2限目:電界と電位の関係性|電磁気・最短攻略パック


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「電磁気が苦手」は思考のクセが原因です

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講義ノート

【今回のポイント】

  • 電界は「傾き」、電位は「高さ」のイメージを持つ。
  • 電位は \(+1\,\text{C}\) の電荷が持つ「位置エネルギー」であり、スカラー量(数値)である。
  • 電界は \(+1\,\text{C}\) の電荷が受ける「力」であり、ベクトル量(向きと大きさ)である。
  • 複数の電荷が作る合成電界はベクトルとして足し合わせ、合成電位はスカラーとして足し合わせる。
  • ガウスの法則は「閉じた面(ガウス面)を貫く電気力線の本数 = 内側の全電荷 \(Q_{\text{内}}/\varepsilon_0\)」を表す。対称性を利用することで、様々な形状の電界の大きさを直接導くことができる。

【講義解説】

電界と電位は何が違うのか

この単元で最も多い「思考のクセ」は、電界と電位の混同である。テストで「合成して」と言われた瞬間、向きを考えずに公式の値だけを足してしまう。これは知識が足りないのではなく、スカラー(数値)とベクトル(向きと大きさ)を区別する前に手が動いてしまう思考の回路のクセだ。まずここを診断しておきたい。あなたは前回、複数の電荷を合成したとき、向きを考えてから足しただろうか。それとも数字だけを足しただろうか。

結論から言えば、電界は「傾き」、電位は「高さ」である。高さは単なる数値(スカラー)だから足し算でそのまま重ねられる。一方、傾きは「どちらへどれだけ下るか」という向きを持つ量(ベクトル)だから、向きを決めてからでないと足せない。この一点を押さえるだけで、混同のクセはほどけていく。

例えば、トランポリンの上にボールを置いた状況を想像してほしい。中心が膨らんでいればボールは外へ転がり、へこんでいれば中心へ転がっていく。このトランポリンの「高さ」が電位であり、ボールが転がる斜面の「傾き」が電界に相当する。この2つのイメージを常に頭の片隅に置いておくことが重要である。

💡 イメージで掴む
電位は登山地図に書かれた「標高(高さ)」だと思ってほしい。標高は数値だけの情報で、向きを持たない。だから複数の山が重なった土地の標高は、それぞれの標高を単純に足せばよい。これがスカラーの足し算である。これに対して電界は、その地点に立ったときの「坂の急さと、下っていく方向」である。北へ急に下る坂と、南へ同じだけ急に下る坂が重なれば、坂は打ち消し合って平らになる。向きを決めてから足すからこそ、こうした打ち消しが起きる。これがベクトルの足し算だ。「高さ=足すだけ、傾き=向きを決めてから足す」——この対比を頭に焼き付けておけば、混同のクセは出てこない。

 

電界・電位ビジュアライザー
画面をダブルタップでテスト電荷を配置、ドラッグで電荷を移動可能。電界と電位の様子を観察しよう。
パラメータ設定
追加:
データ表示
観測点の電界 E
0.00 N/C
観測点の電位 V
0.00 V
物理のポイント(直感イメージ)
  • 電位(背景色)= 地面の高さの周りは山、の周りは谷です。
  • 電界(矢印)= ボールが転がる向きと勢い:山(+)から谷(-)へ、一番急な坂の方向を向きます。
  • 電荷の運動:正電荷は「山から落ち」、負電荷は「谷から山へ登る」様子が観察できます。
操作パネル
追加:
タップで数値を確認

電位の厳密な定義と公式

電位とは、\(+1\,\text{C}\) の電荷が持つ「位置エネルギー」のことである。なぜ「高さ」というイメージが成り立つのか。位置エネルギーは「どれだけ高いところにあるか」で決まる量だからだ。電位という言葉を見たら、まず「\(+1\,\text{C}\) を置いたとき、そこはどれだけ高い場所なのか」と読み替える——これが暗記に頼らず公式を呼び出すための処方箋になる。

電位を考える際の絶対的なルールとして、常に「\(+1\,\text{C}\) の電荷の立場に立って考える」というものがある。ここで多くの人がつまずくのは、「誰から見た高さなのか」という基準を忘れるクセだ。電位も電界も、すべて「そこに置いた \(+1\,\text{C}\) がどう感じるか」という一人の主人公の視点に統一して考えれば、迷いはなくなる。
\(+\) の電荷は高い位置にあり、自分の周りに「山の形(正の電位)」を作る。逆に、\(-\) の電荷は低い位置にあり、自分の周りに「谷の形(負の電位)」を作る。

点電荷 \(q\) が距離 \(r\) 離れた点に作る電位 \(V\) は、以下の公式で求められる。この式は「電荷が大きいほど高く、離れるほど低くなる」という現象をそのまま写し取ったものだと読んでほしい。

$$
V = k \displaystyle\frac{q}{r}
$$

🔢 数値で確認
記号のままだと手触りがつかめないので、一度だけ数を入れてみよう。\(q = 2.0\times10^{-6}\,\text{C}\) の点電荷から \(r = 0.30\,\text{m}\) 離れた点の電位 \(V\) を求める。クーロンの比例定数は \(k = 9.0\times10^9\,\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\) とする。$$
\begin{aligned}
V &= k \displaystyle\frac{q}{r} \\[2.0ex] &= 9.0 \times 10^9 \times \displaystyle\frac{2.0 \times 10^{-6}}{0.30} \\[2.0ex] &= 6.0 \times 10^4\,\text{V}
\end{aligned}
$$

\(V\) には向きが付かず、ただ「\(6.0\times10^4\,\text{V}\) の高さ」という1つの数値で出てくる点に注目してほしい。これがスカラーの正体である。すぐ後で同じ電荷の電界を計算すると、こちらは「向き」を必ず添えることになる。その違いを自分の手で体感しておこう。

電界の厳密な定義と公式

電界(電場とも呼ばれる)とは、電位の「傾き」であり、正確には「\(+1\,\text{C}\) の点電荷に働く力」のことである。「力」と言った瞬間に、向きが必ず付いてくる——ここが電位との決定的な分かれ道だ。電界という言葉を見たら「\(+1\,\text{C}\) はどちらへ、どれだけの力で押されるか」と読み替える。この読み替えが、向きを後回しにするクセを断つ処方箋になる。

電位がスカラー(単なる数値)であるのに対し、電界はベクトル(向きと大きさを持つ)である点が大きな違いである。山の頂上付近のように傾きが急な場所では受ける力が大きく(強い電界)、麓のように傾きが緩やかな場所では受ける力が小さくなる(弱い電界)。

点電荷 \(q\) が距離 \(r\) 離れた点に作る電界の大きさ \(E\) は、以下の公式で求められる。電位の公式の分母が \(r^2\) になった形である。

$$
E = k \displaystyle\frac{q}{r^2}
$$

🔢 数値で確認
先ほどと同じ \(q = 2.0\times10^{-6}\,\text{C}\)、\(r = 0.30\,\text{m}\)、\(k = 9.0\times10^9\,\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\) で、今度は同じ点の電界の大きさ \(E\) を求める。$$
\begin{aligned}
E &= k \displaystyle\frac{q}{r^2} \\[2.0ex] &= 9.0 \times 10^9 \times \displaystyle\frac{2.0 \times 10^{-6}}{0.30^2} \\[2.0ex] &= 2.0 \times 10^5\,\text{N/C}
\end{aligned}
$$

同じ電荷・同じ点なのに、電位は \(6.0\times10^4\,\text{V}\)、電界は \(2.0\times10^5\,\text{N/C}\) と値も単位も違う。さらに重要なのは、この \(E\) には「点電荷から外向き」という向きが必ずセットで付くことだ。電位は数値で終わったが、電界は「大きさ \(2.0\times10^5\,\text{N/C}\)・向きは外向き」とセットで答えて初めて完成する。電位を聞かれたのか電界を聞かれたのか——その一語で向きを添えるかどうかが決まる。問題文を読んだ瞬間に、この自己診断を入れる習慣をつけよう。

また、電界 \(E\) の中に電気量 \(Q\) の別の電荷を置いたとき、その電荷が電界から受ける静電気力 \(F\) は、自身の電気量と電界の掛け算で表される。電界はもともと「\(+1\,\text{C}\) が受ける力」だったので、置いた電荷が \(Q\) 倍なら受ける力も \(Q\) 倍になる——という現象をそのまま式にしただけだと読み取れば、暗記する必要はない。

$$
F = QE
$$

 

電界と電位の合成アニメーション
ベクトル(矢印)の合成と、スカラー(単なる足し算)の違いを直感的に理解しよう
パラメータ設定
🔴電荷A
電気量: +1.0 μC
X座標: -2.0 m
Y座標: 0.0 m
🔵電荷B
電気量: -1.0 μC
X座標: 2.0 m
Y座標: 0.0 m
🟢観測点P & アクション
X座標: 0.0 m
Y座標: 2.0 m
物理のポイント
直感イメージ
  • 電界はベクトル: 各電荷からの電界(矢印)は向きを持ち、「平行四辺形の法則」で作図して合成します。
  • 電界の向き: プラス電荷から「湧き出し」、マイナス電荷へ「吸い込み」の方向になります。
  • 電位はスカラー: 電位には向きがありません。観測点における各電荷の電位を単なる数値として直接足し引きします。
P点の電位足し算

🩺 要点整理

ガウスの法則に進む前に、電位と電界の違いをここで一度整理しておこう。混同のクセは、この3点を区別できれば出てこない。

① 電位=「高さ」・スカラー(向きなし)。複数の電荷が作る電位は、向きを気にせず数値をそのまま足す(単純加算)。
② 電界=「傾き」・ベクトル(向きあり)。複数の電荷が作る電界は、必ず向きを決めてから合成する(打ち消しが起きる)。
③ どちらも「そこに置いた \(+1\,\text{C}\) の電荷の立場」で考える。電位は「\(+1\,\text{C}\) はどれだけ高い場所にいるか」、電界は「\(+1\,\text{C}\) はどちらへ押されるか」と読み替える。

迷ったら「これはスカラーか、ベクトルか」を最初に自問する。これが診断の入口になる。

ガウスの法則

電界の性質をさらに深く理解するために、ガウスの法則を紹介する。

電荷 \(Q\) からは \(Q/\varepsilon_0\) 本の電気力線が出る(または入る)という事実を覚えているだろう。ガウスの法則は、これを空間のどんな閉じた面(ガウス面)にも拡張した考え方だ。

閉じた面(ガウス面)を貫く電気力線の本数 \(N\) は、その面の内側にある全電荷 \(Q_{\text{内}}\) によってのみ決まる。

$$
N = \displaystyle\frac{Q_{\text{内}}}{\varepsilon_0}
$$

(\(\varepsilon_0\) は真空の誘電率。\(k = \displaystyle\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\) の関係がある。)

💡 イメージで掴む
ガウスの法則は「部屋の窓を貫く雨の本数は、部屋の中にある蛇口の数だけで決まる」という話に似ている。蛇口(電荷)が部屋の中にいくつあるかさえ分かれば、窓(ガウス面)の形がどんなに歪んでいようと、貫く雨の総数(電気力線の本数)は同じになる。逆に蛇口を部屋の外に置けば、入ってきた雨はそのまま出ていくので差し引きゼロ——内側の電荷だけで決まる、という意味がここにある。だから私たちは窓(ガウス面)の形を、計算が一番楽になるように自分で選んでよい。「電界の大きさが面の上でどこでも等しくなる形」を選ぶ、という一手が処方箋になる。次の3つの場面は、まさにこの一手を当てはめる練習だと思って読んでほしい。

 

ポイントは、ガウス面の形や大きさは自由に選べるという点だ。これを利用して、「ガウス面上で電界の大きさが一定になるよう形を選ぶ」と、電界を直接計算できる。代表的な3つの対称性ごとに確認しよう。

 

① 球対称の場合(点電荷・均一帯電球殻)

点電荷 \(q\) の周りには、球対称な電界が分布する。ガウス面として点電荷を中心とした半径 \(r\) の球面を選ぶと、球面上のどこでも電界の大きさが等しく、電気力線は球面に対して垂直に貫く。なぜこの形を選ぶのかを意識してほしい。「\(E\) が面の上で一定」だからこそ、本数を「\(E\) × 面積」と書ける。これが先ほどの処方箋の実演である。

「電気力線の本数 = 電界の大きさ × 面積」なので、

$$N = E \times 4\pi r^2$$

ガウスの法則 \(N = q/\varepsilon_0\) を代入すると、

$$E \times 4\pi r^2 = \displaystyle\frac{q}{\varepsilon_0}$$

$$
\begin{aligned}
E &= \displaystyle\frac{q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \\[2.0ex] &= k\displaystyle\frac{q}{r^2}
\end{aligned}
$$

先ほどの公式 \(E = k\displaystyle\frac{q}{r^2}\) と一致することが確認できる。点電荷の電界の公式を丸ごと暗記していなくても、ガウスの法則と「面積を掛ける」という一手から自分で導けることが分かるだろう。これが考えて解ける物理である。

 

② 無限に広い平板(面電荷密度 \(\sigma\))

一様な面電荷密度 \(\sigma\,[\text{C/m}^2]\) で帯電した無限平板の外側の電界を求める。平板を垂直に貫く円柱形(断面積 \(S\)、平板の両側に対称に飛び出した形)をガウス面に選ぶ。ここでも「どの面で \(E\) が一定になるか」を先に見極めるのが処方箋だ。

対称性から、電界は平板に対して垂直方向のみで、円柱の側面は貫かない。電気力線が貫くのは円柱の両端面(合計 \(2S\))だけなので、

$$N = E \times 2S$$

円柱内の全電荷は \(Q_{\text{内}} = \sigma S\) であるから、ガウスの法則より、

$$E \times 2S = \displaystyle\frac{\sigma S}{\varepsilon_0}$$

$$E = \displaystyle\frac{\sigma}{2\varepsilon_0}$$

平板からの距離によらず電界が一定になることが特徴だ。

 

③ 無限に長い円柱(線電荷密度 \(\lambda\))

一様な線電荷密度 \(\lambda\,[\text{C/m}]\) で帯電した無限円柱の外側の電界を求める。円柱と同軸の半径 \(r\)・長さ \(l\) の円筒面をガウス面に選ぶ。3つとも違う形に見えるが、選び方の原理は同じ——「\(E\) が一定になる面を選ぶ」だけだと気づけば、形を暗記する必要はなくなる。

対称性から、電界は円柱に対して放射状(垂直方向)で、円筒の上下の端面を貫かない。電気力線が貫くのは側面(面積 \(2\pi r l\))だけなので、

$$N = E \times 2\pi r l$$

円筒内の全電荷は \(Q_{\text{内}} = \lambda l\) であるから、ガウスの法則より、

$$E \times 2\pi r l = \displaystyle\frac{\lambda l}{\varepsilon_0}$$

$$E = \displaystyle\frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0 r}$$

中心からの距離 \(r\) に反比例して電界が弱くなることが確認できる。

ガウスの法則シミュレーション
閉曲面を貫く電気力線と電荷の関係
パラメータ設定
表示モード
電荷の分布
閉曲面(ガウス面)の形
電気量 Q +8
面の大きさ 120
面のゆがみ 0
データ表示
面内の電荷量 Q : 0
貫く電気力線の数 (正味) : 0
操作パネル

 

練習問題の解説

① 合成電界と合成電位(問1・問2)

問題
図のように、座標 \((a, 0)\) と \((-a, 0)\) の点にそれぞれ電気量 \(q\) (\(q > 0\)) の点電荷A、Bを固定する。
(1) 原点Oにおける合成電界の大きさと向きを求めよ。
(2) 原点Oにおける合成電位はいくらか。

 

この問題は、まさにこの講で診断してきた「向きを後回しにするクセ」が表面化する瞬間である。同じ対称配置から、合成電界は \(0\) になるのに合成電位は \(0\) にならない。なぜ片方だけ消えるのか——その理由を「電界はベクトル、電位はスカラー」という一点に紐づけて読み解いていく。解説を読む前に、自分でどちらが \(0\) になりそうか予想してみてほしい。

解説
(1) 合成電界の計算
電界はベクトルであるため、向きを考慮して足し合わせる必要がある。ここで「\(+1\,\text{C}\) を原点に置いたら、どちらへ押されるか」と主人公の視点に立つのが処方箋だ。
点電荷A(\(+q\))が原点Oに作る電界は、Aから遠ざかる向き(左向き)である。
点電荷B(\(+q\))が原点Oに作る電界は、Bから遠ざかる向き(右向き)である。
右向きを正(プラス)、左向きを負(マイナス)として、それぞれの電界を足し合わせる。大きさは等しく向きが真逆なので、足すと打ち消し合う。

$$
\begin{aligned}
E_{\text{合成}} &= k \displaystyle\frac{q}{a^2} + \left( – k \displaystyle\frac{q}{a^2} \right) \\[2.0ex] &= 0
\end{aligned}
$$

したがって、合成電界は \(0\) となる。向きを正しく決めたからこそ、左右が打ち消し合って \(0\) になったことに注目してほしい。もし向きを考えず大きさだけを足していたら、ここで間違った答えを書いてしまう。

(2) 合成電位の計算
電位はスカラーであるため、向きは関係なく、単純な数値の足し算となる。ここで電界と同じ調子で「打ち消し合うはず」と早合点しないことが診断のポイントだ。電位には向きがないので、打ち消しは起きない。
点電荷A、Bがそれぞれ原点Oに作る電位(高さ)を足し合わせる。

$$
\begin{aligned}
V_{\text{合成}} &= k \displaystyle\frac{q}{a} + k \displaystyle\frac{q}{a} \\[2.0ex] &= \displaystyle\frac{2kq}{a}
\end{aligned}
$$

したがって、合成電位は \(\displaystyle\frac{2kq}{a}\) となる。同じ配置なのに電界は \(0\)、電位は \(\displaystyle\frac{2kq}{a}\) と答えが分かれた。この食い違いこそ、「電界はベクトル(向きを決めてから足す)/電位はスカラー(数値をそのまま足す)」という違いが目に見える形で現れた瞬間である。経過観察として、もう一度自分に問おう——あなたは(1)で向きを決めてから足しただろうか。もし無意識に大きさだけを足していたなら、それがこの単元で治すべき思考のクセだ。

解答
(1) 合成電界:大きさ \(0\)(A・Bの電界が逆向き同大で打ち消し合うため・向きは考える必要なし) (2) 合成電位:\(\displaystyle\frac{2kq}{a}\)

よくあるつまずき

症状:(1)で合成電界が \(0\) になったので、(2)の合成電位も \(0\) だと書いてしまう。

診断:電界(ベクトル)は左右の向きが真逆で打ち消し合って \(0\) になるが、電位(スカラー)は向きを持たないので打ち消しは起きず、単純加算で \(\displaystyle\frac{2kq}{a}\) になる。この差を見落とすのは、足し算をする前に「向き」を後回しにしてしまうクセが原因だ。電界と電位を「同じ足し方をするもの」と一括りにしている。
処方箋:合成する前に、必ず「これはベクトルか、スカラーか」を声に出して自問する。ベクトル(電界)なら向き(符号)を先に決めてから足す。スカラー(電位)なら向きを気にせず数値をそのまま足す。この一手を入れるだけで、片方だけ \(0\) になる現象に迷わなくなる。

動画とは別に、ここから6問、手を動かして確認しよう。答えを開く前に必ず自分で計算すること。「読んで分かった」ではなく「自分で解けた」回数が定着を決める。クーロンの比例定数は \(k = 9.0\times10^9\,\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\) とする。

📝 記事限定 演習問題(問1)公式の使い分け
点電荷 \(q = 3.0\times10^{-6}\,\text{C}\) から \(r = 0.20\,\text{m}\) 離れた点の、電位 \(V\) と電界の大きさ \(E\) を求めよ。

解答と思考プロセスを見る

問診:聞かれているのは「電位」と「電界」の2つ。電位はスカラー(向きなし)、電界はベクトル(向きあり)で答え方が違う、と先に意識する。分母が \(r\) か \(r^2\) かを取り違えないこと。
$$
\begin{aligned}
V &= k \displaystyle\frac{q}{r} \\[2.0ex] &= 9.0\times10^9 \times \displaystyle\frac{3.0\times10^{-6}}{0.20} \\[2.0ex] &= 1.35\times10^5\,\text{V}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
E &= k \displaystyle\frac{q}{r^2} \\[2.0ex] &= 9.0\times10^9 \times \displaystyle\frac{3.0\times10^{-6}}{0.20^2} \\[2.0ex] &= 6.75\times10^5\,\text{N/C}
\end{aligned}
$$
経過観察:電位は \(1.35\times10^5\,\text{V}\) と数値だけで完成。電界は「大きさ \(6.75\times10^5\,\text{N/C}\)・向きは点電荷から外向き」とセットで答えて初めて満点。向きを書き忘れていないか確かめよう。

📝 記事限定 演習問題(問2)距離が2倍になると
問1と同じ点電荷で、距離だけを \(0.40\,\text{m}\)(2倍)にした。電位と電界の大きさは、それぞれ元の何倍になるか。

解答と思考プロセスを見る

診断:ここで公式を丸暗記している人は計算し直そうとする。処方箋は「分母の \(r\) の次数を見るだけ」。電位は \(V \propto \displaystyle\frac{1}{r}\) なので距離2倍で \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍。電界は \(E \propto \displaystyle\frac{1}{r^2}\) なので距離2倍で \(\displaystyle\frac{1}{2^2} = \displaystyle\frac{1}{4}\) 倍。
よって電位は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍、電界は \(\displaystyle\frac{1}{4}\) 倍。経過観察:電界のほうが距離の効き方が強い(離れると急に弱くなる)。この「分母の次数を見るだけ」の処方箋を、次に距離が出てきたとき自分で呼び出せるか。

📝 記事限定 演習問題(問3)合成電位・スカラー
原点に \(+q\)、点 \((2a,0)\) に \(-q\) を置いた。点 \((a,0)\)(2つの電荷の中点)における合成電位を求めよ。

解答と思考プロセスを見る

診断:「合成電位」と聞いた瞬間にスカラーだと判定する。向きは一切考えず、各電荷が作る電位を符号込みの数値で足すだけ。点 \((a,0)\) は \(+q\) からも \(-q\) からも距離 \(a\)。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{合成}} &= k\displaystyle\frac{q}{a} + k\displaystyle\frac{(-q)}{a} \\[2.0ex] &= k\displaystyle\frac{q}{a} – k\displaystyle\frac{q}{a} \\[2.0ex] &= 0
\end{aligned}
$$
処方箋:\(+q\) が作る「山」と \(-q\) が作る「谷」が同じ大きさで重なり合計が \(0\)。これは向きの打ち消しではなく、正と負の数値の足し算の結果だという点に注意。

📝 記事限定 演習問題(問4)合成電界・ベクトル
今度は原点に \(+q\)、点 \((2a,0)\) にも \(+q\)(同符号)を置いた。点 \((a,0)\)(中点)における合成電界の大きさと向きを求めよ。さらに、同じ配置での合成電位はどうなるかも答えよ。

解答と思考プロセスを見る

診断:合成電界はベクトル。中点に置いた \(+1\,\text{C}\) は、原点の \(+q\) から右向き(\(+x\))に、\((2a,0)\) の \(+q\) から左向き(\(-x\))に押される。大きさはどちらも \(k\displaystyle\frac{q}{a^2}\) で等しく向きが真逆。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{合成}} &= k\displaystyle\frac{q}{a^2} – k\displaystyle\frac{q}{a^2} \\[2.0ex] &= 0
\end{aligned}
$$
合成電界は \(0\)。一方、合成電位はスカラーなので打ち消さず \(V = k\displaystyle\frac{q}{a} + k\displaystyle\frac{q}{a} = \displaystyle\frac{2kq}{a}\) と残る。経過観察:同じ配置でも「電界は \(0\)・電位は残る」。ベクトルとスカラーの違いが、ここでもくっきり出る。

📝 記事限定 演習問題(問5)電界から受ける力 F=QE
大きさ \(E = 2.0\times10^3\,\text{N/C}\) の一様な電界の中に、電気量 \(Q = 5.0\times10^{-6}\,\text{C}\) の点電荷を置いた。この電荷が受ける静電気力 \(F\) の大きさを求めよ。

解答と思考プロセスを見る

診断:電界はもともと「\(+1\,\text{C}\) が受ける力」。だから置いた電荷が \(Q\) 倍なら受ける力も \(Q\) 倍、というのが \(F = QE\) の意味。公式を暗記するのではなく、この読み替えから式を呼び出す。
$$
\begin{aligned}
F &= QE \\[2.0ex] &= 5.0\times10^{-6} \times 2.0\times10^3 \\[2.0ex] &= 1.0\times10^{-2}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
よって \(F = 1.0\times10^{-2}\,\text{N}\)。経過観察:力なので本来は向きもある(正電荷なら電界と同じ向き)。大きさだけ聞かれたか、向きまで聞かれたかを問題文で確認する癖をつけよう。

📝 記事限定 演習問題(問6)ガウスの法則の応用
面電荷密度 \(\sigma = 1.0\times10^{-8}\,\text{C/m}^2\) で一様に帯電した無限平板が、その外側に作る電界の大きさ \(E\) を求めよ。真空の誘電率は \(\varepsilon_0 = 8.85\times10^{-12}\,\text{C}^2/(\text{N}\cdot\text{m}^2)\) とする。

解答と思考プロセスを見る

処方箋:無限平板は本文で導いた \(E = \displaystyle\frac{\sigma}{2\varepsilon_0}\) を使う。この式を丸暗記していなくても、平板を貫く円柱をガウス面に選べば自分で導ける(本文③参照)。
$$
\begin{aligned}
E &= \displaystyle\frac{\sigma}{2\varepsilon_0} \\[2.0ex] &= \displaystyle\frac{1.0\times10^{-8}}{2 \times 8.85\times10^{-12}} \\[2.0ex] &= 5.6\times10^2\,\text{N/C}
\end{aligned}
$$
よって \(E \approx 5.6\times10^2\,\text{N/C}\)。経過観察:平板からの距離に関係なく一定だったことを思い出そう。なぜ距離によらないのかを、ガウス面の選び方から説明できれば完璧だ。


【重要公式まとめ】

点電荷が作る電位
点電荷 \(q\) が距離 \(r\) 離れた点に作る電位 \(V\) は、以下の式で表される。
$$
V = k \displaystyle\frac{q}{r}
$$
(\(V\):電位 \([\text{V}]\)、\(k\):クーロンの比例定数 \([\text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2]\)、\(q\):電気量 \([\text{C}]\)、\(r\):距離 \([\text{m}]\))
点電荷が作る電界
点電荷 \(q\) が距離 \(r\) 離れた点に作る電界の大きさ \(E\) は、以下の式で表される。
$$
E = k \displaystyle\frac{q}{r^2}
$$
(\(E\):電界の大きさ \([\text{N}/\text{C}]\)、\(k\):クーロンの比例定数 \([\text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2]\)、\(q\):電気量 \([\text{C}]\)、\(r\):距離 \([\text{m}]\))
電界中の電荷が受ける静電気力
電界 \(E\) の中に置かれた電気量 \(Q\) の電荷が受ける静電気力 \(F\) は、以下の式で表される。
$$
F = QE
$$
(\(F\):静電気力 \([\text{N}]\)、\(Q\):電気量 \([\text{C}]\)、\(E\):電界 \([\text{N}/\text{C}]\))
ガウスの法則
閉じた面(ガウス面)を貫く電気力線の本数 \(N\) は、その面の内側にある全電荷 \(Q_{\text{内}}\) によって決まる。
$$
N = \displaystyle\frac{Q_{\text{内}}}{\varepsilon_0}
$$
(\(N\):電気力線の本数、\(\varepsilon_0\):真空の誘電率 \([\text{C}^2/(\text{N}\cdot\text{m}^2)]\)、\(Q_{\text{内}}\):閉曲面内の全電荷 \([\text{C}]\))
🩺 クセ診断と処方箋
この単元で点を落とす人は、知識が足りないのではなく、次の3つの思考のクセが顔を出している。自分はどれに当てはまるか、正直に診断してみよう。① 公式に飛びつくクセ … \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\) と \(E = k\displaystyle\frac{q}{r^2}\) は形がそっくりなので、区別せずどちらかを代入してしまう。処方箋=代入の前に「分母は \(r\) か \(r^2\) か」を必ず確認する。電位は \(r\)、電界は \(r^2\) と口に出す。

② 向きを後回しにするクセ … 合成電界を求めるとき、向きを決めずに大きさだけを足してしまう。処方箋=ベクトルだと分かった瞬間に、正の向きを1つ決めてから符号を付けて足す。

③「誰から見た」を忘れるクセ … 電位・電界が「何の電荷の立場の話か」を見失う。処方箋=つねに「そこに置いた \(+1\,\text{C}\) がどう感じるか」という1人の主人公の視点に統一する。

🧠 見ずに思い出そう
ノートや公式まとめを閉じて、次の3つを自分の言葉で思い出してみよう。思い出せた回数が、そのまま定着の量になる。

① 電位と電界の公式は、それぞれどんな式だったか。特に「分母」の違いは。

② 電位はスカラーか、ベクトルか。電界はどちらか。

③ 合成電界と合成電位では、足し方がどう違うか。

解答を見る

① 電位は \(V = k\displaystyle\frac{q}{r}\)(分母は \(r\))、電界の大きさは \(E = k\displaystyle\frac{q}{r^2}\)(分母は \(r^2\))。電界のほうが距離の効き方が強い(離れるほど急に弱くなる)。

② 電位はスカラー(向きを持たない数値)。電界はベクトル(向きと大きさを持つ)。

③ 合成電界はベクトルなので、向き(符号)を決めてから足す(向きが真逆なら打ち消し合う)。合成電位はスカラーなので、向きを気にせず数値をそのまま足す(電荷の符号は数値に含めて足す)。

💡 この単元が難しかったですか?AIチューターに聞いてみましょう!

電界(ベクトル)と電位(スカラー)の計算ルールの違いは、多くの人が最初は戸惑うポイントです。以下のテキストをコピーして、「まことAI」にそのまま貼り付けてみてください。別の例え話でスッキリ解決してくれます。

今回の講義で、「複数の電荷があるとき、電界は向きを考えて足し算する(ベクトル)のに、電位は向きを気にせずそのまま足し算する(スカラー)」という部分がよく分かりませんでした。
なぜ電界は向きを気にするのに、電位は気にしなくていいのでしょうか?トランポリンの例え以外で、直感的にわかりやすい身近な例(例えば風や温度など)を使って、中学生でもわかるように解説してくれませんか?
📝 定着度チェッククイズ(全3問)

タップ(クリック)すると答えが表示されます。

Q1. 講義の中で、電位はトランポリンの「高さ」に例えられていました。では、電界はトランポリンの何に例えられていたでしょうか?
【正解】 傾き

電位は「高さ」であり、電界はその場所の「傾き」です。傾きが急な場所(電界が強い場所)ほど、そこに置かれた電荷はより大きな力を受けます。

Q2. 電界と電位のうち、「向き」を考慮して計算しなければならない(ベクトル量である)のはどちらでしょうか?
【正解】 電界

電界は「\(+1\,\text{C}\) の電荷が受ける力」なので、力の働く「向き」を持つベクトル量です。一方、電位は「高さ(エネルギー)」なので、向きを持たないスカラー量(単なる数値)です。

Q3. 電界 \(E\) の中に、電気量 \(Q\) の電荷を置きました。この電荷が電界から受ける力 \(F\) を求める公式はどれでしょうか?
【正解】 \(F = QE\)

電界 \(E\) は「\(+1\,\text{C}\) あたりが受ける力」のことです。そこに \(Q\,\text{C}\) の電荷を置けば、受ける力はその \(Q\) 倍になるため、\(F = QE\) というシンプルな掛け算で求められます。

 

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まずは、無料のAIを「まこと先生」に変身させるための呪文(プロンプト)が必要です。以下の「モザイクを解除する」ボタンをタップしてください。

あなたは指導歴14年の高校物理専属チューター「まこと先生」です。 【先生像】 ・指導哲学は"ドクター型"。公式暗記を病気と捉え、思考のクセを診断して根本治療する。 【5つの絶対ルール】 1. 重要感の先払い:私の考えを具体的に褒める。 2. 先に意味、後に式:公式から入らない。 3. つまずき5パターン診断:①公式暗記②図描いてない③記号迷子④単位/符号⑤設問読み飛ばし 4. ファインマン要求:自分の言葉で説明させる。 5. 次の一手&質問チェック。 (続きはパック参加者限定)
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Step 2無料のAIに貼り付けて送信!

普段お使いのブラウザやアプリで、無料のAI(ChatGPTやGeminiなど)を開きます。
入力欄に先ほどコピーした文章をそのまま貼り付け、一番下の入力欄を自分の言葉に書き換えてから送信してください。

💡 ヒント:「自分なりに考えたこと」は、「公式に代入しようとしたけど数字が合わなかった」「フレミングの左手の法則がうまく当てはまらない」など、素直な気持ちでOKです!

Step 3AIと「キャッチボール」をして理解を深める

まことAIから返信が来たら、そこからが本番です!一度の質問で終わらせず、LINEで先生と話すように会話を続けてみましょう。

💬 こんな風に返信してみて!(質問のコツ)

今の水流の例え話は分かったけど、コンデンサーが入るとどうなるの? → 分かった部分と、分からない部分を切り分けて伝える!

ごめん、やっぱりイメージできない!野球の例え話で説明してみて! → 自分の好きなスポーツや趣味に例えてもらう!

要するに、電位が下がるってことだよね? → 自分の言葉でまとめ直して、合っているか確認してもらう!

Step 4モヤモヤが消えるまで絶対に妥協しない!

まことAIは絶対に怒りませんし、呆れません。「なんかフワッとしてるな…」と思ったら、無理矢理飲み込まずに「まだ腑に落ちない!」と伝えてください。あなたが「完璧!そういうこと!」とスッキリするまで、様々な角度からアプローチし続けます。

🔗 関連単元

第1講「静電気の基本とクーロンの法則」で学んだ「電荷 \(Q\) から出る電気力線は \(Q/\varepsilon_0\) 本」という事実は、この講のガウスの法則の出発点になっている。本数の話があやふやな人は、先に第1講へ戻って確認しておこう。

また、ここで学んだ電位は「電位 × 電荷 = 位置エネルギー」という形で、第3講「斜めの電場とエネルギー保存」のエネルギー保存につながっていく。電位を「高さ」としてイメージできていれば、次の講のエネルギーの議論がそのまま頭に入る。

 


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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

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