「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第23章】基本問題400~404

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基本問題

400 直流回路

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: 分圧・分流の法則を積極的に活用する解法
      • 模範解答が、各部分の電圧を計算してからオームの法則で電流を求めるのに対し、別解では回路全体の電圧や電流を、抵抗の比を用いて直接的に分配する「分圧の法則」や「分流の法則」を全面的に活用します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 電圧や電流が抵抗の比によってどのように分配されるかという、回路の性質への理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: オームの法則を繰り返し適用するだけでなく、比例関係に着目したエレガントな解法を学ぶことで、問題解決の選択肢が広がります。
    • 解法の効率化: 特に比が簡単な整数の場合、分圧・分流の法則を用いることで、計算ステップを減らし、より迅速かつ簡潔に解にたどり着くことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「直列・並列の混合回路の解析」です。回路の各部分がどのように接続されているかを正確に把握し、合成抵抗の計算やオームの法則、キルヒホッフの法則などを段階的に適用して、各部分の電流を求める総合力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 回路の構造分析: 回路を単純な部分に分解し、どこが直列でどこが並列かを正確に把握する能力。
  2. 合成抵抗の計算: 並列部分の合成抵抗 (\(\displaystyle\frac{1}{R} = \displaystyle\frac{1}{R_1} + \displaystyle\frac{1}{R_2}\)) と、直列部分の合成抵抗 (\(R = R_1 + R_2\)) を正しく計算できること。
  3. オームの法則: 回路全体や、回路の各部分に対して、\(V=IR\) を適切に適用できること。
  4. キルヒホッフの法則: 電圧則(閉回路の電圧降下の和は電源電圧に等しい)と電流則(分岐点での電流の和は一定)を理解し、適用できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、回路を単純化するために、並列接続されている\(R_2\)と\(R_3\)の合成抵抗\(R_{23}\)を求めます。
  2. 次に、\(R_1\)と\(R_{23}\)が直列に接続されているとみなし、回路全体の合成抵抗\(R\)を求めます。
  3. 回路全体の合成抵抗\(R\)と電源電圧\(V\)から、オームの法則を用いて回路全体を流れる電流\(I_1\)を求めます。
  4. \(I_1\)が流れることで\(R_1\)にかかる電圧\(V_1\)を計算し、全体の電圧から\(V_1\)を引くことで、並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)を求めます。
  5. 最後に、並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)を用いて、オームの法則から各分岐を流れる電流\(I_2, I_3\)を求めます。

電流 \(I₁, I₂, I₃ \)を求める

思考の道筋とポイント
この問題は、直列部分と並列部分が混在する回路です。このような回路を解く定石は、「単純化できる部分から合成していく」ことです。まず、並列接続された\(R_2\)と\(R_3\)を一つの合成抵抗\(R_{23}\)とみなします。すると、回路は\(R_1\)と\(R_{23}\)の単純な直列回路と見なせるようになります。この単純化された回路について、全体の合成抵抗\(R\)を求め、全体の電流\(I_1\)を計算し、そこから各部分の電圧、そして各部分の電流へと、段階的に分析を進めていきます。
この設問における重要なポイント

  • 複雑な回路は、部分的な合成抵抗を求めて単純化する。
  • 「全体(マクロ)から部分(ミクロ)へ」と分析を進める。
  • 各ステップで、オームの法則やキルヒホッフの法則を適切に使い分ける。

具体的な解説と立式
ステップ1: 並列部分の合成抵抗\(R_{23}\)を求める

抵抗\(R_2\)と\(R_3\)は並列接続なので、その合成抵抗を\(R_{23}\)とすると、以下の式が成り立ちます。
$$ \frac{1}{R_{23}} = \frac{1}{R_2} + \frac{1}{R_3} $$

ステップ2: 回路全体の合成抵抗\(R\)を求める

抵抗\(R_1\)と、ステップ1で求めた合成抵抗\(R_{23}\)は直列接続です。したがって、回路全体の合成抵抗\(R\)は、これらの和となります。
$$ R = R_1 + R_{23} $$

ステップ3: 全体の電流\(I_1\)を求める

回路全体を、合成抵抗\(R\)を持つ一つの抵抗とみなします。この抵抗に電源電圧\(V=42\) V がかかっているので、オームの法則から回路全体を流れる電流\(I_1\)を求めます。
$$ I_1 = \frac{V}{R} $$

ステップ4: 並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)を求める

全体の電流\(I_1\)が抵抗\(R_1\)を流れることによる電圧降下\(V_1\)を計算します。
$$ V_1 = R_1 I_1 $$
電源電圧\(V\)から\(V_1\)を引いた残りが、並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)となります(キルヒホッフの第2法則)。
$$ V_{23} = V – V_1 $$

ステップ5: 分岐電流\(I_2, I_3\)を求める

並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)は、\(R_2\)と\(R_3\)の両方に共通してかかります。したがって、それぞれの抵抗についてオームの法則を適用し、\(I_2, I_3\)を求めます。
$$ I_2 = \frac{V_{23}}{R_2} $$
$$ I_3 = \frac{V_{23}}{R_3} $$

使用した物理公式

  • 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \displaystyle\frac{1}{R_1} + \displaystyle\frac{1}{R_2}\)
  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
  • オームの法則: \(V = IR\)
  • キルヒホッフの法則
計算過程

ステップ1の計算:
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{23}} &= \frac{1}{10} + \frac{1}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{3+2}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{6.0}
\end{aligned}
$$
よって、\(R_{23} = 6.0\) Ω となります。

ステップ2の計算:
$$
\begin{aligned}
R &= 8.0 + 6.0 \\[2.0ex]
&= 14.0
\end{aligned}
$$
よって、全体の合成抵抗は \(14.0\) Ω です。

ステップ3の計算:
$$
\begin{aligned}
I_1 &= \frac{42}{14.0} \\[2.0ex]
&= 3.0
\end{aligned}
$$
よって、電流 \(I_1\) は \(3.0\) A です。

ステップ4の計算:
$$
\begin{aligned}
V_1 &= 8.0 \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 24
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_{23} &= 42 – 24 \\[2.0ex]
&= 18
\end{aligned}
$$
よって、並列部分にかかる電圧は \(18\) V です。

ステップ5の計算:
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{18}{10} \\[2.0ex]
&= 1.8
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_3 &= \frac{18}{15} \\[2.0ex]
&= 1.2
\end{aligned}
$$
検算として、\(I_2 + I_3 = 1.8 + 1.2 = 3.0\) A となり、分岐前の電流\(I_1\)と一致することを確認できます。

この設問の平易な説明

この少し複雑な回路を解くコツは、まず「ごちゃごちゃした部分をスッキリさせる」ことです。右側の並列部分を合体させて一つの抵抗(合成抵抗)にしてしまいます。すると、回路は2つの抵抗が直列につながっただけのシンプルな形になります。
このシンプルになった回路で、まず全体の抵抗、次に全体の電流\(I_1\)を計算します。
\(I_1\)がわかれば、最初の抵抗\(R_1\)でどれだけ電圧が使われるかがわかります。全体の電圧からその分を引けば、残りが並列部分で使われる電圧です。
最後に、この並列部分の電圧を使って、分かれ道である\(R_2\)と\(R_3\)に流れる電流\(I_2, I_3\)をそれぞれ計算すれば、すべての答えが求まります。

結論と吟味

各電流は \(I_1=3.0\) A, \(I_2=1.8\) A, \(I_3=1.2\) A となります。一連の計算は物理法則に忠実であり、途中の検算でも矛盾がないことから、妥当な結果であると言えます。

解答 \(I_1=3.0\) A, \(I_2=1.8\) A, \(I_3=1.2\) A
別解: 分圧・分流の法則を積極的に活用する解法

思考の道筋とポイント
この別解では、電圧や電流を計算する際に、オームの法則だけでなく「分圧の法則」と「分流の法則」を積極的に用います。これらの法則は、抵抗の比率に着目することで、より直接的に電圧や電流の分配を計算するテクニックです。
この設問における重要なポイント

  • 直列回路では、電圧は抵抗値の比に比例して分配される(分圧)。
  • 並列回路では、電流は抵抗値の逆数の比に比例して分配される(分流)。

具体的な解説と立式
ステップ1, 2: 全体の合成抵抗\(R\)を求める

主たる解法と同様に、まず並列部分の合成抵抗\(R_{23}\)を求め、次に全体の合成抵抗\(R\)を求めます。
$$ R_{23} = 6.0 \text{ [Ω]} $$
$$ R = R_1 + R_{23} = 14.0 \text{ [Ω]} $$

ステップ3: 全体の電流\(I_1\)を求める

主たる解法と同様に、オームの法則から\(I_1\)を求めます。
$$ I_1 = \frac{V}{R} = \frac{42}{14.0} = 3.0 \text{ [A]} $$

ステップ4′: 並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)を「分圧の法則」で求める

回路は\(R_1\)と\(R_{23}\)の直列接続とみなせます。全体の電圧\(V=42\) V は、これらの抵抗の比 \(R_1:R_{23} = 8.0:6.0 = 4:3\) に応じて分配されます。\(V_{23}\)を分圧の法則で直接計算します。
$$ V_{23} = V \times \frac{R_{23}}{R_1 + R_{23}} $$

ステップ5′: 分岐電流\(I_2, I_3\)を「分流の法則」で求める

全体の電流\(I_1=3.0\) A は、並列部分で\(I_2\)と\(I_3\)に分かれます。このとき、電流は抵抗の逆数の比 \(I_2:I_3 = \displaystyle\frac{1}{R_2}:\displaystyle\frac{1}{R_3} = R_3:R_2 = 15:10 = 3:2\) に分配されます。この比を使って\(I_1\)を分配します。
$$ I_2 = I_1 \times \frac{R_3}{R_2+R_3} $$
$$ I_3 = I_1 \times \frac{R_2}{R_2+R_3} $$

使用した物理公式

  • 合成抵抗の公式
  • 分圧の法則
  • 分流の法則
計算過程

ステップ4’の計算:
$$
\begin{aligned}
V_{23} &= 42 \times \frac{6.0}{8.0 + 6.0} \\[2.0ex]
&= 42 \times \frac{6.0}{14.0} \\[2.0ex]
&= 3 \times 6.0 \\[2.0ex]
&= 18
\end{aligned}
$$
この電圧から、\(I_2 = \frac{18}{10}=1.8\) A, \(I_3 = \frac{18}{15}=1.2\) A と計算することもできます。

ステップ5’の計算:

電流の比は \(I_2:I_3 = 3:2\) なので、\(I_1=3.0\) A をこの比で分配します。
$$
\begin{aligned}
I_2 &= 3.0 \times \frac{3}{3+2} \\[2.0ex]
&= 3.0 \times \frac{3}{5} \\[2.0ex]
&= 1.8
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_3 &= 3.0 \times \frac{2}{3+2} \\[2.0ex]
&= 3.0 \times \frac{2}{5} \\[2.0ex]
&= 1.2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この別解は、計算のショートカット技を使うようなものです。
まず、全体の電流\(I_1\)までは同じように計算します。
次に、並列部分に流れる電流\(I_2, I_3\)を求める際に、「電流は抵抗が小さい方に多く流れる」という性質を利用します。抵抗の比が \(R_2:R_3 = 10:15 = 2:3\) なので、電流はその逆比の \(3:2\) に分かれます。全体の電流\(I_1=3.0\)Aを\(3:2\)に分ける計算をすれば、一気に\(I_2\)と\(I_3\)が求まります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ \(I_1=3.0\) A, \(I_2=1.8\) A, \(I_3=1.2\) A という結果が得られました。分圧・分流の法則は、計算を簡略化する強力なツールであり、使いこなせると回路問題への対応力が大きく向上します。

解答 \(I_1=3.0\) A, \(I_2=1.8\) A, \(I_3=1.2\) A

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 回路の階層的解析(単純化):
    • 核心: この問題のような混合回路を解くための最も重要な思考法は、回路を「階層」として捉え、単純化していくことです。
    • 理解のポイント:
      • まず、回路の最も内側の構造である「\(R_2\)と\(R_3\)の並列部分」を、並列の合成抵抗の公式を用いて「\(R_{23}\)」という一つの抵抗部品に置き換えます。
      • すると、元の複雑な回路は「\(R_1\)と\(R_{23}\)が直列につながっただけの単純な回路」という、より扱いやすい階層に変換されます。
      • このように、複雑な部分を一つの等価な部品とみなして段階的に単純化していく思考プロセスが、あらゆる電気回路の問題を解く上での基本戦略となります。
  • マクロとミクロの往復思考:
    • 核心: 回路解析は、回路全体(マクロ)の視点と、各部品(ミクロ)の視点を往復することで進められます。
    • 理解のポイント:
      1. まず、回路全体の合成抵抗\(R\)を求め、全体の電圧\(V\)とオームの法則から、回路全体を流れる電流\(I_1\)を求めます(マクロな解析)。
      2. 次に、その結果を使って、各部品である\(R_1\)にかかる電圧\(V_1\)や、並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)を計算します(ミクロな解析へ)。
      3. 最後に、その部分的な電圧\(V_{23}\)を使って、さらにミクロな分岐電流\(I_2, I_3\)を求めます。

      この「全体から部分へ」という体系的な分析の流れを理解することが、複雑な回路を迷わずに解くための鍵となります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 多段の直列・並列回路: 並列部分の分岐先にさらに直列抵抗があるなど、より複雑な入れ子構造の回路です。解き方の本質は同じで、最も内側の部分から順に合成抵抗を計算し、外側に向かって段階的に回路を単純化していきます。
    • キルヒホッフの法則が必須の回路: 抵抗がブリッジ状に組まれているなど、直列・並列に単純化できない回路です。この場合は、ループ(閉路)ごとにキルヒホッフの電圧則の式を、分岐点ごとに電流則の式を立てて、連立方程式として解く必要があります。本問の考え方は、そのより高度な解析の基礎となります。
    • コンデンサーやコイルを含む交流回路: 直流回路における抵抗の合成の考え方は、交流回路における「インピーダンス」の合成という形でそのまま応用されます。この問題の階層的な解析手法は、交流回路を学ぶ上での重要な土台となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の構造を分解する: 回路図を見て、まずどこが並列でどこが直列か、ブロックごとに色分けしたり囲ったりして構造を明確に把握します。
    2. 解法のロードマップを描く: 計算を始める前に、「まず\(R_2, R_3\)を合成して\(R_{23}\)を作る → 次に\(R_1\)と\(R_{23}\)を合成して全体の\(R\)を作る → 全体の\(V\)と\(R\)から\(I_1\)を出す → \(I_1\)から\(V_1\)を出し、\(V-V_1\)で\(V_{23}\)を出す → \(V_{23}\)から\(I_2, I_3\)を出す」というように、解法の道筋(ロードマップ)を頭の中やメモに描くことが有効です。
    3. 分圧・分流の法則が使えるか検討する: 抵抗の比が簡単な整数比になる場合、別解で用いた「分圧の法則」や「分流の法則」を使うと計算が楽になることが多いです。計算の選択肢として常に持っておくと、解法の幅が広がります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 合成抵抗の計算ミス(特に並列):
    • 誤解: \(\displaystyle\frac{1}{R_{23}} = \displaystyle\frac{1}{10} + \displaystyle\frac{1}{15}\) を計算して \(\displaystyle\frac{1}{6.0}\) となった後、逆数をとるのを忘れて \(R_{23} = \displaystyle\frac{1}{6.0}\) Ωとしてしまう。
    • 対策: 「並列抵抗の公式は“逆数”の和である」と強く意識し、計算の最後に必ず逆数をとることを習慣づけます。2つの抵抗の場合は、和分の積の公式 \(R = \displaystyle\frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\) を使うと、このミスを根本的に防げます。
  • オームの法則の適用範囲の誤り:
    • 誤解: \(I_2\)を求める際に、回路全体の電圧\(V=42\)Vを\(R_2\)で割ってしまう (\(I_2 = 42/10\))。
    • 対策: オームの法則 \(V=IR\) は、必ず「その抵抗にかかる電圧」と「その抵抗を流れる電流」の間の関係式であると徹底します。\(I_2\)を求めるには、\(R_2\)に実際にかかっている電圧\(V_{23}\)を使わなければなりません。\(V_2 = I_2 R_2\) のように、添字を付けて対応関係を明確にする癖をつけましょう。
  • 分流の法則の混同:
    • 誤解: \(I_2\)(\(R_2\)に流れる電流)を求める際に、分子に自分の抵抗\(R_2\)を置いてしまう (\(I_2 = I_1 \times \displaystyle\frac{R_2}{R_2+R_3}\))。
    • 対策: 「電流は流れやすい方(抵抗が小さい方)に多く流れる」という物理的イメージを持つことが重要です。電流の分配比は抵抗の「逆比」(\(I_2:I_3 = R_3:R_2\))になるため、\(I_2\)を求める式の分子には相手の抵抗\(R_3\)が来ると覚えましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 合成抵抗の公式を選んだ理由:
    • 選定理由: 複雑な回路を、より単純で扱いやすい形に「等価変換」するため。これにより、回路全体を一つの抵抗とみなすことができ、オームの法則を全体に適用できるようになります。
    • 適用根拠: 合成抵抗の公式は、キルヒホッフの法則とオームの法則から数学的に導出されたものです。したがって、この公式を用いて回路を単純化することは、基本法則に基づいた正当な操作です。
  • キルヒホッフの電圧則(\(V_{23} = V – V_1\))を選んだ理由:
    • 選定理由: 並列部分にかかる電圧\(V_{23}\)を求めるため。\(V_{23}\)は直接測定できませんが、全体の電圧\(V\)と、計算可能な\(V_1\)との関係から導出できます。
    • 適用根拠: これはエネルギー保存則の現れです。電源が供給したエネルギー(電位の上昇)は、回路の各部分で消費されるエネルギー(電位の下降)の和に等しいという法則(キルヒホッフの第2法則)に基づいています。したがって、\(V = V_1 + V_{23}\) という関係が成り立ちます。
  • 分流の法則を選んだ理由(別解):
    • 選定理由: 電流の分配を、電圧計算を介さずに、抵抗の比だけから直接計算するため。計算ステップを短縮し、効率化を図ることができます。
    • 適用根拠: 並列接続では、各分岐にかかる電圧が等しい(\(V_{23} = I_2 R_2 = I_3 R_3\))という物理的な事実から、\(I_2:I_3 = R_3:R_2\) という関係が導かれます。この性質に基づいているため、適用は正当です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 段階的な計算とメモ: この問題のように計算ステップが多い場合、各ステップの結果(\(R_{23}\), \(R\), \(I_1\), \(V_1\), \(V_{23}\)など)を、回路図の脇などに明確にメモしながら進めることが有効です。これにより、思考が整理され、後のステップでどの値を使えばよいか一目瞭然になります。
  • 分数の通分を正確に: \(R_{23}\)を求める際の \(\displaystyle\frac{1}{10} + \displaystyle\frac{1}{15}\) のような計算では、最小公倍数(30)を素早く見つけ、\(\displaystyle\frac{3+2}{30}\) のように丁寧に計算します。焦って間違えやすいポイントです。
  • 検算の徹底:
    • 電流の検算: 最終的に求めた\(I_2\)と\(I_3\)を足して、分岐前の電流\(I_1\)と一致するかを確認します (\(1.8 + 1.2 = 3.0\))。これはキルヒホッフの電流則を用いた強力な検算になります。
    • 電圧の検算: 最終的に求めた電流値から各部分の電圧を再計算し、それらの和が電源電圧と一致するかを確認します (\(V_1 = 8.0 \times 3.0 = 24\)V, \(V_{23} = 10 \times 1.8 = 18\)V, \(24+18=42\)V)。
  • 簡単な整数比への変換: 別解のように、抵抗の比や電流の比を、計算の早い段階で簡単な整数比(例: \(15:10 \rightarrow 3:2\))に直すことで、その後の按分計算が楽になり、ミスを減らせます。

401 電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)のkWh計算の別解: ジュール(J)から直接換算する解法
      • 模範解答が、電力(W)と時間(h)からワット時(Wh)を計算し、それをキロワット時(kWh)に変換するのに対し、別解ではまずジュール(J)で電力量を計算し、その後でジュールとキロワット時の関係式を用いて直接換算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: ジュール(J)がエネルギーの基本単位(SI単位)であり、キロワット時(kWh)は実用的な単位であるという関係性が明確になります。\(1 \text{ kWh} = 3.6 \times 10^6 \text{ J}\) という、単位間の本質的な換算係数の理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: 単位換算のアプローチが複数あることを知ることで、問題に応じてより計算しやすい方法を選択する能力が養われます。
    • 解法の検証: 異なるルートで単位換算を行うことで、計算結果の確からしさを高めることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電力と電力量の計算および単位換算」です。電力と電力量の違いを明確に理解し、それぞれの計算式を正しく適用できるか、また、物理学の基本単位であるジュール(J)と、電気料金などで使われる実用的な単位であるキロワット時(kWh)の間の単位換算ができるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電力(P)の定義: 単位時間(1秒)あたりに消費される電気エネルギーのこと。単位はワット(W)。電圧\(V\)と電流\(I\)を用いて \(P=IV\) と計算される。
  2. 電力量(W)の定義: ある時間\(t\)の間に消費された電気エネルギーの総量のこと。電力\(P\)に時間\(t\)を掛けて \(W=Pt\) と計算される。
  3. 単位系の理解:
    • ジュール(J): エネルギーのSI基本単位。\(1 \text{ J} = 1 \text{ W} \times 1 \text{ s}\) の関係がある。
    • キロワット時(kWh): 電力量の実用的な単位。\(1 \text{ kWh}\) は \(1 \text{ kW} (=1000 \text{ W})\) の電力を \(1\) 時間 (\(h\)) 使い続けたときの電力量。
  4. 単位換算: 時間の単位(分→秒、分→時間)や、電力の単位(W→kW)、電力量の単位(J→kWh)を正しく変換できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた電圧と電流の値から、電力の基本公式 \(P=IV\) を用いて消費電力\(P\)を計算します。
  2. (2)では、まず(1)で求めた電力\(P\)と、秒に換算した時間\(t\)を用いて、電力量\(W\)をジュール(J)単位で計算します。次に、電力\(P\)をキロワット(kW)に、時間\(t\)を時間(h)にそれぞれ換算し、それらを掛け合わせることで電力量をキロワット時(kWh)単位で求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
ドライヤーで消費される電力\(P\)を求めます。問題文に電圧\(V=1.0 \times 10^2\) V と電流\(I=6.0\) A が与えられているので、電力、電圧、電流を関係づける最も基本的な公式 \(P=IV\) を用いて計算します。
この設問における重要なポイント

  • 電力、電圧、電流の関係式 \(P=IV\) を正しく適用する。
  • 計算結果の有効数字に注意する。

具体的な解説と立式
電力\(P\)、電圧\(V\)、電流\(I\)の関係式は以下の通りです。
$$ P = IV $$

使用した物理公式

  • 電力の公式: \(P = IV\)
計算過程

与えられた値 \(V=1.0 \times 10^2\) V, \(I=6.0\) A を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= (1.0 \times 10^2) \times 6.0 \\[2.0ex]
&= 100 \times 6.0 \\[2.0ex]
&= 600 \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^2
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字が2桁(1.0, 6.0)なので、答えも有効数字2桁で表します。

この設問の平易な説明

電力(単位:ワット)は、電気製品がどれくらいの勢いで電気を消費するかを表す量で、「電圧×電流」という簡単な掛け算で計算できます。問題に書かれている電圧と電流の値をそのまま掛け合わせるだけです。

結論と吟味

このドライヤーで消費される電力は \(6.0 \times 10^2\) W (または 600 W) です。これは基本的な公式の適用であり、妥当な結果です。

解答 (1) \(6.0 \times 10^2\) W

問(2)

思考の道筋とポイント
このドライヤーを1.0分間使用したときの消費電力量\(W\)を、ジュール(J)とキロワット時(kWh)の2つの単位で求めます。

ジュール(J)での計算:

電力量は「電力×時間」で計算できます。物理計算の基本単位(SI単位)に合わせて、電力はワット(W)、時間は秒(s)で計算します。これにより、電力量はジュール(J)で求まります。

キロワット時(kWh)での計算:

キロワット時(kWh)で求めるには、電力の単位をキロワット(kW)、時間の単位を時間(h)にそれぞれ換算してから掛け合わせる必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 電力量は「電力×時間」で計算される。
  • ジュール(J)で求める場合: 時間の単位を秒(s)に換算する。(\(1.0 \text{分} = 60 \text{秒}\))
  • キロワット時(kWh)で求める場合: 電力の単位をキロワット(kW)に、時間の単位を時間(h)に換算する。(\(1 \text{ kW} = 1000 \text{ W}\), \(1 \text{ 分} = \displaystyle\frac{1}{60} \text{ h}\))

具体的な解説と立式
ジュール(J)での計算:

電力量を\(W_{\text{J}}\)、電力を\(P\)、時間を\(t_{\text{s}}\) (秒単位)とすると、
$$ W_{\text{J}} = P \times t_{\text{s}} $$

キロワット時(kWh)での計算:

電力量を\(W_{\text{kWh}}\)、電力を\(P_{\text{kW}}\) (kW単位)、時間を\(t_{\text{h}}\) (h単位)とすると、
$$ W_{\text{kWh}} = P_{\text{kW}} \times t_{\text{h}} $$

使用した物理公式

  • 電力量の公式: \(W = Pt\)
計算過程

ジュール(J)での計算:

(1)で求めた \(P = 6.0 \times 10^2\) W と、\(t_{\text{s}} = 1.0 \text{分} = 60\) s を代入します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{J}} &= (6.0 \times 10^2) \times 60 \\[2.0ex]
&= 600 \times 60 \\[2.0ex]
&= 36000 \\[2.0ex]
&= 3.6 \times 10^4 \text{ [J]}
\end{aligned}
$$

キロワット時(kWh)での計算:

まず、単位を換算します。

電力: \(P = 6.0 \times 10^2 \text{ W} = 600 \text{ W} = 0.60 \text{ kW}\)

時間: \(t = 1.0 \text{ 分} = \displaystyle\frac{1.0}{60} \text{ h}\)

これらを掛け合わせます。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{kWh}} &= 0.60 \times \frac{1.0}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{0.60}{60} \\[2.0ex]
&= 0.010 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^{-2} \text{ [kWh]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「電力量」とは、実際に使った電気エネルギーの総量のことです。「電力(勢い)」に「使った時間」を掛ければ求まります。
物理の正式な単位であるジュール(J)で計算するときは、時間の単位を「秒」に直してから掛け算します。
一方、電気料金の請求書などで使われるキロワット時(kWh)で計算するときは、電力の単位を「キロワット」に、時間の単位を「時間(h)」にそれぞれ直してから掛け算します。

結論と吟味

消費電力量は \(3.6 \times 10^4\) J、または \(1.0 \times 10^{-2}\) kWh となります。単位換算を正確に行うことができれば、基本的な計算で求められます。

解答 (2) \(3.6 \times 10^4\) J, \(1.0 \times 10^{-2}\) kWh
別解: ジュール(J)から直接換算する解法

思考の道筋とポイント
まず、SI単位であるジュール(J)で電力量を計算します。その後、ジュール(J)とキロワット時(kWh)の間の換算関係式を使い、直接kWhに変換します。このアプローチは、まず基本単位で物理量を確定させ、その後で実用単位に翻訳する、という流れになります。
この設問における重要なポイント

  • ジュール(J)とキロワット時(kWh)の換算関係を理解している。
  • \(1 \text{ kWh} = 1000 \text{ W} \times 3600 \text{ s} = 3.6 \times 10^6 \text{ J}\)

具体的な解説と立式
まず、主たる解法と同様に、ジュール単位での電力量\(W_{\text{J}}\)を求めます。
$$ W_{\text{J}} = 3.6 \times 10^4 \text{ [J]} $$
次に、1 kWh と 1 J の関係を考えます。
$$
\begin{aligned}
1 \text{ kWh} &= 1 \times 10^3 \text{ W} \times 1 \text{ h} \\[2.0ex]
&= 1000 \text{ W} \times 3600 \text{ s} \\[2.0ex]
&= 3.6 \times 10^6 \text{ J}
\end{aligned}
$$
この関係式を用いて、\(W_{\text{J}}\)をkWhに換算します。

使用した物理公式

  • 電力量の公式: \(W = Pt\)
  • ジュールとキロワット時の換算関係: \(1 \text{ kWh} = 3.6 \times 10^6 \text{ J}\)
計算過程

ジュールで求めた電力量 \(W_{\text{J}} = 3.6 \times 10^4\) J を、換算係数 \(3.6 \times 10^6\) J/kWh で割ります。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{kWh}} &= \frac{3.6 \times 10^4 \text{ [J]}}{3.6 \times 10^6 \text{ [J/kWh]}} \\[2.0ex]
&= \frac{10^4}{10^6} \\[2.0ex]
&= 10^{-2} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^{-2} \text{ [kWh]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、基本単位であるジュール(J)で消費したエネルギーの総量を計算します。これは \(36000\) J でした。
ところで、「1 kWh」というエネルギー量が、ジュールで言うと「\(360\)万 J」に相当するという換算ルールがあります。
したがって、計算した \(36000\) J が、\(360\)万 J の何倍にあたるかを割り算で求めれば、kWh単位の値に変換できます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ \(1.0 \times 10^{-2}\) kWh という結果が得られました。この別解は、エネルギーの単位間の関係性をより直接的に扱う方法であり、物理的な理解を深める上で有益です。

解答 (2) \(3.6 \times 10^4\) J, \(1.0 \times 10^{-2}\) kWh

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 「電力」と「電力量」の明確な区別:
    • 核心: この問題の根幹は、言葉は似ていても物理的な意味が全く異なる「電力」と「電力量」を明確に区別し、それぞれに対応する公式と単位を正しく使い分けることにあります。
    • 理解のポイント:
      • 電力 (Power): 電気エネルギーが消費される「速さ」や「割合」を表す量です。単位はワット[W]で、これはジュール毎秒[J/s]と等価です。これは、ある瞬間の性能や能力を示します。
      • 電力量 (Energy): ある時間内に消費された電気エネルギーの「総量」です。単位はジュール[J]やキロワット時[kWh]です。これは、時間的な積み重ねの結果を示します。
      • 関係性: この2つの量は \(W=Pt\)(電力量 = 電力 × 時間)というシンプルな関係で結ばれています。これは「総量 = 速さ × 時間」という、距離の計算などでも使われる普遍的な考え方と同じです。
  • 単位系の理解と換算能力:
    • 核心: 物理学の標準単位であるSI単位系と、日常生活で使われる実用単位系の2つを理解し、両者の間を自在に換算できることが重要です。
    • 理解のポイント:
      • SI単位系: エネルギーの単位はジュール[J]です。これは、\(1 \text{ W}\)の電力を\(1 \text{ s}\)(秒)使ったときの電力量 (\(1 \text{ J} = 1 \text{ W} \cdot \text{s}\)) として定義されます。物理の計算では、まずこの単位系で考えるのが基本です。
      • 実用単位系: 電力量の単位はキロワット時[kWh]です。これは、\(1 \text{ kW}\) (\(1000 \text{ W}\)) の電力を\(1 \text{ h}\)(時間)使ったときの電力量 (\(1 \text{ kWh} = 1 \text{ kW} \cdot \text{h}\)) として定義され、電気料金の計算などに用いられます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電気料金の計算問題: 「1kWhあたり〇円」という単価が与えられ、特定の電気製品を一定時間使用したときの電気料金を計算する問題です。本問(2)のkWh計算がそのまま直接役立ちます。
    • 熱量との関係(効率): ドライヤーが発生する熱エネルギー(ジュール熱)を計算し、それで空気がどれだけ温まるか、あるいは水をどれだけ蒸発させられるか、といった熱力学との融合問題です。効率(例: 消費電力の80%が熱になる)が関わる場合もあります。
    • 機器の抵抗値を求める問題: 本問では直接問われていませんが、\(P=IV\)とオームの法則\(V=IR\)を組み合わせれば、\(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\)や\(P=I^2R\)からドライヤーの抵抗値を求めることができます。この抵抗値は機器固有の値として、異なる電圧で使用した場合の電力計算などに応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 問われているのは「電力」か「電力量」か?: まず、問題文の言葉と、求められている単位(Wか、J/kWhか)を確認し、どちらを計算すべきかを明確にします。
    2. 時間の単位に細心の注意を払う: 問題文で時間が「分」や「時間」で与えられていないかチェックします。ジュール(J)を計算するなら必ず「秒(s)」に、キロワット時(kWh)を計算するなら必ず「時間(h)」に変換する、というルールを徹底します。
    3. 電力の単位に注意する: キロワット時(kWh)を計算する場合、電力の単位も「ワット(W)」から「キロワット(kW)」への変換(1000で割る)が必要であることを見落とさないようにします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電力と電力量の混同:
    • 誤解: 言葉が似ているため、同じものだと勘違いしてしまう。
    • 対策: 「電力は瞬間のパワー(勢い)、電力量は使ったエネルギーの総量(積み重ね)」とイメージで区別します。単位(W vs J, kWh)を常に意識することが、混同を防ぐ最も確実な方法です。
  • 時間の単位換算ミス:
    • 誤解: (2)でジュールを求める際に、\(W = 600 \times 1.0\) のように、時間の単位を「分」のまま計算してしまう。
    • 対策: 計算を始める前に、与えられた数値をすべてSI単位(この場合は秒)に直すことを「儀式」として習慣づけます。「ジュール計算は秒!」と強く意識することが重要です。
  • kWh計算での単位換算の漏れ:
    • 誤解: 電力はWのまま、時間だけhに直して計算する(Whを求めてしまう)、あるいはその逆。
    • 対策: 「キロ・ワット・時」という名前の通り、「キロ(k)」「ワット(W)」「時(h)」の3つの要素が揃っているかを確認します。\(P\)はkWに、\(t\)はhに、とセットで変換する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)で \(P=IV\) を選んだ理由:
    • 選定理由: 求めたいのは電力\(P\)。与えられているのは電圧\(V\)と電流\(I\)。この3つの物理量を最も直接的かつシンプルに結びつけるのが、電力の定義式である\(P=IV\)だからです。
    • 適用根拠: \(P=IV\)は電力の定義そのものであり、オームの法則が成り立つか否かに関わらず、ある回路部分での電圧\(V\)と電流\(I\)が分かっていれば、その部分での消費電力\(P\)を常に正しく与える普遍的な関係式です。
  • (2)で \(W=Pt\) を選んだ理由:
    • 選定理由: 求めたいのは電力量\(W\)。(1)で電力\(P\)を求め、問題文で時間\(t\)が与えられています。この3つを結びつけるのが電力量の定義式\(W=Pt\)だからです。
    • 適用根拠: 電力量は「電力(単位時間あたりのエネルギー)の時間積分」として定義されます。電力が一定の場合、これは単純な掛け算\(W=Pt\)となります。ドライヤーの消費電力は使用中一定とみなせるため、この公式が適用できます。
  • (2)のkWh計算で単位を変換した理由:
    • 選定理由: 求めたい単位が「キロワット時(kWh)」という特定の形式であるためです。
    • 適用根拠: 単位の定義そのものに従う必要があります。「キロワット時」とは、文字通り「キロワット単位の電力」と「時間単位の時間」の積です。したがって、計算に用いる物理量を、その単位の定義に合わせて変換するのは論理的に必須の操作です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数計算の徹底: \(1.0 \times 10^2\) のような指数表記に慣れましょう。\(6.0 \times (1.0 \times 10^2) = 6.0 \times 100 = 600\)。最終的な答えを有効数字に合わせて \(6.0 \times 10^2\) のように指数表記で書く練習も重要です。
  • 単位換算のプロセスを明確にする:
    • J→kWh: \(1 \text{ kWh} = 3.6 \times 10^6 \text{ J}\) という換算係数を覚えておき、「Jで出た値を \(3.6 \times 10^6\) で割る」という操作を機械的に行います(別解のアプローチ)。
    • W, min → kWh: 「電力\(P\)は1000で割ってkWに」「時間\(t\)は60で割ってhに」という2段階の操作を一つずつ丁寧に行います(主たる解法のアプローチ)。
  • 概算で見当をつける: 例えば、600Wのドライヤーを1分使うのは、1000W(1kW)の機器を1分使うより少し少ない量だと考えます。1kWを1時間(60分)使うと1kWhなので、1分なら \(\displaystyle\frac{1}{60} \approx 0.0167\) kWhです。600Wはその0.6倍なので、\(0.0167 \times 0.6 \approx 0.01\) kWh程度になるはずだ、と大まかな見当をつけてから計算すると、桁の大きな間違いに気づきやすくなります。
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402 ジュール熱

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 抵抗値を経由する解法
      • 模範解答が与えられた電圧と電流から直接ジュール熱を計算するのに対し、別解ではまずオームの法則で抵抗値を算出し、その抵抗値を用いて別のジュール熱の公式で計算します。
    • 設問(2)の別解: 電流値を経由する解法
      • 模範解答が与えられた抵抗と電圧から直接ジュール熱を計算するのに対し、別解ではまずオームの法則で電流値を算出し、その電流値を用いて別のジュール熱の公式で計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: ジュール熱の公式 \(Q=VIt\), \(Q=I^2Rt\), \(Q=\displaystyle\frac{V^2}{R}t\) が、オームの法則を介してすべて等価であり、相互に変換可能であることへの理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: 一つの問題を解くために複数の計算ルートが存在することを知り、与えられた条件から最も効率的な公式を選択する判断力を養うことができます。
    • 解法の検証: 異なる公式を用いて計算し、同じ答えが得られることを確認することで、計算結果の信頼性を高めることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ジュール熱の公式の選択と適用」です。与えられた物理量(電圧V, 電流I, 抵抗R, 時間t)の組み合わせに応じて、複数あるジュール熱の公式の中から最も適切なものを選択し、正しく計算する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ジュール熱の公式: 発生する熱量\(Q\)が、電圧\(V\)、電流\(I\)、抵抗\(R\)、時間\(t\)を用いて、\(Q=VIt\), \(Q=I^2Rt\), \(Q=\displaystyle\frac{V^2}{R}t\) という複数の形で表せること。
  2. 最適な公式の選択: 問題で与えられている物理量だけで計算できる公式を選ぶことで、不要な計算ステップを減らし、計算ミスを防ぐことができる。
  3. 単位の統一: 物理計算では、時間はSI基本単位である秒(s)を用いるため、問題で「分」で与えられた場合は秒に変換する必要があること。
  4. オームの法則: 電圧\(V\)、電流\(I\)、抵抗\(R\)の関係式 (\(V=IR\))。ジュール熱の各公式は、この法則を用いて相互に変換可能である。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、電圧\(V\)、電流\(I\)、時間\(t\)が与えられているため、これらの量を含むジュール熱の公式 \(Q=VIt\) を選択して計算します。
  2. (2)では、抵抗\(R\)、電圧\(V\)、時間\(t\)が与えられているため、これらの量を含むジュール熱の公式 \(Q=\displaystyle\frac{V^2}{R}t\) を選択して計算します。時間の単位を「分」から「秒」に換算することがポイントです。

問(1)

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