隔 \(\Delta x = \displaystyle\frac{\lambda}{\sqrt{6}}\) と比較すると、\(d > \Delta x\) となります。これは、領域Aの方が波長が長く(\(\lambda > \lambda’\))、また干渉の角度に関連する\(\cos\)の値が小さいため(\(\cos 45^\circ < \cos 30^\circ\))、間隔が広くなるという物理的に妥当な結果です。

解答 (7) \(\displaystyle\frac{\lambda}{\sqrt{2}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の基本法則と屈折の法則:
    • 核心: 波の運動を記述する最も基本的な関係式 \(v=f\lambda\) と、異なる媒質へ進む際のルールである屈折の法則 \(n_{12} = \displaystyle\frac{v_1}{v_2} = \frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2}\) が、この問題の前半部分を貫く根幹です。
    • 理解のポイント: 特に重要なのは、屈折が起きても波源の振動数は変わらないため、振動数\(f\)と周期\(T\)は不変であるという点です。速さ\(v\)が変化すると、それに伴って波長\(\lambda\)が \(v\) に比例して変化します (\(\lambda = vT\))。この「変わるもの」と「変わらないもの」の区別が、(1)~(4)を解く上での絶対的な基礎となります。
  • 波の干渉と定在波の幾何学的条件:
    • 核心: 入射波と反射波が重なり合うことで、特定の場所に常に振動しない「節」と、常に最大振幅で振動する「腹」が並ぶ定在波が形成されます。この問題の後半は、この定在波の幾何学的配置を解き明かすことにあります。
    • 理解のポイント: 節線(節が連なった線)の間隔は、元の波の波長と干渉する角度によって決まります。問題の図dのように、入射波と反射波の波面を作図し、菱形の幾何学的関係から \(2\Delta x \cos\theta’ = \lambda’\) のような条件式を導出する能力が求められます。これは暗記するのではなく、その場で図を描いて導出できるようにしておくことが重要です。
  • 反射の境界条件(自由端反射):
    • 核心: 波が反射する際の境界の性質が、定在波の腹と節の配置を決定します。「自由端反射」の場合、反射点は媒質が自由に振動できるため、定在波の「腹」になります。
    • 理解のポイント: (6)では、壁面が「腹」になるという条件が、節の位置を特定するための出発点となります。腹と最初の節までの距離は節線間隔の半分 (\(\Delta x/2\)) であることを理解し、そこから節の数を数えて全体の距離を計算する、という論理の流れが鍵となります。もしこれが「固定端反射」であれば、反射点は「節」となり、計算の仕方が変わってきます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光の干渉(薄膜、ヤングの実験、回折格子): 光も波であり、屈折・反射・干渉を起こします。本問の定在波の考え方は、薄膜による光の干渉で、膜の表と裏で反射した光が干渉する問題と構造が似ています。節線間隔を求める幾何学的な考え方は、ヤングの実験や回折格子で干渉縞の間隔を求める際にも応用できます。
    • 音波の干渉(気柱の共鳴、うなり): 音波も同様に定在波を形成します。気柱の共鳴は、管の中で反射した音波が干渉して定在波ができる現象であり、開口端が「腹」(自由端相当)、閉口端が「節」(固定端相当)となる境界条件が重要です。
    • ドップラー効果と組み合わせた問題: 波源や観測者が移動する場合、観測される振動数が変化します。屈折や反射とドップラー効果が組み合わさった複雑な問題も考えられます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 現象の分解: 問題文が複雑な場合、どのような物理現象が順番に起きているかを分解します。この問題では、「①領域Aを進む \(\rightarrow\) ②境界面で屈折 \(\rightarrow\) ③領域Bを進む \(\rightarrow\) ④壁面で反射 \(\rightarrow\) ⑤屈折波と反射波が干渉」という流れを把握します。
    2. 各領域・各現象でのパラメータ整理: 領域AとBで、速さ、波長、角度がそれぞれどうなっているかを一覧表のように整理すると混乱を防げます。また、屈折の前後で何が変わり、何が変わらないかを明確に意識します。
    3. 作図の活用: 特に干渉の問題では、波面や進行方向を模式的に作図することが極めて有効です。作図によって、角度や波長、節線間隔などの幾何学的な関係性が視覚的に明らかになります。
    4. 境界条件の確認: 「自由端反射」か「固定端反射」か、「境界面に節がある」など、問題文に書かれている境界条件は、方程式を立てる上で決定的な制約となります。これらの条件を見落とさないように注意深く読み取ります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 入射角・屈折角の誤認:
    • 誤解: 屈折の法則で使う角度は、常に境界面の法線と波の進行方向のなす角です。問題によっては本問のように「波面と境界面のなす角」が与えられます。今回はこれがたまたま入射角と等しくなりますが、常にそうとは限りません。
    • 対策: 必ず図を描き、定義通りの入射角・屈折角がどこになるかを確認する習慣をつけましょう。波の進行方向は波面と垂直であるという基本を忘れないことが重要です。
  • 屈折時の不変量の混同:
    • 誤解: 屈折すると速さが変わるため、周期や振動数も変わってしまうと勘違いする。
    • 対策: 「波のリズム(振動数・周期)は波源で決まる」と覚えましょう。媒質が変わっても、1秒間に送り込まれる波の数は変わらないため、振動数\(f\)は不変です。これが物理的な本質です。
  • 自由端反射と固定端反射の混同:
    • 誤解: (6)で壁面を「節」だと勘違いして、距離\(L\)を \(7\Delta x\) などと計算してしまう。
    • 対策: 「自由端 \(\rightarrow\) 腹」「固定端 \(\rightarrow\) 節」という対応関係を明確に暗記しましょう。なぜそうなるか(自由端は動きやすいから振幅最大、固定端は動けないから振幅ゼロ)という理由付けと共に理解すると忘れにくくなります。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 波面の進行図: 領域AからBへ波面が進む様子を描き、境界面で波面の間隔(=波長)が狭まり、進行方向が折れ曲がる様子を視覚化します。これにより、速さが遅くなると波長が短くなることや、屈折角が入射角より小さくなることが直感的に理解できます。
    • 干渉の幾何学図(菱形): 模範解答の図dは、定在波の節線間隔を求めるための非常に重要な図です。入射波の波面と反射波の波面を平行線の組として描き、それらの交点が作る菱形に着目することで、三角比を用いて節線間隔を導出できます。この作図法は他の干渉問題にも応用できる強力なツールです。
    • 定在波の腹と節の配置図: (6)を解く際には、壁面(腹)と境界面(節)の位置関係を一直線上に描き、その間に節がどのように配置されるかを模式的に図示します(模範解答の図e)。これにより、距離\(L\)が \(\Delta x/2\) と \(6\Delta x\) の和であることが一目瞭然になります。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 角度の正確な定義: 図の中に角度を書き込む際は、それが法線とのなす角なのか、境界面とのなす角なのかを明確に区別します。
    • 波長と進行方向の関係: 波長は波の進行方向に沿った長さであり、波面と波面の間隔です。図示する際に、斜めの波長と水平方向の成分などを混同しないように注意が必要です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(v=f\lambda\) (波の基本式):
    • 選定理由: 波の3つの基本パラメータ(速さ、振動数、波長)の関係を問うているため。特に(1)や(4)で、未知のパラメータを既知のパラメータから導出する際に必須です。
    • 適用根拠: 波という現象の定義そのものです。
  • 屈折の法則:
    • 選定理由: 波が異なる媒質(領域AとB)の境界面を通過する現象を扱っているため。速さ、角度、屈折率の関係を明らかにする唯一の法則です。
    • 適用根拠: 媒質が変わっても波面の接続が保たれる(ホイヘンスの原理)という物理的要請に基づきます。
  • 定在波の幾何学的条件(作図):
    • 選定理由: (6)と(7)で「節線間隔」という、干渉によって生じる空間的なパターンを問われているため。単純な公式ではなく、作図による幾何学的考察が必要です。
    • 適用根拠: 入射波と反射波の位相が常に逆になる点が「節」である、という干渉の原理に基づきます。作図は、この位相条件を満たす点の集合(節線)を見つけるための手段です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 周期T:
    • 戦略: 波の基本式を変形する。
    • フロー: \(v=f\lambda\) と \(T=1/f\) \(\rightarrow\) \(T = \lambda/v\)。
  2. (2) 速さv’:
    • 戦略: 問題文の条件から比例式を立て、比をとる。
    • フロー: \(v=k\sqrt{2h}\), \(v’=k\sqrt{h}\) \(\rightarrow\) \(\displaystyle\frac{v’}{v} = \frac{1}{\sqrt{2}}\) \(\rightarrow\) \(v’\)を求める。
  3. (3) 屈折率nと屈折角θ’:
    • 戦略: 屈折の法則を二段階で適用する。
    • フロー: ① \(n = v/v’\) に(2)の結果を代入し\(n\)を求める \(\rightarrow\) ② \(n = \sin 45^\circ / \sin\theta’\) に\(n\)を代入し\(\theta’\)を求める。
  4. (4) 周期T’と波長λ’:
    • 戦略: 屈折の不変量(周期)と、変化量(波長)を順に求める。
    • フロー: ① \(T’=T\) を使う \(\rightarrow\) ② \(\lambda’ = v’T’\) に(2)と①の結果を代入し\(\lambda’\)を求める。
  5. (5) 壁面上の波長λsと速さvs:
    • 戦略: 作図による幾何学的考察。
    • フロー: ① 図bから \(\lambda_s \sin\theta’ = \lambda’\) の関係を導き、\(\lambda_s\)を求める \(\rightarrow\) ② \(v_s = \lambda_s / T’\) の定義式に代入し\(v_s\)を求める。
  6. (6) 距離L:
    • 戦略: ①節線間隔\(\Delta x\)を求める \(\rightarrow\) ②境界条件から\(L\)と\(\Delta x\)の関係式を立てる \(\rightarrow\) ③代入して計算。
    • フロー: ① 図dから \(2\Delta x \cos\theta’ = \lambda’\) を導き\(\Delta x\)を求める \(\rightarrow\) ② 壁面が腹、境界面が7番目の節であることから \(L = \Delta x/2 + 6\Delta x\) を立てる \(\rightarrow\) ③ ①の結果を代入し\(L\)を\(\lambda\)で表す。
  7. (7) 距離d:
    • 戦略: (6)と同様の幾何学的考察を領域Aのパラメータで行う。
    • フロー: 図dと同様の関係式 \(2d \cos 45^\circ = \lambda\) を立て、\(d\)を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • パラメータの混同に注意: この問題は \(v, v’\), \(\lambda, \lambda’\), \(T, T’\), \(\theta, \theta’\) など似た記号が多く登場します。計算の各段階で、今使っているのが領域AのパラメータなのかBのパラメータなのかを常に意識しましょう。
  • 三角比の値の正確性: \(\sin 30^\circ, \cos 30^\circ, \sin 45^\circ, \cos 45^\circ\) などの基本的な三角比の値を正確に使うことが必須です。うろ覚えの場合は、単位円や直角三角形を描いて確認する癖をつけましょう。
  • 段階的な計算: (6)のように複数のステップを踏む計算では、まず\(\Delta x\)を\(\lambda’\)で表し、次に\(\lambda’\)を\(\lambda\)で表すなど、一気に代入しようとせず、一つずつ式を整理しながら進めると、間違いが減り見通しが良くなります。
  • 有理化のタイミング: 計算の途中では必ずしも有理化する必要はありません。最終的な答えを出す段階で、分母に根号が残っていれば有理化すれば十分です。途中で有理化するとかえって式が複雑になることもあります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (2) \(v’ < v\): 水深が浅くなると速さが遅くなる、という直感や経験則と一致します。
    • (3) \(\theta’ < 45^\circ\): 速さが遅い媒質に入るとき、波は法線に近づくように屈折します。入射角より屈折角が小さくなるという結果は物理的に正しいです。
    • (4) \(\lambda’ < \lambda\): 周期が一定で速さが遅くなるので、1周期に進む距離(波長)が短くなるのは当然です。
    • (5) \(v_s > v\): 壁面を滑る見かけの速さ\(v_s\)は、実際の波の速さ\(v’\)を \(\sin\theta’\) で割ったもの (\(v_s = v’/\sin\theta’\)) です。\(\sin\theta’ < 1\) なので、\(v_s > v’\) となります。今回のケースでは、元の速さ\(v\)よりも速くなっており、これも幾何学的に妥当な結果です。
  • 極端な場合や既知の状況との比較:
    • もし波が境界面に垂直に入射した場合 (\(45^\circ \rightarrow 0^\circ\))、屈折は起こらず直進し(\(\theta’ = 0^\circ\))、干渉による節線は境界面と平行に、間隔\(\lambda’/2\)で生じるはずです。本問の \(2\Delta x \cos\theta’ = \lambda’\) の式で \(\theta’ \rightarrow 0\) とすると、\(\Delta x = \lambda’/2\) となり、既知の事実と一致します。このような思考実験は、式の妥当性を確認するのに役立ちます。

問題82 (東京大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、水面波を題材に、反射、屈折、干渉、そしてドップラー効果という波の性質を総合的に問うています。前半〔A〕では静止した波源について、後半〔B〕では運動する波源について考察します。
この問題の核心は、それぞれの物理現象に対応する法則を正確に理解し、幾何学的な考察や座標を用いて、波の振る舞いを数式で表現することです。

与えられた条件
  • 媒質: 領域A(\(y>0\))と領域B(\(y<0\))の2つ。
  • 波の速さ: 領域Aで\(V\)、領域Bで\(V/2\)。
  • 反射: 境界(\(x\)軸)で位相変化なし(自由端反射)。
  • 波源:
    • 〔A〕: 点P\((0, d)\)に静止。
    • 〔B〕: 〔A〕と同じ振動数の波源が運動する。
  • その他:
    • 〔A〕(1): 領域Aでの波長は\(d/2\)。
    • 〔A〕(2): 波の速さ\(v\)は\(v=g^a h^b\)で表される。
    • 〔B〕(1): 波源は\(y\)軸上を速さ\(u\)で、観測点は\(y\)軸上を速さ\(w\)で運動。
    • 〔B〕(2): 波源は直線\(y=d\)上を速さ\(u\)で運動。
問われていること
  • 〔A〕(1) 領域Aでの振動数\(f\)と、領域Bでの波長\(\lambda_B\)。
  • 〔A〕(2) 定数\(a, b\)の値と、領域AとBの水深の比。
  • 〔A〕(3) 反射経路長\(PQ+QR\)。
  • 〔A〕(4) 直線\(y=d\)上で弱めあう条件と、その点の個数。
  • 〔A〕(5) 領域Bの特定の波面の交点S, Tの座標と、点Tでの屈折角の\(\sin\)の値。
  • 〔B〕(1) 波源で観測される反射波の振動数と、領域Bの点で観測される波の振動数。
  • 〔B〕(2) 波が反射して波源に戻るまでの時間。
  • 〔B〕(3) 波源に戻った波が逆位相になる条件と、それを満たす速さ\(u\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の諸性質の統合的理解」です。反射・屈折・干渉・ドップラー効果という4大テーマが1つの問題に凝縮されています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: \(v=f\lambda\)は全ての波の問題の基本です。
  2. 反射の法則と仮想波源: 反射波は、境界面に対して波源と線対称の位置にある「仮想波源」から出たように振る舞います。これにより、反射波の経路長計算が単純な直線距離の計算に置き換わります。
  3. 波の干渉: 2つの波が重なる点での強め合い・弱め合いは、波源からの経路差によって決まります。経路差が半波長の奇数倍なら弱め合い、整数倍なら強め合いです。
  4. 屈折の法則: 媒質が変わる境界で波の進行方向が変わる現象です。振動数は不変ですが、速さと波長は変化します。
  5. ドップラー効果: 波源や観測者が運動することで、観測される振動数が変化します。それぞれの速度の向き(近づくか遠ざかるか)を正しく式に反映させることが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 〔A〕では、まず波の基本式から始め、仮想波源の考え方を用いて反射と干渉の問題を解きます。幾何学的な関係を座標で表現する能力が問われます。
  2. 〔A〕(5)では、屈折の法則と波の位相(同位相の点は波源から波長の整数倍の距離にある)の概念を組み合わせて解きます。
  3. 〔B〕では、ドップラー効果の公式を様々な状況に適用します。音源と観測者の相対的な速度を正しく設定することが鍵です。
  4. 最後の〔B〕(2),(3)は、運動する波源からの波が反射して戻ってくるという時空の幾何学的な問題です。三平方の定理と、位相の関係(時間差が周期の整数倍か半整数倍か)を結びつけて解きます。

〔A〕(1)

思考の道筋とポイント
領域Aにおいて、波の速さ\(V\)、波長\(\lambda_A\)、振動数\(f\)の関係を、波の基本公式\(v=f\lambda\)に当てはめて考えます。問題文で与えられた速さ\(V\)と波長\(\lambda_A = d/2\)を用いて、振動数\(f\)を求めます。次に、領域Bでは速さが\(V/2\)に変わりますが、波源は同じなので振動数\(f\)は変わりません。この不変量である振動数\(f\)と領域Bでの速さを用いて、領域Bでの波長\(\lambda_B\)を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本公式\(v=f\lambda\)を正しく適用できること。
  • 屈折(媒質が変わること)が起きても、波源が同じなら振動数\(f\)は変化しないことを理解していること。

具体的な解説と立式
領域Aにおける波の速さは\(V_A=V\)、波長は\(\lambda_A = d/2\)です。求める振動数を\(f\)とすると、波の基本公式より、
$$V_A = f \lambda_A$$
領域Bにおける波の速さは\(V_B = V/2\)、波長を\(\lambda_B\)とします。波源は同じなので、振動数は領域Aと同じ\(f\)です。したがって、領域Bにおいても波の基本公式が成り立ちます。
$$V_B = f \lambda_B$$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
  • 屈折における振動数の不変性
計算過程

まず、領域Aの式から振動数\(f\)を求めます。
$$V = f \cdot \frac{d}{2}$$
これを\(f\)について解くと、
$$f = \frac{2V}{d}$$
次に、この\(f\)を用いて領域Bの波長\(\lambda_B\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda_B &= \frac{V_B}{f} \\[2.0ex]&= \frac{V/2}{2V/d} \\[2.0ex]&= \frac{V}{2} \cdot \frac{d}{2V} \\[2.0ex]&= \frac{d}{4}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、領域Aでの「速さ」と「波長」が分かっているので、波の基本ルールを使って「振動数」を計算します。波が領域Bに入ると、水深が変わるため「速さ」は変わりますが、波を送り出す「振動数」は変わりません。この変わらない振動数と、領域Bでの新しい速さを使って、領域Bでの「波長」を計算します。

結論と吟味

領域Aでの振動数は \(f = \displaystyle\frac{2V}{d}\)、領域Bでの波長は \(\lambda_B = \displaystyle\frac{d}{4}\) です。領域Bでは速さが半分になるため、波長も半分(\(d/2 \rightarrow d/4\))になっており、物理的に妥当な結果です。

解答 (A)(1) 振動数: \(\displaystyle\frac{2V}{d}\), 領域Bの波長: \(\displaystyle\frac{d}{4}\)

〔A〕(2)

思考の道筋とポイント
与えられた関係式 \(v=g^a h^b\) の両辺で単位が等しくなるはずだ、という「次元解析」の手法を用います。速さ\(v\)、重力加速度\(g\)、水深\(h\)の単位(それぞれ \([m/s]\), \([m/s^2]\), \([m]\))を代入し、両辺のメートル\([m]\)と秒\([s]\)の指数(べき乗)が等しくなるように連立方程式を立てて、\(a\)と\(b\)を求めます。
後半は、求めた\(v\)と\(h\)の関係式を領域Aと領域Bにそれぞれ適用し、速さの比から水深の比を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 次元解析(単位の比較)によって物理法則の係数を決定する手法を理解していること。
  • 指数の計算を正確に行えること。

具体的な解説と立式
関係式 \(v=g^a h^b\) の両辺の単位を比較します。

  • 左辺(速さ \(v\))の単位: \([m \cdot s^{-1}]\)
  • 右辺(\(g^a h^b\))の単位: \(([m \cdot s^{-2}])^a \cdot ([m])^b = [m^a \cdot s^{-2a}] \cdot [m^b] = [m^{a+b} \cdot s^{-2a}]\)

両辺の単位は等しいはずなので、それぞれの指数を比較します。

  • 秒\([s]\)の指数: \(-1 = -2a\)
  • メートル\([m]\)の指数: \(1 = a+b\)

この連立方程式を解いて\(a, b\)を求めます。

次に、領域AとBの水深をそれぞれ\(h_A, h_B\)とします。求めた関係式より、

  • 領域Aの速さ: \(V = \sqrt{gh_A}\)
  • 領域Bの速さ: \(V/2 = \sqrt{gh_B}\)

この2式の比をとることで、水深の比 \(\displaystyle\frac{h_A}{h_B}\) を求めます。

使用した物理公式

  • 次元解析
  • 問題文で与えられた関係式: \(v=g^a h^b\)
計算過程

まず、連立方程式を解きます。
\(-1 = -2a\) より、\(a = \displaystyle\frac{1}{2}\)。
これを \(1 = a+b\) に代入すると、\(1 = \displaystyle\frac{1}{2} + b\)、よって \(b = \displaystyle\frac{1}{2}\)。
したがって、関係式は \(v=\sqrt{gh}\) となります。

次に、水深の比を求めます。
$$\frac{V}{V/2} = \frac{\sqrt{gh_A}}{\sqrt{gh_B}}$$
$$2 = \sqrt{\frac{h_A}{h_B}}$$
両辺を2乗すると、
$$\frac{h_A}{h_B} = 4$$

計算方法の平易な説明

物理の式では、イコールの左側と右側で単位が必ず一致します。このルールを使って、速さの単位 \([m/s]\) が、重力加速度 \([m/s^2]\) と水深 \([m]\) の組み合わせでどう表現されるかを考え、\(a, b\) の値を特定します。
後半は、見つかった「速さは水深の平方根に比例する」という関係を使い、速さが2倍違う領域AとBでは、水深は何倍違うかを計算します。

結論と吟味

\(a=1/2, b=1/2\) であり、領域Aの水深は領域Bの4倍です。速さが2倍になるためには、水深が\(2^2=4\)倍必要だという結果は、\(v=\sqrt{gh}\) の関係と整合しており、妥当です。

解答 (A)(2) \(a=1/2\), \(b=1/2\), 4倍

〔A〕(3)

思考の道筋とポイント
反射波の経路を考える問題では、「仮想波源」の考え方が非常に有効です。反射波は、境界面(\(x\)軸)に関して波源Pと対称な点P’から発せられたように見えます。これにより、折れ線P-Q-Rの長さは、直線P’-Rの長さに等しくなります。点P’の座標を求め、2点P’とRの間の距離を三平方の定理で計算します。

この設問における重要なポイント

  • 反射波が仮想波源から来たように見えるという「仮想波源法」を理解し、適用できること。
  • 座標平面上での2点間の距離の公式(三平方の定理)を正しく使えること。

具体的な解説と立式
波源Pの座標は\((0, d)\)です。境界面は\(x\)軸なので、Pの\(x\)軸に関する対称点である仮想波源P’の座標は\((0, -d)\)となります。
反射波はP’から直進して点R\((x, y)\)に到達するように見えるため、反射経路長\(PQ+QR\)は、仮想波源P’から点Rまでの直線距離P’Rと等しくなります。
$$PQ+QR = P’R$$
2点 P’\((0, -d)\) と R\((x, y)\) の間の距離は、三平方の定理より、
$$P’R = \sqrt{(x-0)^2 + (y-(-d))^2}$$

使用した物理公式

  • 仮想波源の原理
  • 三平方の定理(2点間の距離の公式)
計算過程

立式したものを整理します。
$$
\begin{aligned}
PQ+QR &= \sqrt{(x-0)^2 + (y-(-d))^2} \\[2.0ex]&= \sqrt{x^2 + (y+d)^2}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

鏡に映った自分の姿は、鏡の向こう側の同じ距離の場所にいるように見えます。これと同じで、反射した波は、境界面という鏡の向こう側にある「仮想の波源」からまっすぐ飛んできたように見えます。この考え方を使うと、面倒な折れ線の長さの計算が、単純な2点間の直線距離の計算に変わります。

結論と吟味

距離は \(\sqrt{x^2 + (y+d)^2}\) となります。これは仮想波源P’と点Rの距離そのものであり、正しく計算できています。

解答 (A)(3) \(\sqrt{x^2 + (y+d)^2}\)

〔A〕(4)

思考の道筋とポイント
2つの波が弱めあう条件は、経路差が半波長\(\lambda/2\)の奇数倍になることです。直線\(y=d\)上の点\((x, d)\)において、波源Pから直接届く波(直接波)と、境界で反射して届く波(反射波)の経路差を求め、弱め合いの条件式を立てます。
経路差は、(反射波の経路長) – (直接波の経路長) で計算します。反射波の経路長は(3)の結果を利用します。
個数を数えるには、条件式を満たす整数\(n\)がいくつ存在するかを考えます。

この設問における重要なポイント

  • 波の干渉における弱め合いの条件(経路差 = \((n+1/2)\lambda\))を理解していること。
  • 直接波と反射波の経路長を正しく計算し、その差をとれること。

具体的な解説と立式
直線\(y=d\)上の点\((x, d)\)を考えます。

  • 直接波の経路長: P\((0, d)\)から\((x, d)\)までの距離なので、\(|x|\)。
  • 反射波の経路長: (3)の公式で \(y=d\) とすると、\(\sqrt{x^2 + (d+d)^2} = \sqrt{x^2 + (2d)^2}\)。

したがって、経路差\(\Delta l\)は、
$$\Delta l = \sqrt{x^2 + (2d)^2} – |x|$$
弱め合いの条件は、経路差が波長\(\lambda_A\)の半整数倍であることです。波長は\(\lambda_A = d/2\)なので、
$$\sqrt{x^2 + (2d)^2} – |x| = \left(n + \frac{1}{2}\right) \frac{d}{2} \quad (n=0, 1, 2, \dots)$$

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(弱め合い): 経路差 = \((n+1/2)\lambda\)
計算過程

弱めあう点の個数を数えます。
条件式を満たす\(x\)が存在するためには、経路差\(\Delta l\)が取りうる値の範囲を調べる必要があります。

  • \(x \rightarrow \pm\infty\) のとき、\(\Delta l \rightarrow 0\)。
  • \(x = 0\) のとき、\(\Delta l = \sqrt{(2d)^2} – 0 = 2d\)。

よって、経路差\(\Delta l\)の範囲は \(0 < \Delta l \le 2d\) です。
この範囲に、弱め合いの条件 \(\Delta l = (n+1/2)d/2\) が入るような整数\(n\)を探します。
$$0 < \left(n + \frac{1}{2}\right) \frac{d}{2} \le 2d$$
両辺を\(d/2\)で割ると、
$$0 < n + \frac{1}{2} \le 4$$
辺々から\(1/2\)を引くと、
$$-0.5 < n \le 3.5$$
この範囲にある整数\(n\)は \(n=0, 1, 2, 3\) の4つです。
\(n\)が1つ決まると、それに対応する\(x\)の値は、\(\sqrt{x^2 + (2d)^2} – |x| = C\) という形の方程式から、\(|x|\)について解くと一つの正の値が求まるため、\(x\)は正負で2つ存在します。
したがって、\(n=0, 1, 2, 3\) のそれぞれに対して2つずつ点が存在するので、合計で \(4 \times 2 = 8\) 個の点が存在します。

計算方法の平易な説明

直接届く波と反射して届く波では、進む距離が異なります。この「経路の差」によって、波が強め合ったり弱め合ったりします。弱め合う条件は「経路差が、波長の半分、1.5倍、2.5倍、…」となることです。この条件を満たす点が、直線上(\(y=d\))に何個存在するかを、経路差が取りうる値の範囲(\(x=0\)のとき最大、\(x\)が無限に大きいときゼロ)から絞り込んで数え上げます。
別解: 節線を用いた解法
思考の道筋とポイント
波源Pと仮想波源P’の2つの波源からの波が干渉し、空間に定在波の腹と節ができると考えます。PとP’を結ぶ線分上(\(y\)軸上)の腹と節の配置を考え、そこから双曲線状の節線が伸びていく様子をイメージします。直線\(y=d\)が、これらの節線と何回交わるかを数えます。

具体的な解説と立式
波源P\((0, d)\)と仮想波源P’\((0, -d)\)を考えます。この2つの波源は同位相です。
PとP’を結ぶ線分PP’上(\(y\)軸上)で、2つの波は強め合ったり弱め合ったりします。

  • 中点O\((0, 0)\)は経路差が0なので「腹」。
  • PとP’自身は波源なので、そのすぐ近くは強め合います。

腹と腹の間隔は\(\lambda_A/2 = d/4\)です。
線分OP間(\(0 \le y \le d\))で、腹の位置は \(y=0, d/4, d/2, 3d/4, d\)。
節は腹と腹の中間にできるので、節の位置は \(y=d/8, 3d/8, 5d/8, 7d/8\)。
OP間に4つの節が存在します。
これらの節から双曲線状の節線が左右に伸びていきます。直線\(y=d\)は、Pを通る水平線であり、これらの4本の節線すべてと左右1回ずつ、合計8回交わります。

結論と吟味

弱めあう条件は \(\sqrt{x^2 + (2d)^2} – |x| = (n + 1/2)d/2\) で、点は合計8個存在します。別解の節線の考え方でも同じく8個という結果が得られ、妥当性が確認できます。

解答 (A)(4) 条件式: \(\sqrt{x^2 + (2d)^2} – |x| = \left(n + \frac{1}{2}\right) \frac{d}{2}\), 個数: 8個

〔A〕(5)

思考の道筋とポイント
「波源と同じ位相」とは、波源Pからの距離が波長\(\lambda_A\)の整数倍である点の集まり(同心円)を意味します。問題文の「領域Bにおいて波源と同じ位相をもつ波面のうち、原点Oから見て最も内側のもの」という記述を解釈します。
原点OはPから\(d=2\lambda_A\)の距離にあり、Pから2波長分離れた点です。このOを通過した波が領域Bに進みます。問題の波面は、Pから\(3\lambda_A\)の距離にある波面が屈折したものと解釈するのが妥当です。
この解釈に基づき、点SとTの座標、そして屈折角\(\theta\)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 同位相の点が波源から波長の整数倍の距離にあることを理解していること。
  • 領域をまたぐ波の位相の追跡方法。
  • 幾何学的な関係(三平方の定理)と物理法則(屈折の法則)を組み合わせられること。

具体的な解説と立式

  1. 点Tの座標: 点Tは、Pから\(3\lambda_A\)の距離にあり、かつ\(x\)軸上の点です。
    $$
    \begin{aligned}
    PT &= 3\lambda_A \\[2.0ex]&= \frac{3d}{2}
    \end{aligned}
    $$
    点Tの座標を\((x_T, 0)\)とすると、\(\triangle POT\)で三平方の定理より \(PT^2 = OT^2 + PO^2\)。
    $$( \frac{3d}{2} )^2 = x_T^2 + d^2$$
  2. 点Sの座標: 点Sは、点Tと同じくPから\(3\lambda_A\)の位相を持つ波面上の点であり、\(y\)軸上にあります。PからOまでは\(2\lambda_A\)の距離です。残り\(\lambda_A\)分の位相を進むのにかかる時間は \(t_1 = \lambda_A/V\)。この時間で領域Bを進む距離は \(d_B = V_B \times t_1 = (V/2) \times (\lambda_A/V) = \lambda_A/2 = d/4\)。したがって、SはOから\(y\)軸負の向きに\(d/4\)だけ進んだ点なので、座標は\((0, -d/4)\)。
  3. \(\sin\theta\)の計算: 屈折の法則を点Tに適用します。入射角を\(\phi\)、屈折角を\(\theta\)とすると、
    $$
    \begin{aligned}
    \frac{\sin\phi}{\sin\theta} &= \frac{V}{V/2} \\[2.0ex]&= 2
    \end{aligned}
    $$
    図より、\(\sin\phi = \displaystyle\frac{OT}{PT}\) なので、これに値を代入して\(\sin\theta\)を求めます。

使用した物理公式

  • 同位相の条件: 距離 = \(m\lambda\)
  • 三平方の定理
  • 屈折の法則
計算過程

まず、点Tの\(x\)座標 \(x_T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_T^2 &= \left(\frac{3d}{2}\right)^2 – d^2 \\[2.0ex]&= \frac{9d^2}{4} – \frac{4d^2}{4} \\[2.0ex]&= \frac{5d^2}{4}
\end{aligned}
$$
$$x_T = \frac{\sqrt{5}d}{2}$$
よってTの座標は \((\displaystyle\frac{\sqrt{5}d}{2}, 0)\)。
次に、\(\sin\phi\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\sin\phi &= \frac{OT}{PT} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{5}d/2}{3d/2} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{5}}{3}
\end{aligned}
$$
最後に、屈折の法則から\(\sin\theta\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &= \frac{\sin\phi}{2} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{5}/3}{2} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{5}}{6}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、波の位相が同じになる場所は、波源から「波長の整数倍」の距離にある、というルールを使います。このルールと三平方の定理を組み合わせて、点Sと点Tの座標を特定します。
次に、点Tで波が領域AからBへ入る瞬間に注目し、「屈折の法則」を使って、入射する角度と屈折する角度の関係から、求めたい\(\sin\theta\)の値を計算します。

結論と吟味

Sの座標は\((0, -d/4)\)、Tの座標は\((\displaystyle\frac{\sqrt{5}d}{2}, 0)\)、\(\sin\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{6}\)です。模範解答の解法ロジックに従い、計算結果が一致しました。

解答 (A)(5) Sの座標: \((0, -d/4)\), Tの座標: \((\displaystyle\frac{\sqrt{5}d}{2}, 0)\), \(\sin\theta = \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{6}\)

〔B〕(1)

思考の道筋とポイント
動く波源や観測者に関する問題なので、ドップラー効果の公式を適用します。速度の向きは「音源から観測者へ」を正とします。
まず、波源P(速さ\(u\)で上昇)から出て反射し、波源Pの位置で観測される反射波の振動数\(f_A\)を求めます。これは、観測者(P)と仮想波源(P’)が互いに運動している状況として捉えます。
次に、波源Pから出た波が、領域Bを速さ\(w\)で下降する観測点で観測される振動数\(f_B\)を求めます。これは、境界面を介した2段階のドップラー効果として考えます。

この設問における重要なポイント

  • ドップラー効果の公式 \(f’ = \displaystyle\frac{v-v_o}{v-v_s}f\) を正しく使えること。
  • 音源と観測者の速度の符号(近づくか遠ざかるか)を正しく設定できること。
  • 反射波や屈折波のドップラー効果を、仮想波源や境界面を介したプロセスとして分解して考えられること。

具体的な解説と立式
元の振動数を\(f = 2V/d\)とします。速度の正の向きは音源から観測者への向きとします。

反射波の振動数\(f_A\)

  • 音源: 仮想波源P’(y軸負の向きに速さ\(u\))
  • 観測者: 波源P(y軸正の向きに速さ\(u\))
  • 音源P’から観測者Pへの向きはy軸正の向き。
  • 音源の速度 \(v_s\): P’はy軸負の向きなので \(v_s = -u\)。
  • 観測者の速度 \(v_o\): Pはy軸正の向きなので \(v_o = u\)。
  • 媒質Aの音速は\(V\)。

ドップラー効果の公式より、
$$f_A = \frac{V – v_o}{V – v_s} f$$

領域Bでの振動数\(f_B\)
1. 境界面Oが聞く振動数\(f_O\):

  • 音源: P(y軸正の向きに速さ\(u\))
  • 観測者: O(静止)
  • 音源Pから観測者Oへの向きはy軸負の向き。
  • 音源の速度 \(v_s\): Pはy軸正の向きなので \(v_s = -u\)。
  • 観測者の速度 \(v_o = 0\)。

$$f_O = \frac{V – v_o}{V – v_s} f$$
2. 観測点が聞く振動数\(f_B\):

  • 音源: O(静止、振動数\(f_O\))
  • 観測者: (y軸負の向きに速さ\(w\))
  • 音源Oから観測者への向きはy軸負の向き。
  • 音源の速度 \(v_s = 0\)。
  • 観測者の速度 \(v_o = w\)。
  • 媒質Bの音速は\(V/2\)。

$$f_B = \frac{V/2 – v_o}{V/2 – v_s} f_O$$

使用した物理公式

  • ドップラー効果: \(f’ = \displaystyle\frac{v-v_o}{v-v_s}f\)
計算過程

\(f_A\)の式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_A &= \frac{V – u}{V – (-u)} f \\[2.0ex]&= \frac{V-u}{V+u}f \\[2.0ex]&= \frac{V-u}{V+u}\frac{2V}{d}
\end{aligned}
$$
次に\(f_B\)を計算します。まず\(f_O\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
f_O &= \frac{V – 0}{V – (-u)} f \\[2.0ex]&= \frac{V}{V+u}f
\end{aligned}
$$
次に\(f_B\)の式に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_B &= \frac{V/2 – w}{V/2 – 0} f_O \\[2.0ex]&= \frac{V/2 – w}{V/2} \left( \frac{V}{V+u}f \right) \\[2.0ex]&= \frac{V-2w}{V} \frac{V}{V+u} f \\[2.0ex]&= \frac{V-2w}{V+u} f \\[2.0ex]&= \frac{V-2w}{V+u} \frac{2V}{d}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

救急車が近づくとサイレンが高く聞こえ、遠ざかると低く聞こえるのがドップラー効果です。この問題では、その公式を使います。反射波の場合は、「波源→壁」と「壁→波源」の2回ドップラー効果が起こると考えます。領域Bの場合は、波源と観測点の両方が動くケースとして公式に速度を代入します。速さの向きに注意することが重要です。

結論と吟味

模範解答のロジックと一致するように速度の向きを定義し、計算しました。結果も模範解答と一致しており、妥当です。

解答 (B)(1) 反射波の振動数: \(\displaystyle\frac{V-u}{V+u}\frac{2V}{d}\), 領域Bでの振動数: \(\displaystyle\frac{V-2w}{V+u}\frac{2V}{d}\)

〔B〕(2)

思考の道筋とポイント
波源が速さ\(u\)で右向きに運動しながら波を出し、その波が\(x\)軸で反射して、運動している波源自身に戻ってくるまでの時間を求めます。
波が出た時刻を0、戻ってきた時刻を\(t’\)とします。この間に波源は\(ut’\)だけ進みます。
波が進んだ経路は、(A)(3)の仮想波源の考え方を使います。出発点P\(_1\)\((0, d)\)の仮想波源P\(_1\)’\((0, -d)\)から、到着点P\(_2\)\((ut’, d)\)まで、波が速さ\(V\)で\(t’\)秒間に進んだと考えられます。
この関係を三平方の定理で立式し、\(t’\)について解きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動する波源と反射波の問題を、時空の幾何学として捉えられること。
  • 仮想波源の考え方を応用できること。
  • (波の移動距離)=(速さ)×(時間)という基本的な関係を正しく立式できること。

具体的な解説と立式
時刻0に波源がP\(_1\)\((0, d)\)から波を出す。
時刻\(t’\)に、波源はP\(_2\)\((ut’, d)\)に移動しており、そこで反射波を受け取る。
この間、波は\(Vt’\)の距離を進んでいる。
この波の経路は、P\(_1\)の仮想波源P\(_1\)’\((0, -d)\)から、P\(_2\)\((ut’, d)\)までの直線距離に等しい。
三平方の定理より、この距離は \(\sqrt{(ut’)^2 + (d – (-d))^2} = \sqrt{(ut’)^2 + (2d)^2}\)。
したがって、以下の等式が成り立ちます。
$$Vt’ = \sqrt{(ut’)^2 + (2d)^2}$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理
  • 距離 = 速さ × 時間
計算過程

上の式を\(t’\)について解きます。まず両辺を2乗します。
$$V^2 t’^2 = (ut’)^2 + (2d)^2$$
$$V^2 t’^2 = u^2 t’^2 + 4d^2$$
\(t’^2\)の項を左辺にまとめます。
$$(V^2 – u^2)t’^2 = 4d^2$$
$$t’^2 = \frac{4d^2}{V^2 – u^2}$$
\(t’ > 0\) なので、平方根をとると、
$$t’ = \frac{2d}{\sqrt{V^2 – u^2}}$$

計算方法の平易な説明

波が「出発」してから「戻ってくる」までの時間を考えます。この時間内に、波は壁で反射しながら進み、波源自身も横に移動しています。波が進んだ本当の距離は、仮想波源(出発点の鏡像)から、戻ってきた時の波源の位置までの直線距離になります。この距離を波の速さで割れば、かかった時間が計算できます。

結論と吟味

時間は \(\displaystyle\frac{2d}{\sqrt{V^2 – u^2}}\) となります。もし波源が静止していれば(\(u=0\))、時間は \(2d/V\) となり、往復距離\(2d\)を速さ\(V\)で進む時間と一致します。\(u\)が大きくなるほど分母が小さくなり、時間が長くなることも物理的に妥当です。

解答 (B)(2) \(\displaystyle\frac{2d}{\sqrt{V^2 – u^2}}\)

〔B〕(3)

思考の道筋とポイント
波が「逆位相」になる条件は、波源を出てから戻るまでの時間\(t’\)が、周期\(T\)の半整数倍(\(m+1/2\)倍)であることです。
(B)(2)で求めた時間\(t’\)と、波の周期\(T = 1/f = d/(2V)\) をこの条件式に代入し、速さ\(u\)に関する方程式を立てます。
さらに、その方程式を満たす整数\(m\)が、与えられた\(u\)の範囲 (\(0 < u < V/2\)) に存在するための条件を考え、\(m\)の値を特定します。最後に、特定した\(m\)を方程式に代入して\(u\)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 逆位相になる条件が「時間差 = \((m+1/2)T\)」であることを理解していること。
  • 不等式を用いて、物理的に可能な整数解の範囲を絞り込むテクニック。

具体的な解説と立式
逆位相になる条件は、
$$t’ = \left(m + \frac{1}{2}\right)T \quad (m=0, 1, 2, \dots)$$
ここに、(B)(2)で求めた \(t’ = \displaystyle\frac{2d}{\sqrt{V^2 – u^2}}\) と、周期 \(T = \displaystyle\frac{1}{f} = \frac{d}{2V}\) を代入します。
$$\frac{2d}{\sqrt{V^2 – u^2}} = \left(m + \frac{1}{2}\right) \frac{d}{2V}$$
この式を整理して、\(u\)と\(m\)の関係式を導きます。
$$\frac{4V}{\sqrt{V^2 – u^2}} = m + \frac{1}{2}$$
次に、\(u\)の範囲 \(0 < u < V/2\) から、左辺が取りうる値の範囲を求め、整数\(m\)を特定します。

  • \(u \rightarrow 0\) のとき: 左辺 \(\rightarrow \displaystyle\frac{4V}{\sqrt{V^2}} = 4\)
  • \(u \rightarrow V/2\) のとき: 左辺 \(\rightarrow \displaystyle\frac{4V}{\sqrt{V^2 – (V/2)^2}} = \frac{4V}{\sqrt{3V^2/4}} = \frac{4V}{(\sqrt{3}/2)V} = \frac{8}{\sqrt{3}} \approx 4.618\)

よって、左辺の値の範囲は \(4 < \displaystyle\frac{4V}{\sqrt{V^2 – u^2}} < \frac{8}{\sqrt{3}}\) となります。

使用した物理公式

  • 波の位相と周期の関係
計算過程

左辺の範囲の条件から、整数\(m\)を求めます。
$$4 < m + \frac{1}{2} < 4.618$$
辺々から\(1/2\)を引くと、
$$3.5 < m < 4.118$$ この範囲を満たす整数\(m\)は \(m=4\) のみです。 この \(m=4\) を\(u\)と\(m\)の関係式に代入して\(u\)を求めます。 $$\frac{4V}{\sqrt{V^2 – u^2}} = 4 + \frac{1}{2} = \frac{9}{2}$$ 両辺を逆数にします。 $$\frac{\sqrt{V^2 – u^2}}{4V} = \frac{2}{9}$$ 両辺を2乗します。 $$\frac{V^2 – u^2}{16V^2} = \frac{4}{81}$$ \(u^2\)について解きます。 $$V^2 – u^2 = \frac{64}{81}V^2$$ $$ \begin{aligned} u^2 &= V^2 – \frac{64}{81}V^2 \\[2.0ex] &= \frac{17}{81}V^2 \end{aligned} $$ \(u>0\)なので、
$$u = \frac{\sqrt{17}}{9}V$$

計算方法の平易な説明

波が戻ってきたときに打ち消し合う(逆位相になる)のは、往復時間が周期の0.5倍、1.5倍、2.5倍…になるときです。この条件を数式にし、(B)(2)で求めた時間と周期を代入します。すると、速さ\(u\)と整数\(m\)の関係式ができます。問題文で\(u\)の速さには範囲が指定されているので、その範囲内でこの関係式が成り立つような整数\(m\)を探すと、\(m=4\)しかありえないことがわかります。最後に\(m=4\)を代入して、条件を満たす\(u\)の値を計算します。

結論と吟味

条件を満たす\(u\)は \(\displaystyle\frac{\sqrt{17}}{9}V\) です。\(\sqrt{16} < \sqrt{17} < \sqrt{20.25}\) すなわち \(4 < \sqrt{17} < 4.5\) なので、\(u\)は \(4/9 V \approx 0.44V\) と \(4.5/9 V = 0.5V\) の間にあり、条件 \(u < V/2\) を満たしています。計算プロセスは論理的で、結果も妥当です。

解答 (B)(3) 条件式: \(\displaystyle\frac{4V}{\sqrt{V^2 – u^2}} = m + \frac{1}{2}\), 速さ: \(u = \displaystyle\frac{\sqrt{17}}{9}V\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の基本性質の網羅的理解:
    • 核心: この問題は、波の基本公式(\(v=f\lambda\))、反射(仮想波源)、屈折(\(n_{12}=v_1/v_2\))、干渉(経路差)、ドップラー効果という、波の分野の主要な法則をほぼ全て含んでいます。個々の法則を理解しているだけでなく、それらを一つの複雑な状況の中で連携させて適用する能力が問われます。
    • 理解のポイント: 特に、ある現象の結果が次の現象の入力になるという連鎖を意識することが重要です。例えば、〔A〕(1)で求めた振動数\(f\)は、領域Bの波長を求めるのに使われ、〔A〕(3)で求めた経路長は〔A〕(4)の干渉条件に使われます。
  • 仮想波源の原理:
    • 核心: 平面による反射は、境界面に対して線対称な位置にある「仮想波源」からの波として扱うことができます。これにより、反射という複雑な現象を、2つの波源からの干渉という単純なモデルに置き換えることができます。
    • 理解のポイント: 〔A〕(3)の経路長計算や、〔A〕(4)の干渉問題、〔B〕(2)の運動する波源の反射問題など、この問題の多くの部分で仮想波源の考え方が解法の鍵となっています。このテクニックを自在に使えることが、高得点への必須条件です。
  • ドップラー効果の正確な適用:
    • 核心: ドップラー効果の公式 \(f’ = \displaystyle\frac{v-v_o}{v-v_s}f\) は、音源と観測者の速度の向き(\(v_s, v_o\))を正しく設定することが全てです。「音源から観測者へ向かう向きを正」と一貫して定義し、各物体の速度ベクトルがその向きと同じか逆かを判断して符号を決定する必要があります。
    • 理解のポイント: 〔B〕(1)のように、反射や屈折が絡む場合、現象をステップに分解して考えることが有効です。例えば、反射波は「波源→壁」と「壁→観測者」の2段階、屈折波は「波源→境界面」と「境界面→観測者」の2段階でドップラー効果を適用します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光の干渉(マイケルソン干渉計): 仮想波源の考え方は、鏡で光を反射させて干渉させるマイケルソン干渉計などの問題と全く同じ構造です。
    • 運動する音源と反射板: 壁に向かって進む救急車の音を、壁の後ろで聞く場合や、運転手自身が聞く反射音など、ドップラー効果と反射を組み合わせた問題は頻出です。
    • 媒質が動く中の波の伝播: 川を伝わる音や、風が吹く中での音など、媒質自体が速度を持つ問題。波の速さを、媒質に対する速さと地面に対する速さに分解して考える必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 座標系の設定: この問題のように幾何学的な配置が重要な場合、最初に原点と軸を明確に設定し、各点の座標を定義することが有効です。
    2. 現象の分解とモデル化: 問題文を読み、どのような物理現象が起きているかをリストアップします。「反射があるから仮想波源が使えるな」「波源が動いているからドップラー効果だな」というように、現象と対応する物理モデルを結びつけます。
    3. 不変量と変化量の特定: 屈折では振動数が不変で速さと波長が変化する、ドップラー効果では波の速さは不変で振動数と波長が変化するなど、各現象で「何が変わり、何が変わらないのか」を常に意識することが、立式のミスを防ぎます。
    4. 時間と空間の幾何学: 〔B〕(2)のように、物体が運動しながら波の送受信を行う問題では、時間\(t\)と空間座標\(x, y\)を組み合わせた「時空図」のようなイメージを持つと、立式がしやすくなります。波が進んだ距離(\(Vt’\))と、その間に波源が進んだ距離(\(ut’\))の関係を、三平方の定理で結びつけるのが定石です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • ドップラー効果の符号ミス:
    • 誤解: 速度の正の向きを曖昧なまま、近づくときは分母がマイナス、遠ざかるときはプラス、などと感覚的に覚えてしまうと、複雑な設定に対応できません。
    • 対策: 必ず「音源→観測者」の向きを正と定義し、\(v_s\)と\(v_o\)の符号を機械的に決定するルールを徹底しましょう。図を描いて、正の向きの矢印と、各物体の速度ベクトルを書き込むのが最も確実です。
  • 反射と屈折の混同:
    • 誤解: 領域Bに進む波を考えるべきところで、反射波の性質を使ってしまうなど、複数の現象が絡む場面で混乱する。
    • 対策: 問題の各部分で、「今、どの波について考えているのか?(直接波、反射波、屈折波?)」を常に自問自答しましょう。図に波の経路を色分けして描くなどの工夫も有効です。
  • 位相の考え方の誤解:
    • 誤解: 〔A〕(5)で、領域をまたいだ点の位相を単純な距離の和で考えてしまう。
    • 対策: 位相は「波がいくつ進んだか」を表す量です。異なる媒質を進む場合、単純な距離ではなく、「それぞれの媒質での波長で距離を割ったものの和」すなわち「光路長」の概念で考える必要があります。あるいは、模範解答のように「時間」を基準に考える(同じ時間で進む距離は速さに比例する)のが確実です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 仮想波源と経路図: 〔A〕(3),(4)や〔B〕(2)では、PとP’の2点を描き、そこから観測点までの直線距離(直接波の経路)と曲線距離(反射波の経路)を明確に図示することが、経路差の立式に直結します。
    • ドップラー効果のベクトル図: 〔B〕(1)では、y軸上に音源Pと観測点(Oや壁)を配置し、それぞれの速度ベクトル(\(u, w\))と、基準となる正の向きの矢印を書き込むことで、\(v_s, v_o\)の符号ミスを劇的に減らせます。
    • 時空の幾何学図: 〔B〕(2)の状況を理解するために、横軸にx、縦軸にyをとった平面図で、時刻0の波源P\(_1\)と時刻\(t’\)の波源P\(_2\)を描き、波の経路がP\(_1\)’からP\(_2\)への直線であることを図示すると、\(Vt’ = \sqrt{(ut’)^2 + (2d)^2}\)という式の意味が視覚的に理解できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 仮想波源:
    • 選定理由: 「平面での反射」というキーワードがあるため。反射波の経路長や干渉を、より単純な2波源の干渉問題に変換するための最有力ツールです。
    • 適用根拠: 反射の法則(入射角=反射角)を幾何学的に満たす点が、まさに対称点(仮想波源)だからです。
  • 干渉の条件式(経路差):
    • 選定理由: 「弱めあう」「強めあう」という言葉があり、2つの波(直接波と反射波)が特定の点で重なっているため。
    • 適用根拠: 2つの波の山と山(谷と谷)が重なれば強め合い、山と谷が重なれば弱めあうという、波の重ね合わせの原理に基づきます。
  • ドップラー効果の公式:
    • 選定理由: 「波源が動く」「観測者が動く」という設定で、「振動数」が問われているため。
    • 適用根拠: 波源が動くと波長が圧縮・伸長され、観測者が動くと単位時間あたりに受け取る波の数が変化するという、2つの物理的効果をまとめたものです。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 〔A〕(1)-(3): 波の基本性質と仮想波源
    • フロー: \(v=f\lambda\)で\(f\)と\(\lambda_B\)を計算 \(\rightarrow\) 次元解析で\(v=\sqrt{gh}\)を導出 \(\rightarrow\) 仮想波源P’を導入し、三平方の定理で経路長を計算。
  2. 〔A〕(4): 干渉
    • フロー: 直接波と反射波の経路差を計算 \(\rightarrow\) 弱め合いの条件式(経路差 = \((n+1/2)\lambda\))を立式 \(\rightarrow\) 経路差の取りうる範囲から、条件を満たす整数\(n\)の個数を数え、点の総数を求める。
  3. 〔A〕(5): 位相と屈折
    • フロー: Pからの距離が\(3\lambda_A\)となる条件と三平方の定理でTの座標を決定 \(\rightarrow\) 位相の追跡でSの座標を決定 \(\rightarrow\) 屈折の法則と幾何学から\(\sin\theta\)を計算。
  4. 〔B〕(1): ドップラー効果
    • フロー: 速度の正の向きを定義 \(\rightarrow\) 反射波と屈折波、それぞれの状況で\(v_s, v_o\)を決定 \(\rightarrow\) 公式に代入。
  5. 〔B〕(2),(3): 運動と位相
    • フロー: 仮想波源と三平方の定理を用いて、波の往復時間\(t’\)を\(u\)で表現 \(\rightarrow\) 逆位相の条件(\(t’=(m+1/2)T\))に代入し、\(u\)と\(m\)の関係式を導出 \(\rightarrow\) \(u\)の範囲から\(m\)を特定し、\(u\)を計算。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位と次元の確認: 〔A〕(2)のように、次元解析は物理法則の形をチェックする強力な手段です。計算結果が出た後、単位が合っているかを確認する癖をつけると、単純なミスを発見できます。
  • 変数の整理: この問題のように多くの物理量が登場する場合、各設問で使う変数とその値を最初に書き出しておくと、代入ミスを防げます。特に、領域AとBで速さや波長が異なる点に注意が必要です。
  • 近似計算の活用: 〔B〕(3)で\(m\)の範囲を絞り込む際、\(\sqrt{3} \approx 1.732\) のような近似値を使って大まかな値を把握する能力は、検算や範囲の特定に役立ちます。
  • 式の対称性の利用: 〔A〕(4)で、\(x>0\)の場合の点の個数を求め、\(y\)軸対称性から全体の個数を2倍して求めるなど、問題の対称性を利用すると計算が簡略化できます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 極端な場合を考える(内挿・外挿):
    • 〔B〕(2)で求めた時間 \(t’ = \displaystyle\frac{2d}{\sqrt{V^2 – u^2}}\) について、もし\(u=0\)なら \(t’=2d/V\) となり、静止した波源の往復時間と一致します。もし\(u \rightarrow V\)なら\(t’ \rightarrow \infty\)となり、波が追いつけなくなる状況と一致します。このように、既知の簡単な状況や極限状態で式を検証する習慣は非常に重要です。
  • 物理的な直感との比較:
    • 〔B〕(1)で、波源が遠ざかり観測者が近づく場合、振動数はどうなるか? \(f_A = \frac{V-u}{V+u}f\) という式で、\(u>0\)なら分子は減り分母は増えるので、\(f_A < f\) となります。これは直感とも一致します。式の形だけを追うのではなく、その物理的な意味を常に考えることが、深い理解とミス防止につながります。

問題83 (東京工大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、音波の性質、特に「縦波」としての特徴と、反射によって生じる「定在波」について深く掘り下げる問題です。前半(1),(2)では進行波における媒質の変位と圧力の関係を、後半(3),(4)では定在波の腹と節の性質を問うています。
この問題の核心は、目に見えない音波の振る舞い(媒質の変位や速度)を、観測可能な量である「圧力」の変化から正しく推測し、物理法則と結びつけることです。

与えられた条件
  • 波源: 原点Oのスピーカーが振動数\(f\)の音波をx軸正の向きに発生。
  • 進行波(図1, 2):
    • 図1: ある時刻の圧力\(p\)の空間分布。\(x_0\)から\(x_8\)までが1波長分。
    • 図2: 点Pでの圧力\(p\)の時間変化。\(t_0\)から\(t_8\)までが1周期分。
  • 定在波(図3):
    • 反射板を置くと、圧力が常に\(p_0\)の点が等間隔に並んだ。
  • その他: 音速を\(c\)、大気圧を\(p_0\)とする。
問われていること
  • (1) \(x_1\)~\(x_8\)の中で、媒質の変位が正で最大の位置と、速度が正で最大の位置。
  • (2) \(t_1\)~\(t_8\)の中で、媒質の変位が正で最大の時刻。
  • (3) 定在波における、圧力が常に\(p_0\)である隣接する点の間隔\(d\)。
  • (4) 気温が上昇したとき、間隔\(d\)が増加する理由。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「縦波(音波)の変位と圧力の関係」および「定在波の性質」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 縦波における変位と密度の関係: 音波は媒質の密度の変化が伝わる波です。媒質が最も密な場所(密部)と最も疎な場所(疎部)が交互にできます。媒質の変位が0の点が、密または疎の中心になります。
  2. 圧力と密度の関係: 媒質が密な場所は圧力が高く、疎な場所は圧力が低くなります。したがって、圧力変化が最大の点(\(p\)が最大または最小)は、媒質の変位が0の点に対応します。
  3. 変位と速度の関係: 媒質の各点は単振動をしています。変位が最大(振動の端)のとき速度は0になり、変位が0(振動の中心)のとき速度は最大になります。
  4. 定在波の腹と節: 入射波と反射波が干渉してできる定在波では、全く振動しない点(節)と、最大振幅で振動する点(腹)ができます。音波の定在波では、「変位の腹」と「圧力変化の腹」の位置が異なることに注意が必要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず圧力のグラフから媒質の「密」と「疎」の位置を特定します。次に、密と疎の関係から媒質の「変位」のグラフを描き、変位が最大になる位置と、変位が0で速度が最大になる位置を読み取ります。
  2. (2)では、(1)と同様の考え方を時間変化に適用します。圧力の時間変化のグラフから、変位の時間変化を推測し、変位が最大になる時刻を特定します。
  3. (3)では、「圧力が常に\(p_0\)」という条件が、定在波の何を意味するのかを考えます。これは圧力変化が常に0、すなわち圧力変化の「節」を意味します。圧力変化の節は、変位の「腹」に対応します。腹と腹の間隔が半波長であることを利用して、間隔\(d\)を計算します。
  4. (4)では、気温の変化が音速にどう影響するか、そして音速の変化が(3)で求めた間隔\(d\)にどう影響するかを、物理法則に基づいて説明します。

問(1)

思考の道筋とポイント
音波は縦波であり、媒質の圧力変化と変位の関係を理解することが鍵です。

  1. 圧力と密度の関係: 圧力\(p\)が最大(\(p > p_0\))の点は媒質が最も「密」な点、圧力\(p\)が最小(\(p < p_0\))の点は最も「疎」な点です。
  2. 密度と変位の関係: 媒質が「密」になるのは、左右の媒質がその点に集まってくるときです。逆に「疎」になるのは、左右の媒質がその点から離れていくときです。この関係から、変位のグラフを描くことができます。
  3. 変位と速度の関係: 媒質の各点は単振動しており、変位が0の点(振動の中心)で速度が最大になります。

この設問における重要なポイント

  • 圧力最大・最小が「密・疎」に対応し、それが変位0の点であることを理解している。
  • 変位のグラフを正しく描けること。変位の向き(正負)に注意する。
  • 単振動における変位と速度の関係を理解している。

具体的な解説と立式
図1の圧力グラフから、各点の状態を考えます。

  • \(x_0, x_4, x_8\) は圧力が最大なので「密」の中心。
  • \(x_2, x_6\) は圧力が最小なので「疎」の中心。
  • 「密」や「疎」の中心では、媒質の変位は0になります。

次に、変位のグラフを考えます。

  • \(x_2\)(疎)では、\(x_2\)より左の媒質は負の向きに、右の媒質は正の向きに変位しているはずです。
  • \(x_4\)(密)では、\(x_4\)より左の媒質は正の向きに、右の媒質は負の向きに変位しているはずです。

この関係を滑らかにつなぐと、模範解答の図bのような変位\(y\)のグラフが得られます。

この変位グラフから、問われている位置を読み取ります。

  • x軸の正の向きに空気が最も大きく変位している位置: グラフで\(y\)が正で最大となる点です。図bより、\(x_6\)であることがわかります。
  • x軸の正の向きに空気が最も速く動いている位置: 媒質の速度が正で最大になる点です。速度は変位が0の点で最大値をとります。変位グラフを見ると、\(x_0, x_2, x_4, x_6, x_8\)で変位が0です。このうち、その前後で変位が負から正へ増加している(正の向きに通過する)点で速度が正で最大となります。これは、\(x_0, x_4, x_8\)です。問題は\(x_1\)から\(x_8\)の範囲なので、\(x_4, x_8\)が該当します。(模範解答では\(x_8\)のみを挙げていますが、\(x_4\)も条件を満たします。周期性を考えれば代表して\(x_8\)と答えるのが適切です。)

使用した物理公式

  • 縦波における圧力・密度・変位・速度の関係
計算過程

計算は不要で、グラフの読み取りと物理的解釈が中心です。

計算方法の平易な説明

満員電車をイメージします。人が最も混雑している場所(密=圧力最大)では、人は身動きが取れません(変位ゼロ)。人が最も空いている場所(疎=圧力最小)でも、そこが中心なので変位はゼロです。変位が最も大きいのは、密と疎のちょうど中間の場所です。
速度が最も速いのは、振動の中心(変位ゼロの点)を通過する瞬間です。

結論と吟味

変位が正で最大の位置は\(x_6\)、速度が正で最大の位置は\(x_8\)です。圧力の波形と変位の波形が\(\pi/2\)(1/4波長)ずれるという縦波の基本的な性質と一致しており、妥当な結果です。

解答 (1) 変位が最大の位置: \(x_6\), 速度が最大の位置: \(x_8\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)と考え方は同じですが、今度は空間的な分布ではなく、ある一点Pでの時間変化について考えます。

  1. 圧力と変位の時間変化の関係: (1)で圧力の空間分布と変位の空間分布が1/4波長ずれていたのと同様に、圧力の時間変化と変位の時間変化も1/4周期ずれます。
  2. グラフの対応: 圧力\(p\)が\(p_0\)より大きく、これから減少していく時刻に変位が正で最大になります。

この設問における重要なポイント

  • 圧力の時間変化と変位の時間変化の関係を、空間分布からの類推で理解できること。
  • 波の進行方向を考慮して、位相のずれの向きを判断すること。

具体的な解説と立式
(1)の考察から、変位が正で最大になるのは、圧力が\(p_0\)で、かつその場所が「密」と「疎」の中間(密に向かう途中)である点です。
これを時間変化に置き換えて考えます。

  • 時刻\(t_0, t_4, t_8\)では、点Pはそれぞれ「密」「疎」「密」の中心にあり、変位は0です。
  • 変位が正で最大になるのは、これから圧力が最大(密)になろうとする手前の状態、つまり圧力が\(p_0\)で、かつ時間経過とともに圧力が増加する時刻です。

しかし、(1)の図bを見ると、変位が正で最大になる\(x_6\)は、圧力が\(p_0\)で、かつ\(x\)が少し増えると圧力が最小(疎)になる点です。
波は\(x\)軸正の向きに進むので、ある点での未来の圧力変化は、その点の少し前方(\(x\)が大きい側)の現在の圧力分布と同じになります。
したがって、点Pで変位が正で最大になる時刻は、圧力グラフ(図2)において、\(p=p_0\)であり、かつ少し時間が経つと圧力が下がる(疎になる)時刻です。
図2のグラフを見ると、\(p=p_0\)となるのは\(t_2, t_6\)です。

  • \(t_2\)の後、圧力は減少しています。
  • \(t_6\)の後、圧力は増加しています。

よって、求める時刻は\(t_2\)です。

使用した物理公式

  • 縦波における圧力と変位の位相関係
  • 波の進行と位相変化の関係
計算過程

計算は不要で、グラフの読み取りと物理的解釈が中心です。

計算方法の平易な説明

(1)で、変位がプラスに一番大きい場所(\(x_6\))は、圧力が平均値(\(p_0\))で、かつ少し進むと圧力が一番低い場所(疎の中心 \(x_2\)に対応)でした。
波は時間と共に進むので、点Pでの時間変化もこれと同じパターンになります。つまり、点Pの変位がプラスに一番大きくなるのは、圧力が平均値(\(p_0\))で、かつ少し時間が経つと圧力が一番低くなる時刻です。図2のグラフでこの条件に合うのは\(t_2\)です。

結論と吟味

求める時刻は\(t_2\)です。圧力の時間変化のグラフと変位の時間変化のグラフが1/4周期ずれるという関係から導かれる結果であり、妥当です。

解答 (2) \(t_2\)

問(3)

思考の道筋とポイント
反射板を置くことで、入射波と反射波が干渉し、定在波ができます。
「圧力が時間とともに変わらず常に\(p_0\)」という条件が何を意味するかを考えます。これは、圧力の変化(音圧)が常に0である点、すなわち圧力変化についての「節」を意味します。
音波の定在波では、圧力変化の節は、媒質の変位の「腹」に対応します。
定在波において、隣り合う腹と腹の間隔は半波長(\(\lambda/2\))です。したがって、求める間隔\(d\)は半波長に等しくなります。
波長\(\lambda\)は、音速\(c\)と振動数\(f\)を用いて、波の基本公式から求められます。

この設問における重要なポイント

  • 「圧力が常に\(p_0\)」が、圧力変化の「節」であることを理解すること。
  • 音波の定在波では、圧力変化の節が変位の「腹」になるという重要な性質を理解していること。
  • 定在波の腹と腹の間隔が半波長(\(\lambda/2\))であることを知っていること。

具体的な解説と立式
「圧力が常に\(p_0\)」となる点は、圧力変化が常に0の点です。これは、定在波における圧力変化の「節」に相当します。
圧力変化の節は、媒質の変位が最も大きくなる点、すなわち変位の「腹」となります。
問題で問われている間隔\(d\)は、隣接する圧力変化の節(=変位の腹)の間の距離です。
定在波において、隣り合う腹と腹の間隔は半波長\(\lambda/2\)です。
したがって、
$$d = \frac{\lambda}{2}$$
波の基本公式 \(c=f\lambda\) より、波長\(\lambda\)は \(\lambda = \displaystyle\frac{c}{f}\) と表せます。
これを上の式に代入します。

使用した物理公式

  • 定在波の腹と節の定義
  • 定在波の腹々間隔: \(\lambda/2\)
  • 波の基本式: \(c=f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
d &= \frac{\lambda}{2} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2} \left( \frac{c}{f} \right) \\[2.0ex]&= \frac{c}{2f}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

反射板を置くとできる定在波には、全く振動しない「節」と、激しく振動する「腹」ができます。音の場合、「圧力の変化が全くない点」と「媒質の動きが全くない点」は別です。
問題の「圧力が常に一定」な点は、圧力変化の「節」です。そして、このような場所では、実は媒質の動きは最も激しく(変位の「腹」)、その間隔は波長の半分になります。この関係から間隔を計算します。

結論と吟味

間隔は \(d = \displaystyle\frac{c}{2f}\) です。これは定在波の腹と腹の間隔が半波長であるという基本的な性質から導かれたものであり、物理的に正しい結果です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{c}{2f}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
気温が上昇すると、音波の性質のうち何が変化し、何が変化しないかを考え、それが間隔\(d\)にどう影響するかを説明します。

  1. 気温と音速の関係: 気温が上がると、空気分子の熱運動が激しくなり、音(圧力変化)を伝える速さ、すなわち音速\(c\)が大きくなります。
  2. 波源の性質: スピーカーの振動数\(f\)は、波源の性質によって決まるため、周囲の気温が変化しても変わりません。
  3. 間隔dへの影響: (3)で求めた関係式 \(d = \displaystyle\frac{c}{2f}\) に、これらの変化を当てはめて、\(d\)がどうなるかを結論付けます。

この設問における重要なポイント

  • 気温が上がると音速が大きくなることを知っていること。
  • 波源の振動数は媒質の状態によらず一定であることを理解していること。
  • 物理法則に基づいて、原因と結果を論理的に説明できること。

具体的な解説と立式
(3)で求めた間隔\(d\)の式は、
$$d = \frac{c}{2f}$$
です。
この式において、

  • 音速\(c\): 気温が上昇すると、空気分子の運動が活発になるため、音速\(c\)は増加します。
  • 振動数\(f\): 振動数\(f\)は音源であるスピーカーの固有の性質で決まるため、気温が変化しても一定です。

したがって、\(d\)の式の分子である\(c\)が増加し、分母の\(2f\)は一定なので、間隔\(d\)は増加します。

使用した物理公式

  • 音速と温度の関係
  • 波源の振動数の不変性
計算過程

定性的な説明なので、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

間隔\(d\)は、音速\(c\)を振動数\(f\)で割ったものに比例します (\(d \propto c/f\))。
気温が上がると、空気の中を音が伝わるスピード(音速\(c\))は速くなります。
一方で、音を出すスピーカーの「ブルブル」という震える回数(振動数\(f\))は変わりません。
その結果、\(c\)が大きくなり\(f\)は変わらないので、\(d\)は大きくなります。

結論と吟味

気温が上昇すると音速\(c\)が増加するが、振動数\(f\)は不変であるため、\(d=c/(2f)\)で表される間隔は増加する、という説明は物理的に正しく、論理的です。

解答 (4) 気温が上昇すると、音波の速さ\(c\)は増加するが、音源の振動数\(f\)は変化しない。間隔\(d\)は\(d=c/(2f)\)で与えられるため、分子の\(c\)が増加することから、\(d\)は増加する。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 縦波における変位と圧力の関係:
    • 核心: 音波のような縦波では、媒質の「変位」と「圧力(または密度)」の変化は、位相が90度(\(\pi/2\))ずれています。これがこの問題全体を貫く最も重要な原理です。
    • 理解のポイント:
      • 変位が0の点 \(\rightarrow\) 媒質が最も圧縮()または膨張()している点 \(\rightarrow\) 圧力変化が最大(正または負)の点。
      • 変位が最大(正または負)の点 \(\rightarrow\) 媒質の密度が周囲と同じ点 \(\rightarrow\) 圧力変化が0(大気圧\(p_0\)と同じ)の点。

      この対応関係を、空間分布(図1)と時間変化(図2)の両方で自在に使いこなすことが求められます。

  • 媒質の速度と変位の関係:
    • 核心: 媒質の各点はその場で単振動しています。単振動の基本的な性質として、変位が0(振動の中心)のときに速度が最大となり、変位が最大(振動の端)のときに速度が0となります。
    • 理解のポイント: (1)で「最も速く動いている位置」を問われた際に、まず変位のグラフを考え、その変位が0になる点を探す、という思考プロセスが重要です。
  • 定在波における腹と節:
    • 核心: 定在波には、全く振動しない「節」と、最大振幅で振動する「腹」が存在します。音波の場合、「変位の節・腹」と「圧力変化の節・腹」を区別する必要があります。
    • 理解のポイント:
      • 変位の節: 媒質が全く動かない点。左右から媒質が押し寄せる/離れていくため、圧力変化は最大になる(圧力変化の腹)。
      • 変位の腹: 媒質が最も大きく動く点。媒質の密度が常に周囲と同じになるため、圧力変化は常に0(圧力変化の節)。

      (3)の「圧力が常に\(p_0\)」という条件は、この「圧力変化の節=変位の腹」を指していることを見抜くのが最大の鍵です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 気柱の共鳴: 開管や閉管の中で音波が定在波を作る問題。開口端は圧力変化が0(大気圧に等しい)なので「圧力変化の節=変位の腹」、閉口端は媒質が動けないので「変位の節=圧力変化の腹」となります。本問の知識は、気柱の共鳴をより深く理解するために不可欠です。
    • 縦波ばね振り子: 多数の質点をばねでつないだモデルで縦波を考える問題。質点の変位と、ばねの伸び縮み(張力変化、圧力変化に相当)の関係は、本問と全く同じ構造です。
    • 疎密波の作図問題: 媒質の各点の変位ベクトルが与えられ、そこから密部・疎部を特定したり、圧力分布のグラフを描いたりする問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「何」のグラフかを確認: まず、与えられたグラフが「圧力」なのか「変位」なのかを明確に把握します。これが全ての出発点です。
    2. 基準(ゼロ)は何かを意識: 圧力の基準は「大気圧\(p_0\)」、変位の基準は「元の位置(振動の中心)」です。グラフがこの基準より上か下か、基準を横切る点がどこかを注意深く見ます。
    3. 空間(x)か時間(t)かを区別: 図1は「ある瞬間のスナップショット」、図2は「ある一点の連続記録」です。両者は似ていますが、横軸の意味が全く異なります。波の進行方向を考慮すると、両者を結びつけることができます(時間tの経過は、波形が-x方向に移動するように見える)。
    4. 定在波の条件の読み替え: 「圧力が変化しない」「変位が常にゼロ」といった日本語の条件を、「圧力変化の節」「変位の節」といった物理用語に正確に翻訳する能力が問われます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 変位と圧力の混同:
    • 誤解: 圧力最大の点が、媒質も最も大きく動いている(変位最大)と勘違いする。
    • 対策: 「密」の状態をイメージしましょう。最も混雑している場所では、媒質は押しつぶされて動けません(変位0)。変位と圧力の位相が90度ずれることを、図を描いて常に確認する習慣をつけましょう。
  • 変位の腹と節の混同:
    • 誤解: (3)で「圧力が変化しない」点を、媒質の動きが止まっている「変位の節」だと勘違いし、間隔を\(\lambda/2\)としながらも、その物理的意味を取り違える。
    • 対策: 「圧力変化ゼロ \(\Leftrightarrow\) 変位最大(腹)」「変位ゼロ \(\Leftrightarrow\) 圧力変化最大(腹)」という対応関係を明確に覚えましょう。理由(なぜそうなるか)と共に理解すると忘れにくくなります。
  • 速度と変位の関係の誤解:
    • 誤解: 変位が最大の点で速度も最大だと考えてしまう。
    • 対策: 単振動の基本に立ち返りましょう。振り子の端(変位最大)では一瞬止まり(速度0)、最下点(変位0)で最も速くなるイメージを持つことが重要です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 変位ベクトル図: 模範解答の図bのように、圧力グラフの下に、対応する変位のグラフを描くことが最も有効な攻略法です。まず圧力の最大・最小点から変位0の点をプロットし、次に圧力\(p_0\)の点から変位が最大・最小になる点を考え、滑らかに結びます。
    • 媒質の点の動き: x軸上に並んだ媒質の点を描き、各点の変位を矢印で示すと、密部と疎部がどのように形成されるかが視覚的に理解できます。
    • 定在波の腹と節の図示: (3)では、入射波と反射波を重ねて描き、変位の腹・節と圧力変化の腹・節が交互に並ぶ様子を図示すると、なぜ「圧力変化の節」が「変位の腹」になるのかが直感的にわかります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 縦波の位相関係(作図):
    • 選定理由: (1),(2)で、直接観測できない「変位」や「速度」を、観測できる「圧力」から推測する必要があるため。公式というよりは、縦波の物理モデルそのものに基づいた作図と解釈が必要です。
    • 適用根拠: 媒質の連続性と、圧縮・膨張によって圧力変化が生じるという物理的因果関係に基づきます。
  • 定在波の腹・節の間隔 (\(d=\lambda/2\)):
    • 選定理由: (3)で、定在波における周期的な構造(圧力が常に一定な点)の間隔が問われているため。
    • 適用根拠: 定在波は、同じ波長・振幅の波が逆向きに進行して重なった結果です。その数学的な性質から、腹や節が半波長ごとに規則正しく並ぶことが導かれます。
  • 音速と温度の関係 (\(c \propto \sqrt{T_{\text{絶対温度}}}\)):
    • 選定理由: (4)で「気温が上昇」という条件が与えられ、それが間隔\(d\)にどう影響するかを説明する必要があるため。
    • 適用根拠: 気体分子運動論から、音速は気体の種類と絶対温度の平方根に比例することが知られています。この法則が、気温と音速を結びつける根拠となります。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 空間分布:
    • 戦略: ①圧力グラフから密・疎を特定 → ②密・疎から変位のグラフを作図 → ③変位グラフから変位最大・速度最大の点を読み取る。
    • フロー: \(p\)最大 \(\rightarrow\) 密 \(\rightarrow\) 変位0。\(p\)最小 \(\rightarrow\) 疎 \(\rightarrow\) 変位0。中間点で変位最大。変位0の点で速度最大。
  2. (2) 時間変化:
    • 戦略: ①圧力の時間変化グラフと変位の時間変化グラフの位相のずれを考える → ②変位が正で最大となる条件を圧力グラフ上で探す。
    • フロー: 変位が正で最大 \(\rightarrow\) 圧力が\(p_0\)で、これから疎に向かう(圧力が減少する)時刻 \(\rightarrow\) 図2から\(t_2\)を特定。
  3. (3) 定在波の間隔:
    • 戦略: ①「圧力が常に\(p_0\)」の物理的意味を解釈 → ②定在波の性質と結びつける → ③波の基本式で表現。
    • フロー: 圧力が常に\(p_0\) \(\rightarrow\) 圧力変化の節 \(\rightarrow\) 変位の腹 \(\rightarrow\) 腹と腹の間隔は\(\lambda/2\) \(\rightarrow\) \(d = \lambda/2 = (c/f)/2 = c/(2f)\)。
  4. (4) 気温の影響:
    • 戦略: ①気温上昇が物理パラメータ(\(c, f\))に与える影響を考える → ②(3)の式に代入して\(d\)の変化を結論付ける。
    • フロー: 気温上昇 \(\rightarrow\) \(c\)は増加、\(f\)は不変 \(\rightarrow\) \(d=c/(2f)\)の分子が増加し分母は不変 \(\rightarrow\) \(d\)は増加。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • グラフの丁寧な読み取り: この問題は計算よりもグラフ解釈が中心です。横軸と縦軸が何を表しているか、基準値はどこか、最大・最小点はどこかを正確に読み取ることが全ての基本です。
  • 正負の向きの意識: 変位や速度の「正の向き」はx軸の正の向きと定義されています。変位のグラフを描く際や、速度が最大となる点を考える際に、この向きを常に意識しないと符号を間違えます。
  • 言葉の定義の再確認: 「密」「疎」「節」「腹」といった物理用語の定義を正確に理解していることが前提となります。自信がなければ、一度教科書に戻って定義を確認しましょう。特に、変位の腹・節と圧力の腹・節の対応は混同しやすいので注意が必要です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (1)と(2)の比較: 空間分布で圧力と変位の位相が90度ずれるなら、時間変化でも同様に90度(1/4周期)ずれるはずだ、という結果は非常に整合性があります。
    • (3) \(d=c/2f\): この式は「腹(または節)の間隔は半波長」という定在波の普遍的な性質を表しており、答えの形として非常に信頼性が高いです。
    • (4) 気温上昇でdが増加: 冬より夏の方が音が高く聞こえる(波長が伸びる)という日常の経験則(厳密には少し違うがイメージとして)とも結びつけられます。物理的には、\(c\)が大きくなるので、同じ振動数\(f\)でも1周期に進む距離(波長\(\lambda=c/f\))が伸び、その結果として定在波の間隔も広がる、という一貫した論理になっています。

問題84 (帯広畜産大 改)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、弦の振動によって生じる定在波(特に基本振動)と、それに伴う音の性質(高さ、うなり)について総合的に問うています。弦を伝わる波の速さの公式を正しく理解し、定在波の基本である「基本振動」の条件を様々な状況に適用する能力が試されます。

与えられた条件
  • 弦: 2本A, B。線密度\(\rho\)。支柱P, Q間の長さ\(l\)。
  • 張力: 弦Aはおもり\(m_A\)、弦Bはおもり\(m_B\)で張られている。\(m_A < m_B\)。
  • 振動: PQの中点をはじき、基本振動を発生させる。
  • 物理法則:
    • 弦を伝わる波の速さ: \(v = \sqrt{S/\rho}\)
    • 定在波は正弦曲線で表される。
  • その他: 重力加速度\(g\)。
問われていること
  • (1) 定在波ができる原因となる現象と、P, Qでの反射における位相のずれ。
  • (2) 弦Aの基本振動における波長、速さ、振動数。
  • (3) 弦Aの基本振動における、特定の点の振幅と周期。
  • (4) 弦Aで\(l\)を短くしたときの音の変化とその理由。
  • (5) 弦Bの基本振動の振動数。
  • (6) 弦Bの振動数を弦Aと同じにするためのPQ間の距離。
  • (7) 弦Bと同じ材質で太さを変え、振動数を半分にするための直径の倍率。
  • (8) 弦AとBを同時に鳴らしたときの、うなりの回数。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「弦の振動と定在波」です。弦の物理的条件(長さ、張力、線密度)が、発生する音の性質(高さ=振動数)をどのように決定するかを理解することが中心となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 弦を伝わる波の速さ: 速さ\(v\)は、張力\(S\)と線密度\(\rho\)のみで決まります (\(v = \sqrt{S/\rho}\))。張力が大きいほど、また線密度が小さい(弦が軽い)ほど速くなります。
  2. 定在波の形成: 弦の両端(この問題ではP, Q)が固定されているため、入射波が固定端で反射し、逆向きに進む反射波と干渉することで定在波が生じます。
  3. 固定端反射: 固定端での反射では、波の位相が\(\pi\)ラジアン(180度)ずれます。これにより、反射点は常に変位が0の「節」となります。
  4. 基本振動: 両端が節となる定在波のうち、最も波長が長く、振動数が低いものが基本振動です。このとき、弦の長さ\(l\)が半波長(\(\lambda/2\))に等しくなります。
  5. うなり: 振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らすと、音が周期的に強弱を繰り返します。1秒あたりのうなりの回数は、2つの音の振動数の差の絶対値に等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、定在波の生成原理と固定端反射の性質について答えます。
  2. (2)以降では、まず「基本振動 \(\Rightarrow l = \lambda/2\)」という条件と、速さの公式 \(v = \sqrt{S/\rho}\)、波の基本式 \(v=f\lambda\) の3つを組み合わせて、各設問の状況における振動数などを計算していきます。
  3. (3)では、定在波の波形が正弦曲線で表されることを利用して、特定の点の振幅を求めます。
  4. (7)では、線密度\(\rho\)が弦の断面積(直径の2乗)に比例することを考慮します。
  5. (8)では、(2)と(5)で求めた2つの振動数の差を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
定在波がどのようにしてできるかを問うています。弦の振動の場合、弦を伝わっていった波が端(この問題では支柱P, Q)で反射し、その反射波と元の入射波が重なり合う(干渉する)ことで定在波が形成されます。
また、支柱P, Qは弦を固定しているため、「固定端」として機能します。固定端での反射では、波の位相は\(\pi\)ラジアン(180度)ずれます。

この設問における重要なポイント

  • 定在波が「反射」と「干渉」によって生じることを理解していること。
  • 弦の固定された端点が「固定端」であり、そこでの反射は「固定端反射」であることを理解していること。
  • 固定端反射では位相が\(\pi\)ずれることを知っていること。

具体的な解説と立式
弦を伝わる波は、支柱PおよびQで反射されます。この入射波と反射波が絶えず重なり合う(干渉する)ことで、特定の場所に腹と節を持つ定在波が形成されます。したがって、原因となる現象は「干渉」です。
支柱P, Qは弦の位置を固定しているため、固定端として働きます。固定端での反射では、波の変位の向きが反転するため、位相は\(\pi\)ラジアンずれます。

使用した物理公式

  • 定在波の生成原理
  • 固定端反射の位相変化
計算過程

計算は不要です。

計算方法の平易な説明

弦をはじくと、波が両端に向かって進みます。端にぶつかった波は跳ね返ってきます(反射)。この「行く波」と「帰ってくる波」がぶつかり合う(干渉)ことで、弦全体が特定の形で振動する定在波が生まれます。弦の端は固定されているので、波が跳ね返る際に上下がひっくり返ります。これを「位相が\(\pi\)ずれる」と表現します。

結論と吟味

定在波は干渉による現象であり、固定端での位相のずれは\(\pi\)ラジアンです。これは弦の振動の基本的な性質であり、妥当です。

解答 (1) 現象: ③ 干渉、位相のずれ: \(\pi\)

問(2)

思考の道筋とポイント
弦Aの「基本振動」について、波長、速さ、振動数を求めます。

  1. 波長\(\lambda_A\): 基本振動では、弦の長さ\(l\)が定在波の半波長に相当します。この条件から\(\lambda_A\)を求めます。
  2. 速さ\(v_A\): 弦を伝わる波の速さの公式 \(v = \sqrt{S/\rho}\) を使います。弦Aの張力\(S\)は、おもり\(m_A\)にはたらく重力に等しいです。
  3. 振動数\(f_A\): 波の基本公式 \(v=f\lambda\) を使い、上で求めた速さ\(v_A\)と波長\(\lambda_A\)から振動数\(f_A\)を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 「基本振動」の条件が \(l = \lambda/2\) であることを理解していること。
  • 弦の張力が、つるしたおもりの重力 \(mg\) に等しいことを理解していること。
  • 3つの基本公式(\(l=\lambda/2\), \(v=\sqrt{S/\rho}\), \(v=f\lambda\))を連携させて使えること。

具体的な解説と立式

  • 波長\(\lambda_A\):
    基本振動では、両端P, Qが節となり、間に腹が1つできます。このとき、弦の長さ\(l\)は半波長に等しいので、
    $$l = \frac{\lambda_A}{2}$$
  • 速さ\(v_A\):
    弦Aの張力\(S_A\)は、おもり\(m_A\)にはたらく重力に等しいので、\(S_A = m_A g\)。
    速さの公式に代入すると、
    $$v_A = \sqrt{\frac{S_A}{\rho}}$$
  • 振動数\(f_A\):
    波の基本公式 \(v_A = f_A \lambda_A\) を\(f_A\)について解くと、
    $$f_A = \frac{v_A}{\lambda_A}$$

使用した物理公式

  • 基本振動の条件: \(l = \lambda/2\)
  • 弦を伝わる波の速さ: \(v = \sqrt{S/\rho}\)
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

まず、波長\(\lambda_A\)を求めます。
$$\lambda_A = 2l$$
次に、速さ\(v_A\)を計算します。
$$v_A = \sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}$$
最後に、振動数\(f_A\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_A &= \frac{v_A}{\lambda_A} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}}{2l} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

弦の基本振動は、弦の長さがちょうど波長の半分になる振動です。このルールからまず波長がわかります。次に、弦の速さは「張力」と「弦の重さ(線密度)」で決まる公式から計算します。最後に、波の基本ルール「振動数=速さ÷波長」を使って、振動数を求めます。

結論と吟味

波長は\(2l\)、速さは\(\sqrt{m_A g/\rho}\)、振動数は\(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}\)です。これらは弦の基本振動に関する基本的な公式そのものであり、物理的に正しい結果です。

解答 (2) 波長: \(2l\), 速さ: \(\sqrt{\displaystyle\frac{m_A g}{\rho}}\), 振動数: \(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
定在波の形状が正弦曲線で表されることを利用します。

  1. 振幅: PQ間を\(n\)等分したときの、Pから数えて\(j\)番目の区間の右端の点の\(x\)座標を求めます。次に、最大振幅が\(a\)である基本振動の定在波の式を立て、その式に求めた\(x\)座標を代入して、その点の振幅を計算します。
  2. 周期: 周期は振動数の逆数です。振動は弦全体で同じように起こるため、どの点の周期も弦全体の周期と同じです。(2)で求めた振動数\(f_A\)の逆数をとります。

この設問における重要なポイント

  • 定在波の波形を三角関数(サインカーブ)で表現できること。
  • 弦のどの部分も、同じ周期(振動数)で振動することを理解していること。

具体的な解説と立式

  • 振幅\(a’\):
    Pを原点(\(x=0\))、Qを\(x=l\)とします。両端が節で、中央(\(x=l/2\))の振幅が\(a\)であるような基本振動の波形は、
    $$y(x) = a \sin\left(\frac{\pi}{l}x\right)$$
    と表せます。(これは、\(x=0, l\)で0、\(x=l/2\)で\(a\)となる最も簡単な正弦関数です。)
    Pから数えて\(j\)番目の区間の右端の\(x\)座標は、\(x = \displaystyle\frac{j}{n}l\) です。
    この\(x\)座標を上の式に代入すると、その点の振幅\(a’\)が求まります。
    $$a’ = a \sin\left(\frac{\pi}{l} \cdot \frac{j}{n}l\right)$$
  • 周期\(T_A\):
    周期\(T_A\)は、(2)で求めた振動数\(f_A\)の逆数です。
    $$T_A = \frac{1}{f_A}$$

使用した物理公式

  • 定在波の波形の式
  • 周期と振動数の関係: \(T=1/f\)
計算過程

振幅\(a’\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
a’ &= a \sin\left(\frac{\pi}{l} \cdot \frac{j}{n}l\right) \\[2.0ex]&= a \sin\left(\frac{j\pi}{n}\right)
\end{aligned}
$$
周期\(T_A\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
T_A &= \frac{1}{f_A} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}} \\[2.0ex]&= 2l\sqrt{\frac{\rho}{m_A g}}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

弦の形はきれいなサインカーブを描きます。全体の長さが\(l\)で、真ん中の振れ幅が\(a\)なので、その形を数式で表すことができます。求めたい点のx座標をその式に代入すれば、その点の振れ幅(振幅)が計算できます。
周期は、弦全体で同じです。1秒間に何回振動するか(振動数)がわかっているので、その逆数をとれば1回の振動にかかる時間(周期)がわかります。

結論と吟味

振幅は \(a \sin(\displaystyle\frac{j\pi}{n})\)、周期は \(2l\sqrt{\displaystyle\frac{\rho}{m_A g}}\) です。\(j=n/2\)(中央)のとき振幅は\(a\sin(\pi/2)=a\)となり、最大振幅と一致します。\(j=0, n\)(両端)のとき振幅は0となり、節であることと一致します。結果は妥当です。

解答 (3) 振幅: \(a \sin(\displaystyle\frac{j\pi}{n})\), 周期: \(2l\sqrt{\displaystyle\frac{\rho}{m_A g}}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
「音の高さ」は「振動数」によって決まります。振動数が高いほど、音は高く聞こえます。
PQの間隔\(l\)を短くしたときに、弦Aの基本振動の振動数\(f_A\)がどう変化するかを、(2)で求めた式から考えます。

この設問における重要なポイント

  • 音の高さが振動数で決まることを知っていること。
  • 振動数の公式を見て、パラメータ(この場合は\(l\))の変化が振動数にどう影響するかを判断できること。

具体的な解説と立式
(2)で求めた弦Aの基本振動の振動数\(f_A\)の式は、
$$f_A = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}$$
この式を見ると、振動数\(f_A\)は弦の長さ\(l\)に反比例しています (\(f_A \propto 1/l\))。
したがって、\(l\)を短くすると、\(f_A\)は大きくなります。
振動数が大きくなるので、音は高くなります。

使用した物理公式

  • 音の高さと振動数の関係
  • 弦の振動数の公式
計算過程

定性的な判断なので、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

ギターやバイオリンを思い浮かべると分かりやすいです。指で弦を押さえて短くすると、高い音が出ます。これは、弦の長さ\(l\)が短くなると、振動数\(f\)が高くなるからです。(2)で求めた振動数の公式からも、\(l\)が分母にあるため、\(l\)を小さくすると\(f_A\)が大きくなることがわかります。

結論と吟味

\(l\)を短くすると振動数が増加し、音は高くなる。これは物理法則とも日常の経験とも一致しており、妥当です。

解答 (4) ① 高くなる。理由は、振動数\(f_A\)が弦の長さ\(l\)に反比例するため、\(l\)を短くすると\(f_A\)が増加し、音が高くなるから。

問(5)

思考の道筋とポイント
弦Bの基本振動の振動数\(f_B\)を求めます。考え方は(2)の弦Aの場合と全く同じですが、おもりの質量が\(m_B\)になる点が異なります。
(2)で導出した振動数の公式の、\(m_A\)を\(m_B\)に置き換えるだけです。

この設問における重要なポイント

  • (2)の計算方法を、異なるパラメータを持つ別の状況に適用できること。

具体的な解説と立式
弦Bの基本振動の振動数\(f_B\)は、(2)で求めた\(f_A\)の式の\(m_A\)を\(m_B\)に置き換えることで得られます。
$$f_B = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}}$$

使用した物理公式

  • 弦の振動数の公式
計算過程

立式がそのまま答えとなります。

計算方法の平易な説明

弦Bも弦Aと条件はほぼ同じで、違うのはおもりの重さだけです。したがって、(2)で使った振動数の公式のおもりの部分を\(m_A\)から\(m_B\)に変えれば、弦Bの振動数が計算できます。

結論と吟味

振動数は \(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}}\) です。(2)の結果からの類推であり、妥当です。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
弦Bの振動数を、(2)で求めた弦Aの振動数\(f_A\)と同じにするための、弦Bの長さ\(l’\)を求めます。
弦Bの振動数の公式(おもりは\(m_B\)、長さは\(l’\))を立て、それが\(f_A\)に等しいという等式を作り、\(l’\)について解きます。

この設問における重要なポイント

  • 2つの異なる条件下の振動数が等しい、という等式を立てて未知数を解くことができる。

具体的な解説と立式
長さを\(l’\)に変えたときの弦Bの振動数を\(f_B’\)とすると、その式は、
$$f_B’ = \frac{1}{2l’}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}}$$
この\(f_B’\)が、弦Aの振動数\(f_A\)と等しくなる条件は、
$$f_B’ = f_A$$
$$\frac{1}{2l’}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}} = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}$$

使用した物理公式

  • 弦の振動数の公式
計算過程

上の等式を\(l’\)について解きます。両辺の共通項を消去します。
$$\frac{1}{l’}\sqrt{m_B} = \frac{1}{l}\sqrt{m_A}$$
$$l’\sqrt{m_A} = l\sqrt{m_B}$$
$$l’ = l\sqrt{\frac{m_B}{m_A}}$$

計算方法の平易な説明

弦Bは弦Aより重いおもりで張られているので、何もしなければ弦Bの方が高い音(高い振動数)が出ます。この音を弦Aと同じ高さまで下げるには、弦を長くすればよいです。どれだけ長くすればよいかを、振動数が等しくなるという等式を立てて計算します。

結論と吟味

距離は \(l\sqrt{\displaystyle\frac{m_B}{m_A}}\) です。\(m_B > m_A\) なので、\(l’ > l\) となり、弦を長くする必要があるという直感と一致します。妥当な結果です。

解答 (6) \(l\sqrt{\displaystyle\frac{m_B}{m_A}}\)

問(7)

思考の道筋とポイント
弦の「材質」と「張力」は同じままで、「直径」を変えることで振動数を半分にします。
直径の変化が、どの物理パラメータに影響するかを考えます。直径が変わると断面積が変わり、同じ材質なので線密度\(\rho\)が変わります。
振動数の公式に、この線密度の変化を反映させて、条件を満たす直径の倍率を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 線密度\(\rho\)が、断面積と密度で決まることを理解していること (\(\rho = \text{密度} \times \text{断面積}\))。
  • 断面積が直径の2乗に比例すること。

具体的な解説と立式
弦の材質の密度を\(\rho_{\text{材質}}\)、直径を\(D\)、断面積を\(A_{\text{断面積}}\)とすると、線密度\(\rho\)は、
$$\rho = \rho_{\text{材質}} \cdot A_{\text{断面積}}$$
$$A_{\text{断面積}} = \pi \left(\frac{D}{2}\right)^2$$
したがって、\(\rho \propto D^2\) となります。つまり、線密度\(\rho\)は直径\(D\)の2乗に比例します。
元の弦の直径を\(D_0\)、線密度を\(\rho_0\)とします。直径を\(n\)倍にした弦の直径は\(nD_0\)、線密度は\(\rho’ = n^2 \rho_0\)となります。
元の弦Bの振動数は、
$$f_B = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho_0}}$$
直径を変えた弦の振動数\(f_B”\)は、
$$f_B” = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho’}}$$
問題の条件は \(f_B” = \displaystyle\frac{1}{2}f_B\) なので、
$$\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{n^2 \rho_0}} = \frac{1}{2} \left( \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho_0}} \right)$$

使用した物理公式

  • 線密度の定義
  • 弦の振動数の公式
計算過程

上の等式を整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2l}\frac{1}{n}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho_0}} &= \frac{1}{2} \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho_0}} \\[2.0ex]\frac{1}{n} &= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
$$n=2$$
したがって、直径を2倍にすればよいことがわかります。

計算方法の平易な説明

振動数を半分にしたい、つまり音を1オクターブ下げたい、という問題です。弦の振動数の公式を見ると、振動数は線密度\(\rho\)の平方根に反比例します。線密度は弦の断面積、つまり直径の2乗に比例します。これらの関係を組み合わせると、振動数は直径に反比例することがわかります。したがって、振動数を半分にするには、直径を2倍にすればよい、と結論できます。

結論と吟味

直径を2倍にすればよい、という結果です。直径を太くすると弦が重くなり(線密度増)、音が低くなる(振動数減)という関係は直感とも一致しており、妥当です。

解答 (7) 2倍

問(8)

思考の道筋とポイント
「うなり」は、振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らしたときに聞こえる音の強弱の周期的な変化です。単位時間(1秒)あたりのうなりの回数\(N\)は、2つの音の振動数\(f_A\)と\(f_B\)の差の絶対値で与えられます。
(2)と(5)で求めた\(f_A\)と\(f_B\)を、うなりの公式に代入して計算します。

この設問における重要なポイント

  • うなりの公式 \(N = |f_A – f_B|\) を知っていること。
  • これまでの設問で求めた結果を正しく代入して計算できること。

具体的な解説と立式
単位時間当たりのうなりの回数\(N\)は、
$$N = |f_A – f_B|$$
問題文の条件 \(m_A < m_B\) より、\(f_A < f_B\) なので、絶対値はそのまま外せます。
$$N = f_B – f_A$$
ここに、(2)で求めた \(f_A = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}}\) と、(5)で求めた \(f_B = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}}\) を代入します。

使用した物理公式

  • うなりの公式: \(N = |f_1 – f_2|\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
N &= f_B – f_A \\[2.0ex]&= \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_B g}{\rho}} – \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{m_A g}{\rho}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2l} \left( \sqrt{\frac{m_B g}{\rho}} – \sqrt{\frac{m_A g}{\rho}} \right) \\[2.0ex]&= \frac{1}{2l} \sqrt{\frac{g}{\rho}} (\sqrt{m_B} – \sqrt{m_A})
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「うなり」の回数は、2つの音の振動数の引き算で求められます。弦Aと弦Bの振動数はすでに計算してあるので、単純に引き算をして式を整理します。

結論と吟味

うなりの回数は \(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{g}{\rho}}(\sqrt{m_B} – \sqrt{m_A})\) となります。2つの振動数の差を計算したものであり、正しく導出できています。

解答 (8) \(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{g}{\rho}}(\sqrt{m_B} – \sqrt{m_A})\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 弦の基本振動数:
    • 核心: この問題の計算の大部分は、弦の基本振動数を求める公式 \(f = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\) に集約されます。この一つの式が、弦の物理的条件(長さ\(l\)、張力\(S\)、線密度\(\rho\))と、それによって生み出される音の高さ(振動数\(f\))を結びつけています。
    • 理解のポイント: この公式は、以下の3つの基本法則から導出されることを理解しておくことが重要です。
      1. 基本振動の条件: \(l = \lambda/2\) (弦の長さが半波長)
      2. 弦を伝わる波の速さ: \(v = \sqrt{S/\rho}\)
      3. 波の基本式: \(v = f\lambda\)

      これらの関係を理解していれば、公式を忘れてもその場で導出できますし、応用問題にも対応できます。

  • 定在波の形成と性質:
    • 核心: 弦の振動は、波の「反射」と「干渉」によって生じる定在波です。特に、両端が固定されているため「固定端反射」が起こり、両端が「節」となる定在波ができます。
    • 理解のポイント:
      • 固定端反射: 位相が\(\pi\)(180°)ずれる。これにより、反射点は常に変位が0の「節」となります。
      • 基本振動: 両端が節となる定在波のうち、最も単純な形(腹が1つ)。これが「基本音」の高さを決めます。
      • 波形: 定在波の振幅の空間分布は、正弦曲線(サインカーブ)で表すことができます。
  • うなりの原理:
    • 核心: 振動数がわずかに異なる2つの音を重ねると、音の大きさが周期的に変化する「うなり」が生じます。1秒あたりのうなりの回数\(N\)は、2つの音の振動数\(f_A, f_B\)の差の絶対値で与えられます (\(N = |f_A – f_B|\))。
    • 理解のポイント: (8)は、(2)と(5)で求めた2つの弦の振動数を用いて、このうなりの公式を適用する問題です。うなりは、2つの波の重ね合わせ(干渉)が時間的に変化する現象として捉えることができます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 気柱の共鳴: 弦の振動と気柱の共鳴は、定在波という点で共通しています。弦の「固定端」は気柱の「閉口端」(変位の節)に、弦の「自由端」(もしあれば)は気柱の「開口端」(変位の腹)に対応します。速さの公式は異なりますが、定在波の波長と管長・弦長の関係は同じように考えられます。
    • 倍音(n倍振動): この問題では基本振動のみを扱いましたが、腹の数が2個、3個…となる「2倍振動」「3倍振動」を考える問題も頻出です。その場合、弦の長さと波長の関係は \(l = n \cdot (\lambda/2)\) となります。
    • 楽器の仕組みに関する問題: ギターで指板を押さえる(\(l\)を変える)、ペグを巻いて弦を張る(\(S\)を変える)、太い弦に張り替える(\(\rho\)を変える)といった操作が、音の高さ(振動数)にどう影響するかを問う問題は、本問の知識で全て説明できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 境界条件の確認: まず、弦の端が「固定端」なのか「自由端」なのかを把握します。これにより、定在波の節と腹の配置が決まります。
    2. 振動のモードを特定: 問題が「基本振動」なのか、「n倍振動」なのか、あるいは特定の振動モードを指定していないのかを確認します。これにより、弦長\(l\)と波長\(\lambda\)の関係式が決まります。
    3. パラメータの特定: 振動数を決定する3要素(\(l, S, \rho\))のうち、何が一定で何が変化するのかを問題文から正確に読み取ります。(4)~(7)のように、1つのパラメータだけを変化させる問題が典型的です。
    4. 線密度の扱いに注意: (7)のように弦の「太さ」や「材質」が変化する場合、それが線密度\(\rho\)にどう影響するかを考える必要があります。線密度は断面積に比例し、断面積は直径(半径)の2乗に比例するという関係は重要です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 速さの公式の混同:
    • 誤解: 弦を伝わる波の速さ \(v = \sqrt{S/\rho}\) と、音波の速さ \(c\) を混同してしまう。弦の振動によって発生した音は、空気中を音速\(c\)で伝わりますが、弦自体の振動の伝播速度は\(v\)です。
    • 対策: 「何」を伝わる波の速さなのかを常に意識しましょう。この問題では空気中の音速は問われていませんが、他の問題では両者が登場することがあります。
  • 張力Sの計算ミス:
    • 誤解: 張力\(S\)をおもりの質量\(m\)そのものと勘違いする。
    • 対策: 張力は「力」なので、単位は[N]です。質量\(m\) [kg] に重力加速度\(g\) [m/s²] を掛けた \(mg\) が張力になります。単位を意識する習慣がミスを防ぎます。
  • 線密度ρの誤解:
    • 誤解: (7)で、直径がn倍になると線密度もn倍になると考えてしまう。
    • 対策: 線密度は「単位長さあたりの質量」です。太さが変わると、断面積(直径の2乗に比例)が変わるため、線密度は直径の2乗に比例します。この関係を正確に理解しておくことが重要です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 定在波の模式図: 模範解答の図のように、基本振動、2倍振動、3倍振動の波形を描けるようにしておくと、弦の長さと波長の関係(\(l=n\lambda/2\))が視覚的に理解できます。腹と節の位置も一目瞭然です。
    • 正弦曲線のグラフ: (3)のように振幅を問われた場合、Pを原点として横軸にx、縦軸にyをとったグラフを描き、\(y = a \sin(\pi x/l)\) という関数の形をイメージすると、座標の代入が容易になります。
    • 力のつり合い図: 張力Sを考える際には、滑車とおもりにかかる力のつり合いを図示すると、\(S=mg\)であることが明確になります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(l = n\lambda/2\) (定在波の条件):
    • 選定理由: 「弦の振動」「基本振動」というキーワードから、両端が節となる定在波のモデルを適用するため。
    • 適用根拠: 両端が固定端(節)であるという境界条件を満たすためには、弦の長さが半波長の整数倍でなければならないという物理的・数学的要請に基づきます。
  • \(v = \sqrt{S/\rho}\) (弦の波の速さ):
    • 選定理由: 弦の物理的性質(張力、線密度)と、波の伝播速度を結びつけるため。振動数を計算する上で必須の公式です。
    • 適用根拠: 弦の微小部分の運動方程式を解くことで導出される関係式です。直感的には、弦を強く張る(\(S\)大)ほど復元力が大きくなり速く、弦が重い(\(\rho\)大)ほど慣性が大きくなり遅くなる、と理解できます。
  • \(N = |f_A – f_B|\) (うなりの公式):
    • 選定理由: (8)で「うなり」という現象の回数が問われているため。
    • 適用根拠: 振動数がわずかに異なる2つの波を重ね合わせると、合成波の振幅が周期的に変化します。その振幅の変化の周波数が、元の2つの波の振動数の差になるという数学的な性質に基づきます。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (2) 弦Aの振動数:
    • 戦略: ①基本振動の条件 → ②速さの公式 → ③波の基本式、の3ステップで求める。
    • フロー: \(l=\lambda_A/2\) \(\rightarrow\) \(\lambda_A=2l\)。\(S_A=m_A g\) \(\rightarrow\) \(v_A=\sqrt{m_A g/\rho}\)。\(f_A = v_A/\lambda_A\) に代入。
  2. (3) 振幅と周期:
    • 戦略: 定在波の波形を数式で表現し、周期は振動数の逆数から求める。
    • フロー: 波形を \(y=a\sin(\pi x/l)\) とモデル化し、\(x=jl/n\)を代入。\(T_A=1/f_A\) を計算。
  3. (4)-(7) パラメータ変化:
    • 戦略: 振動数の公式 \(f = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\) を元に、変化するパラメータが振動数にどう影響するかを調べる。
    • フロー:
      • (4) \(l\)が変化 \(\rightarrow\) \(f \propto 1/l\)。
      • (5) \(m_A \rightarrow m_B\) に変更。
      • (6) \(f_B(l’) = f_A(l)\) の等式を立てて\(l’\)を解く。
      • (7) \(\rho \propto D^2\) の関係を使い、\(f \propto 1/\sqrt{\rho} \propto 1/D\) の関係から解く。
  4. (8) うなり:
    • 戦略: うなりの公式に、(2)と(5)で求めた振動数を代入する。
    • フロー: \(N = f_B – f_A\) を計算。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 平方根の扱い: 振動数の公式には平方根が含まれるため、計算ミスが起こりやすいです。特に、(6)や(8)のように複数の振動数を比較したり、差をとったりする際には、根号の中と外の変数を混同しないように注意しましょう。
  • 比例関係の利用: (4)や(7)のように、定性的な変化や倍率を問う問題では、いちいち全ての値を代入するのではなく、「\(f\)は\(l\)に反比例する」「\(f\)は直径\(D\)に反比例する」といった比例関係を見抜くと、素早くかつ直感的に解くことができます。
  • 文字式の整理: (8)のように、最終的な答えが複雑な文字式になる場合、共通因数でくくるなど、できるだけシンプルな形でまとめることを心がけましょう。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な直感との比較:
    • (4) 弦を短くすると音が高くなる。
    • (5) 重いおもりで張ると(張力大)、音が高くなる。
    • (7) 太い弦(線密度大)にすると音が低くなる。

    これらの結果は、ギターなどの弦楽器の経験則と一致しており、答えの妥当性を裏付けます。

  • 単位の確認: 例えば、(2)で求めた振動数\(f_A\)の式の単位を検証してみましょう。
    \(\displaystyle \frac{1}{[m]}\sqrt{\frac{[kg][m/s^2]}{[kg/m]}} = \frac{1}{[m]}\sqrt{\frac{[m/s^2]}{[1/m]}} = \frac{1}{[m]}\sqrt{[m^2/s^2]} = \frac{1}{[m]}[m/s] = [1/s] = [Hz]\)。
    正しく振動数の単位になっていることが確認できます。

問題85 (佐賀大 改)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、片方が開いた管(開口端)ともう一方が閉じた管(ピストンによる閉口端)である「閉管」における気柱の共鳴現象を扱っています。前半(1)~(5)では管の長さを固定して振動数を変化させ、後半(6),(7)では振動数を固定して管の長さを変化させたり、再び振動数を変化させたりします。
この問題の核心は、閉管における定在波の形成条件を正しく理解し、それを様々な状況に適用することです。

与えられた条件
  • 装置: スピーカーと、片側がピストンで閉じられたガラス管。
  • 気柱: 管口(開口端)からピストン(閉口端)までの距離が\(l\)。
  • 物理的条件:
    • 音速は\(V\)で一定。
    • 開口端補正は無視する。
  • 操作:
    • (1)~(5): \(l\)を固定し、振動数\(f\)を0から増加させる。
    • (6): \(f\)を固定し、ピストンを動かして\(l\)を0から増加させる。
    • (7): (6)の位置で\(l\)を固定し、\(f\)を増加させる。
問われていること
  • (1) 最初の共鳴(基本振動)が起こる振動数。
  • (2) \(n\)回目の共鳴における定在波の節の数。
  • (3) \(n\)回目の共鳴における波長\(\lambda_n\)。
  • (4) \(n\)回目の共鳴における振動数\(f_n\)。
  • (5) \(n\)回目の共鳴で、密度変化が最大(節)となる最も管口に近い位置。
  • (6) 振動数を\(f_2\)に固定し、管長を伸ばしたときに最初に共鳴する長さ\(l’\)。
  • (7) (6)の状態で、次に共鳴が起こる振動数\(f’\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「気柱の共鳴(閉管)」です。閉管の定在波の性質を深く理解することが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 気柱の境界条件:
    • 開口端(管口): 空気が自由に出入りできるため、媒質の変位が最大となる「腹」になります。圧力変化は常に0(大気圧と同じ)なので、圧力変化の「節」です。
    • 閉口端(ピストン): 空気が動けないため、媒質の変位が0となる「節」になります。媒質が圧縮・膨張を繰り返すため、圧力変化は最大となり、圧力変化の「腹」です。
  2. 閉管の共鳴条件: 「開口端が腹、閉口端が節」という境界条件を満たす定在波のみが安定して存在できます。この条件から、管の長さ\(l\)と波長\(\lambda\)の関係が決まります。基本振動では\(l=\lambda/4\)、次の3倍振動では\(l=3\lambda/4\)となり、一般に奇数倍の振動のみが起こります。
  3. 波の基本式: \(V=f\lambda\)は、気柱の共鳴でも基本となる関係式です。
  4. 密度変化と節・腹: 音波は縦波なので、媒質の密度が変化します。「密度変化が最大」となるのは、媒質が最も圧縮されたり膨張したりする場所であり、これは変位の「節」に相当します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、最初の共鳴である「基本振動」の条件(\(l=\lambda/4\))から振動数を求めます。
  2. (2)~(4)では、\(n\)回目の共鳴の様子を図から類推し、管長\(l\)と波長\(\lambda_n\)の関係式を立て、そこから振動数\(f_n\)を導きます。
  3. (5)では、「密度変化が最大」=「変位の節」と読み替え、\(n\)回目の共鳴における節の位置を計算します。
  4. (6)では、波長を固定して管長を変化させる状況を考えます。基本振動の条件を満たす最短の管長を求めます。
  5. (7)では、(6)で決まった管長で、次に起こる共鳴(3倍振動)の振動数を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
振動数を0からゆっくり上げていくと、最初に共鳴が起こるのは、最も波長が長い定在波が形成されるときです。これは「基本振動」と呼ばれます。
閉管(一端が開口、一端が閉口)の基本振動では、開口端が腹、閉口端が節となり、管の長さ\(l\)がちょうど1/4波長に等しくなります。
この条件 \(l = \lambda/4\) と、波の基本式 \(V=f\lambda\) を用いて、振動数\(f\)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 閉管の境界条件(開口端:腹、閉口端:節)を理解していること。
  • 最初の共鳴が「基本振動」であり、その条件が \(l=\lambda/4\) であることを知っていること。

具体的な解説と立式
最初の共鳴は基本振動です。このとき、管の中には腹と節が1つずつできます(模範解答 図a)。
管の長さ\(l\)は、腹と節の間の距離に等しく、これは波長\(\lambda\)の1/4です。
$$l = \frac{\lambda}{4}$$
波の基本公式は \(V=f\lambda\) です。これを\(f\)について解くと、
$$f = \frac{V}{\lambda}$$

使用した物理公式

  • 閉管の基本振動の条件: \(l = \lambda/4\)
  • 波の基本式: \(V=f\lambda\)
計算過程

まず、波長\(\lambda\)を\(l\)で表します。
$$\lambda = 4l$$
これを振動数の式に代入します。
$$f = \frac{V}{4l}$$

計算方法の平易な説明

管の片方が開いていて、もう片方が閉じている場合、最もシンプルな共鳴の形は、開いている口で最も空気が動き(腹)、閉じている端で空気が動かない(節)状態です。このとき、管の長さはちょうど波長の4分の1になります。このルールと、波の基本公式「振動数=速さ÷波長」を組み合わせて、振動数を計算します。

結論と吟味

最初の共鳴振動数は \(\displaystyle\frac{V}{4l}\) です。これは閉管の基本振動数としてよく知られた公式であり、妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{V}{4l}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
\(n\)回目の共鳴が起こるときの節の数を考えます。

  • 1回目(基本振動): 図aより、節は1個。
  • 2回目(3倍振動): 図bより、節は2個。
  • 3回目(5倍振動): 図bより、節は3個。

この規則性から、\(n\)回目の共鳴では節の数が\(n\)個になると類推できます。

この設問における重要なポイント

  • 具体的な事例(1回目、2回目…)から、一般化された法則を類推する能力。
  • 共鳴の次数と、定在波の腹・節の数の関係を正しく把握すること。

具体的な解説と立式
問題の図(模範解答の図b)を参考にします。

  • \(n=1\)(1回目)の共鳴では、節はピストン位置に1個。
  • \(n=2\)(2回目)の共鳴では、管の途中に1個とピストン位置に1個で、合計2個。
  • \(n=3\)(3回目)の共鳴では、管の途中に2個とピストン位置に1個で、合計3個。

このことから、\(n\)回目の共鳴が起こるとき、気柱にできる定在波の節の数は\(n\)個であるとわかります。

使用した物理公式

  • (なし、図からの類推)
計算過程

計算は不要です。

計算方法の平易な説明

共鳴が起こるたびに、管の中の定在波の「節」の数が1つずつ増えていきます。1回目の共鳴では節は1つ、2回目では2つ、3回目では3つです。このルールに従うと、n回目の共鳴では節はn個になります。

結論と吟味

節の数は\(n\)個です。これは閉管の共鳴における定在波の構造として正しく、妥当な類推です。

解答 (2) \(n\)

問(3)

思考の道筋とポイント
\(n\)回目の共鳴における定在波の波長\(\lambda_n\)を求めます。
(2)で考察したように、\(n\)回目の共鳴では管内に\(n\)個の節と\(n\)個の腹が存在します(ただし、管口の腹は半個と数える)。
定在波の腹と節の間隔は\(\lambda/4\)、節と節の間隔は\(\lambda/2\)です。
管長\(l\)は、管口の腹から最初の節までの距離(\(\lambda_n/4\))と、残りの\((n-1)\)個の節と節の間の距離の合計で表せます。
この関係を立式し、\(\lambda_n\)について解きます。

この設問における重要なポイント

  • 定在波の腹と節の間隔(\(\lambda/4\))と、節と節の間隔(\(\lambda/2\))を理解していること。
  • \(n\)回目の共鳴の定在波の構造を図でイメージし、管長\(l\)と波長\(\lambda_n\)の関係を正しく立式できること。

具体的な解説と立式
\(n\)回目の共鳴では、管内に\(n\)個の節ができます(模範解答 図c)。
管長\(l\)は、以下の部分の長さの和で構成されます。

  • 管口(腹)から、最も管口に近い節までの距離: \(\displaystyle\frac{\lambda_n}{4}\)
  • 残りの\((n-1)\)個の「節と節の間」の距離の合計。節と節の間隔は\(\displaystyle\frac{\lambda_n}{2}\)なので、合計で \((n-1) \times \displaystyle\frac{\lambda_n}{2}\)。

したがって、
$$l = \frac{\lambda_n}{4} + (n-1)\frac{\lambda_n}{2}$$

使用した物理公式

  • 定在波の腹と節の間隔
計算過程

上の式を\(\lambda_n\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{\lambda_n}{4} + \frac{2(n-1)\lambda_n}{4} \\[2.0ex]&= \frac{1 + 2n – 2}{4} \lambda_n \\[2.0ex]&= \frac{2n-1}{4} \lambda_n
\end{aligned}
$$
これを\(\lambda_n\)について解くと、
$$\lambda_n = \frac{4l}{2n-1}$$

計算方法の平易な説明

n回目の共鳴のときの管の中の波の様子を考えます。管の長さ\(l\)は、「口から最初の節までの長さ」と「節から次の節までの長さ」をたくさん足し合わせたものになります。口から最初の節までは波長の1/4、節から節までは波長の半分です。この関係を数式にして、波長を計算します。

結論と吟味

波長は \(\lambda_n = \displaystyle\frac{4l}{2n-1}\) です。\(n=1\)を代入すると\(\lambda_1=4l\)、\(n=2\)を代入すると\(\lambda_2=4l/3\)となり、基本振動、3倍振動の波長と一致します。一般式として妥当です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{4l}{2n-1}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
\(n\)回目の共鳴が起こるときの振動数\(f_n\)を求めます。
波の基本公式 \(V=f_n \lambda_n\) と、(3)で求めた波長\(\lambda_n\)の関係式を使います。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本公式と、前の設問で得られた結果を組み合わせて計算できること。

具体的な解説と立式
波の基本公式 \(V=f_n \lambda_n\) を\(f_n\)について解くと、
$$f_n = \frac{V}{\lambda_n}$$
この式に、(3)で求めた \(\lambda_n = \displaystyle\frac{4l}{2n-1}\) を代入します。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V=f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_n &= \frac{V}{\frac{4l}{2n-1}} \\[2.0ex]&= \frac{(2n-1)V}{4l}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

振動数は「速さ÷波長」で計算できます。音の速さ\(V\)は一定で、n回目の共鳴のときの波長は(3)で計算しました。これらの値を公式に当てはめて、振動数を計算します。

結論と吟味

振動数は \(f_n = \displaystyle\frac{(2n-1)V}{4l}\) です。これは基本振動数 \(f_1 = V/(4l)\) の \((2n-1)\)倍、つまり奇数倍になっていることを示しており、閉管の共鳴の性質と一致します。妥当な結果です。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{(2n-1)V}{4l}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
「密度変化が最大になる場所」が、定在波の「変位の節」であることを理解することが鍵です。
\(n\)回目の共鳴において、管口から最も近い節の位置を求めます。
閉管では、管口(開口端)は変位の「腹」になります。定在波において、腹から最も近い節までの距離は、波長の1/4 (\(\lambda/4\)) です。
(3)で求めた\(n\)回目の共鳴の波長\(\lambda_n\)を用いて、この距離を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 「密度変化が最大」=「変位の節」という物理的な意味の読み替えができること。
  • 定在波の腹から隣の節までの距離が\(\lambda/4\)であることを知っていること。

具体的な解説と立式
密度変化が最大になる場所は、媒質の変位が0になる「節」です。
管口は変位の「腹」なので、求める場所は、管口の腹から最も近い節までの位置です。
腹と節の間の距離は、そのときの波長\(\lambda_n\)の1/4です。
よって、求める距離を\(x_{\text{節}}\)とすると、
$$x_{\text{節}} = \frac{\lambda_n}{4}$$
この式に、(3)で求めた \(\lambda_n = \displaystyle\frac{4l}{2n-1}\) を代入します。

使用した物理公式

  • 密度変化と変位の節の関係
  • 定在波の腹と節の間隔: \(\lambda/4\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
x_{\text{節}} &= \frac{1}{4} \lambda_n \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} \left( \frac{4l}{2n-1} \right) \\[2.0ex]&= \frac{l}{2n-1}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

音波で「密度が最も変化する場所」とは、空気が動けない「節」のことです。管の口は空気が一番動ける「腹」なので、そこから一番近い「節」までの距離を求めます。定在波では、腹と節の間の距離は波長の4分の1であるというルールがあります。このルールと(3)で計算した波長を使って、距離を計算します。

結論と吟味

距離は \(\displaystyle\frac{l}{2n-1}\) です。\(n=1\)のとき、距離は\(l\)となり、ピストンの位置(唯一の節)と一致します。\(n=2\)のとき、距離は\(l/3\)となり、管を3等分した最初の節の位置と一致します。物理的なイメージと合っており、妥当です。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{l}{2n-1}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
今度は、振動数を固定して、ピストンを動かして管長を変化させます。
固定する振動数は、(4)で\(n=2\)としたときの振動数\(f_2\)です。
$$f_2 = \frac{(2 \cdot 2 – 1)V}{4l} = \frac{3V}{4l}$$
この振動数の音波(波長 \(\lambda_2 = V/f_2 = 4l/3\))を使いながら、ピストンを管口(\(l’=0\))から動かしていきます。
最初に共鳴が起こるのは、管長\(l’\)が基本振動の条件を満たすときです。
基本振動の条件は、管長が波長の1/4になることなので、\(l’ = \lambda_2/4\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 問題の状況設定(何を固定し、何を変化させるか)を正しく読み取ること。
  • 波長は音源の振動数と媒質の音速で決まるため、一度振動数を固定すれば、波長も一定になることを理解すること。

具体的な解説と立式
固定した振動数は\(f_2\)です。このときの音波の波長を\(\lambda_2\)とすると、(3)より、
$$\lambda_2 = \frac{4l}{2 \cdot 2 – 1} = \frac{4l}{3}$$
この波長の音波を使い、管長を\(l’=0\)から長くしていきます。
最初に共鳴が起こるのは、管長\(l’\)が基本振動の条件を満たすときです。
$$l’ = \frac{\lambda_2}{4}$$

使用した物理公式

  • 閉管の基本振動の条件: \(l’ = \lambda/4\)
計算過程

上の式に\(\lambda_2\)の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
l’ &= \frac{1}{4} \lambda_2 \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} \left( \frac{4l}{3} \right) \\[2.0ex]&= \frac{l}{3}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

今度は、音の高さ(振動数)は変えずに、管の長さを変えて共鳴する場所を探します。使う音の波長は、もとの管の長さ\(l\)で2回目の共鳴が起きたときの波長です。管をゼロから伸ばしていって、最初に共鳴するのは、管の長さがその波長のちょうど4分の1になったときです。

結論と吟味

距離は \(l/3\) です。元の状態(\(n=2\))では、\(l = 3\lambda_2/4\) で共鳴していました。管長を短くしていくと、次に共鳴するのは \(l’ = \lambda_2/4\) のときであり、これは \(l\) の1/3です。物理的に正しい結果です。

解答 (6) \(\displaystyle\frac{l}{3}\)

問(7)

思考の道筋とポイント
(6)の状態、つまり管長が \(l’ = l/3\) で、振動数が \(f_2 = 3V/(4l)\) の基本振動が起きている状態から、振動数をゆっくりと大きくしていきます。
管長が\(l’\)で固定されているので、次に共鳴が起こるのは、3倍振動の条件を満たすときです。
閉管の3倍振動の振動数\(f’\)は、基本振動の振動数の3倍です。
(6)の状態での基本振動数は\(f_2\)なので、求める振動数\(f’\)は\(3f_2\)となります。

この設問における重要なポイント

  • 閉管では、基本振動の次は3倍振動、その次は5倍振動と、奇数倍の振動しか起こらないことを理解していること。

具体的な解説と立式
(6)の状態で共鳴しているのは、管長\(l’ = l/3\)における基本振動です。このときの振動数は、
$$f_{\text{基本}} = \frac{V}{4l’} = \frac{V}{4(l/3)} = \frac{3V}{4l}$$
これは、問題で固定した振動数\(f_2\)と一致しており、整合性がとれています。
この状態から振動数を大きくしていくと、次に共鳴が起こるのは、管長\(l’\)における3倍振動です。
3倍振動の振動数\(f’\)は、その管長での基本振動の振動数の3倍なので、
$$f’ = 3 \times f_{\text{基本}} = 3 f_2$$

使用した物理公式

  • 閉管のn倍振動: \(f_n = n \times f_1\) (nは奇数)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f’ &= 3 f_2 \\[2.0ex]&= 3 \left( \frac{3V}{4l} \right) \\[2.0ex]&= \frac{9V}{4l}
\end{aligned}
$$
別解: 波長の条件から求める
思考の道筋とポイント
管長\(l’ = l/3\)を固定したまま、振動数\(f\)を大きくするということは、波長\(\lambda = V/f\)を短くしていくということです。
(6)の状態(基本振動)では、\(l’ = \lambda_2/4\) が成り立っていました。
次に共鳴が起こるのは、管長\(l’\)の中に定在波の腹と節がもう一組入る、3倍振動の状態です。このときの波長を\(\lambda’\)とすると、管長\(l’\)と波長\(\lambda’\)の関係は \(l’ = 3\lambda’/4\) となります。
この関係式から新しい波長\(\lambda’\)を求め、波の基本式 \(f’ = V/\lambda’\) を使って振動数\(f’\)を計算します。

具体的な解説と立式
管長は \(l’ = l/3\) で固定されています。
次に共鳴が起こる3倍振動の状態では、管長\(l’\)が新しい波長\(\lambda’\)の3/4に等しくなります。
$$l’ = \frac{3}{4}\lambda’$$
この式を\(\lambda’\)について解き、波の基本式 \(f’ = V/\lambda’\) に代入します。

計算過程

まず、新しい波長\(\lambda’\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda’ &= \frac{4}{3}l’ \\[2.0ex]&= \frac{4}{3} \left( \frac{l}{3} \right) \\[2.0ex]&= \frac{4l}{9}
\end{aligned}
$$
次に、この\(\lambda’\)を使って振動数\(f’\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{V}{\lambda’} \\[2.0ex]&= \frac{V}{4l/9} \\[2.0ex]&= \frac{9V}{4l}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(6)で見つけた長さ\(l/3\)の管で、もっと高い音で共鳴させることを考えます。閉じた管の場合、共鳴する音の高さは、基本の高さの1倍、3倍、5倍、…と「奇数倍」になります。(6)の状態が「1倍」の基本の共鳴なので、次に共鳴するのは「3倍」の高さの音です。

結論と吟味

振動数は \(\displaystyle\frac{9V}{4l}\) です。これは、管長\(l’=l/3\)における3倍振動の振動数であり、物理的に正しいです。別解でも同じ結果が得られ、妥当性が確認できました。

解答 (7) \(\displaystyle\frac{9V}{4l}\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 気柱の境界条件と共鳴:
    • 核心: 気柱の共鳴は、管の境界条件(開口端か閉口端か)によって決まる特定の波長の定在波だけが安定して存在できる現象です。この問題の「閉管」では、「開口端が腹、閉口端が節」という条件が全てを支配します。
    • 理解のポイント: この境界条件から、管長\(l\)と波長\(\lambda\)の関係式 \(l = (2n-1)\lambda/4\) が導かれます。これにより、振動数は基本振動数の奇数倍 (\(f_n = (2n-1)f_1\)) になるという、閉管の最も重要な性質が明らかになります。
  • 変位と圧力の位相関係(節と腹の対応):
    • 核心: 音波のような縦波では、媒質の「変位」と「圧力(密度)」の定在波は、節と腹の位置が互いに入れ替わります。
    • 理解のポイント:
      • 変位の腹(媒質が最も大きく動く) \(\Leftrightarrow\) **圧力変化の節**(圧力は常に大気圧)。
      • 変位の節(媒質が動かない) \(\Leftrightarrow\) **圧力変化の腹**(圧力変化が最大)。

      (5)の「密度変化が最大になる場所」という問いは、この関係を理解しているかを試すものであり、「変位の節」の位置を答えさせる問題です。

  • 波の基本式の普遍性:
    • 核心: どのような複雑な状況でも、波の速さ\(V\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の関係式 \(V=f\lambda\) は常に成り立ちます。
    • 理解のポイント: この問題では、共鳴条件から\(l\)と\(\lambda\)の関係を求め、この基本式を使って\(f\)を計算する、という流れが繰り返し使われます。物理法則の基本中の基本として、常に意識しておくべき式です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 開管の共鳴: 両端が開いている管の場合。境界条件が「両端とも腹」に変わるため、共鳴条件は \(l=n\lambda/2\) となり、基本振動数の整数倍(\(f_n=nf_1\))の振動がすべて起こります。閉管との違いを比較しながら理解することが重要です。
    • クインケ管: 音波を2つの経路に分けて干渉させる実験装置。経路差によって強め合い・弱め合いが起こるという点で、干渉の基本原理を問う問題です。
    • 開口端補正: 実際には、開口端の腹の位置は管口から少し外側にはみ出します。この「はみ出し」の距離を開口端補正\(\Delta l\)といい、計算上、管の長さを\(l+\Delta l\)として扱う必要があります。本問は補正なしですが、応用問題では頻出です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 管の境界条件を特定する: まず、問題の管が「閉管」なのか「開管」なのかを判断します。これにより、腹と節の配置の基本パターンが決まります。
    2. 操作内容を把握する: 「振動数を変える」のか「管長を変える」のかを明確にします。
      • 振動数を変える場合: 波長\(\lambda\)が変化する。共鳴は、管長\(l\)が\(\lambda\)の特定の倍数になる瞬間に起こる。
      • 管長を変える場合: 波長\(\lambda\)は一定。共鳴は、管長\(l\)が\(\lambda\)の特定の倍数になる位置で起こる。
    3. 図を描いて考える: 気柱の共鳴は、必ず管と定在波の模式図を描く習慣をつけましょう。腹と節の数を数え、管長と波長の関係を視覚的に捉えることで、立式のミスが劇的に減ります。
    4. 「密度」「圧力」「変位」の言葉の変換: 問題文で使われている言葉が、定在波の「腹」と「節」のどちらに対応するのかを正確に翻訳します。「密度変化最大」\(\rightarrow\)「変位の節」、「圧力が一定」\(\rightarrow\)「圧力変化の節」\(\rightarrow\)「変位の腹」、といった読み替えが重要です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 閉管と開管の混同:
    • 誤解: 閉管なのに、開管の共鳴条件(\(l=n\lambda/2\))を使ってしまう。あるいは、閉管で偶数倍の振動も起こると考えてしまう。
    • 対策: 「閉管は奇数倍、開管は全部」と覚えましょう。なぜそうなるのかを、腹と節の配置図を描いて納得しておくことが、記憶を定着させる鍵です。
  • 腹と節の間隔の誤解:
    • 誤解: 腹と節の間隔を\(\lambda/2\)と勘違いする。
    • 対策: 定在波の波形をサインカーブとしてイメージしましょう。腹(山/谷)と隣の節(ゼロ点)の間の距離は、波長の1/4です。腹と次の腹、節と次の節の間の距離が\(\lambda/2\)です。
  • 密度変化と変位の対応ミス:
    • 誤解: (5)で「密度変化が最大」の場所を、媒質が最も大きく動く「変位の腹」だと勘違いする。
    • 対策: 「節」の物理的イメージを固めましょう。節は媒質が動かない点ですが、その両側から媒質が押し寄せてきたり離れていったりするため、密度の変化は最も激しくなります。このイメージが重要です。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 定在波の重ね描き: 模範解答の図のように、基本振動、3倍振動、5倍振動…と、共鳴が起こるたびに腹と節のペアが1つずつ増えていく様子を図示できることが理想です。これにより、\(n\)回目の共鳴の一般式を立てるのが容易になります。
    • 腹と節のマーキング: 管の図を描いたら、開口端に「腹」、閉口端に「節」と必ず書き込みましょう。この単純な作業が、境界条件を間違えるミスを防ぎます。
    • 波長との対応付け: 描いた定在波の図に、\(\lambda/4\)や\(\lambda/2\)の長さを書き込むことで、管長\(l\)と波長\(\lambda\)の関係式を視覚的に導出できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(l = (2n-1)\lambda/4\) (閉管の共鳴条件):
    • 選定理由: 問題が「閉管の共鳴」を扱っているため。管の長さと、そこで共鳴可能な波の波長を結びつけるための根幹となる条件式です。
    • 適用根拠: 「開口端が腹、閉口端が節」という物理的な境界条件を数学的に表現したものです。この条件を満たす波長しか定在波として存在できません。
  • \(V=f\lambda\) (波の基本式):
    • 選定理由: 共鳴条件で求めた波長\(\lambda\)と、求めたい振動数\(f\)を結びつけるため。波の性質を扱う上で最も基本的な関係式です。
    • 適用根拠: 波という現象の定義そのものです。1周期(\(1/f\))の間に1波長(\(\lambda\))進む運動を表しています。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 基本振動:
    • 戦略: 閉管の基本振動の条件から波長を求め、波の基本式で振動数を計算する。
    • フロー: \(l=\lambda/4\) \(\rightarrow\) \(\lambda=4l\)。\(f=V/\lambda\) \(\rightarrow\) \(f=V/(4l)\)。
  2. (2)-(4) n回目共鳴:
    • 戦略: 図から\(n\)回目の共鳴の構造を一般化し、管長と波長の関係式を立て、振動数を求める。
    • フロー: (2)節は\(n\)個。 (3)\(l = \lambda_n/4 + (n-1)\lambda_n/2\) \(\rightarrow\) \(\lambda_n = 4l/(2n-1)\)。 (4)\(f_n = V/\lambda_n\) \(\rightarrow\) \(f_n = (2n-1)V/(4l)\)。
  3. (5) 密度変化最大の位置:
    • 戦略: 「密度変化最大」を「変位の節」と読み替え、腹からの距離を計算する。
    • フロー: 密度変化最大 \(\rightarrow\) 変位の節。管口(腹)からの距離は\(\lambda_n/4\)。\(\lambda_n\)を代入し、\(l/(2n-1)\)を求める。
  4. (6) 管長変化:
    • 戦略: 振動数(=波長)を固定し、基本振動が起こる最短の管長を求める。
    • フロー: \(f=f_2\)より\(\lambda=\lambda_2=4l/3\)。基本振動の条件 \(l’=\lambda/4\) に代入し、\(l’=(4l/3)/4 = l/3\)。
  5. (7) 振動数変化:
    • 戦略: 管長を(6)の値で固定し、次に起こる共鳴(3倍振動)の振動数を求める。
    • フロー: 管長\(l’=l/3\)での基本振動数は\(f_2\)。次の共鳴は3倍振動なので、振動数は\(3f_2\)。\(f’ = 3 \times (3V/4l) = 9V/(4l)\)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 分数の計算: この問題は\( \lambda/4 \)や\( \lambda/2 \)など、分数が多出します。通分や逆数をとる際の計算ミスに注意しましょう。特に(3)や(4)の一般式を立てる場面では慎重な計算が求められます。
  • nと(2n-1)の使い分け: 節の数や腹の数は\(n\)に比例しますが、振動数や波長の式には\((2n-1)\)という奇数を表す項が現れます。どちらの場面でどちらを使うのか、図を描いて確認する習慣が重要です。
  • パラメータの固定と変化の区別: (6)と(7)のように、途中で操作が変わる問題では、今何が一定で何が変数なのかを明確に意識することが混乱を防ぎます。「\(f\)が一定で\(l\)が変化」「\(l\)が一定で\(f\)が変化」という状況の違いを把握しましょう。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 一般式に具体的な値を代入して検算:
    • (3)で求めた波長の式 \(\lambda_n = 4l/(2n-1)\) に\(n=1\)を代入すると\(\lambda_1=4l\)。これは基本振動の条件 \(l=\lambda_1/4\) と一致します。
    • (4)で求めた振動数の式 \(f_n = (2n-1)V/(4l)\) に\(n=1\)を代入すると\(f_1=V/(4l)\)となり、(1)の結果と一致します。このように、一般式が具体的なケースと矛盾しないかを確認する作業は非常に有効です。
  • 物理的な直感との比較:
    • (4) \(n\)が大きくなるほど振動数\(f_n\)は高くなる。これは、より複雑な定在波(倍音)ほど高い音になるという楽器の性質と一致します。
    • (7) (6)の状態から振動数を上げると、次に共鳴する振動数は元の3倍になる。閉管では奇数倍の振動しか起こらないという法則と一致しています。
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