「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第22章】基本問題382~389

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基本問題

382 合成容量

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2), (3)の別解: 全体の合成容量から総電気量を先に求める解法
      • 模範解答が電圧と電気量の関係式を連立させるのに対し、別解では(1)で求めた回路全体の合成容量を利用して総電気量を算出し、そこから各部分の電圧を順に求めていきます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の効率化: 連立方程式を回避し、段階的に計算できるため、見通しが良く、計算ミスを減らすことができます。
    • 物理的理解の深化: 回路全体を一つのコンデンサと見なす「合成容量」の概念の有用性を体感できます。
    • 解法の多角化: 問題に応じて、どの未知数から求めると効率的かを判断する訓練になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「コンデンサーの合成と回路計算」です。複数のコンデンサーが組み合わさった回路において、部分的な合成を繰り返して全体の性質を把握し、各コンデンサーにかかる電圧や蓄えられる電気量を正しく計算できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの並列接続: 並列部分の合成容量は、各コンデンサーの電気容量の和で与えられる。\(C_{\text{並列}} = C_1 + C_2 + \dots\)
  2. コンデンサーの直列接続: 直列部分の合成容量の逆数は、各コンデンサーの電気容量の逆数の和で与えられる。\(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_2} + \dots\)
  3. 電圧の関係(キルヒホッフの第2法則): 閉回路を一周したときの電位の変化の和は0である。本問では、電源電圧は各部分の電圧降下の和に等しい。
  4. 電気量保存則: 回路の分岐点において、流入する電気量の和と流出する電気量の和は等しい。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず並列接続されている\(C_2\)と\(C_3\)を合成し、次にその合成コンデンサーと\(C_1\)の直列接続として回路全体の合成容量を求めます。
  2. (2), (3)では、回路全体の電圧の関係式と、分岐点での電気量保存則から連立方程式を立てて、未知の電圧\(V_1\), \(V_2\)を求めます。
  3. (4)では、(2), (3)で求めた電圧を用いて、\(Q=CV\)の公式から各コンデンサーの電気量を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
複雑なコンデンサー回路の合成容量を求める際は、計算しやすい部分から段階的に単純化していくのが基本です。この回路では、まず\(C_2\)と\(C_3\)が並列に接続されている部分を一つの合成コンデンサー\(C_{23}\)と見なします。次に、この\(C_{23}\)と\(C_1\)が直列に接続されていると考えて、回路全体の合成容量\(C\)を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 並列接続の合成容量は単純な足し算: \(C_{\text{並列}} = C_2 + C_3\)
  • 直列接続の合成容量は逆数の和: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_{23}}\)
  • 単位をμFのまま計算し、最後に必要であればFに変換すると計算が楽になる。

具体的な解説と立式
まず、コンデンサー\(C_2\)と\(C_3\)の並列接続部分の合成容量を\(C_{23}\)とします。並列接続の公式より、
$$ C_{23} = C_2 + C_3 $$
次に、この合成コンデンサー\(C_{23}\)とコンデンサー\(C_1\)は直列に接続されています。したがって、回路全体の合成容量を\(C\)とすると、直列接続の公式より、
$$ \frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_{23}} $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの並列接続の合成容量: \(C_{\text{並列}} = C_1 + C_2\)
  • コンデンサーの直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_2}\)
計算過程

与えられた値を代入して計算します。単位は[μF]で統一して計算を進めます。
まず、\(C_{23}\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
C_{23} &= C_2 + C_3 \\[2.0ex]
&= 2.0 + 4.0 \\[2.0ex]
&= 6.0 \, [\text{μF}]
\end{aligned}
$$
次に、この結果を使って全体の合成容量\(C\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C} &= \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_{23}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{3.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{6.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{6.0} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2.0}
\end{aligned}
$$
したがって、両辺の逆数をとって、
$$ C = 2.0 \, [\text{μF}] $$

この設問の平易な説明

ごちゃごちゃした回路は、まず「合体」できる部分を探して、少しずつシンプルな形にしていくのがコツです。この問題では、横に並んでいる\(C_2\)と\(C_3\)をまず合体させて一つの大きなコンデンサ\(C_{23}\)にします(並列の合体は単純な足し算)。すると、回路は\(C_1\)と合体後の\(C_{23}\)が一直線に並んだだけのシンプルな形になります。最後にこの2つを直列として合体させれば(直列の合体は逆数の足し算)、回路全体の合成容量が求まります。

結論と吟味

ad間の合成容量は\(C = 2.0 \, \text{μF}\)と求められました。この値は、直列接続した\(C_1=3.0 \, \text{μF}\)や\(C_{23}=6.0 \, \text{μF}\)のどちらよりも小さい値です。直列接続では合成容量が元のどのコンデンサーよりも小さくなるという性質と一致しており、妥当な結果です。

解答 (1) \(2.0 \, \text{μF}\)

問(2), (3)

思考の道筋とポイント
ab間の電位差\(V_1\)とbc間の電位差\(V_2\)という2つの未知数を求めるため、これらを含む独立した方程式を2本立てる必要があります。
1本目は、電圧に関する式です。電源電圧\(V\)は、\(C_1\)にかかる電圧\(V_1\)と、\(C_2\), \(C_3\)の並列部分にかかる電圧\(V_2\)の和に等しくなります(キルヒホッフの第2法則)。
2本目は、電気量に関する式です。点bに注目すると、\(C_1\)から流れ込んだ電気量\(Q_1\)が、\(C_2\)と\(C_3\)にそれぞれ\(Q_2\), \(Q_3\)として分かれていきます(電気量保存則)。
これらの式を\(Q=CV\)の関係を使って\(V_1\)と\(V_2\)の式に直し、連立させて解きます。
この設問における重要なポイント

  • 直列部分の電圧の和は全体の電圧: \(V_1 + V_2 = V\)
  • 分岐点での電気量の保存: \(Q_1 = Q_2 + Q_3\)
  • 各コンデンサーにおける関係式: \(Q_1=C_1V_1\), \(Q_2=C_2V_2\), \(Q_3=C_3V_2\)
  • \(C_2\)と\(C_3\)は並列接続なので、かかる電圧は共通で\(V_2\)である。

具体的な解説と立式
まず、回路全体の電圧の関係から、
$$ V_1 + V_2 = V \quad \cdots ① $$
次に、コンデンサーに蓄えられる電気量について考えます。各コンデンサーの電気量を\(Q_1, Q_2, Q_3\)とすると、\(Q=CV\)の関係から、
$$ Q_1 = C_1 V_1 $$
$$ Q_2 = C_2 V_2 $$
$$ Q_3 = C_3 V_2 $$
点bと点cで囲まれた導線部分に注目すると、充電完了後、この部分は電気的に孤立しています。点bに流入する電気量\(Q_1\)は、点bから\(C_2\)と\(C_3\)へ流出する電気量の和に等しくなります。
$$ Q_1 = Q_2 + Q_3 \quad \cdots ② $$
②式に\(Q=CV\)の関係を代入すると、
$$ C_1 V_1 = C_2 V_2 + C_3 V_2 $$
右辺を\(V_2\)でまとめると、
$$ C_1 V_1 = (C_2 + C_3) V_2 \quad \cdots ③ $$
これで、未知数\(V_1, V_2\)に関する2つの式①と③が立ちました。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(V = V_1 + V_2\)
  • 電気量保存則: \(Q_1 = Q_2 + Q_3\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

式③に\(C_1=3.0 \, \text{μF}\), \(C_2=2.0 \, \text{μF}\), \(C_3=4.0 \, \text{μF}\)を代入します。電気容量の単位(μF)は両辺で打ち消し合うので、数値のみで計算できます。
$$
\begin{aligned}
3.0 V_1 &= (2.0 + 4.0) V_2 \\[2.0ex]
3.0 V_1 &= 6.0 V_2 \\[2.0ex]
V_1 &= 2.0 V_2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
次に、この関係式④を、電圧の式① (\(V_1 + V_2 = 3.0 \times 10^2\)) に代入します。
$$
\begin{aligned}
(2.0 V_2) + V_2 &= 3.0 \times 10^2 \\[2.0ex]
3.0 V_2 &= 3.0 \times 10^2 \\[2.0ex]
V_2 &= 1.0 \times 10^2 \, [\text{V}]
\end{aligned}
$$
最後に、求まった\(V_2\)を④に代入して\(V_1\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= 2.0 V_2 \\[2.0ex]
&= 2.0 \times (1.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^2 \, [\text{V}]
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

知りたいものが\(V_1\)と\(V_2\)の2つなので、中学校で習った連立方程式のように、式を2本作って解くことを目指します。
1本目の式は簡単で、電圧の合計の式です。「\(V_1\)と\(V_2\)を足すと、全体の電圧\(V\)になる」という式 (\(V_1+V_2=V\))。
2本目の式は電気の流れに関する式です。\(C_1\)を通過した電気\(Q_1\)が、その後\(C_2\)と\(C_3\)の2つに分かれて流れるので、「\(Q_1 = Q_2 + Q_3\)」という式が作れます。このままだと文字が違うので、\(Q=CV\)を使ってすべて電圧の式に書き換えてあげると、2本目の式が完成します。あとはこの2本を連立させて解けばOKです。

結論と吟味

ab間の電位差は\(V_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{V}\)、bc間の電位差は\(V_2 = 1.0 \times 10^2 \, \text{V}\)と求まりました。
和は\(V_1+V_2 = 200 + 100 = 300 \, \text{V}\)となり、電源電圧\(V=3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)と一致します。
また、\(C_1\)と合成容量\(C_{23}\)は直列接続されており、その容量は\(C_1=3.0 \, \text{μF}\), \(C_{23}=6.0 \, \text{μF}\)で、比は\(1:2\)です。直列接続では電気量が等しいため、\(Q=CV\)より電圧は容量の逆比になります。したがって、電圧の比\(V_1:V_2\)は\(2:1\)となるはずで、計算結果(\(V_1=200V, V_2=100V\))と一致しており、物理的に妥当です。

解答 (2) \(2.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
解答 (3) \(1.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
別解: 全体の合成容量から総電気量を先に求める解法

思考の道筋とポイント
(1)で回路全体の合成容量\(C\)を求めたことを利用するアプローチです。回路全体を、容量が\(C\)である一つのコンデンサーと見なします。この仮想的なコンデンサーに電源電圧\(V\)がかかっていると考え、まず回路全体に蓄えられる総電気量\(Q_{\text{全体}}\)を\(Q_{\text{全体}}=CV\)で計算します。
この\(Q_{\text{全体}}\)は、直列部分である\(C_1\)に蓄えられる電気量\(Q_1\)と等しくなります。\(Q_1\)が分かれば、\(V_1 = Q_1/C_1\)として\(V_1\)を直接計算できます。\(V_1\)が求まれば、残りの\(V_2\)は全体の電圧\(V\)から引き算するだけで求まります。
この設問における重要なポイント

  • 回路全体の総電気量は \(Q_{\text{全体}} = C_{\text{合成}} \times V_{\text{全体}}\) で計算できる。
  • 直列に接続されたコンデンサーに蓄えられる電気量は等しい。(\(Q_1 = Q_{\text{全体}}\))

具体的な解説と立式
(1)で求めた回路全体の合成容量 \(C = 2.0 \, \text{μF} = 2.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\) を用います。
まず、回路全体で蓄えられる総電気量\(Q_{\text{全体}}\)を求めます。
$$ Q_{\text{全体}} = C \times V $$
コンデンサー\(C_1\)は電源と直列につながっているため、\(C_1\)に蓄えられる電気量\(Q_1\)は\(Q_{\text{全体}}\)に等しくなります。
$$ Q_1 = Q_{\text{全体}} $$
\(Q_1\)がわかれば、\(C_1\)にかかる電圧\(V_1\)は\(Q=CV\)の式から求められます。
$$ V_1 = \frac{Q_1}{C_1} $$
最後に、電圧の関係式 \(V_1 + V_2 = V\) を使って\(V_2\)を求めます。
$$ V_2 = V – V_1 $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 合成容量の概念
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則): \(V = V_1 + V_2\)
計算過程

まず、総電気量\(Q_{\text{全体}}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{全体}} &= C \times V \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (3.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
この値が\(Q_1\)と等しいので、\(Q_1 = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)です。
次に、\(V_1\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{Q_1}{C_1} \\[2.0ex]
&= \frac{6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
最後に、\(V_2\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V – V_1 \\[2.0ex]
&= (3.0 \times 10^2 \, \text{V}) – (2.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、この回路全体を一つの巨大なコンデンサーと見なして、そこに蓄えられる電気の総量を計算します。この総量は、入口にある\(C_1\)を必ず通過するはずなので、\(C_1\)に蓄えられる電気量と同じになります。\(C_1\)の電気量が分かれば、「\(Q=CV\)」の公式から\(C_1\)の電圧\(V_1\)が逆算できます。全体の電圧は300Vと決まっているので、\(V_1\)が分かれば、残りの電圧\(V_2\)は引き算(300 – \(V_1\))で簡単に求まります。連立方程式を使わない、スマートな解き方です。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果(\(V_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{V}\), \(V_2 = 1.0 \times 10^2 \, \text{V}\))が得られました。この方法は、連立方程式を解く手間が省け、計算の見通しが良いため、合成容量が分かっている場合には非常に有効なアプローチです。

解答 (2) \(2.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
解答 (3) \(1.0 \times 10^2 \, \text{V}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
各コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q_1, Q_2, Q_3\)を求める問題です。(2), (3)で各部分にかかる電圧\(V_1, V_2\)がすでに求まっているので、あとはそれぞれのコンデンサーについて\(Q=CV\)の公式を適用するだけです。
この設問における重要なポイント

  • \(C_1\)にかかる電圧は\(V_1\)である。
  • \(C_2\)と\(C_3\)は並列接続なので、両方にかかる電圧は共通で\(V_2\)である。
  • 計算の際は、電気容量をF(ファラド)の単位に直す (\(1 \text{μF} = 10^{-6} \text{F}\))。

具体的な解説と立式
各コンデンサーについて、\(Q=CV\)の公式を立てます。
コンデンサー\(C_1\)について:
$$ Q_1 = C_1 V_1 $$
コンデンサー\(C_2\)について:
$$ Q_2 = C_2 V_2 $$
コンデンサー\(C_3\)について:
$$ Q_3 = C_3 V_2 $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

(2), (3)で求めた\(V_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{V}\), \(V_2 = 1.0 \times 10^2 \, \text{V}\)と、与えられた電気容量の値を代入します。
\(C_1 = 3.0 \, \text{μF} = 3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\)
\(C_2 = 2.0 \, \text{μF} = 2.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\)
\(C_3 = 4.0 \, \text{μF} = 4.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\)

$$
\begin{aligned}
Q_1 &= C_1 V_1 \\[2.0ex]
&= (3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (2.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= C_2 V_2 \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (1.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
Q_3 &= C_3 V_2 \\[2.0ex]
&= (4.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (1.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

それぞれのコンデンサーがどれくらいの電気を蓄えているかを知る問題です。電気の量は「容量 × 電圧」で決まります。前の問題で各コンデンサーにかかる電圧(\(V_1\)と\(V_2\))はもう分かっているので、それぞれの容量と電圧を掛け算してあげるだけで答えが出ます。\(C_2\)と\(C_3\)には同じ電圧\(V_2\)がかかっていることに注意しましょう。

結論と吟味

各コンデンサーの電気量は、\(Q_1 = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\), \(Q_2 = 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\), \(Q_3 = 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)と求められました。
ここで検算として、電気量保存則\(Q_1 = Q_2 + Q_3\)が成り立っているか確認します。
\(Q_2 + Q_3 = (2.0 \times 10^{-4}) + (4.0 \times 10^{-4}) = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)
これは\(Q_1\)の値と一致しており、計算が正しいことが裏付けられます。

解答 (4) \(Q_1 = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\), \(Q_2 = 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\), \(Q_3 = 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • コンデンサーの接続ルールと基本公式の組み合わせ:
    • 核心: この問題の根幹は、コンデンサーの「直列接続」と「並列接続」のルールを正しく理解し、それらを基本公式 \(Q=CV\) やキルヒホッフの法則と組み合わせて、回路の未知量を体系的に解き明かす能力にあります。
    • 理解のポイント:
      • 合成容量(回路の単純化): 複雑な回路も、部分的な合成を繰り返すことで、最終的に一つのコンデンサーと見なせます。並列は \(C = C_1+C_2\)、直列は \(\displaystyle\frac{1}{C} = \displaystyle\frac{1}{C_1}+\displaystyle\frac{1}{C_2}\) というルールは、回路を分析するための第一歩です。
      • 電圧則(キルヒホッフ第2法則): 直列部分では、各部分にかかる電圧の和が全体の電圧に等しくなります (\(V = V_1+V_2\))。これはエネルギー保存則の一つの現れです。
      • 電気量保存則(キルヒホッフ第1法則): 回路の分岐点では、流れ込む電気量と流れ出す電気量の和が等しくなります (\(Q_1 = Q_2+Q_3\))。これは電荷が勝手に消えたり生まれたりしないという大原則に基づいています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • スイッチの切り替え問題: 充電後にスイッチを切り替えて別の回路に接続する問題。この場合、「切り替えによって電気的に孤立した部分の電気量の和は保存される」という法則が鍵になります。
    • コンデンサーへの誘電体の挿入: 充電後にコンデンサーの極板間に誘電体を挿入する問題。誘電体を入れると電気容量\(C\)が変化するため、\(Q=CV\)の関係から電圧\(V\)や電気量\(Q\)がどう変化するかを追跡します。電池に繋がったままか、切り離されているかで条件が変わる点に注意が必要です。
    • 抵抗を含むRC回路: コンデンサーと抵抗が混在する回路の過渡現象(充電・放電の途中過程)を扱う問題。微分方程式を解くか、時定数 \(\tau=CR\) の概念を用いて電流や電圧の時間変化を考えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路図の接続関係を把握: まず、どのコンデンサーが直列で、どれが並列かを正確に色分けするなどして把握します。
    2. 解法のルート選択:
      • ルートA(模範解答): 未知の電圧や電気量を文字で置き、電圧則と電気量保存則で連立方程式を立てる。最も正攻法で、どんな問題にも適用しやすい。
      • ルートB(別解): まず全体の合成容量を求め、総電気量を計算し、そこから部分の電圧・電気量を逆算していく。計算がシンプルになる場合が多く、特に合成容量を問う設問がある場合に有効。
    3. 電気的に孤立した部分を探す: スイッチ操作や複雑な回路では、「どの部分の電荷の合計が保存されるか」を見抜くことが突破口になることが多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 直列と並列の公式の混同:
    • 誤解: 直列接続と並列接続の合成容量の公式を逆に覚えてしまう。抵抗の合成公式と混同しやすい。
    • 対策: 「並列にすると板の面積が増えるイメージ \(\rightarrow\) 容量は増える(単純な和)」、「直列にすると極板間隔が広がるイメージ \(\rightarrow\) 容量は減る(逆数の和)」のように、物理的なイメージと結びつけて覚えましょう。
  • 電圧と電気量の分配の勘違い:
    • 誤解: 直列接続で「電圧」が等しく、並列接続で「電気量」が等しいと勘違いする。
    • 対策: 正しくは「直列 \(\rightarrow\) 電気量が等しい」「並列 \(\rightarrow\) 電圧が等しい」です。直列は一本道なので流れる電気は同じ、並列は同じ高さ(電位)の場所に繋がっているので電圧が同じ、と覚えましょう。
  • 単位のミス:
    • 誤解: 電気容量の単位をμF(マイクロファラド)のまま、電圧V(ボルト)と掛けて電気量C(クーロン)を計算してしまう。
    • 対策: 計算の際は、必ずSI基本単位に変換する癖をつけます。\(C=3.0 \, \text{μF}\) を見たら、即座に \(C=3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\) と書き直すことを徹底しましょう。ただし、容量の比を計算する場合など、単位が約分される場合はその限りではありません。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 連立方程式アプローチ(主たる解法):
    • 選定理由: (2), (3)で未知数が\(V_1, V_2\)の2つあったため、数学の基本に立ち返り「未知数が2つなら、独立した式が2本必要」と考えます。物理法則の中で、この回路に適用できる独立した法則は「電圧則」と「電気量保存則」の2つです。これらを用いることで、確実に解けるという論理的な必然性からこのアプローチが選ばれます。
    • 適用根拠: キルヒホッフの法則は、どのような定常状態の電気回路にも普遍的に成り立つ基本法則です。したがって、これに基づいて立式すれば、必ず物理的に正しい関係を記述できます。
  • 合成容量アプローチ(別解):
    • 選定理由: (1)でわざわざ「回路全体の合成容量」を計算させた、という問題の流れに着目します。この結果を使わない手はない、と考えるのが自然です。回路全体を一つのコンデンサーと見なすことで、問題をよりマクロな視点から捉え直し、連立方程式というミクロな計算を回避できます。
    • 適用根拠: 「合成容量」という概念自体が、複数のコンデンサーの集まりを、同じ電圧をかけたときに同じ総電気量を蓄える「等価な一つのコンデンサー」に置き換える、という考え方に基づいています。したがって、\(Q_{\text{全体}} = C_{\text{合成}}V\) という関係は定義そのものであり、物理的に完全に正当です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位付きの計算: (1)のように、単位が相殺されない場合は、式の途中に[μF]などの単位を書き込むと、最終的な答えの単位を間違えにくくなります。
  • 連立方程式の整理:
    1. まずは物理法則から\(V_1, V_2, Q_1, Q_2, Q_3\)など多くの文字を使って素直に立式する。
    2. \(Q=CV\)の関係を使って、求めるべき変数(この場合は\(V_1, V_2\))だけで式を整理し直す。
    3. 代入する前に、一方の変数をもう一方の変数で表す(例: \(V_1 = 2.0 V_2\))など、できるだけ式を簡単な形にしてから代入すると、計算ミスが減ります。
  • 検算の習慣化:
    • (4)で求めた\(Q_2, Q_3\)を足して\(Q_1\)と一致するか確認する、といった検算は非常に有効です。
    • (2),(3)の別解のように、直列接続では電気量が等しいことから、電圧は容量の逆比 (\(V_1:V_2 = C_{23}:C_1\)) になるはずだ、という物理的な性質を使って答えの妥当性をチェックする癖をつけましょう。今回の場合は \(V_1:V_2 = 6.0:3.0 = 2:1\) となり、計算結果 \(200\text{V}:100\text{V}\) と一致することを確認できます。

383 耐電圧

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 耐電気量で考える解法
      • 模範解答が電圧の比を求めて、どちらかのコンデンサーが耐電圧に達したときのもう一方の電圧を計算するのに対し、別解では各コンデンサーが蓄えられる「最大の電気量(耐電気量)」を先に計算し、より小さい方の電気量を基準として全体の耐電圧を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 直列接続では「電気量」が共通であるため、回路の限界を決めるのは「最も少ない電気量しか蓄えられないコンデンサー」である、という物理的本質をより直接的に理解できます。
    • 思考の簡略化: 電圧の比を計算して場合分けするよりも、「耐電気量を計算して小さい方を採用する」という一本道の思考プロセスで解けるため、混乱が少なくなります。
    • 応用力の向上: この「耐電気量」という考え方は、より複雑な回路の限界を考える際にも応用できる強力な視点です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「コンデンサーの耐電圧」です。コンデンサーには安全に使用できる電圧の上限(耐電圧)があり、それを超えると壊れてしまいます。複数のコンデンサーを接続した際に、回路全体としてどこまで電圧をかけられるのかを、接続方法(並列・直列)に応じて正しく判断できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 耐電圧の定義: コンデンサーが壊れずに耐えられる電圧の最大値。
  2. 並列接続の特徴: 各コンデンサーにかかる電圧は等しい。
  3. 直列接続の特徴: 各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しい。
  4. 電圧の分圧: 直列接続では、全体の電圧は各コンデンサーの電気容量の逆比に分配される。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、並列接続の特性を考えます。両方のコンデンサーに同じ電圧がかかるため、先に耐電圧に達してしまうコンデンサーが全体の限界を決めます。
  2. (2)では、直列接続の特性を考えます。両方のコンデンサーに蓄えられる電気量が同じになるため、どちらかのコンデンサーが先に耐電圧(あるいは耐電気量)に達する状況を考え、そのときの全体の電圧を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
AとBを並列に接続した場合、両者には全く同じ電圧\(V\)がかかります。コンデンサーAは\(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)まで、Bは\(6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)まで耐えられます。もし、かけた電圧\(V\)が\(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)を超えると、Bは耐えられますがAは壊れてしまいます。したがって、回路全体として安全にかけられる電圧は、2つの耐電圧のうち、より小さい方によって決まります。
この設問における重要なポイント

  • 並列接続では、各要素にかかる電圧は等しい。
  • 回路全体の耐電圧は、構成要素のうち最も耐電圧が低いものによって制限される。

具体的な解説と立式
コンデンサーAの耐電圧を\(V_{\text{A,最大}}\)、コンデンサーBの耐電圧を\(V_{\text{B,最大}}\)とします。
\(V_{\text{A,最大}} = 3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
\(V_{\text{B,最大}} = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
並列接続したとき、全体にかかる電圧を\(V_1\)とすると、Aにかかる電圧もBにかかる電圧も\(V_1\)です。
回路が壊れないためには、AとBの両方がそれぞれの耐電圧を超えないことが条件となります。
$$ V_1 \le V_{\text{A,最大}} $$
$$ V_1 \le V_{\text{B,最大}} $$
この2つの条件を同時に満たす\(V_1\)の最大値が、全体としての耐電圧です。したがって、
$$ V_{1, \text{最大}} = \min(V_{\text{A,最大}}, V_{\text{B,最大}}) $$
ここで、\(\min(a, b)\)はaとbのうち小さい方の値を表します。

使用した物理公式

  • 並列接続の電圧の性質
計算過程

与えられた値を比較します。
$$ V_{\text{A,最大}} = 3.0 \times 10^2 \, \text{V} $$
$$ V_{\text{B,最大}} = 6.0 \times 10^2 \, \text{V} $$
このうち小さい方の値を選ぶので、
$$ V_{1, \text{最大}} = 3.0 \times 10^2 \, \text{V} $$

この設問の平易な説明

AさんとBさんがいて、Aさんは30kgまで、Bさんは60kgまで荷物を持てるとします。この2人が並んで、同じ一つの荷物を持つ場合、何kgまでなら安全に運べるでしょうか? もし30kgを超える荷物を持たせたら、Bさんは平気でもAさんは潰れてしまいます。なので、安全なのはAさんの限界である30kgまでです。コンデンサーの並列接続もこれと同じで、2つの耐電圧のうち、低い方の電圧までしかかけることができません。

結論と吟味

並列接続したときの全体の耐電圧は\(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)となります。これはコンデンサーAの耐電圧と同じ値です。この電圧をかけたとき、Aはちょうど限界ですが、Bは耐電圧\(6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)の半分しか電圧がかかっていないので安全です。理にかなった結果です。

解答 (1) \(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
AとBを直列に接続した場合、両者に蓄えられる電気量\(Q\)が等しくなります。しかし、かかる電圧\(V_A, V_B\)は電気容量が異なるため、等しくありません。\(Q=C_A V_A = C_B V_B\)の関係から、電圧は電気容量の逆比に分配されます。
全体の電圧を上げていくと、AかBのどちらかが先に自身の耐電圧に達します。どちらが先に限界に達するかを判断し、その瞬間の全体の電圧(\(V_2 = V_A + V_B\))を計算することが、この問題のゴールです。
この設問における重要なポイント

  • 直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)が等しい。
  • 各コンデンサーにかかる電圧は、\(Q=CV\)より\(V=Q/C\)となり、電気容量に反比例する。(\(V_A : V_B = \displaystyle\frac{1}{C_A} : \displaystyle\frac{1}{C_B}\))
  • どちらかのコンデンサーが耐電圧に達したときが回路全体の限界となる。

具体的な解説と立式
直列接続なので、各コンデンサーに蓄えられる電気量を\(Q\)とすると、これは共通です。
Aにかかる電圧を\(V_A\)、Bにかかる電圧を\(V_B\)とすると、
$$ Q = C_A V_A $$
$$ Q = C_B V_B $$
したがって、\(C_A V_A = C_B V_B\)が成り立ちます。この式から、電圧の比を求めます。
$$ \frac{V_A}{V_B} = \frac{C_B}{C_A} $$
ここで、どちらが先に耐電圧に達するかを調べるために、2つのケースを考えます。
ケース1: Aが先に耐電圧に達する場合
\(V_A = 3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)と仮定します。このときの\(V_B\)を計算し、Bの耐電圧(\(6.0 \times 10^2 \, \text{V}\))を超えていないか確認します。
ケース2: Bが先に耐電圧に達する場合
\(V_B = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)と仮定します。このときの\(V_A\)を計算し、Aの耐電圧(\(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\))を超えていないか確認します。
両方の耐電圧を超えない、より厳しい条件の方が、実際に起こる限界の状況です。そのときの電圧の和 \(V_2 = V_A + V_B\) が求める耐電圧となります。

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 直列接続の電気量の性質
計算過程

まず、電圧の比を計算します。
\(C_A = 4.0 \, \text{μF}\), \(C_B = 1.0 \, \text{μF}\) なので、
$$ \frac{V_A}{V_B} = \frac{C_B}{C_A} = \frac{1.0}{4.0} = \frac{1}{4} $$
よって、\(V_B = 4V_A\) という関係があります。

ケース1: Aが耐電圧 \(V_A = 3.0 \times 10^2 \, \text{V}\) に達したと仮定する。
このとき、Bにかかる電圧は、
$$
\begin{aligned}
V_B &= 4 V_A \\[2.0ex]
&= 4 \times (3.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 12 \times 10^2 \, \text{V} = 1.2 \times 10^3 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
この値はBの耐電圧 \(6.0 \times 10^2 \, \text{V}\) を超えてしまっています。したがって、この状況は実現する前にBが壊れてしまうため不適です。

ケース2: Bが耐電圧 \(V_B = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\) に達したと仮定する。
このとき、Aにかかる電圧は、
$$
\begin{aligned}
V_A &= \frac{1}{4} V_B \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} \times (6.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
この値はAの耐電圧 \(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\) を超えていません。したがって、この状況は安全に実現可能です。

よって、回路の限界はBが耐電圧に達したときであり、そのときの各電圧は \(V_A = 1.5 \times 10^2 \, \text{V}\), \(V_B = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\) です。
全体の耐電圧\(V_2\)はこれらの和なので、
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V_A + V_B \\[2.0ex]
&= (1.5 \times 10^2) + (6.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 7.5 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

直列につなぐと、電気の通り道は一本なので、AとBを流れる電気の量(電気量)は同じになります。しかし、コンデンサーの性能(電気容量)が違うため、かかる電圧は異なります。性能が低い(容量が小さい)Bの方に、より多くの電圧がかかります(具体的には4倍)。
全体の電圧を上げていくと、どちらが先に限界の電圧に達するか?というチキンレースです。計算してみると、電圧が多くかかるBの方が、Aよりも先に自分の耐電圧に達してしまうことがわかります。したがって、回路全体の限界は「Bが耐電圧に達した瞬間」で決まります。その瞬間のAの電圧とBの電圧を足したものが、全体の耐電圧になります。

結論と吟味

直列接続したときの全体の耐電圧は \(7.5 \times 10^2 \, \text{V}\) となりました。このとき、コンデンサーBには限界の\(6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)がかかり、Aには\(1.5 \times 10^2 \, \text{V}\)がかかっています。Aはまだ余裕がありますが、これ以上全体の電圧を上げるとBが壊れてしまう、という限界状態を正しく表しており、妥当な結果です。

解答 (2) \(7.5 \times 10^2 \, \text{V}\)
別解: 耐電気量で考える解法

思考の道筋とポイント
直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量\(Q\)が等しい、という性質に着目します。回路全体にかけられる電圧を上げていくと、蓄えられる電気量\(Q\)も増加していきます。この\(Q\)が、AかBのどちらかが蓄えられる限界の電気量(耐電気量)に達したとき、回路全体も限界に達します。
したがって、まず各コンデンサーが個別に蓄えられる最大の電気量(耐電気量)を\(Q=CV\)で計算します。直列回路では、両方のコンデンサーに同じ電気量しか蓄えられないので、実際に蓄えられる電気量の最大値は、2つの耐電気量のうち「小さい方」になります。この限界の電気量が分かれば、それをもとに各コンデンサーにかかる電圧を計算し、最後にそれらを足し合わせることで全体の耐電圧を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 各コンデンサーが蓄えられる最大の電気量(耐電気量)は \(Q_{\text{最大}} = C \times V_{\text{最大}}\) で計算できる。
  • 直列接続の回路全体が蓄えられる電気量の最大値は、各コンデンサーの耐電気量のうち、最も小さい値に等しい。 \(Q_{\text{回路,最大}} = \min(Q_{\text{A,最大}}, Q_{\text{B,最大}})\)

具体的な解説と立式
まず、コンデンサーA、Bがそれぞれ蓄えることのできる最大の電気量(耐電気量)\(Q_{\text{A,最大}}\), \(Q_{\text{B,最大}}\)を計算します。
$$ Q_{\text{A,最大}} = C_A V_{\text{A,最大}} $$
$$ Q_{\text{B,最大}} = C_B V_{\text{B,最大}} $$
直列接続では、両方のコンデンサーに同じ電気量\(Q\)が蓄えられます。回路が壊れないためには、この\(Q\)が両方の耐電気量を超えてはいけません。
$$ Q \le Q_{\text{A,最大}} $$
$$ Q \le Q_{\text{B,最大}} $$
したがって、回路全体として蓄えられる電気量の最大値\(Q_{\text{回路,最大}}\)は、2つの耐電気量のうち小さい方になります。
$$ Q_{\text{回路,最大}} = \min(Q_{\text{A,最大}}, Q_{\text{B,最大}}) $$
この限界の電気量が蓄えられているとき、A, Bにかかる電圧をそれぞれ\(V_A, V_B\)とすると、
$$ V_A = \frac{Q_{\text{回路,最大}}}{C_A} $$
$$ V_B = \frac{Q_{\text{回路,最大}}}{C_B} $$
求める全体の耐電圧\(V_2\)は、これらの和となります。
$$ V_2 = V_A + V_B $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 直列接続の電気量の性質
計算過程

まず、各コンデンサーの耐電気量を計算します。単位をF, Vに変換します。
\(C_A = 4.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\), \(V_{\text{A,最大}} = 3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
\(C_B = 1.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\), \(V_{\text{B,最大}} = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{A,最大}} &= C_A V_{\text{A,最大}} \\[2.0ex]
&= (4.0 \times 10^{-6}) \times (3.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 12 \times 10^{-4} \, \text{C} = 1.2 \times 10^{-3} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{B,最大}} &= C_B V_{\text{B,最大}} \\[2.0ex]
&= (1.0 \times 10^{-6}) \times (6.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
この2つの値を比較すると、\(Q_{\text{B,最大}}\)の方が小さいです。したがって、回路全体で蓄えられる電気量の限界は、
$$ Q_{\text{回路,最大}} = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C} $$
このとき、各コンデンサーにかかる電圧は、
$$
\begin{aligned}
V_A &= \frac{Q_{\text{回路,最大}}}{C_A} = \frac{6.0 \times 10^{-4}}{4.0 \times 10^{-6}} = 1.5 \times 10^2 \, \text{V} \\[2.0ex]
V_B &= \frac{Q_{\text{回路,最大}}}{C_B} = \frac{6.0 \times 10^{-4}}{1.0 \times 10^{-6}} = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
全体の耐電圧\(V_2\)はこれらの和なので、
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V_A + V_B \\[2.0ex]
&= (1.5 \times 10^2) + (6.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 7.5 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

直列接続では、AとBに同じ量の電気が溜まります。Aは最大12単位、Bは最大6単位の電気を溜められるとします。この2つを直列につないだ場合、溜められる電気は最大で何単位でしょうか? もし7単位の電気を流したら、Aは平気でもBは容量オーバーで壊れてしまいます。なので、安全なのはBの限界である6単位までです。
この「限界の電気量(6単位)」が分かれば、あとは\(Q=CV\)の公式を逆算して、「そのときAとBの電圧はそれぞれいくつか?」を計算し、最後にそれらを足し合わせれば、全体の耐電圧が求まります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(V_2 = 7.5 \times 10^2 \, \text{V}\) が得られました。このとき、\(V_A = 1.5 \times 10^2 \, \text{V}\)(耐電圧300V以下でOK)、\(V_B = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)(耐電圧600Vちょうどで限界)となり、物理的な状況とも一致します。この解法は、直列接続の本質である「電気量の共通性」に直接アプローチするため、より直感的で間違いにくい方法と言えます。

解答 (2) \(7.5 \times 10^2 \, \text{V}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 接続方法による制約条件の変化
    • 核心: この問題の根幹は、コンデンサーの接続方法(並列か直列か)によって、回路の限界を決定する「制約条件」が根本的に異なることを理解する点にあります。
    • 理解のポイント:
      • 並列接続の制約: 「電圧が共通」であるため、回路の限界は各コンデンサーの「耐電圧」のうち、最も小さいものによって決まります。一番先に電圧の限界に達するコンデンサーが、全体の限界を決定します。
      • 直列接続の制約: 「電気量が共通」であるため、回路の限界は各コンデンサーが蓄えられる「最大の電気量(耐電気量)」のうち、最も小さいものによって決まります。一番先に電気量の限界(お腹がいっぱいになる状態)に達するコンデンサーが、全体の限界を決定します。
  • マクロな限界とミクロな状態の連携
    • 核心: 回路全体としての限界(マクロな耐電圧)を考えるには、その瞬間に個々のコンデンサー(ミクロな要素)がどのような状態(電圧、電気量)にあるかを正確に把握し、それらを足し合わせる必要があります。
    • 理解のポイント:
      • (2)では、まず「Bが限界に達する」というミクロな限界点を特定しました。
      • 次に、そのときの相方であるAの状態(\(V_A = 1.5 \times 10^2 \, \text{V}\))を計算しました。
      • 最後に、これらのミクロな電圧を合計することで、マクロな全体の耐電圧 \(V_2 = V_A + V_B\) を導き出しました。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 異なる種類の素子との接続: コンデンサーとダイオード(順方向・逆方向で性質が異なる)や、豆電球(一定の電圧・電流で切れる)などを接続した場合の回路全体の限界を求める問題。各素子の限界条件(電圧、電流、電力など)を正しく理解し、接続方法に応じてどの制約が支配的になるかを考える点で本問と共通します。
    • 3つ以上のコンデンサーの耐電圧: 3つ以上のコンデンサーが複雑に接続された回路の耐電圧を求める問題。部分的な合成(並列・直列)を行いながら、どの部分が最初に限界に達するかを段階的に絞り込んでいく必要があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「耐電圧」という言葉に反応: 問題文に「耐電圧」とあったら、それは「最大値・限界を考える問題」であると即座に認識します。
    2. 接続方法を確認: まず、並列か直列かを確認します。
      • 並列なら思考はシンプル: 「一番弱い奴に合わせる」→ 耐電圧の最小値が答え。
      • 直列なら一手間かかる: 「電圧は等しくない」と認識し、限界を決めるのが電圧なのか電気量なのかを考えます。
    3. 直列接続での思考ルート選択:
      • ルートA(電圧比で考える): \(V_A:V_B\)の比を求め、どちらが先に耐電圧に達するか場合分けで検証する。
      • ルートB(耐電気量で考える): 各々の\(Q_{\text{最大}}\)を計算し、小さい方を回路の限界\(Q_{\text{回路,最大}}\)として採用する。こちらの方が見通しが良い場合が多い。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 直列接続の耐電圧の誤解:
    • 誤解: 直列接続の耐電圧を、単純に個々の耐電圧の和 (\(V_{\text{A,最大}} + V_{\text{B,最大}}\)) だと勘違いしてしまう。
    • 対策: 直列接続では電圧は均等に分配されない(分圧される)ことを常に意識します。\(V_A + V_B\) が全体の電圧になるのは正しいですが、その限界値は、AとBが「同時に」それぞれの耐電圧に達するときだけではありません。本問のように、片方が限界に達したとき、もう片方はまだ余裕がある、という状況が普通です。
  • 容量と電圧の関係の混同:
    • 誤解: 電気容量が大きいコンデンサーほど、多くの電圧がかかると勘違いする。
    • 対策: 直列接続では電気量\(Q\)が一定なので、\(V=Q/C\) の関係から「電気容量\(C\)が小さいほど、かかる電圧\(V\)は大きくなる」という逆比の関係を正確に理解することが重要です。容量が小さいコンデンサーは「電圧がかかりやすい」と覚えましょう。
  • 場合分けの論理ミス:
    • 誤解: (2)の主たる解法で、ケース1(Aが先に限界)を計算し、そのときの\(V_B\)がBの耐電圧を超えたから「これが答えだ」と勘違いし、\(V_A+V_B\)を計算してしまう。
    • 対策: 「不適」と判断したケースは、「その状況は物理的に起こり得ない」という意味です。必ず、もう一方の「適した」ケースが答えの根拠になることを理解しましょう。両方のケースを検討し、矛盾なく成立する方を選ぶ、という手順を徹底します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 並列接続での最小値選択:
    • 選定理由: (1)では、並列接続の物理的定義「各要素にかかる電圧は等しい」という一点から論理的に導かれます。回路にかけた電圧\(V_1\)が、そのまま\(V_A\)であり\(V_B\)でもあるため、\(V_1\)が\(V_{\text{A,最大}}\)と\(V_{\text{B,最大}}\)の両方を超えないための条件は、数学的に「\(V_1 \le \min(V_{\text{A,最大}}, V_{\text{B,最大}})\)」となります。
    • 適用根拠: これは「鎖の強度は、最も弱い輪で決まる」という原則と同じです。並列回路というシステム全体の強度は、最も電圧に弱い部品によって決まります。
  • 直列接続での耐電気量アプローチ:
    • 選定理由: (2)の別解では、直列接続の物理的定義「各要素を流れる(蓄えられる)電気量は等しい」という本質に直接アプローチしています。回路の限界を電圧ではなく、より根源的な「電気量」という共通の指標で評価することで、場合分けという複雑な思考を回避できます。
    • 適用根拠: 回路に流せる電気量の上限は、ボトルネックとなるコンデンサー、すなわち最も少ない電気量しか蓄えられないコンデンサーによって決まります。この限界電気量\(Q_{\text{回路,最大}}\)が定まれば、\(V=Q/C\)という基本法則に従って、そのときの各部の電圧、ひいては全体の電圧が一意に決まる、という論理に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 情報の整理: 問題を解き始める前に、与えられた情報をコンデンサーごとに整理して書き出すと有効です。
    • A: \(C_A = 4.0 \, \text{μF}\), \(V_{\text{A,最大}} = 3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
    • B: \(C_B = 1.0 \, \text{μF}\), \(V_{\text{B,最大}} = 6.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
    • (別解のように) ここからさらに \(Q_{\text{A,最大}}\), \(Q_{\text{B,最大}}\) を計算して書き加えておくと、思考が整理されます。
  • 指数の計算を丁寧に: \(10^n\) の計算はミスの温床です。特に、\( (4.0 \times 10^{-6}) \times (3.0 \times 10^2) = (4.0 \times 3.0) \times 10^{-6+2} = 12 \times 10^{-4} \) のように、係数部分と指数部分を分けて計算する癖をつけましょう。
  • 比の計算を有効活用: (2)の主たる解法のように、\(V_A:V_B = C_B:C_A = 1:4\) という比の関係を最初に確定させることで、その後の計算の見通しが非常に良くなります。「どちらか一方の電圧が決まれば、もう一方も自動的に決まる」という関係性を利用することで、思考をシンプルに保てます。

384 金属板の挿入

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解(模範解答記載): 2つの直列コンデンサーと見なす解法
      • 主たる解法が電場と電位の関係から直接グラフを描くのに対し、この別解では金属板を挟んだコンデンサーを「極板間隔が狭い2つのコンデンサーの直列接続」と見なして、各コンデンサーにかかる電圧を計算し、グラフを作成します。
    • 設問(3)の別解(模範解答記載): 2つの直列コンデンサーの合成容量から求める解法
      • 主たる解法が「実効的な極板間隔」から容量の変化を考えるのに対し、この別解では(2)の別解の考え方を引き継ぎ、2つの直列コンデンサーの合成容量を計算することで、全体の電気容量を求めます。
    • 設問(4)の別解(独自考案): エネルギー保存則の観点から考察する解法
      • 主たる解法が電気量保存則(\(Q=CV\))を用いて解くのに対し、この別解では「スイッチを開いた後に金属板を抜き去る仕事」が「コンデンサーの静電エネルギーの増加」に等しいというエネルギー保存則の観点から、最終的な電位差を考察します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理モデルの多角化: 金属板の挿入を「実効的な距離の変化」と見るか、「2つのコンデンサーの直列」と見るか、複数の物理モデルを使い分ける能力が養われます。
    • 法則間の連携理解: (4)の独自考案の別解のように、電気量保存だけでなく、エネルギー保存という異なる物理法則からも同じ結論が導かれることを確認でき、物理法則の普遍性への理解が深まります。
    • 解法の選択肢拡大: 問題の条件によって、どのモデルや法則を使うと見通しが良くなるかを判断する力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「コンデンサーへの金属板の挿入とスイッチの操作」です。コンデンサーの極板間に金属板を挿入したときの電気容量の変化や、スイッチを開閉することで「電圧一定」なのか「電気量一定」なのかという条件がどう変わるのかを正しく理解し、電気量、電位、エネルギーなどを計算できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの基本公式: \(Q=CV\), 電気容量 \(C=\epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\), 静電エネルギー \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{1}{2}QV = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\)。
  2. 金属板の挿入の効果: 厚さ\(x\)の金属板を挿入すると、間隔が\(x\)だけ狭くなったコンデンサーと等価と見なせる。あるいは、2つのコンデンサーの直列接続と見なせる。
  3. スイッチの操作と保存量:
    • スイッチを閉じている(電池に接続されている)間は、極板間の電位差が電池の電圧\(V\)に保たれる。
    • スイッチを開いた(電池から切り離した)後は、コンデンサーは電気的に孤立し、蓄えられた電気量\(Q\)が一定に保たれる。
  4. 電場と電位の関係: 一様な電場\(E\)の中では、距離\(x\)だけ離れた2点間の電位差は\(V=Ex\)。電位のグラフの傾きは電場の強さを表す。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた文字を使って静電エネルギーの公式を適用します。
  2. (2)では、金属板挿入後の電場の様子を考えます。金属板の内部は電場が0、極板と金属板の間には電場が存在することから、Aからの距離と電位の関係をグラフに描きます。
  3. (3)では、金属板挿入後の電気容量の変化を考え、\(Q=CV\)の公式を使って電気量を求めます。
  4. (4)では、スイッチを開いて電気量が保存される条件の下で、金属板を取り去って電気容量が元に戻ったときの電位差を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
スイッチSを閉じた直後の、図1の状態におけるコンデンサーの静電エネルギーを求める問題です。問題文で電気容量が\(C\)、電池の起電力が\(V\)と与えられています。これらの文字を使って静電エネルギーを表す公式を選択して適用します。
この設問における重要なポイント

  • 静電エネルギーの公式は \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\), \(U=\displaystyle\frac{1}{2}QV\), \(U=\displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の3つがある。
  • 問題で与えられている文字(\(C\)と\(V\))を直接使える公式を選ぶのが最も効率的。

具体的な解説と立式
コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーを表す公式は3種類あります。
$$ U = \frac{1}{2}CV^2 $$
$$ U = \frac{1}{2}QV $$
$$ U = \frac{Q^2}{2C} $$
この問題では、電気容量\(C\)と極板間の電位差(電池の電圧)\(V\)が与えられているため、最初の式 \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を使うのが最も直接的です。

使用した物理公式

  • コンデンサーの静電エネルギー: \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
計算過程

公式に与えられた文字をそのまま適用するだけなので、これ以上の計算は不要です。
$$ U = \frac{1}{2}CV^2 $$

この設問の平易な説明

コンデンサーに蓄えられるエネルギーを求める問題です。物理には便利な公式がいくつか用意されていて、今回は「容量\(C\)」と「電圧\(V\)」が分かっているので、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) という公式をそのまま使えば答えが出ます。

結論と吟味

コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーは \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) と表せます。これは基本的な公式そのものであり、問題ありません。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)

問(2)

思考の道筋とポイント
スイッチを閉じたまま、厚さ\(\displaystyle\frac{d}{2}\)の金属板Pを極板A, Bの中央に挿入したときの、Aからの距離と電位の関係をグラフにする問題です。
重要なポイントは以下の通りです。
1. スイッチは閉じているので、A-B間の電位差は\(V\)に保たれる。
2. 金属板Pは導体なので、その内部は電場が0であり、全体が等電位になる。
3. 電場が存在するのは、極板Aと金属板Pの間、および金属板Pと極板Bの間のみである。
4. A-P間とP-B間の距離は等しいので、それぞれの空間の電場の強さも等しくなる。
これらの性質を元に、電位がどのように変化していくかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 導体(金属板)の内部は電場が0で、等電位。
  • 電位のグラフの傾きは、電場の強さ(のマイナス)を表す。電場が0なら傾きも0(水平)、電場が一定なら傾きも一定(直線)。
  • A-B間の電位差は\(V\)に保たれる。

具体的な解説と立式
極板Aの電位を\(V\)、極板Bの電位を0とします(Bが接地されているため)。
金属板Pは厚さ\(\displaystyle\frac{d}{2}\)で、中央に置かれているので、極板Aから金属板Pの表面までの距離は\(\displaystyle\frac{d}{4}\)、金属板Pのもう一方の表面から極板Bまでの距離も\(\displaystyle\frac{d}{4}\)です。
A-P間とP-B間の距離はともに\(\displaystyle\frac{d}{4}\)で等しく、対称性からそれぞれの電場の強さ\(E\)も等しくなります。
全体の電位差\(V\)は、電場がある区間の電位降下の合計に等しくなります。
$$ V = E \cdot \frac{d}{4} + E \cdot \frac{d}{4} $$
この式を整理すると、
$$ V = E \cdot \frac{d}{2} $$
これより、電場の強さは \(E = \displaystyle\frac{2V}{d}\) となります。
金属板Pの電位\(V_P\)は、Aの電位からA-P間の電位降下分を引いたものなので、
$$ V_P = V – E \cdot \frac{d}{4} $$
この式に\(E = \displaystyle\frac{2V}{d}\)を代入してグラフの要点を計算します。

使用した物理公式

  • 電場と電位差の関係: \(\Delta V = E \cdot \Delta x\)
  • 導体内部の電場は0
計算過程

$$
\begin{aligned}
V_P &= V – \left(\frac{2V}{d}\right) \cdot \frac{d}{4} \\[2.0ex]
&= V – \frac{V}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{V}{2}
\end{aligned}
$$
この結果から、グラフは以下のようになります。

  • \(x=0\)で電位\(V\)。
  • \(x=0\)から\(x=\displaystyle\frac{d}{4}\)まで、電位は直線的に\(\displaystyle\frac{V}{2}\)まで減少。
  • \(x=\displaystyle\frac{d}{4}\)から\(x=\displaystyle\frac{3}{4}d\)まで、電位は\(\displaystyle\frac{V}{2}\)で一定。
  • \(x=\displaystyle\frac{3}{4}d\)から\(x=d\)まで、電位は直線的に0まで減少。
この設問の平易な説明

電位のグラフは、電気的な世界の「坂道」の様子を描くようなものです。

  • A地点は高さ\(V\)、B地点は高さ0です。
  • 金属板Pは導体なので、電気的な「踊り場」のようなもので、板の上はどこでも同じ高さ(等電位)になります。
  • AからPまでの隙間と、PからBまでの隙間は、同じ長さの「坂」になります。
  • 全体の高さの差が\(V\)で、坂道は2区間あるので、それぞれの坂で高さが\(\displaystyle\frac{V}{2}\)ずつ下がることになります。
  • したがって、A(高さ\(V\)) \(\rightarrow\) [坂を下る] \(\rightarrow\) Pの上面(高さ\(\displaystyle\frac{V}{2}\)) \(\rightarrow\) [平坦な踊り場] \(\rightarrow\) Pの下面(高さ\(\displaystyle\frac{V}{2}\)) \(\rightarrow\) [坂を下る] \(\rightarrow\) B(高さ0) というグラフになります。
結論と吟味

描かれたグラフは、A(\(x=0\))で電位\(V\)、B(\(x=d\))で電位0となり、全体の電位差が\(V\)という条件を満たしています。また、金属板内部(\(\displaystyle\frac{d}{4} < x < \displaystyle\frac{3}{4}d\))で電位が一定(\(\displaystyle\frac{V}{2}\))になっており、導体の性質を正しく反映しています。グラフの傾き(電場)が隙間部分で一定かつ金属内部で0となっており、物理的に妥当なグラフです。

解答 (2) 問題の解答図に示されているグラフ
別解(模範解答記載): 2つの直列コンデンサーと見なす解法

思考の道筋とポイント
金属板Pを挿入した状態を、AとPを極板とするコンデンサー\(C_{AP}\)と、PとBを極板とするコンデンサー\(C_{PB}\)の2つが直列に接続されたものと見なします。
スイッチは閉じているので、全体の電圧は\(V\)です。直列接続なので、この電圧\(V\)が\(C_{AP}\)と\(C_{PB}\)に分圧されます。それぞれの容量を計算し、かかる電圧を求めれば、金属板Pの電位がわかり、グラフを描くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 金属板の挿入は、2つのコンデンサーの直列接続と等価である。
  • 各部分コンデンサーの極板間隔は\(\displaystyle\frac{d}{4}\)である。
  • 電気容量は極板間隔に反比例するため、容量は元の4倍になる。
  • 直列接続では、電圧は電気容量の逆比に分配される。

具体的な解説と立式
元のコンデンサーの容量を\(C = \epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\)とします。
コンデンサー\(C_{AP}\)は、極板間隔が\(\displaystyle\frac{d}{4}\)なので、その容量は、
$$ C_{AP} = \epsilon \frac{S}{d/4} $$
同様に、コンデンサー\(C_{PB}\)の容量も\(C_{PB} = \epsilon \displaystyle\frac{S}{d/4}\)です。
この2つのコンデンサーは直列接続されており、容量が等しいため、全体の電圧\(V\)は均等に分配されます。
したがって、\(C_{AP}\)にかかる電圧\(V_{AP}\)と\(C_{PB}\)にかかる電圧\(V_{PB}\)は、
$$ V_{AP} = V_{PB} = \frac{V}{2} $$
金属板Pは、コンデンサー\(C_{AP}\)の負極側と見なせます。Aの電位が\(V\)なので、Pの電位\(V_P\)は、
$$ V_P = V – V_{AP} $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気容量: \(C=\epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\)
  • 直列接続の電圧分配
計算過程

まず\(C_{AP}\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
C_{AP} &= \epsilon \frac{S}{d/4} \\[2.0ex]
&= 4 \left( \epsilon \frac{S}{d} \right) \\[2.0ex]
&= 4C
\end{aligned}
$$
\(C_{PB}\)も同様に\(4C\)です。
次に\(V_P\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_P &= V – V_{AP} \\[2.0ex]
&= V – \frac{V}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{V}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

金属板を挟むと、間に2つの小さなコンデンサーが直列に並んだのと同じ、と考える方法です。今回は金属板が真ん中にあるので、できた2つのコンデンサーは全く同じ性能になります。同じ性能のコンデンサーを直列につなぐと、全体の電圧\(V\)を仲良く半分こします。だから、真ん中の金属板の高さ(電位)は、ちょうど半分の\(\displaystyle\frac{V}{2}\)になります。

結論と吟味

金属板Pの電位が\(\displaystyle\frac{V}{2}\)であることがわかり、主たる解法と同じ結論に至りました。コンデンサーを分割して考えるこのモデルは、(3)の計算にもつながる有効な視点です。

問(3)

思考の道筋とポイント
金属板を挿入した状態での極板Aの電気量\(Q\)を求めます。スイッチは閉じているので、極板間の電圧は\(V\)のままです。金属板を挿入したことで、コンデンサーの電気容量が変化しています。この新しい電気容量を\(C’\)とすると、求める電気量は\(Q=C’V\)で計算できます。
金属板の挿入は、極板間隔が狭くなる効果をもたらします。厚さ\(\displaystyle\frac{d}{2}\)の金属板を挿入すると、電場が存在する空間の合計の長さは \(d – \displaystyle\frac{d}{2} = \displaystyle\frac{d}{2}\) となります。これは、極板間隔が\(\displaystyle\frac{d}{2}\)になったコンデンサーと等価です。
電気容量は極板間隔に反比例する(\(C \propto \displaystyle\frac{1}{d}\))ので、間隔が半分になれば、容量は2倍になります。
この設問における重要なポイント

  • スイッチが閉じているので電圧は\(V\)で一定。
  • 厚さ\(x\)の金属板を挿入すると、実効的な極板間隔は\(d-x\)になる。
  • 電気容量は極板間隔に反比例する。

具体的な解説と立式
元の電気容量を\(C = \epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\)とします。
厚さ\(\displaystyle\frac{d}{2}\)の金属板を挿入した後の新しい電気容量を\(C’\)とします。これは、極板間隔が実質的に \(d’ = d – \displaystyle\frac{d}{2} = \displaystyle\frac{d}{2}\) になったと見なせます。
$$ C’ = \epsilon \frac{S}{d’} = \epsilon \frac{S}{d/2} $$
したがって、新しい容量\(C’\)は元の容量\(C\)の2倍になります。
$$ C’ = 2 \left( \epsilon \frac{S}{d} \right) = 2C $$
この状態で蓄えられる電気量\(Q\)は、電圧が\(V\)であることから、
$$ Q = C’V $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気容量: \(C=\epsilon \displaystyle\frac{S}{d}\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
Q &= C’V \\[2.0ex]
&= (2C)V \\[2.0ex]
&= 2CV
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

金属板をコンデンサーの間に挟むと、コンデンサーの性能(電気容量)がアップします。隙間が実質的に半分になったのと同じ効果があり、容量は2倍になります。
スイッチはつながったままなので、電圧は\(V\)で変わりません。求める電気量は「性能 × 電圧」なので、性能が2倍になった分、蓄えられる電気の量も2倍になります。元の電気量は\(CV\)だったので、答えは\(2CV\)です。

結論と吟味

金属板を挿入した後の電気量は\(Q=2CV\)と求められました。金属板を挿入すると容量が増加し、電圧が一定なら電気量も増加するという結果は物理的に妥当です。

解答 (3) \(2CV\)
別解(模範解答記載): 2つの直列コンデンサーの合成容量から求める解法

思考の道筋とポイント
(2)の別解と同様に、金属板を挿入した状態を、容量がそれぞれ\(4C\)のコンデンサー\(C_{AP}\)と\(C_{PB}\)が直列接続されたものと見なします。この2つのコンデンサーの合成容量\(C’\)を計算し、\(Q=C’V\)の式から全体の電気量を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 直列接続の合成容量の公式: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_2}\)

具体的な解説と立式
コンデンサー\(C_{AP}\)と\(C_{PB}\)の容量は、(2)の別解で求めた通り、それぞれ\(4C\)です。
この2つの直列接続の合成容量\(C’\)は、次の式で求められます。
$$ \frac{1}{C’} = \frac{1}{C_{AP}} + \frac{1}{C_{PB}} $$
全体の電気量\(Q\)は、この合成容量\(C’\)に電圧\(V\)がかかっていると考えて、
$$ Q = C’V $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの直列接続の合成容量: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_2}\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

まず合成容量\(C’\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C’} &= \frac{1}{4C} + \frac{1}{4C} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{4C} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2C}
\end{aligned}
$$
両辺の逆数をとって、\(C’ = 2C\) となります。
次に、この結果を用いて電気量\(Q\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= C’V \\[2.0ex]
&= (2C)V \\[2.0ex]
&= 2CV
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(2)の別解の考え方を発展させます。2つの小さなコンデンサー(性能4C)が直列に並んでいるので、まずこの2つを合体させて一つのコンデンサーと見なします。直列の合成ルールに従うと、合体後の性能(合成容量)は\(2C\)になります。あとは「電気量 = 合体後の性能 × 電圧」で計算すれば、答えの\(2CV\)が求まります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果\(Q=2CV\)が得られました。「実効的な距離」で考える方法と、「コンデンサーの直列合成」で考える方法のどちらでも同じ結論に至ることを確認できました。

問(4)

思考の道筋とポイント
(3)の状態でスイッチSを開き、その後に金属板Pを取り去ったときの極板間の電位差\(V’\)を求めます。
ここでの最大のポイントは、スイッチを開いたことにより、コンデンサーが回路から電気的に孤立することです。これにより、極板に蓄えられている電気量\(Q\)が一定に保たれます。
(3)で求めた電気量\(Q=2CV\)が保存されたまま、金属板を取り去ることで、コンデンサーの電気容量は元の\(C\)に戻ります。
この新しい状態(電気量\(Q=2CV\)、容量\(C\))での電位差\(V’\)を、\(Q=CV\)の公式を書き換えた\(V’=Q/C\)で求めます。
この設問における重要なポイント

  • スイッチを開くと、電気量\(Q\)が保存される。
  • 金属板を取り去ると、電気容量は元の\(C\)に戻る。
  • 保存された電気量と、元に戻った容量から、新しい電圧を計算する。

具体的な解説と立式
スイッチを開いた瞬間の電気量は、(3)で求めた\(Q=2CV\)です。スイッチを開いた後は、この電気量が保存されます。
$$ Q_{\text{保存}} = 2CV $$
次に、金属板Pを取り去ると、コンデンサーの極板間隔は\(d\)に戻り、電気容量も元の\(C\)に戻ります。
この状態での電位差を\(V’\)とすると、コンデンサーの基本式\(Q=CV\)より、
$$ Q_{\text{保存}} = C V’ $$
この2つの式から\(Q_{\text{保存}}\)を消去して\(V’\)を求めます。
$$ C V’ = 2CV $$

使用した物理公式

  • 電気量保存則
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

立式した \(C V’ = 2CV\) の両辺を\(C\)で割ります。
$$
\begin{aligned}
V’ &= \frac{2CV}{C} \\[2.0ex]
&= 2V
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

スイッチを切ると、コンデンサーは電気を蓄えたまま孤立します。このときの電気の量は(3)で求めた\(2CV\)です。
次に、間に挟まっていた金属板を抜き取ると、コンデンサーの性能(容量)が元の\(C\)にダウンします。
「電気の量 = 性能 × 電圧」の関係は常に成り立ちます。今、電気の量は\(2CV\)のままで、性能が\(C\)に下がったので、その分だけ電圧\(V’\)が上がらないと帳尻が合いません。計算すると、電圧は元の2倍の\(2V\)になります。

結論と吟味

最終的な電位差は\(V’=2V\)となりました。孤立したコンデンサーの間隔を広げる(容量を小さくする)と、静電エネルギーが増加し、その分だけ電位差が大きくなるという物理的な性質と一致しており、妥当な結果です。

解答 (4) \(2V\)
別解(独自考案): エネルギー保存則の観点から考察する解法

思考の道筋とポイント
スイッチを開いた後、外部から仕事をして金属板を抜き去ると、その仕事の分だけコンデンサーの静電エネルギーが増加します。このエネルギー変化から最終的な電位差を求めるアプローチです。
よりシンプルなエネルギーの考え方は、(3)の状態(スイッチを開いた直後)と、(4)の状態(金属板を抜き去った後)の静電エネルギーを比較することです。
この設問における重要なポイント

  • スイッチを開いた後は電気量\(Q\)が保存される。
  • 静電エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) を使うと、\(Q\)が一定のときのエネルギー変化が見やすい。

具体的な解説と立式
(3)のスイッチを開いた直後の状態を「状態3」、(4)の金属板を抜き去った後の状態を「状態4」とします。
両方の状態で、電気量は \(Q = 2CV\) で保存されています。
状態3の静電エネルギー\(U_3\)は、容量が \(C’ = 2C\)、電気量が \(Q = 2CV\) なので、
$$ U_3 = \frac{Q^2}{2C’} $$
状態4の静電エネルギー\(U_4\)は、容量が \(C\)、電気量が \(Q = 2CV\) なので、
$$ U_4 = \frac{Q^2}{2C} $$
また、状態4における電位差を\(V’\)とすると、静電エネルギーは \(U_4 = \displaystyle\frac{1}{2}C(V’)^2\) とも書けます。

使用した物理公式

  • 静電エネルギーの公式: \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\), \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
  • 電気量保存則
計算過程

まず\(U_3\)と\(U_4\)を\(C, V\)で表します。
$$
\begin{aligned}
U_3 &= \frac{(2CV)^2}{2(2C)} \\[2.0ex]
&= \frac{4C^2V^2}{4C} \\[2.0ex]
&= CV^2
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
U_4 &= \frac{(2CV)^2}{2C} \\[2.0ex]
&= \frac{4C^2V^2}{2C} \\[2.0ex]
&= 2CV^2
\end{aligned}
$$
\(U_4\)の二つの表現を等しいとおいて\(V’\)を求めます。
$$ \frac{1}{2}C(V’)^2 = 2CV^2 $$
この式を\(V’\)について解きます。
$$
\begin{aligned}
(V’)^2 &= 4V^2 \\[2.0ex]
V’ &= 2V
\end{aligned}
$$
ただし、\(V’>0\)より正の平方根をとります。

この設問の平易な説明

スイッチを切った後、コンデンサーは電気を蓄えたまま孤立します。このときのエネルギーを計算しておきます。次に、金属板を抜いた後の状態を考えます。電気の量は同じままで性能がダウンするので、エネルギーは増加するはずです。この増えた後のエネルギーも計算します。最後に、この「増えた後のエネルギー」と「電圧」を結びつける公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) を使って、電圧を逆算します。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果 \(V’=2V\) が得られました。この解法は、電気量保存則とエネルギーの公式を組み合わせるもので、計算は少し回りくどくなりますが、コンデンサーの操作に伴うエネルギーの変化を具体的に追うことができるという点で教育的価値があります。金属板を抜き去るという外的な仕事によって、静電エネルギーが\(CV^2\)から\(2CV^2\)へと増加したことが分かります。


【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 「電圧一定」と「電気量一定」の条件変化
    • 核心: この問題の根幹は、スイッチの開閉によってコンデンサーが置かれる状況が劇的に変化し、それに伴って「保存される物理量」が変わることを理解する点にあります。
    • 理解のポイント:
      • スイッチON(電池接続時): コンデンサーは常に電池という「電圧の供給源」に繋がれているため、極板間の電位差は常に電池の電圧\(V\)に保たれます。このとき、電気容量\(C\)が変化すれば、\(Q=CV\)に従って電気量\(Q\)が変化します(電荷が電池との間で移動する)。
      • スイッチOFF(電池切断後): コンデンサーは電気的に孤立した「島」になります。電荷の逃げ場も供給源もないため、極板に蓄えられた電気量\(Q\)が一定に保たれます。このとき、電気容量\(C\)が変化すれば、\(V=Q/C\)に従って電圧\(V\)が変化します。
  • 金属板挿入による電気容量の変化
    • 核心: 導体である金属板を挿入すると、コンデンサーの電気容量が増加します。この現象を2つの異なるモデルで理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • モデルA(実効距離モデル): 厚さ\(x\)の金属板は、電場が存在する空間を\(x\)だけ短くする効果があります。電気容量は間隔に反比例するため、実効的な間隔が\(d-x\)になることで容量が増加すると考えます。
      • モデルB(直列合成モデル): 金属板を挟んだ状態を、2つの小さなコンデンサーの直列接続と見なします。この合成容量を計算することでも、全体の容量を求めることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 誘電体の挿入・抜去: 金属板の代わりに誘電体を挿入・抜去する問題。誘電率\(\epsilon_r\)の誘電体を挿入すると、容量は\(\epsilon_r\)倍になります。金属板は\(\epsilon_r \rightarrow \infty\)の極限と考えることもでき、本質は同じです。
    • 極板間隔の変化: スイッチを開いた後に、極板間隔を広げたり狭めたりする問題。電気量\(Q\)が一定のまま、容量\(C\)が変化するため、電圧\(V\)や静電エネルギー\(U\)が変化します。
    • 複数のコンデンサーとスイッチ: 複数のコンデンサーとスイッチが組み合わさった複雑な回路で、スイッチ操作によって電荷が再分配される問題。「スイッチ操作の前後で、電気的に孤立した部分の電気量の総和は保存される」という「電気量保存則」が鍵となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. スイッチの状態を最優先で確認: 問題文の各ステップで「スイッチは閉じているか、開いているか?」を最初に確認します。「閉じている \(\rightarrow\) 電圧\(V\)一定」「開いている \(\rightarrow\) 電気量\(Q\)一定」と機械的に判断します。
    2. コンデンサーの形状変化を把握: 金属板の挿入、誘電体の挿入、極板間隔の変化など、何が起きて電気容量\(C\)がどう変化したのかを把握します。
    3. エネルギーを問われたら:
      • 電圧\(V\)が一定の状況なら \(U=\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) が便利。
      • 電気量\(Q\)が一定の状況なら \(U=\displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) が便利。
      • 変化が見やすく、計算ミスを減らせます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • スイッチを開いた後の電圧:
    • 誤解: スイッチを開いた後も、電圧は\(V\)のままだと勘違いしてしまう。
    • 対策: 「スイッチを開く=電池との縁が切れる」とイメージします。電圧を一定に保ってくれる存在がいなくなるので、電圧は変化しうると考えます。代わりに「電荷が閉じ込められる」ので、電気量\(Q\)が保存される、というように思考を切り替える訓練が必要です。
  • 金属板挿入の効果の混同:
    • 誤解: 金属板を挿入すると、極板間隔が\(\displaystyle\frac{d}{2}\)になると勘違いする(厚さ\(\displaystyle\frac{d}{2}\)の金属板が、間隔\(\displaystyle\frac{d}{2}\)の空気層に置き換わるわけではない)。
    • 対策: 金属板は「電場のある空間を食いつぶす」効果だと理解します。元の空間\(d\)から、金属板の厚み\(\displaystyle\frac{d}{2}\)を単純に引き算した \(d-\displaystyle\frac{d}{2} = \displaystyle\frac{d}{2}\) が、電場が存在する実質的な距離になると考えます。
  • エネルギーと仕事の関係:
    • 誤解: (4)で静電エネルギーが増加(\(CV^2 \rightarrow 2CV^2\))したことについて、エネルギーがどこから来たのか分からず混乱する。
    • 対策: このエネルギー増加分は「金属板を抜き去るために外部がした仕事」に等しいです。極板と、静電誘導で現れた金属板表面の電荷との間には引力が働いており、これに逆らって抜き去るために仕事が必要なのです。エネルギー保存則は必ず成り立っていることを意識しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (3)での\(Q=C’V\)の選択:
    • 選定理由: この時点ではスイッチが閉じているため、「電圧\(V\)が一定」という条件が与えられています。また、金属板挿入によって「容量が\(C’\)に変化した」ことが分かっています。求めるのは電気量\(Q\)なので、これら3つの物理量\(Q, C’, V\)を直接結びつける\(Q=C’V\)を選択するのが最も論理的かつ効率的です。
    • 適用根拠: コンデンサーの基本式\(Q=CV\)は、どのようなコンデンサーにも成り立つ定義式です。金属板を挿入して全体の電気容量が\(C’\)になった系も、一つのコンデンサーと見なせるため、この式を適用できます。
  • (4)での\(V’=Q/C\)の選択:
    • 選定理由: スイッチを開いたことで、「電気量\(Q\)が一定」という条件に切り替わりました。この\(Q\)は(3)で求めた\(2CV\)です。そして、金属板を抜くことで「容量が\(C\)に戻った」という変化が起きています。求めるのは電圧\(V’\)なので、これら3つの物理量\(V’, Q, C\)を結びつける\(V’=Q/C\)を選択するのが最適です。
    • 適用根拠: (3)と同様、\(Q=CV\)は普遍的な関係式です。状況が変わっても、その瞬間の\(Q, C, V\)を正しく代入すれば必ず成り立ちます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 状態の明記: (3)や(4)のように状況が変化する問題では、計算の前に「状態3:スイッチOFF直後、Q=2CV, C’=2C」「状態4:金属板抜去後、Q=2CV(保存), C”=C」のように、各状態での\(Q, C, V\)の情報を整理して書き出すと、使うべき値や式を間違えにくくなります。
  • 分数の扱いに注意: (3)の別解のように合成容量を計算する際、\(\displaystyle\frac{1}{C’} = \displaystyle\frac{1}{2C}\) と計算した後、最後に逆数を取るのを忘れて \(C’=\displaystyle\frac{1}{2C}\) としてしまうミスが頻発します。逆数の和を計算した後は、必ず「ひっくり返す」ことを意識しましょう。
  • 文字式のまま計算: この問題のように、最終的な答えが文字式で表される場合、途中で数値を代入する必要がないため、計算ミスは起こりにくいです。しかし、\(C’=2C\) のような関係を代入する際に、丁寧に括弧をつけるなど、基本的な式変形のルールを守ることが重要です。例えば、\(Q=C’V\) に \(C’=2C\) を代入するなら \(Q=(2C)V\) と書く癖をつけると、より複雑な式でも間違いが減ります。
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385 誘電体の挿入

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 電場と電荷密度の関係から直接電気量を求める解法
      • 模範解答がコンデンサーの並列接続とみなし合成容量を計算するのに対し、別解ではより基本的な電場と電荷密度の関係から、各部分の電気量を直接計算して足し合わせます。
    • 設問(2)の別解: 電場と電束密度を用いて直接電気量を求める解法
      • 模範解答がコンデンサーの直列接続とみなし合成容量を計算するのに対し、別解では領域ごとの電場と電位の関係、および電束密度の一様性という基本法則から直接電気量を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: コンデンサーの合成則(並列・直列)が、より根源的な電場、電位、電束密度の関係から導かれるものであることを深く理解できます。
    • 思考の柔軟性向上: 「合成」という便利な道具が使えないような、より複雑な配置の問題に対しても、原理原則からアプローチする思考法を養うことができます。
    • 解法の多角的検証: 異なる物理的アプローチから同じ結論が導かれることを確認することで、理解の確実性を高め、知識を定着させることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「誘電体を挿入したコンデンサーの電気容量と電気量」です。誘電体の挿入の仕方によって、コンデンサーのどの部分の特性が変化するのかを正しく見抜き、並列接続または直列接続としてモデル化できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 平行平板コンデンサーの電気容量の式: 電気容量\(C\)が、極板の面積\(S\)、極板間距離\(d\)、そして極板間を満たす物質の誘電率\(\varepsilon\)によってどのように決まるか(\(C = \varepsilon \displaystyle\frac{S}{d} = \varepsilon_r \varepsilon_0 \displaystyle\frac{S}{d}\))を理解していること。
  2. コンデンサーの基本式: 電気量\(Q\)、電気容量\(C\)、電圧\(V\)の間の関係式\(Q=CV\)を正しく使えること。
  3. コンデンサーの並列接続: 複数のコンデンサーに同じ電圧がかかる接続方法。合成容量は各コンデンサーの電気容量の和になること(\(C_{\text{合成}} = C_1 + C_2 + \dots\))。
  4. コンデンサーの直列接続: 複数のコンデンサーに同じ電気量が蓄えられる接続方法。合成容量の逆数が、各コンデンサーの電気容量の逆数の和になること(\(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{合成}}} = \displaystyle\frac{1}{C_1} + \displaystyle\frac{1}{C_2} + \dots\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、誘電体の挿入のされ方(横方向の分割)から、2つのコンデンサーの「並列接続」とみなし、合成容量を計算して全体の電気量を求めます。
  2. (2)では、誘電体と空気層の間に金属板が挿入されていること(縦方向の分割)から、2つのコンデンサーの「直列接続」とみなし、合成容量を計算して全体の電気量を求めます。

問(1)

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