「名問の森」徹底解説(28〜30問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題28 (東工大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、基本的な電流計(検流計)を元に、より広範囲を測定できる電流計や電圧計を自作する方法と、それらを用いて未知の抵抗値を測定する際の系統誤差について考察する、電気計測の基本を深く問う問題です。

与えられた条件
  • 元の計器: 内部抵抗が \(10\,\Omega\) で、最大目盛り(フルスケール)が \(10\,\text{mA}\) の電流計が2個。
  • 目標:
    • 一方を、最大目盛り \(100\,\text{mA}\) の電流計Aとして使用する。
    • もう一方を、最大目盛り \(10\,\text{V}\) の電圧計Vとして使用する。
  • 実験: 作成した電流計Aと電圧計Vを用いて、未知の抵抗\(R\)の値を測定する。接続方法は図1と図2の2通り。
問われていること
  1. 電流計Aと電圧計Vを作るために、元の電流計にそれぞれ何Ωの抵抗を、どのように接続すればよいか。
  2. 作成した電流計Aの内部抵抗 \(r_A\) と電圧計Vの内部抵抗 \(r_V\) はいくらか。
  3. 図1、図2の○にA, Vの記号を入れ、それぞれの接続方法で測定される抵抗値 \(R_1, R_2\) と真の抵抗値 \(R\) の大小関係を不等式で表す。
  4. 図1の接続で、Aの読みが \(67\,\text{mA}\)、Vの読みが \(5.8\,\text{V}\) であった。このときの測定値 \(R_1\) と、真の抵抗値 \(R\) を求めよ。
  5. (4)と同じ抵抗を図2の接続で測定した場合、測定値 \(R_2\) はいくらになるか。
  6. 【コラム】Q. 電流計の内部抵抗が無視できる場合、また電圧計の内部抵抗が十分大きい場合、それぞれ図1と図2のどちらの接続が望ましいか。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、測定機器の原理と、それらが測定対象に与える影響(系統誤差)についての理解を問います。電流計は「分流器」、電圧計は「倍率器」という抵抗を接続して測定範囲を拡大します。また、抵抗測定の2つの接続方法は、それぞれ電流計と電圧計の内部抵抗が原因で誤差を生じさせます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念

  1. 分流器(シャント): 電流計の測定範囲を拡大するため、元の電流計に並列に接続する抵抗。余分な電流をバイパスさせる。並列接続なので電圧は等しい。
  2. 倍率器(マルチプライヤ): 電圧計の測定範囲を拡大するため、元の電流計に直列に接続する抵抗。余分な電圧を分担させる。直列接続なので電流は等しい。
  3. オームの法則: \(V=RI\)。
  4. キルヒホッフの法則:
    • 第1法則(電流則): 分岐点での電流の和。
    • 第2法則(電圧則): 閉回路での電位の関係。
  5. 合成抵抗: 並列接続 \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)、直列接続 \(R = R_1 + R_2\)。
  6. 測定の原理:
    • 電流計は測定したい部分に直列に接続する。
    • 電圧計は測定したい部分に並列に接続する。

全体的な戦略

  • (1)では、分流器と倍率器の原理に基づいて、必要な抵抗値を計算します。
  • (2)では、(1)で作成した電流計・電圧計を一つの機器と見なし、その全体の抵抗値(内部抵抗)を合成抵抗の計算で求めます。
  • (3)では、測定機器の正しい接続方法を思い出し、各接続方法でなぜ誤差が生じるのかを、電流の分岐や電圧降下に着目して定性的に考察します。
  • (4)(5)では、(2)で求めた内部抵抗の値を用いて、キルヒホッフの法則とオームの法則から具体的な数値を計算し、測定値と真の値の関係を定量的に評価します。

問 (1)

思考の道筋とポイント
電流計Aの作成:
最大\(100\,\text{mA}\)の電流を測定したいが、元の電流計(検流計)は\(10\,\text{mA}\)までしか流せません。したがって、残りの \(100 – 10 = 90\,\text{mA}\) を別の経路に流す必要があります。そのために、元の電流計に抵抗(分流器)を並列に接続します。並列接続なので、元の電流計と分流器にかかる電圧は等しくなります。
電圧計Vの作成:
最大\(10\,\text{V}\)の電圧を測定したいが、元の電流計がフルスケール(\(10\,\text{mA}\))のときに示す電圧は \(V=RI = 10\,\Omega \times 10 \times 10^{-3}\,\text{A} = 0.1\,\text{V}\) です。これでは\(10\,\text{V}\)を測定できません。そこで、元の電流計に抵抗(倍率器)を直列に接続し、大きな電圧をこの倍率器に分担させます。全体で\(10\,\text{V}\)の電圧がかかったときに、回路にフルスケール電流の\(10\,\text{mA}\)が流れるように抵抗値を決めます。

この設問における重要なポイント

  • 電流計の測定範囲拡大 \(\rightarrow\) 分流器を並列接続。
  • 電圧計の測定範囲拡大 \(\rightarrow\) 倍率器を直列接続。
  • 並列接続では電圧が等しい。
  • 直列接続では電流が等しい。

具体的な解説と立式
元の電流計を \(A_0\) とします。\(A_0\) の内部抵抗は \(r_0 = 10\,\Omega\)、最大目盛り電流は \(I_0 = 10\,\text{mA}\) です。
電流計A (最大 \(100\,\text{mA}\)) の作成
測定したい最大電流を \(I_{max} = 100\,\text{mA}\) とします。このとき、\(A_0\) には \(I_0 = 10\,\text{mA}\) が流れ、残りの電流 \(I_s = I_{max} – I_0\) が分流器(シャント抵抗)\(r_1\) に流れます。
\(A_0\) と \(r_1\) は並列接続なので、両端の電圧は等しくなります。
$$r_0 I_0 = r_1 I_s \quad \cdots ①$$

電圧計V (最大 \(10\,\text{V}\)) の作成
測定したい最大電圧を \(V_{max} = 10\,\text{V}\) とします。この電圧をかけたときに、回路に最大目盛り電流 \(I_0 = 10\,\text{mA}\) が流れるように、倍率器 \(r_2\) を \(A_0\) に直列に接続します。
回路全体の抵抗は \(r_0 + r_2\)。オームの法則より、
$$V_{max} = (r_0 + r_2) I_0 \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • オームの法則 \(V=RI\)
  • 並列接続・直列接続の性質
計算過程

分流器 \(r_1\) の計算
式①に値を代入します。分流器を流れる電流は \(I_s = 100\,\text{mA} – 10\,\text{mA} = 90\,\text{mA}\)。
$$10\,\Omega \times 10\,\text{mA} = r_1 \times 90\,\text{mA}$$
両辺の単位 [mA] は打ち消し合います。
$$100 = 90 r_1$$
$$r_1 = \frac{100}{90} = \frac{10}{9} \approx 1.11… \,\Omega$$
有効数字2桁で答えるので、\(r_1 = 1.1\,\Omega\)。
これを元の電流計に並列に接続します。

倍率器 \(r_2\) の計算
式②に値を代入します。単位をV, A, Ωに揃えます。
\(I_0 = 10\,\text{mA} = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{A}\)。
$$10\,\text{V} = (10\,\Omega + r_2) \times (1.0 \times 10^{-2}\,\text{A})$$
両辺を \(1.0 \times 10^{-2}\) で割ると、
$$\frac{10}{1.0 \times 10^{-2}} = 10 + r_2$$
$$1000 = 10 + r_2$$
$$r_2 = 990\,\Omega = 9.9 \times 10^2\,\Omega$$
これを元の電流計に直列に接続します。

計算方法の平易な説明

電流計A: 全体で100mA流れてきたとき、中の電流計には10mAしか流せないので、残りの90mAをバイパスさせるための抵抗を並列につなぎます。並列なので電圧が同じになるという条件から、\(10\Omega \times 10\text{mA} = r_1 \times 90\text{mA}\) という式を立てて、バイパス用の抵抗\(r_1\)を求めます。
電圧計V: 全体で10Vの電圧を測りたいとき、中の電流計には10mAしか流せません。オームの法則 \(V=RI\) から、回路全体の抵抗が \(10\text{V} / 10\text{mA} = 1000\Omega\) になるようにすれば良いとわかります。元の電流計の抵抗が10Ωなので、追加で \(1000-10=990\Omega\) の抵抗を直列につなぎます。

結論と吟味

電流計Aにするには、\(1.1\,\Omega\) の抵抗(分流器)を並列に接続します。
電圧計Vにするには、\(990\,\Omega\) の抵抗(倍率器)を直列に接続します。
電流計は内部抵抗を小さく、電圧計は内部抵抗を大きくするのが理想であり、分流器(小さな抵抗)を並列に、倍率器(大きな抵抗)を直列に接続するのは、その理想に合致した方法です。

解答 (1) 電流計A: \(1.1\,\Omega\)の抵抗を並列に接続。 電圧計V: \(9.9 \times 10^2\,\Omega\)の抵抗を直列に接続。

問 (2)

思考の道筋とポイント
(1)で作成した電流計Aと電圧計Vの、全体の内部抵抗 \(r_A, r_V\) を求めます。
電流計Aの内部抵抗 \(r_A\):
これは、元の電流計(内部抵抗 \(r_0=10\,\Omega\))と分流器(\(r_1=10/9\,\Omega\))を並列に接続したときの合成抵抗です。
電圧計Vの内部抵抗 \(r_V\):
これは、元の電流計(内部抵抗 \(r_0=10\,\Omega\))と倍率器(\(r_2=990\,\Omega\))を直列に接続したときの合成抵抗です。

この設問における重要なポイント

  • 並列接続の合成抵抗の公式: \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)。
  • 直列接続の合成抵抗の公式: \(R = R_1 + R_2\)。

具体的な解説と立式
電流計Aの内部抵抗 \(r_A\)
内部抵抗 \(r_0=10\,\Omega\) の電流計と、抵抗 \(r_1 = 10/9\,\Omega\) の並列合成抵抗なので、
$$\frac{1}{r_A} = \frac{1}{r_0} + \frac{1}{r_1} \quad \cdots ③$$

電圧計Vの内部抵抗 \(r_V\)
内部抵抗 \(r_0=10\,\Omega\) の電流計と、抵抗 \(r_2 = 990\,\Omega\) の直列合成抵抗なので、
$$r_V = r_0 + r_2 \quad \cdots ④$$

使用した物理公式

  • 合成抵抗(並列、直列)
計算過程

\(r_A\) の計算
式③に値を代入します。
$$\frac{1}{r_A} = \frac{1}{10} + \frac{1}{10/9} = \frac{1}{10} + \frac{9}{10} = \frac{10}{10} = 1\,\Omega^{-1}$$
$$r_A = 1.0\,\Omega$$

\(r_V\) の計算
式④に値を代入します。
$$r_V = 10\,\Omega + 990\,\Omega = 1000\,\Omega = 1.0 \times 10^3\,\Omega$$

計算方法の平易な説明

電流計A: 10Ωの抵抗と1.1Ω(正確には10/9Ω)の抵抗を並列につないだときの全体の抵抗を計算します。和分の積の公式 \(\frac{10 \times (10/9)}{10 + (10/9)}\) などを使っても良いです。
電圧計V: 10Ωの抵抗と990Ωの抵抗を直列につないだときの全体の抵抗を計算します。単純に足し合わせるだけです。

結論と吟味

電流計Aの内部抵抗は \(r_A = 1.0\,\Omega\)、電圧計Vの内部抵抗は \(r_V = 1.0 \times 10^3\,\Omega\)。
電流計の内部抵抗はできるだけ小さく(理想は0)、電圧計の内部抵抗はできるだけ大きく(理想は無限大)するのが望ましいです。今回の計算結果も、電流計の抵抗は小さく、電圧計の抵抗は大きくなっており、この原則と一致しています。

解答 (2) \(r_A = 1.0\,\Omega\), \(r_V = 1.0 \times 10^3\,\Omega\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
まず、図1と図2の○に、電流計Aと電圧計Vのどちらが入るかを考えます。電流計は回路に直列に、電圧計は並列に接続するのが基本です。
次に、それぞれの接続方法で測定した抵抗値 \(R_1, R_2\) と、真の抵抗値 \(R\) の大小関係を比較します。これは、測定器の内部抵抗が測定に与える影響(系統誤差)を考える問題です。

図1の解析: 電圧計Vが抵抗Rに並列に、電流計Aがその合成抵抗に直列に接続されています。

  • 電圧計の読み \(V\) は、Rにかかる電圧を正しく測定しています。
  • 電流計の読み \(I\) は、Rを流れる電流 \(I_R\) と電圧計を流れる電流 \(I_V\) の和 (\(I = I_R + I_V\)) を測定しています。
  • したがって、測定値 \(R_1 = V/I\) は、真の値 \(R = V/I_R\) より分母が大きくなるため、小さくなります。

図2の解析: 電流計Aが抵抗Rに直列に、電圧計Vがその合成抵抗に並列に接続されています。

  • 電流計の読み \(I\) は、Rを流れる電流を正しく測定しています。
  • 電圧計の読み \(V\) は、Rにかかる電圧 \(V_R\) と電流計にかかる電圧 \(V_A\) の和 (\(V = V_R + V_A\)) を測定しています。
  • したがって、測定値 \(R_2 = V/I\) は、真の値 \(R = V_R/I\) より分子が大きくなるため、大きくなります。

この設問における重要なポイント

  • 電流計は直列に、電圧計は並列に接続する。
  • 測定器自身の内部抵抗が、測定対象の回路の電流や電圧の分布に影響を与える。
  • 図1では電流の測定値に、図2では電圧の測定値に誤差が含まれる。

具体的な解説と立式
計器の記号:
電流計は測定対象と直列に接続し、電圧計は並列に接続します。

  • 図1: 回路に直列に入っているのがA、Rと並列なのがV。
  • 図2: Rと直列に入っているのがA、RとAの直列全体と並列なのがV。

大小関係:

  • 図1の場合:
    測定値 \(R_1 = \displaystyle\frac{V}{I}\)。真の値 \(R = \displaystyle\frac{V}{I_R}\)。
    キルヒホッフの電流則より \(I = I_R + I_V\)。\(I_V > 0\) なので \(I > I_R\)。
    よって、
    $$R_1 < R$$
  • 図2の場合:
    測定値 \(R_2 = \displaystyle\frac{V}{I}\)。真の値 \(R = \displaystyle\frac{V_R}{I}\)。
    キルヒホッフの電圧則より \(V = V_R + V_A\)。\(V_A > 0\) なので \(V > V_R\)。
    よって、
    $$R_2 > R$$

以上をまとめると、\(R_1 < R < R_2\) となります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの法則(電流則、電圧則)
  • オームの法則 \(R=V/I\)
計算過程

この設問は定性的な比較なので、具体的な計算過程はありません。上記の論理的な導出が全てです。

計算方法の平易な説明

図1: 電圧は正しく測れますが、電流計は「Rに流れる電流」と「電圧計自身に流れ込む電流」の両方を測ってしまいます。そのため、実際の電流より大きな値を指示してしまい、\(R=V/I\) で計算すると、分母が大きすぎるので真の値より小さな抵抗値が出てしまいます。
図2: 電流は正しく測れますが、電圧計は「Rにかかる電圧」と「電流計にかかる電圧」の両方を測ってしまいます。そのため、実際の電圧より大きな値を指示してしまい、\(R=V/I\) で計算すると、分子が大きすぎるので真の値より大きな抵抗値が出てしまいます。
よって、\(R_1\) < (真の値R) < \(R_2\) となります。

結論と吟味

図1、図2ともに、直列に接続されるのが電流計A、並列に接続されるのが電圧計Vです。
大小関係は \(R_1 < R < R_2\) となります。

解答 (3) 図1: 直列がA, 並列がV。 図2: 直列がA, 並列がV。 大小関係: \(R_1 < R < R_2\)

問 (4)

思考の道筋とポイント
図1の接続で、Aの読み \(I = 67\,\text{mA}\)、Vの読み \(V = 5.8\,\text{V}\) が与えられています。
まず、測定値 \(R_1\) は、これらの読みの比で単純に計算できます。
次に、真の抵抗値 \(R\) を求めます。そのためには、真にRを流れる電流 \(I_R\) を求める必要があります。
(3)の解析の通り、電流計が測定した電流 \(I\) は、抵抗Rを流れる \(I_R\) と電圧計Vを流れる \(I_V\) の和です。
電圧計を流れる電流 \(I_V\) は、電圧計の読み \(V\) と電圧計の内部抵抗 \(r_V\)(問(2)で計算済み)から、オームの法則で計算できます。
\(I = I_R + I_V\) の関係から \(I_R\) を求め、真の抵抗値 \(R = V/I_R\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 測定値 \(R_1 = V_{\text{読み}}/I_{\text{読み}}\)。
  • キルヒホッフの電流則: \(I = I_R + I_V\)。
  • 電圧計を流れる電流: \(I_V = V/r_V\)。
  • 真の抵抗値: \(R = V/I_R\)。

具体的な解説と立式
与えられた測定値は、
電流計の読み: \(I = 67\,\text{mA} = 67 \times 10^{-3}\,\text{A}\)
電圧計の読み: \(V = 5.8\,\text{V}\)
測定値 \(R_1\) は、
$$R_1 = \frac{V}{I} \quad \cdots ⑤$$
真の抵抗値 \(R\) を求めるために、抵抗Rを流れる真の電流 \(I_R\) を求めます。
電圧計の内部抵抗は(2)より \(r_V = 1.0 \times 10^3\,\Omega\)。電圧計を流れる電流 \(I_V\) は、
$$I_V = \frac{V}{r_V} \quad \cdots ⑥$$
キルヒホッフの電流則より、
$$I_R = I – I_V \quad \cdots ⑦$$
真の抵抗値 \(R\) は、
$$R = \frac{V}{I_R} \quad \cdots ⑧$$

使用した物理公式

  • オームの法則 \(R=V/I\)
  • キルヒホッフの電流則
計算過程

まず、測定値 \(R_1\) を式⑤から計算します。
$$R_1 = \frac{5.8\,\text{V}}{67 \times 10^{-3}\,\text{A}} \approx 86.56… \,\Omega$$
有効数字2桁に丸めて \(R_1 = 87\,\Omega\)。
次に真の抵抗値 \(R\) を求めます。式⑥から \(I_V\) を計算します。
$$I_V = \frac{5.8\,\text{V}}{1.0 \times 10^3\,\Omega} = 5.8 \times 10^{-3}\,\text{A}$$
式⑦から \(I_R\) を計算します。
$$I_R = (67 \times 10^{-3}\,\text{A}) – (5.8 \times 10^{-3}\,\text{A}) = 61.2 \times 10^{-3}\,\text{A}$$
最後に式⑧から \(R\) を計算します。
$$R = \frac{5.8\,\text{V}}{61.2 \times 10^{-3}\,\text{A}} \approx 94.77… \,\Omega$$
有効数字2桁に丸めて \(R = 95\,\Omega\)。

計算方法の平易な説明
  1. 見かけの抵抗値を計算する: まずは単純に、電圧計の読みを電流計の読みで割って、見かけの抵抗値\(R_1\)を計算します。
  2. 電圧計に流れる電流を計算する: 電圧計にも内部抵抗(\(r_V\))があるので、わずかに電流が流れます。電圧計にかかっている電圧(\(V\))と内部抵抗(\(r_V\))から、オームの法則でこの「漏れ電流」\(I_V\)を計算します。
  3. 本当に抵抗Rに流れる電流を計算する: 電流計が測った全体の電流(\(I\))から、電圧計に漏れた電流(\(I_V\))を差し引けば、本当に抵抗Rだけを流れている電流\(I_R\)がわかります。
  4. 真の抵抗値を計算する: 抵抗Rにかかる電圧(\(V\))を、本当にRを流れている電流(\(I_R\))で割れば、真の抵抗値\(R\)が求まります。
結論と吟味

測定値 \(R_1\) は \(87\,\Omega\)、真の抵抗値 \(R\) は \(95\,\Omega\) です。
(3)で考察した通り、\(R_1 < R\) となっており、測定値が真の値より小さくなることが確認できました。

解答 (4) \(R_1 = 87\,\Omega\), \(R = 95\,\Omega\)

問 (5)

思考の道筋とポイント
(4)と同じ抵抗(真の値 \(R=95\,\Omega\))を図2のように接続して測定した場合の測定値 \(R_2\) を求めます。
測定値 \(R_2\) は、電圧計の読み \(V\) を電流計の読み \(I\) で割ったものです (\(R_2 = V/I\))。
図2の接続では、電流計の読み \(I\) は抵抗Rを流れる真の電流を表しています。
一方、電圧計の読み \(V\) は、抵抗Rと電流計A(内部抵抗 \(r_A\))の両方にかかる電圧の合計です。
したがって、\(V = I(R+r_A)\)。
この関係から \(R_2\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 図2の接続では、\(R_2 = V/I\)。
  • 電流計は真の電流\(I\)を測定。
  • 電圧計は \(R\) と \(r_A\) の合計の電圧 \(V=I(R+r_A)\) を測定。

具体的な解説と立式
図2の接続において、測定される抵抗値 \(R_2\) は、電圧計の読み \(V\) と電流計の読み \(I\) を用いて、
$$R_2 = \frac{V}{I}$$
ここで、電圧計は抵抗Rと電流計A(内部抵抗\(r_A\))の直列接続部分にかかる電圧を測定するので、
$$V = I(R+r_A)$$
これを \(R_2\) の式に代入すると、
$$R_2 = \frac{I(R+r_A)}{I} = R+r_A \quad \cdots ⑨$$

使用した物理公式

  • オームの法則 \(V=RI\)
計算過程

式⑨に、(4)で求めた真の抵抗値 \(R = 95\,\Omega\) と、(2)で求めた電流計の内部抵抗 \(r_A = 1.0\,\Omega\) を代入します。
$$R_2 = 95\,\Omega + 1.0\,\Omega = 96\,\Omega$$

計算方法の平易な説明

図2のつなぎ方では、電流計は抵抗Rを流れる電流を正しく測れます。しかし、電圧計は「抵抗Rの電圧」と「電流計自身の電圧」を合計したものを測ってしまいます。したがって、測定値 \(R_2 = V/I\) は、真の抵抗値 \(R\) に電流計の内部抵抗 \(r_A\) を足したもの (\(R+r_A\)) になります。

結論と吟味

測定値 \(R_2\) は \(96\,\Omega\) となります。
真の値 \(R=95\,\Omega\) と比較すると、(3)で考察した通り \(R_2 > R\) となっており、測定値が真の値より大きくなることが確認できました。

解答 (5) \(96\,\Omega\)

【コラム】Q. 電流計の内部抵抗は無視できるが、電圧計の内部抵抗が十分に大きくはない場合、図1,2のいずれの接続を選ぶべきか。また、電流計の内部抵抗がかなりあり、電圧計の内部抵抗が十分大きい場合はどうか。

思考の道筋とポイント
どちらの接続方法がより真の値に近い測定値を与えるか、という問題です。これは、測定器の内部抵抗によって生じる誤差がどちらの接続でより小さくなるかを考えることです。

  • 図1の誤差要因: 電圧計に電流 \(I_V\) が流れること。\(I_V = V/r_V\)。
  • 図2の誤差要因: 電流計に電圧 \(V_A\) がかかること。\(V_A = I r_A\)。

具体的な解説と立式
この設問は定性的な考察を求めるものです。

ケース1: 電流計の内部抵抗が無視できる場合 (\(r_A \approx 0\))
図2の測定値は \(R_2 = R+r_A\)。もし \(r_A\) が無視できるほど小さければ、\(R_2 \approx R\) となり、誤差は非常に小さくなります。
一方、図1の測定値 \(R_1\) は、\(R\) と \(r_V\) の並列合成抵抗の値に近くなります。\(r_V\) がそれほど大きくない場合、誤差は大きくなります。
よって、この場合は図2の接続を選ぶべきです。

ケース2: 電圧計の内部抵抗が十分大きい場合 (\(r_V \rightarrow \infty\))
図1の測定値 \(R_1 = \displaystyle\frac{V}{I_R+I_V}\)。もし \(r_V\) が無限大に近ければ、電圧計に流れる電流 \(I_V = V/r_V \rightarrow 0\) となり、電流計の読み \(I\) は真の電流 \(I_R\) にほぼ等しくなります。よって \(R_1 \approx V/I_R = R\) となり、誤差は非常に小さくなります。
一方、図2の測定値は \(R_2 = R+r_A\)。\(r_A\)が無視できない場合、誤差は残ります。
よって、この場合は図1の接続を選ぶべきです。

計算方法の平易な説明

誤差がより小さくなる接続方法を選びます。
ケース1: 電流計の抵抗がほぼ0の場合。図2の測定値は \(R_2 = R+r_A\) なので、\(r_A\)が0なら \(R_2=R\) となり誤差がありません。したがって図2が良いです。
ケース2: 電圧計の抵抗が非常に大きい場合。図1では、電圧計に流れ込む「漏れ電流」が誤差の原因ですが、電圧計の抵抗が大きければこの漏れ電流はほぼ0になります。すると誤差もほぼ0になります。したがって図1が良いです。

結論と吟味

電流計の内部抵抗が無視できる場合は図2を、電圧計の内部抵抗が十分に大きい場合は図1を選ぶべきです。
これは、測定したい抵抗Rの値に比べて、\(r_A\)が十分小さいか、\(r_V\)が十分大きいかという相対的な問題になります。一般的に、Rが\(r_A\)に比べて大きい場合は図1、Rが\(r_V\)に比べて小さい場合は図2が有利とされます。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 測定器の原理と構成:
    • 核心:電流計の測定範囲拡大には分流器(シャント抵抗)を並列に、電圧計の測定範囲拡大には倍率器を直列に接続する。
    • 理解のポイント:それぞれの接続方法において、なぜそのように接続するのかを電圧・電流の分配の観点から理解する。
  • 測定器の内部抵抗:
    • 核心:実際の測定器は理想的ではなく、内部抵抗を持つ。電流計は小さな内部抵抗を、電圧計は大きな内部抵抗を持つ。
    • 理解のポイント:この内部抵抗が、測定対象の回路に接続されることで、元の回路の状態を乱し、測定誤差の原因となる。
  • 抵抗測定(電流計-電圧計法)の系統誤差:
    • 核心:図1の接続方法(電圧計を抵抗に近づける)では電流計が余分な電流を測定し、図2の接続方法(電流計を抵抗に近づける)では電圧計が余分な電圧を測定する。
    • 理解のポイント:\(R_1 < R < R_2\) という大小関係がなぜ成り立つのかを、キルヒホッフの法則を用いて説明できるようにする。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 電流計・電圧計の目盛りや測定範囲に関する問題。
    • ホイートストンブリッジや電位差計など、他の電気計測に関する問題。
    • 測定誤差の補正計算や、最適な測定方法の選択を問う問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 測定器の仕様を整理する: 元の計器の内部抵抗と最大目盛り電流を正確に把握する。
    2. 測定範囲拡大の原理を適用する: 分流器なら「並列で電圧一定」、倍率器なら「直列で電流一定」の条件で方程式を立てる。
    3. 測定誤差を考える: 測定器を回路に接続した図を描き、測定器の内部抵抗を一つの抵抗と見なして回路解析を行う。
    4. 真の値と測定値の定義を明確にする: 真の値(例:\(R=V_R/I_R\))と測定値(例:\(R_1=V/I\))が、どの電圧・電流の比であるかを正確に区別する。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 分流器と倍率器の接続方法の混同:
    • 現象:電流計に直列、電圧計に並列に抵抗を接続してしまう。
    • 対策:「電流は分ける(並列)」「電圧は分担する(直列)」と、目的と接続方法をセットで覚える。
  • 内部抵抗の計算ミス:
    • 現象:並列接続の合成抵抗の計算で、逆数の和を計算した後に、もう一度逆数を取るのを忘れる。
    • 対策:並列合成抵抗の公式は \(\frac{1}{R} = …\) であることを意識し、最後に \(R=…\) の形に直すことを徹底する。
  • 測定誤差の大小関係の暗記ミス:
    • 現象:\(R_1 < R < R_2\) の関係を逆に覚えてしまう。
    • 対策:丸暗記ではなく、「図1では電流を過大に測定するから抵抗は過小評価される」「図2では電圧を過大に測定するから抵抗は過大評価される」と、理由付けと共に理解する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 電流計や電圧計を、単なる記号ではなく、内部抵抗を持つ「箱」として回路図に描き込む(模範解答の図1,2が参考になる)。
    • 電流の流れを矢印で描き、分岐点(ノード)で電流が分かれる様子(\(I = I_R + I_V\))を視覚的に表現する。
    • 電圧降下を、抵抗を通過する際の「電位の坂」としてイメージし、各点の電位を書き込んでいく。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 測定器の内部抵抗を、その測定器記号の隣に抵抗記号として明示的に描くと分かりやすい。
    • 電流の分岐やループを明確に区別して描く。
    • 電圧計がどの2点間の電位差を測っているのかを、接続線で正確に示す。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 並列部分の電圧一定 (\(r_0 I_0 = r_1 I_s\)):
    • 選定理由:分流器の設計において、元の電流計と分流器が並列接続されているため。
    • 適用根拠:並列に接続された複数の素子の両端の電位差は共通であるという回路の基本原則。
  • 直列部分の電圧の和 (\(V_{max} = (r_0 + r_2) I_0\)):
    • 選定理由:倍率器の設計において、元の電流計と倍率器が直列接続されているため。
    • 適用根拠:直列に接続された複数の素子にかかる電圧の総和が、全体の電圧に等しいというキルヒホッフの電圧則。
  • キルヒホッフの電流則 (\(I = I_R + I_V\)):
    • 選定理由:図1の回路で、電流計が測定する電流と、実際に抵抗を流れる電流の関係を明らかにするため。
    • 適用根拠:回路の任意の分岐点において、電荷は保存され、電流の流入量と流出量が等しいという基本法則。
  • キルヒホッフの電圧則 (\(V = V_R + V_A\)):
    • 選定理由:図2の回路で、電圧計が測定する電圧と、抵抗Rにかかる真の電圧の関係を明らかにするため。
    • 適用根拠:任意の閉回路において、電位の周回積分が0であるという基本法則。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 測定器の設計: 分流器・倍率器の原理に基づき、並列・直列接続の電圧・電流の関係式から必要な抵抗値を計算する。
  2. 内部抵抗の計算: 設計した測定器を一つのブラックボックスと見なし、その全体の抵抗を合成抵抗の公式で計算する。
  3. 測定回路の誤差分析: 2つの接続方法それぞれについて、測定器の内部抵抗が回路にどう影響するかを分析する。電流計は電流を、電圧計は電圧を測定することを元に、測定値が真の値からどうずれるかを定性的に導出する。
  4. 具体的な数値計算: 実際の測定値が与えられたら、キルヒホッフの法則などを用いて連立方程式を立て、未知の量(真の抵抗値など)を計算する。
  5. 異なる接続での測定値の予測: 真の抵抗値が分かれば、もう一方の接続方法でどのような測定値が得られるかを、その接続方法の誤差の式(例: \(R_2 = R+r_A\))から予測計算する。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の換算: 特に電流のmA(ミリアンペア)とA(アンペア)の換算(\(10^{-3}\)倍)を忘れないようにする。計算はSI単位系に統一するのが安全。
  • 有効数字: 問題文で指定されている有効数字(この問題では2桁)に合わせて、最終的な答えを適切に丸める。途中の計算では1桁多く保持しておくと良い。
  • 逆数の計算: 並列抵抗の合成や、オームの法則の変形などで逆数の計算が出てくる。計算ミスをしないよう慎重に行う。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 大小関係の確認: (3)で導出した \(R_1 < R < R_2\) という関係が、(4)(5)の具体的な数値計算の結果と一致しているか確認する。
  • 理想的な場合を考える: もし電流計の内部抵抗が0だったら、あるいは電圧計の内部抵抗が無限大だったら、測定誤差はどうなるかを考える。Qの問題はまさにこの視点。
  • 誤差の大きさ: どちらの接続方法がより真の値に近いか(誤差が少ないか)を考える。これは、測定したい抵抗Rと、測定器の内部抵抗\(r_A, r_V\)の大小関係に依存する。この問題では、\(R=95\Omega\)に対し、\(r_A=1\Omega\) (\(\sim1\%\)の誤差要因)、\(r_V=1000\Omega\) (\(R/r_V \sim 10\%\)の誤差要因) なので、\(r_A\)の影響の方が小さい。したがって、\(r_A\)が誤差となる図2の接続の方がより精密な測定ができると予想できる(実際に\(R_2=96\Omega\)は\(R_1=87\Omega\)より真値\(95\Omega\)に近い)。

問題29 (鳥取大+宮崎大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、乾電池の起電力(\(E\))と内部抵抗(\(r\))という、電池の重要な特性を実験的に決定するプロセスを扱っています。実験データのグラフから物理的な意味を読み解き、数値を求める基本的なスキルに加え、可変抵抗における消費電力が最大となる条件という、応用的なテーマも含まれています。

与えられた条件
  • 測定対象: 乾電池(起電力 \(E\), 内部抵抗 \(r\))。
  • 使用器具: 電流計(A)、電圧計(V)、電池、可変抵抗器(図1の記号)。
  • 測定データ: 電流 \(I\) と端子電圧 \(V\) の関係を示したグラフ(図2)。
  • 前提条件: 電圧計と電流計は理想的な計器(内部抵抗の影響を考えない)とする。数値の答は小数点以下第3位まで求める。
問われていること
  1. 起電力と内部抵抗を測定するための回路図。
  2. 端子電圧 \(V\)、起電力 \(E\)、内部抵抗 \(r\)、電流 \(I\) の間に成立する関係式。
  3. 図2のグラフから、この乾電池の起電力 \(E\) と内部抵抗 \(r\) の値を求める。
  4. 可変抵抗での消費電力が最大になるときの抵抗値とそのときの消費電力を、\(E\) と \(r\) を用いて文字式で表す。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、直流回路の基本であるオームの法則と、電池の内部抵抗の概念を深く理解しているかが問われます。特に、グラフを数式と関連付けて物理量を読み取る力は、実験考察問題で必須のスキルです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念

  1. 内部抵抗と端子電圧: 電池は理想的な起電力\(E\)の源と、内部抵抗\(r\)が直列に接続されたものとモデル化できます。電池から電流\(I\)が流れ出すとき、内部抵抗で\(rI\)の電圧降下が生じるため、電池の両端の電圧(端子電圧\(V\))は \(V = E – rI\) となります。
  2. オームの法則: 抵抗\(R\)にかかる電圧を\(V_R\)、流れる電流を\(I\)とすると、\(V_R = RI\)。
  3. グラフの解釈: 横軸を\(I\)、縦軸を\(V\)とするグラフにおいて、関係式 \(V = -rI + E\) は、傾きが\(-r\)、縦軸切片が\(E\)である直線を表します。
  4. 消費電力: 抵抗\(R\)での消費電力は \(P = IV_R = RI^2 = V_R^2/R\)。
  5. 最大・最小問題: ある変数を変化させたときの物理量の最大値を求める問題。微分を用いるか、相加・相乗平均の関係、あるいは式変形によって解くことができます。

全体的な戦略

  • (1)(2)は、電池の内部抵抗に関する基本知識を確認する問題です。
  • (3)では、(2)で立てた式と図2のグラフを関連付けます。グラフに最もよく合う直線(近似直線)を引き、その直線の切片と傾きから\(E\)と\(r\)を読み取ります。
  • (4)は、可変抵抗の抵抗値を\(R\)として、その消費電力\(P\)を\(R\)の関数として表し、\(P\)が最大になる\(R\)の条件を数学的に導き出します。

問 (1)

思考の道筋とポイント
乾電池の起電力\(E\)と内部抵抗\(r\)を測定するための回路を組みます。
目的は、回路を流れる電流\(I\)と、そのときの乾電池の端子電圧\(V\)を同時に測定することです。

  • 電流\(I\)を変化させるために、可変抵抗器を負荷として接続します。
  • 回路全体の電流を測定するため、電流計Aを回路に直列に接続します。
  • 乾電池の端子間の電位差を測定するため、電圧計Vを乾電池に並列に接続します。

また、電流計・電圧計には極性(+端子と-端子)があるため、電池の向きに合わせて正しく接続する必要があります。電流は+端子から入り-端子から出るように、電圧は+端子を高電位側に接続します。

この設問における重要なポイント

  • 電流を変化させるための可変抵抗が必要。
  • 電流計は直列に接続する。
  • 電圧計は並列に接続する。
  • 計器の極性を正しく合わせる。

具体的な解説と立式
この設問は作図問題のため、数式はありません。回路の構成を言葉で説明します。
乾電池、可変抵抗器、電流計を直列に接続して閉回路を作ります。そして、乾電池の両端(内部抵抗を含まない外側の端子)に電圧計を並列に接続します。
計器の極性は、電池の正極から電流が流れ出すので、電流計は電池の正極側が+端子、負極側が-端子になるように接続します。電圧計も同様に、電池の正極側に+端子、負極側に-端子を接続します。

計算過程

作図問題のため、計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

電池の性能を調べるための実験回路を組み立てます。

  1. まず、電池に可変抵抗をつないで電流を流します。可変抵抗の値を色々変えることで、流れる電流の大きさを調節します。
  2. 回路に流れる電流の大きさを知るために、電流計を回路の途中に「割り込ませて」(直列に)つなぎます。
  3. そのとき、電池の両端にかかっている電圧(端子電圧)を測るために、電圧計を電池に「またがせるように」(並列に)つなぎます。

これで、色々な電流値とそのときの端子電圧の組み合わせを測定することができます。

結論と吟味

(模範解答の図aまたは図bを参照し、乾電池、可変抵抗、電流計を直列に接続し、電圧計を乾電池に並列に接続する回路図を描く)
計器の極性も正しく接続することが重要です。計器が理想的なので、電流計と電圧計の接続順序(図aと図bの違い)は測定結果に影響しません。

解答 (1) 模範解答の図aまたは図bを参照し、回路図を描く。

問 (2)

思考の道筋とポイント
電池から電流\(I\)が流れ出ているときの、端子電圧\(V\)と起電力\(E\)、内部抵抗\(r\)の関係を式で表します。
電池の内部抵抗\(r\)は、電池の起電力\(E\)と直列に接続された抵抗と考えることができます。
電流\(I\)が内部抵抗\(r\)を流れると、そこで\(rI\)だけの電圧降下が生じます。
したがって、電池の端子間で観測される電圧(端子電圧\(V\))は、起電力\(E\)からこの内部での電圧降下分を差し引いたものになります。

この設問における重要なポイント

  • 電池は、理想的な起電力\(E\)と内部抵抗\(r\)の直列接続とモデル化できる。
  • 電流\(I\)が流れると、内部抵抗で\(rI\)の電圧降下が生じる。
  • 端子電圧\(V\)は、起電力\(E\)から内部電圧降下を引いたもの。

具体的な解説と立式
電池の正極から負極へ、電池の外部回路と内部を通る電位の変化を考えます。
電池の負極の電位を基準(0)とすると、正極の電位は\(V\)です(これが端子電圧)。
電池の内部では、起電力\(E\)によって電位が\(E\)だけ上昇しますが、内部抵抗\(r\)を電流\(I\)が流れることで\(rI\)だけ電位が降下します。
したがって、負極から正極への電位差(端子電圧\(V\))は、
$$V = E – rI \quad \cdots ①$$
これが求める関係式です。

使用した物理公式

  • 内部抵抗による電圧降下
計算過程

この設問は関係式を示すものなので、これ以上の計算はありません。

計算方法の平易な説明

電池が持っている本来の力(起電力\(E\))で電気を送り出そうとしても、電池自身の中に小さな抵抗(内部抵抗\(r\))があるため、そこで少しだけ電圧がロスしてしまいます。このロスが\(rI\)です。その結果、電池の外側に出てくる電圧(端子電圧\(V\))は、本来の力\(E\)からロス分\(rI\)を引いたもの、つまり \(V = E – rI\) となります。

結論と吟味

関係式は \(V = E – rI\) です。この式は、流れる電流\(I\)が大きくなるほど、端子電圧\(V\)が小さくなる直線関係を示しており、図2のグラフの傾向と一致します。

解答 (2) \(V = E – rI\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
問(2)で導いた関係式 \(V = -rI + E\) と、図2のグラフを用いて、起電力\(E\)と内部抵抗\(r\)の値を求めます。
この関係式は、縦軸に\(V\)、横軸に\(I\)をとると、傾きが\(-r\)、縦軸切片が\(E\)の直線を表します。
実験データには誤差が含まれているため、グラフ上の各点に最もよく当てはまる直線(近似直線)を引きます。
起電力E: グラフの縦軸切片(\(I=0\)のときの\(V\))が\(E\)に相当します。近似直線を\(I=0\)の軸まで延長して、その値を読み取ります。
内部抵抗r: グラフの傾きが\(-r\)に相当します。近似直線の傾きを、グラフから読み取れる2点を使って計算し、その絶対値をとることで\(r\)を求めます。傾きを正確に求めるためには、なるべく離れた2点をとるのが良いです。

この設問における重要なポイント

  • \(V-I\)グラフにおいて、縦軸切片が起電力\(E\)、傾きの絶対値が内部抵抗\(r\)を表す。
  • 実験データから近似直線を引き、グラフの切片と傾きを読み取る。
  • 単位に注意する(電流はmA)。

具体的な解説と立式
関係式 \(V = -rI + E\) より、
起電力 \(E\) は、\(I=0\) のときの \(V\) の値、すなわちV-Iグラフの縦軸切片です。
内部抵抗 \(r\) は、グラフの傾きの絶対値です。
$$r = -(\text{グラフの傾き}) = -\frac{\Delta V}{\Delta I} \quad \cdots ②$$
グラフから近似直線を引いて、これらの値を読み取ります。
模範解答では、近似直線が点(\(0\,\text{mA}, 1.635\,\text{V}\))と点(\(120\,\text{mA}, 1.590\,\text{V}\))を通るとして計算しています。
したがって、
$$E = 1.635 \, (\text{切片から})$$
$$r = -\frac{1.590\,\text{V} – 1.635\,\text{V}}{(120\times 10^{-3}\,\text{A} – 0\,\text{A})}$$

使用した物理公式

  • \(V = -rI + E\) のグラフ的解釈
計算過程

起電力Eの導出
グラフのプロット点に最もフィットする直線を引きます(模範解答の図を参照)。その直線が縦軸(\(I=0\))と交わる点を読み取ると、
$$E \approx 1.635 \text{ V}$$

内部抵抗rの導出
式②を用いて、近似直線上の2点、(\(0\,\text{A}, 1.635\,\text{V}\)) と (\(120 \times 10^{-3}\,\text{A}, 1.590\,\text{V}\)) から傾きを計算します。
$$r = -\frac{1.590 – 1.635}{120 \times 10^{-3} – 0} = -\frac{-0.045}{0.120} = \frac{45}{120} = \frac{3}{8} = 0.375\,\Omega$$

計算方法の平易な説明
  1. グラフに直線を引く: 図2の点々はおそらく実験データなので、ばらつきがあります。これらの点の真ん中を通るような「最もそれらしい」直線を定規で引きます。
  2. 起電力Eを読み取る: 引いた直線が縦軸(電流が0の線)と交わるところの電圧を読み取ります。これが起電力\(E\)です。大体1.635Vあたりになります。
  3. 内部抵抗rを計算する: 直線の「傾き」が内部抵抗\(r\)のマイナス(-)を付けたものになります。グラフから2点を選んで「縦の変化量÷横の変化量」で傾きを計算し、マイナスを取れば\(r\)が求まります。
結論と吟味

起電力 \(E = 1.635\,\text{V}\)、内部抵抗 \(r = 0.375\,\Omega\)。
実験データから物理量を決定する基本的な手法です。近似直線の引き方によって多少の誤差は生じますが、全体の傾向から求めることが重要です。

解答 (3) 起電力: \(1.635\,\text{V}\), 内部抵抗: \(0.375\,\Omega\)

問 (4)

思考の道筋とポイント
可変抵抗での消費電力が最大になるときの抵抗値とそのときの消費電力を求めます。
可変抵抗の抵抗値を \(R\) とします。このとき、回路を流れる電流 \(I\) は \(I = \displaystyle\frac{E}{R+r}\) です。
可変抵抗での消費電力 \(P\) は \(P = RI^2\) で与えられます。
この \(P\) を \(R\) の関数として表し、\(P\) が最大となる \(R\) の値を求めます。
これは数学的な最大・最小問題に帰着します。微分を用いる方法や、相加・相乗平均の関係を用いる方法、あるいは代数的な式変形によって分母を最小化する方法があります。

この設問における重要なポイント

  • 消費電力 \(P\) を、変化させる変数 \(R\) の関数として表す。
  • 関数の最大値を求める数学的な手法を用いる。
  • 外部抵抗での消費電力が最大になるのは、外部抵抗と内部抵抗が等しいとき (\(R=r\)) という有名な結果を導出する。

具体的な解説と立式
可変抵抗の抵抗値を \(R\) とすると、回路を流れる電流 \(I\) は、
$$I = \frac{E}{R+r}$$
可変抵抗での消費電力 \(P\) は、
$$P = RI^2 \quad \cdots ③$$
この \(P\) が最大となる \(R\) の値を求めます。
式③に \(I\) を代入して \(P\) を \(R\) の関数で表します。
$$P(R) = R \left(\frac{E}{R+r}\right)^2 = \frac{RE^2}{(R+r)^2}$$
この関数が最大となる条件を求めます。分母分子を \(R\) で割ると、
$$P(R) = \frac{E^2}{\frac{(R+r)^2}{R}} = \frac{E^2}{R+2r+\frac{r^2}{R}}$$
\(P(R)\) が最大になるのは、分母の \(f(R) = R+2r+\frac{r^2}{R}\) が最小になるときです。
分母のうち、\(R+\frac{r^2}{R}\) の部分が \(R\) によって変化します。この部分が最小になる条件を探します。

使用した物理公式

  • 消費電力: \(P = RI^2\)
  • オームの法則: \(I = E/(R+r)\)
計算過程

分母の \(f(R) = R + 2r + \frac{r^2}{R}\) を最小化します。
\(R+\frac{r^2}{R}\)の部分を変形すると、
$$R+\frac{r^2}{R} = \left(\sqrt{R}\right)^2 – 2\sqrt{R}\frac{r}{\sqrt{R}} + \left(\frac{r}{\sqrt{R}}\right)^2 + 2r = \left(\sqrt{R} – \frac{r}{\sqrt{R}}\right)^2 + 2r$$
したがって、分母は
$$f(R) = \left(\sqrt{R} – \frac{r}{\sqrt{R}}\right)^2 + 4r$$
この式で、\( \left(\sqrt{R} – \frac{r}{\sqrt{R}}\right)^2 \) は2乗なので常に0以上です。分母 \(f(R)\) が最小になるのは、この2乗の項が0になるときです。
$$\sqrt{R} – \frac{r}{\sqrt{R}} = 0$$
$$\sqrt{R} = \frac{r}{\sqrt{R}}$$
$$R = r$$
このとき、分母の最小値は \(0 + 4r = 4r\)。
したがって、消費電力の最大値 \(P_{max}\) は、
$$P_{max} = \frac{E^2}{4r}$$

別解: 相加・相乗平均の関係を用いた方法
\(R>0, r^2/R>0\) なので、相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$R + \frac{r^2}{R} \ge 2\sqrt{R \cdot \frac{r^2}{R}} = 2r$$
等号成立(最小値をとる)のは \(R = \displaystyle\frac{r^2}{R}\) すなわち \(R^2=r^2\)、\(R=r\) のときです。
したがって、分母 \(R+2r+\frac{r^2}{R}\) の最小値は \(2r+2r = 4r\)。このときPは最大値 \(\frac{E^2}{4r}\) をとります。

計算方法の平易な説明
  1. 消費電力の式を立てる: 可変抵抗の抵抗値を \(R\) として、そこで消費される電力 \(P\) を \(R\) の式で表します。
  2. 式を分析する: \(P\) が最大になる条件を探します。式を変形すると、分母に \(R+\frac{r^2}{R}\) という形が出てきます。この部分が一番小さくなれば、電力 \(P\) は一番大きくなります。
  3. 最小値を求める: 数学のテクニック(相加・相乗平均の関係や平方完成など)を使うと、\(R\) と内部抵抗 \(r\) が同じ値のとき (\(R=r\)) に、分母が最小になることがわかります。
  4. 最大電力を計算する: \(R=r\) を元の電力の式に代入して、そのときの最大電力 \(P_{max}\) を計算します。
結論と吟味

可変抵抗での消費電力が最大になるときの抵抗値は \(R=r\)、そのときの最大消費電力は \(P_{max} = \displaystyle\frac{E^2}{4r}\) です。
これは、電源から外部の抵抗へ最も効率よく電力を供給する条件として知られており、整合性の取れた重要な結果です。

解答 (4) 抵抗値: \(r\), 消費電力: \(\displaystyle\frac{E^2}{4r}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 内部抵抗と端子電圧:
    • 核心:電池は理想的な起電力の源 \(E\) と内部抵抗 \(r\) の直列接続と見なせる。電流 \(I\) を供給しているとき、端子電圧 \(V\) は \(V = E – rI\) となり、起電力より低くなる。
    • 理解のポイント:この一次関数の関係式が、電池の基本的な特性を表している。
  • V-I特性グラフの物理的意味:
    • 核心:電池の端子電圧-電流グラフ(V-Iグラフ)は、\(V = -rI + E\) の関係から、傾きが \(-r\)、V軸切片が \(E\) の直線となる。
    • 理解のポイント:グラフの切片と傾きという幾何学的な特徴が、起電力と内部抵抗という物理量に直接対応していることを理解する。
  • 外部抵抗での最大消費電力:
    • 核心:ある電源に接続された外部抵抗で消費される電力が最大になるのは、その外部抵抗の値が電源の内部抵抗の値と等しくなったとき (\(R=r\)) である。
    • 理解のポイント:これは単なる公式ではなく、電力の式を立てて数学的に最大値を求めることで導出される重要な結果。インピーダンスマッチングの基礎となる考え方。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 実験データ(グラフや表)から、物理法則を見出し、物理定数を決定する問題。
    • ダイオードや電球など、非線形抵抗の特性グラフを扱う問題の基礎。
    • 電力の送電効率など、エネルギー伝達の効率を問う問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. グラフの軸を確認する: 縦軸と横軸がそれぞれどの物理量を表しているか、単位は何かを最初に確認する。
    2. グラフと数式の関係を考える: グラフの形(直線、曲線など)を見て、それがどのような数式で表されるかを考える。特に直線の場合、切片と傾きが何に対応するかを考察する。
    3. データ点への近似直線を引く: 実験データはばらつくものなので、個々の点に惑わされず、全体の傾向を代表するような直線を引いて考える。
    4. 最大・最小問題: 「〜が最大になるとき」と問われたら、その物理量を変化する変数(この場合は\(R\))の関数として表し、数学的な最大値問題を解く準備をする。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 起電力と端子電圧の混同:
    • 現象:電池の電圧は常に一定(\(E\))であると誤解し、内部抵抗による電圧降下を無視してしまう。
    • 対策:「起電力」は電池が持つ能力の最大値、「端子電圧」は実際に外部に取り出せる電圧で、電流によって変化すると区別する。
  • グラフの読み取りミス:
    • 現象:単位(特にmAなど)を見落とす、切片や傾きを計算する際にグラフ上の読みやすい点を選ばず、誤差の大きい計算をしてしまう。
    • 対策:グラフを読む前に必ず軸のラベルと単位を確認する。傾きを計算するときは、なるべく離れた2点を直線上でとることで、読み取り誤差の影響を小さくする。
  • 最大消費電力の条件の誤解:
    • 現象:\(R\)が小さいほど電流が大きくなるので、\(R=0\)で電力が最大になると勘違いする。あるいは\(R\)が大きいほど電圧が大きくなるので、\(R \to \infty\) で最大になると勘違いする。
    • 対策:電力 \(P=RI^2\) は \(R\) と \(I^2\) の積であり、\(R\) が大きくなると \(I\) は小さくなるトレードオフの関係にあることを理解する。そのため、中間のどこかに最大値が存在することを認識し、数式で確認する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 電池を、理想的な水源(高さE)と、途中にある水の流れを妨げる障害物(内部抵抗r)のセットとしてイメージする。たくさん水を流そうとすると(大電流)、障害物での水位のロス(電圧降下)が大きくなる。
    • V-Iグラフを描き、その切片が「電流0、つまり電池を全く使っていないときの、ありのままの起電力E」を、傾きが「電流を流すごとにどれだけ電圧が下がっていくかの割合r」を表していると視覚的に理解する。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 内部抵抗\(r\)を、電池の記号と直列に接続された抵抗として明示的に描き出すと、回路方程式が立てやすくなる。
    • グラフを扱う際は、近似直線を丁寧に引くことが、正確な値を得るための第一歩となる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V = E – rI\) (端子電圧の式):
    • 選定理由:内部抵抗を持つ電池の外部に取り出せる電圧を表す、最も基本的な関係式だから。
    • 適用根拠:キルヒホッフの第2法則を、電池と外部抵抗からなる最も単純な閉回路に適用した結果。
  • \(P = RI^2\) (消費電力):
    • 選定理由:抵抗で消費される電力を計算するための公式。
    • 適用根拠:ジュール熱の発生率の定義から導かれる。\(I\)が\(R\)の関数であるため、\(P\)を\(R\)の関数として分析するのに適している。\(P=V^2/R\)なども使えるが、変数が多くなりがち。
  • 相加・相乗平均の関係(または微分):
    • 選定理由:\(R\)の関数である消費電力\(P(R)\)の最大値を求めるための数学的な道具。
    • 適用根拠:関数の形が、これらの数学的手法を適用するのに適した形に変形できるため。物理現象の考察が、数学的な問題解決に帰着する典型例。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 回路の基本関係を立式する: 電池の内部抵抗を考慮し、端子電圧と電流の関係式 \(V=E-rI\) を立てる。
  2. グラフと数式を対応させる: \(V-I\)グラフがこの一次関数に対応することから、切片\(\rightarrow E\)、傾き\(\rightarrow -r\) という関係を明確にする。
  3. グラフから物理量を読み取る: 実験データのグラフに近似直線を当てはめ、切片と傾きを読み取って\(E\)と\(r\)を具体的に計算する。
  4. 応用問題を数式でモデル化する: 消費電力\(P\)を、変化させる抵抗\(R\)の関数 \(P(R)\) として立式する。
  5. 数学的に最大値を求める: \(P(R)\)の式を分析し、最大値を与える条件(\(R=r\))と最大値を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の換算: グラフの電流がmA(ミリアンペア)で与えられているので、計算時にはA(アンペア)に換算する(\(10^{-3}\)倍)ことを忘れない。
  • グラフの傾きの計算: 傾きは「yの増加量 / xの増加量」。グラフから2点を読み取るとき、座標の引き算の順序を間違えないように注意する。また、傾きの符号が物理量(この場合は\(-r\))とどう対応しているかを確認する。
  • 有効数字: 問題文で指定された有効数字(小数点以下第3位)に合わせて答えを記述する。途中計算では少し多めの桁数を保持すると誤差が蓄積しにくい。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理量のオーダー: 計算で得られた起電力(約1.5V)や内部抵抗(数Ω以下)が、乾電池の典型的な値として妥当かどうかを考える。
  • グラフとの整合性: 計算で求めた\(E\)と\(r\)を使って直線の式を再現し、それが図2のデータ点と大きくずれていないかを目で確認する。
  • 最大電力の条件の一般性: 「外部抵抗=内部抵抗」で消費電力が最大になるという結果は、電源から外部へエネルギーを最も効率よく「伝達」するための重要な条件(インピーダンスマッチング)であり、他の分野でも現れる普遍的な考え方であることを知っておくと視野が広がる。

問題30 (岩手大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、抵抗線や未知の抵抗で構成されたホイートストンブリッジ回路に関する問題です。抵抗値と抵抗率の関係、ブリッジの平衡条件、消費電力の計算など、直流回路に関する幅広い知識が問われます。特に、抵抗線の長さや断面積と抵抗値の関係、そしてブリッジ回路が平衡する(検流計に電流が流れない)条件を正しく理解し、適用できるかがポイントとなります。

与えられた条件
  • 抵抗線R(AB間): 長さ\(2.0\,\text{m}\), 断面積\(1.0\,\text{mm}^2\), 抵抗値\(120\,\Omega\)。
  • 抵抗\(R_1\)(AC間): 抵抗線Rと同じ材質の長さ\(1.0\,\text{m}\)のものを二つ折りにして作られている。
  • 抵抗\(R_2\)(BC間): 抵抗値が未知の抵抗。
  • 電流計Ⓐ: 内部抵抗\(2.0\,\Omega\)。スイッチSを介してC点と抵抗線R上を接続。
  • 電池E: 起電力\(10\,\text{V}\), 内部抵抗は無視できる。
  • 初期状態: コンデンサーは登場せず、回路は抵抗と電池、スイッチからなる。
問われていること
  1. 抵抗\(R_1\)の抵抗値と、抵抗線の材質の抵抗率。
  2. スイッチSを閉じ、電流計の振れが0になる点D₁がAから1.2mだったとき、
    • (ア) 電池を流れる電流と、\(R_2\)の抵抗値。
    • (イ) \(R_1, R_2, R_3(AD_1), R_4(BD_1)\)のうち、最も消費電力が大きいものと、その電力。
  3. \(R_1\)の構成材料である長さ2.0mの抵抗線を全て使い、断面積\(5.0\,\text{mm}^2\)の1本の抵抗線\(R_5\)に作りかえた。
    • (ア) \(R_5\)の抵抗値。
    • (イ) この\(R_5\)を\(R_1\)の代わりに接続したとき、電流計の振れが0になる点D₂のAからの距離。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題の核心は、ホイートストンブリッジの原理の理解と、抵抗値が物質の形状(長さ・断面積)と物性(抵抗率)によってどのように決まるかという点の理解です。電流計の振れが0になるという条件は、ブリッジが平衡していることを意味し、これが回路を解くための重要な手がかりとなります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念

  1. 抵抗と抵抗率: 抵抗値\(R\)は、抵抗率\(\rho\)、長さ\(l\)、断面積\(S\)を用いて \(R = \rho \frac{l}{S}\) と表される。
  2. 合成抵抗:
    • 直列接続: \(R = R_1 + R_2\)。
    • 並列接続: \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)。
  3. ホイートストンブリッジの平衡条件: ブリッジの中央の枝(この問題では電流計)に電流が流れないとき、対向する抵抗の辺の比が等しくなる。すなわち、\(\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4}\)。
  4. オームの法則: \(V=RI\)。
  5. 消費電力: \(P = VI = RI^2 = \frac{V^2}{R}\)。

全体的な戦略

  • (1)では、抵抗の基本公式\(R=\rho l/S\)と合成抵抗の考え方を使って、与えられた情報から\(R_1\)と\(\rho\)を計算します。
  • (2)では、「電流計の振れが0」という条件からホイートストンブリッジの平衡条件を適用します。これにより未知の抵抗\(R_2\)が求まります。その後、回路全体を流れる電流や各抵抗での消費電力を計算します。
  • (3)では、抵抗線の体積が保存されることに注意しながら、作り替えた後の抵抗線の抵抗値を計算し、再びブリッジの平衡条件を用いて新しい平衡点を見つけます。

問 (1)

思考の道筋とポイント
\(R_1\)の抵抗値:
問題文の「長さ1.0mの点で二つ折り」という表現は、長さ1.0mの抵抗線を2本用意し、それらを並列に接続したものと解釈します(模範解答もこの解釈)。
まず、元の抵抗線Rの情報から、長さ1.0mあたりの抵抗値を求めます。次に、その抵抗を持つ線が2本並列になったときの合成抵抗を計算します。

抵抗率\(\rho\):
抵抗の基本公式 \(R = \rho \frac{l}{S}\) を用います。抵抗値、長さ、断面積が分かっている抵抗(元の抵抗線Rや、作成した\(R_1\))のいずれかの情報を使って、\(\rho\)について解きます。

この設問における重要なポイント

  • 「二つ折り」を「2本の並列接続」と解釈する。
  • 抵抗値は長さに比例し、断面積に反比例する。
  • 並列接続の合成抵抗の公式を用いる。
  • 抵抗率\(\rho\)は材質で決まるので、どの部分のデータを使っても計算できる。

具体的な解説と立式
\(R_1\)の抵抗値の計算
元の抵抗線Rは長さ\(2.0\,\text{m}\)で\(120\,\Omega\)なので、長さ\(1.0\,\text{m}\)あたりの抵抗値\(R_{1m}\)は、
$$R_{1m} = 120\,\Omega \times \frac{1.0\,\text{m}}{2.0\,\text{m}} \quad \cdots ①$$
\(R_1\)は、この\(R_{1m}\)の抵抗を持つ抵抗線を2本並列に接続したものなので、その合成抵抗\(R_1\)は、
$$\frac{1}{R_1} = \frac{1}{R_{1m}} + \frac{1}{R_{1m}} = \frac{2}{R_{1m}} \quad \cdots ②$$

抵抗率\(\rho\)の計算
抵抗の公式 \(R = \rho \frac{l}{S}\) を\(\rho\)について解くと、\(\rho = \frac{RS}{l}\)。
元の抵抗線Rのデータ(\(R=120\,\Omega, l=2.0\,\text{m}, S=1.0\,\text{mm}^2\))を用いると、
$$\rho = \frac{120\,\Omega \times (1.0 \times 10^{-6}\,\text{m}^2)}{2.0\,\text{m}} \quad \cdots ③$$
(断面積の単位を\(\text{m}^2\)に換算することに注意: \(1\,\text{mm}^2 = (10^{-3}\,\text{m})^2 = 10^{-6}\,\text{m}^2\))

使用した物理公式

  • 抵抗と長さ・断面積の関係 \(R \propto l/S\)
  • 並列合成抵抗: \(\frac{1}{R_{合成}} = \sum \frac{1}{R_i}\)
  • 抵抗率の公式: \(R = \rho \frac{l}{S}\)
計算過程

まず、式①から長さ1.0mの抵抗線の抵抗値を計算します。
$$R_{1m} = 120 \times 0.5 = 60\,\Omega$$
次に、式②から\(R_1\)を計算します。
$$\frac{1}{R_1} = \frac{2}{60\,\Omega} = \frac{1}{30\,\Omega}$$
$$R_1 = 30\,\Omega$$
次に、式③から抵抗率\(\rho\)を計算します。
$$\rho = \frac{120 \times 1.0 \times 10^{-6}}{2.0} = 60 \times 10^{-6} = 6.0 \times 10^{-5}\,\Omega \cdot \text{m}$$

別解: 抵抗率の計算
思考の道筋とポイント
抵抗率\(\rho\)は材質で決まる定数なので、\(R_1\)のデータから計算することもできます。\(R_1\)は長さ\(1.0\,\text{m}\)、断面積\(1.0\,\text{mm}^2\)の抵抗線を2本並列にしたものなので、全体の断面積は\(2.0\,\text{mm}^2\)と考えることができます。

具体的な解説と立式
抵抗\(R_1\)について、\(R_1=30\,\Omega\), 長さ\(l=1.0\,\text{m}\), 断面積\(S=2 \times 1.0\,\text{mm}^2 = 2.0 \times 10^{-6}\,\text{m}^2\)とみなせるので、公式 \(R_1 = \rho \frac{l}{S}\) を\(\rho\)について解くと、
$$\rho = \frac{R_1 S}{l} \quad \cdots {\text{別}④}$$

計算過程

式(別④)に値を代入します。
$$\rho = \frac{30\,\Omega \times (2.0 \times 10^{-6}\,\text{m}^2)}{1.0\,\text{m}} = 60 \times 10^{-6}\,\Omega\cdot\text{m} = 6.0 \times 10^{-5}\,\Omega \cdot \text{m}$$
元の抵抗線のデータから求めた値と一致します。

計算方法の平易な説明
  1. \(R_1\)の抵抗値を求める: 長さ2.0mで120Ωの抵抗線なので、長さ1.0mなら半分の60Ωです。「二つ折り」は、この60Ωの抵抗を2つ並列につなぐことと同じなので、合成抵抗は \(\frac{1}{R_1} = \frac{1}{60} + \frac{1}{60}\) から、\(R_1=30\Omega\)と求まります。
  2. 抵抗率を求める: 抵抗率\(\rho\)は物質の種類で決まる値です。元の2.0mの抵抗線のデータを使って、\(R = \rho l/S\) の公式に \(R=120\Omega, l=2.0\text{m}, S=1.0\text{mm}^2\) を代入して\(\rho\)を計算します(単位換算に注意!)。
結論と吟味

抵抗\(R_1\)の抵抗値は\(30\,\Omega\)、抵抗線の抵抗率は\(6.0 \times 10^{-5}\,\Omega \cdot \text{m}\)です。
別解のように、どの部分のデータを使っても同じ抵抗率が求められることで、計算の妥当性を確認できます。

解答 (1) 抵抗値: \(30\,\Omega\), 抵抗率: \(6.0 \times 10^{-5}\,\Omega \cdot \text{m}\)

問 (2)

(ア)

思考の道筋とポイント
スイッチSを閉じ、電流計の振れが0になる点D₁がAから1.2mだった、とあります。これは、C点とD₁点が等電位になったことを意味し、ホイートストンブリッジが平衡している状態です。
このとき、A-C-Bの経路とA-D₁-Bの経路は、それぞれ電池に並列に接続された2つの独立した抵抗の枝と見なせます。
\(R_2\)の抵抗値: ブリッジの平衡条件 \(\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4}\) を用いて求めます。ここで、\(R_3\)はAD₁間の抵抗、\(R_4\)はBD₁間の抵抗です。これらは抵抗線Rの長さの比から計算できます。
電池を流れる電流: これは、上側の枝を流れる電流\(i\)と、下側の枝を流れる電流\(I\)の和です。それぞれの枝には電圧\(E\)がかかっているので、各枝の合成抵抗からオームの法則で\(i\)と\(I\)を求め、合計します。

この設問における重要なポイント

  • 電流計の振れが0 \(\Leftrightarrow\) C点とD₁点が等電位 \(\Leftrightarrow\) ホイートストンブリッジの平衡。
  • 抵抗線の抵抗値は長さに比例する。
  • 平衡条件 \(\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4}\) を適用する。
  • 電池を流れる電流は、並列接続された各枝の電流の和。

具体的な解説と立式
まず、抵抗\(R_3\) (AD₁間) と \(R_4\) (BD₁間) の値を求めます。
抵抗線Rは全長\(2.0\,\text{m}\)で\(120\,\Omega\)なので、長さと抵抗値は比例します。
$$R_3 = 120\,\Omega \times \frac{1.2\,\text{m}}{2.0\,\text{m}} \quad \cdots ⑤$$
$$R_4 = 120\,\Omega \times \frac{2.0\,\text{m} – 1.2\,\text{m}}{2.0\,\text{m}} \quad \cdots ⑥$$
ブリッジの平衡条件より、
$$\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4} \quad \cdots ⑦$$
この式を\(R_2\)について解きます。
次に、電池を流れる電流\(I_{\text{全}}\)を求めます。
上側の枝(A-C-B)を流れる電流を\(i\)、下側の枝(A-D₁-B)を流れる電流を\(I\)とします。
$$E = (R_1+R_2)i \quad \cdots ⑧$$
$$E = (R_3+R_4)I = RI \quad \cdots ⑨$$
電池を流れる電流はこれらの和です。
$$I_{\text{全}} = i+I \quad \cdots ⑩$$

使用した物理公式

  • 抵抗と長さの比例関係
  • ホイートストンブリッジの平衡条件
  • オームの法則
計算過程

まず、\(R_3\)と\(R_4\)を計算します。
式⑤より: \(R_3 = 120 \times 0.6 = 72\,\Omega\)。
式⑥より: \(R_4 = 120 \times 0.4 = 48\,\Omega\)。
次に、式⑦から\(R_2\)を求めます。\(R_1=30\,\Omega\)。
$$\frac{30}{72} = \frac{R_2}{48}$$
$$R_2 = 30 \times \frac{48}{72} = 30 \times \frac{2}{3} = 20\,\Omega$$
次に、電流を計算します。
式⑧から\(i\)を求めます: \(E=10\,\text{V}, R_1=30\,\Omega, R_2=20\,\Omega\)。
$$10 = (30+20)i = 50i$$
$$i = \frac{10}{50} = 0.20\,\text{A}$$
式⑨から\(I\)を求めます: \(E=10\,\text{V}, R=R_3+R_4=120\,\Omega\)。
$$10 = 120I$$
$$I = \frac{10}{120} = \frac{1}{12} \approx 0.0833…\,\text{A}$$
式⑩から全電流を求めます。
$$I_{\text{全}} = 0.20 + \frac{1}{12} = \frac{1}{5} + \frac{1}{12} = \frac{12+5}{60} = \frac{17}{60} \approx 0.2833…\,\text{A}$$
有効数字2桁で \(I_{\text{全}} = 0.28\,\text{A}\)。

計算方法の平易な説明
  1. 平衡条件を使う: 電流計の振れが0ということは、C点とD₁点の電位が同じということです。これは「ホイートストンブリッジが平衡している」状態で、\(\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4}\)という関係が成り立ちます。
  2. 抵抗値を求める: まず、抵抗線RをD₁で分けたときの抵抗\(R_3, R_4\)を長さの比から計算します。その後、平衡条件の式を使って未知の抵抗\(R_2\)の値を求めます。
  3. 電流を計算する: 回路は「上の道(\(R_1\)と\(R_2\))」と「下の道(\(R_3\)と\(R_4\))」の並列接続です。それぞれの道にかかる電圧は10Vなので、各道の電流をオームの法則で計算し、それらを合計したものが電池を流れる電流です。
結論と吟味

電池を流れる電流は \(0.28\,\text{A}\)、\(R_2\)の抵抗値は \(20\,\Omega\) です。
ホイートストンブリッジの平衡条件を正しく適用できるかがポイントでした。

解答 (2)(ア) 電流: \(0.28\,\text{A}\), 抵抗値: \(20\,\Omega\)
(イ)

思考の道筋とポイント
\(R_1, R_2, R_3, R_4\) のうち、どれが最も電力を消費するかを特定し、その値を計算します。
消費電力は \(P=RI^2\) または \(P=V^2/R\) または \(P=VI\) で計算できます。
各抵抗の抵抗値と、そこを流れる電流が分かっているので、\(P=RI^2\) を用いて比較するのが簡単です。

この設問における重要なポイント

  • 消費電力の公式 \(P=RI^2\) を用いる。
  • 各抵抗の値と、そこを流れる電流の値を正確に把握する。
  • 4つの値を比較して最大のものを選ぶ。

具体的な解説と立式
各抵抗の消費電力を \(P_1, P_2, P_3, P_4\) とします。
$$P_1 = R_1 i^2 \quad \cdots ⑪$$
$$P_2 = R_2 i^2 \quad \cdots ⑫$$
$$P_3 = R_3 I^2 \quad \cdots ⑬$$
$$P_4 = R_4 I^2 \quad \cdots ⑭$$
これらの値を計算し、比較します。

使用した物理公式

  • 消費電力: \(P=RI^2\)
計算過程

各値を代入して計算します。
\(i=0.20\,\text{A}, I=1/12\,\text{A}\)。
\(R_1=30\,\Omega, R_2=20\,\Omega, R_3=72\,\Omega, R_4=48\,\Omega\)。
$$P_1 = 30 \times (0.20)^2 = 30 \times 0.04 = 1.2\,\text{W}$$
$$P_2 = 20 \times (0.20)^2 = 20 \times 0.04 = 0.8\,\text{W}$$
$$P_3 = 72 \times (1/12)^2 = 72 / 144 = 0.50\,\text{W}$$
$$P_4 = 48 \times (1/12)^2 = 48 / 144 = 1/3 \approx 0.33\,\text{W}$$
これらの値を比較すると、\(P_1=1.2\,\text{W}\) が最大です。
したがって、最も電力を消費する抵抗は \(R_1\) で、その消費電力は \(1.2\,\text{W}\) です。

計算方法の平易な説明

各抵抗について、消費電力を \(P=RI^2\) の公式で計算します。

  1. \(R_1\)の電力: \(30\Omega \times (0.2\text{A})^2 = 1.2\text{W}\)
  2. \(R_2\)の電力: \(20\Omega \times (0.2\text{A})^2 = 0.8\text{W}\)
  3. \(R_3\)の電力: \(72\Omega \times (1/12\text{A})^2 = 0.5\text{W}\)
  4. \(R_4\)の電力: \(48\Omega \times (1/12\text{A})^2 \approx 0.33\text{W}\)

これらの値を比べて、一番大きいものを選びます。

結論と吟味

最も電力を消費する抵抗は\(R_1\)で、その消費電力は\(1.2\,\text{W}\)です。
電流が大きい上側の枝で、かつ抵抗値が大きい\(R_1\)が最大になることは、定性的な予測とも一致します。

解答 (2)(イ) 抵抗: \(R_1\), 消費電力: \(1.2\,\text{W}\)

問 (3)

(ア)

思考の道筋とポイント
「\(R_1\)のすべてを使用して」という記述は、\(R_1\)を構成していた材料、すなわち「長さ1.0mの抵抗線を2本」を意味すると解釈します。これは、元の抵抗線R(長さ2.0m)と全く同じものです。
この長さ2.0m、断面積\(1.0\,\text{mm}^2\)、抵抗値\(120\,\Omega\)の抵抗線を、断面積\(5.0\,\text{mm}^2\)の一様な太さの1本の抵抗線\(R_5\)に作り替えます。
作り替える過程で、抵抗線の体積は保存されると考えます。体積 \(V_{volume} = l \times S\)。
体積保存から新しい抵抗線の長さ\(l_5\)を求め、\(R = \rho l/S\) の公式から新しい抵抗値\(R_5\)を計算します。
または、抵抗値と長さ・断面積の関係 \(R \propto l/S\) と体積保存 \(lS = \text{一定}\) を組み合わせて、抵抗値の変化を計算することもできます。

この設問における重要なポイント

  • 抵抗線を加工する際、体積 (\(V_{volume}=lS\)) と材質(抵抗率\(\rho\))は保存される。
  • 体積保存から新しい長さを求める。
  • \(R=\rho l/S\) を用いて新しい抵抗値を計算する。

具体的な解説と立式
元の抵抗線の諸量を \(R_0=120\,\Omega, l_0=2.0\,\text{m}, S_0=1.0\,\text{mm}^2\) とします。
作り替えた後の抵抗線\(R_5\)の諸量を \(R_5, l_5, S_5=5.0\,\text{mm}^2\) とします。
抵抗率\(\rho\)と体積\(V_{volume}\)は不変です。
体積保存より、
$$l_5 S_5 = l_0 S_0 \quad \cdots ⑮$$
新しい抵抗値\(R_5\)は、
$$R_5 = \rho \frac{l_5}{S_5} \quad \cdots ⑯$$

使用した物理公式

  • 体積保存: \(lS = \text{一定}\)
  • 抵抗率の公式: \(R = \rho l/S\)
計算過程

まず式⑮から新しい長さ\(l_5\)を求めます。
$$l_5 = l_0 \frac{S_0}{S_5} = 2.0\,\text{m} \times \frac{1.0\,\text{mm}^2}{5.0\,\text{mm}^2} = 0.4\,\text{m}$$
次に式⑯から\(R_5\)を求めます。(1)で求めた \(\rho=6.0 \times 10^{-5}\,\Omega \cdot \text{m}\) と、\(S_5=5.0\,\text{mm}^2=5.0 \times 10^{-6}\,\text{m}^2\) を用います。
$$R_5 = (6.0 \times 10^{-5}) \times \frac{0.4}{5.0 \times 10^{-6}} = \frac{6.0 \times 0.4}{5.0} \times 10 = 0.48 \times 10 = 4.8\,\Omega$$

別解: 抵抗値と形状の関係から
抵抗の公式 \(R=\rho l/S\) に、体積保存の関係 \(l = V_{volume}/S\) を代入すると、\(R = \rho \frac{V_{volume}}{S^2}\)。
これから、\(R\) は \(S^2\) に反比例することがわかります。元の断面積を \(S_0\)、新しい断面積を \(S_5\) とすると、
$$R_5 = R_0 \left(\frac{S_0}{S_5}\right)^2 = 120\,\Omega \times \left(\frac{1.0\,\text{mm}^2}{5.0\,\text{mm}^2}\right)^2 = 120 \times \left(\frac{1}{5}\right)^2 = 120 \times \frac{1}{25} = 4.8\,\Omega$$

計算方法の平易な説明

抵抗線を作り替えても、その体積と材質(抵抗率)は変わりません。
断面積を5倍にすると、体積が同じなので、長さは1/5になります。
抵抗値は、長さに比例し、断面積に反比例します(\(R=\rho l/S\))。
長さが1/5倍、断面積が5倍になるので、抵抗値は元の \(\frac{1/5}{5} = \frac{1}{25}\) 倍になります。
元の抵抗線の抵抗値は120Ωだったので、新しい抵抗値は \(120\Omega / 25 = 4.8\Omega\) です。

結論と吟味

作り替えた抵抗線の抵抗値 \(R_5\) は \(4.8\,\Omega\) です。断面積を太くすると抵抗が小さくなるという直感と一致します。

解答 (3)(ア) \(4.8\,\Omega\)
(イ)

思考の道筋とポイント
(ア)で作成した抵抗\(R_5 = 4.8\,\Omega\)を、\(R_1\)のかわりに接続します。この状態で、再び電流計の振れが0になる点D₂のA点からの距離を求めます。
これもホイートストンブリッジの平衡の問題です。
A点からの距離を\(x\)とすると、AD₂間の抵抗\(R_3’\)は \(60x\)、BD₂間の抵抗\(R_4’\)は \(60(2.0-x)\) と表せます。
平衡条件 \(\frac{R_5}{R_3′} = \frac{R_2}{R_4′}\) を用いて、\(x\)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 回路の構成は再びホイートストンブリッジ。
  • 電流計の振れが0 \(\rightarrow\) ブリッジの平衡条件を適用。
  • 抵抗線の抵抗は長さに比例することを利用し、未知の距離\(x\)で抵抗値を表す。

具体的な解説と立式
新しい抵抗 \(R_5 = 4.8\,\Omega\) を \(R_1\) の位置に接続します。
電流計の振れが0になる接触点D₂のAからの距離を \(x\) とします。
AD₂間の抵抗 \(R_3’\) は、\(R_3′ = \left(\frac{120\,\Omega}{2.0\,\text{m}}\right) x = 60x\)。
BD₂間の抵抗 \(R_4’\) は、\(R_4′ = 60(2.0-x)\)。
抵抗 \(R_2\) の値は(2)で求めた \(20\,\Omega\)。
ホイートストンブリッジの平衡条件より、
$$\frac{R_5}{R_3′} = \frac{R_2}{R_4′} \quad \cdots ⑰$$
この方程式に各値を代入して \(x\) を解きます。

使用した物理公式

  • ホイートストンブリッジの平衡条件
  • 抵抗と長さの比例関係
計算過程

式⑰に各値を代入します。
$$\frac{4.8}{60x} = \frac{20}{60(2.0-x)}$$
両辺の60を消去します。
$$\frac{4.8}{x} = \frac{20}{2.0-x}$$
両辺に \(x(2.0-x)\) を掛けて分母を払います。
$$4.8(2.0-x) = 20x$$
$$9.6 – 4.8x = 20x$$
$$9.6 = 24.8x$$
$$x = \frac{9.6}{24.8} = \frac{96}{248} = \frac{12}{31}$$
数値を計算すると、
$$x \approx 0.387…\,\text{m}$$
有効数字2桁で \(x=0.39\,\text{m}\)。

計算方法の平易な説明
  1. 平衡条件の式を立てる: (2)と同様に、電流計に電流が流れないので、ホイートストンブリッジの平衡条件 \(\frac{R_5}{R_3′} = \frac{R_2}{R_4′}\) が使えます。
  2. 抵抗を距離xで表す: D₂点のAからの距離を\(x\)とすると、抵抗\(R_3’\)は\(60x\)、抵抗\(R_4’\)は\(60(2.0-x)\)と書けます。
  3. 方程式を解く: 平衡条件の式に、これらの式と既知の抵抗値(\(R_5=4.8\Omega, R_2=20\Omega\))を代入して、\(x\)についての方程式を解きます。
結論と吟味

電流計の振れが0になる接触点D₂のA点からの距離は \(0.39\,\text{m}\) です。
\(R_1\) が \(30\,\Omega\) から \(4.8\,\Omega\) へと小さくなったため、それと釣り合う相手の抵抗辺の比も変わる必要があり、平衡点がA点に近づく(\(x\)が小さくなる)という結果は定性的に妥当です。

解答 (3)(イ) \(0.39\,\text{m}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 抵抗値と物理的形状の関係:
    • 核心:抵抗値 \(R\) は、材質で決まる抵抗率 \(\rho\) と、形状(長さ \(l\)、断面積 \(S\))によって \(R = \rho \frac{l}{S}\) のように決まる。
    • 理解のポイント:抵抗は長さに比例し、断面積に反比例するという関係を理解する。また、導線の体積 (\(l \times S\)) を保存したまま変形させると、抵抗値がどう変わるかを計算できることが重要。
  • ホイートストンブリッジの原理:
    • 核心:4つの抵抗をひし形に接続したブリッジ回路において、中央の枝に電流が流れない(検流計の振れが0)状態を「平衡状態」という。このとき、対辺の抵抗の比が等しくなる (\(\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4}\))。
    • 理解のポイント:この条件は、中央の枝の両端の電位が等しくなることから導かれる。この関係式は、未知の抵抗値を精密に測定するために利用される。
  • 直流回路の基本法則:
    • 核心:オームの法則 (\(V=RI\)) やキルヒホッフの法則を用いて、回路を流れる電流や各部の電位差を計算する。
    • 理解のポイント:並列に接続された部分には同じ電圧がかかること、直列に接続された部分には同じ電流が流れることを利用して、回路を部分に分けて考える。
  • 消費電力の計算:
    • 核心:抵抗で消費される電力は \(P=VI=RI^2=\frac{V^2}{R}\) で計算できる。
    • 理解のポイント:問題に応じて、電流と抵抗値がわかっているか、電圧と抵抗値がわかっているかなど、使いやすい公式を選択する。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • メートルブリッジなど、抵抗線の位置によって抵抗値が変わるタイプのホイートストンブリッジの問題。
    • 抵抗率や導線の変形に関する問題。
    • 回路中の特定の素子の消費電力を比較する問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 「電流計の振れが0」のキーワード: この言葉を見たら、即座に「ホイートストンブリッジの平衡」を連想する。中央の枝の両端が等電位である、という条件から立式を試みる。
    2. 抵抗線の扱い: 一様な抵抗線が出てきたら、「抵抗値は長さに比例する」という性質を使う。全体の抵抗値と長さから、単位長さあたりの抵抗を計算しておくと便利。
    3. 回路の分解: 複雑に見える回路も、並列な部分(この問題ではACBの枝とADBの枝)に分けて考えると、それぞれの枝に同じ電圧がかかることがわかり、見通しが良くなる。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 抵抗値と長さ・断面積の関係の誤解:
    • 現象:「二つ折り」のような操作で、長さと断面積がどう変わるかを間違える。体積保存を忘れてしまう。
    • 対策:「二つ折り」は並列接続と解釈するパターンが多いことを知っておく。また、体積 \(V_{volume}=lS\) が一定のとき、\(R = \rho l/S = \rho l^2/V_{volume} = \rho V_{volume}/S^2\) のように、\(R \propto l^2\) や \(R \propto 1/S^2\) となる関係を導出できるようにしておく。
  • ホイートストンブリッジの平衡条件の式の誤り:
    • 現象:\(R_1/R_2 = R_3/R_4\) のように、隣り合う辺の比を誤って立ててしまう。
    • 対策:図で「川を挟んで向かい合う辺の比が等しい」(\(R_1:R_3 = R_2:R_4\))、あるいは「たすき掛けの積が等しい」(\(R_1R_4 = R_2R_3\))と覚える。どちらか一方を確実に。
  • 消費電力の比較ミス:
    • 現象:\(P=RI^2\) や \(P=V^2/R\) の公式を使う際に、異なる電流や電圧の値を使って比較してしまう。
    • 対策:同じ電流が流れる抵抗同士なら \(P \propto R\)。同じ電圧がかかる抵抗同士なら \(P \propto 1/R\)。どちらの条件が使えるかを考えてから比較すると、計算量を減らせる場合がある。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • ホイートストンブリッジの回路図を、電位の高さでイメージする。A点が最も高く(10V)、B点が最も低い(0V)としたとき、C点とD点の「高さ」が同じになったときに電流計の電流が0になると考える。
    • 電流の流れる経路を、上側の道と下側の道に分けて矢印で描き込む。電池から出た電流がAで分岐し、Bで合流するイメージ。
    • 抵抗線のD₁点を、電圧を分ける「分圧点」として捉える。A-B間の電圧を、AD₁とD₁Bの抵抗比で分配している。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 各抵抗(\(R_1, R_2, R_3, R_4\))の位置関係を正確に描く。
    • 電流の向きと記号(\(i, I\))を明確に区別して描き入れる。
    • 電位が分かっている点(A点、B点など)の電位を書き込むと、電位差の計算がしやすくなる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(R = \rho l/S\):
    • 選定理由:導線の形状(長さ、断面積)からその電気的性質(抵抗値)を求める、あるいはその逆を行うため。材質固有の性質である\(\rho\)と形状を分離して考えることができる。
    • 適用根拠:一様な材質・太さの導体に適用できる基本公式。
  • \(\frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_4}\) (ブリッジ平衡条件):
    • 選定理由:「電流計の振れが0」という条件から、回路の未知のパラメータ(ここでは\(R_2\)や接触点の位置\(x\))を決定するため。
    • 適用根拠:中央の枝の両端(C点とD点)の電位が等しい(\(V_C = V_D\))という条件を、オームの法則を使って抵抗値の関係に書き直したもの。
  • \(P = RI^2\) (消費電力):
    • 選定理由:各抵抗の消費電力を比較、計算するため。この問題では、各枝の電流を先に計算しているため、この形式が最も使いやすい。
    • 適用根拠:抵抗に電流\(I\)が流れるとき、単位時間あたりに失われる電気的エネルギー(ジュール熱)の定義式。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 抵抗値の確定: まず、与えられた情報から回路中の全ての抵抗値(最初は\(R_1\)と\(R_3, R_4\))を計算する。
  2. 平衡条件の適用: 「電流計の振れが0」という条件を \(V_C=V_{D1}\) と読み替え、ホイートストンブリッジの平衡条件の式を立てる。
  3. 未知の抵抗の計算: 平衡条件の式から、未知の抵抗\(R_2\)を求める。
  4. 電流の計算: 回路が2つの並列な枝からなると考え、それぞれの枝の電流\(i, I\)をオームの法則で計算する。全電流はそれらの和。
  5. 消費電力の計算・比較: 各抵抗の抵抗値とそこを流れる電流から、\(P=RI^2\)で電力を計算し、比較する。
  6. 条件変更への対応: 抵抗を\(R_5\)に置き換えた場合も、同様に平衡条件を立て直し、未知数(平衡点の位置\(x\))を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の換算: 断面積が \(\text{mm}^2\) で与えられている場合、抵抗率の計算などでは \(\text{m}^2\) に変換する (\(1\,\text{mm}^2 = 10^{-6}\,\text{m}^2\))。
  • 比例計算: 抵抗線上の抵抗値は長さに比例する。全体の抵抗と長さから、部分の長さに対応する抵抗値を正確に計算する。
  • 分数の計算: ブリッジの平衡条件や電力の比較では、分数の計算が多くなる。約分などを丁寧に行う。
  • 有効数字: 問題文で「有効数字2桁」と指定されているので、最終的な答えを適切に丸める。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 電位の確認: ブリッジの平衡条件が満たされているとき、A点を基準にしたC点の電位 (\(V_{AC}\)) とD₁点の電位 (\(V_{AD_1}\)) は等しいか? \(V_{AC} = R_1 i = 30 \times 0.2 = 6\text{V}\)。\(V_{AD_1} = R_3 I = 72 \times (1/12) = 6\text{V}\)。確かに等しくなっており、計算が正しいことが裏付けられる。
  • 消費電力の定性的評価: 上の枝と下の枝では、下の枝の方が抵抗が大きく(120Ω > 50Ω)、電流が小さい。消費電力は電流の2乗で効くため、下の枝の方が消費電力が小さい傾向にあるのは妥当。
  • 平衡点の移動: (3)で\(R_1\)を\(4.8\Omega\)という小さな抵抗に替えたら、平衡点D₂がA点に近づいた (\(1.2\text{m} \rightarrow 0.39\text{m}\))。抵抗比 \(\frac{R_1}{R_2} = \frac{30}{20} = 1.5\) が \(\frac{R_5}{R_2} = \frac{4.8}{20} = 0.24\) と小さくなったため、それと釣り合うべき \(\frac{R_3}{R_4}\) の比も小さくなる必要がある。\(R_3\)が小さく、\(R_4\)が大きくなる方向、つまり平衡点がAに近づくのは正しい。
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