無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「連結容器内の理想気体」【高校物理対応】

今回の問題

thermodynamicsall#10

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「連結された容器内の気体の状態変化」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 理想気体の状態方程式: 気体の状態を表す基本法則 \(PV=nRT\) を、各容器、各状態で適用することがすべての基本です。
  • 圧力の均一性: 容器AとBは管で繋がっているため、気体は自由に行き来でき、平衡状態では容器内の圧力はどこでも等しくなります。
  • 物質量保存の法則: 装置全体は密閉されているため、気体の総物質量(総モル数)は変化しません。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1), (2)では、問題文で指定された状態における気体の状態方程式を立てます。
  2. (3)では、変化後の状態について、A室とB室の圧力が等しいこと、および物質量の総和が一定であることを利用して、連立方程式を解き\(n_A\)を求めます。
  3. (4)では、(1)で立てた初期状態の式と、(2),(3)で明らかになった最終状態の式を比較し、\(p_2\) と \(p_1\) の関係を導きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
はじめの状態におけるA内の気体の状態方程式を立てる問題です。はじめの状態では、容器AとBは同じ容積\(V\)、同じ温度\(T\)、同じ圧力\(p_1\)です。したがって、AとBには同じ物質量の気体が入っているはずです。全体の物質量が\(2n\)なので、A内にはその半分の\(n\) [mol]の気体が存在すると考えられます。
この設問における重要なポイント

  • 初期状態では条件が対称的なので、総物質量\(2n\)がAとBに\(n\)ずつ均等に分配されると判断できる。
  • 理想気体の状態方程式の各変数に、Aの状態量を正しく当てはめる。

具体的な解説と立式
はじめの状態において、容器A内の気体の物理量は以下の通りです。

  • 圧力: \(p_1\)
  • 容積: \(V\)
  • 物質量: \(n\)
  • 温度: \(T\)

これらを理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) に当てはめます。
$$ p_1 V = nRT $$

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
計算過程

この設問では式を示すことのみが求められているため、上記の式がそのまま解答となります。

計算方法の平易な説明

はじめの状態では、AとBは全く同じ条件なので、全体の気体\(2n\) [mol]は半分ずつ、つまり\(n\) [mol]ずつAとBに入ります。Aについて状態方程式 \(PV=nRT\) を立てると、\(P\)が\(p_1\)、\(V\)が\(V\)、\(n\)が\(n\)、\(T\)が\(T\)なので、\(p_1 V = nRT\) となります。

結論と吟味

はじめの状態におけるA内の気体の状態方程式は \(p_1 V = nRT\) です。

解答 (1) \(p_1 V = nRT\)

問(2)

思考の道筋とポイント
変化後の状態におけるA内の気体の状態方程式を立てる問題です。問題文で指定された文字を使って、そのまま状態方程式を記述します。
この設問における重要なポイント

  • 問題文で与えられた変化後の物理量を、そのまま状態方程式に当てはめる。

具体的な解説と立式
変化後の状態において、容器A内の気体の物理量は以下の通りです。

  • 圧力: \(p_2\)
  • 容積: \(V\)
  • 物質量: \(n_A\)
  • 温度: \(3T\)

これらを理想気体の状態方程式 \(PV=nRT\) に当てはめます。
$$ p_2 V = n_A R (3T) $$

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
計算過程

式を整理すると、
$$ p_2 V = 3n_A RT $$
となります。この設問では式を示すことのみが求められているため、これが解答となります。

計算方法の平易な説明

変化後のAについて、問題文に書かれている文字(圧力\(p_2\)、容積\(V\)、物質量\(n_A\)、温度\(3T\))を、そのまま状態方程式 \(PV=nRT\) に当てはめるだけです。

結論と吟味

変化後の状態におけるA内の気体の状態方程式は \(p_2 V = 3n_A RT\) です。

解答 (2) \(p_2 V = 3n_A RT\)

問(3)

思考の道筋とポイント
変化後のA内の物質量\(n_A\)を求める問題です。\(n_A\)を求めるには、B内の物質量\(n_B\)との関係を知る必要があります。変化後の状態では、A室とB室の圧力は共通で\(p_2\)です。このことを利用してB室の状態方程式を立て、A室の状態方程式と比較することで\(n_A\)と\(n_B\)の関係を導きます。最後に、物質量の総和が\(2n\)で一定であるという保存則を使って\(n_A\)を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 変化後もAとBで圧力が等しいことを利用する。
  • 物質量の総和が保存される (\(n_A + n_B = 2n\)) ことを利用する。
  • AとBの状態方程式から連立方程式を解く。

具体的な解説と立式
変化後のB内の物質量を\(n_B\)とします。B内の気体の物理量は以下の通りです。

  • 圧力: \(p_2\)
  • 容積: \(V\)
  • 物質量: \(n_B\)
  • 温度: \(T\)

Bについて状態方程式を立てると、
$$ p_2 V = n_B RT \quad \cdots ③ $$
(2)で求めたAの状態方程式は、
$$ p_2 V = 3n_A RT \quad \cdots ② $$
式②と③は左辺が等しいので、右辺も等しくなります。
$$ 3n_A RT = n_B RT $$
また、物質量の総和は保存されるので、
$$ n_A + n_B = 2n \quad \cdots ④ $$

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\)
  • 物質量保存の法則
計算過程

まず、\(3n_A RT = n_B RT\) の両辺から共通項 \(RT\) を消去し、\(n_A\) と \(n_B\) の関係を求めます。
$$ 3n_A = n_B $$
次に、この関係を物質量保存の式④ \(n_A + n_B = 2n\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
n_A + (3n_A) &= 2n \\[2.0ex]4n_A &= 2n \\[2.0ex]n_A &= \frac{2n}{4} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}n
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

Aを温めると、Aの中の気体は激しく動き、一部がBに移動します。変化後、AとBの圧力は同じ\(p_2\)になります。Aの状態方程式は \(p_2 V = 3n_A RT\)、Bの状態方程式は \(p_2 V = n_B RT\) です。この2つの式から、\(n_B = 3n_A\) という関係がわかります。つまり、BにはAの3倍の量の気体が入っていることになります。AとBの気体の合計量はもともと\(2n\)だったので、\(n_A + n_B = 2n\) です。この2つの式を組み合わせると、\(n_A\)が求まります。

結論と吟味

A内の気体の物質量は \(\displaystyle\frac{1}{2}n\) です。Aの温度が高いため気体が膨張し、Bへ移動した結果、A内の物質量が初期の\(n\)から減少しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (3) \(\displaystyle n_A = \frac{1}{2}n\)

問(4)

思考の道筋とポイント
変化後の圧力\(p_2\)を、変化前の圧力\(p_1\)で表す問題です。これは、(1)で立てた初期状態の式と、(2)と(3)の結果から得られる最終状態の式を比較することで解くことができます。具体的には、両方の式に共通して含まれる \(nRT\) という項を媒介にして、\(p_1\)と\(p_2\)を関係づけます。
この設問における重要なポイント

  • 初期状態と最終状態の状態方程式を比較する。
  • (3)で求めた物質量の関係を正しく代入する。
  • 式の一部を別の式の変数で置き換えることで、目的の関係式を導出する。

具体的な解説と立式
(1)で求めた初期状態のAの状態方程式は、
$$ p_1 V = nRT \quad \cdots ① $$
(2)で求めた最終状態のAの状態方程式は、
$$ p_2 V = 3n_A RT \quad \cdots ② $$
(3)の結果 \(n_A = \displaystyle\frac{1}{2}n\) を式②に代入します。
$$ p_2 V = 3 \left(\frac{1}{2}n\right) RT $$
$$ p_2 V = \frac{3}{2} nRT \quad \cdots ⑤ $$
ここで、式①より \(nRT\) は \(p_1 V\) に等しいので、これを式⑤に代入します。
$$ p_2 V = \frac{3}{2} (p_1 V) $$

使用した物理公式

  • (1), (2), (3)で導出した関係式
計算過程

上記で立てた式 \(p_2 V = \displaystyle\frac{3}{2} (p_1 V)\) の両辺から共通項 \(V\) を消去します。
$$ p_2 = \frac{3}{2} p_1 $$

計算方法の平易な説明

(1)の答えの式 \(p_1 V = nRT\) と、(2)と(3)からわかる式 \(p_2 V = \frac{3}{2} nRT\) を見比べます。右辺の \(nRT\) の部分が共通しているので、この部分を(1)の式の左辺である \(p_1 V\) に置き換えることができます。すると、\(p_2 V = \frac{3}{2} (p_1 V)\) となります。両方にある \(V\) を消すと、\(p_2 = \frac{3}{2} p_1\) という関係がわかります。

結論と吟味

気体の圧力 \(p_2\) は \(\displaystyle\frac{3}{2} p_1\) です。Aの温度を上げたことで装置全体の圧力が上昇しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (4) \(\displaystyle p_2 = \frac{3}{2} p_1\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 連結容器内の気体の法則:
    • 核心: この問題は、単一の容器ではなく「連結された容器」内の気体を扱う点が特徴です。核心となるのは、①圧力の均一性(平衡状態ではA室とB室の圧力が等しい)と、②物質量保存則(気体は移動するが、全体のモル数は一定)という2つの束縛条件を、理想気体の状態方程式と組み合わせて使えるかどうかにあります。
    • 理解のポイント: Aの温度を上げると、A内の気体分子は活発になり、Bへ移動します。その結果、A内の物質量は減り、B内の物質量は増えます。しかし、最終的に落ち着いた状態では、両室の圧力は再び等しくなります。このダイナミックな変化と最終的な平衡状態をイメージすることが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 容積が異なる容器: 容器Aの容積が\(V_A\)、Bの容積が\(V_B\)の場合。考え方は全く同じで、各状態方程式の\(V\)を\(V_A\), \(V_B\)に置き換えるだけで解くことができます。
    • コックを開く問題: 最初はコックで仕切られていた異なる状態の気体を、コックを開いて混合させる問題。この場合も、最終状態では圧力が均一になり、物質量の総和は保存されるという2つの条件を使って解きます。
    • ピストンで仕切られた容器: 前の問題のように、可動ピストンで仕切られている場合も、「圧力の均一性」という点で本質的に同じ考え方が適用できます。(ただし、ピストンの場合は体積が変化します。)
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 系の特徴を把握する: 「連結されている」「密閉されている」といったキーワードから、「圧力が均一」「総物質量が保存」という重要な条件を読み取ります。
    2. 状態変化の前後を整理する: 「変化前」と「変化後」で、各部屋(A, B)の \(P, V, n, T\) がそれぞれどうなっているかを表などに整理します。何が未知数で、何が既知数かを明確にします。
    3. 方程式の数を数える: 未知数の数と、立てられる独立した方程式の数(Aの状態方程式、Bの状態方程式、物質量保存則など)が合っているかを確認し、解法の見通しを立てます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 各部屋の物質量が一定だと誤解する:
    • 誤解: AとBそれぞれで物質量\(n\)が一定だと考え、ボイル・シャルルの法則 \(\frac{PV}{T}=\text{一定}\) を各部屋に適用してしまう。
    • 対策: 容器が連結されている場合、温度や圧力が変化すると気体は部屋間を移動します。したがって、各部屋の物質量は変化する可能性があります。「系全体」でのみ物質量が保存されることを強く意識しましょう。
  • 状態方程式を系全体で立ててしまう:
    • 誤解: 変化後のように温度が異なる状態で、系全体に対して一つの状態方程式 \(p_2 (2V) = (2n) R T_{\text{平均}}\) のように立てようとしてしまう。
    • 対策: 状態方程式は、温度が均一な系に対して適用するのが基本です。AとBのように温度が異なる場合は、必ず部屋ごとに別々の状態方程式を立て、それらを連立させる必要があります。
  • 連立方程式の計算ミス:
    • 誤解: 複数の式を扱うため、代入や式変形の過程で計算ミスが起こりやすい。
    • 対策: (3)のように、まず\(n_A\)と\(n_B\)の関係式を導き、それを物質量保存の式に代入するなど、段階的に計算を進めましょう。焦って一度に解こうとしないことが重要です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 各部分の状態方程式:
    • 選定理由: 系全体で温度が均一でないため、全体を一つの系として扱うことができません。したがって、温度が均一であると見なせる各部分(A室とB室)について、それぞれ状態方程式を立てるのが唯一の正しいアプローチです。
    • 適用根拠: 理想気体の状態方程式は、平衡状態にある均一な気体系に適用される法則です。A室、B室はそれぞれがそのような系を構成しているため、個別に適用することができます。
  • 圧力の均一性 と 物質量保存則:
    • 選定理由: A室とB室で立てた2つの状態方程式には、\(p_2, n_A, n_B\)といった複数の未知数が含まれており、これだけでは解けません。未知数を減らし、方程式を解くために必要な「束縛条件」として、これらの法則を選択します。
    • 適用根拠: 「圧力の均一性」は、気体分子が自由に移動できる結果として力学的な平衡が達成された状態を表します。「物質量保存則」は、系が閉じている(外部との物質の出入りがない)ことから従う普遍的な保存則です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 比の計算を活用する: (3)では、式②と③から \(p_2V\) を消去して \(3n_A RT = n_B RT\) を導きました。これは、\(p_2 V\) を計算せずに \(n_A : n_B\) の比を求めるテクニックです。状態方程式を割り算して比を考えると、計算が楽になることがよくあります。
  • 共通項で置き換える: (4)では、\(nRT\) という共通の項に着目し、\(p_1 V\) に置き換えることで計算を進めました。このように、複数の式に現れる共通の塊を見つけ、それを媒介として式を繋げるのは、連立方程式を解く際の強力なテクニックです。
  • 物理的な意味を吟味する:
    • (3)の結果: \(n_A = n/2\)。初期状態(\(n\))より物質量が減っています。これは、Aを加熱したことで気体がBに押し出されたことを意味し、直感と一致します。
    • (4)の結果: \(p_2 = (3/2)p_1\)。圧力が1.5倍になっています。Aの温度は3倍になりましたが、Bの温度は変わらないため、全体の圧力上昇はその中間的な値になっています。これも妥当な結果です。

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