「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第30章】基礎CHECK

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基礎CHECK

1 エネルギー保存則の定義

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「エネルギー保存則の定義」です。物理学における最も基本的かつ普遍的な法則の一つについての理解を問います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギー保存則の普遍性
  2. 力学的エネルギー保存則との区別
  3. エネルギーの多様な形態(力学的エネルギー、熱エネルギー、化学エネルギーなど)。
  4. 孤立系におけるエネルギーの総和の不変性

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文のキーワード「あらゆる自然現象」「すべてのエネルギーの和」に着目する。
  2. これが力学の範囲を超えた、より広範な法則であることを認識する。
  3. 物理学の基本法則の中から、この記述に合致する法則名を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、物理学の根幹をなす大原則である「エネルギー保存則」の定義そのものを問うています。問題文の「あらゆる自然現象におけるエネルギーの移り変わり」という部分が最大のヒントです。これは、物体の運動といった力学的な現象に限定されず、熱、光、電気、化学反応といった、この世界で起こるすべての現象を指しています。また、「それに関係したすべてのエネルギーの和」という記述は、運動エネルギーや位置エネルギーといった力学的エネルギーだけでなく、熱エネルギーや内部エネルギーなど、考えうるすべての形態のエネルギーの総和を意味します。この総和が常に一定に保たれるという法則が何であるかを考えます。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: 外部との間でエネルギーの出入りがない閉じた系(孤立系)において、系内部のエネルギーの総和は、その形態がどのように変化しようとも、常に一定に保たれるという法則です。これは物理学における最も基本的な保存則の一つです。
  • 力学的エネルギー保存則との違い: よく混同されるのが「力学的エネルギー保存則」です。これは、保存力(重力や弾性力など)だけが仕事をする場合に限り、「運動エネルギーと位置エネルギーの和」が保存されるという、より限定的な条件下で成り立つ法則です。摩擦や空気抵抗などの非保存力が働くと、力学的エネルギーは熱エネルギーなどに変換されるため、保存されません。エネルギー保存則は、この変換された熱エネルギーなども含めた「すべてのエネルギー」の和が保存されるという、より包括的な法則です。
  • エネルギーの変換: エネルギーは消滅したり、無から生成されたりすることはありません。ただ、ある形態から別の形態へと姿を変えるだけです。例えば、電球は電気エネルギーを光エネルギーと熱エネルギーに変換します。このとき、消費された電気エネルギーの量と、発生した光エネルギーおよび熱エネルギーの量の和は等しくなります。

具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の名称を問う知識問題であり、具体的な計算式を立てるものではありません。しかし、概念を数式的に表現することで理解を深めることができます。
力学の分野で学ぶ力学的エネルギー\(E_{\text{力学}}\)は、運動エネルギー\(K\)と位置エネルギー\(U\)の和で表されます。
$$ E_{\text{力学}} = K + U $$
もし、摩擦力や空気抵抗などの非保存力が仕事\(W_{\text{非保存力}}\)をすると、その分だけ力学的エネルギーは変化します。変化したエネルギーは、主に熱エネルギー\(Q\)など、他の形態のエネルギーになります。
$$ \Delta E_{\text{力学}} = W_{\text{非保存力}} $$
ここで、発生した熱エネルギーは\(Q = -W_{\text{非保存力}}\)(非保存力の仕事は負なので\(Q\)は正)と書けるので、
$$ \Delta E_{\text{力学}} = -Q $$
$$ \Delta E_{\text{力学}} + Q = 0 $$
これは、力学的エネルギーの変化量と発生した熱エネルギーの和が\(0\)であること、つまり「力学的エネルギーと熱エネルギーを合わせたものの総和は変化しない」ことを意味します。
問題文で問われているのは、これをさらに拡張し、化学エネルギーや電気エネルギーなど、考えうる「すべてのエネルギー」を含めた総和\(E_{\text{全}}\)が一定に保たれるという法則です。
$$ E_{\text{全}} = E_{\text{力学}} + Q + (\text{その他の全エネルギー}) = \text{一定} $$
この普遍的な法則を「エネルギー保存則」と呼びます。

使用した物理公式

  • エネルギー保存則: \(E_{\text{全}} = \text{一定}\)
  • (参考)力学的エネルギーと仕事の関係: \(\Delta E_{\text{力学}} = W_{\text{非保存力}}\)
計算過程

この問題には計算過程はありません。問題文の定義に合致する物理法則の名前を答えることが解答となります。
空欄に当てはまる言葉は「エネルギー保存則」です。

この設問の平易な説明

私たちの身の回りでは、いろいろな形でエネルギーが使われたり、形を変えたりしています。例えば、スマホのバッテリー(化学エネルギー)が電気エネルギーに変わり、画面を光らせたり(光エネルギー)、音を出したり(音エネルギー)、少し熱くなったり(熱エネルギー)します。
「エネルギー保存則」とは、「どんなことが起きても、関係しているエネルギーを全部かき集めて合計すれば、その量は絶対に変わらない」という宇宙のルールです。エネルギーが勝手に消えたり、どこからか湧いてきたりすることはない、ということです。
力学で習う「力学的エネルギー保存則」は、この大きなルールの中の特別な場合(摩擦などがない理想的な状況)の話です。問題文は「あらゆる自然現象」と言っているので、このもっと大きな、すべてのエネルギーについてのルールを答える必要があります。それが「エネルギー保存則」です。

解答 エネルギー保存則

2 いろいろなエネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「エネルギーの形態とその変換」です。私たちの身の回りの現象で、どのような種類のエネルギーが利用されているかを理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギーには様々な形態(電気、化学、運動、熱など)があることの理解。
  2. 電車がモーターで動く仕組みの基本的な理解。
  3. ガソリンがエンジンで燃焼して動力を得る仕組みの基本的な理解。
  4. エネルギー変換の具体例の認識。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄(a)について、電車を動かす動力源であるモーターが何によって動くかを考える。
  2. 空欄(b)について、自動車を動かす動力源であるガソリンが、どのような形でエネルギーを蓄えているかを考える。

思考の道筋とポイント
この問題は、私たちの日常生活に密接に関わる「電車」と「自動車」を例に、それらを動かしているエネルギーの源が何かを問うています。現象の表面的な部分だけでなく、その裏側にあるエネルギーの形態を正しく特定することが求められます。特に、目に見えない「電気エネルギー」や、物質そのものに蓄えられている「化学エネルギー」の概念をしっかりと理解しているかがポイントとなります。

この設問における重要なポイント

  • 電気エネルギー: 電流が持つエネルギーです。モーターを回して運動エネルギーに変えたり、電灯を光らせて光エネルギーに変えたり、電熱器で熱エネルギーに変えたりすることができます。発電所で他のエネルギー(火力、水力、原子力など)から変換されて作られ、電線を通じて供給されます。
  • 化学エネルギー: 物質がその内部に化学結合の形で蓄えているエネルギーです。燃焼や化学反応によって、熱エネルギーや光エネルギー、電気エネルギー(電池の場合)として取り出すことができます。食物や、ガソリン・石炭・天然ガスといった燃料が持つエネルギーがこれにあたります。
  • エネルギー変換の例:
    • 電車の場合: 電気エネルギー → (モーター) → 運動エネルギー (+ 熱エネルギーなど)
    • 自動車の場合: 化学エネルギー(ガソリン) → (エンジンでの燃焼) → 熱エネルギー → (ピストンの運動) → 運動エネルギー (+ 熱エネルギーなど)

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • (a) 電車について:
    電車は、駅や線路の上空に張られた架線から、パンタグラフという装置を使って電気を取り込みます。この電気が車両内のモーターに送られ、モーターを強力に回転させます。その回転力が車輪に伝わることで、重い車体を動かすことができます。したがって、電車を走らせている直接のエネルギー源は「電気エネルギー」です。
  • (b) 自動車(ガソリン車)について:
    ガソリンは、炭素と水素の化合物(炭化水素)を主成分とする液体燃料です。このガソリンの分子内には、原子同士の化学結合としてエネルギーが蓄えられています。エンジン内部でガソリンが燃焼(酸化反応)すると、この化学結合が組み替えられ、蓄えられていたエネルギーが大量の熱として放出されます。この熱がエンジン内の気体を急激に膨張させ、ピストンを動かす力となり、最終的に自動車の運動エネルギーに変換されます。このように、物質の化学反応によって取り出されるエネルギーを「化学エネルギー」と呼びます。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。エネルギーの形態に関する概念的な理解が中心となります。

計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  • (a) 電車: 電車がどうやって動くかというと、線路の上にある電線から「電気」をもらって、その力でモーターをウィーンと回して走っています。家庭で扇風機が電気で回るのと同じ原理の、もっとパワフルなものです。だから、電車を動かしているのは「電気エネルギー」です。
  • (b) 自動車: ガソリンで動く車は、ガソリンスタンドで燃料を入れますね。ガソリンは、燃やすとすごい熱と力を出す特別な液体です。このように、物質そのものの中にエネルギーが「化学」の力で閉じ込められているものを「化学エネルギー」と呼びます。私たちがご飯を食べて元気になるのも、食べ物が持っている化学エネルギーのおかげです。
解答 (a) 電気 (b) 化学

3 発電方式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「火力発電の仕組みとエネルギー変換」です。主要な発電方式の一つである火力発電の原理について、エネルギーがどのように形を変えていくかを理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 化石燃料が持つ化学エネルギーの理解
  2. 燃焼による、化学エネルギーから熱エネルギーへの変換
  3. 熱エネルギーを利用した蒸気の生成と、タービンによる運動エネルギーへの変換
  4. 発電機における、電磁誘導を利用した電気エネルギーへの変換

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文の「化石燃料を燃やして」という記述から、エネルギー変換の最初のステップを考える。
  2. 空欄(a)には、燃焼によって得られ、蒸気を発生させるために使われるエネルギーの形態を当てる。
  3. 空欄(b)には、この一連のプロセスを用いる発電方式の名称を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、火力発電の基本的なプロセスを問う知識問題です。ポイントは、エネルギー変換の流れを順に追って考えることです。「化石燃料を燃やす」という行為が、どのようなエネルギーを生み出すのか。そして、そのエネルギーが次の段階(蒸気の発生)にどう利用されるのかを考えます。この一連のプロセス全体を指す発電方式の名前が分かれば、解答にたどり着けます。

この設問における重要なポイント

  • 火力発電の原理: 化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃やしてボイラー内の水を加熱し、高温・高圧の蒸気を作ります。この蒸気の力でタービン(多数の羽根を持つ車)を高速で回転させ、タービンに直結した発電機を動かすことで電気を発生させる方式です。
  • エネルギー変換の連鎖: 火力発電は、エネルギーが次々と形を変えていく典型的な例です。この変換プロセスを理解することが重要です。
    化学エネルギー(化石燃料) → 熱エネルギー(燃焼) → 運動エネルギー(蒸気によるタービンの回転) → 電気エネルギー(発電機)
  • 化石燃料: 大昔の動植物の死骸が地中に埋もれ、長い年月をかけて地中の熱や圧力によって変化してできた燃料のことです。石炭、石油、天然ガスなどがこれにあたり、内部に豊富な化学エネルギーを蓄えています。

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • (a) について:
    問題文には「化石燃料を燃やして得られる [ a ] エネルギーで蒸気を発生させ」とあります。化石燃料が持つのは化学エネルギーですが、それを「燃やす(燃焼させる)」ことによって、化学エネルギーは別の形態のエネルギーに変換されます。物が燃えると熱くなることから分かるように、燃焼は化学エネルギーを熱エネルギーに変換するプロセスです。そして、その発生した熱を利用して水を沸騰させ、蒸気を作ります。したがって、空欄(a)に入るのは「熱」エネルギーです。
  • (b) について:
    化石燃料を燃やすという「火の力」を利用して、最終的に電気を起こす発電方式です。このことから、この発電方式は「火力発電」と呼ばれます。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。エネルギー変換の概念が中心となります。

計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  • (a) やかんを火にかけると、お湯が沸いて湯気(蒸気)が出ますよね。このとき、火が「熱」を水に伝えているからお湯が沸くわけです。発電所でもこれと似たことをしていて、石炭や石油などの燃料を燃やして発生させたものすごい「熱」で水を沸騰させ、強力な蒸気を作ります。だから、(a)に入るのは「熱」です。
  • (b) このように、燃料を燃やす「火の力」を使って電気を作る発電方法なので、そのまま「火力発電」と呼びます。とても分かりやすい名前ですね。
解答 (a) 熱 (b) 火力

4 発電方式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「水力発電の仕組みとエネルギー変換」です。ダムを利用した発電方式の原理と、そこで利用されるエネルギーの形態について理解を深めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 水力発電の原理(ダム、落差)。
  2. 重力による位置エネルギーの定義
  3. 位置エネルギーから運動エネルギーへの変換
  4. 運動エネルギーから電気エネルギーへの変換(水車、発電機)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄(a)について、問題文の「ダムを作り、水を落下させて発電する」という記述に合致する発電方式の名称を特定する。
  2. 空欄(b)について、高い場所にある水が「重力」によって持つエネルギーの形態を考える。

思考の道筋とポイント
この問題は、水力発電の基本的な仕組みを問う知識問題です。まず、「川の上流にダムを作り、水を落下させる」という描写から、どのような発電方法かをイメージします。これが分かれば(a)はすぐに解答できます。次に、(b)ではその発電のエネルギー源を物理学の言葉で表現することが求められます。「重力による〇〇エネルギー」という形がヒントになっています。高い場所にある物体が持つエネルギーが何だったかを思い出すことができれば、正解にたどり着けます。

この設問における重要なポイント

  • 水力発電の原理: ダムによって川の水をせき止め、高い位置に水を溜めます。この高低差(落差)を利用して水を勢いよく落下させ、その水の力で水車を回します。そして、水車に直結した発電機を回転させることで電気を発生させる方式です。
  • 重力による位置エネルギー: ある基準の高さから、高さ\(h\)の位置にある質量\(m\)の物体が持つエネルギーのことです。重力加速度の大きさを\(g\)とすると、このエネルギーは \(U = mgh\) と表されます。ダムの高い場所に溜められた水は、この重力による位置エネルギーを大量に蓄えている状態といえます。
  • エネルギー変換の連鎖: 水力発電におけるエネルギーの流れは以下のようになります。
    位置エネルギー(ダムの高い位置にある水) → 運動エネルギー(勢いよく落下する水) → 運動エネルギー(水車の回転) → 電気エネルギー(発電機)

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • (a) について:
    問題文にある「川の上流にダムを作り、水を落下させて発電する」という方法は、水の力を利用して発電する方式です。このことから、この発電方式は「水力発電」と呼ばれます。
  • (b) について:
    物体を高い場所に置くと、その物体は落下する能力、すなわち仕事をする潜在的な能力を持ちます。これは、物体をその高さまで持ち上げる際に、重力に逆らってした仕事がエネルギーとして蓄えられたと考えることができます。この、重力と物体の位置(高さ)に依存するエネルギーを「重力による位置エネルギー」と呼びます。ダムに溜められた水は、まさにこのエネルギーを利用して発電しているため、空欄(b)には「位置」が入ります。

使用した物理公式

  • 重力による位置エネルギー: \(U = mgh\)
    (\(m\): 質量, \(g\): 重力加速度の大きさ, \(h\): 基準面からの高さ)
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  • (a) ダムを作って、せき止めた「水の力」を利用して発電する方法です。名前もそのまま「水力発電」と呼ばれます。
  • (b) ジェットコースターが一番高いところから一気に滑り降りる時、すごいスピードが出ますよね。あれは、高い「位置」にあること自体がエネルギーを持っているからです。このエネルギーを「位置エネルギー」と呼びます。ダムの水も、高いところに溜められていることで、たくさんの「位置エネルギー」を持っていて、これを電気に変えているのです。
解答 (a) 水力 (b) 位置

5 発電方式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「原子力発電の原理と核エネルギー」です。ウランの核分裂を利用した発電方式の基本的な仕組みと、そのエネルギー源について理解を深めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 原子核の構造(陽子、中性子)と核分裂
  2. 核エネルギーの定義
  3. アインシュタインの質量とエネルギーの等価性(\(E=mc^2\))
  4. 原子力発電におけるエネルギー変換のプロセス

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄(a)について、問題文の「ウランなどの原子核から」という記述を手がかりに、取り出されるエネルギーの名称を特定する。
  2. 空欄(b)について、(a)のエネルギーを利用する発電方式の一般的な名称を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、原子力発電の根幹をなす概念を問う知識問題です。キーワードは「ウラン」と「原子核」です。ウランのような重い原子核が分裂する際に莫大なエネルギーを放出する現象(核分裂)と、それを利用した発電方式について正しく理解しているかが問われます。エネルギーの名称とその発電方式の名前を正確に結びつけることがポイントです。

この設問における重要なポイント

  • 原子力発電の原理: ウラン(特に\({}_{92}^{235}\text{U}\))のような重い原子核に中性子を衝突させると、原子核が2つ以上の軽い原子核に分裂します(核分裂)。このとき、莫大な熱エネルギーが発生します。この熱を利用して水を高温・高圧の蒸気に変え、その力でタービンを回し、発電機を動かして電気を発生させます。熱源が核分裂である点を除けば、蒸気でタービンを回す以降の仕組みは火力発電と共通しています。
  • 核エネルギー: 原子核を構成している陽子や中性子を強く結びつけている力(核力)に関連するエネルギーです。原子核が分裂(核分裂)したり、逆に軽い原子核同士が合体(核融合)したりする際に、質量の変化(質量欠損)が生じ、その質量が莫大なエネルギーに変換されます。このエネルギーを「核エネルギー」または「原子核エネルギー」と呼びます。
  • 質量とエネルギーの等価性: 核分裂の前後で、反応に関わる粒子全体の質量の合計はわずかに減少します。この減少した質量を質量欠損 \(\Delta m\) といいます。この質量は消えてなくなったのではなく、アインシュタインが発見した有名な関係式 \(E = (\Delta m)c^2\) に従って、莫大なエネルギー \(E\) に変換されます。ここで \(c\) は光の速さ(約\(3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\))であり、非常に大きな値であるため、ごくわずかな質量欠損からでも巨大なエネルギーが生まれます。
  • エネルギー変換の連鎖:
    核エネルギー → 熱エネルギー(核分裂) → 運動エネルギー(蒸気によるタービンの回転) → 電気エネルギー(発電機)

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • (a) について:
    問題文は「ウランなどの原子核から [ a ] エネルギーを取り出して」と記述されています。これは、原子核の内部に蓄えられ、核反応(この場合は核分裂)によって取り出されるエネルギーを指します。このエネルギーは「核エネルギー」と呼ばれます。したがって、空欄(a)には「核」が入ります。
  • (b) について:
    原子核から取り出した核エネルギーを利用して発電する方式です。これは「原子の力」を利用する発電であることから、「原子力発電」と呼ばれます。したがって、空欄(b)には「原子力」が入ります。

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E = mc^2\)
    (\(E\): エネルギー, \(m\): 質量, \(c\): 光の速さ)
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  • (a) 物質をどんどん小さくしていくと原子になり、その中心には「原子核」というとても小さな粒があります。ウランのような特定の原子核は、中性子をぶつけると分裂して、ものすごいエネルギーを出す性質があります。この「原子核」から出てくるエネルギーなので、(a)は「核」エネルギーと呼びます。
  • (b) この核エネルギーを使ってお湯を沸かし、その蒸気で発電機を回すのが「原子力発電」です。「原子の力」で発電するから、この名前がついています。火力発電が石炭を燃やす「火の力」を使うのに対して、原子力発電は原子核が分裂する「原子核の力」を使う、という違いがあります。
解答 (a) 核 (b) 原子力

6 いろいろなエネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「光エネルギーとその変換」です。太陽から降り注ぐ光が、どのようにして他の形のエネルギーに変換され、利用されているかを理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光エネルギーの定義と性質
  2. 太陽電池の原理(光起電力効果)
  3. 植物の光合成の原理
  4. エネルギー変換の具体例(光エネルギーから電気エネルギーへ、光エネルギーから化学エネルギーへ)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文で挙げられている2つの現象、「太陽電池による発電」と「植物の光合成」を分析する。
  2. これら2つの現象に共通して必要不可欠なエネルギー源は何かを特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、一見すると物理と生物の分野にまたがるように見えますが、どちらの現象も根源的には同じ種類のエネルギーを利用しています。問題文の「太陽電池」と「植物は光合成を行い」という2つのキーワードが最大のヒントです。太陽電池が何によって発電するのか、植物が何を使って光合成を行うのかを考えれば、共通のエネルギー源は自ずと明らかになります。それは、私たちの最も身近なエネルギー源の一つである太陽からもたらされるものです。

この設問における重要なポイント

  • 光エネルギー: 光(可視光線や赤外線、紫外線などの電磁波)が持つエネルギーのことです。地球上のほとんどの生命活動や自然現象は、太陽からの光エネルギーに依存しています。
  • 太陽電池(光起電力効果): 半導体(シリコンなど)に光が当たると、そのエネルギーによって半導体内部に電子の流れ(電流)が生じる現象を利用した装置です。これにより、光エネルギーを直接、電気エネルギーに変換することができます。
  • 光合成: 植物の葉に含まれる葉緑体が、光エネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と水から、生命活動の源となる炭水化物(デンプンなど)を合成する働きです。このプロセスは、光エネルギーを、炭水化物という物質が持つ化学エネルギーの形に変換して蓄えることを意味します。
  • エネルギー変換の例:
    • 太陽電池: 光エネルギー → 電気エネルギー
    • 光合成: 光エネルギー → 化学エネルギー

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • 太陽電池について:
    太陽電池は、太陽光が持つエネルギーを利用して発電します。太陽光が電池の表面に当たると、内部の半導体が光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーが直接電気エネルギーに変換されます。
  • 植物の光合成について:
    植物は、太陽の光を浴びることで光合成を行います。このとき、植物は光のエネルギーを使って、水と二酸化炭素から栄養分(炭水化物)を作り出します。これは、光エネルギーを化学エネルギーという形で植物の体内に蓄えるプロセスです。
  • 結論:
    「太陽電池による発電」と「植物の光合成」は、どちらも太陽からの「光エネルギー」を源として利用しています。したがって、空欄に当てはまるのは「光」です。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。エネルギーの形態とその変換に関する概念的な理解が中心となります。

計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

この問題は、「太陽電池が電気を作るとき」と「植物が栄養を作るとき」に、共通して使っているエネルギーは何でしょう?というクイズです。

  • 屋根の上などにある太陽電池パネルは、お日様の「光」が当たると電気を作ります。
  • 公園の木や道端の草などの植物も、お日様の「光」を浴びて、自分のご飯(栄養)を作って大きくなります。

どちらも「光」のエネルギーを使っていますね。だから、答えは「光」エネルギーです。

解答

7 発電方式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「再生可能エネルギーによる発電方式」です。自然界に存在するエネルギーを利用した、風力発電と地熱発電の基本的な原理を理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 風力発電の原理(風車の回転と発電機)。
  2. 地熱発電の原理(マグマの熱、蒸気、タービン)。
  3. エネルギー変換の連鎖(運動エネルギーから電気エネルギーへ、熱エネルギーから電気エネルギーへ)。
  4. 再生可能エネルギーの概念

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 空欄(a)について、「風の力を利用して発電する」という記述から、その発電方式の名称を特定する。
  2. 空欄(b)について、「地下深くにあるマグマを利用して発電する」という記述から、その発電方式の名称を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、自然エネルギーを利用した発電方式に関する知識を問うています。それぞれの発電方式の名前は、そのエネルギー源を直接的に示していることが多く、非常に直感的です。問題文のキーワード「風の力」と「地下深くにあるマグマ」が、それぞれどの発電方式を指しているのかを考えます。風車が回る風景や、温泉地から立ち上る湯気などをイメージすると、答えに結びつけやすいでしょう。

この設問における重要なポイント

  • 風力発電: 風が持つ運動エネルギーを利用して、巨大な羽根(ブレード)を持つ風車を回転させます。その回転運動を発電機に伝えることで、電気エネルギーに変換する方式です。風は太陽エネルギーによって大気が不均一に温められることで発生するため、太陽エネルギーを間接的に利用している再生可能エネルギーの一つです。
  • 地熱発電: 地球の内部は非常に高温であり、特に火山地帯では地下にマグマだまりが存在します。このマグマの熱(地熱エネルギー)を利用して、地下水などを加熱し、高温・高圧の蒸気を作ります。この蒸気の力でタービンを回し、発電機を動かして電気を発生させる方式です。熱源が地球内部の熱である点を除けば、蒸気でタービンを回す仕組みは火力発電や原子力発電と似ています。
  • エネルギー変換の連鎖:
    • 風力発電: 運動エネルギー(風) → 運動エネルギー(風車の回転) → 電気エネルギー(発電機)
    • 地熱発電: 熱エネルギー(地熱) → 運動エネルギー(蒸気によるタービンの回転) → 電気エネルギー(発電機)

具体的な解説と立式
この問題は物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • (a) について:
    問題文には「風の力を利用して発電する」とあります。これは、風の力で風車を回し、その回転を発電機に伝えて電気を作る方法です。この発電方式は、その名の通り「風力発電」と呼ばれます。
  • (b) について:
    問題文には「地下深くにあるマグマを利用して発電する」とあります。これは、地球内部の熱(地熱)を利用してお湯を沸かし、その蒸気でタービンを回して発電する方法です。この発電方式は「地熱発電」と呼ばれます。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。エネルギー変換の概念が中心となります。

計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明
  • (a) 広い野原や海辺で、大きなプロペラ(風車)がクルクル回っているのを見たことがあるかもしれません。あれは、風の力で発電機を回して電気を作っています。だから、この発電方法は「風力発電」といいます。
  • (b) 地球の地面のずっと奥深くは、火山のもとになるマグマがあって、とても熱くなっています。温泉が温かいのも、この地球の熱のおかげです。この地面の熱(地熱)を利用して、お湯を沸かして蒸気を作り、その力で発電するのが「地熱発電」です。
解答 (a) 風力 (b) 地熱

8 いろいろなエネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「一次エネルギーと二次エネルギーの分類」です。エネルギー資源が、自然界に存在するままのものか、人間が使いやすいように加工・変換したものかを見分けることが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 一次エネルギーの定義:自然界に天然に存在するエネルギー源。
  2. 二次エネルギーの定義:一次エネルギーを加工・変換して作られるエネルギー。
  3. 各選択肢がどのようにして得られるかの理解(採掘、精製、発電など)。
  4. エネルギー変換のプロセスの認識

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. リストアップされた各エネルギー源(石油、都市ガス、太陽光、電気、ガソリン)を一つずつ取り上げる。
  2. そのエネルギーが自然から直接得られるものか、それとも何かを原料にして作られたものかを判断する。
  3. 加工・変換を経て作られたものを「二次エネルギー」として選び出す。

思考の道筋とポイント
エネルギーは、その供給形態によって「一次エネルギー」と「二次エネルギー」に大別されます。この問題では、与えられた5つの選択肢がどちらに属するかを判断します。ポイントは、「そのまま自然にあるか?」と「人間が何か手を加えたか?」という視点で考えることです。例えば、石油とガソリンのように、元は同じでも加工の有無で分類が変わる点に注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 一次エネルギー: 自然界に存在するエネルギーで、人間が手を加えていない状態のものです。採取・採掘されたままの形で供給されます。
    • 例:原油(石油)、石炭、天然ガス、水力、太陽光、風力、地熱、ウランなど。
  • 二次エネルギー: 一次エネルギーを、人間が消費しやすいように変換・加工したものです。
    • 例:電気、ガソリン、灯油、都市ガス、水素など。
  • 変換・加工の例:
    • 原油(一次) →(精製)→ ガソリン(二次)
    • 石炭・天然ガス(一次) →(燃焼・発電)→ 電気(二次)
    • 天然ガス・石炭(一次) →(ガス化)→ 都市ガス(二次)

具体的な解説と立式
この問題は計算式を立てるのではなく、各エネルギー源の性質を吟味します。

  • \(①\) 石油: 地中から採掘される原油のことです。自然界に存在するエネルギー源そのものなので、一次エネルギーです。
  • \(②\) 都市ガス: 主に天然ガスや石炭などを原料とし、工場で熱量を調整したり安全のために臭いをつけたりして作られます。一次エネルギーを加工しているので、二次エネルギーです。
  • \(③\) 太陽光: 太陽から直接地球に降り注ぐ光エネルギーです。自然現象そのものであり、人間が加工する前の大元のエネルギーなので、一次エネルギーです。
  • \(④\) 電気: 石炭や石油、天然ガスを燃やしたり(火力)、ウランを核分裂させたり(原子力)、水の力を使ったり(水力)して、一次エネルギーを変換して作られます。したがって、二次エネルギーです。
  • \(⑤\) ガソリン: 石油(原油)を製油所で精製(分留)というプロセスを経て作られます。一次エネルギーを加工しているので、二次エネルギーです。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • 一次エネルギーの定義: 自然界に存在する、未加工のエネルギー。
  • 二次エネルギーの定義: 一次エネルギーを変換・加工したエネルギー。
計算過程

この問題には計算過程はありません。上記の吟味そのものが解答プロセスとなります。

  • 一次エネルギー: \(①\) 石油, \(③\) 太陽光
  • 二次エネルギー: \(②\) 都市ガス, \(④\) 電気, \(⑤\) ガソリン

したがって、二次エネルギーは\(②\), \(④\), \(⑤\)です。

この設問の平易な説明

エネルギーを食材に例えて考えてみましょう。

  • 一次エネルギーは、畑で採れたばかりの野菜や、海で釣った魚のような「天然の素材」です。石油や太陽光はこれにあたります。
  • 二次エネルギーは、その素材を料理して作った「料理」です。例えば、野菜(一次)を炒めて作った野菜炒め(二次)のようなものです。
  • 都市ガスやガソリンは、天然ガスや石油(素材)を工場で使いやすく加工した「料理」です。
  • 電気は、石油を燃やしたり、水の力を使ったり、いろいろな「素材」から作られる、とても便利な「万能ソース」のような「料理」です。

この問題は、「この中で『料理』はどれですか?」と聞いているのと同じです。だから、都市ガス、電気、ガソリンが答えになります。

解答 \(②\), \(④\), \(⑤\)

9 原子核

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「原子核の表記と構成要素の理解」です。原子核を表す記号のルールを正しく読み取る能力を問います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 原子核の記号 \({}_{Z}^{A}\text{X}\) の読み方。
  2. 原子番号 \(Z\) の定義(陽子の数)。
  3. 質量数 \(A\) の定義(陽子と中性子の数の合計)。
  4. 中性子数 \(N\) の求め方(\(N = A – Z\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられたウランの原子核の表記 \({}_{92}^{235}\text{U}\) を確認する。
  2. 一般的な表記法 \({}_{Z}^{A}\text{X}\) と照らし合わせ、各数値が何を表すかを特定する。
  3. 原子番号と質量数を答える。

思考の道筋とポイント
この問題は、原子核を表す記号のルールを知っていれば即答できる基本的な知識問題です。記号の左下に書かれた数字と、左上に書かれた数字がそれぞれ何を示しているかを正確に覚えていれば、迷うことはありません。\({}_{92}^{235}\text{U}\) という表記を見た瞬間に、原子番号と質量数を機械的に読み取れるようにしておくことが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 原子核の表記: 一般的に、原子核は元素記号 \(X\) を用いて \({}_{Z}^{A}\text{X}\) と表されます。
  • 原子番号 \(Z\): 記号の左下に書かれる数字です。原子核に含まれる陽子の数を表し、この数によって元素の種類が決まります。
  • 質量数 \(A\): 記号の左上に書かれる数字です。原子核に含まれる陽子の数と中性子数の合計を表します。
  • 中性子数 \(N\): 質量数 \(A\) から原子番号 \(Z\) を引くことで求められます(\(N = A – Z\))。

具体的な解説と立式
この問題は、与えられた原子核の記号から情報を読み取る問題です。
問題で与えられている原子核は \({}_{92}^{235}\text{U}\) です。
これを一般的な原子核の表記 \({}_{Z}^{A}\text{X}\) と比較します。

  • 元素記号 \(X\) はウラン(U)です。
  • 記号の左下の数字が原子番号 \(Z\) に対応します。したがって、原子番号は \(92\) です。
  • 記号の左上の数字が質量数 \(A\) に対応します。したがって、質量数は \(235\) です。

参考として、この原子核に含まれる中性子の数 \(N\) を計算すると、次のようになります。
$$
\begin{aligned}
N &= A – Z \\[2.0ex]&= 235 – 92 \\[2.0ex]&= 143
\end{aligned}
$$
このウラン原子核は、\(92\)個の陽子と\(143\)個の中性子で構成されていることがわかります。

使用した物理公式

  • 原子核の表記法: \({}_{Z}^{A}\text{X}\)
  • 原子番号 \(Z\) = 陽子の数
  • 質量数 \(A\) = (陽子の数) + (中性子の数)
計算過程

この問題は記号の読み取りが主であり、計算過程はありません。
\({}_{92}^{235}\text{U}\) の表記から、

  • 原子番号(左下の数字) \(\rightarrow\) \(92\)
  • 質量数(左上の数字) \(\rightarrow\) \(235\)

と直接読み取ります。

この設問の平易な説明

原子核を表す記号には、その「プロフィール」が書かれています。
\({}_{92}^{235}\text{U}\) という記号は、原子核の「名札」のようなものです。

  • 左下の数字 \(92\) は「出席番号」のようなもので、これを「原子番号」と呼びます。この番号で元素の種類(今回はウラン)が決まります。
  • 左上の数字 \(235\) は「体重」のようなもので、これを「質量数」と呼びます。これは原子核の中にある陽子と中性子の合計の数です。

なので、この名札を見れば、原子番号は \(92\)、質量数は \(235\) だとすぐに分かります。

解答 原子番号:92, 質量数:235

10 中性子の数が異なる原子

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「同位体(アイソトープ)と放射性同位体の定義」です。原子の構造に基づき、これらの重要な用語の意味を正確に理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 原子の構造(陽子、中性子、電子)。
  2. 原子番号(陽子の数)が元素の種類を決定すること
  3. 質量数(陽子と中性子の数の和)の理解
  4. 放射能と放射性崩壊の概念

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、「同じ元素」という条件が何を意味するか(陽子の数が同じ)を理解する。
  2. 次に、「中性子の数が異なる」という条件が質量数にどう影響するかを考える。
  3. これらの条件を満たす原子同士の関係を表す用語を特定する。
  4. さらに、その中で不安定で放射線を出す性質(放射能)を持つものの特別な呼び名を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、原子核物理学の基本的な用語の定義を問うています。まず、「同じ元素」という言葉から、原子核のどの構成要素の数が同じなのかを考えます。元素の種類を決定するのは「陽子の数(原子番号)」です。したがって、「同じ元素」とは「陽子の数が同じ原子」を指します。その上で、「中性子の数が異なる」という条件が加わると、陽子と中性子の合計である「質量数」が異なることになります。この関係にある原子同士を何と呼ぶかを答えるのが第一の問いです。
次に、そのような原子の中には、原子核が不安定な状態にあるものが存在します。不安定な原子核は、放射線を放出して安定な状態に変わろうとします。この性質を持つものを何と呼ぶかを答えるのが第二の問いです。

この設問における重要なポイント

  • 同位体(アイソトープ): 原子番号(陽子の数)が同じで、中性子の数が異なるために質量数が異なる原子同士のこと。周期表では同じ位置を占めるため、「同じ位置」を意味する同位体と呼ばれます。化学的性質はほぼ同じですが、質量が異なるため物理的性質(密度や融点など)はわずかに異なります。
  • 放射性同位体(ラジオアイソトープ): 同位体の中でも、原子核が不安定で、放射線(α線、β線、γ線など)を放出する性質(放射能)を持つものです。
  • 具体例(水素の同位体):
    • 軽水素(\({}_{1}^{1}\text{H}\)): 陽子\(1\)個、中性子\(0\)個。最も一般的な水素で安定。
    • 重水素(デューテリウム, \({}_{1}^{2}\text{H}\)): 陽子\(1\)個、中性子\(1\)個。安定な同位体。
    • 三重水素(トリチウム, \({}_{1}^{3}\text{H}\)): 陽子\(1\)個、中性子\(2\)個。不安定で、β線を放出してヘリウム3(\({}_{2}^{3}\text{He}\))に変わる放射性同位体。
  • 具体例(炭素の同位体):
    • 炭素12(\({}_{6}^{12}\text{C}\)): 陽子\(6\)個、中性子\(6\)個。安定で、存在比が約\(99\%\)。
    • 炭素13(\({}_{6}^{13}\text{C}\)): 陽子\(6\)個、中性子\(7\)個。安定。
    • 炭素14(\({}_{6}^{14}\text{C}\)): 陽子\(6\)個、中性子\(8\)個。不安定で、β線を放出する放射性同位体。考古学的な年代測定などに利用されます。

具体的な解説と立式
この問題は用語の定義を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • 第一の問いについて:
    「同じ元素で、中性子の数が異なる原子」という条件を分析します。

    • 「同じ元素」とは、陽子の数(原子番号 \(Z\))が同じであることを意味します。
    • 「中性子の数が異なる」とは、中性子数 \(N\) が異なることを意味します。
    • 陽子の数 \(Z\) が同じで中性子数 \(N\) が異なると、その和である質量数 \(A = Z + N\) も異なります。

    この定義に合致する用語は「同位体」です。

  • 第二の問いについて:
    「その中で放射能をもつもの」という条件を考えます。

    • 同位体の中には、原子核内の陽子と中性子のバランスが悪いために不安定な状態のものがあります。
    • 不安定な原子核は、放射線を放出してより安定な原子核に変化しようとします。この性質を「放射能」と呼びます。
    • 放射能を持つ同位体は、特別に「放射性同位体」と呼ばれます。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • 同位体の定義: 原子番号が同じで、質量数が異なる原子。
  • 放射性同位体の定義: 放射能を持つ同位体。
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

原子を「陽子」と「中性子」という2種類のブロックで作るレゴブロックだと考えてみましょう。

  • 「陽子」の数が、その原子が何の元素か(水素か、炭素かなど)を決めます。陽子の数が同じなら、同じ元素の「仲間」です。
  • 「中性子」は、陽子同士が反発しないようにくっつける「のり」のような役割をします。この「のり」の数は、同じ仲間の元素でも少し違うことがあります。
  • このように、陽子の数は同じ(同じ仲間)だけど、中性子の数が違う原子同士のことを「同位体」と呼びます。人間でいうと、同じ名前だけど体重が違う双子のようなイメージです。
  • そして、同位体の中には、陽子と中性子のバランスが悪くて不安定なものがいます。こういう原子は、余分なエネルギーを「放射線」という形で外に出して安定しようとします。この特別な性質を持つ同位体を「放射性同位体」と呼びます。
解答 同位体, 放射性同位体

11 原子力発電

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「原子力発電の原理」です。原子力発電で利用される核反応の種類と、その反応が安定して持続する状態について、基本的な用語の理解を問います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 核分裂の定義:重い原子核が中性子を吸収して分裂し、エネルギーと複数の中性子を放出する反応。
  2. 連鎖反応の概念:放出された中性子が次の核分裂を引き起こし、反応が次々と続くこと。
  3. 臨界の定義:連鎖反応が一定の割合で持続する状態。
  4. 原子炉の役割:連鎖反応を制御し、安全にエネルギーを取り出す装置。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 第一の問いについて、ウランやプルトニウムのような重い原子核が起こす、エネルギーを放出する核反応の名称を特定する。
  2. 第二の問いについて、その核反応が原子炉内で次々と、かつ安定した規模で持続している状態を表す専門用語を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、原子力発電の心臓部で起きている現象に関する2つの重要なキーワードを問うています。
まず、原子力発電のエネルギー源は、ウランなどの「重い原子核」が「分裂」することによって得られます。この現象の名称が第一の答えです。
次に、この反応は1回で終わるのではなく、反応によって生じたものが次の反応を引き起こすことで「連鎖」していきます。原子炉では、この連鎖反応が爆発的に拡大したり、逆に消えてしまったりしないように、絶妙なバランスで「持続」させています。この安定した持続状態を指す言葉が第二の答えとなります。

この設問における重要なポイント

  • 核分裂: ウラン235(\({}_{92}^{235}\text{U}\))のような重い原子核が、1つの中性子を吸収すると非常に不安定な状態になります。その結果、原子核は2つ(またはそれ以上)の軽い原子核(核分裂生成物)に分裂します。このとき、莫大なエネルギー(主に熱エネルギー)と、新たに平均2〜3個の中性子が放出されます。
  • 連鎖反応: 核分裂によって放出された複数の中性子のうち、少なくとも1つが、近くにある別のウラン原子核に吸収され、次の核分裂を引き起こします。このプロセスが繰り返されることで、核分裂反応が持続的に起こる現象を「連鎖反応」と呼びます。
  • 臨界: 連鎖反応がどのような状態で持続しているかを示す言葉です。
    • 臨界未満: 1回の核分裂で放出された中性子のうち、次の核分裂を引き起こす中性子の数が平均して1個未満の状態。反応は次第に収束し、やがて停止します。
    • 臨界: 次の核分裂を引き起こす中性子の数が平均してちょうど1個の状態。反応は一定の割合で持続します。原子力発電所の通常運転時は、この状態を維持しています。
    • 超臨界: 次の核分裂を引き起こす中性子の数が平均して1個より多い状態。反応はネズミ算式に急激に増加します。原子炉の起動時や、原子爆弾の原理がこれにあたります。

具体的な解説と立式
この問題は用語の定義を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • 第一の問い(どのような核反応か):
    ウランやプルトニウムのような重い原子核が、中性子を吸収することで分裂し、エネルギーを放出する反応です。この反応を「核分裂」と呼びます。
    核分裂の反応は、例えば次のように表されます。
    $$ {}_{0}^{1}\text{n} + {}_{92}^{235}\text{U} \rightarrow \text{(核分裂生成物1)} + \text{(核分裂生成物2)} + (2 \sim 3)\text{個の}{}_{0}^{1}\text{n} + \text{エネルギー} $$
  • 第二の問い(核反応が持続している状態は何か):
    原子炉内では、核分裂によって放出された中性子が、次の核分裂をちょうど良い割合で引き起こし続けるように制御されています。このように、連鎖反応が一定の規模で持続している状態を「臨界」と呼びます。原子炉では、中性子を吸収する制御棒を出し入れすることで、この臨界状態を精密に維持しています。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • 核分裂の定義: 重い原子核が中性子を吸収して分裂する反応。
  • 臨界の定義: 核分裂の連鎖反応が一定の割合で持続している状態。
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

原子力発電の仕組みを、ドミノ倒しに例えてみましょう。

  • 第一の問い(核反応の種類):
    ウラン原子を「ドミノ」だとします。ここに中性子という「指」で最初のドミノを1つ倒すと、そのドミノは倒れるときに、エネルギー(音)を出し、さらに隣のドミノを倒す力になります。この、最初の1つのアクションがきっかけで原子核が分裂してエネルギーを出す現象が「核分裂」です。
  • 第二の問い(持続している状態):
    ドミノが次々と倒れていくのが「連鎖反応」です。もし、1つのドミノが倒れたときに、次のドミノが2つも3つも倒れるように並べていたら、あっという間に全体が倒れてしまいます(超臨界)。逆に、次のドミノにうまく力が伝わらないと、途中で止まってしまいます(臨界未満)。
    原子炉では、1つのドミノが倒れたら、次のドミノが「ちょうど1つだけ」倒れるように、うまく調整しています。これにより、ドミノ倒しは延々と、しかし激しくなりすぎずに続いていきます。この絶妙なバランスで反応が続いている状態を「臨界」と呼びます。
解答 核分裂, 臨界

12 放射線

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射線の正体」です。不安定な原子核が崩壊する際に放出される、主要な放射線(α線、β線、γ線)がそれぞれ何であるかを正確に理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. α線(アルファ線)の正体
  2. β線(ベータ線)の正体
  3. γ線(ガンマ線)の正体
  4. ヘリウム原子核の構成(陽子2個、中性子2個)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. α線、β線、γ線のそれぞれの定義(正体)を思い出す。
  2. 「ヘリウムの原子核」が、どの放射線の定義に合致するかを判断する。

思考の道筋とポイント
この問題は、原子核物理学における最も基本的な知識の一つを問うています。放射性原子核から放出される放射線にはいくつかの種類がありますが、特に重要なのがα線、β線、γ線の3つです。これらの放射線は、それぞれ異なる粒子や電磁波の流れであり、その「正体」を区別して覚えることが不可欠です。問題文の「ヘリウムの原子核」というキーワードが、3つの選択肢のうちどれに対応するのかを特定します。

この設問における重要なポイント

  • α線(アルファ線): 正体は、陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\)) です。正の電荷 (\(+2e\)) を持ち、質量が大きいため電離作用は強いですが、透過力は弱く、紙1枚程度で遮蔽できます。
  • β線(ベータ線): 正体は、高速の電子 (\(e^-\)) です。原子核内の中性子が陽子に変化する際に放出されます。負の電荷 (\(-e\)) を持ち、透過力は中程度で、数ミリメートルのアルミニウム板などで遮蔽できます。
  • γ線(ガンマ線): 正体は、非常にエネルギーの高い電磁波(光子)です。原子核がα崩壊やβ崩壊を起こした後に、より安定な状態に移る際に放出されます。電荷を持たず、透過力が非常に強いため、厚い鉛やコンクリートでないと遮蔽できません。

具体的な解説と立式
この問題は、放射線の定義に関する知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • α線、β線、γ線の正体を上記「重要なポイント」で確認します。
  • α線の正体は「ヘリウムの原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))」です。
  • β線の正体は「電子 (\(e^-\))」です。
  • γ線の正体は「電磁波」です。
  • 問題では「ヘリウムの原子核はどれか」と問われているため、定義からα線が該当することがわかります。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • α線の正体: ヘリウム原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))
  • β線の正体: 電子 (\(e^-\))
  • γ線の正体: 電磁波
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

放射線にはいろいろな種類がありますが、代表的なものに「α線」「β線」「γ線」という3兄弟がいます。この問題は、「この3兄弟のうち、正体が『ヘリウムの原子核』なのは誰ですか?」というクイズです。

  • 長男の「α線」は、実は「陽子2個と中性子2個」がくっついた粒が飛んでくるものです。この粒は、ヘリウムという元素の原子核そのものです。
  • 次男の「β線」の正体は、電気の粒である「電子」です。
  • 三男の「γ線」の正体は、レントゲン写真で使われるX線よりもっと強力な「光の仲間(電磁波)」です。

したがって、「ヘリウムの原子核」という正体を持つのはα線です。

解答 α線

13 放射線

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射線の正体」です。不安定な原子核から放出される主要な放射線(α線、β線、γ線)が、それぞれどのような粒子や電磁波であるかを正確に理解しているかを確認します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. α線(アルファ線)の正体
  2. β線(ベータ線)の正体
  3. γ線(ガンマ線)の正体
  4. β崩壊のメカニズムの基本的な理解

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. α線、β線、γ線のそれぞれの定義(正体)を一つずつ確認する。
  2. その中で「電子」の定義に合致するものを選択する。

思考の道筋とポイント
この問題は、前問に引き続き、放射線の正体に関する基本的な知識を問うものです。α線、β線、γ線は性質が大きく異なるため、それぞれの正体を明確に区別して記憶しておくことが重要です。今回は「電子」がどの放射線に対応するかが問われています。3つの放射線の定義を正確に思い出せば、すぐに解答できる問題です。

この設問における重要なポイント

  • α線(アルファ線): 正体は、陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\)) です。正の電荷を持ちます。
  • β線(ベータ線): 正体は、高速の電子 (\(e^-\)) です。これは、原子核内の中性子が陽子と電子に変化する「β崩壊」という現象によって放出されます。負の電荷を持ちます。
  • γ線(ガンマ線): 正体は、エネルギーの非常に高い電磁波(光子)です。粒子ではなく、波の性質を持ち、電荷はありません。

具体的な解説と立式
この問題は、放射線の定義に関する知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • α線、β線、γ線の正体を上記「重要なポイント」で確認します。
  • α線の正体は「ヘリウムの原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))」です。
  • β線の正体は「電子 (\(e^-\))」です。
  • γ線の正体は「電磁波」です。
  • 問題では「電子はどれか」と問われているため、定義からβ線が該当することが明確にわかります。

β崩壊は、原子核内の中性子\(n\)が陽子\(p\)と電子\(e^-\)に変化する現象として理解できます(厳密には反電子ニュートリノも放出されます)。
$$ {}_{0}^{1}\text{n} \rightarrow {}_{1}^{1}\text{p} + e^- (+ \bar{\nu}_e) $$

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • α線の正体: ヘリウム原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))
  • β線の正体: 電子 (\(e^-\))
  • γ線の正体: 電磁波
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

放射線の代表的な3兄弟「α線」「β線」「γ線」の正体当てクイズの続きです。今回は「この中で、正体が『電子』なのは誰ですか?」という問題です。

  • α線の正体は「ヘリウムの原子核」でした。
  • β線の正体は、まさに電気の粒である「電子」そのものです。
  • γ線の正体は、レントゲン写真のX線よりも強力な「光の仲間(電磁波)」です。

したがって、「電子」の正体を持つのはβ線ということになります。

解答 β線

14 放射線

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射線の正体と分類」です。主要な放射線であるα線、β線、γ線が、それぞれ粒子なのか、それとも波(電磁波)なのかを正確に区別する知識を問います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. α線、β線、γ線の正体の明確な区別
  2. 「粒子」と「電磁波(波)」の基本的な違いの理解
  3. 電磁波のスペクトル(γ線、X線、可視光線など)に関する基本的な知識

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. α線、β線、γ線の正体を、それぞれの定義に基づいて確認する。
  2. その中で「電磁波」として分類されるものを特定する。

思考の道筋とポイント
これは、放射線の正体に関する一連の知識問題の総仕上げです。核心となるのは、α線とβ線が質量を持つ「粒子」の流れであるのに対し、γ線は質量(静止質量)を持たない「波(電磁波)」であるという、根本的な性質の違いを理解しているかという点です。「電磁波」と聞いて、目に見える光やレントゲンで使われるX線と同じ仲間であることをイメージできると、より理解が深まります。

この設問における重要なポイント

  • α線(アルファ線): 正体はヘリウムの原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))。これは陽子と中性子からなる粒子です。
  • β線(ベータ線): 正体は高速の電子 (\(e^-\))。これも粒子です。
  • γ線(ガンマ線): 正体は、非常にエネルギーの高い電磁波です。これは粒子ではなく、光子と呼ばれるエネルギーの塊が波として伝わる現象です。電荷も静止質量も持ちません。
  • 粒子と電磁波の区別: 物理学では、物質を構成する「粒子」と、エネルギーを運ぶ「波」を区別します。α線とβ線は前者、γ線は後者に分類されます。

具体的な解説と立式
この問題は、放射線の定義に関する知識を問うものであり、計算式を立てるものではありません。

  • α線、β線、γ線の正体を上記「重要なポイント」で再確認します。
  • α線は「ヘリウム原子核」という粒子です。
  • β線は「電子」という粒子です。
  • γ線は「電磁波」です。
  • 問題では「電磁波はどれか」と問われているため、定義からγ線が該当することがわかります。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • α線の正体: ヘリウム原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))
  • β線の正体: 電子 (\(e^-\))
  • γ線の正体: 電磁波
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

放射線の代表的な3兄弟「α線」「β線」「γ線」の正体当てクイズの最終問題です。今回は「この中で、正体が『電磁波』なのは誰ですか?」という問いです。

  • α線とβ線は、それぞれヘリウム原子核や電子といった「つぶつぶ(粒子)」が猛スピードで飛んでくる現象です。
  • 一方、γ線は、目に見える光や病院で使うX線と同じ「波の仲間(電磁波)」です。ただし、光やX線よりもずっとパワフルで、物を通り抜ける力が強いという特徴があります。

したがって、「電磁波」である放射線はγ線です。

解答 γ線

15 放射線

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射線の性質の比較」です。α線、β線、γ線の3つの主要な放射線が持つ「電離作用」と「透過力」という2つの重要な性質について、その強弱を比較し、理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. α線、β線、γ線の正体(粒子か電磁波か、電荷の有無、質量)。
  2. 電離作用の定義と、放射線のどの物理的特性に依存するかの理解。
  3. 透過力の定義と、放射線のどの物理的特性に依存するかの理解。
  4. 電離作用と透過力が、一般的にトレードオフ(相反する)の関係にあることの認識

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、α線、β線、γ線の物理的な特性(正体、電荷、質量)を整理する。
  2. 次に、電離作用が最も強い放射線を、その特性に基づいて判断する。
  3. 最後に、透過力が最も強い放射線を、同様にその特性に基づいて判断する。

思考の道筋とポイント
この問題は、放射線が物質中を通過する際にどのような振る舞いをするかを問うています。「電離作用」と「透過力」は、放射線の性質を特徴づける非常に重要な指標です。この2つの性質は、放射線の正体、特にその電荷の有無や大き、質量の大小と密接に関連しています。
一般的に、物質と相互作用しやすい(=電離作用が強い)放射線ほど、すぐにエネルギーを失ってしまうため、物質の奥深くまで進むことができません(=透過力が弱い)。この逆の関係性を理解することが、問題を解く上での最大のポイントとなります。

この設問における重要なポイント

  • 電離作用: 放射線が物質中の原子に衝突し、その原子から電子を弾き飛ばしてイオン化させる能力のことです。放射線の電荷が大きく、質量が大きいほど、周囲の原子との電気的な相互作用が強くなるため、電離作用は強くなります。
  • 透過力: 放射線が物質を通り抜ける能力のことです。物質との相互作用が弱いほど、エネルギーを失いにくく、遠くまで進むことができるため、透過力は強くなります。
  • 各放射線の性質の比較:
    • α線: 正体はヘリウム原子核 (\({}_{2}^{4}\text{He}\))。電荷が\(+2e\)と大きく、質量も電子の約\(7300\)倍と非常に重いため、電離作用が極めて強いです。その反面、すぐにエネルギーを失うため透過力は非常に弱く、空気中でも数センチメートル、紙1枚程度で止まります。
    • β線: 正体は電子 (\(e^-\))。電荷は\(-e\)で、α線よりはるかに軽いため、電離作用はα線より弱いです。透過力はα線より強く、数ミリメートルのアルミニウム板などで遮蔽されます。
    • γ線: 正体は電磁波。電荷も静止質量も持たないため、物質との相互作用が起こりにくく、電離作用は最も弱いです。その代わり、エネルギーを失いにくいため透過力は非常に強く、遮蔽するには厚い鉛やコンクリートが必要です。
  • 性質のまとめ:
    • 電離作用の強さ: α線 > β線 > γ線
    • 透過力の強さ: γ線 > β線 > α線

具体的な解説と立式
この問題は物理的な性質の比較であり、計算式を立てるものではありません。

  • 電離作用が最も強いのはどれか:
    電離作用は、放射線が持つ電荷の大きさと質量の大きさに強く影響されます。

    • α線: 電荷\(+2e\)、質量大
    • β線: 電荷\(-e\)、質量小
    • γ線: 電荷\(0\)、質量\(0\)

    電荷が最も大きく、質量も最も大きいα線が、周囲の原子に最も強く作用し、電子を弾き飛ばす能力が最も高くなります。したがって、電離作用が最も強いのはα線です。

  • 透過力が最も強いのはどれか:
    透過力は、物質とどれだけ相互作用しにくいかによって決まります。

    • α線は電離作用が強いため、すぐにエネルギーを失い、透過力は最も弱くなります。
    • β線は中程度の相互作用をします。
    • γ線は電荷も質量も持たないため、物質と相互作用する確率が最も低く、エネルギーを失いにくいです。そのため、物質の奥深くまで通り抜けることができます。したがって、透過力が最も強いのはγ線です。

使用した物理公式
この問題で直接使用する数式はありません。

  • 電離作用の強さの順序: α線 > β線 > γ線
  • 透過力の強さの順序: γ線 > β線 > α線
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

放射線を3種類のボールに例えて、壁を通り抜ける様子を想像してみましょう。

  • α線: 大きくて重い「ボーリングの球」
  • β線: 小さくて軽い「パチンコ玉」
  • γ線: 姿が見えず、すり抜ける「幽霊」のような光
  • 電離作用(壁を傷つける力):
    ボーリングの球(α線)は、重くて大きいので、壁に当たると大きな傷をつけます(電離作用が強い)。パチンコ玉(β線)はそれなりに傷をつけますが、ボーリングの球ほどではありません。幽霊(γ線)はほとんど壁を傷つけません(電離作用が弱い)。
    よって、電離作用が最も強いのはα線です。
  • 透過力(壁を通り抜ける力):
    ボーリングの球(α線)は、壁に大きな傷をつける代わりに、すぐに壁にめり込んで止まってしまいます(透過力が弱い)。パチンコ玉(β線)はもう少し奥まで進めます。幽霊(γ線)は、壁とほとんどぶつからずに、すーっと奥まで通り抜けてしまいます(透過力が強い)。
    よって、透過力が最も強いのはγ線です。
解答 電離作用:α線, 透過力:γ線

16 放射線の測定単位

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射能の単位の定義」です。放射性物質が持つ放射線を出す能力の強さを表す単位について、その名称と意味を正確に理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 放射能の定義(原子核が崩壊する能力)。
  2. ベクレル(Bq)の定義(1秒あたりの原子核の崩壊数)。
  3. 吸収線量(グレイ Gy)との違い
  4. 線量当量(シーベルト Sv)との違い

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「放射能の強さ」という物理量が、具体的に何を測定しているのかを理解する。
  2. その物理量に対応する国際単位系(SI)の単位を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、放射能の強さを表す単位「ベクレル(Bq)」の定義を問う知識問題です。放射線に関連する単位には、他にも「グレイ(Gy)」や「シーベルト(Sv)」があり、これらが何を測定するための単位なのかを区別して理解することが非常に重要です。「ベクレル」は放射性物質そのものが持つ能力(放射線を出す能力)の大きさを表す単位であるのに対し、「グレイ」や「シーベルト」は放射線が物質や人体に与える影響の大きさを表す単位である、という根本的な違いを意識することがポイントです。

この設問における重要なポイント

  • 放射能 (Activity): 放射性物質が放射線を出す能力のこと。原子核が不安定で、自然に崩壊していく性質の強さを表します。
  • ベクレル (Bq): 放射能の強さを表すSI単位です。1ベクレルは、1秒間に1個の原子核が崩壊することを意味します。この単位は、放射性物質の「量」や「勢い」を示すものであり、放出される放射線の種類やエネルギー、人体への影響は考慮しません。
  • (参考)吸収線量 (Absorbed Dose): 単位はグレイ (Gy)。放射線が物質に当たったとき、その物質が吸収したエネルギーの量を表します。\(1 \, \text{Gy}\)は、物質\(1 \, \text{kg}\)あたり\(1 \, \text{J}\)のエネルギーを吸収したことを意味します (\(1 \, \text{Gy} = 1 \, \text{J/kg}\))。
  • (参考)線量当量 (Equivalent Dose) / 実効線量 (Effective Dose): 単位はシーベルト (Sv)。吸収した放射線が人体に与える影響の大きさを表す単位です。放射線の種類(α線, β線, γ線など)によって人体への影響度が異なるため、吸収線量(グレイ)に放射線の種類ごとの重み係数(放射線荷重係数)を掛けて計算されます。同じ\(1 \, \text{Gy}\)でも、α線はγ線よりも人体への影響が大きいため、シーベルトで換算すると大きな値になります。

具体的な解説と立式
この問題は単位の名称を問う知識問題であり、立式はありません。
問題文は「放射能の強さ」の単位を問うています。
放射能とは、放射性物質が持つ「1秒あたりに何回、原子核が崩壊するか」という能力のことです。
この能力を表す単位が「ベクレル(Bq)」です。
定義は以下の通りです。
$$ 1 \, \text{Bq} = 1 \text{ 回の崩壊} / \text{秒} $$
例えば、放射能が\(100 \, \text{Bq}\)の物質は、1秒間に平均して100個の原子核が放射線を出して崩壊していることを示します。

使用した物理公式

  • ベクレル(Bq)の定義: \(1 \, \text{Bq}\)は、1秒間に1個の原子核が崩壊する放射能の強さ。
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

放射線について話すとき、いろいろな単位が出てきて混乱しやすいので、例えで考えてみましょう。

  • ベクレル(Bq): 「火のついた線香花火」を想像してください。ベクレルは、この線香花火から「1秒間に何個の火花が飛び散っているか」を表す単位です。火花の数が多いほど、ベクレルは大きい値になります。これは放射性物質そのものの勢いを示します。
  • グレイ(Gy): 飛び散った火花が「自分の手に当たったとき、どれだけ熱いエネルギーを受け取ったか」を表すのがグレイです。
  • シーベルト(Sv): 同じ熱さの火花でも、手のひらに当たるのと、目の近くに当たるのとでは危険度が違いますよね。シーベルトは、その「危険度(人体への影響)」まで考えた単位です。

この問題で聞かれているのは「放射能の強さ」、つまり「線香花火の勢い(1秒あたりの火花の数)」なので、答えはベクレル(Bq)になります。

解答 Bq (ベクレル)

17 放射線の測定単位

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射線の人体への影響を表す単位」です。放射線を浴びた際に、人体が受ける生物学的な影響の度合いを評価するための単位「実効線量」について、その名称を正確に理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 実効線量(シーベルト Sv)の定義
  2. 放射能(ベクレル Bq)との違い:放射線を出す側の能力の単位。
  3. 吸収線量(グレイ Gy)との違い:吸収した物理的なエネルギー量の単位。
  4. 放射線の種類による影響の違い(放射線荷重係数)と、体の部位による放射線感受性の違い(組織荷重係数)が考慮されていること

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「実効線量」という物理量が、人体への総合的なリスクを表す指標であることを理解する。
  2. この指標に対応する単位を特定する。

思考の道筋とポイント
この問題は、放射線防護の分野で最も重要となる単位「シーベルト(Sv)」に関する知識を問うています。前問で学んだ「ベクレル(Bq)」が放射性物質の能力(勢い)を表すのに対し、「シーベルト(Sv)」は放射線を受ける側、特に人体への影響(リスク)を表す単位です。なぜ「吸収したエネルギーの量(グレイ)」だけでは不十分で、「実効線量(シーベルト)」という複雑な指標が必要なのかを理解することがポイントです。それは、放射線の種類(α線、β線、γ線など)や、放射線が当たった体の部位(臓器)によって、同じエネルギーを吸収しても人体へのダメージが異なるため、それらの違いを補正して総合的なリスクを評価する必要があるからです。

この設問における重要なポイント

  • ベクレル (Bq): 放射能の強さ。放射性物質が1秒間に何回崩壊するか。
  • グレイ (Gy): 吸収線量。放射線から物質が吸収したエネルギーの量 (\(\text{J/kg}\))。
  • シーベルト (Sv): 放射線が人体に及ぼす影響の度合いを表す単位。実効線量や線量当量に用いられます。
  • 線量当量 (Equivalent Dose): 吸収線量(Gy)に、放射線の種類ごとの影響の強さを示す「放射線荷重係数」を掛け合わせたもの。単位はシーベルト(Sv)です。例えば、α線はγ線よりも生物への影響が大きいため、放射線荷重係数は大きな値(20)に設定されています。
  • 実効線量 (Effective Dose): 各臓器・組織が受けた線量当量(Sv)に、それぞれの臓器・組織の放射線感受性の違い(がんになりやすさなど)を示す「組織荷重係数」を掛けて、全身について合計したもの。全身の確率的影響(がんなど)のリスクを評価するための指標です。単位は同じくシーベルト(Sv)です。健康診断などで耳にする「被ばく線量」は、通常この実効線量を指します。

具体的な解説と立式
この問題は単位の名称を問う知識問題であり、立式はありません。
問題文は「放射線の実効線量」の単位を問うています。
実効線量は、放射線が人体に与える総合的な影響(リスク)を評価するための指標であり、その単位は「シーベルト(Sv)」です。

参考として、実効線量は以下のように計算されます。
1. まず、各臓器・組織が吸収したエネルギーの量である吸収線量(単位: グレイ)を測定または計算します。
2. 次に、放射線の種類による影響の違いを補正するため、吸収線量に放射線荷重係数を掛けて、各臓器・組織の線量当量(単位: シーベルト)を求めます。
$$ (\text{線量当量}) [\text{Sv}] = (\text{吸収線量}) [\text{Gy}] \times (\text{放射線荷重係数}) $$
3. 最後に、臓器・組織ごとの放射線感受性の違いを補正するため、それぞれの線量当量に組織荷重係数を掛け、全身について足し合わせることで実効線量(単位: シーベルト)が算出されます。
$$ (\text{実効線量}) [\text{Sv}] = \sum_{\text{組織T}} \left( (\text{組織Tの線量当量}) [\text{Sv}] \times (\text{組織Tの組織荷重係数}) \right) $$

使用した物理公式

  • シーベルト(Sv)の定義: 放射線が人体に及ぼす影響の度合い(実効線量や線量当量)を表す単位。
計算過程

この問題には計算過程はありません。

この設問の平易な説明

放射線の単位を、再び線香花火の例えで考えてみましょう。

  • ベクレル(Bq) は「1秒間に飛び散る火花の数」でした(線香花火の勢い)。
  • グレイ(Gy) は「手に当たった火花から受け取った熱エネルギーの総量」でした(物理的な熱さ)。
  • シーベルト(Sv) は「その火傷がどれくらい危険か」という総合的なリスク評価です。

今回の「実効線量」というのは、このシーベルトの中でも特に、「放射線の種類(火花の質、例えば大きい火花か小さい火花か)」と「当たった体の場所(頑丈な手のひらか、デリケートな目か)」の両方を細かく計算して、「全身へのトータルの危険度」を評価したものです。
私たちが健康診断やニュースで「年間〇〇ミリシーベルトの被ばく」と聞くのは、この実効線量のことを指しています。したがって、答えはシーベルト(Sv)です。

解答 Sv (シーベルト)
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