「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第15章】基本問題284~286

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基本問題

284 正弦波の式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 初期位相を求めて波の基本式から直接導出する解法
      • 模範解答が設問(2)で原点の振動の式を立て、それを設問(3)で「時間の遅れ」を用いて拡張するのに対し、別解では波の基本パラメータ(\(A, T, \lambda\))と初期位相(\(\phi\))を全て特定し、波の基本式に直接代入することで設問(3)の式を一度に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 波の式における初期位相 \(\phi\) の役割と、その決定方法(\(t=0\) での変位と速度から判断する)を具体的に学ぶことができます。
    • 解法の体系的理解: 波の式を立てるための、より一般的で厳密なアプローチ(基本式に全パラメータを代入する方法)を経験できます。
    • 思考の柔軟性向上: 設問(2)がなくても、与えられた情報から直接(3)の波の式を導き出す力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「\(y-x\)グラフからの正弦波の立式と分析」です。波のある瞬間の形(\(y-x\)グラフ)と、速さや進行方向といった情報を組み合わせて、波の運動全体を表す式を構築し、それを用いて具体的な問いに答える総合力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-x\)グラフの読解: グラフの縦軸の最大値が振幅 \(A\) を、横軸で1サイクルの長さが波長 \(\lambda\) を表すことを理解していること。
  2. 波の進行方向と媒質の振動方向: 波形を進行方向に少しだけ動かしてみることで、各点の媒質が次にどちらの向きに動くかを判断できること。
  3. 波の基本関係式: 波の速さ \(v\)、波長 \(\lambda\)、周期 \(T\) の間の関係式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を使いこなせること。
  4. 波の伝播と時間の遅れ: \(x\) 軸の正の向きに速さ \(v\) で進む波において、位置 \(x\) での振動は、原点での振動よりも時間 \(\displaystyle\frac{x}{v}\) だけ遅れること。これを数式上、\(t\) を \((t – \displaystyle\frac{x}{v})\) に置き換えることで表現できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた \(y-x\) グラフから振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) を直接読み取ります。次に、与えられた速さ \(v\) との関係式 \(v=\lambda/T\) を使って、周期 \(T\) を計算します。
  2. (2)では、まず波の進行方向から、原点(\(x=0\))の媒質が \(t=0\) の直後にどちらに動くかを判断します。その動きに合った単振動の式(今回は \(-A\sin\omega t\) 型)を立て、\(y_0-t\)グラフを描きます。
  3. (3)では、(2)で求めた原点の振動の式を、波全体の式に拡張します。「時間の遅れ」の考え方を用いて、\(t\) を \((t-x/v)\) に置き換えます。
  4. (4)では、(3)で完成した波の式に、指定された時刻 \(t\) と位置 \(x\) の値を代入し、具体的な変位を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
問題で与えられているのは、時刻 \(t=0\) における波の形、すなわち \(y-x\) グラフです。このグラフから、波の空間的な特徴である振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) を直接読み取ることができます。周期 \(T\) は時間的な特徴なのでグラフからは直接読み取れませんが、問題文で与えられている速さ \(v\) と、読み取った波長 \(\lambda\) を使って、波の基本関係式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) から計算することができます。
この設問における重要なポイント

  • \(y-x\)グラフから読み取れるのは、振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) であることを理解する。
  • 周期 \(T\) は、速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) から計算で求める。
  • 波の基本関係式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を正しく用いる。

具体的な解説と立式
問題の図(\(y-x\)グラフ)から、波の振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) を読み取ります。
グラフの最大変位から、振幅 \(A\) は、
$$ A = 0.20 \, \text{[m]} $$
グラフで波が1サイクルする長さから、波長 \(\lambda\) は、
$$ \lambda = 4.0 \, \text{[m]} $$
周期 \(T\) は、波の速さ \(v=5.0\) m/s と波長 \(\lambda\) の関係式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を変形して求めます。
$$ T = \frac{\lambda}{v} $$

使用した物理公式

  • 波の速さと波長・周期の関係: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
T &= \frac{4.0}{5.0} \\[2.0ex]
&= 0.80 \, \text{[s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)は、波の基本的なスペックを調べる問題です。
まず、グラフの見た目からスペックを読み取ります。波の高さ(振幅 \(A\))は \(0.20\) m、波の1サイクルの長さ(波長 \(\lambda\))は \(4.0\) mです。
次に、周期 \(T\) を計算します。周期は、波が1波長分進むのにかかる時間のことです。速さが \(5.0\) m/s、波長が \(4.0\) mなので、「時間 = 距離 ÷ 速さ」の関係から、周期 \(T\) は \(4.0 \div 5.0 = 0.80\) 秒と計算できます。

結論と吟味

この波の振幅は \(A=0.20\) m, 波長は \(\lambda=4.0\) m, 周期は \(T=0.80\) s であることがわかりました。与えられたグラフと情報から、基本的な公式を用いて導出された妥当な結果です。

解答 (1) \(A=0.20\) m, \(\lambda=4.0\) m, \(T=0.80\) s

問(2)

思考の道筋とポイント
原点(\(x=0\))の媒質の時間変化(\(y_0-t\)グラフ)を考えます。まず、\(t=0\) の瞬間の原点の状態を確認します。\(y-x\)グラフから、\(t=0, x=0\) で変位 \(y_0=0\) です。次に、\(t=0\) の直後の動きを調べます。波は \(x\) 軸の正の向きに進むので、\(t=0\) の波形を少しだけ右にずらした図を想像します。すると、原点 \(x=0\) の位置の変位は負になることがわかります。
つまり、原点の媒質は「\(t=0\) で \(y=0\) の位置から、負の向き(下向き)に動き出す」単振動をします。この動きは、三角関数で \(-A\sin(\omega t)\) の形で表されます。この情報をもとにグラフを描き、式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 波の進行方向から、特定の点の媒質の初期の運動方向を判断する方法。
  • 「\(t=0\) で \(y=0\)、初速が負」の単振動が、\(y = -A\sin(\frac{2\pi}{T}t)\) で表されることを理解している。

具体的な解説と立式
まず、原点(\(x=0\))の媒質の動きを考えます。
\(t=0\) の \(y-x\) グラフを見ると、\(x=0\) で \(y_0=0\) です。
波は \(x\) 軸の正の向きに進むので、\(t=0\) の波形が少しだけ時間が経つと右にずれます。そのとき、原点 \(x=0\) の位置にあった媒質は、波の谷の部分に向かって動くため、変位は負になります。
したがって、原点の媒質は \(t=0\) で \(y_0=0\) から負の向きに動き始めます。この運動は、振幅 \(A\)、周期 \(T\) の \(-A\sin\) 型の単振動となります。
これをグラフに描くと、模範解答の図aのようになります。
この単振動を表す式は、
$$ y_0 = -A\sin\left(\frac{2\pi}{T}t\right) $$
です。ここに(1)で求めた \(A=0.20\) m, \(T=0.80\) s を代入します。

使用した物理公式

  • 単振動の変位の式(-sin型): \(y = -A\sin\left(\frac{2\pi}{T}t\right)\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
y_0 &= -0.20\sin\left(\frac{2\pi}{0.80}t\right) \\[2.0ex]
&= -0.20\sin(2.5\pi t)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(2)では、原点 \(x=0\) にいる人に注目して、その人の上下運動をグラフと式で表します。
まず、\(t=0\) の瞬間、その人は \(y=0\) の高さにいます。波は右に進むので、その人のすぐ右隣にある「谷」が次にやってきます。つまり、その人は下に動き始めます。
この「\(y=0\) からスタートして、まず下がる」という動きは、数学のグラフでは「\(-\sin\)」の形に対応します。
したがって、グラフは \(-\sin\) カーブを描き、式も \(y_0 = -A\sin(\dots)\) という形になります。あとは(1)で求めた \(A\) と \(T\) を代入すれば式が完成します。

結論と吟味

原点の変位は \(y_0 = -0.20\sin(2.5\pi t)\) と表され、そのグラフは \(t=0\) で \(0\)、\(t=0.2\) s (\(=T/4\)) で \(-0.20\) m となり、物理的な考察と一致する妥当なものです。

解答 (2) グラフは模範解答の図aを参照、式は \(y_0 = -0.20\sin(2.5\pi t)\)

問(3)

思考の道筋とポイント
(2)で求めた原点の振動の式を、波全体の式に拡張します。波が速さ \(v=5.0\) m/s で \(x\) 軸の正の向きに進むため、位置 \(x\) での振動は、原点での振動よりも時間 \(\displaystyle\frac{x}{v}\) だけ遅れて起こります。この「時間の遅れ」を数式に反映させるため、(2)で求めた式の時刻 \(t\) を \((t – \displaystyle\frac{x}{v})\) に置き換えます。
この設問における重要なポイント

  • 波の伝播を「時間の遅れ」として捉え、それを「\(t\) の置き換え」という数学的操作で表現する。
  • (2)で立てた式を正しく利用する。

具体的な解説と立式
(2)で求めた原点(\(x=0\))における変位の式は、
$$ y_0(t) = -0.20\sin(2.5\pi t) $$
です。
波は速さ \(v=5.0\) m/s で \(x\) 軸の正の向きに進むため、任意の位置 \(x\) での振動は、原点での振動よりも \(\displaystyle\frac{x}{v} = \frac{x}{5.0}\) [s] だけ遅れます。
したがって、任意の位置 \(x\) と時刻 \(t\) における変位 \(y(x, t)\) を表す式は、原点の式の \(t\) を \((t – \displaystyle\frac{x}{5.0})\) に置き換えることで得られます。

使用した物理公式

  • 波の伝播による時間の遅れ: \(t \rightarrow t – \displaystyle\frac{x}{v}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
y &= -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(t – \frac{x}{5.0}\right)\right\}
\end{aligned}
$$
これが求める波の式です。

計算方法の平易な説明

(2)で作った原点の動きのルール(数式)を、波全体に適用します。
波は速さ \(5.0\) m/s で進むので、原点から \(x\) m離れた場所には、\(\displaystyle\frac{x}{5.0}\) 秒遅れて揺れが届きます。
つまり、位置 \(x\) での「今(\(t\) 秒後)」の揺れの高さは、原点での「少し前(\(t – \frac{x}{5.0}\) 秒後)」の揺れの高さと同じです。
したがって、(2)の式の \(t\) が入っている部分を、まるごと \((t – \frac{x}{5.0})\) に書き換えるだけで、波全体の式が完成します。

結論と吟味

得られた式 \(y = -0.20\sin(2.5\pi(t – \frac{x}{5.0}))\) は、\(x\) と \(t\) の両方を含む波の式です。\(x=0\) を代入すると(2)の式に一致し、\(t\) と \(x\) の項の符号が異なることから \(x\) 軸正の向きに進む波を表しており、問題の条件をすべて満たす妥当な結果です。

解答 (3) \(y = -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(t – \frac{x}{5.0}\right)\right\}\)
別解: 初期位相を求めて波の基本式から直接導出する解法

思考の道筋とポイント
波の基本式 \(y = A\sin(2\pi(\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda}) + \phi)\) を直接立てるアプローチです。(1)で \(A, T, \lambda\) は求まっているので、残るは初期位相 \(\phi\) です。初期位相は、\(t=0\) のときの波の様子から決定します。\(t=0, x=0\) での変位と、その直後の速度の向きという2つの条件を使って \(\phi\) を特定し、式を完成させます。
この設問における重要なポイント

  • 波の式における初期位相 \(\phi\) の役割を理解する。
  • \(t=0\) での変位と速度の向きの2つの条件から、初期位相 \(\phi\) を一意に決定する。

具体的な解説と立式
波の基本式を \(y = A\sin(2\pi(\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda}) + \phi)\) とおきます。
(1)より、\(A=0.20\) m, \(T=0.80\) s, \(\lambda=4.0\) m です。
$$ y = 0.20\sin\left(2\pi\left(\frac{t}{0.80} – \frac{x}{4.0}\right) + \phi\right) $$
初期位相 \(\phi\) を決定するために、\(t=0\) の条件を使います。
条件1: \(t=0, x=0\) で \(y=0\)。
$$ 0 = 0.20\sin(0 + \phi) \quad \Rightarrow \quad \sin\phi = 0 $$
これを満たす \(\phi\) は \(0, \pi, 2\pi, \dots\) です。候補は \(\phi=0\) または \(\phi=\pi\) となります。
条件2: \(t=0, x=0\) で媒質の速度 \(v_y\) は負。
波の式を \(t\) で微分して速度の式を求めます。
$$ v_y = \frac{dy}{dt} = A \cdot \frac{2\pi}{T} \cos\left(2\pi\left(\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda}\right) + \phi\right) $$
\(t=0, x=0\) を代入すると、
$$ v_y(0,0) = A \frac{2\pi}{T} \cos\phi $$
\(A, T\) は正なので、\(v_y < 0\) となるためには \(\cos\phi < 0\) である必要があります。
\(\phi=0\) の場合、\(\cos 0 = 1 > 0\) なので不適。
\(\phi=\pi\) の場合、\(\cos \pi = -1 < 0\) なので適。
よって、初期位相は \(\phi=\pi\) と決まります。

使用した物理公式

  • 正弦波の一般式: \(y = A\sin(2\pi(\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda}) + \phi)\)
  • 三角関数の性質: \(\sin(\theta+\pi) = -\sin\theta\)
計算過程

決定した \(\phi=\pi\) を波の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
y &= 0.20\sin\left(2\pi\left(\frac{t}{0.80} – \frac{x}{4.0}\right) + \pi\right)
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sin(\theta+\pi) = -\sin\theta\) の公式を用いると、
$$
\begin{aligned}
y &= -0.20\sin\left(2\pi\left(\frac{t}{0.80} – \frac{x}{4.0}\right)\right) \\[2.0ex]
&= -0.20\sin\left(2.5\pi t – \frac{2\pi x}{4.0}\right) \\[2.0ex]
&= -0.20\sin\left(2.5\pi t – 0.5\pi x\right)
\end{aligned}
$$
\(2.5\pi\) を括り出すと、
$$
\begin{aligned}
y &= -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(t – \frac{0.5\pi}{2.5\pi}x\right)\right\} \\[2.0ex]
&= -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(t – \frac{x}{5.0}\right)\right\}
\end{aligned}
$$
これは主たる解法の結果と一致します。

結論と吟味

この方法は、初期位相という概念を明確に用いて、より一般的に波の式を導出するアプローチです。少し手順は増えますが、波の式の構造を深く理解する上で非常に有益です。

解答 (3) \(y = -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(t – \frac{x}{5.0}\right)\right\}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
(3)で導出した波の式に、指定された時刻 \(t=2.0\) s と位置 \(x=31\) m を代入して、その瞬間の変位 \(y\) を具体的に計算します。計算の過程で、\(\sin(-\theta) = -\sin\theta\) や \(\sin(\theta + 2n\pi) = \sin\theta\) といった三角関数の性質を利用して、角度を簡単な範囲に整理することがポイントです。
この設問における重要なポイント

  • 完成した波の式に、具体的な \(t, x\) の値を代入する。
  • 三角関数の周期性(\(2\pi\) ごとに同じ値)や対称性(\(\sin(-\theta)=-\sin\theta\))を正しく使って計算を簡単にする。

具体的な解説と立式
(3)で求めた波の式
$$ y = -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(t – \frac{x}{5.0}\right)\right\} $$
に、\(t=2.0\) s, \(x=31\) m を代入します。

使用した物理公式

  • 三角関数の性質: \(\sin(-\theta) = -\sin\theta\), \(\sin(\theta + 2n\pi) = \sin\theta\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
y &= -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(2.0 – \frac{31}{5.0}\right)\right\} \\[2.0ex]
&= -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(2.0 – 6.2\right)\right\} \\[2.0ex]
&= -0.20\sin\left\{2.5\pi \left(-4.2\right)\right\} \\[2.0ex]
&= -0.20\sin(-10.5\pi)
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sin(-\theta) = -\sin\theta\) を用いると、
$$
\begin{aligned}
y &= -0.20 \times \{-\sin(10.5\pi)\} \\[2.0ex]
&= 0.20\sin(10.5\pi)
\end{aligned}
$$
次に、\(10.5\pi = 0.5\pi + 10\pi = \displaystyle\frac{\pi}{2} + 5 \times 2\pi\) と考え、\(\sin(\theta + 2n\pi) = \sin\theta\) を用いると、
$$
\begin{aligned}
y &= 0.20\sin\left(\frac{\pi}{2}\right) \\[2.0ex]
&= 0.20 \times 1 \\[2.0ex]
&= 0.20 \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(3)で作った「波の万能計算機」に、\(t=2.0\), \(x=31\) という数字を入れて計算します。
計算すると \(\sin(-10.5\pi)\) という項が出てきます。まず、マイナスを外に出して \(+\sin(10.5\pi)\) にします。
次に、\(10.5\pi\) は角度が大きすぎるので、円を何周も回っている分を無視します。\(10\pi\) はちょうど5周分なので、これは無視できます。残るのは \(0.5\pi\)、つまり \(90^\circ\) です。
\(\sin(90^\circ)\) は \(1\) なので、最終的な答えは \(0.20 \times 1 = 0.20\) m となります。

結論と吟味

時刻 \(t=2.0\) s, 位置 \(x=31\) m の点では、媒質は正の向きに最大の変位、すなわち振幅 \(0.20\) m の位置にあることがわかりました。計算過程も物理的に妥当です。

解答 (4) 0.20 m

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの相互変換:
    • 核心: この問題の根幹は、波のある瞬間の空間的な情報(\(y-x\)グラフ)と、ある一点の時間的な情報(\(y-t\)グラフ)が、波の速さ \(v\) を介して互いに変換可能であるという、波の運動の二面性を理解することです。
    • 理解のポイント:
      • \(y-x\)グラフは「写真」: 与えられた図は、\(t=0\) という瞬間に波全体を「パシャリ」と撮った写真です。この写真からは、波の空間的なスケール(振幅 \(A\)、波長 \(\lambda\))がわかります。
      • \(y-t\)グラフは「定点カメラの映像」: 設問(2)で求めたのは、原点 \(x=0\) に設置した定点カメラが記録した映像(のグラフ)です。この映像からは、波の時間的なスケール(周期 \(T\))がわかります。
      • 変換の鍵は「波の進行」: 写真(\(y-x\)グラフ)から映像(\(y-t\)グラフ)を作るには、「波がどう動くか」という情報が必要です。波が正の向きに進むことから、原点の媒質が \(t=0\) の直後にどちらに動くかを予測し、それに基づいて単振動のグラフを描くことができます。この一連の思考プロセスが、本問の核心です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • \(y-t\)グラフから\(y-x\)グラフを描く問題: 本問とは逆に、原点の\(y-t\)グラフが与えられ、「\(t=t_1\) の瞬間の波形(\(y-x\)グラフ)を描け」という問題。まず\(y-t\)グラフから \(A, T\) を読み、与えられた \(v\) から \(\lambda\) を計算します。次に、原点の式を立て、\(t \rightarrow (t-x/v)\) で波全体の式を構築し、その式に \(t=t_1\) を代入して \(y\) と \(x\) の関係式を求め、グラフを描きます。
    • 位相の概念を使う問題: 「\(x=6.0\) m の点の振動は、原点の振動に対して位相がどれだけずれているか」といった問題。波の式 \(y(x,t)\) の位相部分 \(\theta(x,t) = 2\pi(t/T – x/\lambda)\) に着目し、位相差 \(\Delta \theta = \theta(0,t) – \theta(x,t) = 2\pi x/\lambda\) を計算します。
    • 媒質の最大速度・最大加速度を求める問題: (2)で求めた原点の式 \(y_0(t)\) を \(t\) で微分すれば、原点の速度 \(v_y(t)\) が求まります。その最大値(振幅部分)を \(A\omega = A(2\pi/T)\) として計算する問題に応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの種類を最優先で確認: 横軸が \(x\) なのか \(t\) なのかで、読み取れる情報が全く異なります。これを間違えると全てが崩れます。
    2. 原点の初期運動を特定する: \(y-x\)グラフと進行方向が与えられたら、まず「原点(\(x=0\))は \(t=0\) の直後に上に動くか、下に動くか」を判断します。波形を進行方向に微小にずらす方法が最も確実です。
      • 上に動く(初速が正)→ \(\sin\) 型
      • 下に動く(初速が負)→ \(-\sin\) 型
    3. 三角関数の計算に備える: (4)のように具体的な変位を求める問題では、最終的に \(\sin\) や \(\cos\) の計算が待っています。\(\sin(-\theta)=-\sin\theta\), \(\cos(-\theta)=\cos\theta\), \(\sin(\theta+2n\pi)=\sin\theta\) などの公式は、いつでも使えるように準備しておきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 原点の初期運動の判断ミス:
    • 誤解: 波が右(正の向き)に進むから、原点の媒質も右に動くと勘違いする(横波では媒質は上下にしか振動しない)。あるいは、波形をずらす方向を間違えて、初速の正負を逆にしてしまう。
    • 対策: 「波形を進行方向に少しずらし、元の波形とずらした波形を比べて、特定の \(x\) の位置での \(y\) の変化を見る」という手順を機械的に実行します。この方法なら、直感に頼らずに確実に媒質の運動方向を判断できます。
  • \(-\sin\) 型の立式ミス:
    • 誤解: 原点が下に動くことはわかっても、それをどう数式で表現すればよいか混乱する。\(\sin(\omega t + \pi)\) なのか \(\sin(\omega t – \pi)\) なのか、あるいは \(-\sin(\omega t)\) なのか。
    • 対策: 最もシンプルな \(y = -A\sin(\omega t)\) の形をまず覚えるのが得策です。これは「\(\sin\) のグラフを上下反転させたもの」であり、「\(t=0\) で \(y=0\)、その後 \(y\) は減少」という動きと直接対応するため、直感的で間違いにくいです。
  • (4)の計算での角度の単位(rad)の意識不足:
    • 誤解: \(2.5\pi(2.0 – 31/5.0)\) のような計算で出てきた \(-10.5\pi\) という数値を、度数法(degree)の感覚で捉えてしまい、値の見当がつかなくなる。
    • 対策: 物理の波の式で扱う角度は、常に弧度法(radian)であることを徹底して意識します。「\(2\pi\) で1周」という感覚を身につけ、\(10.5\pi\) のような大きな角度は、\(10\pi\)(5周分)と \(0.5\pi\)(\(\pi/2\), つまり90°)に分解して考える癖をつけます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(y = -A\sin(\frac{2\pi}{T}t)\) の選択(設問(2)):
    • 選定理由: 物理的な考察から「原点の媒質は \(t=0\) で \(y=0\) から負の向きに動き出す」ことがわかりました。この特徴的な運動を最もシンプルに表現する数学関数が \(-\sin\) 型だからです。もちろん、\(y=A\sin(\frac{2\pi}{T}t+\pi)\) や \(y=A\cos(\frac{2\pi}{T}t+\frac{\pi}{2})\) など、等価な表現は多数ありますが、最も項が少なく直感的な \(-\sin\) 型を選ぶのが最も合理的です。
    • 適用根拠: 正弦波の各点の運動は単振動です。単振動の変位は、初期条件(\(t=0\) での変位と速度)によって、その後の運動が一意に決まります。今回はその初期条件が \(y(0)=0, v_y(0)<0\) であり、これを満たす単振動の式としてこの公式が選ばれます。
  • 時間の置き換え \(t \rightarrow t – x/v\) の適用(設問(3)):
    • 選定理由: (2)で原点という「部品」の式を求めた後、(3)で波全体という「完成品」の式を組み立てるために、この操作が選ばれました。これは、物理現象(波の伝播)と数学的操作(変数の置き換え)が最も直接的に結びつく、エレガントで強力な方法だからです。
    • 適用根拠: 波の定義そのものである「ある場所の振動が形を保ったまま一定速度で伝播する」という物理的要請に基づいています。この要請を満たすためには、波の変位を表す関数 \(y(x,t)\) が \((t-x/v)\) という組み合わせの関数(あるいは \((x-vt)\) の関数)である必要があります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 情報を図に書き込む: 与えられた \(y-x\) グラフに、読み取った \(\lambda=4.0\) m や、波の進行方向を示す矢印を書き込みます。さらに、(2)で \(y_0-t\) グラフを描く際には、横軸に \(T=0.80\) s, \(T/2=0.40\) s などの数値を書き込むことで、視覚的に情報を整理し、ミスを防ぎます。
  • 段階的な計算: (4)の \(y = -0.20\sin(-10.5\pi)\) の計算では、焦らずに一段階ずつ変形します。
    1. \(\sin(-\theta) = -\sin\theta\) を使って、\(y = +0.20\sin(10.5\pi)\) とする。
    2. 角度を \(2\pi\) の整数倍と、\(0 \le \theta < 2\pi\) の部分に分ける。\(10.5\pi = 10\pi + 0.5\pi\)。
    3. \(\sin(\theta+2n\pi)=\sin\theta\) を使って、\(y = 0.20\sin(0.5\pi)\) とする。
    4. 最後に値を計算する。\(y = 0.20 \times 1 = 0.20\)。

    この手順を習慣化することで、複雑な三角関数の計算ミスが劇的に減ります。

  • 単位の確認: (1)で \(T = \lambda/v\) を計算する際、\(\lambda\) [m] / \(v\) [m/s] = [s] となり、確かに時間の単位になることを確認します。このような単位のチェックは、公式の覚え間違いを発見するのにも役立ちます。
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285 正弦波の式

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 波の基本パラメータを直接代入する解法
      • 模範解答が設問(2)で原点の振動の式を立て、それを設問(3)で「時間の遅れ」を用いて拡張するのに対し、別解では波の基本パラメータ(\(A, T, \lambda\))を全て特定し、それらを波の基本式に直接代入することで設問(3)の式を一度に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 波の式における初期位相 \(\phi\) の役割と、その決定方法(\(t=0\) での変位と速度から判断する)を具体的に学ぶことができます。
    • 解法の体系的理解: 波の式を立てるための2つの主要なアプローチ(「時間の置き換え」による動的な導出と、「基本式への代入」による静的な構築)を両方学ぶことで、問題の状況に応じた最適な解法選択が可能になります。
    • 思考の柔軟性向上: 設問(2)がなくても、与えられた情報から直接(3)の波の式を導き出す力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「\(y-t\)グラフからの正弦波の立式と分析」です。ある一点の振動の様子(\(y-t\)グラフ)と、速さや進行方向といった情報を組み合わせて、波の空間的な形(\(y-x\)グラフ)や波全体の式を構築する総合力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-t\)グラフと\(y-x\)グラフの区別: 与えられたグラフが、ある一点の時間変化(\(y-t\)グラフ)なのか、ある瞬間の空間的な形(\(y-x\)グラフ)なのかを正しく見分けること。
  2. グラフの読解: \(y-t\)グラフからは振幅 \(A\) と周期 \(T\) が、\(y-x\)グラフからは振幅 \(A\) と波長 \(\lambda\) が読み取れることを理解していること。
  3. 波の基本関係式: 波の速さ \(v\)、波長 \(\lambda\)、周期 \(T\)、振動数 \(f\) の間の関係式(\(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) や \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\))を使いこなせること。
  4. 波の伝播と時間の関係: 波が伝わるということは、ある点の振動が別の点に遅れて伝わる現象であると理解し、それを用いて\(y-t\)グラフから\(y-x\)グラフを導けること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた \(y-t\) グラフから周期 \(T\) を直接読み取り、関係式 \(f=1/T\) を用いて振動数 \(f\) を計算します。
  2. (2)では、まず波長 \(\lambda\) を \(v=\lambda/T\) から計算します。次に、\(t=0\) の波形を考えます。位置 \(x\) での変位は、原点での \(t’=-x/v\) の時刻の変位に等しいことを利用して、\(y-t\)グラフから\(y-x\)グラフを導き、作図します。
  3. (3)では、まず原点の振動の式を立て、それを「時間の遅れ」の考え方を用いて波全体の式に拡張します。

問(1)

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